JP2021518492A - マーケットパルプを製造するための方法及びシステム並びにその製品 - Google Patents

Abstract

パルプ乾燥前のパルプの処理を含むマーケットパルプを製造するための方法及びシステムが提供される。アニオン荷電性化合物及び酵素は、パルプ乾燥前にパルプを処理するために使用されて、マーケットパルプの製造におけるパルプ脱水性能及び効率を改善する。処理化合物を含むマーケットパルプ製品も記載されている。【選択図】図１

Description

本願は、２０１８年３月１５日付けで出願された先の米国仮特許出願第６２／６４３，２２４号及び２０１８年７月２４日付けで出願された先の米国仮特許出願第６２／７０２，３９５号（それらの内容全体が引用することにより本明細書の一部をなす）の米国特許法第１１９条（ｅ）項に基づく利益を主張するものである。

本発明は、マーケットパルプの製造に関する。より具体的には、パルプ乾燥前に１又は複数のアニオン性界面活性剤若しくは化合物及び１又は複数の酵素によるパルプの処理を含む、マーケットパルプを製造するための方法及びシステムが提供される。

パルプ製造産業では、セルロース含有供給材料は、化学的、機械的、又は両方で解繊されており、次いで、典型的には、洗浄され、そしてそのような操作の後に少なくとも部分的に脱水される。化学的蒸解、漂白、又は他の化学的処理などによってパルプが化学的に処理されるパルプ化プロセスにおいて、脱水は、水を排水し、そして繊維から遊離化学物質を分離するために使用され得る。一部のパルプ工場は、製紙工場と一体化されてもよく、ここで製品パルプの脱水は、スラリーパルプ又はウェットレイドパルプが同じ製造現場で製紙機械に直接進められ得るように制限されてもよい。他のパルプ工場は、非一体型生産操業においてマーケットパルプを生産する。マーケットパルプは、パルプ処理の最終段階において著しく脱水されたパルプ製品であり得る。マーケットパルプはさらに、脱水パルプのベール又はロールに形成されてもよい。マーケットパルプは、後で使用するために他の場所に輸送され得る。

パルプ乾燥前に多様なイオン性化合物を使用するマーケットパルプを製造するための特定のプロセスは、特許文献１に記載されている。特許文献１のプロセスによれば、パルプは、乾燥前にカチオン荷電性化合物及びアニオン荷電性化合物の組み合わせで処理され、より詳細には、該処理は、処理されたパルプ中に高分子電解質複合体を形成するのに有効な少なくとも1つのカチオン性ポリマー及び少なくとも1つのアニオン性ポリマーの組み合わせでパルプを処理することを含む。特許文献２は、マーケットパルプスラリーであってもよい水性セルロースパルプスラリーを脱水する脱水方法であって、ここで１又は複数の非イオン性界面活性剤と１又は複数のアニオン性界面活性剤との混合物が該スラリーに添加される方法を示す。

本研究者らは、マーケットパルプの製造においてパルプ脱水がパルプ工場において達成され得る率が、パルプ工場又は類似の製造施設の全体のライン速度及び製造能力に有意に影響し得ることを認識している。本研究者らは、増強されたパルプ脱水性能及び効率を有するマーケットパルプを製造するための新しい方法及びシステムが必要であることを認識している。

米国特許第８，９１６，０２４号 米国特許第６，７０６，１４４号

本発明の特徴は、脱水性能及び効率を改善することなど、マーケットパルプ又はマーケットパルプを製造するためのプロセスの１又は複数の特性を改善するために、１又は複数のアニオン荷電性化合物による及び１又は複数の酵素によるパルプの処理を伴うマーケットパルプを製造するための方法を提供することである。

本発明の別の特徴は、パルプ排水を改善するために、脱水前にアニオン性界面活性剤（複数の場合もある）及び１又は複数の酵素をパルプに連続的に添加することによってマーケットパルプを製造するための方法を提供することである。

本発明の更なる特徴は、パルプ排水を改善するために、パルプ乾燥前に１又は複数のアニオン荷電性化合物及び１又は複数の酵素を使用することができるマーケットパルプを製造するためのシステムを提供することである。

本発明のさらなる特徴は、パルプ処理方法から１又は複数のアニオン荷電性化合物及び１又は複数の酵素を含有する脱水パルプを含むマーケットパルプを提供することである。

本発明の付加的な特徴及び利点は以下の記載に一部説明され、本明細書から一部明らかであり、又は本発明の実施によって習得され得る。本発明の目的及び他の利点は、本明細書及び添付の特許請求の範囲において具体的に指摘される要素及び組合せを用いて実現及び達成される。

これらの及び他の利点を達成するため、また本明細書において具体化され広く説明される本発明の目的にしたがって、本発明は、１つの実施形態において、セルロース微粒子をパルプに形成すること、パルプに少なくとも１つのアニオン荷電性化合物を添加し、そして少なくとも１つの酵素を添加して処理されたパルプを提供すること、処理されたパルプを機械的に脱水して機械的脱水されたパルプを提供すること、及び機械的に脱水されたパルプを熱乾燥してマーケットパルプを形成することを含む、マーケットパルプの製造方法に関する。

本発明は、さらに、セルロース微粒子をパルプに形成すること、脱水前に該パルプに少なくとも１つのアニオン性界面活性剤を添加し、そして少なくとも１つの酵素を添加すること、該パルプを機械的に脱水すること、及び該脱水されたパルプを熱乾燥してマーケットパルプを形成することを含む、マーケットパルプの製造方法に関する。

本発明は更に、セルロース繊維の供給源、セルロース繊維からパルプを形成するための少なくとも１つのパルプ形成ユニット、アニオン性界面活性剤などの少なくとも１つのアニオン荷電性化合物をパルプに供給するための少なくとも１つの供給装置、少なくとも１つの酵素をパルプに供給するための少なくとも１つの供給装置、パルプから水を機械的に除去するための脱水装置、及びパルプから水を熱的に除去してマーケットパルプを提供するための乾燥機を含むマーケットパルプの製造システムに関する。

本発明はさらに、示された処理方法からの少なくとも１つのアニオン荷電性化合物及び少なくとも１つの酵素を含む脱水されたパルプを含むマーケットパルプに関する。

上記の一般的な説明及び以下の詳細な説明の両方が例示的及び説明的なものに過ぎず、請求項に記載の本発明を更に説明することを意図すると理解されるものとする。

引用することにより本明細書の一部をなす添付の図面は、本発明の実施形態の一部を示すものであり、本明細書とともに本発明の原理を説明するのに役立つ。

図１は、本出願の一例によるマーケットパルプの製造プロセスフローチャートである。 図２は、本出願の一例による漂白パルプ用のパルプ乾燥機を含む、図１のシステムの一部を示す概略図である。 図３は、本出願の一例による図１に示すシステムにおいて使用され得るパルプ乾燥機の概略図である。 図４は、本発明の一例を含む、いくつかの例について、経時的にウェットパルプから除去される水の量（グラム単位）を示すグラフである。 図５は、本発明の一例を含む、いくつかの例について、３回の排水についてウェットパルプから排水量（ｍｌ単位）を示す棒グラフである。

発明の詳細な説明

本発明は、パルプ脱水性能及びその効率及び／又は他の特性を改善するために、１又は複数のアニオン荷電性化合物により及び１又は複数の酵素により処理されたマーケットパルプの製造に関する。本明細書で使用される「マーケットパルプ」は、熱乾燥される機械的に脱水されたパルプを指す。マーケットパルプは、有用な貯蔵安定性を有し、そしてパルプ製品のより嵩高い水性形態よりも容易に出荷及び取り扱いされ得る製品材料の乾燥形態を提供する。マーケットパルプは、他の製造プロセスにおいて使用されるプロセス材料としての後続の使用のために、貯蔵され、輸送され、又はその両方をされ得る。マーケットパルプは、任意に、出荷又は製紙などのさらなる加工のための輸送のためにユニット化された製品として、しっかりと包装され得る。選択肢として、本明細書で参照されるように、マーケットパルプは、アニオン荷電性化合物（複数の場合もある）及び１又は複数の酵素による任意の漂白後かつ最終脱水する前のパルプの処理に本発明の選択肢に従って適合される、改変型のパルプ工場の製品であり得る。

これらの処理添加剤は、脱水性能に、アニオン荷電性化合物及び酵素のいずれかを個別に使用することからは予想されない有意かつ有益な方法で影響を及ぼし、そしていくつかの選択肢では、個々の成分から予想される相加効果を超える可能性がある。アニオン荷電性化合物及び酵素によるパルプの併用処理は、水除去に対して相乗効果を提供することができ、これは、いずれかの処理単独よりもはるかに良好であり、そして予想される相加効果よりもはるかに良好である。パルプ乾燥機上のいくつかのパルプシートの高い坪量は、例えば、良好な排水に対する障害となり得ることが観察されている。パルプ乾燥機での脱水性能の有意な改善は、パルプの併用処理において使用されるアニオン荷電性化合物及び酵素による、蒸解又は他の様式の解繊、及び任意の漂白後、かつパルプ乾燥前の、パルプの処理によるマーケットパルプの製造において提供され得ることが見出された。アニオン荷電性化合物及び酵素（複数の場合もある）の併用によるパルプ乾燥機の前のパルプの処理は、例えば、パルプの自由排水速度を増加させることができる。パルプの自由排水速度を増加させることは、マーケットパルプを製造するためのプロセスの生産速度及び生産能力を増加させることを可能にする。選択肢として、本発明のパルプ処理方法及びシステムは、製紙機械の一部ではなく、一体化もされていない。

いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、酵素は、本発明の方法及びシステムにおいてパルプからの水除去を改善するための他のメカニズムを提供してもよい。繊維の表面は親水性であるため、スラリー中の水の一部は繊維表面に強固に結合しており、そして重力排水によっても、真空の適用によっても、プレスによっても、容易に除去されない。セルラーゼ酵素は、例えば、繊維表面からフィブリルの一部を除去することによって、強く結合した水の量を除去し、これにより水と結合することができる有効表面積を減少させ得る。また、繊維表面はセルロースに加えて、ヘミセルロースからなる。これらのヘミセルロース化合物は、繊維表面に水を結合する可能性が特に高い。ヘミセルラーゼ酵素の使用は、繊維表面からヘミセルロース（例えば、キシラン又はマンナン）の一部を除去し、これにより繊維に対する水の親和性も低減し得る。

アニオン荷電性化合物（複数の場合もある）は、１又は複数のアニオン性化合物であり得、及び／又は１又は複数のアニオン性界面活性剤であり得る。例としては、アルコール硫酸塩、アルコールアルコキシ硫酸塩、スルホン酸塩、スルホコハク酸塩、エトキシル化アルコールとのスルホコハク酸エステル、及びそれらの任意の可溶性塩若しくは分散性塩、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。スルホン酸塩とは、スルホン酸の塩又はエステルを指す。スルホコハク酸塩は、コハク酸塩のスルホン酸誘導体（例えば、スルホコハク酸の塩又はエステル）を指す。それらの塩について、対イオンは、アルカリ金属（例えば、ナトリウム、カリウム）などの金属イオンであり得る。より具体的な例としては、脂肪アルコール硫酸（例えば、Ｃ１２〜１８脂肪アルコール硫酸塩）、アルキルアルコール硫酸塩（例えば、Ｃ１０〜Ｃ１６アルキルアルコール硫酸塩）、エトキシル化アルコール硫酸塩（例えば、エトキシル化Ｃ４〜Ｃ１２アルコール硫酸塩）、スルホン化脂肪酸アルキルエステル、オレフィンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、アルキルベンジルスルホン酸塩、及びジアルキルスルホコハク酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる例としては、ドデシルアルコール硫酸塩、ヘキサデシルアルコール硫酸塩、ドデシルエトキシ硫酸塩、テトラデシルエトキシ硫酸塩、デシルベンゼンスルホン酸塩、テトラデシルベンゼンスルホン酸塩、テトラデシルスルホン酸塩、オクタデシルスルホン酸塩、３−ヒドロキシ−１−ヘキサデカンスルホン酸塩、２−ヘキサデセン−１−スルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩などが挙げられる。アニオン荷電性化合物は、硫酸塩界面活性剤、スルホン酸塩界面活性剤、スルホコハク酸塩界面活性剤、又はそれらの任意の組み合わせであるアニオン性界面活性剤であり得る。

本発明によるパルプを処理するためにアニオン荷電性化合物（複数の場合もある）と共に使用される酵素の酵素成分としては、例えば、セルロース分解活性、ヘミセルロース分解活性、ペクチン分解活性、又はグリコシダーゼ活性を有する酵素を挙げることができる。酵素は、化学結合の加水分解を促進するような、繊維の加水分解に影響を及ぼす活性（例えば、加水分解活性）を有する加水分解酵素であり得る。酵素は、例えば、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、リパーゼ、ペクチナーゼ、セロビアーゼ、キシラナーゼ、プロテアーゼ、マンナナーゼ、β−グルカナーゼ、カルボキシメチルセルラーゼ（ＣＭＣアーゼ）、アミラーゼ、グルコシダーゼ、ガラクトシダーゼ、ラッカーゼ、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。単一のタイプの酵素又は２つ以上の異なるタイプの酵素の組み合わせが、アニオン荷電性化合物（複数の場合もある）と併用され得る。

セルラーゼは一般的に、植物の細胞壁中に存在する線状グルコースポリマーである、セルロースを分解する酵素である。セルラーゼ酵素は、例えば、エンドセルラーゼ、エキソセルラーゼ、セロビアーゼ、酸化セルラーゼ、セルロースホスホリラーゼ、又はそれらの任意の組み合わせなどのセルラーゼであり得る。ヘミセルラーゼ（例えば、キシラナーゼ、アラビナーゼ、マンナナーゼ）は、一般的に、セルロースと同様に、植物に見出される多糖であるヘミセルロースの加水分解に関与する。ペクチナーゼは一般的に、主成分が糖酸である炭水化物であるペクチンの分解に関与する酵素である。β−グルカナーゼはβ−グルカンの加水分解に関与する酵素であり、グルコースの線状ポリマーである点でセルロースにも類似している。

以下の段落は、本発明において単独で又は任意の組み合わせで使用され得る酵素の例を提供する。

使用され得るエンドセルラーゼは、例えば、結合ドメインを有するエンドグルカナーゼ（例えば、ＮＯＶＯＺＹＭ（商標）４７６、Novozymes製）、高セルラーゼユニット富化エンドグルカナーゼ（例えば、ＮＯＶＯＺＹＭ（商標）５１０８１、Novozymes製）、又はそれらの組み合わせ、又は他の公知の若しくは有用なエンドセルラーゼである。

セルラーゼを含有する液体酵素組成物は、Ｃｅｌｌｕｃｌａｓｔ（商標）及びＮｏｖｏｚｙｍ（商標）１８８という商品名で入手可能であり、これらは両方ともNovo Nordiskから供給されている。

Novo Nordiskから入手可能なＰＵＬＰＺＹＭ（商標）製品、及びAlkoBiotechnologyから入手可能なＥＣＯＰＵＬＰ（商標）製品は、キシラナーゼ系漂白酵素を含有する市販の液体酵素組成物の２つの例である。

分類として、ヘミセルラーゼには、ヘミセルラーゼ混合物及びガラクトマンナナーゼが含まれ得る。ヘミセルラーゼを含有する市販の液体酵素組成物は、Novo製のＰＵＬＰＺＹＭ（商標）、Alko Biotechnology製のＥＣＯＰＵＬＰ（商標）、並びにＮｏｖｏｚｙｍ（商標）２８０及びＧａｍａｎａｓｅ（商標）（両方ともNovo Nordiskの製品である）として入手可能である。マンナナーゼは、例えば、エンド- β−マンナナーゼなどのエンド-マンナナーゼであり得る。例えば、遺伝子組み換え微生物を用いて製造され得るタイプ（例えばバシラスタイプ及びトリコデルマタイプ）を含むマンナナーゼ調製物は市販されている。

ペクチナーゼは、エンドポリガラクツロナーゼ、エキソポリガラクツロナーゼ、エンドペクチン酸リアーゼ（トランスエリミナーゼ）、エキソペクチン酸リアーゼ（トランスエリミナーゼ）及びエンドペクチンリアーゼ（トランスエリミナーゼ）を含む。ペクチナーゼを含有する市販の液体酵素組成物は、Ｐｅｃｔｉｎｅｘ（商標）Ｕｌｔｒａ ＳＰ及びＰｅｃｔｉｎｅｘ（商標）＊（両方ともNovo Nordiskから供給されている）という商品名で入手可能である。

β−グルカナーゼは、リケナーゼ、ラミナリナーゼ及びエキソグルカナーゼを含む。β−グルカナーゼを含有する市販の液体酵素組成物は、Ｎｏｖｏｚｙｍ（商標）２３４、Ｃｅｒｅｆｌｏ（商標）、ＢＡＮ、Ｆｉｎｉｚｙｍ（商標）及びＣｅｒｅｍｉｘ（商標）（全てNovoNordiskから供給されている）という商品名で入手可能である。

酵素は、本明細書に示されるような供給業者又は他の供給業者から、既製の調製物として市販されているものであり得る。酵素は、乾燥粉末若しくは顆粒、非粉塵性（non-dusting）顆粒、液体、安定化液体、若しくは安定化保護酵素、又は繊維スラリー若しくは類似の繊維含有材料への添加に好適な他の形態であり得る。液体酵素調製物は例えば、確立されたプロセスに従って、糖、糖アルコール若しくは別のポリオール、及び／又は乳酸若しくは別の有機酸等の安定剤を添加することによって安定化されてもよい。乾燥粉末形態は凍結乾燥してもよく、基質を含む。

酵素及びアニオン荷電性化合物（複数の場合もある）成分は、パルプを処理するために使用される一般的な組成物に予備混合され得、又はそれらは別々に添加され得る。予備混合される場合、液体組成物中に予め処方された酵素は、アニオン荷電性化合物（複数の場合もある）成分と併用される酵素の供給源として使用され得る。セルロース分解酵素組成物は例えば、約５重量％〜約２０重量％の酵素を含有することができる。これらの酵素組成物は、例えば米国特許第５，３５６，８００号（その全体が参照により本明細書に援用される）に記載のように、例えばポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリビニルピロリドン、テトラヒドロフリルアルコール、グリセリン、及び／若しくは水、及び／又は他の従来型の酵素組成物添加剤を更に含有することができる。酵素基質が乾燥粉末形態の酵素と共に存在する場合、基質はパルプ処理又は他の製紙プロセスに悪い作用を起こすか、又はそれらを妨げるものであってはならない。

他の好適な酵素及び酵素含有組成物には、米国特許第５，３５６，８００号、米国特許第４，９２３，５６５号、及び国際公開第９９／４３７８０号に係る国際特許出願（全てその全体が参照により本明細書に援用される）に記載されるようなものが含まれる。他の例示的な製紙パルプ処理酵素は、ＢＵＺＹＭＥ（商標）２５２３及びＢＵＺＹＭＥ（商標）２５２４（両方ともBuckman Laboratories International, Inc.（Memphis,Tenn）から入手可能である）である。

酵素は、例えばパルプの乾燥重量をベースとして約０．０００１重量％〜約５重量％の酵素、又はパルプの乾燥重量をベースとして約０．０００５重量％〜約４．５重量％、又は約０．００１重量％〜約４重量％、又は約０．００５重量％〜約３．５重量％、又は約０．０１重量％〜約３重量％、又は約０．０５重量％〜約２．７５重量％、又は約０．１重量％〜約２．５重量％、又は約０．２重量％〜約１．５重量％、又は約０．００１重量％〜約０．１重量％、又は約０．００５重量％〜約０．５重量％の酵素の量で添加され得るが、他の量が使用され得る。パルプに対する酵素のこれらの添加量は、共通の組成物中の酵素及びアニオン荷電性化合物（複数の場合もある）の前混合物、並びにまたパルプに別々に（同時に又は連続して）酵素及びアニオン荷電性化合物（複数の場合もある）を導入するための本明細書に示される他の添加選択肢の使用に適用され得る。本明細書に記載の酵素の任意の量、百分率又は割合は活性酵素ベースであり得る。例えば、１重量％の酵素として参照される酵素量は１重量％の活性酵素を指し得る。

脱水前にパルプを少なくとも１つのアニオン荷電性化合物及び少なくとも１つの酵素で処理することの組み合わせは、処理されたパルプの排水及び脱水挙動に有益に影響する。少なくとも１つのアニオン荷電性化合物及び少なくとも１つの酵素は、例えば、異なる処理位置で、又は同じ処理位置で別々の時間に、それらの別々の添加によって連続してパルプに添加され得、又はそれらは、少なくとも部分的に同じ処理位置で（例えば、別々の供給物として、又は前混合物として）同時に添加され得る。選択肢として、パルプを脱水する前に、少なくとも１つの酵素をパルプに添加した後、アニオン荷電性化合物の総添加量の少なくとも約８０重量％〜１００重量％を連続して添加することによって、マーケットパルプが製造され得る。このような選択肢において、酵素は、アニオン荷電性化合物と相互作用がなされる前に、パルプ繊維と最初に相互作用する機会が与えられる。この順序に少なくとも１つのアニオン荷電性化合物及び少なくとも１つの酵素を添加することにより、達成され得る脱水性能の増強を拡大することができる。別の選択肢として、酵素がパルプに添加される前に、アニオン荷電性化合物の少なくとも一部又は全部がパルプに添加され得る。本発明により、パルプに、いかなるアニオン荷電性化合物又は酵素も添加せずに、又はアニオン荷電性化合物のみを単独で使用して若しくは酵素を単独で使用して見られるパルプ排水と比較して、マーケットパルプの製造におけるパルプ排水性能は、本発明のプロセスにより１、２、又は３倍以上の倍率などで、有意に増加され得る。さらに、パルプを処理するための、アニオン荷電性化合物のみの単独の使用又は酵素単独の使用と比較して、パルプへの少なくとも１つのアニオン荷電性化合物及び少なくとも１つの酵素を組み合わせた添加によって、排液効率は、約６０％〜約２００％、又は他の増加などにより、有意に増加させられ得る。さらに、パルプを処理するためのアニオン荷電性化合物単独又は酵素の個別の使用から得られる個々の排水速度の合計を超える排水速度が達成され得る。パルプ乾燥機のワイヤーセクションの排水がより良好になると、プレスセクションのパルプの水分を減少させることができ、その結果、乾燥セクションの蒸気消費量が著しく削減され得、省エネルギーを提供することができる。さらに、パルプ乾燥前の本発明による蒸解パルプの処理によって提供されるパルプ脱水の改善は、パルプ工場における速度（rates）又は速度（speeds）の全体にわたってより速いパルプを可能にし、それによってパルプ工場の生産性が増加させられ得る。パルプ脱水の適切な量は、アニオン荷電性化合物を単独で使用する場合に必要に応じて予測され得るものと比較して、減少した総ポリマー添加速度で提供されてもよい。パルプ乾燥前に本発明により処理されたパルプの自由排水特性は、処理されたパルプの、保水値又はＷＲＶなどに関する保水特性と良好な相関を示すことができ、これは、該処理が信頼できる無作為化されていない結果を得ることができることを示す。

選択肢として、マーケットパルプの製造における脱水前に、パルプを少なくとも１つのアニオン荷電性化合物及び少なくとも１つの酵素で処理することの組み合わせは、以下の少なくとも１つを提供するのに有効である：
（i）パルプ中のいかなる処理も受けずに得られる自由排水値よりも、少なくとも７．５％大きい、又は少なくとも１０％大きい、又は少なくとも１５％大きい、又は少なくとも２５％大きい、又は少なくとも５０％大きい、又は少なくとも７５％大きい、又は少なくとも１００％（１倍）大きい、又は少なくとも２００％（２倍）大きい、又は少なくとも３００％（３倍）大きい、又は少なくとも４００％（４倍）大きい、又は少なくとも５００％（５倍）大きい値まで増加したパルプ自由排水（ｇ／９０秒）；
（ii）パルプ中で（酵素なしで）アニオン荷電性化合物（例えば、アニオン性界面活性剤）を個別に使用して得られる自由排水値よりも少なくとも約３％、又は少なくとも約１０％、又は少なくとも約３０％、又は少なくとも約４０％、又は少なくとも約５０％、又は少なくとも約６０％、又は少なくとも約７５％、又は少なくとも約１００％大きい値まで増加したパルプ自由排水；
（iii）パルプ中でアニオン性荷電化合物（例えば、陰イオン性界面活性剤）及び酵素を別々に及び個別に使用して得られる自由排水増加の合計として計算される自由排水値よりも少なくとも約１０％大きい、又は少なくとも約１５％大きい、又は少なくとも約２０％大きい、又は少なくとも約２５％大きい、又は少なくとも約３０％大きい、又は少なくとも約４０％大きい、又は少なくとも約５０％大きい、又は少なくとも約６０％大きい値まで増加したパルプ自由排水；及び
（iv）パルプ中で（酵素なしで）アニオン荷電性化合物（例えば、アニオン性界面活性剤）を個別に使用して得られるＷＲＶよりも少なくとも約１０％少ない、又は少なくとも１５％少ない、又は少なくとも約２０％少ない、又は少なくとも約２５％少ない値まで減少したパルプ保水値（ＷＲＶ）。（i）、（ii）、（iii）、及び（iv）についてのパーセンテージ値を計算する際に、分数の分母値は、アニオン荷電性化合物又は酵素のいずれか一方のみで処理されたパルプ又はいずれも処理されていないパルプについての値に基づいており、そして分子値は、二重処理されたアニオン荷電性化合物／酵素処理されたパルプと、アニオン荷電性化合物／酵素のいずれか一方のみで処理されたパルプ又はいずれも処理されていないパルプとの特性値の差の絶対値である。（i）、（ii）、（iii）、及び（iv）についての水除去測定値は、Ｍｕｔｅｋ ＤＦＲ−０５排水／保水試験機を使用して取得され得る。Ｍｕｔｅｋ ＤＦＲ−０５ Ｄｒａｉｎａｇｅ Ｆｒｅｅｎｅｓｓ Ｒｅｔｅｎｔｉｏｎは、パルプ又は抄紙機において優勢な保水条件及び排水条件をシミュレートする。

本発明のこれら及び／又は他の効果は、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー、又はカチオン性凝集剤などの任意の非イオン性又はカチオン荷電性化合物の処理下で、パルプ中での共添加又は共存を必要とせずに、１又は複数のアニオン荷電性化合物及び１又は複数の酵素でパルプを処理することによって提供され得る。選択肢として、アニオン荷電性化合物及び酵素で処理を受けるパルプスラリーは、非イオン性界面活性剤及び／又はカチオン荷電性化合物を含まない又は本質的に含まないものであり得る。なぜなら、本発明によって得られる有益な効果は、このような非イオン性界面活性剤又はカチオン荷電性化合物の共存に依存しないからである。添加される非イオン性界面活性剤に関して、選択肢として、パルプは、総非イオン性界面活性剤に基づいて、０．１ｋｇ／メトリックトン乾燥繊維未満、又は０．０５ｋｇ／メトリックトン乾燥繊維未満、又は０．０１ｋｇ／メトリックトン乾燥繊維未満、又は０．００１ｋｇ／メトリックトン乾燥繊維未満、又は０．０００１ｋｇ／メトリックトン乾燥繊維未満の非イオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤の非存在下で処理され得る。添加されるカチオン性荷電化合物に関して、選択肢として、パルプは、総カチオン性荷電化合物に基づいて、０．１ｋｇ／メトリックトン乾燥繊維未満、又は０．０５ｋｇ／メトリックトン乾燥繊維未満、又は０．０１ｋｇ／メトリックトン乾燥繊維未満、又は０．００１ｋｇ／メトリックトン乾燥繊維未満、又は０．０００１ｋｇ／メトリックトン乾燥繊維未満のカチオン荷電性化合物（例えば、カチオン性界面活性剤（複数の場合もある）、カチオン性ポリマー（複数の場合もある）、カチオン性凝集剤（複数の場合もある）など）又はカチオン荷電性化合物の非存在下で処理され得る。

本発明の方法は、セルロース系のパルプ化可能な材料、非セルロース系のパルプ化可能な材料、再生紙廃棄物のパルプ化可能な材料、又はそれらの任意の組合せを含むパルプ化可能な材料の脱水を改善するために使用され得る。選択肢として、セルロース系のパルプ化可能な材料は、リグノセルロース系であり得る。本発明の方法及びシステムによるパルプ処理による排水及び脱水の改善は、特定のタイプのパルプを処理することに限定されず、そして全てのグレードのパルプにおいて適用することができる。処理可能なパルプは、化学パルプ、機械パルプ、又はこれらのタイプのパルプの組み合わせであり得る。選択肢として、処理可能なパルプは、少なくとも部分的に化学パルプである。処理可能なパルプは、処理されたときに漂白され又は未漂白にされ得る。処理可能なパルプは、例えば、クラフトパルプ、溶解パルプ、フラッフパルプ、セミケミカルパルプ（例えば、漂白化学熱機械パルプ又はＢＣＴＭＰ）、亜硫酸パルプ、ソーダパルプ、オルガノソルブパルプ、ポリスルフィドパルプ、又は他のパルプ、及びそれらの任意の組み合わせを含むことができる。供給原料の解繊のみのためのディスク又は円錐形リファイナーの使用などによって機械的にのみ解繊されたパルプなどの非化学的機械パルプも、示されたパルプ処理で処理され得る。

本明細書中で使用される「乾燥パルプ」は、空気に曝されるように十分に脱水されかつ懸濁されずかつ水性媒体中に浸漬されない、置かれ（laid）、積み重ねられ（stacked）、堆積され（piled）、又は他の方法で物理的に蓄積されたパルプを指す。

「アニオン荷電性化合物」は、水溶液中で分子上に正味の負電荷を有する化合物を指す。アニオン荷電性化合物は有機又は無機であり得る。「有機」は、少なくとも1つのＣ−Ｈ結合を含有する化合物を指す。

「酵素」は、化学反応を触媒することができるタンパク質を指す。

「界面活性剤」は、液体の表面張力、２つの液体間の界面張力、又は液体と固体との間の界面張力を低下させることができる有機化合物を指す。

「アニオン性界面活性剤」は、水溶液中の分子上に正味の負電荷を有する界面活性剤を指す。したがって、アニオン性界面活性剤は、その上に荷電基としてアニオン部分のみを有することができ、又は分子全体に対して正味のアニオン電荷を有する両性であってもよい。

「非イオン性化合物」は、両親媒性であり、そしてそのいずれの末端基にも荷電基を有さない化合物を指す。

「非イオン性界面活性剤」は、両親媒性であり、そしてそのいずれの末端基にも荷電基を有さない界面活性剤を指す。

「カチオン荷電性化合物」は、水溶液中の分子上に正味の正電荷をもつ化合物を指す。カチオン荷電性化合物は、有機又は無機であり得る。

「カチオン性界面活性剤」は、水溶液中の分子上に正味の正電荷を有する界面活性剤を指す。したがって、カチオン性界面活性剤は、その上に荷電基としてカチオン部分のみを有することができ、又は分子全体に対して正味のカチオン電荷を有する両性であってもよい。

「カチオン性ポリマー」は、水溶液中の分子上に正味の正電荷を有するポリマーを指す。したがって、カチオン性ポリマーは、その上に荷電基としてカチオン部分のみを有することができ、又は分子全体に対して正味のカチオン電荷を有する両性であってもよい。

「クラフトパルプ」は、硫酸塩法により木材を蒸解して製造される化学木材パルプを指す。

「フラッフパルプ」は、使い捨ておむつ、ベッドパッド、及び他の衛生的な個人製品における吸収媒体として使用される、通常漂白された、化学パルプ、機械パルプ又は化学／機械パルプの組み合わせを指す。フラッフパルプは、「毛羽立ち」パルプ又は「粉砕」パルプとしても知られる。

「溶解パルプ」は、レーヨン及び酢酸塩を含むセルロース誘導体に加工するために製造される、より高純度の特級パルプを指す。

「漂白化学熱機械パルプ」又は「ＢＣＴＭＰ」は、漂白ＣＴＭＰを指す。「ＣＴＭＰ」は、機械的解繊前に木材チップを薬品（例えば、亜硫酸ナトリウム）及び蒸気で処理することによって製造される化学機械パルプを指す。

「ユニット化」は、複数のマーケット繊維が、取り扱いのために単一の単体製品として、一緒に束ねられ又はパッケージングされ得るプロセスを指す。

「解繊」は、機械的手段、化学的手段、又は両方の組み合わせによる木材繊維の分離を指す。

第一に図１を参照すると、木材チップ、又は他の粉砕セルロース系若しくは非セルロース系繊維材料が、ライン１０により連続蒸解釜１２又は１つ若しくは数個のバッチ蒸解釜に供給され、ここでパルプはライン１４によりそれに供給されるパルプ化液のパルプ化作用に供される。この選択肢は、例えば、バージンリグノセルロース系繊維材料に適用されるクラフトプロセスを特に参照して記載され得、ここで蒸解されそして任意に漂白されたパルプは、クラフトパルプが乾燥されそしてユニット化される前に、アニオン荷電性化合物又は界面活性剤及び酵素で処理される。本発明はまた、パルプが乾燥される前に、アニオン荷電性化合物又は界面活性剤及び酵素によるパルプの処理を考慮して、適切な改変を伴う他のパルプ化手順に適用可能であることが理解されるであろう。選択肢として、クラフト法において、活性パルプ化薬品は、白液としても知られる水酸化ナトリウム及び硫化ナトリウムであり得、そしてこれらの薬品は、ライン１４によって供給されるパルプ化液に含有され得る。蒸解釜は、バッチ式又は連続式で運転することができる。適用可能であるバッチ蒸解釜及び連続蒸解釜の両方の蒸煮プロセスの一般的に知られているバリエーションがある。連続式蒸解釜では、例えば、木材チップ又は他の粒子状供給原材料が、材料が反応器から出る時間までにパルプ化反応が完了することを可能にする速度で供給され得る。選択肢として、脱リグニンは、例えば、約１００℃〜約２００℃（２６６°Ｆ〜３５６°Ｆ）などで、数時間での蒸煮、又は蒸解に使用される供給原料及び蒸解薬品に適した他の温度及び蒸煮時間条件を必要としてもよい。典型的には、完成した蒸煮済み木材チップは、大気圧まで減圧することによってブローされる。これにより、蒸気や揮発性物質が放出される。選択肢として、蒸解後、残留使用済みパルプ化液を含有する、得られた蒸煮済み木材パルプは、ライン１６によって褐色ストック洗浄ゾーン１８まで通過することができる。洗浄ゾーン１８は、同伴された使用済みパルプ化液を含まない蒸解済みチップを洗浄し、そして不要な材料をスクリーニングするために使用され得る。パルプ化後のパルプのスクリーニングは、パルプが大きなシーブ、ノット、ダート及び他のデブリから分離されるプロセスであり得る。「アクセプト」は、本発明によりさらに処理され得るパルプであり、そしてパルプから分離された材料は「リジェクト」である。ブローイングからの褐色のストックは、使用済みの蒸解液がセルロース繊維から分離される洗浄段階に進むことができる。典型的には、パルプ工場は、連続して複数の洗浄段階を有してもよい。使用済みパルプ化液、又は黒液１５は、従来の方法に従って操作され得る回収及び再生ゾーン（図示せず）に供給されてもよい。

選択肢として、ライン１６中のパルプは、例えば、ライン１８による褐色ストック洗浄ゾーン１７からの未漂白パルプ１９の排出前に、洗浄機及びスクリーンを連続的に通過することなどにより、褐色ストック洗浄ゾーン１７において洗浄に供され得る。選択肢として、得られた漂白パルプがパルプ乾燥機２４で乾燥されてマーケットパルプ２６を提供する前に、未漂白パルプが漂白プラント２２で漂白され得る。漂白の選択肢において、未漂白パルプ１９は、ライン２０を通って漂白プラント２２に供給される。選択肢として、蒸解釜洗浄ユニットを出たパルプは、漂白することが望まれる残留リグニン含有量による暗褐色を保持してもよく、これは意図される最終用途に依存し得る。漂白される場合、従来の漂白プロセスがパルプに使用され得る。選択肢として、漂白プラント２２において、パルプは、１つ又は複数の漂白、苛性抽出、及び洗浄操作に供され得、これは、増加した明度の更なる脱リグニン及び漂白パルプをもたらし得る。漂白処理薬品は、例えば、酸素ガス、オゾン、二酸化塩素、塩素、過酸化物、抽出工程のための純粋な酸若しくは適切なアルカリ、又はこれらの混合物、場合によっては他の漂白薬品又は添加剤であり得る。例えば、二酸化塩素及び苛性抽出タワーの対、それに続くパルプ洗浄段階が漂白に使用されてもよく、又は他の従来のパルプ漂白装置（pulp bleaching arrangements）がパルプに適用されてもよい。

漂白パルプは、パルプ乾燥機２４への移動のためにライン２３によって漂白プラント２２から排出され得る。別の選択肢として、図１のライン２１によって示されるように、未漂白パルプは、パルプの漂白を介在させることなく、洗浄ゾーン１７からパルプ乾燥機２４に直接供給され得る。例えば、箱や包装のための茶色の袋用紙やライナーボードを作るためにパルプを製造するように設計されたプラントなどの場合、パルプは、高輝度に漂白する必要がない場合がある。パルプ乾燥機２４は、漂白又は未漂白パルプを脱水及び熱乾燥させて、マーケットパルプであるライン２５中の乾燥パルプを提供することができる。パルプ乾燥機２４は、例えば、機械的脱水セクション及び熱乾燥セクションを含むことができ、これらは、本明細書中の他の図に関してさらなる詳細及び図で説明される。マーケットパルプ２６は、例えば、連続的に乾燥されたパルプシートの形態、又はパルプ乾燥機２４から排出される他の乾燥された形態のパルプであり得る。

選択肢として、パルプがパルプ乾燥機２４中で脱水及び乾燥される前に、パルプを処理するために、少なくとも１つのアニオン荷電性化合物及び少なくとも１つの酵素が添加される。選択肢として、酵素が供給ライン２７でパルプに添加され得、そしてアニオン荷電性化合物がパルプ乾燥機２４の注入口側の供給ライン２８で添加され得る。乾燥機２４の前に少なくとも１つのアニオン荷電性化合物及び少なくとも１つの酵素をパルプに添加することにより、乾燥機２４での脱水性能を改善することができる。選択肢として、漂白パルプについて、少なくとも１つのアニオン荷電性化合物及び少なくとも１つの酵素が、漂白プラント２２の後かつ乾燥機２４の前のどこでもパルプに添加され得る。別の選択肢として、未漂白パルプについて、少なくとも１つのアニオン荷電性化合物及び少なくとも１つの酵素が、蒸解釜１２の後かつ乾燥機２４の前のどこでもパルプに添加され得る。選択肢として、アニオン荷電性化合物は、パルプへの酵素の添加以降に、パルプに添加される。選択肢として、アニオン荷電性化合物は、酵素の添加時間と部分的に重複することができる時間に、パルプに添加される。選択肢として、全量の酵素は、パルプへの全量のアニオン荷電性化合物の添加の前に、パルプに添加される。選択肢として、総重量の、約８０重量％〜１００重量％、又は約８５重量％〜１００重量％、又は約９０重量％〜１００重量％、又は約９５重量％〜１００重量％の酵素が、パルプへのアニオン荷電性化合物の最も早い添加の前にパルプに添加される。乾燥機の前のパルプへの示された処理化合物の添加に関するさらなる詳細及び図は、本明細書中の他の図の議論において提供される。

パルプ乾燥機２４から排出されるマーケットパルプ２６は、任意に、１または複数のステーション２９でユニット化され得る。選択肢として、マーケットパルプをユニット化するために、パルプ乾燥機からの乾燥パルプは、ベール又はロール、又はパルプ繊維の他の固定可能な大規模ユニットに形成される。マーケットパルプのユニット化の様式は、乾燥パルプ繊維のベール、ロール又は他の束が、輸送及び取り扱いのための単一の単体製品として一緒に固定される限り、必ずしも限定されない。選択肢として、ベール又はロールに形成され得るパルプ乾燥機によって連続乾燥パルプシートが製造され得る。選択肢として、パルプ乾燥機で形成された連続乾燥パルプシートは、断片に切断され、そしてベールに積み重ねられ得る。パルプベールは、貯蔵及び輸送のために、圧縮され、包装され、そして強固に結束され得る。シート状のベール及び気流乾燥ベールの両方は、取り扱い及び輸送のためにユニット化され得る。選択肢として、ユニット化は、乾燥パルプのカットシートのワイヤー又はストラップ結束ベール、又は乾燥パルプのワイヤー又はストラップ結束気流乾燥ベールを含むことができる。例えば、選択肢として、約７〜９ベールのユニットが、６〜９本の重いスチールワイヤーで強固にワイヤー結束され得る。乾燥パルプのユニット化されたシート状のベール又は気流乾燥ベールは、ユニット化されたマーケットパルプを提供する。シート状のベールは、約２５０ｋｇの重量又は他の重量を有してもよく、これは、約２７〜３２インチの幅、３５〜３７インチの長さ、及び１７〜１８インチの高さ、又は他の寸法であってもよい。重さが約１９５〜約２００ｋｇ、又は他の重量であってもよい、より低密度にプレスされた気流乾燥ベールも提供されてもよい。乾燥パルプの他のサイズ及び重量のベールがユニット化されてもよい。別の選択肢として、示されるように、マーケットパルプは、ロール又はリールとしてユニット化され得る。例えば、幅約７〜約５５インチ及び直径約５８〜６０インチ、又は他の寸法であってもよいマーケットパルプのロールが形成され得る。パルプのロールは、任意に、取り外し可能なカバーシート、ワイヤー若しくはストラップ結束、又はその両方で包装され得る。選択肢として、マーケットパルプは、マーケットパルプが製造されるパルプ工場に関してオンサイト又はオフサイトである製紙工場に、非ユニット化又はユニット化形態で貯蔵及び／又は輸送され得る。マーケットパルプは、製紙加工又は他の用途のために乾燥したパルプを再スラリー化することなどによって、製紙に使用され得る。

図２は、本発明の選択肢による漂白パルプ乾燥機２２４及び関連するパルプ供給及び前処理システムの一部に関するさらなる詳細を示す。漂白パルプは、漂白プラントにおける１又は複数の漂白タワー２２２Ａ、２２２Ｂ（例えば、図１の漂白プラント２２）から抜き取られ、そしてライン２２３を通じてサージチェスト２２７へ、そしてそこから機械チェスト２２９へと送られる。漂白されたパルプは、実質的に均一な分散が達成されるまで、サージチェスト２２７内で混合され得る。サージチェスト２２７内の漂白パルプは、機械チェスト２２９に送られ得る。機械チェスト２２９は、チェストに入るコンシステンシーの変動が一般的に公知の方法で平準化されることを可能にするのに十分であり得る保持時間をパルプに提供するコンシステンシーレベリングチェストであり得る。機械チェスト２２９のパルプ内容物は、機械チェストポンプ２３１を介してパルプ乾燥機セクション２２４に供給され得る。

パルプ乾燥機セクション２２４は、機械的脱水セクション２２４Ａ及び感熱乾燥セクション（本図には示されていない）を備えることができる。これらのセクションのうち、機械的脱水セクション２２４Ａの一部のみが、本セクション及び本明細書の他の図の議論で提供されるその他のその後の処理セクションに関する追加情報とともに図２に示される。選択肢として、機械チェストポンプ２３１からポンプ輸送されたパルプは混合され、そして白水サイロ２０１からの白水２３３で希釈されて、希釈されたパルプ２２６の流れを形成し得る。パルプ２２６は、ポンプ２０３によってセントリスクリーン２３５を通ってヘッドボックス２０５にポンプ輸送され、そこからパルプが噴霧されるか、又は他の方法でワイヤー２０７上に堆積される。選択肢として、ポンプ２０３は、ファンポンプとして知られる遠心ポンプであり得る。ワイヤ２０７上に収集されたパルプ２０８は、工程水のさらなる脱水のために、ウェットプレス（図示せず）上に進められ、次いで、熱乾燥及びユニット化され、これらは、本明細書中の他の図に関してより詳細に説明される。選択肢として、白水サイロ２０１は、図２に示されるようなライン２０６及び２３３及びサイロ２０１を含む一部の白水再循環ループを形成することができ、これは、パルプ乾燥機２２４の機械的脱水セクション２２４Ａと一体化される。例えば、ワイヤー２０７から排出される本明細書において白水とも呼ばれる濾液２０６は、未加工パルプと組み合わされた白水２３３として再使用するために、白水サイロ２０１に再循環されて、パルプ２２６の組み合わされた流れを形成することができる。

パルプ２２６の処理は、得られた処理された２３６パルプがヘッドボックス２０５及びライン２０７に到達する前に、少なくとも１つのアニオン荷電性化合物及び少なくとも１つの酵素の各々について１又は複数の導入点を含むことができる。選択肢として、アニオン荷電性化合物は、図２に示されるように、酵素の前にパルプに添加される。例えば、酵素は、供給装置２０２を用いてファンポンプ２０３の入口側に添加され得、そしてアニオン荷電性化合物は、供給装置２０４を使用してファンポンプ２０３の吐出側に添加され得る。選択肢として、少なくとも１つのアニオン荷電性化合物及び少なくとも１つの酵素のこの一連の添加は、機械的脱水セクション２２４Ａの漂白タワー２２２Ａ、２２２Ｂ及びヘッドボックス２０５の間の他の場所に提供され得る。示されるように、ワイヤー２０７上に収集されたような処理されたパルプから形成されたウェット繊維シートは、機械的脱水セクションの一部として、さらに排水され、そして機械的にプレスされ得、次いで、スクリーニングされ、そしてプレスされたパルプは、得られた乾燥されたパルプが１または複数のユニット化ステーションに運搬される前に、熱乾燥され得る。

図３を参照すると、選択肢として、蒸解され、そして任意に漂白されたパルプスラリー３２３は、白水サイロ３０６からの白水と組み合わされ、そして得られた希釈されたパルプ３２６は、ファンポンプ３０３を介してヘッドボックス３０５にポンプ輸送され得る。選択肢として、供給（supply）及び供給（feeding）装置３０２からの酵素は、ポンプ３０３の入口側でパルプ３２６に添加され得、そして供給及び供給装置３０４からのアニオン荷電性化合物は、ファンポンプ３０３の出口側で添加され得る。少なくとも１つのアニオン荷電性化合物及び少なくとも１つの酵素は、パルプがファンポンプのポンプ作用によってヘッドボックスに向けて供給される間、及び脱水のためにヘッドボックスからワイヤー又はスクリーン上に排出される前に、パルプ繊維及び内容物と相互作用することができる。少なくとも１つのアニオン荷電性化合物及び少なくとも１つの酵素は、少なくとも１つのアニオン荷電性化合物及び少なくとも１つの酵素を含まない同じパルプ、又は少なくとも１つのアニオン荷電性化合物及び少なくとも１つの酵素のうちの１つのみで処理されたパルプと比較して、ワイヤー上のパルプの排水効率及び脱水効率を有意に改善するのに十分なパルプ繊維と相互作用することができる。

ヘッドボックス３０５から、パルプがワイヤー３０７上に噴霧され得、そこでパルプスラリーが脱水され、そしてパルプ繊維のウェットシートを形成する。選択肢として、パルプは、固形分０．１重量％〜５重量％、又は固形分約０．５％重量％〜約３重量％、又は固形分約１重量％〜約２．５重量％の間のコンシステンシーでヘッドボックスに供給され得る。ヘッドボックス３０５に供給される処理されたパルプのｐＨは、例えば、約４〜約９、又は約４．５〜約８．０であり得、そして所望又は必要に応じて、ｐＨ調整剤を添加してこれらの範囲内に制御され得る。選択肢として、パルプは、流れが着水し、そしてワイヤー３０７上に広がるスライスと呼ばれる調節可能な高さの長方形の開口部を通ってヘッドボックス３０５から出ることができる。ワイヤーは、ループ状に進む孔のある連続した金属スクリーン又はプラスチックメッシュであってもよい。ワイヤは、例えば、フラットワイヤー長網抄紙機（Fourdrinier）、ツインワイヤーフォーマー、又はこれらの任意の組合せであり得る。低真空ボックス及びサクションボックスが従来の方法でワイヤーとともに使用されてもよい。選択肢として、ワイヤー上の脱水後のパルプのシートコンシステンシーは、例えば、固形分％、又は他の値を基準として、約２重量％〜約３５重量％、又は約１０重量％〜約３０重量％であってもよい。パルプを脱水するための従来のワイヤー又はスクリーン装置は、本発明の方法及びシステムにおいて使用するために適合されてもよい。ワイヤー３０７を通って抜き取られ、そして排出される、本明細書において白水とも呼ばれる濾液部分３０６は、示されるように、白水サイロ３０１に再循環され得、次いで、得られる希釈されたパルプ３２６がヘッドボックス３０５にポンプ輸送される前に、未加工パルプ３２３と組み合わせられ得る。

ワイヤー３０７上に収集されたパルプ３０８は、ウェットプレスセクション３０９に向かって通され得る。追加の水は、ウェットプレスセクション３０９でプレスされ、そしてパルプ３０８から真空引きされ得る。選択肢として、プレスセクション３０９は、パルプシートを支持し、そしてプレスされた水を吸収することができるプレスフェルトの補助により、互いに圧接するロールによって形成されるニップ方式で、パルプから水を除去することができる。Ｕｈｌｅボックスのような真空ボックスは、任意に使用されて、例えば、水分を除去するためにプレスフェルトに真空を適用し、フェルトが次のサイクルでニップに戻ったときに、それがシートに水分を加えないようにすることができる。選択肢として、パルプシートは、パルプシートの繊維コンシステンシーが約４０重量％〜約５０重量％になるまで水及び空気を搾り出す一連の回転ロール（「プレス」）に通され得る。選択肢として、プレスパルプは、プレス後に約５０％までの固形分、又は約２０％〜約４５％の固形分、又は他の値を含むことができる。

スクリーニングされ、そしてプレスされたパルプ３１０は、蒸発乾燥のために熱乾燥機セクション３１１に移動され得る。熱は、熱乾燥機セクション３１１で使用されて、蒸発などによって追加の水を除去することができる。選択肢として、パルプ３１０は、熱乾燥機セクション３１１において、６０℃〜１２７℃（１４０°Ｆ〜２６０°Ｆ）の範囲の温度で乾燥されて、より多くの水を除去することができる。選択肢として、熱乾燥機は、例えば、パルプが加熱されたシリンダー上を前進するにつれてパルプの水分を蒸発させる一連の内部蒸気加熱されたシリンダーを有することができる。選択肢として、プレスされたパルプシートは、コンシステンシーが約８０重量％〜約９７重量％のコンシステンシー、又は約８５重量％〜約９５重量％、又は他の値になるまで、熱風乾燥機の多層配列を通して浮遊させられ得る。選択肢として、パルプ乾燥機から出る乾燥パルプは、約２０重量％未満、又は約１５重量％未満、又は約１０重量％未満、又は約５重量％〜約２０重量％、又は約５重量％〜約１０重量％の絶対含水率（すなわち、パルプの総重量に基づく総H₂O含有量）を有する。例えば、１２総重量部の水（全形態）及び１００重量部の乾燥パルプ繊維を含有する乾燥パルプは、１０重量％の絶対含水率（すなわち、１２／（１２＋１００）＊１００）を有する。

熱乾燥機３１１から出る乾燥パルプ３２５は、マーケットパルプ３２６である。選択肢として、熱乾燥によって提供されるマーケットパルプ３２６は、連続乾燥パルプシートの形態であり得る。マーケットパルプ３２６は、図１のように１または複数のステーション３２７で任意にユニット化されて、ユニット化されたマーケットパルプ３２９（例えば、ベール、ロール、又は他の形態）を得ることができる。

選択肢として、脱水性能を改善するためにパルプを処理するために使用される、示された少なくとも１つのアニオン荷電性化合物及び少なくとも１つの酵素は、水溶性化合物又は水分散性化合物であり得る。

選択肢として、ポリリン酸塩、アニオン性シリカゾル、又はそれらの任意の組み合わせなどの無機アニオン性凝集剤が使用され得る。

選択肢として、少なくとも1つのアニオン荷電性化合物は、本発明のプロセスにおいて、例えば、図示されるようなパルプ乾燥機付近又は任意の漂白後かつパルプ乾燥機の前の他の場所において、約０．１ポンド〜約１０ポンド（ｌｂ．）アニオン荷電性化合物／トン乾燥繊維、又は約０．２〜約８ポンド荷電性化合物／トン乾燥繊維、又は約０．３〜約４ポンドアニオン荷電性化合物／トン乾燥繊維、又は約０．５〜約３ポンドアニオン荷電性化合物／トン乾燥繊維（固形分／固形分ベースで）の量で、パルプに添加され得る。

酵素は、約０．００１〜約２ポンド（ｌｂ．）活性酵素／トン乾燥繊維、又は約０．０１〜約１．５ポンド／トン乾燥繊維、又は約０．１〜約１ポンド／トン乾燥繊維の量、又は他の量でパルプに添加され得る。

選択肢として、少なくとも1つのアニオン荷電性化合物及び少なくとも1つの酵素は、約０．２ポンド／トン乾燥繊維〜約１２ポンド／トン乾燥繊維、又は約０．４〜約１０ポンド／トン乾燥繊維、又は約０．６〜約８ポンド／トン乾燥繊維、又は約１〜約６ポンド／トン乾燥繊維（固形分／固形分ベースで）、又は他の値の総量でパルプに添加され得る。選択肢として、少なくとも１つのアニオン性化合物及び少なくとも１つの酵素は、約１０，０００：１〜１：１０、又は約１０００：１〜約１：５、又は約１００：１〜約１：１、又は約１０：１〜約２：１、又は他の比の重量比（ｗ：ｗ）でパルプに添加され得る。

本発明におけるマーケットパルプの製造に使用するのに適した木材チップは、広葉樹種、針葉樹種、又はそれらの組み合わせの由来であり得る。針葉樹種としては、Ｄｏｕｇｌａｓ ｆｉｒ（ダグラスファー）及びｂａｌｓａｍ ｆｉｒ（バルサムファー）などのモミ、Ｅａｓｔｅｒｎ ｗｈｉｔｅ ｐｉｎｅ（イースタンホワイトパイン）及びＬｏｂｌｏｌｌｙ ｐｉｎｅ（テーダマツ）などのマツ、Ｗｈｉｔｅ ｓｐｒｕｃｅ（ホワイトスプルース）などのトウヒ、Ｅａｓｔｅｒｎ ｌａｒｃｈ（イースタンラーチ）などのカラマツ、スギ、及びＥａｓｔｅｒｎ ｈｅｍｌｏｃｋ（イースタンヘムロック）及びＷｅｓｔｅｒｎ ｈｅｍｌｏｃｋ（ウェスタンヘムロック）などのヘムロックが挙げられるが、これらに限定されない。広葉樹種の例としては、アカシア、ｒｅｄ ａｌｄｅｒ（レッドアルダー）及びＥｕｒｏｐｅａｎ ｂｌａｃｋ ａｌｄｅｒ（ヨーロピアンブラックアルダー）などのハンノキ、ｑｕａｋｉｎｇ ａｓｐｅｎ（アメリカヤマナラシ）などのヤマナラシ、ブナ、カバノキ、ｗｈｉｔｅ ｏａｋ（ホワイトオーク）などのオーク、ｅｕｃａｌｙｐｔｕｓ ｇｕｍ（ユーカリゴム）及びｓｗｅｅｔ ｇｕｍ（モミジバフウ）などのゴムの木、ｂａｌｓａｍ ｐｏｐｌａｒ（バルサムポプラ）、Ｅａｓｔｅｒｎ ｃｏｔｔｏｎｗｏｏｄ（イースタンコットンウッド）、ｂｌａｃｋ ｃｏｔｔｏｎｗｏｏｄ（ブラックコットンウッド）及びｙｅｌｌｏｗ ｐｏｐｌａｒ（イエローポプラ）などのポプラ、ｓｕｇａｒ ｍａｐｌｅ（サトウカエデ）、ｒｅｄ ｍａｐｌｅ（レッドメープル）、ｓｉｌｖｅｒ ｍａｐｌｅ（シルバーメープル）及びｂｉｇ ｌｅａｆ ｍａｐｌｅ（ビッグリーフメープル）などのカエデが挙げられるが、これらに限定されない。これらのタイプの木材は、個別に、又はそれらの任意の組み合わせで使用され得る。選択肢として、ヘムロック及びコットンウッド微粒子の組み合わせが使用され得る。選択肢として、パルプ化される木材チップには、少なくとも５０重量％〜１００重量％のバージン木材などのバージン木材が含まれる。選択肢として、使用後の廃棄物からのリサイクル繊維などのリサイクル繊維材料、又は草、農業残渣、竹、靱皮材（例えば、ラミー、アマ、麻）などの非木材、又はそれらの任意の組み合わせなど、他のパルプ化可能な材料は、使用されてもよく又は供給原料に含まれてもよい。

少なくとも１つのアニオン荷電性化合物及び少なくとも１つの酵素に加えて、パルプは、処理されたパルプの脱水性能を改善するために、少なくとも１つのアニオン荷電性化合物及び少なくとも１つの酵素の示された機能を妨害しない限り、マーケットパルプ製造システム内で１又は複数の任意の添加剤で処理されてもよい。本発明と併せて使用され得る任意の化学添加剤のリストとしては、例えば、ｐＨ調整剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、柔軟剤、剥離剤、吸着剤、サイズ剤、色素、蛍光増白剤、化学トレーサー、乳白剤、ドライヤー接着薬品（dryer adhesive chemicals）等が挙げられる。追加の任意の化学添加剤は、例えば、顔料、エモリエント、湿潤剤、殺ウイルス剤、殺菌剤、緩衝剤、ワックス、フルオロポリマー、臭気制御材料及び消臭剤、ゼオライト、香料、植物油及び鉱油、ポリシロキサン化合物、他の界面活性剤、保湿剤、紫外線遮断剤、抗生物質製剤、ローション、防カビ剤、防腐剤、アロエベラ抽出物、ビタミンＥ等を含んでもよい。適切な任意の化学添加剤は、パルプ繊維によって保持され得、そして水溶性又は水分散性であってもなくてもよい。示されるように、カチオン荷電性化合物は、脱水性能の改善を得るために、少なくとも１つのアニオン荷電性化合物及び少なくとも１つの酵素を使用する本発明のパルプ処理において、追加で添加される又は存在する必要はない。

示されるように、少なくとも１つのアニオン荷電性化合物と少なくとも１つの酵素とのパルプの併用処理は、いずれかの単一の化学処理を使用する場合よりも有意に高い脱水性能を提供することができる。いくつかの選択肢では、保水性と自由排水との相関は、イオン荷電化合物タイプ及び適用プロセスによって変化し得ますが、自由排水は、一般的に、保水性と良好な相関を示すことができる。いくつかの選択肢において、パルプ中のイオン荷電性化合物の投与量を増やすと、ＷＲＶをわずかに減少させ、そして脱水を増加させることができ、ここで、投与量を徐々に増やすと、改善は、最終的にピーク又は横ばいになり得る。

示された処理方法からのパルプ繊維に少なくとも部分的に保持された少なくとも１つのアニオン荷電性化合物及び少なくとも１つの酵素を有するマーケットパルプ又はユニット化パルプを含むマーケットパルプ製品が提供され得る。本発明によるプロセスで製造されるマーケットパルプは、例えば、約０．００１〜約５ポンド（ｌｂ．）アニオン荷電性化合物／トン乾燥繊維、又は約０．０１〜約３ポンドアニオン荷電性化合物／トン乾燥繊維、又は約０．１〜約２ポンドアニオン荷電性化合物／トン乾燥繊維、又は約０．２〜約１ポンドアニオン荷電性化合物／トン乾燥繊維（固形分／固形分ベースで）を含有することができ、そして酵素は、約０．０００００１ポンド〜約１ポンド／トン乾燥繊維又は約０．００００１ポンド〜約０．１ポンド／トン乾燥繊維の量でマーケットパルプに含有され得る。

マーケットパルプが製造される産業状況では、大規模な蒸気作動乾燥機を構築するための多額の設備投資が通常必要とされる。それが所定位置にあると、パルプから水を除去するために大量のエネルギーが必要とされる。本発明によって提供され得るように、繊維パッドからの水除去の改善は、いくつかの方法で製造者に利益をもたらすためにレバレッジされ得る。水分の少ないシートが乾燥機に入ると、シートを出荷され得るところまで乾燥させるのに必要な蒸気が少なくてすむ。同時に、代替案は、蒸気使用量の削減を制限し、そして代わりに機械を高速化することである。次いで、利点は、本発明によって提供され得る生産の増加である。

本発明は以下の実施例によりさらに明らかにされるが、これらは本発明を純粋に例示するものであることが意図される。本明細書で使用される量、パーセンテージ、比率等は全て他に特に規定がなければ重量基準とする。

実施例１：
アニオン性界面活性剤単独、酵素単独、及びパルプに添加されたそれらの組み合わせ、ならびに異なる酵素とのアニオン性界面活性剤の別々の組み合わせを使用して処理されたパルプの排水と、未処理パルプの排水とを比較するために、実験が行われた。

評価のために実験室試験が行われた。示されるように、アニオン性界面活性剤及び酵素を個別に、ならびにアニオン性界面活性剤及び酵素の組み合わせで使用することの効果を比較するために、パルプに対して別々の実験が行われた。パルプに対して化学添加剤を使用しない対照試験も実施された。

これらの実験に使用された酵素は、活性成分としてキシラナーゼ酵素（「酵素Ｘ」）を含有するBuckman Laboratories製のＢＬＸ−１４３０３、及び活性成分として完全に異なるキシラナーゼ酵素（「酵素Ｙ」）を含有するBuckman Laboratories製のＢＬＸ−１４３５０であった。アニオン性界面活性剤はラウリルエーテル硫酸ナトリウム（３モルＥＯ）であり、アニオン性界面活性剤の３０％（ｗｔ．）濃度で水溶液中に使用された。使用されたアニオン性界面活性剤の投与速度は、２ｇアニオン性界面活性剤／ｋｇ乾燥繊維パルプであった。酵素Ｘ及び酵素Ｙの各々についての酵素の投与速度は、１ｇ酵素／ｋｇ乾燥繊維パルプであった。

以下の試験手順が適用された。試験される漂白パルプのスラリーは、水道水中で約１重量パーセントのコンシステンシーで調製された。スラリーからの水除去は、Ｍｕｔｅｋ ＤＦＲ−０５排水／保水試験機を用いて評価された。選択された体積のこのスラリー（５００ｍＬ）が底部にスクリーンを有するチャンバーに添加された。試験試料に含まれるアニオン性界面活性剤及び／又は酵素がチャンバーへの添加前にスラリーと予め混合された。スクリーンは金属メッシュスクリーン（メッシュサイズ＝６００メッシュ）であった。試験が開始されたとき、水はスクリーンを通してスラリーから排水された。試料から自由に排水された水の量、及び排水速度が監視された。チャンバーからの排水を開始してから最初の３０秒間は、真空引きも圧力も加えられなかった。パッド（すなわち、スクリーン上に収集された繊維マット）に圧力を加えるために、排水が開始されてから３０秒後に、試験装置（すなわち、強制脱水（制御された機械的レベル）を伴うＤＦＲ）が使用された。再度、パッドから除去される水の速度が測定された。５０秒で追加の圧力が加えられ、そして７０秒で再度追加の圧力が加えられた。各段階で加えられる圧力の量を含むこの手順は、抄紙機上又はパルプ乾燥機上で起こる脱水及びプレスを模倣するものである。ｇ／３０秒及びｇ／９０秒の自由排水速度が測定値に基づいて決定された。

これらの実験の結果は表１及び２に示される。以下の表１は、一連の試験からの生のデータを示し、そして表２は、アニオン性界面活性剤、酵素、又は両方を含有する試料についての結果における、対照からの偏差を示す。表１及び２の数字は、試料から排水された水のグラム数である。３０秒後の結果は、排水が開始されてから３０秒後の自由排水である。９０秒後の結果は、自由排水及び３回の追加のプレス後に除去された総水量である。

表１−生データ

表２−水除去：対照に対する変化

これらの実験結果は、パルプスラリーをアニオン性界面活性剤及び酵素（例えば、セルロース分解酵素又はヘミセルロース分解酵素）の組み合わせで処理することが、水の除去を改善するための予想外の相加的より良好な結果をもたらすことを示す。データから明らかなように、この組み合わせは、いずれかの処理単独よりもはるかに良好であり、そして予想される相加効果よりもはるかに良好である、水除去に相乗効果をもたらす。

実施例２：
アニオン性界面活性剤単独、酵素単独、及びパルプに添加されたそれらの組み合わせ、ならびに異なる酵素とのアニオン性界面活性剤の別々の組み合わせを使用して処理されたパルプの水除去と、未処理パルプの排水とを比較するために、追加の実験が行われた。

行われた実験室試験は、実施例１に示されるものと同様である。再度、アニオン性界面活性剤及び酵素を個別に、ならびにアニオン性界面活性剤及び酵素の組み合わせで使用することの効果を比較するために、パルプに対して別々の実験が行われた。パルプに対して化学添加剤を使用しない対照試験も実施された。

これらの実験に使用された酵素は、キシラナーゼ酵素を含有するNovozymesから入手可能な酵素ＮＳ−５１１２１（「酵素」）、及びアニオン性界面活性剤（ラウリルエーテル硫酸ナトリウム（３モルＥＯ））（「界面活性剤」と呼ばれる）から調製された処方であり、３０％活性水性処方における水溶液中で使用された。使用されたアニオン性界面活性剤の投与速度は、２ｇ３０％活性処方／ｋｇ乾燥繊維パルプであった。酵素の投与速度は１ｇ酵素処方／ｋｇ乾燥繊維パルプであった。

適用された試験手順は、実施例１に記載の通りである。試験される漂白パルプのスラリーは、水道水中で約１重量パーセントのコンシステンシーで調製された。選択された体積のこのスラリー（５００ｍＬ）が底部にスクリーンを有するチャンバーに添加された。試験試料に含まれるアニオン性界面活性剤及び／又は酵素がチャンバーへの添加前にスラリーと予め混合された。試験が開始されたとき、水はスクリーンを通してスラリーから排水された。試料から自由に排水された水の量、及び排水速度が監視された。チャンバーからの排水を開始してから最初の３０秒間は、真空引きも圧力も加えられなかった。排水が開始された後３０秒で、圧力がパッドに加えられ、その後、５０秒で再度圧力が加えられ、そして７０秒でもう１度圧力が加えられた。パッドから除去される水の速度が測定された。パッドから除去された総水量が測定された。

これらの実験の結果は図４及び５に示される。図４は、９０秒間の試験を通して試料から除去された総水量を記録するものである。結果から、界面活性剤の添加は水除去を改善し、そして酵素の適用も水除去を改善する。データは、界面活性剤の効果と比較して酵素の効果に差があることも示す。データは、酵素及び界面活性剤の組み合わせにより、除去される総水量が、いずれかの成分単独で達成され得る利点よりも大きいことも実証する。更に、各成分の効果にもいくらかの差がある。酵素は、より迅速な初期（「自由」）排水の効果をもたらす。この効果の利点は、プレスの前により多くの水が除去されることである。界面活性剤は、プレスにおけるより良好な水除去の利点を提供する。２つのメカニズムの組み合わせは、最良の結果を提供する。

これらの同じデータは図５に示される。８秒の時点で除去された総水量は、初期の自由排水に対する効果を示している。３０秒の時点での総量は、最終的な自由排水である。特に酵素の正の効果が示される。９０秒の時点での最終的な測定値は、除去された総水量を示す。参考までに、水の初期総量は４９５ｍＬである。

本発明の利点は、表３において別の方法で実証される。「最終パッドコンシステンシー」は、プレス後の最終パッド中のパーセント繊維である。目標は、パッドコンシステンシーを最大にすることである。プレス後に残る水が少ない場合、パッドを最終仕様まで乾燥させるために必要な熱及び蒸気が少なくてすむ。パルプ乾燥機に関する一般則は、乾燥プロセスに入るパッドコンシステンシーの１パーセント増加が、パッドを乾燥するのに必要なエネルギーの４パーセントの削減をもたらすことである。界面活性剤単独又は酵素単独の添加は、同様の利点をもたらすが、それらの組み合わせは、はるかに良好な結果をもたらす。

そのうえ、これらの実験結果は、パルプスラリーをアニオン性界面活性剤及び酵素（例えば、セルロース分解酵素又はヘミセルロース分解酵素）の組み合わせで処理することが、水の除去を改善するための予想外の相加的より良好な結果をもたらすことを示す。データから明らかなように、この組み合わせは、いずれかの処理単独よりもはるかに良好であり、そして予想される相加効果よりもはるかに良好である、水除去に対する相乗効果をもたらす。

本発明は、任意の順序及び／又は任意の組合せでの以下の態様／実施形態／特徴を包含する：
1.本発明は、以下を含む、マーケットパルプの製造方法に関する：
パルプ中にセルロース微粒子を形成すること、
上記パルプに少なくとも１つのアニオン荷電性化合物及び少なくとも１つの酵素を添加して処理されたパルプを準備すること、
上記処理されたパルプを機械的に脱水して機械的に脱水されたパルプを準備すること、及び
上記機械的に脱水されたパルプを熱的に乾燥してマーケットパルプを形成すること。
2.上記パルプへの上記酵素の上記添加の少なくとも一部が、上記パルプへの上記アニオン荷電性化合物の上記添加の前に起こる、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載の方法。
3.上記パルプへの上記酵素の上記添加の約８０重量％〜１００重量％が、上記パルプへの上記アニオン荷電性化合物の上記添加の前に起こる、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載の方法。
4.アニオン荷電性化合物が有機アニオン荷電性化合物である、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載の方法。
5.酵素が加水分解酵素である、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載の方法。
6.パルプ形成後、かつ上記パルプにアニオン荷電性化合物及び酵素を添加する前に、パルプを漂白することを更に含む、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載の方法。
7.以下を含む、マーケットパルプの製造方法：
パルプ中にセルロース微粒子を形成すること、
少なくとも１つのアニオン荷電性化合物及び少なくとも１つの酵素を上記パルプに添加して処理されたパルプを準備すること、
上記処理されたパルプを機械的に脱水して機械的に脱水されたパルプを準備すること、及び
上記機械的に脱水されたパルプを熱的に乾燥してマーケットパルプを形成すること。
8.上記パルプへの上記酵素の上記添加の少なくとも一部が、上記パルプへの上記アニオン性界面活性剤の上記添加の前に起こる、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載の方法。
9.上記パルプへの上記酵素の上記添加の約８０重量％〜１００重量％が、上記パルプへの上記アニオン性界面活性剤の上記添加の前に起こる、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載の方法。
10.パルプ形成後、かつ上記パルプにアニオン性界面活性剤及び酵素を添加する前に、パルプを漂白することを更に含む、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載の方法。
11.アニオン性界面活性剤が、硫酸塩界面活性剤、スルホン酸塩界面活性剤、スルホコハク酸塩界面活性剤、又はそれらの任意の組み合わせである、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載の方法。
12.アニオン性界面活性剤が、アルコール硫酸塩、アルコールアルコキシ硫酸塩、スルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、エトキシル化アルコールとのスルホコハク酸エステル、又はそれらの可溶性塩若しくは分散性塩、又はそれらの任意の組み合わせである、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載の方法。
13.酵素が、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、セロビアーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼ、 β−グルカナーゼ、カルボキシメチルセルラーゼ、アミラーゼ、グルコシダーゼ、ガラクトシダーゼ、ラッカーゼ、又はそれらの任意の組み合わせである、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載の方法。
14.上記形成することが、クラフトパルプ、亜硫酸パルプ、フラッフパルプ、溶解パルプ、漂白化学熱機械パルプ、又はそれらの任意の組み合わせを提供する、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載の方法。
15.パルプ形成後、かつ上記パルプにアニオン性界面活性剤及び酵素を添加する前に、パルプを漂白することを更に含む、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載の方法。
16.上記機械的脱水が、パルプのスクリーニング及びプレスを含み、上記スクリーニングから排水された白水が、未加工パルプと組み合わされ、そしてファンポンプによりスクリーニングのためのヘッドボックスにポンプ輸送され、上記酵素が、ファンポンプに入る前に、組み合わされた未加工パルプ及び白水に供給され、そして上記アニオン性界面活性剤が、上記ファンポンプを出た後、かつヘッドボックスに到達する前に、上記組み合わされた未加工パルプ及び白水に供給される、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載の方法。
17.アニオン性界面活性剤及び酵素が、約１０，０００：１〜約１：１０の比でパルプに添加される、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載の方法。
18.アニオン性界面活性剤が、約０．１ポンド／トン乾燥繊維〜約１０ポンド／トン乾燥繊維の量でパルプに添加され、そして酵素が、約０．００１ポンド／トン乾燥繊維〜約２ポンド／トン乾燥繊維の量でパルプに添加される、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載の方法。
19.上記マーケットパルプをユニット化してユニット化されたマーケットパルプを形成することを更に含む、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載の方法。
20.セルロース微粒子が、広葉樹チップ、針葉樹チップ、再生紙繊維、又はそれらの任意の組み合わせである、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載の方法。
21.マーケットパルプの製造における脱水前に、パルプを少なくとも１つのアニオン性界面活性剤及び少なくとも１つの酵素で処理する組み合わせが、以下のうちの少なくとも１つを提供するのに有効である、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載の方法：
(i)パルプ中でいかなる処理もなしで得られる自由排水値よりも少なくとも７．５％大きい値まで増加したパルプ自由排水（ｇ／９０秒）、
(ii)パルプ中で（酵素なしで）アニオン性界面活性剤を個別に使用して得られる自由排水値よりも少なくとも約３％大きい値まで増加したパルプ自由排水、
(iii)パルプ中でアニオン性界面活性剤及び酵素を別々に及び個別に使用して得られる自由排水増加の合計として計算される自由排水値よりも少なくとも約１０％大きい値まで増加したパルプ自由排水、及び
(iv)パルプ中で（酵素なしで）アニオン性界面活性剤を別々に及び個別に使用して得られるパルプ保水値（ＷＲＶ）よりも少なくとも約１０％少ない値まで低減したＷＲＶ。
22.処理が、得られる自由排水を、いかなるパルプの処理もなしで得られる自由排水値よりも少なくとも５倍大きい値まで増加させるのに有効である、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載の方法。
23.処理が、得られる自由排水を、パルプ中で前記アニオン性界面活性剤を個別に使用して得られる自由排水値よりも約６０％〜約２００％大きい値まで増加させるのに有効である、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載の方法。
24.上記アニオン荷電性化合物及び上記酵素を含有する、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載の方法によって製造されたマーケットパルプ。
25.上記アニオン性界面活性剤及び上記酵素を含有する、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載の方法によって製造されたマーケットパルプ。
26.マーケットパルプの製造システムであって：
セルロース微粒子の供給、
上記セルロース微粒子からパルプを形成するための少なくとも１つのパルプ形成ユニット、
上記パルプに少なくとも１つのアニオン荷電性化合物を供給するための少なくとも１つの供給装置、
上記パルプに少なくとも１つの酵素を供給してアニオン荷電性化合物及び酵素の両方の添加後の処理されたパルプを準備するための少なくとも１つの供給装置、
上記処理されたパルプから水を機械的に除去して機械的に脱水されたパルプを準備するための機械的脱水装置、及び
上記機械的に脱水されたパルプから水を熱的に除去してマーケットパルプを準備するための熱乾燥装置、を備えるシステム。
27.上記アニオン荷電性化合物を供給するための少なくとも１つの供給装置がアニオン性界面活性剤を供給し、及び上記酵素を供給するための少なくとも１つの供給装置が加水分解酵素を供給する、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載のシステム。
28.上記パルプ形成ユニットが、セルロース微粒子を蒸解するための少なくとも１つの薬品を受け取ることができる蒸解釜である、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載のシステム。
29.上記機械的脱水装置がスクリーニングセクション及びプレスセクションを備え、該スクリーニングセクションから排水された白水が未加工のパルプと組み合わせることができ、及びファンポンプにより該機械的脱水装置のヘッドボックスにポンプ輸送することができ、上記酵素のための上記少なくとも１つの供給装置が、上記ファンポンプに入る前に、該組み合わされた未加工のパルプ及び白水に上記酵素を供給することができ、及び上記アニオン荷電性化合物のための上記少なくとも１つの供給装置が、上記ファンポンプを出た後、かつ該ヘッドボックスに到達する前に、上記組み合わされた未加工のパルプ及び白水に上記アニオン荷電性化合物を供給することができる、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載のシステム。
30.パルプ形成ユニットの後、かつ上記パルプにアニオン荷電性化合物及び酵素を上記供給装置により添加する前に、パルプを漂白するための漂白ユニットを更に備える、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載のシステム。
31.第１及び第２の供給装置が、それぞれの第１及び第２の量のアニオン荷電性化合物及び酵素を、パルプ形成ユニットから抜き取られたパルプに導入して、以下のうちの少なくとも１つを提供することができる、以上又は以下の実施形態／特徴／態様のいずれかに記載のシステム：
(i)パルプ中でいかなる処理もなしで得られる自由排水値よりも少なくとも７．５％大きい値まで増加したパルプ自由排水（ｇ／９０秒）、
(ii)パルプ中で（酵素なしで）アニオン荷電性化合物を個別に使用して得られる自由排水値よりも少なくとも約３％大きい値まで増加したパルプ自由排水、
(iii)パルプ中でアニオン荷電性化合物及び酵素を別々に及び個別に使用して得られる自由排水増加の合計として計算される自由排水値よりも少なくとも約１０％大きい値まで増加したパルプ自由排水、及び
(iv)パルプ中で（酵素なしで）アニオン荷電性化合物を個別に使用して得られるパルプ保水値（ＷＲＶ）よりも少なくとも約１０％少ない値まで低減したＷＲＶ。

本発明は、文及び／又は段落に記載のような上記及び／又は下記のこれらの様々な特徴又は実施形態の任意の組合せを包含し得る。本明細書に開示される特徴の任意の組合せは本発明の一部とみなされ、組合せ特徴に関しては限定されないことが意図される。

出願人はこの開示における全ての引用文献の内容全体を具体的に援用している。さらに、量、濃度又は他の値若しくはパラメーターが範囲、好ましい範囲、又は好ましい上限値と好ましい下限値とのリストのいずれかとして与えられる場合、これは範囲が別々に開示されているかに関わらず、任意の範囲上限又は好ましい値と、任意の範囲下限又は好ましい値との任意の組合せからなるあらゆる範囲を具体的に開示するものと理解されるものとする。数値の範囲が本明細書で言及されている場合、特に指定のない限り、範囲はその端点、並びに範囲内の全ての整数及び端数を含むことが意図される。本発明の範囲は、範囲を規定する場合に言及された特定の値に限定することは意図されない。

本発明の他の実施形態は、本明細書の検討、及び本明細書に開示される本発明の実施により当業者にとって明らかとなるであろう。本明細書及び実施例は例示的なものにすぎず、本発明の真の範囲及び趣旨は添付の特許請求の範囲及びその均等物により示されることが意図される。

図１
PulpingLiquor パルプ化液
WoodChips 木材チップ
Digester 蒸解釜
BlackLiquor 黒液
Pulp パルプ
WashersScreens 洗浄機スクリーン
UnbleachedPulp 未漂白パルプ
Bleach 漂白
PulpDryer パルプ乾燥機
MarketPulp マーケットパルプ
Unitize(optional) ユニット化（任意）

図２
FullyBleached Tower 完全に漂白されたタワー
SurgeChest サージチェスト
MachineChest 機械チェスト
MachineChest Pump 機械チェストポンプ
whitewater silo 白水サイロ
FanPump ファンポンプ
screens スクリーン
Sheetformer シートフォーマー

図３
ANIONICALLYCHARGED COMPOUND アニオン荷電性化合物
HEADBOX ヘッドボックス
SCREEN スクリーン
WHITEWATER SILO 白水サイロ
PRE-DRYERPULP プレドライヤーパルプ
ENZYME 酵素
FANPUMP ファンポンプ
PRESS プレス
THERMALDRY 熱乾燥
DRIEDPULP 乾燥パルプ
UNITIZATION ユニット化
MARKETPULP マーケットパルプ

図４
Example2 - water removal vs time 実施例２−水除去対時間
Weight(g) 重量（g）
Time(sec) 時間（秒）
Blank ブランク
Surfactant 界面活性剤
Enzymeonly 酵素のみ
Enzymeplus Surfactant 酵素＋界面活性剤

図５
Example2 - time dewatering analysis 実施例２−時間脱水分析
volumeof water drained (ml) 排水量（ml）
Blank ブランク
Surfactant 界面活性剤
Enzymeonly 酵素のみ
Enzymeplus Surfactant 酵素＋界面活性剤
sec 秒

Claims (31)

1. マーケットパルプの製造方法であって、
   パルプ中にセルロース微粒子を形成すること、
   前記パルプに少なくとも１つのアニオン荷電性化合物及び少なくとも１つの酵素を添加して処理されたパルプを準備すること、
   前記処理されたパルプを機械的に脱水して機械的に脱水されたパルプを準備すること、及び
   前記機械的に脱水されたパルプを熱的に乾燥してマーケットパルプを形成することを含む、方法。
2. 前記パルプへの前記酵素の前記添加の少なくとも一部が、前記パルプへの前記アニオン荷電性化合物の前記添加の前に起こる、請求項１に記載の方法。
3. 前記パルプへの前記酵素の前記添加の約８０重量％〜１００重量％が、前記パルプへの前記アニオン荷電性化合物の前記添加の前に起こる、請求項１に記載の方法。
4. アニオン荷電性化合物が有機アニオン荷電性化合物である、請求項１に記載の方法。
5. 酵素が加水分解酵素である、請求項１に記載の方法。
6. パルプ形成後、かつ前記パルプにアニオン荷電性化合物及び酵素を添加する前に、パルプを漂白することを更に含む、請求項１に記載の方法。
7. マーケットパルプの製造方法であって、
   パルプ中にセルロース微粒子を形成すること、
   前記パルプに少なくとも１つのアニオン性界面活性剤及び少なくとも１つの酵素を添加して処理されたパルプを準備すること、
   前記処理されたパルプを機械的に脱水して機械的に脱水されたパルプを準備すること、及び
   前記機械的に脱水されたパルプを熱的に乾燥してマーケットパルプを形成することを含む、方法。
8. 前記パルプへの前記酵素の前記添加の少なくとも一部が、前記パルプへの前記アニオン性界面活性剤の前記添加の前に起こる、請求項７に記載の方法。
9. 前記パルプへの前記酵素の前記添加の約８０重量％〜１００重量％が、前記パルプへの前記アニオン界面活性剤の前記添加の前に起こる、請求項７に記載の方法。
10. パルプ形成後、かつ前記パルプにアニオン性界面活性剤及び酵素を添加する前に、パルプを漂白することを更に含む、請求項７に記載の方法。
11. アニオン性界面活性剤が、硫酸塩界面活性剤、スルホン酸塩界面活性剤、スルホコハク酸塩界面活性剤、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項７に記載の方法。
12. アニオン性界面活性剤が、アルコール硫酸塩、アルコールアルコキシ硫酸塩、スルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、エトキシル化アルコールとのスルホコハク酸エステル、又はそれらの可溶性塩若しくは分散性塩、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項７に記載の方法。
13. 酵素が、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、セロビアーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼ、β−グルカナーゼ、カルボキシメチルセルラーゼ、アミラーゼ、グルコシダーゼ、ガラクトシダーゼ、ラッカーゼ、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項７に記載の方法。
14. 前記形成することが、クラフトパルプ、亜硫酸パルプ、フラッフパルプ、溶解パルプ、漂白化学熱機械パルプ、又はそれらの任意の組み合わせを提供する、請求項７に記載の方法。
15. パルプ形成後、かつ前記パルプにアニオン性界面活性剤及び酵素を添加する前に、パルプを漂白することを更に含む、請求項７に記載の方法。
16. 前記機械的脱水が、パルプのスクリーニング及びプレスを含み、前記スクリーニングから排水された白水が、未加工パルプと組み合わされ、そしてファンポンプにより該スクリーニングのためのヘッドボックスにポンプ輸送され、前記酵素が、該ファンポンプに入る前に、該組み合わされた未加工パルプ及び白水に供給され、そして前記アニオン性界面活性剤が、前記ファンポンプを出た後、かつ該ヘッドボックスに到達する前に、前記組み合わされた未加工パルプ及び白水に供給される、請求項７に記載の方法。
17. アニオン性界面活性剤及び酵素が、約１０，０００：１〜約１：１０の比でパルプに添加される、請求項７に記載の方法。
18. アニオン性界面活性剤が、約０．１ポンド／トン乾燥繊維〜約１０ポンド／トン乾燥繊維の量でパルプに添加され、そして酵素が、約０．００１ポンド／トン乾燥繊維〜約２ポンド／トン乾燥繊維の量でパルプに添加される、請求項７に記載の方法。
19. 前記マーケットパルプをユニット化してユニット化されたマーケットパルプを形成することを更に含む、請求項７に記載の方法。
20. セルロース微粒子が、広葉樹チップ、針葉樹チップ、再生紙繊維、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項７に記載の方法。
21. マーケットパルプの製造における脱水前に、パルプを少なくとも1つのアニオン性界面活性剤及び少なくとも1つの酵素で処理する組み合わせが、
    (i)パルプ中でいかなる処理もなしで得られる自由排水値よりも少なくとも７．５％大きい値まで増加したパルプ自由排水（ｇ／９０秒）、
    (ii)パルプ中で酵素なしで該アニオン性界面活性剤を個別に使用して得られる自由排水値よりも少なくとも約３％大きい値まで増加したパルプ自由排水、
    (iii)パルプ中でアニオン性界面活性剤及び酵素を別々に及び個別に使用して得られる自由排水増加の合計として計算される自由排水値よりも少なくとも約１０％大きい値まで増加したパルプ自由排水、及び
    (iv)パルプ中で酵素なしでアニオン性界面活性剤を個別に使用して得られるパルプ保水値（ＷＲＶ）よりも少なくとも約１０％少ない値まで低減したＷＲＶのうちの少なくとも１つを提供するのに有効である、請求項７に記載の方法。
22. 処理が、得られる自由排水を、パルプのいかなる処理もなしで得られる自由排水値よりも少なくとも５倍大きい値まで増加させるのに有効である、請求項７に記載の方法。
23. 処理が、得られる自由排水を、パルプ中でアニオン性界面活性剤を個別に使用して得られる自由排水値よりも約６０％〜約２００％大きい値まで増加させるのに有効である、請求項７に記載の方法。
24. 前記アニオン荷電性化合物及び前記酵素を含有する、請求項１に記載の方法によって製造されたマーケットパルプ。
25. 前記アニオン性界面活性剤及び前記酵素を含有する、請求項７に記載の方法によって製造されたマーケットパルプ。
26. マーケットパルプの製造システムであって、
    セルロース微粒子の供給、
    前記セルロース微粒子からパルプを形成するための少なくとも１つのパルプ形成ユニット、
    前記パルプに少なくとも１つのアニオン荷電性化合物を供給するための少なくとも１つの供給装置、
    前記パルプに少なくとも１つの酵素を供給してアニオン荷電性化合物及び酵素の両方の添加後の処理されたパルプを準備するための少なくとも１つの供給装置、
    前記処理されたパルプから水を機械的に除去して機械的に脱水されたパルプを準備するための機械的脱水装置、及び
    前記機械的に脱水されたパルプから水を熱的に除去してマーケットパルプを準備するための熱乾燥装置を備える、システム。
27. 前記アニオン荷電性化合物を供給するための少なくとも１つの供給装置がアニオン性界面活性剤を供給し、及び前記酵素を供給するための少なくとも１つの供給装置が加水分解酵素を供給する、請求項２６に記載のシステム。
28. 前記パルプ形成ユニットが、セルロース微粒子を蒸解するための少なくとも１つの薬品を受け取ることができる蒸解釜である、請求項２６に記載のシステム。
29. 前記機械的脱水装置がスクリーニングセクション及びプレスセクションを備え、該スクリーニングセクションから排水された白水が未加工のパルプと組み合わせることができ、及びファンポンプにより該機械的脱水装置のヘッドボックスにポンプ輸送することができ、前記酵素のための前記少なくとも１つの供給装置が、前記ファンポンプに入る前に、該組み合わされた未加工のパルプ及び白水に前記酵素を供給することができ、及び前記アニオン荷電性化合物のための前記少なくとも１つの供給装置が、前記ファンポンプを出た後、かつ該ヘッドボックスに到達する前に、前記組み合わされた未加工のパルプ及び白水に前記アニオン荷電性化合物を供給することができる、請求項２６に記載のシステム。
30. パルプ形成ユニットの後、かつ前記パルプにアニオン荷電性化合物及び酵素を前記供給装置により添加する前に、パルプを漂白するための漂白ユニットを更に備える、請求項２６に記載のシステム。
31. 第１及び第２の供給装置が、それぞれの第１及び第２の量のアニオン荷電性化合物及び酵素を、パルプ形成ユニットから抜き取られたパルプに導入して、
    (i)パルプ中でいかなる処理もなしで得られる自由排水値よりも少なくとも７．５％大きい値まで増加したパルプ自由排水（ｇ／９０秒）、
    (ii)パルプ中で酵素なしでアニオン荷電性化合物を個別に使用して得られる自由排水値よりも少なくとも約３％大きい値まで増加したパルプ自由排水、
    (iii)パルプ中でアニオン荷電性化合物及び酵素を別々に及び個別に使用して得られる自由排水増加の合計として計算される自由排水値よりも少なくとも約１０％大きい値まで増加したパルプ自由排水、及び
    (iv)パルプ中で酵素なしでアニオン荷電性化合物を個別に使用して得られるパルプ保水値（ＷＲＶ）よりも少なくとも約１０％少ない値まで低減したＷＲＶ
    のうちの少なくとも１つを提供することができる、請求項２６に記載のシステム。
    

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