JP2021173214A - エンジンの燃焼室構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】冷却損失の低減を図りつつ、プリイグニッションの発生要因となるようなバルブの高温化を抑止する。【解決手段】エンジンの燃焼室構造は、シリンダブロック3、シリンダヘッド4及びピストン5によって区画される燃焼室6を備える。シリンダブロック3は、シリンダ内壁面2Sを有するブロック本体30と、シリンダ内壁面2Sを覆うコート層70とを含む。コート層70は、シリンダ内壁面2Sのうち、ピストンリング51が摺接しない上端領域UAを覆う遮熱層72と、遮熱層72の背面側に配置される断熱層71と、断熱層71と遮熱層72との間に配置される熱拡散層73とを含む。断熱層71は熱伝導率がブロック本体30よりも小さく、遮熱層72は熱伝導率がブロック本体30及び断熱層71よりも小さく、熱拡散層73は熱伝導率が断熱層71及び遮熱層72よりも大きい。熱拡散層73は、ブロック本体30に当接する下端縁731及び延出部732を備えている。【選択図】図6

Description

本発明は、冷却損失を抑制する遮熱層を備えたエンジンの燃焼室構造に関する。
車両用のガソリンエンジン等の燃焼室では、燃焼室壁面を通した放熱(冷損)を低減することが求められる。冷損の低減のため、ピストンの冠面などの燃焼室壁面に、低熱伝導率の材料からなる遮熱層をコーティングする技術が知られている。遮熱層を設けることで、燃焼室内で発生する燃焼ガスと燃焼室壁面との温度差を小さくし、冷損を低減することができる。
特許文献1には、ピストン冠面に、遮熱層に加えて断熱層を設けてなる燃焼室構造が開示されている。前記遮熱層は、ピストン冠面の全面を覆い、ピストン本体を通した放熱を抑制する。前記断熱層は、前記遮熱層の下方であってピストン冠面の径方向中央領域に配置され、当該中央領域を熱が逃げ難い領域としている。これにより、燃焼室の径方向中央領域が比較的高温で、径方向外側領域が比較的低温となる温度分布が形成される。このような温度分布は、予混合圧縮着火燃焼を実行させる場合に燃焼を緩慢化させ、筒内圧の急上昇や冷損を抑止できる利点がある。
特開2018−172997号公報
エンジンの燃焼室は、シリンダブロックのシリンダ内壁面によっても区画されている。従って、燃焼室の冷損低減には、シリンダ内壁面からの放熱も抑止する必要がある。そこで、シリンダ内壁面にも、特許文献1のように遮熱層及び断熱層を設けることが考えられる。しかし、前記断熱層が過度に熱を蓄熱し、シリンダ内壁面を高温化させる不具合が生じ得る。すなわち、前記遮熱層で遮熱し切れない熱を前記断熱層が蓄熱し、高熱を保有した前記断熱層が前記遮熱層を加温する。この加温によってシリンダ内壁面が高温化し、筒内温度を上昇させてしまう。これにより、吸気行程で取り入れた空気が過度に熱せられ、圧縮行程において過早着火(プリイグニッション)が生じる。
本発明の目的は、冷却損失の低減を図りつつ、プリイグニッションの発生要因となるようなシリンダ内壁面の高温化を抑止できるエンジンの燃焼室構造を提供することにある。
本発明の一局面に係るエンジンの燃焼室構造は、シリンダブロック、シリンダヘッド及びピストンによって区画される燃焼室を備えるエンジンの燃焼室構造であって、前記シリンダブロックは、前記燃焼室に対向するシリンダ内壁面を有するブロック本体と、前記シリンダ内壁面のうち、少なくともピストンの側周面に保持されたピストンリングが摺接しない上端領域を覆う遮熱層と、前記シリンダ内壁面における、前記遮熱層で覆われる領域に配置される断熱層と、前記断熱層と前記遮熱層との間に配置される熱拡散層と、を含み、前記断熱層は熱伝導率が前記ブロック本体よりも小さく、前記遮熱層は熱伝導率が前記ブロック本体及び前記断熱層よりも小さく、前記熱拡散層は熱伝導率が前記断熱層及び前記遮熱層よりも大きく、前記熱拡散層は、前記ブロック本体に当接する当接部を備えている。
この燃焼室構造によれば、熱伝導率がシリンダブロックのブロック本体及び断熱層よりも小さい遮熱層によって、シリンダ内壁面の少なくとも上端領域が覆われる。このため、ブロック本体と燃焼室との温度差を小さくし、ブロック本体への熱伝達(冷損)を抑制することができる。また、前記遮熱層を通過した熱は、前記断熱層に蓄熱される。このため、前記遮熱層を高温に維持することができる。一方、断熱層と遮熱層との間には、熱拡散層が介在される。前記熱拡散層は、熱伝導率が前記断熱層及び前記遮熱層の双方よりも大きく、ブロック本体に当接する当接部を備えている。このため、前記断熱層が過剰に蓄熱する状態に至ったとしても、前記熱拡散層を通してその熱を前記ブロック本体に放熱させることができる。従って、プリイグニッションの発生要因となるようなシリンダ内壁面の高温化を防止することができる。
上記のエンジンの燃焼室構造において、前記熱拡散層は、前記断熱層よりもシリンダ軸方向に延出する延出部を備え、当該延出部が前記ブロック本体に当接する前記当接部であることが望ましい。
この燃焼室構造によれば、熱拡散層と断熱層とが同じサイズであって、前記熱拡散層の端縁部がブロック本体に対する当接部である場合に比較して、延出部の分だけ前記熱拡散層と前記ブロック本体との接触面積を大きくすることができる。従って、より前記断熱層の熱を前記ブロック本体へ逃がし易くすることができる。
上記のエンジンの燃焼室構造において、前記断熱層及び前記熱拡散層は、前記シリンダ内壁面の周方向の全長に亘って設けられることが望ましい。
この燃焼室構造によれば、シリンダ内壁面の全周に亘って、熱拡散層を通して断熱層の熱を放熱させることが可能な構造とすることができる。
上記のエンジンの燃焼室構造において、前記シリンダブロックは、所定方向に並ぶ複数のシリンダを備え、隣り合うシリンダ間には中間壁が備えられ、前記シリンダ内壁面の周方向において、前記中間壁の領域には、前記遮熱層及び前記熱拡散層の二層が配置され、前記中間壁以外の領域には、前記遮熱層、前記断熱層及び前記熱拡散層の三層が配置されている構造とすることができる。
シリンダ間に配設される中間壁は、二つのシリンダから熱を与えられるため、本来的に高熱化する壁である。このような中間壁の表面に配置される遮熱層は、自ずと高温に維持される。従って、前記中間壁の領域については断熱層を設けず、前記遮熱層及び前記熱拡散層の二層コートとし、中間壁以外の領域については断熱層を含む三層コートとすることで、シリンダブロックの実際の熱分布に即した保温及び放熱機能を有する燃焼室構造を実現することができる。
上記のエンジンの燃焼室構造において、前記シリンダブロックは、所定方向に並ぶ複数のシリンダを備え、隣り合うシリンダ間には中間壁が備えられ、前記中間壁の内部には冷却水通路が備えられ、前記熱拡散層は、前記冷却水通路の周囲を覆う放熱部を備えることが望ましい。
この燃焼室構造によれば、熱拡散層は、断熱層から受け取った熱を、放熱部を通して冷却水通路内を流通する冷却水に放熱することができる。従って、過昇温し易いシリンダ間の中間壁を、適温に維持することが可能となる。
上記のエンジンの燃焼室構造において、前記シリンダブロックは、所定方向に並ぶ複数のシリンダを備え、隣り合うシリンダ間には中間壁が備えられ、前記熱拡散層は、前記中間壁の領域において、前記ブロック本体に対する前記当接部の接触面積が、前記中間壁以外の領域に比べて大きくなる形状を備えていることが望ましい。
この燃焼室構造によれば、シリンダ間の中間壁の領域において当接部の放熱能力を高めることができる。従って、過昇温し易いシリンダ間の中間壁を、適温に維持することが可能となる。
本発明によれば、冷却損失の低減を図りつつ、プリイグニッションの発生要因となるようなシリンダ内壁面の高温化を抑止できるエンジンの燃焼室構造を提供することができる。
図1は、本発明の実施形態に係るエンジンの燃焼室構造が適用されるエンジンを示す概略断面図である。 図2は、第1実施形態に係るシリンダブロックの上面図である。 図3(A)は、シリンダ内壁面に設けられる比較例のコート層を示す模式図、図3(B)は、比較例において発生し得るプリイグニッションの説明図である。 図4は、図2のIV−IV線断面図である。 図5は、図2の破線A部の拡大図である。 図6は、図4の破線B部の拡大図であって、図5のVI−VI線断面図である。 図7は、シリンダ内壁面におけるコート層の形成領域を示す断面図である。 図8は、図4のC部拡大図である。 図9(A)は、図4のD部拡大図、図9(B)は、図9(A)のIXB−IXB線断面図、図9(C)は、図9(A)のIXC−IXC線断面図である。 図10は、エンジンの燃焼室構造の構成部材に適用可能な材料を示す表形式の図である。 図11は、第2実施形態に係るシリンダブロックの上面図である。 図12は、図11のXII−XII線断面図である。 図13(A)は、図12の要部拡大断面図、図13(B)は、図13(A)のXIIIB−XIIIB線断面図、図13(C)は、図13(A)のXIIIC−XIIIC線断面図である。 図14は、第3実施形態に係るシリンダブロックの断面図である。
[エンジンの全体構成]
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係るエンジンの燃焼室構造を詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るエンジンの燃焼室構造が適用されるエンジンを示す概略断面図である。ここに示されるエンジンは、シリンダ及びピストンを含み、自動車等の車両の走行駆動用の動力源として前記車両に搭載される多気筒エンジンである。エンジンは、エンジン本体1と、これに組付けられた図外の吸排気マニホールド及び各種ポンプ等の補機とを含む。
本実施形態のエンジン本体1は、燃焼室内で燃料と空気との混合気に火花で点火する火花点火燃焼(SI燃焼)と、前記混合気を自着火させる予混合圧縮着火燃焼(HCCI燃焼)とを実行させることが可能なエンジンである。エンジン本体1に供給される燃料は、ガソリンを主成分とするものである。大略的に、エンジン本体1では、高負荷又は高回転の運転領域では火花点火燃焼が実行され、中・低負荷で中・低回転の運転領域では予混合圧縮着火燃焼が実行される。なお、本発明は、予混合圧縮着火燃焼を実行することができないエンジンの燃焼室にも適用が可能である。
エンジン本体1は、シリンダブロック3、シリンダヘッド4及びピストン5を備える。シリンダブロック3は、図1の紙面に垂直な方向に並ぶ複数のシリンダ2(図1ではそのうちの1つのみを示す)を有している。シリンダヘッド4は、シリンダブロック3の上面に取り付けられ、シリンダ2の上部開口を塞いでいる。ピストン5は、各シリンダ2に往復摺動可能に収容されており、コネクティングロッド8を介してクランク軸7と連結されている。ピストン5の往復運動に応じて、クランク軸7はその中心軸回りに回転する。ピストン5の冠面5Hには、シリンダ軸方向の下方に窪んだキャビティ5Cが形成されている。
ピストン5の上方には燃焼室6が形成されている。シリンダヘッド4には、燃焼室6と連通する吸気ポート9及び排気ポート10が形成されている。シリンダヘッド4の下面(燃焼室天井面6U)には、燃焼室6に対する開口として、吸気ポート9の下流端である吸気側開口部41と、排気ポート10の上流端である排気側開口部42とが形成されている。
シリンダヘッド4には、吸気側開口部41を開閉する吸気バルブ11と、排気側開口部42を開閉する排気バルブ12とが組み付けられている。本実施形態のエンジン本体1は、ダブルオーバーヘッドカムシャフト式(DOHC)エンジンであり、吸気側開口部41と排気側開口部42とは、各シリンダ2につき2つずつ設けられると共に、吸気バルブ11および排気バルブ12も2つずつ設けられる。
燃焼室6は、シリンダブロック3、シリンダヘッド4及びピストン5によって区画されている。より詳しくは、燃焼室6を区画している燃焼室壁面は、シリンダ2の内壁面、ピストン5の上面である冠面5H、シリンダヘッド4の下面である燃焼室天井面6U、吸気バルブ11及び排気バルブ12の各傘部からなる。
シリンダヘッド4には、吸気バルブ11、排気バルブ12を各々駆動する吸気側動弁機構13、排気側動弁機構14が配設されている。これら動弁機構13、14によりクランク軸7の回転に連動して、吸気バルブ11及び排気バルブ12の各軸部が駆動される。この駆動により、吸気バルブ11のバルブヘッドが吸気側開口部41を開閉し、排気バルブ12のバルブヘッドが排気側開口部42を開閉する。
吸気側動弁機構13には、吸気側可変バルブタイミング機構(吸気側S−VT)15が組み込まれている。吸気側S−VT15は、吸気カム軸に設けられた電動式のS−VTであり、クランク軸7に対する吸気カム軸の回転位相を所定の角度範囲内で連続的に変更することにより、吸気バルブ11の開閉タイミングを変更する。同様に、排気側動弁機構14には、排気側可変バルブタイミング機構(排気側S−VT)16が組み込まれている。排気側SV−T16は、排気カム軸に設けられた電動式のS−VTであり、クランク軸7に対する排気カム軸の回転位相を所定の角度範囲内で連続的に変更することにより、排気バルブ12の開閉タイミングを変更する。
シリンダヘッド4には、燃焼室6内の混合気に点火エネルギーを供給する点火プラグ17が各シリンダ2につき1つずつ取り付けられている。点火プラグ17は、その点火部が燃焼室天井面6Uの径方向中央付近において燃焼室6内に臨む姿勢で、シリンダヘッド4に取り付けられている。点火プラグ17は、図外の点火回路からの給電に応じてその先端から火花を放電して、燃焼室6内の混合気に点火する。本実施形態では点火プラグ17は、高負荷・高回転時に火花点火燃焼を実行させる際に使用される。また、予混合圧縮着火燃焼を実行させる際に、エンジンが冷間始動された直後のように自着火が困難な場合や、所定の負荷や速度条件の下で予混合圧縮着火燃焼を補助する場合(スパークアシスト)等に使用される。
シリンダヘッド4には、先端部から燃焼室6内にガソリンを主成分とする燃料を噴射するインジェクタ18が、各シリンダ2につき1つずつ取り付けられている。インジェクタ18は、燃焼室天井面6Uの径方向中央空間に配置されている。インジェクタ18には燃料供給管19が接続されている。インジェクタ18は、燃料供給管19を通じて供給された燃料をキャビティ5Cに向けて噴射する。燃料供給管19の上流側には、クランク軸7と連動連結されたプランジャー式のポンプ等からなる高圧燃料ポンプ(図示せず)が接続されている。
図2は、第1実施形態に係るシリンダブロック3の上面図である。図2及び以下のいくつかの図には、X、Y、Zの方向表示が付されている。X方向は、クランク軸7の延在方向、Y方向は吸気ポート9と排気ポート10とが対向する方向(図1の断面方向)、Z方向はシリンダ軸方向(上下方向)である。
シリンダブロック3は、X方向に並ぶ4つのシリンダ2(所定方向に並ぶ複数のシリンダ)を備えている。各シリンダ2には、ピストン5が摺動可能に収容される。シリンダブロック3は、円柱状のシリンダ2の空間を区画するシリンダ内周壁2Sを有するブロック本体30と、シリンダ内周壁2Sの上端領域を覆うコート層70とを含む。なお、コート層70の下方においてシリンダ内周壁2Sには、ライナー21(図6〜図9参照)が組み込まれている。
ブロック本体30は、シリンダ内周壁2Sを形成するための壁として、周囲壁31(中間壁以外の領域)及び中間壁32と含む。周囲壁31は、円筒型のシリンダ内周壁2Sの大半を形成する壁である。中間壁32は、いわゆるボア間壁であって、隣り合う2つのシリンダ2間に形成されている壁である。4つのシリンダ2のうち、中央の2つのシリンダ2は、X方向の一方と他方とに中間壁32を有し、残部が周囲壁31である。外側の2つのシリンダ2は、X方向の一方のみに中間壁32を有し、残部が周囲壁31である。
コート層70は、シリンダ内周壁2Sの上端領域、つまりライナー21が配置されない領域からの放熱(冷損)を抑止するために配置されている。このためコート層70は、燃焼室6内の燃焼ガスとの温度差を小さくするよう当該コート層70を保温する機能と、コート層70を過剰に高温化させないようにする放熱の機能とを有している。
[比較例の燃焼室構造]
本発明の実施形態に係る燃焼室構造の説明に先立ち、比較例に係る燃焼室構造について説明する。図3(A)は、比較例に係る燃焼室構造を模式図に示す断面図である。シリンダブロック3は、シリンダ内周壁2Sの上端領域に配置されたコート層700を備えている。コート層700は、シリンダ内周壁2Sにおいてピストン5の側周壁が摺接しない領域にコーティングされている。コート層700の下方のシリンダ内周壁2Sには、ライナー21が組み入れられている。
コート層700は、シリンダ内周壁2Sの上端領域の全周を覆うように形成された断熱層710と、断熱層710の上に形成された遮熱層720とからなる。遮熱層720は、耐熱性のシリコーン樹脂のような、シリンダブロック3の基材に対して熱伝導率が十分に小さいコーティング層からなる。断熱層710は、体積比熱の大きい部材からなり、蓄熱性を備える。燃焼室6内には、遮熱層720が露呈している。
図7に基づき後述するが、コート層700が配置されるシリンダ内周壁2Sの上端領域は、圧縮上死点のクランク角でもピストン5のトップリングが進入しない領域である。従って、当該上端領域は、燃焼室6と常時対向して燃焼ガスに曝される面となるため高温化する。このようなシリンダ内周壁2Sの前記上端領域では、シリンダブロック3の基材への熱伝達が増加するため、冷損を抑止する対策を施す必要がある。その対策として、コート層700が設けられている。
シリンダ内周壁2Sを覆っている遮熱層720は、熱伝導率が小さい層であり、燃焼室6の室内温度に依存して温度変化する。このため、燃焼室6の内の燃焼ガスの温度とシリンダ内周壁2Sの表面温度との間の温度差を小さくし、シリンダブロック3への熱伝達をある程度は遮断することができる。従って、冷損をある程度は低減できる。しかし、一般に遮熱層720は、体積比熱の小さい材料にて形成される薄層である。このため、遮熱層720は蓄熱機能に乏しく、完全にはシリンダブロック3への熱伝達を遮断することはできず、十分に冷損を低減することはできない。
そこで、遮熱層720の背面側に断熱層710が配置される。つまり、比較例では、シリンダ内周壁2Sの上端領域が、断熱層710と、その上の遮熱層720との2層によって覆われている。断熱層710は、遮熱層720を通過した熱を蓄熱する。このため、断熱層710は、シリンダ内周壁2Sの上端領域を覆う遮熱層720を加温(保温)する。従って、シリンダ内周壁2Sの上端領域の表面温度は高温化され、燃焼室6内の燃焼ガスとの温度差を小さくすることができる。換言すると、断熱層710が燃焼室6側からシリンダブロック3への熱伝達をブロックし、放熱が抑止される。これにより、冷損を相当程度低減することができる。
しかし、本発明者らの研究によれば、2層構造のコート層700では、次のような問題が有ることが判明した。燃焼室6内が比較的高温化しない場合、例えば、低負荷の運転領域においてリーンな混合気を用いた予混合圧縮着火燃焼が実行される場合、比較例のコート層700は有効に機能する。すなわち、断熱層710が適度な蓄熱温度を持ち、遮熱層720を適度に加温する。従って、シリンダ内周壁2Sの表面温度を、冷損の抑制に適した温度に至らせることができる。
これに対し、燃焼室6内が比較的高温化する場合には、高温を蓄熱した断熱層710が過剰に遮熱層720を加温する。エンジン本体1は、例えば、中負荷の運転領域ではリーンな混合気を用いた予混合圧縮着火燃焼を実行し、高負荷の運転領域ではλ=1の火花点火燃焼を実行する。中負荷・高負荷運転時には燃料噴射量が比較的多くなるため、燃焼室6内の燃焼ガスの温度が比較的高くなる。このため、シリンダ内周壁2Sも高熱を受けるようになり、断熱層710も高温の熱を蓄熱することになる。このような断熱層710によって遮熱層720が加温されることから、シリンダ内周壁2Sの表面温度は相当に高くなる。
図3(B)は、比較例のコート層700をシリンダ内周壁2Sの上端領域に施した燃焼室構造において中負荷・高負荷運転時に発生し得る現象を示す図である。断熱層710が高い熱を蓄熱し、その熱で遮熱層720が加温されると、シリンダ内周壁2S(遮熱層720)が高温を帯びるようになる。過剰な高温に加温されたシリンダ内周壁2Sは、矢印Hで示すように燃焼室6を加熱する熱を発生し、筒内温度を過剰に高くしてしまう。すると、吸気行程中において燃焼室6内に取り入れられた空気の温度が上昇し、圧縮行程でその加温された空気が圧縮されると、プリイグニッションPIGが発生する。つまり、本来の圧縮着火時期よりも早い時期に、混合気の一部に着火してしまう現象が生じる。この場合、エンジン本体1のトルク変動や出力低下等の不具合が生じることがある。
[本実施形態に係る燃焼室構造の例示]
本実施形態では、シリンダ内周壁2Sを通してシリンダブロック3のブロック本体30に逃げる冷損を低減しつつ、図3(B)に示したプリイグニッションPIGの発生を抑制することが可能な燃焼室構造を提供する。
<第1実施形態>
図4は、第1実施形態に係る燃焼室構造を示す図であって、図2のIV−IV線断面図である。図5は、図2の破線A部の拡大図である。図6は、図4の破線B部の拡大図であって、図5のVI−VI線断面図である。図2に示した通り、シリンダブロック3は、燃焼室6の一部を区画するシリンダ内周壁2Sを有するブロック本体30と、シリンダ内周壁2Sの上端領域を覆うように配置されたコート層70とを含む。
ブロック本体30は、隣り合うシリンダ2に位置する中間壁32と、個々のシリンダ2の中間壁31以外の壁面を形成する周囲壁31とを含む。4つのシリンダ2が配列されている部分の下方には、ロアブロック33が形成されている(図4)。図6に示されているように、中間壁32の内部には、Y方向に延びる冷却水通路34が備えられている。中間壁32は、隣接する2つのシリンダ2から熱を受けるため、高温化し易い壁である。このため、冷却水通路34には、エンジン本体1が具備するウォータージャケットの冷却水が流通され、中間壁32を冷却する。
図7は、シリンダ内壁面2Sにおけるコート層70の形成領域を示す断面図である。シリンダブロック3の上面とシリンダヘッド4の下面とは、ガスケット35を介して接合され、密閉された燃焼室6を形成している。コート層70は、シリンダ内壁面2Sの上端領域UAの、周方向の全長に亘って設けられている。図7には、上死点まで上昇したピストン5が示されている。
ピストン5の側周面5Eには、燃焼室6を密閉化するためのピストンリング51が保持されている。このピストンリング51は、ピストン5の最も高い位置に嵌め込まれるトップリングである。上端領域UAは、ピストン5が上死点に至ったとしても、ピストンリング51がシリンダ内壁面2Sに摺接しない領域である。この上端領域UAよりも下方に位置するシリンダ内壁面2Sには、円筒型のライナー21が嵌め込まれている。ピストンリング51は、ライナー21の内周面に対して摺動する。
コート層70は、比較例でも示した断熱層71及び遮熱層72と、比較例では具備されていない熱拡散層73とを備えている。遮熱層72は、シリンダ内壁面2Sの上端領域UAの全周を覆うように配置されている。遮熱層72は、コート層70において最も外側の層であり、燃焼室6に露呈している。断熱層71は、遮熱層72の背面側(シリンダ内周壁2S側)に配置され、同様に上端領域UAの全周に亘って配置されている。すなわち断熱層72は、シリンダ内壁面2Sにおける、遮熱層72で覆われる領域に配置されている。熱拡散層73は、断熱層71と遮熱層72との間に配置されている。すなわち、上端領域UAにおいて中間壁31及び周囲壁32は、断熱層71、遮熱層72及び熱拡散層73の三層で覆われている。
コート層70の構成部材間の熱伝導率の関係は次の通りである。断熱層71は、ブロック本体30よりも熱伝導率の小さい材料で形成されている。遮熱層72は、ブロック本体30及び断熱層71よりも熱伝導率の小さい材料で形成されている。熱拡散層73は、断熱層71及び遮熱層72よりも熱伝導率の大きい材料で形成されている。
断熱層71は、シリンダ2の径方向に所定の厚みを有し、シリンダ軸方向(Z方向)の平面視で、シリンダ2の周囲を取り囲むリング形状を有している。断熱層71の径方向の厚さは、例えば1mm〜6mmの範囲から選択することができる。なお、断熱層71のシリンダ軸方向の幅は、上述の上端領域UAの幅にもよるが、3mm〜10mm程度に設定することができる。
断熱層71としては、燃焼室6からシリンダブロック3を通して熱が逃げることを抑止(冷損を抑止)する観点からは、熱伝導率が可及的に小さいことが望ましく、少なくともブロック本体30よりも小さい熱伝導率を有する材料が用いられる。また、シリンダ内周壁2Sの上端領域UAを高温に維持するという観点からは、断熱層71は、可及的に大きい体積比熱を有していること、すなわち高い蓄熱性を有していることが望ましい。
遮熱層72は、片面が燃焼室6に露呈し、背面が熱拡散層73に保持される態様で、シリンダ内周壁2Sの上端領域UAの全周を覆うように配置されている。遮熱層72は、上端領域UAが受けた熱がブロック本体30を通して放熱されることを抑止するという観点から、ブロック本体30及び断熱層71よりも熱伝導率が小さく設定される。遮熱層72を設けることで、燃焼室6内で発生する燃焼ガスと上端領域UAとの温度差を小さくし、冷損を低減することができる。遮熱層72のシリンダ径方向の厚さは、例えば0.03mm〜0.25mmの範囲から選択することができる。
熱拡散層73は、その燃焼室6側の面が遮熱層72に接触すると共に、その反対面が断熱層71に接触するように、断熱層71と遮熱層72との間に配置されている。結果として熱拡散層73も、シリンダ内周壁2Sの上端領域UAの全周を覆うように配置されている。
熱拡散層73は、断熱層71が配置されたシリンダ内周壁2Sの上端領域UAが高温化しすぎないよう、断熱層71に蓄熱された熱をシリンダブロック3へ逃がす機能を持つ層である。断熱層71が保有する熱をシリンダブロック3へ直ちに伝達する観点から、熱拡散層73は熱伝導率が可及的に大きいことが望ましい。このため、熱拡散層73は、断熱層71及び遮熱層72よりも大きい熱伝導率を具備する層とされる。熱拡散層73のシリンダ径方向の厚さは、例えば1mm〜5mmの範囲から選択することができる。なお、熱拡散層73は、「熱伝導率/厚さ」で表される熱抵抗が可及的に小さい層であることが、熱拡散を良好とする点で望ましい。このため、熱拡散層73の厚さは、用いる材料の熱伝導率を考慮して設定される。
続いて、ブロック本体30の周囲壁31及び中間壁32におけるコート層70の断面形状について詳述する。図8は、図4のC部拡大図である。図9(A)は、図4のD部拡大図、図9(B)は、図9(A)のIXB−IXB線断面図、図9(C)は、図9(A)のIXC−IXC線断面図である。図8は、ブロック本体30の周囲壁31におけるコート層70の断面形状を示し、図9(A)は、中間壁32におけるコート層70の断面形状を示している。
図8を参照して、周囲壁31において熱拡散層73は、ブロック本体30に直接的に当接する当接部となる側端縁731及び延出部732を備えている。側端縁731は、熱拡散層73のシリンダ軸方向の下端縁である。延出部732は、断熱層71の下端縁よりもシリンダ軸方向の下側に延出した部分である。これら側端縁731及び延出部732は、断熱層71に阻まれることなく、直接的にブロック本体30に接触する部分となる。
熱拡散層73は、断熱層71に蓄えられすぎた熱を受け取り、この熱を側端縁731及び延出部732からブロック本体30へ放熱する。つまり、側端縁731及び延出部732が、放熱部として機能する。なお、延出部732を省いて断熱層71と同幅とし、側端縁731だけがブロック本体30に接触する部分としても良い。但し、延出部732を具備させる方が、熱拡散層73とブロック本体30との接触面積を大きくし、より断熱層71の熱をブロック本体30へ逃がし易くすることができるので好ましい。
遮熱層72の下端縁と断熱層71の下端縁とは、ほぼ同位置に存在している。つまり、三層構造のコート層70において、熱拡散層73の延出部732だけが下方に突出している。一方、断熱層71の上端縁と熱拡散層73の上端縁とは面一である。これに対し、遮熱層72の上端は、熱拡散層73の上端よりも上方へ突出すると共に、径方向外側へ僅かに延出して、熱拡散層73の上端面の一部に覆い被さっている。
図9(A)〜(C)を参照して、中間壁32におけるコート層70の態様は、周囲壁31とは異なっている。まず、断熱層71については、中間壁32において合流部711が形成されている。合流部711は、互いに隣接する2つのシリンダ2のうち、一方のシリンダ2に施与されている断熱層71と、他方のシリンダ2に施与されている断熱層71とが合流した部分である。もちろん、合流部711を設けることなく、隣接する2つのシリンダ2の各断熱層71が、中間壁32においても独立的に形成されていても良い。
次に、熱拡散層73は、中間壁32において受熱部733、放熱部734及び下端面735(当接部)を備えている。受熱部733は、隣接する2つのシリンダ2の各断熱層71と断熱層71(合流部711)との間に各々介在される部分である。放熱部734は、受熱部733の下端から下方に延出する部分である。放熱部734は、隣接する2つのシリンダ2の一方の熱拡散層73と、他方の熱拡散層73とが合流して一体化している部分でもある。
また、放熱部734は、中間壁32内を貫通する冷却水通路34の周囲を覆っている。図9(B)に示すように、冷却水通路34の入口部分及び出口部分は、中間壁32によって区画されているが、中間部分については熱拡散層73によって区画されている。これにより、熱拡散層73が保有する熱と冷却水通路34を流通する冷却水とが熱交換可能となっている。
下端面735は、中間壁32(ブロック本体30)と熱拡散層73とが直接的に当接する当接部となる部分である。下端面735は、上述の放熱部734の下端面であり、中間壁32と同じ径方向の幅を有している。下端面735は、中間壁32の上端面に接触している。従って熱拡散層73は、断熱層71から受け取った熱を、下端面735を介して中間壁32に放熱することが可能である。さらに、熱拡散層は73、受け取った熱を、放熱部734を通して冷却水通路34内を流通する冷却水に放熱することができる。従って、過昇温し易いシリンダ2間の中間壁32を、適温に維持することが可能となる。
以上の通りの3層構造のコート層70の動作を説明する。遮熱層72は、極めて熱伝導率が小さい層であり、燃焼室6の室内温度に依存して温度変化するため、シリンダ内周壁2Sの上端領域UAにおいて、燃焼室6の内の燃焼ガスからブロック本体30への熱伝達を相当程度は遮断することができる。これにより、冷熱損失を低減できる。但し、遮熱層72は完全には熱伝達を遮断することはできないので、ある程度は熱を通過させる。本実施形態では断熱層71が体積比熱の大きい部材からなるため、優れた蓄熱機能を発揮する。このため、遮熱層72を通過した熱や、周囲の熱が断熱層71に蓄熱される。
すると、熱を保有した断熱層71が、遮熱層72を加熱するようになる。従って、断熱層71が配置された上端領域UAを高温に維持することができる。しかし、上述の比較例で説明した通り、燃焼ガスの温度が比較的高い運転領域になると、断熱層71は高温の熱を蓄熱する。このため、遮熱層72を過剰に加熱し、プリイグニッションを惹起してしまう。この不具合を防止するため、断熱層71の熱を受け取らせるように、熱拡散層73が断熱層71及び遮熱層72との間に配置されている。熱拡散層73が断熱層71から受け取った熱は、周囲壁31においては側端縁731及び延出部732から周囲壁31(ブロック本体30)へ放熱される。また、中間壁32においては、放熱部734から冷却水通路34へ、及び下端面735から中間壁32へ、受け取った熱を放熱させることができる。従って、シリンダ内周壁2Sの上端領域UAが過剰に高温化せず、プリイグニッションの発生を未然に防止することができる。
続いて、燃焼室6の構成部材として好適に用いることができる材料例を示す。シリンダブロック3の基材及びシリンダヘッド4の基材としては、例えば、アルミニウム合金AC4B(熱伝導率=96W/mK、体積比熱=2667kJ/mK)などの金属製母材の鋳造品を用いることができる。また、ピストン5の基材については、アルミニウム合金AC8A(熱伝導率=125W/mK、体積比熱=2600kJ/mK)を用いることができる。
吸気バルブ11及び排気バルブ12の基材としては、耐熱性、耐摩耗性、耐腐食性に優れた耐熱鋼を用いることができる。例えば、吸気バルブ11の基材としては、クロム、シリコーン及び炭素をベースとしたマルテンサイト系の耐熱鋼SUH11(熱伝導率=25W/mK、体積比熱=3850kJ/mK)を用いることができる。また、排気バルブ12の基材としては、クロム、ニッケル及び炭素をベースとしたオーステナイト系の耐熱鋼SUH35(熱伝導率=18W/mK、体積比熱=3565kJ/mK)を用いることができる。
遮熱層72は、シリンダブロック3の構成部材(ブロック本体30、断熱層71、遮熱層72及び熱拡散層73)の中で、最も小さい熱伝導率及び体積比熱を有する材料が選ばれる。つまり、熱を拡散させ難く、熱を溜め込み難い層となるように、遮熱層72の構成材料が選ばれる。遮熱層72としての好ましい熱伝導率の範囲は、0.05〜1.50W/mK、好ましい体積比熱の範囲は500〜1500kJ/mK程度である。
上記の要件を満たす遮熱層72の材料としては、例えば耐熱性のシリコーン樹脂を例示することができる。シリコーン樹脂としては、メチルシリコーン樹脂、メチルフェニルシリコーン樹脂に代表される、分岐度の高い3次元ポリマからなるシリコーン樹脂を例示することができ、例えば、ポリアルキルフェニルシロキサンなどが好適である。このようなシリコーン樹脂に、シラスバルーンのような中空粒子が含まれていても良い。遮熱層72は、例えば断熱層71及び熱拡散層73が形成されたシリンダ内周壁2Sの上端領域UAに、上記のシリコーン樹脂にてコーティング処理を施すことによって形成することができる。
断熱層71は、熱を拡散させ難い一方で、熱を溜め込み易い層とされる。熱拡散の抑制のため、断熱層71は、遮熱層72よりも大きいものの、ブロック本体30よりも極めて小さい熱伝導率を持つ材料が選ばれる。また、良好な蓄熱性を具備させるため、断熱層71は、遮熱層72よりも大きい体積比熱及び熱抵抗を持つ材料が選ばれる。断熱層71としての好ましい熱伝導率の範囲は、0.2〜10W/mK、好ましい体積比熱の範囲は1800〜3500kJ/mK程度である。
上記の要件を満たす断熱層71の材料としては、例えばセラミックス材料を例示することができる。一般に、セラミックス材料は、熱伝導率が低い一方で体積比熱が大きく、また耐熱性にも優れるので、断熱層71として好適である。具体的に、好ましいセラミックス材料は、ジルコニア(熱伝導率=3W/mK、体積比熱=2576kJ/mK)である。この他、窒化ケイ素、シリカ、コージライト、ムライト等のセラミックス材料、或いは、ポーラスなSUS系材料やケイ酸カルシウム等も、断熱層71の形成材料として用いることができる。
熱拡散層73は、断熱層71に蓄熱された熱を延出部732等からブロック本体30へ逃がす役目を担うので、熱を拡散させ易い層とされる。このため熱拡散層73は、シリンダブロック3の構成部材の中で最も大きい熱伝導率を持つ層とされる。熱拡散層73として好ましい熱伝導率の範囲は、35〜600W/mK程度である。また、熱拡散層73は、熱抵抗が0.002〜0.06mK/Wの範囲となるように、厚さを設定することが望ましい。上記の要件を満たす熱拡散層73の材料としては、例えば銅系材料(熱伝導率=400W/mK、体積比熱=3500kJ/mK)や、コルソン合金、ベリリウム銅、繊維強化アルミ合金、チタンアルミ等を用いることができる。前記銅系材料を用いる場合、厚さを2mmに設定した場合でも、熱拡散層73の熱抵抗=0.005mK/Wに抑制できるので特に好ましい。
図10に、吸気バルブ11及び排気バルブ12の基材、シリンダブロック3、シリンダヘッド4及びピストン5の基材、断熱層71、遮熱層72及び熱拡散層73の好ましい材料選定例を示す。図10では、これらの材料の熱伝導率λ、体積比熱ρc、熱拡散率(λ/ρc)、Z方向厚さt、熱抵抗(t/λ)及び熱浸透率(√λρc)を示している。なお、熱拡散率の右側の小欄は、遮熱層72の熱拡散率を「1」とした場合の、各層の比率を示している。
<第2実施形態>
第2実施形態に係る燃焼室構造では、中間壁32において断熱層71が省かれる例を示す。図11は、第2実施形態に係るコート層70Aを備えたシリンダブロック3Aの上面図である。図12は、図11のXII−XII線断面図である。図13(A)は、図12に示す中間壁32の部分の拡大断面図、図13(B)は、図13(A)のXIIIB−XIIIB線断面図、図13(C)は、図13(A)のXIIIC−XIIIC線断面図である。
コート層70Aは、シリンダ内周壁2Sの上端領域UA(図7参照)の全周を覆うように配置された遮熱層72を含む。そして、遮熱層72の背面側(シリンダ内周壁2S側)には断熱層71が配置され、断熱層71と遮熱層72との間に熱拡散層73が配置されるという基本構成は、第1実施形態と同様である。また、周囲壁31におけるコート層70Aの構造は、先に図8で示した構造と同じであるので、ここでは説明を省略する。
中間壁32におけるコート層70Aの構造は、第1実施形態と異なる。中間壁32におけるコート層70Aは、断熱層71を具備していない。すなわち、シリンダブロック3Aは、シリンダ内周壁2Sの周方向において、中間壁32の領域には遮熱層72及び熱拡散層73の二層が配置され、中間壁32以外の領域である周囲壁31には、遮熱層72、断熱層71及び熱拡散層73の三層が配置されている構造を有している。
隣り合う2つのシリンダ2の各断熱層71は、第1実施形態のような合流部711を形成することなく、中間壁32の周方向の端部付近に端縁部を有する。つまり、隣り合う2つのシリンダ2が最も接近する位置及びその近傍には、断熱層71が設けられていない。従って、隣り合うシリンダ2の各遮熱層72が、熱拡散層73を挟んで対峙する態様となっている。
一方、熱拡散層73は、中間壁32において、隣り合う2つのシリンダ2の各熱拡散層73が一体化してなる合流部736を有している。また、第2実施形態の熱拡散層73は、第1実施形態の放熱部734のように、下方に延び出す部分を具備しない。合流部736の下端面737(当接部)は、中間壁32の上端面に当接すると共に、冷却水通路34にも当接している。つまり、冷却水通路34の一部を、下端面737が区画している。このため、下端面737は、熱拡散層73が受け取った熱を、中間壁32及び冷却水通路34内の冷却水に放熱することができる。
中間壁32は、隣り合う2つのシリンダ2から熱を与えられるため、本来的に高熱化する壁である。このような中間壁32の表面に配置される遮熱層72は、自ずと高温に維持される。従って、中間壁32の領域については断熱層71を設けず、遮熱層72及び熱拡散層73の二層コートとし、周囲壁31については断熱層71を含む三層コートとしたコート層70Aとすることで、シリンダブロック4の実際の熱分布に即した保温及び放熱機能を有する燃焼室構造を実現することができる。
<第3実施形態>
図14は、第3実施形態に係るコート層70Bを備えたシリンダブロック3Bの断面図である。コート層70Bの基本構造は、第2実施形態のコート層70Aと同じである。中間壁32には遮熱層72及び熱拡散層73の二層が配置され、周囲壁31には、遮熱層72、断熱層71及び熱拡散層73の三層が配置されている。
コート層70Bが第2実施形態のコート層70Aと相違する点は、中間壁32において熱拡散層73が、下方延長部738(当接部)を備えている点である。下方延長部738は、一方のシリンダ2側と他方のシリンダ2側との一対で配置され、合流部736の下端から相当の長さを持って下方に延び出した部分である。一対の下方延長部738は、冷却水通路34を挟むようにして下方に延びている。下方延長部738の片面はライナー21の背面と接しているが、他面は中間壁32と接しており、中間壁32に対する当接部を構成している。
下方延長部738が中間壁32の下方へ延出する度合いは、周囲壁31における延出部732よりもかなり大きい。このため、第3実施形態の熱拡散層73は、中間壁32の領域において、ブロック本体30に対する当接部(下方延長部738)の接触面積が、周囲壁31に比べて大きくなる形状を備えている。この燃焼室構造によれば、中間壁32の領域において当接部の放熱能力を高めることができる。従って、過昇温し易いシリンダ2間の中間壁32を、適温に維持することができる。
1 エンジン本体
2 シリンダ
3 シリンダブロック
30 ブロック本体
31 周囲壁(中間壁以外の領域)
32 中間壁
34 冷却水通路
4 シリンダヘッド
5 ピストン
51 ピストンリング
6 燃焼室
71 断熱層
72 遮熱層
73 熱拡散層
731 下端縁(当接部)
732 延出部(当接部)
734 放熱部
735、737 下端面(当接部)
738 下方延長部(当接部)
PIG プリイグニッション
UA 上端領域

Claims (6)

  1. シリンダブロック、シリンダヘッド及びピストンによって区画される燃焼室を備えるエンジンの燃焼室構造であって、
    前記シリンダブロックは、
    前記燃焼室に対向するシリンダ内壁面を有するブロック本体と、
    前記シリンダ内壁面のうち、少なくともピストンの側周面に保持されたピストンリングが摺接しない上端領域を覆う遮熱層と、
    前記シリンダ内壁面における、前記遮熱層で覆われる領域に配置される断熱層と、
    前記断熱層と前記遮熱層との間に配置される熱拡散層と、を含み、
    前記断熱層は熱伝導率が前記ブロック本体よりも小さく、前記遮熱層は熱伝導率が前記ブロック本体及び前記断熱層よりも小さく、前記熱拡散層は熱伝導率が前記断熱層及び前記遮熱層よりも大きく、
    前記熱拡散層は、前記ブロック本体に当接する当接部を備えている、
    エンジンの燃焼室構造。
  2. 請求項1に記載のエンジンの燃焼室構造において、
    前記熱拡散層は、前記断熱層よりもシリンダ軸方向に延出する延出部を備え、当該延出部が前記ブロック本体に当接する前記当接部である、エンジンの燃焼室構造。
  3. 請求項1又は2に記載のエンジンの燃焼室構造において、
    前記断熱層及び前記熱拡散層は、前記シリンダ内壁面の周方向の全長に亘って設けられている、エンジンの燃焼室構造。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のエンジンの燃焼室構造において、
    前記シリンダブロックは、所定方向に並ぶ複数のシリンダを備え、隣り合うシリンダ間には中間壁が備えられ、
    前記シリンダ内壁面の周方向において、前記中間壁の領域には、前記遮熱層及び前記熱拡散層の二層が配置され、前記中間壁以外の領域には、前記遮熱層、前記断熱層及び前記熱拡散層の三層が配置されている、エンジンの燃焼室構造。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のエンジンの燃焼室構造において、
    前記シリンダブロックは、所定方向に並ぶ複数のシリンダを備え、隣り合うシリンダ間には中間壁が備えられ、
    前記中間壁の内部には冷却水通路が備えられ、
    前記熱拡散層は、前記冷却水通路の周囲を覆う放熱部を備える、エンジンの燃焼室構造。
  6. 請求項3に記載のエンジンの燃焼室構造において、
    前記シリンダブロックは、所定方向に並ぶ複数のシリンダを備え、隣り合うシリンダ間には中間壁が備えられ、
    前記熱拡散層は、前記中間壁の領域において、前記ブロック本体に対する前記当接部の接触面積が、前記中間壁以外の領域に比べて大きくなる形状を備えている、エンジンの燃焼室構造。
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