JP2021534811A - 抗her3抗体およびその用途 - Google Patents

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Abstract

本発明は、ヒト上皮成長因子受容体3(ERBB3またはHER3としても知られている)に特異的に結合する抗体、その生産方法、前記抗体を含む医薬組成物およびその使用方法に関する。本発明はまた、抗原結合タンパク、核酸、ベクター、細胞、または医薬品も提供する。本発明はさらに、治療的有効量の抗原結合タンパク質、融合タンパク質もしくは複合体、核酸、ベクター、細胞または薬剤を投与することを含む、腫瘍成長を阻害し、がんを治療する方法を提供する。【選択図】図22

Description

関連出願への相互参照
本出願は、その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる2018年6月22日に提出した米国仮出願No.62/688,628に基づく優先権とその利益を主張する。
配列リストの参照
本出願は、EFS-Webを介した電子形式の配列リストとともに提出されている。配列リストは、「配列リスト」と題されたテキストファイルとして提供されており、サイズにして11キロバイトである。電子形式の配列リストの情報は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれている。
発明の分野
本発明は、ヒト上皮成長因子受容体3(ERBB3またはHER3抗体としても知られている)に特異的に結合する抗体、その生産方法、前記抗体を含む医薬組成物およびその使用方法に関する。
関連技術についての説明
発明の概要
ヒト上皮成長因子受容体3(ErbB3またはHER3としても知られている)は、受容体型タンパクチロシンキナーゼであり、受容体型タンパクチロシンキナーゼの上皮成長因子受容体(EGFR)サブファミリーに属し、受容体型タンパクチロシンキナーゼには、EGFR(HER1、ErbB1)、HER2(ErbB2、Neu)およびHER4 (ErbB4) (Plowman et al, (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87:4905-4909; Kraus et al, (1989) PNAS 86:9193-9197; and Kraus et al, (1993) PNAS 90:2900-2904)も含まれる。典型的なEGFRと同様に、膜透過受容体HER3は、細胞外リガンド結合ドメイン(ECD)、ECD内の二量化ドメイン、膜透過ドメイン、細胞内プロテインチロシンキナーゼ様ドメインおよびC-末端リン酸化ドメインからなる。ErbB受容体の細胞外ドメインは、さらに4つのドメインに分割されて特徴づけられている(I-IV)。ErbB細胞外ドメインのドメインIおよびIIIは、リガンド結合に関与している(例えば、Hynes et. al.(2005) Nature Rev. Cancer 5, 341-354を参照のこと)。その他のHERファミリーメンバーとは異なり、HER3のキナーゼドメインは、非常に低い固有のキナーゼ活性を示す。
ErbBファミリーメンバーの複雑なシグナルネットワークは、正常なヒト組織では厳重に制御されている。しかしながら、受容体の過剰発現、変異による受容体機能の変化またはリガンドによる異常な刺激によるErbBファミリーメンバーの調節異常は、しばしばがんの発現と増殖に関連づけられる。EGFRは、しばしば大腸がん、卵巣がん、頭頸部扁平上皮がんその他のタイプのがんにおいて過剰発現しており、EGFR過剰発現は、予後不良とも関係づけられている。とりわけHER2は、ヒト乳がんと関連づけられており、その30%以上で増幅され、および/または、過剰発現している。
HER3は、ErbB標的治療に対する抵抗メカニズムに関与しているという報告があるPI3K/Akt経路を強力に活性化している(Holbro et al., 2003, PNAS 100:8933-8938)。例えば、HER3受容体の過剰発現は、ゲフィチニブおよびラパチニブに対する肺がんの獲得耐性のマーカーである。
ニューレグリン1(NRG)またはニューレグリン2リガンドは、HER3の細胞外ドメインに結合し、HER2等のその他の二量化パートナーとの二量体化を促進することによって受容体介在シグナル経路を活性化する。ヘテロ二量化は、HER3の細胞内ドメインの活性化とリン酸転移をもたらし、シグナルの多様化だけでなくシグナルの増幅のための手段である。加えて、HER3ヘテロ二量化は、活性化したリガンドがない場合も発生し、これは一般的にはリガンド非依存性HER3活性化と呼ばれている。例えば、HER2が遺伝子増幅の結果として高いレベルで発現しているとき(例えば、乳がん、肺がん、卵巣がんまたは胃がん)、HER2/HER3ダイマーが自然に形成される。この状況では、HER2/HER3は最も活性が高いErbBシグナル伝達二量体とみなされ、したがって高度に形質転換しうる。
HER3が、HER2の存在下で発がん性のシグナル伝達を促進する結腸がんおよび胃がんの11%程度で変異していることも以前に示されている(Jaiswal et al., 2013, ヒトがんにおける発がん性ErbB3突然変異」Cancer Cell 23, 603-617)。HER3擬キナーゼドメインにおけるこれらの機能獲得型変異は、HER3のアロステリックアクチベーターとしての潜在能力を高める。
HER3とEGFRまたはHER2とのヘテロ二量化もまた、HERファミリーによる発がん性のシグナル伝達に役割を果たしており、EGFRおよびHER2を標的とするがん治療への耐性をもたらす細胞メカニズムに寄与している。ヘテロ二量化は、ErbB受容体キナーゼドメインの活性化とErbB受容体間のリン酸転移(cross-phosphorylation )をもたらす。リン酸転移は、EGFRとHER2、HER2とErbB3、HER2とErbB4、そしてEGFRとErbB3との間で起こることが知られている。この発現耐性を克服しうる次世代の阻害剤の設計は、HER3またはHER3含有ヘテロダイマーを直接標的にすることに目下焦点があてられている。
HER3レベルの顕著な上昇は、乳がん、肺がん、胃腸および膵がん等のいくつかの種類のがんで見つかっており、このことは、ErbB3が、EGFRやHER2と同様にヒトの悪性腫瘍に役割を果たしていることを示唆する。興味深いことに、HER2/HER3の発現と非侵襲段階から侵襲段階への進行との相関関係が示されている(Alimandi et al, (1995) Oncogene 10:1813-1821; DeFazio et ai, (2000) Cancer 87:487-498; Naidu et al, (1988) Br. J. Cancer 78: 1385-1390)。したがって、HER3介在シグナル伝達を阻害する試薬が必要とされている。
ErbBファミリーメンバーは、抗体の標的となりうる。リガンド結合および/または受容体二量化を阻害しうる。さらには抗体が、受容体クロスリンキングによる受容体の内在化および分解を引き起こしうる(Friedman et al, 2005, PNAS 102: 1915-1920; Roepstorff et al, 2008,. Histochem Cell Biol. 129:563-578; Moody et al., 2015, Mol.Therapy 23: 1888-1898)。なお、Fc部位を含む抗体は、抗体依存性細胞毒性(ADCC)や補体依存性細胞毒性(CDC)のようなエフェクター機能を通じてがん細胞を殺すのを仲介する。抗体はまた、がん細胞に対して細胞毒性物質を送り込むシステムとして使用しうる。腫瘍発生の伝搬と治療耐性の発現に関与するヘテロ二量化パートナーとしてのその新しい役割を理由に、HER3は、抗体治療の標的になっている。HER3を標的とする様々な抗体が開発されている(Gaborit et al. 2015, Hum. Vaccin. Immunother. 12: 576-592; Dey et al. 2015,. Am. J. Transl. Res. 7: 733-750; Aurisicchio et al.2012, Oncotarget 3, 744-758; Baselga & Swain 2009, Nat. Rev. Cancer 9: 463-475; Gala & Chandariapaty 2014, .Clin.Cancer Res.20: 1410-1416; Kol et al.2014, Pharmacol.Ther.143: 1-11; Zhang et al. 2016, Acta Biochim.Biophys.Sin.48: 39-48)。
HER3の機能を調節する複雑なメカニズムが、このタンパクに対する新規で最適化された治療戦略についてのさらなる研究を必要としている。したがって、HER3の活性を調節し、がんのようなHER3-関連疾患を治療する新規で、有効かつ安全な製品を開発するニーズが依然として存在する。
本発明は、HER3受容体の細胞外領域(細胞外ドメイン)に結合し、リガンド依存性(例えばニューレグリン)およびリガンド非依存性HER3シグナル伝達経路の両方をブロックする抗体またはその断片の発見に基づく。本発明はまた、HER3受容体の細胞外ドメイン内のアミノ酸残基に結合し、リガンド依存性(例えばニューレグリン)およびリガンド非依存性HER3シグナル伝達経路の両方をブロックする抗体またはその断片の発見に基づく。
別の観点で、本発明は、HER3受容体のエピトープを認識する単離された抗体またはその断片に関する。ここで、エピトープには、HER3受容体の細胞外ドメイン内のアミノ酸残基が含まれ、前記抗体またはその断片は、リガンド依存性およびリガンド非依存性シグナル伝達の両方をブロックする。
別の側面で、本発明は、少なくとも1 x 10-7 M, 10-8 M, 10-9 M, 10-10 M, 10-11 M, 10-12 M, 10-13 Mの解離定数(KD)を有する、HER3受容体に対する単離された抗体またはその断片に関する。ここで、前記抗体またはその断片は、リガンド依存性およびリガンド非依存性シグナル伝達の両方をブロックする。
別の側面で、本発明は、Fab, F(ab2)', F(ab)2', scFv, VHH, VH, VL, dAbsからなる群より選択される、HER3に結合する抗体の断片に関する。ここで、抗体の断片は、リガンド依存性およびリガンド非依存性シグナル伝達の両方をブロックする。
HER3に結合する抗原結合性タンパクは、抗体である。抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組み換え抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、多特異的抗体またはこれらの抗体断片(例えば、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab')2フラグメント、Fvフラグメント、二重特異性抗体または単鎖抗体分子)でありうる。前記抗体は、IgGl-, IgG2-, IgG3-またはIgG4-タイプでありうる。
別の側面で、本発明は、抗体またはその断片および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。一実施態様では、医薬組成物がさらに追加の治療薬を含む。一実施態様では、追加の治療薬は、EGFR阻害剤、HER2阻害剤、HER3阻害剤、HER4阻害剤、mTOR阻害剤およびPI3キナーゼ阻害剤からなる群より選択される。一実施態様では、追加の治療薬は、マツブマブ(EMD72000)、アービタックス(R)/セツキシマブ、ベクティビックス(R)/パニツムマブ、mAb 806、ニモツズマブ、イレッサ(R)/ゲフィチニブ、CI-1033(PD183805)、ラパチニブ(GW-572016)、タイカーブ(R)/ラパチニブジトシレート、タルセバ(R)/エルロチニブHCL(OSI-774)、PKI-166およびTovok(R)からなる群より選択されるEGFR阻害剤;ペルツズマブ、トラスツズマブ、MM-111、ネラチニブ、ラパチニブまたはラパチニブジトシレート/タイカーブ(R)からなる群より選択されるHER2阻害剤;MM- 121、MM-111、IB4C3、2DID12(U3ファーマAG)、AMG888 (アムジェン)、AV-203(Aveo)、MEHD7945A(ジェネンテック)、MOR10703(ノバルティス)およびHER3を阻害する小分子からなる群より選択されるHER3阻害剤;およびHER4阻害剤である。一実施態様では、追加の治療薬は、HER3阻害剤であり、HER3阻害剤は、MORI 0703である。一実施態様では、追加の治療薬は、テムシロリムス/トリセル(R)、リダフォロリムス/デフォロリムス、AP23573、MK8669、エベロリムス/アフィニトール(R)からなる群より選択されるmTOR阻害剤である。一実施態様では、追加の治療薬は、GDC 0941, BEZ235, BKM120およびBYL719からなる群より選択されるPI3キナーゼ阻害剤である。
一実施態様では、本発明は、HER3発現がんを有する被験者を選択し、当該被験者に対して、本明細書に記載された抗体またはその断片を含む組成物の有効量を投与することを含むがんの治療方法に関する。一実施態様では、被験者はヒトであり、がんは、乳がん、結腸直腸がん、肺がん、膵管腺がん、多発性骨髄腫、卵巣がん、肝臓がん、胃がん、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨肉腫、扁平上皮がん、末梢神経鞘腫瘍、神経鞘腫、頭頸部がん、膀胱がん、食道がん、バレット食道がん、膠芽細胞腫、軟組織の明細胞肉腫、悪性中皮腫、神経線維腫症、腎がん、および黒色腫、前立腺がん、良性前立腺過形成、女性化***、および子宮内膜症からなる群から選択される。
一実施態様では、本発明はNRG-1遺伝子変異融合発現がんを有する被験者を選択し、当該被験者に本明細書に記載された抗体またはその断片を含む組成物の有効量を投与することを含むがんの治療方法に関する。一実施態様では、被験者はヒトであり、がんは、乳がん、結腸直腸がん、肺がん、膵管腺がん、多発性骨髄腫、卵巣がん、肝がん、胃がん、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨肉腫、扁平上皮がん、末梢神経鞘腫瘍、神経鞘腫、頭頸部がん、膀胱がん、食道がん、バレット食道がん、膠芽細胞腫、軟組織の明細胞肉腫、悪性中皮腫、神経線維腫症、腎がん、および黒色腫、前立腺がん、良性前立腺過形成、女性化***、および子宮内膜症からなる群から選択される。
一実施態様では、本発明は、HER3に結合する試薬を、HERファミリーの別のメンバーに結合および/または阻害する第2の試薬と組み合わせて投与することにより、HER3関連疾患を有する被験者を処置するための抗体またはその断片の使用に関する。第1および第2の試薬は、それぞれHER3に結合するまたは別のHERファミリーメンバーに結合および/または阻害するあらゆる種類の分子でありうる。かかる分子としては、特に限定されないが、抗原結合性タンパク、小分子チロシンキナーゼ阻害剤、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、または天然物質等の生体化合物が含まれる。
一実施態様では、本発明は、被験者においてHER3に関連づけられた疾患を処置または予防する方法として特徴づけられ、かかる方法は、被験者に第1および第2の試薬を投与することを含み、ここで第1の試薬は、HER3に結合し、第2の試薬は、HERファミリーの別のメンバーに結合および/または活性を阻害する。第1の試薬は、HER3に結合する小分子化合物または抗原結合性タンパクでありうる。第1の試薬は、配列番号3からなるVH CDR1;配列番号4からなるVH CDR2;および配列番号5からなる VH CDR3を含む重鎖アミノ酸配列;ならびに、配列番号6からなるVL CDR1;配列番号7からなるVL CDR2;配列番号8からなるVL CDR3を含む軽鎖アミノ酸配列を含みHER3に結合する抗原結合性タンパクでありうる。第1の試薬は、(a)配列番号3からなるVH CDR1;(b)配列番号4からなるVH CDR2;および(c)配列番号5からなるVH CDR3からなるCDRの少なくとも1つを含む重鎖アミノ酸配列を含みHER3に結合する抗原結合性タンパクでありうる。第1の試薬は、(d) 配列番号6からなるVL CDR1;(e)配列番号7からなるVL CDR2;および(f)配列番号8からなるVL CDR3からなる群より選択されるCDRの少なくとも1つを含む軽鎖アミノ酸配列を含みHER3に結合する抗原結合性タンパクでありうる。
第1の試薬は、(a)配列番号3からなるVH CDR1;(b)配列番号4からなるVH CDR2および(c)配列番号5からなるVH CDR3からなる群より選択されるCDRの少なくとも1つを含む重鎖アミノ酸配列;ならびに、(d)配列番号6からなるVL CDR1; (e)配列番号7からなるVL CDR2;および(f)配列番号8からなるVL CDR3からなる群より選択されるCDRの少なくとも1つを含む軽鎖アミノ酸配列を含みHER3に結合する抗原結合性タンパクでありうる。第1の試薬は、配列番号3からなるVH CDR1;配列番号4からなるVH CDR2;および配列番号5からなる VH CDR3を含む重鎖アミノ酸配列;または、配列番号6からなるVL CDR1;配列番号7からなるVL CDR2;配列番号8からなるVL CDR3を含みHER3に結合する軽鎖アミノ酸配列を含む抗原結合性タンパクでありうる。
第1の試薬は、配列番号1からなる重鎖アミノ酸配列を含みHER3に結合する抗原結合性タンパクでありうる。抗原結合性タンパクは、配列番号2からなる軽鎖アミノ酸配列を含みうる。
第1の試薬は、配列番号1からなる重鎖アミノ酸配列および配列番号2からなる軽鎖アミノ酸配列を含みHER3に結合する抗原結合性タンパクでありうる。
第1の試薬は、HER3に結合する抗原結合性タンパクであって、当該抗原結合性タンパクは、エフェクター基に結合しうる。エフェクター基は、放射性同位体または放射性核種、毒素、治療薬基または化学療法薬基(例えば、カリケアマイシン、オーリスタチン-PE、ゲルダナマイシン、マイタンシンおよびこれらの誘導体からなる群より選択される治療薬基または化学療法薬基)でありうる。
第2の試薬は、小分子化合物または抗原結合性タンパクでありうる。第2の試薬は、例えば、トラスツズマブ、ラパチニブ、ネラチニブ、パニツムマブ、エルロチニブ、セツキシマブ、ペルツズマブ、および、T-DM1でありうる。
別の側面では、本明細書は、被験者においてHER3に関連づけられた疾患を処置または予防する方法として特徴づけられ、かかる方法は、被験者に第1および第2の試薬を投与することを含み、ここで第1の試薬は配列番号1からなる重鎖アミノ酸配列と配列番号2からなる軽鎖アミノ酸配列とを含みHER3に結合する抗原結合性タンパクであって、第2の試薬は、エルロチニブ、ラパチニブ、およびネラチニブからなる群より選択される。加えて、本明細書は、被験者においてHER3に関連づけられた疾患を処置または予防する方法として特徴づけられ、かかる方法は、被験者に第1および第2の試薬を投与することを含み、ここで第1の試薬は、配列番号1からなる重鎖アミノ酸配列と配列番号2からなる軽鎖アミノ酸配列とを含みHER3に結合する抗原結合性タンパクまたは配列番号1からなる重鎖アミノ酸配列と配列番号2からなる軽鎖アミノ酸配列とを含みHER3に結合する抗原結合性タンパクであって、第2の試薬は、エルロチニブ、ラパチニブ、およびネラチニブからなる群より選択される。
本発明はまた、被験者においてHER3に関連づけられた疾患を処置または予防する方法として特徴づけられ、かかる方法は、被験者に第1および第2の試薬を投与することを含み、ここで第1の試薬は、配列番号1からなる重鎖アミノ酸配列と配列番号2からなる軽鎖アミノ酸配列とを含みHER3に結合する抗原結合性タンパクであって、第2の試薬は、トラスツズマブ、T-DM1、パニツムマブおよびセツキシマブからなる群より選択される。
本明細書に記載の方法は、任意に第3またはそれ以上の治療薬の投与および/または放射線療法を任意に含みうる。第3またはそれ以上の治療薬は、抗腫瘍性薬(例えば、抗腫瘍性抗体またはカペシタビン、アントラサイクリン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、パクリタキセル、ドセタキセル、シスプラチン、ゲムシタビン、またはカルボプラチン等の化学療法剤)でありうる。
第1の試薬および第2の試薬は、静脈内投与、皮下投与、筋内投与または経口投与でありうる。疾患は、過剰増殖性疾患(例えば、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、結腸がん、腎がん、肺がん、膵臓がん、類表皮がん、線維肉腫、黒色腫、鼻咽頭がん、扁平上皮がんからなる群より選択される疾患)でありうる。
本発明の1または2以上の実施態様の詳細は、以下に示す発明の詳細な説明と添付する図面において説明される。本発明のその他の特徴、目的および利点は、明細書および図面ならびに特許請求の範囲から明らかであろう。
軽鎖可変領域および重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列。 軽鎖可変領域のアミノ酸配列。CDRおよびFR領域が指示されている。 重鎖可変領域のアミノ酸配列。CDRおよびFR領域が指示されている。 軽鎖可変領域の軽鎖CDR1領域のアミノ酸配列。 軽鎖可変領域の軽鎖CDR2領域のアミノ酸配列。 軽鎖可変領域の軽鎖CDR3領域のアミノ酸配列。 重鎖可変領域の重鎖CDR1領域のアミノ酸配列。 重鎖可変領域の重鎖CDR2領域のアミノ酸配列。 重鎖可変領域の重鎖CDR3領域のアミノ酸配列。 29Z6抗体のヒトHER3への結合特異性。ウェスタンブロットは、HER3に関して特定のバンドが検出されたが、EGFRまたはHER2に関しては検出されなかったことを示している。 表面プラズモン共鳴によって測定した29Z6モノクローナル抗体のヒトHER3への結合反応速度 29Z6抗HER3抗体のBT-474細胞成長阻害能を示すグラフ。 29Z6抗HER3抗体のFaDu細胞成長阻害能を示すグラフ。 29Z6抗HER3抗体のMDA-MB231細胞成長阻害能を示すグラフ。 29Z6抗HER3抗体のBxPC3 Luc細胞成長阻害能を示すグラフ。 29Z6抗HER3抗体のA549細胞成長阻害能を示すグラフ。 29Z6抗HER3抗体がFaDu細胞中で増殖およびコロニー形成を抑制している。 29Z6抗HER3抗体がBT-474細胞中で増殖およびコロニー形成を抑制している。 29Z6抗HER3抗体がPANC-1細胞中で増殖およびコロニー形成を抑制している。 29Z6抗HER3抗体がMCF-7細胞中で増殖およびコロニー形成を抑制している。 29Z6抗HER3抗体がSK-BR-3細胞中で増殖およびコロニー形成を抑制している。 ヒトBx-PC3膵がん異種移植モデルを用いた、29Z6投与後の腫瘍容積の減少を示す。
配列リストの説明
配列番号1,29Z6重鎖−アミノ酸配列
配列番号2, 29Z6軽鎖−アミノ酸配列
配列番号3,29Z6重鎖CDR1−アミノ酸配列
配列番号 4,29Z6重鎖CDR2−アミノ酸配列
配列番号 5,29Z6重鎖CDR3−アミノ酸配列
配列番号 6,29Z6軽鎖CDR1−アミノ酸配列
配列番号7,29Z6軽鎖CDR2−アミノ酸配列
配列番号8,29Z6軽鎖CDR3−アミノ酸配列
配列番号9,29Z6重鎖−DNA配列
配列番号10,29Z6軽鎖−DNA配列
配列番号11,29Z6重鎖CDR1−DNA配列
配列番号12,29Z6重鎖CDR2−DNA配列
配列番号13,29Z6重鎖CDR3−DNA配列
配列番号14,29Z6軽鎖CDR1−DNA配列
配列番号15,29Z6軽鎖CDR2−DNA配列
配列番号16,29Z6軽鎖CDR3−DNA配列
発明の詳細な説明
本発明を以下で詳細に説明する前に、本発明が本明細書に記載の特定の方法論、プロトコルおよび試薬に限定されず、様々に変更しうることは理解されるべきである。本明細書に記載の用語は、特定の実施態様について説明する目的であり、別紙の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することは意図していないことも理解されるべきである。特段定義されていなければ、本明細書に記載のすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
定義
本明細書において「ErbB3」としても知られる用語「HER3」または「HER3受容体」は、哺乳類のHER3タンパクについて言及しており、「her3」または「erbB3」は哺乳類のher3遺伝子について言及している。好適なHER3タンパクは、細胞の細胞膜に存在するヒトHER3タンパクである。ヒトher3遺伝子は、 米国特許第5,480,968号およびPlowman et ah, (1990) PNAS, 87:4905-4909に記載されている。
ヒトHER3は寄託番号NP001973(ヒト)で定義され、以下に表されている。すべての命名は完全長で未熟のHER3(アミノ酸1-1342)に対するものである。未熟のHER3は、位置19と 20の間で開裂し、成熟HER3タンパク(アミノ酸20-1342)を生じる。
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本明細書に記載の用語「HER3リガンド」は、HER3に結合し活性化するポリペプチドについて言及している。HER3リガンドの例としては、特に限定されないが、ニューレグリン1(NRG)およびニューレグリン2、ベータセルリン、ヘパリン結合上皮成長因子、およびエピレグリンが含まれる。用語には、生物活性フラグメントおよび/または天然ポリペプチドの変異型が含まれる。
「HER2-HER3タンパク複合体」は、HER2受容体およびHER3受容体を含む非共有結合性のオリゴマーである。この複合体は、これらの受容体がともに発現している細胞が、HER3リガンド、例えばNRGにさらされている場合、またはHER2が活性である/過剰発現している場合に形成しうる。
本明細書に記載の「HER3活性」または「HER3活性化」というフレーズは、オリゴマー形成の増加(例えば、HER3含有複合体の増加)、HER3リン酸化、立体構造転位(例えば、リガンドによって引き起こされる)およびHER3介在性下流シグナル伝達について言及している。
本明細書に記載の「HER3依存性シグナル伝達」、「HER3関連疾患」、「HER3依存性シグナル伝達に関連づけられた疾患」、「HER3依存性疾患」、または「HER3シグナル伝達依存性疾患」といった用語には、HER3レベルの増加および/またはHER3が関与する細胞カスケードの活性化が見いだされた病状および/または病状に関連づけられた症状が含まれる。HER3レベルの増加が見いだされると、HER3は、EGFRやHER2といったその他のErbBタンパクとヘテロ二量化することが理解される。したがって、「HER3依存性シグナル伝達と関連づけられた疾患」という用語には、EGFR/HER3および/またはHER2/HER3および/またはHER3/ErbB4ヘテロダイマーレベルの増加が見いだされた病状および/または病状に関連づけられた症状も含まれる。一般に、「HER3依存性シグナル伝達と関連づけられた疾患」という用語は、その症状の発現、進行または持続にHER3を必要とするか、HER3の関与によって影響を受けるいずれかの疾患について言及している。HER3介在性疾患の典型例としては、特に限定されないが、例えば、がんが含まれる。
本明細書に記載の「HER3を発現する細胞の増殖の阻害」というフレーズは、その抗原結合部位および/または抗体が、抗体がない場合の増殖に比べてHER3を発現する細胞の増殖を統計的に有意に低減する能力について言及している。いくつかの実施態様において、HER3を発現する細胞の増殖(例えば、がん細胞)は、細胞が本明細書の開示する抗体に接触したとき、陰性対照の抗体がない場合に計測された増殖に比べて、少なくとも10%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%または少なくとも91,92, 93, 94, 95, 96, 97, 98, 99%または100%低減しうる。細胞増殖は、細胞数および/または細胞分割速度、細胞集団内で細胞分割を経験する細胞の割合、および/または末端分化もしくは細胞死に起因する細胞集団からの細胞喪失の速度(例えば、CyQUANT細胞増殖アッセイまたはCellTiterGloアッセイを用いて)を計測する当該技術分野において認識されている技術を用いて評価しうる。
2以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈における「同一」という用語は、2以上の同じ配列またはサブ配列、すなわち同じヌクレオチドまたはアミノ酸配列を含むこと、を意味する。同じヌクレオチドまたはアミノ酸残基をある特定の割合で有する場合、配列は互いに「実質的に同一」であり(例えば、特定の領域にわたって少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%>、または少なくとも99%同一)、これは、比較ウインドウにわたり最大限の一致のために対比しアライメントした場合、または、以下の配列比較アルゴリズムのうち1つを用いてもしくは手動アライメントと目視によって測定された領域を示した場合の数値である。 本明細書に記載の「単離された抗体」は、様々な抗原特異性を有するその他の抗体を実質的に含まない抗体について言及することを意図している(例えば、HER3に特異的に結合する単離抗体は、HER3以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。加えて、単離された抗体は、典型的には、その他の細胞物質および/またはタンパクが実質的にない。本明細書に記載されているように、「アイソタイプ」とは、抗体クラス(例えばIgMまたはIgG1)または重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体を意味する。いくつかの実施態様において、抗体またはその抗原結合部位がIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgD、またはIgE抗体アイソタイプから選択されるアイソタイプに属する。いくつかの実施態様において、抗体は、IgG1アイソタイプに属する。いくつかの実施態様において、抗体は、IgG2アイソタイプに属する。
本明細書に記載の「抗原結合性タンパク」という用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部位、すなわち、抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子について言及している。 例えば、標的分子または標的エピトープに特異的に結合するファージディスプレイを含む技術を通じて選択される免疫グロブリン様タンパクも含まれる。抗原結合性タンパク、例えば抗体または免疫学的に作用するその断片の結合および/または特異性を評価する際、抗体または断片は、過剰量の抗体が、リガンドに結合する結合パートナーの量を少なくとも約1-20%、20-30%、30-40%、40-50%、50−60%、60-70%、70-80%、80-85%、85-90%、90-95%、95−97%、97-98%、98-99%またはそれ以上低減する場合(例えば、インビトロ競合結合アッセイで測定される)、実質的にリガンドの結合パートナーへの結合を実質的に阻害しうる。中和能は、IC50またはEC50値で説明しうる。
本明細書に記載の「阻害能」というフレーズは、HER3と結合し、HER3シグナル伝達の生物活性を阻害する、例えば、ホスホHER3またはホスホAktアッセイにおいて、HER3によって引き起こされるシグナル活性を低減、減少および/または阻害する抗体に言及している。アッセイの例は、以下の例でさらに詳細に説明されている。したがって、当該技術分野において既知であって本明細書に記載された方法論にしたがって決定される1または2以上のHER3機能特性(例えば、生化学、免疫化学的、細胞、生理学的またはその他の生物活性等)を「阻害する」抗体は、抗体がない場合(または例えば、無関係の特異性を有する対照抗体が存在する場合)に観察される値に比べて、特定の活性が統計的に有意に減少することに関係していると理解される。HER3活性を阻害する抗体は、測定パラメタの少なくとも10%、少なくとも50%未満、80%未満または90%未満まで統計的に有意な減少をもたらし、ある実施態様において、本発明の抗体は、細胞HER3リン酸化レベルの低減によって裏付けられるように、HER3機能活性を95%、98%または99%超阻害しうる。
本発明の様々な側面が、以下のセクションおよびサブセクションでさらに詳細に説明される。
実施態様
本発明の特定の実施態様において、抗原結合性タンパクは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、1価抗体、二重特異性抗体、ヘテロ結合抗体、多重特異性抗体、脱免疫化抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体(とりわけヒトIgGI抗体)からなる群より選択される抗体である。
特定の実施態様において、抗体の抗原結合断片は、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、 F(ab')2フラグメント、Fdフラグメント、 Fvフラグメント、ジスルフィド結合Fv (dsFv)、単一ドメイン抗体、単鎖Fv (scFv)抗体、および単一ドメイン抗体(VH, VL, VHH, ナノボディ、サメ可変新抗原受容体)からなる群より選択される。
特定の実施態様において、抗体様タンパクは、リポタンパク結合性抑制因子(LACI-D1);アフィリン、例えば、ヒトγ B結晶性またはヒトユビキチン;クリスタチン;スルホロブス好酸性菌由来のSac7D;リポカリンおよびリポカリン由来のアンチカリン;設計されたアンキリン反復ドメイン(DARPins); FynのSH3ドメイン;プロテアーゼ阻害剤のKunitsドメイン;モノボディ、例えばフィブロネクチンの10番目のタイプIIIドメイン;アドネクチン;システインノットミニタンパク;アトリマー;エビボディ、例えばCTLA4ベースのバインダー、アフィボディ、例えば黄色ブドウ球菌由来のプロテインAのZドメイン由来の3ヘリックスバンドル;トランスボディ、例えばヒトトランスフェリン;テトラネクチン、例えば単量体または三量体のヒトC型レクチンドメイン;ミクロボディ、例えばトリプシン阻害剤-II;アフィリン;アルマジロ反復タンパク質からなる群より選択される。
特定の実施態様において、抗原結合性タンパクは、単一特異性、二重特異性または多重特異性である。特定の実施態様において、二重特異性または多重特異性抗原結合性タンパクは、第2の細胞標的に特異的に結合する。特定の実施態様において、第2の細胞標的は、免疫細胞の表面に発現したタンパク質、好ましくはCD3、腫瘍細胞の表面に発現したタンパク質、とりわけ成長因子受容体の細胞外領域、とりわけEGFR、HER2、HER4、インシュリン様成長因子1-受容体(IGF-1R)、ヘパトサイト成長因子受容体(HGFR, c-MET)およびこれらの誘導体からなる群より選択され、とりわけEGFRまたはHER2である。
特定の実施態様において、抗原結合性タンパクは3価または4価である。特定の実施態様において、抗原結合性タンパクはとりわけFc受容体、ネオナタルFc受容体(FcRn)または補体系と結合するエフェクタードメインを含む。特定の実施態様において、Fcドメインは、Fcガンマ受容体、とりわけCD16、CD32および/またはCD64と結合するドメインである。特定の実施態様において、Fcドメインは、とりわけ補体系のCI qと結合することによって、補体系を活性化するドメインである。
本発明の好ましい態様では、抗原結合性タンパクは2価である。本発明の特定の実施態様では、抗原結合性タンパクは、配列番号1の重鎖を含む可変ドメインまたは配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは90%、より好ましくは少なくとも95%同一性を有するその変異型を含む。
本発明の特定の実施態様では、抗原結合性タンパクは、配列番号2の軽鎖を含む可変ドメインまたは配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは90%、より好ましくは少なくとも95%同一性を有するその変異型を含む。
本発明の特定の実施態様では、抗原結合性タンパクは、配列番号1の重鎖もしくは配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは90%、より好ましくは少なくとも95%同一性を有するその変異型、 および、配列番号 2の軽鎖もしくは配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも好ましくは80%、好ましくは90%、より好ましくは少なくとも95%同一性を有するその変異型を含む可変ドメインを含む抗原結合性タンパクでありうる。
とりわけCDR、超可変および可変領域の配列は、HER3に結合する能力を失うことなく変更しうることが当業者に理解されるだろう。例えば、CDR領域は、本明細書に特定された領域と同一であるか、または高度の相同性を有しているだろう。「高度の相同性」という言葉は、CDRs中に1〜5、好ましくは1〜4、1〜3または1もしくは2個の置換、削除または付加がされていることがあることを意味すると理解される。加えて、超可変および可変領域は、本明細書に具体的に開示された領域と実質的に相同を示すように変更しうる。
さらには、望ましいアロタイプ、例えば白人集団に見いだされるアロタイプに適合させるため、本明細書に記載のアミノ酸配列、とりわけヒト重鎖定常領域のアミノ酸配列を本発明に従って変更することが望ましいことがある。
抗体の機能性または薬物動態特性を変更するため、Fc領域の抗体を本発明に従って変更することが望ましいことがある。かかる変更は、CIq結合およびCDCの増減またはFcyR結合とADCCの増減をもたらすことがある。重鎖定常領域のアミノ酸残基の1または2以上において置換がされることがある。それにより、変更された抗体と同等の抗原への結合能を維持しながらエフェクター機能に変化がもたらされる。米国特許第5,624,821号および米国特許第5,648, 260号を参照のこと。
さらには、抗体のエフェクター機能を変化させるため、抗体のグリコシル化パターンを変更しうる。グリコシル化パターンの変更は、Fc領域のFc受容体に対するアフィニティを増強し、NK細胞の存在下で抗体のADCCを増加させる。さらには、CDCを変更するため、ガラクトシル化の変更がされることがある。
1つの側面では、本発明は、ヒトHER3タンパクに特異的に結合する単離抗体であって、当該抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を有するVHドメインを含む単離抗体を提供する。
したがって、1つの側面では、本発明は、配列番号1からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号2からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有し、ヒトHER3タンパクに結合する単離モノクローナル抗体またはその断片を提供する。
別の側面では、本発明は、重鎖および軽鎖CDR1,CDR2,CDR3またはこれらの組み合わせを含み、ヒトHER3タンパクに結合する単離HER3抗体を提供する。抗体のVH CDR1のアミノ酸配列は、配列番号3に示されている。抗体のVH CDR2のアミノ酸配列は、配列番号4に示されている。抗体のVH CDR3のアミノ酸配列は、配列番号5に示されている。抗体のVL CDR1のアミノ酸配列は、配列番号6に示されている。抗体のVL CDR2のアミノ酸配列は、配列番号7に示されている。抗体のVL CDR3のアミノ酸配列は、配列番号8に示されている。CDR領域は、Kabatシステム(Kabat et al, (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242; Chothia et al, (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917; Chothia et al, (1989) Nature 342: 877-883; and Al- Lazikani et al, (1997) J. Mol. Biol. 273, 927-948)を用いてアミノ酸残基解析された。
本明細書に記載の抗体は、単鎖抗体、ダイヤボディ、ドメイン抗体、ナノボディおよびユニボディの誘導体でありうる。例えば、本発明は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体(またはその機能的断片)を提供し、ここで、重鎖可変領域は、配列番号1からなるアミノ酸配列と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号2からなるアミノ酸配列と少なくとも80%>、90%>、95%、96%、97%)、98%oまたは99%同一であるアミノ酸配列を含み、ここで抗体は、HER3に結合し、リン酸化アッセイまたは細胞増殖およびリガンドブロックアッセイといった様々な方法で測定されうるHER3のシグナル伝達と機能活性とを阻害する。 可変重鎖および軽鎖親ヌクレオチド配列および哺乳動物細胞における発現に最適化された完全長重鎖および軽鎖配列もまた、本発明の範囲に含まれる。
その他の実施態様では、重鎖および/または軽鎖ヌクレオチド配列は、上述した配列と60%, 70%, 80%, 90%, 95%, 96%, 97%, 98%または99%同一である。
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域ならびにCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を有し、ここで1または2以上のCDR配列は、本明細書に記載の抗体に基づく特定のアミノ酸配列またはその保存的変更を有し、ここで抗体は、本発明のHER3抗体の望ましい機能性を保持している。
一実施態様では、抗体またはその断片は、HER3に結合し、リガンド依存性およびリガンド非依存性HER3シグナル伝達の両方を阻害する。一実施態様では、抗体またはその断片は、HER3に結合し、リガンド依存性およびリガンド非依存性HER3シグナル伝達の両方を阻害する。
以上をまとめると、本発明の抗体29Z6は、既存の治療抗体が臨床的に有効でない疾患の処置に使用しうる。
一実施態様では、本発明の抗体の存在に関して被験者、例えばサンプル(例えば、がん細胞を含む被験者のサンプル)をテストすることを含むがんの処置方法が提供され、この処置方法により、前記抗ヒトHer3抗体または断片は、NRG-1遺伝子変異がんを阻害する。
特定の実施態様において、前記抗ヒトHer3抗体または断片が、以下のうち1または2以上のNRG1遺伝子変異融合を有するがんを阻害する本発明の抗体が提供される:(分化抗原群74−ニューレグリン-1)CD74-NRG1融合、(溶質キャリアファミリー3メンバー2-ニューレグリン-1)SLC3A2-NRG1融合、(シンデカン-4-ニューレグリン-1)SDC4-NRG1融合、DOC4-NRG1融合、(Rho-関連プロテインキナーゼ1-ニューレグリン-1)ROCK1-NRG1融合、(フォークヘッドボックスA1-ニューレグリン-1)FOXA1-NRG1融合、(A-キナーゼアンカータンパク質13-ニューレグリン-1)AKAP13-NRG1融合、(トロンボスポンジン1-ニューレグリン-1)THBS1-NRG1融合、(ホスホジエステラーゼ7A-ニューレグリン-1)PDE7A-NRG1融合、(ATPアーゼ Na+/K+輸送サブユニットベータ1-ニューレグリン-1)ATP1B1- NRG1融合、NRG1-PMEPA1融合、クラステリン-NRG1融合。
特定の実施態様において、腫瘍がNRG1遺伝子変異融合について最初にスクリーニングされ、次にNRG1遺伝子変異融合が陽性の患者が、本発明の抗ヒトHer3抗体で処置される患者層別化法が提供される。
改変および変更(Engineered and Modified)
抗体さらに本発明の抗体は、本明細書に示される設計する 1または2以上のVHおよび/またはVL配列を有する抗体を開始材料として用いて、当初の抗体とは性質が変化した変更抗体を操作するように調製しうる。
抗体は、可変領域(すなわちVHおよび/またはVL)の一方または両方の領域内、例えば、1または2以上のCDR領域および/または1または2以上のフレームワーク領域内にある1または2以上の残基を変更することによって改変しうる。付加的または代替的に、抗体は、例えば抗体のエフェクター機能を変えるため、定常領域内の残基を変更することによって改変しうる。
抗体断片を代替骨格または足場に移植
する結果として生じるポリペプチドがHER3に特異的に結合する少なくとも1つの結合領域を含む限りにおいて、多様な抗体/免疫グロブリン骨格または足場を用いうる。そのような骨格または足場としては、主に5種のイディオタイプのヒト免疫グロブリンまたはその断片が含まれ、好ましくはヒト化した側面をもつ他の動物種の免疫グロブリンが含まれる。
新規の骨格、足場および断片は、当業者によって発見され開発され続けている。
1つの側面では、本発明は、本発明のCDRsを移植可能な非免疫グロブリン足場を用いて非免疫グロブリン系抗体を生成することに関する。
標的HER3タンパク(例えば、ヒトおよび/またはカニクイザルHER3)に特異的な結合領域を含む限り、既知のまたは未知の非免疫グロブリン骨格および足場を用いうる。既知の非免疫グロブリン骨格および足場としては、特に限定されないが、フィブロネクチン、アンキリン、ドメイン抗体、リポカリン、小型モジュール免疫医薬、マキシボディ、タンパクAおよびアフィリンが含まれる。
ヒト化抗体
ヒト化HER3抗体またはその断片は、ヒト被験者に投与されると、モノクローナル抗体より一層抗原性が低減する。
ラクダ(camelid)抗体
本発明の特徴は、HER3に対して高いアフィニティを有するラクダ抗体またはナノボディである。いくつかの実施態様では、ラクダ抗体またはナノボディは、ラクダ科動物において自然に生産される。すなわち、その他の抗体に関して本明細書において記載する技術を用いて、HER3またはそのペプチド断片を用いた免疫を経てラクダによって生産される。代替的に、HER3結合ラクダナノボディが改変される。すなわち、本明細書の実施例に記載されているように、HER3を標的として用いたパニング手段を用いて、例えば適切に突然変異を起こしたラクダナノボディタンパクを提示するファージのライブラリからの選択によって生産される。
二重特異性分子および多価抗体
別の側面では、本発明は、HER3内の非線形または立体構造エピトープに結合する抗体またはその断片を含むバイパラトピック、二重特異性または多重特性分子体でありうる。別の側面では、バイパラトピック、二重特異性または多重特性分子体はHER3に結合する抗体またはその断片を含む。抗体またはその断片は、誘導体化するか、または別の機能性分子、例えば別のポリペプチドまたはタンパク(例えば、受容体に対する別の抗体またはリガンド)に結合し、少なくとも2つの異なる結合部位または標的分子に結合する二重特異性抗体を生成しうる。抗体またはその断片は、誘導体化するか、または2以上の別の機能性分子に結合し、3以上の異なる結合部位および/または標的分子に結合するバイパラトピックまたは多重特異性分子を生成する。二重特異性分子を創造するには、抗体またはその断片が、他の抗体、抗体断片、ペプチドまたは二重特異性分子が生じるような結合類似構造といった1または2以上の他の結合分子に機能的に結合(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合性会合またはその他によって)しうる。さらなる臨床上の利益は、1つの抗体内で2以上の抗原が結合することによって提供しうる。
別の実施態様において、本発明は、抗原結合部位が2以上の抗原に結合するように単一モノクローナル抗体を修飾した二元機能抗体、例えばHER3と別の抗原(例えば、EGFR、HER2およびHER4)の両方に結合する二元機能抗体に関する。別の実施態様において、本発明は、同じ立体構造を有する抗原、例えば、「閉鎖」または「不活性」状態のHER3と同じ立体構造を有する抗原を標的とする二元機能抗体に関する。「閉鎖」または「不活性」状態のHER3と同じ立体構造を有する抗原の例としては、特に限定されないが、EGFRおよびHER4が含まれる。したがって、二元機能抗体はHER3とEGFR、HER3とHER4、またはEGFRとHER4の両方に結合しうる。二元機能抗体の二元結合特異性は、さらに二元活性または活性阻害にもなりうる。(例えば、Jenny Bostrom et al., (2009) Science: 323; 1610-1614)。
抗体複合体
本発明は、異種タンパク質またはポリペプチド(またはこれらの断片、好ましくは、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90または少なくとも100アミノ酸のポリペプチド)と組み換え融合または化学的に結合したHER3に特異的に結合(共有および非共有結合をともに含む)して融合タンパクを生成する、抗体またはその断片を提供する。とりわけ、本発明は、本明細書に記載された抗体断片(例えば、Fabフラグメント、Fdフラグメント、F(ab)2フラグメント、VHドメイン、VH CDR、VL ドメインまたはVL CDR)および異種タンパク質を含む融合タンパク、ポリペプチドまたはペプチドを提供する。タンパク、ポリペプチドまたはペプチドを抗体または抗体断片と融合するか結合する方法は、当該分野で既知である。追加の融合タンパクは、遺伝子シャッフリング、モチーフシャッフリング、エキソンシャッフリング、および/またはコドンシャッフリング(集合的に「DNAシャッフリング」と呼ばれる)の技術を通じて生成しうる。DNAシャッフリングは、本発明の抗体またはその断片の活性を変えるために用いられる(例えば、より高いアフィニティとより低い解離速度を有する抗体またはその断片)。抗体もしくはその断片、またはコードされた抗体もしくはその断片は、組換え前にエラープローンPCR、ランダムヌクレオチド挿入またはその他方法によってランダムな突然変異にさらすことにより改変することができる。HER3タンパクに特異的に結合する抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドは、1または2以上の異種分子の1または2以上の成分、モチーフ、セクション、パーツ、ドメイン、フラグメント等を用いて組換えることができる。
別の実施態様において、本発明の抗体またはその断片は診断薬または検出薬と結合される。かかる抗体は、特定の療法の有効性を判断する等の臨床試験手順の一部として、疾患または障害の開始、発現、進行および/または重症度をモニタリングするのに有用になりうる。かかる診断および検出は、以下のような検出可能な物質と抗体とをカップリングさせることによって達成しうる。検出可能な物質としては、非限定的であるが、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼなどの様々な酵素;非限定的であるが、ストレプトアビジン-ビオチンおよびアビジン/ビオチンなどの補欠分子族;非限定的であるが、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンなどの蛍光材料;非限定的であるが、ルミノールなどの発光材料;非限定的であるが、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンなどの生物発光材料;非限定的であるが、ヨウ素(131I、125I、123I、および121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、タリウム(3H)、インジウム(115In、113In、112In、およびmIn)などの放射性物質)、テクネチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb 、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、113Snおよび117Tinなどの放射性物質;および様々な陽電子放出トモグラフィを用いる陽電子放出金属;および非放射性常磁性金属イオン。
いくつかの実施態様において、HER3結合性タンパクは、エフェクター基に結合しうる。かかる結合性タンパクは、治療応用に特に有用になりうる。本明細書で用いられているように、「エフェクター基」という用語は、放射性同位体または放射性核種、毒素、治療基または当該分野で既知のその他のエフェクター基などの細胞毒性の基について言及している。好適なエフェクター基の例としては、放射性同位体または放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、mIn、125I、131I)または非放射性同位体(例えば2D)、カリケアマイシン、オーリスタチンなどのドラスタチン類似体、ならびに、ゲルダナマイシンおよびDM1を含むメイタンシン誘導体などの化学療法剤が挙げられる。したがって、いくつかの場合、基は、標識基であり、かつエフェクター基でもありうる。エフェクター基をポリペプチドまたはグリコポリペプチド(抗体などの)に付加する様々な方法が当該分野で既知であり、本明細書に記載の組成物および方法を作り実行する際に使用しうる。いくつかの実施態様では、例えば立体障害を低減するため、様々な長さのスペーサーアームによって結合タンパクに付加したエフェクター基を有することが有用なことがある。
本発明は、治療部位に結合した抗体またはその断片の使用をさらに含む。抗体またはその断片は、細胞毒素(例えば細胞増殖抑制剤もしくは細胞破壊剤)、治療薬または放射性金属イオン(例えばアルファ放射体)などの治療部位に結合する。細胞毒素または細胞毒性剤には、細胞にとって有害なあらゆる試薬が含まれる。
さらには、抗体またはその断片は、所与の生体応答を変更する治療部位または薬剤部位に結合しうる。治療部位または薬剤部位は、古典的な化学療法剤に限定されるようには解釈されるべきでない。例えば、薬剤部位は、所望の生物活性を備えたプロテイン、ペプチドまたはポリペプチドでありうる。かかるタンパクには、例えば、アブリン、リシンA、緑膿菌外毒素、コレラ毒素、またはジフテリア毒素などの毒素;腫瘍壊死因子、α-インターフェロン、β-インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、アポトーシス剤、抗血管新生剤などのタンパク質;または、例えばリンホカインなどの生物反応修飾物質が含まれる。一実施態様において、HER3抗体またはその断片は、細胞毒素などの治療部位、薬剤(例えば、免疫抑制剤)または放射性毒素に結合する。かかる複合体は、本明細書で「免疫抱合体」と称される。1または2以上の細胞毒素を含む免疫抱合体は、「抗毒素」と称される。細胞毒素には、細胞にとって有害な(例えば、殺す)あらゆる試薬が含まれる。例としては、タキソン、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびプロマイシン、ならびにこれらの類似体または同族体が含まれる。治療薬には、例えば代謝拮抗物質(例えば、メトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、切除剤(例、メクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メイファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシス-ジクロロジアミンプラチナ(II)(DDP)、シスプラチン、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前のダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、および、アントラマイシン(AMC))、ならびに、抗有糸***薬(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が含まれる。(例えば、Seattle Genetics US20090304721を参照のこと)。
本発明の抗体またはその断片に結合しうる治療的細胞毒性のその他の例としては、デュオカルマイシン、カリケアマイシン、メイタンシンおよびオーリスタチン、ならびにこれらの誘導体が含まれる。カリケアマイシン抗体複合体の例は、市販されている(マイロターグ、ワイス-アイヤースト)。
細胞毒素は、当該分野で利用可能なリンカー技術を用いて本発明の抗体またはその断片に結合しうる。細胞毒素を抗体に結合するために使用されるリンカータイプの例としては、特に限定されないが、ヒドラゾン、チオエーテル、エステル、ジスルフィドおよびペプチド含有リンカーが含まれる。例えばリソソーム区画内の低pHで開裂しやすいか、プロテアーゼ(カテプシン(例えば、カテプシンB,C,D)などの腫瘍組織で優先的に発現したプロテアーゼなど)によって開裂しやすいようにリンカーを選択しうる。
抗体の組み合わせ
もう1つの側面では、別の抗体、小分子阻害剤、mTOR阻害剤またはPBキナーゼ阻害剤などのその他の治療薬と併用される本発明のHER3抗体またはその断片に関する。例としては、特に限定されないが、以下のものが含まれる:EGFR阻害剤:HER3抗体またはその断片は、EGFR阻害剤とともに用いられる。EGFR阻害剤としては、特に限定されないが、マツズマブ(EMD72000)、エルビタックス(R)/セツキシマブ(イムクロン)、ベクティビックス(R)/パニツムマブ(アムジェン)、mAb 806、およびニモツズマブ(TheraCIM)、イレッサ(R)/ゲフィチニブ(アストラゼネカ); CI-1033(PD183805)(ファイザー)、ラパチニブ(GW-572016)(グラクソ・スミスクライン)、タイカーブ(R)/ ラパチニブジトシレート(スミスクラインビーチャム)、タルシーバ(R)/ エルロチニブ HCL(OSI-774)(OSIファーマ)、およびPKI-166( ノバルティス)、およびN- [4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ] -7-[[(3 "S")-テトラヒドロ-3-フラニル]オキシ] -6-キナゾリニル] -4(ジメチルアミノ)-2-ブテンアミド、Tovok(R)の商品名で販売。ベーリンガーインゲルハイムによる)が含まれる。
HER2阻害剤:HER3抗体またはその断片は、HER2阻害剤と併用できる。HER2阻害剤としては、特に限定されないが、ペルツズマブ(ジェネンテックによりOmnitarg(R)の商標で販売)、トラスツズマブ(ジェネンテック/ロシュによりハーセプチン(R)の商標で販売)、MM-111、ネラチニブ(HKI-272としても知られる(2E)-N- [4- [ [3-クロロ-4-[(ピリジン-2-イル)メトキシ]フェニル]アミノ] -3-シアノ-7-エトキシキノリン-6-イル] -4-(ジメチルアミノ)ブト-2-エナミド。PCT公報No. WO 05/028443にも記載)、ラパチニブまたはラパチニブジトシレート(グラクソ・スミスクラインによりタイカーブ(R)の商標で販売)が含まれる。
HER3阻害剤:HER3阻害剤またはその断片は、HER3阻害剤と併用できる。HER3阻害剤としては、特に限定されないが、MM-121、MM-111、IB4C3、2DID12(U3ファーマAG)、AMG888(アムジェン)、AV-203(Aveo)、MEHD7945A(ジェネンテック)、およびHER3を阻害する小分子が含まれる。
HER4阻害剤:HER3阻害剤またはその断片は、HER4阻害剤と併用しうる。
PI3K阻害剤:HER3阻害剤またはその断片は、PI3K阻害剤と併用できる。PI3K阻害剤としては、特に限定されないが、4- [2-(1H-インダゾール-4-イル)-6-[[4-(メチルスルホニル)ピペラジン-1-イル]メチル]チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル]モルホリン(GDC 0941としても知られ、PCT公開番号WO09/036082およびWO09/055730に記載)、2-メチル-2- [4- [3-メチル-2-オキソ-8-(キノリン-3-イル)-2 、3-ジヒドロイミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]フェニル]プロピオニトリル(BEZ235またはNVP-BEZ235としても知られ、PCT公開番号WO 06/122806に記載)、BKM120およびBYL719が含まれる。
mTOR阻害剤:HER3阻害剤またはその断片は、mTOR阻害剤と併用できる。mTOR阻害剤としては、特に限定されないが、テムシロリムス(ファイザー社からTorisel(R)の商品名で販売)、リダフォロリムス(正式にはデフェロリムスとして知られている、(1R,2R,4S)-4-[(2R)-2 [(1R,9S,12S,15R,16E,18R,19R,21R,23S,24E,26E,28Z,30S,32S,35R)-1,18-ジヒドロキシ-19,30-ジメトキシ-15,17,21,23,29,35-ヘキサメチル-2,3、10、14,20-ペンタオキソ-11,36-ジオキサ-4-アザトリシクロ[30.3.1.04,9]ヘキサトリアコンタ-16,24,26,28-テトラエン-12-イル][プロピル] -2-メトキシシクロヘキシルジメチルホスフィネート(デフォロリムス、AP23573およびMK8669としても知られ(Ariad Pharm.)、PCT公開番号WO 03/064383に記載)、エベロリムス(RAD001)(ノバルティスによりアフィニトール(R)の商品名で販売)が含まれ、1または2以上の治療薬を、本発明のHER3抗体もしくはその断片の投与と同時に、または投与の前もしくは後に投与することができる。
本発明の抗体を生産する方法
抗体をコードする核酸
本発明は、上述したHER3抗体鎖のセグメントまたはドメインを含むポリペプチドをコードする実質的に精製された核酸分子を提供する。本発明の核酸のいくつかは、HER3抗体重鎖可変領域をコードする核酸配列、および/または、軽鎖可変領域をコードする核酸配列を含む。特定の実施態様において、核酸分子は、図1(AおよびB)に特定されているものである。
図1(AおよびB)で説明されている抗体またはその断片の重鎖および軽鎖由来の少なくとも1つのCDR領域および通常3つすべてのCDR領域をコードするポリヌクレオチドもまた本発明で提供されている。いくつかのその他のポリヌクレオチドは、上述した抗体またはその断片の重鎖および/または軽鎖の可変領域配列のすべてまたは実質的にすべてをコードする。コードの縮退のため、多様な核酸配列は免疫グロブリンアミノ酸配列の各々をコードする。
抗体またはその断片を生産する発現ベクターおよび宿主細胞もまた、本発明において提供される。HER3抗体鎖またはその断片をコードするポリヌクレオチドを発現するために様々な発現ベクターが用いられる。ウィルスベースおよび非ウィルス発現ベクターは、ともに哺乳動物の宿主細胞で抗体を生産するために用いうる。非ウィルスベクターおよび系には、プラスミド、典型的にはタンパクまたはRNAを発現する発現カセットを備えたエピソーマルベクター、およびヒト人工染色体(例えば、Harrington et al, (1997) Nat Genet 15:345を参照のこと)。例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)細胞におけるHER3ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの発現に有用な非ウィルスベクターには、pThioHis A, B & C, pcDNA3.1/His、 pEBVHis A、 B & C、 (インビトロゲン、San Diego、CA), MPSVベクター、およびその他のタンパクを発現する当該分野で既知の多くのその他のベクターが含まれる。有用なウィルスベクターには、レトロウィルス、アデノウィルス、アデノ随伴ウィルス、ヘルペスウィルスベースのベクター、SV40、パピローマウイルス、HBPエプスタイン・バーウィルス、牛痘ウィルスベクターおよびセムリキ森林熱ウイルスベースのベクターが含まれる。Brent et al, (1995); Smith, Annu. Rev. Microbiol.49:807; およびRosenfeld et al, (1992) Cell 68:143を参照のこと。
抗体または断片鎖を含み発現するための宿主細胞は、原核生物または真核生物のいずれかでありうる。E. coliは、本発明のポリヌクレオチドをクローンし発現するのに有用な1つの原核生物宿主である。使用に好適なその他の微生物宿主としては、枯草菌などのバチルス、ならびに、サルモネラ菌、セラチア菌、様々なシュードモナス属などのその他の腸内細菌科菌群が含まれる。原核生物宿主においては、典型的には宿主細胞と適合性がある発現制御配列(例えば、複製起点)を含む発現ベクターも作りうる。酵母などのその他の微生物もまた、抗体またはその断片の発現に用いうる。バキュロウイルスベクターと組み合わせた昆虫細胞もまた、用いうる。
いくつかの好ましい実施態様では、哺乳動物宿主細胞もまた、抗体またはその断片の発現と生産に用いられる。これらの細胞は、例えば、内因性の免疫グロブリン遺伝子を発現するハイブリドーマ細胞株または外因性の発現ベクターを含む哺乳動物細胞株のいずれかでありうる。これらの細胞には、動物またはヒトの正常で死を免れない細胞または正常細胞または異常不死細胞が含まれる。例えば、CHO細胞株、様々なCos細胞株、HeLa細胞、骨髄腫細胞株、変異B細胞およびハイブリドーマを含む無傷の免疫グロブリンを分泌することができる多くの好適な宿主細胞株が開発されている。ポリペプチドを発現するための哺乳動物組織細胞培養の使用は、例えばWinnacker, From Genes to Clones, VCH Publishers, N.Y., N.Y., 1987において概説されている。哺乳動物宿主細胞の発現ベクターは、複製起点、プロモーター、エンハンサーなどの発現制御配列(例えばQueen et al, (1986) Immunol.Rev. 89:49-68)、リボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位および転写終端配列などの必要なプロセス情報部位を含みうる。通常これらの発現ベクターは、哺乳動物遺伝子由来または哺乳動物ウィルス由来のプロモーターを含む。好適なプロモーターは、構成的(constitutive)、細胞型特異的(cell type-specific)、周期特異的(stage-specific)、および/または調節可能(modulatable or regulatable)でありうる。有用なプロモーターとしては、特に限定されないが、メタロチオネインプロモーター、構成的アデノウイルス主要後期プロモーター、デキサメタゾン誘導性MMTVプロモーター、SV40プロモーター、MRP polIIIプロモーター、構成的MPSVプロモーター、テトラサイクリン誘導性CMVプロモーター(ヒト前初期CMVプロモーターなど)、構成的CMVプロモーター、および当該分野で既知のプロモーターとエンハンサーの組み合わせが挙げられる。
関心あるポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを導入する方法は、細胞宿主の種類によって変わる。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションは、一般に原核細胞に対して用いられるが、リン酸カルシウム処理またはエレクトロポレーションは、その他の細胞宿主に対して用いうる。(Sambrook, et al)。その他の方法としては、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム処理、リポソーム媒介形質転換、注射およびマイクロインジェクション、弾道法、ウイロゾーム、免疫リポソーム、ポリカチオン:核酸コンジュゲート、裸のDNA、人工ビリオン、ヘルペスウイルス構造タンパク質VP22への融合(Elliot and O'Hare, (1997) Cell 88:223)、薬剤によって促進されたDNAの取り込み、およびエクスビボ形質導入が含まれる。組換えタンパクの長期間高収率生産のため、安定な発現はしばしば望ましい。例えば、ウィルス複製起点または内因性発現要素および選択可能なマーカー遺伝子を含む本発明の発現ベクターを用いて、抗体鎖または断片を安定に発現する細胞株を調製しうる。ベクターを導入した後、選択培地に切り替える前に、強化培地で1-2日間細胞を成長させることができる。選択可能なマーカーの目的は、選択への抵抗性を比較するためであり、その存在は、選択培地中で導入された配列をうまく発現する細胞の成長を許容する。安定に導入された耐性細胞は、細胞型に適した組織培養技術を用いて増殖させうる。
本発明のモノクローナル抗体の生成
モノクローナル抗体(mAbs)は、例えば、Kohler and Milstein, (1975) Nature 256:495の標準的な体細胞交雑技術などの従来のモノクローナル抗体方法論を含む様々な技術によって生産しうる。例えば、Bリンパ球のウィルスまたは発がん性形質転換といったモノクローナル抗体を生産するための多くの技術を用いうる。
ハイブリドーマを調製する動物系はネズミ系である。ネズミにおけるハイブリドーマ生産の手順は、確立されている。免疫方法および融合のための免疫化脾細胞の単離技術は、当該分野で既知である。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)および融合手順もまた既知である。
本発明のキメラまたはヒト化抗体は、上述の手順で調製されたマウスモノクローナル抗体の配列に基づいて調製しうる。重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAは、関心があるネズミのハイブリドーマから得られ、標準的な分子生物学的技術によって非ネズミ(例えばヒト)免疫グロブリン配列を含むように改変しうる。例えば、キメラ抗体を生成するため、マウス可変領域は、当該分野で既知の方法を用いてヒト定常領域に結びつけることができる。(例えば、Cabillyらの米国特許第4,816,567号を参照のこと)。ヒト化抗体を生成するため、ネズミCDR領域は、当該分野で既知の方法を用いてヒト骨格に挿入される。例えば、Winterへの米国特許第5225539号、および、Queenらへの米国特許第5530101号; 5585089号; 5693762号および6180370号を参照のこと。
HER3を対象とするヒトモノクローナル抗体は、マウス系よりもヒト免疫系のパーツを持つトランスジェニックマウスまたはトランスクロモソミックマウスを用いて生成しうる。これらのトランスジェニックマウスまたはトランスクロモソミックマウスには、本明細書でそれぞれHuMAbマウスおよびKMマウスと称されるマウスを含み、本明細書で集合的に「ヒトIgマウス」と称される。
ヒトモノクローナル抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子のライブラリをスクリーニングするファージディスプレイ法を用いて調製しうる。ヒト抗体を単離するかかるファージディスプレイ法は、当該分野で確立されている。例えばLadnerらへの米国特許第5,223,409号; 5,403,484号; および5,571,698号を参照のこと。
本発明はまた、単離されたHER3結合性タンパクを調製するプロセスに関し、タンパクを発現する宿主細胞からタンパクを調製する工程を含む。用いうる宿主細胞としては、限定されず、ハイブリドーマ、真核細胞(例えば、ハムスター、ウサギ、ネズミ、豚またはマウス細胞などの哺乳動物細胞)、植物細胞、カビ細胞、酵母細胞(例えば、サッカロマイセスセルビジエまたはピチア属パストリ細胞)、原核細胞(例えば、E. coli細胞)、および結合タンパクの生産のために用いられるその他の細胞が含まれる。足場タンパクまたは抗体などの結合タンパクを宿主細胞から調製および単離するため、様々な方法が当該分野で既知であり、本明細書に記載の方法を実施するに際して使用しうる。さらには、足場タンパク断片または抗体断片といった結合タンパク断片を調製する方法、例えば、パパインまたはペプシン消化、最新クローニング技術、単鎖抗体分子およびダイヤボディの調製技術などの方法は、当業者に既知であり、本明細書に記載の方法を実施するに際して使用しうる。
本発明の抗体の特性評価
本発明の抗体は様々な機能的アッセイによって特性評価しうる。例えば、ホスホ-HERアッセイにおいてHERシグナル伝達を阻害することによって生物活性を阻害する能力、HER3タンパク(例えばヒトHER3)へのアフィニティ、エピトープビンニング、タンパク質分解抵抗性、および、HER3下流シグナル伝達をブロックする能力によって特性評価しうる。HER3介在性シグナル伝達を測定するため様々な方法を用いうる。例えば、HERシグナル伝達経路は、以下の方法でモニタリングしうる:(i)ホスホHER3の測定;(ii)HER3またはその他の下流シグナル伝達タンパク(例えばAkt)のリン酸化測定;(iii)リガンドブロックアッセイ;(iv)ヘテロダイマー形成;(v)HER3依存性遺伝子発現特性;(vi)受容体の内在化;および(vii)HER3駆動細胞表現型(例えば増殖)。
抗体がHER3に結合する能力は、関心がある抗体を直接標識することによって検出しうるか、または、抗体は標識されていなくてもよく、当該分野で既知の様々なサンドイッチアッセイフォーマットを用いて間接的に結合を検出してもよい。
HER3タンパクを表現する生存細胞へのモノクローナルHER3抗体の結合を実証するため、フローサイトメトリーを用いうる。簡潔に説明すると、HER3を発現する細胞株は、0.1%BSAと10%のウシ胎仔血清を含むPBS中で様々な濃度のHER3結合抗体と混合し、4℃で1時間インキュベートしうる。細胞は、洗浄した後、初期抗体染色と同じ条件下の蛍光標識した抗ヒトIgG抗体と反応させる。サンプルは、光を用いたFACScan装置および単一細胞のゲートに対する側方散乱特性によって解析しうる。
本発明の抗体またはその断片は、ウェスタンブロットによってHER3ポリペプチドまたは抗原断片との反応性に関してさらにテストされうる。簡潔に説明すると、HER3ポリペプチドまたは融合タンパクまたはHER3を発現する細胞由来の細胞抽出物が調製され、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけられる。電気泳動の後、分離された抗原は、ニトロセルロース膜に移され、10%BSAでブロックされ、本発明のモノクローナル抗体でプローブされる。IgG結合は、抗IgGアルカリフォスファターゼを用いて検出され、ECLプラス検出システムで発現される。
リガンド誘起ヘテロダイマー形成のセルベースアッセイでHER3抗体の有効性および特異性を評価するため、多数の読み出しを用いうる。活性は、以下の1または2以上によって評価しうる:
機能的活性は、リガンドにより活性化されたヘテロダイマー化によるシグナル伝達経路の活性化を阻害することによっても評価しうる。HER3との結合は、リガンド結合後の最大の細胞応答を引き出すために、受容体のEGFファミリーのその他のメンバーに対する鍵のように思われる。キナーゼ欠損HER3の場合、HER2は、機能性チロシンキナーゼドメインを提供し、成長因子リガンドの結合に続けてシグナル伝達の発生を可能にする。したがって、HER2とHER3とが共発現(co-expressing)している細胞は、阻害剤の非存在下または存在下で、例えばヘレグリンなどのリガンドで処理され、HER3チロシンリン酸化に与える影響は、処理された細胞溶解物からのHER3の免疫沈降と抗ホスホチロシン抗体を用いた後続のウェスタンブロットとを含む多数の方法によってモニターされる。代替的に、高スループットアッセイは、抗HER3受容体抗体でコートされた96ウェルプレートのウェル上に可溶化溶解物由来のHER3をトラップすることによって開発しうる。またWaddleton et ah, (2002) Anal. Biochem. 309: 150-157によって具体化されているようなユーロピウム標識抗ホスホチロシン抗体を用いてチロシンリン酸化レベルが測定される。
細胞増殖の阻害
例えば多くの乳がんおよび前立腺がん細胞株等の様々な細胞株が、ErbB受容体の組み合わせを共発現することが知られている。アッセイは、24/48/96ウェルフォーマットで、DNA合成の基本となるリードアウト(トリチウムチミジン取り込み)、細胞数の増加または腫瘍コロニー(クリスタルバイオレット染色またはCyquant細胞増殖アッセイまたはCellTiterGloアッセイ)を用いて実施される。
その腫瘍形成表現型が少なくとも部分的にHER3ヘテロダイマー細胞シグナル伝達のリガンド活性化に依存していることが知られているヒト腫瘍細胞株(例えば、BxPC3 膵がん細胞またはSK-BR-3ヒト乳がん細胞株)の腫瘍異種移植片のインビボ成長を抗体またはその断片がブロックする能力。この能力は、免疫不全マウス単独または適切な細胞毒性薬と組み合わせた免疫不全マウスで、問題となっている細胞株に関して評価しうる。機能性アッセイの例は、以下の実施例セクションにも記載されている。
予防的および治療的用途
本発明は、本発明の抗体またはその断片の有効量を必要とする被験者に投与することにより、HER3シグナル伝達経路と関連づけられた疾患または障害を処置する方法を提供する。特定の実施態様では、本発明は、必要とする被験者に本発明の抗体またはその断片の有効量を投与することにより、がん(例えば、乳がん、結腸直腸がん、肺がん、多発性骨髄腫、卵巣がん、肝臓がん、胃がん、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨肉腫、扁平上皮がん、末梢神経鞘腫瘍、神経鞘腫、頭頸部がん、膀胱がん、食道がん、バレット食道がん、膠芽細胞腫、軟組織の明細胞肉腫、悪性中皮腫、神経線維腫症、腎がん、および黒色腫、前立腺がん、良性前立腺過形成、女性化***、および子宮内膜症)を処置しまたは予防する方法を提供する。いくつかの実施態様において、本発明は、本発明の抗体の有効量を必要とする被験者に投与することにより、HER3シグナル伝達経路と関連づけられたがんを処置しまたは予防する方法を提供する。
本発明の抗体またはその断片は、HER3シグナル伝達異常または不全と関連づけられたその他の疾患の処置または予防に用いうる。かかる疾患としては、特に限定されないが、呼吸器疾患、骨粗鬆症、骨関節炎、多嚢胞性腎臓病、糖尿病、統合失調症、血管疾患、心臓病、非発がん性増殖性疾患、線維症、およびアルツハイマー病などの神経変性疾患が含まれる。
HER3抗体との組み合わせ治療のための好適な試薬には、ErbBシグナル伝達経路を調節することができる当該分野で既知の標準治療薬が含まれる。HER2に関する標準治療薬の好適な例としては特に限定されないが、ハーセプチンおよびタイカーブが含まれる。EGFRに関する標準治療薬の好適な例としては特に限定されないが、イレッサ、タルシーバ、エルビタックスおよびベクティビックスが含まれる。HER3抗体との組み合わせ治療に好適なその他の試薬としては、特に限定されないが、受容体チロシンキナーゼ、G-タンパク結合受容体、増殖/生存シグナル伝達経路、核ホルモン受容体、アポプトピック経路、細胞サイクルおよび血管形成を調節するものが含まれる。
検出/治療および診断用途
もう1つの側面において、本発明は、例えば、インビトロまたはインビボ(例えば、生体サンプル、例えば、血清、***または尿、または組織生検、例えば、過剰増殖性またはがん病変由来の)サンプル中でHER3の存在を検出するための方法として特徴づけられる。主題の方法は、評価(例えば、被験者における本明細書に記載の疾患の治療または進行のモニタリング、診断および/または病期分類、例えば、過剰増殖性またはがん疾患)のために用いうる。本方法には以下のことが含まれる:(i)本明細書に記載の抗体分子を、相互作用が起きうる条件下でサンプル(および任意に、参照、例えば対照サンプル)に接触すること、または被験者に投与すること、ならびに、(ii)抗体分子とサンプル(および任意に、参照、例えば対照サンプル)との複合体の形成を検出すること。複合体の形成は、HER3の存在を示し、本明細書に記載の治療の適合性または必要性を示しうる。いくつかの実施態様では、HER3は、治療に先立ち、例えば初期治療に先立ちまたは治療インターバル後の治療に先立ち、検出される。検出には、免疫組織化学、免疫細胞化学、FACS、抗体分子複合磁気ビーズ、ELISAアッセイ、PCR技術(RT-PCRなど)、またはインビボイメージング技術が含まれる。典型的には、インビボおよびインビトロの検出方法で使用される抗体分子は、結合されたまたは非結合の結合剤の検出を容易にするために、検出可能な物質で直接的または間接的に標識されている。適切な検出可能な物質には、様々な生物学的に活性な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、常磁性(例えば、核磁気共鳴活性)物質、および放射性物質が含まれる。 その他の実施態様では、抗体分子は、例えば、本明細書に記載のインビボ画像化技術(例えば、PET画像化)を使用して、インビボで検出される。
追加の実施態様では、HER3および以下に示す1,2または全てのNRG1遺伝子変異融合の存在に関して被験者、例えばサンプル(例えば、がん細胞を含む被験者のサンプル)をテストすることを含むがんの処置方法が提供される:(分化抗原群74−ニューレグリン-1)CD74-NRG1融合、(溶質キャリアファミリー3メンバー2-ニューレグリン-1)SLC3A2-NRG1融合、(シンデカン-4-ニューレグリン-1)SDC4-NRG1融合、DOC4-NRG1融合、(Rho-関連プロテインキナーゼ1-ニューレグリン-1)ROCK1-NRG1融合、(フォークヘッドボックスA1-ニューレグリン-1)FOXA1-NRG1融合、(A-キナーゼアンカータンパク質13-ニューレグリン-1)AKAP13-NRG1融合、(トロンボスポンジン1-ニューレグリン-1)THBS1-NRG1融合、(ホスホジエステラーゼ7A-ニューレグリン-1)PDE7A-NRG1融合、(ATPアーゼNa+/K+輸送サブユニットベータ1-ニューレグリン-1)ATP1B1-NRG1融合、NRG1-PMEPA1融合、クラステリン-NRG1融合。本明細書に記載の抗HER3抗体の治療的有効量を任意に1または2以上のその他の試薬とともに被験者に投与し、それによりがんを治療する。
1つの側面では、本発明は、がんに苦しむ個体由来の、または発がんリスクがある個体由来の、または、生体試料(例えば、血液、血清、細胞、組織)におけるHER3タンパク機能に加えて、HER3および/または核酸の発現を決定するための診断アッセイを包含する。
医薬組成物
抗体またはその断片を含む医薬または滅菌組成物を調製するため、抗体またはその断片は、医薬的に許容される担体または賦形剤と混合される。組成物は、がんを治療または予防するのに適した1または2以上のその他の治療薬を追加的に含みうる。
治療薬および診断薬の製剤は、例えば、凍結乾燥粉末、スラリー、水溶液、ローション、または懸濁液の形態で、生理学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤と混合することによって調製することができる。
本発明の抗体またはその断片に関して、患者に投与する量は、患者の体重の0.0001mg/kg〜100mg/kgとすることができる。
その抗体に関して、患者に投与する量は、典型的には患者の体重の0.1mg/kg〜100mg/kgとすることができる。好ましくは、患者に投与される投薬量は、患者の体重の0.1 mg/kgから20 mg/kgの間であり、より好ましくは、患者の体重の 1 mg/kg から20 mg/kgである。その抗体の投与量および頻度は、例えば、脂質化などの修飾によって、抗体またはその抗原結合性部位の取り込みおよび組織浸透を増強することにより、減少させることができる。
本発明の組成物は、当該分野で既知の様々な方法のうち1つまたは複数を用いて、1または2以上の投与経路を介して投与してもよい。当業者によって理解されるように、投与の経路および/または方法は、望む結果によって異なる。本発明の抗体またはその断片の選択された投与経路には、例えば注射または注入による、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄またはその他の非経口投与経路が含まれる。非経口投与は、経腸および局所投与以外の投与方法を意味することがあり、通常は注射によるものであり、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、被膜内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内の注射および注入が含まれる。代替的に、本発明の組成物は、局所、表皮または粘膜の投与経路などの非経口経路で、例えば鼻腔内、経口、経膣、直腸、舌下または局所的に投与しうる。
いくつかの実施態様において、その抗体は、単独でまたは他の種類の治療(例えば、放射線治療、化学療法、ホルモン療法、治療抗体、免疫療法および抗腫瘍剤)ができる。
いくつかの実施態様において、本明細書に開示された抗体を被験者由来の細胞に(例えば生体外または生体内で)接触させ、細胞上のHER3への結合レベルを測定することによって、被験者においてHER3の上方制御に関連づけられた疾患(例えば、がん)を診断するための方法が提供される。異常に高レベルのHER3への結合は、被験者がHER3の上方制御に関連づけられた疾患を有していることを示唆する。
いくつかの実施態様において、腫瘍成長を抑制するための方法が提供される。方法には、HER3を発現する細胞を含む腫瘍に対するHER3抗体を提供し、それにより、腫瘍成長を抑えることを含む。
いくつかの実施態様において、本明細書に開示された抗体は、インビトロ、インビボまたはエクスビボで様々な細胞の増殖を阻害、ブロック、および/または低減するために用いうる。いくつかの実施態様において、抗体は、NRGがない場合に、様々な細胞(例えば上皮、結腸直腸および/または膵臓がん細胞株)の増殖をブロックまたは低減しうる。
いくつかの実施態様において、抗体は、NRG-1などのHER3アクティベーターがある場合および/またはない場合に、細胞の増殖を阻害する。いくつかの実施態様において、抗体は、NRG-1がない場合に、HER3シグナル伝達を5、10、15、20、25、30、35、40、45、 50%以上阻害しうる。いくつかの実施態様において、抗体は、NRG-1がない場合に、HER3シグナル伝達を5、10、15、20、25、30、35、40、45、 50%以上阻害しうる。いくつかの実施態様において、抗体は、NRGが既にHER3に結合している場合でさえ、NRG-1駆動シグナル伝達を防止および/または低減しうる。
いくつかの実施態様において、抗体は、本明細書に開示されたHER3の機能または活性の1つまたは複数をブロックする。いくつかの実施態様において、抗体は、HER3に結合するNRGを低減および/またはブロックする。いくつかの実施態様において、抗体は、HER3と別のHER3分子、および/またはEGFRおよび/またはHER2および/またはErbB4との二量化をブロックまたは低減する。
いくつかの実施態様において、抗体またはその抗原結合性部位は、他の治療法に対するがんの耐性を低減するか、または感度を増加するために用いうる。
いくつかの実施態様において、本明細書で指摘した1または2以上の抗体は、ErbB標的抗体の抗増殖活性を増強しうる。いくつかの実施態様において、抗体は、セツキシマブまたはパニツムマブと組み合わせて増強された抗増殖活性を有する組成物を提供することができる。いくつかの実施態様において、本明細書に開示された抗体は、トラスツズマブおよび/またはペルツズマブなどの抗HER2抗体または複数の抗HER2抗体と組み合わせることができる。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の代理結合性タンパクのうちいずれか1つまたは2以上をその他の分子と組み合わせることができる。いくつかの実施態様において、これは、効能を増強しうる。いくつかの実施態様において、抗体またはその抗原結合部位は、セツキシマブ、パニツムマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ、ラパチニブ、GDC-0941と組み合わせて、抗増殖活性を増強および/または阻害能を向上した組成物を提供することができる。いくつかの実施態様において、これはNRGの存在下で有効になりうる。いくつかの実施態様において、これはNRGの非存在下で有効になりうる。いくつかの実施態様において、単独で作用する分子に比べてより多くの量の阻害の達成が可能になる。いくつかの実施態様において、抗体は、セツキシマブ、パニチムマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブの少なくとも1つと組み合わせて、以下の少なくとも1つをもたらしうる:細胞表面HER3の減少、EGFR標的分子(抗体またはその他の分子)の抗増殖活性の増強、ERB2標的分子 (抗体または他の分子)の抗増殖活性の増強、PI3K、AKT、mTOR標的分子の活性を増強、リガンド誘起HER3リン酸化、AKTリン酸化、および/またはERKリン酸化の減少、ならびに/またはがん細胞株(乳がん細胞など、本明細書に挙げたすべてを含む)の増殖阻害の改善。いくつかの実施態様において、第2および第3の治療抗体の量は、被験者の体重の少なくとも0.001mg/kgの量、被験者の体重の例えば、0.001、0.01、0.1、1、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100mg/kgの量で用い得、量としては前記数値のうちいずれか2つの間で定義された範囲を含む。いくつかの実施態様において、代理結合性タンパクの使用量は、0.1〜100mg/kgである。
いくつかの実施態様において、本明細書で指摘した抗体のいずれかとタンパクのいずれかとの組み合わせで、本明細書に記載のいずれかの抗体の量は、被験者体重の少なくとも0.001mg/kgの量、被験者の体重の例えば、0.001、0.01、0.1、1、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100mg/kgの量で用い得、量としては前記数値のうちいずれか2つの間で定義された範囲を含む。いくつかの実施態様において、抗体の使用量は、0.1〜100mg/kgである。いくつかの実施態様において、本発明の抗体は、抗EGFRまたは抗HER2などの第2の適した抗体よりも多く用いうる。
いくつかの実施態様において、抗体は、HER2-過剰発現および非過剰発現細胞の両方における生体内での腫瘍成長を低減することができる。いくつかの実施態様において、抗体は、セツキシマブ、パニツムマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブのうち少なくとも1つと少なくとも同程度に有効である。いくつかの実施態様において、抗体は、セツキシマブ、パニツムマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ、Ab B、またはAb Aのうち少なくとも1つと少なくとも同程度に有効であり、抗体は、より強力である。いくつかの実施態様において、抗体は、少なくとも1%以上強力であり、例えば、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、500、1000、5000、10,000、100,000、1,000,000、または10,000,000%以上強力であり、%としては前記数値のうちいずれか2つの間で定義された範囲を含む。いくつかの実施態様において、抗体は、NRG刺激増殖メカニズムに限定されない様式で細胞増殖を低減するように作用する。いくつかの実施態様において、抗体は、その他のErbBアプローチ(例えば、NRG非依存)とは区別される作用機序で作用し得、EGFR阻害剤(本明細書に記載の阻害剤のいずれか)を強化する能力を依然として維持している。いくつかの実施態様において、抗体は、細胞表面HER3を減少する。いくつかの実施態様において、抗体は、HER3の細胞表面発現を低減する。
いくつかの実施態様において、抗体のいずれか1つ以上が、EGFRを阻害する別の(非抗体および/または非HER3)薬剤を増強しうる。いくつかの実施態様において、抗体は、別の有効成分なしに(および/または異なるHER3阻害剤なしに)投与され、または、組成物中に含まれる。
いくつかの実施態様において、抗体は、EGFR抗体に耐性がある細胞に対して有効である。いくつかの実施態様において、抗体は、EGFRチロシンキナーゼ活性の阻害剤に耐性がある細胞に対して有効である。いくつかの実施態様において、抗体は、K-ras遺伝子変異を有する細胞に対して有効である。いくつかの実施態様において、抗体は、肺がんに対して有効である。いくつかの実施態様において、抗体は、肺がんおよびK-ras遺伝子に変異を有する被験者に対して有効である。いくつかの実施態様において、抗体は、膵がんおよびK-ras遺伝子に変異を有する被験者に対して有効である。いくつかの実施態様において、最初にK-ras遺伝子変異の有無について被験者をテストする。被験者がK- rasポイント変異を有する状況下で、被験者は、本明細書に開示された抗体を投与される。
いくつかの実施態様において、抗体は、マウスモデルでマウス頭数の少なくとも数%について生存期間を60日を越えて延長することができる。いくつかの実施態様において、抗体は、マウス頭数の10%を越える頭数について、および/または、70、75、80日を越えて生存期間を延長することができる。いくつかの実施態様において、抗体は、マウス頭数の20%を越える頭数について、および/または、70、75、80日を越えて生存期間を延長することができる。いくつかの実施態様において、抗体は、マウス頭数の約30%について、および/または、70、75、80日を越えて生存期間を延長することができる。
様々な送達システムが知られており、抗体を投与するために使用することができる。送達システムとしては、例えば、リポソーム、マイクロ粒子、マイクロカプセル内へのカプセル化、その抗体を発現することができる組換え細胞、受容体介在性エンドサイトーシス(例えば、Wu and Wu, J. Biol.Chem.262: 4429-4432, 1987を参照のこと。)、レトロウィルスその他のベクターの一部としての核酸の構築等が挙げられる。導入方法としては、限定されないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路が含まれる。抗体は、任意の都合のよい経路で、例えば、注入または静脈内ボーラスによって、上皮層または 皮膚粘膜層(例えば口腔粘膜、直腸粘膜、腸粘膜等)を通じた吸収によって、投与しうる。抗体は、その他の生物活性剤と一緒に投与しうる。投与は、全身投与または局所投与でありうる。加えて、抗体またはその抗原結合部位を適した経路で中枢神経系に導入することが望ましいことがある。適した経路には、脳室内および髄腔内注射が含まれる。脳室内注射は、例えば、オンマイヤーレザバーなどのタンクに接続した脳室内カテーテルによって促進しうる。例えば、吸入具またはネブライザーを用いて、エアロゾル化剤を用いた製剤化による経肺投与も用いうる。
いくつかの実施態様において、抗体および/または複数の抗体を処置が必要な部位に局所投与することが望ましいことがある。局所投与は、例えば、非限定的であるが、術中の局所注入、局所適用、例えば術後の創傷包帯と併せて、注射によって、カテーテルを用いて、座薬を用いて、または、シラスティック膜などの膜または糸を含む、多孔性、非多孔性もしくはゼラチン状の材料でできたインプラントを用いて達成されうる。いくつかの実施態様において、抗体またはその抗原結合部位を投与する場合、抗体またはその抗原結合部位を吸収しない材料の使用に注意すべきである。
いくつかの実施態様において、抗体またはその抗原結合部位または本明細書に開示された抗体構造物は、免疫リポソームとして製剤化してもよい。「リポソーム」は、様々な種類の脂質、リン脂質および/または哺乳動物への薬剤の送達に有用な界面活性剤からなる小嚢である。本発明の抗体のFab’フラグメントは、ジスルフィド交換反応を介してMartin et al.J. Biol.Chem.257: 286-288(1982) に記載されているリポソームに結合することができる。化学療法剤は、必要に応じてリポソーム内に含まれる。
抗体、その抗原結合部位、および/または抗体は医薬組成物としても提供しうる。かかる組成物は、治療的有効量の抗体、その抗原結合部位および/または抗体と、医薬的に許容可能な担体とを含む。いくつかの実施態様において、「医薬的に許容可能な」という用語は、連邦または州政府の規制当局によって承認された、または、米国薬局方またはその他の一般的に承認された薬局方に動物、とりわけヒトでの使用のために収載されたことを意味する。「担体」という用語は、それとともに治療薬が投与される希釈剤、補助剤、賦形剤またはビヒクルを意味する。かかる医薬担体は、水、および、ピーナッツオイル、大豆油、鉱物油、ごま油等の石油、動物または合成由来のものを含む油などの滅菌液体でありうる。水は、医薬組成物が静脈内投与される場合に好ましい担体である。生理食塩水および水性デキストロースおよびグリセロール溶液もまた液体担体、とりわけ注射液として用いる。
別の側面において、本発明は、医薬的に許容可能な担体とともに製剤化された組成物、例えば、抗体、その抗原結合部位および/または本明細書に開示された抗体を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施態様において、組成物は、HER3上の異なるエピトープに結合する複数(例えば2つまたはそれ以上)の単離された薬剤の組み合わせを含む。
治療組成物に関して、本開示の製剤には、経口、鼻腔、局所(口腔および舌下を含む)、経皮、皮下、髄腔内、脊髄内、直腸、膣および/または非経口投与に適したものが含まれる。製剤は、好都合には単位剤形で提供され、薬学分野で既知の方法によって調製されうる。単一剤形を生産するために担体材料と組み合わせる有効成分の量は、処置される被験者および個別の投与方法によって変わる。単一剤形を生産するために担体材料と組み合わせる有効成分の量は、一般に治療効果をもたらす組成物の量である。一般に、有効成分の量は、100%中、約0.001%〜約90%、好ましくは約0.005%〜約70%、最も好ましくは約0.01%〜約30%の範囲にある。
HER結合剤は、さらに医薬的に許容可能な塩、エステルもしくはエステルの塩、または、ヒトを含む動物に投与すると生物活性がある代謝物またはその残基を(直接的または間接的に)提供することができるその他の化合物を含みうる。
いくつかの実施態様において、組成物は、HER3に結合する少なくとも1つの抗体またはその抗原結合部位と、EGFRに結合する第2の抗体またはその抗原結合部位とを含む。いくつかの実施態様において、組成物は、HER3に結合する少なくとも1つの抗体またはその抗原結合部位と、HER2に結合する第2の抗体またはその抗原結合部位とを含む。いくつかの実施態様において、組成物は、HER3に結合する少なくとも1つの抗体またはその抗原結合部位と、ErbB4に結合する第2の抗体またはその抗原結合部位とを含む。いくつかの実施態様において、組成物は、HER3に結合する少なくとも1つの抗体またはその抗原結合部位と、ErbB1に結合する抗体とを含む。いくつかの実施態様において、組成物は、HER3に結合する少なくとも1つの抗体またはその抗原結合部位と、HER2に結合する抗体とを含む。いくつかの実施態様において、組成物は、HER3に結合する少なくとも1つの抗体またはその抗原結合部位と、HER3に結合する抗体とを含む。いくつかの実施態様において、組成物は、HER3に結合する少なくとも1つの抗体またはその抗原結合部位と、ErbB4に結合する抗体とを含む。いくつかの実施態様において、組成物は、HER3に結合する少なくとも1つの抗体とHER2に結合する抗体とを含む。上述の実施態様に関して、抗体は、単一の二重特異的構造物または構造物のペアのいずれかでありうる。
いくつかの実施態様において、HER3に結合する抗体またはその抗原結合部位と、1または2以上の成長因子、非ErbB受容体、および/または、腫瘍細胞死滅を増加させるための免疫細胞補強特異性に結合する第2の抗体またはその抗原結合部位とを組み合わせることができる。これらの実施態様に関して、抗体は、単一の二重特異的構造物または構造物のペアのいずれかでありうる。
いくつかの実施態様において、抗体またはその抗原結合部位は、1または2以上の古典的化学療法薬、成長因子チロシンキナーゼ阻害薬、タンパクキナーゼ阻害剤、カスパーゼまたはアポトーシス活性化因子、微小管阻害剤(例えば、タキサン)、エストロゲン常用帯阻害剤(タモキシフィン)、および/またはアロマターゼ阻害剤、HSP90阻害剤と併用しうる。
いくつかの実施態様において、がん細胞を抑制するための方法が提供される。当該方法は、HER3を発現するがん細胞を有する被験者を特定することと、当該被験者に対し、がん細胞上のHER3に結合するのに十分な量でHER3代理結合タンパクを投与することとを含み、これによりRas/Raf/MEK経路をブロックする。
いくつかの実施態様において、がん細胞を抑制するための方法が提供される。当該方法は、HER3を発現するがん細胞を有する被験者を特定することと、当該被験者に対し、がん細胞上のHER3に結合するのに十分な量でHER3代理結合タンパクを投与することとを含み、これによりPI3K、AKT、またはPI3KとAKT経路をブロックする。
いくつかの乳がん患者は、トラスツズマブなどの抗HER2治療に反応しない。HER2陽性乳がんにおけるトラスツズマブ耐性の1つのメカニズムには、トラスツズマブが結合する細胞外ドメインがなくなるようにHER2が切断されることを含む。HER2切断は、タンパク質分解脱落、および、トラスツズマブを除外する内部メチオニン残基とその他のエピトープとを用いた代替的な翻訳開始を含むいくつかのメカニズムで起きうる。これらのケースのいずれにおいても、切断されたHER2(「p95 HER-2」)の発現は、悲観的な予後因子であることが示されており、著しく悪い結果を有する患者群を規定する。
以下の例に説明されるように、いくつかの実施態様において、切断されたHER2を有する腫瘍などの抗HER2非感受性腫瘍の処置のために、抗HER3抗体および/または代理結合タンパクを用いうる。これらの腫瘍は、トラスツズマブとペルツズマブ療法の両方に耐性があると予想されている。これらの有効性を実験的に実証するため、HER3と切断されたHER2とを有するヒト腫瘍細胞株を用いて、以前に説明したインビトロアッセイと同様、増殖またはHER3介在性シグナル伝達の阻害に関して、HER3代理結合タンパクをテストすることができる。代替的に、HER3をもつ培養した腫瘍細胞は、切断されたHER2を過剰発現するように、一時的もしくは安定的に形質転換または形質導入することができる。様々なHer-2の欠失型を導入して、タンパク質分解的に切断された型または代替的に翻訳された型を再現し、得られた細胞株またはプールをテストして、抗HER3に対する応答性を実証することができる。抗HER3代理結合タンパクの結合は、HER2の存在とは無関係であり、当該タンパクはHER2誘導腫瘍の増殖を阻害することから、切断されたHER2を発現する腫瘍増殖を阻害し、この患者群に有効になることが期待されている。
抗HER3代理結合タンパクの結合は、HER2の存在とは無関係であり、当該タンパクはHER2誘導腫瘍の増殖を阻害することから、切断されたHER2を発現する腫瘍増殖を阻害し、この患者群に有効になることが予測されている。
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の抗体は、MTOR(哺乳動物のラパマイシン標的)阻害剤と組み合わせて用いうる。mTORC1は、PI3KおよびmTORC2を通じたシグナル伝達を低減するためのフィードバック経路において作用する。mTOR阻害剤の例としては、限定されないが、テムシロリムス、エベロリムス、リダフォロリムス、BEZ235を含む。いくつかの実施態様において、方法には、がんが発生するリスクがある被験者を特定し、mTORの1または2以上の阻害剤の投与に先立ち、投与後、または投与と組み合わせて本発明の抗HER3抗体を投与することを含む。抗体の量は、様々であり、例えば、それ単独で効果的な量、または、mTORの阻害剤と組み合わせて効果的な量などがある。
本明細書に記載の医薬組成物は、過剰増殖疾患の診断、予防または処置に特に有用になりうる。過剰増殖疾患は、HERファミリーシグナル伝達の増加と関連づけられている。とりわけ、疾患は、HER3リン酸化の増加、HER3とその他のHERファミリーメンバーとの複合体形成の増加、PI3キナーゼ活性の増加、c-jun末端キナーゼ活性および/もしくはAKT活性の増加、ERK2および/もしくはPYK2活性の増加、またはこれらの組み合わせと関連づけられる可能性がある。過剰増殖性疾患としては、例えば、乳がん、胃腸がん、膵臓がん、前立腺がん、卵巣がん、胃がん、子宮内膜がん、唾液腺がん、肺がん、腎臓がん、結腸がん、結腸直腸がん、甲状腺がん、膀胱がん、神経膠腫、黒色腫、またはその他のHER3発現または過剰発現がん、および腫瘍転移の形成からなる群より選択しうる。
上述したものに加えて、本発明の組み合わせ療法のその他の実施態様には、以下のものが含まれる:乳がんの処置のための、HER3抗体またはその治療的コンジュゲートと、メトトレキサート、パクリタキセル、ドキソルビシン、カルボプラチン、シクロホスファミド、ダウノルビシン、エピルビシン、5-フルオロウラシル、ゲフィチニブ、イクサベピロン、ムタマイシン、ミトキサントロン、ビノレルビン、ドセタキセル、チオテパ、ビンクリスチン、カペシタビン、EGFR抗体(例えば、ザルツムマブ、セツキシマブ、パニツムマブまたはニモツズマブ)、その他のEGFR阻害剤(ゲフィチニブまたはエルロチニブなど)、HER2抗体または-コンジュゲート(例えば、トラスツズマブ、トラスツズマブ-DM1またはペルツズマブ)、EGFRとHER2の両方の阻害剤(ラパチニブなど)との組み合わせ、ならびに/または、HER3阻害剤との組み合わせ。
非小細胞肺がんの処置のための、EGFR抗体(例えば、HER3抗体と、ザルツムマブ、セツキシマブ、パニツムマブまたはニモツズマブ)などのEGFR阻害剤またはその他のEGFR阻害剤(ゲフィチニブまたはエルロチニブなど)との組み合わせ、HER2剤(HER2抗体など、例えば、トラスツズマブ、トラスツズマブ-DM1またはペルツズマブ)、または、ラパチニブなどのEGFRおよびHER2の両方の阻害剤との組み合わせ、または、HER3阻害剤との組み合わせ。
大腸がんの処置のための、HER3抗体と、ゲムシタビン、ベバシズマブ、FOLFOX、FOLFIRI、XELOX、IFL、オキサリプラチン、イリノテカン、5-FU / LV、カペシタビン、UFT、セツキシマブ、パニツムマブ、ザルツムマブなどのEGFR標的薬; VEGF阻害剤、またはスニチニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤から選択される1または2以上の化合物との組み合わせ。
前立腺がんの処置のための、HER3抗体と、抗アンドロゲン、黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニストなどのホルモン/抗ホルモン療法;および、タキサン、ミトキサントロン、エストラムスチン、5FU、ビンブラスチン、イクサベピロンなどの化学療法薬から選択される1または2以上の化合物との組み合わせ。
本発明を完全に説明するため、理解を助けるが限定的でない以下の実施例および請求項によってさらに例を挙げて説明する。本発明は、本明細書に記載された特定の方法論、プロトコルおよび試薬等に限定されず、変更しうることは理解されるべきである。本発明の精神から逸脱することなく説明された手順において変更がなされることは理解されるべきである。本明細書に記載の用語は、特定の実施態様について説明する目的であり、もっぱら特許請求の範囲によって限定される本発明の範囲を限定することは意図していない。
実施例1:E.coli系からのヒトHer3_aa20-643の発現と
精製
ヒトHer3_aa20-643タンパク配列:MSEVGNSQAVCPGTLNGLSVTGDAENQYQTLYKLYERCEVVMGNLEIVLTGHN ADLSFLQWIREVTGYVLVAMNEFSTLPLPNLRVVRGTQVYDGKFAIFVMLNYNT NSSHALRQLRLTQLTEILSGGVYIEKNDKLCHMDTIDWRDIVRDRDAEIVVKDNG RSCPPCHEVCKGRCWGPGSEDCQTLTKTICAPQCNGHCFGPNPNQCCHDEC AGGCSGPQDTDCFACRHFNDSGACVPRCPQPLVYNKLTFQLEPNPHTKYQYG GVCVASCPHNFVVDQTSCVRACPPDKMEVDKNGLKMCEPCGGLCPKACEGT GSGSRFQTVDSSNIDGFVNCTKILGNLDFLITGLNGDPWHKIPALDPEKLNVFRT VREITGYLNIQSWPPHMHNFSVFSNLTTIGGRSLYNRGFSLLIMKNLNVTSLGFR SLKEISAGRIYISANRQLCYHHSLNWTKVLRGPTEERLDIKHNRPRRDCVAEGK VCDPLCSSGGCWGPGPGQCLSCRNYSRGGVCVTHCNFLNGEPREFAHEAEC FSCHPECQPMEGTATCNGSGSDTCAQCAHFRDGPHCVSSCPHGVLGAKGPIY KYPDVQNECRPCHENCTQGCKGPELQDCLGQTLVLIGKTHLT
ヒトHer3_aa20-643に対するクローニング戦略
標的タンパク+His tag+停止コドン
MSEVGNSQAVCPGTLNGLSVTGDAENQYQTLYKLYERCEVVMGNLEIVLTGHN ADLSFLQWIREVTGYVLVAMNEFSTLPLPNLRVVRGTQVYDGKFAIFVMLNYNT NSSHALRQLRLTQLTEILSGGVYIEKNDKLCHMDTIDWRDIVRDRDAEIVVKDNG RSCPPCHEVCKGRCWGPGSEDCQTLTKTICAPQCNGHCFGPNPNQCCHDEC AGGCSGPQDTDCFACRHFNDSGACVPRCPQPLVYNKLTFQLEPNPHTKYQYG GVCVASCPHNFVVDQTSCVRACPPDKMEVDKNGLKMCEPCGGLCPKACEGT
GSGSRFQTVDSSNIDGFVNCTKILGNLDFLITGLNGDPWHKIPALDPEKLNVFRT VREITGYLNIQSWPPHMHNFSVFSNLTTIGGRSLYNRGFSLLIMKNLNVTSLGFR SLKEISAGRIYISANRQLCYHHSLNWTKVLRGPTEERLDIKHNRPRRDCVAEGK VCDPLCSSGGCWGPGPGQCLSCRNYSRGGVCVTHCNFLNGEPREFAHEAEC FSCHPECQPMEGTATCNGSGSDTCAQCAHFRDGPHCVSSCPHGVLGAKGPIY KYPDVQNECRPCHENCTQGCKGPELQDCLGQTLVLIGKTHLTHHHHHH**
コドン最適化と遺伝子合成は、当該分野で既知の標準的方法を用いて実施され、その後、サブクローニングは、発現ベクターpET30aについて実施された。発現レベル評価が、SDS-PAGEとウェスタンブロット分析によって行われました。十分な量のHER3タンパクを得るため、最適条件を用いたスケールアップ発現に着手した。細胞収穫と融解を経て、封入体を再溶出し、Ni-レジンでHER3タンパクを精製し、リフォールディングした。 品質管理は、SDS-PAGE、ウェスタンブロットおよびブラッドフォードアッセイを用いて実施された。
実施例2:細胞外ドメインHER3に対するmAbsの生成
HER3の細胞外ドメイン(20-643 a.a)を生産し、マウスの免疫付与のために用いた。適した力価を示す動物を特定し、リンパ節からリンパ球を取得し、必要であれば、各コホートのためにプールした。リンパ球は、適した培地(例えばダルベッコ改変イーグル培地(DMEM))ですりつぶすことによってリンパ組織から分離し、組織から細胞を放出させ、DMEM中に懸濁させた。B細胞は、標準方法を用いて選択および/または培養し、当該分野で既知の技術を用いて適した融合パートナーと融合させた。
数日間の培養後、ハイブリドーマ上清を集めて、以下の実施例で詳述するスクリーニングアッセイにかけた。スクリーニングアッセイには、ELISAによるヒトHER3への結合の確認に加えて、二次バイオアッセイにおける細胞株を死滅させる能力の確認が含まれる。その後さらに、関心がある結合性および機能性を有することが特定されたハイブリドーマ株を選択し、 標準的なクローンおよびサブクローン技術にかけた。クローン株をインビトロ培養し、分泌したモノクローナル抗体を分析用に取得し、遺伝子配列解析を実施した。重鎖と軽鎖とをコードするcDNAsの完全ヌクレオチド配列解析により29Z6Abを同定し、これは、アイソタイプでマークされ、κ鎖を有するIgG2a分子と特定された。
実施例3:抗HER3抗体 29Z6の結合
ヒトHER3の細胞外ドメイン(aa 20-643)を含む固定化されたHER3-Fc融合を用いるELISAで、IgG 29Z6の抗原結合を分析した。 PBS中1μg/mlでポリスチレンマイクロタイタープレート上にHER3-Fc融合タンパクをコートした。 PBS2%スキムミルク(MPBS)で残余の結合部位をブロックした。 その後、MPBS中のIgG 29Z6の連続希釈でプレートをインキュベートした。 洗浄後、HRP-コンジュゲート抗マウスFc抗体とTMB H2O2を基質として、結合した抗体を検出した。 IgG 29Z6のEC50値はサブナノモルレンジ(0.88nM)で、HER3への特異的な濃度依存性結合を示した。
実施例4:抗HER3抗体 29Z6の交差反応性
免疫ブロット実験により、IgG 29Z6は、変性して低減したHER3-Fc融合タンパクを検出することができた。さらには、ヒトおよびマウスHER3-Fc融合タンパクへの結合をELISA分析した。HER3-Fc融合タンパクへの結合を検出し、IgG 29Z6はHER3と交差反応性があり、したがってIgG 29Z6のエピトープは、これら2つの種で保存されることを実証した。
実施例5:抗HER3 29Z6のHER3受容体に対する結合特異性
29Z6抗体の結合特異性を実証するため、ELISAアッセイを実施した。ELISAプレートは、1μg/mlのEGFR、HER2、または、HER3の細胞外ドメインでコートされた。ELISAは、29Z6の濃度を増加させつつインキュベートし、次いでHRP-ヤギ抗マウスIgGとインキュベートし、29Z6抗体結合を検出した。結果は、HER3のみへの29Z6結合を示した。ウェスタンブロットを用いて、結合特異性の確認に取り組んだ。EGFRまたはHER2は29Z6に結合しなかった一方、HER3のみが結合した(図10)。
実施例6:表面プラズモン共鳴による結合速度解析
研究グレードのCM5センサーを備えたBiacore3000光学センサープラットフォーム(GE Healthcare Bio-Sciences Corp., Piscataway, NJ)を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)によって29Z6mAbの結合速度を分析した。HER3の精製された細胞外ドメインは、メーカーのプロトコルに従い、標準的なアミンカップリングキットを用いて、カルボキシル化デキストラン被覆金箔のセンサーチップ表面に固定化した。簡単に説明すれば、NHS/EDC混合溶液(1:1, v/v)70μLを注射し、カルボキシル化デキストランを活性化し、次いで所望の表面密度に到達するまで、10 mM NaOAc(pH 4.5) に溶解したタンパクを手で注射した。その後、エタノールアミン1M水溶液 (pH8.5)を注射し、センサーチップ上でNHSエステルを失活させた。すべての結合実験は、HEPESバッファー (10 mM HEPES, 150 mM NaCl, 3.4 mM EDTA, 0.005% Tween 20, pH 7.4)中、25℃で実施した。0.1〜300nM濃度の29Z6 mAbは、特に明記しない限り、20 μL min-1のフローレートで、それぞれHER3受容体細胞外ドメインまたは抗体表面の上に、ランダムに注射した。各注射後、30秒かけた10 mM HClの注射を2回行い、表面を再生した。得られたセンサーグラムは、モック活性化表面とブランクバッファー注射を用いてアラインし、二重参照した。動力学的データは、バイアコアソフトウェアBiaEvaluationバージョン4.1(GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社)を用いて、単純な1:1相互作用モデルにセンサーグラムをフィットすることで評価した。平衡KDは、得られた動的会合および解離速度(kd/ka)から決定し、標準偏差の報告値を生成するために、最低9回の独立試行を使用した。1:1結合モデルは、固定パラメタとして実験的に決定したRMaxとともに使用し、会合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)および平衡解離定数(KD)を決定した。得られた平衡解離定数(KD)は、0.8 ± 0.3 × 10-9 Mであり、Kaは1.88 x105 [M-1s-1]、Kdは2.95 x10-4 [s-1] であった(図11)。
実施例7:抗HER3IgG29Z6による細胞増殖の阻害
SK-BR-3(乳腺腺がん細胞株)、FaDu(下咽頭癌細胞株)、BT-474(乳腺管がん細胞株)、PANC-1(膵管腺がん細胞株)およびMCF-7(乳腺がん細胞株)、MDA-MB-231(ヒト***腺がん)細胞株はATCCから購入し、10%胎児ウシ血清(FBS)を添加した増殖培地で定法により維持した。ヒト肺微小血管内皮細胞(HLMEC)およびヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)は、特殊な内皮細胞増殖培地(Lonza)で増殖させた。
SK-Br-3細胞は、10%胎児ウシ血清を添加した改変McCoy's 5 A培地で培養し、BT-474細胞は、10%FBSを添加したDMEM中で培養した。 サブコンフルエントの時点で細胞をトリプシン処理し、PBSで洗浄し、増殖培地で5x 104細胞/mLまで希釈し、96ウェルのクリアボトムブラックプレート(コスター3904)に5000細胞/ウェルの濃度で固定した。 細胞は、適切な濃度のHER3抗体を添加する前に(典型的には10または1μg/mLという最終濃度)、37℃で一晩インキュベートした。 Cyquant細胞増殖アッセイ(サーモフィッシャー)を用いて細胞生存率を評価する前に、プレートを6日間インキュベーターに戻した。 各抗体で得られた増殖阻害の程度は、HER3抗体で得られた蛍光値を標準アイソタイプ対照抗体と比較することによって計算した。
増殖アッセイでは、FaDu(下咽頭癌細胞株)、BT-474(***腺癌細胞株)、PANC-1(膵管腺癌細胞株)、A549(肺腺癌細胞株)、BxPC3 Luc(膵臓腺癌)およびMCF- 7(***腺癌細胞株)細胞株を使用した。細胞は、4 mM L-グルタミン/ 15mM HEPES/ 10% FBSを含むDMEM/ F12 (1 : 1)中で定法により培養した。サブコンフルエントの時点で細胞をトリプシン処理し、PBSで洗浄し、4 mM L-グルタミン/15mM HEPES/10 μg/mL ヒトトランスフェリン/0.2% BSAを含むDMEM/ F12 (1 :1)で1 x105 細胞/mLまで希釈した。細胞は、96ウェルのクリアボトムブラックプレート(コスター)に5000細胞/ウェルの濃度で固定した。その後、適切な濃度のHER3抗体(典型的には10または1μg/mLという最終濃度)を添加した。40 ng/mLのNRG1-β1 EGFドメイン(R&Dシステム)も適したウェルに加えられ、細胞増殖を刺激した。Cyquant細胞増殖アッセイ(サーモフィッシャー)またはCellTiterGloアッセイ(プロメガ)のいずれかを用いて 細胞生存率を評価する前に、プレートを6日間インキュベーターに戻した。各抗体で得られた増殖阻害の程度は、HER3抗体で得られた蛍光値を標準アイソタイプ対照抗体と比較することによって計算した。
さらに、インビトロ腫瘍細胞増殖を低減する能力に関して、IgG 29Z6を評価した。この効果をモニターするため、様々なヒトがん細胞株(MCF-7、BT-474、SKBR3、MDA-MB-231、PANC-1、FaDu、A549およびBxPC3)が96ウェルプレートに低濃度で播種され、1晩付着させ、その後低血清濃度でIgG 29Z6または陰性対照としてのIgGアイソタイプとインキュベートされた。 1週間のインキュベート後、増殖を決定した。 4つすべての細胞株に関して、対照抗体と比較した増殖低減が観察された。 例えば、BT-474細胞中でのIC50は、5.3 μg/mlであった(図12)一方、FaDuでは、上記条件下でIC50値が3.3 g/mlと決定された(図13)。 MDA-MB-231細胞中でのIC50値は、8.3 μg/mlと算出された(図14)。 BxPC3 Luc細胞中でのIC50値は、18.1μg/mlであった(図15)一方、A549細胞中でのIC50値は、20.3 g/mlであった(図16)。 正常なヒト肺微小血管内皮細胞(HLMEC)およびヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を対照として用い、IgG 29Z6とインキュベートして正常細胞への毒性を決定した。 正常なヒト肺微小血管内皮細胞(HLMEC)およびヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に対しては、 IgG 29Z6濃度にして最大100g/mlまで毒性が認められなかった。
実施例8:IgG 29Z6とともにインキュベートされた腫瘍細胞のコロニー形成の阻害
細胞増殖のマーカーとしての様々なヒトがん細胞株(MCF-7, BT-474, MDA-MB-231, PANC-1, FaDu)においてコロニー形成を阻害するIgG 29Z6の能力を分析した。 高レベルのHER2を発現することから、SKBR3およびBT474をテストし、したがって、リガンド非依存様式で増殖した。 RPMI培地中の12ウェルプレートに細胞(1ウェル当たり1,000細胞)を播種した。 翌日、2% FCSを含むRPMI培地中で10 μg/mlの濃度の抗HER3抗体(IgG 29Z6)とともに細胞をインキュベートした。7日後、培地を除去し、同濃度で抗体とともに新鮮な培地を添加した。第19日に、10分間室温で細胞を固定し、クリスタルバイオレットで10分間染色した。未処理の細胞(con)を陰性対照として含めた。すべてのインキュベーションを四反復で実施した。 IgG 29Z6に関して、すべての細胞株上でコロニー形成の強力な阻害が認められた。 29Z6抗体がFaDu細胞中でコロニー形成を抑制し(図17)、29Z6抗体がBT-474細胞中でコロニー形成を抑制し(図18)、29Z6抗体がPANC-1細胞中でコロニー形成を抑制し(図19)、29Z6抗体がMCF7細胞中でコロニー形成を抑制し(図20)、29Z6抗体がSK-BR-3細胞中でコロニー形成を抑制する(図21)。
実施例9:29Z6抗HER3モノクローナル抗体に対するインビボ解析
BxPC-3 Lu細胞培養:
10%熱不活性化FBSを添加した1640培地中で、膵臓のBxPC-3Luc腫瘍細胞株を単層培養としてインビトロで5% CO2雰囲気下37℃に維持する。 指数関数的成長期において成長している細胞を採取し、腫瘍接種のために計数する。
BxPC-3 Lu腫瘍接種のための方法:
腫瘍発現のため、各マウスの右脇腹に、血清を含まない1640培地とMatrigelとの混合物(1:1比)0.1ml中の95%生存腫瘍細胞(1 × 107)の単一細胞懸濁液を皮下接種する。平均腫瘍サイズがおおよそ100 mm3に到達してそれより大きくなっていないときに、29Z6抗体(22mg/kg 腹腔内)またはビヒクル(対照)で1週間に2回の処置を開始した。各グループを10匹のマウスで構成した。
BxPC-3 Lu腫瘍測定:
キャリパーを使った腫瘍サイズの測定を週2回実施し、腫瘍容積(mm3) は研究を通して下記式を用いて見積もる:TV = a × b 2/2、ここで、“a”と“b”はそれぞれ腫瘍の長径と短径である。
ヌードマウスで皮下成長したヒトBxPC-3 Luc膵臓がん異種移植モデルを用いて、29Z6は、研究期間中週2回の 22 mg/kg投与で、99%腫瘍成長阻害を観察し、抗腫瘍能を実証した(図22)。

Claims (40)

  1. 配列番号1を含む重鎖可変域または配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を持つアミノ酸配列、および、配列番号2を含む軽鎖可変域を含む、HER3に特異的に結合する単離した抗体またはその抗原結合性フラグメント。
  2. VHが配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を持つアミノ酸配列を含み、VLが配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を持つアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性フラグメント。
  3. VHが配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を持つアミノ酸配列を含み、VLが配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を持つアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性フラグメント。
  4. VHが配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を持つアミノ酸配列を含み、VLが配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を持つアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性フラグメント。
  5. 配列番号1を含むVHおよび配列番号2を含むVLを含む請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性フラグメント。
  6. 前記抗体が、配列番号1を含む重鎖可変域を含む請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性フラグメント。
  7. 前記抗体が、配列番号2を含む軽鎖可変域を含む請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性フラグメント。
  8. 重鎖可変域(VH)をコードする第一のヌクレオチド配列、または軽鎖可変域(VL)をコードする第二のヌクレオチド配列、またはその両方を含む、ヒトHER3に結合可能な抗体分子の核酸分子であって、前記抗体分子が、(a)配列番号3のVH CDR1アミノ酸配列、配列番号4のVH CDR2アミノ酸配列、および、配列番号5のVH CDR3アミノ酸配列を含むVH、ならびに、配列番号6のVL CDR1アミノ酸配列、配列番号7のVL CDR2アミノ酸配列、および配列番号8のVL CDR3アミノ酸配列を含むVLを含む、核酸分子。
  9. 請求項8の核酸分子を含む発現ベクター。
  10. 請求項8の核酸分子を含む単離された宿主細胞。
  11. 遺伝子発現に適した条件下で請求項8に記載の宿主細胞を培養することを含む、抗体分子またはそのフラグメントを産生する方法であって、前記宿主細胞がVHをコードする第一のヌクレオチド配列およびVLをコードする第二のヌクレオチド配列を含む、方法。
  12. 第一のヌクレオチド配列が、配列番号1のアミノ酸配列を含むVHをコードする、およびまたは、第二のヌクレオチド配列が、配列番号2のアミノ酸配列を含むVLをコードする、請求項8に記載の核酸分子。
  13. 請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性フラグメントをコードする配列を含む、単離された核酸分子。
  14. 請求項1に記載の抗体の少なくとも重鎖および軽鎖をコードする配列を含む、単離された核酸分子。
  15. 前記抗体が、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、多重特異性抗体、またはそれらの抗原結合フラグメントであり、当該抗原結合性フラグメントが、Fv、Fab、F(ab’)2、Fab’、dsFv、scFv、またはsc(Fv)2、または、ダイアボディ、ScFv、SMIP、一本鎖抗体、アフィボディ、アビマー、ナノボディ、または単一ドメイン抗体であり、前記抗体またはその抗原結合フラグメントが少なくとも1つの異種薬剤に結合している、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性フラグメント。
  16. 前記抗体が、モノクローナル抗体である請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性フラグメント。
  17. 前記抗体のアイソタイプが、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgD、およびIgE抗体から成る群より選択される、請求項1に記載の抗体。
  18. 前記抗体が、IgG2アイソタイプである、請求項1に記載の抗HER3抗体。
  19. 軽鎖定常域κまたはλを含む請求項1に記載の抗体。
  20. 請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性フラグメントの有効量を被験者に投与することを含む、HER3発現癌を有する被験者を処置するための方法。
  21. 被験者はヒトである請求項20に記載の方法。
  22. 前記被験者がヒトであり、前記HER3発現癌が、乳癌、肺癌、頭頸部癌、前立腺癌、食道癌、気管癌、皮膚癌、脳腫瘍、肝癌、膀胱癌、胃癌、膵癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸癌、精巣癌、結腸癌、大腸癌、または皮膚癌、多発性骨髄腫、消化器癌、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨肉腫、扁平上皮癌、末梢神経鞘腫瘍、腎癌、悪性中皮腫、神経線維腫症、良性前立腺過形成、女性化***、および子宮内膜症からなる群より選択される原発腫瘍または転移性腫瘍である、請求項20に記載の方法。
  23. 前記癌は原発がんまたは転移がんである、請求項20に記載の方法。
  24. 前記肺癌は非小細胞肺癌(NSCL)である、請求項20に記載の方法。
  25. 前記頭頸部癌は扁平上皮癌である、請求項20に記載の方法。
  26. 前記癌は膵癌である、請求項20に記載の方法。
  27. 前記癌は乳癌である、請求項20に記載の方法。
  28. 前記抗ヒトHER3抗体またはフラグメントが、NRG1遺伝子変異癌を阻害する、請求項1に記載の抗体。
  29. 前記抗ヒトHER3抗体またはフラグメントが、(分化抗原群74−ニューレグリン−1)CD74−NRG1融合、(溶質キャリアファミリー3メンバー2−ニューレグリン−1)SLC3A2−NRG1融合、(シンデカン−4−ニューレグリン−1)SDC4−NRG1融合、DOC4−NRG1融合、(Rho関連プロテインキナーゼ1−ニューレグリン−1)ROCK1−NRG1融合、(フォークヘッド ボックスA1−ニューレグリン−1)FOXA1−NRG1融合、(A−キナーゼアンカータンパク質13−ニューレグリン−1)AKAP13−NRG1融合、(トロンボスポンジン1−ニューレグリン−1)THBS1−NRG1融合、(ホスホジエステラーゼ7A−ニューレグリン−1) PDE7A−NRG1融合、(ATPアーゼ Na + / K +輸送サブユニットベータ1−ニューレグリン−1)ATP1B1−NRG1融合、NRG1−PMEPA1融合、クラステリン−NRG1融合のうち、1つまたは複数のNRG1遺伝子変異融合を有する癌を阻害する、請求項1に記載の抗体。
  30. 腫瘍がNRG1遺伝子変異融合について最初にスクリーニングされ、次にNRG1遺伝子変異融合が陽性の患者が、請求項1に記載の抗ヒトHer3抗体で処置される、患者層別化法。
  31. HER3に関連する疾患のある被験者を選択するために、投与前に予測マーカー分析を含む方法を使用することをさらに含む、請求項29に記載の方法。
  32. さらに追加の治療薬を投与することを含む、請求項29に記載の方法。
  33. 前記追加の治療薬が、EGFR阻害剤、HER2阻害剤、HER3阻害剤、HER4阻害剤、mTOR阻害剤、PI3キナーゼ阻害剤からなる群より選択される、請求項29に記載の方法。
  34. 前記追加の治療薬は、マツブマブ(EMD72000)、セツキシマブ、パニツムマブ、mAb 806、ニモツズマブ、ゲフィチニブ、CI-1033(PD183805)、ラパチニブ(GW-572016)、ラパチニブジトシレート、エルロチニブHCL(OSI-774)、PKI-166およびN- [4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ] -7-[[(3 "S")-テトラヒドロ-3-フラニル]オキシ] -6-キナゾリニル] -4(ジメチルアミノ)-2-ブテンアミドからなる群より選択されるEGFR阻害剤;ペルツズマブ、トラスツズマブ、MM-111、ネラチニブ、ラパチニブまたはラパチニブジトシレート/タイカーブ(登録商標)からなる群より選択されるHER2阻害剤;MM-121、MM-111、IB4C3、2DID12(U3ファーマAG)、AMG888(アムジェン)、AV-203(Aveo)、MEHD7945A(ジェネンテック)、MOR10703(ノバルティス)およびHER3を阻害する小分子からなる群より選択されるHER3阻害剤;ならびにHER4阻害剤である、請求項29に記載の方法。
  35. 前記追加の治療薬は、テムシロリムス、リダフォロリムス/デフォロリムス、AP23573、MK8669、エベロリムスからなる群より選択されるmTOR阻害剤である、請求項29に記載の方法。
  36. 前記追加の治療薬は、GDC 0941、BEZ235、BKM120およびBYL719からなる群より選択されるPI3キナーゼ阻害剤である、請求項29に記載の方法。
  37. 前記抗体またはその抗原結合性フラグメントが、造影剤、治療剤または化学療法剤、毒素または放射性核種に結合している、請求項29に記載の方法。
  38. 前記抗体またはその抗原結合性フラグメントが、カリケアマイシン、オーリスタチン-PE、ゲルダナマイシン、マイタンシンおよびこれらの誘導体からなる群より選択される治療薬基または化学療法薬基に結合している、請求項29に記載の方法。
  39. 前記抗体またはその抗原結合性フラグメントが、経口、皮下、静脈注射、腹腔内、筋肉内、脳室内、実質内、くも膜下、頭蓋内、口腔内、粘膜、経鼻および直腸投与からなる群より選択される経路で投与される、請求項1に記載の方法。
  40. 前記抗体またはその抗原結合性フラグメントが、生理学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む医薬組成物に製剤化される、請求項1に記載の方法。
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