JP2021188004A - 広葉樹ソーダリグニンの分離方法 - Google Patents

広葉樹ソーダリグニンの分離方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、広葉樹をソーダ蒸解する工程から排出される黒液からリグニンを効率的に分離する方法を提供することである。【解決手段】工程a)黒液に酸及び/又は二酸化炭素を添加してpH10未満の条件でリグニンを沈殿させた後に脱水する工程、工程b)工程a)で得られたリグニン沈殿物を懸濁してpH3未満に調整してリグニンを沈殿させる工程、工程c)工程b)で得られたリグニン沈殿物を脱水及び洗浄する工程、の各工程を含んでなる方法によって、広葉樹をソーダ蒸解する工程から排出される黒液からリグニンを分離する。【選択図】 なし

Description

本発明は、広葉樹チップをソーダ蒸解する工程から排出される黒液を原料として、溶解しているリグニンを効率よく分離する方法に関する。
近年、石油の代替としてリグニンを原料として、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等に変換して利用することが検討されている。リグニンは木材中に多量に存在するが、抽出するためには酸、アルカリ、あるいは有機溶媒を使用する化学処理、粉砕等の機械的処理が必要である。例えば、サルファイト蒸解法では、酸性亜硫酸塩と亜硫酸の混液を加えて、130〜145℃で蒸煮し木材中のリグニンをリグニンスルホン酸塩として溶出させ(例えば、特許文献1)、クラフト蒸解法では、苛性ソーダ(NaOH)と硫化ソーダ(Na2S)を主成分とする薬品を加えて、150〜170℃程度で蒸解して、クラフトリグニンとして溶出させる。これらの蒸解法とは別に、苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を加えてリグニンを溶出することが検討されている(特許文献2)。
また、抽出されたリグニンを効率よく分離することも重要である。例えば、クラフト蒸解法等で得られる黒液を酸性化してリグニンを沈殿させて脱水し、リグニン濾過ケーキを洗浄してリグニンを得ることが開示されている(特許文献3)。
特開2001−89986号公報 特開2014−208803号公報 特表2008−513549号公報
しかしながら、特許文献3の方法ではクラフト黒液を原料とするため、黒液を酸性に調整する際に臭気および毒性を有する硫化水素が発生することが避けられない。また、クラフト蒸解では硫化ソーダを使用するために、最終的に得られるリグニン製品に硫黄成分が残存する懸念がある。本発明の課題は、広葉樹チップをソーダ蒸解する工程から排出される黒液からリグニンを効率的に分離する方法である。
本発明者らはこれらの目的を達成するために検討を重ねた結果、広葉樹をソーダ蒸解する工程から排出される黒液に酸及び/又は二酸化炭素を添加してpH10未満でリグニンを沈殿させ、さらにpHを酸性にすることにより上記目的が達成されることを見出した。
すなわち本発明は下記の発明を提供するものである。
(1)広葉樹をソーダ蒸解する工程から排出される黒液からリグニンを分離する方法であって、下記の各工程を含んでなる方法。
工程a)黒液に酸及び/又は二酸化炭素を添加してpH10未満としてリグニンを沈殿させ、その後に脱水し、リグニン沈殿物Aを得る工程。
工程b)工程a)で得られたリグニン沈殿物Aを懸濁してpH3未満に調整してリグニンを沈殿させる工程。
工程c)工程b)で沈殿させたリグニンを脱水及び洗浄脱水し、リグニン沈殿物Cを得る工程。
(2)前記広葉樹がユーカリグロブラス(Eucalyptus globurus)である(1)に記載の方法。
(3)前記黒液に含まれるキシランが1%を超え、かつ工程a)のリグニンを沈殿させる温度が60℃以上80℃未満である(1)、(2)に記載の方法。
(4)前記黒液に含まれるキシランが1%以下であって、かつ工程a)のリグニンを沈殿させる温度が40℃以上60℃未満である(1)、(2)に記載の方法。
(5)前記工程a)及び/または工程c)における脱水をフィルタープレス装置で行う(1)〜(4)に記載の方法。
(6)前記工程b)において、リグニン沈殿物Aを懸濁した後に酸を添加してpH3未満とする(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)前記工程b)において、リグニン沈殿物Aを酸性溶液に懸濁しpH3未満とする(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(8)前記工程c)の洗浄脱水で得られる洗浄ろ液の電気伝導度が、0.2S/m以下になるまで前記洗浄脱水を行う、(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)前記黒液の固形分が10質量%以上、40質量%以下であり、且つ前記リグニン沈殿物Cの固形分が25%以上である、(1)〜(8)のいずれかに記載の方法。
本発明によれば、広葉樹をソーダ蒸解する工程から排出される黒液からリグニンを効率的に分離することが可能となる。
本発明は、広葉樹をソーダ蒸解する工程から排出される黒液からリグニンを分離製造する方法であって、下記の工程a)、工程b)、工程c)を含んでなる方法である。
工程a)黒液に酸及び/又は二酸化炭素を添加してpH10未満としてリグニンを沈殿させ、その後に脱水し、リグニン沈殿物Aを得る工程。
工程b)工程a)で得られたリグニン沈殿物Aを懸濁してpH3未満に調整してリグニンを沈殿させる工程。
工程c)工程b)で沈殿させたリグニンを脱水及び洗浄脱水し、リグニン沈殿物Cを得る工程。
以下に本発明の各工程について具体的に説明する。
[ソーダ蒸解]
原料の木材としては、広葉樹を使用できる。具体的には、広葉樹としては、ユーカリ、ブナ、シナ、シラカバ、ポプラ、アカシア、ナラ、イタヤカエデ、センノキ、ニレ、キリ、ホオノキ、ヤナギ、セン、ウバメガシ、コナラ、クヌギ、トチノキ、ケヤキ、ミズメ、ミズキ、アオダモ等が例示されるが、このうち、木材からリグニン成分を分離しやすい(言い換えると、蒸解により得られるパルプ収率が高い)ユーカリグロブラス(Eucalyptus globurus)が好ましい。
前記広葉樹のチップは、苛性ソーダ溶液からなる蒸解液と共に蒸解釜へ投入され、ソーダ蒸解に供する。また、1ベッセル液相型、1ベッセル気相/液相型、2ベッセル液相/気相型、2ベッセル液相型などの蒸解型式なども特に限定はない。すなわち、本願のアルカリ性水溶液を含浸し、これを保持する工程は、従来の蒸解液の浸透処理を目的とした装置や部位とは別個に設置してもよい。
ソーダ蒸解は、広葉樹チップを蒸解液とともに耐圧性容器に入れて行うことができるが、容器の形状や大きさは特に制限されない。広葉樹チップと蒸解液の液比は、例えば、1.0〜40L/kgとすることができ、1.5〜30L/kgが好ましく、2.0〜30L/kgがさらに好ましい。また別の態様において、広葉樹チップと薬液の液比は、例えば、1.0〜5.0L/kgとすることができ、1.5〜4.5L/kgが好ましく、2.0〜4.0L/kgがさらに好ましい。
また、本発明のソーダ蒸解においては、苛性ソーダ(NaOH)の他に種々の蒸解助剤を併用することもできる。例えば、絶乾チップ当たり0.01〜5質量%のキノン化合物を含むアルカリ性蒸解液を蒸解釜に添加してもよい。キノン化合物の添加量が0.01質量%未満であると黒液中に抽出されるリグニンの抽出量が十分ではない。また、キノン化合物の添加量が5質量%を超えてもさらなるリグニンの抽出量の向上が認められない。
使用されるキノン化合物はいわゆる公知の蒸解助剤としてのキノン化合物、ヒドロキノン化合物又はこれらの前駆体であり、これらから選ばれた少なくとも1種の化合物を使用することができる。これらの化合物としては、例えば、アントラキノン、ジヒドロアントラキノン(例えば、1,4−ジヒドロアントラキノン)、テトラヒドロアントラキノン(例えば、1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン、1,2,3,4−テトラヒドロアントラキノン)、メチルアントラキノン(例えば、1−メチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン)、メチルジヒドロアントラキノン(例えば、2−メチル−1,4−ジヒドロアントラキノン)、メチルテトラヒドロアントラキノン(例えば、1−メチル−1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン、2−メチル−1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン)等のキノン化合物であり、アントラヒドロキノン(一般に、9,10−ジヒドロキシアントラセン)、メチルアントラヒドロキノン(例えば、2−メチルアントラヒドロキノン)、ジヒドロアントラヒドロアントラキノン(例えば、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン)又はそのアルカリ金属塩等(例えば、アントラヒドロキノンのジナトリウム塩、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンのジナトリウム塩)等のヒドロキノン化合物であり、アントロン、アントラノール、メチルアントロン、メチルアントラノール等の前駆体が挙げられる。これら前駆体は蒸解条件下ではキノン化合物又はヒドロキノン化合物に変換する可能性を有している。
蒸解液は、対絶乾広葉樹チップ質量当たりの苛性ソーダ添加率を1〜50質量%とすることができ、10〜30質量%とすることが好ましい。添加率が1質量%未満であるとリグニンの抽出が不十分となり、50質量%を超えるとパルプの収率の低下や品質の低下が起こる。 ソーダ蒸解は、120〜180℃の温度範囲で行うことが好ましく、140〜160℃がより好ましい。温度が低すぎると脱リグニン(カッパー価の低下)が不十分である一方、温度が高すぎるとセルロースの重合度(粘度)が低下する。また、本発明における蒸解時間とは、蒸解温度が最高温度に達してから温度が下降し始めるまでの時間であるが、蒸解時間は、60分以上600分以下が好ましく、120分以上360分以下がさらに好ましい。蒸解時間が60分未満ではパルプ化およびリグニンの黒液への移行が不十分であり、600分を超えるとパルプ生産効率の悪化や溶出したリグニンの副次的反応が起こる可能性があるために好ましくない。
また、本発明におけるソーダ蒸解は、Hファクター(Hf)を指標として、処理温度及び処理時間を設定することができる。Hファクターとは、蒸解過程で反応系に与えられた熱の総量を表す目安であり、下記の式によって表わされる。Hファクターは、チップと水が混ざった時点から蒸解終了時点まで時間積分することで算出する。Hファクターとしては、250〜6000が好ましい。
Hf=∫exp(43.20−16113/T)dt
本発明においては、蒸解後得られた黒液は、必要に応じて、種々の処理に供することができる。また、蒸解後得られた未漂白(未晒)パルプは、必要に応じて、種々の処理に供することができる。例えば、ソーダ蒸解後に得られた未漂白パルプに対して、漂白処理を行うことができる。
<工程a)黒液に酸及び/又は二酸化炭素を添加してpH10未満としてリグニンを沈殿させ、その後に脱水し、リグニン沈殿物Aを得る工程>
ソーダ蒸解後に得られる黒液に酸及び/又は二酸化炭素を添加して、黒液のpHを10未満として懸濁液とすることにより、黒液中に溶解しているリグニンを不溶物として沈殿させることが可能となる。この工程は2回以上繰り返して行ってもよい。黒液のpHは1〜9としてもよく、2〜8に調整してもよい。黒液のpHが10以上では、リグニンの不溶物が十分に生成しない。使用する酸は無機酸でも有機酸でもよい。無機酸としては、硫酸、亜硫酸、塩酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、炭酸等が挙げられ、硫酸が好ましい。また、二酸化塩素発生装置から排出される残留酸を使用してもよい。有機酸としては、酢酸、乳酸、蓚酸、クエン酸、ギ酸等が挙げられる。なお、黒液はpHを調整する前に、エバポレーターなどを用いて濃縮することができ、固形分は10質量%以上、40質量%以下であることが好ましく、20質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。固形分が低すぎるとリグニンの沈殿が十分でなく、また、リグニン回収の効率も悪い。また、固形分が高すぎると黒液の粘度が高くなり、リグニンの沈殿回収が困難となる。
前述のpHを10未満に調整する工程で酸及び二酸化炭素を添加する場合、処理温度としては黒液に含まれるキシランが1%を超える場合、60℃以上80℃未満でリグニンを沈殿させることが好ましい。60℃未満ではリグニンの凝集量が不十分なためにリグニンの収率が低下し、80℃を超える範囲ではリグニン凝集物が固化して粘性が増大するためにフィルタープレスによる脱水が困難となる。また、黒液に含まれるキシランが1%以下である場合には、40℃以上60℃未満でリグニンを沈殿させることが好ましい。40℃未満ではリグニンの凝集量が不十分なためにリグニンの収率が低下する。また、60℃以上ではリグニン凝集物が固化して粘性が増大するためにフィルタープレスによる脱水が困難となる。黒液に含まれるキシランが少ない場合には、二酸化炭素を加える反応下でリグニン構成成分間での副次的な反応が起こりやすくなるために、低温側の領域で固化しやすくなると考えられる。
二酸化炭素を加える方法は特に限定されないが、大気圧下で吹き込む方法、あるいは密閉容器中で二酸化炭素を吹き込んで加圧(0.1〜1MPa)する方法がある。二酸化炭素としては、純粋な二酸化炭素ガスでもよいが、焼却炉、ボイラーなどから排出される燃焼排ガス、石灰焼成工程などから発生する二酸化炭素を含むガスを用いることもできる。
また、必要に応じて凝集剤を添加して、リグニンの沈殿を促進させてもよい。凝集剤としては、硫酸バンド、塩化アルミ、ポリ塩化アルミ、ポリアミン、DADMAC、メラミン酸コロイド、ジンアンジアジド等が挙げられる。
黒液に酸及び/又は二酸化炭素を添加して、黒液のpHを10未満に調整することによって、リグニンを含有するケーキ状の沈殿物が得られる。この沈殿物を脱水し、水で洗浄することによって分取する。沈殿物を脱水・洗浄するための装置としては、フィルタープレス、ドラムプレス、遠心脱水装置、吸引濾過装置等を使用することができる。洗浄する際に使用する水は特に限定されないが、工業用水、水道水等を使用することができ、pHは1〜9、温度は20〜80℃、電気伝導度が0.2S/m以下であることが好ましい。
<工程b)工程a)で得られたリグニン沈殿物Aを懸濁してpH3未満に調整してリグニンを沈殿させる工程>
工程b)では、工程a)で得られたケーキ状のリグニン沈殿物Aに水を加えて懸濁させる。この際に使用される水は工程a)で洗浄に使用する水と同様の水でよい。次にリグニン懸濁液に酸を添加してpH3未満に調整してリグニンを沈殿させる。使用する酸は工程a)で使用する無機酸、有機酸いずれでもよい。無機酸としては、硫酸、亜硫酸、塩酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、炭酸等が挙げられ、硫酸が好ましい。また、二酸化塩素発生装置から排出される残留酸を使用してもよい。有機酸としては、酢酸、乳酸、蓚酸、クエン酸、ギ酸等が挙げられる。また、リグニン沈殿物Aは、予め酸を加えて調製した酸性溶液に懸濁してもよい。酸性溶液を調製するのに使用する酸は工程a)で使用する無機酸、有機酸いずれでもよい。無機酸としては、硫酸、亜硫酸、塩酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、炭酸等が挙げられ、硫酸が好ましい。また、二酸化塩素発生装置から排出される残留酸を使用してもよい。有機酸としては、酢酸、乳酸、蓚酸、クエン酸、ギ酸等が挙げられる。
<工程c)工程b)で沈殿させたリグニンを脱水及び洗浄脱水し、リグニン沈殿物Cを得る工程>
工程c)では、工程b)で得られたケーキ状のリグニン沈殿物を脱水及び洗浄する工程である。洗浄は、最終的に得られるリグニンに含まれる不純物含量を十分に低下させることが必要であり、洗浄ろ液の電気伝導度が0.2S/m以下になるまで行うことが望ましい。洗浄ろ液の電気伝導度が0.2S/mを超える条件では、最終的に得られるリグニン中にナトリウムのような無機塩が残留する可能性があり、望ましくはない。リグニン沈殿物を脱水・洗浄するための装置としては、工程a)と同様にフィルタープレス、ドラムプレス、遠心脱水装置、吸引濾過装置等を使用することができる。沈殿させたリグニンの洗浄に使用される水は工程a)あるいは工程c)で洗浄に使用する水と同様の水でよい。また、沈殿物Cの固形分は25%以上が望ましい。固形分の濃度が低いと調製したリグニンのハンドリングが悪くなる。加えて、乾燥品とする場合に水分を除去するのに長時間を要する。
工程c)で得られたリグニン沈殿物Cに有機溶媒を添加して溶解させ、不純物である不溶物を分離することによって、リグニンを精製することもできる。添加する有機溶媒としては、糖類の非溶媒または貧溶媒であり、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2−メトキシルエタノール、ブタノールなどを含むアルコール類、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどを含むエーテル類、アセトンやメチルエチルケトンなどを含むケトン類、アセトニトリルなどを含むニトリル類、ピリジンなどを含むアミン類、ホルムアミドなどを含むアミド類、酢酸エチル、酢酸メチルなどを含むエステル類、ヘキサンなどを含む脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等を含む芳香族炭化水素などのうち、一種類または複数を混合したもの、若しくは一種類または複数を混合し、水を加えたものを用いることができる。特に、アセトンが好ましい。懸濁液中の不溶物を固液分離する方法としては、フィルタープレス、ドラムプレス、遠心脱水装置、吸引濾過装等を使用することができる。
本発明で得られるリグニンは、熱硬化性樹脂、分散剤、接着剤、硬質ポリウレタンフォームの原料として利用できる。また、さらに低分子化することによりフェノール樹脂原料やエポキシ樹脂原料として利用することもできる。
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において%は特に断らない限り質量%を示す。
〔実施例1〕
<ソーダ蒸解>
2.4L容の回転型オートクレーブに絶乾重量300gのユーカリグロブラスのチップを入れ、水酸化ナトリウム25%(対チップ重量)、液比3L/kgとなるように水酸化ナトリウムを水に混合した蒸解薬液に、テトラヒドロアントラキノン(1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンジナトリウム、川崎化成工業株式会社製、商品名:SAQ)を0.02%(対チップ重量)となるよう添加して、160℃、Hファクター=500でソーダ蒸解を行い、黒液を得た。黒液に含まれるキシランを定量したところ2.2%であった。
<工程a)>
黒液をビーカーに入れ、80℃に予熱した後、二酸化炭素0.3MPaで加圧した耐圧容器内で撹拌しながら、30分処理し、pH7.5に調整した。ガラスフィルター(GS−25、ADVANTEC社製)を用いて吸引脱水し、リグニン沈殿物Aを分離した。
<工程b)>
リグニン沈殿物Aに黒液の半量の水を加えて、再度スラリー化し、スラリーに硫酸を加えpHを2に調整した。スラリー(固形分濃度:約10%)を80℃に予熱した。
<工程c)>
ガラスフィルター(GS−25、ADVANTEC社製)を用いて吸引脱水し、固液分離した後、ガラスフィルター上に残った固形分を黒液の半量の熱水(80℃)で洗浄し、リグニン沈殿物Cを得た。
〔実施例2〕
<ソーダ蒸解>
2.4L容の回転型オートクレーブに絶乾重量300gのユーカリグロブラスのチップを入れ、水酸化ナトリウム30%(対チップ重量)、液比3L/kgとなるように水酸化ナトリウムを水に混合した蒸解薬液に、テトラヒドロアントラキノン(1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンジナトリウム、川崎化成工業株式会社製、商品名:SAQ)を0.02%(対チップ重量)となるよう添加して、160℃、Hファクター=500でソーダ蒸解を行い、黒液を得た。黒液に含まれるキシランを定量したところ2.7%であった。
<工程a)>
黒液をビーカーに入れ、80℃に予熱した後、二酸化炭素0.3MPaで加圧した耐圧容器内で撹拌しながら、30分処理し、pH7.5に調整した。ガラスフィルター(GS−25、ADVANTEC社製)を用いて吸引脱水し、リグニン沈殿物Aを分離した。
<工程b)>
リグニン沈殿物Aに黒液の半量の水を加えて、再度スラリー化し、スラリーに硫酸を加えpHを2に調整した。スラリー(固形分濃度:約10%)を80℃に予熱した。
<工程c)>
ガラスフィルター(GS−25、ADVANTEC社製)を用いて吸引脱水し、固液分離した後、ガラスフィルター上に残った固形分を黒液の半量の熱水(80℃)で洗浄し、リグニン沈殿物Cを得た。
〔実施例3〕
<ソーダ蒸解>
2.4L容の回転型オートクレーブに絶乾重量300gのユーカリグロブラスのチップを入れ、水酸化ナトリウム20%(対チップ重量)、液比3L/kgとなるように水酸化ナトリウムを水に混合した蒸解薬液に、テトラヒドロアントラキノン(1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンジナトリウム、川崎化成工業株式会社製、商品名:SAQ)を0.02%(対チップ重量)となるよう添加して、160℃、Hファクター=900でソーダ蒸解を行い、黒液を得た。黒液に含まれるキシランを定量したところ0.67%であった。
<工程a)>
黒液をビーカーに入れ、60℃に予熱した後、二酸化炭素0.3MPaで加圧した耐圧容器内で撹拌しながら、30分処理し、pH7.5に調整した。ガラスフィルター(GS−25、ADVANTEC社製)を用いて吸引脱水し、リグニン沈殿物Aを分離した。
<工程b)>
リグニン沈殿物Aに黒液の半量の水を加えて、再度スラリー化し、スラリーに硫酸を加えpHを2に調整した。スラリー(固形分濃度:約10%)を60℃に予熱した。
<工程c)>
ガラスフィルター(GS−25、ADVANTEC社製)を用いて吸引脱水し、固液分離した後、ガラスフィルター上に残った固形分を黒液の半量の熱水(60℃)で洗浄し、リグニン沈殿物Cを得た。
〔実施例4〕
<ソーダ蒸解>
2.4L容の回転型オートクレーブに絶乾重量300gのユーカリグロブラスのチップを入れ、水酸化ナトリウム20%(対チップ重量)、液比3L/kgとなるように水酸化ナトリウムを水に混合した蒸解薬液に、テトラヒドロアントラキノン(1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンジナトリウム、川崎化成工業株式会社製、商品名:SAQ)を0.02%(対チップ重量)となるよう添加して、160℃、Hファクター=700でソーダ蒸解を行い、黒液を得た。黒液に含まれるキシランを定量したところ1.0%であった。
<工程a)>
黒液をビーカーに入れ、60℃に予熱した後、二酸化炭素0.3MPaで加圧した耐圧容器内で撹拌しながら、30分処理し、pH7.5に調整した。ガラスフィルター(GS−25、ADVANTEC社製)を用いて吸引脱水し、リグニン沈殿物Aを分離した。
<工程b)>
リグニン沈殿物Aに黒液の半量の水を加えて、再度スラリー化し、スラリーに硫酸を加えpHを2に調整した。スラリー(固形分濃度:約10%)を60℃に予熱した。
<工程c)>
ガラスフィルター(GS−25、ADVANTEC社製)を用いて吸引脱水し、固液分離した後、ガラスフィルター上に残った固形分を黒液の半量の熱水(60℃)で洗浄し、リグニン沈殿物Cを得た。
〔実施例5〕
<ソーダ蒸解>
ユーカリグロブラスチップ100kg(絶乾)を入れた回転式反応釜に、水酸化ナトリウム21kgおよびテトラヒドロアントラキノン(1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンジナトリウム、川崎化成工業株式会社製、商品名:SAQ)20gを添加した。次に回転させながら蒸気を吹き込んで160℃に昇温して2時間反応させた。反応後にろ別して黒液を得た。黒液に含まれるキシランを定量した結果、0.50%であった。
<工程a)>
ソーダ蒸解から得られた黒液112L(固形分濃度22.8%)を、容量300Lの反応槽に仕込んで55℃に加温した。次に炭酸ガスを1分間当たり0.03kgの速度でpHが8.0になるまで反応槽へ導入した。沈殿したリグニンは、フィルタープレス(Lab Pressure Filter VPA 04, Metso社製)に供して脱水した。フィルタークロスはポリプロピレン製平織のP28(薮田産業製、透気度1.0cm/cm/秒)を使用した。得られたリグニンは11.8kg(ドライ換算で5.6kg)であった。
<工程b)>
工程a)で得られたケーキ状のリグニン沈殿物11.8kg(ドライ換算5.6kg))に水25.5kgを添加し、反応槽内で攪拌して50℃に調整しながら懸濁し、続いて送液ポンプを用いて0.1kg/分の添加速度で8N硫酸(高杉製薬(株))を反応槽内に添加した。この時、懸濁液のpHをモニターしつつpHが2.0になったところで硫酸の添加を停止した。硫酸の添加量は3.7kgであった。その後、攪拌を1時間継続し、リグニンを沈殿させた。
<工程c)>
工程b)で沈殿させたケーキ状のリグニンを工程a)と同様にしてフィルタープレスに供して脱水した。フィルタークロスはポリプロピレン製平織のP28(薮田産業製、透気度1.0cm/cm/秒)を使用した。次にフィルタープレス内に脱水されたケーキ状のリグニンを保持させたままで工業用水(pH7.2)を通水することで洗浄を実施した。洗浄の終点は洗浄ろ液の電気伝導度が0.2S/m以下になる点とした。電気伝導度およびpHは、ポータブル型pH・ORP・電気伝導率メータD−74(HORIBA製)で測定した。
次にフィルタープレスのろ室を7.5barに加圧、引き続いてろ室に空気を導入してリグニンから水分を可能な限り脱水し、リグニンを6.2kg(ドライ換算2.9kg)を得た。得られたリグニンを蛍光X線分析装置EDX−8000(島津製作所製)に供してNa濃度を定量した。その結果、Na含量は検出限界以下であった。
〔比較例1〕
<工程a)>
実施例3のソーダ蒸解黒液蒸解で得た黒液をビーカーに入れ、80℃に予熱した後、二酸化炭素0.3MPaで加圧した耐圧容器内で撹拌しながら、30分処理し、pH7.5に調整した。処理後の黒液をガラスフィルター(GS−25、ADVANTEC社製)に移し替えたところ、内容物は粘凋な性状を示し、リグニン沈殿物Aを得ることはできなかった。
〔比較例2〕
<工程a)>
実施例4のソーダ蒸解黒液蒸解で得た黒液をビーカーに入れ、80℃に予熱した後、二酸化炭素0.3MPaで加圧した耐圧容器内で撹拌しながら、30分処理し、pH7.5に調整した。処理後の黒液をガラスフィルター(GS−25、ADVANTEC社製)に移し替えたところ、内容物は粘凋な性状を示し、リグニン沈殿物Aを得ることはできなかった。
<黒液に含まれるキシランの定量>
黒液を乾燥器内で105℃、24時間処理して水分を除去した。得られた水分除去後の黒液由来固形分を粉砕して300mgを秤量し、72%硫酸3mlとともに30℃で1時間反応させた。次に硫酸濃度が4%になるよう希釈し、さらに121℃で1時間加熱し、加水分解反応によって単糖溶液を得た。得られた溶液を適宜希釈し、イオンクロマトグラフィー(Dionex社製DX−500、カラム:AS−7、溶離液:水、流速1.1ml/min)にて単糖を定量した。酸加水分解溶液に含まれるキシロース量から、下式によって黒液のキシラン含量を求めた。
キシラン含量(%)=キシロース量(mg)×0.88×[黒液固形分(%)/300]

Claims (9)

  1. 広葉樹をソーダ蒸解する工程から排出される黒液からリグニンを分離する方法であって、下記の各工程を含んでなる方法。
    工程a)黒液に酸及び/又は二酸化炭素を添加してpH10未満としてリグニンを沈殿させ、その後に脱水し、リグニン沈殿物Aを得る工程。
    工程b)工程a)で得られたリグニン沈殿物Aを懸濁してpH3未満に調整してリグニンを沈殿させる工程。
    工程c)工程b)で沈殿させたリグニンを脱水及び洗浄脱水し、リグニン沈殿物Cを得る工程。
  2. 前記広葉樹がユーカリグロブラス(Eucalyptus globurus)である請求項1記載の方法。
  3. 前記黒液に含まれるキシランが1%を超え、かつ工程a)のリグニンを沈殿させる温度が60℃以上80℃未満である請求項1、2に記載の方法。
  4. 前記黒液に含まれるキシランが1%以下であって、かつ工程a)のリグニンを沈殿させる温度が40℃以上60℃未満である請求項1、2に記載の方法。
  5. 前記工程a)及び/または工程c)における脱水をフィルタープレス装置で行う請求項1〜4に記載の方法。
  6. 前記工程b)において、リグニン沈殿物Aを懸濁した後に酸を添加してpH3未満とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 前記工程b)において、リグニン沈殿物Aを酸性溶液に懸濁しpH3未満とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  8. 前記工程c)の洗浄脱水で得られる洗浄ろ液の電気伝導度が、0.2S/m以下になるまで前記洗浄脱水を行う、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 前記黒液の固形分が10質量%以上、40質量%以下であり、且つ前記リグニン沈殿物Cの固形分が25%以上である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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