以下、本開示に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
本開示が適用されて製造される電子部品としては、各種の電子部品が想定され得るが、以下に示す実施の形態においては、コンデンサ素子を例示して説明を行う。ここで、コンデンサ素子としては、誘電体材料としてセラミックス材料が使用される積層セラミックコンデンサや、誘電体材料として樹脂フィルムが使用される積層型金属化フィルムコンデンサ等が挙げられるが、以下においては、このうちの積層セラミックコンデンサに適用した場合を例示して説明を行う。
図1は、実施の形態に係る電子部品の製造方法が適用されて製造された積層セラミックコンデンサ10の概略斜視図である。図2および図3は、それぞれ図1に示す積層セラミックコンデンサ10の図1中に示すII−II線およびIII−III線に沿った断面図である。また、図4は、図1に示す積層セラミックコンデンサ10の素体部11のみの概略斜視図であり、図5は、図4に示す素体部11の一部を構成する積層体12の前駆体である積層体チップ22の概略斜視図である。以下においては、本実施の形態に係る電子部品の製造方法を説明するに先立って、当該電子部品の製造方法が適用されて製造された積層セラミックコンデンサ10について、これら図1ないし図5を参照して説明する。
図1ないし図3に示すように、積層セラミックコンデンサ10は、全体として略直方体形状を有する電子部品であり、素体部11と一対の外部電極16とを備えている。
図1および図2に示すように、一対の外部電極16は、素体部11の所定方向の両端部の外表面を覆うように互いに離間して設けられている。一対の外部電極16は、それぞれ導電膜にて構成されている。
より詳細には、一対の外部電極16は、例えば焼結金属層とめっき層との積層膜にて構成される。焼結金属層は、例えばCu、Ni、Ag、Pd、Ag−Pd合金、Au等のペーストを焼き付けることで形成される。めっき層は、例えばNiめっき層とこれを覆うSnめっき層とによって構成される。めっき層は、これに代えてCuめっき層やAuめっき層であってもよい。また、一対の外部電極16は、めっき層のみによって構成されていてもよい。さらには、一対の外部電極16として、導電性樹脂ペーストを利用することも可能である。
図2ないし図4に示すように、素体部11は、所定の方向に沿って交互に積層された誘電体層13および内部電極層14からなる積層体12と、当該積層体12の所定部位を覆う一対の付加誘電体部15とを含んでいる。誘電体層13はセラミック層の一例であり、内部電極層14は内部電極の一例である。付加誘電体部15は、サイドギャップ部と称されることもある。
誘電体層13および付加誘電体部15は、例えばチタン酸バリウムを主成分とするセラミックス材料にて形成されている。また、誘電体層13および付加誘電体部15は、後述するセラミックグリーンシートの原料となるセラミックス粉末の副成分としてのMn化合物、Mg化合物、Si化合物、Co化合物、Ni化合物、希土類化合物等を含んでいてもよい。一方、内部電極層14は、例えばNi、Cu、Ag、Pd、Ag−Pd合金、Au等に代表される金属材料にて形成されていることが好ましい。
図2に示すように、積層方向に沿って誘電体層13を挟んで隣り合う一対の内部電極層14のうちの一方は、積層セラミックコンデンサ10の内部において一対の外部電極16のうちの一方に電気的に接続されており、積層方向に沿って誘電体層13を挟んで隣り合う一対の内部電極層14のうちの他方は、積層セラミックコンデンサ10の内部において一対の外部電極16のうちの他方に電気的に接続されている。これにより、一対の外部電極16間は、複数のコンデンサ要素が電気的に並列に接続された構造となっている。
なお、誘電体層13および付加誘電体部15の材質は、上述したチタン酸バリウムを主成分とするセラミックス材料に限られず、他の高誘電率のセラミックス材料(例えば、CaTiO3、SrTiO3、CaZrO3等を主成分とするもの)を誘電体層13および付加誘電体部15の材質として選択してもよい。また、誘電体層13の材質と付加誘電体部15の材質とを一致させる必要性は必ずしもなく、誘電体層13および付加誘電体部15の材質として主成分が異なるセラミックス材料を利用することとしてもよい。さらには、付加誘電体部15としては、非セラミックス材料である樹脂材料を利用することとしてもよい。一方、内部電極層14の材質も、上述した金属材料に限られず、他の導電材料を内部電極層14の材質として選択してもよい。
ここで、図1ないし図3を参照して、積層セラミックコンデンサ10の向きを表わす用語として、一対の外部電極16が並ぶ方向を積層セラミックコンデンサ10の長さ方向Lと定義し、誘電体層13と内部電極層14との積層方向を厚み方向Tと定義し、これら長さ方向Lおよび厚み方向Tのいずれにも直交する方向を幅方向Wと定義する。以下の説明においては、これら用語を使用する。
また、略直方体形状の積層セラミックコンデンサ10の6つの外表面のうち、長さ方向Lにおいて相対して位置する一対の外表面を端面10aと定義し、厚み方向Tにおいて相対して位置する一対の外表面を主面10bと定義し、幅方向Wにおいて相対して位置する一対の外表面を側面10cとして定義する。以下の説明においては、これら用語を使用する。
また、図4および図5を参照して、積層セラミックコンデンサ10の一対の端面10aに対応する素体部11の一対の外表面および積層体チップ22の一対の外表面について、これらをそれぞれ端面11aおよび端面22aとして定義し、積層セラミックコンデンサ10の一対の主面10bに対応する素体部11の一対の外表面および積層体チップ22の一対の外表面について、これらをそれぞれ主面11bおよび主面22bとして定義し、積層セラミックコンデンサ10の一対の側面10cに対応する素体部11の一対の外表面および積層体チップ22の一対の外表面について、これらをそれぞれ側面11cおよび側面22cとして定義する。以下の説明においては、これら用語を使用する。
なお、図1ないし図3に示すように、本実施の形態に係る積層セラミックコンデンサ10は、長さ方向Lに沿った外形寸法が最も長くなるように構成された細長の略直方体形状を有している。当該積層セラミックコンデンサ10の厚み方向Tの外形寸法および幅方向Wの外形寸法(通常、厚み方向Tの外形寸法は、幅方向Wの外形寸法と同等とされる)の代表値としては、「W/T≧1.06W+0.14」を満たすことが好ましい。具体的なW×Tの寸法としては、例えば、0.3mm×0.5mm、0.5mm×0.8mmなどがある。
図4に示すように、一対の付加誘電体部15は、素体部11の一対の側面11cを構成するように、幅方向Wにおいて相対して位置する積層体12の一対の外表面を覆っている。一方、素体部11の一対の端面11aは、主として長さ方向Lにおいて相対して位置する積層体12の一対の外表面によって構成されており、素体部11の一対の主面11bは、主として厚み方向Tにおいて相対して位置する積層体12の一対の外表面によって構成されている。
図5に示すように、本実施の形態では、積層体12は、誘電体層13となる積層用セラミックグリーンシート23の表面に内部電極層14となる導電パターン24が印刷された素材シートを複数枚積層して分断することにより、図示する如くの略直方体形状を有するように形成された積層体チップ22を元に構成される。導電パターン24は、内部電極パターンの一例である。
積層体チップ22の一対の端面22aにおいては、それぞれ積層配置された導電パターン24のうちの一部が選択的に露出している。より具体的には、積層体チップ22の一対の端面22aにおいては、それぞれ当該端面22aを覆うように形成される外部電極16に接続されるべき導電パターン24の長さ方向Lにおける片側の端部が露出している。一方、積層体チップ22の一対の側面22cにおいては、それぞれ積層配置された導電パターン24のすべての幅方向Wにおける端部が露出している。
積層体チップ22の一対の側面22cには、これを覆うように付加誘電体部15となる被覆用セラミックグリーンシートがそれぞれ対応付けて貼り付けられる。これにより、上述した積層体チップ22の一対の側面22cにおいて露出している導電パターン24の幅方向Wにおける端部が当該被覆用セラミックグリーンシートによって覆われた状態とされ、さらに当該被覆用セラミックグリーンシートが貼り付けられた状態にある積層体チップ22が熱圧着されて焼成されることにより、図4に示す如くの素体部11が製作される。
以上説明した積層セラミックコンデンサ10においては、素体部11の幅方向Wにおける両端部に位置する部分の誘電体層が、積層体12の幅方向Wにおいて相対して位置する一対の外表面を覆うように貼り付けられた、焼成後において付加誘電体部15となる被覆用セラミックグリーンシートにより構成される。このため、貼り付ける被覆用セラミックグリーンシートの厚みを十分に薄くすることにより、積層セラミックコンデンサ10の側面10cを形成する部分の誘電体層の厚みを狭小化することができる。
したがって、当該構造を採用することにより、その体格に対して内部電極層14を幅方向Wに沿って大型化することで有効面積(積層方向に沿って誘電体層13を挟んで隣り合う一対の内部電極層14同士が正対する部分の面積)を増大させることが可能になり、従来に比して小型で大容量の積層セラミックコンデンサとすることができる。
図6は、本実施の形態に係る電子部品の製造方法が適用された積層セラミックコンデンサの製造フローを概略的に示す図であり、図7ないし図37は、図6に示す工程を具体的に説明するための図である。次に、これら図6ないし図37を参照して、本実施の形態に係る電子部品の製造方法が適用された積層セラミックコンデンサ10の製造方法について説明する。なお、図10ないし図37においては、上述した製造後の積層セラミックコンデンサ10の長さ方向L、厚み方向Tおよび幅方向Wに対応するマザーブロック20、積層体ブロック21および積層体チップ22の各方向を図中においてそれぞれ付記している。
図6に示す積層セラミックコンデンサの製造フローは、製造過程の途中段階まで一括して加工処理を行うことで積層セラミックコンデンサの中核となる部品材料(マザーブロック)を一つの塊として製作し、その後にこれを分断して個片化し、個片化後の部品材料(積層体チップ)にさらに一括して加工処理を施すことによって複数の積層セラミックコンデンサを同時に大量に生産するものである。
図6に示すように、本実施の形態に係る電子部品の製造方法が適用された積層セラミックコンデンサの製造フローは、順に、マザーブロックが製作される工程(工程S1)と、マザーブロックが分断される工程(工程S2)と、被覆用セラミックシート(後述するセラミックグリーンシート)が貼り付けられる工程(工程S3)と、熱圧着が実施される工程(工程S4)と、焼成が実施される工程(工程S5)と、外部電極が形成される工程(工程S6)とを主として備えている。
まず、図6に示すマザーブロックが製作される工程(工程S1)について説明する。図7は、素材シートを模式的に示す平面図であり、図8は、素材シートの積層状態を示す概略図である。また、図9は、マザーブロック20を模式的に示す側面図である。
マザーブロック20が製作される工程においては、まず、セラミックス粉末、バインダおよび溶剤を含むセラミックスラリーが準備され、このセラミックスラリーがキャリアフィルム上においてダイコータ、グラビアコータ、マイクログラビアコータ等を用いてシート状に成形されることで積層用セラミックグリーンシート23が製作される。積層用セラミックグリーンシート23の厚みは、積層セラミックコンデンサ10の小型化および高容量化の観点から、1.5[μm]以下とされることが好ましい。
続いて、この積層用セラミックグリーンシート23に導電体ペーストが帯状のパターンを有するようにスクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷等によって印刷されることにより、導電パターン24が形成される。導電パターン24の厚みは、積層セラミックコンデンサ10の小型化および高容量化の観点から、1.5[μm]以下とされることが好ましい。
これにより、図7に示すように、誘電体層13となる積層用セラミックグリーンシート23の表面に内部電極層14となる導電パターン24が印刷された素材シートが準備される。
続いて、図8に示すように、複数の素材シートが所定のルールに従って複数枚積層される。具体的には、積層用セラミックグリーンシート23上に形成された帯状の導電パターン24が同一の方向を向いた状態になるとともに、その帯状の導電パターン24が隣り合う素材シート間において幅方向において半ピッチずつずれた状態になるように、複数の素材シートが積み重ねられる。
続いて、積み重ねられた複数の素材シートが熱圧着されることにより、図9に示す如くの構造体が形成され、形成された構造体の外周部が図中に示す切断線Xに沿って切断されて除去されることにより、マザーブロック20が製作される。これにより、マザーブロック20は、扁平な略直方体形状の外形を成すことになり、誘電体層13となる複数の積層用セラミックグリーンシート23および内部電極層14となる複数の導電パターン24が積層された構造を有する。
また、上記工程を経ることにより、マザーブロック20には、後述する分断工程後において積層体チップ22に含まれることとなる一対の主面22b(図11等参照)が形成される。なお、マザーブロック20は、その4つの周端面においてそれぞれ導電パターン24の一部が露出した構造を有する(図10参照)。
次に、図6に示すマザーブロックが分断される工程(工程S2)について説明する。マザーブロックが分断される工程は、上述したマザーブロック20が行列状に分断されることによって複数の積層体チップに個片化される工程であり、順に、マザーブロックが発泡剥離シートに貼り付けられる工程と、マザーブロックが分断されて長尺の略直方体形状を有する複数の積層体ブロックに個片化される第1分断工程と、分断後の複数の積層体ブロックのそれぞれがさらに分断されて細長の略直方体形状を有する複数の積層体チップに個片化される第2分断工程とを含んでいる。
図10は、マザーブロック20を発泡剥離シート31に貼り付ける工程を示す概略図である。また、図11は、マザーブロック20を分断するための第1分断工程を示す概略図であり、図12は、複数の積層体ブロック21を分断するための第2分断工程を示す概略図である。
図10に示すように、マザーブロック20が発泡剥離シート31に貼り付けられる工程においては、準備したマザーブロック20の一対の主表面のうちの一方に発泡剥離シート31が図中に示す矢印A方向から貼り付けられる。これにより、マザーブロック20は、発泡剥離シート31によって粘着保持された状態となる。ここで、発泡剥離シート31は、少なくともその一方の主面に粘着層を有し、加熱によって当該粘着層に発泡が生じることで粘着性が低下し、これにより貼り付け対象物から容易に剥離することができるシートである。
図11に示すように、第1分断工程においては、発泡剥離シート31によって粘着保持された状態にあるマザーブロック20が、発泡剥離シート31ごと切断装置のステージ32上に載置され、帯状の複数の導電パターン24の延在方向と直交する方向に沿って切断されることにより、長尺の略直方体形状を有する複数の積層体ブロック21に個片化される。当該切断には、図11に示す切削刃(ダイサー)33を用いたダイシング等が利用できる、この他には、押切刃を用いた押し切りを採用できる。
切削刃33による切削でマザーブロック20を切断するに際しては、帯状の導電パターン24の延在方向と直交する方向である第1方向の切断線に沿って延びるように切削され、マザーブロック20から1つの積層体ブロック21が切り出される。このような切削は、帯状の導電パターン24の延在方向に沿って切削刃33が所定のピッチで移動させられながらその度毎に実施される。
これにより、マザーブロック20は、行状に分断されることになり、長尺の略直方体形状を有する複数の積層体ブロック21に個片化される。なお、上記第1分断工程を経ることにより、個片化された複数の積層体ブロック21のそれぞれには、後述する第2分断工程後において積層体チップ22に含まれることとなる一対の側面22c1および22c2が形成される。側面22c1および22c2は、第1切断側面の一例である。
図12に示すように、第2分断工程においては、発泡剥離シート31によって粘着保持された状態にある複数の積層体ブロック21のそれぞれが、その長手方向と直交する方向(すなわち、第1分断工程において切断された方向と直交する方向)である第2方向の切断線に沿って切断されることにより、細長の略直方体形状を有する複数の積層体チップ22に個片化される。第2分断工程においても、第1分断工程と同様に、切削刃33を用いたダイシング等が利用できる。
すなわち、第2分断工程での積層体ブロック21を切断するに際しては、切削方向が積層体ブロック21の長手方向と直交する方向に沿って移動するように切削刃33が配置され、切削刃33が複数の積層体ブロック21を切削することにより、複数の積層体ブロック21のそれぞれから1つの積層体チップ22が切り出される。このような切削は、積層体ブロック21の長手方向に沿って切削刃33が所定のピッチで移動させられながらその度毎に実施される。
これにより、第1分断工程においてマザーブロック20が行状に分断されることによって形成された複数の積層体ブロック21は、さらに列状に分断されることになり、細長の略直方体形状を有する複数の積層体チップ22に個片化される。なお、上記第2分断工程を経ることにより、個片化された複数の積層体チップ22のそれぞれには、一対の端面22a1および22a2が形成される。
ここで、上述したように、予めマザーブロック20が発泡剥離シート31によって粘着保持されていることにより、マザーブロック20が行列状に分断された後においても、切り出された複数の積層体チップ22のそれぞれが発泡剥離シート31によって粘着保持された状態に維持されることになり、これにより複数の積層体チップ22は、発泡剥離シート31上において行列状に整列配置された状態となる。
次に、図6に示す被覆用セラミックシートが貼り付けられる工程(工程S3)について説明する。被覆用セラミックシートが貼り付けられる工程は、拡張性を有する第1粘着シートが準備される第1粘着シート準備工程と、マザーブロック20の分断後において隣り合うように位置することとなった複数の積層体チップが第1粘着シートに粘着保持される第1粘着保持工程と、複数の積層体チップ22間の間隔が第1チップ間隔に一括して広げられる第1拡張工程と、第1粘着シートの粘着力よりも大きい粘着力を有するとともに拡張性を有する第2粘着シートが準備される第2粘着シート準備工程と、複数の積層体チップ22が第1粘着シートから第2粘着シートに移し替えられて粘着保持される第2粘着保持工程と、第2粘着シートに粘着保持された複数の積層体チップ22間の間隔が第1チップ間隔よりも大きい第2チップ間隔に一括して広げられる第2拡張工程と、第2拡張工程後において複数の積層体チップの一方の側面のそれぞれに被覆用セラミックグリーンシートが一括して貼り付けられる第1加工処理工程と、第2粘着シートの粘着力よりも大きい粘着力を有する第3粘着シートを準備する第3粘着シート準備工程と、複数の積層体チップ22が第2粘着シートから第3粘着シートに移し替えられる第3粘着保持工程と、複数の積層体チップの他方の側面のそれぞれに被覆用セラミックグリーンシートが一括して貼り付けられる第2加工処理工程と、を含んでいる。
図13および図14は、マザーブロック20の分断後において隣り合うように位置することとなった積層体チップ22間の距離が一括して広げられる第1拡張工程を示す図である。図13は、複数の積層体チップ22が拡張性を有する第1粘着シート41に貼り付けられた状態を示す概略斜視図、図14は、隣り合う積層体チップ22間の距離が広げられた状態を示す概略斜視図である。
第1拡張工程を実施するにあたっては、まず、拡張性を有する粘着シートである第1粘着シート41が準備される(第1粘着シート準備工程)。第1粘着シート41は、少なくともその一方の主面に粘着層を有し、加熱によって容易に伸長するシートであり、当該第1粘着シート41としては、例えば、基材が塩化ビニル樹脂製であるとともにその表面にアクリル系粘着剤からなる粘着層が形成されたものが使用できる。
図13に示すように、発泡剥離シート31によって行列状に整列して粘着保持されていた複数の積層体チップ22が、第1粘着シート41に当該行列状に整列した状態が維持されたまま移し替えられ、第1粘着シート41に粘着保持される(第1粘着保持工程)。
この移し替えは、例えば、複数の積層体チップ22を発泡剥離シート31に貼り付けた状態のまま、複数の積層体チップ22の発泡剥離シート31に貼り付けられた主面とは反対側に位置する主面に第1粘着シート41を貼り付け、その後、上記発泡剥離シート31を複数の積層体チップ22から剥がすことで実現できる。なお、第1粘着シート41として、発泡剥離シート31よりも粘着力の強いものを用いれば、よりスムーズにその移し替え作業が実施できる。
上述した移し替えを行うことにより、行列状に整列して配置された複数の積層体チップ22は、第1粘着シート41によって粘着保持された状態になる。ここで、移し替え後における隣り合う積層体チップ22間の距離である初期のチップ間隔GW0およびGL0は、上述した第2分断工程後におけるこれらの間隔がそのまま維持されることになり、概ね切削刃33の厚みに対応した大きさとなる。なお、チップ間隔GW0は、積層体チップ22の幅方向Wに沿って隣り合って位置する積層体チップ22間の距離であり、チップ間隔GL0は、積層体チップ22の長さ方向Lに沿って隣り合って位置する積層体チップ22間の距離である。
続いて、第1粘着シート41が図13中に示す矢印方向に向けて図示しないエキスパンド装置によって引っ張られることにより、図14に示すように、第1粘着シート41が伸張され、これによって行列状に配置された複数の積層体チップ22が互いに離間するように移動する。これに伴い、隣り合う積層体チップ22間の距離も増大することになり、隣り合う積層体チップ22間の間隔が、上述した初期のチップ間隔GW0およびGL0よりもそれぞれ大きい第1チップ間隔GW1およびGL1に一括して広げられる(第1拡張工程)。
なお、第1粘着シート41としては、拡張後において元の状態に復帰しない可塑性を有する粘着シートを使用することが好ましい。このような可塑性を有する粘着シートを使用することにより、以降の工程においてハンドリングが容易に行なえることになる。
ここで、本実施の形態においては、エキスパンド装置として、第1粘着シート41を等方的に引っ張るものが用いられるとともに、第1粘着シート41として、所定の部位に切れ込みとしてのスリット41aが設けられてなるものが用いられる。これにより、引っ張る方向によって第1粘着シート41の拡張率を容易に異ならせることができ、上述した隣り合う積層体チップ22間の拡張後の距離である第1チップ間隔GW1およびGL1を自由に調節することができる。
したがって、当該拡張率を適切に調整することにより、より多くの数の積層体チップ22を一度に第1粘着シート41によって粘着保持させることが可能になるため、結果として低コストに生産性よく積層セラミックコンデンサを製造することが可能になる。なお、上述した粘着シートを拡張させる工程の詳細については、後述することとする。
図15は、第1拡張工程の後に行われる第2拡張工程を示す。第2拡張工程は、まず、拡張性を有する粘着シートである第2粘着シート45が準備される(第2粘着シート準備工程)。そして、第1粘着シート41に粘着保持されている複数の積層体チップ22が、隣り合う間隔が第1チップ間隔GW1およびGL1に維持された状態で、第1粘着シート41から第2粘着シート45に移し替えられ、第2粘着シート45に粘着保持される(第2粘着保持工程)。
続いて、第2粘着シート45が図示しないエキスパンド装置によって上記第1拡張工程の場合と同様にして引っ張られることにより、図15に示すように、第2粘着シート45が伸張される。これにより、隣り合う積層体チップ22間の距離はさらに増大されて、第1チップ間隔GW1およびGL1よりもそれぞれ大きい第2チップ間隔GW2およびGL2に一括して広げられる(第2拡張工程)。
第2粘着シート45は、第1粘着シート41と同様の、少なくともその一方の主面に粘着層を有し、加熱によって容易に伸長するとともに拡張後においては可塑性を有する樹脂製シートが使用される。また、第2粘着シート45は、第1粘着シート41よりも粘着力の強いものを用いれば、第1粘着シート41からの移し替え作業をスムーズに実施できるので好ましい。
第1粘着シート41および第2粘着シート45の拡張率は、粘着保持する複数の積層体チップ22の形状や大きさによって適宜決定されるが、後述する転動処理を行う観点から、それぞれ、積層体チップ22の幅方向Wにおける拡張率は、元の状態を100%とした場合に概ね160%〜200%程度とすることが好ましく、積層体チップ22の長さ方向Lにおける拡張率は、元の状態を100%とした場合に概ね220%〜250%程度とすることが好ましい。第2拡張工程後における第2チップ間隔GW2およびGL2は、第1チップ間隔GW1およびGL1に対して、例えば2倍〜4倍程度で、1.0mm以上の間隔があることが好ましい。
図16ないし図18は、複数の積層体チップ22の向きが一括して変えられる第1転動工程を示す概略図である。
第1転動工程においては、まず、図16に示すように、複数の積層体チップ22が第2粘着シート45によって粘着保持された状態のまま当該第2粘着シート45が支持板42に貼り付けられ、さらに複数の積層体チップ22の第2粘着シート45によって粘着保持されていない主面のそれぞれに接触するように作用板43が配置される。ここで、支持板42および作用板43としては、シリコーンラバー製のものが好適に使用できる。
続いて、図17に示すように、作用板43を固定した状態とし、支持板42が図中に示す矢印C1方向(すなわち、積層体チップ22の幅方向Wに平行な方向)に向けて移動させられる。これにより、作用板43と積層体チップ22との間の摩擦により、第2粘着シート45の粘着力に抗して積層体チップ22が図中に示す矢印D1方向に向けて回転し、第2粘着シート45によって粘着保持されていた積層体チップ22の一方の主面22bが浮き上がる。続いて、図18に示すように、さらに支持板42が図中に示す矢印C1方向に向けて移動させられることにより、積層体チップ22の側面22c1が第2粘着シート45に接触し、これにより複数の積層体チップ22が側面22c1側において第2粘着シート45によって粘着保持される。
以上により、図18に示すように、図16に示す状態から複数の積層体チップ22が一括してその場において90°回転する。これにより、複数の積層体チップ22の側面22c2が略同一平面上に位置し、かつ揃って同一の方向を向くことになり、これら側面22c2のそれぞれが、隣に位置する積層体チップ22に遮られることなく開放された状態となる。ここで、実施形態では、積層体チップ22の厚み方向Tの長さが幅方向Wの長さよりも長く構成されている。これにより、第1転動工程においては、転動方向における複数の積層体チップ22の隣り合うチップ間の間隔は、第2チップ間隔GW2よりもさらに大きい第3チップ間隔GW3に一括して広げられる。
図19ないし図21は、複数の積層体チップ22の一方の側面22c2のそれぞれに被覆用セラミックグリーンシート25を一括して貼り付ける第1加工処理工程を示す概略図である。第1加工処理工程においては、上述した第1転動工程により開放された複数の積層体チップ22の側面22c2のそれぞれに、付加誘電体部15となる被覆用セラミックグリーンシート25が貼り付けられる。被覆用セラミックグリーンシート25は、シート状部材の一例である。
第1加工処理工程では、まず、図19に示すように、第2粘着シート45によって粘着保持された複数の積層体チップ22の一方の側面22c(22c2)が下方を向くように支持板42が配置されるとともに、当該複数の積層体チップ22の下方に、被覆用セラミックグリーンシート25が複数の積層体チップ22と向き合うように配置される。
被覆用セラミックグリーンシート25は、弾性体51の平坦な上面に展開した状態で配置され、弾性体51は、ステージ52上に載置される。被覆用セラミックグリーンシート25としては、上述した積層用セラミックグリーンシート23と同様のものであって、セラミックス粉末、バインダおよび溶剤を含むセラミックスラリーを原料としてシート状に成形されたものが用いられる。
続いて、図19中において示す矢印E方向に向けて支持板42が下降させられることにより、図20に示すように、複数の積層体チップ22が被覆用セラミックグリーンシート25に向けて一括して押し付けられる。その際、複数の積層体チップ22のそれぞれは、弾性体51が弾性変形する程度の押し付け力をもって被覆用セラミックグリーンシート25に向けて押し付けられる。
これにより、複数の積層体チップ22と弾性体51とによって挟み込まれた部分の被覆用セラミックグリーンシート25が、複数の積層体チップ22の側面22c2にそれぞれ圧着されるとともに、複数の積層体チップ22の側面22c2の端部において剪断力が被覆用セラミックグリーンシート25に作用することで、被覆用セラミックグリーンシート25が打ち抜かれる。
以上により、被覆用セラミックグリーンシート25は、図20に示すように複数の積層体チップ22のそれぞれによって打ち抜かれた打ち抜き部分25と、打ち抜き後の残余部分25bとに分かれる。その後、支持板42が上昇させられることにより、図21に示すように、第2粘着シート45によって粘着保持された複数の積層体チップ22の側面22c2のそれぞれが、当該打ち抜き部分25によって覆われた状態となる。
次に、複数の積層体チップ22の向きが再度一括して変えられることにより、複数の積層体チップ22の他方の側面22c1が開放された状態とされる第3粘着保持工程が実施され、その後、その側面22c1のそれぞれに、被覆用セラミックグリーンシート25が一括して貼り付けられる第2加工処理工程が実施される。
図22ないし図23は、第3粘着保持工程を示している。第3粘着保持工程では、まず、第3粘着シート46が準備される(第3粘着シート準備工程)。第3粘着シート46は、図22に示すように支持板42の一方の主面に貼り付けられる。側面22c2に被覆用セラミックグリーンシート25が貼り付けられた複数の積層体チップ22は、第2粘着シート45を介して支持板42に支持された状態のまま、第3粘着シート46に押し付けられて粘着される。そして、第2粘着シート45が剥離されることにより、図23に示すように、複数の積層体チップ22は第2粘着シート45から第3粘着シート46に移し替えられ、被覆用セラミックグリーンシート25を介して第3粘着シート46に粘着保持される。この状態で、複数の積層体チップ22の側面22c1が略同一平面上に位置し、かつ揃って同一の方向を向くことになり、これら側面22c1のそれぞれが、隣に位置する積層体チップ22に遮られることなく開放された状態となる。
なお、第3粘着シート46は、少なくともその一方の主面に粘着層を有する樹脂製シートが用いられるが、第1粘着シート41および第2粘着シート45のように拡張性は必ずしも有するものでなくてよい。また、第3粘着シート46は、第2粘着シート45よりも粘着力の強いものを用いれば、第2粘着シート45からの移し替え作業をスムーズに実施できるので好ましい。
続いて、上記第1加工処理と同様の第2加工処理が実施されて、複数の積層体チップ22の側面22c1のそれぞれに被覆用セラミックグリーンシート25が貼り付けられる。すなわち、図24に示すように、複数の積層体チップ22の側面22c1が下方を向くように配置された支持板42が、ステージ52上に載置された弾性体51上の被覆用セラミックグリーンシート25に向けて下降させられる。複数の積層体チップ22が被覆用セラミックグリーンシート25に向けて一括して押し付けられることにより、複数の積層体チップ22により被覆用セラミックグリーンシート25が打ち抜かれる。次いで、支持板42が上昇させられることにより、図25に示すように、複数の積層体チップ22の側面22c1のそれぞれが、打ち抜き部分の被覆用セラミックグリーンシート25によって覆われた状態となる。
上述した第1および第2加工処理では、被覆用セラミックグリーンシート25を複数の積層体チップ22に貼り付けるに際しては、必要に応じて、複数の積層体チップ22の側面22c1および側面22c2および被覆用セラミックグリーンシート25の主表面のいずれか一方、あるいは双方に、図示しない接着剤が予め塗布されていてもよい。ここで、使用可能な接着剤としては、各種の樹脂成分を主成分とするもの、または当該樹脂成分を溶剤中に溶解させたもの、あるいはその中にセラミックス粒子を分散させたペースト等が挙げられる。また、接着剤の塗布方法も特に制限されるものではなく、各種の方法が利用できる。
以上により、図25に示すように、第3粘着シート46によって複数の積層体チップ22を粘着保持させた状態のまま、複数の積層体チップ22の一対の側面22c1および22c2のそれぞれに被覆用セラミックグリーンシート25(より厳密には、被覆用セラミックグリーンシート25の打ち抜き部分25)が貼り付けられる。
第1加工処理の後に、複数の積層体チップ22の向きを再度一括して変えて側面22c1のそれぞれを開放させるには、上記第3粘着保持工程を実施する他に、以下の第2転動工程を実施することによっても可能である。
図26ないし図30は、第2転動工程を示す。第2転動工程では、まず、図26に示すように、支持板42上の第2粘着シート45に粘着保持された複数の積層体チップ22の側面22c2側に、作用板43が配置される。作用板43は、上述した第1加工処理工程において複数の積層体チップ22の側面22c2にそれぞれ貼り付けられた各被覆用セラミックグリーンシート25に接触するように配置される。
続いて、図27に示すように、作用板43を固定した状態とし、支持板42が図中に示す矢印C1方向(すなわち、積層体チップ22の幅方向Wに平行な方向)に向けて移動させられる。これにより、図27ないし図29に示すように、作用板43と積層体チップ22との間の摩擦により、複数の積層体チップ22が図26の状態から図中に示す矢印D1方向に向け一括して回転する。そして、図30に示すように複数の積層体チップ22が図26の状態から180°回転した状態で、支持板42が停止される。図30は、積層体チップ22の回転停止後に作用板43が取り外された状態を示す。
このように複数の積層体チップ22は、第2転動工程を経て、側面22c2に貼り付けられた被覆用セラミックグリーンシート25を介して第2粘着シート45に粘着保持される。この状態で、複数の積層体チップ22は、側面22c1が略同一平面上に位置し、かつ揃って同一の方向を向き、側面22c1のそれぞれが隣に位置する積層体チップ22に遮られることなく開放された状態となる。第2転動工程においては、転動方向における複数の積層体チップ22の隣り合うチップ間の間隔は、第2チップ間隔GW2よりもさらに大きい第3チップ間隔GW3に一括して広げられる。
この後は、図24ないし図25で示したように、第2粘着シート45に複数の積層体チップ22を粘着保持させた状態のまま、複数の積層体チップ22の側面22c1のそれぞれに被覆用セラミックグリーンシート25が貼り付ける第2加工処理工程が実施される。
第2加工処理工程の後は、次いで、図6に示す熱圧着が実施される工程(工程S4)が実施される。熱圧着が実施される工程においては、一対の側面22c1および22c2に被覆用セラミックグリーンシート25が貼り付けられた積層体チップ22が所定の温度に加熱された状態とされ、当該状態において弾性体等を用いて被覆用セラミックグリーンシート25が積層体チップ22側に向けて押圧されることにより、熱圧着処理が施される。これにより、貼り付けられた一対の被覆用セラミックグリーンシート25の積層体チップ22に対する密着性が向上する。なお、当該工程は、複数の積層体チップ22が第2粘着シート45または第3粘着シート46に粘着保持された状態のまま、実施することができる。
次に、図6に示す焼成が実施される工程(工程S5)が実施される。焼成が実施される工程においては、複数の積層体チップ22が第3粘着シート46から取り外され、取り外された後の複数の積層体チップ22に熱処理が施される。当該焼成は、積層体チップ22を焼結させるものである。なおここでは、粘着シートを、上記第3粘着保持工程を経て第2加工処理が実施された複数の積層体チップ22が粘着保持されている第3粘着シート46から取り外すとしたが、上述した第2転動工程を経て第2加工処理が実施された場合には、粘着シートは第2粘着シート45とされる。
次に、図6に示す外部電極が形成される工程(工程S6)が実施される。外部電極が形成される工程は、焼成後の積層体チップ22の一方の端面に導電体ペーストが塗布される第1塗布工程と、積層体チップの他方の端面に導電体ペーストが塗布される第2塗布工程と、導電体ペーストを焼き付ける焼き付け工程と、を含んでいる。導電体ペーストは、焼き付け工程において、焼成された積層体チップ22に焼き付けられるとともに、焼結金属層に形成される。また、外部電極が形成される工程では、焼結金属層をさらにめっき層で覆うめっき処理が施される。これにより、図1および図2に示した外部電極16が形成される。
なお、上述したように積層体チップ22の焼成工程と外部電極16の形成工程とをこの順で逐次行う方法に代えて、熱圧着工程後に、複数の積層体チップ22が第2粘着シート45または第3粘着シート46に粘着保持された状態から、引き続き、外部電極16の焼き付けと積層体チップ22の焼成とを同時に実施することも可能である。以下に、その方法の一例を説明する。
上述した熱圧着工程の終えた後に、図31ないし図33に示す第3転動工程を実施する。第3転動工程は、第3粘着シート46上で積層体チップ22の向きが一括して変えられる。第3転動工程においては、まず、図31に示すように、複数の積層体チップ22が第3粘着シート46によって粘着保持された状態のまま当該第3粘着シート46が支持板42に貼り付けられる。さらに、複数の積層体チップ22の第3粘着シート46によって粘着保持されていない側面22c1(より厳密には、積層体チップ22の側面22c1に貼り付けられた被覆用セラミックグリーンシート25の露出面)のそれぞれに接触するように、作用板43が配置される。なおここでは、粘着シートを、上記第3粘着保持工程を経て第2加工処理が実施された複数の積層体チップ22が粘着保持されている第3粘着シート46とするが、上述した第2転動工程を経て第2加工処理が実施された場合には、粘着シートは第2粘着シート45とされる。
続いて、図32に示すように、作用板43を固定した状態とし、支持板42が図中に示す矢印C2方向(すなわち、積層体チップ22の長さ方向Lに平行な方向)に向けて移動させられる。これにより、作用板43と積層体チップ22との間の摩擦により、複数の積層体チップ22は図中に示す矢印D2方向に向けて一括して回転し、図33に示すように積層体チップ22が90°回転した状態で支持板42が停止される。これにより、複数の積層体チップ22の端面22a1のそれぞれが、第3粘着シート46によって粘着保持される。複数の積層体チップ22においては、端面22a2が略同一平面上に位置し、かつ揃って同一の方向を向くことになり、これら端面22a2のそれぞれが、隣に位置する積層体チップに遮られることなく開放された状態となる。
図34および図35は、複数の積層体チップ22の一方の端面22a2のそれぞれに導電体ペースト26を一括して塗布する第1塗布工程を示す概略図であり、図36は、第1塗布工程が実施された後の複数の積層体チップ22の状態を示す概略図である。
複数の積層体チップ22の一方の端面22a2のそれぞれに導電体ペースト26を一括して塗布する第1塗布工程においては、上述した第3転動工程において開放された複数の積層体チップ22の端面22a2を含む端部部分のそれぞれに、次のようにして外部電極16となる導電体ペースト26が塗布される。
図34に示すように、第3粘着シート46によって粘着保持された複数の積層体チップ22の端面22a2が下方を向くように支持板42が配置されるとともに、当該複数の積層体チップ22の下方に、導電体ペースト26が複数の積層体チップ22と向き合うように配置される。ここで、導電体ペースト26は、容器61に収容された状態で配置される。
続いて、図34中において示す矢印F方向に向けて支持板42が下降させられることにより、図35に示すように、複数の積層体チップ22のそれぞれの端部部分が導電体ペースト26に浸漬される。
その後、支持板42が上昇させられることにより、図36に示すように、複数の積層体チップ22のそれぞれの端部部分に導電体ペースト26が付着し、これに伴って複数の積層体チップ22のそれぞれの端面22a2が導電体ペーストからなる塗布膜26aによって覆われた状態となる。複数の積層体チップ22のそれぞれの端部部分に形成された塗布膜26aは、この後乾燥される。
続いて、複数の積層体チップ22の向きが再度一括して変えられる第4転動工程と、複数の積層体チップ22の他方の端面22a1のそれぞれに導電体ペースト26を一括して塗布する第2塗布工程とが実施される。なお、図37は、複数の積層体チップ22の他方の端面22a1のそれぞれに導電体ペースト26を一括して塗布する第2塗布工程が実施された後の複数の積層体チップ22の状態を示す概略図である。
ここで、複数の積層体チップ22の向きが再度一括して変えられる第4転動工程は、上述した複数の積層体チップ22の向きが一括して変えられる第3転動工程に準じて、一方の端面22a2に導電体ペースト26からなる塗布膜26aが形成された後の複数の積層体チップ22を、第3粘着シート46上においてその場で180°一括して回転させるものであるため、ここでは、その説明は省略する。
また、複数の積層体チップ22の他方の端面22a1のそれぞれに導電体ペースト26を一括して塗布する第2塗布工程も、上述した複数の積層体チップ22の一方の端面22a2のそれぞれに導電体ペースト26を一括して塗布する第1塗布工程に準じる。すなわち第2塗布工程は、一方の端面22a2に導電体ペースト26からなる塗布膜26aが形成された後の複数の積層体チップ22の他方の端面22a1のそれぞれに、外部電極16となる導電体ペースト26を一括して塗布して塗布膜26aを形成するものである。したがってここでは、その第2塗布工程の説明は省略する。
次に、複数の積層体チップ22が第3粘着シート46から取り外され、取り外された後の複数の積層体チップ22に熱処理が施される。当該熱処理は、積層体チップ22に塗布された導電体ペースト26を積層体チップ22に焼き付けるとともに、同時に積層体チップ22を焼結させるものである。なお、当該熱処理が完了した後には、導電体ペースト26が焼き付けられることで形成された焼結金属層をさらにめっき層で覆うめっき処理が施される。
以上説明した本実施の形態に係る電子部品の製造方法が適用された積層セラミックコンデンサの製造方法を実施することにより、図1ないし図3において示した構造を有する積層セラミックコンデンサ10を、一度に大量に生産することができる。
次に、図38ないし図44を参照して、上記実施の形態に係る第1拡張工程および第2拡張工程において粘着シートを拡張する工程ならびに当該工程に使用して好適なエキスパンド装置について詳述する。なお、以下の説明では、拡張する粘着シートとして第1粘着シート41を拡張する場合を説明するが、第2粘着シート45の場合も同様に拡張される。
図38ないし図44は、上述した粘着シートを拡張させる工程と、当該工程において使用されるエキスパンド装置の構成を説明するための図である。図38は、複数の積層体チップを粘着保持する第1粘着シート41をエキスパンド装置100にセットした状態を模式的に示す断面図であり、図39は、当該状態における概略平面図である。図40は、第1粘着シート41を拡張させた状態を模式的に示す断面図であり、図41は、当該状態における概略平面図である。また、図42は、エキスパンド装置100の支持用環状枠体106に固定用環状枠体108を取り付ける工程を模式的に示す断面図であり、図43は、第1粘着シート41を切断する工程を模式的に示す断面図である。さらに、図44は、エキスパンド装置100から支持用環状枠体106および固定用環状枠体108を取り外す工程を模式的に示す断面図である。なお、図38および図40においては、それぞれ図39中に示すXXXVIII−XXXVIII線に沿った断面および図41中に示すXL−XL線に沿った断面を示している。
まず、図38および図39を参照して、エキスパンド装置100の構成と、複数の積層体チップ22を粘着保持する第1粘着シート41をエキスパンド装置100にセットした状態とについて説明する。
図38および図39に示すように、エキスパンド装置100は、略環状の形状を有する外側テーブル101と、当該外側テーブル101の載置面上に配置される略環状の押さえ部材102と、外側テーブル101の中空部内に配置された内側テーブル103と、内側テーブル103を移動させる駆動シャフト107と、を主として備えている。内側テーブル103は、中央部に位置する円盤状の加熱テーブル104と、当該加熱テーブル104を取り囲む略環状の非加熱テーブル105と、当該非加熱テーブル105の外周縁部に配置された支持用環状枠体106と、を主として有している。
一方、第1粘着シート41は、平面視略円形状を有しており、その中央に複数の積層体チップ22を行列状に整列させた状態で粘着保持するための保持領域41bを有しており、当該保持領域41bの周囲に周囲領域41cを有している。拡張前の第1粘着シート41は、エキスパンド装置100にこれをセットした状態において、保持領域41bが内側テーブル103の加熱テーブル104の載置面上に位置しかつ周囲領域41cの外周縁部が外側テーブル101の載置面上に位置するような大きさおよび形状を有している。
外側テーブル101および押さえ部材102は、第1粘着シート41を拡張させるにあたって第1粘着シート41を保持するための枠体に相当し、第1粘着シート41がエキスパンド装置100にセットされた状態において、第1粘着シート41の周囲領域41cの外周縁部を挟み込んで保持する。
内側テーブル103は、第1粘着シート41を拡張させるにあたって上記外側テーブル101および押さえ部材102によって保持された部分の内側に位置する部分の第1粘着シート41を押し込むための押し込み部に相当し、第1粘着シート41がエキスパンド装置100にセットされた状態において、第1粘着シート41の保持領域41bを含む部分に当接している。
内側テーブル103は、上述した駆動シャフト107を介して図示しない駆動機構に接続されている。これにより、内側テーブル103は、図示しない駆動機構によって駆動されることで移動し、外側テーブル101の軸方向に沿って昇降することで上述した第1粘着シート41の押し込みを実現する。なお、内側テーブル103は、第1粘着シート41を拡張させる前において、その載置面が外側テーブル101の載置面と略同一平面上に位置するように配置されている。
加熱テーブル104は、第1粘着シート41を拡張させるにあたって当該第1粘着シート41の保持領域41bを含む部分を加熱するためのものであり、内部に図示しない熱源を含んでいる。
非加熱テーブル105は、第1粘着シート41を拡張させるにあたって加熱テーブル104にて発生する熱が第1粘着シート41の周囲領域41cの外周縁部にまで伝熱されてしまうことを防止するためのものであり、断熱部材によって構成されている。
支持用環状枠体106は、非加熱テーブル105に対して着脱自在に構成されており、拡張後の第1粘着シート41のうち、上記保持領域41bを含む部分をエキスパンド装置100から取り外すために使用されるものである。
第1粘着シート41は、当該第1粘着シート41がエキスパンド装置100にセットされた状態において、エキスパンド装置100の外側テーブル101および押さえ部材102によって保持された部分の周囲領域41cと、複数の積層体チップ22を保持する領域である保持領域41bとの間に位置する部分の一部に、一対のスリット41aを有している。一対のスリット41aは、第1粘着シート41の表裏面を貫通するように設けられており、保持領域41bを間に挟むように配置されている。
ここで、スリット41aは、第1粘着シート41を平面視した状態において、直線状に延びる形状を有しており、行列状に整列して配置された複数の積層体チップ22の行方向または列方向のうち、拡張率を小さく抑えたい方向と直交するように(換言すれば、拡張率を大きく確保したい方向と平行な方向に延びるように)延設されている。本実施の形態においては、拡張率を小さく抑えたい方向が積層体チップ22の幅方向Wと平行な方向であるため、一対のスリット41aは、積層体チップ22の幅方向Wと平行な方向において保持領域41bを挟み込む位置に、積層体チップ22の長さ方向Lと平行な方向に向けて延びるように設けられている。
次に、図38ないし図44を参照して、第1粘着シート41を拡張させる工程について順を追って説明する。
図38および図39に示すように、まず、複数の積層体チップ22をその保持領域41bにおいて粘着保持した第1粘着シート41をエキスパンド装置100にセットし、加熱テーブル104によって第1粘着シート41の保持領域41bを含む部分を加熱する。
続いて、図40に示すように、十分に加熱が完了した時点において、押し込み部である内側テーブル103を図中に示す矢印G方向に向けて上昇させることで第1粘着シート41の一部を押し込む。これにより、周囲領域41cの外周縁部(すなわち、外側テーブル101と押さえ部材102とによって保持された部分)の内側に位置する部分の第1粘着シート41が伸長することになり、第1粘着シート41の保持領域41bを含む部分が拡張する。このとき、第1粘着シート41の周囲領域41cの一部には、周囲領域41cの外周縁部と内側テーブル103の押し込み面である載置面に当接する部分との間に位置することとなる、外側テーブル101の載置面および内側テーブル103の載置面のいずれにも当接しない食み出し部41dが生じる。
この第1粘着シート41の拡張に伴い、図40中において矢印Hで示すように、行列状に配置された複数の積層体チップ22も互いに離間するように移動することになり、隣り合う積層体チップ22間の距離が増大する。より詳細には、第1粘着シート41が伸長することにより、隣り合う積層体チップ22間の間隔が、図39において示した間隔GW0およびGL0から、それよりもそれぞれ大きい図41において示す間隔GW1およびGL1に増大する。
ここで、図41に示すように、積層体チップ22の幅方向Wと平行な方向においてエキスパンド装置100によって第1粘着シート41に加えられた引っ張り力は、第1粘着シート41に設けられたスリット41aによって相当程度吸収されることになり、保持領域41bにかかる引っ張り力は、大幅に減少したものとなる。このため、当該幅方向Wと平行な方向における第1粘着シート41の拡張率は小さく抑えられ、その結果、当該方向に沿った積層体チップ22の移動量は、矢印H1にて示すように比較的小さくなる。
一方で、積層体チップ22の長さ方向Lと平行な方向においてエキスパンド装置100によって第1粘着シート41に加えられた引っ張り力は、スリット41aが介在しないためにほぼそのまま保持領域41bにかかることになり、保持領域41bにかかる引っ張り力は、大きなものとなる。このため、当該長さ方向Lと平行な方向における第1粘着シート41の拡張率は大きくなり、その結果、当該方向に沿った積層体チップ22の移動量は、矢印H2にて示すように比較的大きくなる。
これにより、隣り合う積層体チップ22の幅方向Wにおける拡張前の間隔GW0および拡張後の間隔GW1と、隣り合う積層体チップ22の長さ方向Lにおける拡張前の間隔GL0および拡張後の間隔GL1とが、GW0=GL0<GW1<GL1の関係を満たすことになり、第1粘着シート41を等方的に引っ張るエキスパンド装置100を用いるにも拘わらず、引っ張る方向によって第1粘着シート41の拡張率を容易に異ならせることができる。
続いて、図42に示すように、内側テーブル103を上昇させてこれを押し出させた状態のまま、固定用環状枠体108を支持用環状枠体106の周囲に図中に示す矢印I方向に沿って嵌め込む。これにより、第1粘着シート41の上述した食み出し部41dの一部が、支持用環状枠体106と固定用環状枠体108とによって挟み込まれることになる。
続いて、図43に示すように、支持用環状枠体106と固定用環状枠体108とによって挟み込まれた部分よりも周囲領域41cの外周縁部側に位置する部分の食み出し部41d(図中において矢印Jで示す部分)において、第1粘着シート41を切断する。これにより、第1粘着シート41の保持領域41bを含む部分が、周囲領域41cのうちの外周縁部寄りの部分から切り離される。
その後、図44に示すように、支持用環状枠体106およびこれに嵌め込まれた固定用環状枠体108を図中に示す矢印K方向に沿って内側テーブル103の非加熱テーブル105から取り外す。これにより、隣り合う積層体チップ22間の距離が広げられた状態とされ、第1粘着シート41によって保持された複数の積層体チップ22が、当該第1粘着シート41ごと、エキスパンド装置100から取り外されることになる。なお、支持用環状枠体106および固定用環状枠体108は、そのまま第1粘着シート41を保持する保持具(いわゆる治具)として用いることができる。
ここで、上述した一対のスリット41aは、第1粘着シート41の周囲領域41cのうちの、拡張前において内側テーブル103の載置面に当接しかつ拡張時において外側に向けて移動することによって上述した食み出し部41dに達する部分に設けられていることが好ましい。このようにすれば、エキスパンド装置100から第1粘着シート41を取り外した後においても、第1粘着シート41の支持用環状枠体106および固定用環状枠体108によって保持された部分の内側においてスリット41aが残留することがないため、その後のハンドリングの際に第1粘着シート41が破れる等の不具合が発生することが未然に防止できる。
以上において説明したように、本実施の形態に係る電子部品の製造方法が適用された積層セラミックコンデンサの製造方法に従って積層セラミックコンデンサ10を製造することにより、第1粘着シート41を等方的に引っ張るエキスパンド装置100を利用した場合にも、引っ張る方向によって異なる拡張率を容易に実現することができる。したがって、第1粘着シート41によって粘着保持させることができる積層体チップ22の数を最大限増加させることができることになり、結果として低コストに生産性よく積層セラミックコンデンサ10を製造することが可能になる。
また、第1粘着シート41に設けるスリット41aの位置や形状、大きさを適宜調整することにより、引っ張る方向によって自由に拡張率を設定することができるため、積層体チップ22のサイズ変更や形状変更等があった場合にも柔軟にこれに対応することができ、設計変さらに伴う製造コストの増大を抑制することもできる。
例えば、スリット41aの長さを大きくした場合には、積層体チップ22の幅方向Wに沿った拡張率と長さ方向Lに沿った拡張率との差をより大きくすることができ、反対にスリット41aの長さを小さくした場合には、上記差をより小さくすることができる。また、スリット41aの位置をより保持領域41bに近づけた場合には、上記差をより大きくすることができ、スリット41aの位置をより保持領域41bから遠ざけた場合には、上記差をより小さくできる。このように、スリット41aの位置や形状、大きさを適宜調整することにより、自由に拡張率を設定することができる。なお、スリット41aとしては、図示するように所定の幅を有するものであってもよいし、実質的に幅を有さない単なる切れ込み線であってもよい。
さらには、第1粘着シート41に設けたスリット41aが拡張時において変形することにより、第1粘着シート41にかかる余分な引っ張り力が当該スリット41aの変形によってある程度吸収されることになるため、拡張時において第1粘着シート41が破れる等の不具合の発生も未然に防止することができる。
なお、本実施の形態における第1粘着シート41はスリット41aを有しているが、スリット41aの有無は任意であり、スリット41aを有していない粘着シートを第1粘着シート41として用いてもよい。
以上説明した本実施の形態によれば、次の効果が奏される。
本実施の形態は、拡張性を有する第1粘着シート41を準備する第1粘着シート準備工程と、複数の積層セラミックコンデンサ10の材料である複数の積層体チップ22を第1粘着シート41に粘着保持する第1粘着保持工程と、第1粘着シート41を拡張することによって、粘着保持された複数の積層体チップ22のうちの隣り合う積層体チップ22間の間隔を一括して広げて第1チップ間隔に保持する第1拡張工程と、拡張後の第1粘着シート41の粘着力よりも大きい粘着力を有するとともに拡張性を有する第2粘着シート45を準備する第2粘着シート準備工程と、第1チップ間隔を維持した状態で、複数の積層体チップ22を第1粘着シート41から第2粘着シート45に移し替えることによって、複数の積層体チップ22を第2粘着シート45に粘着保持する第2粘着保持工程と、第2粘着シート45を拡張させることによって、粘着保持された複数の積層体チップ22のうちの隣り合う積層体チップ22間の間隔を一括して広げて第1チップ間隔よりも大きい第2チップ間隔に保持する第2拡張工程と、第2拡張工程後に、複数の積層体チップ22に一括して第1加工処理を施す第1加工処理工程と、を備え、第1加工処理は、複数の積層体チップ22に複数の積層セラミックコンデンサ10の材料である被覆用セラミックグリーンシート25を貼り付ける処理である。
これにより、複数の積層体チップ22のそれぞれに、加工処理として一括して被覆用セラミックグリーンシート25を貼り付けることができるため、その加工処理を効率よく好適に行うことができる。
本実施の形態の第1加工処理工程を実施する際、複数の積層体チップ22のうちの隣り合う積層体チップ22間の間隔は、第1拡張工程および第2拡張工程を経ることにより、十分に広い間隔に確保される。積層体チップ22間のチップ間隔が狭い場合、積層体チップ22から受ける応力により被覆用セラミックグリーンシート25が破損する場合があるが、本実施の形態では積層体チップ22間のチップ間隔が十分に広く確保されるため、被覆用セラミックグリーンシート25の破損が生じにくい。特に、幅方向Wが厚み方向Tよりも大きい比較的扁平形状の積層体チップであっても、本実施の形態のように2段階の拡張に次いで第1転動工程を行うことで、幅方向Wのチップ間隔を効果的に広げることができる。このため、被覆用セラミックグリーンシート25を複数の積層体チップ22に一括して貼り付ける工程が的確に実施され、その結果、歩留まりがよく生産性の向上が図られる。
本実施の形態では、拡張した第1粘着シート41から積層体チップ22を第2粘着シート45に移し替え、この第2粘着シート45を拡張するといったように、拡張を2回行うことで広いチップ間隔(第2チップ間隔)を得ている。このように広いチップ間隔を1回の粘着シートの拡張で得ようとすると、過度な拡張により粘着層の薄化や損傷による粘着力の低下といった不具合が懸念されるが、本実施の形態では拡張工程を2回有することで、そのような不具合が起こらず、確実に広いチップ間隔を得ることができる。
本実施の形態では、上記第1加工処理の後に、拡張後の第2粘着シート45の粘着力よりも大きい粘着力を有する第3粘着シート46を準備する第3粘着シート準備工程と、第1加工処理が施された複数の積層体チップ22を第2粘着シート45から第3粘着シート46に移し替えることによって、第1加工処理が施された複数の積層体チップ22を第3粘着シート46に粘着保持する第3粘着保持工程と、第3粘着シート46に保持され、第1加工処理が施された複数の積層体チップ22にさらに一括して第2加工処理を施す第2加工処理工程と、を備え、第2加工処理は、複数の積層体チップ22に複数の積層セラミックコンデンサ10の材料である被覆用セラミックグリーンシート25を貼り付ける。
これにより、上記第1加工処理で被覆用セラミックグリーンシート25が貼り付けられた積層体チップ22の側面22c2とは反対側の側面22c1を容易かつ的確に開放させることができ、その側面22c1への被覆用セラミックグリーンシート25の貼り付けを円滑に行うことができる。また、積層体チップ22の幅方向Wの長さと厚み方向Tの長さとの比が大きい比較的扁平形状の積層体チップでは、図26〜図30に示した積層体チップ22を第2粘着シート45の上で2回転動させる第2転動工程を行う方法では、転動させることが困難なことから反対側の側面22c1を開放させることが難しい場合がある。しかし、上記のように第2粘着シート45から第3粘着シート46に移し替えることにより、転動させることなく反対側の側面22c1を開放させることができるため、特にこの方法は厚み方向Tの長さと幅方向Wの長さとの比が大きい積層体チップに第2加工処理を行うにあたってきわめて有効である。
本実施の形態では、上記第1加工処理の後に、拡張後の第2粘着シート45上において、第1加工処理が施された複数の積層体チップ22を2回転動させることにより、第1加工処理が施された領域(側面22c2)を第2粘着シート45に粘着させる第2転動工程と、第2転動工程によって第1加工処理が施された領域が第2粘着シート45に粘着された複数の積層体チップ22にさらに一括して第2加工処理を施す第2加工処理工程と、を備え、第2加工処理は、複数の積層体チップ22に複数の積層セラミックコンデンサ10の材料である被覆用セラミックグリーンシート25を貼り付ける処理である。
これにより、上記第1加工処理で被覆用セラミックグリーンシート25が貼り付けられた積層体チップ22の側面22c2とは反対側の側面22c1を的確に開放させることができ、その側面22c1への被覆用セラミックグリーンシート25の貼り付けを円滑に行うことができる。
本実施の形態は、上記製造方法を、電子部品としての積層セラミックコンデンサを製造する方法に適用したものであって、積層された複数の積層用セラミックグリーンシート23と、積層用セラミックグリーンシート23間の複数の界面に沿ってそれぞれ配置された導電パターン24と、を含むマザーブロック20を作製するマザーブロック作製工程と、マザーブロック20を、互いに直交する第1方向の切断線および第2方向の切断線に沿って切断することによって、複数の誘電体層13と複数の内部電極層14とによる積層構造を有し、かつ第1方向の切断線に沿う切断によって現れた一対の側面22c1および22c2のそれぞれに内部電極層14が露出している複数の積層体チップ22を、複数の積層セラミックコンデンサ10の材料として得るマザーブロック切断工程と、を備え、上記第1加工処理は、一対の側面22c1および22c2のうちの一方の側面22c2に被覆用セラミックグリーンシート25を貼り付ける処理であり、第2加工処理は、一対の側面22c1および22c2のうちの他方の側面22c1に被覆用セラミックグリーンシート25を貼り付ける処理である。
これにより、一対の側面22c1および22c2のそれぞれに被覆用セラミックグリーンシート25が貼り付けられた積層セラミックコンデンサ10を、効率よく好適に製造することができる。
以上、実施の形態について説明したが、本開示においては上記実施の形態に制限はされず、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は任意に可能である。