JP2021506319A - ヒドロゲル型の生体機能チップマイクロ流体デバイス - Google Patents

ヒドロゲル型の生体機能チップマイクロ流体デバイス Download PDF

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Abstract

本発明は概して第一素子(11)と、第二素子(16)と、第一素子と第二素子との間に挿入されたヒドロゲル層(14)とを備える生体機能チップマイクロ流体デバイス(10)に関する。第一素子と第二素子とヒドロゲル層との形状と寸法は、本開示の使用条件において所与の方向にヒドロゲル層を伸縮させること、特にin vitroで臓器機能を模倣することを可能にするように決定される。本発明は、マイクロ流体デバイスの製造方法、生化学分野における、特に臓器の機能と構造を模倣するためのマイクロ流体デバイスの応用に更に関する。

Description

本発明は一般的に生体機能チップ(organ‐on‐chip)マイクロ流体デバイスに関する。特に、本発明は、第一素子と、第二素子と、第一素子と第二素子との間に位置するヒドロゲル層とを備えるマイクロ流体デバイスに関する。第一素子と第二素子とヒドロゲル層の形状と寸法は、ヒドロゲル層が本開示の使用条件において所与の方向に伸縮すること、特にin vitro(生体外、インビトロ)で臓器機能を模倣することを可能にするように決定される。本開示のデバイスは、生理学関連アッセイ、遺伝学的アッセイ、生物化学的アッセイ、細胞アッセイ、組織アッセイ、臓器系のアッセイの開発を可能にする。本発明は、更に、マイクロ流体デバイスの製造方法、生物医学分野における、特に臓器の構造と機能を模倣するためのマイクロ流体デバイスの応用に関する。
新規の強力なin vitro細胞アッセイの開発は生物医学産業において極めて重要なものである。基本的なメカニズムの研究を可能にすることに加えて、大規模なアッセイは、全ての最新薬の発見と検証のパイプラインの基礎である。
相当な努力にもかかわらず、2次元細胞培養とプラスチック基体に基づいた標準的なアッセイでは、生理学的状態の反復発生が未だに非常に悪く、薬の安全性と有効性の十分な予測に失敗することが多い。
こうした失敗の主な説明は、薬開発の初期段階において利用可能な生理学関連モデルの欠如である。また、学術的な研究では、多くの病原体の保有主がもっぱら人間であるため、特に感染症の研究用のモデルが比較的欠如している。有用な見識を得るには、細胞レベルでの実時間撮像が必要であるが、これは生きている動物において撮ることが難しい。小型動物モデルの使用には大きな倫理的な問題がある。従って、代わりの方法論が非常に望まれている。マイクロ流体技術、オルガノイド培養、組み合わせスクリーニングを含む多数の生体工学的手法が、標準的in vitro培養アッセイと動物実験との間の溝の架け橋となる実行可能な解決策として現在登場してきている。
近年、動物実験に対する有効な代替案を提供する希望を有する新規な細胞ベースのアッセイが登場してきた。特に、ヒト生体機能チップの開発が、ヒト細胞の生理学関連データを収集するための新たな扉を開いた。
特許文献1には、物理的手段によって固定されている一つ以上の多孔質膜(例えば、一つ以上の多孔質PDMS(ポリジメチルシロキサン)膜)によって分離された中央マイクロチャネルを有するマイクロ流体デバイスが開示されている。そのマイクロ流体デバイスの構成は、中央マイクロチャネルに隣接する追加チャネルを必要とし、追加チャネルと中央マイクロチャネルとの間の間接的な空気圧メカニズムによって圧力差を生じさせ、それに応答して膜が伸縮する。
特許文献2には、マイクロチャネルと膜とを有する臓器模倣デバイスが開示され、その膜は臓器模倣デバイスの二つの部分に物理的に固定されて、膜がそれに物理的に接続された機械的作動システムによって変調されるようにしている。
特許文献3には、膜によって分離された異なる寸法の二つのチャネルを有するマイクロ流体デバイスが開示されている。そのマイクロ流体デバイスは、膜が間接的空気圧メカニズム及び/又は内部に設けられた追加のマイクロチャネルを利用する機械的手段によって変調されるという複雑な設計を採用している。
しかしながら、細胞アッセイの生理学的関連性(3次元細胞培養、灌流、機械的力)を改善することを目的とした多大な努力にもかかわらず、既存のデバイスは、機械的に固定されている多数のマイクロサイズ部品を備える複雑な構成を要する。更に、デバイスの作動は、外部手段又は間接的メカニズムによる機械的刺激に依るものである。このようなデバイスは、マイクロサイズの複雑な部品の高精度の固定/整列を要する。更に、既存のデバイスは、生理学的な細胞マイクロ環境を反復発生することができない非生理学的な合成物質に依るものである。
国際公開第2010/009307号 国際公開第2015/138032号 国際公開第2015/138034号
S. Gobaa, S. Hoehnel, M.P. Lutolf, "Substrate elasticity modulates the responsiveness of mesenchymal stem cells to commitment cues", Integr Biol (Camb), 2015 Oct; 7(10):1135-42
本発明は、マイクロ流体技術とヒドロゲル技術の両方を組み合わせることによって、ヒト臓器マイクロ環境、特に、多数の機械的活性区画又は組織の内皮/上皮界面を反復発生させる先進の生体機能チップマイクロ流体デバイスを提供する。
ヒドロゲル型のデバイスは、調整可能な機械的特性を有する生理学的に適した基体(ヒドロゲル)上で細胞を培養することを可能にし、基体(ヒドロゲル)は、基体(ヒドロゲル)上に直接流体(液体又は気体)によって与えられる圧力で機械的に刺激されて、伸縮し、特に周期的に伸縮して、生理学的状態、例えば、心臓の鼓動、呼吸、腸の蠕動運動、筋肉伸展等を模倣する。また、タンパク質分解に敏感なヒドロゲルの使用は、播種された細胞が、提供されたソフトマトリクスに侵入して密に相互作用することを可能にする。既存の手法とは対照的に、本発明は、目標組織の細胞外マトリクス界面を生物物理学的及び生物化学的に正確に反復発生させることを可能にする改善された細胞アッセイを提供する。
従って、本発明は、生物学的区画又は組織の物理的及び/又は生理学的パラメータを模倣又は反復発生させることを、特にヒト臓器についてin vitroで可能にするヒドロゲル層の作動に依るマイクロ流体デバイスを提供する。
本発明はマイクロ流体デバイスに関し、そのマイクロ流体デバイスは、
(a)一種以上の化学官能基を表面上に備える第一素子(一種以上の化学官能基は表面に共有結合した分子に含まれる)と、
(b)互いに対向して位置する第一面と第二面を有するヒドロゲル層であって、一種以上の化学官能基(その化学官能基のうちの少なくとも一種は第一素子の表面に共有結合した分子に含まれる化学官能基のうちの少なくとも一種と反応するのに有効である)を備えるヒドロゲル層と、
(c)第二素子と、を備え、
ヒドロゲル層は、ヒドロゲル層に実質的に垂直な所与の軸に沿って第一素子と第二素子との間に位置し、第一素子と第二素子とヒドロゲル層は、第一素子とヒドロゲル層の第一面との間の少なくとも一つのマイクロチャネルと、第二素子とヒドロゲル層の第二面との間の少なくとも一つのキャビティとを画定及び/又は形成するように決定された形状と寸法を有し、少なくとも一つのマイクロチャネルと少なくとも一つのキャビティは、所与の軸が少なくとも一つのマイクロチャネルと少なくとも一つのキャビティの両方を通り抜けるように互いに相対的に配置され、
第一素子の表面に共有結合した分子に含まれる化学官能基のうちの少なくとも一種とヒドロゲル層の化学官能基のうちの少なくとも一種とは互いに共有結合している。
本願において、「素子」との用語は、ヒドロゲル層よりも硬質であるマイクロ流体デバイスの部品、ブロック、本体又は基体を称する。従って、第一素子又は第二素子の弾性率は、ヒドロゲル層の弾性率よりも高く、一般的に、第一素子のマイクロチャネル及び/又は第二素子のキャビティに導入された流体の結果として所望の程度の圧力が印加される際のヒドロゲル層の選択的刺激を可能にするのに十分高い。このような直接刺激メカニズムは、マイクロチャネルやキャビティに隣接する追加のチャネルを必要としないので、デバイスの製造が比較的単純になる。特定の実施形態では、素子は、硬質物質、特に硬質物質の平坦な片で構成される。
本願において、「表面」との用語は、第一素子又は第二素子の全表面や全外面を必ずしも表すものではなく、それらの全表面の一部や、外面の一部も含むものである。特定の実施形態では、表面は素子の全表面であるか、又は素子の実質的に全表面である。
特定の実施形態では、第一素子の表面に共有結合した分子は単分子層を形成する。単分子層は分子の単層を称する。「単分子層」と用語は、「単分子膜」や「分子の単層」との用語と相互可換に使用可能であり、また、「自己集合単層」とも称され得る。好ましい実施形態では、分子は一種類であり、同じ分子組成を有する。
「化学官能基」との用語は、二以上の「化学官能基」を示すために複数形で使用され、有機化学の分野では一般的に「官能基」と称される。化学官能基、又は単純に官能基は、化学的特性及び反応性を決める特定の原子団を称する。特定の実施形態では、化学官能基は、分子又は化合物内に存在して、その分子又は化合物の化学的特性や反応性を決める。異なる種類の化学官能基は、異なる原子団で構成される。
第一素子の表面に共有結合した分子は、化学反応に利用可能な少なくとも一種の官能基を備える。
分子は、その元々の構造において(つまり、第一素子又はヒドロゲル層と共有結合する前に)、好ましくは二つの末端基(つまり、原子団、化学官能基)を備え、各末端基は一以上の化学官能基を備える。分子の一端の化学官能基は第一素子の表面に共有結合し、分子の他端の化学官能基は、ヒドロゲル層の官能基のうち少なくとも一種に共有結合する。
本願において、「キャビティ」との用語は、中空空間を称し、素子やヒドロゲルを構成するいずれの物質も含まない。一実施形態では、キャビティは、ヒドロゲル層の面に沿って延伸し液体や気体の通過や循環を可能にするためのチャネル、特にマイクロチャネルを称する。例えば、液体は細胞培地を含む。チャネルの両端は液体や気体の流入口と流出口として機能する。他の実施形態では、キャビティは、液体を循環させずに保有することができるチャンバや容器を称する。特に、キャビティの直径(ヒドロゲル層に平行)は10mmから40mmの範囲内にあり、その高さ(ヒドロゲル層に垂直)は10μmから20mmの範囲内にある。
「マイクロチャネル」との用語は、長さ以外の寸法(例えば、幅と高さ)が1mm未満のチャネルを称する。特に、マイクロチャネルの幅(ヒドロゲル層に平行)と高さ(ヒドロゲル層に垂直)は10μmから999μmの範囲内にある。マイクロチャネルの長さ(ヒドロゲル層に平行)は、ヒドロゲル層の第一面に沿って伸び、液体の通過や循環を可能にする。マイクロチャネルの長さは0.1mmから15mmの間の範囲内とされる。マイクロチャネルの両端は液体やガスの流入口と流出口として機能する。
本願において、「ヒドロゲル層」との用語は、ヒドロゲル層の第一面又は第二面から見た際に全体的に平坦な層とみなすことができる層を称し、例えば、長方形、円形、正方形等のあらゆる形状のヒドロゲルのシートを称する。第一面と第二面はヒドロゲル層の厚さ分だけ離れていて、その厚さはヒドロゲル層の他のいずれの寸法よりも小さい。「ヒドロゲル」との用語は、その構造内に水分子を吸収又は捕捉することによって膨潤することができる架橋した親水性のポリマーやマクロモノマーの高分子ネットワーク(網目構造)を含む。一実施形態では、ヒドロゲル層の厚さはその全表面にわたって均一である。他の実施形態では、ヒドロゲル層の厚さはその全表面にわたって、特に、ヒドロゲル層の第一面がマイクロチャネルに面し、ヒドロゲル層の第二面がキャビティに面する領域にわたって不均一である。例えば、ヒドロゲル層は、その領域においてヒドロゲル層の残りの部分に対して異なる厚さや薄い厚さを有し得る。
本発明者は、ヒドロゲル層の作動に依る新規生体機能チッププラットフォームを有利に設計した。共有結合の形成を介してヒドロゲル層が化学的に結合したデバイスは、ヒドロゲル層の一側(つまり、第一面)のマイクロチャネルとヒドロゲル層の対向側(つまり、第二面)のキャビティとの流体圧力差に応答してヒドロゲル層が伸縮することを可能にする。このようなデバイス組み立てに関する技術的利点として、構成要素の機械的操作の複雑性の低減と、デバイスの長期安定性の改善が挙げられる。特に、ヒドロゲル層の不可逆的共有結合が、偶発的な分解や破裂や漏れの危険性を低減しながらデバイスの単純で直接的な作動メカニズムに寄与する。更に、そのデバイス設計は、作動させたくないヒドロゲル層の部分に圧力が印加されないこと(つまり、ヒドロゲル層が二つの素子/構成要素の間でデバイス内で押し潰されないこと)を保証し、上述のように流体差圧に基づいたヒドロゲル層の作動によってのみヒドロゲル層が圧力を受ける。本発明は、生物学的設定においてどのようにしてヒドロゲル層が動力変換器として使用可能であるのかを初めて実証している。
本開示のヒドロゲル層は、間葉(ストローマとも称される)を再現することができる。ヒドロゲル層は不活性ではなく、例えば、タンパク質分解に敏感である。更に、ヒドロゲル層は、ヒドロゲル層の両側に位置するマイクロチャネルとキャビティとの間に化学勾配を生じさせることを可能にする。
本発明によると、本開示のマイクロ流体デバイスの配置構成は、少なくとも一つのマイクロチャネルと少なくとも一つのキャビティの両方を通り抜ける所与の軸に沿って互いに配置された少なくとも一つのマイクロチャネルと少なくとも一つのキャビティとの間に流体差圧を印加する等のヒドロゲル層の刺激時に、第一素子とヒドロゲル層の第一面との間の少なくとも一つのマイクロチャネルに向かう、又は第二素子とヒドロゲル層の第二面との間の少なくとも一つのキャビティに向かう方向にヒドロゲル層を作動させ変形させることを可能にする。
本願において、「ヒドロゲル層の作動」との用語は、ヒドロゲル層を動かす又は弾性変形させる作用を称する。
本願において、「ヒドロゲル層の変形」との用語は、特にヒドロゲル層を伸縮させることによる、ヒドロゲル層の形状の可逆的な変更又は変化を称する。その変形は特に可逆的であり、ヒドロゲル層の刺激で停止可能である。
伸縮の作用は、ヒドロゲル層の接触面(第一面又は第二面)に垂直に圧力を与える流体に起因する圧力をヒドロゲル層が受けるにつれてのヒドロゲル層の周期的な伸展によって特徴付けられ、これがヒドロゲル層を屈曲させ又は曲げる。特に、ヒドロゲル層が受ける圧力は、ヒドロゲル層の第一面上のマイクロチャネルとヒドロゲル層の第二面上のキャビティとの間の流体圧力差に起因するものである。
本願において、「ヒドロゲル層の刺激」との用語は、刺激を印加し、それに応答して伸縮することによって動く又は弾性変形するようにヒドロゲル層を作動させること(つまり、ヒドロゲル層を運動させること)、例えば、第一素子とヒドロゲル層の第一面によって画定されるマイクロチャネルと第二素子とヒドロゲル層の第二面との間のキャビティとの間の圧力差を称する。
圧力差、特に流体圧力差は、ヒドロゲルの第一面上のマイクロチャネルを流れる流体(気体又は液体)と、ヒドロゲルの第二面上のキャビティを流れる流体(気体又は流体)によって生じる。流体は、液体の流量及び/又は気体の圧力を調整することによってヒドロゲル層の第一面と第二面に多様な量の圧力を与える。
従って、ヒドロゲル層の作動は、マイクロチャネル及び/又はチャネル内の液体圧力又は気体圧力のいずれかを変更することによって引き起こされる。
ヒドロゲル層の第一面上のマイクロチャネル内の流体とヒドロゲル層の第二面上のキャビティ内の流体は同じ方向に又は逆方向に流れ得る。
一実施形態では、ヒドロゲル層の第一面上のマイクロチャネルのうちの少なくとも一つ又はヒドロゲル層の第二面上のキャビティのうちの少なくとも一つ内の流体は気体である。ヒドロゲル層の圧力を印加するための気体の使用は、例えば、肺胞の再構築を可能にし得る。
一実施形態では、ヒドロゲル層の第一面上のマイクロチャネルのうちの少なくとも一つ又はヒドロゲル層の際に面上のキャビティのうちの少なくとも一つ内の流体は液体である。液体の使用は、気体と比較して低い液体の圧縮性に起因してキャビティ内の圧力のより良い制御を可能にするので、ヒドロゲル層の変調(つまり、弾性変形)の良好な制御を可能にする。
好ましい実施形態では、デバイスに含まれる全てのマイクロチャネルとキャビティ内の流体は液体である。
一実施形態では、第一素子はヒドロゲル層の第一面と物理的に接触し、第二素子はヒドロゲル層の第二面と接触するか又は接触しないものとなり得る。
他の実施形態では、第二素子は第一素子と物理的に接触し、ヒドロゲル層は第一素子と第二素子の一方又は両方と物理的に接触する。
第一素子と第二素子との間の接触は、本発明の全ての実施形態においてヒドロゲル層に何ら圧力を与えない。第一素子と第二素子は直接的又は間接的に互いに固定され、少なくとも一つのマイクロチャネルと少なくとも一つのキャビティとの間の圧力差を生じさせるための手段を構成する流体回路内にヒドロゲル層が密閉して収容されるようにする。
特定の実施形態では、ヒドロゲル層に面する第二素子の表面は一種以上の化学官能基を備え、その化学官能基のうちの少なくとも一種はヒドロゲル層の化学官能基のうちの少なくとも一種に共有結合する。その一種以上の化学官能基は、第二素子の表面に共有結合する分子に含まれる。一種以上の化学官能基を含む分子は、第一素子の表面に共有結合する一種以上の化学官能基を含む分子と同一であるか又は同一ではないものとなり得る。従って、第二素子の表面上の一種以上の化学官能基は、第一素子の表面上の一種以上の化学官能基と同一であるか又は同一ではないものとなり得る。
本発明の他の実施形態では、デバイスは、第一素子と第二素子の少なくとも一方が少なくとも二つの片、つまり第一片と第二片で作製されるように構築可能である。例えば、第一素子の第二片は第一素子の第一片と第二素子との間に位置する。第一素子の第二片は、第一素子の第二片の第一面が第一素子の第一片と接触し、第一面と対向する第一素子の第片の第二面が第二素子と接触するように構成される。他の同様の例では、第二素子の第二片は第二素子の第一片と第一素子との間に位置する。第二素子の第二片は、第二素子の第二片の第一面が第二素子の第一片と接触し、第一面に対向する第二素子の第二片の第二面が第一素子と接触するように構成される。
一実施形態では、第一素子又は第二素子の第二片は、ヒドロゲル層の第二面と第二素子との間に一つ以上のキャビティを生成するスペーサ素子として機能する。他の実施形態では、第一素子又は第二素子の第二片は、一つ以上の中空構造(中空の円、正方形又は長方形)を有する環状素子である。例えば、第二片は、円形、正方形、長方形等のあらゆる形状の環状シーリング素子、特に、円形の部分を有するリング、つまりОリングであり、ヒドロゲル層の第二面と第二素子との間の液体又は気体の漏れを防止する。特定の実施形態では、第一素子又は第二素子の第二片は、ヒドロゲル層の第二面と第二素子との間の一つ以上のキャビティを生成するためのスペーサ、及び、ヒドロゲル層の第二面と第二素子との間の液体又は気体の漏れを防止する環状シーリング素子としての二重の機能を有する。
一実施形態では、第一素子と第二素子の一方又は両方は、少なくとも一つの窪み又は凹みを、特にその少なくとも一つの平坦な側又は表面に備える。少なくとも一つの窪み又は凹みは、多様な方法(フォトリソグラフィ、レーザーアブレーション、マイクロミリング、エッチング、モールディングが挙げられるがこれらに限定されない)によって生成され、また、あらゆる形状や寸法を有し得る。特定の実施形態では、窪み又は凹みは、その窪み又は凹みが含まれる表面に垂直な少なくとも一つの壁を備え、その窪み又は凹みの高さ又は深さを定める。
第一素子と第二素子に含まれる少なくとも一つの窪み又は凹みは、同じ又は異なる形状と寸法を有し得る。一実施形態では、ヒドロゲル層の第二面と第二素子との間の少なくとも一つのキャビティを形成/画定する第二素子に含まれる少なくとも一つの窪み又は凹みは、ヒドロゲル層の第一面と第一素子との間の少なくとも一つのマイクロチャネルを形成/画定する第一素子に含まれる少なくとも一つの窪み又は凹みの幅と比較して広い幅を有する。
「窪み」や「凹み」との用語は溝を含む。特定の実施形態では、第一素子は、少なくとも一つのマイクロチャネルを形成するようにヒドロゲル層によって覆われる少なくとも一つの溝を備える。
本願において「溝」との用語は、表面の細長い、ナノメートルからセンチメートル、特にマイクロメートル範囲の窪みや凹みを称し、その溝は多様な手段(フォトリソグラフィ、レーザーアブレーション、マイクロミリング、エッチング、モールディングが挙げられるがこれらに限定されない)で形成される。溝は、その長手方向に沿ってあらゆる形状のものであり得て、あらゆる形状の断面を有し得る。例えば、溝は湾曲してもよいが、好ましくは直線、つまり真っ直ぐであり、また、湾曲した又は矩形の断面を有し得る。
特定の実施形態では、第一素子の一方の側が、マイクロチャネルを形成するようにヒドロゲル層によって覆われる溝を備える。ヒドロゲル層の第一面の表面積は、第一素子のその側に含まれる溝を覆うような寸法にされる。ヒドロゲル層の第一面は、溝の幅で分離された二つの表面上に溝を備える第一素子の側に共有結合する。溝の幅で分離された二つの表面の表面積は、共有結合したヒドロゲル層がデバイスの使用(つまり、流体圧力差での作動)中に取り付けられたままであるのに十分なものである。
一実施形態によると、第一素子と第二素子の少なくとも一方は、ヒドロゲル層が内部に取り付けられる凹部備える。ヒドロゲル層は、少なくとも一つのマイクロチャネルを形成するように第一素子の表面上に形成された少なくとも一つの溝を覆い得る。また、凹部は、第一素子に形成され得て、少なくとも一つの溝を有する底部を備え得る。
特定の実施形態では、凹部は、第二素子に適用される環状表面を開口し、少なくとも一つのマイクロチャネルに対向するようにヒドロゲル層に対して配置される少なくとも一つのキャビティを形成する。
第一素子と第二素子の各々は、シリコーンゴム(つまり、ポリシロキサン)、結晶珪素、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シリカ(例えば、石英やガラス)、熱可塑性物質、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、ポリウレタン(PU)、ペルフルオロ化合物(例えば、ペルフルオロアルコキシ(テフロン(登録商標)PFA)やフッ素化エチレンプロピレン(テフロン(登録商標)FEP))、ポリオレフィン、例えば、環状オレフィンコポリマー(COC)、環状オレフィンポリマー(COP)、環状ブロックコポリマー(CBC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリイミド(PI)、乳酸グリコール酸共重合体(PLGA,poly lactic‐co‐glycolic acid)、熱硬化性ポリエステル(TPE)、非化学量論的チオレン(OSTE,off‐stoichiometry thiolene)、透明セラミック、例えば、酸化アルミニウム(Al)、スピネル(MgAl)、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)、ネオジムドープイットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)、紙(透明又は半透明の紙)から選択された一種の物質又は物質の組み合わせを備えるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、第一素子と第二素子はシリカ(例えば、石英やガラス)を備える。他の実施形態では、第一素子と第二素子は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、熱可塑性物質、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン(PU)、ペルフルオロ化合物(例えば、ペルフルオロアルコキシ(テフロン(登録商標)PFA)やフッ素化エチレンプロピレン(テフロン(登録商標)FEP))、ポリオレフィン、例えば、環状オレフィンコポリマー(COC)、環状オレフィンポリマー(COP)、環状ブロックコポリマー(CBC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリイミド(PI)、乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)、熱硬化性ポリエステル(TPE)を備える。
第一素子と第二素子は同一の物質を備えるか又は備えないものとなり得る。特定の実施形態では、第一素子と第二素子は同じ物質製である。他の実施形態では、第一素子と第二素子は異なる物質製である。
特定の実施形態では、第一素子及び/又は第二素子は、例えば、光学顕微鏡、蛍光顕微鏡、電子顕微鏡によるマイクロ流体デバイスの使用時に生成される信号の検出を可能にするのに適した物質製である。そのような物質は、特に、少なくとも一つのマイクロチャネル及び/又は少なくとも一つのキャビティ及び/又はヒドロゲル層の第一面や第二面、又はバルクのヒドロゲル内の成分(例えば、生物学的、化学的、又は生物化学的な化合物)によって放出される少なくとも一つの電磁波の検出を可能にする。特に、その検出は蛍光発光の検出である。
好ましい実施形態では、第一素子と第二素子の少なくとも一方又は全部は、上記物質の群から選択された透明(透過性)又は半透明(半透過性)の物質を備える。
更なる好ましい実施形態では、第一素子はPDMSを備えるか又はPDMSから成る。他の好ましい実施形態では、際に素子はシリカを備えるか又はシリカから成る。
特定の実施形態では、第一素子又は第二素子の表面に共有結合する分子に含まれる化学官能基は、チオール基(‐SH)を備える。第一素子又は第二素子の表面に共有結合する分子は、反応性官能基XとYを含む一般化学式X(CHSiYを有し得る。Xは、第一素子と第二素子の一方又は両方の表面上に晒され、特にヒドロゲル層の官能基(ビニルスルホン基等)と化学反応して共有結合することができる官能基、例えば、メルカプト基であり、nは1から3の整数であり、Yはメトキシ基、エトキシ基、メチル基等の官能基である。Yは、第一素子又は第二素子の表面に共有結合する基である。このような分子の例として、3‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3‐メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3‐メルカプトプロピルメチルジメトキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、分子は、3‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS)を備えるか又はこれから成る。
特定の実施形態では、第一素子又は第二素子の表面の少なくとも一部に共有結合する分子に含まる化学官能基はチオール基を備え、ヒドロゲル層に含まれる化学官能基はビニルスルホン基を備える。他の実施形態では、第一素子又は第二素子の表面の少なくとも一部に共有結合する分子に含まる化学官能基はチオール基を備え、ヒドロゲル層に含まれる化学官能基はアクリレート基又はマレイミド基、又はあらゆるチオール反応性官能基を備える。
特定の実施形態では、ヒドロゲル層は1kPaから50kPaの範囲内の弾性率(剛性率)を有する。好ましい実施形態では、ヒドロゲル層の剛性率は10kPaから30kPaの範囲内にである。弾性率(剛性率)の値の選択は、マイクロチャネルやキャビティの幅、ヒドロゲル層の密度と厚さ、所望の変形度、ヒドロゲル層の中又は上の細胞の存在(ヒドロゲルの剛性の選択は、培養される細胞に依存する)、使用中のデバイスの温度に依存する。上記範囲内の剪断弾性率は、使用時に最大25%のヒドロゲル層の伸展(つまり、伸長又は収縮)を有利に可能にする。ヒドロゲル層の伸展度は以下のようにして定量化される:(i)液圧の印加前後のヒドロゲル層上に播種された細胞の面積を比較することによって、又は、(ii)ヒドロゲル内に蛍光性微小球(例えば、ポリスチレンビーズ)を埋め込んで、牽引力顕微鏡法(TFM,traction force microscopy)によってビーズ間の距離の変動を測定することによって定量化される。
「弾性率」との用語は、ヒドロゲル等の物質の所与の面積に印加される力・対・その印加される力に起因する物質の変形の比を記述する定数を称する。本開示の弾性率の値は、剪断率又は剛性率を称し、物質の剛性を記述し、剪断応力対剪断歪みの比として定義される。ヒドロゲル層の弾性率(剛性率)は、マイクロレオメーター等の当該分野において既知の技術によって測定される。例えば、マイクロレオメーターを用いた方法は、非特許文献1(“Measurements of substrate stiffness”の段落を参照)に記載されている。当業者は、弾性率の測定に適したパラメータを決定することができるものである。
特定の実施形態では、ヒドロゲル層は30μmから500μm、より好ましくは150μから350μm、特に170μmから340μm、より具体的には150μmから200μmの範囲内の厚さを有する。
特定の実施形態では、デバイスは二層以上のヒドロゲルを備える。例えば、デバイスは1層から3層のヒドロゲルを備え、各ヒドロゲル層は30μmから500μmの範囲内の厚さを有する。一実施形態では、一つ以上のヒドロゲル層の全厚さは170μmから340μmの範囲内にある。他の実施形態では、一つ以上のヒドロゲル層の厚さは170μmである。二層以上のヒドロゲルは化学結合(つまり、共有結合)によって互いに有利に結合される。
ヒドロゲル層は、ポリマー骨格に結合した親水性官能基を有する一つ以上のマクロモノマー又は親水性のマクロモノマーのポリマーネットワーク又は重合ネットワーク(網目構造)を備える又はから成るポリマーマトリクスを備える。特定の実施形態では、ポリマーマトリクスはポリエチレングリコール(PEG)、特に官能化PEGを備える。好ましい実施形態では、ポリマーマトリクスは、二種の異なる官能化PEGマクロモノマー(つまり、一種の官能基を含むPEGマクロモノマー、他の官能基を含む他のPEGマクロモノマー)の重合ネットワークを備える。
特定の実施形態では、PEGヒドロゲル濃度は2.5%から10%(w/v)の範囲内にある。好ましい実施形態では、PEGヒドロゲル濃度は5%から10%(w/v)の範囲内にある。更なる好ましい実施形態では、PEGヒドロゲル濃度は5%(w/v)である。
好ましい実施形態では、一種以上のマクロモノマーのポリマーマトリクスは、ビニルスルホン基、チオール基、又はそれら両方の基を備える。ヒドロゲル層のポリマーマトリクスは、好ましくは、SH基とVS基との間の反応、特にマイケル付加反応を介して、PEG‐SHマクロモノマー(特に星形又は分岐型のPEG‐SHマクロモノマー)とPEG‐VSマクロモノマー(特に星形又は分岐型のPEG‐VSマクロモノマー)との架橋によって形成される。このような場合、SH基とVS基との間の共有結合がマクロモノマー同士を架橋してポリマーマトリクスを形成する。特定の実施形態では、ポリマーマトリクスは不飽和SH基及び/又は不飽和VS基を備える。
他の実施形態では、PEGを備えるポリマーマトリクスは、PEGマクロモノマー同士の間の架橋剤としてポリペプチドを備え、例えば、LutolfとHubbelが2003年に報告した方法を用いる。ポリペプチドを介して架橋したPEGマクロモノマーを備えるポリマーマトリクスは、メタロプロテイナーゼ(MMP)等の多様なプロテナーゼに対して敏感である。
「ポリマーマトリクス」との用語は、マクロモノマーの架橋によって形成されたポリマーネットワーク又は重合ネットワーク(網目構造)を称する。本発明の開示によると、異なる官能基を含む二以上のマクロモノマーが架橋されて、互いに反応し易い異なる官能基間の共有結合の形成を介してポリマーマトリクスを形成する。二種の反応性官能基の化学量論的モル比(つまり、等モル量)が満たされていれば、官能基は架橋が完了するまで不飽和のままである(つまり、反応に利用可能である)。特定の実施形態では、二種の反応性官能基の化学量論的モル比は満たされず、結果として、ポリマーマトリクス中に不飽和官能基がモル過剰で追加される。官能基は、ポリマーマトリクスの形成において架橋接合部として機能する。
「マクロモノマー」との用語は、より高い分子量を有するポリマー又は巨大分子の形成をもたらす後続の架橋のための前駆体として機能するポリマーやオリゴマー等の巨大分子を称する。マクロモノマーは、線形、環状、分岐型の構造/構成等の多様な構造/構成(例えば、星形、櫛形、ブラシ形、超分岐型、樹枝状、H字形、長鎖分岐型、ダンベル形等)を有し得る。
特定の実施形態では、ヒドロゲル層は、ビニルスルホン基に対して0から10%の範囲内のモル過剰の量のチオール基を備える。このような場合、ヒドロゲル層の表面とバルク部分に存在する不飽和チオール基は、化学反応し易く、特に、細胞接着分子(特に、その不飽和チオール基に共有結合する架橋剤を備える細胞接着分子)に結合するのに利用可能である。
特定の実施形態では、ヒドロゲル層は、タンパク質やペプチドを更に固定するために1.2mMの遊離チオール基を含む。
特定の実施形態では、ヒドロゲル層はマイクロ構造又はマイクロパターンを備える。フォトリソグラフィ、マイクロミリング又はモールディングによって生成されるトポグラフィ構造のスタンプ(例えば、PDMS、シリコーン、ガラス、プラスチック、セラミック、又は金属製)を用いて、目標の臓器、特に腸陰窩や腸絨毛の構造を反復発生させるために、ヒドロゲル層の表面の少なくとも一部にマイクロ構造又はマイクロパターンを生成し得る。こうしたスタンプは以下の二つの方法で使用可能である:
1‐部分的に架橋したヒドロゲルの表面のソフトエンボス(Kobel等が2009年に報告)。概説すると、この方法は、部分的に架橋したヒドロゲル上に構造化スタンプを押すことを要する。押された構造のネガは、架橋反応の完了時にヒドロゲルに永続的に転写される。
2‐ヒドロゲル層をキャスティングしながらの構造のモールディング(Lutolf等が2009年に報告)。この方法は、スタンプと平坦なテフロン(登録商標)又はシラン化ガラススライドとの間にヒドロゲル前駆体溶液を挟むことを伴う。用いられるスペーサの厚さが、生成される構造化ヒドロゲル層の厚さを決める。
本発明のマイクロ流体デバイスは、細胞又は合成組織の成長、膨張、分化、生物学的活動の観測に対するアッセイ(構造アッセイ、機能アッセイを含む)を行うことを目的とした細胞、特に哺乳類細胞の播種に適している。従って、マイクロ流体デバイスは、接着分子等の分子の結合を介してヒドロゲル層の上及び/又は内部に播種細胞を維持することを可能にする。タンパク質分解に敏感なヒドロゲルの使用は、播種された細胞が、提供されたソフトマトリクスに侵入して密に相互作用することを可能にする。
特定の実施形態では、少なくとも一種の細胞接着分子は、ヒドロゲル層の第一面とヒドロゲル層の第二面とヒドロゲル層のバルク部分とのうちの少なくとも一つ又はこれらの組み合わせに結合(例えば、共有結合、又は非共有結合)する。「ヒドロゲル層のバルク部分」との用語は、ヒドロゲル層の第一面と第二面との間のヒドロゲル層の厚さ内の部分を称する。少なくとも一種の細胞接着分子は以下のようにしてヒドロゲル層に結合することができる:即ち、(i)ヒドロゲル層の重合化段階中にヒドロゲル層のバルク部分内に導入することによって(例えば、PEGマクロモノマーの混合物に追加可能である)、及び/又は、(ii)マイクロチャネル又はキャビティ内に細胞接着分子含有液体を導入することによって。
好ましくは、細胞接着タンパク質等の細胞接着分子は、ヒドロゲル層の少なくとも一種の化学官能基に共有結合する。特定の実施形態では、細胞接着分子はヒドロゲル層のチオール基に共有結合する。
特定の実施形態では、細胞接着細胞は、細胞に対する接着機能を改善するように標識又は修飾される。特定の実施形態では、細胞接着細胞は、Fc抗体フラグメントで標識され、ヘテロ二官能性タンパク質架橋試薬、例えば、ヘテロ二官能性NHS‐PEGマレイミド架橋剤で修飾される。この架橋剤は、まず、生理的pHにおいて一次又は二次アミンをその構造に有する対象分子(アミン酸、ペプチド、タンパク質)と反応する。これは、対象分子とヘテロ官能性架橋剤との間のアミド結合の形成を可能にする。このようにして、対象分子とヘテロ官能性架橋剤との間の化学量論比を調整することによって、可変数(典型的には1から20個)のマレイミド基を有する対象分子を生成することができる。
特定の実施形態では、ヘテロ二官能性タンパク質架橋試薬で修飾された細胞接着分子は、そのヘテロ二官能性タンパク質架橋試薬とヒドロゲル層のチオール基との間の共有結合の形成を介してヒドロゲル層のチオール基に結合する。
他の実施形態では、Fc抗体フラグメントで修飾された細胞接着分子は、タンパク質A、タンパク質G、又はFCフラグメントに対する親和性を有する他の分子を含むヒドロゲル層(親和性に基づく)に吸着する。上記実施形態と同様に、タンパク質Aは、ヒドロゲル層のチオール基に共有結合するヘテロ二官能性タンパク質架橋試薬に共有結合する。この特定の実施形態では、マイクロチャネル又はキャビティに与えられるアッセイ流体は、抗体や、抗体のFcフラグメントを含まない。
特定の実施形態では、細胞接着分子は、フィブロネクチンと、コラーゲンと、ラミニンのうちのいずれか一つ、又はこれらの組み合わせや断片を備える。特定の実施形態では、細胞接着分子、特に細胞接着タンパク質又はペプチドで予め官能化されたヒドロゲル層の第一面上に細胞を堆積させる。同じ工程を、ヒドロゲル層の第二面、ヒドロゲル層のバルク部分、又はこれらの組み合わせに対して行うことができる。特定の実施形態では、ヒドロゲル層の第一面と、ヒドロゲル層の第二面と、ヒドロゲル層のバルク部分のいずれか一つ又はこれらの組み合わせは、同一又は異なる種類の細胞を含む。
特定の実施形態では、細胞は一つ以上の層を形成する。
細胞はヒト細胞を含む。ヒト細胞は、一次細胞、不死化細胞株、上皮細胞、内皮細胞、間葉幹細胞、脳細胞、筋肉細胞、免疫細胞、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞から成る群から選択され得る。表面にインテグリン受容体を示す全ての接着性細胞は、ヒドロゲル層の二つの表面(つまり、第一面と第二面)に播種及び結合可能である。非接着性細胞と接着性細胞はヒドロゲル層のバルク部分内に封止可能である。
特定の実施形態では、間葉起源の細胞(線維芽細胞、骨髄由来の間葉一次細胞、及び/又は腸ストローマ細胞等、これらに限定されない)が簡単に定住(存在)及び移住(移動)(例えば、循環や存在)することができる間葉を模倣するように本デバイスが使用され得る。
一例では、TC7 Caco2上皮細胞がヒドロゲル層の第一面に播種されて、HUVEC(Human umbilical vein endothelial cell,ヒト臍帯静脈内皮細胞)がヒドロゲル層の第二面に播種される。
本発明の特定の実施形態では、上述のマイクロ流体デバイスは、集積デバイスであり、
その集積デバイスは、互いに対向する第一面と第二面を有するヒドロゲル層と、第一素子と、第二素子を備え、
そのヒドロゲル層は、ヒドロゲル層に実質的に垂直な所与の軸に沿って第一素子と第二素子との間に位置し、第一素子と第二素子とヒドロゲル層は、第一素子とヒドロゲル層の第一面との間の少なくとも一つのマイクロチャネルと、第二素子とヒドロゲル層の第二面との間の少なくとも一つのキャビティを画定するように決定された形状と寸法を有し、少なくとも一つのマイクロチャネルと少なくとも一つのキャビティは、所与の軸が少なくとも一つのマイクロチャネルと少なくとも一つのキャビティの両方を通り抜けるように互いに配置され、
その集積デバイスは、少なくとも一つのマイクロチャネルと少なくとも一つのキャビティとの間の圧力差を生じさせるための手段を備える。
その手段は、貯蔵ユニットからの液体又は圧縮気体シリンダからの気体を少なくとも一つのマイクロチャネルと少なくとも一つのキャビティに伝えるためのポンプ、バルブ、及びパイプを備え得る。その手段は、流量計、圧力計、センサ、インジケータ及びスイッチを更に備え得る。
本デバイスは、第一素子及び/又は第二素子を通り、少なくとも一つのマイクロチャネル及び/又は少なくとも一つのキャビティに対して液体又は気体を導入及び/又は回収するための導管を備え得る。
特定の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、第一素子とヒドロゲル層を通り、少なくとも一つのキャビティに対して液体又は気体を導入及び/又は回収するための導管を更に備える。
好ましくは、導管の接続は、マイクロ流体デバイスの同じ側で為される。
特定の実施形態では、第一素子と第二素子の少なくとも一方が、少なくとも一つのマイクロチャネル及び/又は少なくとも一つのキャビティ内の成分(例えば、生物学的、化学的、又は生物化学的な化合物)によって放出される少なくとも一つの電磁波長に対して透明(透過性)であり、例えば、顕微鏡を用いた信号検出又は視覚的検出又を可能にする。
特定の実施形態では、第一素子と第二素子とヒドロゲル層は、ホルダの支台とクランピング素子(好ましくは、ナット等の取り外し可能な素子)との間においてホルダに取り付けられる。
また、本発明は、本発明に係るマイクロ流体デバイスを製造するための方法にも関し、その方法は、
(a)第一素子と第二素子を製造又は提供すること、
(b)PDMS等の第一素子の表面を一種以上の化学官能基を備える分子で官能化すること、
(c)任意で、PDMS等の第二素子の表面を一種以上の化学官能基を備える分子で官能化すること、
(d)第一素子、第二素子又は両方の素子の表面上の分子の化学官能基のうち少なくとも一種と有効に反応する一種以上の化学官能基を含むヒドロゲル層を製造又は提供すること、
(e)第一素子と第二素子の間にヒドロゲル層を配置すること、及び、
(f)第一素子、第二素子又は両方の素子の表面上の分子の化学官能基のうち少なくとも一種をヒドロゲル層の化学官能基のうち少なくとも一種と共有結合反応させること、を備える。
本発明の他の実施形態では、本発明に係るマイクロ流体デバイスを製造するための方法は以下のステップを備える:
(a)第一素子の第一片と、第一素子の第二片と、第二素子を製造又は提供するステップ、
(b)PDMS等の第一素子の第一片の表面を一種以上の化学官能基を備える分子で官能化するステップ
(c)任意で、PDMS等の第二素子の表面を一種以上の化学官能基を備える分子で官能化するステップ
(d)第一素子の第一片及び/又は第二素子の表面上の分子の化学官能基のうち少なくとも一種と有効に反応する一種以上の化学官能基を含むヒドロゲル層を製造又は提供するステップ、
(e)第一素子と第二素子の間にヒドロゲル層を配置するステップ、及び、
(f)第一素子の第一片及び/又は第二素子の表面上の分子の化学官能基のうち少なくとも一種をヒドロゲル層の化学官能基のうち少なくとも一種と共有結合反応させること。
本発明の更に他の実施形態では、本発明に係るマイクロ流体デバイスを製造するための方法は以下のステップを備える:
(a)第一素子と、第二素子の第一片と、第二素子の第二片を製造又は提供するステップ、
(b)PDMS等の第一素子の表面を一種以上の化学官能基を備える分子で官能化するステップ、
(c)任意で、PDMS等の第二素子の第一片の表面を一種以上の化学官能基を備える分子で官能化するステップ、
(d)第一素子及び/又は第二素子の第一片の表面上の分子の化学官能基のうち少なくとも一種と有効に反応する一種以上の化学官能基を含むヒドロゲル層を製造又は提供するステップ、
(e)第一素子と第二素子との間にヒドロゲル層を配置するステップ、及び、
(f)第一素子及び/又は第二素子の第一片の表面上の分子の化学官能基のうち少なくとも一種をヒドロゲル層の化学官能基のうち少なくとも一種と共有結合反応させるステップ。
特定の実施形態では、本方法は、ステップ(d)とステップ(e)の間に以下のステップを備え:
(i)少なくとも一種の細胞接着分子、特に細胞接着タンパク質を製造又は提供するステップ、
(ii)任意で、ヒドロゲル層を製造するステップ中に少なくとも一種の細胞接着分子をヒドロゲル層の化学官能基のうち少なくとも一種と共有結合させて、少なくとも一種の細胞接着分子がヒドロゲル層のバルク部分内に存在するようにするステップ、
(iii)任意で、ヒドロゲル層を製造するステップ中にヒドロゲル層のバルク部分内に細胞を播種するステップ、
そして、ステップ(f)の後に以下のステップを備える:
(g)少なくとも一種の細胞接着分子とヒドロゲル層の化学官能基のうち少なくとも一種を共有結合させて、少なくとも一種の細胞接着分子がヒドロゲル層の第一面、第二面又は両面に存在するようにするステップ、及び、
(h)ヒドロゲル層の第一面、第二面又は両面に同一又は異なる種類の細胞を播種するステップ。
「官能化」との用語は、共有結合を形成することによって物質の表面に分子、化合物又は原子が結合することを称する。
本願において、「官能化する」との動詞は、物質の表面特性を改質するプロセス、例えば、分子の結合や官能基による化学結合の置換を介して新たな機能を追加することによる改質プロセスを称する。
本発明の一実施形態では、第一素子、第二素子又は両素子の表面は酸素プラズマで処理される。他の実施形態では、第一素子の第一片及び/又は第二片、又は第二素子の第一片及び/又は第二片の表面が酸素プラズマで処理される、酸素プラズマは、極性表面基、例えば、シラノール基(SiOH)を導入するために行われる。酸素プラズマ処理は、表面接着特性を改善するようにその処理表面を改質することによって、処理表面を「活性化」する。当業者は、所与の物質を改質するための酸素プラズマ処理の適切なパラメータと条件を決定することができるものである。一例として、PDMSの表面を、35mbar、50mWで1分間にわたる酸素プラズマへの曝露によって改質し得る。
特定の実施形態では、第一素子、第二素子、又は両素子の酸素プラズマ処理された表面を、チオール基又はスルフヒドリル基を備える分子に更に接触させる。このステップは、酸素プラズマ処理された表面上へのその分子の移植又は結合に関する。その分子は、0.1から10%(v/v)の範囲内の濃度で溶液内に含まれ得る。
分子は、反応性官能基XとYを含む一般化学式X(CHSiYを有し得る。Xは、第一素子と第二素子の一方又は両方の表面上に晒され、特にヒドロゲル層の官能基(ビニルスルホン基等)と化学反応して共有結合することができる官能基、例えば、メルカプト基であり、nは1から3の整数であり、Yはメトキシ基、エトキシ基、メチル基等の官能基である。Yは、第一素子又は第二素子の表面に共有結合する基である。このような分子の例として、3‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3‐メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3‐メルカプトプロピルメチルジメトキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、分子は、3‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS)を備えるか又はこれから成る。
第一素子、第二素子又は両素子の酸素プラズマ処理された表面に分子を接触させるのに使用可能な方法として、浸漬(つまり、溶液浴)、ドロップキャスト、スピンコーティング、ディップコーティング、気相堆積等が挙げられるが、これらに限定されない。
特定の実施形態では、第一素子、第二素子又は両素子の酸素プラズマ処理された表面は、エタノールと酢酸の混合物中の1%(v/v)の3‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS)の溶液中に一時間にわたって浸漬される。次いで、MPS処理された表面が、70%(v/v)のエタノールで洗浄され、110℃で1時間にわたって焼成される。
特定の実施形態では、第一素子、第二素子又は両素子の官能化表面は、10mMのジチオスレイトール(DTT)溶液で培養される。このステップは、官能化表面のジスルフィド結合を減少させる。次いで、その表面を純水で濯いで、圧縮空気で乾燥させる。
好ましい実施形態では、ビニルスルホン官能化ポリエチレングリコール(PEG‐VS)マクロモノマーとチオール官能化ポリエチレングリコール(PEG‐SH)マクロモノマーを架橋させることによって、ヒドロゲル層が製造される。その架橋は、調製に適した所定の化学量論比を用いてPEGマクロモノマー(PEG‐VSとPEG‐SH)の原液を混合することによって開始され、例えば、ビニルスルホンがチオールと比較して1.2mMのモル過剰で加えられ得る。次いで、結果物のゲル状混合物を適切な支持物質に移し、平坦な疎水性物質、例えば疎水性ガラススライドに接触させる。所望の程度の重合化又は架橋が、例えば、ビニルスルホン基とチオール基との間のマイケル付加反応によって達成されると、結果物のヒドロゲルを室温で硬化させる。重合化又は架橋の持続時間は、PEG濃度に依存する。ゲル化の完了前に、ヒドロゲルを第一素子又は第二素子(例えば、表面活性化されたPDMS体)に移し、それに含まれる一つ以上の溝を覆い、一つ以上のマイクロチャネルを形成する。
他の実施形態では、PEG‐VSマクロモノマー及び/又はPEG‐SHマクロモノマーを含むPEGマクロモノマーをポリペプチドを介して架橋させて、ヒドロゲル層を生成する。そのヒドロゲル層は架橋剤としてポリペプチドを備え、メタロプロテイナーゼ(MMP)等の多様なプロテアーゼに敏感である。
特定の実施形態では、少なくとも一種の細胞接着タンパク質は、ヒドロゲル層の第一面、第二面又は両面に、特にヘテロ二官能性タンパク質架橋試薬を介して結合される。この細胞接着タンパク質の結合は、マイクロチャネル及び/又はキャビティ内の細胞接着タンパク質含有液体の灌流と、その後の培養期間を介して行われ得る。細胞接着タンパク質は、好ましくは、ヒドロゲル層の第一面、第二面又は両面の表面官能基と反応するヘテロ二官能性タンパク質架橋試薬と結合する。
細胞接着タンパク質対へテロ二官能性タンパク質架橋試薬の化学量論比は1:1から1:20の範囲内である。
特定の実施形態では、少なくとも一種の細胞接着タンパク質を、PEG‐VSマクロモノマーとの架橋の前に、PEG‐SHマクロモノマーのチオール基に、特にヘテロ二官能性タンパク質架橋試薬を介して、結合させる。
細胞接着タンパク質は、フィブロネクチンの組み換えドメインフラグメント、例えば、
‐10フラグメントを備える。
ヘテロ二官能性タンパク質架橋試薬は、アミンとスルフヒドリルの架橋剤、例えば、NHS‐PEGマレイミド架橋剤を備える。
本発明の一例では、NHS‐PEGマレイミド架橋剤のマレイミド基は、ヒドロゲル層の第一面、第二面又は両面上のチオール基(‐SH)と反応する。
特定の実施形態では、液体中に懸濁させた細胞をマイクロチャネル又はキャビティを介してヒドロゲル層の第一面又は第二面に連続的に送達又は注入し、その後の培養期間を経ることによって、細胞が播種される。
特定の実施形態では、少なくとも一種の細胞接着分子に結合したPEG‐SHマクロモノマーとPEG‐VSマクロモノマーの混合物に細胞を加えることによって、細胞がヒドロゲルのバルク部分に播種される。
細胞接着分子、特に細胞接着タンパク質は、Fc抗体フラグメント又はヘテロ二官能性タンパク質架橋試薬で有利に修飾される。Fc抗体フラグメントは、タンパク質A、タンパク質G、又はFcフラグメントに対する親和性を有する他の分子を含むヒドロゲル層に吸着(例えば、非共有結合)される。タンパク質A、タンパク質G、Fcフラグメントに対する親和性を有する他の分子は、ヒドロゲル合成のステップ中にヒドロゲル層内に取り込まれ得る(例えば、PEGマクロモノマーの混合物に加えられ得る)。
ヘテロ二官能性タンパク質架橋試薬は、そのヘテロ二官能性タンパク質架橋試薬とヒドロゲル層の官能基のうちの少なくとも一種(特にチオール基)との間の共有結合の形成を介して、ヒドロゲル層の官能基のうちの少なくとも一種(特にチオール基)に結合する。
特定の実施形態では、ヒドロゲル層の架橋の完了前に、一種以上の化学官能基を備える分子を備える第一素子、第二素子又は両素子の表面に一種以上の化学官能基を備えるヒドロゲル層を接触させて、ヒドロゲル層の化学官能基のうちの少なくとも一種と第一素子、第二素子又は両素子の表面上の分子の化学官能基のうちの少なくとも一種とが共有結合する化学反応を開始させる。
また、本発明は、本発明に係るマイクロ流体デバイスのヒドロゲル層を作動させるための方法にも関し、その方法は、
(a)第一素子とヒドロゲル層の第一面との間の少なくとも一つのマイクロチャネルに液体又は気体を導入すること、
(b)第二素子とヒドロゲル層の第二面との間の少なくとも一つのキャビティに液体又は気体を導入すること、
(c)第一素子とヒドロゲル層の第一面との間の少なくとも一つのマイクロチャネルを通して液体又は気体を流すこと、
(d)第二素子とヒドロゲル層の第二面との間の少なくとも一つのキャビティを通して液体又は気体を流すこと、及び、
(e)少なくとも一つのマイクロチャネル又は少なくとも一つのキャビティ内の液体の流量又は気体の圧力を調整又は変更して、少なくとも一つのマイクロチャネルと少なくとも一つのキャビティとの間に圧力差を生じさせて、ヒドロゲル層の平面に垂直な逆向きの二方向に沿って少なくとも一つのマイクロチャネル又は少なくとも一つのキャビティに向けて交互に屈曲する又は曲がることによってヒドロゲル層を伸縮させること、を備える。
本発明によると、マイクロ流体デバイスを、生体機能チップデバイス、特に、ヒト細胞を備えて生理学的条件を模倣するデバイスとして使用し得る。そして、ヒドロゲル層の作動を、特に以下のステップ及び/又はパラメータを用いて、実施例で例示するようにして達成することができる。
特定の実施形態では、マイクロチャネル内(つまり、第一素子とヒドロゲル層の第一面との間)の液体とキャビティ内(つまり、第二素子とヒドロゲル層の第二面との間)の液体に異なる流量を適用することによって、流体差圧が印加される。一実施形態では、マイクロチャネル内の液体の流量のみを変更して、キャビティ内の液体の流量を大気圧におおいて一定又は静的に保つ。
特定の実施形態では、マイクロチャネル内の液体の流量は、0μl・h−1から10000μl・h−1の範囲内にある。好ましい実施形態では、マイクロチャネル内の液体の流量は、30μl・h−1から1500μl・h−1の範囲内にある。一実施形態では、その流量を、最大0.2Hzの周波数で、30μl・h−1と1500μl・h−1の間で周期的に変更する。他の実施形態では、液体の拍動流を、一分毎に、1500μl・h−1で5秒間のバーストでマイクロチャネルに適用する。
特定の実施形態では、最大25%、特に10%のヒドロゲル層の伸展が生じ、特に、周期的に、マイクロチャネル内の流量を10秒で30μl・h−1から1500μl・h−1に上昇させ、次いで、30μl・h−1において10から50秒の緩和期間を経ることによって生じる。このようなヒドロゲル層の作動は、数日間、例えば7日間の期間にわたって行われ得る。
特定の実施形態では、マイクロチャネル内の液体とキャビティ内の液体は同一であるか又は異なる。
本発明の特定の特徴は以下の図面と実施例において例示される。また、本開示の特徴は、上述のような本発明の実施形態も定める。
液圧作動ヒドロゲル層(HAHL,hydraulically actuated hydrogel layer)に基づいたマイクロ流体デバイスの概念。上部チャネルと下部チャネルとの間の差圧によってヒドロゲル薄層を経時的に作動させる。ヒドロゲル層と第一素子の共有結合によって、この作動が可能になる。作動プロファイルは、液圧を時間と共に変更することによるHAHLデバイスのユーザーの制御下における直接的なものである。 液圧作動ヒドロゲル層(HAHL)に基づいたマイクロ流体デバイスの概念。上部チャネルと下部チャネルとの間の差圧によってヒドロゲル薄層を経時的に作動させる。ヒドロゲル層と第一素子の共有結合によって、この作動が可能になる。作動プロファイルは、液圧を時間と共に変更することによるHAHLデバイスのユーザーの制御下における直接的なものである。 初期概念実証として、HAHLデバイスを、上部チャネル(PA1)においてCaco2/E‐Cad::GFP上皮細胞で播種し、下部チャネル(P2)において野生型HUVECで播種した。スケールバーは200マイクロメートルである。破線の長方形は挿入箇所、破線は上部マイクロチャネルの端である。 初期HAHLマイクロ流体デバイスでの予備的結果。作動させたヒドロゲルの上に配置された細胞の2次元顕微鏡観察を用いた数日間にわたるHAHLの灌流とドロゲル層の変形の評価のために閉回路を用いた。 周期的細胞変位の顕微鏡分析に基づいたPEG‐フィブロネクチン(PEG‐Fn)メカノトランスデューサ変形の推定。エラーバーは3つの特徴に対する標準偏差である。PEG‐Fnヒドロゲル層上に2次元で成長しているC2C12細胞の可視化。 薄いPEGメカノトランスデューサ上に移植したヒアルロン酸ゼラチンヒドロゲルの二領域における異なる変形。星は、円形の変形が大き過ぎてチャネルの中心の上のビーズ(bead)が焦点面に残る点を表すので、小角近似が保たれない点を用いることが強要される。R2は線形回帰用の決定係数である。エラーバーは5つの特徴(beads対)の分析に基づいた標準偏差である。 流量と平均細胞面積変形との間の関係性の定量評価。AとBのパネルは、異なる流量でのHAHLデバイス上で機械的に刺激を与えた細胞の二枚の写真を示す。トレンドラインを、物質に伸展が生じる様子のため対数表示で計算した。 HAHLマイクロ流体デバイス上での上皮分化。播種Caco2細胞は、播種後2日の早さでの腸状構造への3次元組織化の兆候を明確に示している(伸展条件:連続流)。同じ細胞は24時間後でも3次元組織化していた。 マイクロチャネルとキャビティを通る面に沿った本発明に係るマイクロ流体デバイスの三次元断面図。 図4Aに示されるデバイスの構成要素の分解図。 本発明に係るマイクロ流体デバイスの第一素子の例示的な実施形態の断面図。 本発明に係る多様なデバイス構成(断面図)。
[実施例]
[例1:液圧作動ヒドロゲル層:概念実証]
液圧を用いてヒドロゲル薄層の作動、例えば伸縮を調べることによって、初期概念実証を行った。実際に、液圧作動ヒドロゲル層(HAHL,hydraulically actuated hydrogel layer)を組み込んだマイクロ流体デバイスをシリコーンゴム(PDMS)とPEGヒドロゲルで作製した。マイクロ製造技術とソフトリソグラフィを用いて、PDMSにマイクロ流体チャネルを形成した。第二ステップにおいて、PEGヒドロゲルの薄層を弾性率を変えて複数製造し、表面官能化(メルカプトプロピルシラトラン)を用いてPDMS体に共有結合させた。この重要なステップは、PDMSの表面にチオール基を移植することに依るものであり、チオール基は、後でPEGヒドロゲルのビニルスルホン基に共有結合させるために用いられ、細胞外基質と等価な軟質合成材製の一側で内側が覆われたマイクロ流体チャネルを形成した。この組み立て体は、自然のマイクロ環境を模倣する生物医学的キューや生物化学的キューに播種細胞を曝露することを可能にした。最後に、PDMS/ヒドロゲル組み立て体を特製ホルダ内のガラスカバースリップに取り付けた。このようにして、組み立てられたデバイスは、上面及び下面の両方で細胞を灌流及び播種することができるヒドロゲル界面を形成した。
HAHL型のマイクロ流体デバイスの暫定的特性評価は、本概念が、それなりの設備の生物医学研究所においてデバイス製造のまずまずの歩留まりを達成するのに十分ロバストであることを実証した。予備的調査を、PEGヒドロゲル薄層の液圧作動を検証することによって開始した。細胞培養PEGヒドロゲル層は、二つのマイクロ流体チャネル内の圧力をそれらの間に挿入されたヒドロゲル層で変調させることによって効率的に作動可能であった。更に、上部チャネル内の流れ/圧力をヒドロゲル層の機械的変形度と結び付ける関数を特定した(図1A〜図1B、図1D〜図1F)。現状でのチャネルの幾何学的形状とヒドロゲルの機械的特性で得られた細胞伸展が、腸のマイクロ環境のinn vivoでの物理的ランドスケープ(5kPaの弾性率で10%の伸展、0.2Hzの周波数)を非常によく模倣することが検証された。
第二ステップでは、最大三層のヒドロゲル層を積層させ、底部マイクロ流体チャネル内に液圧を印加することによって効率的に作動させることができた。500μmの最大値においても、伸展振幅の僅か20%のみが失われた(消失)。この実験は、3次元細胞封入ヒドロゲル層を機械的に刺激するためにHAHL型のマイクロ流体デバイスが有効に採用可能であることを明確に示している。
最後に、PEGヒドロゲルをフィブロネクチンや他のECMタンパク質で官能化可能であることを実証した。共有結合は、PEGヒドロゲルのビニルスルホン基へのタンパク質アミン又はチオールのマイケル付加に依るものである。この手法は、通常は不活性であるPEG物質への細胞接着を効率的に促進することが分かった。例えば、複数種の細胞を、一次細胞(HUVEC)又は派生細胞株(線維芽細胞、C2C12、Caco2…)を含むHAHLデバイス上に効率的に播種した(図1C及び図1E)。これらの予備的実験は、播種細胞が良好に接着し、最大17日間にわたって機械的刺激を受けて、生存していたことも示した。
[例2:最適なヒドロゲル機械的特性の決定:ゲル濃度と厚さ]
2.5%から10%の範囲の多様なPEGヒドロゲル濃度を試した。全ての条件において、必要であれば更にタンパク質やペプチドを固定するための1.2mHの遊離SH基を保った。PDMSに結合したゲルが伸展するが液圧負荷の下で破裂しないという最適条件を特定するために、厚さ170μmと340μmの二つのゲルも作製した。最も成功したHAHLデバイス設定は、5%で厚さ170μmのPEGゲルに基づいたものであった。こうした条件下において、製造された全てのデバイスのうち50%以上が、漏れずに液圧作動に耐えることができたことが実証された。更に、多様なPEG濃度、つまりは多様な弾性率のヒドロゲルでHAHLデバイスが製造可能であることが実証された。典型的には、HAHLデバイスを、それぞれ10から30kPaの剛性率(G’)に対応する5から10%(w/v)PEGを含有するヒドロゲルで製造することができた。
[例3:HAHL型のマイクロ流体]
HAHLデバイスに対するロバストな組み立てプロトコルを確保した後に、デバイスに適用された多様な流量とPEGヒドロゲル層の伸展度との間の関係性を調べた。ヒドロゲルを破裂させずに上部チャネル内で最大10000μl・h−1の灌流が可能であった。この条件は、略20%の一軸伸展に対応している。
得られたヒドロゲルの変形がヒドロゲル層の両面に播種された細胞に影響することを確かめるために、ヒドロゲル層をフィブロネクチンフラグメントで官能化しCaco2で播種した。細胞接着後に、HAHLデバイスを或る範囲の流量に晒して、細胞変形を測定した(図2A〜B)。30μl・h−1の連続流量は観測可能な変形をもたらさなかったが、流量を1500μl・h−1に増大させると即座に平均細胞面積が10%増加した(図2C)。最も注目すべきことは、最大0.2Hzの周波数で30と1500μl・h−1の間で流量を変更にすることによって、この作動を周期的に行うことができたことである。
[例4:HAHLシステムにおける腸機能チップ(Gut‐on‐Chip)の成熟]
HAHLデバイスの機械的特性評価の完了後に、本発明者は、これらデバイスで培養された内皮層と上皮層(それぞれHUVECとCaco‐2)の成熟を調べることに決めた。二種の細胞を上部チャネルと下部チャネルの両方において30μl・h−1の一定流量で逐次播種して灌流させた。数日後に、内皮細胞と上皮細胞の平坦でロバストな単層が観測され、拍動流(一分毎に5秒間にわたる1500μl・h−1のバースト)を開始して、ヒドロゲルと細胞の伸展を誘起した。デバイスの上皮側と内皮側の両方に対して分化の明確ではっきりした兆候が観測された。図3は、液圧作動の開始後僅か二日でCaco‐2モノマーが3次元で組織化し始めたことを示している。大腸絨毛を想起させる構造が観測された。内皮側において、HUVEC組織が連続的単層から分岐/管状ネットワークに変化した(図3)。静的なHAHLデバイスと作動させたHAHLデバイスを比較すると、周期的歪みが3次元構造の発現を24から48時間促進したことが分かった。
全体として、これらの実験は以下のことを実証した:
・ ヒドロゲル薄層の液圧作動を7日以上にわたって維持することに成功した;
・ 本開示の液圧作動は、細胞やヒドロゲルの剥離を生じさせない;
・ 播種細胞の液圧作動が高速で良好な分化を可能にした;
・ 播種細胞はHAHLデバイス上で生存及び分化して、健常な腸組織の構造を効率的に反復発生させた;
・ HAHLシステムは、ライブ撮像用の顕微鏡が備わっている場合にタイムラプス(低速)顕微鏡法による連続的観測と完璧に相性がよい。
[例5:フォトリソグラフィでのマスター製造]
物理的レイアウト編集ソフトウェアCleWin(米国Phoenixソフトウェア社)でHAHL‐デバイスの設計を行った。概説すると、その設計の第一層は長さ7.5mmで幅1mmの二つのチャネルを備えていた。これら直線状のチャネルを流入口及び流出口(直径2mm)の両方に接続した。第二層は、ヒドロゲル薄層を収容することができる直径18mmの凹部(本願において「プール」と称される)を提供するように設計された。透明プラスチックシート上に50000DPIで印刷された対応フォトリソグラフィマスクをSelba社(スイス)から取り寄せた。両方のマイクロ流体チャネルがプールの中央に形成されることを保証するために、マイクロメートルスケールの整列マークを二つのマスク上に導入した。次いで、直径4インチのシリコンウェーハ(仏国のNeyco社製)をフォトリソグラフィ用の基体として用いた。SU8‐2100樹脂(米国マサチューセッツ州のMicrochem社製)のスピンコーティング、ソフト焼成、露光、露光後焼成のパラメータを調整して、500μmの厚い第一層を得た。フォトリソグラフィをMJB4マスク整列器(ズース社製)で行った。次いで、マイクロ流体チャネルを含む第二層を、厚さ250μmを目標としたマイクロ製造パラメータで形成した。最後に、マイクロ製造されたマスターをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、米国ミシガン州のシグマアルドリッチ社製)で現像して、200℃で2時間にわたってハード焼成した。次いで、製造された構造体の高さをDektak XTスタイラスプロファイラ(米国ブルカー社製)で測定した。
[例6:ソフトリソグラフィ(PDMS体の製造)]
まず、30gのポリジメチルシロキサン(PDMS、ダウコーニング社のSylgard184)基材を硬化剤と1:10の比で混合した。次いで、得られた溶液を3分にわたって激しく攪拌し、更に30分にわたって真空下に置いてガス抜きした。得られた混合物を、マイクロ製造されたモールドを含むペトリ皿に新たな気泡を生じさせずに注いだ。最後に、成形したPDMSを80℃で2時間にわたって焼成して、マイクロ製造したマスターの完全に架橋したレプリカを得た。
PDMSが硬化すると、スカルペルと小型スパチュラを用いてモールドからPDMSを取り出した。次いで、マイクロ流体チャネルを含むPDMS表面をマジックスコッチテープ(3M社製)で覆った。次いで、特注ホルダにチップを配置する際にマイクロ流体チャネルが中心になるようにするために、得られたPDMSに直径35mmパンチで穴開けした。次いで、内径0.75mmの穴開けパンチを用いて流入口と流出口を穴開けした。灌流時のヒドロゲルに対する負荷を減らすために、これらの接続を中心チャネルの延長部において45度の角度で行った。
[例7:PDMS体の表面官能化]
流体メインラインへの接続を簡単にするため、各PDMS体に四つの金属コネクタを取り付けた。シアノアクリレート接着剤の小滴を突出しているコネクタのベース部の周りに軽く塗って、流体の漏れを防止した。次いで、スコッチテープを取り外して、PDMS体を上向きでプラズマクリーナ内に置いた。次いで、PDMS体を35mbar、50mWで1分間にわたって酸素プラズマに曝露した。表面が活性化されると、PDMS体を、無水エタノール(300ml)に10滴の酢酸を加えた1%(v/v)の3‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS)に一時間にわたって浸漬した(全ての化学薬品はシグマアルドリッチ社から購入した)。次いで、70%のエタノールで二回洗浄し、PDMS体を非線維組織上で10分間にわたって空気乾燥させ、オーブン内に110℃で一時間にわたって置いた。次いで、PDMS体を4℃で保管した。
[例8:ヒドロゲルの成形とPDMS体の表面への結合]
ヒドロゲルの調製前に、まず、PDMS体を10mMのジチオスレイトール(DTT)溶液中で10分間の最小期間で培養し、PDMS体の表面のジスルフィド結合を減らした。10kDaの二種類の異なる官能化ポリエチレングリコール(PEG)マクロモノマー(日本のNOF社製)の原液を混合することによって、ヒドロゲルを調製した。四分岐チオール官能化PEGマクロモノマーと八分岐ビニルスルホン官能化PEGマクロモノマーを1.2mMのビニルスルホン過剰を保証する化学量論比で混合した。典型的には、10.1μlのPEG‐VS(12%w/v)と21.2μlのPEG‐SH(12%w/v)と18.7μlのトリエタノールアミン(TEA)バッファ(0.3M、pH7.5)を混合することによって、50μlの7.5%(w/v)PEGヒドロゲルを得た。液体のうちに、40μlのゲル化混合物を単一井戸(直径18mm、深さ260μm)を含むテフロン(登録商標)シリンダ上にピペットで分注して、疎水性ガラススライド(シグマアルドリッチ社のSL2)で覆った。チオール基上へのビニルスルホン基のマイケル付加反応によって、ヒドロゲルを重合化させた。架橋期間は全ての試験したPEG濃度で異なり、典型的には、7.5%のPEGゲルを室温で30分間置いて硬化させた。ゲル化又は架橋完了の三分前に、DTT中のPDMS体をミリQ水で入念に濯ぎ、フィルタリングした圧縮空気で乾燥させた。次いで、ゲルを含むテフロン(登録商標)モールドから疎水性ガラススライドを注意深く取り外した。次いで、活性化させたPDMS体をヒドロゲルの表面上に優しく押し付けて、ヒドロゲルがPDMS体の二つのチャネルを完全に覆うようにした。ヒドロゲルを覆う際に、PDMS体の両側を優しく押して、内側の中心がヒドロゲルに一様に触れるようにして、気泡を追い出した。このステップにおいて重要であったのは、ヒドロゲルが平坦であり、チャネルがヒドロゲルによって均一に覆われるようにすること、そして、チャネル内のPDMS面がヒドロゲルに触れないようにすることを保証することであった。そして、その組み立て体を室温で一時間置いて、ヒドロゲルの過剰ビニルスルホン基とPDMS面のチオールと共有結合反応するようにした。結合すると、二つの部分を注意深く分離して、PDMS体の表面にヒドロゲルを移した。
[例9:組み換えタンパク質生成とPEG化]
HAHLデバイス上に細胞を播種するため、通常であれば不活性なPEGヒドロゲルを細胞接着性にする必要がある。組み換えフィブロネクチンのドメイン9とドメイン10を用いて細胞接着性を促進した。対応の合成遺伝子をEurofins(仏国)から取り寄せた。pGEX‐4T‐1発現ベクター(GEライフサイエンス社)でのクローニング、発現、精製をパスツール研究所の組み換えタンパク質のプラットフォームで行った。FN9‐10フラグメントが、4L培養中の大腸菌BL21Star(登録商標)(DE3)において発現した。組み換えタンパク質の精製をGSTカラムで行い、これに精製標識のトロンビン切断が続いた。精製したFN9‐10フラグメントをPBSにおいて3.5mg・ml−1で濃縮した。結果物のFN9‐10フラグメントを、その遊離二次アミンを介して、1:4の化学量論比で3.5kDaのヘテロ二官能性NHS‐PEGマレイミド架橋剤(NOF社製)に結合させた。500μlのFN9‐10(3.5mg・ml−1)と29μlのPEG架橋剤(50mg・ml−1)の培養を室温で1時間にわたって行った。次いで、PEG化FN9‐10溶液をマイクロ流体チャネルとヒドロゲルの自由表面に灌流させた。次いで、処理したHAHLデバイスを37℃で2時間にわたって培養した。最後に、過剰なFN9‐10をPBS洗浄で洗い流した。
[例10:細胞播種]
HAHLデバイスは多種多様な接着細胞で播種可能である。TC7 Caco2上皮細胞とHUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)の両方を本例では用いた。HAHLデバイスへの播種の前に、細胞を標準的なT75フラスコで培養した。次いで、トリプシン処理で細胞を採取した。3mlのトリプシン(HUVECについて0.05%、Caco細胞について0.25%)を細胞上にピペットで分注した。37℃で5分後に、顕微鏡でフラスコを検査して、細胞分離を調べた。6mlの媒体を加えて、分離した細胞を50mlのチューブ内に収集した。次いで、細胞を300gで5分間にわたって遠心分離して、上澄みを除いた。ペレットを300μlの媒体中に再懸濁した。細胞濃度を、20μlをMalassez血球計にピペットで分注することによって評価した。濃度を、HUVECについて細胞100万個/ml、Caco2について600〜800万個/mlに調整した。播種手順は、反転させたHAHLデバイスのヒドロゲル部分に100μlのHUVEC懸濁液を伝えることで開始した。培養時(37℃で30分)に、HUVECがフィブロネクチン被覆ヒドロゲルに良好に接着した。PBS洗浄を行い、非接着細胞を除去した。次いで、播種済みのHAHLデバイスをひっくり返して、Caco2細胞懸濁液をマイクロ流体チャネル内に注入した。そして、HAHLチップを37℃で一晩おいて、Caco2細胞の良好な接着を確実にした。マイクロ流体チャネル中に媒体を優しく灌流させることによって、過剰な非接着Caco2細胞を除去した。静的条件(灌流なし)での細胞培養を更に24時間にわたって続けて、HUVECとCaco2細胞の両方の融合性単層を得た。
[例11:HAHLデバイスの組み立て]
細胞を播種する前に、HAHLデバイスを特注ホルダ内で組み立てた。まず、直径30mmの丸いカバースリップをホルダ内に配置した。次に、PDMSリング(外径35mm、内径20mm、厚さ1mm)をカバースリップの上に置いて、小型容器を形成した。HAHLデバイスを配置する前に、その容器を、気泡が閉じ込められないようにしながらEGM2媒体(Lonza社製)で充填した。次いで、ヒドロゲルが容器に面するようにしてHAHLデバイスを配置した。最後に、その組み立て体を締め付けリングのねじ込みによって密閉した。Tygon(登録商標)チューブ(PBSを予め充填した)をチップの流体コネクタに挿入することで、適切なマイクロ流体界面を保証した。
[例12:HAHLデバイスの灌流]
単層が得られると、HAHLデバイスの上部マイクロ流体チャネルをTygonチューブを介して、Caco2媒体を含むハミルトンガラスシリンジに接続した。シリンジをneMESYSポンプシステム(Cetoni社製)に接続することによって、30μl・h−1での連続的灌流を開始した。多様な伸展方式を調査するため、HAHLデバイスの作動プロトコルを変えた。典型的には、周期的に10秒で流量を30μl・h−1から1500μl・h−1に上げて、これに続く緩和期間(30μl・h−1で10から50秒)を経ることによって、ヒドロゲル層の10%の伸展が得られた。流量と期間の両方を調整して、ヒドロゲル層に対する歪みを変えた。各実験は典型的には7日間の期間にわたって行われた。時間に対する流量の制御を、Qmixソフトウェア(Cetoni社製)で対応スクリプトを開発することによって、自動化した。
[例13:HAHLデバイスのライブ及び固定撮像]
各実験の要求に合うように画像取得プロトコルを変えた。落射蛍光顕微鏡(Collibri(登録商標)2)と、培養室と、Orcaflash V4.0CMOSカメラを搭載した電動倒立顕微鏡Axio Observer Z1(独国カールツァイス社製)でスナップショット、タイムラプス、モザイク、Zスタックの全てを得た。多くの画像は倍率10倍、NA(開口数)0.45、フェーズ1対物で取得された。
多様な期間での細胞培養後に、HAHLデバイスを後続の染色と撮像のために固定した。まず、リン酸緩衝生理食塩水(PBS,phosphate buffered saline)溶液(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)に分解したデバイスを5分間浸漬することによって、二回洗浄を行った。次いで、デバイスを4%(v/v)でpH7.4のパラホルムアルデヒド(米国ミシガン州のシグマアルドリッチ社製)溶液に15分間にわたって浸漬した。最後に、PBSで二回洗浄し、デバイスをペトリ皿中に密閉して4℃で保管した。
[例14:細胞伸展の定量化]
実験を開始する前に、細胞伸展の定量化のために一つのデバイスを選択した(播種後一日)。10mbarの増分での20mbarから最大70mbarの圧力でデバイスを灌流させた。Caco‐2細胞を各圧力増分において撮像し、画像分析ソフトウェア「Fiji」を用いてその伸展を定量化した。各圧力増分において撮像部分から5個の細胞を選択し、その周囲に関心領域を描いた。各圧力増分において細胞の面積を測定して比較した。面積の差を計算して、各圧力増分でのパーセント単位での伸展を記して、5個の細胞について平均化した。次いで、HAHLデバイス特有の確立された関係式を用いて、細胞の伸展を流量に変換した。多数回の繰り返しの必要性は、誤差許容範囲を狭くして精度を上げるためには各実験について一つのデバイスを選択しなければならないことを意味している。
[マイクロ流体デバイスの3次元構成の例示的実施形態]
以下、本発明の一実施形態に係るマイクロ流体デバイス10を表す図4Aと図4Bを同時に参照する。マイクロ流体デバイス10は、マイクロ流体デバイスを形成するように互いに組み立てられる複数の部品で形成され、第一素子11と、ヒドロゲル層14と、第二素子16とを備える。これら三つの部品11、14、16はホルダ18内に取り付けられる。第一素子11は、別々の一つの第一片12と一つの第二片13で形成される。
図示の実施形態では、マイクロ流体デバイス10は略シリンダ状の形状を有する。しかしながら、デバイス10は他の形状も有し得ることを理解されたい。
より具体的には、第一片12はあらゆる透明(透過性)物質性であり得て、その上にチオール基が移植可能である。第一片12は2から25mmの範囲の厚さを有する。第一素子11は、第一素子11に実質的に垂直な方向40に沿って互いに対向する第一面3と第二面5を有する。シリンダ状であり得る周面15によって、第一面3と第二面5が互いに接続される。凹部20が第一素子11に形成されて、図4Aに示されるようにマイクロ流体デバイスが組み立てられた際に第二面5を開口して露出する。特に、凹部20は、第一片12の内部に部分的に形成され、また第二片13によって形成される。凹部20は外縁を成す底面22とシリンダ状側壁23を備える。少なくとも一つの溝24が凹部の底に形成され、例えば、図5に示されるように二つ形成される。例示的な実施形態では、溝24は直線状であり、0.1mmから5mmの範囲の幅と、0.1mmから5mmの範囲の深さと、0.2mmから20mmの間の長さを有し得る。溝24はフォトリソグラフィ等のあらゆる種類の技術を用いて形成され得る。一実施形態では、第二面5は、第一素子11の略シリンダ状の形状に起因して実質的に環状となり得ることを理解されたい。
凹部は図面に示されるものとは異なる形状を有し得る。例えば、凹部は正方形又は長方形であり得る。そのような凹部は、その凹部の外縁又は周囲を画定するように互いに接続される複数の側壁を備え得る。
図示される例示的な実施形態では、第二素子16は、透明物質の薄く平坦な片、つまり、カバースリップやカバーガラスによって形成され、0.1mmから0.17mmの間の範囲の一定の厚さを有し得る。
図4Aと図4Bに示されるように、第一片12及び第二片13によって形成される第一素子11と、第二素子16と、ヒドロゲル層14は、第一端26a及び第二端26bを有するシリンダ状の壁26を備えるホルダ18内に取り付けられ、第二端26bは、第二素子16の取り付け用の支台壁を形成する環状壁28に接続される。図示されるように、環状壁28の半径方向の内縁が開口30を画定する。第二素子16は凹部20の出口を覆うので、ヒドロゲル層14及び凹部20のシリンダ状の壁23と共にキャビティ32を画定する。
ヒドロゲル層14は、凹部20の底面22に向けられた第一面7と、第一面7に対向し第二素子16に向けられた第二面9を備える。ヒドロゲル層14の第一面7は凹部20の底面22上に適用されて、溝を閉じ、マイクロチャネル34を形成する。
マイクロ流体デバイス10は以下のようにして組み立てられる。ヒドロゲル層14は凹部20の中に取り付けられが、その凹部の寸法と形状はヒドロゲル層14を内部に完全に収容するものとされる。より具体的には、本実施形態では、凹部の寸法と形状は、ヒドロゲル層を変形させずに(例えば、皺を作ったり折り曲げたりせずに)ヒドロゲル層が凹部の中に完全に収まるように構成される。凹部の側壁は、ヒドロゲル層の周囲又は縁を接触して又は接触せずに取り囲む。
ヒドロゲル層14は、凹部20の底面22に形成された溝24を覆い、マイクロチャネル34を形成する。第二素子16又はカバースリップは、ホルダ18内部に取り付けられ、環状壁28に隣接し、第一素子11及びヒドロゲル層14によって形成された組み立て体は、ホルダ18内部に取り付けられて、環状の第二面5が第二素子16又はカバースリップに対して押されるようにする。第一素子11の第二片13は環状の形状を有し、また、例えば、矩形断面を有するものとして記されている。第二片13は第二素子16と第一素子11との間に配置され、好ましくは、第一素子11の第一片12と第二素子16の接合部を密閉する。クランピング素子38がホルダ18に取り付けられて、第一素子11と第二素子16をホルダ18の環状壁28上に締め付けることによって、デバイスの組み立てを可能にする。ここでは、クランピング素子38はナットによって形成され、ホルダ18のシリンダ状の壁26のねじ山の付いた内面にねじ込まれる。
図4Aに明確に表されるように、ヒドロゲル層14は、ヒドロゲル層14に実質的に垂直な所与の軸40に沿って第一素子11と第二素子16との間に配置される。更に、第一素子11と第二素子16とヒドロゲル層14の形状と寸法は、第一素子11とヒドロゲル層14の第一面7との間の少なくとも一つのマイクロチャネル34と、第二素子16とヒドロゲル層16の第二面9との間の少なくとも一つのキャビティ32を画定するように決定され、少なくとも一つのマイクロチャネル34と少なくとも一つのキャビティ32は、所与の軸40が少なくとも一つのマイクロチャネル34と少なくとも一つのキャビティ32の両方を通り抜けるように互いに配置される。
キャビティ32内の液体の導入を可能にするため、導管42が第一素子11を通り、より正確には第一素子11の第一片12とヒドロゲル層14を通り、少なくとも一つの導管42は液体の導入用であり、少なくとも一つの他の導管42は液体の回収用である。また、図4Bは、溝24とヒドロゲル層によって画定されるマイクロチャネル34内に液体又は気体を導入するための一つの導管43も示す。マイクロ流体デバイスが流体を回収するための導管(図示せず)を更に備えることは明らかである。
また、第一素子11が第一片12のみを備える、つまり、第二片13を備えないものともなり得ることに留意されたい。
マイクロチャネル34は流体回路44(図5)に接続され、その流体回路は、少なくとも一つのマイクロチャネル34と少なくとも一つのキャビティ32との間の流体差圧を変更するための手段46(図5)を備える。差圧変更手段46と少なくとも一つのマイクロチャネル34を接続し、上述のように所与の軸にキャビティ32とマイクロチャネル34を配置すると、ヒドロゲル層の平面に垂直な逆向きの二方向において少なくとも一つのマイクロチャネル34又は少なくとも一つのキャビティ32に向けて交互に屈曲又は曲がることによって、ヒドロゲル層14を伸縮させることができる。
最も効果的な実施形態では、マイクロチャネル34の長さは8mmで、幅は1mmで、深さは0.250mmであった。キャビティ32は20mmの直径と、2mmの深さを有していた。
「第一素子」又は「第二素子」を称するために用いられる「素子」との用語は、一体構造の素子、つまり、一体成形される素子を称し得るし、また、以下の図6の説明で記載されまた図4Aの実施形態の場合のように複数の独立片を備える素子も称し得ることを理解されたい。
第一素子と第二素子は別々の片であり、筐体を画定するように互いに組み立てられ、その筐体内にヒドロゲル層が取り付けられることを明確に理解されたい。この解釈によると、凹部とキャビティと少なくとも一つの溝との各々がその筐体内に含まれる。第一素子と第二素子は接触して、第一素子と第二素子との間の接合部において閉じて密閉された輪郭を画定する。
また、全ての実施形態において、ヒドロゲル層は、第一素子と第二素子のいずれかによって印加される圧力や、第一素子と第二素子のいずれかの部分の結果として印加される圧力を受けない。
以下では、第一素子と第二素子が多様な形状を有する本発明のマイクロ流体デバイスの多様な構成を示す図6を参照する。以下で説明されるマイクロ流体デバイスの各々は、たとえ説明されないとしても、図5を参照して上述したような流体差圧手段を備え得る流体回路を備える。
図6の多様な実施形態は以下説明されるとおりである:
‐ 第一欄は図6Aから図6Hに対応し、一つの溝24A、24B、24C、24D、24E、24F、24G、24Hを備える第一素子11A、11B、11C、11D、11E、11F、11G、11Hと、一つのヒドロゲル層14A、14B、14C、14D、14E、14F、14G、14Hと、第二素子16A、16B、16C、16D、16E、16F、16G、16Hとを備えるマイクロ流体デバイスの概略図を表し、ヒドロゲル層が第二素子と共にキャビティ32A、32B、32C、32D、32E、32F、32G、32Hを画定する;
‐ 第二欄は図6A’から図6H’に対応し、それぞれ図6Aから図6Hに示されるのと同じ配置構成の概略図を表すが、ヒドロゲル層14A’、14B’、14C’、14D’、14E’、14F’、14G’、14H’が、同じ第一素子11A’、11B’、11C’、11D’、11E’、11F’、11G’、11H’内に形成された複数の溝24A’、24B’、24C’、24D’、24E’、24F’、24G’、24H’を同時に覆い、第二素子16A’、16B’、16C’、16D’、16E’、16F’、16G’、16H’と共に単一のキャビティ32A’、32B’、32C’、32D’、32E’、32F’、32G’、32H’を画定する;
‐ 第三欄は図6”から図6H”に対応し、それぞれ図6Aから図6Hに示されるのと同じ配置構成の概略図を表すが、複数のヒドロゲル層14A”、14B”、14C”、14D”、14E”、14F”、14G”、14H”の各々が、同じ第一素子11A”、11B”、11C”、11D”、11E”、11F”、11G”、11H”内に形成された一つの溝24A”、24B”、24C”、24D”、24E”、24F”、24G”、24H”を覆い、各ヒドロゲル層14A”、14B”、14C”、14D”、14E”、14F”、14G”、14H”が第二素子と共にキャビティ32A”、32B”、32C”、32D”、32E”、32F”、32G”、32H”を形成する。
図6A、図6A’、図6A”に示される実施形態では、マイクロ流体デバイスは、凹部を有さない一つの第一素子11A、11A’、11A”を備え、溝24A、24A’、24A”はヒドロゲル層14A、14A’、14A”によって覆われる。第二素子16A、16A’、16A”は凹部を備え、その中にヒドロゲル層が収容される。第一素子は第二素子と環状に接触する。第一素子11A、11A’、11A”及び第二素子16A、16A’、16A”は一体成形品である。
第二素子16A、16A’、16A”の側に含まれる凹部の幅は、第一素子11A、11A’、11A”の側に含まれる溝24A、24A’、24A”の幅よりも広い。特に、第二素子16A、16’A、16A”の側に含まれる凹部の幅は、ヒドロゲル層14A、14A’、14A”が第一素子11A、11A’、11A”と第二素子16A、16A’、16A”との間で押し潰されない(又は圧力を受けない)にしてヒドロゲル層14A、14A’、14A”を凹部内に配置することができるように決定される(つまり、ヒドロゲル層の表面積は、第二素子16A、16A’、16A”の側に含まれる凹部の幅を超えない)。
第二素子の側に含まれる凹部の深さ又は高さは、ヒドロゲル層の第二面と第二素子との間にキャビティを生成するようにヒドロゲル層の全厚さよりも大きい。
図6B、図6B’、図6B”に示される実施形態では、第一素子11B、11B’、11B”には凹部が無い。第二素子16B、16B’、16B”が備える第一片13B、13B’、13”と第二片17B、17B’、17B”は、ヒドロゲル層14B、14B’、14B”の第二面と第二素子16B、16B’、16B”との間のキャビティ32B、32B’、32B”の深さを深くし又は高さを高くするように採用されている。図示されるように、ヒドロゲル層が内部に取り付けられる凹部は、第一片13Bと第二片17Bによって画定される。
上記実施形態と同様の図6C、図6C’、図6C”に示される他の実施形態では、第二素子16C、16C’、16C”の第二片17C,17C’、17C”は凹部を備えない。ヒドロゲル層14C、14C’、14C”は、第二素子16C、16C’、16C”の第一片13C、13C’、13C”の内縁の中に配置される。
図6D、図6D’、図6D”に示される特定の実施形態では、一体成形の第一素子11D、11D’、11D”は、少なくとも一つの溝24D、24D’、24D”を備える底部を有する凹部を備え、ヒドロゲル層14D、14D’、14D”がその底部に適用されて、少なくとも一つの溝24D、24D’、24D”を覆い、少なくとも一つのマイクロチャネルを形成する。一実施形態では、凹部は、第二素子16D,16D’、16D”に適用される環状表面を開口し、少なくとも一つのマイクロチャネルに対向して位置する少なくとも一つのキャビティを形成する。
ヒドロゲル層14D、14D’、14D”のサイズは、凹部の外縁内にヒドロゲル層が収まるように構成される。凹部の底部に適用され共有結合するヒドロゲル層14D、14D’、14D”は平坦なままであり、マイクロチャネルの空間に入り込んだりマイクロチャネルの内壁に触れたりしない。
図6D、図6D’、図6D”に示される本発明の実施形態によると、凹部が第一素子11D、11D’、11D”内に形成され、その深さは一つ以上のヒドロゲル層の全厚さよりも有利に大きく、ヒドロゲルの第二面と平坦な第二素子との間のキャビティの形成を可能にする。
図6E、図6E’、図6E”に示される本発明の他の実施形態によると、第一素子11E、11E’、11E”の凹部の深さは、ヒドロゲル層14E、14E’、14E”の厚さがその凹部の深さ内に収まるように構成される(つまり、ヒドロゲル層の厚さは凹部の深さとほぼ同じか又は僅かに低い)。また、第二素子は、ヒドロゲル層14E、14E’、14E”の第二面に面する凹部も備え得る。
図6F、図6F’、図6F”に示される実施形態では、ヒドロゲル層14F、14F’、14F”は第一素子11F、11F’、11F”の凹部内に部分的に取り付けられ、また第二素子16F、16F’、16F”の凹部内に部分的に取り付けられる。このような場合、ヒドロゲル層の第二面は、第一素子11F、11F’、11F”の凹部の底部と、第二素子16F、16F’、16F”の底部に接触し得る。ヒドロゲル層の第一面は第一素子の凹部の底部に接触する(また共有結合する)。ヒドロゲル層の第二面は第二素子の凹部の底部に共有結合するか又はしないものとなり得る。明確に図示されるように、第一素子の凹部の底部は溝を備え、凹部の底部は中空空間を備え、ヒドロゲル層14F、14F’、14F”の第二面と共にキャビティ32F、32F’、32F”を画定する。
図6G、図6G’、図6G”に示される他の実施形態では、第一素子11G、11G’、11G”は凹部を備えず(少なくとも一つの溝のみを備える)、第二素子は、少なくとも一つの中空空間を備える底部を有する凹部を備える。ヒドロゲル層のサイズは、第二素子に含まれる凹部の外縁内にヒドロゲル層が収まるように構成される。ヒドロゲル層は、第二素子に、又は第一素子と第二素子の両方に共有結合し得る。
本発明のマイクロ流体デバイスは、少なくとも一対のマイクロチャネル(ヒドロゲル層の第一面上)/キャビティ(マイクロチャネルと同じ軸に沿ったヒドロゲル層の第二面上)を備える。また、本発明のマイクロ流体デバイスは複数対のマイクロチャネル/キャビティを備え得る。一実施形態では、本デバイスは、複数対のマイクロチャネル/キャビティを備える(例えば、図6A”を参照)。他の実施形態では、本デバイスは一つのキャビティに対して複数のマイクロチャネルを備える(例えば、図6A’を参照)。複数対のマイクロチャネル/キャビティの存在は、多様なアッセイの高スループットスクリーニングを可能にする。ヒドロゲル層の弾性率(又は剛性率)は、或る対の圧力変動が隣接の対に影響を与えないのに十分なものでなければならない。
図6Hは、図4A及び図4Bに関して上述したのと同様の実施形態に対応するが、図6H’及び図6H”の実施形態も示す。
最後に、凹部は第一素子と第二素子の一方の中に形成され、又は第一素子と第二素子の中に部分的に形成され得ることを理解されたい。更に、第一素子は単一片であるか、互いに組み立てられる複数の片を備え得るが、第二素子についても同様である。
10 マイクロ流体デバイス
11 第一素子
14 ヒドロゲル層
16 第二素子
32 キャビティ
34 マイクロチャネル

Claims (25)

  1. (a)一種以上の化学官能基を表面に備える第一素子(11)であって、前記一種以上の化学官能基が前記表面に共有結合した分子に含まれる、第一素子(11)と、
    (b)互いに対向して位置する第一面(7)と第二面(9)を有するヒドロゲル層(14)であって、前記第一素子(11)の表面に共有結合した分子に含まれる化学官能のうち少なくとも一種と反応する一種以上の化学官能基を備えるヒドロゲル層(14)と、
    (c)第二素子(16)と、を備え、
    前記ヒドロゲル層(14)が、前記ヒドロゲル層(14)に実質的に垂直な所与の軸(40)に沿って前記第一素子(11)と前記第二素子(16)との間に位置し、前記第一素子(11)と前記第二素子(16)と前記ヒドロゲル層(14)が、前記第一素子(11)と前記ヒドロゲル層(14)の第一面(7)との間の少なくとも一つのマイクロチャネル(34)と、前記第二素子(16)と前記ヒドロゲル層(14)の第二面(9)との間の少なくとも一つのキャビティ(32)を画定するように決定された形状と寸法を有し、前記所与の軸(40)が前記少なくとも一つのマイクロチャネル(34)と前記少なくとも一つのキャビティ(32)の両方を通り抜けるように前記少なくとも一つのマイクロチャネル(34)と前記少なくとも一つのキャビティ(32)が互いに配置されていて、
    前記第一素子(11)の表面に共有結合した分子に含まれる化学官能基のうち少なくとも一種と前記ヒドロゲル層(14)の化学官能基のうち少なくとも一種が互いに共有結合している、マイクロ流体デバイス(10)。
  2. 前記ヒドロゲル層(14)に面する前記第二素子(16)の表面が、前記ヒドロゲル層(14)の化学官能基のうち少なくとも一種に共有結合している一種以上の化学官能基を備える、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス(10)。
  3. 前記第一素子(11)と前記第二素子(16)の少なくとも一方が、前記ヒドロゲル層(14)が内部に取り付けられる凹部(20)を備える、請求項1又は2に記載のマイクロ流体デバイス(10)。
  4. 前記ヒドロゲル層(14)が、前記少なくとも一つのマイクロチャネル(34)を形成するように前記第一素子(11)の表面上に形成された少なくとも一つの溝を覆う、請求項1から3のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(10)。
  5. 凹部(20)が前記第一素子(11)に形成され、前記少なくとも一つの溝を有する底部(22)を備える、請求項4に記載のマイクロ流体デバイス(10)。
  6. 前記少なくとも一つのマイクロチャネル(34)と前記少なくとも一つのキャビティ(32)との間に圧力差を生じさせるための手段(46)を備える請求項1から5のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(10)。
  7. 前記第一素子と前記第二素子の一方又は両方がポリジメチルシロキサン(PDMS)等の透明物質又は半透明物質を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(10)。
  8. 前記第一素子(11)又は前記第二素子(16)の表面の少なくとも一部に共有結合した分子に含まれる化学官能基がチオール基を備え、前記ヒドロゲル層(14)に含まれる化学官能基がビニルスルホン基を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(10)。
  9. 前記ヒドロゲル層(14)が1kPaから50kPaの範囲内の弾性率を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(10)。
  10. 前記ヒドロゲル層(14)が30μmから500μmの範囲内の厚さを有する、請求項1から9のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(10)。
  11. 二つ以上のヒドロゲル層を備える請求項1から10のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(10)。
  12. 前記ヒドロゲル層(14)が、ポリマー骨格に結合した親水性官能基を有する一種以上のマクロモノマー又は一種以上の親水性マクロモノマーを備える又はから成るポリマーマトリクスを備え、任意で前記ポリマーマトリクスがポリエチレングリコール(PEG)を備える、請求項1から11のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(10)。
  13. 前記一種以上のマクロモノマーのポリマーマトリクスが、ビニルスルホン基若しくはチオール基を備えるか、又は、ビニルスルホン基とチオール基の両方をビニルスルホン基に対して0から10%の範囲内のモル過剰のチオール基で備える、請求項1から12のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(10)。
  14. 前記ヒドロゲル層がマイクロ構造又はマイクロパターンを備える、請求項1から13のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(10)。
  15. 少なくとも一種の細胞接着分子が、前記ヒドロゲル層(14)の第一面(7)、前記ヒドロゲル層(14)の第二面(9)、前記ヒドロゲル層(14)のバルク部分、又はこれらの組み合わせに存在している、請求項1から14のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(10)。
  16. 細胞接着タンパク質等の前記細胞接着分子が前記ヒドロゲル層の化学官能基のうち少なくとも一種に共有結合している、請求項15に記載のマイクロ流体デバイス(10)。
  17. 前記細胞接着分子が、Fc抗体フラグメントで標識されているか、又はヘテロ二官能性NHS‐PEGマレイミド架橋剤等のヘテロ二官能性タンパク質架橋試薬で修飾されている、請求項16に記載のマイクロ流体デバイス(10)。
  18. 前記細胞接着分子が、フィブロネクチンとコラーゲンとラミニンのうちのいずれか一つ又はこれらの組み合わせを備える、請求項15から17のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(10)。
  19. 前記ヒドロゲル層(14)の第一面(7)、前記ヒドロゲル層(14)の第二面(9)、前記ヒドロゲル層(14)のバルク部分、又はこれらの組み合わせに存在する細胞接着分子の上に細胞が堆積している、請求項1から18のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(10)。
  20. 前記ヒドロゲル層(14)の第一面(7)、前記ヒドロゲル層(14)の第二面(9)、前記ヒドロゲル層(14)のバルク部分、又はこれらの組み合わせが同一又は異なる種類の細胞を含む、請求項19に記載のマイクロ流体デバイス(10)。
  21. 前記細胞が一つ以上の層を形成している、請求項19又は20に記載のマイクロ流体デバイス(10)。
  22. 細胞が哺乳類細胞、特にヒト細胞を備える、請求項18から21のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(10)。
  23. 請求項1から22のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(10)を製造するための方法であって、
    (a)第一素子(11)と第二素子(16)を製造又は提供することと、
    (b)PDMS等の前記第一素子(11)の表面を一種以上の化学官能基を備える分子で官能化することと、
    (c)任意でPDMS等の前記第二素子(16)の表面を一種以上の化学官能基を備える分子で官能化することと、
    (d)前記第一素子(11)と前記第二素子(16)の一方又は両方の表面上の分子の化学官能基のうち少なくとも一種と反応する一種以上の化学官能基を含むヒドロゲル層(14)を製造又は提供することと、
    (e)前記第一素子(11)と前記第二素子(16)との間に前記ヒドロゲル層(14)を配置することと、
    (f)前記第一素子(11)と前記第二素子(16)の一方又は両方の表面上の分子の化学官能基のうち少なくとも一種を前記ヒドロゲル層(14)の化学官能基のうち少なくとも一種と共有結合反応させることと、を備える方法。
  24. 前記ヒドロゲル層(14)が、ビニルスルホン官能化ポリエチレングリコール(PEG‐VS)マクロモノマーとチオール官能化ポリエチレングリコール(PEG‐SH)マクロモノマーを架橋させることによって製造される、請求項23に記載の方法。
  25. 請求項1から22のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(10)のヒドロゲル層(14)を作動させるための方法であって、
    (a)第一素子(11)とヒドロゲル層(14)の第一面(7)との間の少なくとも一つのマイクロチャネル(34)に液体又は気体を導入することと、
    (b)第二素子(16)と前記ヒドロゲル層(14)の第二面(9)との間の少なくとも一つのキャビティ(32)に液体又は気体を導入することと、
    (c)前記第一素子(11)と前記ヒドロゲル層(14)の第一面(7)との間の前記少なくとも一つのマイクロチャネル(34)を通して液体又は気体を流すことと、
    (d)前記第二素子(16)と前記ヒドロゲル層(14)の第二面(9)との間の前記少なくとも一つのキャビティ(32)を通して液体又は気体を流すことと、
    (e)前記少なくとも一つのマイクロチャネル(34)又は前記少なくとも一つのキャビティ(32)内の液体の流量又は気体の圧力を調整又は変更して、前記少なくとも一つのマイクロチャネル(34)と前記少なくとも一つのキャビティ(32)との間に圧力差を生じさせて、前記ヒドロゲル層の平面に垂直な逆向きの二方向において前記少なくとも一つのマイクロチャネル(34)又は前記少なくとも一つのキャビティ(32)に向けて交互に屈曲又は曲がることによって前記ヒドロゲル層(14)を伸縮させることと、を備える方法。
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