JP2021191835A - 繊維強化プラスチック用部材の製造方法、複合材料、および移動体 - Google Patents

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桂史 大崎
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Abstract

【課題】加熱寸法安定性に優れる強化繊維プラスチック用部材を提供する。【解決手段】樹脂成分を含有する部材原料を溶融する工程(i)と、溶融後の部材原料を冷却する工程(iii)とを備える繊維強化プラスチック用部材の製造方法であって、前記部材原料が樹脂成分として結晶性樹脂を含み、前記繊維強化プラスチック用部材の示差走査熱量計を用いて得られる相対結晶化度が50%以上である繊維強化プラスチック用部材の製造方法とする。【選択図】なし

Description

本発明は、複合材料に好適に利用することができる、繊維強化プラスチック用部材の製造方法、前記製造方法により得られた繊維強化プラスチック用部材と強化繊維とを複合させてなる複合材料、および、この複合材料を用いた移動体に関する。
繊維強化複合材料の1つである繊維強化プラスチックは、軽量で、高強度、高剛性であるため、スポーツ・レジャー用途から、自動車や航空機等の産業用途まで、幅広く用いられている。
繊維強化プラスチックの製造方法としては、強化繊維等の長繊維(連続繊維)からなる補強材にマトリックス樹脂を含浸させた中間材料、すなわちプリプレグを使用する方法がある。この方法によれば、繊維強化プラスチックの強化繊維の含有量を管理しやすいとともに、その含有量を高めに設計することが可能であるという利点があり、プリプレグを複数枚積層、加熱硬化することにより、成形物を得ることができる。
前記マトリックス樹脂としては、耐熱性、機械特性、耐薬品性、耐久性等に優れることから、スーパーエンジニアリングプラスチックが広く採用されてきている。
例えば、特許文献1では、ポリエーテルエーテルケトンをマトリックス樹脂とし、ポリエーテルスルホンによってサイジングされた繊維を強化材としてなる複合材料が開示されている。また、特許文献2では、特定の固有粘度を有するポリアリールケトン樹脂組成物を用いた繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグが開示されている。
特開昭62−115033号公報 特開2019−147876号公報
しかしながら、前記特許文献1および2の開示技術では、フィルム状のマトリックス樹脂と強化繊維とを、例えば、ロールtoロールで加熱圧着させ複合材料とする工程において、熱によりフィルムが寸法変化を起こし、条件によっては得られる複合材料にシワが発生することがあり、更なる改善の余地があることが、本発明者らの検討で明らかとなった。
そこで本発明は、このような背景下において、加熱寸法安定性に優れる繊維強化プラスチック用部材の製造方法の提供を目的とする。
本発明者らは、前記課題を鋭意検討した結果、繊維強化プラスチック用部材の相対結晶化度を高くすることにより前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[21]を提供するものである。
[1] 樹脂成分を含有する部材原料を溶融する工程(i)と、溶融後の部材原料を冷却する工程(iii)とを備える繊維強化プラスチック用部材の製造方法であって、前記部材原料が樹脂成分として結晶性樹脂を含み、前記繊維強化プラスチック用部材の示差走査熱量計を用いて得られる相対結晶化度が50%以上である、繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
[2] 前記工程(i)と前記工程(iii)との間に、溶融した部材原料を押出す工程(ii)を備える、[1]記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
[3] 前記樹脂成分がポリアリールエーテルケトンを含む、[1]または[2]記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
[4] 前記冷却が、結晶性樹脂のガラス転移温度から30〜150℃高い温度のロールでの冷却である、[1]〜[3]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
[5] 前記樹脂成分の分子量分布が3.3以上である、[1]〜[4]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
[6] 前記樹脂成分の質量平均分子量が87000未満である、[1]〜[5]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
[7] 前記ポリアリールエーテルケトンの分子量分布が3.3以上である、[3]〜[6]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
[8] 前記ポリアリールエーテルケトンの質量平均分子量が87000未満である、[3]〜[7]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
[9] 前記繊維強化プラスチック用部材の比重が1.27以上である、[1]〜[8]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
[10] 前記繊維強化プラスチック用部材の加熱収縮率が2.2%以下である、[1]〜[9]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
[11] 前記繊維強化プラスチック用部材の加熱収縮応力が1mN以下である、[1]〜[10]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
[12] 前記繊維強化プラスチック用部材の厚みが10〜100μmである、[1]〜[11]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
[13] 前記繊維強化プラスチック用部材の厚み精度が7%以下である、[1]〜[12]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
[14] 前記繊維強化プラスチック用部材の少なくとも一面における表面の算術平均高さが0.001〜1μmである、[1]〜[13]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
[15] 前記繊維強化プラスチック用部材の少なくとも一面における表面の最大高さが0.1〜10μmである、[1]〜[14]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
[16] 前記繊維強化プラスチック用部材の少なくとも一面における表面の算術平均粗さが0.005〜1μmである、[1]〜[15]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
[17] 前記繊維強化プラスチック用部材の少なくとも一面における表面の最大高さ粗さが0.05〜5μmである、[1]〜[16]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
[18] 繊維強化プラスチック用部材がフィルムである、[1]〜[17]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
[19] [1]〜[18]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法により得られた繊維強化プラスチック用部材と強化繊維とを複合させてなる複合材料。
[20] プリプレグである、[19]記載の複合材料。
[21] [19]または[20]記載の複合材料を用いた、航空機、自動車、船舶または鉄道車両である移動体。
本発明の製造方法によれば、加熱寸法安定性に優れる強化繊維プラスチック用部材を得ることができる。
本発明に係る繊維強化プラスチック用部材の製造方法の実施形態を模式的に示す全体説明図である。
以下、本発明の実施形態の一例について説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
なお、本発明において、「X〜Y」(X、Yは任意の数字)と表現した場合、特に断らない限り「X以上、Y以下」の意とともに、「Xより大きい」および「Yより小さい」の意を包含するものである。
また、本発明において、フィルムは、シートを包含するものとする。一般的にフィルムとは、長さおよび幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい(日本工業規格JIS K6900:1994)、一般的にシートとは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚みが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでないため、本発明においては、フィルムはシートを包含するものとする。よって、「フィルム」は「シート」であってもよい。
本発明では、樹脂成分として結晶性樹脂を含む部材原料を用いて、特定の相対結晶化度を有する繊維強化プラスチック用部材(以下、「FRP用部材」と称する場合がある)を製造する方法を開示する。まず、本発明の製造方法に用いる樹脂成分について説明する。
<樹脂成分>
前記樹脂成分は、結晶性樹脂を含むものである。また、結晶性樹脂としては、熱可塑性樹脂であることが好ましく、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン等のポリアリールエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、液晶ポリマー、フッ素樹脂、ポリメチルペンテン、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリアセタール等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。なかでも、耐熱性、機械特性、耐薬品性等に優れる点でポリアリールエーテルケトンが好ましく、ポリエーテルエーテルケトンが特に好ましい。
樹脂成分中の結晶性樹脂の含有割合は50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることが特に好ましく、90質量%超であることが最も好ましく、95質量%以上であることが殊に好ましい。結晶性樹脂の含有割合がかかる範囲であれば、結晶性樹脂以外の樹脂を含む場合であっても、本発明の効果を維持したまま適宜必要な効果を付与することが容易となる。
また、樹脂成分としてポリアリールエーテルケトン、特にポリエーテルエーテルケトンを含む場合は、ポリアリールエーテルケトン、特にポリエーテルエーテルケトンの含有割合は樹脂成分中の50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることが特に好ましく、90質量%超であることが最も好ましく、95質量%以上であることが殊に好ましい。ポリアリールエーテルケトン、特にポリエーテルエーテルケトンの含有割合がかかる範囲であれば、結晶性樹脂以外の樹脂を含む場合であっても、本発明の効果を維持したまま適宜必要な効果を付与することが容易となる。
以下、結晶性樹脂として挙げられる各樹脂について説明する。
[ポリアリールエーテルケトン]
以下、ポリアリールエーテルケトンについて説明する。
ポリアリールエーテルケトンは、1つ以上のアリール基、1つ以上のエーテル基および1つ以上のケトン基を含むモノマー単位を含有する単独重合体または共重合体である。例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルジフェニルエーテルケトン等や、これらの共重合体(例えば、ポリエーテルケトン−ポリエーテルジフェニルエーテルケトン共重合体)を挙げることができる。なかでも、耐熱性、機械特性、耐薬品性等に優れる点で、ポリエーテルエーテルケトンが特に好ましい。
ポリアリールエーテルケトンの分子量分布は3.3以上であることが好ましく、3.5以上がより好ましく、3.6以上が特に好ましく、3.8以上が殊に好ましく、4以上が最も好ましい。分子量分布が広いということは、分子量分布が狭い場合と比べて低分子量成分の割合が多いことを意味する。低分子量成分は分子鎖の絡み合いが小さく運動性が高いため、結晶化の際に分子鎖が折り畳まれやすく結晶化速度が大きくなる。従って、低分子量成分が多いと、結晶化の際に低分子量成分が先に結晶化し、その結晶が結晶核剤として作用するため、樹脂全体として結晶融解温度や結晶化度、結晶化速度が向上すると考えられる。分子量分布が前記数値以上であれば、低分子量成分を充分な量含むため、結晶化度や結晶化速度を高めることができ、ひいては、耐熱性、剛性、生産性の向上に繋がる傾向となる。
一方、ポリアリールエーテルケトンの分子量分布は8以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましく、6.5以下であることがさらに好ましく、6以下であることがよりさらに好ましく、5.5以下であることがよりさらに好ましく、5.3以下であることがより特に好ましく、5.1以下であることがとりわけ好ましく、4.9以下であることが殊に好ましく、4.7以下であることが最も好ましい。分子量分布が前記数値以下であれば、高分子量成分と低分子量成分の割合が多すぎないため、結晶化度と流動性、機械特性のバランスに優れる傾向となる。
ポリアリールエーテルケトンの質量平均分子量は87000未満であることが好ましく、83000以下であることがより好ましく、80000以下であることがさらに好ましく、75000以下であることがよりさらに好ましい。質量平均分子量が前記数値以下であれば、結晶化度や結晶化速度、溶融成形時の流動性に優れる傾向となる。
一方、質量平均分子量は10000以上であることが好ましく、30000以上であることがより好ましく、40000以上であることがさらに好ましく、50000以上であることが特に好ましく、55000以上であることがとりわけ好ましく、59000以上であることが最も好ましい。質量平均分子量が前記数値以上であれば、耐久性、耐衝撃性等の機械特性に優れる傾向となる。
以下、ポリアリールエーテルケトンの中でも好ましく用いられるポリエーテルエーテルケトンについて説明する。
(ポリエーテルエーテルケトン)
前記ポリエーテルエーテルケトンは、少なくとも2つのエーテル基とケトン基とを構造単位として有する樹脂であればよいが、熱安定性、溶融成形性、剛性、耐薬品性、耐衝撃性、耐久性に優れることから、好ましくは下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するものである。
Figure 2021191835
(前記一般式(1)において、Ar1〜Ar3は、それぞれ独立に、炭素原子数6〜24のアリーレン基を表し、また、それぞれ置換基を有していてもよい)
前記一般式(1)において、Ar1〜Ar3のアリーレン基は互いに異なるものであってもよいが、同一であることが好ましい。前記Ar1〜Ar3のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基等が挙げられる。なかでもフェニレン基が好ましく、p−フェニレン基であることがより好ましい。
前記Ar1〜Ar3のアリーレン基が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素原子数1〜20のアルキル基や、メトキシ基、エトキシ基等の炭素原子数1〜20のアルコキシ基等が挙げられる。なお、Ar1〜Ar3が置換基を有する場合、その置換基の数には特に制限はない。
なかでも、下記構造式(2)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトンが、熱安定性、溶融成形性、剛性、耐薬品性、耐衝撃性、耐久性の観点から好ましい。
Figure 2021191835
前記ポリエーテルエーテルケトンの分子量分布は3.3以上であることが好ましく、3.5以上であることがより好ましく、3.6以上であることがさらに好ましく、3.8以上であることが特に好ましく、4以上であることが最も好ましい。分子量分布が前記数値以上であれば、低分子量成分を充分な量含むため、結晶化度や結晶化速度を高めることができ、ひいては、耐熱性や剛性、生産性の向上に繋がりやすい傾向となる。
一方、ポリエーテルエーテルケトンの分子量分布は8以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましく、6.5以下であることがさらに好ましく、6以下であることがよりさらに好ましく、5.5以下であることがよりさらに好ましく、5.3以下であることがより特に好ましく、5.1以下であることがとりわけ好ましく、4.9以下であることが殊に好ましく、4.7以下であることが最も好ましい。ポリエーテルエーテルケトンの分子量分布の上限が前記数値以下であれば、高分子量成分と低分子量成分の割合が多すぎないため、結晶化度と流動性、機械特性のバランスに優れる傾向がある。
ポリエーテルエーテルケトンの質量平均分子量は87000未満であることが好ましく、83000以下であることがより好ましく、80000以下であることがさらに好ましく、75000以下であることがよりさらに好ましい。ポリエーテルエーテルケトンの質量平均分子量が前記数値未満であれば、結晶化度や結晶化速度、溶融成形時の流動性に優れる傾向となる。
一方、質量平均分子量は10000以上であることが好ましく、30000以上であることがより好ましく、40000以上であることがさらに好ましく、50000以上であることが特に好ましく、55000以上であることがとりわけ好ましく、59000以上であることが最も好ましい。質量平均分子量が前記数値以上であれば、耐久性、耐衝撃性等の機械特性に優れる傾向となる。
本発明において、分子量および分子量分布は、用いる樹脂成分が溶解する溶離液を用い、ゲル浸透クロマトグラフィーにより求めることができる。例えば、溶離液としてクロロフェノールと、クロロベンゼン、クロロトルエン、ブロモベンゼン、ブロモトルエン、ジクロロベンゼン、ジクロロトルエン、ジブロモベンゼン、ジブロモトルエン等のハロゲン化ベンゼン類との混合液や、溶離液としてペンタフルオロフェノールとクロロホルムの混合液を用いることができる。
具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができるが、例えば、以下の方法で測定することができる。
(1)ポリエーテルエーテルケトン等の樹脂成分の非晶状態のフィルムを得る。例えば、ポリエーテルエーテルケトン等の樹脂ペレットを、例えば350〜400℃でプレスした後急冷するか、押出機でフィルム化する場合はキャストロールの温度を低く、例えば20〜140℃で冷却して非晶状態のフィルムを得る。
(2)前記フィルム9mgに、ペンタフルオロフェノール3gを加える。
(3)ヒートブロックを用い、100℃で60分間加熱溶解する。
(4)続いてヒートブロックから取り出し、放冷後、常温(約23℃)のクロロホルム6gを少しずつ静かに加え穏やかに振り混ぜる。
(5)その後0.45μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)カートリッジフィルターでろ過して得られた試料について、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて、数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を測定する。
なお、樹脂成分が複数種の樹脂の混合物の場合で、ゲル浸透クロマトグラフィー測定により複数のピークが確認される場合や、単一種の樹脂成分であっても複数のピークが確認される場合は、複数のピークを1つのピークとして指定する解析方法により、Mn、Mw、Mw/Mnを算出すればよい。具体的には、最初に確認されるピークのピークスタートのリテンションタイムから最後に確認されるピークのピークエンドのリテンションタイムまでの範囲でピーク面積を計算し、Mn、Mw、Mw/Mnを算出することができる。
前記ポリアリールエーテルケトン、なかでもポリエーテルエーテルケトンのメルトフローレート(MFR)〔温度380℃、荷重5kgf〕は、15g/10分以上であることが好ましく、20g/10分以上であることがより好ましく、30g/10分以上であることがさらに好ましく、40g/10分以上であることが特に好ましく、50g/10分以上であることが殊に好ましく、60g/10分以上であることが最も好ましい。ポリアリールエーテルケトンのMFRが前記数値以上であれば、本部材を用いて強化繊維との複合材料を製造する際の繊維への含浸性等の二次加工性や、溶融成形性に優れる傾向がある。
一方、ポリアリールエーテルケトン、なかでもポリエーテルエーテルケトンのMFRは、150g/10分以下であることが好ましく、130g/10分以下であることがより好ましく、120g/10分以下であることが特に好ましく、110g/10分以下であることが殊に好ましく、100g/10分以下であることが最も好ましい。ポリアリールエーテルケトンのMFRが前記数値以下であれば、適当な含浸性を付与でき、加工時間が短く生産性に優れる傾向となる。
なお、前記MFRは、JIS K7210−1:2014(A法)に準じた方法で測定することにより得られる。
前記ポリアリールエーテルケトン、なかでもポリエーテルエーテルケトンの結晶融解温度(Tm)は320℃以上であることが好ましく、330℃以上であることがより好ましく、335℃以上であることがさらに好ましく、340℃以上であることが特に好ましい。ポリアリールエーテルケトンの結晶融解温度が前記温度以上であれば、得られる部材は耐熱性に優れる傾向となる。
一方、ポリアリールエーテルケトン、なかでもポリエーテルエーテルケトンの結晶融解温度は370℃以下であることが好ましく、365℃以下であることがより好ましく、360℃以下であることがさらに好ましく、355℃以下であることが特に好ましく、350℃以下であることが最も好ましい。ポリアリールエーテルケトンの結晶融解温度が前記温度以下であれば、FRP用部材製造時等の溶融成形時の流動性に優れる傾向となる。
なお、本発明における結晶融解温度は、JIS K7121:2012に準じて、示差走査熱量計(例えば、パーキンエルマー社製「Pyris1 DSC」)を用いて、温度範囲25〜400℃、加熱速度10℃/分で昇温させ、検出されたDSC曲線の融解ピークのピークトップ温度から求めることができる。
ポリアリールエーテルケトン、なかでもポリエーテルエーテルケトンの降温過程における結晶化温度(Tc)は296℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましく、302℃以上であることがさらに好ましく、303℃以上であることが特に好ましく、304℃以上であることが最も好ましい。ポリアリールエーテルケトンの降温過程における結晶化温度が前記温度以上であれば、結晶化速度が大きく、FRP用部材の生産性に優れる傾向となる。具体的には、例えばフィルムを作製する場合であれば、キャストロールの温度(冷却温度)をガラス転移温度以上、結晶融解温度以下の温度に設定することで、キャストロールに樹脂が接触している間に結晶化が促進され結晶化フィルムが得られる。そして、降温過程における結晶化温度が前記温度以上であれば、結晶化速度が大きく、キャストロールで結晶化を終えることができるため弾性率が高くなり、結果としてロールへの貼り付きが抑えられ、フィルムの外観が良くなる傾向となる。
一方、ポリアリールエーテルケトン、なかでもポリエーテルエーテルケトンの降温過程における結晶化温度は320℃以下であることが好ましく、315℃以下であることがより好ましく、312℃以下であることがさらに好ましく、310℃以下であることが特に好ましい。ポリエーテルエーテルケトンの降温過程における結晶化温度が前記温度以下であれば、結晶化が速すぎないため、フィルム等のFRP用部材成形時の冷却ムラが少なくなり、均一に結晶化した高品質な部材が得られ、また後述の強化繊維との複合材料とする際のFRP用部材の加熱寸法安定性にも優れる傾向となる。
なお、本発明における降温過程における結晶化温度は、JIS K7121:2012に準じて、示差走査熱量計(例えば、パーキンエルマー社製「Pyris1 DSC」)を用いて、温度範囲400〜25℃、速度10℃/分で降温させ、検出されたDSC曲線の結晶化ピークのピークトップ温度から求めることができる。
ポリアリールエーテルケトン、なかでもポリエーテルエーテルケトンの結晶融解熱量は42J/g以上であることが好ましく、44J/g以上であることがより好ましく、46J/g以上であることがさらに好ましく、48J/g以上であることが特に好ましく、50J/g以上であることが最も好ましい。ポリアリールエーテルケトンの結晶融解熱量が前記数値以上であれば、得られるFRP用部材は充分な結晶化度を有し、ひいては耐熱性と剛性に優れる傾向となる。また、複合材料製造時の加熱寸法安定性に優れる傾向となり、得られる複合材料は高い結晶化度を有し、ひいては耐熱性と剛性に優れる傾向となる。
一方、ポリアリールエーテルケトン、なかでもポリエーテルエーテルケトンの結晶融解熱量は60J/g以下であることが好ましく、58J/g以下であることがより好ましく、56J/g以下であることがさらに好ましく、54J/g以下であることが特に好ましい。ポリアリールエーテルケトンの結晶融解熱量が前記数値以下であれば、結晶化度が高すぎないため、FRP用部材製造時等の溶融成形性に優れる傾向となり、得られる複合材料は耐久性、耐衝撃性に優れる傾向となる。
なお、本発明における結晶融解熱量は、JIS K7122:2012に準じて、示差走査熱量計(例えば、パーキンエルマー社製「Pyris1 DSC」)を用いて、温度範囲25〜400℃、加熱速度10℃/分で昇温させ、検出されたDSC曲線の融解ピークの面積から求めることができる。
なお、ポリアリールエーテルケトンの改質を目的としてその他の樹脂成分をブレンドする場合、その種類は特に制限されないが、なかでも、ポリアリールエーテルケトンと成形温度が近く、溶融成形時の分解や架橋を抑制しやすいという観点から、例えば、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、液晶ポリマー等が好適に使用できる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。これらのなかでも、特にポリエーテルイミドが好適に使用できる。ポリアリールエーテルケトンとポリエーテルイミドは相溶性が高く分子レベルで混合しやすいため、FRP用部材の結晶性を維持したまま、ポリアリールエーテルケトンのガラス転移温度を向上させる等のポリエーテルイミドの特性を付与することが容易となる。
また、ポリアリールエーテルケトンとしてポリエーテルエーテルケトンを用いる場合、その改質を目的としてブレンドする他の樹脂成分としては、前記ポリアリールエーテルケトンの改質目的に使用される樹脂と同様のものを用いることができるが、ポリエーテルエーテルケトン以外のポリアリールエーテルケトン、例えば、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトンを、ポリエーテルエーテルケトンと併せて用いることも好ましい。
(ポリエーテルケトンケトン)
前記ポリエーテルケトンケトンとしては、下記一般式(3)で表される繰り返し単位(a−1)および下記一般式(4)で表される繰り返し単位(a−2)の少なくとも一方を有するポリエーテルケトンケトンであることが好ましく、下記一般式(3)で表される繰り返し単位(a−1)および下記一般式(4)で表される繰り返し単位(a−2)を有するポリエーテルケトンケトンであることがより好ましい。これら繰り返し単位(a−1)、(a−2)はいずれも1つのエーテル基と2つのケトン基を有するものである。
Figure 2021191835
(前記一般式(3)、(4)において、Ar4〜Ar9は、それぞれ独立に、炭素原子数6〜24のアリーレン基を表し、また、それぞれ置換基を有していてもよい。
一般式(3)中の(1,4)Ar6は、ケトン基がAr6基の1位と4位に結合しており、一般式(4)中の(1,3)Ar9は、ケトン基がAr9基の1位と3位に結合している。)
前記一般式(3)、(4)において、Ar4〜Ar9のアリーレン基は互いに異なるものであってもよいが、同一であることが好ましい。Ar4〜Ar9のアリーレン基としては炭素数6〜24のアリーレン基を表し、具体的にはフェニレン基、ビフェニレン基等が挙げられ、これらのうちフェニレン基が好ましく、Ar4,Ar5,Ar7,Ar8についてはp−フェニレン基であることが好ましい。Ar6はp−アリーレン基、好ましくはp−フェニレン基である。Ar9はm−アリーレン基、好ましくはm−フェニレン基である。
Ar4〜Ar9のアリーレン基が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素原子数1〜20のアルキル基や、メトキシ基、エトキシ基等の炭素原子数1〜20のアルコキシ基等が挙げられる。Ar4〜Ar9が置換基を有する場合、その置換基の数には特に制限はない。
ポリエーテルケトンケトンを構成する前記一般式(3)で表される繰り返し単位(a−1)としては、下記構造式(1A)で表される繰り返し単位であることが、前記一般式(4)で表される繰り返し単位(a−2)としては、下記構造式(2A)で表される繰り返し単位であることが、機械特性、熱安定性および溶融成形性の観点から好ましい。
Figure 2021191835
ポリエーテルケトンケトン中の繰り返し単位(a−1)と繰り返し単位(a−2)の単位モル比[(a−1)/(a−2)]は1以上であることが好ましく、1.1以上であることがより好ましく、1.2以上であることがさらに好ましく、1.3以上であることが特に好ましく、1.4以上であることが殊に好ましく、1.5以上であることが最も好ましい。前記単位モル比が前記数値以上であれば、ガラス転移温度が低下しにくく、優れた耐熱性を維持しやすくなる。一方、該単位モル比[(a−1)/(a−2)]は5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましく、2以下であることが特に好ましく、1.5以下であることが最も好ましい。前記単位モル比が前記数値以下であれば、ガラス転移温度や結晶融解温度が高くなり過ぎないため、溶融成形性に優れ、また後述の強化繊維と複合する際の熱融着性にも優れ好ましい。
ポリエーテルケトンケトンは、繰り返し単位(a−1)と繰り返し単位(a−2)の単位モル比[(a−1)/(a−2)]によって結晶性が異なり、例えば、ポリアリールエーテルケトンが前記構造式(1A)で表される繰り返し単位と前記構造式(2A)で表される繰り返し単位を有する樹脂の場合、一般に単位モル比が1.5以上であれば結晶性を示しやすくなる。
ポリエーテルケトンケトン中の繰り返し単位(a−1)と繰り返し単位(a−2)の合計数(重合度)は、機械特性の確保の観点から、10以上であることが好ましく、より好ましくは20以上である。また、溶融成形性の観点から100以下であることが好ましく、より好ましくは50以下である。
なお、ポリエーテルケトンケトンは繰り返し単位(a−1)と繰り返し単位(a−2)以外のその他の繰り返し単位を有していてもよいが、その場合、ポリエーテルケトンケトンとして繰り返し単位(a−1)と繰り返し単位(a−2)とを有することによる前述の効果を確実に得る上で、繰り返し単位(a−1)と繰り返し単位(a−2)とその他の繰り返し単位との合計に対する、その他の繰り返し単位の割合は、20モル%以下が好ましく、特に好ましくは10モル%以下であり、最も好ましくはその他の繰り返し単位を含まないことである。
ポリエーテルケトンケトンのガラス転移温度は、125℃以上であることが好ましく、より好ましくは128℃以上、さらに好ましくは130℃以上である。ガラス転移温度が前記温度以上であれば、充分な耐熱性を有するFRP用部材が得られやすい。一方、ポリエーテルエーテルケトンのガラス転移温度は200℃以下であることが好ましく、190℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることがさらに好ましく、170℃以下であることが特に好ましく、160℃以下であることが最も好ましい。ガラス転移温度が前記温度以下であれば、溶融成形性に優れ、強化繊維と複合する場合は低温で熱融着しやすく好ましい。
ポリエーテルケトンケトンの結晶融解温度は280℃以上であることが好ましく、285℃以上であることがより好ましく、290℃以上であることがさらに好ましく、295℃以上であることが特に好ましく、300℃以上であることが最も好ましい。結晶融解温度が前記温度以上であれば、耐熱性に優れる傾向となる。一方、結晶融解温度は370℃以下であることが好ましく、360℃以下であることがより好ましく、350℃以下であることがさらに好ましく、340℃以下であることが特に好ましく、335℃以下であることが最も好ましい。結晶融解温度が前記温度以下であれば、溶融成形性に優れる傾向となる。
ポリエーテルケトンケトンの結晶融解熱量は、45J/g以下であることが好ましく、40J/g以下であることがより好ましく、37J/g以下であることがさらに好ましく、35J/g以下であることが特に好ましく、32J/g以下であることが最も好ましい。結晶融解熱量が前記数値以下であれば、強化繊維と複合する際の熱融着性に優れる傾向となる。一方、結晶融解熱量は15J/g以上であることが好ましく、20J/g以上であることがより好ましく、23J/g以上であることがさらに好ましく、25J/g以上であることが特に好ましく、27J/g以上であることが最も好ましい。結晶融解熱量がかかる範囲であれば、耐熱性を維持しやすい傾向となる。
なお、ポリエーテルケトンケトンのガラス転移温度は、JIS K7121:2012に準じて、示差走査熱量計(例えば、パーキンエルマー社製「Pyris1 DSC」)を用いて、温度範囲25〜400℃、加熱速度10℃/分で昇温させ、検出されたDSC曲線から求めることができる。また、結晶融解温度および結晶融解熱量は、前記した通りである。
[ポリフェニレンサルファイド]
前記ポリフェニレンサルファイドとしては、例えば、下記式で表される構造単位を含む重合体が挙げられる。
−(Ph−S)−
(前記式のPhは、p−フェニレン、m−フェニレン、o−フェニレン等のフェニレン基を表し、Sは、硫黄原子を表す。)
また、本発明で用いることができるポリフェニレンサルファイドは、前記式で表される構造単位以外の他のモノマーに由来する構造単位をさらに含んでもよい。他のモノマーとしては、例えば、アルキル置換フェニレン(好ましくは、炭素原子数1〜6のアルキル基)、フェニル置換フェニレン、ハロゲン置換フェニレン、アミノ置換フェニレン、アミド置換フェニレン、p,p'−ジフェニレンスルホン、p,p'−ビフェニレン、p,p'−ビフェニレンエーテル、p,p'−ビフェニレンカルボニルおよびナフタレン等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
[ポリイミド]
前記ポリイミドとしては、イミド結合を有する結晶性のものであれば特に制限はないが、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンの中に、イミド基以外の熱的に安定な官能基や芳香族系原子団を導入して、生成イミド基の繰り返し単位中での濃度を低下させた熱可塑性ポリイミドが挙げられる。
前記熱可塑性ポリイミドとしては、例えば、熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ポリアミドイミド、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリエステルイミド等が挙げられる。なかでも、熱可塑性ポリイミドが好ましく、テトラカルボン酸二無水物と脂肪族および脂環族ジアミンの少なくとも一方とを重合させてなる熱可塑性ポリイミドがより好ましい。
前記テトラカルボン酸二無水物としては、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸等の脂環族テトラカルボン酸の二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族テトラカルボン酸の二無水物を例示することができる。また、これらのアルキルエステル体も使用することができる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。なかでも、芳香族テトラカルボン酸の二無水物が好ましく、耐熱性、二次加工性、低吸水性の観点からピロメリット酸二無水物がより好ましい。
前記脂肪族ジアミンは、直鎖状であっても分岐状であってもよいが、耐衝撃性、成形性、二次加工性の観点から、直鎖状炭化水素の両末端にアミン基を有する直鎖状脂肪族ジアミンであることが好ましい。直鎖状脂肪族ジアミンとしては、アルキル基の両末端にアミン基を有するジアミン成分であれば特に制限はないが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、ヘプタンジアミン、オクタンジアミン、ノナンジアミン、デカンジアミン、ウンデカンジアミン、ドデカンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサン、トリアコンタン、テトラコンタン、ペンタコンタン等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。これらのなかでも、成形性、二次加工性、低吸湿性の観点から、炭素数4〜12の直鎖状脂肪族ジアミンがより好ましい。
前記脂環族ジアミンとしては、環状炭化水素に2つのアミン基を有する化合物であれば特に制限はないが、例えば、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4'−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4'−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。これらのなかでも、耐熱性、成形性、二次加工性の観点から、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが好ましい。
また、ジアミン成分としては、前記脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン以外の他のジアミン成分を含んでいてもよい。他のジアミン成分としては、例えば、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、2,4−トルエンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、α,α'−ビス(4−アミノフェニル)−1,4'−ジイソプロピルベンゼン、α,α'−ビス(3−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,6−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン、ポリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ポリプロピレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル等のエーテルジアミン、シロキサンジアミン等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
ジアミン成分としては、耐熱性と成形性のバランスに優れる点から、脂肪族ジアミンと脂環族ジアミンの両方を含むことが好ましく、直鎖状脂肪族ジアミンと脂環族ジアミンの両方を含むことが好ましい。それぞれの含有量は、脂肪族ジアミン:脂環族ジアミン=99:1〜1:99モル%の範囲であることが好ましく、90:10〜10:90モル%であることがより好ましく、80:20〜20:80モル%であることがさらに好ましく、70:30〜30:70モル%であることが特に好ましく、60:40〜40:60モル%であることが最も好ましい。
[液晶ポリマー]
前記液晶ポリマーとしては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸を基本骨格として、エチレンテレフタレート、2,6−ヒドロキシナフトエ酸、フェノールおよびフタル酸等の酸成分をエステル結合させた芳香族ポリエステル樹脂が挙げられる。
[フッ素樹脂]
前記フッ素樹脂としては、示差走査熱量計で測定したガラス転移温度が120℃超のものを用いることが好ましく、例えば、テトラフルオロエチレン/フルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体等が挙げられる。また、必要に応じてカルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基およびイソシアネート基等の官能基を有していてもよい。
[ポリメチルペンテン]
前記ポリメチルペンテンとしては、4−メチル−1−ペンテンの単独重合体または4−メチル−1−ペンテンとエチレンもしくは4−メチル−1−ペンテン以外のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。
なかでも、4−メチル−1−ペンテンを好ましくは85〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%含む重合体であることが好ましい。
前記4−メチル−1−ペンテン以外のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン等の炭素数3〜20のα−オレフィンが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。なかでも4−メチル−1−ペンテンとの共重合性がよく、良好な靭性が得られやすい点から、1−デセン、1−テトラデセン、1−オクタデセンが好ましい。
[脂肪族ポリアミド]
前記脂肪族ポリアミドとしては、示差走査熱量計で測定したガラス転移温度が50〜90℃程度のものを用いることが好ましく、例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46等が挙げられる。
[半芳香族ポリアミド]
前記半芳香族ポリアミドとしては、示差走査熱量計で測定したガラス転移温度が80〜200℃程度のものを用いることが好ましく、例えば、メタキシリレンジアミンとアジピン酸とから得られるポリアミドMXD6、ポリアミド4T、ポリアミド6T、変性ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド11T等が挙げられる。
[ポリエチレンテレフタレート]
前記ポリエチレンテレフタレートとしては、例えば、示差走査熱量計で測定したガラス転移温度が70〜80℃である、エチレングリコールとテレフタル酸との重縮合により得られる結晶性ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
[ポリブチレンテレフタレート]
前記ポリブチレンテレフタレートとしては、例えば、示差走査熱量計で測定したガラス転移温度が35〜55℃である、1,4−ブタンジオールとテレフタル酸およびジメチルテレフタレートの少なくとも一方との重縮合により得られるもの等が挙げられる。
[ポリエチレンナフタレート]
前記ポリエチレンナフタレートとしては、例えば、示差走査熱量計で測定したガラス転移温度が100℃以上である、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルとエチレングリコールをエステル交換反応させてビスヒドロキシエチレン−2,6−ナフタレートを得た後、重縮合反応させることによって得られるもの等が挙げられる。
[ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート]
前記ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとしては、例えば、示差走査熱量計で測定したガラス転移温度が80℃以上である、テレフタル酸およびジメチルテレフタレートの少なくとも一方と1,4−シクロヘキサンジメタノールとをエステル交換反応させてポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートを得た後、重縮合反応させることによって得られるもの等が挙げられる。
[ポリプロピレン]
前記ポリプロピレンとしては、例えば、示差走査熱量計で測定したガラス転移温度が100℃未満である、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレンブロック共重合体(プロピレン単独重合体成分または主にプロピレンからなる共重合体成分と、エチレンおよびα−オレフィンから選択されるモノマーの少なくとも1種とプロピレンとを共重合して得られる共重合体成分とからなる共重合体)等が挙げられる。
[ポリアセタール]
前記ポリアセタールとしては、繰返し単位としてオキシメチレン基を有する結晶性樹脂であれば特に制限はなく、例えば、このオキシメチレン基のみで構成されるホモポリマーや、これにオキシエチレン基を共重合単位として併存させたコポリマーが挙げられる。
また、樹脂成分には、前記結晶性樹脂以外の樹脂を含有していてもよい。前記結晶性樹脂以外の樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリフェニレンエーテル、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ABS、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン並びにこれらの共重合体およびこれらの混合物等を用いることができる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
部材原料中における樹脂成分の含有割合は50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることが特に好ましく、90質量%以上であることが最も好ましく、100質量%であることが殊に好ましい。樹脂成分の含有割合がかかる範囲であれば、本発明の効果を維持したまま適宜必要な効果を付与することが容易となる。
本発明で用いる樹脂成分の分子量分布は、3.3以上であることが好ましく、3.5以上がより好ましく、3.6以上が特に好ましく、3.8以上が殊に好ましく、4以上が最も好ましい。すなわち、本発明で用いる樹脂成分は、分子量分布が比較的広いものである。分子量分布が広いということは、分子量分布が狭いものに比べて低分子量成分の割合が多いことを意味する。前記低分子量成分は分子鎖の絡み合いが小さく運動性が高いため、結晶化する際に分子鎖が折り畳まれやすく結晶化速度が大きくなる。したがって、低分子量成分が多いと結晶化する際に低分子量成分が先に結晶化し、その結晶が結晶核剤として作用するため、樹脂全体として結晶融解温度や結晶化度、結晶化速度が向上しやすくなると考えられる。分子量分布が前記数値以上であれば、低分子量成分を充分な量含むため、結晶化度や結晶化速度を高めることができ、ひいては、耐熱性、生産性、剛性に優れたものとすることができる傾向がある。
一方、前記樹脂成分の分子量分布は、8以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましく、6.5以下であることがさらに好ましく、6以下であることがよりさらに好ましく、5.5以下であることがよりさらに好ましく、5.3以下であることが特に好ましく、5.1以下であることがとりわけ好ましく、4.9以下であることが殊に好ましく、4.7以下であることが最も好ましい。分子量分布の上限が前記数値以下であれば、高分子量成分と低分子量成分の割合が多すぎないため、結晶化度と流動性、機械特性のバランスに優れる傾向がある。
また、前記樹脂成分の質量平均分子量は87000未満であることが好ましく、83000以下であることがより好ましく、80000以下であることがさらに好ましく、75000以下であることがよりさらに好ましい。樹脂成分の質量平均分子量が前記数値未満であれば、結晶化度や結晶化速度、溶融成形時の流動性に優れる傾向がある。
一方、前記樹脂成分の質量平均分子量は10000以上であることが好ましく、30000以上であることがより好ましく、40000以上であることがさらに好ましく、50000以上であることが特に好ましく、55000以上であることがとりわけ好ましく、59000以上であることが最も好ましい。質量平均分子量が前記数値以上であれば、耐久性、耐衝撃性等の機械特性に優れる傾向がある。
また、前記樹脂成分のメルトフローレート(MFR)〔温度380℃、荷重5kgf〕は、15g/10分以上であることが好ましく、20g/10分以上であることがより好ましく、30g/10分以上であることがさらに好ましく、40g/10分以上であることが特に好ましく、50g/10分以上であることが殊に好ましく、60g/10分以上であることが最も好ましい。樹脂成分のMFRが前記数値以上であれば、FRP用部材を用いて強化繊維との複合材料を製造する際の繊維への含浸性等の二次加工性や、溶融成形性に優れる傾向がある。
一方、樹脂成分のMFRは、150g/10分以下であることが好ましく、130g/10分以下であることがより好ましく、120g/10分以下であることが特に好ましく、110g/10分以下であることが殊に好ましく、100g/10分以下であることが最も好ましい。樹脂成分のMFRが前記数値以下であれば、適当な含浸性を付与でき、加工時間が短く生産性に優れる傾向がある。
なお、前記MFRは、JIS K7210−1:2014(A法)に準じた方法で測定することにより得られる。
前記分子量分布、質量平均分子量、MFRの調整方法は特に限定されるものではなく、公知の手法により調整することができる。例えば、樹脂成分の製造(重合)にあたっては、目的の分子量分布、質量平均分子量、MFRとするための条件を適宜選択して採用すればよい。具体的には例えば、重合時に仕込むモノマー、重合開始剤、触媒、必要に応じて添加される連鎖移動剤等の種類・量・濃度、それぞれの添加の仕方を調整したり、重合温度、重合時間、重合圧力等の重合条件を調整したりする方法等を採用することが挙げられる。また、重合条件を段階的に変えて重合を行う所謂多段重合を採用してもよい。
また、本発明で用いる部材原料には、前記樹脂成分以外に本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、染料、強化繊維以外の充填材等の各種添加剤を含んでいてもよい。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
<FRP用部材の製造方法>
本発明の製造方法は、前記部材原料を溶融する工程(i)と、溶融後の部材原料を冷却する工程(iii)とを備え、相対結晶化度が特定数値以上のFRP用部材を製造するものである。前記工程(i)と前記工程(iii)との間に、溶融した部材原料を押出す工程(ii)を備えることが好ましい。前記FRP用部材の形状としては特に限定はなく、例えば、フィルム、板、繊維、チューブ、棒等のいずれの形状であってもよい。なかでも、FRP用部材の形状としては、後述の強化繊維との複合材料とする際の加工性の観点から、フィルム、板が好適であり、フィルムがより好適である。
なお、本部材が板状部材である場合、板状部材の「板状」としては、最大厚みが任意の平らな形状をいい、厚み1mm以上のいわゆる板だけでなく、厚み1mm未満のフィルムも含む趣旨である。板状部材としては薄い板状が好ましく、その厚みは2mm以下が好ましく、1mm未満がより好ましく、500μm以下がさらに好ましく、400μm以下が特に好ましく、300μm以下がとりわけ好ましく、250μm以下が最も好ましい。下限値は通常3μmである。
以下、好適なFRP用部材の形状であるフィルムの製造方法について詳述する。
[フィルムの製造方法]
FRP用部材がフィルムである場合は、一般の成形法、例えば、押出成形、カレンダー成形、溶液流延法等の流延成形、インフレーション成形等によって成形することができ、なかでも、押出成形法、特にTダイ法が好ましい。
また、フィルムとしては特に限定されず、例えば、無延伸または延伸フィルムのいずれでもよい。なかでも、複合材料を製造する際の二次加工性の観点から、無延伸フィルムが好ましい。なお、無延伸フィルムとは、フィルムの配向を制御する目的で積極的に延伸しないフィルムであり、Tダイ法等の押出成形等においてキャストロールにより引き取る際に配向したフィルムや、延伸ロールでの延伸倍率が2倍未満であるフィルムも含むものとする。
前記フィルムは、部材原料を溶融、好ましくは溶融混練した後、押出成形し、冷却することにより製造することができる。ここで、押出成形とは図1に示すように、押出成形機(押出機)10を使用して部材原料1を溶融混練し、押出成形機10のTダイ11からフィルム2を連続的に押し出す成形方法である。
押出成形機10としては、例えば、単軸押出成形機や二軸押出成形機等が挙げられ、投入された部材原料1を溶融混練するように機能する。
溶融温度は、樹脂の種類や混合比率、添加剤の有無や種類に応じて適宜調整されるが、生産性等の観点から、320℃以上であることが好ましく、340℃以上であることがより好ましく、350℃以上であることがさらに好ましく、360℃以上であることが特に好ましい。溶融温度を前記温度以上とすることで、ペレット等の原料の結晶が充分に融解しフィルムに残りにくくなるため、耐折回数、パンクチャー衝撃強度等の耐久性が向上しやすくなる。一方、溶融温度は450℃以下であることが好ましく、430℃以下であることがより好ましく、410℃以下であることがさらに好ましく、390℃以下であることが特に好ましい。溶融温度を前記温度以下とすることで、溶融成形時に樹脂が分解しにくく分子量が維持されやすいため、フィルムの耐熱性、引張弾性率が向上する傾向となる。
その後溶融混練された部材原料1は、Tダイ11によって押出され製膜される。Tダイ11は、押出成形機10の先端部に連結管12を介して装着され、帯形のフィルム2を連続的に下方に押出すよう機能する。このTダイ11の押出時の温度は、通常は樹脂成分の融点以上熱分解温度未満の範囲であり、具体的には、280℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましく、320℃以上であることがさらに好ましく、340℃以上であることが特に好ましく、350℃以上であることが最も好ましい。一方、Tダイ11の押出時の温度は450℃以下であることが好ましく、430℃以下であることがより好ましく、410℃以下であることがさらに好ましく、390℃以下であることが特に好ましい。
前記Tダイ11によりフィルム2として押出された部材原料1は、圧着ロール13、キャストロール14等のロール等の冷却機に接触させることにより冷却される。圧着ロール13は、Tダイ11の下方に回転可能に軸支され、キャストロール14を摺接可能に狭持する。また、キャストロール14は、例えば、圧着ロール13よりも拡径の金属ロールからなり、Tダイ11の下方に回転可能に軸支されて押し出されたフィルム2を圧着ロール13との間に狭持し、圧着ロール13と共にフィルム2を冷却しながらその厚みを所定の範囲内に制御するように機能する。
冷却温度(例えば、キャストロールの温度)は、所望の相対結晶化度になるように冷却温度を適宜選択すればよいが、樹脂成分のガラス転移温度から30〜150℃高い温度であることが好ましく、35〜140℃高い温度であることがより好ましく、40〜135℃高い温度であることが特に好ましい。冷却温度を前記範囲とすることで、フィルム2の冷却速度を遅くすることができ、相対結晶化度を高くできる傾向がある。
例えば、樹脂成分としてポリエーテルエーテルケトンを含む場合、冷却温度は180℃以上であることが好ましく、190℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましく、210℃以上であることが特に好ましい。
一方、冷却温度は300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましく、260℃以下であることがさらに好ましく、250℃以下であることが特に好ましく、240℃以下であることが最も好ましい。
一般的に高分子材料の結晶化速度は、結晶の核形成速度と成長速度のバランスから、ガラス転移温度と結晶融解温度との間の温度域で最大化すると考えられる。相対結晶化度の高いフィルムを作製する場合に、冷却温度(キャストロール等の温度)の下限と上限がかかる範囲であれば、結晶化速度が最大となり、生産性に優れた結晶化フィルムが得られやすい。
なお、前記ガラス転移温度とは、JIS K7121:2012に準じて、示差走査熱量計(例えば、パーキンエルマー社製「Pyris1 DSC」)を用いて、温度範囲25〜400℃、加熱速度10℃/分の条件で測定される値をいう。また、部材原料1が複数種の結晶性樹脂の混合物であり、ガラス転移温度が複数存在する場合は、最も高い温度を樹脂成分のガラス転移温度とみなし、冷却温度を調整すればよい。
前記キャストロール14の下流には、相対結晶化度を調整するために、フィルム2を再加熱するための加熱ロール、フローティングドライヤー等のオーブン、赤外線ヒーター等を備えていてもよい。
また、フィルム2が延伸フィルムである場合は、キャストロール14の下流に、通常、一軸延伸装置、逐次二軸延伸装置、同時二軸延伸装置等の延伸装置を備える。
前記フィルム2の厚みには特に制限はないが、3μm以上であることが好ましく、6μm以上であることがより好ましく、9μm以上であることがさらに好ましく、12μm以上であることが特に好ましく、20μm以上であることがとりわけ好ましく、50μm以上であることが最も好ましい。一方、フィルム2の厚みは100μm以下であることが好ましく、90μm以下であることがより好ましく、80μm以下であることがさらに好ましく、70μm以下であることが特に好ましく、60μm以下であることが最も好ましい。フィルム2の厚みがかかる範囲であれば、厚みが薄過ぎも厚過ぎもしないため、機械特性、製膜性、絶縁性等のバランス、強化繊維と複合する際の二次加工性に優れる傾向となる。
また、キャストロール14のさらに下流には、通常、フィルム2を巻き取る巻取機、フィルム2の側部にスリットを形成するスリット刃、フィルム2にテンションを作用させて円滑に巻き取るための回転可能なテンションロールを備える。
このようにして、フィルムのFRP用部材を製造することができる。
また、FRP用部材がフィルムである場合は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層を積層させた多層フィルムとすることもできる。多層化の方法は、例えば、共押出、押出ラミネート、熱ラミネート、ドライラミネート等の公知の方法を用いることができる。
以上、FRP用部材の好ましい形状であるフィルムの製造方法について説明したが、フィルム以外の形状であっても、フィルムの製造方法に準じた方法で製造することができる。すなわち、部材原料を溶融後、溶融した部材原料を押し出す等の手法で所定の形状に成形し、成形した部材原料に含まれる結晶性樹脂を冷却、好ましくは結晶性樹脂のガラス転移温度から30〜150℃高い温度で冷却することによってFRP用部材を製造することができる。
このようにして得られるFRP用部材は、繊維強化プラスチックを得るための材料部材であり、かかるFRP用部材と、連続繊維、非連続繊維等の樹脂を強化するための繊維である強化繊維とを複合させることによって複合材料(ここでは、繊維強化プラスチック)を得ることができる。そして、FRP用部材が、樹脂成分として結晶性樹脂を含み、かかるFRP用部材の相対結晶化度が50%以上であることにより、得られる繊維強化プラスチックは、加熱寸法安定性に優れるようになる。
[相対結晶化度]
得られるFRP用部材は、相対結晶化度が50%以上であり、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上、最も好ましくは90%以上である。また、上限は、通常100%である。FRP用部材の相対結晶化度が、前記数値以上であると、FRP用部材と強化繊維とを加熱圧着させ複合材料とする際に熱による収縮を抑制することができ、また、耐熱性や剛性に優れたものとすることができる。
前記相対結晶化度は、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製「Pyris1 DSC」)を用いて、FRP用部材を10℃/分の昇温速度で加熱し、このときに得られる結晶融解ピークの熱量(J/g)、再結晶化ピークの熱量(J/g)から下記の式1を用いて算出することで得られる。
[式1]
相対結晶化度(%)={1−(ΔHc/ΔHm)}×100
ΔHc:FRP用部材の10℃/分の昇温条件下での再結晶化ピークの熱量(J/g)
ΔHm:FRP用部材の10℃/分の昇温条件下での結晶融解ピークの熱量(J/g)
なお、再結晶化ピークが複数存在する場合はその熱量の合計を「ΔHc」とし、結晶融解ピークが複数存在する場合はその熱量の合計を「ΔHm」として算出する。示差走査熱量計で測定した際に再結晶化ピークが見られないもの(ΔHc=0J/g)を「完全に結晶化したFRP用部材」、再結晶化ピークが見られるものを「完全には結晶化していないFRP用部材」ということができる。
相対結晶化度を前記範囲とするには、例えば、FRP用部材がフィルムである場合、原料として用いる樹脂成分の選定、フィルムを押し出す際の条件等を適宜調整すればよいが、本発明においては、以下の(1)〜(4)の方法を採用することが好ましい。これらの方法は、組み合わせて用いてもよい。なかでも、得られる複合材料によりシワが発生しにくく、エネルギー消費の少ない(1)の方法が好ましい。
(1)溶融樹脂を冷却しフィルム形状とする際の冷却条件を調整する方法。前述したように、冷却は例えば、冷却機としてキャストロールを用い、押し出された溶融樹脂をキャストロールに接触させることにより行うことができるが、具体的には、以下の方法を採用することが好ましい。
冷却温度を部材原料の樹脂成分のガラス転移温度より30〜150℃高い温度とする方法が挙げられる。冷却温度は樹脂成分のガラス転移温度より35〜140℃高い温度であることがより好ましく、40〜135℃高い温度であることが特に好ましい。冷却温度を前記範囲とすることで、フィルムの冷却速度を遅くすることができ、相対結晶化度を高くすることができる傾向がある。
特に、樹脂成分としてポリエーテルエーテルケトンを主成分として含む場合、冷却温度は180℃以上であることが好ましく、190℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましく、210℃以上であることが特に好ましい。
一方、冷却温度は300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましく、260℃以下であることがさらに好ましく、250℃以下であることが特に好ましく、240℃以下であることが最も好ましい。
なお、本発明において「主成分」とは、対象物中の最も多い成分をさし、好ましくは対象物中の50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%であり、特に好ましくは80質量%以上であり、最も好ましくは90質量%以上である。
(2)加熱ロールを用いフィルムを再加熱する方法。具体的には、縦延伸機等のキャストロールとは別のロールで加熱する方法が挙げられる。加熱する際の温度は、前記(1)の冷却温度と同様の範囲が好ましい。
(3)オーブンでフィルムを再加熱する方法。具体的には、フローティングドライヤー、テンター、バンドドライヤー等の乾燥装置にフィルムを通し、熱風で加熱する方法が挙げられる。加熱する際の温度は、前記(1)の冷却温度と同様の範囲が好ましい。
(4)赤外線でフィルムを再加熱する方法。具体的には、セラミックヒーター等の遠赤外線ヒーターをロール間に設置しロールtoロールでフィルムを加熱してもよいし、遠赤外線乾燥機にフィルムを通し加熱してもよい。加熱する際の温度は、前記(1)の冷却温度と同様の範囲が好ましい。
なお、前記(2)〜(4)の処理は、フィルム製造ライン中にそのための設備を設けフィルム製造の際に同時に行ってもよいし、一度ロール状にフィルムを巻き取った後、このフィルムロールについて製造ライン外のこれら設備によって行ってもよい。
[比重]
得られるFRP用部材の比重は、1.27以上であることが好ましく、1.28以上であることがより好ましい。相対結晶化度と比重は相関があり、通常は、相対結晶化度が高いほど、比重が高いものとなる。そのため、比重が前記数値以上であると、前記FRP用部材と強化繊維とを加熱圧着等させ複合材料とする際に熱による収縮を抑制することができる傾向となり、また、耐熱性や剛性に優れたものとすることができる傾向となる。
一方、FRP用部材の比重は、1.35以下であることが好ましく、1.34以下であることがより好ましい。
なお、本発明における比重は、JIS K7112:1999(D法)の測定方法に準拠し、温度23℃の条件により測定した値である。
[加熱収縮率]
得られるFRP用部材の加熱収縮率は、2.2%以下であることが好ましく、1.8%以下であることがより好ましく、1.5%以下であることがさらに好ましく、1.2%以下であることが特に好ましく、0.8%以下であることが殊に好ましく、0.6%以下であることが最も好ましい。加熱収縮率を前記数値以下とすることにより、FRP用部材と強化繊維とを加熱圧着等させ複合材料とする際に熱による収縮を抑制することができる傾向となり、得られる複合材料もシワ等の外観不良が発生しにくい傾向となる。FRP用部材の加熱収縮率の下限は特に限定されるものではなく0%であることが好ましいが、0.1%であってもよく、0.2%であってもよい。
本発明において、加熱収縮率は、フィルム状等としたFRP用部材から切り出した大きさ120mm×120mmの試験片に、樹脂の流れ方向(MD)に直交する方向(TD)に100mm間隔の標線を付け、この試験片を200℃の環境下に10分間静置し、加熱前後のフィルムの標線間距離から、下記の式2により求められる。
[式2]
加熱収縮率(%)=[(加熱前の標線間距離−加熱後の標線間距離)
/加熱前の標線間距離]×100
[加熱収縮応力]
得られるFRP用部材の加熱収縮応力は、1mN以下であることが好ましく、0.8mN以下であることがより好ましく、0.5mN以下であることが特に好ましく、0.3mN以下であることが最も好ましい。加熱収縮応力を前記数値以下とすることにより、FRP用部材と強化繊維とを加熱圧着等させ複合材料とする際に熱による収縮を抑制することができる傾向となり、得られる複合材料もシワ等の外観不良が発生しにくい傾向となる。FRP用部材の加熱収縮応力の下限は特に限定されるものではなく0mNであることが好ましい。
本発明において、加熱収縮応力は、以下の方法で求めることができる。
フィルム状等としたFRP用部材から長さ10mm、幅3mmの短冊状の試験片を切り出し、日立ハイテクサイエンス社製熱機械分析装置「TMA7100」を用いて、試験片の一端を荷重検出器のチャックに、他端を固定チャックにセットし、荷重をかけない状態で室温(23℃)から340℃まで昇温速度5℃/分で加熱し、145℃における応力値を測定する。樹脂の流れ方向(MD)とそれと直交する方向(TD)についてそれぞれ測定を行い、応力値が大きい方を本発明の加熱収縮応力とする。
[引張弾性率]
得られるFRP用部材の引張弾性率は、3450MPa以上であることが好ましく、3500MPa以上であることがより好ましく、3550MPa以上であることがさらに好ましく、3600MPa以上であることが特に好ましい。本発明の製造方法で得られるFRP用部材は、分子量分布が広い結晶性樹脂を含むため、高分子量成分を比較的多く含み、また、剛性の高い結晶領域の割合が大きくなるため、結果として引張弾性率が高くなりやすい。引張弾性率が前記数値以上であれば剛性に優れ、得られる複合材料も剛性や強度に優れるものとなりやすい。
一方、引張弾性率は5000MPa以下であることが好ましく、4500MPa以下であることがより好ましく、4000MPa以下であることがさらに好ましく、3900MPa以下であることが特に好ましく、3800MPa以下であることが最も好ましい。引張弾性率が前記数値以下であれば、得られる部材は剛性が高すぎることがなく、また複合材料の賦形等の二次加工性にも優れる傾向となる。
本発明における引張弾性率は、フィルム状としたFRP用部材から長さ400mm、幅5mmの短冊試験片を作製し、インテスコ社製「引張圧縮試験機205型」を用い、温度23℃、チャック間距離300mm、引張速度5mm/分の条件で測定した値である。押出フィルム等のようにFRP用部材に方向性がある場合は、樹脂の押出(流れ)方向(MD)と、それに直交する方向(TD)の両方について測定を行い、その平均値を引張弾性率とする。
[結晶融解温度(Tm)]
得られるFRP用部材の結晶融解温度は、320℃以上であることが好ましく、330℃以上であることがより好ましく、340℃以上であることがさらに好ましく、341℃以上であることが特に好ましく、342℃以上であることが最も好ましい。本発明の製造方法で得られるFRP用部材の結晶融解温度が前記温度以上であれば、得られるFRP用部材は耐熱性に優れる傾向となる。一方、結晶融解温度は370℃以下であることが好ましく、365℃以下であることがより好ましく、360℃以下であることがさらに好ましく、355℃以下であることが特に好ましく、350℃以下であることが最も好ましい。FRP用部材の結晶融解温度が前記温度以下であれば、FRP用部材製造時等の溶融成形時の流動性に優れる傾向となり、またFRP用部材を用いて強化繊維との複合材料を製造する際の繊維への含浸性等の二次加工性に優れる傾向となる。
[結晶化温度(Tc)]
得られるFRP用部材の降温過程における結晶化温度は296℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましく、302℃以上であることがさらに好ましく、303℃以上であることが特に好ましく、304℃以上であることが最も好ましい。本発明の製造方法で得られるFRP用部材の降温過程における結晶化温度が前記温度以上であれば、結晶化速度が大きく、強化繊維との複合材料を生産する際のサイクルを短くすることができ生産性に優れる傾向となる。
一方、降温過程における結晶化温度は320℃以下であることが好ましく、315℃以下であることがより好ましく、312℃以下であることがさらに好ましく、310℃以下であることが特に好ましい。本発明の製造方法で得られるFRP用部材の降温過程における結晶化温度が前記温度以下であれば、結晶化が速すぎないため、強化繊維との複合材料製造時の冷却ムラが少なくなり、均一に結晶化した高品質な複合材料が得られる傾向となる。加えて、強化繊維との複合材料製造の際に強化繊維にFRP用部材を充分に含浸させることが容易となり、得られる複合材料も均一に結晶化した高品質のものとなりやすい利点もある。
[結晶融解熱量(ΔHm)]
得られるFRP用部材の結晶融解熱量は42J/g以上であることが好ましく、44J/g以上であることがより好ましく、46J/g以上であることがさらに好ましく、48J/g以上であることが特に好ましく、50J/g以上であることが最も好ましい。FRP用部材の結晶融解熱量が前記数値以上であれば、得られるFRP用部材は充分な結晶化度を有し、ひいては耐熱性と剛性に優れる傾向となる。また、強化繊維との複合材料とする際の加熱寸法安定性に優れる傾向となり、得られる複合材料も、耐熱性と剛性に優れる傾向となる。
一方、FRP用部材の結晶融解熱量は60J/g以下であることが好ましく、58J/g以下であることがより好ましく、56J/g以下であることがさらに好ましく、54J/g以下であることが特に好ましい。本発明の製造方法で得られるFRP用部材の結晶融解熱量が前記数値以下であれば、結晶化度が高すぎないため、強化繊維との複合材料を製造する際の繊維への含浸性等の二次加工性に優れる傾向となり、また得られる複合材料は、耐久性、耐衝撃性に優れる傾向となる。
[厚み精度]
FRP用部材の形状がフィルム、シート、板状等の長さおよび幅に比べて厚みが極めて小さい薄い平らな形状である場合は、FRP用部材の厚み精度は7%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、4%以下であることがさらに好ましく、3%以下であることが特に好ましく、2.5%以下であることがとりわけ好ましく、2%以下であることが最も好ましい。厚み精度がかかる範囲であれば、強化繊維と複合した際に、得られる複合材料中の強化繊維含有量のばらつきが小さくなりやすい、すなわち、複合材料の部位による強度等の機械物性値のばらつきが小さく、機械物性の均一性の高い複合材料が得られやすくなる。厚み精度の下限は特に限定されるものではなく0%であることが好ましいが、通常0.1%であり、0.3%であってもよく、0.5%であってもよく、0.8%であってもよく、1%であってもよい。
なお、厚み精度は、測定されるフィルム厚みの平均値と標準偏差から、下記の式3により算出することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
[式3]
厚み精度(%)=標準偏差(μm)/平均値(μm)×100
FRP用部材の厚み精度を所望の範囲に調整する方法としては、特に制限はないが、例えば、FRP用部材がフィルムである場合、押出成形を採用し、フィルムを押し出す際の条件を適宜調整すればよい。具体的には、例えば、
(1)Tダイ等のダイのリップボルトを機械的に回転させてリップ開度を調整する方法
(2)ダイリップに一定間隔で加熱装置を付けそれらを個別に温度調整して、溶融樹脂の粘度の温度変化を利用しフィルム厚みを調整する方法
(3)フィルム状に押し出された溶融樹脂の膜振動や脈動ができるだけ発生しないように、ダイとキャストロールとの距離を調整する方法
(4)フィルム状に押し出された溶融樹脂がキャストロールに接触する際に周囲の空気等の気体の流れにより脈動しないように、プレートや覆いを設置して空気の流れを遮断する方法
(5)フィルム状に押し出す際の吐出量の変動が起きないように調整する方法
(6)キャストロールの回転変動率を小さくしロールの回転ムラを抑える方法
(7)フィルム状に押し出された溶融樹脂に高電圧を印加した電極より静電荷を付与し、静電気力でキャストロールに密着させる方法(静電密着法)
(8)フィルム状に押し出された溶融樹脂にカーテン状の圧縮空気を吹き付け、キャストロールに密着させる方法
(9)フィルム状に押し出された溶融樹脂をニップロールによってキャストロールに密着させる方法
等が挙げられる。
[表面粗さ]
FRP用部材の形状がフィルム、シート、板状等の長さおよび幅に比べて厚みが極めて小さい薄い平らな形状である場合は、少なくとも一面(片面)の表面粗さが特定の範囲であることが好ましい。具体的には、FRP用部材の少なくとも片面の算術平均高さ(Sa)、最大高さ(Sz)、算術平均粗さ(Ra)、最大高さ粗さ(Rz)が後記する特定の範囲であることが好ましい。また、FRP用部材の両面の表面粗さが後記する特定の範囲であることも好ましい。
[算術平均高さ(Sa)]
FRP用部材の少なくとも片面の算術平均高さ(Sa)は0.001μm以上であることが好ましく、0.005μm以上であることがより好ましく、0.01μm以上であることがさらに好ましく、0.015μm以上であることが特に好ましく、0.02μm以上であることがとりわけ好ましく、0.025μm以上であることが殊に好ましく、0.03μm以上であることが最も好ましい。また、算術平均高さ(Sa)は、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.25μm以下であることがさらに好ましく、0.2μm以下であることがよりさらに好ましく、0.1μm以下であることが特に好ましく、0.08μm以下であることがとりわけ好ましく、0.06μm以下であることが最も好ましい。
算術平均高さ(Sa)が前記数値以上であれば、プリプレグ等の複合材料を製造する際の強化繊維シート等と積層する過程において、フィルムロール等からフィルム等を送り出す際の滑り性が低下することによりフィルム等が蛇行したり斜めになったりする不具合が発生しにくく、加工性に優れたFRP用部材となりやすい。また、フィルムロール等に蓄積する静電気によりフィルム巻き出し時にスパークが発生しフィルム等の表面に傷を付けたり、浮遊している塵埃が静電気により引き寄せられフィルム等の表面に付着し、得られる複合材料中に異物が混入するといった問題も発生しにくく好ましい。また、算術平均高さ(Sa)が前記数値以下であれば、強化繊維と複合した際に、得られる複合材料中の強化繊維含有量のばらつきが小さくなりやすい、すなわち、複合材料の部位による強度等の機械物性値のばらつきが小さく、機械物性の均一性の高い複合材料が得られやすくなる。また、フィルムロール等からフィルム等を巻き出す際のフィルム搬送中に搬送ロール上でフィルム等が滑り、ずれ、捻じれ、しわ等が発生するといった問題も起こりにくいといった利点がある。
なお、算術平均高さ(Sa)は、白色干渉顕微鏡を用いて測定することができ、具体的には後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
[最大高さ(Sz)]
FRP用部材の少なくとも片面の最大高さ(Sz)は0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、0.75μm以上であることがさらに好ましく、1μm以上であることが特に好ましく、1.3μm以上であることがとりわけ好ましく、1.5μm以上であることが最も好ましい。また、最大高さ(Sz)は10μm以下であることが好ましく、7μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましく、4μm以下であることがよりさらに好ましく、3.5μm以下であることが特に好ましく、3μm以下であることがとりわけ好ましく、2.5μm以下であることが殊に好ましく、2.2μm以下であることが最も好ましい。
最大高さ(Sz)が前記数値以上であれば、プリプレグ等の複合材料を製造する際の強化繊維シート等と積層する過程において、フィルムロール等からフィルム等を送り出す際の滑り性が低下することによりフィルム等が蛇行したり斜めになったりする不具合が発生しにくく、加工性に優れたFRP用部材となりやすい。また、フィルムロール等に蓄積する静電気によりフィルム巻き出し時にスパークが発生しフィルム等の表面に傷を付けたり、浮遊している塵埃が静電気により引き寄せられフィルム等の表面に付着し、得られる複合材料中に異物が混入するといった問題も発生しにくく好ましい。また、最大高さ(Sz)が前記数値以下であれば、強化繊維と複合した際に、得られる複合材料中の強化繊維含有量のばらつきが小さくなりやすい、すなわち、複合材料の部位による強度等の機械物性値のばらつきが小さく、機械物性の均一性の高い複合材料が得られやすくなる。また、フィルムロール等からフィルム等を巻き出す際のフィルム搬送中に搬送ロール上でフィルム等が滑り、ずれ、捻じれ、しわ等が発生するといった問題も起こりにくいといった利点がある。
なお、最大高さ(Sz)は、白色干渉顕微鏡を用いて測定することができ、具体的には後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
[算術平均粗さ(Ra)]
FRP用部材の少なくとも片面の算術平均粗さ(Ra)は0.005μm以上であることが好ましく、0.008μm以上であることがより好ましく、0.01μm以上であることがさらに好ましく、0.015μm以上であることが特に好ましく、0.02μm以上であることがとりわけ好ましく、0.025μm以上であること最も好ましい。また、算術平均粗さ(Ra)は1μm以下であることが好ましく、0.7μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましく、0.3μm以下であることがよりさらに好ましく、0.2μm以下であることが特に好ましく、0.15μm以下であることがとりわけ好ましく、0.1μm以下であることが殊に好ましく、0.07μm以下であることが最も好ましい。
算術平均粗さ(Ra)が前記数値以上であれば、プリプレグ等の複合材料を製造する際の強化繊維シート等と積層する過程において、フィルムロール等からフィルム等を送り出す際の滑り性が低下することによりフィルム等が蛇行したり斜めになったりする不具合が発生しにくく、加工性に優れたFRP用部材となりやすい。また、フィルムロール等に蓄積する静電気によりフィルム巻き出し時にスパークが発生しフィルム等の表面に傷を付けたり、浮遊している塵埃が静電気により引き寄せられフィルム等の表面に付着し、得られる複合材料中に異物が混入するといった問題も発生しにくく好ましい。また、算術平均粗さ(Ra)が前記数値以下であれば、強化繊維と複合した際に、得られる複合材料中の強化繊維含有量のばらつきが小さくなりやすい、すなわち、複合材料の部位による強度等の機械物性値のばらつきが小さく、機械物性の均一性の高い複合材料が得られやすくなる。また、フィルムロール等からフィルム等を巻き出す際のフィルム搬送中に搬送ロール上でフィルム等が滑り、ずれ、捻じれ、しわ等が発生するといった問題も起こりにくいといった利点がある。
なお、算術平均粗さ(Ra)は、JIS B0601:2013に準拠し接触式表面粗さ計を用いて測定することができ、具体的には後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
[最大高さ粗さ(Rz)]
FRP用部材の少なくとも片面の最大高さ粗さ(Rz)は0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、0.15μm以上であることが特に好ましく、0.2μm以上であることがとりわけ好ましく、0.25μm以上であることが最も好ましい。また、最大高さ粗さ(Rz)は5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることがさらに好ましく、1μm以下であることが特に好ましく、0.8μm以下であることがとりわけ好ましく、0.5μm以下であることが最も好ましい。
最大高さ粗さ(Rz)が前記数値以上であれば、プリプレグ等の複合材料を製造する際の強化繊維シート等と積層する過程において、フィルムロール等からフィルム等を送り出す際の滑り性が低下することによりフィルム等が蛇行したり斜めになったりする不具合が発生しにくく、加工性に優れたFRP用部材となりやすい。また、フィルムロール等に蓄積する静電気によりフィルム巻き出し時にスパークが発生しフィルム等の表面に傷を付けたり、浮遊している塵埃が静電気により引き寄せられフィルム等の表面に付着し、得られる複合材料中に異物が混入するといった問題も発生しにくく好ましい。また、最大高さ粗さ(Rz)が前記数値以下であれば、強化繊維と複合した際に、得られる複合材料中の強化繊維含有量のばらつきが小さくなりやすい、すなわち、複合材料の部位による強度等の機械物性値のばらつきが小さく、機械物性の均一性の高い複合材料が得られやすくなる。また、フィルムロール等からフィルム等を巻き出す際のフィルム搬送中に搬送ロール上でフィルム等が滑り、ずれ、捻じれ、しわ等が発生するといった問題も起こりにくいといった利点がある。
なお、最大高さ粗さ(Rz)は、JIS B0601:2013に準拠し接触式表面粗さ計を用いて測定することができ、具体的には後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
また、FRP用部材の算術平均高さ(Sa)、最大高さ(Sz)、算術平均粗さ(Ra)、最大高さ粗さ(Rz)を調整する方法としては、特に制限はないが、例えば、エンボスロール転写、エンボスベルト転写、エンボスフィルム転写等の転写処理、サンドブラスト処理、ショットブラスト処理、エッチング処理、彫刻処理、表面結晶化や、樹脂成分を支持体上に塗布、乾燥、熱処理することによってFRP用部材を得る流延工程においては、支持体として用いる金属ロール、エンドレス金属ベルト、高分子フィルム等の表面粗さを研磨等により適宜調整する方法等種々の方法を用いることができる。なかでも、溶融樹脂をフィルム状に押し出しながら連続的に均一に表面粗さを調整しやすい点から、キャストロール等のロール上にフィルム状の溶融樹脂をキャスティングすることにより所望の粗さに調整する方法が好ましい。この場合、キャストロールの算術平均粗さ等の表面粗さを調整することにより、樹脂フィルムの表面粗さを調整することができる。
また、FRP用部材の厚みは、3μm以上であることが好ましく、6μm以上であることがより好ましく、9μm以上であることがさらに好ましく、12μm以上であることが特に好ましく、20μm以上であることがとりわけ好ましく、50μm以上であることが最も好ましい。一方、FRP用部材の厚みは100μm以下であることが好ましく、90μm以下であることがより好ましく、80μm以下であることがさらに好ましく、70μm以下であることが特に好ましく、60μm以下であることが最も好ましい。FRP用部材の厚みがかかる範囲であれば、厚みが薄過ぎも厚過ぎもしないため、機械特性、製膜性、絶縁性等のバランス、強化繊維と複合する際の二次加工性に優れる傾向となる。
なお、FRP用部材の厚みとは、具体的には実施例の方法により測定される平均厚みをいい、FRP用部材の形状がフィルム、板、ボトル、チューブ等の場合はその平均厚み、FRP用部材の形状が繊維、棒、ペレット等の場合は平均径をいい、これら平均値は実施例に記載の手法により算出することができる。
[用途・使用態様]
本発明の製造方法で得られるFRP用部材は、加熱寸法安定性に優れるため、強化繊維との複合用の材料として用いることができる。特に、得られるFRP用部材がフィルムである場合は、強化繊維との複合用の材料として好適に使用することができる。
強化繊維の種類は、特に限定されるものでないが、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維等の無機繊維、液晶ポリマー繊維、ポリエチレン繊維、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維等の有機繊維、アルミニウム繊維、マグネシウム繊維、チタン繊維、SUS繊維、銅繊維、金属を被覆した炭素繊維等の金属繊維等が挙げられる。これらのなかでも、剛性、軽量性の観点から、炭素繊維が好ましい。
前記炭素繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系、石油・石炭ピッチ系、レーヨン系、リグニン系等が挙げられ、いずれの炭素繊維も使用することができる。特に、PANを原料としたPAN系炭素繊維で、12000〜48000フィラメントのストランドまたはトウが、工業的規模における生産性および機械特性に優れており好ましい。
強化繊維の数平均繊維長は通常0.5mm以上であり、1mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましく、5mm以上であることがさらに好ましく、10mm以上であることが特に好ましく、30mm以上であることが殊に好ましく、50mm以上であることが最も好ましい。また、強化繊維は連続繊維であることも好ましい。数平均繊維長を前記数値以上とすることで、得られる複合材料の機械特性を充分なものとしやすい傾向となる。数平均繊維長の上限は特に限定されないが、強化繊維の形状が後述するような織物、編物、不織布等の非連続繊維の場合は、数平均繊維長は500mm以下であることが好ましく、300mm以下であることがより好ましく、150mm以下であることがさらに好ましい。数平均繊維長を前記数値以下とすることにより、複合材料を用いて最終製品、特に複雑形状の最終製品を成形する際の複雑形状部への強化繊維の充填性を充分なものとし、当該部位の強度低下の発生を抑制しやすい傾向となる。
なお、強化繊維の数平均繊維長は、走査型電子顕微鏡等の電子顕微鏡や光学顕微鏡を用いて強化繊維を観察した際に、最も長さが長く観察される部分の平均長さをいう。具体的には、複合材料中に存在する強化繊維の長さ方向が観察可能な断面に対して観察を行い、測定された繊維長を数平均化することで求めることができる。
また別の方法として、溶媒等により樹脂成分を除去した強化繊維を適当な分散剤に分散させた分散液を薄膜ラミネートし、強化繊維をスキャナー等で撮影した画像を用いて、画像処理ソフト等により数平均繊維長を求める方法も挙げられる。
強化繊維の形状も、特に限定されるものではなく、チョップドストランド、ロービング等の繊維束や、平織、綾織等の織物、編物、不織布、繊維ペーパー、UD材(一方向性(uni directional)材)等の強化繊維シートのうちから、必要に応じて適宜選択することができる。
強化繊維とFRP用部材との複合化の方法は特に制限はなく、樹脂フィルム含浸法(フィルムスタッキング法)、混織法等、従来公知の方法を採用することにより、強化繊維束や強化繊維シート中にFRP用部材を含浸または半含浸させたプリプレグ等の複合材料を製造することができる。なかでも、樹脂フィルム含浸法(フィルムスタッキング法)を採用することが好ましい。
具体的には、前述の強化繊維シートの片面または両面にFRP用部材を重ね合わせて加熱・加圧することにより強化繊維シート中にFRP用部材の樹脂成分を溶融・含浸させてプリプレグとすることができる。この際、加熱、加圧の条件を調整することにより、含有する空隙量を制御したプリプレグを得ることができる。なお、プリプレグには、加圧工程を省略して、強化繊維シートにFRP用部材を熱融着により仮接着させる形態も含まれる。このように仮接着させたプリプレグ、特に空隙を多く含むものである場合は、製造にかかる時間を短縮でき製造コストの低減に繋がるとともに、柔軟性を有するため実形状に合わせて変形しやすいという利点がある。なお、上述の手法は、FRP用部材がフィルムである場合に好適に用いることができる。
このプリプレグを、オートクレーブ成形、インフュージョン成形、ヒートアンドクールプレス成形、スタンピング成形、ロボットによる自動積層成形等の公知の工程に供することにより、複合材料製品を得ることができ、その成形条件は含有する空隙量により選択できる。プリプレグ作製時に使用するフィルム等のFRP用部材には、強化繊維シートへの含浸性、熱融着性等の二次加工性に加え、強化繊維と複合する際の寸法安定性に優れることが求められるが、本発明の製造方法で得られるFRP用部材は、相対結晶化度が50%以上であるため強化繊維と複合する際の加熱寸法安定性に優れ、得られる複合材料もシワ等の問題のないものとなるため、特に好適に使用できる。
このようにして得られる複合材料中の強化繊維の含有割合は、弾性率、強度の観点から、20体積%以上であることが好ましく、30体積%以上であることがより好ましく、40体積%以上であることがさらに好ましい。一方、複合材料中の強化繊維の含有割合は90体積%以下であることが好ましく、80体積%以下であることがより好ましく、70体積%以下であることがさらに好ましい。
本発明の製造方法で得られるFRP用部材と強化繊維とを複合させてなる複合材料は、その耐熱性、軽量性、機械的強度等から、航空機、自動車、船舶または鉄道車両といった移動体や、スポーツ用品、家電製品、建築資材等に好適に用いることができるが、特に、航空機、自動車、船舶または鉄道車両といった移動体の構成部材として工業的に有用である。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
<実施例1〜3および比較例1〜4>
下記表1に記載の数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、メルトフローレート(MFR)、結晶融解温度(Tm)、結晶化温度(Tc)、結晶融解熱量(ΔHm)を有するポリエーテルエーテルケトン(ガラス転移温度143℃)の原料樹脂ペレットをΦ40mm単軸押出機に投入して混練しながら溶融させた。その後、口金(Tダイ)から押出し、キャストロールに密着・冷却させ、FRP用部材(フィルム)を得た。押出機、連結管、口金(Tダイ)の温度は380℃とし、キャストロールの温度およびフィルム厚みは下記表1に記載の温度および厚みとした。押出機出口の樹脂温度は400℃であった。
<樹脂原料およびフィルムの評価>
前記実施例および比較例で使用した原料樹脂および上述の方法で得られたフィルムは、以下のようにして各種項目についての評価測定を行った。評価結果を表1に示す。
なお、フィルムの「縦」とは、口金(Tダイ)からフィルムが押し出されてくる方向(MD)を指し、フィルム面内でこれに直交する方向を「横」(TD)とする。
(1)分子量分布(Mw/Mn)、質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)
原料樹脂ペレットについて、下記試料調製条件に従い調製した試料を、東ソー社製ゲル浸透クロマトグラフ「HLC−8320GPC」を用いて、下記測定条件で測定した。
[試料調製条件]
原料樹脂ペレットを380℃でプレスした後、100℃で急冷し、非晶状態の原料樹脂フィルムを得た。この非晶状態の原料樹脂フィルム9mgにペンタフルオロフェノールを3g加え、ヒートブロックを用い100℃で60分間加熱溶解させた。続いて、ヒートブロックから取り出し、放冷後、常温(23℃)のクロロホルム6gを少しずつ静かに加え、穏やかに振り混ぜた。その後、0.45μmのPTFEカートリッジフィルターでろ過したものを試料とした。
[測定条件]
・カラム:TSKgel guardcolumn SuperH−H(4.6mmI.D.×3.5cm)×1本+TSKgel SuperHM−H(6.0mmI.D.×15cm)×2本(東ソー社製)
・溶離液:ペンタフルオロフェノール/クロロホルム=1/2(質量比)
・検出器:示差屈折率計、polarity=(+)
・流速:0.6mL/分
・カラム温度:40℃
・試料濃度:0.1質量%
・試料注入量:20μL
・検量線:標準ポリスチレン(東ソー社製)を用いた3次近似曲線
(2)メルトフローレート(MFR)
原料樹脂ペレットについて、JIS K7210−1:2014(A法)に準拠して、温度380℃、荷重5kgfの条件によりMFRを測定した。
(3)結晶融解温度(Tm)
原料樹脂ペレットおよび上述の方法で得られたフィルムについて、JIS K7121:2012に準じて、パーキンエルマー社製示差走査熱量計「Pyris1 DSC」を用いて、温度範囲25〜400℃、加熱速度10℃/分で昇温させ、検出されたDSC曲線の融解ピークのピークトップ温度から結晶融解温度を求めた。
(4)結晶化温度(Tc)
原料樹脂ペレットおよび上述の方法で得られたフィルムについて、JIS K7121:2012に準じて、パーキンエルマー社製示差走査熱量計「Pyris1 DSC」を用いて、温度範囲400〜25℃、速度10℃/分で降温させ、検出されたDSC曲線の結晶化ピークのピークトップ温度から結晶化温度を求めた。
(5)結晶融解熱量(ΔHm)
原料樹脂ペレットおよび上述の方法で得られたフィルムについて、JIS K7122:2012に準じて、パーキンエルマー社製示差走査熱量計「Pyris1 DSC」を用いて、温度範囲25〜400℃、加熱速度10℃/分で昇温させ、検出されたDSC曲線の融解ピークの面積から結晶融解熱量を求めた。
(6)相対結晶化度
上述の方法で得られたフィルムについて、パーキンエルマー社製示差走査熱量計「Pyris1 DSC」を用いて、フィルムを10℃/分の昇温速度で加熱し、このときに得られる結晶融解ピークの熱量(J/g)、再結晶化ピークの熱量(J/g)から下記の式1を用いて、相対結晶化度を算出した。
[式1]
相対結晶化度(%)={1−(ΔHc/ΔHm)}×100
ΔHc:フィルムの10℃/分の昇温条件下での再結晶化ピークの熱量(J/g)
ΔHm:フィルムの10℃/分の昇温条件下での結晶融解ピークの熱量(J/g)
(7)比重
上述の方法で得られたフィルムについて、JIS K7112:1999(D法)に準拠して、温度23℃の条件により比重を測定した。
(8)引張弾性率
上述の方法で得られたフィルムから長さ400mm、幅5mmの短冊状試験片を作製し、インテスコ社製「引張圧縮試験機205型」を用い、チャック間距離300mm、引張速度5mm/分の条件で、23℃における引張弾性率(MPa)を測定し、剛性の指標とした。フィルムの縦方向、横方向でそれぞれ測定を行い、得られた測定値の平均値を採用した。
(9)加熱収縮率
上述の方法で得られたフィルムから切り出した大きさ120mm×120mmの試験片に、フィルムの横方向に100mm間隔の標線を付け、この試験片を200℃の環境下に10分間静置し、加熱前後の標線間距離から、下記の式2により求めた。
[式2]
加熱収縮率(%)=[(加熱前の標線間距離−加熱後の標線間距離)
/加熱前の標線間距離]×100
(10)加熱収縮応力
上述の方法で得られたフィルムから長さ10mm、幅3mmの短冊状の試験片を切り出し、日立ハイテクサイエンス社製熱機械分析装置「TMA7100」を用いて、試験片の一端を荷重検出器のチャックに、他端を固定チャックにセットし、荷重をかけない状態で室温(23℃)から340℃まで昇温速度5℃/分で加熱し、145℃における応力値を測定した。フィルムの縦方向と横方向についてそれぞれ測定を行い、応力値が大きい方向の値を加熱収縮応力(mN)とした。
なお、本測定方法において、加熱収縮応力がマイナスの値は、加熱収縮がないことを意味する。
(11)厚み精度
1μm単位の分解能をもつマイクロメーターを用い、上述の方法で得られたフィルムの幅方向の中央部について、フィルム縦方向に10mm間隔で30点、厚みを測定した。得られた測定結果の平均値と標準偏差から、下記の式3を用いて厚み精度を算出した。
[式3]
厚み精度(%)=標準偏差(μm)/平均値(μm)×100
(12)表面粗さ
(12−1)算術平均高さ(Sa)、最大高さ(Sz)
フィルム製膜の際にキャストロールに接した側の面について、BRUKER社製白色干渉顕微鏡「ContourGT-X」を用いて、接眼レンズ倍率1.0倍、対物レンズ倍率20倍、計測エリア縦235μm×横313μmの条件で測定を行い、ガウシアン関数でスムージング処理を実施した後に算術平均高さ(Sa)、最大高さ(Sz)を計算した。
(12−2)算術平均粗さ(Ra)、最大高さ粗さ(Rz)
フィルム製膜の際にキャストロールに接した側の面について、小坂研究所社製接触式表面粗さ計「Surf Coder ET4000A」を用いて、触針先端半径0.5mm、測定長さ8.0mm、基準長さ8.0mm、カットオフ値0.8mm、測定速度0.2mm/秒の条件でフィルム縦方向に測定を行い、算術平均粗さ(Ra)および最大高さ粗さ(Rz)を計算した。
Figure 2021191835
実施例1〜3の製造方法により得られたFRP用部材(フィルム)は、相対結晶化度が50%以上であるため、強化繊維と加熱圧着させて複合化する際に、寸法の変化が起こりにくく、得られるプリプレグ等の複合材料はシワのないものであった。また、実施例1〜3の製造方法で得られたFRP用部材は、樹脂成分の質量平均分子量が小さいため冷却時の結晶化温度が高い、すなわち結晶化速度が速いため、キャストロールからフィルムが離れる際に充分に結晶化しており、フィルムの生産性に優れていた。加えて、得られたFRP用部材は分子量分布が広い樹脂成分を含むため、高分子量の樹脂成分の含有割合が高くなり、引張弾性率(剛性)も高いことが分かる。そして、実施例1〜3の製造方法により得られたFRP用部材は、樹脂成分の質量平均分子量が小さいことと分子量分布が広いことで低分子量成分を比較的多く含むため、冷却時の結晶化速度が速い、すなわち強化繊維と複合する際の結晶化が速く、また強化繊維への含浸性もよいため、複合材料製造時のサイクルが短いといった効果も得られる。
一方、比較例1〜4の製造方法により得られたFRP用部材は、相対結晶化度が50%未満であるため、強化繊維と加熱圧着させて複合化する際において、フィルムの寸法変化が起こり、でき上がったプリプレグはシワが発生していた。
また、実施例1〜3の製造方法で得られたFRP用部材(フィルム)と炭素繊維とを複合させて得られる複合材料は、航空機、自動車、船舶または鉄道車両といった移動体や、スポーツ用品、家電製品、建築資材等に好適に用いることができるが、特に、航空機、自動車、船舶、鉄道車両等の構造体として好適に用いることができる。
本発明の製造方法により得られるFRP用部材は、加熱寸法安定性に優れるため、強化繊維との複合用の材料として用いることができる。
1 部材原料
2 フィルム
10 押出成形機
11 Tダイ
12 連結管
13 圧着ロール
14 キャストロール

Claims (21)

  1. 樹脂成分を含有する部材原料を溶融する工程(i)と、溶融後の部材原料を冷却する工程(iii)とを備える繊維強化プラスチック用部材の製造方法であって、前記部材原料が樹脂成分として結晶性樹脂を含み、前記繊維強化プラスチック用部材の示差走査熱量計を用いて得られる相対結晶化度が50%以上である、繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
  2. 前記工程(i)と前記工程(iii)との間に、溶融した部材原料を押出す工程(ii)を備える、請求項1記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
  3. 前記樹脂成分がポリアリールエーテルケトンを含む、請求項1または2記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
  4. 前記冷却が、結晶性樹脂のガラス転移温度から30〜150℃高い温度のロールでの冷却である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
  5. 前記樹脂成分の分子量分布が3.3以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
  6. 前記樹脂成分の質量平均分子量が87000未満である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
  7. 前記ポリアリールエーテルケトンの分子量分布が3.3以上である、請求項3〜6のいずれか一項に記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
  8. 前記ポリアリールエーテルケトンの質量平均分子量が87000未満である、請求項3〜7のいずれか一項に記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
  9. 前記繊維強化プラスチック用部材の比重が1.27以上である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
  10. 前記繊維強化プラスチック用部材の加熱収縮率が2.2%以下である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
  11. 前記繊維強化プラスチック用部材の加熱収縮応力が1mN以下である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
  12. 前記繊維強化プラスチック用部材の厚みが10〜100μmである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
  13. 前記繊維強化プラスチック用部材の厚み精度が7%以下である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
  14. 前記繊維強化プラスチック用部材の少なくとも一面における表面の算術平均高さが0.001〜1μmである、請求項1〜13のいずれか一項に記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
  15. 前記繊維強化プラスチック用部材の少なくとも一面における表面の最大高さが0.1〜10μmである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
  16. 前記繊維強化プラスチック用部材の少なくとも一面における表面の算術平均粗さが0.005〜1μmである、請求項1〜15のいずれか一項に記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
  17. 前記繊維強化プラスチック用部材の少なくとも一面における表面の最大高さ粗さが0.05〜5μmである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
  18. 前記繊維強化プラスチック用部材がフィルムである、請求項1〜17のいずれか一項に記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法。
  19. 請求項1〜18のいずれか一項に記載の繊維強化プラスチック用部材の製造方法により得られた繊維強化プラスチック用部材と強化繊維とを複合させてなる複合材料。
  20. プリプレグである、請求項19記載の複合材料。
  21. 請求項19または20記載の複合材料を用いた、航空機、自動車、船舶または鉄道車両である移動体。
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