JP2022024190A - 原着タンパク質成形体及びその製造方法、成形用原液及びその製造方法、並びに原着タンパク質成形体用着色剤 - Google Patents

原着タンパク質成形体及びその製造方法、成形用原液及びその製造方法、並びに原着タンパク質成形体用着色剤 Download PDF

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Abstract

【課題】従来とは異なる原着色素によって着色されたタンパク質成形体を提供すること。【解決手段】タンパク質と、プリン環を有するプリン塩基化合物及び/又はその分解物と、を含有する、原着タンパク質成形体が開示される。原着タンパク質成形体は、繊維又はフィルムであってもよい。【選択図】なし

Description

本発明は、原着タンパク質成形体及びその製造方法、成形用原液及びその製造方法、並びに原着タンパク質成形体用着色剤に関する。
特許文献1は、原着色素として酸性染料、塩基性染料、蛍光染料等の原着色素で着色されたタンパク質繊維を開示している。ここでの原着色素は、タンパク質繊維を紡糸によって製造するためドープ液に添加される色素である。
特許第5407006号公報
原着色素による着色の程度は、タンパク質、及びタンパク質材料を溶解する溶媒の種類によって変化する。そのため、例えば、少量の原着色素では、タンパク質繊維等の成形体を十分に着色できないことがある。したがって、原着色素の選択肢は出来るだけ多いことが望ましい。本発明の一側面の目的は、従来とは異なる原着色素によって着色されたタンパク質成形体を提供することにある。
本発明者が鋭意検討した結果、タンパク質成形体を得るための成形用原液に、プリン環を有するプリン塩基化合物を添加することにより、少量のプリン塩基化合物であっても十分に着色された原着タンパク質成形体が得られることを見出した。本発明は係る知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明の一側面は、タンパク質と、プリン環を有するプリン塩基化合物及び/又はその分解物と、を含有する、原着タンパク質成形体に関する。
本発明の別の一側面は、タンパク質と、プリン環を有するプリン塩基化合物とを含有する、原着タンパク質成形体を得るための成形用原液に関する。この成形用原液は、例えば、タンパク質を含む原料粉体、プリン環を有するプリン塩基化合物、及び溶媒を含むタンパク質含有液を準備することと、前記タンパク質含有液中の前記タンパク質を前記溶媒に溶解させることと、を含む方法によって得ることができる。この成形用原液を用いた成形により、着色したタンパク質成形体を形成することを含む方法によって、原着タンパク質成形体を製造することができる。プリン塩基化合物は、原料粉体中に含まれていてもよい。原料粉体が、タンパク質が発現した宿主若しくはその粉砕物、又は、前記タンパク質及びプリン塩基化合物を含む粉体であってもよい。
本発明の更に別の一側面は、プリン環を有するプリン塩基化合物を含む、原着タンパク質成形体用着色剤に関する。この着色剤は、例えば上記方法によって成形用原液、及び原着タンパク質成形体を製造するために用いることができる。
本発明によれば、従来とは異なる原着色素によって着色されたタンパク質成形体を提供することができる。
原着タンパク質繊維を製造するための紡糸装置の一例を示す模式図である。 改変フィブロインのドメイン配列の一例を示す模式図である。 天然フィブロインのz/w(%)の値の分布を示す図である。 天然フィブロインのx/y(%)の値の分布を示す図である。 改変フィブロインのドメイン配列の一例を示す模式図である。 改変フィブロインのドメイン配列の一例を示す模式図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
一実施形態に係る原着タンパク質成形体は、タンパク質と、プリン環を有するプリン塩基化合物及び/又はその分解物と、を含有する。ここで、「原着」とは、成形用原液から各種の成形方法によって形成された成形体自体が、その内部も含めて着色されることを意味し、形成された成形体の表面を後から染色して得られる着色成形体とは異なる。本実施形態に係る原着タンパク質成形体は、プリン環を有するプリン塩基化合物及び/又はその分解物が原着色素として作用することによって、着色されている。原着色素(ここではプリン塩基化合物)を含まない成形用原液から得られた成形体と比較して、着色していることが目視で確認できるタンパク質成形体は、原着タンパク質成形体とみなすことができる。
原着タンパク質成形体は、主としてタンパク質によって形成された成形体である。成形体におけるタンパク質の割合は、例えば、成形体の質量を基準として、80質量%以上、又は90質量%以上であってもよい。タンパク質の詳細は後述される。
プリン塩基化合物は、1個以上のプリン環を有する化合物である。プリン環は、アデニン環、グアニン環、ヒボキサンチン環、キサンチン環、テオブロミン環、カフェイン環、尿酸環、イソグアニン環、又はこれらの組み合わせであってもよい。プリン塩基化合物が、プリン環及びピリミジン環を有していてもよい。プリン塩基化合物は、デオキシリボ核酸(DNA)、又はDNAに由来する化合物であってもよい。DNAに由来するプリン塩基化合物は、プリン環としてアデニン環又はグアニン環を有する化合物であってもよい。プリン塩基化合物は、ヌクレオシド又はヌクレオチドであってもよい。DNAに由来するプリン塩基化合物の例としては、デオキシアデノシン一リン酸、及び2’-デオキシグアノシン5’-一リン酸ナトリウムが挙げられる。
プリン塩基化合物の分解物は、例えば、イミダゾール環とプリン環の6員環部分に由来する置換基とを有するイミダゾール化合物であり得る。プリン環の6員環部分に由来する置換基は、典型的には、イミダゾール環の4位及び5位に結合する。置換基の例としては、カルボキサミド基(-C(=O)NH)、ホルムアミノ基(-NHCHO)、及びアミノ基(-NH)が挙げられる。
原着タンパク質成形体におけるプリン塩基化合物及びその分解物の合計の含有量が、タンパク質の質量に対して0.5質量%以上であってもよい。プリン塩基化合物及びその分解物の合計の含有量が0.5質量%以上であると、タンパク質成形体が特に着色され易い。同様の観点から、プリン塩基化合物及びその分解物の合計の含有量が1.0質量%以上であってもよい。プリン塩基化合物及びその分解物の合計の含有量の上限は、特に制限されないが、10質量%以下、又は8質量%以下であってもよい。プリン塩基化合物の含有量がこれら数値範囲内にあってもよい。
原着タンパク質成形体は、溶媒を更に含み得る。この溶媒は、通常、成形体を得るために用いられた成形用原液に含まれていた溶媒である。この溶媒は、例えばギ酸等の酸化合物(特に、有機酸化合物)を含んでいてもよい。原着タンパク質成形体における溶媒の含有量は、例えば、タンパク質の質量に対して0.0001~1質量%であってもよい。
原着タンパク質成形体は、例えば、タンパク質、プリン塩基化合物及びこれらを溶解している溶媒を含有する成形用原液を用いた成形により、着色したタンパク質成形体を形成することを含む方法によって、製造することができる。プリン塩基化合物を含有する成形用原液を用いることにより、十分に着色した原着タンパク質成形体を得ることができる。プリン塩基化合物の少なくとも一部が、原着タンパク質成形体が形成される過程で、溶媒との反応及び/又は熱履歴等の影響で分解し得る。
成形用原液におけるタンパク質の濃度は、例えば、成形用原液の質量を基準として、5~50質量%であってもよい。プリン塩基化合物の量は、タンパク質の質量に対して、0.5質量%以上、又は1.0質量%以上であってもよく、10質量%以下、又は8質量%以下であってもよい。
成形用原液は、例えば、タンパク質を含む原料粉体、プリン塩基化合物、及び溶媒を含有するタンパク質含有液を準備することと、タンパク質含有液中のタンパク質を溶媒に溶解させることと、を含む方法により、得ることができる。プリン塩基化合物は、原料粉体に含まれていてもよいし、原料粉体とは別に溶媒中に溶解又は分散していていもよい。原料粉体が、例えば、タンパク質が発現した宿主若しくはその粉砕物を含む粉体であっても、タンパク質及びプリン塩基化合物を含む粉体であってもよい。成形用原液を得る方法が、溶媒を加熱することを更に含んでもよい。タンパク質含有液は、例えば、プリン塩基化合物を溶媒に分散又は溶解させるため、タンパク質を溶媒に溶解させるため、又は後述のように不溶分を除去するためのうち少なくともいずれかの目的で、加熱され得る。
タンパク質が発現した宿主若しくはその粉砕物を含む原料粉体は、宿主の培養により生成及び蓄積されたタンパク質を含む培養培地から回収された粉体であってもよい。宿主の粉砕物を溶媒と混合してもよいし、宿主をタンパク質含有液中で粉砕してもよい。タンパク質を溶媒に溶解させる前又は後に、宿主の粉砕等によって生じた夾雑物を含む不溶分が除去される。不溶分の除去の際、タンパク質含有液を加熱してもよい。不溶分の除去のための加熱温度は、例えば20~70℃である。
タンパク質及びプリン塩基化合物を含む粉体は、宿主の培養により生成及び蓄積されたタンパク質を含む培養培地から回収及び精製されたタンパク質を含む粉体であってもよい。タンパク質は、通常の方法で培養培地から回収及び精製することができる。精製されたタンパク質を含む粉体中に、宿主に由来するプリン塩基化合物が残存していてもよい。
タンパク質が宿主内に溶解状態で発現した場合、培養終了後、宿主を遠心分離により回収し、水系緩衝液に懸濁させることと、懸濁液中で超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー及びダイノミル等により宿主を破砕して、無細胞抽出液を得ることと、無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、タンパク質を単離精製することと、を含む方法により、精製されたタンパク質を含む粉体を得ることができる。上清からタンパク質を単離精製する方法として、例えば溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)-セファロース、DIAION HPA-75(三菱化成社製)等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S-Sepharose FF(Pharmacia社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、電気泳動法、又はこれらの組み合わせを採用することができる。
発現したタンパク質が宿主の細胞内に不溶体を形成している場合、上記と同様の方法で回収された宿主を破砕して粉砕物を得ることと、遠心分離等によってタンパク質の不溶体を回収することと、タンパク質の不溶体をタンパク質変性剤で可溶化してタンパク質を含む溶液を得ることと、該溶液からタンパク質を単離精製することとを含む方法により、精製されたタンパク質を含む粉体を得ることができる。溶液からのタンパク質を単離精製する方法は、上清からタンパク質を単離精製する場合と同様の方法であることができる。
発現したタンパク質が細胞外に分泌された場合、培養上清からタンパク質を回収することができる。すなわち、培養物を遠心分離等の手法により処理することにより培養上清を取得し、その培養上清から、上記と同様の方法によりタンパク質を単離精製することができる。
原着色素として用いられるプリン塩基化合物は、タンパク質を溶媒に溶解させる前にタンパク質含有液に加えられてもよいし、タンパク質を溶媒に溶解させた後でタンパク質含有液に加えられてもよい。原料粉体が、宿主に由来するプリン塩基化合物を含んでいてもよい。プリン塩基化合物が溶媒中に溶解していてもよい。プリン塩基化合物を溶媒に溶解させるために、タンパク質含有液を加熱してもよい。プリン塩基化合物の溶解のための加熱温度は、例えば20~70℃である。
タンパク質含有液中のタンパク質は、例えば、タンパク質含有液を加熱することにより、溶媒に溶解される。タンパク質の溶解のための加熱温度は、例えば20~70℃、又は25~40℃であってもよい。原料粉体が宿主若しくはその粉砕物を含む粉体である場合、タンパク質含有液を加熱することによって、タンパク質が宿主又はその粉砕物から抽出され、それによりタンパク質が溶媒に溶解する。
タンパク質含有液を調製するための溶媒としては、例えば酸化合物(特に、有機酸化合物)を用いることができる。酸化合物とプリン塩基化合物との組み合わせにより、着色されたタンパク質成形体がより一層容易に形成される傾向がある。これは、酸化合物とプリン塩基化合物の化学反応に因るものと考えられる。溶媒として用いられ得る有機酸化合物の例としては、ギ酸、酢酸、クエン酸、及びシュウ酸が挙げられる。タンパク質含有液は、酸化合物以外の溶媒を含んでいてもよい。溶媒が酸化合物の水溶液であってもよい。溶媒の全量に対する酸化合物の割合は、例えば50~100質量%、70~100質量%、又は90~100質量%であってもよい。
原着タンパク質成形体の形状は、特に制限されないが、繊維又はフィルムであってもよい。
原着タンパク質成形体としての原着タンパク質繊維は、成形用原液をドープ液として用いた紡糸方法によって、製造することができる。紡糸方法としては、例えば、湿式紡糸、乾式紡糸、乾湿式紡糸又は溶融紡糸等の通常の方法を利用できる。紡糸方法が、湿式紡糸又は乾湿式紡糸であってもよい。
図1は、原着タンパク質維を製造するための紡糸装置の一例を示す模式図である。図1に示す紡糸装置は、乾湿式紡糸用の紡糸装置の一例であり、押出し装置1と、未延伸糸製造装置2と、湿熱延伸装置3と、乾燥装置4とを有している。
紡糸装置10の貯槽7に貯蔵されたドープ液6(成形用原液)が、ギアポンプ8により口金9から押し出される。ドープ液を押し出す方法はこれに限られず、例えば、シリンダーに充填されたドープ液を、シリンジポンプを用いてノズルから押し出してもよい。押し出されたドープ液6は、エアギャップ19を経て、凝固液槽20の凝固液11内に導入される。凝固液11内で溶媒が除去されることにより、タンパク質が凝固し、繊維状の凝固体である原着タンパク質繊維が形成される。原着タンパク質繊維は、延伸浴槽21内の温水12中に導入され、そこで延伸される。延伸倍率は供給ニップローラ13と引き取りニップローラ14との速度比によって決まる。延伸された原着タンパク質繊維は、乾燥装置4の糸道22内に導入され、糸道22を通過しながら乾燥される。乾燥された原着タンパク質繊維36が巻き取られて、原着タンパク質繊維の巻糸体5が得られる。紡糸装置10は、原着タンパク質繊維36の移動経路上に設けられた糸ガイド18a、18b、18c、18d、18e、18f及び18gを有している。
凝固液11は、ドープ液から脱溶媒できる溶媒であればよく、その例としては、メタノール、エタノール及び2-プロパノール等の炭素数1~5の低級アルコール、並びにアセトンを挙げることができる。凝固液11は、水を含んでいてもよい。凝固液11の温度は、0~30℃であってもよい。
口金9として、直径0.1~0.6mmのノズルを有するシリンジポンプを使用してもよい。その場合、押出し速度は1ホール当たり、0.2~6.0ml/時間、又は1.4~4.0ml/時間であってもよい。原着タンパク質繊維が凝固液11中を通過する距離は、脱溶媒が十分に行える長さであればよく、例えば、200~500mmである。未延伸の原着タンパク質繊維の引き取り速度は、1~20m/分、又は1~3m/分であってもよい。凝固液11中での原着タンパク質繊維の滞留時間は、0.01~3分、又は0.05~0.15分であってもよい。凝固液11中で原着タンパク質繊維を延伸してもよい。凝固液11中での延伸は、前延伸ということがある。多段の凝固液槽20が設けられてもよい。
原着タンパク質繊維維は、例えば、凝固液槽20内での前延伸、延伸浴槽21内での湿熱延伸、乾熱延伸又はこれらの組み合わせにより、延伸される。
湿熱延伸では、未延伸、又は凝固液槽20内で前延伸された原着タンパク質繊維が延伸浴槽21内の温水12中で延伸される。温水12の温度は、例えば、50~90℃、又は75~85℃であってもよい。温水12に有機溶剤等を加えられてもよい。温水に代えて、スチーム加熱中で湿熱延伸を行ってもよい。湿熱延伸の延伸倍率は、例えば、1~10倍、又は2~8倍であってもよい。
乾熱延伸は、電気管状炉、乾熱板等を使用して行うことができる。乾熱延伸の温度は、例えば、140~270℃、又は160~230℃であってもよい。乾熱延伸における延伸倍率は、例えば、0.5~8倍、又は1~4倍であってもよい。
最終的な延伸倍率は、未延伸糸(又は前延伸糸)に対して、1倍超、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、又は9倍以上であってもよく、40倍以下、30倍以下、20倍以下、15倍以下、14倍以下、13倍以下、12倍以下、11倍以下、又は10倍以下であってもよい。
原着タンパク質成形体としての原着タンパク質フィルムは、例えば、成形用原液をドープ溶液として用い、これを基材表面にキャスト成形することと、形成された塗膜を乾燥する、及び/又は脱溶媒することとを含む方法により得ることができる。
原着タンパク質フィルムを製造するためのドープ溶液の粘度は15~80cP(センチポアズ)、又は20~70cPであってもよい。タンパク質の濃度は、ドープ溶液全量を100質量%として、3~50質量%、3.5~35質量%、又は4.2~15.8質量%であってもよい。
基材は、樹脂基板、ガラス基板、金属基板等であってよい。基材は、形成されたフィルムを容易に剥離できる観点から、樹脂基板であってもよい。樹脂基板は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、又はこれらのフィルム表面にシリコーン化合物を固定化させた剥離フィルムであってよい。基材は、HFIP、DMSO溶媒等に対して安定であり、ドープ溶液を安定してキャスト成形でき、成形後のフィルムを容易に剥離できる観点から、PETフィルム又はPETフィルム表面にシリコーン化合物を固定化させた剥離フィルムであってもよい。
キャスト成形の一例は、ドープ液を基材表面に流延することと、塗膜の厚さをアプリケーター、ナイフコーター、バーコーター等の膜厚制御手段を使用して所定の厚さに調整することとを含む。所定の厚さは、塗膜の乾燥及び/又は脱溶媒後の厚さが、例えば1~1000μmとなる範囲で設定される。
塗膜の乾燥及び脱溶媒は、乾式又は湿式で行うことができる。乾式で行う方法の例としては、真空乾燥、熱風乾燥、風乾を挙げることができる。湿式で行う方法の例としては、塗膜を脱溶媒液に浸漬する方法を挙げることができる。脱溶媒液の例として、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール等の炭素数1~5の低級アルコール等のアルコール液、水とアルコールとの混合液を挙げることができる。脱溶媒液の温度は0~90℃であってもよい。
乾燥及び/又は脱溶媒後、形成された原着タンパク質フィルムを、水中で1軸延伸又は2軸延伸してもよい。2軸延伸は、逐次延伸でも同時2軸延伸でもよい。2段以上の多段延伸をしてもよい。延伸倍率は、縦、横ともに、1.01~6倍、又は1.05~4倍であってもよい。この範囲であると応力-歪のバランスがとりやすい。水中延伸は、例えば20~90℃の水温で行うことができる。延伸後の原着タンパク質フィルムを、50~200℃で5~600秒間の乾熱処理により、熱固定してもよい。この熱固定により、常温における寸法安定性に優れた原着タンパク質フィルムが得られる。通常、1軸延伸したフィルムは、1軸配向フィルムとなり、2軸延伸したフィルムは2軸配向フィルムとなる。
原着タンパク質成形体を形成するタンパク質は、構造タンパク質であってもよい。構造タンパク質は、クモ糸タンパク質、又は絹タンパク質であってもよい。
構造タンパク質であるクモ糸タンパク質の代表例は、フィブロインである。フィブロインは、人為的に製造された人造フィブロインであってもよい。人造フィブロインのドメイン配列は、天然フィブロインのアミノ酸配列と同一でも異なっていてもよい。
フィブロインは、クモ類が産生するスパイダーシルクタンパク質であってもよい。スパイダーシルクタンパク質を産生するクモとしては、例えば、オニグモ、ニワオニグモ、アカオニグモ、アオオニグモ及びマメオニグモ等のオニグモ属(Araneus属)に属するクモ、ヤマシロオニグモ、イエオニグモ、ドヨウオニグモ及びサツマノミダマシ等のヒメオニグモ属(Neoscona属)に属するクモ、コオニグモモドキ等のコオニグモモドキ属(Pronus属)に属するクモ、トリノフンダマシ及びオオトリノフンダマシ等のトリノフンダマシ属(Cyrtarachne属)に属するクモ、トゲグモ及びチブサトゲグモ等のトゲグモ属(Gasteracantha属)に属するクモ、マメイタイセキグモ及びムツトゲイセキグモ等のイセキグモ属(Ordgarius属)に属するクモ、コガネグモ、コガタコガネグモ及びナガコガネグモ等のコガネグモ属(Argiope属)に属するクモ、キジロオヒキグモ等のオヒキグモ属(Arachnura属)に属するクモ、ハツリグモ等のハツリグモ属(Acusilas属)に属するクモ、スズミグモ、キヌアミグモ及びハラビロスズミグモ等のスズミグモ属(Cytophora属)に属するクモ、ゲホウグモ等のゲホウグモ属(Poltys属)に属するクモ、ゴミグモ、ヨツデゴミグモ、マルゴミグモ及びカラスゴミグモ等のゴミグモ属(Cyclosa属)に属するクモ、ヤマトカナエグモ等のカナエグモ属(Chorizopes属)に属するクモ、並びに、アシナガグモ、ヤサガタアシナガグモ、ハラビロアシダカグモ及びウロコアシナガグモ等のアシナガグモ属(Tetragnatha属)に属するクモ、オオシロカネグモ、チュウガタシロカネグモ及びコシロカネグモ等のシロカネグモ属(Leucauge属)に属するクモ、ジョロウグモ及びオオジョロウグモ等のジョロウグモ属(Nephila属)に属するクモ、キンヨウグモ等のアズミグモ属(Menosira属)に属するクモ、ヒメアシナガグモ等のヒメアシナガグモ属(Dyschiriognatha属)に属するクモ、クロゴケグモ、セアカゴケグモ、ハイイロゴケグモ及びジュウサンボシゴケグモ等のゴケグモ属(Latrodectus属)に属するクモ、及びユープロステノプス属(Euprosthenops属)に属するクモ等のアシナガグモ科(Tetragnathidae科)に属するクモが挙げられる。スパイダーシルクタンパク質は、MaSp(MaSp1及びMaSp2)、ADF(ADF3及びADF4)等の牽引糸タンパク質、MiSp(MiSp1及びMiSp2)であってもよい。
スパイダーシルクタンパク質の具体例としては、fibroin-3(adf-3)[Araneus diadematus由来](GenBankアクセッション番号AAC47010(アミノ酸配列)、U47855(塩基配列))、fibroin-4(adf-4)[Araneus diadematus由来](GenBankアクセッション番号AAC47011(アミノ酸配列)、U47856(塩基配列))、dragline silk protein spidroin 1[Nephila clavipes由来](GenBankアクセッション番号AAC04504(アミノ酸配列)、U37520(塩基配列))、major ampullate spidroin 1[Latrodectus hesperus由来](GenBankアクセッション番号ABR68856(アミノ酸配列)、EF595246(塩基配列))、dragline silk protein spidroin 2[Nephila clavata由来](GenBankアクセッション番号AAL32472(アミノ酸配列)、AF441245(塩基配列))、major ampullate spidroin 1[Euprosthenops australis由来](GenBankアクセッション番号CAJ00428(アミノ酸配列)、AJ973155(塩基配列))、及びmajor ampullate spidroin 2[Euprosthenops australis](GenBankアクセッション番号CAM32249.1(アミノ酸配列)、AM490169(塩基配列))、minor ampullate silk protein 1[Nephila clavipes](GenBankアクセッション番号AAC14589.1(アミノ酸配列))、minor ampullate silk protein 2[Nephila clavipes](GenBankアクセッション番号AAC14591.1(アミノ酸配列))、及び、minor ampullate spidroin-like protein[Nephilengys cruentata](GenBankアクセッション番号ABR37278.1(アミノ酸配列)が挙げられる。
天然フィブロインのその他の具体例としては、NCBI GenBankに配列情報が登録されているフィブロインを挙げることができる。例えば、NCBI GenBankに登録されている配列情報のうちDIVISIONとしてINVを含む配列の中から、DEFINITIONにspidroin、ampullate、fibroin、「silk及びpolypeptide」、又は「silk及びprotein」がキーワードとして記載されている配列、CDSから特定のproductの文字列、SOURCEからTISSUE TYPEに特定の文字列の記載された配列を抽出することにより確認することができる。
フィブロインが、改変フィブロインであってもよい。改変フィブロインは、天然フィブロインのアミノ酸配列の一部を改変したアミノ酸配列を有するフィブロインであっても、天然フィブロインに依らず人工的に設計及び合成されたフィブロインであってもよい。改変フィブロインは、例えば、クローニングした天然フィブロインのアミノ酸配列を、1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加すること改変したアミノ酸配列を有していてもよい。アミノ酸残基の置換、欠失、挿入及び/又は付加は、部分特異的突然変異誘発法等の当業者に周知の方法により行うことができる。具体的には、Nucleic Acid Res.10,6487(1982)、Methods in Enzymology,100,448(1983)等の文献に記載されている方法に準じて行うことができる。
改変フィブロインは、式1:[(A)モチーフ-REP]、又は式2:[(A)モチーフ-REP]-(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むフィブロインであってもよい。mは2~300、又は10~300の整数を示す。改変フィブロインは、ドメイン配列のN末端側に付加されたN末端配列、ドメイン配列のC末端側に付加されたC末端配列、又はこれらの両方を更に含んでいてもよい。N末端配列及びC末端配列は、特に限定されないが、典型的には、フィブロインに特徴的なアミノ酸モチーフの反復を有さない領域であり、100残基程度のアミノ酸からなる。
本明細書において「ドメイン配列」は、フィブロイン特有の結晶領域(典型的には、アミノ酸配列の(A)モチーフに相当する。)と非晶領域(典型的には、アミノ酸配列のREPに相当する。)を生じるアミノ酸配列を意味する。
式1及び2中の(A)モチーフは、主としてアラニン残基から構成されるアミノ酸配列である。(A)モチーフのアミノ酸残基数は、2~27、2~20、4~27、4~20、8~20、10~20、4~16、8~16、又は10~16であってよい。フィブロイン中に複数存在する(A)モチーフは、互いに同一又は異なるアミノ酸配列を有する。(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数の割合は、40%以上、60%以上、70%以上、80%以上、83%以上、85%以上、86%以上、90%以上、95%以上、又は100%であってもよい。ドメイン配列を構成するm個の(A)モチーフのうち7個以上が、アラニン残基のみで構成されてもよい。
式1及び2中のREPは、2~200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示す。REPは、10~200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列であってもよい。フィブロイン中に複数存在するREPは、互いに同一又は異なるアミノ酸配列を有する。
改変フィブロインは、クモの大瓶状腺で産生される大吐糸管しおり糸タンパク質に由来する改変フィブロイン(以下「第1の改変フィブロイン」という。)、グリシン残基の含有量が低減されたドメイン配列を有する改変フィブロイン(以下「第2の改変フィブロイン」という。)、(A)モチーフの含有量が低減されたドメイン配列を有する改変フィブロイン(以下「第3の改変フィブロイン」という)、グリシン残基の含有量、及び(A)モチーフの含有量が低減された改変フィブロイン(以下「第4の改変フィブロイン」という。)、局所的に疎水性指標の大きい領域を含むドメイン配列を有する改変フィブロイン(以下「第5の改変フィブロイン」という。)、又は、グルタミン残基の含有量が低減されたドメイン配列を有する改変フィブロイン(以下「第6の改変フィブロイン」)であってもよい。ここでの分類は便宜的なものであり、1種の改変フィブロインがこれらの2以上の分類に該当し得る。
第1の改変フィブロインは、式1で表されるドメイン配列を含んでいてもよい。第1の改変フィブロインにおける(A)モチーフのアミノ酸残基数は、3~20、4~20、8~20、10~20、4~16、8~16、又は10~16であってもよい。第1の改変フィブロインにおけるREPを構成するアミノ酸残基の数は、10~200、10~150、20~100、又は20~75であってもよい。式1で表されるドメイン配列において、グリシン残基、セリン残基及びアラニン残基の合計残基数が、アミノ酸残基数全体に対して、40%以上、60%以上、又は70%以上であってもよい。
第1の改変フィブロインは、式1で表されるドメイン配列と、配列番号1、2又は3のいずれかに示されるアミノ酸配列又はこれらと90%以上の相同性を有するアミノ酸配列であるC末端配列とを有していてもよい。配列番号1に示されるアミノ酸配列は、ADF3(GI:1263287、NCBI)のアミノ酸配列のC末端の50残基のアミノ酸からなるアミノ酸配列と同一である。配列番号2に示されるアミノ酸配列は、配列番号1に示されるアミノ酸配列のC末端から20残基取り除いたアミノ酸配列と同一である、配列番号3に示されるアミノ酸配列は、配列番号1に示されるアミノ酸配列のC末端から29残基取り除いたアミノ酸配列と同一である。
第1の改変フィブロインの具体例として、配列番号4(recombinant spider silk protein ADF3KaiLargeNRSH1)で示されるアミノ酸配列、又は配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。ここでの配列同一性は、95%以上であってもよい。配列番号4で示されるアミノ酸配列は、ADF3のアミノ酸配列を、N末端に開始コドン、His10タグ及びHRV3Cプロテアーゼ(Human rhinovirus 3Cプロテアーゼ)認識サイトからなるアミノ酸配列(配列番号5)を付加し、第1~13番目の反復領域をおよそ2倍に増やし、翻訳が第1154番目アミノ酸残基で終止するように変異させたものである。配列番号4で示されるアミノ酸配列のC末端のアミノ酸配列は、配列番号3で示されるアミノ酸配列と同一である。
第2の改変フィブロインは、天然フィブロインと比較してグリシン残基の含有量が低減されたドメイン配列を有する。第2の改変フィブロインは、天然フィブロインにおいて少なくともREP中の1又は複数のグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたものに相当するアミノ酸配列を有していてもよい。例えば、REP中のGGX及びGPGXX(Gはグリシン残基、Pはプロリン残基、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を示す。)から選ばれる少なくとも一つのモチーフ配列において、1つのグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されていてもよい。第2の改変フィブロインにおいて、グリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたモチーフ配列の割合が、全モチーフ配列に対して、10%以上であってもよい。
第2の改変フィブロインが式1で表されるドメイン配列を含んでもよい。式1のドメイン配列のうち、最もC末端側に位置する(A)モチーフからC末端までの配列を除いた配列中において、全REPに含まれるXGX(Xはグリシン以外のアミノ酸残基を示す。)からなるアミノ酸配列の総アミノ酸残基数をzとし、総アミノ酸残基数をwとしたときに、z/wが30%以上、40%以上、50%以上又は50.9%以上であってもよい。(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数は83%以上、86%以上、90%以上、95%以上、又は100%であってもよい。
第2の改変フィブロインにおいて、GGXモチーフの1つのグリシン残基を別のアミノ酸残基に置換することにより、XGXからなるアミノ酸配列の含有割合が高められていてもよい。第2の改変フィブロインのドメイン配列におけるGGXからなるアミノ酸配列の含有割合が、30%以下、20%以下、10%以下、6%以下、4%以下、又は2%以下であってもよい。ドメイン配列中のGGXからなるアミノ酸配列の含有割合は、z/wの算出方法と同様の方法で算出することができる。
z/wの算出方法を更に詳細に説明する。まず、式1で表されるドメイン配列のうち、最もC末端側に位置する(A)モチーフからC末端までの配列を除いた配列に含まれる全てのREPから、XGXからなるアミノ酸配列を抽出する。XGXを構成するアミノ酸残基の総数がzである。例えば、XGXからなるアミノ酸配列が重複なく50個抽出された場合、zは50×3=150である。例えばXGXGXからなるアミノ酸配列のように、2つのXGXに含まれるXが存在する場合、重複分を控除してzを計算する。したがって、XGXGXにおけるアミノ酸残基の数は5としてzに算入される。wは、式1で表されるドメイン配列のうち、最もC末端側に位置する(A)モチーフからC末端までの配列を除いた配列に含まれる総アミノ酸残基数である。例えば、図2に示したドメイン配列の場合、wは4+50+4+100+4+10+4+20+4+30=230である。ここで、最もC末端側に位置する(A)モチーフは除かれている。
ここで、NCBI GenBankにアミノ酸配列情報が登録されているフィブロインから、663種類の天然フィブロイン(このうち、クモ類由来の天然フィブロインは415種類)が抽出される。抽出されたフィブロインのうち、式1で表されるドメイン配列を含み、フィブロイン中のGGXからなるアミノ酸配列の含有割合が6%以下であるもののアミノ酸配列について、上述の算出方法により、z/wを算出した。その結果を図3に示す。図3の横軸はz/w(%)を示し、縦軸は頻度を示す。図3に示されるように、天然フィブロインにおけるz/wは、最大で50.86%である。
第2の改変フィブロインにおいて、z/wは、50.9%以上、56.1%以上、58.7%以上、70%以上、80%以上であってもよい。z/wの上限に特に制限はないが、例えば、95%以下であってもよい。
第2の改変フィブロインは、例えば、クローニングした天然フィブロインの遺伝子配列から、グリシン残基をコードする塩基配列の少なくとも一部を置換して別のアミノ酸残基をコードするように改変することにより得ることができる。このとき、改変するグリシン残基として、GGXモチーフ及びGPGXXモチーフにおける1つのグリシン残基を選択してもよいし、z/wが50.9%以上になるように塩基配列を置換してもよい。天然フィブロインのアミノ酸配列からREP中のグリシン残基を別のアミノ酸残基に置換したことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変を行ってもよい。
グリシン残基を置換する別のアミノ酸残基は、バリン(V)残基、ロイシン(L)残基、イソロイシン(I)残基、メチオニン(M)残基、プロリン(P)残基、フェニルアラニン(F)残基及びトリプトファン(W)残基等の疎水性アミノ酸残基、又は、グルタミン(Q)残基、アスパラギン(N)残基、セリン(S)残基、リシン(K)残基及びグルタミン酸(E)残基等の親水性アミノ酸残基であってもよく、バリン(V)残基、ロイシン(L)残基、イソロイシン(I)残基、フェニルアラニン(F)残基又はグルタミン(Q)残基であってもよく、グルタミン(Q)残基であってもよい。
第2の改変フィブロインの具体例として、配列番号6(Met-PRT380)、配列番号7(Met-PRT410)、配列番号8(Met-PRT525)若しくは配列番号9(Met-PRT799)で示されるアミノ酸配列、又はこれらと90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。ここでの配列同一性は95%以上であってもよい。配列番号6で示されるアミノ酸配列は、天然フィブロインに相当する配列番号10(Met-PRT313)で示されるアミノ酸配列のREP中の全てのGGXをGQXに置換したものである。配列番号7で示されるアミノ酸配列は、配列番号6で示されるアミノ酸配列から、N末端側からC末端側に向かって2つおきに(A)モチーフを欠失させ、更にC末端配列の手前に[(A)モチーフ-REP]を1つ挿入したものである。配列番号8で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列の各(A)モチーフのC末端側に2つのアラニン残基を挿入し、更に一部のグルタミン(Q)残基をセリン(S)残基に置換し、配列番号7の分子量とほぼ同じとなるようにC末端側の一部のアミノ酸を欠失させたものである。配列番号9で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列中に存在する20個のドメイン配列の領域(但し、当該領域のC末端側の数アミノ酸残基が置換されている。)を4回繰り返した配列のC末端に所定のヒンジ配列とHisタグ配列が付加されたものである。
配列番号10で示されるアミノ酸配列(天然フィブロインに相当)におけるz/wの値は、46.8%である。配列番号6で示されるアミノ酸配列、配列番号7で示されるアミノ酸配列、配列番号8で示されるアミノ酸配列、及び配列番号9で示されるアミノ酸配列におけるz/wの値は、それぞれ58.7%、70.1%、66.1%及び70.0%である。配列番号10、配列番号6、配列番号7、配列番号8及び配列番号9で示されるアミノ酸配列のギザ比率1:1.8~11.3におけるx/yの値は、それぞれ15.0%、15.0%、93.4%、92.7%及び89.8%である。ギザ比率の詳細は後述される。
配列番号6、配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列において、REP中に含まれるXGX(但し、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を示す。)からなるアミノ酸配列の総アミノ酸残基数をzとし、上記ドメイン配列中のREPの総アミノ酸残基数をwとしたときに、z/wが50.9%以上であってもよい。
第2の改変フィブロインは、N末端、C末端又はこれらの両方に付加されたタグ配列を含んでいてもよい。これにより、改変フィブロインの単離、固定化、検出及び可視化等が可能となる。
タグ配列として、例えば、他の分子との特異的親和性(結合性、アフィニティ)を利用したアフィニティタグを挙げることができる。アフィニティタグの具体例として、ヒスチジンタグ(Hisタグ)を挙げることができる。Hisタグは、ヒスチジン残基が4から10個程度並んだ短いペプチドで、ニッケル等の金属イオンと特異的に結合する性質があるため、金属キレートクロマトグラフィー(chelating metal chromatography)による改変フィブロインの単離に利用することができる。タグ配列の具体例として、例えば、配列番号11で示されるアミノ酸配列(Hisタグ配列及びヒンジ配列を含むアミノ酸配列)が挙げられる。
グルタチオンに特異的に結合するグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースに特異的に結合するマルトース結合タンパク質(MBP)等のタグ配列を利用することもできる。
抗原抗体反応を利用した「エピトープタグ」を利用することもできる。抗原性を示すペプチド(エピトープ)をタグ配列として付加することにより、当該エピトープに対する抗体を結合させることができる。エピトープタグとして、HA(インフルエンザウイルスのヘマグルチニンのペプチド配列)タグ、mycタグ、FLAGタグ等を挙げることができる。エピトープタグを利用することにより、高い特異性で容易に改変フィブロインを精製することができる。
タグ配列は、特定のプロテアーゼで切り離すことが可能であってもよい。当該タグ配列を介して吸着したタンパク質をプロテアーゼ処理することにより、タグ配列を切り離した改変フィブロインを回収することもできる。
タグ配列を含む改変フィブロインの具体例として、配列番号12(PRT380)、配列番号13(PRT410)、配列番号14(PRT525)、若しくは配列番号15(PRT799)で示されるアミノ酸配列、又はこれらアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。ここでの配列同一性は95%以上であってもよい。配列番号16(PRT313)、配列番号12、配列番号13、配列番号14又は配列番号15で示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号10、配列番号6、配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号11で示されるアミノ酸配列(Hisタグ配列及びヒンジ配列を含む)を付加したものである。
配列番号12、配列番号13、配列番号14又は配列番号15で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列において、REP中に含まれるXGX(但し、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を示す。)からなるアミノ酸配列の総アミノ酸残基数をzとし、上記ドメイン配列中のREPの総アミノ酸残基数をwとしたときに、z/wが50.9%以上であってもよい。
第2の改変フィブロインは、組換えタンパク質生産系において生産されたタンパク質を宿主の外部に放出するための分泌シグナルを含んでいてもよい。分泌シグナルの配列は、宿主の種類に応じて適宜設定することができる。
第3の改変フィブロインは、天然フィブロインと比較して、(A)モチーフの含有量が低減されたドメイン配列を有する。第3の改変フィブロインのドメイン配列は、天然フィブロインと比較して、少なくとも1又は複数の(A)モチーフが欠失したことに相当するアミノ酸配列を有していてもよい。第3の改変フィブロインが、天然フィブロインから(A)モチーフを10~40%欠失させたことに相当するドメイン配列を有していてもよい。第3の改変フィブロインが、天然フィブロインと比較して、N末端側からC末端側に向かって1~3つの(A)モチーフ毎に1つの(A)モチーフが欠失したことに相当するドメイン配列を有していてもよい。第3の改変フィブロインが、天然フィブロインと比較して、N末端側からC末端側に向かって2つ連続した(A)モチーフの欠失、及び1つの(A)モチーフの欠失がこの順に繰り返されたことに相当するドメイン配列を有していてもよい。第3の改変フィブロインが、天然フィブロインと比較して、N末端側からC末端側に向かって2つおきに(A)モチーフが欠失したことに相当するドメイン配列を有していてもよい。
第3の改変フィブロインは、式1で表されるドメイン配列を含んでいてもよい。式1で表されるドメイン配列において隣合う2つの[(A)モチーフ-REP]ユニットの組み合わせであって、アミノ酸残基数が少ない方のREPのアミノ酸残基数に対する他方のREPのアミノ酸残基数の比が1.8~11.3である組み合わせに含まれるアミノ酸残基の合計が、最大でxであり、ドメイン配列の総アミノ酸残基数がyであるときに、x/yが20%以上、30%以上、40%以上又は50%以上であってもよい。(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数の割合は83%以上、86%以上、90%以上、95%以上、又は100%であってもよい。
x/yの算出方法を図2を参照しながら更に詳細に説明する。図2は、改変フィブロインからN末端配列及びC末端配列を除いたドメイン配列を示す。図2のドメイン配列は、N末端側(左側)から、(A)モチーフ-第1のREP(50アミノ酸残基)-(A)モチーフ-第2のREP(100アミノ酸残基)-(A)モチーフ-第3のREP(10アミノ酸残基)-(A)モチーフ-第4のREP(20アミノ酸残基)-(A)モチーフ-第5のREP(30アミノ酸残基)-(A)モチーフという配列を有する。
隣合う2つの[(A)モチーフ-REP]ユニットを、重複がないように、N末端側からC末端側に向かって、順次選択する。このとき、選択されない[(A)モチーフ-REP]ユニットが存在してもよい。図2には、パターン1(第1のREPと第2のREPの比較、及び第3のREPと第4のREPの比較)、パターン2(第1のREPと第2のREPの比較、及び第4のREPと第5のREPの比較)、パターン3(第2のREPと第3のREPの比較、及び第4のREPと第5のREPの比較)、パターン4(第1のREPと第2のREPの比較)を示した。これ以外にも選択方法は存在する。
次に各パターンについて、選択した隣合う2つの[(A)モチーフ-REP]ユニット中の各REPのアミノ酸残基数を比較する。比較は、よりアミノ酸残基数の少ない方を1としたときの、他方のアミノ酸残基数の比を求めることによって行う。例えば、第1のREP(50アミノ酸残基)と第2のREP(100アミノ酸残基)の比較の場合、よりアミノ酸残基数の少ない第1のREPを1としたとき、第2のREPのアミノ酸残基数の比は、100/50=2である。同様に、第4のREP(20アミノ酸残基)と第5のREP(30アミノ酸残基)の比較の場合、よりアミノ酸残基数の少ない第4のREPを1としたとき、第5のREPのアミノ酸残基数の比は、30/20=1.5である。
図2中、よりアミノ酸残基数の少ない方を1としたときに、他方のアミノ酸残基数の比が1.8~11.3となる[(A)モチーフ-REP]ユニットの組を実線で示した。本明細書中、この比をギザ比率と呼ぶ。よりアミノ酸残基数の少ない方を1としたときに、他方のアミノ酸残基数の比が1.8未満又は11.3超となる[(A)モチーフ-REP]ユニットの組は破線で示した。
各パターンにおいて、実線で示した隣合う2つの[(A)モチーフ-REP]ユニットの全てのアミノ酸残基数を足し合わせる。このとき、REPだけでなく(A)モチーフのアミノ酸残基数も算入される。足し合わせた合計値が最大となるパターンの合計値(合計値の最大値)がxとする。図2に示した例では、パターン1の合計値が最大である。
第3の改変フィブロインにおいて、x/yは、50%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、又は80%以上であってもよい。x/yの上限に特に制限はなく、例えば、100%以下であってよい。ギザ比率が1:1.9~11.3で、x/yが89.6%以上であってもよい。ギザ比率が1:1.8~3.4で、x/yが77.1%以上であってもよい。ギザ比率が1:1.9~8.4で、x/yが75.9%以上であってもよい。ギザ比率が1:1.9~4.1で、x/yが64.2%以上であってもよい。
第3の改変フィブロインのドメイン配列中に複数存在する(A)モチーフのうち7個以上がアラニン残基のみで構成される場合、x/yは、46.4%以上、50%以上、55%以上、60%以上、70%以上、又は80%以上でってもよい。x/yの上限に特に制限はなく、100%以下であってもよい。
NCBI GenBankにアミノ酸配列情報が登録されている663種類のフィブロインのうち、式1で表されるドメイン配列で構成される天然フィブロインのアミノ酸配列に関して、上述の算出方法によりx/yを算出した。ギザ比率が1:1.9~4.1の場合の結果を図4に示す。図4の横軸はx/y(%)を示し、縦軸は頻度を示す。図4に示されるように、天然フィブロインにおけるx/yは、最大で64.14%である。
第3の改変フィブロインは、例えば、クローニングした天然フィブロインの遺伝子配列から、x/yが64.2%以上になるように(A)モチーフをコードする配列の1又は複数を欠失させることにより得ることができる。例えば、天然フィブロインのアミノ酸配列から、x/yが64.2%以上になるように1又は複数の(A)モチーフが欠失したことに相当するアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより、第3のフィブロインを得ることもできる。天然フィブロインのアミノ酸配列から(A)モチーフが欠失したことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変を行ってもよい。
第3の改変フィブロインの具体例として、配列番号17(Met-PRT399)、配列番号7(Met-PRT410)、配列番号8(Met-PRT525)、若しくは配列番号9(Met-PRT799)で示されるアミノ酸配列、又はこれらアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。ここでの配列同一性は95%以上であってもよい。配列番号17で示されるアミノ酸配列は、天然フィブロインに相当する配列番号10(Met-PRT313)で示されるアミノ酸配列から、N末端側からC末端側に向かって2つおきに(A)モチーフを欠失させ、更にC末端配列の手前に[(A)モチーフ-REP]を1つ挿入したものである。配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列は、第2の改変フィブロインで説明したとおりである。
配列番号10で示されるアミノ酸配列(天然フィブロインに相当)のギザ比率1:1.8~11.3におけるx/yの値は15.0%である。配列番号17で示されるアミノ酸配列、及び配列番号7で示されるアミノ酸配列におけるx/yの値は、いずれも93.4%である。配列番号8で示されるアミノ酸配列におけるx/yの値は、92.7%である。配列番号9で示されるアミノ酸配列におけるx/yの値は、89.8%である。配列番号10、配列番号17、配列番号7、配列番号8及び配列番号9で示されるアミノ酸配列におけるz/wの値は、それぞれ46.8%、56.2%、70.1%、66.1%及び70.0%である。
配列番号17、配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するドメイン配列において、隣合う2つの[(A)モチーフ-REP]ユニットの組み合わせであって、アミノ酸残基数が少ない方のREPのアミノ酸残基数に対する他方のREPのアミノ酸残基数の比(ギザ比率)が1.8~11.3である組み合わせにおけるアミノ酸残基数の合計が最大でxであり、ドメイン配列の総アミノ酸残基数がyであるときに、x/yが64.2%以上であってもよい。
第3の改変フィブロインが、N末端、C末端又はこれらの両方に付加された上述のタグ配列を含んでいてもよい。
タグ配列を含む改変フィブロインの具体例として、配列番号18(PRT399)、配列番号13(PRT410)、配列番号14(PRT525)、若しくは配列番号15(PRT799)で示されるアミノ酸配列、又はこれらアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。ここでの拝謁同一性は95%以上であってもよい。配列番号18、配列番号13、配列番号14又は配列番号15で示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号17、配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号11で示されるアミノ酸配列(Hisタグ配列及びヒンジ配列を含む)を付加したものである。
配列番号18、配列番号13、配列番号14又は配列番号15で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するドメイン配列において、隣合う2つの[(A)モチーフ-REP]ユニットの組み合わせであって、アミノ酸残基数が少ない方のREPのアミノ酸残基数に対する他方のREPのアミノ酸残基数の比が1.8~11.3である組み合わせにおけるアミノ酸残基数の合計が最大でxであり、ドメイン配列の総アミノ酸残基数がyであるときに、x/yが64.2%以上であってもよい。
第3の改変フィブロインは、組換えタンパク質生産系において生産されたタンパク質を宿主の外部に放出するための分泌シグナルを含んでいてもよい。分泌シグナルの配列は、宿主の種類に応じて適宜設定することができる。
第4の改変フィブロインは、天然フィブロインと比較して、(A)モチーフの含有量が低減されたことに加え、グリシン残基の含有量が低減されたドメイン配列を有する。第4の改変フィブロインのドメイン配列は、天然フィブロインと比較して、少なくとも1又は複数の(A)モチーフが欠失したことに加え、更に少なくともREP中の1又は複数のグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたことに相当するアミノ酸配列を有する。
第4の改変フィブロインの具体例として、配列番号7(Met-PRT410)、配列番号8(Met-PRT525)、配列番号9(Met-PRT799)、配列番号13(PRT410)、配列番号14(PRT525)若しくは配列番号15(PRT799)で示されるアミノ酸配列、又はこれらアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。ここでの配列同一性は95%以上であってもよい。
第5の改変フィブロインは、天然フィブロインと比較して、REP中の1又は複数のアミノ酸残基が疎水性指標の大きいアミノ酸残基に置換されたこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性指標の大きいアミノ酸残基が挿入されたことに相当する、局所的に疎水性指標の大きい領域を含むドメイン配列を有していてもよい。局所的に疎水性指標の大きい領域は、連続する2~4個の疎水性指標の大きいアミノ酸残基で構成されていてもよい。
アミノ酸残基の疎水性指標については、公知の指標(Hydropathy index:Kyte J,&Doolittle R(1982)“A simple method for displaying the hydropathic character of a protein”,J.Mol.Biol.,157,pp.105-132)を使用する。具体的には、各アミノ酸の疎水性指標(ハイドロパシー・インデックス、以下「HI」とも記す。)は、下記表1に示すとおりである。
Figure 2022024190000001
疎水性指標の大きいアミノ酸残基は、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、システイン(C)、メチオニン(M)及びアラニン(A)から選ばれるアミノ酸残基、又は、バリン(V)、ロイシン(L)及びイソロイシン(I)から選ばれるアミノ酸残基であってもよい。
第5の改変フィブロインは、天然フィブロインと比較して、REP中の1又は複数のアミノ酸残基が疎水性指標の大きいアミノ酸残基に置換されたこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性指標の大きいアミノ酸残基が挿入されたことに相当する改変に加え、天然フィブロインと比較して、1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことにより改変されていてもよい。
第5の改変フィブロインは、例えば、クローニングした天然フィブロインの遺伝子配列からREP中の1又は複数の親水性アミノ酸残基(例えば、疎水性指標がマイナスであるアミノ酸残基)を疎水性アミノ酸残基(例えば、疎水性指標がプラスであるアミノ酸残基)に置換すること、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性アミノ酸残基を挿入することにより得ることができる。天然フィブロインのアミノ酸配列からREP中の1又は複数の親水性アミノ酸残基を疎水性アミノ酸残基に置換したこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性アミノ酸残基を挿入したことに相当するアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより、第5の改変フィブロインを得ることもできる。
第5の改変フィブロインは、式1で表されるドメイン配列を含んでもよい。ドメイン配列のうち最もC末端側に位置する(A)モチーフからC末端までの配列を上記ドメイン配列から除いた配列(以下、「配列A」ということがある。)において、REP中で連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域に含まれるアミノ酸残基の総数をpとし、アミノ酸残基の総数をqとしたときに、p/qが6.2%以上であってもよい。
p/qの計算においては、配列Aに含まれる全てのREPにおいて、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値を算出する。疎水性指標の平均値は、連続する4アミノ酸残基に含まれる各アミノ酸残基のHIの総和を4(アミノ酸残基数)で除して求める。疎水性指標の平均値は、全ての連続する4アミノ酸残基について求める。次いで、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域を特定する。あるアミノ酸残基が、複数の「疎水性指標の平均値が2.6以上となる連続する4アミノ酸残基」に該当する場合であっても、領域中には1アミノ酸残基として含まれることになる。当該領域に含まれるアミノ酸残基の総数がpである。配列Aに含まれるアミノ酸残基の総数がqである。
例えば、「疎水性指標の平均値が2.6以上となる連続する4アミノ酸残基」が20カ所重複なく抽出された場合、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域には、連続する4アミノ酸残基が重複なく20含まれることになり、pは20×4=80である。例えば、2つの「疎水性指標の平均値が2.6以上となる連続する4アミノ酸残基」が1アミノ酸残基だけ重複して存在する場合、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域には、7アミノ酸残基含まれることになる(p=2×4-1=7。「-1」は重複分の控除である。)。例えば、図5に示したドメイン配列の場合、「疎水性指標の平均値が2.6以上となる連続する4アミノ酸残基」が重複せずに7つ存在するため、pは7×4=28となる。また、qは4+50+4+40+4+10+4+20+4+30=170である。ここで、C末端側の最後に存在する(A)モチーフは算入されない。次に、pをqで除すことによって、p/q(%)を算出することができる。図5の場合28/170=16.47%となる。
第5の改変フィブロインにおいて、p/qは、6.2%以上、7%以、10%以上、20%以上で、又は30%以上であってもよい。p/qの上限は、特に制限されないが、例えば、45%以下であってもよい。
第5の改変フィブロインは、例えば、クローニングした天然フィブロインのアミノ酸配列を、上記のp/qの条件を満たすように、REP中の1又は複数の親水性アミノ酸残基(例えば、疎水性指標がマイナスであるアミノ酸残基)を疎水性アミノ酸残基(例えば、疎水性指標がプラスであるアミノ酸残基)に置換すること、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性アミノ酸残基を挿入することにより、局所的に疎水性指標の大きい領域を含むアミノ酸配列に改変することにより得ることができる。天然フィブロインのアミノ酸配列から上記のp/qの条件を満たすアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより第5の改変フィブロインを得ることもできる。天然フィブロインと比較して、REP中の1又は複数のアミノ酸残基が疎水性指標の大きいアミノ酸残基に置換されたこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性指標の大きいアミノ酸残基が挿入されたことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当する改変を行ってもよい。
第5の改変フィブロインのより具体例として、配列番号19(Met-PRT720)、配列番号20(Met-PRT665)若しくは配列番号21(Met-PRT666)で示されるアミノ酸配列、又はこれらアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。ここでの配列同一性は95%以上であってもよい。配列番号19で示されるアミノ酸配列は、配列番号7(Met-PRT410)で示されるアミノ酸配列に対し、C末端側の端末のドメイン配列を除いて、REP一つ置きにそれぞれ3アミノ酸残基からなるアミノ酸配列(VLI)を2カ所挿入し、更に一部のグルタミン(Q)残基をセリン(S)残基に置換し、かつC末端側の一部のアミノ酸を欠失させたものである。配列番号20で示されるアミノ酸配列は、配列番号8(Met-PRT525)で示されるアミノ酸配列に対し、REP一つ置きにそれぞれ3アミノ酸残基からなるアミノ酸配列(VLI)を1カ所挿入したものである。配列番号21で示されるアミノ酸配列は、配列番号8で示されるアミノ酸配列に対し、REP一つ置きにそれぞれ3アミノ酸残基からなるアミノ酸配列(VLI)を2カ所挿入したものである。
配列番号19、配列番号20又は配列番号21で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列において、p/qが6.2%以上であってもよい。
第5の改変フィブロインは、N末端、C末端又はこれらの両方に付加された上述のタグ配列を含んでいてもよい。
タグ配列を含む改変フィブロインの具体例として、配列番号22(PRT720)、配列番号23(PRT665)若しくは配列番号24(PRT666)で示されるアミノ酸配列、又はこれらアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。ここでの配列同一性は95%以上であってもよい。配列番号22、配列番号23及び配列番号24で示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号19、配列番号20及び配列番号21で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号11で示されるアミノ酸配列(Hisタグ配列及びヒンジ配列を含む)を付加したものである。
配列番号22、配列番号23又は配列番号24で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列において、p/qが6.2%以上であってもよい。
第5の改変フィブロインは、組換えタンパク質生産系において生産されたタンパク質を宿主の外部に放出するための分泌シグナルを含んでいてもよい。分泌シグナルの配列は、宿主の種類に応じて適宜設定することができる。
第6の改変フィブロインは、天然フィブロインと比較して、グルタミン残基の含有量が低減されたアミノ酸配列を有する。
第6の改変フィブロインのREPは、GGXモチーフ及びGPGXXモチーフから選ばれる少なくとも一つのモチーフが含んでいてもよい。
第6の改変フィブロインのREPがGPGXXモチーフを含む場合、GPGXXモチーフ含有率は、1%以、5%以上、又は10%以上であってもよい。GPGXXモチーフ含有率の上限に特に制限はなく、50%以下であってよく、30%以下であってもよい。
本明細書において、「GPGXXモチーフ含有率」は、以下の方法により算出される値である。
式1:[(A)モチーフ-REP]、又は式2:[(A)モチーフ-REP]-(A)モチーフで表されるドメイン配列のうち、最もC末端側に位置する(A)モチーフからC末端までの配列を除いた配列に含まれる全てのREPにおいて、GPGXXモチーフの個数の総数を3倍した数(即ち、GPGXXモチーフ中のG及びPの総数に相当)をsとし、(A)モチーフを除く全REPのアミノ酸残基の総数をtとしたときに、GPGXXモチーフ含有率はs/tとして算出される。
GPGXXモチーフ含有率の算出において、「ドメイン配列のうち、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列を除いた配列」を対象としているのは、「最もC末端側に位置する(A)モチーフからC末端までの配列」(REPに相当する配列)には、フィブロインに特徴的な配列と相関性の低い配列が含まれることがあり、mが小さい場合(つまり、ドメイン配列が短い場合)、GPGXXモチーフ含有率の算出結果に影響するので、この影響を排除するためである。REPのC末端に「GPGXXモチーフ」が位置する場合、「XX」が例えば「AA」の場合であっても、「GPGXXモチーフ」として扱う。
図6は、改変フィブロインのドメイン配列を示す模式図である。図6を参照しながらGPGXXモチーフ含有率の算出方法を具体的に説明する。まず、図6に示した改変フィブロインのドメイン配列(「[(A)モチーフ-REP]-(A)モチーフ」タイプである。)では、全てのREPが「最もC末端側に位置する(A)モチーフからC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列」(図6中、「領域A」で示した配列。)に含まれているため、sを算出するためのGPGXXモチーフの個数は7であり、sは7×3=21となる。同様に、全てのREPが「最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列」(図6中、「領域A」で示した配列。)に含まれているため、当該配列から更に(A)モチーフを除いた全REPのアミノ酸残基の総数tは50+40+10+20+30=150である。次に、sをtで除すことによって、s/t(%)を算出することができ、図6の改変フィブロインの場合21/150=14.0%となる。
第6の改変フィブロインのグルタミン残基含有率が9%以下、7%以下、4%以下、又は0%であってもよい。
本明細書において、「グルタミン残基含有率」は、以下の方法により算出される値である。
式1:[(A)モチーフ-REP]、又は式2:[(A)モチーフ-REP]-(A)モチーフで表されるドメイン配列のうち、最もC末端側に位置する(A)モチーフからC末端までの配列を除いた配列(図6の「領域A」に相当する配列)において、全てのREPに含まれるグルタミン残基の総数をuとし、(A)モチーフを除いた全てのREPのアミノ酸残基の総数をtとしたときに、グルタミン残基含有率はu/tとして算出される。
第6の改変フィブロインは、天然フィブロインと比較して、REP中の1又は複数のグルタミン残基を欠失したこと、又は他のアミノ酸残基に置換したことに相当するドメイン配列を有していてもよい。
「他のアミノ酸残基」は、グルタミン残基よりも疎水性指標の大きいアミノ酸残基であってもよい。アミノ酸残基の疎水性指標は表1に示すとおりである。疎水性指標の大きいアミノ酸残基が、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、システイン(C)、メチオニン(M)及びアラニン(A)から選ばれるアミノ酸残基、又は、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)及びフェニルアラニン(F)から選ばれるアミノ酸残基であってもよい。
第6の改変フィブロインにおけるREPの疎水性度が、-0.8以上、-0.7以上、0以上で、0.3以上、又は0.4以上であってもよい。REPの疎水性度の上限に特に制限はなく、1.0以下、又は0.7以下であってもよい。
本明細書において、「REPの疎水性度」は、以下の方法により算出される値である。
式1:[(A)モチーフ-REP]、又は式2:[(A)モチーフ-REP]-(A)モチーフで表されるドメイン配列のうち、最もC末端側に位置する(A)モチーフからC末端までの配列を除いた配列(図6の「領域A」に相当する配列。)において、全てのREPの各アミノ酸残基の疎水性指標の総和をvとし、(A)モチーフを除いた全てのREPのアミノ酸残基の総数をtとしたときに、REPの疎水性度はv/tとして算出される。
第6の改変フィブロインは、天然フィブロインと比較して、REP中の1又は複数のグルタミン残基を欠失したこと、及び/又はREP中の1又は複数のグルタミン残基を他のアミノ酸残基に置換したことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当する改変が行われたアミノ酸配列を有していてもよい。
第6の改変フィブロインは、例えば、クローニングした天然フィブロインの遺伝子配列からREP中の1又は複数のグルタミン残基を欠失させること、及び/又はREP中の1又は複数のグルタミン残基を他のアミノ酸残基に置換することにより得ることができる。天然フィブロインのアミノ酸配列からREP中の1又は複数のグルタミン残基を欠失したこと、及び/又はREP中の1又は複数のグルタミン残基を他のアミノ酸残基に置換したことに相当するアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより第6の改変フィブロインを得ることもできる。
第6の改変フィブロインの具体例として、配列番号25(Met-PRT888)、配列番号26(Met-PRT965)、配列番号27(Met-PRT889)、配列番号28(Met-PRT916)、配列番号29(Met-PRT918)、配列番号30(Met-PRT699)、配列番号31(Met-PRT698)若しくは配列番号32(Met-PRT966)で示されるアミノ酸配列、又はこれらアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む改変フィブロインを挙げることができる。ここでの配列同一性は95%以上であってもよい。配列番号25で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列(Met-PRT410)中のQQを全てVLに置換したものである。配列番号26で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列中のQQを全てTSに置換し、かつ残りのQをAに置換したものである。配列番号27で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列中のQQを全てVLに置換し、かつ残りのQをIに置換したものである。配列番号28で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列中のQQを全てVIに置換し、かつ残りのQをLに置換したものである。配列番号29で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列中のQQを全てVFに置換し、かつ残りのQをIに置換したものである。配列番号30で示されるアミノ酸配列は、配列番号8で示されるアミノ酸配列(Met-PRT525)中のQQを全てVLに置換したものである。配列番号31で示されるアミノ酸配列は、配列番号8で示されるアミノ酸配列中のQQを全てVLに置換し、かつ残りのQをIに置換したものである。配列番号32で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列(Met-PRT410)中に存在する20個のドメイン配列の領域を2回繰り返した配列中のQQを全てVFに置換し、かつ残りのQをIに置換したものである。配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31及び配列番号32で示されるアミノ酸配列は、いずれもグルタミン残基含有率は9%以下である(表2)。
Figure 2022024190000002
配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31若しくは配列番号32で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む改変フィブロインにおいて、グルタミン残基含有率が9%以下であってもよい。同改変フィブロインにおけるGPGXXモチーフ含有率が10%以上であってもよい。
第6の改変フィブロインは、N末端、C末端又はこれらの両方に付加された上述のタグ配列を含んでいてもよい。これにより、改変フィブロインの単離、固定化、検出及び可視化等が可能となる。
タグ配列を含む改変フィブロインのより具体例として、配列番号33(PRT888)、配列番号34(PRT965)、配列番号35(PRT889)、配列番号36(PRT916)、配列番号37(PRT918)、配列番号38(PRT699)、配列番号39(PRT698)若しくは配列番号40(PRT966)で示されるアミノ酸配列を含む改変フィブロイン、又はこれらアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む改変フィブロインを挙げることができる。ここでも配列同一性は95%以上であってもよい。配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39又は配列番号40で示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31又は配列番号32で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号11で示されるアミノ酸配列(Hisタグ配列及びヒンジ配列を含む)を付加したものである。N末端にタグ配列を付加しただけであるため、グルタミン残基含有率に変化はなく、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39又は配列番号40で示されるアミノ酸配列において、グルタミン残基含有率は9%以下である(表3)。
Figure 2022024190000003
配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39又は配列番号40で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む改変フィブロインにおいて、グルタミン残基含有率が9%以下であってもよい。同改変フィブロインにおいて、GPGXXモチーフ含有率が10%以上であってもよい。
第6の改変フィブロインは、組換えタンパク質生産系において生産されたタンパク質を宿主の外部に放出するための分泌シグナルを含んでいてもよい。分泌シグナルの配列は、宿主の種類に応じて適宜設定することができる。
改変フィブロインは、第1の改変フィブロイン、第2の改変フィブロイン、第3の改変フィブロイン、第4の改変フィブロイン、第5の改変フィブロイン、及び第6の改変フィブロインが有する特徴のうち、2つ以上の特徴を併せ持つ改変フィブロインであってもよい。
改変フィブロインは、例えば、改変フィブロインをコードする核酸配列と、当該核酸配列に作動可能に連結された1又は複数の調節配列とを有する発現ベクターで形質転換された宿主により、当該核酸を発現させることにより生産することができる。宿主として、原核生物、並びに酵母、糸状真菌、昆虫細胞、動物細胞及び植物細胞等の真核生物のいずれも好適に用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
1.改変クモ糸フィブロインの製造
(1)プラスミド発現株の作製
ネフィラ・クラビペス(Nephila clavipes)由来のフィブロイン(GenBankアクセッション番号:P46804.1、GI:1174415)の塩基配列及びアミノ酸配列に基づき、配列番号15で示されるアミノ酸配列を有する改変フィブロイン(以下、「PRT799」ともいう。)を設計した。配列番号15で示されるアミノ酸配列は、ネフィラ・クラビペス由来のフィブロインのアミノ酸配列に対して、生産性の向上を目的としてアミノ酸残基の置換、挿入及び欠失を施したアミノ酸配列と、そのN末端に付加された配列番号11で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)とを有する。
PRT799をコードする核酸を合成した。この核酸の5’末端にNdeIサイトを付加し、この核酸の終止コドン下流にEcoRIサイトを付加した。核酸をクローニングベクター(pUC118)にクローニングした。その後、PRT799をコードする核酸をNdeI及びEcoRIで制限酵素処理して切り出した。切り出された核酸をタンパク質発現ベクターpET-22b(+)に組換えて発現ベクターを得た。
(2)タンパク質の発現
得られたpET22b(+)発現ベクターにより、大腸菌BLR(DE3)を形質転換した。形質転換された大腸菌を、アンピシリンを含む2mLのLB培地で15時間培養した。次いで、培養液を、アンピシリンを含む100mLの表4に示されるシード培養用培地に、OD600が0.005となるように添加した。培養液の温度を30℃に保ち、OD600が5になるまで、約15時間かけてフラスコ培養を行い、シード培養液を得た。
Figure 2022024190000004
得られたシード培養液を、500mLの表5に示される生産培地を添加したジャーファーメンターに、OD600が0.05となるように添加した。培養液の温度を37℃に保ち、pH6.9で一定に制御して培養を行った。培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持した。
Figure 2022024190000005
生産培地中のグルコースが完全に消費された直後に、フィード液(グルコース455g/1L、Yeast Extract 120g/1L)を1mL/分の速度で添加した。添加後、培養液温度を37℃に保ち、pH6.9で一定に制御して培養を20時間継続した。培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持した。
その後、培養液に対して、1Mのイソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)を、終濃度1mMになるよう添加し、目的のタンパク質を発現誘導した。IPTGを添加してから20時間経過した時点で、培養液を遠心分離し、菌体を回収した。IPTG添加前とIPTG添加後の培養液から調製した菌体を用いてSDS-PAGEを行い、IPTG添加に依存した目的とするクモ糸フィブロインサイズのバンドの出現により、目的とするクモ糸フィブロインの発現を確認した。
(3)タンパク質の精製
回収した菌体を20mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の菌体を約1mMのPMSFを含む20mMTris-HCl緩衝液(pH7.4)に懸濁させ、高圧ホモジナイザー(GEA Niro Soavi社製)で細胞を破砕した。破砕した細胞を遠心分離し、沈殿物を得た。得られた沈殿物を、高純度になるまで20mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の沈殿物を100mg/mLの濃度になるように8M グアニジン緩衝液(8Mグアニジン塩酸塩、10mMリン酸二水素ナトリウム、20mM NaCl、1mM Tris-HCl、pH7.0)中に懸濁させた。懸濁液を60℃で30分間、スターラーで撹拌することにより、沈殿物を溶解させた。溶解後、透析チューブ(三光純薬株式会社製のセルロースチューブ36/32)を用いて水で透析を行った。透析後に得られた白色の凝集タンパク質を遠心分離により回収た。回収した凝集タンパク質から凍結乾燥機で水分を除くことにより、改変クモ糸フィブロイン「PRT799」の凍結乾燥粉末を得た。
2.改変クモ糸フィブロイン繊維の作製
(1)原着色素
原着色素として、以下の材料を準備した。
プリン塩基化合物:
・DNA:魚類***由来のDNA
・dAMP:デオキシアデノシン一リン酸(abcam, 純度:>98%)
・dGMP:2’-デオキシグアノシン5’-一リン酸ナトリウム水和物(SIGMA、純度≧99%(HPLC))
ピリミジン塩基化合物:
・dTMP:チミジン5’-一リン酸二ナトリウム水和物(sigma、純度;≧99%)
・dCMP:2’-デオキシシチジン5’-一りん酸水和物(東京化成、純度>98.0%(HPLC))
(2)ギ酸溶液の調製
ギ酸(株式会社朝日化学工業所)に、各原着色素を添加して、原着色素のギ酸溶液を調整した。原着色素の濃度がギ酸溶液の全質量に対して1質量%又は5質量%である2種の溶液を調製した。得られたギ酸溶液から、ゴミ及び泡を取り除いた。
(3)ギ酸溶液の呈色試験
試験1
DNA、dAMP、dTMP、又はdCMPのギ酸溶液を、ターボサーモシェイカー(バイオメディカルサイエンス株式会社、BSR-TMS-200)を用いて、室温で2000rpmで撹拌した。撹拌後の呈色の有無を目視で確認した。下記表6に示される呈色程度は、以下の基準で判定された結果である。
++:濃い呈色
+:薄い呈色
-:呈色無し
Figure 2022024190000006
試験2
DNA、dGMP、又はdCMPのギ酸溶液を、ターボサーモシェイカー(バイオメディカルサイエンス株式会社、BSR-TMS-200)を用いて、室温で2000rpmで撹拌した。撹拌後の各ギ酸溶液を、70℃で1時間、加熱処理した。その後の呈色の有無を目視で確認した。試験1と同様の基準で呈色程度を評価した。結果を表7に示す。
Figure 2022024190000007
試験3
改変クモ糸フィブロイン「PRT799」の凍結乾燥粉末をギ酸中に懸濁させた。改変クモ糸フィブロインの量は、懸濁液の質量を基準として26質量%とした。この懸濁液に、原着色素としてのdAMPを溶解させた。dAMPの量は、ドープ液中の改変クモ糸フィブロイン及びdAMPの合計質量に対し、1質量%とした。その後、シェーカーを用いて懸濁液を浸透することにより、改変クモ糸フィブロインを3時間かけて溶解させて、改変クモ糸フィブロイン及びdAMPを含むギ酸溶液を得た。得られたギ酸溶液を、70℃で1時間、加熱処理した。加熱処理後のギ酸溶液は濃い茶色に呈色していた。
試験1、2及び3から、プリン塩基化合物と酸化合物との組み合わせによる呈色が確認された。したがって、これらの組み合わせを含む成形用原液を用いることにより、原着タンパク質成形体を得ることができると考えられる。
(4)ドープ液の調整
改変クモ糸フィブロイン「PRT799」の凍結乾燥粉末をギ酸中に懸濁させた。改変クモ糸フィブロインの量は、懸濁液の質量を基準として26質量%とした。この懸濁液に、原着色素としてのDNAを溶解させた。DNAの量は、ドープ液中の改変クモ糸フィブロインの質量に対し、1質量%又は5質量%とした。その後、シェーカーを用いて懸濁液を浸透することにより、改変クモ糸フィブロインを3時間かけて溶解させて、ドープ液を得た。ドープ液中のゴミ及び泡を取り除いた。ドープ液の粘度は、60℃において5000cPであった。
(5)紡糸
改変クモ糸フィブロイン及び原着色素を含むドープ液を、メタノールを含む凝固浴中に吐出することにより、紡糸した。紡糸により形成された繊維を延伸及び乾燥して、改変クモ糸フィブロイン繊維のフィラメントを得た。得られたフィラメントをボビンに巻き取った。比較のため、原着色素を含まないドープ液を用いて、同様に改変クモ糸フィブロインの繊維を作製した。原着色素を含まないドープ液を用いて得た繊維が透明であったのに対して、原着色素としてDNAを含むドープ液を用いて得た繊維は、灰色に呈色していた。
凝固浴温度:5~10℃
延伸倍率:4.52倍
乾燥温度:80℃
1…押出し装置、2…未延伸糸製造装置、3…湿熱延伸装置、4…乾燥装置、6…ドープ液、10…紡糸装置、20…凝固液槽、21…延伸浴槽、36…原着タンパク質繊維。

Claims (17)

  1. タンパク質と、プリン環を有するプリン塩基化合物及び/又はその分解物と、を含有する、原着タンパク質成形体。
  2. 前記プリン塩基化合物が、DNA、又はDNAに由来する化合物である、請求項1に記載の原着タンパク質成形体。
  3. 前記プリン塩基化合物の含有量及びその分解物の合計の含有量が、前記タンパク質の質量に対し、0.5質量%以上である、請求項1又は2に記載の原着タンパク質成形体。
  4. 溶媒を更に含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の原着タンパク質成形体。
  5. 前記溶媒が酸化合物を含む、請求項4に記載の原着タンパク質成形体。
  6. 当該原着タンパク質成形体が繊維又はフィルムである、請求項1~5のいずれか一項に記載の原着タンパク質成形体。
  7. 前記タンパク質が構造タンパク質である、請求項1~6のいずれか一項に記載の原着タンパク質成形体。
  8. 前記構造タンパク質がクモ糸タンパク質を含む、請求項7に記載の原着タンパク質成形体。
  9. タンパク質と、プリン環を有するプリン塩基化合物と、を含有する、原着タンパク質成形体を得るための成形用原液。
  10. 前記プリン塩基化合物が、DNA、又はDNAに由来する化合物である、請求項9に記載の成形用原液。
  11. 前記タンパク質がクモ糸タンパク質を含む構造タンパク質である、請求項9又は10に記載の成形用原液。
  12. 原着タンパク質成形体を得るための成形用原液を製造する方法であって、
    タンパク質を含む原料粉体、プリン環を有するプリン塩基化合物、及び溶媒を含有し、前記プリン塩基化合物が前記原料粉体中に含まれていてもよい、タンパク質含有液を準備することと、
    前記タンパク質含有液中の前記タンパク質を前記溶媒に溶解させることと、を含み、
    前記原料粉体が、前記タンパク質が発現した宿主若しくはその粉砕物である、又は、前記タンパク質及び前記プリン塩基化合物を含む粉体である、
    方法。
  13. 前記溶媒が酸化合物を含む、請求項12に記載の方法。
  14. 前記タンパク質含有液を加熱することを更に含む、請求項12又は13に記載の方法。
  15. 前記タンパク質がクモ糸タンパク質を含む構造タンパク質である、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 請求項9~11のいずれか一項に記載の成形用原液を用いた成形により、原着タンパク質成形体を形成することを含む、原着タンパク質成形体を製造する方法。
  17. プリン環を有するプリン塩基化合物を含む、原着タンパク質成形体用着色剤。
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