JP2021514605A - 細胞老化を遅延し、悪性転化に抵抗することができるヒト間葉系幹細胞、その調製方法及び使用 - Google Patents

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Abstract

細胞老化を遅延し、悪性転化に抵抗することができるヒト間葉系幹細胞の調製方法を提供する。調製方法は、FOXO3タンパク質の253番目のアミノ酸残基をコードするコドンの、セリンをコードするコドンからアラニンをコードするコドンへの変異と、FOXO3タンパク質の315番目のアミノ酸残基をコードするコドンの、セリンをコードするコドンからアラニンをコードするコドンへの変異との2つの変異を、多能性幹細胞のゲノムに対して行うステップを含む。前記方法で調製された組換え間葉系幹細胞、及び細胞移植治療におけるその使用をさらに提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、バイオテクノロジーの分野に属し、細胞老化を遅延し、悪性転化に抵抗することができるヒト間葉系幹細胞、その調製方法及び使用に関する。
細胞移植治療は、近年、再生医学分野の最も将来性及び潜在力がある発展方向であり、特定の細胞を体内の病巣部位に移植することで、組織の再生を促進して疾患を治癒する方法である。幹細胞は、自己複製能力及び多能性を有するので、細胞増殖を介して自体の数の安定性を維持できるだけでなく、他の細胞に分化して組織を修復することができるため、細胞治療のための最適な材料となる。細胞移植治療は、骨髄幹細胞移植による白血病の治療などの分野で非常に顕著な治療効果を示しているが、その幅広い使用は様々な課題に直面している。現在、細胞移植治療を制限する主な要因は、有効性と安全性という2つの点にある。
細胞移植治療の有効性は、主に、移植前の移植物の品質、及び体内に入った後活着し再生機能を発揮できるか否かによって反映される。一方では、移植物は、体外培養過程において一定の「寿命」があり、具体的には、複製のプレッシャーによる影響を連続的に受けて、限られた連続継代後、細胞老化(cellular senescence)状態になり、増殖を停止して機能を失い、更に分化能力に影響を及ぼして、治療効果に影響を与える。他方では、細胞移植の部位は一般的に、疾患や老化の組織微小環境に位置し、それにおける炎症性因子、有害な代謝産物等は、外因性移植物に損傷を与える。以上の2つの点はいずれも細胞の深刻な機能の減退をもたらして、移植効率の低下を引き起こす。細胞移植治療の安全性は、主に、長期移植後の腫瘍形成のリスクである。細胞移植物は病体で連続的にプレッシャーを受け、ゲノムが非常に不安定になる恐れがあり、がん遺伝子やがん抑制遺伝子に変異が発生すると、がんに進化し、安全上のリスクを引き起こす可能性がある。
如何に特定の介入手段により細胞移植治療の効率を向上させ、腫瘍形成のリスクを可能な限り低減させるかは、従来から、再生医学の幅広い応用を支配する課題である。しかしながら、今まで、この技術的なボトルネックを克服できる簡単で効果的な方法は開発されていない。現在、細胞移植の効果を向上させる試みは、主に、移植部位の微小環境の改善及び移植物の「環境ストレス耐性」の特性の強化という2つの点に集めている。多くの研究は、細胞の正常な機能の発揮に不利である病体微小環境において外因性「栄養及び保護因子」を補充することにより移植効果を改善するが、該方法は短期間にしか移植環境を改善できず、移植再発等の不良な予後の問題が際立っている。これに比べて、特定の方法により移植物の「内因」を改善し、すなわち、移植材料自体の固有の環境ストレス耐性能力を強化することにより移植効果の改善を実現することは、より直接的で長時間作用が可能な手段である。現在、少数の研究によれば、レンチウイルス又はレトロウイルスベクターを利用して環境ストレス耐性タンパク質を導入し、細胞内の特定のシグナル伝達経路又は遺伝子発現を調節し、環境ストレスに対する細胞の耐性を強化し、更に細胞移植の治療効果を向上させる。一連の前臨床研究では、細胞の固有の環境ストレス耐性の特性を向上させる可能性が証明されているが、組み込む型ウイルスベクターによって仲介する遺伝的調節において、ゲノムのランダムな組み込みが必ず存在し、遺伝子変異のリスクが大きくなり、安全性の心配が高まり、臨床における応用価値が大幅に低下した。
遺伝子ターゲティング編集技術の発展は、細胞移植治療の進歩を極めて促進している。この技術によれば、ゲノム上の遺伝子コードを正確に編集することができ、現在、遺伝子ターゲティング編集技術を利用して疾患細胞の病原性変異を矯正するケースが大量に報告されている。正常な機能を回復する遺伝子矯正細胞は、体外増殖により自家移植に使用でき、細胞移植治療のための好ましい材料である。
本発明の目的は、細胞老化を遅延し、悪性転化に抵抗することができるヒト間葉系幹細胞、その調製方法及び使用を提供することである。
本発明は、組換え間葉系幹細胞(FOXO3遺伝子増強型間葉系幹細胞、FOXO32SA/2SAMSC細胞)の保護を求めており、そのゲノムは、配列表の配列番号2に示すタンパク質をコードする遺伝子を有する。前記組換え間葉系幹細胞のゲノムには、配列表の配列番号4に示すタンパク質をコードする遺伝子がない。前記組換え間葉系幹細胞は、具体的には、発明の概要に記載の下記方法により調製される組換え間葉系幹細胞であってもよい。
本発明は、組換え多能性幹細胞(FOXO3遺伝子増強型の多能性幹細胞、FOXO32SA/2SAhESC細胞)の保護をさらに求めており、そのゲノムは、配列表の配列番号2に示すタンパク質をコードする遺伝子を有する。前記組換え多能性幹細胞のゲノムには、配列表の配列番号4に示すタンパク質をコードする遺伝子がない。前記組換え多能性幹細胞は、具体的には、発明の概要に記載の下記方法により調製される組換え多能性幹細胞であってもよい。
本発明は、細胞移植治療に使用される製品の製造における組換え細胞の使用が保護請求されており、前記組換え細胞は前記組換え間葉系幹細胞又は前記組換え多能性幹細胞である。前記治療は、具体的には、免疫不全疾患の治療であってもよい。前記治療は、具体的には、免疫不全患者の疾患の治療であってもよい。前記治療は、具体的には、後肢虚血の治療であってもよく、前記治療は、具体的には、免疫不全患者の後肢虚血の治療であってもよい。前記組換え細胞は、移植細胞として細胞移植治療に使用される。
本発明は、細胞移植治療における組換え細胞の使用が保護請求されており、、前記組換え細胞は前記組換え間葉系幹細胞又は前記組換え多能性幹細胞である。前記治療は、具体的には、免疫不全疾患の治療であってもよい。前記治療は、具体的には、免疫不全患者の疾患の治療であってもよい。前記治療は、具体的には、後肢虚血の治療であってもよい。前記治療は、具体的には、免疫不全患者の後肢虚血の治療であってもよい。前記組換え細胞は、移植細胞として細胞移植治療に使用される。
本発明は、組換え多能性幹細胞の調製方法の保護がさらに保護請求されており、、FOXO3タンパク質の253番目のアミノ酸残基をコードするコドンの、セリンをコードするコドンからアラニンをコードするコドンへの変異と、FOXO3タンパク質の315番目のアミノ酸残基をコードするコドンの、セリンをコードするコドンからアラニンをコードするコドンへの変異との2つの変異(且ついずれも遺伝子のホモ接合変異)を、多能性幹細胞のゲノムに対して行って、組換え多能性幹細胞を得るステップを含む。
FOXO3タンパク質の253番目のアミノ酸残基をコードするコドンの、セリンをコードするコドン(tcc)からアラニンをコードするコドン(gcc)への変異と、FOXO3タンパク質の315番目のアミノ酸残基をコードするコドンの、セリンをコードするコドン(tct)からアラニンをコードするコドン(gct)への変異との2つの変異(且ついずれも遺伝子のホモ接合突然変異)を、多能性幹細胞のゲノムに対して行って、組換え多能性幹細胞を得る。
前記多能性幹細胞はヒト胚性幹細胞である。前記多能性幹細胞は市販のヒト胚性幹細胞株である。前記ヒト胚性幹細胞はH9細胞株である。
前記FOXO3タンパク質は、具体的には、配列表の配列番号4に示してもよい。
本発明は、組換え間葉系幹細胞の調製方法がさらに保護請求されており、
FOXO3タンパク質の253番目のアミノ酸残基をコードするコドンの、セリンをコードするコドンからアラニンをコードするコドンへの変異と、FOXO3タンパク質の315番目のアミノ酸残基をコードするコドンの、セリンをコードするコドンからアラニンをコードするコドンへの変異との2つの変異(且ついずれも遺伝子のホモ接合変異)を、多能性幹細胞のゲノムに対して行って、組換え多能性幹細胞を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた組換え多能性幹細胞を用いて、組換え間葉系幹細胞を調製するステップ(2)と、を含む。
FOXO3タンパク質の253番目のアミノ酸残基をコードするコドンの、セリンをコードするコドン(tcc)からアラニンをコードするコドン(gcc)への変異と、FOXO3タンパク質の315番目のアミノ酸残基をコードするコドンの、セリンをコードするコドン(tct)からアラニンをコードするコドン(gct)への変異との2つの変異(且ついずれも遺伝子のホモ接合変異)を、多能性幹細胞のゲノムに対して行って、組換え多能性幹細胞を得る。
組換え多能性幹細胞を用いて、組換え間葉系幹細胞を調製する方法は、具体的には、
組換え多能性幹細胞から胚様体を分化させて、胚様体を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた胚様体を繊維状細胞が現れるまで培養するステップ(2)と、
ステップ(2)終了後、細胞を収集し、継代して培養するステップ(3)と、
ステップ(3)終了後、CD73、CD90及びCD105がいずれも陽性である細胞を選別し、組換え間葉系幹細胞を得るステップ(4)と、を含む。
以上のいずれかに記載された方法により調製される組換え多能性幹細胞又は以上のいずれかに記載された方法により調製される組換え間葉系幹細胞は、全て本発明の保護範囲に属する。
本発明は、配列表の配列番号2に示すタンパク質が保護請求されている。
本発明は、配列表の配列番号3に示すDNA分子が更に保護請求されている。
実施例1における形態学的同定の結果である。 実施例1における多能性幹遺伝子の発現レベルの検出結果である。 実施例2におけるFOXO3転写活性の結果である。 実施例2における核内局在化の結果である。 実施例2における外因性刺激での細胞活性の結果である。 実施例2における成長能の測定結果である。 実施例2におけるSA−β−Gal染色の結果である。 実施例2における有害代謝物含有量の検出結果である。 実施例2における増殖能の検出結果である。 実施例2における細胞核構造完全性の検出結果である。 実施例2におけるプロセス模式図である。 実施例2における足場非依存性増殖能の結果である。 実施例3におけるマウスの前脛骨筋に細胞を移植した結果である。 実施例3における後肢虚血の免疫不全マウスの筋肉に細胞を移植した結果である。
下記実施例は、本発明をより良好に理解するためのものであり、本発明を限定するものではない。特に断りのない限り、下記実施例における実験方法は、いずれも通常の方法である。特に断りのない限り、下記実施例に使用される試験材料は、いずれも通常の生化学試薬店から購入され得るものである。以下の実施例における定量的試験は、いずれも3回の繰り返し実験とされ、結果をその平均値とする。特に断りのない限り、細胞培養環境はいずれも37℃、5% COである。
btuは、bgal−transducing unitsの略称である。参照文献:An HSV amplicon-based helper system for helper-dependent adenoviral vectors. Shuji Kubo, et al. BBRC. 2003. 307(4): 826-830。
ヘルパーアデノウイルスベクターpAMHDAdGT8−4(Addgene #26421)は、pAMHDAdGT8−4ベクター(Addgene製、製品番号26421、https://www.addgene.org/26421/)と略称される。
ヒト胚性腎細胞株293をトランスフェクトした派生細胞株116細胞は、116細胞と略称される。参照文献:Improved system for helper-dependent adenoviral vector production. Palmer D. and Ng P. Molecular Therapy. 2003. 8(5): 846-52.。
ヘルパーアデノウイルスAdHPBGF35は、ウイルスAdHPBGF35と略称される。参照文献:Genome Size and Structure Determine Efficiency of Postinternalization Steps and Gene Transfer of Capsid-Modified Adenovirus Vectors in a Cell-Type-Specific Manner. Dmitry M. Shayakhmetov, et al., Journal of Virology. 2004. 78(18): 10009-10022.。参照文献:Yang J, Li J, Suzuki K, et al. Genetic enhancement in cultured human adult stem cells conferred by a single nucleotide recoding[J]. Cell Research, 2017, 27(9):1178-1181.。
ヒト胚性幹細胞H9細胞株は、H9細胞(WiCell社製、製品番号WA09(H9)−DL−7)と略称される。
レトロウイルスベクター及びパッケージングプラスミドは、いずれもAddgene製のpBABE−neo−hTERT(#1774)、pBABE−zeo−large T genomic(#1778)、pBABE−puro−HRAS V12(#1768)、gag/pol(#14887)、VSV−G(#8454)である。
P53をノックダウンしたレンチウイルスベクタープラスミドPLVTHM−shP53については、参照文献は、Yang J, Li J, Suzuki K, et al. Genetic enhancement in cultured human adult stem cells conferred by a single nucleotide recoding[J]. Cell Research, 2017, 27(9):1178-1181.であり、すなわち、文献における「For generating lentiviral vectors encoding shRNA targeting P53, shRNA oligos 13, 18 were cloned into the pLVTHM/GFP vector (12247, Addgene) pre-cleaved by ClaI and MluI 」である。
間葉系幹細胞培地(hMSC培地)は、MEM培地(Invitrogen、12571071)、ウシ胎児血清(Invitrogen、10091148)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen、15070−063)、及び組換えヒト線維芽細胞成長因子(JPC、bFGF)からなり、MEM培地とウシ胎児血清の体積比は90:10であり、培地において、ペニシリン/ストレプトマイシンの濃度は1g/100mlであり、組換えヒト線維芽細胞成長因子の濃度は10ng/mlである。
間葉系幹細胞分化培地は、MEM培地(Invitrogen、12571071)、ウシ胎児血清(Invitrogen、10091148)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen、15070−063)、組換えヒト線維芽細胞成長因子(JPC、bFGF)、及びTGF−β(Humanzyme、HZ1131)からなり、MEM培地とウシ胎児血清の体積比は90:10であり、培地において、ペニシリン/ストレプトマイシンの濃度は1g/100mlであり、組換えヒト線維芽細胞成長因子の濃度は10ng/mlであり、TGF−βの濃度は5ng/mlである。
特に断りのない限り、実施例における超高速遠心分離パラメータはいずれも19200rpm、2.5時間である。
実施例1、FOXO3増強型の多能性幹細胞の調製
一、組換えプラスミドの構築
配列表の配列番号1に示すDNA分子を、pAMHDAdGT8−4ベクターのSalIとSpeI酵素切断部位の間に挿入して、組換えプラスミドを得た。
二、組換えアデノウイルスの調製
1、ステップ1で得られた組換えプラスミドを、PI−SceIを用いて酵素で切断し、線状化プラスミドを得た。
2、ステップ1で得られた線状化プラスミドとウイルスAdHPBGF35の両方を116細胞に導入し、組換えアデノウイルスをパッケージングした後、超高速遠心分離により、組換えアデノウイルス粒子を取得した。
3、組換えアデノウイルス粒子を標的細胞に感染させた。
ステップ2で得られた組換えアデノウイルス粒子を用いてH9細胞(1×10個の細胞:15 btuウイルス)に感染させ、感染後の2−4日目に、G418(25〜400g/ml、invitrogen社製)を加えてポジティブスクリーニングし、感染後の10−13日目に、4μM Ganciclovir(GANC,invitrogen社製)を加えてネガティブスクリーニングし、正確に組み込まれていない細胞を選別して除去し、最終的に生存した細胞を配列決定して同定し(PCRプライマーは、FOXO32SA/2SAseqF:GATTTACTATATCATCTGGGTGCTC、及び、FOXO32SA/2SAseqR:TCCAGCAGGTCGTCCAであり、配列決定プライマーはGATTTACTATATCATCTGGGTGCTCである)、FOXO3対立遺伝子の部位が正確に編集された細胞を得て、プラスミドpCAG−Flpo−2A−puroを細胞に一時的にトランスフェクトすることでG418耐性遺伝子を除去し、FOXO32SA/+ hESC細胞を得た。
4、ステップ2で得られた組換えアデノウイルス粒子を用いてFOXO32SA/+ hESC細胞(1×10個の細胞:15 btuウイルス)に感染させ、感染後の2−4日目に、G418(25〜400g/ml、invitrogen社製)を加えてポジティブスクリーニングし、感染後の10−13日目に、4μM Ganciclovir(GANC、invitrogen社製)を加えてネガティブスクリーニングし、正確に組み込まれていない細胞を選別して除去し、最終的に生存した細胞を配列決定して同定し(PCRプライマーは、FOXO32SA/2SAseqF:GATTTACTATATCATCTGGGTGCTC、及び、FOXO32SA/2SAseqR:TCCAGCAGGTCGTCCAであり、配列決定プライマーはGATTTACTATATCATCTGGGTGCTCである)、FOXO3対立遺伝子の部位が正確に編集された細胞を得て、プラスミドpCAG−Flpo−2A−puroを、細胞に一時的にトランスフェクトすることでG418耐性遺伝子を除去し、FOXO32SA/2SA hESC細胞を得た。FOXO32SA/2SA hESC細胞は、FOXO3増強型の多能性幹細胞である。
全ゲノムシーケンシングの結果によれば、H9細胞に比べて、FOXO32SA/2SA hESC細胞の相違は、FOXO3タンパク質の253番目のアミノ酸残基をコードするコドンの、セリンをコードするコドン(tcc)からアラニンをコードするコドン(gcc)への変異と、FOXO3タンパク質の315番目のアミノ酸残基をコードするコドンの、セリンをコードするコドン(tct)からアラニンをコードするコドン(gct)への変異との2つの変異(且ついずれも遺伝子のホモ接合変異)が、ゲノムに発生しただけである。変異後の遺伝子によりコードされるタンパク質は配列表の配列番号2に示され、そのコードフレームが配列表の配列番号3に示される。
H9細胞において、FOXO3タンパク質は配列表の配列番号4に示され、そのコードフレームが配列表の配列番号5に示される。
三、FOXO3増強型の多能性幹細胞の同定
H9細胞はFOXO3+/+hESCで表される。FOXO3増強型の多能性幹細胞はFOXO32SA/2SAhESCで表される。
1、形態学的同定
形態学的同定の結果を図1に示す。H9細胞と同様に、FOXO3増強型の多能性幹細胞は、依然として体内で内胚葉細胞、中胚葉細胞、外胚葉細胞に分化する能力があった。
2、多能性幹遺伝子の発現レベルの検出
細胞内の、多能性幹遺伝子(OCT4、SOX2、NANOG)が発現されたタンパク質のレベルを免疫蛍光法で検出した。免疫蛍光同定用の抗体は、anti−NANOG (Abcam,ab21624)、anti−OCT4 (Santa Cruz、sc5279)、anti−SOX2 (Santa cruz、sc17320)であった。
結果を図2に示す。H9細胞とFOXO3増強型の多能性幹細胞は、いずれも多能性幹遺伝子(OCT4、SOX2、NANOG)を正常に発現できる。
実施例2、FOXO3増強型の間葉系幹細胞の調製及びその機能検出
一、FOXO3増強型の間葉系幹細胞の調製
1、実施例1で得られたFOXO32SA/2SA hESC細胞から胚様体を分化し、胚様体(EB)を得た。
2、ステップ1で得られた胚様体を、マトリゲル (matrigel)によってコーティングされた6ウェルプレートに接種して、繊維状細胞が発生するまで(約2週間)(間葉系幹細胞分化培地を用いて)培養した。
3、ステップ2終了後、細胞を収集し、トリプシンで消化した後、新たな間葉系幹細胞分化培地に接種し、2週間培養した。
4、ステップ3終了後、フローサイトメトリーを用いて、CD73、CD90及びCD105がいずれも陽性である細胞を選別し、すなわち、FOXO32SA/2SA MSC細胞とも呼ばれるFOXO3増強型の間葉系幹細胞を得た。
二、対照用間葉系幹細胞の調製
FOXO32SA/2SA hESC細胞の代わりにH9細胞を使用し、ステップ1に従って、FOXO3+/+ MSC細胞とも呼ばれる対照用間葉系幹細胞を得た。
三、表現型の同定及び機能の検出

1、表現型の同定
フルオレセインFITC標識抗ヒト細胞表面認識分子CD90抗体(BD Biosciences製、製品番号555595)、フルオレセインPE標識抗ヒト細胞表面認識分子CD73抗体(BD Biosciences製、製品番号550257)、フルオレセインAPC標識抗ヒト細胞表面認識分子CD105抗体(BD Biosciences製、製品番号17−1057−42)、フルオレセインAPC標識アイソタイプコントロール用抗体(BD Biosciences製、製品番号555751)、フルオレセインPE標識アイソタイプコントロール用抗体(BD Biosciences製、製品番号555749)、フルオレセインFITC標識アイソタイプコントロール用抗体(BD Biosciences製、製品番号555742)
細胞表面マーカーを検出した。FOXO32SA/2SA MSC細胞とFOXO3+/+ MSC細胞は、いずれもMSC固有の表面マーカーCD73、CD90及びCD105を発現することができ、無関係なCD34、CD43及びCD45を発現させなかった。
2、FOXO3増強型の間葉系幹細胞における環境ストレス耐性遺伝子FOXO3のアクティブ活性化
(1)FOXO3転写活性
FOXO32SA/2SA MSC細胞とFOXO3+/+ MSC細胞をそれぞれ試験細胞とした。
FHRE−Lucプラスミドは、市販のFOXO3転写活性レポータープラスミド(Addgene、#1789)であった。
Renillaベクターが記載されている参照文献:Wang S, Hu B, Ding Z, et al. ATF6 safeguards organelle homeostasis and cellular aging in human mesenchymal stem cells[J]. Cell Discov, 2018, 4(1).。
Lipofectamine 3000キット(Invitrogen)を用いて、FHRE−LucプラスミドとRenillaベクター(2×10個の細胞:0.2μg:FHRE−Lucベクター:0.2μg:Renillaベクター)を試験細胞に共トランスフェクトし、48時間培養し、次に、デュアルルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイキット(Vigorous社製、T002)を用いて細胞を分解し、生物発光法により細胞におけるFOXO3転写活性を検出した。
結果を図3に示す。図3において、左側円柱形はFOXO3+/+ MSC細胞に対応し、右側円柱形はFOXO32SA/2SA MSC細胞に対応している。その結果、FOXO32SA/2SA MSC細胞におけるFOXO3転写活性は、FOXO3+/+ MSC細胞よりも明らかに高いことが分かった。
(2)核内局在化
抗ヒトFOXA2抗体(Cell Signaling Technology製、製品番号8186S)、抗ヒトLamin B1抗体(Santa Cruz Biotechnology製、製品番号sc−6217)
FOXO32SA/2SA MSC細胞とFOXO3+/+ MSC細胞をそれぞれ試験細胞とした。
試験細胞を取り、細胞核タンパク質と細胞質タンパク質抽出キット(Beyotime Biotechnology社製、P0028)を用いて、細胞質及び細胞核成分タンパク質をそれぞれ抽出し、次に、等量のタンパク質を取って、それぞれWestern blot(細胞質マーカーβ−tubulinと細胞核マーカーLamin B1を参照とする)を行い、それぞれ細胞質及び細胞核におけるFOXO3のタンパク質含有量を検出した。
結果を図4に示す。FOXO32SA/2SA MSCにおけるFOXO3タンパク質は明らかに細胞核に入り、具体的には、FOXO32SA/2SA MSC細胞の細胞核におけるFOXO3タンパク質はFOXO3+/+ MSC細胞よりも高く、FOXO32SA/2SA MSC細胞の細胞質におけるFOXO3タンパク質はFOXO3+/+ MSC細胞よりもわずかに低いことが示された。
3、環境ストレス耐性と抗細胞老化の特性

(1)外因性刺激での高い細胞活性
FOXO32SA/2SA MSC細胞とFOXO3+/+ MSC細胞をそれぞれ試験細胞とした。
具体的なステップは以下のとおりであった。試験細胞を6ウェルプレートに広げ、500μMの過酸化水素で試験細胞を24時間刺激し、刺激が完了した後、Annexin V−EGFPアポトーシス検出キット(Vigorous、A002)を用いて、細胞のアポトーシスの状況を検出した。過酸化水素により刺激されなかった並列対照を設けた。
結果を図5に示す。過酸化水素の刺激のもとで、FOXO32SA/2SA MSC細胞はより強い細胞活性を有した。
(2)成長能の測定
FOXO32SA/2SA MSC細胞とFOXO3+/+ MSC細胞をそれぞれ試験細胞とした。
連続的に継代培養された試験細胞の成長能を細胞計数により統計した。
結果を図6に示す。FOXO32SA/2SA MSC細胞の倍増率はFOXO3+/+MSC細胞よりも明らかに高く、細胞老化に対する優れた抵抗能力を示している。
(3)SA−β−Gal染色
β−ガラクトシダーゼ染色は、老化際にSA−beta−Gal (senescence−associated beta−galactosidase)の活性レベルが高くなることに基づいて、老化細胞又は組織を染色して検出する方法である。
FOXO32SA/2SA MSC細胞の継代細胞とFOXO3+/+ MSC細胞の継代細胞をそれぞれ試験細胞とした。
初代細胞は第3世代に継代した細胞である。後代細胞は第9世代に継代した細胞である。
試験細胞をSA−β−Gal染色し、次に、写真を撮ってSA−β−Gal陽性細胞の割合を統計した。
結果を図7に示す。図7において、左側は後代細胞の染色後の写真であり、右側は初代細胞と後代細胞における染色陽性細胞の割合であった。FOXO3+/+ MSC細胞の後代細胞は大量で青色を示しており、FOXO32SA/2SA MSC細胞の後代細胞はほとんど青色を示していなかった。このことから、FOXO32SA/2SA MSC細胞の老化プロセスが遅いことを示した。
(4)有害代謝物の含有量の検出
FOXO32SA/2SA MSC細胞の第7世代に継代した細胞とFOXO3+/+ MSC細胞の第7世代に継代した細胞をそれぞれ試験細胞とした。
試験細胞を酸素遊離基プローブH2DCFDA(Invitrogen製、製品番号C6827、作動濃度1M)とともに30分間共インキュベートし、フローサイトメトリーを用いてH2DCFDAの強度(細胞内の活性酸素の含有量を示す)を検出した。
結果を図8に示す。FOXO32SA/2SA MSC細胞の第7世代に継代した細胞には、より少ない活性酸素が蓄積され、それは、FOXO32SA/2SA MSC細胞の第7世代に継代した細胞は有害代謝物をより効果的に除去できることを示している。
(5)増殖能の検出
抗ヒトKi 67抗体(Vector Laboratories製、製品番号VP−RM04)
FOXO32SA/2SA MSC細胞の継代細胞とFOXO3+/+ MSC細胞の継代細胞をそれぞれ試験細胞とした。
初代細胞は第3世代に継代した細胞である。後代細胞は第7世代に継代した細胞である。
免疫蛍光染色法により、増殖活性に関連する試験細胞におけるKi67の発現を検出した。
結果を図9に示す。FOXO32SA/2SA MSC細胞の後代細胞にはより高いKi67陽性細胞率があった。
(6)細胞核構造完全性の検出
抗ヒトLAP2抗体(BD Biosciences製、製品番号611000)
FOXO32SA/2SA MSC細胞の第7世代に継代した細胞とFOXO3+/+ MSC細胞の第7世代に継代した細胞をそれぞれ試験細胞とした。
免疫蛍光染色法により、試験細胞における核膜タンパク質Lamin B1とLAP2の発現を検出した。
結果を図10に示す。FOXO3+/+ MSC細胞の第7世代に継代した細胞に比べて、FOXO32SA/2SA MSC細胞の第7世代に継代した細胞のうちの核膜に異常のある細胞(矢印は核膜に異常のある細胞を指し、核膜タンパク質が染色の後に明らかな核膜の輪郭を見えない)の数は明らかに減少し、FOXO32SA/2SA MSC細胞の第7世代に継代した細胞はより完全な細胞核構造を有することを示している。
4、悪性転化に抵抗する特性

(1)FOXO32SA/2SATMSC細胞とFOXO3+/+TMSC細胞の調製
FOXO32SA/2SA MSC細胞とFOXO3+/+ MSC細胞をそれぞれ試験細胞とした。
プロセス模式図は図11に示され、MSCの悪性転化は、テロメアの伸長、がん抑制遺伝子の欠如、及びがん原遺伝子の変異という3つのことを含み、その過程は3種のレトロウイルスと1種のレンチウイルスを感染させることにより実現される。レンチウイルスは、緑色蛍光GFPタンパク質を同時に発現させることができ、また細胞の視認可能な標識を実現することができる。体外悪性転化システムを利用して、腫瘍形成因子を試験細胞に移し、非腫瘍のMSCを腫瘍化のMSC(transformed MSC、TMSC)に転化した。
「1.」それぞれ10μgのプラスミドpBABE−neo−hTERT、プラスミドgag/pol、及びプラスミドVSV−Gを、1×10個の293T細胞に共トランスフェクトし、培養上澄みを収集して、超高速遠心分離によりレトロウイルス粒子(レトロウイルス粒子A)を取得した。それぞれ10μgのプラスミドpBABE−zeo−large T genomic、プラスミドgag/pol、及びプラスミドVSV−Gを、1×10個の293T細胞に共トランスフェクトし、培養上澄みを収集して、超高速遠心分離によりレトロウイルス粒子(レトロウイルス粒子B)を取得した。それぞれ10μgのプラスミドpBABE−puro−HRAS V12、プラスミドgag/pol、及びプラスミドVSV−Gを、1×10個の293T細胞に共トランスフェクトし、培養上澄みを収集して、超高速遠心分離によりレトロウイルス粒子(レトロウイルス粒子C)を取得した。
「2.」15μgのプラスミドPLVTHM−shP53、10μgのプラスミドpsPAX、及び5μgのプラスミドpMD.2Gを、1×10個の293T細胞に共トランスフェクトし、培養上澄みを収集して、超高速遠心分離によりレンチウイルス粒子を取得した。
「3.」レトロウイルス粒子A(G418による選別)、レトロウイルス粒子B(zeocinによる選別)、及びレトロウイルス粒子C(puromycinによる選別)を、試験細胞に順に感染させ、3種のウイルスがいずれも組み込まれた細胞を取得し、次に、細胞にレンチウイルス粒子を感染させた。
FOXO32SA/2SA MSC細胞に対して上記ステップを行い、FOXO32SA/2SATMSC細胞を得た。
FOXO3+/+ MSC細胞に対して上記ステップを行い、FOXO3+/+TMSC細胞を得た。
(2)足場非依存性増殖能
腫瘍細胞は、非接着性寒天にクローンに成長することができるが、非瘤細胞は成長できず、従って、足場非依存性増殖能は、実体腫瘍への腫瘍細胞の形成に緊密に関連している。
FOXO32SA/2SATMSC細胞とFOXO3+/+TMSC細胞をそれぞれ試験細胞とした。
試験細胞と溶解状態のアガロース(0.35%)を均一に混合し、細胞培養皿に迅速に広げ、アガロースが凝固した後、TMSC培地を覆って培養し、足場非依存性増殖能を観察した。
写真と相対クローンのサイズは図12に示される。FOXO32SA/2SA TMSC細胞の足場非依存性増殖能は、FOXO3+/+TMSC細胞よりも大幅に弱くなった。
(3)体内腫瘍形成能力
FOXO32SA/2SATMSC細胞とFOXO3+/+TMSC細胞をそれぞれ試験細胞とした。
試験細胞(3×10個の細胞)をヌードマウス(品種:Balb/C nude mice)の後肢の関節に近く箇所に移植し(細胞懸濁液を後肢の関節に近く箇所の筋肉に注射する)、2−3ヶ月移植後、後肢に明らかな腫れが出現し、マウスを処理して、後肢を切り取って天秤で秤量した。
相対質量(相対質量=FOXO3+/+TMSCを移植した後肢の質量/FOXO32SA/2SA TMSCを移植した後肢の質量)を計算した。相対質量は2.73±0.22であった。FOXO3+/+TMSCを移植した後肢の質量は、FOXO32SA/2SA TMSCを移植した後肢の質量より明らかに大きかった。
FOXO3+/+TMSCは、骨肉腫のような腫瘍を生じることができ、FOXO32SA/2SA TMSCは、腫瘍形成の能力を徹底的に失った。
本実施例の結果から分かるように、FOXO3増強型の間葉系幹細胞におけるFOXO3がアクティブ的に活性化され、体内にも体外にも環境ストレス耐性、抗細胞老化及び悪性転化に対する抵抗特性を示している。
実施例3、細胞移植治療におけるFOXO3増強型の間葉系幹細胞の使用

試験細胞:実施例2で調製されたFOXO32SA/2SA MSC細胞又はFOXO3+/+ MSC細胞。
ルシフェラーゼluciferaseを過剰発現させたレンチウイルスベクターは、lucレンチウイルスベクターと略称される。参照文献:SIRT6 safeguards human mesenchymal stem cells from oxidative stress by coactivating NRF2. Pan et.al,. Cell research. (2016) 26:190-205、すなわち、文献における「luciferase (Control)-expressed vector」。
レンチウイルスパッケージングプラスミドpsPAXは、プラスミドpsPAXと略称される(Adgene製、製品番号12260)。レンチウイルスパッケージングプラスミドpMD2.Gは、プラスミドpMD2.Gと略称される(Adgene製、製品番号12259)。293T細胞(ヒト胚性腎細胞):ATCC、CRL−3216。
本実施例では、試験細胞を細胞移植治療に使用した。
一、ルシフェラーゼ標識試験細胞の調製
1、Lipofectamine 3000キット(Invitrogen)を用いて、15μgのlucレンチウイルスベクター、10μgのプラスミドpsPAX、及び5μgのプラスミドpMD.2Gを、1×10個の293T細胞に共トランスフェクトして、48時間培養し、次に上澄み液を収集した。
2、ステップ1で得られた上澄み液を取り、4℃、19200rpmの条件で2.5時間遠心分離し、上澄みを捨て、hMSC培地で懸濁沈殿させて、ウイルス溶液を得た。
3、ステップ2で得られたウイルス溶液を試験細胞(4×10個の細胞:MOI=3 btu/cell)に感染させ、hMSC培地で3日間培養し、細胞を収集し、トリプシンで消化した後、新たなhMSC培地に接種して3日間培養し、ルシフェラーゼ標識試験細胞を得た。
二、マウスの前脛骨筋への細胞の移植
1×10個のルシフェラーゼ標識試験細胞を、CD−1ヌードマウスの左右脚の前脛骨筋に注射し、7日間の後、動物ライブイメージャーで脚部に残留されているMSCを検出した。FOXO3+/+MSC細胞に対応する相対光強度は1であり、FOXO32SA/2SA MSC細胞に対応する相対光強度は5.8±0.28であった。
結果を図13に示し、FOXO32SA/2SA MSC細胞は、FOXO3+/+ MSC細胞よりも長く成長することができた。
三、後肢虚血の免疫不全マウス筋肉への細胞移植
先ず、7.0番号の非吸収性手術糸を用いて、免疫不全マウス(BALB/c Nudeマウス)の右後脚の動脈を結紮した直後、3×10個の試験細胞を右後脚の結紮部位の筋肉に注射し、移植後の0、4、8、12、16日目のマウスの後肢血流の回復状況をレーザードップラー流量計で検出した。試験細胞の注射の代わりにPBS緩衝液の注射を用いた対照処理を設置した。
各処理ごとに5匹のマウスを設置し、結果はその平均値とした。
結果を図14に示す。図14において、NIは結紮されないマウスの左後脚を表し、Ischは結紮された右後脚であった。PBS緩衝液の注射又はFOXO3+/+ MSCの移植に比べて、FOXO32SA/2SA MSCの移植は、損傷した後肢の血流をより速く回復することができ、FOXO32SA/2SA MSCは損傷した血管の再生及び修復に寄与したことを示している。
本発明に係るヒト間葉系幹細胞変異体は、環境ストレス及び細胞老化に抵抗することができ、より優れた組織修復機能及び悪性腫瘍の転化に対する抵抗能力を有する。本発明は、細胞移植治療における有効性と安全性という2つの重要なボトルネックとなる課題を同時に解決し、細胞移植治療の分野では応用や普及の価値が期待できる。

Claims (18)

  1. 配列表の配列番号2に示すタンパク質をコードする遺伝子をゲノムに有する組換え間葉系幹細胞。
  2. 請求項1に記載の組換え間葉系幹細胞を含む細胞移植治療用製品。
  3. 細胞移植治療における請求項1に記載の組換え間葉系幹細胞の使用。
  4. 配列表の配列番号2に示すタンパク質をコードする遺伝子をゲノムに有する組換え多能性幹細胞。
  5. 請求項4に記載の組換え多能性幹細胞を含む細胞移植治療用製品。
  6. 細胞移植治療における請求項4に記載の組換え多能性幹細胞の使用。
  7. FOXO3タンパク質の253番目のアミノ酸残基をコードするコドンの、セリンをコードするコドンからアラニンをコードするコドンへの変異と、FOXO3タンパク質の315番目のアミノ酸残基をコードするコドンの、セリンをコードするコドンからアラニンをコードするコドンへの変異との2つの変異を、多能性幹細胞のゲノムに対して行って、組換え多能性幹細胞を得るステップを含む、組換え多能性幹細胞の調製方法。
  8. 前記多能性幹細胞がヒト胚性幹細胞であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
  9. 前記ヒト胚性幹細胞がH9細胞株であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
  10. 請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法により調製された組換え多能性幹細胞。
  11. 請求項10に記載の組換え多能性幹細胞を含む細胞移植治療用製品。
  12. 細胞移植治療における請求項10に記載の組換え多能性幹細胞の使用。
  13. 請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法により、組換え多能性幹細胞を調製するステップ(1)と、
    ステップ(1)で得られた組換え多能性幹細胞を用いて、組換え間葉系幹細胞を調製するステップ(2)と、を含む、組換え間葉系幹細胞の調製方法。
  14. 請求項13に記載の方法により調製された組換え間葉系幹細胞。
  15. 請求項14に記載の組換え間葉系幹細胞を含む細胞移植治療用製品。
  16. 細胞移植治療における請求項14に記載の組換え間葉系幹細胞の使用。
  17. 配列表の配列番号2に示すタンパク質。
  18. 配列表の配列番号3に示すDNA分子。
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