特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年8月1日から9月20日に、太稔、片岡慎太郎が発明したたばこ提供器具の試作品をドトールコーヒーショップ溜池山王店、エクセルシオールカフェ新橋2丁目店に設置して、店舗利用者によるたばこ提供器具の使用状況を確認する試験使用を行った。
以下、図面を参照して、本実施の形態に係るたばこ提供器具10の詳細を説明する。図1から図6に示すたばこ提供器具10は、それぞれが円柱状である複数本のたばこTを本体ケース11内に収容(ストック)し、本体ケース11に格納した引き出しトレイ12を引き出すことにより、たばこTを1本ずつ取り出してユーザー(喫煙者)に提供するものである。
たばこ提供器具10によって提供するたばこTは、近年の市場規模の拡大や試供機会の多さから、加熱式たばこのたばこスティック(ヒートスティック等と呼ばれる)を想定している。但し、紙巻きたばこや葉巻たばこの提供に本発明を適用することも可能である。
また、たばこ提供器具10は、たばこ販促の試供用途での使用を想定しているが、たばこを1本ずつ販売する場合の商品ディスペンサーとしても適用が可能である。
以下の説明では、たばこ提供器具10の幅方向をX軸方向、たばこ提供器具10の前後方向(奥行き方向)をY軸方向、たばこ提供器具10の上下方向(高さ方向)をZ軸方向とする。
図7から図12は、本体ケース11の構造を示している。本体ケース11はY軸方向に長い箱型の概略形状を有しており、Y軸方向の一端と他端に前壁20と後壁21が設けられている。前壁20が設けられている側をたばこ提供器具10の前側(正面)、後壁21が設けられている側をたばこ提供器具10の後側(背面)、とする。後壁21は、Y軸方向に対して略垂直な(つまり、X軸方向とZ軸方向の成分からなる)壁部である。前壁20は、後壁21に対してやや傾斜する壁部であり、下方から上方に向かうにつれて後壁21との間隔(Y軸方向の距離)が小さくなる。
本体ケース11のX軸方向の両側には、Y軸方向に延びて前壁20と後壁21を接続する一対の外部側壁22,23が設けられている。外部側壁22,23はそれぞれ、X軸方向に対して略垂直な(つまり、Y軸方向とZ軸方向の成分からなる)壁部であり、外部側壁22と外部側壁23が互いに略平行な関係にある。
本体ケース11の内側には、大きく分けて、たばこ収容部13、引き出しトレイ格納部14、予備収容部15が形成されている。たばこ収容部13は、本体ケース11のうちY軸方向の前方寄りの上部に位置し、引き出しトレイ格納部14は、たばこ収容部13の下方に位置している。予備収容部15は、たばこ収容部13及び引き出しトレイ格納部14の後方に位置している。
たばこ収容部13は、1本ずつにばらした状態のたばこTを、引き出しトレイ格納部14側へ供給可能な状態で収容する部分であり、本体ケース11の上方に向けて開放されている。たばこ収容部13内には複数本のたばこTを収容可能である。
引き出しトレイ格納部14は、引き出しトレイ12を格納すると共に、引き出しトレイ12をY軸方向にスライド可能に支持する部分である。
予備収容部15は、たばこ収容部13にストックさせる前のたばこTなどを収容するために使用され、本体ケース11の上方に向けて開放されている。例えば、複数本のたばこTを包装したパッケージの状態で予備収容部15に入れておき、たばこ収容部13内にストックされたたばこTが減ると、予備収容部15内のパッケージからたばこTを取り出してたばこ収容部13に補充する、といった使い方が可能である。
本体ケース11は、たばこ収容部13及び引き出しトレイ格納部14と、その後方の予備収容部15との間を仕切る隔壁24を有している。隔壁24は、後壁21と略平行な壁部であり、後壁21に対して前方に離間した位置で、外部側壁22と外部側壁23を接続している。後壁21と隔壁24と外部側壁22と外部側壁23によって囲まれる領域が予備収容部15であり、予備収容部15の底部は底壁25によって塞がれている。底壁25は、Z軸方向における後壁21と隔壁24の下端の間を接続しており、Z軸方向に対して略垂直な(つまり、X軸方向とY軸方向の成分からなる)壁部である。
予備収容部15は、底壁25を設けた底部とは反対側の上部が開放されており、この上部の開放部分を通して、予備収容部15の内部にアクセス可能である。後壁21には、Z軸方向に延びて上端側が開口する縦溝21aが形成されている(図1及び図2参照)。予備収容部15内に物を出し入れする際に、縦溝21aに作業者の指や器具等を入れることで、作業性が向上する。
本体ケース11の内部には、Y軸方向に延びて前壁20と隔壁24を接続する一対の内部側壁26,27が設けられている。内部側壁26,27は、外部側壁22,23と略平行な壁部であり、X軸方向に離間して配置されている。X軸方向における内部側壁26,27の間隔は、外部側壁22,23の間隔よりも小さく、外部側壁22,23の内側に内部側壁26,27が位置する。X軸方向における一方の外部側壁22と内部側壁26の間隔と、他方の外部側壁23と内部側壁27の間隔は、略等しい。
内部側壁26と内部側壁27の下端の間を傾斜底壁28が接続している。Y軸方向に離間する前壁20及び隔壁24と、X軸方向に離間する内部側壁26及び内部側壁27と、これらの底部に位置する傾斜底壁28とにより囲まれる空間として、たばこ収容部13が形成されている。たばこ収容部13は、傾斜底壁28を設けた底部とは反対側の上部が開放されており、この上部の開放部分を通してたばこ収容部13へのたばこTの供給を行うことができる。
傾斜底壁28は、Y軸方向に進むにつれてZ軸方向の高さを徐々に変化させる傾斜形状の壁部である。より詳しくは、傾斜底壁28は、Y軸方向の後方の後端28aが隔壁24に接続しており、後端28aから前方の前端28bに進むにつれて、Z軸方向での高さ位置が低くなる。この傾斜底壁28の傾斜形状によって、たばこ収容部13は、Y軸方向で後側から前側に進むにつれて、Z軸方向の深さが徐々に大きくなっている。内部側壁26と内部側壁27は、傾斜底壁28の傾斜形状に対応して、隔壁24に接続するY軸方向の後端ではZ軸方向の高さ(本体ケース11の上端から下方への深さ)が最も小さく、Y軸方向の前側に進むにつれてZ軸方向の高さ(本体ケース11の上端から下方への深さ)が大きくなる。
図8及び図9に示すように、傾斜底壁28の前端28bは前壁20まで達しておらず、前端28bと前壁20との間に上下貫通部29が形成されている。上下貫通部29は、前壁20の後面と傾斜底壁28の前端28bと内部側壁26と内部側壁27によって囲まれた上面視(底面視)で略矩形の開口であり、Z軸方向に貫通してたばこ収容部13と引き出しトレイ格納部14を連通させている。
たばこ収容部13のX軸方向の幅(内部側壁26と内部側壁27の間隔)は、収容するたばこTの軸方向長さよりも僅かに大きく設定されている。また、たばこ収容部13のうち、最も浅い傾斜底壁28の後端28a付近でのZ軸方向の深さは、収容するたばこTの直径よりも僅かに大きく設定されている。従って、それぞれがX軸方向に軸線を向けた状態の複数本のたばこTを、たばこ収容部13内に収容することができる(図1、図2、図5、図6参照)。
たばこ収容部13は上端の開放部分で最も間口面積が広い形状であり、たばこTをたばこ収容部13に入れる作業を、簡単に効率よく行うことができる。また、たばこ収容部13の内部には仕切り等が無く、Y軸方向とZ軸方向のそれぞれでたばこTの複数本分の最大内寸が確保されているので、各たばこTの長手方向をX軸方向に揃えるという条件を満たした上で、複数本のたばこTをY軸方向やZ軸方向にランダムに位置させることができる、従って、優れたスペース利用効率によって多量のたばこTを本体ケース11に収めることができ、たばこTをたばこ収容部13に入れるための手間もかからない。
引き出しトレイ格納部14の内部には、傾斜底壁28の下面からZ軸方向の下方に突出する後方ストッパ部30と一対の上方ガイド部31,32とが設けられている。後方ストッパ部30と一対の上方ガイド部31,32に囲まれるコ字型の空間は、下方に向けて開放されている。
後方ストッパ部30は、Y軸方向に対して略垂直な壁部であり、X軸方向の幅が傾斜底壁28よりも小さく、X軸方向で傾斜底壁28の略中央部分に位置している(図8参照)。上方ガイド部31,32は、X軸方向に対して略垂直な壁部であり、後方ストッパ部30のX軸方向の両端からY軸方向の前側に向けて延びている。図9に示すように、後方ストッパ部30と上方ガイド部31,32の下端は、Z軸方向で傾斜底壁28の前端28bと略同じ高さに位置している、上方ガイド部31,32の下端面として、Y軸方向に延びるガイド面31a,32aが形成されている(図12参照)。
引き出しトレイ格納部14内にはさらに、Y軸方向に延びる一対の下方ガイド部33,34が設けられている。下方ガイド部33,34は、Z軸方向に対して略垂直な壁部であり、一対の外部側壁22,23からX軸方向の内側(内部側壁26,27に接近する側)に向けて突出している。図9及び図10に示すように、下方ガイド部33,34は、Z軸方向で本体ケース11の下端よりも僅かに上方に位置しており、ガイド面31a,32aよりも下方に位置する。X軸方向においては、下方ガイド部33は外部側壁22と内部側壁26の間に位置し、下方ガイド部34は外部側壁23と内部側壁27の間に位置している(図7及び図8参照)。つまり、本体ケース11の上面視(又は底面視)では、たばこ収容部13のX軸方向の両側に下方ガイド部33,34が位置している。Y軸方向においては、下方ガイド部33,34は、前壁20と隔壁24の間で前壁20に近い前方寄りに位置しており、下方ガイド部33,34の前端が傾斜底壁28の前端28bよりも前側に位置している。
下方ガイド部33,34の前方には前方立壁35が形成され、下方ガイド部33,34の後方には後方立壁36が形成されている。前方立壁35と後方立壁36はそれぞれ、Y軸方向に対して略垂直な壁部であり、たばこ収容部13を挟んで、外部側壁22と内部側壁26の間を接続する部分と、外部側壁23と内部側壁27の間を接続する部分とに分かれている。Z軸方向において、前方立壁35と後方立壁36の下端は、ガイド面31a,32aと略同じ高さ位置にある(図10参照)。後方立壁36の一部は、傾斜底壁28の下方で内部側壁26,27よりもX軸方向の内側に入り込んで、傾斜底壁28の下面と上方ガイド部31,32に接続している(図8参照)。
たばこ収容部13を挟んだX軸方向の両側には、外部側壁22と内部側壁26と前方立壁35と後方立壁36で囲まれる空間と、外部側壁23と内部側壁27と前方立壁35と後方立壁36で囲まれる空間とが形成される、これらの各空間のZ軸方向の底部側に下方ガイド部33,34が位置しており、各空間のZ軸方向の上端は開放されている。下方ガイド部33,34の上方にこのような空間を設けることで、本体ケース11の製造時に、Z軸方向に移動(分割)するシンプルな型構造によって、たばこ収容部13や下方ガイド部33,34の周辺を成形することができ、生産性の向上に寄与する。また、向きの異なる複数の壁部をたばこ収容部13の周囲に配置して、下方ガイド部33,34の周りを囲むボックス構造にすることで、周辺の強度を確保することができる。
後方立壁36の後方では、外部側壁22と内部側壁26と後方立壁36と隔壁24で囲まれる空間と、外部側壁23と内部側壁27と後方立壁36と隔壁24で囲まれる空間の、それぞれのZ軸方向の上端が、上壁37,38で塞がれている。前方立壁35の前方では、前壁20と外部側壁22と外部側壁23と前方立壁35のそれぞれの上端が上壁39で接続されている。これらの上壁37,38,39によって、本体ケース11の上端側の強度が向上する。また、上壁37,38,39の下方はZ軸方向に開放された形状であるため、本体ケース11の製造時に、Z軸方向に移動(分割)するシンプルな型構造によって、前方立壁35や上壁37,38,39の周辺を成形することができる。
図8から図10に示すように、前方立壁35よりもY軸方向の前側で、一対の内部側壁26,27のそれぞれの一部がZ軸方向でガイド面31a,32aよりも下方に突出して、一対の前方ストッパ部26a,27aを形成している。前方ストッパ部26a,27aは、Y軸方向の前端部分が前壁20に接続して強度が確保されている。前方ストッパ部26a,27aの後端部分は、Z軸方向に延びる縁形状になっている。
引き出しトレイ格納部14の前端部分には、前端開口40が形成されている。前端開口40は、X軸方向における前方ストッパ部26aと前方ストッパ部27aの間の領域で、前壁20をY軸方向に貫通する開口部である。前方ストッパ部26a,27aが前端開口40の一部を構成している。前端開口40は下方に向けて開放されており、前端開口40の上端はガイド面31a,32aと概ね同じ高さ位置にある(図9参照)。
前壁20の前面側には、前端開口40の上部にカードホルダ41が形成されている(図1及び図2参照)。カードホルダ41は、上端側の開放部分から板状のカードPを着脱可能な凹部である。X軸方向の両側に設けたフランジ42によってカードPの両端を保持して、カードホルダ41から前方へのカードPの脱落を防ぐ。カードPには、任意の情報を記載することが可能である。例えば、たばこ提供器具10によって提供するたばこの銘柄や説明文等をカードPに記載する。前壁20の傾斜(後傾)形状によって、カードホルダ41に保持したカードPの視認性が良くなる。
図13から図17は、引き出しトレイ12の構造を示している。引き出しトレイ12は、Z軸方向に対して略垂直な板状である蓋部50を有する。蓋部50は、図13のように上面視した状態で、Y軸方向に細長い矩形状の板状部分である。蓋部50のX軸方向の両端から下方に向けて、一対の側壁51,52が突出している。X軸方向における側壁51と側壁52の間隔は、本体ケース11に形成した前端開口40のX軸方向の開口幅よりも僅かに小さく、蓋部50と側壁51,52が前端開口40をY軸方向に通過可能である。
蓋部50の後端側の一部分は、Y軸方向に延びる略平行な一対のスリット53によって他の部分から離隔されて、片持ち状のアーム部54になっている。アーム部54は、蓋部50に接続する前側の基端部を支点としてZ軸方向へ僅かに撓むことが可能である。アーム部54の後端には、上方に向けて突出するストッパ突起55が形成されている。
蓋部50のX軸方向の略中央にアーム部54が形成されており、蓋部50のうちアーム部54の両側は一対のガイド壁56,57になっている。ガイド壁56,57は、Z軸方向に対して略垂直である平滑な上面を有している。
ガイド壁56,57のY軸方向の後端には、下方に向けて突出する後端壁58が形成されている。図14に示すように、後端壁58は側壁51と側壁52に接続している。また、アーム部54,ガイド壁56及びガイド壁57の前方に、蓋部50から下方に突出する中間壁59が設けられており、中間壁59はX軸方向に延びて側壁51と側壁52を接続している。このように、ガイド壁56,57を含む引き出しトレイ12の後部は、後端壁58と中間壁59に接続して、下方に向けて開放されたボックス状の構造になっており、剛性が確保されている。そして、アーム部54の箇所に限定して、Z軸方向へのある程度の撓みが許容されている。
引き出しトレイ12のY軸方向の後部にはさらに、側壁51,52からX軸方向に突出する一対の側方ガイド板60,61が設けられている。側方ガイド板60,61はそれぞれ、Z軸方向に対して略垂直な板状であり、上面視でX軸方向の幅よりもY軸方向の長さが大きい矩形状である。Y軸方向における側方ガイド板60,61の前端60a,61aは、X軸方向に延びている。図17に示すように、Z軸方向において、側方ガイド板60,61は蓋部50よりも下方に位置している。
蓋部50のY軸方向の前端に近い位置には、たばこ載置溝62が形成されている。たばこ載置溝62は、たばこ収容部13からたばこTを受け取って載置する載置部である。たばこ載置溝62は、蓋部50の上面側から下方に向けて凹ませて形成した凹部であり、略一様な断面形状でX軸方向に延びている(図15及び図16参照)。たばこ載置溝62のX軸方向の両端は開口している。
たばこ載置溝62のX軸方向の長さは、たばこTの軸方向長さよりも僅かに大きく設定されている。Y軸方向へのたばこ載置溝62の幅(図13に幅M2として示す)とZ軸方向へのたばこ載置溝62の深さはそれぞれ、たばこTの直径よりも僅かに大きく設定されている。たばこ載置溝62の底部は、たばこTの円筒状の外面に沿う湾曲形状を有している。従って、ある程度の寸法的余裕をもちながら、1本のたばこTを安定してたばこ載置溝62に載置させることができる。
本体ケース11に設けた上下貫通部29のY軸方向の幅M1(図8)は、引き出しトレイ12に設けたたばこ載置溝62のY軸方向の幅M2(図13)よりも大きい。具体的には、上下貫通部29の幅M1は、たばこ載置溝62の幅M2の約3倍になっている。
引き出しトレイ12の蓋部50のうち、アーム部54,ガイド壁56及びガイド壁57が設けられている後部領域と、たばこ載置溝62が設けられている前部領域との間の中間領域の上面に、波型部63が形成されている。図15に拡大して示すように、波型部63は、X軸方向に延びる細かな凹部と凸部がY軸方向に並列する(連続的に並ぶ)構造である。
Y軸方向における引き出しトレイ12の前端には、上面視でD字形(後端側が直線状で、前方に湾曲部分を向けた形状)の指掛け穴64と、この指掛け穴64を囲む円弧アーチ状の把持部65が設けられている。把持部65は、基端部が一対の前端壁66に接続し、前端壁66から離れて前方に進むにつれて、X軸方向の幅を小さくする。前端壁66は、蓋部50の前端から下方に向けて突出すると共に側壁51と側壁52に接続する壁部であり、前端壁66に接続することにより把持部65付近の強度が確保されている。また、前端壁66の近傍に配置したたばこ載置溝62を構成する壁部の存在も、把持部65付近の強度向上に寄与している。把持部65は、引き出しトレイ12を操作する際に外部からの力が加わる部分であるため、このような強度的に優れた構造にすることが有効である。把持部65の前縁部分は滑らかな円弧形状になっており、把持部65の前縁に沿って上方に突出するフランジ67が形成されている。
引き出しトレイ12には、本体ケース11に対する引き出し操作の方向を示す指標68と、格納操作の方向を示す指標69が設けられている。本実施の形態の指標68,69は、三角形状のマークと文字で情報を示しているが、これ以外の情報表示を行う指標を用いることも可能である。また、本実施の形態の指標68,69は、引き出しトレイ12の上面側への浮き彫り状の加工で形成されているが、印刷やシール等の異なる形態で指標を形成してもよい。
以上の構造からなる本体ケース11と引き出しトレイ12を組み合わせて、図1から図6に示すたばこ提供器具10を構成する。Z軸方向において、蓋部50のガイド壁56,57がそれぞれ上方ガイド部31,32の下方に位置し、側方ガイド板60,61がそれぞれ下方ガイド部33,34の上方に位置するように、本体ケース11の引き出しトレイ格納部14に引き出しトレイ12を組み付ける。ガイド壁56,57の上面がガイド面31a,32aに接することで上方への引き出しトレイ12の移動が規制され、側方ガイド板60,61の下面が下方ガイド部33,34の上面に接することで下方への引き出しトレイ12の移動(本体ケース11からの脱落)が規制され、本体ケース11に対する引き出しトレイ12のZ軸方向の位置が定まる。
このとき、X軸方向では、側方ガイド板60,61の側部がそれぞれ外部側壁22,23の内側の面に近接して位置し、側壁51,52がそれぞれ前方ストッパ部26a,27aの内側の面に近接して位置する。側方ガイド板60,61のそれぞれのX軸方向の側部が外部側壁22,23に接することで、本体ケース11に対する引き出しトレイ12のX軸方向の位置が定まる。また、側壁51,52がそれぞれ前方ストッパ部26a,27aの側面に接することで、引き出しトレイ12のうち、側方ガイド板60,61が設けられていない前寄りの部分も、X軸方向の移動が規制される。
本体ケース11と引き出しトレイ12の間には、Z軸方向とX軸方向での引き出しトレイ12の位置を定めるこれらの部分の間に、所定の大きさのクリアアンスが確保されている。このクリアアンスによって、部品の精度誤差を吸収すると共に、Y軸方向への引き出しトレイ12のスムーズなスライド動作を実現できる。
Z軸方向での引き出しトレイ12の保持については、Z軸方向に対して略垂直な板状のガイド壁56,57を上方ガイド部31,32のガイド面31a,32aに当接させると共に、それぞれがZ軸方向に対して略垂直な板状の下方ガイド部33,34と側方ガイド板60,61を重ねる構造である。そのため、本体ケース11と引き出しトレイ12の間にX軸方向の多少のクリアアンスがある場合や、本体ケース11に対して引き出しトレイ12をY軸方向にスライドさせた場合でも、Z軸方向の位置を確実に定めることができる。
本体ケース11と引き出しトレイ12を組んだ状態で、引き出しトレイ12の後端側に設けたストッパ突起55は、本体ケース11の後方ストッパ部30と上方ガイド部31,32で囲まれる空間内に位置する。そして、ストッパ突起55が前方から後方ストッパ部30に当接することで、Y軸方向でそれ以上の後方への引き出しトレイ12の移動が規制され、引き出しトレイ12の格納状態になる(図3及び図5参照)。また、本体ケース11と引き出しトレイ12を組んだ状態で、Y軸方向で側方ガイド板60,61の前方延長上に前方ストッパ部26a,27aが位置している。そして、側方ガイド板60,61の前端60a,61aが前方ストッパ部26a,27aの後縁に当接することで、Y軸方向でそれ以上の前方への引き出しトレイ12の移動が規制され、引き出しトレイ12の突出状態になる(図4参照)。つまり、後方ストッパ部30とストッパ突起55が、引き出しトレイ12を本体ケース11に格納する方向への移動端を決める格納用の移動規制部を構成し、前方ストッパ部26a,27aと側方ガイド板60,61が、本体ケース11から引き出しトレイ12を突出する方向への移動端を決める突出用の移動規制部を構成する。
引き出しトレイ12を突出状態で停止させる際に、前方ストッパ部26a,27aの後縁に対して当接するのは、側方ガイド板60,61のうち、側壁51,52に接続する基端付近の部分であり、耐荷重性に優れている。また、Z軸方向に延びる前方ストッパ部26a,27aの後縁に対して、X軸方向に延びる側方ガイド板60,61の前端60a,61aが当接するので、本体ケース11と引き出しトレイ12の間に、X軸方向やZ軸方向の多少のクリアアンスがある状態でも、側方ガイド板60,61を前方ストッパ部26a,27aに対して確実に当接させることができる。
引き出しトレイ12におけるストッパ突起55の後面から側方ガイド板60,61の前端60a,61aまでのY軸方向の距離をL1、本体ケース11における後方ストッパ部30から前方ストッパ部26a,27aの後縁までのY軸方向の距離をL2とすると、L1<L2である。この距離L1と距離L2の差が、本体ケース11に対する引き出しトレイ12のY軸方向への可動量N(図6)である。
図3及び図4に示すように、格納状態から突出状態までの引き出しトレイ12のY軸方向の可動範囲では、側方ガイド板60,61の少なくとも一部が下方ガイド部33,34とZ軸方向で常に重なる関係にあり、ガイド壁56,57の少なくとも一部が上方ガイド部31,32(ガイド面31a,32a)とZ軸方向で常に重なる関係にある。また、引き出しトレイ12のY軸方向の可動範囲では、側方ガイド板60,61の側部が外部側壁22,23の側面とX軸方向で常に対向し、側壁51,52の側部が前方ストッパ部26a,27aの側面とX軸方向で常に対向している。そのため、引き出しトレイ12は、Y軸方向の位置変化に関わらず、常にZ軸方向及びX軸方向の位置が定まった状態を維持しており、本体ケース11から引き出しトレイ12が脱落することがない。
たばこ提供器具10は、本体ケース11の外側を囲むラックや外部ケースに収めて使用することが好ましい。例えば、下方ガイド部33,34は、本体ケース11の下端面よりも僅かに上方に位置しており(図11及び図12参照)、下方ガイド部33,34の下面に薄型の(本体ケース11の下端面と面一になる厚みの)磁石を取り付けることが可能である。この磁石の磁力によって、金属製のラックや外部ケースに対してたばこ提供器具10を安定支持させることができる。磁力による取り付けは、着脱や位置の変更が容易という利点がある。
アーム部54を下方に撓ませてストッパ突起55が後方ストッパ部30の下方を通過できるようにした上で、引き出しトレイ12を引き出しトレイ格納部14内で後方へスライドさせることにより、本体ケース11から引き出しトレイ12を取り外すことができる。引き出しトレイ12の通常のスライド操作では、ストッパ突起55が後方ストッパ部30に当接したときにアーム部54にはY軸方向への直線的な荷重が作用するので、アーム部54が下方(Z軸方向)に変位してストッパ突起55が後方ストッパ部30から後方へ外れることはない。引き出しトレイ12を外す意図をもって下方にアーム部54を撓ませた場合にのみ、後方ストッパ部30よりも後方にストッパ突起55を移動させることが可能であるため、引き出しトレイ12が本体ケース11から不用意に外れるおそれはない。
本体ケース11と引き出しトレイ12は、耐久性や引き出しトレイ12の摺動性等を満たす任意の材質によって形成される。例えば、本体ケース11と引き出しトレイ12を合成樹脂の成形品として構成することができる。
また、本体ケース11と引き出しトレイ12の色についても任意に選択できる。例えば、本体ケース11を不透明な暗色(黒色等)にし、引き出しトレイ12を透明や半透明にすることで、引き出しトレイ12が操作対象であることをユーザーに認識させやすくなる。特に、引き出しトレイ12の把持部65は、本体ケース11から常に突出した状態にあるので、少なくとも把持部65を目立つ色にすることが、操作対象の識別性向上に有効である。
以上のように構成したたばこ提供器具10の動作と使用について説明する。たばこ提供器具10では、たばこ収容部13内に複数本のたばこTを収容し、ユーザーが引き出しトレイ12を手前に引き出す操作を行うことで、1本ずつたばこTを取り出す。たばこ収容部13内では、たばこTは長手方向がX軸方向に向くように配置されていればよく、収容時にY軸方向やZ軸方向での位置を定める必要はない。また、たばこ収容部13に対して、Y軸方向のどの位置からたばこTを入れてもよい。
たばこ収容部13内に収容した全てのたばこTは、傾斜底壁28の傾斜に応じて重力の作用で、前方の上下貫通部29側に誘導される。傾斜底壁28は、個々のたばこTが比較的軽量である場合でも確実に上下貫通部29まで誘導できるように、摩擦抵抗の少ない平滑な斜面として形成されている。また、傾斜底壁28の傾斜角は、収容対象であるたばこTの転がりやすさ等を考慮して設定されている。
引き出しトレイ12の格納状態では、本体ケース11の上下貫通部29と引き出しトレイ12のたばこ載置溝62が上下に重なって連通する関係になる。上下貫通部29は傾斜する傾斜底壁28の最も低い位置に連続して形成されているので、たばこ収容部13内のたばこTは、重力によって上下貫通部29を通って下方に落下して、引き出しトレイ格納部14内に位置するたばこ載置溝62に載置される(図5参照)。つまり、傾斜底壁28と上下貫通部29は、引き出しトレイ12の格納状態で、本体ケース11内のたばこTを引き出しトレイ12のたばこ載置溝62に移動させる誘導手段として機能する。
たばこ載置溝62の幅M2(図13)は1本分のたばこTを載置可能な寸法であるため、上下貫通部29を通過して下方に落下するたばこTは1本に限られる。既にたばこ載置溝62にたばこTが載置されている場合には、引き出しトレイ12の格納状態で、たばこ収容部13から引き出しトレイ格納部14へのたばこTの落下は生じない。
Y軸方向での上下貫通部29の幅M1(図8)をたばこ載置溝62の幅M2(図13)よりも大きくすることで、上下貫通部29の箇所で詰まりや引っかかりなどを生じずに、確実にたばこ載置溝62へたばこTを落下させることができる。
また、たばこ載置溝62の幅M2よりも上下貫通部29の幅M1の方が大きいと、たばこ収容部13にたばこ載置溝62が連通可能となるY軸方向の引き出しトレイ12の動作範囲がある程度広く確保されるので、格納状態で引き出しトレイ12のY軸方向の位置を厳密に管理しなくても、たばこ収容部13側からたばこ載置溝62へ確実にたばこTを落下させることができる。例えば、引き出しトレイ12の格納動作の際に、ストッパ突起55が後方ストッパ部30に当接するよりも多少手前の位置で引き出しトレイ12を止めても、その時点でたばこ載置溝62の直上にたばこTが位置していれば、たばこ収容部13からたばこ載置溝62へたばこTを移動させることができる。
引き出しトレイ12の格納状態(ストッパ突起55が後方ストッパ部30に当接する位置)では、Y軸方向において上下貫通部29の最も奥側(傾斜底壁28の前端28bに隣接する位置)にたばこ載置溝62が位置するように設計されている。この理由については、後述する。
なお、Y軸方向でたばこ載置溝62の前後には蓋部50が存在して上下貫通部29の下方を塞ぐので、たばこ載置溝62の幅M2よりも上下貫通部29の幅M1が大きくても、たばこ載置溝62の前後から本体ケース11の下方にたばこTが落下することはない。
図1、図3及び図5に示すように、引き出しトレイ12の格納状態では、引き出しトレイ12の大部分が本体ケース11の引き出しトレイ格納部14内に格納されており、把持部65のみが前端開口40を通して前方に突出している。このとき、引き出し方向を示す指標68がたばこ提供器具10の外観に表れており(図1参照)、たばこ提供器具10の使用の際に、把持部65を把持して指標68が示す前方への引き出し動作を行えばよいことが、ユーザーに情報として認知される。
たばこ提供器具10からたばこTを取り出して使用(喫煙)する際には、ユーザーが本体ケース11から引き出しトレイ12をY軸方向の前方に引き出す操作を行う。引き出し操作に際して、前端開口40から前方に突出している把持部65を上下から挟むように把持してもよいし、指掛け穴64に指等を挿入して引っ掛けてもよい。指掛け穴64とフランジ67によって、いずれの操作形態でもY軸方向への操作力を把持部65に伝えやすくなっている。また、円弧アーチ状の把持部65と、円弧部を前方に向けたD字型の指掛け穴64はいずれも、引き出し時にユーザーが触れる部分に角張った形状が無いので操作感に優れている。
図2、図4及び図6に示すように、引き出しトレイ12を前方に引き出して突出状態にすると、引き出しトレイ12のうちたばこ載置溝62を含む部分が本体ケース11から前方に引き出されて、たばこ載置溝62に載置されたたばこTが外部に露出する。これにより、ユーザーがたばこ載置溝62からたばこTを受け取ることができる。たばこ載置溝62は、Z軸方向の上方と、X軸方向の両側に開口した形状であるので、ユーザーは、たばこTを上方に摘み上げて取り出してもよいし、たばこTをX軸方向にスライドさせて側方から抜き取ってもよい。
引き出しトレイ12を引き出す操作の際には、側方ガイド板60,61の前端60a,61aが後方から前方ストッパ部26a,27aの後縁に当接することで、それ以上の前方への引き出しトレイ12の移動が規制される。この当接の感触によって、引き出しトレイ12が突出状態になったことをユーザーが感知できる。X軸方向で離れて位置する一対の側方ガイド板60,61と一対の前方ストッパ部26a,27aによって荷重を受けるので、強度的に優れた構造で引き出しトレイ12の移動を規制することができる。
なお、側方ガイド板60,61が前方ストッパ部26a,27aに当接するよりもある程度手前の位置で、たばこ載置溝62が前端開口40から前方に露出するので、たばこ載置溝62上のたばこTが視認された段階(側方ガイド板60,61が前方ストッパ部26a,27aに当接するよりも前)で、ユーザーが引き出しトレイ12の引き出し操作を止めて、たばこTを受け取ることも可能である。
引き出しトレイ12の突出状態では、上下貫通部29の直下に蓋部50が位置して下方を塞いでいるため、たばこ収容部13内にストックされたたばこTは、上下貫通部29を通してたばこ提供器具10から下方に落下することがない(図6参照)。
引き出しトレイ12の突出状態では、引き出しトレイ12における格納方向を示すマークと文字からなる指標69が、たばこ提供器具10の外観(前壁20の近傍)に表れる(図2参照)。この指標69により、引き出しトレイ12を引き出した後には、引き出しトレイ12を格納方向に押し込む動作を行う必要があることが、ユーザーに情報として認知される。
たばこ載置溝62からたばこTを受け取った後で、ユーザーが引き出しトレイ12をY軸方向の後方に押し込んで本体ケース11内に再び格納させる。ストッパ突起55が後方ストッパ部30に当接して後方への引き出しトレイ12の移動が規制されることで、たばこ提供器具10が格納状態になったことをユーザーが感知できる。
引き出しトレイ12が格納状態に戻ると、たばこ載置溝62が上下貫通部29の下方に位置するので、たばこ収容部13に収容された複数のたばこTのうち1本が、上下貫通部29を通って下方に落下し、空き状態のたばこ載置溝62に入る。
傾斜底壁28と上下貫通部29を含む誘導手段は、基本的に、たばこTを自重によってたばこ収容部13からたばこ載置溝62に移動させるものである。しかし、たばこTが軽量である場合や、たばこ収容部13内でたばこTに対して摩擦力等による移動抵抗が作用している場合には、引き出しトレイ12を格納状態に戻しても、たばこTがたばこ載置溝62へ自動的に入りにくい(上下貫通部29の上方でたばこTが詰まる)可能性も想定される。波型部63は、このような場合に有用である。
上述したように、引き出しトレイ12の突出状態では、上下貫通部29の直下に蓋部50(波型部63)が位置して下方を塞いでいるため、たばこ収容部13内にストックされたたばこTは、上下貫通部29を通してたばこ提供器具10から下方に落下することがない(図6参照)。この状態から引き出しトレイ12を格納方向に移動させると、蓋部50のうち上下貫通部29に面する上面部分に形成されている波型部63が、たばこ収容部13内で最下層に位置して上下貫通部29の箇所にあるたばこTに対して、擦動しながらY軸方向に進む。すると、波型部63との擦動の影響によって、たばこTがたばこ載置溝62側に誘導される。例えば、波型部63との間に働く摩擦力によって、たばこTが引き出しトレイ12と共にY軸方向の後方に進もうとした場合、傾斜底壁28の前端28bとの接触によってそれ以上の後方への移動が妨げられ、その反動でたばこTがたばこ載置溝62側に移動する挙動を生じる。また、上下貫通部29の位置にあるたばこTに対して、他のたばこTやたばこ収容部13の内面との間で軽い摩擦力が働いている場合、波型部63との擦動で当該たばこTが振動すると、摩擦力による移動抵抗が軽減(詰まりが解消)されて、たばこTの自重によるたばこ載置溝62への落下が行われやすくなる。
以上に説明したように、本実施の形態のたばこ提供器具10によれば、本体ケース11に対して前後方向(Y軸方向)に引き出しトレイ12を移動させるという簡単な操作によって、簡単且つ確実に1本ずつたばこを提供することが可能である。引き出しトレイ12を操作する取り出し時以外には、たばこTを外部に露出させずに本体ケース11のたばこ収容部13や予備収容部15の内部に収容することで、保存性が高くなり、たばこTの風味の劣化等を抑えることができる。また、取り出し時以外にたばこTを外部に露出させずに本体ケース11に収容し、取り出し時には提供する1本のたばこTのみが外部に露出するので、不特定多数の人間が本体ケース11内のたばこTに触れたり、取り出し対象以外のたばこTにユーザーの手が触れたりすることを防止して、衛生的にも優れた環境での提供を実現できる。
また、たばこ提供器具10では、本体ケース11に対して引き出しトレイ12を、幅方向(X軸方向)や上下方向(Z軸方向)での位置を定めながら前後方向(Y軸方向)にスムーズに移動可能にさせるガイド構造を有している。これにより、可動部である引き出しトレイ12の操作に際して優れた安定性と使用感を得ることができる。また、前後方向(Y軸方向)に移動する引き出しトレイ12を格納状態と突出状態で停止させるストッパ構造を備えており、たばこ載置溝62へのたばこTの供給と、たばこ載置溝62からのたばこTの取り出しのサイクルを、容易且つ確実にユーザーに認識及び実行させることができ、引き出しトレイ12の煩雑な操作を要さない。
図18(A)から図18(C)に、たばこ提供器具10とは異なる比較例の商品提供装置を示した。図18(A)に示す商品提供装置は、上下方向(Z軸方向)に延びる収容ガイド部70と、収容ガイド部70の下方に位置して前後(Y軸方向)に移動可能な引き出し部71と、を有している。収容ガイド部70は、たばこや缶のような円筒状の商品Qを、横置きにしてZ軸方向で1列に並べた状態で収容するように構成されている。収容ガイド部70の上端と下端はそれぞれ開放されており、上端側の開口から商品Qを供給する。引き出し部71の上面には、1つの商品Qを載置可能な載置溝72が形成されている。Y軸方向における収容ガイド部70の幅と載置溝72の幅は、略同じである。
引き出し部71の格納状態(図18(A)の左側の状態)では、収容ガイド部70の下方に載置溝72が位置する。収容ガイド部70内の商品Qのうち、最も下方の商品Qが重力によって落下して、収容ガイド部70の下端側の開口を通って載置溝72に入る。引き出し部71を手間に引き出して突出状態(図18(A)の右側の状態)にすると、載置溝72に載った商品Qが露出して取り出すことが可能になる。
図18(B)に示す商品提供装置は、収容ガイド部73が、Y軸方向の手前側に進むにつれてZ軸方向で低くなる傾きを有している。収容ガイド部73の下端部分は、Z軸方向に延びる出口部73aになっており、出口部73aが下方に向けて開口している。Y軸方向における出口部73aの幅と載置溝72の幅は、略同じである。
収容ガイド部73の上端側の開口から供給された商品Qは、傾斜形状の収容ガイド部73に沿って1列に並び、重力によって出口部73aへ進む。引き出し部71の格納状態(図18(B)の左側の状態)では、出口部73aの下方に載置溝72が位置し、出口部73a内の商品Qが重力によって落下して、載置溝72に入る。引き出し部71を手間に引き出して突出状態(図18(B)の右側の状態)にすると、載置溝72に載った商品Qが露出して取り出し可能になる。
図18(C)に示す商品提供装置は、途中で向きを変える「く」の字形状の収容ガイド部74を有している。収容ガイド部74は、上端側の開口からY軸方向の奥側に向けて斜め下方に延び、途中で向きを変えて、Y軸方向の手前側に向けて斜め下方に延びている。収容ガイド部74の下端部分は、Z軸方向に延びる出口部74aになっており、出口部74aが下方に向けて開口している。Y軸方向における出口部74aの幅と載置溝72の幅は、略同じである。
収容ガイド部74の上端側の開口から供給された商品Qは、傾斜形状の収容ガイド部74に沿って、途中で進行方向を変えながら1列に並び、重力によって出口部74aへ進む。引き出し部71の格納状態(図18(C)の左側の状態)では、出口部74aの下方に載置溝72が位置し、出口部74a内の商品Qが重力によって落下して、載置溝72に入る。引き出し部71を手間に引き出して突出状態(図18(C)の右側の状態)にすると、載置溝72に載った商品Qが露出して取り出し可能になる。
図18(A)から図18(C)に示す商品提供装置はいずれも、各収容ガイド部70,73,74が、複数の商品Qを1列に並べて順送りに搬送する構造であり、収容ガイド部70,73,74内の全ての部分で、進行方向の各セクションには1つの商品Qのみが存在する。換言すれば、商品Qの配列にランダム性を生じさせないように、載置溝72に至るまでの各商品Qの移動軌跡が同じになるように拘束している。そのため、各収容ガイド部70,73,74から載置溝72へ商品Qを移動(落下)させる際に、複数の商品Qの相互干渉による詰まり等を生じずに、スムーズに移動させることができる。
その反面で、商品Qを収容する部分が、商品Q1つ分の幅しかない収容ガイド部70,73,74に限られるので収容量が制約され、多量の商品Qを効率的に収容できないという問題がある。また、商品Qを拘束しながら搬送するタイプの収容ガイド部70,73,74を用いることで、構造が複雑化して製造コストが高くなりがちである。さらに、幅の狭い収容ガイド部70,73,74に対して1つずつ商品Qを供給するので、商品供給作業に手間がかかってしまう。
これに対して、本実施形態のたばこ提供器具10では、本体ケース11のたばこ収容部13において、たばこTを1列に並べて搬送する構造を備えていない。たばこ収容部13の上端部はY軸方向の全体に亘って開口しており、そのいずれの部分からもたばこTを供給可能である。また、たばこ収容部13の底部には、上下貫通部29側にたばこTを移動させるための傾斜底壁28が形成されているが、上端側の開口から傾斜底壁28に至るまでの途中空間に仕切り等を有していない。これにより、たばこ収容部13は、多量(多数)のたばこTを省スペースに収容可能であり、たばこTを供給する際の作業性にも優れている。
その一方で、多量のたばこTを収容したたばこ収容部13から、引き出しトレイ12のたばこ載置溝62にたばこTを移動させる場合、個々のたばこTが多様な軌跡で移動しようとするため、複数のたばこTが相互干渉して、詰まりを生じてしまう可能性がある。このような詰まりが生じやすい場合を図19(A)と図19(B)に示した。
図19(A)のたばこ収容部113は、傾斜底壁128の下端に設けた上下貫通部129のY軸方向の幅M11が、引き出しトレイ12のたばこ載置溝62と概ね同じ幅(たばこTの1本分程度の幅)である場合を示している。
この場合、傾斜底壁128の前端(下端)付近に載っているたばこT1と、前壁120に当て付いているたばこT2とが、互いに支え合うように当接する可能性がある。その結果、上下貫通部129に最も近いたばこT1,T2がそれぞれ上下貫通部129の側に落下せずに停まった状態で均衡し、上下貫通部129の下方に引き出しトレイ12のたばこ載置溝62を位置させても、たばこ載置溝62にたばこTが供給されない現象が生じる。
図19(B)のたばこ収容部213は、傾斜底壁228の下端に設けた上下貫通部229のY軸方向の幅M21が、引き出しトレイ12のたばこ載置溝62の幅の略2倍(たばこTの2本分程度の幅)である場合を示している。
この場合、傾斜底壁228の前端(下端)付近に載っているたばこT1と、前壁220に当て付いているたばこT2との間に、3本目のたばこT3が挟まれて、3つのたばこT1,T2及びT3が互いに支え合うアーチ構造になる可能性がある。その結果、上下貫通部229に最も近いたばこT1,T2及びT3がいずれも上下貫通部229の側に落下せずに停まった状態で均衡し、上下貫通部229の下方に引き出しトレイ12のたばこ載置溝62を位置させても、たばこ載置溝62にたばこTが供給されない現象が生じる。
図19(A)や図19(B)から分かるように、個々のたばこTの移動軌跡を一律に定めずに空間的自由度を高くして収容すると、収容量の多さや収容作業性の良さという利点がある反面で、複数本のたばこTの詰まりによる供給不良が生じるリスクが高くなる。
なお、たばこTの詰まりの形態は、図19(A)や図19(B)のようなアーチ状に限られるものではない。例えば、複数本のたばこTがY軸方向に直列する状態や、その他の不規則な並び関係で詰まる場合もあり得る。
出願人による実験及び研究の結果、本体ケース11側に形成する貫通部(上下貫通部29)のY軸方向での幅を大きくするほど、詰まりによるたばこTの供給不良が生じにくくなることが分かった。まず、貫通部の幅が大きいほど、詰まりを形成するのに要するたばこTの本数が増えるので、詰まり自体が発生する確率が低くなる。また、貫通部の幅が大きくなると、貫通部に連通する状態でのたばこ載置溝62の移動範囲が増えるので、詰まりを生じている複数本のたばこTのいずれかの下方にたばこ載置溝62を位置させて、落下を生じさせることができる可能性が高くなる。また、貫通部の幅の大きさに伴って引き出しトレイ12の移動量が大きくなると、引き出しトレイ12の挿脱操作の際に加わる振動によって、複数本のたばこTを詰まらせている均衡状態が解消される可能性が高くなる。
具体的には、Y軸方向での貫通部の幅を、たばこTの3本分以上にすると、詰まり防止に顕著な効果があることが判明した。顕著な効果とは、引き出しトレイ12の繰り返しの挿脱操作に際して、たばこ収容部13に収容可能なたばこTの最大本数に相当する程度の回数まで、詰まりをほとんど生じさせずに毎回確実にたばこ載置溝62にたばこTを落とすことができた。このように、たばこ収容部13にたばこTを最大本数収めた状態から空になるまでの1サイクルの間に詰まりが生じなければ、実用上は支障が無いと言える。
これに基づき、本実施形態のたばこ提供器具10では、上述の通り、上下貫通部29のY軸方向の幅M1(図8)を、たばこ載置溝62のY軸方向の幅M2(図13)の約3倍に設定している。そして、引き出しトレイ12の格納状態(ストッパ突起55が後方ストッパ部30に当接する位置)では、Y軸方向において上下貫通部29の最も奥側(傾斜底壁28の前端28bに隣接する位置)までたばこ載置溝62が達するように設計されている。換言すれば、引き出しトレイ12の挿脱操作に伴うたばこ載置溝62の移動範囲が、Y軸方向における上下貫通部29の全域をカバーしている。
この構成によると、幅が広い上下貫通部29に対してたばこ載置溝62の位置を変化させることで、Y軸方向のいずれかの位置で、詰まりの支点となっているたばこTをたばこ載置溝62側に落下させることができる。例えば、図19(C)に示すように、Y軸方向の奥側にあるたばこT1が詰まりの支点になっている場合、上下貫通部29のY軸方向の最奥の位置までたばこ載置溝62を移動させることで、たばこT1の下支えが無くなり、たばこT1がたばこ載置溝62に落下して詰まりが解消する。
以上のように、上下貫通部29の幅M1は、たばこ載置溝62の幅M2の少なくとも3倍であることが望ましく、3倍よりも大きい寸法に設定してもよい。
なお、ごく僅かではあるが、4本以上のたばこTによって、上下貫通部29の上方を跨ぐような詰まりが生じる可能性もある。引き出しトレイ12の波型部63は、このような場合に有効であり、上下貫通部29の下方を波型部63が移動する際に、周辺に振動を与えて、詰まりを生じている複数本のたばこT1の均衡状態(摩擦力による係止等)を崩して、詰まりを解消させることができる。
以上の説明から分かる通り、本実施形態のたばこ提供器具10は、たばこ収容部13が上端の開放部分で間口が最も広がった形状であり、たばこTをたばこ収容部13に入れる作業を効率よく行うことができる。また、たばこ収容部13の内部には仕切り等が無く、Y軸方向とZ軸方向のそれぞれでたばこTの複数本分の最大内寸が確保されているので、優れたスペース利用効率によって多量のたばこTを本体ケース11に収めることができる。そして、たばこ収容部13から引き出しトレイ12のたばこ載置溝62へ、詰まりを生じさせずに確実にたばこTを落下させることが可能な誘導手段を有する。従って、多量のたばこTを省スペースに収容しながら、1本ずつのたばこTの提供を確実に行うことができる。
以上、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
例えば、図示の実施形態では、本体ケース11と引き出しトレイ12の最小構成からなるたばこ提供器具10を説明したが、上述したように、たばこ提供器具10を収めるラックや外部ケースと組み合わせることが可能である。特に、たばこ提供器具10の使用時に、たばこ収容部13を外部から容易にアクセスできないように覆った構造にすることが望ましい。また、複数のたばこ提供器具10をZ軸方向に重ねたり、X軸方向に並べて使用したりできるように、本体ケース11に相互接続が可能な接続構造を持たせてもよい。
また、引き出しトレイ12を引き出した状態でのみたばこTを提供可能になる(たばこTが外部に露出する)ことに着目して、新しいたばこ提供システムの一部としてたばこ提供器具10を用いることも可能である。例えば、引き出しトレイ12の移動を規制するロック機構と、当該ロック機構に連携する制御手段を備え、提供回数や年齢等の認証をクリアしたユーザーにのみ、ロック機構のロックを解除して引き出しトレイ12の引き出し操作を許可するような応用も可能である。
図示の実施形態では、引き出しトレイ12のたばこ載置溝62が1本のたばこTを載置する形状であるが、引き出しトレイ12に2本以上のたばこTを載置可能な載置部を備えることも可能である。つまり、本発明のたばこ提供器具は、たばこをパッケージ以外に形態で個別的に提供するものであれば、載置部に載置するたばこの本数を限定するものではない。