JP2021162561A - 検出装置、測定装置及び測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】測定対象物の特性を検出する際に電極表面に生じる電気化学反応の影響を抑制する。【解決手段】複数の電極を用いて物質の特性を検出する検出装置としての電気化学センサ2は、測定対象物に交流信号を印加するための一対の印加電極21と、測定対象物に生じる応答信号を検出するための一対の検出電極22と、を含む。そして一対の印加電極21は、一対の検出電極22間に配置される。【選択図】図1
Description
本発明は、複数の電極を用いて物質の特性を検出する検出装置、測定装置及び測定方法に関する。
特許文献1には、二電極法による導電率測定として、被測定液に接触する二本の電極を配置し、これらの電極間に交流電源から交流の定電圧を印加したときに流れる電流を測ることにより導電率を測定する手法が開示されている。
上述のような二電極法では、二本の電極によって検出される応答信号には、測定対象物の特性に加え、二本の電極間に印加された交流信号によって電極表面に形成される電気二重層の成分が含まれてしまう。このため、二電極法では、電極表面に生じる電気化学反応が測定結果に影響を与えてしまうという問題がある。
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、測定対象物の特性を検出する際に電極表面に生じる電気化学反応の影響を抑制することを目的とする。
本発明のある態様によれば、複数の電極を用いて物質の電気化学反応を検出する検出装置は、測定対象物に交流信号を印加するための一対の印加電極と、前記測定対象物に生じる応答信号を検出するための一対の検出電極とを含む。前記一対の印加電極は、前記一対の検出電極間に配置される。
この態様によれば、一対の印加電極が一対の検出電極の間に配置されているので、検出電極から出力される信号には、印加電極の表面に生じる電気化学反応の信号成分が表れにくくなる。このため、検出電極の出力信号を用いて測定対象物の電気化学反応を検出する際に、電極表面に生じる電気化学反応の影響を抑制することができる。
以下、添付図面を参照しながら本発明の各実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態における測定装置1の基本構成を示す概念図である。
測定装置1は、複数の電極を用いて物質の特性を測定する装置であり、特に物質の電気化学反応を測定するための電気化学測定装置である。測定装置1は、少なくとも四つの電極を測定対象物に接触させた状態で測定対象物に対して交流電流又は交流電圧などの交流信号を印加するとともに、これに伴って測定対象物に生じる応答信号を検出することにより、測定対象物の電気化学反応を測定する。
測定装置1の測定対象物は、電気信号が印加されることによって電気化学反応が生じる物質であり、液体及び気体などの流体、固体、並びに、これらが混合された媒体などが測定対象物として含まれる。
本実施形態では、測定装置1は、測定対象物を収容する容器Xに満たされた液体Xaの電気化学反応を測定する。液体Xaとしては、例えば、一般的な導電率計で測定可能である液体、又は、液体に不溶性の固体物質を含む混合液などが挙げられる。この混合液の具体例としては、有機溶媒に固体物質を含有した電子部品の出発原料であるスラリーなどが挙げられる。
測定装置1は、測定対象物に接触させられる電気化学センサ2と、電気化学センサ2が無線又は有線を介して接続される測定部3と、を備える。電気化学センサ2及び測定部3は、一体として構成されてもよく、別体として構成されてもよい。
電気化学センサ2は、測定装置1のうち、測定対象物の特性を検出する検出部を構成する検出装置である。本実施形態の電気化学センサ2は、液体Xaの電気化学反応を検出するために用いられる電極プローブであり、可搬型でもよく、固定型であってもよい。本実施形態の電気化学センサ2は、ケーブル4を介して測定部3に電気的に接続されている。
電気化学センサ2は、測定回路20と、一対の印加電極21と、一対の検出電極22と、を備える。電気化学センサ2は、容器Xと共に一体として構成されてもよく、本実施形態のように別体として構成されてもよい。
測定回路20は、一対の印加電極21間の測定対象物に交流信号を印加して一対の検出電極22間の測定対象物に生じる応答信号を検出する。測定回路20は、一対の検出電極22間に生じる応答信号の周波数特性を測定するために、一対の印加電極21間に印加される交流信号の周波数を制御する。測定回路20は、応答信号を検出した値を示す検出信号を測定部3に出力する。
一対の印加電極21は、液体Xaに交流信号を印加するための二つの電極である。本実施形態では、一対の印加電極21のうち一方の電極を印加電極21aとし、他方の電極を印加電極21bとする。
一対の検出電極22は、液体Xaに交流信号が印加された状態において液体Xaに生じる応答信号を検出するための電極である。本実施形態では、一対の検出電極22のうち一方の電極を検出電極22aとし、他方の電極を検出電極22bとする。
電気化学センサ2において、一対の印加電極21及び一対の検出電極22は、検出電極22a、印加電極21a、印加電極21b、検出電極22bの順に配置されている。すなわち、一対の印加電極21は、一対の検出電極22の間に配置される。
また、電気化学センサ2において、一対の印加電極21及び一対の検出電極22の基端部及び底面の少なくとも一方は、同一平面上に並ぶように配置されている。すなわち、一対の印加電極21間の線分が一対の検出電極22間の線分に対して平行となる又は交差するように、一対の印加電極21及び一対の検出電極22が配置される。
例えば、一対の検出電極22間の線分と一対の印加電極21間の線分とが同一線上に重なるよう、一対の検出電極22間に一対の印加電極21の各電極が配置される。または、各電極が延在する延在方向(軸方向)に直交する面において、隣接する電極同士を結ぶ一本の線がジグザグとなるように各電極が配置されてもよい。このように、一対の印加電極21と一対の検出電極22とは基端部又は底面が同一平面上に並ぶように配置されることが好ましい。
あるいは、互いに平行な検出電極22間の線分と印加電極21間の線分との間隔が、検出電極22を介して液体Xaに生じる応答信号を検出できる所定の距離範囲内に収まるよう、一対の検出電極22間に一対の印加電極21が配置されてもよい。または、互いに交差する検出電極22間の線分と印加電極21間の線分との成す角が、液体Xaの応答信号を検出電極22にて検出できる所定の角度範囲内に収まるよう、一対の検出電極22間に一対の印加電極21が配置されてもよい。
測定部3は、電気化学センサ2から出力される検出信号に基づいて、液体Xaの電気化学反応を示すインピーダンス又はアドミッタンスを測定するための測定装置本体である。すなわち、測定部3は、測定対象物の電気化学反応を測定する。
さらに測定部3は、インピーダンス又はアドミッタンスの測定結果を用いて、液体Xaの種類又は状態を判定してもよい。例えば、測定部3は、液体Xaの導電率及び誘電率などの物性値、液体Xaの濃度、液体Xaの劣化度、又は、液体Xaに含まれる粒子の分散度などを演算する。このように、測定部3は、液体Xaの電気化学反応の結果を用いて液体Xaの特性を測定する。
本実施形態における測定部3は、記憶部31と、操作部32と、表示部33と、処理部34と、を備える。
記憶部31は、RAM及びROMによって構成される。記憶部31には、処理部34の動作を制御するためのプログラムが記憶されている。すなわち、記憶部31は、本実施形態における測定装置1の機能を実現するためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。
操作部32は、液体Xaの測定条件、測定の開始又は停止、及び、測定結果の表示などを指示する各種の操作スイッチを備える。操作部32は、これらの操作に応じて指示内容を示す操作信号を生成し、生成した操作信号を処理部34に出力する。
表示部33は、例えば液晶ディスプレイなどの表示装置によって構成される。表示部33は、処理部34からの指示に従って、測定条件の設定内容又は測定結果などを表示する。
処理部34は、プロセッサ、入出力インターフェース、及び、これらを相互に接続するバスによって構成される。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)又はDSP(digital signal processor)などである。処理部34は、記憶部31からプログラムを読み出してCPUに実行させることにより、入出力インターフェースを介して測定装置1を総括的に制御する。
処理部34は、操作部32から液体Xaの測定開始を指示する操作信号を受け付けると、その操作信号に従って、液体Xaの電気化学反応を測定するための測定処理を実行する。
上述の測定処理では、処理部34が、液体Xaに交流信号を印加するための制御信号を電気化学センサ2に送信することによって電気化学センサ2の動作を制御するとともに、電気化学センサ2から検出信号を取得してその検出信号を記憶部31に記録する。そして処理部34は、記憶部31に記録された検出信号を解析することにより一又は複数の周波数での液体Xaのインピーダンス又はアドミッタンスを測定する。
例えば、液体Xaのインピーダンスの周波数特性を測定する場合、処理部34は、電気化学センサ2から液体Xaに印加される交流信号の周波数を変更しながら電気化学センサ2から交流信号の周波数ごとに検出信号を取得する。そして処理部34は、交流信号の周波数ごとに、交流信号の指令値又は検出値と応答信号の検出値とに基づいて液体Xaのインピーダンスを演算する。処理部34は、演算した各周波数のインピーダンスを実部及び虚部に分解して、例えばナイキスト線図又はボード線図を生成する。
本実施形態では、処理部34は、測定したインピーダンスの結果に基づいて液体Xaの種類を特定する。この場合、記憶部31には、同じような環境下であらかじめ測定された液体Xaのインピーダンスを示す既知情報が液体Xaの種類ごとに記憶されている。そして処理部34が、インピーダンスの測定結果を取得すると、記憶部31を参照して、取得した測定結果に対応する液体Xaの種類を算出する。
あるいは、液体Xaの物性値と液体Xaの参照情報とが互いに対応付けられた物性テーブルを記憶部31にあらかじめ記憶しておき、処理部34が、物性テーブルを参照して、インピーダンスの測定結果に対応する液体Xaの物性値を算出してもよい。または、インピーダンスの測定結果から液体Xaの物性値を演算する演算式を記憶部31にあらかじめ記憶しておき、処理部34が、記憶部31から読み出した演算式を用いて、インピーダンスの測定結果から液体Xaの物性値を算出してもよい。
次に、図2を参照して、電気化学センサ2の回路構成について説明する。
図2は、電気化学センサ2に備えられた測定回路20の構成例を示す回路図である。測定回路20は、スイッチ200a,200bと、電気信号印加部210と、印加信号検出部211と、応答信号検出部220とを備える。
スイッチ200a,200bは、図1に示した処理部34からの指示に従って、測定対象物の測定手法を「四電極法」と「二電極法」との間で切り替えるための接続切替器である。
例えば、スイッチ200a,200bは、処理部34から「四電極法」を指示する制御信号を受信すると、一対の印加電極21間の外側に配置された一対の検出電極22を応答信号検出部220に接続する。一方、スイッチ200a,200bは、処理部34から「二電極法」を指示する制御信号を受信すると、一対の検出電極22間の内側に配置された一対の印加電極21を応答信号検出部220に接続する。
本実施形態では、スイッチ200a,200bは、「四電極法」を用いて液体Xaの電気化学反応を検出するために、一対の検出電極22を応答信号検出部220に接続している。具体的には、応答信号検出部220のうち、第一入力端子が一方の検出電極22aに接続され、第二入力端子が他方の検出電極22bに接続されている。
電気信号印加部210は、図1に示した処理部34からケーブル4介して測定対象物に交流信号を印加するための制御信号を受信する。そして電気信号印加部210は、受信した制御信号によって指定された周波数の交流信号を、指定された振幅で発生させる。電気信号印加部210は、例えば交流の電圧又は電流を発生させることにより、一対の印加電極21間に交流信号を印加する。
例えば、電気信号印加部210は、所定の周波数の交流電流を発生させる発振回路を備える交流源によって構成され、他方の印加電極21bが接地された状態で交流源から一方の印加電極21aに交流電流が供給される。交流電流の振幅は、例えば0.2[μA]に設定される。
本実施形態では、電気信号印加部210は、処理部34から上述の制御信号を受信すると、図1に示した液体Xaにおいて一方の印加電極21aから他方の印加電極21bに向かって交流電流を印加する。これにより、次のような現象が生じているものと推察される。その詳細は明らかではないが、一対の検出電極22間に配置された一対の印加電極21間に交流電流が印加されることにより、液体Xaにおいて印加電極21aに供給される交流電流の振動に追随するように印加電極21a周辺の電位が変動する。これに伴い、印加電極21aから検出電極22aの方向にも交流電流が流れるため、検出電極22aと検出電極22bとの電位差も交流電流の振動に追随するように変動するという現象を発明者は知見した。
一対の印加電極21から液体Xaに印加される交流電流の周波数は、液体Xaのインピーダンス又はアドミッタンスを示す実験データ、理論データ、若しくはシミュレーション結果などに基づいてあらかじめ定められる。例えば、交流電流の周波数は1kHzに設定される。
また、液体Xaのインピーダンス又はアドミッタンスの周波数特性を測定する場合は、電気信号印加部210は、処理部34からの指示に従って、数[Hz]から数百万[Hz]までの所定の周波数範囲で交流電流の周波数を掃引する。例えば、所定の周波数範囲は、交流電流の周波数が1[Hz]から1[MHz]までの範囲に設定される。
印加信号検出部211は、電気信号印加部210から出力される交流の電流又は電圧などの交流信号を検出する。印加信号検出部211は、検出した交流信号の大きさを示す印加検出信号を、ケーブル4を介して図1に示した処理部34に送信する。印加信号検出部211は、例えば電流センサによって構成され、印加電極21aに接続される配線上に配置される。
応答信号検出部220は、電気信号印加部210により一対の印加電極21間の液体Xaに交流信号が印加されることによって一対の検出電極22間の液体Xaに生じる応答信号を検出する。印加信号検出部211は、例えば電圧センサなどによって構成され、一方の検出電極22aと他方の検出電極22bとの間に接続される。
本実施形態では、応答信号検出部220は、検出電極22aと検出電極22bとの間の液体Xaに生じる交流の電位差、すなわち交流電圧を応答信号として検出する。印加信号検出部211は、検出した交流電圧の大きさを示す応答検出信号を、ケーブル4を介して処理部34に送信する。
処理部34は、測定回路20から、交流信号の一又は複数の周波数についての印加検出信号及び応答検出信号を受信すると、受信した印加検出信号及び応答検出信号を用いて一又は複数の周波数でのインピーダンス又はアドミッタンスを演算する。
このように、本実施形態の電気化学センサ2では、一対の印加電極21が電気信号印加部210に接続されるとともに、一対の印加電極21の外側に配置された一対の検出電極22が応答信号検出部220に接続される。これにより、測定回路20は、一対の検出電極22間に配置された一対の印加電極21を用いて測定対象物に交流信号を印加し、これによって測定対象物に生じる応答信号を、一対の検出電極22を用いて検出することができる。
これに対し、二電極法では、一対の印加電極21から測定対象物に交流信号が印加されるとともに、測定対象物に生じる応答信号についても一対の印加電極21から検出される。そのため、印加電極21から測定回路20に出力される信号には、印加電極21の電極表面に形成される電気二重層に起因する信号成分が含まれてしまう。
この対策として、本実施形態の電気化学センサ2においては、一対の検出電極22の間に一対の印加電極21が配置されている。これにより、交流信号が供給される印加電極21のうち測定対象物が接触する電極表面には、電気化学反応によって電気二重層が形成されるものの、検出電極22には交流信号が供給されないため、検出電極22の電極表面には電気二重層は形成されない。
これに加え、検出電極22は、表面に電気二重層が形成される印加電極21から離間して配置されていることから、印加電極21近傍の電気二重層が検出電極22間の応答信号に与える影響を抑えることができる。それゆえ、検出電極22から応答信号検出部220に伝達される信号においては、印加電極21の電極表面に形成される電気二重層の信号成分を抑制することができる。
なお、本実施形態では印加信号検出部211を用いることにより液体Xaのインピーダンスを演算する際に必要となる交流信号の検出値を取得したが、処理部34から電気信号印加部210への制御信号に示される交流信号の振幅指令値を用いてもよい。あるいは、交流信号の振幅が一定である場合には、あらかじめ実測した値を用いてもよい。このような場合には、測定回路20における印加信号検出部211を省略することができる。
次に、第1実施形態によって奏する作用効果について説明する。
本実施形態では、測定対象物としての液体Xaの特性を検出するための検出装置を構成する電気化学センサ2は、液体Xaに交流信号を印加するための一対の印加電極21と、液体Xaに生じる応答信号を検出するための一対の検出電極22とを含む。そして一対の印加電極21は、一対の検出電極22間に配置される。
この構成によれば、一対の印加電極21が一対の検出電極22間に配置されているので、検出電極22から出力される信号には、印加電極21の電極表面での電気化学反応に起因する信号成分が表れにくくなる。このため、測定対象物の電気化学反応を検出する際に、電極表面に生じる電気化学反応、特に電気二重層の影響を抑制することができる。
また、本実施形態では、測定装置1は、電気化学センサ2を用いて物質の電気化学反応を測定する。これにより、液体Xaへの交流信号の印加に伴う電極表面の電気二重層の影響が測定結果に表われにくくなる。それゆえ、測定装置1は、液体Xaの電気化学反応を精度よく測定することができる。
また、本実施形態の電気化学センサ2では、一対の検出電極22間に一対の印加電極21が配置される際に、一対の印加電極21と一対の検出電極22との各基端部は、同一直線上に並べて配置される。
この構成によれば、印加電極21間の線分と検出電極22間の線分とが互いに交差するように印加電極21及び検出電極22を配置した場合に比べて、一対の印加電極21によって生じる液体Xaの電気化学反応が検出電極22の双方に伝わりやすくなる。それゆえ、検出電極22からの出力信号における信号対雑音比(signal-to-noise ratio)が向上する。
また、本実施形態では、測定装置1は、電気化学センサ2の検出電極22から出力される信号に基づいて液体Xaのインピーダンス又はアドミッタンスを測定する測定手段として測定部3をさらに含む。この構成によれば、検出電極22の出力信号は印加電極21表面の電気二重層の信号成分が抑えられているので、液体Xaに交流信号を印加した印加電極21から液体Xaの応答信号を検出するような二電極法に比べて、測定結果の誤差を小さくすることができる。
また、本実施形態では、測定部3は、測定した液体Xaのインピーダンス又はアドミッタンスに基づいて液体Xaの電気特性を演算する。これにより、二電極法のように印加電極21表面の電気二重層の影響を取り除くための補正処理を行う必要性が低くなるので、簡易な処理により、液体Xaの導電率、誘電率及び静電容量などの電気特性を測定することができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態における電気化学センサの構成について図3及び図4を参照して説明する。
次に、第2実施形態における電気化学センサの構成について図3及び図4を参照して説明する。
図3は、第2実施形態における電気化学センサ2Aの構成を示す図である。図4は、図3のIV−IV線に沿う断面図である。
本実施形態では、測定対象物を収容する容器200が電気化学センサ2Aに備えられており、この点において電気化学センサ2Aは、図1に示した電気化学センサ2の構成とは異なる。また、電気化学センサ2Aは、第1実施形態と同様、図2に示した測定回路20と一対の印加電極21と一対の検出電極22とを備えている。
図3には、容器200の具体的な形状が斜視図によって例示されている。以下では、容器200の長手方向をX方向とし、容器200に配置される印加電極21及び検出電極22の各電極の延在方向をY方向とし、X方向及びY方向の双方に直交する方向をZ方向とする。
図3に示す例では、容器200は筒状に形成されている。この形状に代えて容器200は、例えば、楕円柱状、多角柱状、椀状、又は球状であってもよい。
容器200の空間201は、図4に示すように一方の印加電極21aと他方の印加電極21bとの間に形成される電流経路に沿って形成されている。また、空間201の中心軸Cに直交する断面は、一対の印加電極21間に形成される電流経路が中心軸Cから径方向に拡大するのを抑えるように狭く設計されている。
このような構成により、容器200よりも大きな空間を有する容器に測定対象物を収容した場合に比べて、一対の印加電極21間の測定対象物に生じる電位分布の変化が大きくなるので、一対の検出電極22の出力信号についての信号対雑音比が向上する。このように、容器200は、一対の印加電極21及び検出電極22の各電極の配列方向に対して長尺状に形成されるのが好ましい。
容器200を構成する材料としては、測定対象物に対して耐腐食性に優れた材料を用いることが好ましい。測定対象物が純水である場合は、容器200の材料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン若しくはポリスチレンなどの合成樹脂、又は金属などが用いられる。
また、印加電極21及び検出電極22の各電極は、図3及び図4に示すように、同一の棒状に形成されている。この形状に代えて各電極は、例えば、楕円状、多角柱状、板状、又は格子状であってもよい。あるいは、各電極は、外周が絶縁層で包まれており、そのうちの一部のみ、例えば容器200のX方向の中心軸Cに対して直交する特定の部分のみが測定対象物と接触するように露出したものであってもよい。また、各電極は、互いに異なる形状でもよく、あるいは、少なくとも一対の電極同士が同一形状であってもよい。
印加電極21及び検出電極22を構成する電極材料としては、測定対象物に対して耐腐食性に優れた材料を用いることが好ましい。電極材料としては、例えば、白金、プラチナ、ステンレス、金メッキ、又はニッケルメッキなどが挙げられる。
容器200には、第1実施形態と同様、一対の検出電極22間に一対の印加電極21が配置されており、これらは、検出電極22b、印加電極21a、印加電極21b、検出電極22bの順に等間隔で配列されている。
一対の印加電極21と一対の検出電極22とは、容器200の長手方向に対して直交する方向に延在する。図3及び図4に示す例では、一対の印加電極21と一対の検出電極22との各電極は、X方向に対して直交する面のうち、それぞれ同一のY方向に延在する。また、一対の印加電極21と一対の検出電極22との各電極の基端部及び底面は、同一線上に並べて配置されている。
このように、各電極は等間隔で平行に配列されているので、各電極をバラバラに配置した場合に比べて、一対の印加電極21間の電流経路に生じる測定対象物の応答信号をバランスよく検出することが可能となる。
容器200の寸法については、例えば、Y方向の外径D及び内径Diがそれぞれ10[mm]及び8[mm]であり、X方向の長さLが25[mm]である。印加電極21及び検出電極22の各々の寸法については、例えば、X方向の直径dが1[mm]であり、Y方向の長さが25[mm]である。また、印加電極21及び検出電極22のうち互いに隣接する電極の間隔Sは、5[mm]である。この容器200の寸法及び電極間隔は一例に過ぎず、これに限られるものではない。
なお、本実施形態の電気化学センサ2Aにおいて一対の印加電極21は一対の検出電極22間の線分と一対の印加電極21間の線分とが互いに重なるように配置されたが、これに限られるものではない。例えば、一対の検出電極22間の線分と一対の印加電極21間の線分とが互い交差するように一対の印加電極21が配置されてもよい。
あるいは、一対の検出電極22間の線分と一対の印加電極21間の線分とが重ならないように一対の印加電極21が配置されてもよい。例えば、一対の印加電極21は、一対の印加電極21の中間点を基準とし、中間点から一対の検出電極22間の線分までの最短距離が一方の印加電極21からその中間点までの距離よりも短くなるように配置されてもよい。すなわち、互いに平行する検出電極22間の線分と印加電極21間の線分との間の距離が、印加電極21間の線分の半分の長さよりも短くなるように一対の印加電極21が配置されてもよい。この場合、測定対象物の電気化学反応を検出する精度が低下することを抑制することができる。
次に、電気化学センサ2Aを用いて測定対象物の電気化学反応を測定した結果の一例について図面を参照して説明する。この例では、電気化学センサ2Aは、容器200の測定対象物に交流信号を印加しつつ、交流信号の周波数を変更するたびに測定対象物に生じる応答信号を検出する。また、測定対象物としては純水が用いられている。
まず、図5A及び図5Bを参照して、本実施形態の電気化学センサ2Aによる四電極法での測定結果について説明する。
図5Aは、四電極法を用いて純水の電気化学反応を測定した際の電気化学センサ2Aの接続構成を示す図である。
電気化学センサ2Aは、図2に示した測定回路20に対応する測定回路20Aを備えている。測定回路20Aは、交流電流を発生させる交流源210aと、交流源210aから出力された交流電流を検出する電流センサ211aと、交流電圧を検出する電圧センサ220aと、を備えている。
交流源210a、電流センサ211a及び電圧センサ220aは、それぞれ、図2に示した電気信号印加部210、印加信号検出部211及び応答信号検出部220に対応する。交流源210aから一対の印加電極21に供給される交流電流の振幅は0.2[μA]であり、交流信号の周波数は下限値である1[Hz]から上限値である1[MHz]まで徐々に変更される。
図5Aでは、図1に示した処理部34から「四電極法」を指示する制御信号が測定回路20Aに送信され、電圧センサ220aには、図2に示したスイッチ200a及び200bによって一対の検出電極22が接続されている。
図5Bは、図5Aに示した電気化学センサ2Aから出力される検出信号に基づいて作成されたナイキスト線図を示す図である。図5Bの横軸はインピーダンスの実部であり、縦軸はインピーダンスの虚部である。図5Bに示すように、純水の電気的特性を示す典型的な半円が描かれている。
続いて、図5A及び図5Bを参照して、本実施形態の電気化学センサ2Aによる二電極法での測定結果について説明する。
図6Aは、二電極法を用いて純水の電気化学反応を測定した際の電気化学センサ2Aの接続構成を示す図である。
図6Aでは、図1に示した処理部34から「二電極法」を指示する制御信号が測定回路20Aに送信され、電圧センサ220aには、図2に示したスイッチ200a及び200bによって一対の印加電極21が接続されている。その他の構成については、図5Aに示した構成と同じである。
図6Bは、図6Aに示した電気化学センサ2Aから出力される検出信号に基づいて作成されたナイキスト線図を示す図である。図6Bには、図5Bに示したように純水の電気特性を示す半円が描けれている。これに加え、印加電極21に形成される電気二重層を示す曲線が半円の右側(高域側)に描かれている。
このように、二電極法では、図6Bに示したように、半円の右側に曲線が描かれていることから、印加電極21の表面に形成される電気二重層の信号成分が電気化学センサ2Aの検出信号に含まれていると考えられる。これに対し、本実施形態の四電極法では、図5Bに示したように、図6Bに描かれた曲線が描かれていないため、印加電極21の表面に形成される電気二重層の成分が電気化学センサ2Aの検出信号にはほとんど含まれていない。
したがって、本実施形態のように一対の印加電極21が一対の検出電極22の間に配置されることにより、測定対象物の電気化学反応の検出において、印加電極21の表面に生じる電気化学反応が与える影響を抑制することができる。
ここで、図5B及び図6Bに示した測定結果の比較例として、一対の印加電極の間に一対の検出電極を配置した一般的な電気化学センサによる四電極法での測定結果について図7A及び図7Bを参照して説明する。
図7Aは、一般的な四電極法を用いて純水の電気化学反応を測定したときの電気化学センサ9の接続構成を示す図である。
図7Aでは、一対の印加電極91が交流源210aに接続され、一対の印加電極91の間に配置された一対の検出電極92が電圧センサ220aに接続されている。そして電流センサ211aが印加電極91の一方と交流源210aとの間に接続されている。
図7Bは、図7Aに示した電気化学センサ9の検出信号に基づいて作成されたナイキスト線図を示す図である。図7Bに示すように、図5B及び図6Bに示された半円が描かれることなく、半円とは別の大きな円が描かれている。これは、一対の検出電極92間の応答信号よりも外乱の影響を強く受けたものと考えられる。
このように、一対の印加電極91間に一対の検出電極92を配置した電気化学センサ9を用いて純水を測定した場合は、測定対象物の特性を正しく測定することが困難であることがわかる。
以上のことから、印加電極21の表面に生じる電気化学反応の影響を抑制しつつ測定対象物の電気化学反応を測定するには、一対の検出電極22の間に一対の印加電極21を配置することが重要であることを発明者は知見した。
このような理由から、上記実施形態の電気化学センサ2,2Aにおいては、測定対象物に交流信号を印加するための一対の印加電極21が、測定対象物に生じる応答信号を検出するための一対の検出電極22の間に配置されている。
次に、第2実施形態によって奏する作用効果について説明する。
本実施形態では、測定装置1の検出部を構成する電気化学センサ2Aは、測定対象物を収容する容器200をさらに含み、容器200に一対の印加電極21と一対の検出電極22とが配置される。容器200を備えることにより、一方の検出電極22aと他方の検出電極22bとの間を流れる交流信号の流路断面が広がり過ぎるのを抑制することが可能になる。それゆえ、一対の検出電極からの出力信号について信号対雑音比を向上させることができる。
また、本実施形態では、容器200は、長尺状であり、一対の印加電極21と一対の検出電極22とは、容器200の長手方向(延在方向)に対して直交する方向にそれぞれ延在する。このように、各電極が互いに平行に配列されることにより、一対の検出電極22間における長手方向の電流経路の歪が抑えられるので、電気化学反応の検出精度を高めることができる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態における測定対象物の電気化学反応を測定する手法について図8及び図9を参照して説明する。本実施形態における測定装置の構成は、図1及び図2に示した第1実施形態における測定装置1の構成と同じである。以下では、第1実施形態と同じ構成については第1実施形態と同一符号を付して本実施形態の構成を説明する。
次に、第3実施形態における測定対象物の電気化学反応を測定する手法について図8及び図9を参照して説明する。本実施形態における測定装置の構成は、図1及び図2に示した第1実施形態における測定装置1の構成と同じである。以下では、第1実施形態と同じ構成については第1実施形態と同一符号を付して本実施形態の構成を説明する。
図8は、第3実施形態における処理部34による測定方法の処理手順例を示すフローチャートである。
ステップS1において処理部34は、操作部32から測定開始を示す操作信号を受け付けると、測定装置1に適用可能な四電極法及び二電極法の中から四電極法を選択し、選択した四電極法を測定装置1の測定方法として設定する。具体的には、処理部34は、四電極法を指示する制御信号を電気化学センサ2の測定回路20に送信する。これにより、測定回路20のスイッチ200a,200bは、一対の検出電極22を応答信号検出部220に接続する。
ステップS10において処理部34は、電気化学センサ2から出力される検出信号に基づいて測定対象物のインピーダンスを測定するためのインピーダンス測定処理を実行する。この処理を実行することにより、処理部34は、検出電極22から出力される信号に基づいて測定対象物のインピーダンスの周波数特性を示す第一測定データを生成する。このインピーダンス測定処理の詳細については図9を参照して後述する。四電極法でのインピーダンス測定処理が終了すると、処理部34はステップS2の処理に進む。
ステップS2において処理部34は、測定装置1の測定方法を二電極法に設定する。具体的には、処理部34は、二電極法を指示する制御信号を新たに電気化学センサ2の測定回路20に送信する。これにより、測定回路20のスイッチ200a,200bは、応答信号検出部220に接続すべき一対の電極を、一対の検出電極22から一対の印加電極21に切り替える。
ステップS20において処理部34は、電気化学センサ2から出力される検出信号に基づいて測定対象物のインピーダンスを測定するためのインピーダンス測定処理を実行する。この処理を実行することにより、処理部34は、印加電極21から交流信号が測定対象物に印加された状態で印加電極21から出力される信号に基づいて測定対象物のインピーダンスの周波数特性を示す第二測定データを生成する。ステップS20のインピーダンス測定処理の詳細についても図9を参照して後述する。二電極法でのインピーダンス測定処理が終了すると、処理部34はステップS3の処理に進む。
ステップS3において処理部34は、ステップS10で生成された第一測定データとステップS20で生成された第二測定データとに基づいて、印加電極21の電極表面に形成された電気二重層のインピーダンス成分を特定する。このように、処理部34は、四電極法での測定データと二電極法での測定データとを用いて印加電極21表面に生じる電気化学反応に起因する電極表面の測定成分を特定する。
具体例として、処理部34は、図6Bに示された各周波数のインピーダンスの実部及び虚部を示す二電極法での測定データの中から、図5Bに示された四電極法での測定データに相当するデータを、測定対象物の特性を示す測定対象物データとして特定する。そして処理部34は、二電極法での測定データの中から、特定した測定対象物データを除いた部分のデータを、電極表面の特性を示す電極表面データとして抽出する。
ステップS4において処理部34は、特定した電極表面の測定成分に基づいて測定対象物の電気化学反応を演算する。
具体例として、処理部34は、ステップS20で生成された二電極法での測定データの中から電極表面データを除いた測定対象物データを抽出し、測定対象物データを用いて測定対象物の導電率又は誘電率などの物性値を演算する。これに代えて処理部34は、二電極法での測定対象物データと四電極法での測定データとを用いて両者の平均値又は中央値などの代表値を示す代表データを算出し、代表データに基づいて測定対象物の物性値を演算してもよい。
このように本実施形態では、ステップS1及びS10の処理の実行後にステップS2及びS20の処理を実行する。これにより、四電極法でのインピーダンス測定処理の実行中は、印加電極21の電極表面に生じる電気化学反応の影響が、二電極法でのインピーダンス測定処理の実行時に比べて小さくなるので、電極表面の電気化学反応の影響を精度よく特定することができる。
続いて、ステップS10,S20での処理部34の動作の一例について図9を参照して説明する。
図9は、ステップS10,S20で実行されるインピーダンス測定処理の処理手順例を示すフローチャートである。この例では、測定対象物におけるインピーダンスの周波数特性を測定するための処理手順が示されている。
ステップS11において処理部34は、測定対象物に印加される交流信号の周波数を所定の値に設定する。本実施形態では、処理部34は、交流信号の周波数が段階的に高くなるように交流信号の周波数を変更する。交流信号に関する周波数の初期値は、測定対象物の特性が表われる所定の周波数範囲の下限値であって例えば1[Hz]である。具体例として処理部34は、交流信号について1[Hz]の測定周波数と0.2[μA]の振幅とを示す制御信号を電気化学センサ2に供給する。
ステップS12において処理部34は、電気化学センサ2の電気信号印加部210を用いて測定対象物に交流信号を印加する。本実施形態では、始めに1[Hz]の交流電流が電気信号印加部210から印加電極21を介して測定対象物に印加される。これに伴って印加電極21から測定対象物に応答信号が発生する。このとき、印加信号検出部211は、電気信号印加部210から印加電極21aに供給される交流信号の振幅を検出し、検出した値を処理部34に出力する。
ステップS13において処理部34は、電気化学センサ2の応答信号検出部220を用いて測定対象物に生じる応答信号を検出する。応答信号検出部220は、二電極法が指示された場合には、一対の印加電極21間の電圧を検出し、四電極法が指示された場合には、一対の検出電極22間の電圧を検出する。応答信号検出部220は、応答信号を検出した値を処理部34に出力する。
ステップS14において処理部34は、測定対象物の電気化学反応を測定するために、ステップS12で測定対象物に印加される交流信号の検出値と、ステップS13で取得される応答信号の検出値とに基づいて測定対象物のインピーダンスを演算する。例えば、処理部34は、ボード線図又はナイキスト線図を作成するために、演算したインピーダンスを実部と虚部とに分解する。
ステップS15において処理部34は、測定周波数の設定値が所定の周波数範囲の上限値に達したか否かを判断する。例えば、上限値は1[MHz]である。
このとき、処理部34は、設定値が所定の周波数範囲の上限値に達していないと判断した場合には、ステップS11の処理に戻って測定周波数を変更し、設定値が所定の周波数範囲の上限値に達するまでステップS11乃至S14の各処理を実行する。一方、処理部34は、設定値が所定の周波数範囲の上限値に達したと判断した場合には、ステップS16の処理に進む。
ステップS16において処理部34は、演算した各周波数のインピーダンスを測定データとして記憶部31に記録する。本実施形態では、処理部34は、測定周波数ごとにインピーダンスの実部及び虚部を関連付け、関連付けた測定データを記憶部31に記録する。
具体例として、処理部34は、ステップS10において、図5Bに示したように四電極法を用いて測定された各周波数のインピーダンスの実部及び虚部を示す第一測定データを生成して記憶部31に記録する。これに加えて処理部34は、ステップS20において、図6Bに示したように二電極法を用いて測定された各周波数のインピーダンスの実部及び虚部を示す第二測定データを生成して記憶部31に記録する。
ステップS16の処理が終了すると、処理部34は、図8に示したステップS10又はS20の処理を終了してステップS2又はS3の処理に進む。そしてステップS4の処理が終了すると、処理部34は、本実施形態の測定方法についての一連の処理手順(S1、S10、2、S20、S3、S4)を終了する。
このように本実施形態では、処理部34は、ステップS10において、検出電極22から出力される信号に基づいて測定対象物のインピーダンスの周波数特性を示す第一測定データを生成する。さらに処理部34は、ステップS20において、印加電極21から交流信号が測定対象物に印加された状態で印加電極21から出力される信号に基づいて測定対象物のインピーダンスの周波数特性を示す第二測定データを生成する。そして処理部34は、ステップS3において、生成した第一測定データ及び第二測定データに基づいて印加電極21の表面に生じる電気化学反応を示す電極表面データを特定する。
なお、本実施形態では交流信号の周波数を所定の周波数範囲の下限値から上限値に向かって段階的に高くしたが、これに代えて、交流信号の周波数を上限値から下限値に向かって段階的に低くしてもよく、周波数の設定値が重複しないようにランダムに変更してもよい。
また、図8に示した処理手順例ではステップS1及びS10の処理の実行後にステップS2及びS20の処理を実行したが、ステップS2及びS20の処理の実行後にステップS1及びS10の処理を実行してもよく、双方を並行して実行してもよい。また、図8に示した処理手順例においてステップS4の処理を省略してもよい。
また、本実施形態では図8及び図9に示した測定方法を第1実施形態の電気化学センサ2を備える測定装置1に適用したが、電気化学センサ2に代えて第2実施形態の電気化学センサ2Aを備える測定装置1に適用してもよい。この場合であっても、測定データのうち、印加電極21の電極表面に生じる電気化学反応のインピーダンス成分を特定することができる。
また、本実施形態では交流信号と応答信号の検出値に基づいて測定対象物のインピーダンスを演算したが、測定対象物のアドミッタンスを演算してもよい。この場合であっても、測定対象物の物性値を測定することができる。なお、測定対象物は、液体に限らず、気体、固体の物質であってもよい。
次に、第3実施形態によって奏する作用効果について説明する。
本実施形態では、処理部34を構成する測定部3は、検出電極22から出力される信号に基づいて測定対象物のインピーダンス又はアドミッタンスの周波数特性を示す第一測定データを生成する。さらに測定部3は、印加電極21から交流信号が測定対象物に印加された状態で印加電極21から出力される信号に基づいて測定対象物のインピーダンス又はアドミッタンスの周波数特性を示す第二測定データを生成する。そして測定部3は、生成した第一測定データと第二測定データとに基づいて印加電極21と測定対象物の表面で生じる電気化学反応を示す電極表面データを特定する。
また、本実施形態における測定対象物の電気化学反応を測定する測定方法には、測定対象物に交流信号を印加するための一対の印加電極21と測定対象物に生じる応答信号を検出するための一対の検出電極22とを含む電気化学センサ2,2Aが用いられる。この電気化学センサ2,2Aは、一対の印加電極21が一対の検出電極22間に配置される検出装置を構成する。
上述の測定方法は、検出電極22から出力される信号に基づいて測定対象物のインピーダンス又はアドミッタンスの周波数特性を示す第一測定データを生成する第一生成ステップ(S10)を含む。さらに測定方法は、印加電極21から上記交流信号が測定対象物に印加された状態で印加電極21から出力される信号に基づいて測定対象物のインピーダンス又はアドミッタンスの周波数特性を示す第二測定データを生成する第二生成ステップ(S20)を含む。そして測定方法は、第一測定データと第二測定データとに基づいて印加電極21の表面に生じる電気化学反応の成分を特定する特定ステップ(S3)を含む。
これらの構成によれば、四電極法での第一測定データと二電極法での第二測定データとを比較することによって第二測定データの中から印加電極21の電極表面の特性を示す電極表面データが特定される。この電極表面データを測定対象物の特性を測定する際に用いることで、電極表面に生じる電気化学反応の影響が小さくなるように測定データを補正することが可能となる。
また、ナイキスト線図において多数の半円が描かれるような測定対象物の特性を測定するような場合は、四電極法での第一測定データと二電極法での第二測定データとを重ね合わせることにより、多数の半円の中から電極表面の特性を特定することが可能となる。よって、測定対象物の測定データを解析する際に、電極表面に形成される電気二重層の影響を加味することが可能となり、測定対象物の測定精度を向上させることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
第1及び第2実施形態では測定対象物として液体Xaが用いられているが、測定対象物は、気体又は固体であってもよい。例えば、測定対象物として全固体電池や血液などが用いられてもよい。
また、第1及び第2実施形態では図1に示した測定回路20が電気化学センサ2,2Aに備えられているが、測定回路20は測定部3に備えられてもよく、あるいは、電気化学センサ2,2A及び測定部3とは別体として構成されてもよい。また、図1に示した操作部32及び表示部33のうち少なくとも一方は測定部3の外部に設けてもよい。
1 測定装置
2 電気化学センサ(検出装置)
3 測定部(測定手段)
21、21a、21b 印加電極
22、22a、22b 検出電極
200 容器
S3、S10、S20(特定ステップ、第一生成ステップ、第二生成ステップ)
2 電気化学センサ(検出装置)
3 測定部(測定手段)
21、21a、21b 印加電極
22、22a、22b 検出電極
200 容器
S3、S10、S20(特定ステップ、第一生成ステップ、第二生成ステップ)
Claims (8)
- 複数の電極を用いて物質の特性を検出する検出装置であって、
測定対象物に交流信号を印加するための一対の印加電極と、
前記測定対象物に生じる応答信号を検出するための一対の検出電極と、を含み、
前記一対の印加電極は、前記一対の検出電極間に配置される、
検出装置。 - 請求項1に記載の検出装置であって、
前記測定対象物を収容する容器をさらに含み、
前記容器に前記一対の印加電極と前記一対の検出電極とが配置される、
検出装置。 - 請求項2に記載の検出装置であって、
前記容器は、長尺状であり、
前記一対の印加電極と前記一対の検出電極とは、前記容器の長手方向に対して直交する方向に延在する、
検出装置。 - 請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の検出装置であって、
前記一対の印加電極と前記一対の検出電極との各基端部は、同一直線上に並べて配置される、
検出装置。 - 請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の検出装置と、
前記検出電極から出力される信号に基づいて前記測定対象物のインピーダンス又はアドミッタンスを測定する測定手段と、
を含む測定装置。 - 請求項5に記載の測定装置であって、
前記測定手段は、前記測定対象物のインピーダンス又はアドミッタンスに基づいて前記測定対象物の電気特性を演算する、
測定装置。 - 請求項5又は請求項6に記載の測定装置であって、
前記測定手段は、
前記検出電極から出力される信号に基づいて前記測定対象物のインピーダンス又はアドミッタンスの周波数特性を示す第一測定データを生成し、
前記印加電極から前記交流信号が前記測定対象物に印加された状態で前記印加電極から出力される信号に基づいて前記測定対象物のインピーダンス又はアドミッタンスの周波数特性を示す第二測定データを生成し、
前記第一測定データと前記第二測定データとに基づいて前記印加電極と前記測定対象物の表面で生じる電気化学反応を示す電極表面データを特定する、
測定装置。 - 測定対象物に交流信号を印加するための一対の印加電極と前記測定対象物に生じる応答信号を検出するための一対の検出電極とを含み、前記一対の印加電極は、前記一対の検出電極間に配置される検出装置を用いて前記測定対象物の電気化学反応を測定する測定方法であって、
前記検出電極から出力される信号に基づいて前記測定対象物のインピーダンス又はアドミッタンスの周波数特性を示す第一測定データを生成する第一生成ステップと、
前記印加電極から前記交流信号が前記測定対象物に印加された状態で前記印加電極から出力される信号に基づいて前記測定対象物のインピーダンス又はアドミッタンスの周波数特性を示す第二測定データを生成する第二生成ステップと、
前記第一測定データと前記第二測定データとに基づいて前記印加電極の表面に生じる電気化学反応の成分を特定する特定ステップと、
を含む測定方法。
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