JP2022031193A - ポリエステルフィルム - Google Patents

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Atsushi Shiomi
亘 合田
Wataru Goda
龍太郎 鎌田
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Abstract

【課題】耐屈曲性および平面性に優れたポリエステルフィルムを提供する。【解決手段】ヤング率が最も大きくなる方向(a方向)におけるヤング率が2.8GPa以上であり、前記a方向および前記a方向と直交する方向(b方向)の伸長吸収パラメーターがいずれも0.7以上1.5以下であるポリエステルフィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエステルフィルムに関する。
近年、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode)と呼ばれる自発光体を用いた画像表示装置(以下、「有機エレクトロルミネッセンス表示装置」という。)の実用化が進んでいる。この有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、従来の液晶表示装置と比較して、自発光体を用いているため、視認性、応答速度の点で優れているだけでなく、バックライトのような補助照明装置を要しないため、表示装置としての薄膜化、フレキシブル化が可能となっている。このため、折り畳みや巻き取ることが可能なフレキシブルディスプレイの開発が加速しており、表示装置表面の傷付きを防止するカバーフィルムについても耐屈曲性が求められている。
例えば、画像表示装置向けに、耐傷性を向上させる手法として、ポリエステルフィルムを含む基材の両面にハードコート層を積層したハードコートフィルムが提案されている(特許文献1)。また、フレキシブルディスプレイ向けに、ポリエステルフィルムを含む可撓性を有する透明樹脂フィルムの少なくとも一方の面に反射防止層が設けられた反射防止フィルムが提案されている(特許文献2)。
特開2015-61750号公報 特開2016-75869号公報
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の画像表示装置向けに使用されるフィルムは、ハードコート層、反射防止層に特徴があり、基材となるフィルムは耐屈曲性が考慮されておらず、フレキシブルディスプレイ用への適用は困難であった。また、フィルムの耐屈曲性を改善するためにフィルムを柔軟化していくと、耐傷付き性層として、フィルムにハードコート層等の硬化性樹脂層を塗布した際の平面性が悪化していく新たな問題が生じることがわかった。
そこで本発明の課題は、上記した問題点を解消することにあり、耐屈曲性と平面性を両立できるポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明のポリエステルフィルムは、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
(1)ヤング率が最も大きくなる方向(a方向)におけるヤング率が2.8GPa以上であり、前記a方向および前記a方向と直交する方向(b方向)の伸長吸収パラメーターがいずれも0.7以上1.5以下であること。
(2)熱収縮率曲線から得られる熱収縮開始温度が前記a方向と前記b方向のいずれにおいても65℃以上120℃以下であること。
(3)以下の測定方法により求められる曲げヒステリシス2HBが、a方向およびb方向共に0.04gf・cm/cm以上0.10gf・cm/cm以下であること。
[曲げヒステリシス2HBの測定方法]
カトーテック社製多目的折り曲げ試験機(KES-FB2)を用い、以下の条件にて、a方向およびb方向についてそれぞれ曲げヒステリシス2HB測定を行う。なお、曲げヒステリシス2HBは、曲率-2.5~+2.5cm-1を1サイクルとして、5サイクル目(繰り返し数5回)に得られた値とする。
繰り返し数:5回(採用データ5サイクル目)
SENS:2×5
曲率:-2.5~+2.5cm-1
変形速度:0.50cm-1/sec
サンプルサイズ:a方向×b方向=20cm×20cm
(4)以下の測定方法により求められる曲げ硬さが、a方向およびb方向共に0.06gf・cm/cm以上0.12gf・cm/cm以下であること。
[曲げ硬さの測定方法]
カトーテック社製多目的折り曲げ試験機(KES-FB2)を用い、以下の条件にて、a方向およびb方向についてそれぞれ曲げ硬さ測定を行う。なお、曲げ硬さは、曲率-2.5~+2.5cm-1を1サイクルとして、5サイクル目(繰り返し数5回)に得られた値とする。
繰り返し数:5回(採用データ5サイクル目)
SENS:2×5
曲率:-2.5~+2.5cm-1
変形速度:0.50cm-1/sec
サンプルサイズ:a方向×b方向=20cm×20cm
(5)重量平均分子量Mwが20000以上50000以下であること。
(6)前記a方向の屈曲破断回数が20万回以上100万回以下であること。
(7)フィルム厚みが5μm以上30μm以下であること。
(8)少なくとも一方の表面の静摩擦係数が0.2以上0.5以下であること。
(9)少なくとも一方の表面の表面比抵抗値が1×1012Ω/□以下であること。
(10)フレキシブルディスプレイに用いられること。
本発明によれば、ヤング率と伸長吸収パラメーターを特定範囲に制御することにより、耐屈曲性と平面性を両立できるポリエステルフィルムを提供できる。かかるポリエステルフィルムは、例えば有機エレクトロルミネッセンス表示装置等のフレキシブルディスプレイ用カバーフィルムとして特に好適に使用することができる。
耐巻き取り性評価を表す概略図である。
以下に、本発明に係るポリエステルフィルムについて、実施の形態とともに詳細に説明する。
本発明のポリエステルフィルムの好ましい一態様は、ヤング率が最も大きくなる方向(a方向)におけるヤング率が2.8GPa以上である。ヤング率はフィルムの剛性を示しており、フィルムにハードコート等の硬化性樹脂を塗布した際の平面性を維持する指標である。a方向のヤング率が2.8GPa以上であることでハードコート等の硬化性樹脂を塗布した際の平面性を維持することが可能となる。a方向のヤング率が2.8GPa未満であるとハードコートした際の平面性に劣ることがある。耐屈曲性の観点からa方向のヤング率は5.5GPa未満であることが好ましい。また、平面性の観点からa方向の直交方向であるb方向のヤング率が2.8GPa以上であることが好ましい。また、平面性の観点からb方向のヤング率は3.5GPa以上であることが好ましく、3.8GPa以上であることが最も好ましい。また、上限としては特に限られるものではないがb方向のヤング率は10.0GPa以下であることが好ましい。a方向のヤング率を2.8GPa以上とするにはポリエステルとしてポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートのいずれかを主体とする樹脂を用いることが好ましい。ここで主体とは、各ポリエステル構成単位が75モル%以上のことを指し、ヤング率を上昇させる観点からホモポリエステルであることが最も好ましい。尚、製膜条件としては上記樹脂を使用した上で3.5倍以上に延伸することで制御可能である。延伸方向にフィルムが配向することによりヤング率が上昇するため、最も大きく延伸した方向がa方向となる。例えば、ある方向(一軸方向)と、それに直交する方向の延伸倍率をそれぞれ3.5倍以上として、面積倍率12.25倍以上とすれば、a方向、b方向共にヤング率を2.8GPa以上とすることができる。尚、延伸倍率を上昇させることでヤング率は向上していくため、必要な機能に応じて適宜調整すれば良いが、延伸倍率を上げ過ぎると製膜時に破断する場合があるので、延伸倍率は好ましくは4.0倍以下、面積倍率は16.0倍以下が好ましい。なお、本発明のポリエステルフィルムを、巻き取り型フレキシブルディスプレイに用いる場合は、a方向を巻き取り方向となるように用いると、繰り返し巻き取り時の耐屈曲性に優れる点を活かして長期耐久性が良好となるため好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、二軸配向ポリエステルフィルムであることが好ましい。二軸配向ポリエステルフィルムとするには、後述の方法で二軸方向に延伸することが挙げられる。
本発明のポリエステルフィルムの好ましい一態様は前記a方向および前記a方向と直交する方向(b方向)の伸長吸収パラメーターがいずれも0.7以上1.5以下である。ここで伸長吸収パラメーターとは実施例に記載の評価方法(9)伸長吸収パラメーターにて得られる数値を指し、フィルムが伸長した際に、伸長方向との直交方向がどれだけ縮みやすいかを示す指標であり、JIS規格Z254:2008に記載の薄板金属材料の組成ひずみ比試験方法から得られるr値から着想し見出したものである。フレキシブルディスプレイでは、折り曲げや巻き取りといった繰り返し巻き取り、折り曲げ負荷が想定され、この負荷を如何に吸収するかが重要である。本発明者らは、伸長吸収パラメーターは、こういった繰り返し折り曲げや巻き取りにといった負荷を吸収する指標として伸長吸収パラメーターに着目し、本発明の範囲に制御することによって繰り返し巻き取り等の耐屈曲性に優れることを見出した。伸長吸収パラメーターはその値が大きい程好ましく、0.8以上であることが好ましい。また、1.0以上であることが好ましく、1.2以上であることがさらに好ましい。伸長吸収パラメーターが0.7未満であると耐屈曲性に劣ることがある。また、伸長吸収パラメーターはポリエステルフィルムを用いた場合1.5を超えるのは困難である。
前記a方向および前記a方向と直交する方向(b方向)伸長吸収パラメーターを0.7以上1.5以下とするためには、フィルムバルク構造を緻密に形成し、分子鎖絡み合いにより屈曲といった外力吸収効果を高めることが重要であると推定され、本方針に基づきフィルムの製膜条件((1)段階延伸、(2)フィルム二軸延伸後の50℃以下までの冷却)、面配向係数、フィルムの固有粘度、微小吸熱温度ピークTmetaにより制御することができる。以下に詳細に説明する。
まず、フィルムの二軸延伸条件としては、緻密な分子構造を形成する上で各軸の延伸方向に段階延伸(例えば3段階以上に分けて延伸)することが重要である。例えば、一軸目の延伸を3段階にて実施する場合において、3段階の延伸倍率を順にMD1、MD2、MD3としたとき、以下のように延伸倍率を設定することが緻密なバルク構造を取るために重要である。
MD1:1.03倍以上、1.8倍以下である。
MD2:1.05倍以上、1.12倍以下である。
MD3:3.0倍以上であり、かつ、一軸目のトータル延伸倍率(MD1×MD2×MD3)に占めるMD3が80%以上である。
一軸目のトータル延伸倍率:3.5倍以上である。
また、二軸目の延伸を3段階にて実施する場合において、3段階の延伸倍率を順にTD1、TD2、TD3としたとき、以下のように延伸倍率を設定することが緻密なバルク構造を取るために重要である。
TD1:1.5倍以上、2.2倍以下である。
TD2:1.3倍以上、1.8倍以下である。
TD3:1.2倍以上、1.5倍以下である。
二軸目のトータル延伸倍率(TD1×TD2×TD3):3.5倍以上である。
また、伸長吸収パラメーターは、面配向係数を高くすると正の値を示す範囲においては大きくなる傾向にあり、面配向係数は0.164以上であることが好ましい。面配向係数を大きくするほど伸長吸収パラメーターを高める点では有利であるが、寸法安定性を悪化させることがあるため、適宜必要な熱特性に応じて調整すればよい。ただし、微小吸熱温度ピークTmetaが200℃を超える範囲に観測される場合は面配向係数を制御しても、伸長吸収パラメーターを0.7以上1.5以下とすることは困難である。また、面配向係数は延伸倍率で制御可能であり、延伸倍率を上昇させることで大きくすることが可能である。前記a方向および前記a方向と直交する方向(b方向)の伸長吸収パラメーターを0.8以上とするには少なくとも面配向係数を0.166以上とすることが重要である。上限は特にないが、面配向係数が0.17を超えると延伸した際に破れなどが頻発し、生産性に劣ることがある。
本発明では、フィルムを二軸延伸した後に50℃以下まで冷却する工程を経た後、熱処理工程を有することが重要である。従来のポリエステルフィルムの製造方法では、生産性や熱効率的に逐次二軸延伸、および同時二軸延伸した後に、50℃以下まで冷却することなく、そのまま熱処理工程で熱処理を施すが、フィルムバルク構造を緻密に形成し、分子鎖絡み合いを増長させるためには、二軸延伸した後に一度50℃以下まで冷却することが重要である。詳しいメカニズムは不明であるが、二軸延伸によって形成した結晶構造を50℃以下で安定させた後に熱処理を行うことでフィルムバルク構造が緻密になり、これにより伸長吸収パラメーターを0.7以上1.5以下に制御しやすくなっているものと推定される。従って、二軸延伸後に50℃以下まで冷却せずに、熱処理を行った場合は、伸長吸収パラメーターを0.7以上1.5以下に制御できないことがある。二軸延伸した後に35℃以下まで冷却する工程を経た後、熱処理工程を有することがより好ましい。
本発明では、フィルムの固有粘度を高くすると伸長吸収パラメーターは大きくなる傾向にある。他の要件とあわせて制御することで伸長吸収パラメーターを好適な範囲にすることができるが、フィルムの固有粘度は好ましくは0.66dl/g以上1.15dl/g以下である。なお、固有粘度を高くするとフィルムを製膜する押出過程において濾圧が高くなる傾向にあり量産性が低下することがある。フィルムの固有粘度は使用する樹脂の固有粘度で調整可能である。上限は特に無いが、フィルムを製膜する押出過程において濾圧が高くなり吐出量を下げる必要が生じるため、量産性が低下することがある。フィルムの固有粘度は使用する樹脂の固有粘度で調整可能である。
本発明においては上記の通り、微小吸熱温度ピークTmetaを200℃未満とする、または有さないようにすることが伸長吸収パラメーターを0.7以上1.5以下とする上で重要である。固有粘度や製膜延伸条件を本発明の好ましい範囲とした上で、伸長吸収パラメーターを0.8以上とするには、Tmetaを195℃未満とすることが重要であり、伸長吸収パラメーターを1.0以上とするには、Tmetaを185℃未満とすることが重要であり、伸長吸収パラメーターを1.2以上とするにはTmetaを175℃未満とすることが重要である。微小吸熱温度ピークTmetaを200℃未満とするためにはフィルム製造工程における最大熱履歴温度(通常、熱処理温度を指す)を200℃以下とすることで制御可能である。
本発明のポリエステルフィルムは、乾燥耐熱性の観点から熱収縮率曲線から得られる熱収縮開始温度がa方向とb方向のいずれにおいても65℃以上120℃以下であることが好ましい。本範囲に制御するためには、a方向におけるヤング率を2.8GPa以上となるよう調整したうえで、Tmetaが180℃以上となるように熱処理することで制御することができる。また、より好ましくは熱収縮開始温度がa方向とb方向のいずれにおいても70℃以上100℃以下である。本範囲に制御するためには、二軸延伸する際の一軸目の延伸温度ED1が樹脂のガラス転移温度Tgよりも10℃以上高温とした上、二軸目の延伸温度ED2が以下の下記式を満たし、かつTmetaが180℃以上となるように熱処理することで制御することができる。
|ED1-ED2|≦5℃
なお、段階延伸する場合、ED1およびED2は各延伸段階におけるTD1、TD2の温度を指す。
本発明のポリエステルフィルムは、a方向およびb方向の曲げヒステリシス2HBが共に0.04gf・cm/cm以上0.10gf・cm/cm以下であることが好ましい。曲げヒステリシス2HBが上記範囲であることによって、動的耐屈曲性に優れる。ここで曲げヒステリシス2HBとは後述する測定方法により求められる値であり、曲げ反発性を示す指標である。曲げヒステリシス2HBが0.10gf・cm/cmを超えると動的屈曲性が悪化し、0.04gf/cm/cm未満であると、硬化性樹脂層を設けた際の平面性に劣ることがある。

動的屈曲試験を実施した際にフィルムにかかる応力は、フィルム折り曲げ内側は圧縮、折り曲げ外側は引っ張りであり、屈曲に対する耐性を得るにはフィルム面方向、厚み方向いずれの方向にかかる応力に対する耐性を持つことが重要である。曲げヒステリシス2HBを0.10gf・cm/cm以下に制御するにあたり、例えばポリエステルフィルムを用い、面配向を高くさせた場合、面方向に対する耐性、すなわち動的屈曲における折り曲げ外側の引っ張りに対する耐性は得られるものの、厚み方向屈折率の低下を伴ってしまうため、折り曲げ内側の圧縮に対する耐性が得られず、曲げヒステリシス2HBを0.10gf・cm/cm以下にできないことがある。このため、曲げヒステリシス2HBを0.10gf・cm/cm以下とするには、厚み方向屈折率を1.46以上とすることが好ましい。また、面方向に対する折り曲げ耐性を得る点から、面方向の配向度を示す、a方向とb方向の平均屈折率から厚み方向屈折率を差し引いた面配向係数を0.166以上0.17以下に制御することが好ましい。
フィルムの面方向、厚み方向の屈折率および面配向係数は製膜条件における延伸温度や、面積延伸倍率、延伸後の熱処理温度の他、樹脂の結晶性によって調整可能であり、例えば、ポリエステルフィルムの逐次二軸延伸を採用する製造方法において厚み方向屈折率を1.46以上とするには長手方向の延伸温度を樹脂のガラス転移温度以上、ガラス転移温度+20℃以下とし、幅方向の延伸温度を樹脂のガラス転移温度+20℃以上、ガラス転移温度+60℃以下として、面積延伸倍率を10倍以上16倍以下とする方法が挙げられる。また、結晶性が高いものほど、延伸後の厚み方向屈折率は小さくなる傾向であり、樹脂の結晶性は、例えば共重合成分の導入によって制御可能である。ポリエステルの中でもポリエチレンテレフタレートを用いた場合を例に挙げると、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸やシクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどを共重合することによって結晶性を低下させることができる。
本発明のポリエステルフィルムは、ハードコート層等の硬化性樹脂層を塗布した際の平面性維持の観点から、後述する測定方法により求められるa方向およびb方向の曲げ硬さが共に0.06gf・cm/cm以上0.12gf・cm/cm以下であることが好ましい。より好ましくはa方向およびb方向の曲げ硬さが共に0.08gf・cm/cm以上0.12gf・cm/cm以下である。曲げ硬さはフィルムの厚みを厚くすると、またフィルムの配向を強くすると高くなる傾向にある。その他の必要な特性に応じて厚みとフィルムの配向を調整することにより、曲げ硬さを上記範囲に制御することができる。
本発明のポリエステルフィルムは、ハンドリング性、耐傷性、耐屈曲性、硬化性樹脂を塗布した際の平面性の観点より、フィルム厚みは5μm以上30μm以下であることが好ましく、9μm以上28μm以下であればさらに好ましく、12μm以上26μm以下であれば最も好ましい。また、厚み30μmを超えると曲げヒステリシス2HBは、素材によらず非常に高くなる傾向があるため、30μm以下であることが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステルを主たる構成成分とする。ポリエステルを与える、グリコールあるいはその誘導体としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどの脂環族ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族ジヒドロキシ化合物、並びに、それらの誘導体が挙げられる。
また、本発明に用いるポリエステルを与えるジカルボン酸あるいはその誘導体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、パラオキシ安息香酸などのオキシカルボン酸、並びに、それらの誘導体を挙げることができる。ジカルボン酸の誘導体としてはたとえばテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸2-ヒドロキシエチルメチルエステル、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、ダイマー酸ジメチルなどのエステル化物を挙げることができる。
本発明におけるポリエステルの組成としては、グリコール単位の80モル%以上がエチレングリコール由来の構造単位であることが好ましく、さらに好ましくは85モル%以上であり、90モル%以上であれば最も好ましい。また、ジカルボン酸単位の80モル%以上がテレフタル酸由来の構造単位であることが好ましく、85モル%以上であればさらに好ましく、90モル%以上であれば最も好ましい。また、単一樹脂ではなく、他のポリエステル樹脂を混合しても構わない。例えば、ポリブチレンテレフタレートを混合するとヤング率を低下させることができ、ポリエチレンナフタレートを添加するとヤング率は上昇する傾向となる。適宜、必要な特性に応じて混合することができる。
本発明のポリエステルフィルムは、重量平均分子量Mwが20000以上50000以下であることが好ましく、20000以上27500以下であることがより好ましい。重量平均分子量が当該範囲であることによって、前述の通り、分子鎖の絡み合い増加によって、同じ製膜条件で得られフィルムに比べて伸長吸収パラメーターを本願範囲に制御しやすくなる。重量平均分子量Mwを20000以上50000以下とする方法は特に限られるものではない。例えば、原料として用いるポリエステルの固有粘度が高いほど重量平均分子量Mwは高くなる傾向にあり、溶融押出温度を樹脂の融点よりも高くすると重量平均分子量Mwは低くなる傾向にあり、押出機に投入されて口金からブリードされるまでの滞留時間を長くすると重量平均分子量Mwは低くなる傾向にあるので、各条件を制御することで好ましい重量平均分子量Mwとすることができる。なお、ポリエステルには固有粘度が0.70以上の樹脂を使用した上で、押出温度を樹脂の融点+40℃以下に制御し、押出機に投入されて口金からブリードされるまでの滞留時間を10分以下とする方法が好適な方法として挙げられる。重量平均分子量Mwを高くする観点から固有粘度が0.80以上の樹脂を使用することがより好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、前記a方向の屈曲破断回数が20万回以上100万回以下であることが好ましい。耐屈曲破断回数が本範囲であることによって繰り返し耐屈曲性が向上する。そのため、a方向を巻き取り方向となるように用いた巻き取り型フレキシブルディスプレイは、繰り返し巻き取り時の耐屈曲性に優れる点を活かして長期耐久性が良好となるため好ましい。フィルムの面配向係数を0.165以上0.170以下とすることで制御可能である。
本発明のポリエステルフィルムは、巻き取り型ディスプレイなど、巻き取りを想定した際に傷付き防止などの観点から少なくとも一方の表面の静摩擦係数が0.2以上0.5以下であることが好ましい。静摩擦係数はフィルムに粒子など含有させることで制御可能である。粒子としては、例えば、平均粒径0.005μm以上10μm以下の無機粒子、および/または有機粒子を0.01質量%以上含有する層を少なくとも一方の表層に有することが好ましい。ディスプレイの透明性の観点から粒子含有量は3.0質量%以下であることが好ましい。無機粒子としては、例えば、湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミ、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミ、マイカ、カオリン、クレーなどを使用することができる。また、有機粒子としては、スチレン、シリコーン、アクリル酸類、メタクリル酸類、ポリエステル類、ジビニル化合物などを構成成分とする粒子を使用することができる。なかでも、湿式および乾式シリカ、アルミナ、炭酸カルシウムなどの無機粒子およびスチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼンなどを構成成分とする粒子を使用することが好ましい。さらに、これらの無機粒子および有機粒子は二種以上を併用してもよい。静摩擦係数が0.2未満であるとフィルムが滑りやすくなりハンドリング性に劣ることがある。一方、静摩擦係数が0.5を超えるとローラブルディスプレイ等想定した巻き取り時、表面に傷が付きやすくなることがある。
本発明のポリエステルフィルムは、少なくとも一方の表面の表面比抵抗値が1×1012Ω/□以下であることが好ましい。特に好ましくは0.01×1012(Ω/□)以上1×1012(Ω/□)以下である。表面比抵抗が本範囲であることによって塵埃の付着防止、帯電に起因した製品同士の密着、静電気放電により精密な電子回路材料素子などの破壊といった静電気障害を防止することが可能となる。表面比抵抗が1×1012(Ω/□)を超える場合、フィルムに静電気が生じやすく、本発明のフィルムの表面に他の層を積層する工程中で異物が付着しやすく、欠点となることがある。0.01×1012(Ω/□)を下回る場合、フィルムが導通する場合があるため好ましくないことがある。表面比抵抗を本範囲に制御するためには表面にコロナ処理をする、少なくとも片面に表面自由エネルギーが38mN/m以上である易接着樹脂層を積層することで制御可能である。
本発明のポリエステルフィルムの好ましい使用態様としては、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に硬化性樹脂を含有する層を有する積層シートが挙げられる。本発明のポリエステルフィルムの少なくとも片面に硬化性樹脂を含有する層を有する積層シートとすることで、該硬化性樹脂層側からの衝撃に対する傷付き抑制効果を高めることが可能となるため、有機エレクトロルミネッセンス表示装置用途に好適に用いることができる。
ここで、硬化性樹脂とは、熱や光を照射することで架橋構造を形成し、硬化する樹脂を指す。硬化性樹脂としては特に限定されないが、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂であることが好ましく、具体的には、有機シリコーン系、ポリオール系、メラミン系、エポキシ系、多官能アクリレート系、ウレタン系、イソシアネート系、有機材料と無機材料の複合材料である有機無機ハイブリット系および硬化性のある官能基を有するシルセスキオキサン系などの樹脂が挙げられる。より好ましくは、エポキシ系、多官能アクリレート系、有機無機ハイブリット系、シルセスキオキサン系の樹脂である。更に好ましくは、多官能アクリレート系、有機無機ハイブリット系、シルセスキオキサン系の樹脂である。
硬化性樹脂として用いる多官能アクリレート系、シルセスキオキサン系樹脂については、多官能アクリレートモノマー、オリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマー、アルコキシシラン、アルコキシシラン加水分解物、アルコキシシランオリゴマー、などが好ましい。多官能アクリレートモノマーの例としては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレート及びその変性ポリマー、具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリアクリレートヘキサンメチレンジイソシアネートウレタンポリマーなどを用いることができる。これらの単量体は1種類または2種類以上を混合して使用することができる。
また、本発明において、硬化性樹脂を含有する層には、1種類以上の粒子を含むことが好ましい。ここで、粒子とは無機粒子と有機粒子のどちらでもよいが、表面硬度向上には無機粒子を含有させる方が好ましい。無機粒子は特に限定されないが、金属や半金属の酸化物、珪素化物、窒化物、ホウ素化物、塩化物、炭酸塩などが挙げられる。具体的には、シリカ(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化アンチモン(Sb)及びインジウムスズ酸化物(In+SnO)からなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子が好ましい。また、表面硬度を向上させる目的で粒子を導入する場合、その粒子径は1nm以上300nm以下であることが好ましい。表面硬度と耐折り曲げ性をより高いレベルで両立する点で、粒子径は、より好ましくは50nm以上200nm以下であり、更に好ましくは100nm以上150nm以下である。ここでいう粒子径とは数平均粒径のことを示し、フィルムの断面内において観察される粒子径を意味する。形状が真円でない場合には同面積の真円に変換した値を粒子径とする。ここで、数平均粒径Dnは次の(1)~(4)の手順により求めることができる。
(1)まず、ミクロトームを用いて、フィルム断面を厚み方向に潰すことなく切断し、走査型電子顕微鏡を用いて、拡大観察画像を得る。このとき、切断はフィルムa方向と平行方向になるよう行なう。
(2)次いで、該画像中の断面内に観察される各粒子について、その断面積Sを求め、次式にて粒径dを求める。
d=2×(S/π)1/2
(3)得られた粒子径dと、樹脂粒子の個数nを用いて、次式によりDnを求める。
Dn=Σd/n
但し、Σdは観察面内における粒子の粒径の総和、nは観察面内の粒子の総数。
(4)上記(1)~(3)を、5箇所場所を変えて実施し、その平均値を粒子の数平均粒径とする。なお、観察点1箇所に付き、2500μm以上の領域にて上記評価を実施する。
更に、硬化性樹脂と粒子の含有率は、質量比で、粒子/樹脂=20/80~80/20であることが好ましい。粒子/樹脂=20/80未満の場合、表面硬度が不足することがあり、80/20を超えると耐屈曲性が低下することがある。表面硬度と耐屈曲性がより高いレベルで両立することから、粒子/樹脂の質量比は30/70~70/30であることがより好ましく、40/60~60/40であることが更に好ましい。
次に本発明のポリエステルフィルムの具体的な製造方法の例について記載する。ここではフィルムを構成する樹脂としてポリエチレンテレフタレートを用いて例示するが、本発明はかかる例に限定して解釈されるものではない。
まず、フィルムに用いられる樹脂として、固有粘度が0.85gl/dであるポリエチレンテレフタレート樹脂を乾燥、予備結晶化させた後、単軸押出機に供給し、溶融押出する。この際、樹脂温度は265~290℃に制御することが好ましい。次いで、フィルターやギヤポンプを通じて、異物の除去、押出量の均整化を各々行い、Tダイより冷却ドラム上にシート状に吐出する。その際、高電圧を掛けた電極を使用して静電気で冷却ドラムと樹脂を密着させる静電印加法、キャスティングドラムと押出したポリマーシート間に水膜を設けるキャスト法、キャスティングドラム温度をポリエステル樹脂のガラス転移点~(ガラス転移点-20℃)にして押出したポリマーを粘着させる方法、もしくは、これらの方法を複数組み合わせた方法により、シート状ポリマーをキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸フィルムを得る。これらのキャスト法の中でも、ポリエステルを使用する場合は、生産性や平面性の観点から、静電印加する方法が好ましく使用される。
キャスト工程で得られた未延伸フィルムを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法により、または、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などにより延伸を行うことで得ることができる。かかるフィルムの二軸延伸方法としては、例えば、各軸の延伸方向に多段階に分けて延伸することが緻密な分子構造を形成する上で重要である。例えば、一軸目の延伸を3段階にて実施する場合において、3段階の延伸倍率を順にMD1、MD2、MD3としたとき、以下のように倍率を設定することが緻密なバルク構造を取るために重要である。
MD1:1.03倍以上、1.8倍以下である。
MD2:1.05倍以上、1.12倍以下である。
MD3:3.0倍以上であり、かつ、一軸目のトータル延伸倍率(MD1×MD2×MD3)に占めるMD3が80%以上である。
一軸目のトータル延伸倍率:3.5倍以上である。
また、二軸目の延伸を3段階にて実施する場合において、3段階の延伸倍率を順にTD1、TD2、TD3としたとき、それぞれ以下のように倍率を設定することが緻密なバルク構造を取るために重要である。
TD1:1.5倍以上、2.2倍以下である。
TD2:1.3倍以上、1.8倍以下である。
TD3:1.2倍以上、1.5倍以下である。
二軸目のトータル延伸倍率(TD1×TD2×TD3):3.5倍以上である。
本発明ではヤング率を2.8GPa以上とする観点、厚みムラの観点から、それぞれの方向に3.5倍以上に延伸することが好ましく、面配向係数を0.165以上0.17以下とする場合には面積延伸倍率を12.25倍以上16倍以下とすることが好ましい。また、延伸温度は、延伸ムラが生じない程度とすることが好ましく、更に厚み方向屈折率を1.46以上とする観点から、例えば、長手方向に延伸した後に、幅方向に延伸する逐次二軸延伸方法を採用する場合は、長手方向の予熱温度は樹脂のガラス転移温度-20℃以上ガラス転移温度+0℃以下、延伸温度は樹脂のガラス転移温度以上ガラス転移温度+30℃以下とすることが好ましく、幅方向の予熱温度は樹脂のガラス転移温度-10℃以上ガラス転移温度+20℃以下、延伸温度は樹脂のガラス転移温度以上ガラス転移温度+60℃以下とすることが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、二軸延伸後に、フィルムの熱処理を行うことが好ましい。熱処理はオーブン中、加熱したロール上など従来公知の任意の方法により行うことができる。ただし、前述の通り本発明では、フィルムバルク構造を緻密に形成し、分子鎖絡み合いを増長させるためには、熱処理をする前に二軸延伸した後に一度50℃以下まで冷却することが重要である。二軸延伸後、50℃以下まで冷却した後は、前述の通り、微小吸熱温度ピークTmetaを200℃未満とすることを前提に熱処理をしても構わない。熱処理することで寸法安定性を向上させることができる。微小吸熱温度ピークTmetaを200℃未満とするには熱処理温度を200℃以下とすればよい。尚、熱処理は複数のゾーンに分けて段階的に昇温・降温する方法や、熱処理工程で幅方向に1.01倍~1.2倍程度に微延伸する方法も用いることができる。また、熱処理時間は特性を悪化させない範囲において任意とすることができ、好ましくは10~60秒間、より好ましくは15~30秒間行うのがよい。さらに、熱処理はフィルムを長手方向および/または幅方向に弛緩させて行ってもよい。
また、本発明のポリエステルフィルムは、硬化性樹脂を含有する層を積層する場合は、当該層との密着性の観点から、表面にコロナ処理をする、または少なくとも片面に厚みが10nm以上500nm以下であり、表面自由エネルギーが38mN/m以上である易接着樹脂層を積層することが好ましい。該易接着樹脂層の形成方法としては、易接着樹脂をフィルム表面に被覆(複合溶融押出法、ホットメルトコート法、水以外の溶媒、水溶性および/または水分散性樹脂からのインライン、オフラインコート法など)する方法や、同様組成あるいはそのブレンド品の表面積層法などが挙げられる。なかでも、配向結晶化が完了する前のフィルムの一方の面に被膜塗剤を塗布し、少なくとも一方向に延伸し、熱処理して、配向結晶化を完了させるインラインコーティング法が均一な被膜形成や工業上好ましい。また、コーティングにより易接着樹脂層を設ける場合、易接着樹脂層を付与する樹脂としては、特に限定されるものではないが、たとえば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ビニル系樹脂、塩素系樹脂、スチレン系樹脂、各種グラフト系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂などを使用することができ、これらの樹脂の混合物を使用することもできる。密着性の観点からポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、またはウレタン系樹脂を用いるのが好ましい。ポリエステル樹脂を水系塗液として用いる場合には、水溶性あるいは水分散性のポリエステル樹脂が用いられるが、このような水溶性化あるいは水分散化のためには、スルホン酸塩基を含む化合物や、カルボン酸塩基を含む化合物を共重合させることが好ましい。またアクリル樹脂を水性塗液として用いる場合には、水に溶解あるいは分散された状態にする必要があり、乳化剤として界面活性剤(例えば、ポリエーテル系化合物などが挙げられるが、限定されるものではない。)を使用する場合がある。
また、本発明に用いられる易接着樹脂層には、さらに接着性を向上させるために、樹脂に各種の架橋剤を併用することができる。架橋剤樹脂としては、メラミン系、エポキシ系、オキサゾリン系樹脂が一般に用いられる。本発明の樹脂層に含有される粒子としては、無機系粒子や有機系粒子を挙げることができるが、易滑性や耐ブロッキング性が向上するので、無機粒子がより好ましい。この無機粒子としては、シリカ、アルミナ、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、チタンなどを用いることができる。
本発明のポリエステルフィルムは、耐屈曲性と硬化性樹脂層塗布後の平面性に優れるため、有機エレクトロルミネッセンス表示装置のカバーフィルムとして特に好適に使用することができる。有機エレクトロルミネッセンス表示装置のカバーフィルムとして適用することで、表示装置のフレキシブル性を損なうことなく、表示装置表面の傷付きを防止することができる。また、光学フィルムのみならず、本発明の特性を利用した各種カバーフィルム、包装用途といった工材フィルムとして用いることも好ましい態様として挙げられる。
以下、実施例に沿って本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。なお、諸特性は以下の方法により測定した。
(1)フィルム厚み
フィルムの全体厚みを測定する際は、ダイヤルゲージを用いて、フィルムから切り出した試料の任意の場所5ヶ所の厚みを測定し、平均値を求めた。
(2)フィルムを構成する樹脂の組成
フィルムをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解し、H-NMRおよび13C-NMRを用いて各モノマー残基や副生ジエチレングリコールについて含有量を定量する。
(3)ポリエステルフィルムを構成する樹脂のガラス転移温度および融点Tm、Tmeta
セイコーインスツル(株)製示差走査熱量測定装置ロボットDSC-RDC6220を、データ解析にはエスアイアイナノテクノロジー(株)社製熱分析レオロジーシステムソフトフェア“Muse”を用いて、ガラス転移温度 [℃]、融点Tm[℃]、微小吸熱ピーク温度Tmeta[℃]についてはJIS K7121(1987年)に準拠して測定、および解析を行った。
具体的にはサンプル5mgを、25℃から20℃/分で300℃まで昇温した際のDSC曲線より得られた発熱ピークの頂点の温度をTcc、DSC曲線より得られた吸熱ピーク頂点の温度を融点Tm、TmとTccの中間点に見られる微小吸熱ピークをTmetaとした。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定チャートのガラス転移の階段状の変化部分において、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線とガラス転移の階段状の変化部分の曲線とが交わる点から求めた。
(4)固有粘度
サンプル0.1gを0.001g以内の精度で秤量し、10mLのo-クロロフェノールを用いて100℃×30分間加熱して溶解した。溶液を室温まで冷却し、25℃の水槽中に設置したオストワルド粘度計に該溶液を8mL仕込み、標線を通過する秒数を計測した(A秒)。 また、o-クロロフェノールのみ8mL用いて前記と同様に25℃の水槽中に設置したオストワルド粘度計で標線を通過する秒数を計測した(B秒)。固有粘度は次の計算式で計算した。
IV=-1+[1+4×K×{(A/B)-1}]0.5/(2×K×C)
ここでKは0.343,Cは試料溶液の濃度(g/100mL)である。
(5)ポリエステルフィルムの面配向係数fn
ナトリウムD線(波長589nm)を光源とし、マウント液としてヨウ化メチレンを用い、25℃にてアッベ屈折計4T(アタゴ(株)製)を用いてフィルムa方向、b方向および厚み方向の屈折率(各々、nMD、nTD、nZD)をJIS K7142(2014)A法に準拠して測定した。テストピースの屈折率は、1.74のものを用いた。求めた屈折率から下記の式(1)により、B層の面配向係数(fn)を算出した。
fn=(nMD+nTD)/2-nZD ・・・(1)
(6)重量平均分子量Mw
試料溶液調整として、サンプル3mgにトリフルオロ酢酸ナトリウム添加ヘキサフルオロイソプロパノールを溶媒として5mLを加え、40℃で3時間緩やかに攪拌した。その後0.5μmフィルターを用いて濾過を行った。次に、トリフルオロ酢酸ナトリウム添加ヘキサフルオロイソプロパノールを溶媒として、ゲル浸透クロマトグラフGPC(検出器:示差屈折率検出器RI東ソー製RI-8020)を用いて、以下の条件にて重量平均分子量を測定した。
カラム:shodexHFIP-LG1本(φ8.0mm×5cm、昭和電工製)
shodexHFIP-806M2本(φ8.0mm×30cm、昭和電工製)
流速:0.5mL/min
カラム温度:40℃
注入量:0.2mL
分子量校正:昭和電工製単分散ポリメチルメタクリレート(PMMA)(標準試料)。
(7)硬化性樹脂層、易接着樹脂層の厚み
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、フィルム上の硬化性樹脂層の厚みを測定した。硬化性樹脂層の厚みは、TEMにより10万倍の倍率で撮影した画像から読み取った。合計で10点の硬化性樹脂層および易接着樹脂層の厚みを測定し、平均値を用いた。尚、観察倍率は厚みが測定可能であれば10万倍以外でもよい。
(8)ヤング率
長さ150mm、幅10mmの短冊状のサンプルを10°ずつ時計回りに回転させて、0°~170°の18サンプルについて、ヤング率を測定し、最もヤング率が高くなる方向をa方向とし、それに直交する方向をb方向とした。ヤング率の測定はJIS Z1702(1994年)に規定された方法に従って、インストロンタイプの引張試験機を用いて測定した。測定は下記の条件で行い、試料数10にて、それぞれについてその測定をして、平均値として求めた。
測定装置:オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロン”(登録商標)AMF/RTA-100
試料サイズ:幅10mm×試長間50mm
引張り速度:300mm/分
測定環境:温度23℃、湿度65%RH。
(9)伸長吸収パラメーター
フィルムa方向およびb方向が長さ方向になるように、長さ150mm、幅10mmの短冊状のサンプルを切り出して用い、それぞれの方向について伸度60%における幅方向の収縮率を万能試験機で測定することにより、下記式により伸長吸収パラメーターを算出した。尚、引っ張り試験はJIS Z1702(1994年)に規定された方法に従って、インストロンタイプを用いて測定した。測定は下記の条件で行い、試料数10にて、それぞれについて伸度60%となるまで引っ張った後に試験を停止し、初期長L、伸度60%における長さをL60、幅方向初期値をW、伸度60%における幅長さをW60とした時に、以下の計算式より伸長吸収パラメーターを求めた。尚、測定サンプルからL、L60は最大値となる位置を選択、W、W60は最小値となる位置を抽出した値を用いる。必要に応じて万能投影機を用いて測定することもできる。
万能試験機:オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロン”(登録商標)AMF/RTA-100
試料サイズ:幅10mm×試長間50mm
引張り速度:300mm/分
測定環境:温度23℃、湿度65%RH。
伸長吸収パラメーター=-(ln(W60/W)/(ln(L60/L))
※ln:自然対数
(10)曲げヒステリシス2HB
カトーテック社製多目的折り曲げ試験機(KES-FB2)を用い、以下の条件にて、a方向およびb方向の測定を行い、曲げヒステリシス2HBを得た。尚、曲げヒステリシス2HBは、曲率-2.5~+2.5cm-1を1サイクルとして、5サイクル目(繰り返し数5回)に得られたデータを採用した。
繰り返し数:5回(採用データ5サイクル目)
SENS:2×5
曲率:-2.5~+2.5cm-1
変形速度:0.50cm-1/sec
サンプルサイズ:a方向×b方向=20cm×20cm
(11)曲げ硬さ
カトーテック社製多目的折り曲げ試験機(KES-FB2)を用い、以下の条件にて、a方向およびb方向の測定を行い、曲げ硬さを得た。尚、曲げ硬さは、曲率-2.5~+2.5cm-1を1サイクルとして、5サイクル目(繰り返し数5回)に得られたデータを採用した。
繰り返し数:5回(採用データ5サイクル目)
SENS:2×5
曲率:-2.5~+2.5cm-1
変形速度:0.50cm-1/sec
サンプルサイズ:a方向×b方向=20cm×20cm
(12)静摩擦係数
東洋精機(株)製スリップテスターを用いて、JIS-K7125(1999年)に準じて、フィルムの両面を重ねて摩擦させた時の初期の立ち上がり抵抗値を測定し、静摩擦係数μsとした。サンプルは、幅80mm、長さ200mmの長方形とし、長方形の長さ方向がa方向になるようにロールから3セット(6枚)切り出した。3回測定を行い、平均値を求めた。
(13)巻き取り時の耐傷付き性
本発明のポリエステルフィルムについて、ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストをおこなうことで、耐傷付き性の指標とした。尚、試料とこすり材に用いるフィルムは、同じポリエステルフィルムを用いるものとする。
評価環境条件:25℃、60%RH
こすり材:本発明のポリエステルフィルム
試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)に巻いて、バンド固定。
移動距離(片道):13cm、
こすり速度:13cm/秒、
荷重:100g/cm
先端部接触面積:1cm×1cm、こすり回数:5往復。
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、こすり部分の傷を反射光で目視観察し、以下の基準で評価した。評価は上記テストを3回繰り返した。
○ :全く傷が見えない。
△ :僅かに傷が見える。
× :一目見ただけでわかる傷がある。
(14)表面比抵抗
フィルムを温度23℃、相対湿度65%で24時間静置して調湿した後、同条件下でデジタル超高抵抗/微小電流計(アドバンテスト製R8340A)を用い、印加電圧100Vにて表面比抵抗を測定する。5回測定し、その平均値で表面比抵抗(Ω/□)とする。
(15)屈曲破断回数
MIT耐折度試験機(マイズ社製試験機No.702)を用い、JIS P8115(2001年)に準じて、長さ(測定方向)110mm、幅15mmサイズに切り出したサンプルを荷重1000g、屈曲角度左右135°(R:+135°、L:-135°)、屈曲速度175回/分、チャック先端R:0.38mmで屈曲試験を行い、フィルムが破断されたときの屈曲回数を屈曲破断回数とした。なお、試験は3回実施し、その平均値を採用した。
(16)動的耐屈曲性
本発明のポリエステルフィルムについて、U字伸縮試験器(ユアサシステム機器製 DLDMLH-FS)を用いて、幅108mm、長さ112mmに切り出したサンプルを、チルトクランプが水平状態にて、ストローク方向がサンプル長さ方向になるようにチルトクランプ端部に貼り付け、試験速度60r/min、試験ストローク60mm、面間距離3mmにて10000回屈曲し、試験後のサンプルについて蛍光灯の反射光と、外観より以下の判定を行った。
A:外観変化がなく、反射光の歪みも観察されなかった。
B:外観上の変化はなかったが、反射光の歪みが観察された。
C:外観に折り曲げラインが鮮明に観察された。
(17)マンドレル試験による耐巻き取り性
a方向×b方向=15mm×30mmに切り出したフィルムを23℃60%RH条件下にて24時間調湿し、マンドレル試験機(上島製作所製)の台座中央とフィルムの中心が一致するように図1のとおり設置する。φ1.0mmの試験棒を設置して、フィルムを180°巻き取り、24時間静置する。その後、フィルムを取り出し、速やかに平らな床に設置し、地面から浮き上がった高さを読み取った。b方向×a方向=15mm×30mmに切り出したフィルムも同様に測定を実施し、浮き上がった高さを読み取る。a方向×b方向=15mm×30mmに切り出したフィルム、b方向×a方向=15mm×30mmに切り出したフィルムについて、それぞれ5回ずつ測定し、計10回の浮き上がった高さ平均値より、耐巻き取り性を以下のように判定した。
0.5mm未満:◎
0.5mm以上0.8mm未満:○
0.8mm以上1.0mm未満:□
1.0mm以上1.2mm未満:△
1.2mm以上:×
(18)硬化性樹脂塗布後の平面性
下記(硬化性樹脂Qの調合)記載の硬化性樹脂Qを、乾燥後の厚みが5μmになるように流量を制御してスロットダイコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥し、溶剤を除去した。次いで、硬化性樹脂を塗布したフィルムに高圧水銀灯を用いて300mJ/cmの紫外線を照射し、ポリエステルフィルムの硬化性樹脂積層シートを得た。得られた積層シートの硬化性樹脂層の塗布後の平面性として、(a)シワ、(b)カールについて以下のとおり判定した。
(a)シワ
シワなく、シート全体の平面性が良好:◎
僅かにフィルムの歪みがあるが実用上問題ない:○
明らかなフィルムの歪みが散見されるが、実用上問題なし:△
フィルム全体がうねり、使用不可:×
(b)カール
フィルムをA4サイズに切り出し、平面に置いた際、地面からの浮き上がり高さにより、以下のとおりに判定した。
フィルムの浮き上がりがない:◎
フィルムの浮き上がりが地面から10mm未満である:○
フィルムの浮き上がりが地面から10mm以上15mm未満である:△
フィルムの浮き上がりが地面から15mmを超える:×。
(硬化性樹脂Qの調合)
粒径100nmのシリカ粒子(日産化学工業株式会社製 オルガノシリカゾル)と、多官能アクリレート(日本化薬株式会社製 “KAYARAD”(登録商標) PET30)を、質量比50:50で混合し、トルエン/MEK混合溶媒(質量比50:50)で、希釈して硬化性樹脂を調合した。
(19)帯電防止効果
(18)に記載の方法にて得た各ポリエステルフィルムの硬化性樹脂積層シートを□20cm(400cm2)に切り出し、次いで、下地に東レ株式会社製 X35S黒フィルムを敷きその上に切り出したサンプルを置き、500~1,000ルックスの蛍光灯環境下で、欠陥の長径をJIS P8208/P8145一般ドットケージにて目視測定し、0.1mm以上の欠陥の個数を数え、以下の通り判定を行った。
○:10個以上/400cmであった。
△:10個未満/400cmであった。
(20)熱収縮率曲線から得られる熱収縮開始温度
熱機械測定装置TMA/SS6100(セイコーインスツルメンツ社製)を用い、試料幅4mm、試料長さ(チャック間距離)20mmのサンプルに対し、荷重3gを負荷した。室温から170℃まで昇温速度5℃/分で昇温させ、170℃到達後10分間保持し、室温から170℃まで昇温した際の熱収縮曲線を得た。次いで、得られた熱収縮曲線を測定時間で微分しDTMAを得た。DTMAが0になる温度を熱収縮開始温度とした。
(21)乾燥耐熱性
フィルム表面にスクリーン印刷を行った。印刷はミノグループ株式会社製インキU-PET(517)、スクリーンSX270Tを用いて、スキージスピード300mm/sec、スキージ角度45°の条件で行い、次いで80℃条件下の熱風オーブン中で5分間乾燥して、評価用フィルムを得た。得られた評価用フィルムの外観について、下記の基準で評価を行った。
A:乾燥後もシワの発生は確認されず、良好な外観であった。
B:乾燥後に若干のシワが確認されたが、良好な外観であった。
C:乾燥後にシワが確認されたが、印刷したフィルムとして実用上問題ないレベルであった。
(ポリエステルの製造)
製膜に供したポリエステル樹脂は以下のように準備した。
(ポリエステルA)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.75)。
(ポリエステルB)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.70)。
(ポリエステルC)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.80)。
(ポリエステルD)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.85)。
(ポリエステルE)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分として1,4-ブタンジオール成分が100モル%であるポリブチレンテレフタレート樹脂(固有粘度1.2)。
(粒子マスターA)
ポリエステルA中に平均粒子径1.2μmの炭酸カルシウム粒子を粒子濃度1質量%で含有したポリエチレンテレフタレート粒子マスター(固有粘度0.65)。
(粒子マスターB)
ポリエステルE中に平均粒子径1.2μmの炭酸カルシウム粒子を粒子濃度1質量%で含有したポリエチレンテレフタレート粒子マスター(固有粘度1.1)。
(易接着樹脂Pの調合)
フィルムの表面に積層する易接着樹脂層は以下のように準備した。
樹脂溶液(a):酸成分であるテレフタル酸(88mol%)、5-ナトリウムスルホイソフタル酸(12mol%)、ジオール成分であるエチレングリコール(100mol%)の酸成分とジオール成分からなるポリエステル樹脂の水溶性塗液を70質量部と、酸成分であるテレフタル酸(50mol%)、イソフタル酸(49mol%)、5-ナトリウムスルホイソフタル酸(1mol%)とジオール成分であるエチレングリコール(55mol%)、ネオペンチルグリコール(44mol%)、ポリエチレングリコール(分子量:4000)(1mol%)の酸性分とジオール成分からなるポリエステル樹脂の水分散体30質量部を混合した溶液。
架橋剤(b):メチロール基型メラミン架橋剤
架橋剤(c):オキサゾリン基含有架橋剤
粒子(d):粒子径150nmのコロダイルシリカ粒子の水分散体
粒子(e):粒子径300nmのコロダイルシリカ粒子の水分散体
フッ素系界面活性剤(f):DIC(株)製“メガファック”(登録商標)F-444
これらを固形分質量比で(a)/(b)/(c)/(d)/(e)/(f)=47質量部
/19質量部/20質量部/4.9質量部/0.7質量部/0.1質量部で混合した。
乾燥後の易接着樹脂Pの屈折率は1.57であった。
(硬化性樹脂Qの調合)
粒径100nmのシリカ粒子(日産化学工業株式会社製 オルガノシリカゾル)と、多官能アクリレート(日本化薬株式会社製 “KAYARAD”(登録商標) PET30)を、質量比50:50で混合し、トルエン/MEK混合溶媒(質量比50:50)で、希釈して硬化性樹脂を調合した。
(実施例1~8、10~19、比較例1~6)
表1に記載のとおり樹脂種、粒子マスター種を表1に記載の含有量にて混合して押出機に投入した後、表1に記載の押出機温度で溶融させて、Tダイより25℃に制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸シートを得た。その後、20℃に温度制御した冷却ロールで急冷し、続いて、表2に記載の延伸温度、延伸倍率にてMD方向に各ロールで延伸し、その後一旦冷却した(中間冷却)。次いで、この一軸延伸フィルムの両面にコロナ放電処理を施し、フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、そのフィルムの両面に易接着樹脂Pを塗布し、その後、第1オーブンテンターにて表2に記載の延伸温度、延伸倍率にてTD方向に延伸し、中間冷却として表2に記載の温度まで冷却した。その後、第2オーブンのテンター内にて表2に記載の熱処理温度にて熱処理および幅方向に弛緩し、表1に記載のフィルム厚みのフィルムを得た。得られたフィルムの物性は表3、4に示したとおりであり、MD方向がa方向、TD方向がb方向のフィルムであった。実施例については、耐屈曲性および硬化性樹脂塗布後の平面性に優れていた。
(実施例9)
易接着樹脂Pを塗布しなかったこと以外は実施例5と同様にポリエステルフィルム得た。他の実施例同様に耐屈曲性および硬化性樹脂塗布後の平面性に優れていた。
Figure 2022031193000001
Figure 2022031193000002
Figure 2022031193000003
Figure 2022031193000004
本発明のポリエステルフィルムは、ヤング率と伸長吸収パラメーターが特定範囲であるため、例えばフレキシブル画像表示装置のカバーフィルムとして特に好適に使用可能である。

Claims (10)

  1. ヤング率が最も大きくなる方向(a方向)におけるヤング率が2.8GPa以上であり、前記a方向および前記a方向と直交する方向(b方向)の伸長吸収パラメーターがいずれも0.7以上1.5以下であるポリエステルフィルム。
  2. 熱収縮率曲線から得られる熱収縮開始温度が長手方向と幅方向のいずれにおいても65℃以上120℃以下である請求項1に記載のポリエステルフィルム。
  3. 以下の測定方法により求められる曲げヒステリシス2HBが、a方向およびb方向共に0.04gf・cm/cm以上0.10gf・cm/cm以下である請求項1または2に記載のポリエステルフィルム。
    [曲げヒステリシス2HBの測定方法]
    カトーテック社製多目的折り曲げ試験機(KES-FB2)を用い、以下の条件にて、a方向およびb方向についてそれぞれ曲げヒステリシス2HB測定を行う。なお、曲げヒステリシス2HBは、曲率-2.5~+2.5cm-1を1サイクルとして、5サイクル目(繰り返し数5回)に得られた値とする。
    繰り返し数:5回(採用データ5サイクル目)
    SENS:2×5
    曲率:-2.5~+2.5cm-1
    変形速度:0.50cm-1/sec
    サンプルサイズ:a方向×b方向=20cm×20cm
  4. 以下の測定方法により求められる曲げ硬さが、a方向およびb方向共に0.06gf・cm/cm以上0.12gf・cm/cm以下である請求項1~3のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
    [曲げ硬さの測定方法]
    カトーテック社製多目的折り曲げ試験機(KES-FB2)を用い、以下の条件にて、a方向およびb方向についてそれぞれ曲げ硬さ測定を行う。なお、曲げ硬さは、曲率-2.5~+2.5cm-1を1サイクルとして、5サイクル目(繰り返し数5回)に得られた値とする。
    繰り返し数:5回(採用データ5サイクル目)
    SENS:2×5
    曲率:-2.5~+2.5cm-1
    変形速度:0.50cm-1/sec
    サンプルサイズ:a方向×b方向=20cm×20cm
  5. 重量平均分子量Mwが20000以上50000以下である請求項1~4のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  6. 前記a方向の屈曲破断回数が20万回以上100万回以下である請求項1~5のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  7. フィルム厚みが5μm以上30μm以下である請求項1~6のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  8. 少なくとも一方の表面の静摩擦係数が0.2以上0.5以下である請求項1~7のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  9. 少なくとも一方の表面の表面比抵抗値が1×1012Ω/□以下である請求項1~8のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  10. フレキシブルディスプレイに用いられる請求項1~9のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024058057A1 (ja) * 2022-09-16 2024-03-21 東洋紡株式会社 ポリエステルフィルムとその用途

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