JP2022039006A - 希土類鉄ガーネット焼結体及びその製造方法、ファラデー素子、並びに磁気光学素子 - Google Patents

希土類鉄ガーネット焼結体及びその製造方法、ファラデー素子、並びに磁気光学素子 Download PDF

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【課題】ファラデー回転係数(θf)の高い希土類鉄ガーネット焼結体、及びこの焼結体を備えたファラデー素子を提供すること。また上記焼結体及びファラデー素子を低コストで製造する方法を提供すること。【解決手段】化学式:CexBiyR3-x-yFe5O12で表される組成(RはCe以外の希土類元素、0<x≦0.4、及び0<y≦1.7)を有する希土類鉄ガーネット焼結体。【選択図】図1

Description

本発明は、希土類鉄ガーネット焼結体及びその製造方法、ファラデー素子、並びに磁気光学素子に関する。
情報通信技術におけるブロードバンド化に伴い、光ファイバー通信技術、その中でも波長多重通信(WDM)技術が急速に進展している。特に一般家庭へ光ファイバー導入が進んでおり、光ファイバー通信の重要性がますます高まっている。
光ファイバー通信は、半導体レーザー(光源)を用いて送信端で電気信号を光信号(光パルス列)に変え、この光信号を光ファイバーによって伝送し、フォトダイオードを用いて受信端で光信号を電気信号に戻す通信システムである。光ファイバー通信システムでは、光ファイバーとともに、光アイソレータや光サーキュレータといった光回路素子が不可欠である。すなわち伝送路の途中には光コネクタなどの多くの光回路部品が組み込まれており、これらの部品の端面で反射戻り光が生じる。生じた戻り光が送信端の半導体レーザーに入射すると、半導体レーザーの発振が不安定になるとともに、波形歪みが生じてノイズが発生するという問題が起こる。このような問題を防ぐため、半導体レーザーの出力端に光アイソレータを設けることが一般に行われている。光アイソレータは、光を一方にだけ通過させ、逆方向には遮断する機能を有する素子である。光アイソレータのこの機能によって戻り光が半導体レーザーに入射することを防ぐ。
光アイソレータの構成を示す概略図を図1に示す。光アイソレータ(10)は、ファラデー素子(11)、このファラデー素子(11)を挟む2枚の偏光子(12)、及び永久磁石(13)を備えている。永久磁石(13)は、これにより発生した磁界がファラデー素子(11)を透過する光の進行方向に平行になるように配置されている。2枚の偏光子(12)は、片方の偏光面の向きが他方の偏光面の向きに対して45°傾くように配置されている。光源から入射した光は片方の偏光子(例えば図中左側の偏光子)によって直線偏光にされ、ファラデー素子(11)を透過する。入射直線偏光はファラデー素子(11)によって45°の回転を受け、他方の偏光子(例えば図中右側の偏光子)を通してファイバーなどの光伝送路に導入される。戻り光は様々な偏光成分をもつが、このうち右側の偏光子の偏光面と同一角度の偏光成分のみが右側の偏光子を透過する。この偏光子を透過した戻り光の偏光成分はファラデー素子(11)によって45°の回転を受ける。回転を受けた偏光成分は、左側の偏光子の偏光面とは垂直な偏光であるため、左側の偏光子を透過することができない。そのため戻り光が光源に届くことはない。
光通信には、光ファイバーの伝送損失が最も小さい波長1.31μm又は1.55μmの赤外光が利用される。そのため光アイソレータのファラデー素子材料として、この波長域で優れた性能を示すイットリウム鉄ガーネット(YFe12;YIG)、又はイットリウムを他の希土類元素で置き換えた希土類鉄ガーネット(RFe12;RIG)が多用されている。また希土類元素(R)の一部をビスマス(Bi)で置換することで光吸収量を変化させずにファラデー効果を強めることが報告されている。
例えば、特許文献1には、光アイソレータなどの磁気光学素子として使用するガーネット型フェライト多結晶体およびその製造方法に関して、硝酸ビスマス、硝酸鉄、硝酸イットリウムを出発原料とする合成粉体A及びBを製造し、これらの粉体を目標組成BiYFe12になるように調合及び仮焼し、仮焼粉体を成形及び焼成した後に、熱間静水圧プレス処理を施して透光性フェライト多結晶体を作製する旨が記載されている(特許文献1の第3頁右下欄~第4ページ右下欄の実施例1)。また特許文献1には、光透過性も良好で磁気光学特性も良好なガーネット型フェライト単結晶体を得ることができる旨などが記載されている(特許文献1の第7頁)。
特許文献2にはビスマス置換希土類鉄ガーネットの製造法に関して、R3-xBiFe12で表される多結晶焼結体を、Bi固溶限で定まる温度よりも低い温度でホットプレスして得る旨が記載されている(特許文献2の請求項1)。また特許文献2には、ビスマス置換希土類鉄ガーネットR3-xBiFe12は磁気光学素子としての性能指数が著しく大きい材料である旨などが記載されている(特許文献2の第1頁右欄及び第3頁左下欄)。
非特許文献1には、Ce置換したYIG膜をRFスパッタリング法でエピタキシャル成長させたCe置換YIG膜に関して、大きなファラデー角を示す旨が記載されている。
特開平03-164466号公報 特開昭50-003409号公報
M.Gomi, et al., Giant Faraday rotation of Ce-substituted YIG films epitaxially grown by RF sputtering, Jpn. J. Appl. Phys., 27, No.8, pp.1536, 1988
近年、第5世代移動通信(5G)やGE-PONのサービスが開始され、これに伴い、光アイソレータ(OI)の需要が益々増加していくことが予想される。光アイソレータは一般家庭での端末に用いられるケースが多く、その普及のためには、性能のみならずコスト及びサイズが重視される。したがって光アイソレータ及びそれに用いられるファラデー素子において、優れた性能を維持しつつ、コスト低減及び小型化(薄型化)を図ることが重要である。しかしながら従来から提案されているファラデー素子は、ファラデー回転係数(θf)が小さく、小型化及び低コスト化を図る上で限界があった。
この点について説明するに、アイソレータに用いられるファラデー素子は、その機能を発現させるために、これを透過する光の偏光面を45°回転させる必要がある。この回転角(45°)をファラデー回転角(F)と呼ぶ。ファラデー回転角(F)は、下記(1)式に示すように、ファラデー回転係数(θf)と素子厚さ(d)との積で表される。
Figure 2022039006000002
上記(1)式を見て分かるように、必要なファラデー回転角(F=45°)を維持しながら素子厚(d)を小さくするためには、ファラデー回転係数(θf)を高くする必要がある。しかしながら従来から提案される技術は、ファラデー回転係数の高いファラデー素子を安価に作製する上で不十分であった。
例えば、特許文献1や特許文献2で提案されるBi置換YIGやBi置換RIGはファラデー回転係数(θf)が十分に高くなく、素子厚を十分に小さくすることができなかった。また非特許文献1にはCe置換したYIG膜をスパッタリング法で成膜することが提案されているが、このような手法で得られるYIG膜は、その厚さが数μmの薄膜に限定される。したがって膜厚が薄すぎて、必要なファラデー回転角(F=45°)を得ることが困難であった。その上、スパッタリング法は製造コストの点で問題が多く、生産性に劣るという問題があった。さらにCeは偏析係数(平衡分配係数)が小さく、高濃度のCeを含む単結晶を融液から作製することは困難であった。
本発明者は、このような従来の問題点に鑑みて鋭意検討を行った。その結果、ビスマス(Bi)とともにセリウム(Ce)を固溶した特定組成の希土類鉄ガーネット焼結体は、ファラデー回転係数(θf)が大きく、素子の小型化(薄型化)を図る上で有利であるという知見を得た。またこの焼結体は製造コストが低く、素子の低コスト化を実現する上で有利であるという知見を得た。
本発明は、このような知見に基づき完成されたものであり、ファラデー回転係数(θf)の高い希土類鉄ガーネット焼結体、及びこの焼結体を備えたファラデー素子の提供を課題とする。また本発明は、上記焼結体及びファラデー素子を低コストで製造する方法の提供を課題とする。更に、上記ファラデー素子を備えた磁気光学素子の提供を課題とする。
本発明は、下記(1)~(9)の態様を包含する。なお本明細書において「~」なる表現は、その両端の数値を含む。すなわち「X~Y」は「X以上Y以下」と同義である。
(1)化学式:CeBi3-x-yFe12で表される組成(RはCe以外の希土類元素、0<x≦0.4、及び0<y≦1.7)を有する希土類鉄ガーネット焼結体。
(2)前記希土類元素(R)がイットリウム(Y)である、上記(1)の希土類鉄ガーネット焼結体。
(3)前記xが、0.1≦x≦0.3を満足する、上記(1)又は(2)の希土類鉄ガーネット焼結体。
(4)前記yが、0.9≦y≦1.5を満足する、上記(1)~(3)のいずれかの希土類鉄ガーネット焼結体。
(5)前記希土類鉄ガーネット焼結体は、波長1.31μmの光に対する透過率が98%以上である、上記(1)~(4)のいずれかの希土類鉄ガーネット焼結体。
(6)化学式:CeBi3-x-yFe12で表される組成(RはCe以外の希土類元素、0<x≦0.4、及び0<y≦1.7)を有する希土類鉄ガーネット焼結体を製造する方法であって、以下の工程;
原料として、希土類元素(R)源、ビスマス(Bi)源、及び鉄(Fe)源を準備する工程、
前記原料を混合及び反応させて希土類鉄ガーネット粉体を合成する工程、及び
前記希土類鉄ガーネット粉体を焼結して焼結体にする工程
を備える、方法。
(7)前記希土類鉄ガーネット粉体の焼結を放電プラズマ焼結(SPS)法で行う、上記(6)の方法。
(8)上記(1)~(5)のいずれかの希土類鉄ガーネット焼結体を備えるファラデー素子。
(9)上記(8)のファラデー素子を備えた磁気光学素子。
本発明によれば、ファラデー回転係数(θf)の高い希土類鉄ガーネット焼結体、及びこの焼結体を備えたファラデー素子が提供される。また本発明によれば、上記焼結体及びファラデー素子を低コストで製造する方法が提供される。更に、上記ファラデー素子を備えた磁気光学素子が提供される。
光アイソレータの構成を示す概略図である。 光アイソレータの配置態様を示す概略図である。 希土類鉄ガーネット焼結体のX線回折プロファイルの一例を示す。 SPS焼結型の構成を示す断面図である。
[希土類鉄ガーネット焼結体]
本実施形態の希土類鉄ガーネット焼結体(以下、「焼結体」と総称する場合がある)は、化学式:CeBi3-x-yFe12で表される組成を有する。ここでRはCe以外の希土類元素である。またx及びyは、0<x≦0.4、及び0<y≦1.7の関係を満足する。
本実施形態は焼結体を対象にする。単結晶や薄膜とは異なり、焼結体はバルク多結晶体である。バルク多結晶体たる焼結体は、安価な原料から作製することができるとともに大型化が可能である。大型の焼結体は、これから多数の素子を切り出して一括製造できる。そのため、素子1個あたりの製造コストを抑えることができる。さらに焼結体は組成及び形状の自由度が大きい。これに対して単結晶や薄膜は、高価な原料及び製造設備を用いる必要があり、低コストで得ることができない。また基板上に単結晶や薄膜を堆積する場合には、基板の格子定数と整合させる必要があり、組成自由度及び形状自由度が小さいという問題がある。さらにCeは偏析係数が小さく、Ceを高濃度で含む単結晶を融液から作製することは困難という問題もある。
本実施形態の焼結体は、化学式:CeBi3-x-yFe12で表される組成を有する。すなわち希土類元素(R)の一部をセリウム(Ce)及びビスマス(Bi)で置換した希土類鉄ガーネット(RIG)からなる。なお本明細書において、希土類元素は、原子番号21のスカンジウム(Sc)、原子番号39のイットリウム(Y)及び原子番号57のランタン(La)~原子番号71のルテニウム(Lu)の総称を指す。本実施形態の焼結体は、セリウム(Ce)の他に一種のみの希土類元素(R)を含んでもよく、あるいは複数種の希土類元素(R)を組み合わせて含んでもよい。
希土類鉄ガーネット(RIG)はフェライトの一種である。希土類鉄ガーネットにおいて、希土類イオン(R3+)は酸素12面体で囲まれている。また5個の鉄イオン(Fe3+)のうち3個は酸素四面体で囲まれたサイトに入り、残り2つは八面体で囲まれたサイトに入る。四面体配位の鉄イオンと八面体配位の鉄イオンは、酸素イオン(O2-)を介して超交換相互作用によって結合されている。そのため、これらの鉄イオンは磁気モーメント(スピン)が互いに反対方向を向いており、反強磁性的に結合している。四面体配位の鉄イオンは、その数(3個)が八面体配位の鉄イオン(2個)より多いため、残り1個の鉄イオンの磁気モーメントのみが残留し、これが磁性(フェリ磁性)発現の担い手となっている。なお希土類鉄ガーネットは、化学量論組成では(Ce+Bi+R)とFeとのモル比が3:5になるが、本実施形態の焼結体は、厳密な化学量論組成をとる必要はない。すなわちガーネット型結晶構造を維持する限り、化学量論組成からの組成ずれは許容される。
本実施形態の焼結体は、セリウム量(x)が、0<x≦0.4を満足する。希土類元素としてセリウムを用いると、ガーネットの光透過性能を維持したまま磁気光学効果を高めることができる。すなわちビスマス量(y)が同じ条件の下では、セリウム量(x)が多いほどファラデー回転係数(θf)が高くなる。xは0.1以上であってよく、0.2以上であってよく、0.3以上であってもよい。一方でセリウム量が過度に多いと、ガーネット結晶構造が不安定になり、酸化セリウム(CeO)などの異相が生成する恐れがある。このような異相は、その光屈折率がガーネットとは異なっている。そのため光散乱を起こし、焼結体の透明性(光透過率)を損なう恐れがある。xは0.3以下であってよく、0.2以下であってよく、0.1以下であってもよい。
本実施形態の焼結体は、ビスマス量(y)が、0<y≦1.7を満足する。希土類元素をビスマスで置換すると、ガーネットの光透過性能を維持したまま磁気光学効果を高めることができる。すなわちセリウム量(x)が同じ条件の下では、ビスマス量(y)が多いほどファラデー回転係数(θf)が高くなる。これはビスマスの6p軌道のもつ大きなスピン軌道相互作用が混成を通じて酸素の2p軌道に大きなスピン軌道***をもたらし、それに伴い光学遷移が変化するからと考えられている。yは0.9以上であってよく、1.2以上であってよく、1.5以上であってもよい。一方でビスマス量が過度に多いと、ガーネット結晶構造が不安定になる結果、BiFeなどの異相が生成して、透明性(光透過率)を損なう恐れがある。yは1.5以下であってもよい。
焼結体中の希土類元素(R)は、セリウム(Ce)以外であれば、特に限定されない。しかしながら希土類元素(R)が、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)及びイッテルビウム(Yb)からなる群から選択される一種以上が好ましく、イットリウム(Y)が特に好ましい。
好ましくは、焼結体は、波長1.31μmの光に対する透過率が98%以上である。これにより透明性(光透過率)に優れた素子を得ることが可能になる。なお光透過率が98%以上とは、挿入損失が0.1dB未満に相当する。
好ましくは、焼結体は、波長1.31μmの光に対するファラデー回転係数(θf)が1600°/cm以上である。ファラデー回転係数(θf)の大きい焼結体にすることで、素子の小型化を図ることが可能になる。ファラデー回転係数は1900°/cm以上であってよく、2500°/cm以上であってよく、3400°/cm以上であってもよい。ファラデー回転係数は高いほど好ましく、その上限は限定されない。しかしながら典型的には4000°/cm以下である。
本実施形態の焼結体は、ガーネット相以外の他の相の含有を排除するものでない。しかしながら異相の存在は、ガーネット相に基づく有利な効果を損なうことがある。例えば酸化セリウム(CeO)などの異相は、焼結体の透明性(光透過率)を損なう恐れがある。したがって、焼結体が希土類鉄ガーネットの単相のみからなることが好ましい。なお異相の存在は、焼結体をX線回折法で分析し、得られる回折パターンを調べることで評価できる。具体的には、異相に基づく回折ピークが観察されない、あるいはピーク強度がバックグラウンドレベル以下である場合には、異相が存在しないと見なすことができる。また波長1.31μmの光に対する透過率が98%以上(挿入損失が0.1dB未満)であれば、異相が存在しないと見なすことができる。
本実施形態の焼結体は、ガーネット相を構成するセリウム(Ce)、ビスマス(Bi)、希土類元素(R)、鉄(Fe)及び酸素(O)以外の他の元素の含有を排除するものでない。しかしながら他の元素が多量に含まれていると、ガーネット相に基づく有利な効果が損なわれることがある。したがって他の元素の含有量は少ないほど好ましい。焼結体がセリウム(Ce)、ビスマス(Bi)、Ce以外の希土類元素(R)、鉄(Fe)及び酸素(O)を含み、残部不可避不純物からなる組成を有してもよい。不可避不純物とは、原料由来の不純物又は製造工程時に不可避的に混入する不純物であり、その含有量は、典型的には1000ppm以下である。
[希土類鉄ガーネット焼結体の製造方法]
本実施形態の焼結体の製造方法は、焼結体が上述した要件を満足する限り、限定されない。しかしながら好適な製造方法は、以下の工程;原料として、希土類元素(R)源、ビスマス(Bi)源、及び鉄(Fe)源を準備する工程(準備工程)、準備した原料を混合及び反応させて希土類鉄ガーネット粉体を合成する工程(合成工程)、及び合成した希土類鉄ガーネット粉体を焼結して焼結体にする工程(焼結工程)を備える。各工程の詳細について以下に説明する。
<準備工程>
準備工程では、原料として、希土類元素(R)源、ビスマス(Bi)源、及び鉄(Fe)源を準備する。原料は、所望の希土類鉄ガーネット粉体が得られる限り、特に限定されない。例えば、ガーネットの構成元素(Ce、Bi、R及びFe)の酸化物、炭酸塩、水酸化物、硝酸塩、及び/又はアルコキシドなどの化合物を用いることができる。原料は、ガーネット構成元素を単独で含んでもよい。あるいは複合化合物の形態で複数の構成元素を組み合わせて含んでいてもよい。
<合成工程>
合成工程では、準備した原料を混合及び反応させて希土類鉄ガーネット粉体を合成する。合成手法は、所望の希土類鉄ガーネット粉体が得られる限り、限定されない。例えば同時沈殿法、固相反応法、水熱合成法、ゾルゲル法などの手法が挙げられる。
同時沈殿法で合成する場合には、例えば、ガーネット構成元素(Ce、Bi、R及びFe)を含む硝酸塩を原料として準備し、これを水に溶解して水溶液を作製する。得られた水溶液を目標組成が得られるように混合し、混合溶液にアミンを添加して、沈殿物を形成する。得られた沈殿物を濾過して取り出した後に、乾燥及び仮焼して希土類鉄ガーネット粉体を合成する。仮焼は、例えば大気雰囲気中800~1200℃の温度で1~30時間保持する条件で行えばよい。
固相反応法で合成する場合には、例えば、ガーネット構成元素(Ce、Bi、R及びFe)を含む原料(酸化物、炭酸塩、水酸化物等)を準備し、これらの原料を目標組成が得られるように混合する。そして、得られた混合物を仮焼して希土類鉄ガーネット粉体を合成する。原料の混合は、ボールミルなど公知の手法を用いて、湿式及び/又は乾式で行えばよい。仮焼は、例えば大気雰囲気中800~1200℃の温度で1~30時間保持する条件で行えばよい。
<焼結工程>
焼結工程では、準備した希土類鉄ガーネット粉体を焼結して焼結体にする。所望の焼結体が得られる限り、焼結は公知の手法で行えばよい。例えば、常温焼結、ガス圧焼結、ホットプレス(HP)、熱間等方圧プレス(HIP)及び放電プラズマ焼結(SPS)などの手法が挙げられる。また焼結前にガーネット粉体を成形する工程を設けて、得られた成形体を焼結に供してもよい。焼結は、緻密な焼結体が得られる条件で行う。焼結体の緻密化が不十分であると焼結体中に気孔が残り、このような残留気孔は光散乱を起こして光透過率低下の原因になるからである。
前記の通り焼結では公知の手法でおこなうことが可能であるが、その中でも大量生産及び低コスト化という市場要求を満足するためには放電プラズマ焼結(SPS)が好ましい。SPSは通常焼結原料に50MPa超の高圧を一軸加圧し、炭素製の焼結型に直流のパルス電流を流して焼結原料を直接加熱するため、熱的・機械的・電磁エネルギ-が複合的に働き、焼結を活性化させ、他の焼結方法と比較して20~100倍の速さで焼結を完了させるだけでなく、焼結助剤が不要であるため不純物を嫌う透明体の作製に極めて好適であるためである。
SPSの焼結型の構成を示す断面図を図4に示す。シリンダー(21)および上下のパンチ(22)は炭素製である。シリンダー(21)に下側パンチ(22)を挿入し焼結原料(23)を充填し上側パンチ(22)で押さえ込む。これをSPSの焼結装置にセットしパンチ(22)に圧力を掛け、パンチからシリンダーを経てパンチへと通電し、焼結原料に一軸加圧しながら昇温し焼結を進行させる。
SPSの制御すべきパラメ-タは、昇温速度、保持温度(到達温度)、保持時間、加圧力である。昇温速度は50~100℃/分が一般的であり、それよりも遅いとSPSの迅速焼結のメリットが薄れてしまう。保持温度は装置のパンチの変異センサーの表示で収縮(焼結中)から膨張に転じる温度よりも数十度、一般的に50℃程度高い温度とする。収縮から膨張に転じた温度では完全に焼結が完了していないため、それよりも高い温度まで上げるということである。一般的に保持時間は20分程度で焼結は完了する。なお、収縮から膨張に転じる温度が融点に近い場合は、50℃以下で保持温度とし、保持時間を20分よりも長くする。加圧の圧力は高い程粒成長を抑えた緻密な焼結体が得られるが、炭素製焼結型の限界100MPaとするのが一般的である。
特に本実施形態の焼結体を製造する上でSPS法は好適である。すなわちこの焼結体はガーネット相中にセリウム(Ce)とビスマス(Bi)とを含んでいる。このうち、セリウム(Ce)がガーネット中で安定して存在するには、3価イオン(Ce3+)になる必要がある。しかしながら大気中ではセリウム(Ce)は、3価イオン(Ce3+)より4価イオン(Ce4+)の方が安定である。そのため通常の焼結法では4価イオンを含む酸化セリウム(CeO)などの異相が生成し易い。またガーネット中のビスマス(Bi)は高温になるほど固溶限が狭い。一方で、通常の焼結法では、緻密な焼結体を得るために高温焼結を行う必要があり、そのような高温焼結では、高濃度ビスマスをガーネット中に固溶させることは容易ではない。したがってガーネット焼結体を単相の状態で作製することが困難である。
これに対してSPS焼結を行うことで、異相の無い焼結体を得ることができる。その理由の詳細は不明であるが、プラズマ放電により粒子表面が高電子状態に活性化される結果、3価イオン(Ce3+)の状態が維持され易くなり、セリウムが固溶したガーネット構造が安定化されるのではないかと推測している。また低温焼結が可能になるため、緻密で且つ高濃度ビスマスが固溶した焼結体が実現されると考えている。その上、焼結助剤添加の必要が無いため、焼結助剤由来の異相形成の恐れがなくなる。これらが複合的に働くことで、セリウム(Ce)及びビスマス(Bi)が十分に固溶するとともに緻密で異相や空孔が無く、その結果、ファラデー回転係数及び光透過率の高い焼結体を得ることが可能になると考えている。
焼結工程後に、必要に応じて、焼結体に洗浄や加工などの処理を施してもよい。加工は、焼結体の両面に研削加工や研磨加工(ポリッシング)を施す処理が挙げられる。これにより表面が平滑で、表面光散乱の少ない焼結体を得ることができる。
このようにして本実施形態の希土類鉄ガーネット焼結体が作製される。得られた焼結体は、セリウム(Ce)及びビスマス(Bi)の置換が十分に進んでいるため、ファラデー回転係数(θf)が高いという特徴がある。また異相や空孔が少なく、透明性(光透過率)に優れるという効果がある。その上、製造コストが低く且つ大型化可能であるため、素子を安価に得ることが可能である。
<ファラデー素子>
本実施形態のファラデー素子は、上述した希土類鉄ガーネット焼結体を備える。ファラデー素子は、上述した焼結体を備える限り、公知の構成とすればよい。例えば焼結体と、この焼結体の両面に形成した無反射コーティングと、を備える構成にしてもよい。
本実施形態のファラデー素子は、ファラデー回転係数(θf)が高い焼結体を備えるため、素子厚さを小さくすることができる。すなわち素子厚を小さくしても、必要なファラデー回転角(45°)を得ることができる。また光透過率に優れるため光損失が小さい。その上、製造コストの高い単結晶や薄膜を用いる必要がないため、安価でもある。
ファラデー素子は、波長1.31μmの光に対するファラデー回転係数(θf)が1600°/cm以上であってよく、1900°/cm以上であってよく、2500°/cm以上であってよく、3400°/cm以上であってもよい。素子厚は300μm以下であってよく、250μm以下であってよく、200μm以下であってよく、150μm以下であってもよい。ファラデー素子は、波長1.31μmの光に対する透過率が98%以上であってよい。
<磁気光学素子>
本実施形態の磁気光学素子は、上述したファラデー素子を備える。このような磁気光学素子として、光アイソレータが挙げられる。本実施形態のファラデー素子は、優れた特性をもつと同時に素子厚さを小さくすることができる。そのため、このファラデー素子を備えた光アイソレータは、優れた性能を維持しつつ、そのサイズを顕著に小さくすることができる。
このことを図2(a)及び(b)を用いて説明する。図2(a)及び(b)はレーザー光の伝送経路に光アイソレータ(10)が配置された態様の一例を示す概略図である。ただし光アイソレータ(10)の永久磁石(13)は省略している。半導体レーザー(図示せず)から出射したレーザー光はレンズ(14)により絞られて光ファイバー(15)へと結合する。ファラデー素子(11)及び偏光子(12)を備えた光アイソレータ(10)は、レンズ(14)と光ファイバー(15)との間に挿入される。通常、光アイソレータ(10)はレーザー光が最も絞られる位置、すなわち光ファイバー(15)に直接接合する位置に配置される。これにより光アイソレータ(10)のサイズを最小化できるからである。
図2(a)はファラデー素子の厚さが大きい態様を示し、図2(b)は素子厚が小さい態様を示す。ファラデー素子の厚さが大きい場合(図2(a))には、レーザー光の入射面積が大きくなるため、素子面積を大きくする必要がある。一方で素子厚さが小さい場合(図2(b))には、レーザー光の入射面積が小さくなるため、素子厚さのみならず素子面積を小さくすることができる。そのためファラデー素子のサイズを小さくすることができる。またファラデー素子のサイズが小さくなるので、偏光子及び永久磁石を小型化できる。そのため光アイソレータ全体のサイズを著しく小さくすることが可能になる。
本発明を、以下の実施例及び比較例を用いて更に詳細に説明する。しかしながら本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(1)焼結体の作製
[実験例1]
実験例1(例1~例4)では、希土類元素(R)としてイットリウム(Y)を用いて希土類鉄ガーネット粉体を同時沈殿法で合成した。そして、この粉体を用いてプラズマ放電焼結法により焼結体を作製した。
[例1]
<粉体合成工程>
例1ではCe0.1Bi0.92.0Fe12組成の粉体を、以下の手順で合成した。まずセリウム(Ce)、ビスマス(Bi)、イットリウム(Y)及び鉄(Fe)の硝酸溶液を準備した。これらの溶液を表1に示す目標組成(Ce0.1Bi0.92.0Fe12)になるように混合した後、得られた混合溶液にアミンを添加して沈殿物を形成した。次いで、得られた沈殿物を大気中1000℃×10時間の条件で仮焼した。このようにして希土類鉄ガーネット粉体を作製した。
<焼結工程>
得られた希土類鉄ガーネット粉体を焼結原料とし、真空雰囲気下で放電プラズマ焼結法(SPS法)により焼結体を作製した。焼結の際は、室温で100MPaの圧力を焼結原料に加え、加圧した状態で850℃まで100℃/分の速度で昇温し、850℃で10分間保持した後に冷却及び減圧した。これによりφ20×1mmのペレット状の黒色焼結体を作製した。得られた焼結体の両面を研削及びポリッシュして0.3mm厚にした。
次いでポリッシュした焼結体の表面に波長1.31μmの対空気の無反射コーティングを施して、ファラデー素子を作製した。
[例2]
例2ではCe0.2Bi1.21.6Fe12組成の粉体を合成し、この粉体から焼結体を作製した。具体的には、セリウム(Ce)、ビスマス(Bi)、イットリウム(Y)及び鉄(Fe)の硝酸溶液を表1に示す目標組成(Ce0.2Bi1.21.6Fe12)になるように混合して混合溶液を得た。それ以外は例1と同様にして焼結体とファラデー素子を作製した。
[例3]
例3ではCe0.3Bi1.51.2Fe12組成の粉体を合成し、この粉体から焼結体を作製した。具体的には、セリウム(Ce)、ビスマス(Bi)、イットリウム(Y)及び鉄(Fe)の硝酸溶液を表1に示す目標組成(Ce0.3Bi1.51.2Fe12)になるように混合して混合溶液を得た。それ以外は例1と同様にして焼結体とファラデー素子を作製した。
[例4(比較例)]
例4ではBi1.21.8Fe12組成の単結晶を液相エピタキシャル成長(LPE)法で育成し、これをサンプルにした。この組成の単結晶はLPE法で作製したBi-RIG単結晶の中で最もファラデー回転係数(θf)が大きいものである。
[実験例2]
実験例2(例5~例7)では、希土類元素(R)としてイットリウム(Y)を用いて、希土類鉄ガーネット粉体を固相反応法で合成した。そして、この粉体を用いてプラズマ放電焼結法により焼結体を作製した。
[例5]
<粉体合成工程>
例5ではCe0.1Bi0.92.0Fe12組成の粉体を、以下の手順で合成した。まずセリウム(Ce)、ビスマス(Bi)、イットリウム(Y)及び鉄(Fe)の酸化物粉体を準備し、これらの粉体を表2に示す目標組成(Ce0.1Bi0.92.0Fe12)になるように混合した。次いで得られた混合物を大気中1000℃×10時間の条件で固相反応(仮焼)させた。このようにして希土類鉄ガーネット粉体を作製した。
<焼結工程>
得られた希土類鉄ガーネット粉体を焼結原料とし、放電プラズマ焼結法(SPS法)により焼結体を作製した。焼結の条件は例1と同じにした。これによりφ20×1mmのペレット状の黒色焼結体を作製した。得られた焼結体の両面を研削及びポリッシュして0.3mm厚にした。
次いでポリッシュした焼結体表面に波長1.31μmの対空気の無反射コーティングを施して、ファラデー素子を作製した。
[例6]
例6ではCe0.2Bi1.21.6Fe12組成の粉体を合成し、この粉体から焼結体を作製した。具体的には、セリウム(Ce)、ビスマス(Bi)、イットリウム(Y)及び鉄(Fe)の酸化物粉体を表2に示す目標組成(Ce0.2Bi1.21.6Fe12)になるように混合した。それ以外は例5と同様にして焼結体とファラデー素子を作製した。
[例7]
例7ではCe0.3Bi1.51.2Fe12組成の粉体を合成し、この粉体から焼結体を作製した。具体的には、セリウム(Ce)、ビスマス(Bi)、イットリウム(Y)及び鉄(Fe)の酸化物粉体を表2に示す目標組成(Ce0.3Bi1.51.2Fe12)になるように混合した。それ以外は例5と同様にして焼結体とファラデー素子を作製した。
[実験例3]
実験例3(例8及び例9)では、希土類元素(R)としてテルビウム(Tb)又はイッテルビウム(Yb)を用いて、希土類鉄ガーネット粉体を固相反応法で合成した。そして、この粉体を用いてプラズマ放電焼結法により焼結体を作製した。
[例8]
例8ではCe0.2Bi1.2Tb1.6Fe12組成の粉体を合成し、この粉体から焼結体を作製した。具体的には、セリウム(Ce)、ビスマス(Bi)、テルビウム(Tb)及び鉄(Fe)の酸化物粉体を表3に示す目標組成(Ce0.2Bi1.2Tb1.6Fe12)になるように混合した。それ以外は例5と同様にして焼結体とファラデー素子を作製した。
[例9]
例9ではCe0.2Bi1.2Yb1.6Fe12組成の粉体を合成し、この粉体から焼結体を作製した。具体的には、セリウム(Ce)、ビスマス(Bi)、イッテルビウム(Yb)及び鉄(Fe)の酸化物粉体を表3に示す目標組成(Ce0.2Bi1.2Tb1.6Fe12)になるように混合した。それ以外は例5と同様にして焼結体とファラデー素子を作製した。
(2)評価
例1~例9について各種特性の評価を以下のとおりに行った。
<XRD>
合成した粉体の結晶相を、X線回折法(XRD)により調べた。分析条件は以下のとおりにした。
‐装置:X’Part-PRO(PANanalytical)
‐ターゲット:Cu
‐X線出力設定:40mA、45kV
‐入射ビームモジュール:θ-2θスキャン
‐マスク[mm]:固定,15
‐発散スリット[DS°2Th.]:PDS,固定,1/2
‐散乱スリット[DS°2Th.]:PASS,固定,1/2
‐スタートアングル[°2Th.]:10
‐エンドアングル[°2Th.]:120
‐スキャンステップ時間[s]:22
‐フィルター:Nickel
‐検出器:X’Celerator(半導体アレイ検出器)
‐ソラースリット:0.02
‐サンプルスピナー:休止
<組織観察>
焼結体の微細組織を、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。観察は、加速電圧5.0kV、倍率20.0kの条件で行った。
<光透過率・挿入損失>
無反射コーティングを設けた焼結体について、挿入損失(IL)を、磁気光学測定器を用いて測定した。具体的には、焼結体に波長1.31μmのレーザー光を透過させて、入射光パワー(Pin)及び透過光パワー(Pout)を測定した。そして入射光パワー及び透過光パワーを用いて、下記(2)式にしたがって挿入損失(IL)を算出した。
Figure 2022039006000003
また下記(3)式にしたがって光透過率を算出した。
Figure 2022039006000004
<ファラデー回転角>
無反射コーティングを設けた焼結体(ファラデー素子)について、ファラデー回転係数(θf)を求めた。具体的には、焼結体の光進行方向(光学面に対して垂直方向)に3kOe超の磁界を印加して、焼結体を磁気飽和させた。波長1.31μmのレーザー光を光源とし、消光比60dBの偏光子を用いてファラデー回転角(F)を求めた。得られたファラデー回転角と焼結体厚み(d)を用いて、ファラデー回転係数(1cm厚あたりのファラデー回転角;θf)を下記(4)式にしたがって算出した。
Figure 2022039006000005
さらに求めたファラデー回転係数(θf)を用いて、必要とされるファラデー回転角(F=45°)を得るための素子厚さ(必要厚さ)を算出した。
(3)結果
実験例1(例1~例4)で得られた評価結果を下記表1に示す。ここで実験例1の例1~例3は同時沈殿法で粉体を合成した実施例である。また例4は単結晶をLPE法で育成した比較例である。また例1で合成した粉体のX線回折(XRD)プロファイルを、JSPDSカードの標準回折ピーク(01-083-1027)とともに図3に示す。
<XRD>
図3に示すように、XRDプロファイルにおいて、実験例1の粉体にはガーネット相に基づく回折ピークのみが存在し、その他の相のピークは観察されなかった。したがって、この粉体はガーネット単相からなることが分かった。また表1に示すように、他のサンプルについてガーネット単相からなることが分かった。
<組織観察>
組織観察を行ったところ、結晶粒の大きさは比較的均一に揃っており、粒径は200~600nmであった。また焼結体は緻密であり、空孔はほとんど観察されなかった。
<光透過率及びファラデー回転係数>
表1に示されるように、実験例1の焼結体(例1~例3)はいずれも光損失が小さかった。具体的には、挿入損失(IL)が0.1dB未満であり、これは光透過率98%以上に相当した。これらの焼結体は、その透光性が単結晶(例4)と同レベルであった。このことから、焼結体においても異相を含まないことが分かった。
実験例1の焼結体(例1~例3)は、そのファラデー回転係数(θf)が単結晶(例4)より高かった。特に例3の焼結体のθfは単結晶の2倍を超えていた。また例2及び例3の焼結体は、ファラデー回転角45°を得るために必要とされる素子厚さが200μm未満と小さく、小型化の要求を十分に満たしていた。
Figure 2022039006000006
実験例2(例5~例7)について得られた評価結果を下記表2に示す。実験例2の例5~例7は固相反応法で粉体を合成した実施例である。実験例2の焼結体(例5~例7)はいずれも光損失が小さかった。具体的には、挿入損失(IL)が0.1dB未満であり、これは光透過率98%以上に相当した。これらの焼結体は、その透光性が単結晶(例4)と同レベルであった。このことから、焼結体においても異相を含まないことが分かった。
実験例2の焼結体は、そのファラデー回転係数(θf)が単結晶(例4)より高かった。また例5及び例6の焼結体は、ファラデー回転角45°を得るために必要とされる素子厚さが200μm未満と小さく、小型化の要求を十分に満たしていた。
Figure 2022039006000007
実験例3(例8及び例9)について得られた評価結果を下記表3に示す。実験例3の例8及び例9は、希土類元素(R)としてテルビウム(Tb)又はイッテルビウムを用いた実施例である。実験例3の焼結体(例8及び例9)はいずれも光損失が小さかった。具体的には、挿入損失(IL)が0.1dB未満であり、これは光透過率98%以上に相当した。これらの焼結体は、その透光性が単結晶(例4)と同レベルであった。このことから、焼結体においても異相を含まないことが分かった。
実験例3の焼結体は、そのファラデー回転係数(θf)が単結晶(例4)より高かった。また例8及び例9の焼結体は、ファラデー回転角45°を得るために必要とされる素子厚さが200μm未満と小さく、小型化の要求を十分に満たしていた。
Figure 2022039006000008
10 光アイソレータ
11 ファラデー素子
12 偏光子
13 永久磁石
14 レンズ
15 光ファイバー
21 シリンダー
22 パンチ
23 焼結原料

Claims (9)

  1. 化学式:CeBi3-x-yFe12で表される組成(RはCe以外の希土類元素、0<x≦0.4、及び0<y≦1.7)を有する希土類鉄ガーネット焼結体。
  2. 前記希土類元素(R)がイットリウム(Y)である、請求項1に記載の希土類鉄ガーネット焼結体。
  3. 前記xが、0.1≦x≦0.3を満足する、請求項1又は2に記載の希土類鉄ガーネット焼結体。
  4. 前記yが、0.9≦y≦1.5を満足する、請求項1~3のいずれか一項に記載の希土類鉄ガーネット焼結体。
  5. 前記希土類鉄ガーネット焼結体は、波長1.31μmの光に対する透過率が98%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の希土類鉄ガーネット焼結体。
  6. 化学式:CeBi3-x-yFe12で表される組成(RはCe以外の希土類元素、0<x≦0.4、及び0<y≦1.7)を有する希土類鉄ガーネット焼結体を製造する方法であって、以下の工程;
    原料として、希土類元素(R)源、ビスマス(Bi)源、及び鉄(Fe)源を準備する工程、
    前記原料を混合及び反応させて希土類鉄ガーネット粉体を合成する工程、及び
    前記希土類鉄ガーネット粉体を焼結して焼結体にする工程
    を備える、方法。
  7. 前記希土類鉄ガーネット粉体の焼結を放電プラズマ焼結(SPS)法で行う、請求項6に記載の方法。
  8. 請求項1~5のいずれか一項に記載の希土類鉄ガーネット焼結体を備えるファラデー素子。
  9. 請求項8に記載のファラデー素子を備えた磁気光学素子。
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