詳細な説明
本発明は、単離した抗体、特にモノクローナル抗体(例えば、ヒト化モノクローナル抗体またはヒトモノクローナル抗体)を提供し、これはヒトCD40(「huCD40」)と特異的に結合し、アゴニスト活性を有する。様々なヒト化マウス抗huCD40モノクローナル抗体における配列を提供する。ある実施態様において、本明細書に記述される抗体は、特定のマウスの重鎖および軽鎖の生殖系列配列に由来し、かつ/または、特定のアミノ酸配列を含むCDR領域などの、特定の構造的特徴を含む。他の実施態様において、抗体は、本明細書で与えられる配列における抗CD40抗体と、CD40結合において競合し、または同一のエピトープに結合する。いくつかの実施態様において、重鎖Fc領域の配列を、FcγRIIbとの結合を特異的に増強するように改変する。
本明細書はさらに、そのような抗体、イムノコンジュゲート、およびそのような抗体またはその抗原結合フラグメントを含む二重特異性分子、ならびに抗体またはフラグメントを含むように処方された医薬組成物を作成する方法を提供する。本明細書はまた、免疫応答の増強において、抗体を、単独で、または他の免疫賦活剤(例えば、抗体)および/またはがん治療または抗感染症治療と組み合わせて用いる方法を提供する。したがって、本明細書で記述される抗huCD40抗体を、多様な治療応用(例えば、腫瘍増殖の阻害および慢性ウイルス感染症の処置を含む)における処置に用いてもよい。
定義
本記述をより簡単に理解できるよう、特定の用語を最初に定義する。さらなる定義を詳細な説明のあらゆる箇所で説明する。
CD40は、「TNF受容体スーパーファミリーメンバー5」(TNFRSF5)を指す。他の指示がない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書におけるCD40の言及は、ヒトCD40(「huCD40」)を指し、抗CD40抗体は、抗ヒトCD40抗体を指す。ヒトCD40はさらに、遺伝子ID番号958およびMIM(ヒトにおけるメンデル遺伝(Mendelian Inheritance in Man)):109535に記述される。20アミノ酸シグナル配列を含む、ヒトCD40の配列(NP_001241.1)を配列番号1に示す。
CD40は、CD40リガンド(CD40L)と相互作用し、このリガンドはまた、TNFSF5、gp39およびCD154とも呼ばれる。他の指示がない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書におけるCD40Lの言及は、ヒトCD40L(「huCD40L」)を指す。ヒトCD40Lはさらに、遺伝子ID番号959およびMIM:300386に記述される。ヒトCD40Lの配列(NP_000065.1)を配列番号2に示す。
他の指示がない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書における用語「抗体」は、全ての抗体およびあらゆる抗原結合フラグメント(すなわち、「抗原結合部分」)またはその単鎖を含み得る。ある実施態様において、「抗体」は、ジスルフィド結合で相互に連結した、少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む、糖タンパク質、またはその抗原結合フラグメントを指す。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書では、VHと省略する)および重鎖定常領域から構成される。ある天然に生じるIgG、IgDおよびIgA抗体において、重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2およびCH3)から構成される。ある天然に生じる抗体において、各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと省略する)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL)から構成される。VH領域およびVL領域を、より保存された領域(フレームワーク領域(FR)と呼ばれる)が分散している、超可変性の領域(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる)にさらに細分化できる。各VHおよびVLは、3つのCDR領域および4つのフレームワーク領域から構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に、以下の順序で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2,FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫グロブリンと宿主組織または因子(免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第一の成分(Clq)を含む)との結合を媒介し得る。
抗体は典型的に、それらの同族の抗原に、高い親和性で特異的に結合し、これは、10-7から10-11M以下の解離定数(KD)によって反映される。約10-6Mよりも大きい、任意のKDが、非特異的な結合を示すと一般的に考えられる。本明細書において、抗原に「特異的に結合する」抗体は、抗原および実質的に同一の抗原に、高い親和性(これは、10-7M以下、好ましくは10-8M以下、さらにより好ましくは5×10-9M以下、最も好ましくは10-8Mないし10-10M以下のKDを有することを意味する)で結合するが、無関係の抗原には高い親和性で結合しない、抗体を指す。抗原は、所定の抗原との高度な配列同一性を示す場合(例えば、所定の抗原の配列と、少なくとも80%、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、またはさらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を示す場合)、所定の抗原と「実質的に同一」である。例示の目的で、ヒトCD40に特異的に結合する抗体はまた、ある非ヒト霊長類種(例えば、カニクイザル)由来のCD40と交差反応し得るが、他の種由来のCD40、またはCD40以外の抗原とは交差反応しない場合がある。
他の指示がない限り、免疫グロブリンは、任意の一般的に知られているアイソタイプ由来でよく、これは限定されないが、IgA、分泌型IgA、IgGおよびIgMを含む。IgGアイソタイプは、特定の種において、サブクラスに分けられる:ヒトにおいて、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4、ならびにマウスにおいて、IgG1、IgG2a、IgG2bおよびIgG3。免疫グロブリン(例えば、ヒトIgG1)は、数種のアロタイプが存在し、互いに最大で数個のアミノ酸が異なる。他の指示がない限り、本発明の抗体は、IgG1f定常ドメインを含む(配列番号65)。他の指示がない限り、「抗体」は、例として、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体;キメラ抗体およびヒト化抗体;ヒト抗体および非ヒト抗体;全体的に合成された抗体;ならびに単鎖抗体を含み得る。
抗体における、用語「抗原結合部分」または「抗原結合フラグメント」は、本明細書において、抗原(例えば、ヒトCD40)に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1以上のフラグメントを指す。抗体における用語「抗原結合部分/フラグメント」に包含される、結合フラグメントの例は、(i)Fabフラグメント(VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる1価のフラグメント);(ii)F(ab’)2フラグメント(ヒンジ領域がジスルフィド架橋で連結した、2つのFabフラグメントを含む2価のフラグメント);(iii)VHおよびCH1ドメインからなる、Fdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなる、Fvフラグメント、ならびに(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546)、を含む。単離した相補性決定領域(CDR)、または合成リンカーで連結した、2以上の単離したCDRの組合せは、抗原に結合できる場合、抗体の抗原結合ドメインを含み得る。
単鎖抗体コンストラクトもまた、本発明に含まれる。Fvフラグメントの2つのドメイン(VLおよびVH)は、別個の遺伝子にコードされているが、それらは遺伝子組換えの手法を用いて、それらを単一のタンパク質鎖として作成できる合成リンカーによって連結でき、VLおよびVH領域は対となり、単鎖Fv(scFv)として知られている1価の分子を形成する;例えば、Bird et al. (1988) Science 242:423-426;およびHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883)参照。そのような単鎖抗体もまた、抗体における用語「抗原結合部分/フラグメント」に包含されることが意図される。これらおよび他の潜在的なコンストラクトは、Chan & Carter (2010) Nat. Rev. Immunol. 10:301に記述される。これらの抗体フラグメントを、当業者に公知の従来技術を用いて得、フラグメントを、無傷の抗体と同様の様式で、有用性についてスクリーニングする。抗原結合部分/フラグメントを、組換えDNA技術によって、または無傷の免疫グロブリンの酵素的切断または化学的切断によって、生成できる。
他の指示がない限り、単語「フラグメント」は、抗体に対して用いる場合(請求項など)、「抗体またはフラグメント」が「抗体またはその抗原結合フラグメント」と同一の意味を持つように、抗体の抗原結合フラグメントを指す。
「二重特異性」または「二機能性抗体」は、人工的なハイブリッド抗体であり、これは2つの異なる重鎖/軽鎖対を有し、異なる抗原に対して特異性を有する2つの抗原結合部位を生じる。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab’フラグメントの連結を含む、多様な方法で生成できる。例えば、Songsivilai & Lachmann (1990) Clin. Exp. Immunol. 79:315-321; Kostelny et al. (1992) J. Immunol. 148, 1547-1553参照。
本明細書において、用語「モノクローナル抗体」は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す抗体、または、全ての抗体が特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す、抗体の組成物を指す。典型的に、そのようなモノクローナル抗体は、単一細胞または抗体をコードする核酸由来であり、任意の配列の変化を意図的に導入せずに、増殖する。したがって、用語「ヒトモノクローナル抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変領域および場合により、定常領域を有するモノクローナル抗体を指す。ある実施態様において、ヒトモノクローナル抗体を、ハイブリドーマによって生成し、例えば、遺伝子導入非ヒト動物または染色体導入(transchromosomal)非ヒト動物(例えば、ヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する、トランスジェニックマウス)から得たB細胞を、不死化細胞と融合することによって得る。
本明細書において、用語「組換えヒト抗体」は、遺伝子組換え手法によって、調製し、発現し、作製し、または単離した全てのヒト抗体((a)ヒト免疫グロブリン遺伝子またはそこから調製したハイブリドーマについて、遺伝子導入または染色体導入した動物(例えば、マウス)から単離した抗体、(b)抗体を発現するように形質転換した宿主細胞(例えばトランスフェクトーマ)から単離した抗体、(c)遺伝子組換えのヒト抗体コンビナトリアルライブラリーから単離した抗体、および(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の、他のDNA配列へのスプライシングに関する、あらゆる他の方法によって調製し、発現し、作製し、または単離した抗体)を含む。そのような組換えヒト抗体は、生殖系列遺伝子によってコードされた、特定のヒト生殖系列免疫グロブリン配列を利用する、可変領域および定常領域を含むが、例えば抗体の成熟化の間に生じる、続く再編成および変異を含む。当分野で公知のように(例えば、Lonberg (2005) Nature Biotech. 23(9):1117-1125参照)、可変領域は、抗原結合ドメインを含み、これは、外来の抗原に特異的な抗体を形成するように再編成する様々な遺伝子によってコードされている。再編成に加えて、可変領域を複数の単一アミノ酸交換(体細胞変異または高頻度変異とも呼ばれる)でさらに改変し、外来の抗原に対する抗体の親和性を増加させることができる。定常領域は、さらに抗原と反応して変化する(すなわち、アイソタイプスイッチ)。したがって、抗原と反応する軽鎖および重鎖免疫グロブリンポリペプチドをコードする、再編成され、体細胞変異した核酸配列は、元の生殖系列配列と同一でなくてもよいが、実質的に同一または類似している(すなわち、少なくとも80%の同一性)。
「ヒト」抗体(HuMAb)は、フレームワーク領域およびCDR領域が共にヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する、抗体を指す。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域もまた、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロ(in vitro)でのランダム変異もしくは部位特異的変異によって、またはインビボ(in vivo)での体細胞変異によって導入された変異)を含み得る。しかしながら、本明細書において、用語「ヒト抗体」は、別の哺乳類種(マウスなど)の生殖系列由来のCDR配列を、ヒトフレームワーク配列上に移植した抗体を含むことを意図しない。用語「ヒト」抗体および「完全ヒト」抗体を同意語として用いる。
「ヒト化」抗体は、非ヒト抗体(例えば、マウス抗体)のCDRドメイン以外の、いくつか、ほとんどまたは全てのアミノ酸を、ヒト免疫グロブリン由来の、対応するアミノ酸に置換した、抗体を指す。ヒト化型抗体のある実施態様において、CDRドメイン以外のいくつか、ほとんど、または全てのアミノ酸を、ヒト免疫グロブリン由来のアミノ酸に置換するが、1以上のCDR領域中のいくつか、ほとんど、または全てのアミノ酸は変化しない。抗体が特定の抗原に結合する能力を抑制しない限り、アミノ酸の少数の付加、挿入、置換または改変を許容できる。「ヒト化」抗体は、元の抗体に類似した抗原特異性を保持する。
「キメラ抗体」は、可変領域がある種に由来し、定常領域が別の種に由来する、抗体(可変領域がマウス抗体由来で、定常領域がヒト抗体由来である、抗体など)を指す。「ハイブリッド」抗体は、異なる型の重鎖および軽鎖を有する抗体(マウス(親)重鎖およびヒト化軽鎖またはその逆、など)を指す。
本明細書において、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子にコードされる抗体のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、およびIgE抗体)を指す。
「アロタイプ」は、特定のアイソタイプ群における天然に生じるバリアントであって、1個または数個のアミノ酸が異なるバリアントを指す。例えば、Jefferis et al. (2009) mAbs 1:1参照。
語句「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」は、本明細書において、用語「抗原に特異的に結合する抗体」と互換的に用いられる。
本明細書における「単離した抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す(例えば、CD40に特異的に結合する単離した抗体は、CD40以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、CD40のエピトープに特異的に結合する、単離した抗体は、様々な種由来の他のCD40タンパク質との交差反応性を有し得る。
抗体のFc領域と特定のFc受容体との相互作用に由来する、「エフェクター機能」は、必ずしも限定されないが、Clq結合、補体依存性細胞障害(CDC)、Fc受容体結合、FcγR介在性エフェクター機能(ADCCおよび抗体依存性細胞介在性食作用(ADCP)など)、および細胞表面受容体の下方制御(例えば、B細胞受容体;BCR)を含む。このようなエフェクター機能は、抗原結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と結合するためのFc領域を、通常必要とする。
「Fc受容体」または「FcR」は、免疫グロブリンのFc領域と結合する受容体である。IgG抗体と結合するFcRは、FcγRファミリーの受容体を含み、これらの受容体は、その対立遺伝子のバリアントおよび選択的スプライシング型を含む。FcγRファミリーは、3つの活性化受容体(マウスにおいて、FcγRI、FcγRIII、およびFcγRIV;ヒトにおいて、FcγRIA、FcγRIIAおよびFcγRIIIA)および1つの阻害性受容体(FcγRIIbまたは同等のFcγRIIB)からなる。ヒトFcγRの様々な性質を表1にまとめた。自然エフェクター細胞型(innate effector cell type)の大部分は、1以上の活性化FcγRおよび阻害性FcγRIIbを共発現するが、ナチュラルキラー(NK)細胞は、1つの活性化Fc受容体(マウスにおけるFcγRIIIおよびヒトにおけるFcγRIIIA)を選択的に発現し、マウスおよびヒトにおける阻害性FcγRIIbを発現しない。ヒトIgG1はほとんどのヒトFc受容体に結合し、結合する活性化受容体の型に関して、マウスIgG2aに相当すると考えられる。
表1:ヒトFcγRの性質
「Fc領域」(フラグメント結晶化可能領域)または「Fcドメイン」または「Fc」は、免疫グロブリンと宿主組織または因子との結合(免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)上に位置するFc受容体との結合、または古典的補体系の第一の成分(C1q)との結合を含む)を媒介する抗体の重鎖のC末端領域を指す。したがって、Fc領域は、第一の定常領域免疫グロブリンドメイン(例えば、CH1またはCL)を除く抗体の定常領域を含む。抗体のアイソタイプのIgG、IgAおよびIgDにおいて、Fc領域は、抗体の2つの各重鎖において、CH2およびCH3定常ドメインを含む;IgMおよびIgEのFc領域は、各ポリペプチド鎖において、3つの重鎖定常ドメイン(CHドメイン2~4)を含む。IgGにおいて、Fc領域は、免疫グロブリンドメインCγ2およびCγ3ならびにCγ1およびCγ2の間のヒンジを含む。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は様々であり得、ヒトIgG重鎖Fc領域は、C226またはP230位置のアミノ酸残基(またはこれら2つのアミノ酸の間のアミノ酸)から、重鎖のC末端までの区間として、通常定義され、ここでこの番号付けは、Kabat(Kabat et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, National Institutes of Health, Bethesda, MD)と同様に、EUの指標に従う;U.S. Pat. App. Pub. No. 2008/0248028の図3c~3fも参照。ヒトIgGのFc領域におけるCH2ドメインは、アミノ酸約231からアミノ酸約340までに及び、CH3ドメインは、Fc領域におけるCH2ドメインのC末端側に位置する(すなわち、IgGのアミノ酸約341からアミノ酸約447(C末端のリジンを含む)に及ぶ)。本明細書において、Fc領域は、あらゆるアロタイプのバリアントを含む、天然配列のFc、またはバリアントのFc(例えば、非天然に生じるFc)であり得る。Fcはまた、単離されたこの領域、または「Fc領域を含む結合タンパク質」(Fc融合タンパク質とも呼ばれる;例えば抗体またはイムノアドヘシン)などのFcを含むタンパク質ポリペプチドにおけるこの領域を指す。
「天然配列のFc領域」または「天然配列のFc」は、天然に見出されたFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列のヒトFc領域は、天然配列のヒトIgG1のFc領域;天然配列のヒトIgG2のFc領域;天然配列のヒトIgG3のFc領域;および天然配列のヒトIgG4のFc領域ならびに天然に生じるそれらのバリアントを含む。天然配列のFcは、Fcの様々なアロタイプを含む。例えば、Jefferis et al. (2009) mAbs 1:1参照。
用語「エピトープ」または「抗原決定基」は、免疫グロブリンまたは抗体が特異的に結合する、抗原(例えばhuCD40)上の部位を指す。タンパク質抗原におけるエピトープは、連続するアミノ酸(通常、直線状エピトープ)またはタンパク質の3次のフォールディングによって並列する不連続のアミノ酸(通常、立体構造エピトープ)の両方から形成され得る。連続するアミノ酸から形成されるエピトープは、常にではないが典型的に、変性溶媒への曝露に対して保持されるが、3次のフォールディングによって形成するエピトープは、変性溶媒の処理によって典型的に失われる。エピトープは、典型的に、特有の空間的構造において、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個のアミノ酸を含む。
用語「エピトープマッピング」は、抗体-抗原認識に関与する抗原上の分子決定基を同定する方法を指す。エピトープが所定の抗体と結合することを決定する方法は、当分野で周知であり、例えば、抗原由来(例えばCD40由来)の重複するペプチドまたは連続的なペプチドを、所定の抗体(例えば、抗CD40抗体)との反応性について検定する、免疫ブロット法および免疫沈降アッセイ;X線結晶構造解析;2次元核磁気共鳴;酵母ディスプレイ(実施例6参照);およびHDX-MS(例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, G. E. Morris, Ed. (1996)参照)(実施例5参照)を含む。
2以上の抗体に関する用語「同一のエピトープに結合する」は、抗体がアミノ酸残基の同一のセグメントに結合することを意味し、これは所定の方法で決定される。抗体が、本明細書で記述される抗体と「CD40上の同一のエピトープ」に結合するか否かを決定する技術は、例えば、エピトープの原子分解能を与える、エピトープマッピング法(抗原:抗体複合体の結晶のX線解析など)および水素/重水素交換質量分析(HDX-MS)を含む。他の方法は、抗体と抗原フラグメント(例えば、タンパク質分解性フラグメント)または抗原の変異による変種との結合をモニターし、抗原配列中のアミノ酸残基の改変による結合の損失は通常、エピトープ成分の指標であると考えられる(アラニンスキャニング変異導入法(Cunningham & Wells (1985) Science 244:1081)または変異標的配列バリアントの酵母ディスプレイ(実施例6参照)など)。さらに、エピトープマッピングにおいて、コンビナトリアル計算法(computational combinatorial method)を用いてもよい。これらの方法は、対象の抗体が、コンビナトリアルファージディスプレイペプチドライブラリー由来の特異的な短いペプチドをアフィニティ単離する能力に依存する。同一または密接に関連するVHおよびVLまたは同一のCDR配列を有する抗体は、同一のエピトープに結合すると想定される。
「標的との結合において、別の抗体と競合する」抗体は、他の抗体と標的との結合を(部分的または完全に)阻害する抗体を指す。2つの抗体が、標的との結合において、互いに競合するか否か(すなわち、ある抗体が他の抗体と標的との結合を阻害するか否か、およびどの程度阻害するか)は、公知の競合実験で決定できる。ある実施態様において、抗体は、別の抗体と標的との結合と、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%競合し、阻害する。阻害または競合のレベルは、酵素が「ブロッキング抗体」(すなわち、最初に標的とインキュベートした冷式抗体)であることに依存して異なる。競合アッセイは、例えば、Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harb. Protoc.; 2006; doi:10.1101/pdb.prot4277またはEd HarlowおよびDavid Laneによる"Using Antibodies"の11章, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, USA 1999に記述されるように行われ得る。競合する抗体は、同一のエピトープ、重複するペプチドまたは隣接するエピトープ(例えば、立体障害によって明らかなように)に結合する。
他の競合的結合のアッセイは:固相直接的または間接的(solid phase direct or indirect)放射免疫測定法(RIA)、固相直接的または間接的酵素免疫測定法(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(sandwich competition assay)(Stahli et al. (1983) Methods in Enzymology 9:242参照);固相直接的ビオチン-アビジンEIA(Kirkland et al. (1986) J. Immunol. 137:3614参照);固相直接的標識化アッセイ、固相直接的標識化サンドイッチアッセイ(Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press参照);I-125標識を用いた固相直接的標識化RIA(Morel et al. (1988) Mol. Immunol. 25(1):7参照);固相直接的ビオチン-アビジンEIA(Cheung et al. (1990) Virology 176:546);および直接的標識化RIA(Moldenhauer et al. (1990) Scand. J. Immunol. 32:77)を含む。
本明細書において、用語「特異的な結合」、「選択的な結合」、「選択的に結合する」および「特異的に結合する」は、所定の抗原上のエピトープに結合し、他の抗原には結合しない抗体を指す。典型的に、抗体は、(i)例えば、所定の抗原(例えば、組換えヒトCD40)を分析物として、かつ抗体をリガンドとして用いる、BIACORE(登録商標)2000表面プラズモン共鳴装置における表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって、または抗体と抗原陽性細胞との結合のスキャッチャード解析によって決定される場合、約10-7M未満の平衡解離定数(約10-8M未満、10-9Mまたは10-10M以下など)で結合し、(ii)所定の抗原と、所定の抗原または密接に関連する抗原以外の非特異的な抗原(例えば、BSA、カゼイン)との結合における親和性よりも、少なくとも2倍以上高い親和性で結合する。したがって、「ヒトCD40に特異的に結合する」抗体は、可溶性または細胞に結合したヒトCD40と、10-7M以下(約10-8M未満、10-9Mまたは10-10M以下など)のKDで結合する抗体を指す。「カニクイザルCD40と交差反応する」抗体は、カニクイザルCD40と、10-7M以下(約10-8M未満、10-9Mまたは10-10M以下など)のKDで結合する抗体を指す。
本明細書における用語「kassoc」または「ka」は、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度定数を指し、本明細書における用語「kdis」または「kd」は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数を指す。本明細書における用語「KD」は、平衡解離定数を指し、これはkdとkaの比(すなわち、kd/ka)から得られ、モル濃度(M)として表現される。抗体におけるKD値を、当分野でよく確立した方法で決定できる。抗体のKDを決定する好ましい方法は、好ましくはForteBio Octet REDデバイスを用いる、バイオレイヤー干渉法(BLI)解析(実施例3参照)、好ましくはBIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴システムなどのバイオセンサーシステムを用いる、表面プラズモン共鳴(実施例4参照)、またはフローサイトメトリーおよびスキャッチャード解析である。
抗体またはその抗原結合フラグメントを用いるインビトロアッセイまたはインビボアッセイに関する用語「EC50」は、最大値の50%の応答(すなわち、最大の応答とベースラインの中間)を誘導する、抗体またはその抗原結合フラグメントの濃度を指す。
用語「固定化されたCD40に結合する」は、本明細書に記述される抗体が、CD40(例えば、細胞表面上に発現したCD40または固体担体に結合したCD40)に結合する能力を指す。
本明細書における用語「交差反応する」は、本明細書で記述される抗体が、様々な種由来のCD40と結合する能力を指す。例えば、本明細書で記述される、ヒトCD40に結合する抗体は、別の種由来のCD40(例えば、カニクイザルCD40)とも結合し得る。本明細書において、交差反応性を、結合アッセイ(例えば、SPR、ELISA)における精製した抗原との特異的な反応性を検出することによって、または、CD40を生理的に発現する細胞との結合、もしくは他の機能的な相互作用によって、測定できる。交差反応性を決定する方法は、本明細書で記述される標準的な結合アッセイ(例えば、BIACORE(登録商標)2000表面プラズモン共鳴(SPR)装置(Biacore AB, Uppsala, Sweden)を用いるBIACORE(登録商標)SPR解析、またはフローサイトメトリー技術)を含む。
物体に対して適用される、本明細書における用語「天然に生じる」は、物体が天然に見出され得るという事実を指す。例えば、天然源から単離できる生物(ウイルスを含む)中に存在し、かつ研究室で人間によって意図的に改変されていない、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列は、天然に生じる。
「ポリペプチド」は、少なくとも2つの連続して結合するアミノ酸残基を含む鎖を指し、鎖の長さに上限はない。タンパク質における1以上のアミノ酸残基は、限定されないが、グリコシル化、リン酸化またはジスルフィド結合などの改変を含み得る。「タンパク質」は、1以上のポリペプチドを含み得る。
本明細書における用語「核酸分子」は、DNA分子およびRNA分子を含むことを意図する。核酸分子は、1本鎖または2本鎖であり得、cDNAであり得る。
本明細書で提供される抗体配列の「保存的な配列改変」(すなわち、ヌクレオチド配列によってコードされる抗体、またはアミノ酸配列を含む抗体と、抗原との結合を抑制しない、ヌクレオチド配列の改変およびアミノ酸配列の改変)をまた、提供する。例えば、改変を当分野で公知の標準的な技術(部位特異的変異およびPCRを介する変異など)で導入できる。保存的な配列改変は、保存的なアミノ酸置換を含み、このアミノ酸残基は、類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換される。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当分野で定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を持つアミノ酸を含む。したがって、抗CD40抗体において必須ではないと予測されるアミノ酸残基を、好ましくは、同一の側鎖ファミリー由来の別のアミノ酸残基に置換する。抗原との結合を排除しない、ヌクレオチドおよびアミノ酸の保存的な置換を同定する方法は、当分野でよく知られている。例えば、Brummell et al., Biochem. 32:1180-1187 (1993); Kobayashi et al. Protein Eng. 12(10):879-884 (1999); and Burks et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:412-417 (1997)参照。
あるいは別の実施態様において、変異を、抗CD40抗体をコードする配列の全部または一部に沿って、(飽和変異導入などによって)ランダムに導入でき、得られた、改変された抗CD40抗体を、改善された結合活性についてスクリーニングできる。
核酸において、用語「実質的な相同性」は、2つの核酸またはその指定された配列が、最適に整列および比較された場合に、少なくとも約80%のヌクレオチド、通常少なくとも約90~95%、より好ましくは少なくとも約98%~99.5%のヌクレオチドが、適切なヌクレオチドの挿入または欠失を伴って、同一であることを示す。あるいは、実質的な相同性は、セグメントが選択的なハイブリダイゼーション条件下で、相補鎖とハイブリダイズする場合に、存在する。
ポリペプチドにおいて、用語「実質的な相同性」は、2つのポリペプチドまたはその指定された配列が、最適に整列および比較された場合に、少なくとも約80%のアミノ酸、通常少なくとも約90~95%、より好ましくは少なくとも約98%~99.5%のアミノ酸が、適切なアミノ酸の挿入または欠失を伴って同一であることを示す。
2つの配列間の同一性の割合は、配列が最適に整列した場合における、配列が共有する同一の位置の数の関数(すなわち、%相同性=同一の位置の数/全ての位置の数 x 100)であり、これは、2つの配列の最適なアライメントにおいて導入される必要がある、ギャップの数および各ギャップの長さを考慮して決定される、最適なアライメントを伴う。2つの配列間の配列比較および同一性の割合の決定を、以下の限定されない例において記述されるように、数学アルゴリズムを用いて達成できる。
2つのヌクレオチド配列間の同一性の割合を、GCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラムを用い、NWSgapdna.CMPマトリックス、ならびに40、50、60、70または80のギャップ加重(gap weight)、および1、2、3、4、5または6の長さ加重(length weight)を用いて、決定できる。2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の同一性の割合は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている、E. MeyersおよびW. Miller(CABIOS, 4:11-17 (1989))のアルゴリズムを用いて、PAM120加重残基表(weight residue table)、12のギャップ長ペナルティ、および4のギャップペナルティを用いても決定できる。さらに、2つのアミノ酸配列間の同一性の割合は、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに組み込まれているNeedlemanおよびWunsch(J. Mol. Biol. (48):444-453 (1970))のアルゴリズムを用いて、Blossum62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれかを用い、16、14、12、10、8、6、または4のギャップ加重、および1、2、3、4、5または6の長さ加重を用いて、決定できる。
本明細書に記述される核酸およびタンパク質の配列を「クエリー配列」として用いて、公開データベースに対する検索を行い、例えば関連する配列を同定できる。このような検索は、Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて実行できる。BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて行い、本明細書に記述される核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索を、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて行い、本明細書に記述されるタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較を目的とするギャップのあるアライメントを得るために、Gapped BLAST をAltschul et al., (1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402で記述されるように利用できる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを用いる場合、各プログラムの(例えばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータを利用できる。
核酸は、全細胞中、細胞溶解物中、または部分的に精製した形状もしくは実質的に純粋な形状で存在できる。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動、および当分野で周知の他の技術を含む標準的な技術により、例えば、他の細胞性核酸(例えば、染色体の他の部分)またはタンパク質などの、他の細胞成分または他の混入物質を除去して精製した場合に、「単離された」こととなり、または「実質的に純粋な状態となる」。Ausubel et al., ed. Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York (1987)参照。
本明細書における用語「ベクター」は、連結している別の核酸を輸送できる核酸分子を指すことを意図する。ベクターの一種が「プラスミド」であり、これはさらなるDNAセグメントを連結し得る、環状2本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターはウイルスベクターであり、ここでさらなるDNAセグメントをウイルスゲノム中に連結し得る。あるベクターは、導入された宿主細胞中で自律複製できる(例えば細菌の複製起点を有する細菌ベクター、およびエピソーム哺乳類ベクター)。その他のベクター(例えば非エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞に導入されると宿主細胞ゲノムに組み込まれ、これにより宿主ゲノムとともに複製され得る。さらに、あるベクターは、作動的に連結している遺伝子の発現を導くことができる。このようなベクターを、本明細書において、「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と呼ぶ。一般的に、組換えDNA技術に用いる発現ベクターは、プラスミドの形状であることが多い。プラスミドは最も一般的に用いられるベクターの形状であるため、本明細書において、「プラスミド」および「ベクター」は互換的に用いられ得る。しかしながら、本明細書は、同等の機能を提供する、ウイルスベクター(例えば複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)などの、他の形状の発現ベクターも含む。
本明細書における用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、細胞中に非天然に存在する核酸を含む細胞を指すことを意図し、組換え発現ベクターを導入した細胞であり得る。そのような用語は、特定の対象細胞およびそのような細胞の子孫をも指すことを意図することが理解されるはずである。突然変異または環境的な影響のいずれかによって、後代に特定の改変が生じ得るため、そのような子孫は、実際には親細胞と同一ではない場合があるが、本明細書における用語「宿主細胞」の範囲に含まれる。
「免疫応答」は、外来の病原体に対する、脊椎動物内の生物学的な応答を指し、この応答は、これらの病原体およびそれらによって生じる疾患から生物を保護する。免疫応答は、免疫系の細胞(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、マスト細胞、樹状細胞または好中球)および、これらの任意の細胞または肝臓によって産生する可溶性巨大分子(抗体、サイトカインおよび補体を含む)の作用を介し、これは、侵入した病原体、病原体に感染した細胞もしくは組織、がん細胞もしくは他の異常細胞、または自己免疫もしくは病的炎症の場合に、正常ヒト細胞もしくは組織の、選択的なターゲティング、結合、損傷、破壊および/または脊椎動物の身体からの除去をもたらす。免疫応答は、例えばT細胞(例えば、CD4+またはCD8+T細胞などのエフェクターT細胞またはTh細胞)の活性化もしくは阻害、またはTreg細胞の阻害もしくは除去を含む。「Tエフェクター」(「Teff」)細胞は、細胞溶解活性を有するT細胞(例えば、CD4+およびCD8+T細胞)およびTヘルパー(Th)細胞を指し、これらはサイトカインを分泌し、他の免疫細胞を活性化し、導くが、制御性T細胞(Treg細胞)を含まない。
本明細書において、用語「T細胞を介する応答」は、エフェクターT細胞(例えば、CD8+T細胞)およびヘルパーT細胞(例えば、CD4+細胞)を含む、T細胞が介在する応答を指す。T細胞を介する応答は、例えば、T細胞の細胞傷害性および増殖を含む。
本明細書において、用語「細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答」は、細胞傷害性T細胞によって誘導される免疫応答を指す。CTL応答は、主にCD8+T細胞を介する。
「免疫調節物質」または「免疫修飾物質」は、免疫応答の修飾、制御または改変に関与する物質(例えば、シグナル伝達経路の構成要素)を指す。免疫応答の「修飾」、「調節」、または「改変」は、免疫系の細胞またはそのような細胞(例えば、エフェクターT細胞)の活性の任意の変更を指す。そのような調節は、種々の細胞型の数の増加もしくは減少、これらの細胞の活性の増加もしくは減少、または免疫系において生じ得る他の任意の変化によって現れ得る、免疫系の刺激または抑制を含む。阻害性免疫調節物質および刺激性免疫調節物質は共に同定されており、それらのいくつかは、腫瘍の微小環境中で機能を増強し得る。好ましい実施態様において、免疫調節物質は、T細胞の表面上に位置する。「免疫調節の標的」または「免疫修飾の標的」は、物質、化学物質、部分、化合物または分子による結合において標的とされ、それらの結合によって活性が変化する、免疫調節物質である。免疫調節の標的は、例えば、細胞表面上の受容体(「免疫調節受容体」)および受容体リガンド(「免疫調節リガンド」)を含む。
「免疫療法」は、免疫応答の誘導、増強、抑制または他の改変を含む方法による、疾患に苦しむ対象、または疾患の再発にかかり、もしくは苦しむ可能性のある対象の処置を指す。
「免疫賦活療法」または「免疫刺激療法」は、例えばがんの処置における、対象の免疫応答の増加(誘導または増強)をもたらす療法を指す。
「内因性免疫応答を増強すること」は、対象の既存の免疫応答の有効性または能力を増加することを意味する。この有効性および能力の増加は、例えば、内因性宿主免疫応答を抑制する機構を克服することによって、または内因性宿主免疫応答を増強する機構を刺激することによって、達成され得る。
本明細書において、用語「連結した」は、2以上の分子の会合を指す。結合は、共有結合または非共有結合であり得る。結合はまた、遺伝子的(すなわち、遺伝子組換えによる融合)であり得る。そのような結合は、当分野で認知された多様な技術(化学的結合および組換えタンパク質生成など)を用いて達成できる。
本明細書において、「投与する」は、当業者に公知の、様々な任意の方法および送達システムを用いる、治療薬を含む組成物の、対象への物理的導入を指す。本明細書で記述される抗体を投与する好ましい経路は、例えば注射または注入による、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、脊髄または他の非経口的な投与経路を含む。本明細書における語句「非経口的投与」は、通常、注射による、腸内および局所投与以外の投与方法を意味し、限定されないが、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ内、病巣内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および注入、ならびにインビボエレクトロポレーションを含む。あるいは、本明細書で記述される抗体は、局所、表皮または粘膜の投与経路などの、非経口的でない経路(例えば、鼻腔内、経口的、経膣的、直腸内、舌下または局所的)を介して投与され得る。投与はまた、例えば、1回、複数回、および/または1以上の長期間にわたって、行われ得る。
本明細書において、用語「阻害する」または「遮断する」は、互換的に用いられ、少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%)による、部分的および完全な阻害/遮断の両方を包含する。
本明細書において、「がん」は、体内の異常細胞の制御されない増殖によって特徴付けられる疾患の広い群を指す。未制御の細胞***は、隣接する組織に侵入する悪性の腫瘍または細胞の形成をもたらし得、リンパ系または血流を通って、身体の離れた部位に転移し得る。
本明細書における用語「処置する」、「処置すること」、「処置」は、症状、合併症、状態または疾患に関連する生化学的徴候の、進行、発生、重症度、または再発を、元に戻し、軽減し、改善し、阻害し、または遅延もしくは予防する目的で、対象に行う任意の種類の介入もしくは方法、または対象に活性薬剤を投与すること、を指す。予防は、疾患を患っていない対象への投与を指し、その疾患が起こるのを予防し、または起こった場合に、その効果を最小化する。
用語「有効な用量」または「有効な投与量」は、所望の効果を達成または部分的に達成するのに十分な量として定義される。薬剤または治療薬の「治療上有効な量」または「治療上有効な投与量」は、単独または別の治療薬と併用して用いる場合に、疾患の症状の重症度を減少させ、疾患の症状のない期間の頻度および持続時間を増加させ、または疾患の苦痛による機能障害もしくは身体障害を予防することによって証明される、疾患の退縮を促進する、薬剤の任意の量である。薬剤の「予防に有効な量」または「予防に有効な投与量」は、疾患が起こる、または疾患の再発が起こる可能性のある対象に、単独または別の治療薬と併用して投与する場合に、疾患の発生または再発を阻害する薬剤の量である。治療薬または予防薬が、疾患の退縮を促進し、または疾患の発生もしくは再発を阻害する能力は、例えば、臨床試験中のヒト対象において、ヒトにおける有効性を予測する動物モデル系において、または、インビトロアッセイにおける薬剤の活性をアッセイすることによって、技術を持つ実行者に知られている多様な方法を用いて評価できる。
例として、抗がん剤は、がんの進行を遅延し、または対象のがんの退縮を促進する薬剤である。好ましい実施態様において、治療上有効な量の薬剤は、がんを除去するまで、がんの退縮を促進する。「がんの退縮を促進すること」は、有効な量の薬剤を、単独または抗腫瘍薬と併用して、投与することを意味し、腫瘍の増殖もしくはサイズの減少、腫瘍の壊死、少なくとも1つの症状の重症度の減少、症状のない期間の頻度および持続時間の増加、疾患の苦痛による機能障害もしくは身体障害の予防、または患者の症状の他の改善をもたらす。薬理学的有効性は、薬剤が、患者のがんの退縮を促進する能力を指す。生理学的安全性は、薬剤の投与に起因する、許容される低いレベルの毒性または、細胞、臓器および/もしくは生物のレベルにおける他の有害な生理学的効果(有害効果)を指す。
腫瘍の処置における例として、治療上有効な量または投与量の薬剤は、細胞増殖または腫瘍増殖を、未処置の対象と比較して、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、さらになお好ましくは少なくとも約80%、阻害する。最も好ましい実施態様において、治療上有効な量または投与量の薬剤は、細胞増殖または腫瘍増殖を完全に阻害する(すなわち、好ましくは、細胞増殖または腫瘍増殖を100%阻害する)。化合物が腫瘍増殖を阻害する能力は、後述のアッセイを用いて評価できる。腫瘍増殖の阻害は、処置直後でなくてもよく、一定期間後または、反復投与後にのみ生じてもよい。あるいは、組成物のこの性質を、化合物が細胞増殖を阻害する能力を調べることにより、評価でき、そのような阻害は、技術を持つ実行者に公知のアッセイによって、インビトロで測定できる。本明細書における他の好ましい実施態様において、腫瘍の退縮を、少なくとも約20日間、より好ましくは少なくとも約40日間、またはさらにより好ましくは少なくとも約60日間、観察および継続できる。
本明細書における「併用」療法は、他の文脈から明らかな場合を除き、状況に応じた方法で、2以上の治療薬の投与を包含することを意味し、限定されないが、同時投薬を含む。具体的には、併用療法は、ある治療薬の投与が、別の治療薬の投与によりいくつかの方法で調節される限り、同時投与(合剤(co-formulation)の投与または別個の治療組成物の同時投与)および連続投与または連続的投与の両方を包含する。例えば、ある治療薬を、異なる治療薬を投与した後にのみ投与し、所定期間作用することを可能にし得る。例えば、Kohrt et al. (2011) Blood 117:2423参照。
用語「患者」および「対象」は、予防または治療の処置のいずれかを受ける任意のヒトを指す。例えば、本明細書に記述される方法および組成物を用いて、がんを患う対象を処置できる。
本明細書に記述される様々な態様を、以下の小区分でさらに詳細に記述する。
I.抗CD40抗体
本出願は、がんなどの疾患の処置での、治療薬としての使用において、所望の性質を有する、アゴニスト抗huCD40抗体を開示する。これらの性質は、ヒトCD40に高い親和性で結合する能力、ヒト対象において許容される低い免疫原性、FcγRIIbと優先的に結合する能力、および抗体の化学的安定性を減少させ得る配列傾向の欠如、のうち1つまたはそれ以上を含む。
配列によって本明細書に開示される抗CD40抗体は、ヒトCD40上の特異的なエピトープに結合し、これは実施例5および6に記述されるように決定され得る。同一または密接に関連するエピトープに結合する他の抗体は、これらの所望の性質を共有する可能性があり、競合実験を行うことで発見され得る。
本明細書に開示される抗huCD40抗体と競合する抗huCD40抗体
huCD40との結合において、本発明の抗体と競合する抗huCD40抗体を、本明細書に記述される免疫化プロトコル(実施例1および2)に類似するプロトコルを用いて、産生し得る。配列によって本明細書に開示される抗huCD40抗体との結合に競合する抗体を、マウスまたは他の非ヒト動物をヒトCD40またはその細胞外ドメインを含むコンストラクト(配列番号1の21-193残基)で免疫化することにより、または本明細書に開示される抗huCD40抗体が結合するエピトープを含むヒトCD40フラグメントで免疫化することにより、産生してもよい。得られた抗体を、12D6、5F11、8E8、5G7および/または19G3の、ヒトCD40との結合を遮断する能力について、当分野で周知の方法(例えば、ELISAにおける、CD40の細胞外ドメインの融合タンパク質および免疫グロブリンFcドメインの結合の遮断、または例えばFACSによる、細胞表面上にhuCD40を発現する細胞との結合の遮断)で、スクリーニングできる。様々な実施態様において、テスト抗体を、12D6、5F11、8E8、5G7もしくは19G3の添加前、添加と同時、または添加後に、CD40-Fc融合タンパク質(または、細胞表面上にhuCD40を発現する細胞)と接触させる。例えば、「ビニング」実験を行い(実施例4)、配列によって本明細書に開示される抗体を「参照」として用い、かつテストする抗体を「テスト」抗体として用いて、テスト抗体が配列によって本明細書に開示される抗体と同じ「ビン」に分類されるか否かを決定してもよい。配列によって本明細書に開示される抗体の、ヒトCD40(Fc融合体として、または細胞上のいずれか)との結合を減少させる抗体(特に、おおよそ化学量論的な濃度で)、は、同一の、重複する、または隣接するエピトープと結合する可能性があり、したがって、12D6、5F11、8E8、5G7もしくは19G3の所望の機能的性質を共有し得る。
したがって、本明細書は、本明細書に記述される抗huCD40抗体と細胞上のhuCD40との結合を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%阻害し、かつ/または、細胞上のhuCD40との結合が、本明細書に記述される抗huCD40抗体によって、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%阻害される、抗huCD40抗体を提供し、これは例えば、ELISAまたはFACSによって(例えば、以下の段落に記述されるアッセイを用いて)測定される。
テスト抗体が参照抗体の結合を遮断する(すなわち、参照の抗体と「競合」する)か否かを決定する、代表的な競合実験は、以下のように行われ得る:CD40を発現する細胞を、96ウェルプレートに試料ウェル当たり105細胞ずつ播種する。プレートを氷上に配置し、次いで、非結合テスト抗体を0~50μg/mLの濃度で添加する(最高濃度の50μg/mLから開始する3倍滴定)。無関係のIgGを、第一の抗体のアイソタイプ対照として使用し、同一濃度で(最高濃度の50μg/mLから開始する3倍滴定)添加してもよい。50μg/mLの非標識参照抗体とともにプレインキュベートした試料を、競合遮断の陽性対照(100%阻害)として含んでもよく、最初のインキュベーションにおいて抗体を含まない試料を、陰性対照(競合なし;0%阻害)として使用してもよい。30分のインキュベーション後、標識化(例えばビオチン化)した参照抗体を、洗浄せずに、ウェル当たり2μg/mLの濃度で添加する。試料を氷上でさらに30分間インキュベートする。非結合の抗体を、FACSバッファーで細胞を洗浄することによって、除去する。細胞が結合した、標識化参照抗体を、標識を検出する試薬(例えば、ビオチンの検出における、PE共役ストレプトアビジン(Invitrogen、カタログ番号S21388))で検出する。試料を、FACS Caliburフローサイトメーター(BD, San Jose)で取得し、Flowjoソフトウェア(Tree Star, Inc, Ashland, OR)を用いて分析する。結果を、%阻害として表してもよい。
通常、同一の実験を次に、反対にして行う(すなわち、テスト抗体を参照抗体とし、参照抗体をテスト抗体とする)。ある実施態様において、抗体は、他の抗体の、標的(例えば、ヒトCD40またはそのフラグメント)との結合を、少なくとも部分的に(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%)または完全に(100%)遮断し、これは一方または他方の抗体が参照抗体である場合に、阻害が生じるか否かに関係しない。参照抗体およびテスト抗体は、抗体が互いに両方向に(すなわち、参照抗体が最初に添加される競合実験、およびテスト抗体が最初に添加される競合実験において)競合する場合、互いの標的との結合を「交差遮断(cross-block)」する。
抗huCD40抗体が、例えば実施例4に記述されるような競合実験において、およそ等濃度で存在し、12D6、5F11、8E8、5G7および/または19G3とヒトCD40との結合を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%阻害する場合に、本明細書に開示される抗huCD40抗体と競合すると考えられる。他に示されない限り、抗体が、上述の2段落において概説されるような競合ELISA実験で測定され、本発明の抗CD40抗体からなる群から選択された抗体とおよそ等モル濃度で使用され、選択された抗体とヒトCD40(配列番号1)との結合を少なくとも20%減少させる場合、選択された抗体と競合すると考えられる。
同一のエピトープと結合する抗huCD40抗体
本明細書に開示される抗体と同一または類似のエピトープと結合する、抗huCD40抗体を、本明細書に記述される免疫化プロトコル(実施例1および2)と類似のプロトコルを用いて作製してもよい。得られた抗体を、ヒトCD40との高い親和性結合についてスクリーニングしてもよい(実施例3)。次いで、選択された抗体を、huCD40の配列バリアントを酵母細胞の表面上に提示する酵母ディスプレイアッセイ(実施例6)、または水素-重水素交換実験(実施例5)で調べ、抗体が結合する正確なエピトープを決定してもよい。
エピトープの決定は、当分野で公知の任意の方法で行われ得る。様々な実施態様において、抗huCD40抗体は、huCD40の少なくとも1つの領域内の1以上の同一の残基と接触する場合;huCD40の少なくとも1つの領域内の大部分の残基と接触する場合;huCD40の各領域内の大部分の残基と接触する場合;huCD40の全長に沿う接触の大部分と接触する場合;ヒトCD40の全ての同一の区別される領域において接触する場合;ヒトCD40上の任意の1つの領域における全ての残基と接触する場合;または全ての同一の領域で全ての同一の残基と接触する場合、本明細書に開示される抗huCD40 mAbと同一のエピトープに結合すると考えられる。エピトープ「領域」は、一次配列に沿った残基のクラスターである。
本明細書に記述される抗体を用いて「huCD40上の同一のエピトープ」と結合する抗体を決定する技術は、抗原:抗体複合体の結晶のX線解析を含み、これは、エピトープの原子分解能を提供する。他の方法は、抗体と抗原フラグメントまたは抗原の変異による変種との結合をモニターし、抗原配列のアミノ酸残基の改変による結合の損失が、エピトープの成分を示すと考えられることが多い。方法はまた、対象の抗体が、コンビナトリアルファージディスプレイペプチドライブラリー由来、または標的タンパク質のプロテアーゼ消化物由来の、特異的な短ペプチド(天然の3次元形状または変性した形状のいずれか)を親和性単離する能力に依存し得る。そこでペプチドを、ペプチドライブラリーをスクリーニングするのに用いる抗体に対応するエピトープの決定におけるリードと見なす。エピトープマッピングにおいて、立体構造的に不連続なエピトープをマッピングするのに示されている計算アルゴリズムも開発されている。
エピトープまたはエピトープを含む領域をまた、CD40に広がる一連の重複するペプチドとの結合についてスクリーニングすることによって同定できる。あるいは、Jespers et al. (1994) Biotechnology 12:899の方法を使用して、同一のエピトープを有し、したがって本明細書に記述される抗CD40抗体に類似する性質を有する抗体の選択を導いてもよい。ファージディスプレイを用いて、まず、抗CD40抗体の重鎖を、(好ましくはヒトの)軽鎖のレパートリーと対形成し、CD40結合性抗体を選択し、次いで、新規の軽鎖を(好ましくはヒトの)重鎖のレパートリーと対形成し、本明細書に記述される抗huCD40抗体と同一のエピトープまたはエピトープ領域を有する(好ましくはヒトの) CD40結合性抗体を選択する。あるいは、本明細書に記述される抗体のバリアントを、抗体の重鎖および軽鎖をコードするcDNAの変異誘発によって、得ることができる。
Cunningham & Wells (1989) Science 244: 1081によって記述されるようなアラニンスキャニング変異導入法、またはCD40中のアミノ酸残基の点変異のいくつかの他の形式(実施例6で提供する酵母ディスプレイ法など)を用いて、抗CD40抗体における機能的なエピトープを決定してもよい。
特異的な抗体が結合するエピトープまたはエピトープ領域(「エピトープ領域」は、エピトープを含む領域、またはエピトープと重複する領域である)を、抗体と、CD40のフラグメントを含むペプチドとの結合を評価することによって決定してもよい。CD40(例えば、ヒトCD40)の配列を包含する一連の重複するペプチドを合成し、例えば、直接ELISA、競合的ELISA(ペプチドが、抗体と、マイクロタイタープレートのウェルに結合するCD40との結合を防ぐその能力について、評価する)において、またはチップ上で、結合についてスクリーニングしてもよい。このようなペプチドスクリーニング法は、いくつかの不連続な機能的なエピトープ(すなわち、CD40ポリペプチド鎖の一次配列に沿って連続しないアミノ酸残基を含む、機能的なエピトープ)を検出できない場合がある。
エピトープはまた、水素/重水素交換質量分析(HDX-MS)およびタンパク質の高速光化学的酸化(Fast Photochemical Oxidation)(FPOP)などの、MSに基づくタンパク質フットプリント法によって同定してもよい。HDX-MSは、例えばWei et al. (2014) Drug Discovery Today 19:95でさらに記述されるように実施でき、この方法は、参照によって本明細書に具体的に組み込まれる。実施例5も参照。FPOPは、例えばHambley & Gross (2005) J. American Soc. Mass Spectrometry 16:2057に記述されるように実施でき、この方法は、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
抗CD40抗体が結合するエピトープを、X線結晶構造決定(例えば、WO2005/044853)、分子モデリングおよび核磁気共鳴(NMR)分光法(遊離の場合および対象の抗体との複合体中に結合する場合の、CD40中の不安定なアミド水素のH-D交換速度のNMR決定を含む)などの構造的方法によって決定してもよい(Zinn-Justin et al. (1992) Biochemistry 31:11335; Zinn-Justin et al. (1993) Biochemistry 32:6884)。
X線結晶学に関して、結晶化は、当分野で公知の任意の方法で達成され得(例えば、Giege et al. (1994) Acta Crystallogr. D50:339;McPherson (1990) Eur. J. Biochem. 189:1)、これは、マイクロバッチ(例えば、Chayen (1997) Structure5:1269)、ハンギングドロップ蒸気拡散(例えば、McPherson (1976) J. Biol. Chem. 251:6300)、シーディングおよび透析を含む。少なくとも約1mg/mL、好ましくは約10mg/mL~約20mg/mLの濃度を有する、タンパク質調製物を使用することが望ましい。結晶化は、約10%~約30%(w/v)の濃度を有する、ポリエチレングリコール1000~20,000(PEG;約1000~約20,000Daの平均分子量)、好ましくは、約5000~約7000Da、より好ましくは、約6000Daを含有する沈殿剤溶液中で最もよく達成され得る。タンパク質安定化剤(例えば、約0.5%~約20%の濃度のグリセロール)を含むことが望ましい場合もある。適切な塩(塩化ナトリウム、塩化リチウムまたはクエン酸ナトリウムなど)が、沈殿剤溶液中に、好ましくは約1mM~約1000mMの濃度であることが望ましい場合もある。沈殿剤を、好ましくは、約3.0~約5.0、好ましくは、約4.0のpHに緩衝する。沈殿剤溶液に有用な特定のバッファーは様々であり得、当分野で周知である(Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, Third ed., (1994) Springer-Verlag, New York)。有用なバッファーの例として、限定されないが、HEPES、Tris、MESおよび酢酸が挙げられる。結晶は2℃、4℃、8℃および26℃を含む、多様な温度で成長し得る。
抗体:抗原結晶を、周知のX線回折技術で調べてもよく、X-PLOR(Yale University、1992、Molecular Simulations、Inc.によって配布された;例えば、Blundell &Johnson (1985) Meth. Enzymol. 114 & 115, H. W. Wyckoff et al., eds., Academic Press;米国特許出願公開第2004/0014194号を参照)およびBUSTER(Bricogne (1993) Acta Cryst. D49:37-60; Bricogne (1997) Meth. Enzymol. 276A:361-423, Carter & Sweet, eds.;Roversi et al. (2000) Acta Cryst. D56:1313-1323)などのコンピュータソフトウェアを用いて精密化され得、これらの開示内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
他の指示がない限り、請求項に関して、抗体が結合するエピトープは、実施例5に実質的に記述されるように、HDX-MS法で決定されるエピトープである。
高い親和性で結合する抗CD40抗体
いくつかの実施態様において、本発明の抗huCD40抗体は、本明細書に開示される抗huCD40抗体と同様に、huCD40と高い親和性で結合し、有効な治療薬である可能性を高める。様々な実施態様において、本発明の抗huCD40抗体は、huCD40と、10nM、5nM、2nM、1nM、300pMまたは100pM未満のKDで結合する。他の実施態様において、本発明の抗huCD40抗体は、huCD40と、2nMないし100pMのKDで結合する。抗体がhuCD40に結合する能力を評価する標準的なアッセイは、ELISA、RIA、ウエスタンブロット、バイオレイヤー干渉法(BLI)(実施例3参照)およびBIACORE(登録商標)SPR分析(実施例4参照)を含む。
抗CD40抗体配列バリアント
本明細書に開示される抗体配列において、いくつかの変異性が許容され、抗体の所望の性質を維持し得る。CDR領域を、カバットシステム(Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242)を用いて描写する。したがって、本発明は、本明細書に開示される抗体(すなわち、12D6、5F11、8E8、5G7および19G3ならびにそのヒト化誘導体)のCDR配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるCDR配列を含む、抗huCD40抗体をさらに提供する。本発明はまた、本明細書に開示される抗体(すなわち、12D6、5F11、8E8、5G7および19G3ならびにそのヒト化誘導体)の重鎖および/または軽鎖可変ドメイン配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である重鎖および/または軽鎖可変ドメイン配列を含む、抗huCD40抗体を提供する。
CDR配列を共有する抗CD40抗体または同一のマウス生殖系列に由来する抗CD40抗体
抗原結合特異性が、主にCDRによって決定されることを考慮すると、本明細書に開示される抗体(すなわち、12D6、5F11、8E8、5G7および19G3)とCDR配列を共有する抗体は、その所望の性質を共有する可能性がある。いくつかの実施態様において、本発明の抗huCD40抗体は、抗体12D6、5F11、8E8、5G7または19G3と、同一のマウスV領域およびJ領域の生殖系列配列に由来する重鎖および軽鎖可変領域を含む。抗体12D6は、マウス生殖系列VH1-39_01およびIGHJ4に由来する重鎖ならびに生殖系列VK1-110_01およびIGKJ1に由来する軽鎖を持つ。抗体5F11は、マウス生殖系列VH1-4_02およびIGHJ3に由来する重鎖ならびに生殖系列VK3-5_01およびIGKJ5に由来する軽鎖を持つ。抗体8E8は、マウス生殖系列VH1-80_01およびIGHJ2に由来する重鎖ならびに生殖系列VK1-110_01およびIGKJ2に由来する軽鎖を持つ。抗体5G7は、マウス生殖系列VH1-18_01およびIGHJ4に由来する重鎖ならびに生殖系列VK10-96_01およびIGKJ2に由来する軽鎖を持つ。抗体19G3は、マウス生殖系列VH5-9-4_01およびIGHJ3に由来する重鎖ならびに生殖系列VK1-117_01およびIGKJ2に由来する軽鎖を持つ。重鎖D領域の生殖系列配列(CDRH3の一部を構成)は、所定の高い変異性を帰属するのがしばしば困難であるため、明記しておらず、したがって本発明の抗体は、記述したVおよびJ領域の生殖系列ならびに任意のD領域の生殖系列由来の重鎖を含み得る。ヒトCD40と結合し、これらの生殖系列配列の一部または全部に由来する、他の抗体は、配列(特に、同の一V領域遺伝子に由来する配列)において密接に関連している可能性があり、したがって、同一の所望の性質を共有すると想定される。
本明細書において、抗体の可変領域が、マウス生殖系列免疫グロブリン遺伝子を用いる系から得られ、抗体配列が、他の任意の生殖系列よりも、特定の生殖系列に由来する可能性が高いように、生殖系列と十分に関連している場合、マウス抗体は、所定の生殖系列配列に「由来する」重鎖または軽鎖可変領域を含む。このような系は、マウスを対象の抗原で免疫化することを含む。抗体の配列が「由来する」マウス生殖系列免疫グロブリン配列を、抗体のアミノ酸配列と、マウス生殖系列免疫グロブリンのアミノ酸配列とを比較すること、および抗体の配列と配列が最も近い(すなわち、最大の%同一性)生殖系列免疫グロブリン配列を選択することによって、同定できる。特定の生殖系列免疫グロブリン配列に「由来する」マウス抗体は、生殖系列配列と比較して、例えば天然に生じる体細胞変異または部位特異的変異の意図的な導入による、アミノ酸の相違を含み得る。しかし、選択されたマウス抗体は通常、生殖系列免疫グロブリン遺伝子(例えばV領域)によってコードされるアミノ酸配列と、アミノ酸配列において少なくとも90%同一である。特定の場合には、マウス抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子(例えばV領域)によってコードされるアミノ酸配列と、アミノ酸配列において少なくとも95%、またはさらに少なくとも96%、97%、98%または99%同一であり得る。通常、特定のマウス生殖系列配列に由来する抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子(例えばV領域)によってコードされるアミノ酸配列と、10個以下のアミノ酸の相違を示す。特定の場合、マウス抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子(例えばV領域)によってコードされるアミノ酸配列と5個以下、またはさらに4、3、2もしくは1個以下のアミノ酸の相違を含み得る。
II.遺伝子操作および改変した抗体
VHおよびVL領域
改変した抗体を遺伝子操作するために、本明細書に開示されるVHおよび/またはVL配列の1つまたはそれ以上を有する抗体を出発物質として用いて調製され得る、遺伝子操作および改変した抗体をまた提供し、この改変した抗体は、出発抗体から変化した性質を有し得る。抗体を、一方または両方の可変領域(すなわち、VHおよび/またはVL)内(例えば、1以上のCDR領域内、および/または1以上のフレームワーク領域内)の1以上の残基を改変することによって、遺伝子操作してもよい。さらに、またはあるいは、抗体を、定常領域内の残基を改変することで遺伝子操作し、例えば、抗体のエフェクター機能を変えてもよい。
ある種の可変領域の実施可能な遺伝子操作は、CDRグラフティングである。このようなグラフティングは、本明細書に開示される抗huCD40抗体との結合について競合し、かつ/または、本明細書に開示される抗huCD40抗体と同一のエピトープに結合する、非ヒト抗CD40抗体のヒト化において特に役立つ。抗体は主に、6つの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基を介して、標的抗原と相互作用する。このため、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外側の配列よりも、個々の抗体間でより多様である。CDR配列は、ほとんどの抗体抗原相互作用に関与するため、種々の性質を持つ種々の抗体由来のフレームワーク配列上に移植した、特定の参照抗体由来のCDR配列を含む、発現ベクターを構築することによって、特定の参照抗体の性質を模倣する組換え抗体を発現できる(例えば、Riechmann, L. et al. (1998) Nature 332:323-327; Jones, P. et al. (1986) Nature 321:522-525; Queen, C. et al. (1989) Proc. Natl. Acad. See. U.S.A. 86:10029-10033;Winterの米国特許第5,225,539号およびQueen et alの米国特許第5,530,101号;同5,585,089号;同5,693,762号および同6,180,370号参照)。
このようなフレームワーク配列を、生殖系列抗体遺伝子配列を含む公開DNAデータベースまたは発表された参考文献から得てもよい。例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子における生殖系列DNA配列を、「VBase」ヒト生殖系列配列データベース、ならびにKabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No.91-3242; Tomlinson, I. M., et al. (1992) "The Repertoire of Human Germline VH Sequences Reveals about Fifty Groups of VH Segments with Different HypervariableLoops" J. Mol. Biol. 227:776-798;およびCox, J. P. L. et al. (1994) "A Directoryof Human Germ-line VH Segments Reveals a Strong Bias in their Usage" Eur. J. Immunol. 24:827-836において見出すことができ、これらの各々の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
本明細書に記述される抗体に用いる、好ましいフレームワーク配列は、本明細書に記述される抗体によって用いられるフレームワーク配列と構造的に類似した配列である。VH CDR1、2および3配列ならびにVL CDR1、2および3配列を、フレームワーク配列が由来する生殖系列免疫グロブリン遺伝子に見出される配列と同一の配列を有するフレームワーク領域上に移植してもよく、またはCDR配列を、生殖系列配列と比較して、最大20個の、好ましくは保存的な、アミノ酸置換を含むフレームワーク領域上に移植してもよい。例えば、特定の場合、フレームワーク領域内の残基を変異させることが、抗体の抗原結合能力を維持または増強するのに有益であることがわかっている(例えば、Queen et alの米国特許第5,530,101号;同5,585,089号;同5,693,762号および同6,180,370号を参照)。
本明細書に記述される遺伝子操作した抗体は、VHおよび/またはVL内のフレームワーク残基に改変を行い、例えば抗体の性質を改善した、抗体を含む。このようなフレームワークの改変は、抗体の免疫原性を低下させるように行われることが多い。例えば、1つの手法は、1以上のフレームワーク残基を、対応する生殖系列配列に「復帰変異(backmutate)」させることである。より具体的には、体細胞変異を起こした抗体は、抗体が由来する生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基を含有し得る。このような残基は、抗体のフレームワーク配列と、抗体が由来する生殖系列配列とを比較することで同定できる。フレームワーク領域配列をその生殖系列配置に戻すため、例えば、部位特異的変異導入またはPCRを介する変異導入によって、体細胞変異を生殖系列配列に「復帰変異させる」ことができる。このような「復帰変異させた」抗体も包含することを意図する。
別の種類のフレームワークの改変は、フレームワーク領域内、または1以上のCDR領域内における、1以上の残基を変異させ、T細胞エピトープを除去し、それによって、抗体の潜在的な免疫原性を減少させることに関する。この手法は、「脱免疫化」とも呼ばれ、Carr et alによる米国特許出願公開第2003/0153043号にさらに詳細に記述される。
別の種類の可変領域の改変は、CDR領域内のアミノ酸残基を変異させ、対象の抗体の1以上の結合の性質(例えば、親和性)を改善することである。部位特異的変異導入またはPCRを介する変異導入を行い、変異および抗体結合の効果または対象の他の機能的な性質を導入してもよい。保存的な改変を導入することが好ましい。変異は、アミノ酸付加、欠失、または好ましくは置換であり得る。さらに通常、CDR領域内の1、2、3、4または5個以下の残基が変更される。
抗体のCDR内のメチオニン残基を酸化し、潜在的な化学的分解および結果として、抗体の効力の低下をもたらしてもよい。したがって、酸化分解を受けないアミノ酸残基と置換した、重鎖および/または軽鎖CDR内の1以上のメチオニン残基を有する抗CD40抗体も提供する。同様に、特にCDRにおいて、脱アミド化部位を抗CD40抗体から除去してもよい。抗原結合ドメイン内の潜在的なグリコシル化部位を排除し、抗原結合に干渉し得るグリコシル化を防ぐことが好ましい。例えば、米国特許第5,714,350号参照。
標的抗原結合
様々な実施態様において、本発明の抗体を改変し、抗原結合が有害である組織および環境において、抗原結合を選択的に遮断するが、抗原結合が有益である場合に、抗原結合を可能とする。ある実施態様において、抗体の抗原結合表面と特異的に結合し、抗原結合に干渉する、遮断ペプチド「マスク」を産生し、このマスクは、ペプチダーゼ切断可能リンカーによって抗体の各々の結合アームと連結している。例えば、CytomXの米国特許第8,518,404号参照。このようなコンストラクトは、プロテアーゼレベルが、非腫瘍組織と比較して、腫瘍微小環境において大幅に増加する、がんの処置に有用である。腫瘍微小環境における切断可能なリンカーの選択的切断は、マスキングペプチド/遮断ペプチドの解離を可能とし、これは、抗原結合が望ましくない副作用を生じ得る末梢組織ではなく、腫瘍において選択的な抗原結合を可能にする。
あるいは、関連する実施態様において、(二価)抗体の両方の抗原結合表面と結合し、抗原結合に干渉する、2つの抗原結合ドメインを含む二価結合化合物(「マスキングリガンド」)を開発し、この2つの結合ドメインのマスクは、切断可能なリンカー(例えば、ペプチダーゼによって切断可能なリンカー)によって互いに(抗体にではなく)連結している。例えば、Tegopharm Corpの国際特許出願公開WO2010/077643参照。マスキングリガンドは、抗体が結合することが意図される抗原を含み得、もしくはその抗原に由来し得、または独立に生成し得る。そのようなマスキングリガンドは、プロテアーゼレベルが、非腫瘍組織と比較して、腫瘍微小環境で大幅に増加する、がんの処置に有用である。腫瘍微小環境における切断可能なリンカーの選択的切断は、2つの結合ドメインの互いからの解離を可能とし、抗体の抗原結合表面の結合力を低下させる。結果としてのマスキングリガンドの抗体からの解離は、抗原結合が望ましくない副作用を生じ得る末梢組織ではなく、腫瘍において、選択的な抗原結合を可能にする。
Fcおよび改変したFc
本発明の抗体は、使用が意図される抗体の(もしあるならば)生物活性に基づいて選択される、種々のFc領域を含む定常ドメインと組み合わせた、本発明の可変ドメインを含み得る(Salfeld (2007) Nat. Biotechnol. 25:1369)。例えば、ヒトIgGは、4つのサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4)に分類でき、これらの各々は、1以上のFcγ受容体(活性化受容体FcγRI(CD64)、FcγRIIA、FcγRIIC(CD32a、c);FcγRIIIAおよびFcγRIIIB(CD16a、b)ならびに阻害性受容体FcγRIIB(CD32b))との結合について、および補体の第1の成分(C1q)について、特有のプロファイルを有するFc領域を含む。ヒトIgG1およびIgG3は、すべてのFcγ受容体と結合し;IgG2は、FcγRIIAH131と結合し、FcγRIIAR131 FcγRIIIAV158とより低い親和性で結合し;IgG4は、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB、FcγRIICおよびFcγRIIIAV158と結合し;阻害性受容体FcγRIIBは、IgG1、IgG2およびIgG3について、他の全てのFcγ受容体よりも低い親和性を有する(Bruhns et al. (2009) Blood 113:3716)。研究は、FcγRIがIgG2と結合せず、FcγRIIIBがIgG2またはIgG4と結合しないことを示してきた(同上の文献)。一般に、ADCC活性に関して、ヒトIgG1≧IgG3>>IgG4≧IgG2である。結果として、例えば、IgG1定常ドメイン(IgG2またはIgG4ではなく)を、ADCCを望む薬物の使用において選択してもよく;IgG3を、FcγRIIIA発現NK細胞、マクロファージの単球の活性化において選択してもよく;IgG4を、抗体がアレルギー患者を脱感作するのに使用される場合に、選択してもよい。IgG4は、抗体が全てのエフェクター機能を持たないことが望まれる場合にも、選択され得る。
本明細書に記述される抗huCD40可変領域を、Fc(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4 Fc)と連結(例えば、共有結合または融合)してもよく、これは任意のアロタイプまたはイソアロタイプ(例えば、IgG1において:G1m、G1m1(a)、G1m2(x)、G1m3(f)、G1m17(z);IgG2において:G2m、G2m23(n);IgG3において:G3m、G3m21(g1)、G3m28(g5)、G3m11(b0)、G3m5(b1)、G3m13(b3)、G3m14(b4)、G3m10(b5)、G3m15(s)、G3m16(t)、G3m6(c3)、G3m24(c5)、G3m26(u)、G3m27(v);)であってもよい。例えば、Jefferis et al. (2009) mAbs 1:1)参照。アロタイプの選択は、潜在的な免疫原性の懸念に影響され得、例えば、抗薬物抗体の形成を最小限にする。
好ましい実施態様において、本発明の抗CD40抗体は、FcγRIIbと結合するFc、またはFcγRIIbとの結合を増強するFcを有し、これは、アゴニズムの増強を与え得る。例えば、WO 2012/087928; Li & Ravetch (2011) Science 333:1030; Wilson et al. (2011) Cancer Cell 19:101; White et al. (2011) J. Immunol. 187:1754参照。本明細書に記述される可変領域を、阻害性受容体FcγRIIbとの親和性を増強するFcバリアントと連結し、例えば、アポトーシス誘導活性またはアジュバント活性を増強してもよい(Li & Ravetch (2012) Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 109:10966;米国特許出願公開第2014/0010812号)。そのようなバリアントは、FcγRIIb+細胞に関連する免疫調節活性を有する抗体を提供し、この細胞は例えば、B細胞および単球を含む。ある実施態様において、Fcバリアントは、1以上の活性化受容体と比較して、FcγRIIbとの親和性の選択的な増強を与える。そのようなバリアントはまた、FcRを介する架橋結合の増強を示し、治療効果の増強をもたらす。FcγRIIbとの結合を変更する改変は、EU指標に従って、234、235、236、237、239、266、267、268、325、326、327、328および332からなる群から選択された位置における、1以上の改変を含む。FcγRIIb親和性を増強する、代表的な置換は、限定されないが、234D、234E、234F、234W、235D、235F、235R、235Y、236D、236N、237D、237N、239D、239E、266M、267D、267E、268D、268E、327D、327E、328F、328W、328Yおよび332Eを含む。代表的な置換は、235Y、236D、239D、266M、267E、268D、268E、328F、328Wおよび328Yを含む。FcγRIIbとの結合を増強する、他のFcバリアントは、235Y-267E、236D-267E、239D-268D、239D-267E、267E-268D、267E-268Eおよび267E-328Fを含む。具体的に、ヒトIgG1における、S267E、G236D、S239D、L328FおよびI332E変異体(S267E-L328F二重変異体を含む)は、阻害性FcyRIIb受容体に対する親和性の特異的な増強において、特に価値がある(Chu et al. (2008) Mol. Immunol. 45:3926;米国特許出願公開第2006/024298号;WO2012/087928)。FcγRIIb(FcγRIIaR131とは区別される)に対する特異性の増強を、P238D置換および他の変異(Mimoto et al. (2013) Protein. Eng. Des. &Selection 26:589;WO2012/115241)、ならびにV262EおよびV264E(Yu et al. (2013) J. Am. Chem. Soc. 135:9723およびWO2014/184545)を加えることによって、得てもよい。表4参照。
半減期延長
ある実施態様において、抗体を、その生物学的半減期が増加するように、改変する。様々な手法が可能である。例えばこれは、FcRnに対するFc領域の結合親和性を増加させることによって、なされ得る。ある実施態様において、Presta et alによって米国特許第5,869,046号および同6,121,022号に記述されるように、抗体を、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループに由来するサルベージ受容体結合エピトープを含むように、CH1またはCL領域内で変更する。FcRnとの結合が増加し、かつ/または薬物動態の性質を向上する、他の代表的なFcバリアントは、259、308および434番目における置換を含み、これは例えば、259I、308F、428L、428M、434S、434H、434F、434Yおよび434Mを含む。FcのFcRnとの結合を増加させる、他のバリアントは:250E、250Q、428L、428F、250Q/428L(Hinton et al. (2004) J. Biol. Chem. 279(8): 6213-6216、Hinton et al. (2006) Journal of Immunology 176:346-356)、256A、272A、305A、307A、311A、312A、378Q、380A、382A、434A(Shields et al. (2001) Journal of Biological Chemistry 276(9):6591-6604)、252F、252Y、252W、254T、256Q、256E、256D、433R、434F、434Y、252Y/254T/256E、433K/434F/436H(Dall'Acqua et al. (2002) Journal of Immunology 169:5171-5180, Dall'Acqua et al. (2006) Journal of Biological Chemistry 281:23514-23524)を含む。米国特許第8,367,805号を参照。
IgG Fcにおける特定の保存された残基(I253、H310、Q311、H433、N434)の改変(N434Aバリアント(Yeung et al. (2009) J. Immunol. 182:7663)など)は、FcRn親和性を増加させ、したがって循環における抗体の半減期を増加させる方法として提案されている。WO98/023289参照。M428LおよびN434Sを含む組合せFcバリアントは、FcRn結合を増加させ、血清半減期を最大5倍に増大することが示されている(Zalevsky et al. (2010) Nat. Biotechnol. 28:157)。T307A、E380AおよびN434A改変を含む、組合せFcバリアントはまた、IgG1抗体の半減期を延長する(Petkova et al. (2006) Int. Immunol. 18:1759)。さらに、M252Y-M428L、M428L-N434H、M428L-N434F、M428L-N434Y、M428L-N434A、M428L-N434MおよびM428L-N434Sバリアントを含む、組合せFc変異体はまた、半減期を延長することが示されている。WO2009/086320参照。
さらに、M252Y、S254TおよびT256Eを含む、組合せFc変異体は、半減期を約4倍増加させる(Dall'Acqua et al. (2006) J. Biol. Chem. 281:23514)。FcRn親和性が増加するが、pH依存性の低下を示す、関連するIgG1改変(M252Y-S254T-T256E-H433K-N434F)を用いて、他の抗体とFcRnとの結合を防ぐ競合物質として使用する、IgG1コンストラクト(「MST-HN Abdeg」)が作製されており、これは、他の抗体(内因性IgG(例えば、自己免疫状況における)または別の外因性(治療用)mAbのいずれか)のクリアランスの増加をもたらす(Vaccaro et al. (2005) Nat. Biotechnol. 23:1283;WO2006/130834)。
FcRn結合を増加させる、他の改変は、Yeung et al. (2010) J. Immunol. 182:7663-7671;6,277,375;6,821,505;WO97/34631;WO2002/060919に記述される。
ある実施態様において、ハイブリッドIgGアイソタイプを用いて、FcRn結合を増加させ、半減期を潜在的に増加させてもよい。例えば、IgG1/IgG3ハイブリッドバリアントを、CH2および/またはCH3領域におけるIgG1位置を、IgG3由来のアミノ酸と、2種のアイソタイプで異なっている位置において置換することにより、構築してもよい。したがって、ハイブリッドバリアントIgG抗体を、1以上の置換(例えば、274Q、276K、300F、339T、356E、358M、384S、392N、397M、422I、435Rおよび436F)を含むように、構築してもよい。本明細書に記述される他の実施態様において、IgG1/IgG2ハイブリッドバリアントを、CH2および/またはCH3領域におけるIgG2位置を、IgG1に由来するアミノ酸と、2種のアイソタイプで異なっている位置において置換することにより、構築してもよい。したがって、ハイブリッドバリアントIgG抗体を、1以上の置換(例えば、1以上の下記のアミノ酸置換:233E、234L、235L、-236G(236番目におけるグリシンの挿入を指す)および327A)を含むように、構築してもよい。米国特許第8,629,113号参照。IgG1/IgG2/IgG4配列のハイブリッドが、おそらく血清半減期を増大させ、発現を改善するように、作製されている(米国特許第7,867,491号(その配列番号18))。
本発明の抗体の血清半減期はまた、ペグ化によって増加し得る。抗体をペグ化し、例えば、抗体の生物学的(例えば、血清)半減期を増加させてもよい。抗体をペグ化するため、通常、抗体またはそのフラグメントを、1以上のPEG基が抗体または抗体フラグメントに結合する条件下で、ポリエチレングリコール(PEG)試薬(PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体など)と反応させる。好ましくは、ペグ化を、反応性PEG分子(または類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応を介して行う。本明細書において、用語「ポリエチレングリコール」は、他のタンパク質の誘導体化に使用されるPEGの任意の型(モノ(C1~C10)アルコキシ-またはアリールオキシ-ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール-マレイミドなど)を包含することが意図される。ある実施態様において、ペグ化された抗体は、非グリコシル化抗体である。タンパク質をペグ化する方法は当分野で公知であり、本明細書に記述される抗体に適用できる。例えば、Nishimura et al.によるEP0154316およびIshikawa et al.によるEP0401384参照。
あるいは、いくつかの状況下において、本発明の抗体の半減期を、増加ではなく、減少させることが望ましい場合がある。ヒトIgG1のFcにおけるI253A(Hornick et al. (2000) J. Nucl. Med. 41:355)およびH435A/R、I253AまたはH310A(Kim et al. (2000) Eur. J. Immunol. 29:2819)などの改変は、FcRn結合を減少させ、したがって、医用画像などの迅速なクリアランスが好ましい状況における使用のために、半減期を減少(クリアランスを増大)させ得る。Kenanova et al. (2005) Cancer Res. 65:622も参照。クリアランスを増強する他の手段は、本発明の抗原結合ドメインを、FcRnと結合する能力を持たない抗体フラグメント(Fabフラグメントなど)にフォーマットすることを含む。このような改変は、抗体の循環半減期を数週間から数時間に減少させ得る。次に、抗体フラグメントの選択的なペグ化を用いて、抗体フラグメントの半減期を、必要に応じて微調整(増加)してもよい(Chapman et al. (1999) Nat. Biotechnol. 17:780)。抗体フラグメントを、ヒト血清アルブミンと融合(例えば、融合タンパク質コンストラクトにおいて)し、半減期を増加させてもよい(Yeh et al. (1992) Proc. Nat'l Acad. Sci. 89:1904)。あるいは、本発明の第1の抗原結合ドメインおよびヒト血清アルブミン(HSA)と結合する第2の抗原結合ドメインを含む、二重特異性抗体を構築してもよい。国際特許出願公開WO2009/127691およびそれに引用される特許参考文献を参照。あるいは、特殊なポリペプチド配列(例えば、「XTEN」ポリペプチド配列)を抗体フラグメントに添加し、半減期を増加させてもよい(Schellenberger et al. (2009) Nat. Biotechnol. 27:1186;国際特許出願公開WO2010/091122)。
さらなるFcバリアント
IgG4定常ドメインを使用する場合、S228P置換を含むことが通常好ましく、これは、IgG1のヒンジ配列を模倣し、それによって、IgG4分子を安定化する(例えば、処置される患者において、治療用抗体と内因性IgG4との間のFabアーム交換を減少させる)(Labrijn et al. (2009) Nat. Biotechnol. 27:767;Reddy et al. (2000) J. Immunol. 164:1925)。
IgG1コンストラクトのヒンジにおける潜在的なプロテアーゼ切断部位を、D221GおよびK222S改変で除去し、抗体の安定性を増加できる(WO2014/043344)。
Fcバリアントの、そのリガンド(Fc受容体)との親和性および結合の性質は、当分野で公知の様々なインビトロアッセイ法(生化学または免疫学に基づくアッセイ)によって決定でき、このアッセイ法は、限定されないが、平衡法(例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)または放射免疫測定法(RIA))または速度論(例えば、BIACORE(登録商標)SPR分析)および他の方法(間接結合アッセイ、競合阻害アッセイ、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、ゲル電気泳動およびクロマトグラフィー(例えば、ゲル濾過)など)を含む。これらおよび他の方法は、調査する1以上の成分上の標識を用いてもよく、かつ/または多様な検出方法を利用してもよく、これは限定されないが、発色標識、蛍光標識、発光標識または同位体標識を含む。結合親和性および速度論の詳細な説明を、抗体-免疫原相互作用に重点を置く、Paul, W. E., ed., Fundamental Immunology, 4th Ed., Lippincott-Raven, Philadelphia (1999)に見ることができる。
さらに他の実施態様において、抗体のグリコシル化を改変し、エフェクター機能を増加または減少させる。例えば、脱グリコシル化抗体を、297番目の保存されたアスパラギン残基を変異し(例えば、N297A)、したがって、補体およびFcγRI結合を消失させることによって、全てのエフェクター機能を持たないように作製できる(Bolt et al. (1993) Eur. J. Immunol. 23:403)。Tao & Morrison (1989) J. Immunol. 143:2595(IgG1中のN297Qを用いて、297番目でのグリコシル化を除去した)も参照。
脱グリコシル化抗体は一般に、エフェクター機能を持たないが、変異を導入し、その機能を修復できる。脱グリコシル化抗体(例えば、N297A/C/D/またはH変異に起因する抗体、またはタンパク質をグリコシル化しない系(例えば、大腸菌)で産生した抗体)を、さらに変異させ、FcγR結合を修復してもよい(例えば、S298Gおよび/またはT299A/G/もしくはH(WO2009/079242)またはE382VおよびM428I(Jung et al. (2010) Proc. Nat'l Acad. Sci. (USA) 107:604))。
糖鎖工学を用いて、Fc領域のAsn297に結合する糖鎖のα2,6シアリル含量を変更することによって、IgGコンストラクトの抗炎症性の性質を改変してもよく、ここで、α2,6シアリル化型の割合の増加は、抗炎症効果の増強をもたらす。Nimmerjahn et al. (2008) Ann. Rev. Immunol. 26:513参照。逆に、α2,6シアリル化糖を有する抗体の割合の減少は、抗炎症性の性質が望まれない場合に有用であり得る。例えば、α2,6シアリル化型の選択的な精製、または酵素的改変によって、抗体のα2,6シアリル化含量を改変する方法は、米国特許出願公開第2008/0206246号で提供される。他の実施態様において、Fc領域のアミノ酸配列を改変し、例えばF241A改変の包含によって、α2,6シアリル化の効果を模倣し得る(WO2013/095966)。
III.抗体の物理学的性質
本明細書に記述される抗体は、軽鎖または重鎖可変領域のいずれかにおいて、1以上のグリコシル化部位を含み得る。このようなグリコシル化部位は、抗体の免疫原性の増加または抗原結合の変化による抗体のpKの変更をもたらし得る(Marshall et al. (1972) Ann. Rev. Biochem. 41:673-702;Gala and Morrison (2004) J. Immunol. 172:5489-94;Wallick et al. (1988) J. Exp. Med. 168:1099-109; Spiro (2002) Glycobiology 12:43R-56R; Parekh et al. (1985) Nature 316:452-7;Mimura et al. (2000) Mol. Immunol. 37:697-706)。グリコシル化は、N-X-S/T配列を含有するモチーフで起こることが知られている。いくつかの場合には、可変領域のグリコシル化を含有しない抗huCD40抗体を有することが好ましい。これは、可変領域中にグリコシル化モチーフを含有しない抗体を選択すること、またはグリコシル化領域内の残基を変異させることのいずれかによって、達成され得る。
ある実施態様において、本明細書に記述される抗体は、アスパラギン異性部位を含有しない。アスパラギンの脱アミド化は、N-GまたはD-G配列で起こり得、イソアスパラギン酸残基の生成をもたらし、これは、ポリペプチド鎖中にねじれを導入し、その安定性を減少させる(イソアスパラギン酸効果)。
各抗体は、特有の等電点(pI)を有し、これは一般に、6ないし9.5のpH範囲に該当する。IgG1抗体のpIは通常、7~9.5のpH範囲に該当し、IgG4抗体のpIは通常、6~8のpH範囲に該当する。正常な範囲外のpIを有する抗体は、インビボ条件下でいくらかのアンフォールディングおよび不安定性を有し得ると推測されている。したがって、正常な範囲内に該当するpI値を含む抗CD40抗体を有することが好ましい。これは、正常な範囲のpIを有する抗体を選択すること、または帯電した表面の残基を変異させることのいずれかによって、達成され得る。
各抗体は、特徴的な融解温度を有し、融解温度が高いほど、インビボにおける全体的な安定性が高いことを示す(Krishnamurthy & Manning (2002) Curr Pharm Biotechnol3:361-71)。一般に、TM1(最初のアンフォールディングの温度)は、60℃超、好ましくは、65℃超、さらにより好ましくは、70℃超であることが好ましい。抗体の融点は、示差走査熱量測定(Chen et al (2003) Pharm Res 20:1952-60;Ghirlando et al. (1999) Immunol Lett. 68:47-52)または円偏光二色性(Murray et al. (2002) J. Chromatogr.Sci. 40:343-9)を用いて測定できる。好ましい実施態様において、迅速に分解しない抗体を選択する。抗体の分解を、キャピラリー電気泳動(CE)およびMALDI-MS(Alexander & Hughes (1995) Anal Chem. 67:3626-32)を用いて測定できる。
別の好ましい実施態様において、最小限の凝集効果を有する抗体を選択し、この凝集効果は、望ましくない免疫応答のトリガーおよび/または変更された、もしくは不都合な薬物動態の性質を導き得る。一般に、抗体は、25%以下、好ましくは20%以下、さらにより好ましくは15%以下、さらにより好ましくは10%以下および、さらにより好ましくは、5%以下の凝集を許容する。凝集は、サイズ排除カラム(SEC)クロマトグラフィー、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)および光散乱を含む、いくつかの技術によって測定できる。
IV.核酸分子
本明細書に記述される別の態様は、本明細書に記述される抗体をコードする核酸分子に
関する。核酸は、全細胞において、細胞溶解物において、または部分的に精製された形式もしくは実質的に純粋な形式で、存在し得る。核酸を、アルカリ/SDS処理、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフィー、制限酵素、アガロースゲル電気泳動、および当分野で周知の他の技術を含む標準的な技術により、例えば、他の細胞性核酸(例えば、他の染色体DNA、例えば、自然界で単離されたDNAと連結している染色体DNA)またはタンパク質などの、他の細胞成分または他の混入物質を除去して精製した場合に、「単離された」こととなり、または「実質的に純粋な状態となる」。F. Ausubel, et al., ed. (1987) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York参照。本明細書に記述される核酸は、例えば、DNAまたはRNAであってよく、イントロン配列を含んでも、含まなくてもよい。ある実施態様において、核酸はcDNA分子である。
本明細書に記述される核酸を、標準的な分子生物学的技術で得てもよい。ハイブリドーマ(例えば、以下にさらに記述されるようなヒト免疫グロブリン遺伝子を持つトランスジェニックマウスから調製されたハイブリドーマ)によって発現される抗体において、ハイブリドーマによって作製される抗体の軽鎖および重鎖をコードするcDNAを、標準的なPCR増幅またはcDNAクローニング技術によって得てもよい。免疫グロブリン遺伝子ライブラリーから(例えば、ファージディスプレイ技術を使用して)得られる抗体について、抗体をコードする核酸を、ライブラリーから回収してもよい。
VHおよびVLセグメントをコードするDNAフラグメントが得られると、これらのDNAフラグメントを、例えば、可変領域遺伝子を、全長抗体鎖遺伝子、Fabフラグメント遺伝子、またはscFv遺伝子に変換するように、標準的な組換えDNA技術によってさらに操作できる。これらの操作では、VLまたはVHをコードするDNAフラグメントは、抗体定常領域または可動性リンカーなどの、別のタンパク質をコードする別のDNAフラグメントと作動可能に連結している。この文脈において使用される、用語「作動可能に連結する」は、2種のDNAフラグメントによってコードされるアミノ酸配列がインフレームのままであるように、2種のDNAフラグメントが接続されることを意味するものとする。
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHをコードするDNAを、重鎖定常領域(ヒンジ、CH1、CH2および/またはCH3)をコードする別のDNA分子と作動可能に連結することによって、全長重鎖遺伝子に変換され得る。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、当分野で公知であり(例えば、Kabat, E. A., el al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242参照)、これらの領域を包含するDNAフラグメントは、標準的なPCR増幅によって得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域、例えば、IgG1領域であり得る。Fabフラグメント重鎖遺伝子において、VHをコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子と作動可能に連結され得る。
VL領域をコードする単離されたDNAは、VLをコードするDNAを、軽鎖定常領域、CLをコードする別のDNA分子と作動可能に連結することによって、全長軽鎖遺伝子(およびFab軽鎖遺伝子)に変換され得る。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当分野で公知であり(例えば、Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242参照)、これらの領域を包含するDNAフラグメントは、標準的なPCR増幅によって得ることができる。軽鎖定常領域は、κまたはλ定常領域であり得る。
scFv遺伝子を作製するために、VHおよびVLをコードするDNAフラグメントを、可動性リンカーをコードする(例えば、アミノ酸配列(Gly4-Ser)3をコードする)別のフラグメントに作動可能に連結し、その結果、VHおよびVL配列が、可動性リンカーによって接続されたVLおよびVH領域を有する連続一本鎖タンパク質として発現され得る(例えば、Bird et al. (1988) Science 242:423-426; Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci.USA 85:5879-5883; McCafferty et al., (1990) Nature 348:552-554参照)。
V. 抗体作製
本発明の様々の抗体、例えば、本明細書に開示される抗ヒトCD40抗体と同一エピトープと競合または結合する抗体は、Kohler and Milstein, Nature 256:495 (1975)によって記述される標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術などの、様々な公知の技術を使用して産生できる。体細胞ハイブリダイゼーションの手法は好ましいが、原理上、モノクローナル抗体を産生するためのその他の技術、例えば、Bリンパ球のウイルス性または発がん性形質転換、ヒト抗体遺伝子のライブラリーを使用するファージディスプレイ技術も使用できる。
ハイブリドーマを調製するための好ましい動物系として、マウス系がある。マウスにおけるハイブリドーマ産生は、極めて十分に確立された手法である。免疫化プロトコルおよび融合において免疫化した脾細胞を単離する技術は、当分野で公知である。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)および融合手法も公知である。
本明細書に記述されるキメラ抗体またはヒト化抗体は、上記のように調製したマウスモノクローナル抗体の配列に基づいて調製できる。標準的な分子生物学的技術を使用して、重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAを、対象のマウスハイブリドーマから得、非マウス(例えば、ヒト)免疫グロブリン配列を含有するように遺伝子操作できる。例えば、当分野で公知の方法を使用して、キメラ抗体を作製するために、マウス可変領域をヒト定常領域に連結できる(例えば、Cabilly et al.の米国特許第4,816,567号を参照)。ヒト化抗体を作製するために、当分野で公知の方法を使用して、ヒトフレームワーク中にマウスCDR領域を挿入できる(例えば、Winterの米国特許第5,225,539号およびQueen et al.の米国特許第5,530,101号;同5,585,089号;同5,693,762号および同6,180,370号参照)。
ある実施態様において、本明細書に記述される抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。このようなヒトCD40に対して作られたヒトモノクローナル抗体は、マウス系ではなくヒト免疫系の部分を持つ、トランスジェニックまたはトランスクロモソミック(transchromosomic)マウスを使用して作製できる。これらのトランスジェニックおよびトランスクロモソミックマウスは、本明細書において、それぞれHuMAbマウスおよびKMマウスと呼ばれるマウスを含み、本明細書において、まとめて「ヒトIgマウス」と呼ばれる。
HuMAbマウス(登録商標)(Medarex, Inc.)は、再編成されていないヒト重鎖(μおよびγ)およびκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座(miniloci)を、内因性μおよびκ鎖遺伝子座を不活性化する標的化された変異とともに含有する(例えば、Lonberg, et al. (1994) Nature 368(6474): 856-859参照)。したがって、マウスは、マウスIgMまたはκの発現の減少を示し、免疫化に応じて、導入されたヒト重鎖および軽鎖導入遺伝子は、クラススイッチおよび体細胞変異を受け、高親和性ヒトIgGκモノクローナルを生成する(Lonberg, N. et al.(1994)、前掲; Lonberg, N. (1994) Handbook of Experimental Pharmacology 113:49-101;Lonberg, N. and Huszar, D. (1995) Intern. Rev. Immunol. 13: 65-93およびHarding , F. and Lonberg, N. (1995) Ann. N.Y. Acad. Sci. 764:536-546に概説)。HuMabマウスの調製および使用ならびにこのようなマウスが持つゲノム修飾は、Taylor, L. et al. (1992) Nucleic Acids Research 20:6287-6295;Chen, J. et al. (1993) International Immunology 5: 647-656;Tuaillon et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:3720-3724; Choi et al. (1993) Nature Genetics 4:117-123; Chen, J. et al. (1993) EMBO J. 12: 821-830; Tuaillon et al. (1994) J. Immunol. 152:2912-2920; Taylor, L. et al. (1994) International Immunology 6: 579-591;およびFishwild, D. et al. (1996) Nature Biotechnology 14: 845-851にさらに記述されており、それら全ての内容は、その全体が参照により本明細書に具体的に組み込まれる。さらに、全てがLonbergおよびKayによる、米国特許第5,545,806号;同5,569,825号;同5,625,126号;同5,633,425号;同5,789,650号;同5,877,397号;同5,661,016号;同5,814,318号;同5,874,299号;および同5,770,429号;Surani et al.の米国特許第5,545,807号;全てがLonbergおよびKayによる、PCT公開番号WO92/03918、WO93/12227、WO94/25585、WO97/13852、WO98/24884およびWO99/45962ならびにKorman et al.のPCT公開番号WO01/14424を参照。
ある実施態様において、本明細書に記述される抗体は、導入遺伝子および導入染色体(transchromosome)上にヒト免疫グロブリン配列を保持するマウス、例えば、ヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入染色体を保持するマウスを使用して作製される。本明細書において「KMマウス」と呼ばれるこのようなマウスは、Ishida et al.のPCT公開WO02/43478に詳細に記述されている。
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替のトランスジェニック動物系が、当分野で利用可能であり、本明細書に記述される抗huCD40抗体を作製するために使用できる。例えば、XENOMOUSE(登録商標)(Abgenix、Inc.)と呼ばれる代替のトランスジェニック系を使用でき;このようなマウスは、例えば、Kucherlapati et al.の米国特許第5,939,598号;同6,075,181号;同6,114,598号;同6、150,584号および同6,162,963号に記述されている。
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替のトランスクロモソミック(transchromosomic)動物系は、当分野で利用可能であり、本明細書に記述される抗CD40抗体を作製するために使用できる。例えば、「TCマウス」と呼ばれる、ヒト重鎖導入染色体およびヒト軽鎖導入染色体の両方を保持するマウスを使用でき;このようなマウスは、Tomizuka et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci.USA 97:722-727に記述されている。さらに、ヒト重鎖および軽鎖導入染色体を保持するウシが、当分野で記述されており(Kuroiwa et al. (2002) Nature Biotechnology 20:889-894)、本明細書に記述される抗huCD40抗体を作製するために使用できる。
ヒト抗体、例えば、ヒト抗huCD40抗体を作製するための当分野において記述されるさらなるマウス系として、(i)内因性マウス重鎖および軽鎖可変領域が、相同組換えによって、内因性マウス定常領域に作動可能に連結された、ヒト重鎖および軽鎖可変領域と置換されており、その結果、マウスにおいてキメラ抗体(ヒトV/マウスC)が作製され、次いで、標準的な組換えDNA技術を使用して完全ヒト抗体に変換される、VELOCIMMUNE(登録商標)マウス(Regeneron Pharmaceuticals, Inc.)ならびに(ii)マウスが、再編成されていないヒト重鎖可変領域を含むが、単一の再編成されたヒト共通軽鎖可変領域を含む、MeMo(登録商標)マウス(Merus Biopharmaceuticals, Inc.)が挙げられる。このようなマウスおよび抗体を作製するためのその使用は、例えば、WO2009/15777、US2010/0069614、WO2011/072204、WO2011/097603、WO2011/163311、WO2011/163314、WO2012/148873、US2012/0070861およびUS2012/0073004に記述されている。
本明細書に記述されるヒトモノクローナル抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子のライブラリーをスクリーニングするためのファージディスプレイ法を使用して調製できる。ヒト抗体を単離するためのこのようなファージディスプレイ法は、当分野で確立されている。例えば、Ladner et al.の米国特許第5,223,409号;同5,403,484号;および同5,571,698号;Dower et al.の米国特許第5,427,908号および同5,580,717号; McCafferty et al.の米国特許第5,969,108号および同6,172,197号;ならびにGriffiths et al.の米国特許第5,885,793号;同6,521,404号;同6,544,731号;同6,555,313号;同6,582,915号および同6,593,081号を参照。
本明細書に記述されるヒトモノクローナル抗体はまた、免疫化の際にヒト抗体応答が生じ得るようヒト免疫細胞が再構成されているSCIDマウスを使用して調製できる。このようなマウスは、例えば、Wilson et alの米国特許第5,476,996号および同5,698,767号に記述されている。
免疫化
ヒトCD40に対する完全ヒト抗体を作製するために、例えば、Lonberg et al. (1994) Nature 368(6474): 856-859;Fishwild et al. (1996) Nature Biotechnology 14: 845-851およびWO98/24884によって、その他の抗原について記述されるように、ヒト免疫グロブリン遺伝子を含有するトランスジェニックまたはトランスクロモソーマルマウス(例えば、HCo12、HCo7またはKMマウス)を、CD40抗原および/またはCD40を発現する細胞の精製または濃縮された調製物を用いて、免疫化できる。あるいは、マウスを、ヒトCD40をコードするDNAを用いて免疫化できる。好ましくは、マウスは、第1の注入の際に6~16週齢とする。例えば、マウスを腹腔内に免疫化するために、組換えヒトCD40抗原の精製または濃縮された調製物(5~50μg)を使用できる。CD40抗原の精製または濃縮された調製物を使用する免疫化が抗体をもたらさない事象では、CD40を発現する細胞、例えば、細胞系統を用いてマウスを免疫化し、免疫応答を促進することもできる。
種々の抗原を用いる累積的経験は、HuMAbトランスジェニックマウスが、Ribiアジュバント中の抗原を用いる最初の腹腔内(IP)または皮下(SC)免疫化と、それに続く、Ribiアジュバント中の抗原を用いる隔週でのIP/SC免疫化(最大で計10回)の際に、最良に応答することを示した。免疫応答は、後眼窩出血によって得られている血漿試料を用いて、免疫化プロトコルの過程にわたってモニターできる。血漿は、ELISAおよびFACSによってスクリーニングでき(以下に記述されるように)、抗CD40ヒト免疫グロブリンの十分な力価を有するマウスを融合のために使用できる。マウスを、抗原を用いて静脈内に追加免疫し、3日後に、屠殺し、脾臓およびリンパ節を採取できる。各免疫化のために2~3回の融合の実施を必要とし得ることが想定される。各抗原について、6ないし24匹のマウスが、通常、免疫化される。普通、HCo7、HCo12およびKM系統が使用される。さらに、HCo7およびHCo12導入遺伝子の両方は、2種の異なるヒト重鎖導入遺伝子(HCo7/HCo12)を有する単一のマウスに共に育種され得る。
CD40に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの作製
本明細書に記述されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作製するために、免疫化されたマウスから脾細胞および/またはリンパ節細胞を単離し、マウス骨髄腫細胞系統などの適当な不死化細胞系統と融合できる。得られたハイブリドーマを抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングできる。例えば、50%PEGを用いて、免疫化マウス由来の脾臓リンパ球の単細胞懸濁液を、Sp2/0非分泌性マウス骨髄腫細胞(ATCC、CRL1581)と融合できる。細胞を、およそ2×105で平底マイクロタイタープレートにプレーティングし、続いて、10%胎児クローン血清、18%「653」条件培地、5%オリゲン(origen)(IGEN)、4mM L-グルタミン、1mM ピルビン酸ナトリウム、5mM HEPES、0.055mM 2-メルカプトエタノール、50ユニット/mlペニシリン、50mg/mlストレプトマイシン、50mg/mlゲンタマイシンおよび1X HAT(Sigma)を含有する選択培地で2週間インキュベートする。およそ2週間後、細胞をHATがHTと置換されている培地で培養できる。次いで、個々のウェルを、ヒトモノクローナルIgMおよびIgG抗体についてELISAによってスクリーニングできる。広範なハイブリドーマ成長が起こると、通常10~14日後に培地を観察できる。抗体を分泌するハイブリドーマを再プレーティングし、再度スクリーニングでき、ヒトIgGについて依然として陽性である場合に、制限希釈によってモノクローナル抗体を少なくとも2回サブクローニングできる。次いで、安定なサブクローンをインビトロで培養して、特性決定のために組織培養培地において少量の抗体を作製できる。
VI.抗体製造
CD40に対するモノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマの作製
配列が提供される特異的抗体およびその他の関連抗CD40抗体の両方を含めた、本発明の抗体を、例えば当分野で周知であるような、組換えDNA技術および遺伝子導入法の組合せを使用して、宿主細胞トランスフェクトーマにおいて産生できる(Morrison, S. (1985) Science 229:1202)。
例えば、抗体またはその抗体フラグメントを発現させるために、部分または全長軽鎖および重鎖をコードするDNAを、標準的な分子生物学の技術(例えば、PCR増幅または対象の抗体を発現するハイブリドーマを使用するcDNAクローニング)によって得ることができ、遺伝子が、転写および翻訳制御配列に作動可能に連結するように、DNAを発現ベクター中に挿入することができる。これに関連して、用語「作動可能に連結された」は、ベクター内の転写および翻訳制御配列が、抗体遺伝子の転写および翻訳を調節するというその意図される機能を果たすように、抗体遺伝子をベクター中に連結することを意味するものとする。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用する発現宿主細胞と適合するように選択される。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子は、別個のベクター中に挿入されてもよく、または両遺伝子は、同一の発現ベクター中に挿入される。抗体遺伝子は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子フラグメント上の相補的制限部位およびベクターの連結または制限部位が存在しない場合には平滑末端連結)によって、発現ベクター中に挿入される。本明細書に記述される抗体の軽鎖および重鎖可変領域を使用し、VHセグメントがベクター内のCHセグメントと作動可能に連結し、VLセグメントが、ベクター内のCLセグメントと作動可能に連結するように、それらを所望のアイソタイプの重鎖定常領域および軽鎖定常領域をすでにコードする発現ベクター中に挿入することによって、任意の抗体アイソタイプの全長抗体遺伝子を作製できる。さらに、またはあるいは、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードし得る。抗体鎖遺伝子を、シグナルペプチドが、抗体鎖遺伝子のアミノ末端とインフレームで連結するように、ベクター中にクローニングできる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。
組換え発現ベクターは、抗体鎖遺伝子に加えて、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を保持し得る。用語「調節配列」とは、プロモーター、エンハンサーおよび抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を制御するその他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むものとする。このような調節配列は、例えば、Goeddel(Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185, Academic Press,San Diego, CA (1990))に記述されている。調節配列の選択を含む発現ベクターの設計が、形質転換する宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどの因子に依存することは当業者には明らかである。哺乳類宿主細胞発現のための好ましい調節配列として、サイトメガロウイルス(CMV)、サルウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP)およびポリオーマ由来のプロモーターおよび/またはエンハンサーなどの、哺乳類細胞における高レベルのタンパク質発現を指示するウイルスエレメントが挙げられる。あるいは、ユビキチンプロモーターまたはβ-グロビンプロモーターなどの非ウイルス調節配列を使用してもよい。なおさらに、調節エレメントは、SV40初期プロモーター由来の配列およびヒトT細胞白血病ウイルス1型の長い末端反復配列を含有する、SRαプロモーター系などの異なる供給源に由来する配列からなる(Takebe, Y. et al. (1988) Mol. Cell. Biol. 8:466-472)。
組換え発現ベクターは、抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)などのさらなる配列、および選択マーカー遺伝子を保持し得る。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を促進する(例えば、すべてAxel et al.による米国特許第4,399,216号、同4,634,665号および同5,179,017号参照)。例えば、通常、選択マーカー遺伝子は、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を、ベクターが導入されている宿主細胞に付与する。好ましい選択マーカー遺伝子として、ジヒドロホレートレダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅とともに、dhfr-宿主細胞において使用される)およびneo遺伝子(G418選択において)が挙げられる。
軽鎖および重鎖の発現のために、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクターを、標準的な技術によって宿主細胞に遺伝子導入する。用語「遺伝子導入」の種々の形態は、原核または真核宿主細胞への外因性DNAの導入に一般的に使用される多様な技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクションなどを包含するものとする。原核または真核宿主細胞のいずれかにおいて本明細書に記述される抗体を発現させることは理論上可能であるが、真核細胞、最も好ましくは、哺乳類宿主細胞における抗体の発現が、最も好ましいが、これは、このような真核細胞、特に、哺乳類細胞が、適切にフォールディングされ、免疫学的に活性な抗体を組み立て、分泌する可能性が、原核細胞よりも高いからである。抗体遺伝子の原核発現は、活性な抗体の高効率の産生に有効でないことが報告されている(Boss, M. A. and Wood, C. R. (1985) Immunology Today 6:12-13)。本発明の抗体はまた、酵母ピキア・パストリス(Pichia pastoris)の糖鎖操作された株においても産生できる(Li et al. (2006) Nat. Biotechnol. 24:210)。
本明細書に記述される組換え抗体を発現させるための好ましい哺乳類宿主細胞として、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えば、R. J. Kaufman and P. A. Sharp (1982) Mol. Biol. 159:601-621に記述されるように、DHFR選択マーカーとともに使用される、Urlaub and Chasin, (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220に記述されたdhfr-CHO細胞を含む)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞が挙げられる。特に、NSO骨髄腫細胞とともに使用するためには、別の好ましい発現系として、WO87/04462、WO89/01036およびEP338,841に開示されるGS遺伝子発現系がある。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳類宿主細胞中に導入すると、抗体は、宿主細胞を、宿主細胞における抗体の発現、またはより好ましくは、宿主細胞が成長する培養培地への抗体の分泌、を可能にするのに十分な期間、培養することによって、産生する。抗体は、標準的なタンパク質精製法を使用して培養培地から回収できる。
本発明の抗体ポリペプチド鎖のN末端およびC末端は、一般的に観察される翻訳後修飾によって予測される配列とは異なり得る。例えば、C末端リジン残基は、抗体重鎖から失われていることが多い(Dick et al. (2008) Biotechnol. Bioeng. 100:1132)。N末端グルタミン残基およびより少ない程度であるが、グルタミン酸残基は、治療用抗体の軽鎖および重鎖の両方でピログルタミン酸残基に変換されることが頻繁にある(Dick et al. (2007)Biotechnol. Bioeng. 97:544; Liu et al. (2011) J. Biol. Chem. 286:11211)。
本発明の種々のアゴニスト抗huCD40抗体のアミノ酸配列は、表8にまとめられている配列表に提供されている。上記の理由のために、C末端リジンは、重鎖または重鎖定常ドメインの配列表中の配列のいずれにも含まれない。しかし、代替の実施態様において、本発明の抗huCD40抗体の各重鎖および/またはこのような抗体もしくはその重鎖もしくは軽鎖をコードする遺伝子コンストラクトは、このさらなるリジン残基を、一方または他方の重鎖のC末端に含む。
VII.アッセイ
本明細書に記述される抗体は、CD40との結合について、例えば、標準的なELISAによって試験できる。手短には、マイクロタイタープレートを精製したCD40を、PBS中1~2μg/mLで用いてコーティングし、次いで、PBS中5%ウシ血清アルブミンを用いてブロッキングする。各ウェルに抗体の希釈物(例えば、CD40免疫化マウスから得た血漿の希釈物)を添加し、37℃で1~2時間インキュベートする。プレートをPBS/Tweenを用いて洗浄し、次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしている二次試薬(例えば、ヒト抗体またはそうでなければヒト重鎖定常領域を有する抗体における、ヤギ抗ヒトIgG Fc特異的ポリクローナル試薬)とともに37℃で1時間インキュベートする。洗浄した後、プレートをABTS基質(Moss Inc、product:ABTS-1000)を用いて発色させ、OD415~495で分光光度計によって分析する。次いで、免疫化されたマウスから得た血清を、ヒトCD40を発現する細胞株との結合について、かつヒトCD40を発現しない対照細胞株と結合しないことについて、フローサイトメトリーによってさらにスクリーニングする。手短には、抗CD40抗体の結合を、CD40発現CHO細胞を1:20希釈の抗CD40抗体とともにインキュベートすることによって評価する。細胞を洗浄し、結合を、PE標識された抗ヒトIgG Abを用いて検出する。FACScanフローサイトメトリー(Becton Dickinson, San Jose, CA)を使用して、フローサイトメトリー分析を実施する。好ましくは、最も高い力価を生じるマウスを融合に用いる。マウス抗huCD40抗体を検出する場合には、抗マウス検出抗体を使用して類似の実験を実施してもよい。
上記のようなELISAアッセイを使用して、抗体、ひいては、CD40免疫原と陽性の反応性を示す抗体を産生するハイブリドーマについて、スクリーニングできる。好ましくは高い親和性で、CD40と結合する抗体を産生するハイブリドーマを、サブクローニングし、さらに特性決定できる。親細胞の反応性を保持する(ELISAによって)、各ハイブリドーマ由来の1つのクローンを、細胞バンクの作製、および抗体精製において、選択できる。
抗CD40抗体を精製するために、選択されたハイブリドーマを、モノクローナル抗体精製のために2リットルのスピナーフラスコ中で成長させることができる。プロテインA-セファロース(Pharmacia, Piscataway, NJ)を用いるアフィニティークロマトグラフィーの前に、上清を濾過し、濃縮できる。溶出されたIgGを、ゲル電気泳動および高性能液体クロマトグラフィーによって調べ、純度を確実にすることができる。バッファー溶液は、PBSに交換でき、1.43吸光係数を使用してOD280によって濃度を決定できる。モノクローナル抗体を分取し、-80℃で保存できる。
選択された抗CD40モノクローナル抗体が特有のエピトープと結合するか否かを調べるために、市販の試薬(Pierce, Rockford, IL)を使用して各抗体をビオチン化できる。ビオチン化MAb結合は、ストレプトアビジン標識されたプローブを用いて検出できる。上記のように、CD40で被覆されたELISAプレートを使用して、非標識モノクローナル抗体およびビオチン化モノクローナル抗体を使用する競合研究を実施できる。
精製された抗体のアイソタイプを調べるために、特定のアイソタイプの抗体に対して特異的な試薬を使用してアイソタイプELISAを実施できる。例えば、ヒトモノクローナル抗体のアイソタイプを調べるために、1μg/mLの抗ヒト免疫グロブリンを用いてマイクロタイタープレートのウェルを、4℃で一晩被覆できる。1% BSAを用いてブロッキングした後、プレートを、1μg/ml以下の試験モノクローナル抗体または精製されたアイソタイプ対照と常温で1~2時間反応させる。次いで、ウェルをヒトIgG1またはヒトIgM特異的アルカリホスファターゼがコンジュゲートしているプローブのいずれかと反応させる。プレートを上記のように発色させ、分析する。
モノクローナル抗体の、CD40を発現する生細胞との結合を調べるために、フローサイトメトリーを使用できる。手短には、膜結合性CD40を発現する細胞株(標準的な成長条件下で成長させた)を、0.1%BSAを含有するPBS中、種々の濃度のモノクローナル抗体と4℃で1時間混合する。洗浄した後、細胞を、一次抗体染色と同一条件下でフィコエリトリン(PE)標識された抗IgG抗体と反応させる。試料を光および側方散乱特性を使用するFACScan装置で分析し、単細胞でゲート開閉し、標識された抗体の結合を調べる。フローサイトメトリーアッセイ(に加えて、または、の代わりに)、蛍光顕微鏡を使用する代替アッセイを使用してもよい。上記のように細胞を正確に染色し、蛍光顕微鏡によって調べることができる。この方法によって、個々の細胞の可視化が可能となるが、抗原の密度に依存して感度が減少し得る。
抗ヒトCD40抗体は、ウエスタンブロッティングによってCD40抗原との反応性についてさらに試験できる。手短には、CD40を発現する細胞から細胞抽出物を調製し、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動に付すことができる。電気泳動後、分離された抗原をニトロセルロースメンブランに移し、20%マウス血清を用いてブロッキングし、試験されるべきモノクローナル抗体を用いて探索する。抗IgGアルカリホスファターゼを使用してIgG結合を検出し、BCIP/NBT基質錠剤を用いて発色させることができる(Sigma Chem.Co., St.Louis, MO)。
種々の抗CD40抗体の結合親和性、交差反応性および結合速度論を解析する方法は、当分野で公知の標準的なアッセイ、例えば、バイオレイヤー干渉法(BLI)分析およびBIACORE(登録商標)2000SPR装置(Biacore AB, Uppsala, Sweden)を使用するBIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴(SPR)分析を含む。
ある実施態様において、抗体は、ヒトCD40の細胞外領域と特異的に結合する。抗体は、CD40の細胞外ドメイン内の特定のドメイン(例えば、機能的ドメイン)と特異的に結合し得る。ある実施態様において、抗体は、ヒトCD40の細胞外領域およびカニクイザルCD40の細胞外領域と特異的に結合する。好ましくは、抗体は、高い親和性でヒトCD40と結合する。
VIII.二重特異性分子
本明細書に記述される抗体は、二重特異性分子の形成のために使用され得る。抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントを、誘導体化、または別の機能的分子(例えば、別のペプチドまたはタンパク質(例えば、別の抗体または受容体のリガンド))と連結し、少なくとも2つの異なる結合部位または標的分子と結合する、二重特異性分子を生成してもよい。実際、本明細書に記述される抗体を、誘導体化、または2以上の他の機能的分子と連結し、3種以上の異なる結合部位および/または標的分子と結合する多重特異性分子を生成してもよく;このような多重特異性分子はまた、本明細書における用語「二重特異性分子」に包含されるものとする。本明細書に記述される二重特異性分子を作製するために、本明細書に記述される抗体を、二重特異性分子が結果として生じるような別の抗体、抗体フラグメント、ペプチドまたは結合模倣物などの1以上の他の結合分子と機能的に連結することができる(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合による結合または別の方法によって)。
したがって、少なくとも1つの、CD40に対する第1の結合特異性および第2の標的エピトープに対する第2の結合特異性を含む二重特異性分子が本明細書において提供される。二重特異性分子が多重特異性である本明細書に記述される実施態様において、分子は、第3の結合特異性をさらに含み得る。
ある実施態様において、本明細書に記述される二重特異性分子は、結合特異性として少なくとも1種の抗体または例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvもしくは一本鎖Fvを含めたその抗体フラグメントを含む。参照によりその内容が明示的に組み込まれるLadner et al.米国特許第4,946,778号に記述されるように、抗体はまた、軽鎖もしくは重鎖二量体またはその任意の最小フラグメント(Fvもしくは一本鎖コンストラクトなど)であり得る。
ヒトモノクローナル抗体が好ましいが、本明細書に記述される二重特異性分子において使用され得るその他の抗体として、マウス、キメラおよびヒト化モノクローナル抗体がある。
本明細書に記述される二重特異性分子は、当分野で公知の方法を使用して成分結合特異性をコンジュゲートすることによって調製できる。例えば、二重特異性分子の各結合特異性を、別個に作製し、次いで、互いにコンジュゲートできる。結合特異性がタンパク質またはペプチドである場合には、共有結合コンジュゲーションのために種々のカップリングまたは架橋剤を使用できる。架橋剤の例として、プロテインA、カルボジイミド、N-スクシンイミジル-S-アセチル-チオアセテート(SATA)、5,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、o-フェニレンジマレイミド(oPDM)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)およびスルホスクシニミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)が挙げられる(例えば、Karpovsky et al. (1984) J. Exp. Med. 160:1686;Liu、MA et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8648を参照)。その他の方法として、Paulus (1985) Behring Ins. Mitt. No. 78, 118-132;Brennan et al. (1985) Science 229:81-83およびGlennie et al. (1987) J. Immunol. 139: 2367-2375)に記述されるものが挙げられる。好ましいコンジュゲート剤として、SATAおよびスルホ-SMCCがあり、両方とも、Pierce Chemical Co.(Rockford, IL)から入手可能である。
結合特異性が抗体である場合には、それらを、2つの重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合によってコンジュゲートできる。特に好ましい実施態様において、ヒンジ領域を、コンジュゲーションに先立って奇数のスルフヒドリル残基、好ましくは1つ、を含むように改変する。
あるいは、両結合特異性は、同一ベクター中にコードされ、同一宿主細胞において発現され、アセンブルされ得る。この方法は、二重特異性分子がmAb×mAb、mAb×Fab、Fab×F(ab’)2またはリガンド×Fab融合タンパク質である場合に特に有用である。本明細書に記述される二重特異性分子は、1つの一本鎖抗体および結合決定基を含む一本鎖分子または2つの結合決定基を含む一本鎖二重特異性分子であり得る。二重特異性分子は、少なくとも2つの一本鎖分子を含み得る。二重特異性分子を調製するための方法は、例えば、米国特許第5,260,203号;同5,455,030号;同4,881,175号;同5,132,405号;同5,091,513号;同5,476,786号;同5,013,653号;同5,258,498号および同5,482,858号に記述されている。
二重特異性分子の、その特異的標的との結合は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)、FACS分析、生物検定法(例えば、成長阻害)またはウエスタンブロットアッセイなどの当分野で認識される方法を使用して確認され得る。これらのアッセイは各々、一般に、対象の複合体に対して特異的な標識試薬(例えば、抗体)を使用することによって、特に対象とされるタンパク質-抗体複合体の存在を検出する。
IX.組成物
医薬上許容される担体と共に製剤化される、本明細書に記述されるような抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントのうち1つまたはそれ以上を含有する組成物、例えば、医薬組成物がさらに提供される。このような組成物は、本明細書に記述される(例えば、2以上の異なる)抗体またはイムノコンジュゲートまたは二重特異性分子のうち1種または組合せを含み得る。例えば、本明細書に記述される医薬組成物は、標的抗原上の異なるエピトープと結合し、または相補的活性を有する抗体(またはイムノコンジュゲートまたは二重特異性)の組合せを含み得る。
特定の実施態様において、組成物は、少なくとも1mg/ml、5mg/ml、10mg/ml、50mg/ml、100mg/ml、150mg/ml、200mg/mlの濃度で、または1~300mg/mlもしくは100~300mg/mlで、抗CD40抗体を含む。
本明細書に記述される医薬組成物はまた、併用療法において、すなわち、その他の薬剤と組み合わせて投与できる。例えば、併用療法は、少なくとも1種のその他の抗がん剤および/またはT細胞刺激(例えば、活性化)剤と組み合わせた、本明細書に記述される抗CD40抗体を含み得る。併用療法において使用され得る治療薬の例は、本明細書に記述される抗体の使用に関する節において以下により詳細に記述される。
いくつかの実施態様において、本明細書において開示される治療用組成物は、がんの治療のために使用されるその他の化合物、薬物および/または薬剤を含み得る。このような化合物、薬物および/または薬剤として、例えば、所定のがんに対する免疫応答を刺激する化学療法薬、小分子薬または抗体が挙げられる。いくつかの場合には、治療用組成物は、例えば、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CD40抗体、抗OX40(CD134、TNFRSF4、ACT35および/またはTXGP1Lとしても知られる)抗体、抗LAG-3抗体、抗CD73抗体、抗CD137抗体、抗CD27抗体、抗CSF-1R抗体、TLRアゴニストまたはIDOもしくはTGFβの小分子アンタゴニストのうち1つまたはそれ以上を含み得る。
本明細書において、「医薬上許容される担体」として、生理学的に適合する、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが挙げられる。好ましくは、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮投与(例えば、注射または注入による)に適している。投与経路に依存して、活性化合物(すなわち抗体、イムノコンジュゲートまたは二重特異性分子)を、その化合物を不活化し得る酸および他の天然条件の作用から保護するための材料で、被覆してもよい。
本明細書に記述される医薬化合物は、1以上の医薬上許容される塩を含み得る。「医薬上許容される塩」とは、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、何らかの望ましくない毒性効果を付与しない塩を指す(例えば、Berge, S.M., et al. (1977) J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照のこと)。このような塩の例として、酸付加塩および塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩として、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などの非毒性無機酸に由来する塩ならびに脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などの非毒性有機酸に由来する塩が挙げられる。塩基付加塩として、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属に由来する塩ならびにN,N’-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどの非毒性有機アミンに由来する塩が挙げられる。
本明細書に記述される医薬組成物はまた、医薬上許容される抗酸化物質を含み得る。医薬上許容される抗酸化物質の例として:(1)アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化物質;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなどの油溶性抗酸化物質;および(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート化剤が挙げられる。
本明細書に記述される医薬組成物において使用され得る、適した水性および非水性担体の例として、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適した混合物、オリーブオイルなどの植物油およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散物の場合には必要な粒径の維持によって、また界面活性剤の使用によって維持できる。
これらの組成物はまた、保存料、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含有し得る。微生物の存在の防止は、滅菌の手法(前掲)、または種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸など)の包含の両方によって保証できる。糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物中に含めることが望ましい場合もある。さらに、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延する薬剤を含めることによって、注射用医薬品形態の長期の吸収を引き起こすことができる。
医薬上許容される担体として、滅菌水溶液または分散物および滅菌注射用溶液または分散物の即時調製のための滅菌散剤が挙げられる。医薬上活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当分野で公知である。任意の従来の媒体または薬剤が、活性化合物と不適合である場合を除いて、本明細書に記述される医薬組成物におけるその使用が想定される。補足の活性化合物もまた、組成物中に組み込まれ得る。
治療用組成物は、通常、製造および貯蔵の条件下で無菌で、安定でなくてはならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソームまたは高薬物濃度に適したその他の秩序構造として製剤化できる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適した混合物を含有する、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散物の場合には必要な粒径の維持によって、また界面活性剤の使用によって維持できる。
滅菌注射用溶液は、上記で列挙された成分の1つまたは組合せとともに、適当な溶媒中に必要な量の活性化合物を組み込み、必要に応じて、それに続く滅菌精密濾過によって、調製できる。一般に、分散物は、基本分散媒および上記で列挙された成分からの必要な他の成分を含有する滅菌溶剤中に活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌散剤の場合には、調製の好ましい方法として、前もって滅菌濾過された溶液から有効成分および任意のさらなる所望の成分の粉末を得る、真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)がある。
単一投与形を生産する、担体材料と組み合わされ得る有効成分の量は、処置される対象および特定の投与様式に応じて様々である。単一投与形を生産する担体材料と組み合わされ得る有効成分の量は、一般に、治療効果を生じる組成物の量である。一般に、この量は、医薬上許容される担体との組合せにおいて、100パーセントのうち、約0.01パーセント~約99パーセントの有効成分、好ましくは、約0.1パーセント~約70パーセント、最も好ましくは、約1パーセント~約30パーセントの有効成分の範囲となる。
投与計画は、最適の所望の応答(例えば、治療的応答)を提供するように調整される。例えば、単回のボーラス投与をしてもよく、いくつかの分割用量を経時的に投与してもよく、または治療状況の緊急性に応じて、用量を増減させてもよい。投与の容易性および投与量の均一性のための投与単位形に非経口組成物を製剤化することは特に有利である。本明細書において、投与単位形とは、治療される対象の単位投与量として適している物理的に別個の単位を指し;各単位は、必要な医薬担体と関連して所望の治療効果を生じるよう算出された所定の量の活性化合物を含有する。本明細書に記述される投与単位形の仕様は、(a)活性化合物の特有の特徴および達成されるべき特定の治療効果ならびに(b)個体における感受性の処置のために、このような活性化合物を配合する分野に固有の制限によって決定され、それらに直接的に依存する。
抗体の投与のために、投与量は、宿主の体重に対して、約0.0001~100mg/kg、より通常は、0.01~5mg/kgの範囲である。例えば、投与量は、0.3mg/体重1kg、1mg/体重1kg、3mg/体重1kg、5mg/体重1kgまたは10mg/体重1kgまたは1~10mg/kgの範囲内であり得る。例示的治療計画は、毎週、2週毎に1回、3週毎に1回、4週毎に1回、毎月、3ヶ月毎に1回または3~6ヶ月毎に1回の投与を必要とする。
いくつかの方法では、異なる結合特異性を有する2以上のモノクローナル抗体が同時に投与され、この場合には、投与される各抗体の投与量は、示される範囲内に入る。治療用抗体は、普通、複数の機会で投与される。単一投与毎の間隔は、例えば、毎週、毎月、3ヶ月毎または毎年であり得る。間隔はまた、患者における標的抗原に対する抗体の血液レベルの測定に応じて、不規則であってもよい。いくつかの方法において、投与量は、約1~1000μg/mLの血漿抗体濃度を達成するように調整され、いくつかの方法では、約25~300μg/mLの血漿抗体濃度を達成するように調整される。
抗体は、持続放出製剤として投与でき、この場合には、あまり頻繁ではない投与が必要とされる。投与量および頻度は、患者における抗体の半減期に応じて様々である。一般に、ヒト抗体は、最長の半減期を示し、ヒト化抗体、キメラ抗体および非ヒト抗体が続く。投与の投与量および頻度は、処置が予防的であるか、治療的であるかに応じて変わり得る。予防的適用では、比較的少ない投与量が、比較的頻繁ではない間隔で長期間にわたって投与される。一部の患者は、生涯、治療を受け続ける。治療的適用では、疾患の進行が低減または終結されるまで、好ましくは、患者が疾患の症状の部分的または完全寛解を示すまで、比較的短い間隔の比較的多い投与量が時には必要である。その後、患者は、場合により、予防的投与計画を投与されることがあるが、多くの免疫-腫瘍学適応症では、継続治療は必要ではない。
本明細書に記述される医薬組成物中の有効成分の実際の投与量レベルは、患者にとって毒性はなく、特定の患者、組成物および投与様式について、所望の治療応答を達成するのに有効な有効成分の量を得るように、様々であり得る。選択される投与量レベルは、使用する、本明細書に記述される特定の組成物またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与の時間、使用する特定の化合物の排出速度、処置の持続時間、使用する特定の組成物と組み合わせて用いる他の薬物、化合物および/または材料、処置する患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康および先の病歴ならびに医薬の分野で周知の同様の因子を含む、種々の薬物動態因子に依存する。
本明細書に記述される抗CD40抗体の「治療上有効な投与量」は、好ましくは、疾患症状の重症度の低減、疾患症状のない期間の頻度および持続時間の増大、または疾患苦痛による機能障害もしくは能力障害の予防をもたらす。がんに関連して、治療上有効な用量は、好ましくは、がんと関連する身体症状のさらなる悪化を防ぐ。がんの症状は、当分野で周知であり、例えば、普通ではない黒子の特徴、非対称、境界、色および/または直径を含めた黒子の外観の変化、新規に着色した皮膚領域、異常な黒子、爪の下の黒くなった領域、***のしこり、乳頭の変化、***嚢胞、***疼痛、死亡、体重減少、脱力感、過度の疲労、摂食障害、食欲の喪失、慢性の咳、息切れの悪化、喀血、血尿、血便、悪心、嘔吐、肝臓転移、肺転移、骨転移、腹部膨満、鼓腸、腹膜腔中の流体、膣出血、便秘、腹部膨隆、結腸の穿孔、急性腹膜炎(感染、発熱、疼痛)、疼痛、吐血、多量の発汗、発熱、高血圧症、貧血、下痢、黄疸、めまい、悪寒、筋痙攣、結腸転移、肺転移、膀胱転移、肝臓転移、骨転移、腎臓転移および膵臓転移、嚥下困難などが挙げられる。治療効力は、本発明のアゴニスト抗huCD40 mAbの最初の投与の直後に観察可能であるか、または一定期間および/または一連の投与後にのみ観察され得る。このような遅延された有効性は、処置の数ヶ月、最大6、9または12ヶ月後にのみ観察され得る。いくつかの免疫-腫瘍学薬剤によって示される遅延された有効性を考慮すると、本発明のアゴニスト抗huCD40 mAbが、治療上の有効性を欠くと早期に決定しないことが重要である。
疾患の早期または先行する徴候が存在する場合に望まれ得るような、治療上有効な用量は、がんの発生を予防または遅延し得る。がんの診断において使用される実験室試験は、化学(水溶性CD40またはCD40Lのレベルの測定を含む)(Hock et al. (2006)、血液学、血清学および放射線学を含む。したがって、前記のうちいずれかをモニターする任意の臨床または生化学アッセイを使用して、特定の処置が、がんを処置するための治療上有効な用量であるか否かを調べてもよい。当業者は、対象のサイズ、対象の症状の重症度および特定の組成物または選択された投与経路などの因子に基づいて、このような量を決定できる。
本明細書に記述される組成物は、当分野で公知の種々の方法のうち1つまたはそれ以上を使用して、1以上の投与経路によって投与できる。当業者には明らかだが、投与経路および/または投与様式は、所望の結果に応じて変わる。本明細書に記述される抗体の好ましい投与経路として、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄または例えば、注射もしくは注入によるその他の非経口投与経路が挙げられる。本明細書において、語句「非経口投与」とは、経腸および局所投与以外の、普通、注射による投与様式を意味し、制限するものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および注入が挙げられる。
あるいは、本明細書に記述される抗体は、局所、表皮または粘膜投与経路、例えば、鼻腔内、経口的、経膣的、直腸内、舌下にまたは局所など、非経口ではない経路によって投与できる。
活性化合物を、化合物を迅速な放出から保護する担体を用いて調製できる(留置用剤、経皮パッチおよびマイクロカプセル化送達系を含めた徐放性製剤など)。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用できる。このような製剤を調製するための多数の方法は、特許権をとられているか、または一般的に、当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照。
治療用組成物は、当分野で公知の医療装置を用いて投与できる。例えば、好ましい実施態様において、本明細書に記述される治療用組成物は、米国特許第5,399,163号;同5,383,851号;同5,312,335号;同5,064,413号;同4,941,880号;同4,790,824号;または同4,596,556号に開示される装置などの注射針無しの皮下注射装置を用いて投与できる。本明細書に記述される抗huCD40抗体とともに使用するための周知の留置用剤およびモジュールの例として:制御された速度で医薬を分配するための埋め込み可能な微量注入ポンプを開示する、米国特許第4,487,603号;皮膚を通って医薬を投与するための治療用装置を開示する、同4,486,194号;正確な注入速度で医薬を送達するための医薬注入ポンプを開示する、同4,447,233号;連続薬物送達のための可変流動埋め込み可能注入器具を開示する同4,447,224号;マルチチャンバーコンパートメントを有する浸透圧薬物送達システムを開示する同4,439,196号;および浸透圧薬物送達システムを開示する同4,475,196号が挙げられる。これらの特許は、参照により本明細書に組み込まれる。多数のその他のこのような留置用剤、送達系およびモジュールが、当業者に公知である。
特定の実施態様において、本明細書に記述される抗huCD40抗体は、インビボでの適切な分布を確実にするよう製剤化できる。例えば、血液脳関門(BBB)は、多数の高親水性化合物を排除する。本明細書に記述される治療用化合物が、BBBを通過することを確実にするため(それが望まれる場合)に、それらを例えば、リポソーム中に製剤化できる。リポソームを作製する方法については、例えば、米国特許第4,522,811号;同5,374,548号;および同5,399,331号を参照。リポソームは、特定の細胞または臓器中に選択的に輸送される1以上の部分を含み得、したがって、標的化された薬物送達を増強する(例えば、V.V. Ranade (1989) J. Clin. Pharmacol. 29:685を参照)。例示的標的化部分として、葉酸またはビオチン(例えば、Low et al.の米国特許第5,416,016号を参照);マンノシド(Umezawa et al., (1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038);抗体(P.G. Bloeman et al. (1995) FEBS Lett. 357:140; M.Owais et al. (1995) Antimicrob. Agents Chemother. 39:180);界面活性剤プロテインA受容体(Briscoe et al. (1995) Am. J. Physiol. 1233:134);p120(Schreier et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:9090)が挙げられ、K. Keinanen; M.L. Laukkanen (1994)FEBS Lett. 346:123; J.J. Killion; I.J. Fidler (1994) Immunomethods 4:273も参照。
X. 使用および方法
本明細書に記述される抗体、抗体組成物および方法は、例えばCD40シグナル伝達を刺激することによる免疫応答の増強を含む、多数のインビトロおよびインビボの有用性を有する。好ましい実施態様において、本明細書に記述される抗体は、ヒト抗体またはヒト化抗体である。例えば、本明細書に記述される抗huCD40抗体を、インビトロもしくはエキソビボで培養細胞に、または例えばインビボで、ヒト対象に投与し、種々の疾患における免疫性を増強できる。したがって、対象の免疫応答を増強、刺激、または上方制御するように、対象に本明細書に記述される抗体またはその抗原結合フラグメントを投与することを含む、対象の免疫応答を改変する方法が、本明細書で提供される。
好ましい対象として、免疫応答の増強が望ましいヒト患者が挙げられる。方法は、免疫応答(例えば、T細胞媒介性免疫応答)を増大することによって処置され得る障害を有するヒト患者を処置するために特に適している。特定の実施態様において、方法は、インビボでのがんの処置に特に適している。免疫性の抗原特異的増強を達成するために、本明細書に記述される抗huCD40抗体を、対象の抗原と共に投与してもよく、または抗原は、処置する対象中にすでに存在してもよい(例えば、腫瘍またはウイルスを有する対象)。CD40に対する抗体を別の薬剤と共に投与する場合、2種は、別個または同時に投与され得る。
また、試料および対照試料を、ヒトCD40と特異的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントと、抗体またはそのフラグメントとヒトCD40との複合体の形成を可能にする条件下で、接触させることを含む、試料におけるヒトCD40抗原の存在を検出し、またはヒトCD40抗原の量を測定するための方法も包含される。次いで、複合体の形成を検出し、対照試料と比較した、試料の複合体形成の相違が、試料におけるヒトCD40抗原の存在を示す。さらに、本明細書に記述される抗CD40抗体は、イムノアフィニティー精製によってヒトCD40を精製するために使用できる。
本明細書に記述される抗huCD40抗体における、T細胞応答(例えば、抗原特異的T細胞応答)の同時刺激を増強する能力を前提として、本明細書は、本明細書に記述される抗体を用いて、抗原特異的T細胞応答(例えば、抗腫瘍T細胞応答)を刺激、増強または上方制御する、インビトロおよびインビボの方法を提供する。CD4+およびCD8+ T細胞応答を、抗CD40抗体を用いて増強してもよい。T細胞は、Teff細胞(例えば、CD4+ Teff細胞、CD8+ Teff細胞、Tヘルパー(Th)細胞およびT細胞傷害性(Tc)細胞)であってもよい。
対象の免疫応答(例えば、抗原特異的T細胞応答)を増強するように、対象に本明細書に記述される抗huCD40抗体を投与することを含む、対象の免疫応答(例えば、抗原特異的T細胞応答)を増強する方法をさらに包含する。好ましい実施態様において、対象は、腫瘍を有する対象であり、腫瘍に対する免疫応答が増強される。腫瘍は、固形腫瘍または液体腫瘍、例えば、血液悪性腫瘍であり得る。特定の実施態様において、腫瘍は、免疫原性腫瘍である。特定の実施態様において、腫瘍は、非免疫原性である。特定の実施態様において、腫瘍は、PD-L1陽性である。特定の実施態様において、腫瘍は、PD-L1陰性である。対象はまた、ウイルスを有する対象であり得、ウイルスに対する免疫応答が増強される。
対象において腫瘍の成長が阻害されるように、対象に、本明細書に記述される抗huCD40抗体を投与することを含む、対象における腫瘍細胞の成長を阻害するための方法がさらに提供される。また、対象の慢性ウイルス感染症を処置するように、対象に、本明細書に記述される抗huCD40抗体を投与することを含む、対象の慢性ウイルス感染症を処置する方法も提供される。
特定の実施態様において、抗huCD40抗体は、補助的療法として対象に与えられる。がんを有する対象の、抗huCD40抗体を用いる治療は、現在の標準的な治療と比較して長期間耐久性のある応答(少なくとも1、2、3、4、5、10年またはそれ以上の長期間の生存、少なくとも1、2、3、4、5または10年またはそれ以上の再発のない生存)をもたらし得る。特定の実施態様において、がんを有する対象の、抗huCD40抗体を用いる処置は、がんの再発を予防し、またはがんの再発を、例えば、1、2、3、4、5、10年もしくはそれ以上遅延する。抗CD40処置は、第一次治療または第二次治療として使用できる。
本明細書に記述されるこれらおよびその他の方法は、以下にさらに詳述される。
がん
対象を処置する(例えば、がん性腫瘍の成長が阻害もしくは低減され、かつ/または腫瘍が退縮する)ように、対象に、本明細書に記述される抗huCD40抗体を投与することを含む、がんを有する対象を処置する方法を、本明細書で提供する。抗huCD40抗体は、がん性腫瘍の成長を阻害するために単独で使用できる。あるいは、抗huCD40抗体は、別の薬剤、例えば、以下に記述されるような、その他の免疫原、標準的ながん処置またはその他の抗体とともに使用できる。抗PD-1または抗PD-L1抗体などのPD-1の阻害剤との組合せも提供される。例えば、Ellmark et al. (2015) OncoImmunology 4:7 e1011484参照。
したがって、対象に、治療上有効な量の本明細書に記述される抗huCD40抗体(例えば、12D6、5F11、8E8、5G7または19G3のヒト化型またはその抗原結合フラグメント)を投与することを含む、対象において、例えば腫瘍細胞の成長を阻害することにより、がんを処置する方法が、本明細書において提供される。抗体は、ヒト化抗huCD40抗体(本明細書に記述される任意のヒト化抗huCD40抗体など)、ヒトキメラ抗huCD40抗体、またはヒト化非ヒト抗huCD40抗体(例えば、少なくとも1つの本明細書に具体的に記述される抗huCD40抗体と同一のエピトープと、結合し、またはそれとの結合において競合する、ヒト、キメラまたはヒト化抗huCD40抗体)であり得る。
成長が本発明の抗体を使用して阻害され得るがんとして、典型的に免疫療法に対して応答性のがんが挙げられる。処置のためのがんの限定されない例として、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、扁平非小細胞肺がん(NSCLC)、非NSCLC、神経膠腫、胃腸がん、腎がん(例えば、明細胞がん)、卵巣がん、肝臓がん、大腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん(例えば、腎細胞がん(RCC))、前立腺がん(例えば、ホルモン不応性前立腺腺がん)、甲状腺がん、神経芽細胞腫、膵がん、神経膠芽腫(多形神経膠芽腫)、子宮頸がん、胃がん、膀胱がん、肝細胞腫、乳がん、結腸がんおよび頭頸部がん(またはがん腫)、胃がん、胚細胞腫瘍、小児肉腫、副鼻腔性ナチュラルキラー(sinonasal natural killer)、黒色腫(例えば、皮膚または眼球内悪性黒色腫などの転移性悪性黒色腫)、骨がん、皮膚がん、子宮がん、肛門領域のがん、精巣がん、卵管のがん腫、子宮内膜のがん腫、子宮頸部のがん腫、膣のがん腫、外陰部のがん腫、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、上皮小体腺のがん、副腎のがん、柔組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、小児の固形腫瘍、尿管のがん、腎盂のがん腫、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄の軸の腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん、T細胞リンパ腫、アスベストによって誘導されるものを含めた環境誘導性がん、ウイルス関連がん(例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV)関連腫瘍)および2種の主要な血液細胞系統のいずれか、すなわち、骨髄系細胞株(顆粒球、赤血球、血小板、マクロファージおよびマスト細胞を産生する)またはリンパ球系細胞株(B、T、NKおよび形質細胞を産生する)に由来する血液悪性腫瘍、例えば、すべての種類の白血病、リンパ腫および骨髄腫、例えば、急性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)および慢性骨髄性白血病(CML)、未分化AML(M0)、骨髄芽球性白血病(M1)、骨髄芽球性白血病(M2;細胞成熟を伴う)、前骨髄球性白血病(M3またはM3変種[M3V])、骨髄単球性白血病(M4または好酸球増加症を伴うM4変種[M4E])、単球性白血病(M5)、赤白血病(M6)、巨核芽球性白血病(M7)、単離された顆粒球性肉腫および緑色腫などの急性、慢性、リンパ性および/または骨髄性白血病;ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、単球様B細胞リンパ腫、粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫、未分化(例えば、Ki 1+)大細胞リンパ腫、成人T細胞リンパ腫/白血病、マントル細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、血管中心性リンパ腫、腸管T細胞リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、Tリンパ芽球性およびリンパ腫/白血病(T-Lbly/T-ALL)、末梢T細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、移植後リンパ増殖性障害、組織球性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫(LBL)、リンパ球系統の造血器腫瘍、急性リンパ性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性組織球性リンパ腫(DHL)、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫(CTLC)(菌状息肉症またはセザリー症候群とも呼ばれる)およびワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症を伴うリンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)などのリンパ腫;IgG骨髄腫、軽鎖骨髄腫、非分泌性骨髄腫、くすぶり型骨髄腫(低悪性度骨髄腫とも呼ばれる)、孤立性形質細胞腫および多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリー細胞リンパ腫などの骨髄腫;骨髄系統の造血器腫瘍、線維肉腫および横紋筋肉腫(rhabdomyoscarcoma)を含めた間葉系起源の腫瘍;セミノーマ、奇形がん腫、星状細胞腫、シュワン腫を含めた中枢および末梢神経の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫(rhabdomyoscarcoma)および骨肉腫を含めた間葉系起源の腫瘍;ならびに黒色腫、色素性乾皮症、ケラトアカントーマ、セミノーマ、甲状腺濾胞性がんおよび奇形がん腫を含めたその他の腫瘍、リンパ系統の造血器腫瘍、例えば、それだけには限らないが、小細胞および大脳様細胞型を含めたT前リンパ球性白血病(T-PLL)などのT細胞障害を含めたT細胞およびB細胞腫瘍;好ましくはT細胞型の、大顆粒リンパ球性白血病(LGL);a/d T-NHL肝脾リンパ腫;末梢/成熟(post-thymic)T細胞リンパ腫(多形性および免疫芽球性亜種);血管中心性(鼻腔の)T細胞リンパ腫;頭頸部のがん、腎がん、直腸がん、甲状腺のがん;急性骨髄系リンパ腫ならびに前記のがんの任意の組合せが挙げられる。本明細書に記述される方法はまた、転移性がん、難治性がん(例えば、遮断性CTLA-4またはPD-1抗体を用いる、例えば、これまでの免疫療法に対して難治性のがん)および再発性がんの処置のために使用してもよい。
上記にもかかわらず、本発明のアゴニスト抗huCD40抗体は、CD40発現を伴う血液がんの処置における使用を見出さず、血液がんはCD40アゴニストでの処置によって悪化し得る。特定のがんは、CD40を発現することが知られており、したがって、そのような悪化にさらされ得るため、分類上は除外され得る。他の実施態様において、特定の腫瘍試料を、CD40の発現についてテストし、テスト結果に基づいて、本発明のアゴニスト抗huCD40抗体での治療から除外する。
抗huCD40抗体は、単剤治療として、または単に免疫賦活性療法として投与でき、または、がん性細胞、精製された腫瘍抗原(組換えタンパク質、ペプチドおよび炭水化物分子を含む)、細胞、もしくは免疫刺激性サイトカインをコードする遺伝子を遺伝子導入された細胞などのがんワクチン戦略における免疫原と組み合わせることができる(He et al. (2004) J. Immunol. 173:4919-28)。使用できる腫瘍ワクチンの限定されない例として、gp100、MAGE抗原、Trp-2、MART1および/もしくはチロシナーゼのペプチドなどの黒色腫抗原のペプチド、またはサイトカインGM-CSFを発現するように遺伝子導入された腫瘍細胞が挙げられる。腫瘍に対するワクチン接種のための多数の実験戦略が考案されている(Rosenberg, S.,2000, Development of Cancer Vaccines, ASCO Educational Book Spring: 60-62;Logothetis, C., 2000, ASCO Educational Book Spring: 300-302;Khayat, D. 2000, ASCO Educational Book Spring: 414-428; Foon, K. 2000, ASCO Educational Book Spring: 730-738を参照; DeVita et al. (eds.), 1997, Cancer: Principles and Practice of Oncology, Fifth Edition中のRestifo, N. and Sznol, M., Cancer Vaccines, Ch. 61, pp. 3023-3043も参照)。これらの戦略の1つでは、ワクチンは、自己または同種腫瘍細胞を使用して調製される。これらの細胞性ワクチンは、腫瘍細胞がGM-CSFを発現するよう形質導入される場合に最も有効であるとわかっている。GM-CSFは、腫瘍ワクチン接種のための抗原提示の強力なアクチベーターであるとわかっている(Dranoff et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90: 3539-43)。
種々の腫瘍における遺伝子発現および大規模遺伝子発現パターンの研究は、いわゆる腫瘍特異的抗原の定義につながった(Rosenberg, S A (1999) Immunity 10: 281-7)。多くの場合には、これらの腫瘍特異的抗原は、腫瘍において、また腫瘍が生じた細胞において発現される分化抗原、例えば、メラノサイト抗原gp100、MAGE抗原およびTrp-2である。より重要なことに、これらの抗原の多くは、宿主における腫瘍特異的T細胞の標的であると示され得る。これらのタンパク質に対する免疫応答を生じさせるために、CD40アゴニストは、腫瘍において発現される組換えタンパク質および/またはペプチドの収集物とともに使用できる。これらのタンパク質は、正常には、自己抗原として免疫系によって見なされ、したがって、それらに対して寛容である。腫瘍抗原は、染色体のテロメアの合成に必要であり、ヒトがんの85%超において、および限定された数の体細胞組織のみにおいて発現される、タンパク質テロメラーゼを含み得る(Kim et al. (1994) Science 266: 2011-2013)。腫瘍抗原はまた、タンパク質配列を変更し、または2種の無関係の配列間の融合タンパク質(すなわち、フィラデルフィア染色体中のbcr-abl)もしくはB細胞腫瘍からのイディオタイプを作製する体細胞変異のために、がん細胞において発現される「ネオ抗原」であり得る。
その他の腫瘍ワクチンは、ヒトパピローマウイルス(HPV)、肝炎ウイルス(HBVおよびHCV)およびカポジヘルペス肉腫ウイルス(KHSV)などのヒトがんに関わるウイルスに由来するタンパク質を含み得る。CD40阻害とともに使用できる腫瘍特異的抗原の別の形態として、腫瘍組織自体から単離された精製された熱ショックタンパク質(HSP)がある。これらの熱ショックタンパク質は、腫瘍細胞に由来するタンパク質フラグメントを含有し、これらのHSPは、腫瘍免疫を誘発するための抗原提示細胞への送達に非常に有効である(Suot & Srivastava (1995) Science 269:1585-1588;Tamura et al. (1997)Science 278:117-120)。
樹状細胞(DC)は、抗原特異的応答を刺激するために使用できる強力な抗原提示細胞である。DCは、エキソビボで生産され、種々のタンパク質およびペプチド抗原ならびに腫瘍細胞抽出物を積載させることができる(Nestle et al. (1998) Nature Medicine 4:328-332)。DCはまた、同様にこれらの腫瘍抗原を発現するよう遺伝学的手法によって形質導入できる。DCはまた、免疫化を目的として腫瘍細胞と直接融合されている(Kugler et al. (2000) Nature Medicine 6:332-336)。ワクチン化の方法として、より強力な抗腫瘍応答を活性化する(発揮する)よう、DC免疫化を、CD40アゴニズムと効率的に組み合わせることができる。
CD40のアゴニズムはまた、標準的ながん処置(例えば、手術、放射線照射および化学療法)と組み合わせることができる。CD40のアゴニズムは、化学療法治療計画と効率的に組み合わせることができる。これらの場合には、投与される化学療法試薬の用量を低減することが可能であり得る(Mokyr et al. (1998) Cancer Research 58: 5301-5304)。このような組合せの一例として、黒色腫の処置のためのダカルバジン(decarbazine)と組み合わせた抗huCD40抗体がある。このような組合せの別の例として、黒色腫の処置のためのインターロイキン-2(IL-2)と組み合わせた抗huCD40抗体がある。CD40アゴニストおよび化学療法の組合せ使用の背後の科学的論拠は、ほとんどの化学療法薬化合物の細胞傷害性作用の結果である細胞死が、抗原提示経路における腫瘍抗原のレベルの増大をもたらすはずであるということである。細胞死による、CD40アゴニズムとの相乗作用をもたらし得るその他の併用治療として、放射線照射、手術およびホルモン欠乏がある。これらのプロトコルの各々は、宿主において腫瘍抗原の供給源を作製する。血管新生阻害剤もまた、CD40アゴニストと組み合わせることができる。血管新生の阻害は、腫瘍細胞死につながり、これが、腫瘍抗原を宿主抗原提示経路に供給し得る。
本明細書に記述される抗huCD40抗体はまた、FcαまたはFcγ受容体を発現する、腫瘍細胞に対するエフェクター細胞を標的とする二重特異性抗体と組み合わせて使用できる(例えば、米国特許第5,922,845号および同5,837,243号を参照)。2種の別個の抗原を標的とするよう二重特異性抗体を使用できる。例えば、抗Fc受容体/抗腫瘍抗原(例えば、Her-2/neu)二重特異性抗体が、腫瘍の部位に対するマクロファージを標的とするために使用されている。この標的化は、腫瘍特異的応答をより効率的に活性化し得る。これらの応答のT細胞アームは、CD40のアゴニズムによって増強される。あるいは、抗原は、腫瘍抗原および樹状細胞特異的細胞表面マーカーと結合する二重特異性抗体の使用によってDCに直接送達され得る。
腫瘍は、多種多様な機序によって宿主免疫の監視を回避する。これらの機序のうち多くは、腫瘍によって発現される免疫抑制タンパク質の不活化によって克服され得る。これらは、特に、TGF-β(Kehrl et al. (1986) J. Exp. Med. 163: 1037-1050)、IL-10(Howard & O'Garra (1992) Immunology Today 13: 198-200)およびFasリガンド(Hahne et al. (1996) Science 274: 1363-1365)を含む。これらの実体の各々に対する抗体は、免疫抑制剤の効果に対抗し、宿主による腫瘍免疫応答に有利に働くよう、抗huCD40抗体と組み合わせて使用できる。
抗CD40抗体は、効率的に、T細胞ヘルパー活性の代わりとなることができる(Ridge et al. (1998) Nature 393: 474-478)。CTLA-4(例えば、米国特許第5,811,097号)、OX-40(Weinberg et al. (2000) Immunol 164: 2160-2169)、CD137/4-1BB(Melero et al. (1997) Nature Medicine 3: 682-685 (1997))およびICOS(Hutloff et al. (1999) Nature 397: 262-266)などのT細胞共刺激分子に対する抗体を活性化することはまた、T細胞活性化のレベルの増大を提供し得る。PD1またはPD-L1の阻害剤もまた、抗huCD40抗体とともに使用してもよい。
抗原特異的T細胞のエキソビボ活性化および増殖ならびに腫瘍に対する抗原特異的T細胞を刺激するための、これらの細胞のレシピエントへの養子移植を含む、いくつかの実験的な処置プロトコルもある(Greenberg & Riddell (1999) Science 285: 546-51)。これらの方法はまた、CMVなどの感染性因子に対するT細胞応答を活性化するために使用できる。抗CD40抗体の存在下でのエキソビボ活性化は、養子導入されたT細胞の頻度および活性を増大し得る。
慢性ウイルス感染症
別の態様において、本明細書に記述される本発明は、対象が感染性疾患について処置されるように、対象に抗huCD40抗体またはその抗原結合フラグメントを投与することを含む、対象の感染性疾患を処置する方法を提供する。
上記で論じられるような腫瘍へのその適用と同様に、病原体、毒素および自己抗原に対する免疫応答を増強するために、抗体媒介性CD40アゴニズムを、単独で、またはアジュバントとして、ワクチンと組み合わせて使用できる。この治療的アプローチが特に有用であり得る病原体の例は、現在有効なワクチンがない病原体、または従来のワクチンでは完全な有効性には至らない病原体を含む。これらは、それだけには限らないが、HIV、肝炎(A、BおよびC)、インフルエンザ、ヘルペス、ジアルジア、マラリア、リーシュマニア、黄色ブドウ状球菌(staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)が挙げられる。CD40アゴニズムは、感染の経過にわたって変更された抗原を示すHIVなどの因子による確立された感染に対して特に有用である。これらの新規エピトープは、抗ヒトCD40抗体投与の時点で外来性として認識され、したがって、強力なT細胞応答を引き起こす。
本明細書に記述される方法によって処置可能な感染症を引き起こす病原性ウイルスのいくつかの例として、HIV、肝炎(A、BまたはC)、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV-1、HAV-6、HSV-IIおよびCMV、エプスタイン・バーウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルスおよびアルボウイルス脳炎ウイルスが挙げられる。
本明細書に記述される方法によって処置可能な感染症を引き起こす病原性細菌のいくつかの例として、クラミジア、リケッチア細菌、マイコバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌(pneumonococci)、髄膜炎菌および淋菌、クレブシエラ、プロテウス、セラチア、シュードモナス、レジオネラ、ジフテリア、サルモネラ、バチルス、コレラ、テタヌス、ボツリヌス中毒、炭疽菌、ペスト、レプトスピラ症およびライム病細菌が挙げられる。
本明細書に記述される方法によって処置可能な感染症を引き起こす病原性真菌のいくつかの例として、カンジダ(Candida)(アルビカンス(albicans)、クルゼイ(krusei)、グラブラータ(glabrata)、トロピカリス(tropicalis)など)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、アスペルギルス(Aspergillus)(フミガツス(fumigatus)、ニガー(niger)など)、ケカビ目(Mucorales)の属(ケカビ属(mucor)、ユミケカビ属(absidia)、クモノスカビ属(rhizopus))、スポロトリックス・シェンキイ(Sporothrix schenkii)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、南アメリカ分芽菌(Paracoccidioides brasiliensis)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)およびヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)が挙げられる。
本明細書に記述される方法によって処置可能な感染症を引き起こす病原性寄生生物のいくつかの例として、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、大腸バランチジウム(Balantidium coli)、フォーラーネグレリア(Naegleriafowleri)、アカントアメーバ属(Acanthamoeba)の種、ランブル鞭毛虫(Giardia lambia)、クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium)の種、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、ネズミバベシア(Babesia microti)、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)、ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、ブラジル鉤虫(Nippostrongylus brasiliensis)が挙げられる。
上記の方法のすべてにおいて、CD40アゴニズムを、サイトカイン処置(例えば、インターフェロン、GM-CSF、G-CSF、IL-2)または、腫瘍抗原の提示の増強を提供する二重特異性抗体療法などのその他の形態の免疫療法と組み合わせることができる。例えば、Holliger (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448; Poljak (1994) Structure 2:1121-1123を参照。
ワクチンアジュバント
抗huCD40抗体の、対象の抗原(例えば、ワクチン)との同時投与によって、本明細書に記述される抗huCD40抗体を使用して抗原特異的免疫応答を増強できる。したがって、対象における抗原に対する免疫応答が増強されるように、対象に、(i)抗原、および(ii)抗huCD40抗体またはその抗原結合フラグメントを投与することを含む、対象において抗原に対する免疫応答を増強する方法が、本明細書において提供される。抗原は、例えば、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原または病原体に由来する抗原であり得る。このような抗原の限定されない例として、上記で論じられた腫瘍抗原(または腫瘍ワクチン)または上記のウイルス、細菌もしくはその他の病原体に由来する抗原などの、上記の節において論じられた抗原が挙げられる。
インビボおよびインビトロにおける、本明細書に記述される、抗体組成物(例えば、ヒトモノクローナル抗体、多重特異性および二重特異性分子およびイムノコンジュゲート)の適切な投与経路は、当分野で周知であり、当業者によって選択され得る。例えば、抗体組成物は、注射(例えば、静脈内または皮下)によって投与できる。使用される分子の適切な投与量は、対象の年齢および体重ならびに抗体組成物の濃度および/または製剤化に依存する。
これまでに記述したように、本明細書に記述される抗huCD40抗体は、1以上の他の治療薬、例えば、細胞傷害性薬剤、放射性毒性薬剤(radiotoxic agent)または免疫抑制剤と同時投与できる。抗体は、薬剤と連結でき(イムノコンジュゲートとして)、または薬剤と別個に投与できる。後者の場合には(別個の投与)、抗体を、薬剤の前、後、もしくは同時に投与でき、またはその他の既知療法、例えば、抗がん療法、例えば、放射線照射と同時投与できる。このような治療薬として、特に、それ自体では、患者にとって毒性または準毒性であるレベルでのみ有効である、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シスプラチンブレオマイシン硫酸塩、カルムスチン、クロラムブシル、ダカルバジンおよびシクロホスファミドヒドロキシ尿素などの抗腫瘍薬剤が挙げられる。シスプラチンは、100mg/mlの用量で4週間に1回、静脈内に投与され、アドリアマイシンは、60~75mg/mlの用量で21日に1回、静脈内に投与される。本明細書に記述される抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントの、化学療法薬との同時投与は、ヒト腫瘍細胞に細胞傷害性効果をもたらす異なる機序によって作動する2種の抗がん剤を提供する。このような同時投与は、薬物に対する抵抗性の発生または抗体と非反応性にする腫瘍細胞の抗原性の変化による問題を解決し得る。
また、本明細書に記述される範囲内に、本明細書に記述される抗体組成物(例えば、ヒト抗体、二重特異性もしくは多重特異性分子またはイムノコンジュゲート)および使用のための説明書を含むキットがある。キットは、少なくとも1つのさらなる試薬または本明細書に記述される1以上のさらなるヒト抗体(例えば、第1のヒト抗体とは別個のCD40抗原中のエピトープと結合する相補活性を有するヒト抗体)をさらに含有し得る。キットは、通常、キットの内容物の意図される使用を示す表示を含む。用語表示は、キット上にもしくはキットとともに供給された、またはそうでなければキットに添付されている任意の文書または記録物質を含む。
併用療法
上記で提供された併用療法に加えて、本明細書に記述される抗CD40抗体はまた、例えば、以下に記述されるように、がんを処置するための併用療法において使用できる。
本発明は、抗huCD40抗体を、1以上のさらなる薬剤、例えば、免疫応答の刺激において有効である抗体と同時投与し、それによって、対象において免疫応答をさらに増強、刺激または上方制御する併用療法の方法を提供する。
一般に、本明細書に記述される抗huCD40抗体は、(i)別の共刺激性受容体のアゴニストおよび/または(ii)T細胞での阻害シグナルのアンタゴニストと組み合わせることができ、そのうちいずれかが、抗原特異的T細胞応答(免疫チェックポイント制御因子)の増幅をもたらす。共刺激および共抑制分子のほとんどは、免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)のメンバーであり、本明細書に記述される抗CD40抗体は、IgSFファミリーのメンバーを標的とし、免疫応答を増大する薬剤とともに投与してもよい。共刺激または共抑制受容体と結合する膜結合リガンドの1つの重要なファミリーとして、B7ファミリーがあり、これは、B7-1、B7-2、B7-H1(PD-L1)、B7-DC(PD-L2)、B7-H2(ICOS-L)、B7-H3、B7-H4、B7-H5(VISTA)およびB7-H6を含む。共刺激または共抑制受容体と結合する膜結合リガンドの別のファミリーとして、同族のTNF受容体ファミリーメンバーと結合する分子のTNFファミリー分子があり、これは、CD40およびCD40L、OX-40、OX-40L、CD70、CD27L、CD30、CD30L、4-1BBL、CD137/4-1BB、TRAIL/Apo2-L、TRAILR1/DR4、TRAILR2/DR5、TRAILR3、TRAILR4、OPG、RANK、RANKL、TWEAKR/Fn14、TWEAK、BAFFR、EDAR、XEDAR、TACI、APRIL、BCMA、LTβR、LIGHT、DcR3、HVEM、VEGI/TL1A、TRAMP/DR3、EDAR、EDA1、XEDAR、EDA2、TNFR1、リンホトキシンα/TNFβ、TNFR2、TNFα、LTβR、リンホトキシンα1β2、FAS、FASL、RELT、DR6、TROY、NGFRを含む(例えば、Tansey (2009) Drug Discovery Today 00:1を参照)。
別の態様において、抗huCD40抗体を、T細胞活性化を阻害するサイトカイン(例えば、IL-6、IL-10、TGF-β、VEGF);またはその他の「免疫抑制サイトカイン」、または免疫応答を刺激するための、例えばがんなどの増殖性疾患を処置するための、T細胞活性化を刺激するサイトカイン、のアゴニストと組み合わせて使用できる。
ある態様において、T細胞応答は、本発明の抗huCD40 mAbと、(i)CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、TIM-3、ガレクチン9、CEACAM-1、BTLA、CD69、ガレクチン-1、TIGIT、CD113、GPR56、VISTA、2B4、CD48、GARP、PD1H、LAIR1、TIM-1およびTIM-4などのT細胞活性化を阻害するタンパク質(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)のアンタゴニストならびに(ii)B7-1、B7-2、CD28、4-1BB(CD137)、4-1BBL、ICOS、ICOS-L、OX40、OX40L、GITR、GITRL、CD70、CD27、CD40、DR3およびCD28HなどのT細胞活性化を刺激するタンパク質のアゴニストのうち1つまたはそれ以上との組合せによって刺激され得る。
上記のタンパク質のうち1種を調節し、がんを治療するために、アゴニスト抗huCD40抗体(例えば、本明細書に記述されるもの)と組み合わせてもよい例示的薬剤として、YERVOY(登録商標)/イピリムマブまたはトレメリムマブ(CTLA-4に対する)、ガリキシマブ(B7.1に対する)、BMS-936558(PD-1に対する)、ピディリズマブ/CT-011(PD-1に対する)、KEYTRUDA(登録商標)/ペンブロリズマブ/MK-3475(PD-1に対する)、AMP224(B7-DC/PD-L2に対する)、BMS-936559(B7-H1に対する)、MPDL3280A(B7-H1に対する)、MEDI-570(ICOSに対する)、AMG557(B7H2に対する)、MGA271(B7H3に対する-WO11/109400)、IMP321(LAG-3に対する)、ウレルマブ/BMS-663513およびPF-05082566(CD137/4-1BBに対する)、バルリルマブ(varlilumab)/CDX-1127(CD27に対する)、MEDI-6383およびMEDI-6469(OX40に対する)、RG-7888(OX40Lに対する-WO06/029879)、アタシセプト(TACIに対する)、ムロモナブ-CD3(CD3に対する)およびイピルムマブ(ipilumumab)(CTLA-4に対する)が挙げられる。
がんの治療のためにアンタゴニスト抗huCD40抗体と組み合わせることができるその他の分子として、NK細胞上の阻害性受容体のアンタゴニストまたはNK細胞上の活性化受容体のアゴニストが挙げられる。例えば、アンタゴニスト抗huCD40抗体を、KIRのアンタゴニスト(例えば、リリルマブ(lirilumab))と組み合わせることができる。
併用療法のためのさらにその他の薬剤として、マクロファージまたは単球を阻害または枯渇させる薬剤(限定されないが、RG7155(WO11/70024、WO11/107553、WO11/131407、WO13/87699、WO13/119716、WO13/132044)またはFPA-008(WO11/140249、WO13/169264、WO14/036357)を含めたCSF-1Rアンタゴニスト抗体などのCSF-1Rアンタゴニストを含む)が挙げられる。
一般に、本明細書に記述されるアゴニスト抗huCD40抗体は、陽性共刺激性受容体をライゲーションする1以上のアゴニスト剤、阻害性受容体によるシグナル伝達を減弱する遮断薬、ならびに抗腫瘍T細胞の頻度を全身的に増大する1以上の薬剤、腫瘍微小環境内のそれぞれの免疫抑制経路を克服する(例えば、阻害性受容体の関与(例えば、PD-L1/PD-1相互作用)を遮断し、Tregを枯渇または阻害し(例えば、抗CD25モノクローナル抗体(例えば、ダクリズマブ)を使用して、またはエキソビボ抗CD25ビーズ枯渇によって)、IDOなどの代謝酵素を阻害し、またはT細胞アネルギーもしくは消耗を元に戻す/防ぐ)薬剤、ならびに先天性免疫活性化および/または腫瘍部位での炎症のトリガーとなる薬剤と一緒に使用できる。
対象に、CD40アゴニスト(例えば抗体)および1以上のさらなる免疫賦活性抗体(PD-1アンタゴニスト(例えばアンタゴニスト抗体)、PD-L1アンタゴニスト(例えばアンタゴニスト抗体)、CTLA-4アンタゴニスト(例えばアンタゴニスト抗体)および/またはLAG3アンタゴニスト抗体(例えばアンタゴニスト抗体)など)を、対象の免疫応答を刺激する(例えば、腫瘍成長を阻害し、または抗ウイルス応答を刺激する)ように、投与することを含む、対象の免疫応答を刺激する方法を、本明細書において提供する。ある実施態様において、対象に、アゴニスト抗huCD40抗体およびアンタゴニスト抗PD-1抗体を投与する。ある実施態様において、対象に、アゴニスト抗huCD40抗体およびアンタゴニスト抗PD-L1抗体を投与する。ある実施態様において、対象に、アゴニスト抗huCD40抗体およびアンタゴニスト抗CTLA-4抗体を投与する。ある実施態様において、少なくとも1つのさらなる免疫賦活性抗体(例えば、アンタゴニスト抗PD-1、アンタゴニスト抗PD-L1、アンタゴニスト抗CTLA-4および/またはアンタゴニスト抗LAG3)は、ヒト抗体である。あるいは、少なくとも1つのさらなる免疫賦活性抗体は、(例えば、マウス抗PD-1、抗PD-L1、抗CTLA-4および/または抗LAG3抗体から調製された)例えば、キメラ抗体またはヒト化抗体であり得る。
アゴニスト抗huCD40抗体およびアンタゴニストPD-1抗体を対象に投与することを含む、過剰増殖性疾患(例えば、がん)を治療する方法を、本明細書において提供する。特定の実施態様において、アゴニスト抗huCD40抗体を治療量以下の用量で投与し、抗PD-1抗体を治療量以下の用量で投与し、またはその両方を治療量以下の用量で投与し、ここで治療量以下の表記は、当該薬剤の単剤治療に関する。また、抗huCD40抗体および治療量以下の用量の抗PD-1抗体を、対象に投与することを含む、免疫賦活性薬剤を用いる過剰増殖性疾患の処置と関連する有害事象を変更する方法を、本明細書において提供する。特定の実施態様において、対象は、ヒトである。特定の実施態様において、抗PD-1抗体は、ヒト配列モノクローナル抗体であり、アゴニスト抗huCD40抗体は、本明細書に開示される抗体のCDRまたは可変領域を含む抗体などの、ヒト化モノクローナル抗体である。
本明細書に記述される方法における使用に適したPD-1アンタゴニストとして、限定されないが、リガンド、抗体(例えば、モノクローナル抗体および二重特異性抗体)および多価薬剤が挙げられる。ある実施態様において、PD-1アンタゴニストは、融合タンパク質、例えば、AMP-244などのFc融合タンパク質である。ある実施態様において、PD-1アンタゴニストは、抗PD-1または抗PD-L1抗体である。
例示的な抗PD-1抗体として、OPDIVO(登録商標)/ニボルマブ(BMS-936558)またはWO2006/121168に記述される抗体17D8、2D3、4H1、5C4、7D3、5F4および4A11のうち1種のCDRもしくは可変領域を含む抗体がある。特定の実施態様において、抗PD-1抗体は、WO2012/145493に記述されるMK-3475(KEYTRUDA(登録商標)/ペンブロリズマブ/以前は、ランブロリズマブ);WO2012/145493に記述されるAMP-514/MEDI-0680;およびCT-011(ピディリズマブ;これまでは、CT-AcTibodyまたはBAT;例えば、Rosenblatt et al. (2011) J. Immunotherapy 34:409参照)である。さらに公知のPD-1抗体およびその他のPD-1阻害剤として、WO2009/014708、WO03/099196、WO2009/114335、WO2011/066389、WO2011/161699、WO2012/145493、米国特許第7,635,757号および同8,217,149号ならびに米国特許出願公開第2009/0317368号に記述されるものが挙げられる。WO2013/173223に開示される任意の抗PD-1抗体も使用できる。これらの抗体のうち1種と同様に、PD-1上の同一エピトープとの結合に競合する、および/またはPD-1上の同一エピトープに結合する抗PD-1抗体も、併用治療において使用してもよい。
特定の実施態様において、抗PD-1抗体は、ヒトPD-1と5×10-8M以下のKDで結合し、ヒトPD-1と1×10-8M以下のKDで結合し、ヒトPD-1と5×10-9M以下のKDで結合し、または、ヒトPD-1と1×10-8Mないし1×10-10Mまたはそれ以下のKDで結合する。
アゴニスト抗huCD40抗体およびアンタゴニストPD-L1抗体を対象に投与することを含む、過剰増殖性疾患(例えば、がん)を処置する方法を、本明細書において提供する。特定の実施態様において、アゴニスト抗huCD40抗体を、治療量以下の用量で投与し、抗PD-L1抗体を、治療量以下の用量で投与し、またはその両方を、治療量以下の用量で投与する。アゴニスト抗huCD40抗体および治療量以下の用量の抗PD-L1抗体を対象に投与することを含む、免疫賦活性薬剤を用いる過剰増殖性疾患の処置に関連する有害事象を変更するための方法を、本明細書において提供する。特定の実施態様において、対象は、ヒトである。特定の実施態様において、抗PD-L1抗体は、ヒト配列モノクローナル抗体であり、アゴニスト抗huCD40抗体は、本明細書で開示される抗体のCDRまたは可変領域を含む抗体などの、ヒト化モノクローナル抗体である。
ある実施態様において、抗PD-L1抗体は、BMS-936559(WO2007/005874および米国特許第7,943,743号では12A4と呼ばれる)、MSB0010718C(WO2013/79174)、またはPCT公開WO07/005874および米国特許第7,943,743号に記述される3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7および13G4のCDRもしくは可変領域を含む抗体である。特定の実施態様において、抗PD-L1抗体は、MEDI4736(抗B7-H1としても知られる)またはMPDL3280A(RG7446としても知られる)である。WO2013/173223、WO2011/066389、WO2012/145493、米国特許第7,635,757号および同8,217,149号および米国特許出願公開第2009/145493号において開示される任意の抗PD-L1抗体を使用してもよい。任意のこれらの抗体のエピトープと同一のエピトープと競合および/または結合する抗PD-L1抗体を、併用治療において使用してもよい。
なおさらなる実施態様において、本発明のアゴニスト抗huCD40抗体は、第3の免疫治療薬と組み合わせた、PD-1アンタゴニストまたはPD-L1アンタゴニストなどの、PD-1/PD-L1シグナル伝達のアンタゴニストと組み合わされる。ある実施態様において、第3の免疫治療薬は、本明細書に開示される抗GITR抗体もしくは抗OX40抗体などの、GITRアンタゴニストまたはOX-40アンタゴニストである。
別の態様において、免疫-腫瘍学薬剤は、アゴニストGITR抗体などのGITRアゴニストである。適したGITR抗体として、例えば、BMS-986153、BMS-986156、TRX-518(WO06/105021、WO09/009116)およびMK-4166(WO11/028683)が挙げられる。
別の態様において、免疫-腫瘍学薬剤は、IDOアンタゴニストである。適したIDOアンタゴニストとして、例えば、INCB-024360(WO2006/122150、WO07/75598、WO08/36653、WO08/36642)、インドキシモドまたはNLG-919(WO09/73620、WO09/1156652、WO11/56652、WO12/142237)が挙げられる。
本明細書に記述されるアゴニスト抗huCD40抗体およびCTLA-4アンタゴニスト抗体を対象に投与することを含む、過剰増殖性疾患(例えば、がん)を処置するための方法を、本明細書において提供する。特定の実施態様において、アゴニスト抗huCD40抗体を、治療量以下の用量で投与し、抗CTLA-4抗体を、治療量以下の用量で投与し、またはその両方を、治療量以下の用量で投与し、ここで治療量以下の表記は、当該薬剤の単剤治療に関する。アゴニスト抗huCD40抗体および治療量以下の用量の抗CTLA-4抗体を対象に投与することを含む、免疫賦活性薬剤を用いる過剰増殖性疾患の処置と関連する有害事象を変更するための方法を、本明細書において提供する。特定の実施態様において、対象はヒトである。特定の実施態様において、抗CTLA-4抗体は、YERVOY(登録商標)(PCT公開WO01/14424に記述されるイピリムマブまたは抗体10D1)、トレメリムマブ(以前は、チシリムマブ、CP-675,206)および以下の刊行物:WO98/42752;WO00/37504;米国特許第6,207,156号;Hurwitz etal. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95(17):10067-10071;Camacho et al. (2004)J. Clin. Oncology 22(145):Abstract No. 2505(antibody CP-675206);およびMokyr et al. (1998) Cancer Res. 58:5301-5304に記述される抗CTLA-4抗体からなる群から選択される抗体である。WO2013/173223に開示される任意の抗CTLA-4抗体を使用してよい。
アゴニスト抗huCD40抗体および抗LAG-3抗体を対象に投与することを含む、過剰増殖性疾患(例えば、がん)を処置するための方法を、本明細書において提供する。さらなる実施態様において、アゴニスト抗huCD40抗体を、治療量以下の用量で投与し、抗LAG-3抗体を、治療量以下の用量で投与し、またはその両方を、治療量以下の用量で投与する。アゴニスト抗huCD40抗体および治療量以下の用量の抗LAG-3抗体を対象に投与することを含む、免疫賦活性薬剤を用いる過剰増殖性疾患の処置に関連する有害事象を変更するための方法を、本明細書において提供する。特定の実施態様において、対象はヒトである。特定の実施態様において、抗LAG-3抗体は、ヒト配列モノクローナル抗体であり、アゴニスト抗huCD40抗体は、本明細書に開示される抗体のCDRもしくは可変領域を含む抗体などの、ヒト化モノクローナル抗体である。抗LAG3抗体の例として、米国特許出願公開US2011/0150892およびWO2014/008218に記述されている、抗体25F7、26H10、25E3、8B7、11F2または17E5のCDRもしくは可変領域を含む抗体が挙げられる。ある実施態様において、抗LAG-3抗体は、BMS-986016である。使用できる、他の技術分野で認識される抗LAG-3抗体として、US2011/007023に記述されるIMP731が挙げられる。IMP-321もまた使用してもよい。任意のこれらの抗体のエピトープと同一のエピトープと競合および/または結合する抗LAG-3抗体を、併用治療において使用してもよい。
特定の実施態様において、抗LAG-3抗体は、ヒトLAG-3と5×10-8M以下のKDで結合し、ヒトLAG-3と1×10-8M以下のKDで結合し、ヒトLAG-3と5×10-9M以下のKDで結合し、または、ヒトLAG-3と1×10-8Mないし1×10-10Mまたはそれ以下のKDで結合する。
本明細書に記述されるアゴニスト抗huCD40抗体およびアンタゴニスト、例えば、アンタゴニスト抗体の、LAG-3および/またはCTLA-4および/またはPD-1および/またはPD-L1などの1以上の第2の標的抗原への投与は、患者のがん性細胞に対する免疫応答を増強し得る。本開示の抗体を使用して成長が阻害され得るがんとして、免疫療法に典型的に応答するがんが挙げられる。本開示の併用療法を用いる処置のためのがんの代表例として、アゴニスト抗huCD40抗体を用いる単剤治療の考察において上記で具体的に列挙されたがんが挙げられる。
特定の実施態様において、本明細書で論じられる治療用抗体の組合せを、医薬上許容される担体中の単一組成物として同時に、または医薬上許容される担体中の各抗体を有する別個の組成物として同時に、投与できる。別の実施態様において、治療用抗体の組合せを連続的に投与できる。例えば、抗CTLA-4抗体およびアゴニスト抗huCD40抗体を、抗CTLA-4抗体を最初に投与し、アゴニスト抗huCD40抗体を2番目に投与し、またはアゴニスト抗huCD40抗体を最初に投与し、抗CTLA-4抗体を2番目に投与するなど、連続的に投与できる。さらに、またはあるいは、抗PD-1抗体およびアゴニスト抗huCD40抗体を、抗PD-1抗体を最初に投与し、アゴニスト抗huCD40抗体を2番目に投与し、またはアゴニスト抗huCD40抗体を最初に投与し、抗PD-1抗体を2番目に投与するなど、連続的に投与できる。さらに、またはあるいは、抗PD-L1抗体およびアゴニスト抗huCD40抗体を、抗PD-L1抗体を最初に投与し、アゴニスト抗huCD40抗体を2番目に投与し、またはアゴニスト抗huCD40抗体を最初に投与し、抗PD-L1抗体を2番目に投与するなど、連続的に投与できる。さらに、またはあるいは、抗LAG-3抗体およびアゴニスト抗huCD40抗体を、抗LAG-3抗体を最初に投与し、アゴニスト抗huCD40抗体を2番目に投与し、またはアゴニスト抗huCD40抗体を最初に投与し、抗LAG-3抗体を2番目に投与するなど、連続的に投与できる。
さらに、併用療法の2回以上の服用が連続的に投与される場合、逐次投与の順序は、各投与時点で逆転させることができ、同一順序で維持することができ、逐次投与は、同時投与またはその任意の組合せと組み合わせることができる。例えば、抗CTLA-4抗体およびアゴニスト抗huCD40抗体の組合せの第1の投与は、同時であり得、第2の投与は、抗CTLA-4抗体が最初およびアゴニスト抗huCD40抗体が2番目で連続的であり得、第3の投与は、アゴニスト抗huCD40抗体が最初および抗CTLA-4抗体が2番目で連続的であり得る、など。さらにまたはあるいは、抗PD-1抗体およびアゴニスト抗huCD40抗体の組合せの第1の投与は、同時であり得、第2の投与は、抗PD-1抗体が最初およびアゴニスト抗huCD40抗体が2番目で連続的であり得、第3の投与は、アゴニスト抗huCD40抗体が最初で、抗PD-1抗体が2番目で連続的であり得る、など。さらに、またはあるいは、抗PD-L1抗体およびアゴニスト抗huCD40抗体の組合せの第1の投与は、同時であり得、第2の投与は、抗PD-L1抗体が最初およびアゴニスト抗huCD40抗体が2番目で連続的であり得、第3の投与は、アゴニスト抗huCD40抗体が最初および抗PD-L1抗体が2番目で連続的であり得る、など。さらに、またはあるいは、抗LAG-3抗体およびアゴニスト抗huCD40抗体の組合せの第1の投与は同時であり得、第2の投与は、抗LAG-3抗体が最初およびアゴニスト抗huCD40抗体が2番目で連続的であり得、第3の投与は、アゴニスト抗huCD40抗体が最初および抗LAG-3抗体が2番目で連続的であり得る。別の代表的な投薬スキームは、抗huCD40が最初および抗CTLA-4抗体(および/または抗PD-1抗体および/または抗PD-L1抗体および/または抗LAG-3抗体)が2番目で連続的である第1の投与を含み得、その後の投与は同時であってもよい。
場合により、単一の免疫治療薬としてのアゴニスト抗huCD40、またはアゴニスト抗huCD40抗体および1以上のさらなる免疫治療用抗体(例えば、抗CTLA-4および/または抗PD-1および/または抗PD-L1および/または抗LAG-3)の組合せを、がん性細胞などの免疫原、精製した腫瘍抗原(組換えタンパク質、ペプチドおよび炭水化物分子を含む)、細胞および免疫刺激性サイトカイン(He et al. (2004) J. Immunol. 173:4919-28)をコードする遺伝子を導入した細胞とさらに組み合わせることができる。使用できる腫瘍ワクチンの限定されない例として、gp100、MAGE抗原、Trp-2、MART1および/またはチロシナーゼのペプチドなどの黒色腫抗原のペプチド、またはサイトカインGM-CSFを発現するように遺伝子導入しれた腫瘍細胞が挙げられる(以下にさらに論じられる)。CD40アゴニストおよび1以上のさらなる抗体(例えば、CTLA-4および/またはPD-1および/またはPD-L1および/またはLAG-3遮断)はまた、標準的ながん処置とさらに組み合わせることができる。例えば、CD40アゴニストおよび1以上のさらなる抗体(例えば、CTLA-4および/またはPD-1および/またはPD-L1および/またはLAG-3遮断)を、化学療法治療計画と効率的に組み合わせることができる。これらの場合には、本開示の組合せとともに投与されるその他の化学療法試薬の用量を低減することが可能である(Mokyr et al. (1998) Cancer Research 58: 5301-5304)。このような組合せの例として、黒色腫の処置のためのダカルバジン(decarbazine)とさらに組み合わせた、抗CTLA-4抗体および/または抗PD-1抗体および/または抗PD-L1抗体および/または抗LAG-3抗体などのさらなる抗体を伴う、または伴わない、CD40アゴニスト抗体の組合せがある。別の例として、黒色腫の処置のためのインターロイキン-2(IL-2)とさらに組み合わせた、抗CTLA-4抗体および/または抗PD-1抗体および/または抗PD-L1抗体および/またはLAG-3抗体を伴う、または伴わない、アゴニスト抗huCD40抗体の組合せがある。CD40のアゴニズムおよびCTLA-4および/またはPD-1および/またはPD-L1および/またはLAG-3遮断の、化学療法との組合せ使用の背後の科学的論拠は、ほとんどの化学療法化合物の細胞傷害性作用の結果である細胞死が、抗原提示経路における腫瘍抗原のレベルの増大をもたらすはずであるということである。細胞死によるCTLA-4および/またはPD-1および/またはPD-L1および/またはLAG-3遮断を伴う、または伴わない、組み合わされたCD40のアゴニズムとの相乗作用をもたらし得るその他の併用療法として、放射線照射、手術またはホルモン欠乏がある。これらの各々のプロトコルは、宿主において腫瘍抗原の供給源を作製する。血管新生阻害剤もまた、組み合わされたCD40のアゴニズムおよびCTLA-4および/またはPD-1および/またはPD-L1および/またはLAG-3遮断と組み合わせることができる。血管新生の阻害は、腫瘍細胞死をもたらし、これは、宿主の抗原提示経路に供給される腫瘍抗原の供給源であり得る。
単一の免疫治療薬としてのアゴニスト抗huCD40抗体またはCD40アゴニストおよびCTLA-4および/またはPD-1および/またはPD-L1および/またはLAG-3遮断抗体の組合せをまた、腫瘍細胞に対するFcαまたはFcγ受容体発現性エフェクター細胞を標的とする二重特異性抗体と組み合わせて使用することができる(例えば、米国特許第5,922,845号および同5,837,243号参照)。2種の別個の抗原を標的とするよう二重特異性抗体を使用できる。これらの応答のT細胞アームは、組み合わされたCD40のアゴニズムおよびCTLA-4および/またはPD-1および/またはPD-L1および/またはLAG-3遮断の使用によって増強される。
別の実施例では、単一の免疫治療薬としてのアゴニスト抗CD40抗体または抗CD40抗体およびさらなる免疫賦活性薬剤、例えば、抗CTLA-4抗体および/または抗PD-1抗体および/または抗PD-L1抗体および/またはLAG-3薬剤、例えば、抗体の組合せを、リツキサン(登録商標)(リツキシマブ)、ヘルセプチン(登録商標)(トラスツズマブ)、ベキサール(登録商標)(トシツモマブ)、ゼバリン(登録商標)(イブリツモマブ)、キャンパス(登録商標)(アレムツズマブ)、LYMPHOCIDE(登録商標)(エプラツズマブ(eprtuzumab))、アバスチン(登録商標)(ベバシズマブ)およびTARCEVA(登録商標)(エルロチニブ)などの抗腫瘍抗体とともに使用できる。例として、理論に拘束されることを意図しないが、抗がん抗体または毒素とコンジュゲートしている抗がん抗体を用いる処置は、がん細胞死(例えば、腫瘍細胞)につながり得、これは、免疫賦活性薬剤、例えば、CD40、TIGIT、CTLA-4、PD-1、PD-L1またはLAG-3薬剤、例えば、抗体によって媒介される免疫応答を増強する。例示的実施態様において、過剰増殖性疾患(例えば、がん腫瘍)の処置は、抗がん剤(例えば、抗体)を、同時もしくは連続的に、またはそれらの任意の組合せで、抗huCD40抗体および場合により、さらなる免疫賦活性薬剤(例えば、抗CTLA-4および/または抗PD-1および/または抗PD-L1および/または抗LAG-3薬剤(例えば抗体))と組み合わせて含み得、これは、宿主による抗腫瘍免疫応答を増強し得る。
アゴニスト抗huCD40抗体を、治療量以下の用量の抗CTLA-4および/または抗PD-1および/または抗PD-L1および/または抗LAG-3薬剤、例えば、抗体を伴って、または伴わずに、対象に投与することを含む、免疫賦活性薬剤を用いる過剰増殖性疾患(例えば、がん)の処置に関連する有害事象を変更するための方法を、本明細書において提供する。例えば、本明細書に記述される方法は、患者に非吸収性ステロイドを投与することによって、免疫賦活性治療用抗体が誘導する大腸炎または下痢の罹患率を低減する方法を提供する。本明細書において、「非吸収性ステロイド」は、広範な初回通過代謝を示し、その結果、肝臓における代謝後に、ステロイドのバイオアベイラビリティが低い、すなわち、約20%未満である、グルココルチコイドである。本明細書に記述されるある実施態様において、非吸収性ステロイドは、ブデソニドである。ブデソニドは、経口投与後に広範に、主に肝臓によって広く代謝される局所活性グルココルチコステロイドである。ENTOCORT EC(登録商標)(Astra-Zeneca)は、回腸および結腸全体への薬物送達を最適化するために開発された、ブデソニドのpHおよび時間依存性経口製剤である。ENTOCORT EC(登録商標)は、回腸および/または上行結腸に関与する軽度から中程度のクローン病の処置のために米国において承認されている。クローン病の処置のためのENTOCORT EC(登録商標)の通常の経口投与量は、6~9mg/日である。ENTOCORT EC(登録商標)は、腸管において放出され、その後、腸粘膜において吸収され、保持される。腸粘膜標的組織を通過すると、ENTOCORT EC(登録商標)は、肝臓においてシトクロムP450系によって、無視できるほどのグルココルチコイド活性を有する代謝産物に広範に代謝される。したがって、バイオアベイラビリティは低い(約10%)。ブデソニドの低いバイオアベイラビリティは、あまり広範ではない初回通過代謝を有するその他のグルココルチコイドと比較して改善された治療可能比をもたらす。ブデソニドは、全身活性化コルチコステロイドよりも少ない視床下部-下垂体抑制を含め、より少ない有害作用しかもたらさない。しかし、ENTOCORT EC(登録商標)の慢性投与は、副腎皮質機能亢進症および副腎抑制などの全身グルココルチコイド作用をもたらし得る。PDR 58th ed. 2004; 608-610を参照。
さらなる実施態様において、非吸収性ステロイドとともに、CTLA-4および/またはPD-1および/またはPD-L1および/またはLAG-3遮断(すなわち、CD40に対する免疫賦活性治療用抗体および場合により、抗CTLA-4および/または抗PD-1および/または抗PD-L1および/または抗LAG-3抗体)を伴う、または伴わない、CD40アゴニストを、サリチル酸とさらに組み合わせることができる。サリチル酸として、例えば、スルファサラジン(AZULFIDINE(登録商標)、Pharmacia & UpJohn);オルサラジン(DIPENTUM(登録商標)、Pharmacia & UpJohn);バルサラジド(COLAZAL(登録商標)、Salix Pharmaceuticals, Inc.);およびメサラミン(ASACOL(登録商標)、Procter & Gamble Pharmaceuticals;PENTASA(登録商標)、Shire US;CANASA(登録商標)、Axcan Scandipharm, Inc.;ROWASA(登録商標)、Solvay)などの5-ASA薬剤が挙げられる。
本明細書に記述される方法に従って、抗CTLA-4および/または抗PD-1および/または抗PD-L1および/またはLAG-3抗体および非吸収性ステロイドを伴う、または伴わない、アゴニスト抗huCD40抗体と組み合わせて投与されるサリチル酸として、免疫賦活性抗体によって誘導される大腸炎の発生率の低減を目的とした、サリチル酸および非吸収性ステロイドの任意の重複または逐次投与を挙げることができる。したがって、例えば、本明細書に記述される免疫賦活性抗体によって誘導される大腸炎の発生率を低減するための方法は、サリチル酸および非吸収性を同時にまたは逐次投与すること(例えば、サリチル酸は、非吸収性ステロイドの6時間後に投与される)、またはその任意の組合せを包含する。さらに、サリチル酸および非吸収性ステロイドを、同一経路によって(例えば、両方を経口投与する)、または異なる経路によって(例えば、サリチル酸を経口投与し、非吸収性ステロイドを直腸に投与する)投与でき、これは、抗huCD40および抗CTLA-4および/または抗PD-1および/または抗PD-L1および/または抗LAG-3抗体の投与に用いる経路とは異なり得る。
本明細書に記述されるアゴニスト抗huCD40抗体および組合せ抗体療法を、治療されている適応症(例えば、がん)に対するその特定の有用性について選択されるその他の周知の療法とともに使用してもよい。本明細書に記述されるアゴニスト抗huCD40抗体の組合せを、公知の医薬上許容される薬剤と連続的に使用してもよい。
例えば、本明細書に記述されるアゴニスト抗huCD40抗体および組合せ抗体療法を、放射線照射、化学療法(例えば、カンプトテシン(CPT-11)、5-フルオロウラシル(5-FU)、シスプラチン、ドキソルビシン、イリノテカン、パクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、パクリタキセル、カルボプラチン-パクリタキセル(タキソール)、ドキソルビシン、5-fuまたはカンプトテシン+apo2l/TRAIL(6X combo)の使用)、1以上のプロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブまたはMG132)、1以上のBcl-2阻害剤(例えば、BH3I-2’(bcl-xl阻害剤)、インドールアミンジオキシゲナーゼ-1(IDO1)阻害剤(例えば、INCB24360)、AT-101(R-(-)-ゴシポール誘導体)、ABT-263(小分子)、GX-15-070(オバトクラックス)またはMCL-1(骨髄系白血病細胞分化タンパク質-1)アンタゴニスト)、iAP(アポトーシスタンパク質の阻害剤)アンタゴニスト(例えば、smac7、smac4、小分子smacミメティック、合成smacペプチド(Fulda et al., Nat Med 2002;8:808-15参照)、ISIS23722(LY2181308)またはAEG-35156(GEM-640))、HDAC(ヒストンデアセチラーゼ)阻害剤、抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ)、血管新生阻害剤(例えば、ベバシズマブ)、VEGFおよびVEGFRを標的化する抗血管新生剤(例えば、アバスチン(登録商標))、合成トリテルペノイド(Hyer et al., Cancer Research 2005;65:4799-808を参照)、c-FLIP(細胞性FLICE阻害性タンパク質)モジュレーター(例えば、PPARγ(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ)の天然および合成リガンド、5809354または5569100)、キナーゼ阻害剤(例えば、ソラフェニブ)、トラスツズマブ、セツキシマブ、テムシロリムス、ラパマイシンおよびテムシロリムスなどのmTOR阻害剤、ボルテゾミブ、JAK2阻害剤、HSP90阻害剤、PI3K-AKT阻害剤、レナリドマイド(Lenalildomide)、GSK3β阻害剤、IAP阻害剤および/または遺伝毒性薬物などのさらなる処置と組み合わせて(例えば、同時または別個に)使用できる。
本明細書に記述されるアゴニスト抗huCD40抗体および組合せ抗体療法は、1以上の抗増殖性細胞傷害性薬剤とさらに組み合わせて、使用できる。抗増殖性細胞傷害性薬剤として使用してもよい化合物のクラスとして、それだけには限らないが、以下が挙げられる:
アルキル化剤(制限するものではないが、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホネート、ニトロソ尿素およびトリアゼンを含む):ウラシルマスタード、クロルメチン、シクロホスファミド(CYTOXAN(商標))ホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホラミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジンおよびテモゾロミド。
代謝拮抗剤(制限するものではないが、葉酸アンタゴニスト、ピリミジン類似体、プリン類似体およびアデノシンデアミナーゼ阻害剤を含む):メトトレキサート、5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、リン酸フルダラビン(Fludarabine phosphate)、ペントスタチンおよびゲムシタビン。
アゴニスト抗huCD40抗体との組合せに適した抗増殖性薬剤は、限定されないが、当分野で公知のその他のミクロチューブリン(microtubuline)安定化剤に加えて、タキサン、パクリタキセル(パクリタキセルは、TAXOL(商標)として市販されている)、ドセタキセル、ディスコデルモリド(DDM)、ジクチオスタチン(DCT)、ペロルシドA、エポチロン、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC、エポチロンD、エポチロンE、エポチロンF、フラノエポチロンD、デスオキシエポチロンBl、[17]-デヒドロデスオキシエポチロンB、[18]デヒドロデスオキシエポチロンB、C12,13-シクロプロピル-エポチロンA、C6-C8架橋エポチロンA、トランス-9,10-デヒドロエポチロンD、シス-9,10-デヒドロエポチロンD、16-デスメチルエポチロンB、エポチロンB10、ディスコデルモリド(discoderomolide)、パツピロン(patupilone)(EPO-906)、KOS-862、KOS-1584、ZK-EPO、ABJ-789、XAA296A(ディスコデルモリド)、TZT-1027(ソブリドチン)、ILX-651(タシドチン塩酸塩(tasidotin hydrochloride))、ハリコンドリンB、エリブリンメシル酸塩(E-7389)、ヘミアステリン(HTI-286)、E-7974、クリプトフィシン、LY-355703、マイタンシノイドイムノコンジュゲート(DM-1)、MKC-1、ABT-751、T1-38067、T-900607、SB-715992(イスピネシブ)、SB-743921、MK-0731、STA-5312、エリュテロビン、17β-アセトキシ-2-エトキシ-6-オキソ-B-ホモ-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、シクロストレプチン、イソラウリマリド、ラウリマリド、4-エピ-7-デヒドロキシ-14,16-ジデメチル-(+)-ディスコデルモリドおよびクリプトチロン(cryptothilone)1を含む。
本明細書に記述されるアゴニスト抗huCD40抗体を用いる処置とともに、またはそれに先立って異常な増殖性の細胞を静止状態にすることが望ましい場合には、17a-エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、メゲストロールアセテート、メチルプレドニゾロン、メチル-テストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、メドロキシプロゲステロンアセテート、リュープロリド、フルタミド、トレミフェン、ZOLADEX(商標)などのホルモンおよびステロイド(合成類似体を含む)も、患者に投与できる。本明細書に記述される方法または組成物を使用する場合には、鎮吐剤などの、臨床条件における腫瘍成長または転移の調節において使用されるその他の薬剤も、望ましいように投与できる。
化学療法薬の安全および有効な投与のための方法は、当業者に公知である。さらに、その投与は標準的な文献に記述される。例えば、多数の化学療法薬の投与は、その開示内容が、参照により本明細書に組み込まれる、Physicians' Desk Reference (PDR)、例えば、1996年版(Medical Economics Company、Montvale、N.J. 07645-1742、USA)に記述されている。
化学療法薬および/または放射線療法を、当分野で周知の治療用プロトコルに従って処方できる。化学療法薬および/または放射線療法の処方は、処置される疾患およびその疾患に対する化学療法薬および/または放射線療法の公知の効果に依存して、様々であり得ることは、当業者には明らかである。また、治療プロトコル(例えば、投与量および投与時間)は、熟練した臨床医の知識に従って、患者に投与した治療薬の観察された効果、および投与した治療薬に対して観察された疾患の応答を考慮して、様々であり得る。
XI.本発明の特定のアゴニスト抗CD40抗体の特徴付け
本発明のアゴニスト抗CD40抗体を、実施例1で記述されるように得た。本発明の代表的な抗体の可変ドメインおよびCDR配列領域を、配列表に示し、表2にまとめた。可変ドメインおよびCDR領域の番号付けは、同一の元のクローンに由来する全ての抗体において、同一である(すなわち、本明細書で与えられるヒト化バリアントは、いかなる挿入または欠失も含まない)
表2:抗体可変ドメインおよびCDR
本発明はまた、同一のマウス生殖系列配列(特に、V領域セグメントおよびJ領域セグメント)に由来することによって、本明細書に配列によって開示される抗huCD40抗体に関連する、抗huCD40抗体を与える。本明細書に開示される各抗体における、マウス生殖系列配列を表3に示す。
表3:抗huCD40 mAbのマウス生殖系列配列
本発明は、マウスフレームワーク配列を、さもないとヒト化において消失する抗原(ヒトCD40)親和性を修復し、または配列傾向を除去する、さらなる変異(「復帰変異」)を伴い、または伴わずに、ヒトフレームワーク配列に置換することによる、本明細書に開示されるマウス親抗体に由来する、ヒト化抗huCD40抗体を、さらに提供する。実施例3参照。
本発明はまた、本明細書で開示される新規な可変ドメイン配列および、他のFc受容体(すなわち、活性化受容体)に対する親和性と比較して、FcγRIIbに対する親和性が増強した、改変Fc領域を有する定常ドメインを含む、抗体コンストラクトを提供する。FcγRIIb特異性が増強した、そのようなアゴニスト抗huCD40抗体は、がんおよび慢性感染症の処置において、優れた有効性を示すことが想定される(Li & Ravetch (2011) Science 333:1030; White et al. (2011) J. Immunol. 187:1754)。理論によって限定されることを意図しないが、そのようなFcγRIIb特異的アゴニスト抗ヒトCD40mAbは、細胞傷害性CD8+ T細胞の増殖および活性化を促進する樹状細胞の成熟化を増大させ、抗腫瘍応答の増強を導くことによって、アジュバント効果の増強を示し得る(同文献)。理論によって限定されることを意図しないが、受容体のクラスター形成または本発明の「架橋」を増加させるための、アゴニストCD40抗体の、FcRを介するシグナル伝達の増強は、治療効果の主要な要因であり得る。CD40アゴニスト抗体の、抗体のFc部におけるFcR会合による架橋は、シグナル強度を増加させ、したがって、細胞の活性化を増強し得る。
抗体の、阻害性(I)Fc受容体に対する活性化(A)Fc受容体との、相対的な結合親和性を、「A/I」比で表してもよく、これは典型的に、IgG抗体のFc領域の構造の関数である。WO2012/087928参照。阻害性受容体FcγRIIbとの結合の特異性が増強した抗体は、より低いA/I比を有する。本発明のアゴニスト抗huCD40抗体における好ましい抗体は、例えば、5、4、3、2、1、0.5、0.3、0.1、0.05、0.03または0.01未満のA/I比を有する。
FcγRIIb特異性を増強する変異を含む、ヒトIgG1定常ドメインを、配列表に示し、表4にまとめ、図1に示した。配列バリアントを、配列番号65で示されるヒトIgG1f定常ドメイン配列を基準として、明示した。Fc領域における変異の位置を考慮した命名法は、Kabat et al. (1981) Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md.と同様に、EUの指標に従い、これは、可変ドメインの長さが異なる抗体における、対応する位置でのFc配列の比較を促進する。Edelman et al. (1969) Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 63:78;WO2012/130831も参照(同一の番号付け方式を使用)。これは、配列表における配列の番号付けとは一致しない。図1は、表4のFc配列バリアントの図示を与え、当業者は、本明細書に開示される抗体配列の対応する位置が、容易に認識できる。SEおよびSELFバリアントは、Chu et al. (2008) Mol. Immunol. 45:3926に記述される。P238D、V4、V7、V8、V9、V11およびV12バリアントは、Mimoto et al. (2013) Protein Engineering Design & Selection 26:589(例えば、その表1)に記述される。
表4:Fc配列バリアント
FcγRIIbとの親和性を増強させる、さらなるFc配列バリアントが、Yu et al. (2013) J. Am. Chem. Soc. 135:9723 (およびWO2014/184545)に開示され、これは、(例えば、S267EおよびL328Fと組み合わせて使用する)V262EおよびV264Eを含む。
D270E変異を伴うさらなるバリアントを、V4およびV9 Fc配列バリアントにおいて生じるD270異性化を減少させるために作製し、これらはさもなければ、加速分解の研究において、異性化速度の増強を示し、他のバリアントでの約5~7%の異性化と比較して、PBS中、4℃で2年後に約12~16%の異性化を示唆した。表5参照(1回の実験でのデータを示すが、再現実験は同等の値を示した)。270番目のアスパラギン酸のグルタミン酸への置換は、このようなDG異性化の可能性を排除し、化学的により安定な抗体およびより均一な抗体の調製をもたらす。V9の他のD270置換(D270A、D270Q、D270SおよびD270Tなど)は、FcγRIIaおよびFcγRIIb受容体との結合を効果的に除去した(K
Dは5μMより大きかった)。D270E変異は、FcγRIIb受容体との結合を1桁減少させたが、V9-D270Eバリアントは、FcγRIIaとの比較における、FcγRIIb受容体に対する親和性の有利なバイアス、および許容できるFcγRIIbに対する絶対的な親和性を維持した。実施例8参照。
表5:Fc配列バリアントの、Fcγ受容体に対する親和性(nM表示のK
D)
本発明の様々な抗CD40抗体のアゴニスト活性を測定した。実施例7ならびに図3A、3Bおよび4参照。アゴニスト活性が、抗原(ヒトCD40)結合を決定する可変ドメイン配列(mAbクローン番号)および、Fc受容体(FcγRIIb)結合を決定するFc領域の配列の両方に依存することがわかった。
本開示を以下の実施例によってさらに説明するが、この実施例は、さらなる限定として解釈されるべきではない。本出願のあらゆる箇所で引用される、全ての図および全ての言及、Genbank配列、特許および公開された特許出願の内容は、参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。
実施例1:ヒトCD40に対するマウスモノクローナル抗体の作製
以下の通りに、マウス抗ヒトCD40モノクローナル抗体を、マウス抗体遺伝子を発現する野生型Balb/cマウス(Charles Rivers Labs)を用いて、作製した。
抗原
huCD40-muFc可溶性組換えタンパク質を、免疫化のための抗原として使用した。可溶性融合タンパク質は、91.6kDのMWを有し、C末端においてマウスIgG2b Fcと連結している、huCD40の細胞外部分で構成される。この融合タンパク質を、本明細書において、「huCD40-muFc融合タンパク質」と呼ぶ。融合タンパク質を、標準的な組換えDNA法によって作製し、遺伝子導入したCHO細胞中に発現させ、このCHO細胞は、可溶性融合タンパク質を培養上清中に分泌した。遺伝子導入に用いたCHO宿主細胞は、Invitrogen(カタログ番号11619-012)から得た。分泌された可溶性融合タンパク質を、免疫原として使用するために精製した。
マウスの免疫化
ヒトCD40に対するマウスモノクローナル抗体を作製するため、Balb/cマウスを、精製したhuCD40-muFc融合タンパク質で免疫化した。マウスは、最初の抗原の注入時に、月齢約2~4ヶ月であった。精製した組換えhuCD40-muFc抗原調製物(融合タンパク質を発現する、遺伝子導入した哺乳類細胞から10μg精製した)を用いて、2つの免疫化プロトコル(AおよびB)でマウスを免疫化した。プロトコルAは4回の毎週の足蹠(FP)免疫化からなり、プロトコルBは7回の毎週の皮下(SC)/腹腔内(IP)/膝の免疫化からなる。両方の場合において、免疫原を、RIBIアジュバント(シグマ カタログ番号M6536)と1:1で混合した。
全てのマウスを、4回目の免疫化の1週間後に採血し、抗原特異性の力価を評価した。屠殺時に、各マウスから最後の採血を得た。免疫応答を、後眼窩の採血でモニターした。血漿を、免疫化に用いた組換えタンパク質を用いて、ELISA分析でスクリーニングした。プロトコルAのマウスは、融合の2日および3日前に、静脈内(IV)および足蹠(FP)に、可溶化抗原での2回の最終的な追加免疫を受けた。プロトコルBのマウスは、融合の2日および3日前に、静脈内(IV)ならびにIPおよび膝に、可溶化抗原での2回の最終的な追加免疫を受けた。
プロトコルAの4匹全てのマウス(ID 291763、291764、291765、291766)を屠殺した。リンパ節および脾臓細胞を抽出し、融合(融合体3582および3583)のために混合した。プロトコルBの2匹のマウス(ID 294286および294288)のみを屠殺した。各マウスの脾臓およびリンパ節を混合し、融合(融合体3716および3717)させた。
ヒトCD40に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの作製
力価の高いBalb/cマウスから単離した、マウスの脾細胞およびリンパ節を、電場に基づく電気融合Hybrimune装置および大型の0.9ml融合チャンバー(BTX Harvard Apparatus, Inc., Holliston, MA)を用いて、骨髄腫融合パートナーと融合させた。免疫化マウス由来のリンパ球の単細胞懸濁液を、同量のP3X63 Ag8.6.53(ATCC CRL 1580)非分泌性マウス骨髄腫細胞と融合させた。得られた細胞を、ハイブリドーマを選択するためにアミノプテリンを添加した、選択ClonaCell-HY培地E(カタログ番号03805;STEMCELL Technologies Inc., Vancouver BC, Canada)を含む、平底マイクロタイタープレートに、2.0x104細胞/ウェルでプレーティングした。約7日後、培地を、培地E(アミノプテリンなし)に交換した。
10~12日後、個々のウェルを、マウスIgG/マウスκ軽鎖抗体の存在について、均一性(homogenous)HTRFアッセイでスクリーニングした。このアッセイでは、96ウェル融合プレートからの上清を、カスタム標識されたテルビウム-クリプテートヤギ抗マウスIgG(Fcγ特異的)((Cisbio US Inc. Bedford, MA)およびAlexaFluor647で標識されたヤギ抗マウスIgG Fab’2(Jackson ImmunoResearch;カタログ番号109-605-098)と混合した。1時間インキュベートした。次いで、プレートをRubystarリーダーで読み取った。次に、マウスIgG/マウスκ軽鎖抗体について、陽性であったウェルのハイブリドーマ細胞を、ヒトCD40を遺伝子導入したCHO細胞および対照として遺伝子導入していないCHO細胞(融合体3582/3583)を用いるFACS、または組換えタンパク質を用いるELISA後の、Daudi B細胞および負の対照としてのJurkat T細胞(融合体3716/3717)におけるFACSのいずれかによって、スクリーニングした。FACS陽性の親系統を、24ウェルプレートに移行した。数日後、個々のウェルの細胞上清を、FACSで再スクリーニングし、ヒトCD40に対するIgG特異性を確認した。
抗原特異的ハイブリドーマのパネルを、段階希釈によってクローン化し、CHO形質転換体またはDaudi細胞のいずれかを用いて、FACSで再スクリーニングした。融合体3582/3583由来の19種の抗体および融合体3716/3717由来の20種の抗体を精製し、機能的活性をテストした。この抗体のパネルから、5種の強力なアゴニストを、第2のサブクローニングにおいて選択した。これら5種の抗体、すなわち1802.3582.19G3.F10.E1、1802.3583.5G7.F12.G3、1802.3583.8E8.C10.G2、1802.3716.12D6.B1.E3および1802.3717.5F11.A11.E7を配列決定し、さらに分析した。
実施例2
完全ヒト抗huCD40抗体の作製
本明細書に開示されるヒト化抗CD40抗体と同一のエピトープに結合し、かつ/または、ヒト化抗CD40抗体の結合を交差遮断する、完全ヒト抗huCD40モノクローナル抗体について、本発明の方法における使用法を見出し得る。このような抗体を、以下のように、ヒト抗体遺伝子を発現するトランスジェニックマウスを用いて、作製してもよい。
抗原
huCD40可溶性組換えタンパク質を、免疫化の抗原として用いる。可溶性融合タンパク質は、C末端においてマウスIgG2a Fcと連結している、huCD40の細胞外部分で構成される。この融合タンパク質を、本明細書では「huCD40-muFc融合タンパク質」と呼ぶ。融合タンパク質を、標準的な組換えDNA法によって作製し、遺伝子導入したCHO細胞中に発現させ、このCHO細胞は、可溶性融合タンパク質を培養上清中に分泌する。遺伝子導入に用いたCHO宿主細胞を、Invitrogen(カタログ番号11619-012)から得る。分泌された可溶性融合タンパク質を、免疫原として使用するために精製した。シグナル配列を含む全長ヒトCD40の配列を、配列番号1に示す。
トランスジェニックマウス
ヒトCD40に対する完全ヒトモノクローナル抗体を、CMD++;JKD++;KCo5(9272)+^;SC20+遺伝型からマウスを使用して調製した(以下、KM(登録商標)マウスと呼ばれる)。個々の導入遺伝子指定は、括弧内にあり、それに無作為に組み込まれた導入遺伝子の系統番号が続く。記号++および+は、同形接合性またはヘミ接合性を示すが、マウスは、無作為に組み込まれたヒトIg導入遺伝子について、異型接合性および同型接合性間を区別できない、PCRに基づくアッセイを使用して日常的にスクリーニングされるため、+指定は、これらの要素について実際に同形接合性であるマウスに与えられ得る。この株において、Chen et al. (1993) EMBO J. 12:811-820に記述されるように、内因性マウスκ軽鎖遺伝子を、同型接合的に破壊し、内因性マウス重鎖遺伝子を、WO2001/09187の実施例1に記述されるように同型接合的に破壊する。さらに、このマウス株は、Fishwild et al. (1996) Nature Biotechnology 14:845-851に記述されるように、ヒトκ軽鎖導入遺伝子、KCo5、WO2000/026373に記述されるように、ヒトκ軽鎖遺伝子座のほとんどを保持する酵母人工染色体(YAC)を保持する。
マウスの免疫化
ヒトCD40に対する完全ヒトモノクローナル抗体を作製するために、KM(登録商標)マウスを、精製したhuCD40-muFc融合タンパク質で免疫化した。一般的な免疫化スキームは、Lonberg, N. et al (1994) Nature 368(6474): 856-859;Fishwild,D. et al. (1996) Nature Biotechnology 14: 845-851およびWO98/24884に記述されている。マウスは、抗原の第1の注入の際に、約4ヶ月齢であった。精製した組換えhuCD40-muFc抗原調製物(融合タンパク質を発現する、遺伝子導入された哺乳類細胞から精製された10μg)またはヒトCD40を遺伝子導入した300-19細胞のいずれかを使用して、マウスを腹腔内および皮下において免疫化した。免疫原を、RIBIアジュバント(Sigmaカタログ番号M6536)と1:1で混合した。
マウスを5~7日の間隔で5回免疫化した。第1および第2の免疫化は、組換えタンパク質を用いて行った。第3の免疫化は、細胞を用い、第4の免疫化は、タンパク質を用い、第5の免疫化は、細胞を用いた。最後の免疫化の1週間後にマウスを出血させ、抗原特異的力価を評価した。免疫応答を、後眼窩出血によってモニターした。遺伝子導入した300-19細胞を使用するFACS分析によって血漿をスクリーニングし、抗ヒトCD40ヒトIgGについて最も高い力価を有するマウスを融合に使用した。マウスは、屠殺と脾臓採取の2日前に可溶性抗原、および3日前に遺伝子導入された細胞を静脈内(IV)および腹腔内(IP)注射することによって、最後のブーストを受けた。
ヒトCD40に対するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの作製
高力価KM(登録商標)マウスから単離したマウス脾細胞およびマウス骨髄腫融合パートナーを、Cyto Pulse大型チャンバー細胞融合エレクトロポレーター(Cyto Pulse Sciences, Inc., Glen Burnie, MD)を使用して、電場に基づく電気融合で融合した。免疫化したマウス由来の脾臓リンパ球の単細胞懸濁液を、同数のP3X63 Ag8.6.53(ATCC CRL 1580)非分泌性マウス骨髄腫細胞(融合数:2541)と融合する。得られた細胞を、β-メルカプトエタノール(1000X、Gibco番号21985-023)、7mM HEPES(Cellgro 25-060-Cl)、追加の2mM L-グルタミン(Cellgro 25-005-Cl)、HAT(50X、Sigma番号H-0262)、5%ハイブリドーマクローニング因子(BioVeris番号210001)、10% P388DI(ATCC番号CRL TIB-63)コンディショニング培地およびペニシリン-ストレプトマイシン(100x、Cellgro番号30-002-CI)を添加した、高グルコース(Cellgro番号10-013-CM)および10%ウシ胎児血清(Hyclone番号SH30071.03)を含有する選択DMEM培地を含む、平底マイクロタイタープレート中に2.0×104個細胞/ウェルでプレーティングする。約7日後、HATを含有する培地の一部を、HT(Cellgro番号25-047-CI)を含有する培地と交換する。
10~12日後、同種HTRFアッセイを使用して、個々のウェルを、ヒトIgG/ヒトκ軽鎖抗体の存在についてスクリーニングする。このアッセイにおいて、96ウェル融合プレートからの上清を、ユウロピウム-クリプテート標識されたヤギ抗ヒトIgG(Fcフラグメント特異的)、ビオチン化ヤギ抗ヒトκ軽鎖(Bethyl番号A80-115B)、ストレプトアビジン-XLentと混合し、1時間インキュベートする。次いで、プレートをRUBYstarリーダーで読み取る。
ヒトIgG/ヒトκ軽鎖またはヒトIgG/ヒトλ軽鎖抗体について陽性のウェルから得たハイブリドーマ細胞を、次いで、ヒトCD40を遺伝子導入した300-19細胞および対照としての遺伝子導入していない300-19細胞を用いて、FACSでスクリーニングする。FACS陽性の親株を24ウェルプレートに移す。数日後、個々のウェルから得た細胞上清を、FACSによって再スクリーニングし、ヒトCD40に対するIgG特異性を確認する。
ハイブリドーマを段階希釈によってクローン化し、FACSで再スクリーニングする。
実施例3
抗huCD40抗体のヒト化
本発明の親(マウス)抗体を、ヒトの治療としての潜在的な使用のために、ヒト化した。最もよく適合するヒト生殖系列配列を、各マウス可変ドメインについて選択し、これらのヒトフレームワーク領域を用いて、マウスのフレームワークを抗体の「CDR移植」型に置換した。次いで、追加のアミノ酸置換(フレームワーク復帰変異など)を、ヒト化抗体の結合親和性を回復する必要性に応じて、作製してもよい。さらなるアミノ酸置換によって、配列の傾向を除去した。本発明の抗体の様々な形態間の配列の関連性を、表6に示す。様々なアゴニスト抗huCD40抗体と、可溶性ヒトCD40との結合を、ForteBio Octet RED(Rapid system - Extended Detection)無標識相互作用分析装置を用いて、バイオレイヤー干渉法(BLI)解析によって、決定した。全ての研究を、10 mM Na
xPO
4、130 mM NaCl、0.05%Surfactant P20(pH7.1)中、25℃で行った。簡潔に述べると、抗huCD40抗体の上清(10μg/mlに希釈または、上清濃度が10μg/ml未満の場合、原液を得た)を、90秒のローディング時間と1000rpmの振盪速度で、プロテインAで被覆したバイオセンサー(Pall Fortebio #18-5010)上において得た。上清を、最初に、1μM組換えヒトCD40単量体(huCD40単量体)との結合について、180秒の会合および解離時間、1000rpmで、結合サイクル間の10mMグリシンpH1.5を用いる2回の15秒の条件付け(conditioning)の工程を伴って、スクリーニングした。1μMのhuCD40単量体実験において、結合の信号を示した全ての上清を、次に、3倍希釈系列における7種の異なる濃度のhuCD40単量体との結合についてテストし、ここで最も高い濃度は、1μMのスクリーニング実験での結合の信号強度に依存して、10μMのhuCD40単量体または1μMのhuCD40単量体のいずれかである。選択した抗体およびその配列バリアントにおける結果を、表6に示す。
表6:抗CD40抗体の結合親和性
*=比較の目的のため、親の5F11は、5F11-45抗体と並列して同一のアッセイを行った際、8.2nM(4.7nMではなく)のK
Dを示した。
ヒト化抗体において、VHおよびVLカラムは、フレームワーク領域の基礎となるヒト可変ドメインの生殖系列を提供する。「CDR移植」は、記載されたヒトフレームワーク配列上に直接移植された、改変されていない親(マウス)CDRを含む、可変ドメインを指す。表6における全ての配列バリアントの残基の番号付けは、Kabatに従い、したがって、表6の配列変化の位置は、配列表における抗体配列の残基の番号付けと適合しない。下線を用いて、潜在的な配列の傾向(すなわち、化学修飾および潜在的な分解にさらされ、生成物の不均一性をもたらす、残基)を修正することを意図する配列の改変を示す。他の配列改変は、親和性を回復すること、典型的にはフレームワークの復帰変異(ヒト生殖系列フレームワーク配列から、元のマウスフレームワーク残基に戻すこと)を意図する。抗体5G7の重鎖におけるM69L改変は、フレームワーク復帰変異および傾向の修正の両方である。
実施例4
抗CD40抗体のエピトープビニング実験
エピトープビニング実験を行い、抗ヒトCD40抗体が、huCD40との結合において、他の物質と競合し、したがって、類似のエピトープに結合することを決定してもよい。抗huCD40抗体間の対での競合を以下のように決定する。基準抗体は、センサーチップの表面に結合しており、テスト抗体を、huCD40ポリペプチドコンストラクトと共に、混合物中でプレインキュベートする。プレインキュベートした混合物を、センサーチップ上に流し、テスト抗体が、チップ表面上でのhuCD40ポリペプチドコンストラクトと基準抗体との結合に干渉する程度を決定する。このような競合実験を、BIACORE(登録商標) SPR装置を用いて行ってもよい。簡潔に述べると、基準の抗huCD40抗体を、センサーチップCM5チップ(Series S, GE Healthcareカタログ番号BR-1005-30)表面、フローセル2、フローセル3およびフローセル4(5000RU)上に固定化し、フローセル1を負の対照として用いる。テスト抗体を出発濃度120μg/mL(2X)に希釈する。テスト抗体の希釈系列を、7種の異なる濃度および対照試料(0μg/mL)について、バッファーで抗体の濃度を1:3希釈することによって作製し、滴定曲線を得る。各抗体の濃度系列を、半量で2つに分ける。第1の半量の濃度系列において、40nM(2X)ヒトCD40抗原(例えば、huCD40/Fc)を加え、最終濃度系列(60μg/mL~0.0μg/mL)を作製し、各ウェルにおいて抗原の終濃度を20nMとした。第2の半量の濃度系列において、抗原の代わりにバッファーを加え、抗体を同一濃度に希釈し、この半量をブランクとして処理する。テスト抗CD40抗体とhuCD40/Fcとの複合体を2時間インキュベートした。40μLの複合体を、参照抗体を被覆する表面上に、30μL/分で注入する。BIACORE(登録商標)T200表面プラズモン共鳴装置を用い、ランニングバッファーはHBE-EP、GE Healthcareカタログ番号BR-1001-88、濾過および脱気した0.01M HEPES、pH7.4、0.15NaCl、3mM EDTA、0.005%SurfactantP20である。表面を、25mM NaOH(注文コード:BR-1003-58、GE Healthcare)を用いて、100μL/分、5秒間で、再生する。データをマイクロソフトエクセルを用いて分析し、テスト抗体の濃度を、対応する応答ユニットに対してプロットし、滴定曲線を得る。
本発明の抗CD40抗体における、このようなエピトープビニング実験の結果を、図2に示す。抗体5F11および8E8は、リガンド(CD40L)結合を遮断する。5種の本発明の抗CD40抗体を3つのエピトープ群に分類する(12D6/5G7/19G3、5F11/5G7/19G3、および8E8)。
実施例5
HDXによるエピトープマッピング
本発明の抗huCD40抗体12D6、5G7、19G3および5F11におけるエピトープを、水素/重水素交換質量分析(HDX-MS)で決定した。HDX-MSは、アミド骨格の水素原子の重水素交換の速度および程度をモニターすることで、溶液中のタンパク質の立体構造および立体構造ダイナミクスを調査する(Huang & Chen (2014) Anal. Bioanalytical Chem. 406:6541; Wei et al. (2014) Drug Disc. Today 19:95)。HDXのレベルは、アミド骨格の水素原子の溶媒露出度およびタンパク質の水素結合に依存する。HDXによるタンパク質の質量の増加は、MSで正確に測定できる。この技術を酵素消化と組み合わせると、ペプチドレベルでの構造上の特徴を決定でき、内部に折り畳まれたペプチドまたはタンパク質-タンパク質複合体の界面に隔離されたペプチドから、表面に露出したペプチドを区別できる。典型的に、重水素標識および続く反応停止実験を行い、その後、酵素消化、ペプチド分離およびMS分析を行う。
エピトープマッピング実験の前に、非重水素化実験を行い、組換えヒトCD40単量体(10μM)ならびにmAb 12D6、5G7、19G3および5F11とCD40とのタンパク質複合体(モル比1:1)における、共通のペプチドの表を作成した。HDX-MS実験において、5μLの各試料(それぞれ、mAb 12D6、5G7、19G3および5F11と、CD40またはCD40L)を、55μLのD2Oバッファー(10mMリン酸バッファー、D2O、pH7.0)で希釈し、標識化反応を開始した。種々の時間、反応を行った:20秒、1分、10分および240分。各標識化反応時間が終わるまでに、クエンチングバッファー(4M GdnClおよび0.4M TCEPを含む100mMリン酸バッファー、pH2.5、1:1、v/v)を添加して、反応を停止し、50μLの反応を停止した試料を分析するため、Waters HDX-MSシステムに注入した。共通のペプチドの重水素の取り込みレベルを、CD40 mAbが存在する/存在しない場合において、モニターした。得られた配列のカバー度は82%であった。
抗CD40 mAb 12D6、5G7、19G3および5F11におけるHDXエピトープを、表7に示す。抗体12D6は2つのペプチドを保護し、そのうち1つのペプチド(11~28残基)は、シグナル配列の一部を含むため、それ自体が生理学的に関連する可能性は低いが、12D6が、mAb 5G7および19G3が接触しない、21~28領域において接触することを示す。
表7:HDXエピトープ
実施例6
酵母ディスプレイによるエピトープマッピング
本発明の選択されたキメラまたはヒト化抗huCD40抗体のエピトープを、無作為に突然変異させたhuCD40細胞外領域バリアントを酵母上にディスプレイし、これらの酵母を、それらが特定の抗体と結合できないことに基づいて選別することによって決定する。結合できなかった、選択された酵母細胞を増幅し、それらが本発明の特定のキメラまたはヒト化型抗体と結合できないことに基づく、さらなる選択のラウンドを行う。例えば、Chao et al. (2004) J. Mol. Biol. 342:539を参照。得られた酵母について、huCD40バリアントの配列を決定し、抗体結合に対する各残基の効果について分析する。本発明の抗体の結合エピトープを、単一アミノ酸突然変異が本発明の抗huCD40抗体との結合を破壊する、huCD40配列内の遺伝子座として、決定する。
簡潔に述べると、エラープローンPCRを使用して、ヒトCD40をコードするDNAを、c-mycタグ配列および酵母細胞壁タンパク質Aga1pをさらに含む融合タンパク質のアミノ末端部分として、huCD40バリアントの発現を可能にするコンストラクト中にクローニングする。このようなコンストラクトは、酵母(サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))中に発現すると、Aga1pポリペプチドによって細胞表面に固定されたバリアントhuCD40ポリペプチドを、酵母細胞の表面上にディスプレイする。場合により、c-mycタグを、所定の酵母細胞上のhuCD40融合タンパク質のディスプレイにおける陽性対照として使用できる。酵母細胞をFACSによって選別し、適切にフォールディングしたhuCD40融合タンパク質として発現する(アロフィコシアニン(APC)標識されたヤギ抗マウスIgGによって二次的に検出される、対照マウス抗huCD40抗体の結合によって決定されるように)が、本発明の抗体と結合しない(フィコエリトリン(PE)標識されたヤギ抗ヒトIgGを用いる二次的な検出によって決定されるように)酵母細胞をプールし、増幅し、その後の選択のラウンドにおいて使用する。数回の選択のラウンド後に残存する酵母から得たコンストラクトについて、huCD40配列を決定する。抗huCD40抗体選択を伴わない対照実験を行い、huCD40配列に沿った各位置での良好な変異の適用範囲を確認し、選択されたライブラリーを用いて得られた結果を正規化するためのベースラインを提供する。
実施例7
抗CD40抗体のアゴニスト活性
本発明の選択された抗CD40抗体のアゴニスト活性におけるFc配列の変異の効果を、未成熟樹状細胞(DC)の活性化を測定することにより、評価した。ヒトIgG1f(対照)、SE、SELF、P238D、V4、V8およびV12 Fc配列を有する、抗CD40 mAb 12D6-24コンストラクトで、実験を行った。ヒト単球(CD14+)を、プラスチック接着(plastic adherence)またはヒトCD14マイクロビーズ(Miltenyi Biotec)を用いて、健常で正常なドナーから単離した。単球を、100ng/mL GM-CSF(Miltenyi Biotec)および100ng/mL IL-4(Miltenyi Biotec)と共に培養した。2日目および5日目に、培地の半分を除去し、補充した。未成熟樹状細胞を6~7日目に回収した。2つのドナー由来のDCを、表示した濃度の抗体と共に、一晩、37℃でインキュベートした。細胞培養上清を回収し、ヒトIL-6産生について、アッセイした(Cisbio)。図3Aおよび3B参照。
対照のヒトIgG1f抗体は、100nM以下での使用において、IL-6を分泌せず、P238Dバリアントはわずかに誘導した。対照的に、SE、SELF、V9およびV12バリアントは全て、IL-6分泌を劇的に誘導し、V8およびV4は中間の効果を示した。これらの結果は、FcγRIIbに対する結合親和性とおおよそ相関し、適切なFc配列バリアントの使用が、アゴニスト活性の増強を伴う抗CD40抗体をもたらし得ることを確認する。
さらに、8E8、5G7、12D6、19G3および5F11可変領域を有する抗体間のアゴニスト活性における違いを、共通のヒトIgG1f V12定常ドメインを有するキメラ抗CD40 mAbコンストラクトを用いる実験において評価した。活性化を、細胞を96ウェルプレートにプレーティングし、抗体を表示したように添加し、一晩37℃でインキュベートすることによって、未成熟樹状細胞(前述の段落で記述されるように単離した)においてインビトロで測定した。その後、細胞を回収し、蛍光性抗CD54抗体で染色し、これを、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)で検出した。図4参照。
対照のヒトIgG1f抗体はCD54の上方制御を有意に引き起こさず、12D6はCD54の劇的な上方制御を引き起こした。抗体19G3および8G8は、12D6よりもやや効果的ではなく、抗体5G7および5F11は互いに類似しており、相対的に弱い刺激を示した。抗体5F11は、ほぼ最高の結合親和性を有するが、弱いアゴニストであり、抗体19G3はその逆であるため、活性化の結果は、CD40に対する結合親和性と必ずしも相関しない。この違いの理由に関係なく、これらの結果は、適切な抗原結合ドメイン配列の使用が、アゴニスト活性が増強した抗CD40抗体を得るのに重要であることを確認する。
実施例8
DG異性化の改善
V4およびV9 Fcバリアント配列を有する、本発明の抗体は、D270の位置における、許容できないレベルのDG異性化を示す。このような異性化は、生成物の不均一性および潜在的な効力の減少をもたらすため、望ましくない。このような異性化を減少させるため、V4 Fcの270番目のアスパラギン酸残基をグルタミン酸(D270E)に交換し、V9 Fcの270番目をアラニン、グルタミン酸、グルタミン、セリンおよびスレオニン(D270A、D270E、D270Q、D270S、D270T)に交換した。これらの抗体を発現する細胞から上清を得て、hCD32/FcγRIIとの結合についてアッセイした。270番目における変異を伴わない、選択された精製した抗体を対照として用いた。これらの実験を、mAb 12D6-24および5F11-45由来の可変ドメインを有する抗体上で行った。結果を、図5に示す。
V4およびV9 Fcバリアント両方において、D270E置換は、受容体結合の中程度の減少をもたらした。テストした他のV9 Fcバリアント(D270A、D270Q、D270S、D270T)は、受容体結合の、より大きな減少をもたらした。結果は、抗体が12D6または5F11であることに依存しなかった。全ての場合において、テストした3つの受容体(FcγRIIa-H131、FcγRIIa-R131およびFcγRIIb)との相対的な結合(結合の順番)は、FcγRIIa-R131およびFcγRIIbとのおおまかに相当する結合およびFcγRIIa-H131との有意に弱い結合と共に、類似したままであった。
V4およびV9バリアントの両方において、D270E置換は、許容できるような高いFcγR親和性を保持し、本発明の抗CD40抗体のアゴニスト活性の増強において望まれる、FcγRIIbに対する特異性を維持した。
表8:配列表の要約
配列表は、成熟重鎖および軽鎖の配列を示す(すなわち、配列はシグナルペプチドを含まない)。本発明の抗体の産生におけるシグナル配列は、例えばヒト細胞において、配列番号78に与えられる。
相当する物
当業者は、本明細書に開示される具体的な実施形態の多くの等価物を認識し、または単なる慣例的な実験を使用して確認できる。このような等価物は、以下の請求項に包含されることが意図される。