JP2021160361A - リコート用化粧シート及びこれを用いた化粧シートの着色方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れたステイナブル性を有するとともに、耐水性等の表面特性にも優れるリコート用化粧シート、及びこれを用いた化粧シートの着色方法を提供する。【解決手段】紙基材、接着層、不織布層、及び分子中に水酸基を有するポリオール化合物とイソシアネート硬化剤とを含む組成物の硬化物により構成される表面層を順に備え、前記不織布層は、層内の厚み方向の前記接着層が設けられた面側において、前記不織布層を構成する繊維の空隙の一部に前記接着層を形成する樹脂が充填してなる充填部Aと、層内の厚み方向の前記表面層が設けられた面側において、前記不織布層を構成する繊維の空隙の一部に前記硬化物が充填してなる充填部Bと、を部分的に有し、前記表面層に含まれる残存水酸基の含有量及びイソシアネート硬化剤中のイソシアネート基量と、前記ポリオール化合物中の水酸基量と、の比率が所定範囲内であるリコート用化粧シート、並びにこれを用いた化粧シートの着色方法である。【選択図】図1

Description

本発明は、リコート用化粧シート及びこれを用いた化粧シートの着色方法に関する。
主に欧米を中心として、水性又は油性のステイン(stain)塗料等の着色塗料を用いて、一般消費者が自ら木材からなる建築物内装材、家具の表面材等の表面を塗装すること、木材からなる家具等表面を塗装すること(DIY:Do It Yourself)が、一般的に行われている。かかるステイン塗料は、木材内部に浸透してこれを着色させるものであり、木材自体の木目を隱蔽すること、表面に造膜することがないため、木目、照り(真珠状光沢)等の木材固有の意匠外観を生かせるという特徴を有する。
近年、建築物内裝材、家具の表面材等として、天然木ではなく、シート状基材の表面に木目模樣を印刷してなる化粧シートを積層した形態のものも用いられるようになっており、上記ステイン塗料を用いたステイン塗装に対応可能な化粧シートが製造されているようになっている。具体的には、購入者自らステイン塗料をコーティングすることによって所望の風合いとすることを想定して、当該リコート用化粧シートにはステイン塗料の着肉性を担保した表面処理が施されている。
このような化粧シートとして、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂基材上に絵柄層を印刷した後、不織布と熱融着させたリコート用化粧シート(例えば、特許文献1参照)、また紙基材及び不織布を用いたステイナブル性化粧シート(例えば、特許文献2参照)等が提案されている。これらのリコート用、ステイナブル性化粧シートは、再塗工(リコート)することができ、また表面に不織布によって微細な凹凸が付与され、木材に酷似した触感を得ることができる点が消費者に好まれている。
特開平9−262934号公報 特開2019−64131号公報
しかし、基材としてPVC基材を用いる場合、化粧シートの価格が高くなってしまうという問題がある。また、基材としてPVC基材を用いる場合、廃棄するために焼却処分をしようとすると塩化水素(HCl)等の塩素原子を含む気体を発生してしまう環境問題が生じる場合もある。
そこで、上記問題に対して、基材として紙基材に変更することが考えられているが、当該変更により様々な問題の発生が想定される。
例えば、紙基材上に不織布を積層するにあたって、紙基材と不織布とは互いに接着しないため、紙基材と不織布との接着方法が問題となる。紙基材と不織布との間に接着層を設けて接着させた場合、不織布の凹凸が失われることがあり、木材に酷似した触感が失われる問題が発生する場合がある。他方、不織布の凹凸をいかしすぎると、不織布の毛羽立ちにより触感が失われ、当該毛羽立ち(表面の凹凸)、更には当該不織布を構成する繊維の空隙による屈折率の差に起因して、化粧シートの透明性が低下し、意匠性が低下するという問題が発生する場合もある。
屈折率の際に起因した透明性の低下の抑制、毛羽立ちによる触感の低下の抑制に対しては、例えば表面層を設けることが考えられる。しかし、表面層を設けると、ステイン塗料等の着色塗料による浸透性及び着肉性が低下する場合があり、他方、浸透性及び着肉性を向上させるためにステイン塗料等の着色塗料との親和性の高い材料を用いると、表面層が主にステイン塗料等の着色塗料に含まれる溶媒(水、溶剤、アルコール等)により劣化して白化するといった外観上の問題を生じる場合がある。そして、この問題は、ステイン塗料等の着色塗料だけでなく、例えば風雨に晒される屋外においても同時に生じ得る問題である。
そのため、ステイン塗料等の着色塗料による浸透性と着肉性とを担保する塗布適性(英語では『stainability』と呼称するが、本明細書中では名詞として使用する場合も『ステイナブル性』の語を採用する。)を得るとともに、ステイン塗料等の着色塗料により劣化(白化等)することを抑制する表面特性(耐水性等)を両立させることは困難である。
本発明は、上記問題に鑑み、優れたステイナブル性を有するとともに、耐水性等の表面特性にも優れるリコート用化粧シート、及びこれを用いた化粧シートの着色方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究した結果、下記の構成を有するリコート用化粧シートにより、上記課題を解決することを見出した。
1.紙基材、接着層、不織布層、及び分子中に水酸基を有するポリオール化合物とイソシアネート硬化剤とを含む組成物の硬化物により構成される表面層を順に備え、前記不織布層は、層内の厚み方向の前記接着層が設けられた面側において、前記不織布層を構成する繊維の空隙の一部に前記接着層を形成する樹脂が充填してなる充填部Aと、層内の厚み方向の前記表面層が設けられた面側において、前記不織布層を構成する繊維の空隙の一部に前記硬化物が充填してなる充填部Bと、を部分的に有し、前記表面層に含まれる残存水酸基の含有量が、0.25質量%以上1.10質量%以下であり、前記イソシアネート硬化剤中のイソシアネート基量CNCO(mmol)と、前記ポリオール化合物中の水酸基量COH(mmol)と、の比率(CNCO/COH)が0.20以上である、リコート用化粧シート。
2.前記繊維が、熱可塑性樹脂繊維及び再生繊維から選ばれる少なくとも一種の繊維である上記1に記載のリコート用化粧シート。
3.前記繊維が、セルロース樹脂繊維である上記1又は2に記載のリコート用化粧シート。
4.前記接着層を形成する樹脂が、ウレタン樹脂及びポリオレフィン樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂である上記1〜3のいずれか1に記載のリコート用化粧シート。
5.前記ポリオール化合物が、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリカーボネートポリオールから選択される1種以上である上記1〜4のいずれか1に記載のリコート用化粧シート
6.前記イソシアネート硬化剤が、多価イソシアネート化合物である上記1〜5のいずれか1に記載のリコート用化粧シート。
7.前記紙基材と前記接着層との間に、更に装飾層を備える上記1〜6のいずれか1に記載のリコート用化粧シート。
8.前記装飾層が、木目模様を呈するものである上記7に記載のリコート用化粧シート。
9.上記1〜8のいずれか1に記載のリコート用化粧シートの前記表面層側の面に着色塗料を塗布し、前記不織布層を着色する、化粧シートの着色方法。
本発明によれば、優れたステイナブル性を有するとともに、耐水性等の表面特性にも優れるリコート用化粧シート、及びこれを用いた化粧シートの着色方法を提供することができる。
本実施形態のリコート用化粧シートの一実施形態を示す模式断面図である。 本実施形態のリコート用化粧シートの一実施形態を示す模式断面図である。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と称することがある。)について説明する。なお、本明細書中において、数値範囲の記載に関する「以上」、「以下」及び「〜」に係る数値は任意に組み合わせできる数値であり、実施例の数値は数値範囲の上下限に用い得る数値である。
[リコート用化粧シート]
本実施形態のリコート用化粧シートは、紙基材、接着層、不織布層及び分子中に水酸基を有するポリオール化合物及びイソシアネート硬化剤を含む組成物の硬化物により構成される表面層を順に備え、前記不織布層は、層内の厚み方向の前記接着層が設けられた面側において、前記不織布層を構成する繊維の空隙の一部に前記接着層を形成する樹脂が充填してなる充填部Aと、層内の厚み方向の前記表面層が設けられた面側において、前記不織布層を構成する繊維の空隙の一部に前記硬化物が充填してなる充填部Bと、を部分的に有し、前記表面層に含まれる残存水酸基の含有量が、0.25質量%以上1.10質量%以下であり、前記イソシアネート硬化剤中のイソシアネート基量CNCO(mmol)と、前記ポリオール化合物中の水酸基量COH(mmol)と、の比率(CNCO/COH)が0.20以上である、ことを特徴とするものである。
本実施形態のリコート用化粧シートは、上記の構成を有することで、優れたステイナブル性を有するとともに、耐水性等の表面特性にも優れるものとなる。
一般的には、耐水性、また耐傷性等の表面特性を向上させるために表面層を設けると、ステイナブル性は低下する、という傾向がある。表面特性を向上させるにはステイン塗料等の着色塗料との親和性を低くする、すなわち親和性の低い材料を用いることで、当該着色塗料、主に着色塗料に含まれる溶媒(水、溶剤、アルコール等)による当該材料の劣化を抑制して白化を防止しやすくなるが、着色塗料と親和性が低い材料では、当該着色塗料の浸透性と着肉性とを担保する塗布適性、すなわちステイナブル性が得られにくくなるからである。
本実施形態で採用される分子中に水酸基を有するポリオール化合物(以下、単に「ポリオール化合物」と称することがある。)は、元来、ステイン塗料等の着色塗料との親和性が高い、すなわち着色塗料に含まれる溶媒(水、溶剤、アルコール等)との親和性が高いため、優れたステイナブル性が得られやすいが、着色塗料との親和性が高いという性質が逆にポリオール化合物の劣化を促進して白化が生じる等、耐水性等の表面特性の低下を生じやすい、という性質を有する材料である。
本実施形態のリコート用化粧シートにおいては、そのような性質を有するポリオール化合物を用いて優れたステイナブル性を得つつ、表面層をポリオール化合物及びイソシアネート硬化剤を含む組成物の硬化物により構成し、かつ前記表面層に含まれる残存水酸基の含有量を0.25質量%以上1.10質量%以下という範囲とし、かつ前記イソシアネート硬化剤中のイソシアネート基量CNCO(mmol)と、前記ポリオール化合物中の水酸基量COH(mmol)と、の比率(CNCO/COH)が0.20以上とする、すなわち一定量以上のイソシアネート硬化剤を用いて良好な硬化物の硬化状態を得ながら、ポリオール化合物が有する水酸基の一部を残存させることにより、相反する性能である、ステイナブル性と耐水性等の表面特性とを高い次元で両立することを可能とした。
主剤となるポリオール化合物及びイソシアネート硬化剤の種類、当該種類に応じた使用量により、上記残存水酸基の含有量及び比率(CNCO/COH)を調整するという比較的容易な手法により、相反する性能である、ステイナブル性と耐水性等の表面特性とを高い次元で両立し得ることは驚くべき効果であるといえる。そして、このような効果は、表面層を形成する材料として、主剤としてポリオール化合物を選択し、かつイソシアネート硬化剤を用いたウレタン樹脂(硬化物)を採用するからこその効果である。
また、基材と同様、PVC系の樹脂を用いた樹脂組成物を層の形成に用いる場合、廃棄するために焼却処分をしようとすると塩化水素(HCl)等の塩素原子を含む気体が発生し、環境問題が生じる場合もある。そのため、表面層の形成にウレタン樹脂(硬化物)を採用するからこその効果としては、環境への負荷の低減も挙げられる。そして、基材、表面層に限らず、他の層の形成においても、PVC樹脂を採用しないことが好ましい。
以下に図面を参照して、本実施形態のリコート用化粧シートについて説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分は同一又は類似の符号で表している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんのことである。
図1に示されるリコート用化粧シート1は、紙基材10、接着層20、不織布層30及び表面層40を順に備えており、紙基材10の少なくとも一方の面11側に接着層20が設けられている。そして、不織布層30は、層内の厚み方向の接着層20が設けられた面30a(以下、「不織布層の接着層が設けられた面」とも称する。)側において、不織布層30を構成する繊維の空隙の一部に、接着層20を形成する樹脂が充填してなる充填部A31、層内の厚み方向の表面層40が設けられた面30b(以下、「不織布層の表面層が設けられた面」とも称する。)側において、不織布層30を構成する繊維の空隙の一部に、表面層40を形成する組成物が充填してなる充填部B33、を部分的に有することが示されている。また、不織布層30は、充填部A31と充填部B33との間に、充填部A31及び充填部B32以外の部分として繊維部32を有することも示されている。
また、図2に示されるリコート用シート1は、図1に示されるリコート用シート1において、紙基材10と接着層20との間に全面着色層51及び絵柄層52により構成される装飾層50を備えている。
以下、図1及び2を用いて、本実施形態のリコート用化粧シートを構成する各層について説明する。
〔表面層40〕
本実施形態のリコート用化粧シートにおける表面層40は、分子中に水酸基を有するポリオール化合物及びイソシアネート硬化剤を含む組成物の硬化物により構成され、表面層に含まれる残存水酸基の含有量が、0.25質量%以上1.10質量%以下である、という層である。表面層40を有することで、既述のように耐水性等の表面特性とステイナブル性とを高い次元で両立することが可能となる。
(残存水酸基の含有量)
表面層40は、ポリオール化合物及びイソシアネート硬化剤(以下、単に「硬化剤」と称することがある。)を含む組成物の硬化物により構成され、残存水酸基を0.25質量%以上1.10質量%以下の含有量で含有する。残存水酸基の含有量が0.25質量%未満であると、ステイン塗料等の着色塗料との親和性が得られないため、ステイナブル性が得られない。一方、残存水酸基の含有量が1.10質量%超であると、表面層40における溶媒(水、溶剤、アルコール等)、特に水との親和性が高くなりすぎることで表面層の劣化が促進して白化等が生じやすくなるため、耐水性、耐傷性等の表面特性が得られない。
ステイナブル性とともに、表面特性を向上させる観点から、表面層40に含まれる残存水酸基の含有量は、好ましくは0.30質量%以上、より好ましくは0.35質量%以上、更に好ましくは0.40質量%以上、より更に好ましくは0.45質量%以上であり、上限として好ましくは1.05質量%以下、より好ましくは1.00質量%以下、更に好ましくは0.95質量%以下、より更に好ましくは0.90質量%以下である。なお、表面層40に含まれる残存水酸基の含有量は、表面層40が硬化物により構成されるものであるため、硬化物に含まれる残存水酸基の含有量と実質的に同じである。
本明細書において、表面層40に含まれる残存水酸基の含有量は、樹脂組成物に含まれるポリオール化合物中の水酸基のうち、硬化剤中のイソシアネート基(−NCO)との反応によりウレタン結合を形成せずに残留した水酸基の、表面層40を構成する硬化物、厳密にはポリオール化合物と硬化剤との合計量に対する含有量(質量%)のことである。具体的には、以下の方法により算出することができる含有量である。
JIS K1557−1:2007(プラスチック−ポリウレタン原料ポリオール試験方法−第1部:水酸基価の求め方)に基づき、分子中に水酸基を有するポリオール化合物の水酸基価XOH(mgKOH/g)を求める。求めた水酸基価XOH及び以下の各量を用いて、以下数式(1)により、残存水酸基の含有量を算出する。
残存水酸基の含有量(質量%)=(残存水酸基量)/(ポリオール化合物の使用量+硬化剤の使用量)×100 (1)
残存水酸基量=ポリオール化合物中の水酸基量−硬化剤中のイソシアネート基量
ポリオール化合物中の水酸基量(g)=XOH/56.1×A×17.0
硬化剤中のイソシアネート基量(g)=XNCO×A×42.0
(g):ポリオール化合物の使用量
(g):硬化剤の使用量
NCO(mmol/g):硬化剤中のイソシアネート基の含有量
(イソシアネート基量と水酸基量との比率)
表面層40において、イソシアネート硬化剤中のイソシアネート基量CNCO(mmol)と、ポリオール化合物中の水酸基量COH(mmol)と、の比率(CNCO/COH)が0.20以上であることを要する。当該比率が0.20未満であると、イソシアネート基に起因する架橋割合が少なくなるため、優れた表面特性が得られなくなる。
硬化剤中のイソシアネート基量CNCO(mmol)と、ポリオール化合物中の水酸基量COH(mmol)と、の比率(CNCO/COH)は、ステイナブル性及び表面特性を向上させる観点から、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.30以上である。上限としては特に制限はないが、ステイナブル性を向上させるため、好ましくは0.90以下、より好ましくは0.80以下、更に好ましくは0.60以下、より更に好ましくは0.45以下である。
ここで、硬化剤中のイソシアネート基量CNCO(mmol)及びポリオール化合物中の水酸基量COH(mmol)は、以下の式(2)及び(3)により算出される値である。
硬化剤中のイソシアネート基量CNCO(mmol)=XNCO×A (2)
ポリオール化合物中の水酸基量COH(mmol)=XOH/56.1×A (3)
(ポリオール化合物)
表面層40は、分子中に水酸基を有するポリオール化合物とイソシアネート硬化剤とを含む組成物の硬化物により構成される。
ポリオール化合物としては、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が好ましく挙げられ、これらを単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。ステイナブル性とともに、表面特性を向上させる観点から、特にアクリルポリオールが好ましい。
アクリルポリオールの具体例としては、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルに、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等のヒドロキシアクリレートを共重合させて複数の水酸基を導入したもの等が挙げられる。
ポリエステルポリオールの具体例としては、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアジペート)、ポリ(ネオペンチルアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアゼラエート)、ポリ(ブチレンセバケート)、ポリカプロラクトン等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールの具体例としては、アルキレンオキシ基を繰り返し単位として有するもの、例えばポリオキシエチレンモノメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリセロールエーテル、ポリオキシエチレントリメチロールプロパンエーテル、ポリオキシエチレンネオペンチルグリセロールエーテル、ポリオキシエチレンペンタエリストリールエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
また、ポリカーボネートポリオールの具体例としては、炭素数4〜12のアルキレン基を有するアルキレンジオールの1種または2種以上と、低分子カーボネート化合物(例えば、アルキル基の炭素数1〜6のジアルキルカーボネート、炭素数2〜6のアルキレン基を有するアルキレンカーボネート及び炭素数6〜9のアリール基を有するジアリールカーボネートなど)から、脱アルコール反応させながら縮合させることによって製造されるポリカーボネートジオールが挙げられ、より具体的には、例えばポリブチレンカーボネートポリオール、ポリヘキサメチレンカーボネートポリオール、ポリシクロヘキサンジメチレンカーボネートポリオール等が挙げられる。
ポリオール化合物としては、水酸基価(mgKOH/g)として、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上、より更に好ましくは20mgKOH/g以上、上限として好ましくは60mgKOH/g以下、より好ましくは55mgKOH/g以下、更に好ましくは50mgKOH/g以下、より更に好ましくは45mgKOH/g以下である。ポリオール化合物の水酸基価が上記範囲内であると、残存水酸基の含有量を0.25質量%以上1.10質量%以下に調整しやすく、ステイナブル性とともに、表面特性を向上させることができる。
(イソシアネート硬化剤)
イソシアネート硬化剤としては、多価イソシアネート化合物が好ましく、例えば、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、及びこれらジイソシアネートのプレポリマー型、イソシアヌレート型、ウレア型、カルボジイミド型変性体等が好ましく挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」ともいう)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下「DCI」ともいう)、4−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,2−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(以下「HMDI」ともいう)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の直鎖状又は分岐状の鎖状脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
また、芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネートが挙げられる。
イソシアネート硬化剤に含まれるイソシアネート基(−NCO)の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、上限として好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。イソシアネート硬化剤に含まれるイソシアネート基の含有量が上記範囲内であると、残存水酸基の含有量を0.25質量%以上1.10質量%以下に調整しやすく、ステイナブル性とともに、表面特性を向上させることができる。
以上のイソシアネート硬化剤の中でも、ステイナブル性とともに、表面特性を向上させる観点から、鎖状脂肪族ジイソシアネートが好ましく、特にヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
表面層40に含まれる残存水酸基の含有量は、表面層の形成に用いられる組成物に含まれる、ポリオール化合物、イソシアネート硬化剤の種類、またこれらの含有量等により調整することが可能である。
組成物中のポリオール化合物及びイソシアネート硬化剤の含有量は、残存水酸基の含有量を0.25質量%以上1.10質量%以下となれば特に制限はなく、例えば、硬化剤中のイソシアネート基量CNCO(mmol)と、ポリオール化合物中の水酸基量COH(mmol)と、の比率(CNCO/COH)として、上記の好ましい範囲内となるような含有量とすることが好ましい。
例えば、組成物中のポリオール化合物100質量部に対する、イソシアネート硬化剤の使用量は、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上、より更に好ましくは2.0質量部以上、特に好ましくは2.5質量部以上であり、上限として好ましくは20.0質量部以下、より好ましくは12.5質量部以下、更に好ましくは10.0質量部以下、より更に好ましくは7.0質量部以下、特に好ましくは5.5質量部以下である。イソシアネート硬化剤の使用量を上記範囲内とすると、残存水酸基の含有量を0.25質量%以上1.10質量%以下と調整しやすくなり、ステイナブル性とともに、表面特性を向上させることができる。また、表面層の形成において用いられるイソシアネート硬化剤は、後述する紙基材と不織布層との接着性の向上にも寄与し得るため、接着層の厚さを比較的薄くすることが可能となる。
(表面層40の態様)
表面層40は、不織布層を構成する繊維の空隙の一部に硬化物が充填するような充填部Bを備えるように存在すれば、その態様には特に制限はなく、例えば図1及び2に示されるように、面30bの上に一定の厚さをもって層状に存在してもよいし、また不織布層30の面30bに沿った最表面の繊維に被覆する、すなわち不織布層30を構成する繊維の空隙が最表面に存在するように存在してもよい。
表面層40は、一定の厚さをもって層状に存在する場合は、水性ステイン塗料及び油性ステイン塗料等の着色塗料が入り込む着肉性を担保し、優れたステイナブル性を得る観点から、本実施形態のリコート用化粧シートの表面側の面の一部に存在することとなる。
最表面の繊維に被覆するように存在する場合、着肉性を担保し、優れたステイナブル性を得る観点から、最表面及びその近傍(不織布層30の層内の厚み方向についての近傍)の繊維により形成する空隙が少なくとも部分的に存在していることが好ましい。ステイナブル性とともに、表面特性を向上させる観点、更には透明性、触感等の向上の観点から、表面層は、最表面の繊維に被覆するように存在することが好ましく、その全面に被覆するように存在することがより好ましい。
このように、表面層40がどのような態様で存在しようとも、水性ステイン塗料及び油性ステイン塗料等の着色塗料が入り込む着肉性を担保し、優れたステイナブル性を得る観点から、最表面及びその近傍(不織布層30の層内の厚み方向についての近傍)において、少なくとも一部にその表面が樹脂により被覆されていてもよい繊維同士により形成される空隙が存在していることが好ましい。
表面層40は、所望の性能に応じて、顔料、染料等の着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒等の添加物を含有してもよい。すなわち、表面層40の形成に用いられるポリオール化合物とイソシアネート硬化剤とを含む組成物は、これらの添加物を含有してもよい。
この場合、添加物の含有量は、所望の性能に応じて、またポリオール化合物とイソシアネート硬化剤との硬化を阻害しない範囲であれば特に制限はなく、例えば表面層40の樹脂分(すなわち、ポリオール化合物とイソシアネート硬化剤との合計量)100質量部に対して、添加剤全量の使用量として1質量部20質量部以下程度とすればよく、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、上限として好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
表面層40の厚さは、主に表面層40の厚さに加えて、不織布層30における充填部B33、繊維部32及び充填部A31のバランス等を考慮して決定すればよく、充填部A31、充填部B33及び繊維部32をバランスよく形成し、ステイナブル性とともに、表面特性を向上させる観点、更には透明性、触感等の向上の観点から、表面層40及び充填部B33の合計の厚さとして、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは2μm以上であり、上限として好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下である。なお、表面層40及び充填部B33の合計の厚さは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)又は走査透過型電子顕微鏡(STEM)等の各種電子顕微鏡を用いて撮影した断面の画像から任意の30箇所についての厚さを測定し、当該30箇所の厚さの平均値である。
(不織布層30)
不織布層30は、当該不織布層30を形成する繊維の空隙に、水性ステイン塗料及び油性ステイン塗料等の着色塗料が入り込む着肉性を担保し、ステイナブル性を発現させる層であり、層内の厚み方向の前記接着層20が設けられた面30a側において、不織布層30を構成する繊維の空隙の一部に前記接着層20を形成する樹脂が充填してなる充填部A31、及び層内の厚み方向の前記表面層40が設けられた面30b側において、不織布層30を構成する繊維の空隙の一部に前記表面層40を形成する硬化物が充填してなる充填部B33を、部分的に有する層である。
不織布層30を構成する繊維としては、熱可塑性樹脂繊維、天然繊維、再生繊維、半合成繊維等が挙げられ、ステイナブル性の観点から、熱可塑性樹脂繊維、再生繊維が好ましい。本実施形態において、当該繊維としては単独で、又は複数種を組み合わせて用いることが可能である。
熱可塑性樹脂繊維としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル系樹脂;ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール(ブチラール樹脂);ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系樹脂;ポリオキシメチレン等のアセタール樹脂;ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリジエン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、フッ素樹脂系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー;塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン−4フッ化エチレン共重合体等のフッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、液晶性ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂により構成される熱可塑性樹脂繊維が好ましく挙げられる。これらの熱可塑性樹脂繊維の中では、形態安定性を考慮すると、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂等の樹脂により構成される熱可塑性樹脂繊維が好ましく、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂により構成される熱可塑性樹脂繊維が好ましい。
熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂は、一種単独で、又は複数種を組み合わせたものであってもよく、例えば、芯がポリエステル樹脂であり、鞘がポリオレフィン樹脂である、二重構造の繊維のような、複合繊維であってもよい。
また、天然繊維としては、コットン、羊毛、絹等の天然素材による繊維が挙げられ、再生繊維としては、レーヨン、キュプラ、リヨセル等が挙げられ、半合成繊維としては、トリアセテート、プロミックス等が挙げられる。
不織布層30を構成する繊維の繊維径は、特に制限はないが、特に触感を考慮すると、平均繊維径として、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、上限として好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは20μm以下の不織布であることが好ましい。この範囲の平均繊維径を有する繊維からなる不織布は、木材に酷似した触感を得やすい傾向にある。
不織布を構成する繊維の平均繊維径は、電子顕微鏡(300倍)を用いて、不織布の任意の箇所に存在する繊維30本の繊維の幅(直径)を測定し、得られた各測定結果の値を平均することで測定することができる。
不織布層30を構成する繊維は、例えば、スパンボンド法でフリースを形成し、形成したフリースをサーマルボンド法及びスパンレース法(水流絡合法)等で結合することで形成することができる。また、これらの方法により形成された不織布層30は、木材に酷似した触感が得られやすい。
不織布層30を構成する繊維の坪量は、特に制限はないが、不織布層30の強度を得る観点から、好ましくは10g/m以上、より好ましくは15g/m以上であり、上限として好ましくは40g/m以下、より好ましくは30g/m以下、更に好ましくは20g/m以下である。
不織布層30の厚さは、特に制限はないが、リコート用化粧シート1の強度、質量、屈曲性等の物性を考慮して、好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上、更に好ましくは60μm以上、より更に好ましくは70μm以上であり、上限として好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは150μm以下、より更に好ましくは100μm以下である。
(充填部A31及び充填部B33)
不織布層30の層内の厚み方向の接着層20が設けられた面30a側には、繊維の空隙の一部に接着層20を形成する樹脂が充填してなる充填部A31を備え、他方層内の厚み方向の表面層40が設けられた面30b側には、繊維の空隙の一部に表面層40を形成する硬化物が充填してなる充填部B33を備える。
ステイナブル性とともに表面特性が得られという効果、更には表面の触感及び透明性等を向上させるにあたり、既述の表面層40の構成とともに、接着層20と不織布層30とから形成する充填部A、表面層40と不織布層30とから形成する充填部Bも重要な役割を果たすこととなる。不織布層30は接着層20及び表面層40との関係で、充填部A及びBという二つの充填部を有する層であるといえる。
充填部A31は、接着層20を形成する樹脂の少なくとも一部が不織布層30に浸透することで形成するため、紙基材10と不織布層30との優れた接着性が得られることとなり、また紙基材10へのステイン塗料等の着色塗料に含まれる溶媒(水、溶剤、アルコール等)の浸透を抑制して保護することで、表面特性としての耐水性とは別に、リコート用化粧シート全体としての耐水性も得られる。
他方、充填部B33は、表面層40を形成する樹脂の少なくとも一部が不織布層30に浸透することで形成するため、ステイナブル性とともに表面特性が得られ、更に表面層40とともに不織布層30の毛羽立ちを良好な状態とすることで触感を付与し、不織布層30の毛羽立ち(表面の凹凸)及び空隙による屈折率に起因する透明性の低下を抑制することもできるため、優れた透明性による意匠性も得られる。また、ステイン塗料等の着色塗料に含まれる溶媒(水、溶剤、アルコール等)の浸透による紙基材10の劣化を抑制し得るため、リコート用化粧シート全体としての耐水性も得られる。
充填部A31は、不織布層30を形成する繊維の空隙に、接着層20を形成する樹脂が充填され、空隙が残存しない状態であるため、ステイン塗料等の着色塗料が入り込む着肉性を有しない部分である。
充填部B33は、充填部A31と同様に、不織布層30を形成する繊維の空隙に、表面層40を形成する硬化物が充填され、空隙が残存しない状態であるため、水性ステイン塗料及び油性ステイン塗料等の着色塗料が入り込む着肉性を有しない部分である。
本実施形態のリコート用化粧シート1において、不織布層30は上記充填部A31及び充填部B33を部分的に有する。すなわち、不織布層30は充填部A31及び充填部B33以外の部分である、後述する繊維部32を有することが必要となる。充填部以外の部分である繊維部32を有しないと、これらの充填部は空隙が残存しない状態であり、ステイン塗料等の着色塗料が入り込む着肉性を有しないため、ステイナブル性が得られないからである。
図1及び2において、充填部A31及び充填部B33は層状に有するように模式的に示されているが、不織布層30を構成する繊維の形状、また繊維の空隙の形状等が均一ではないため、当該図に示されるように均一な層を呈しているとは限らないと考えられる。ステイン塗料等の着色塗料が入り込んで着色されていることを考慮すると、例えば当該図において充填部A31及び充填部B33として示される、不織布層30の層内の厚み方向についての一定の範囲において、不織布層30を形成する繊維の空隙を、接着層20を形成する樹脂及び表面層40を形成する硬化物が充填した各々充填部A31及び充填部B33が点在しており、残余の部分が後述する繊維部32として点在しているものと考えられる。
(繊維部32)
本実施形態のリコート用化粧シートは、既述のように、充填部A31及び充填部B33を部分的に有する層であることから、これらの充填部以外の部分、すなわち繊維部32を自ずと有するものとなる。本実施形態のリコート用化粧シートは、繊維部32を有することにより、繊維の空隙にステイン塗料等の着色塗料が入り込む着肉性を担保し、ステイナブル性を発現するものとなる。
繊維部32の態様としては、接着層20、表面層40を形成する硬化物が充填されず空隙が残存する態様であれば特に制限はないが、例えば、不織布層30を形成する繊維の空隙に、接着層20、表面層40を形成する樹脂が全く入り込まずに、繊維がそのまま存在し、かつ当該繊維の空隙を有する態様、また接着層20、表面層40を形成する樹脂が多少入り込むものの、繊維がこれらの樹脂に被覆されるにとどまり、当該被覆された樹脂の空隙を有する態様、等が挙げられる。本実施形態のリコート用化粧シートにおいて、繊維部32の態様はいずれであってもよい。
繊維部32は、接着層20及び表面層40を形成する樹脂により充填されなかった部分、すなわち充填部A31及び充填部B33以外の部分である。図1及び2において、繊維部32は層状に存在するように模式的に示されているが、充填部A31及び充填部B33は、既述のように、不織布層30の層内の厚み方向について一定の範囲において点在しているため、厳密には層状に存在するものではないと考えられる。よって、繊維部32は、図1及び2において繊維部32として示される、不織布層30の層内の厚み方向についての一定の範囲において点在しているものと考えられる。
不織布層30が、充填部A31及び充填部B33を部分的に有するものとする方法としては、例えば接着層20の形成の際に使用する樹脂組成物の塗布量、表面層40の形成の際に使用する樹脂組成物の塗布量等を調整による方法が挙げられる。例えば、接着層20の形成の際に使用する樹脂組成物の塗布量を多くすると、不織布層30における充填部A31の割合が増加する。他方、表面層40の形成の際に使用する組成物の塗布量を多くすると、不織布層30における充填部B33の割合が増加する。また、接着層20及び表面層40の形成の際に使用する組成物の塗布量を多くすると、不織布層30における繊維部32の割合は減少し、当該塗布量を少なくすると、不織布層30における繊維部32の割合は増加することとなる。
本実施形態においては、例えば上記の塗布量等を調整することで、不織布層30の所望の状態を得ることが可能となる。
(接着層20)
接着層20は、紙基材10の少なくとも一方の面側に設けられる層であり、紙基材10と不織布層30との接着のために設けられる層である。また、接着層20が充填部Aを有するように設けることで、紙基材10と不織布層30との接着性に加えて、紙基材10へのステイン塗料に含まれる溶媒(水、溶剤、アルコール等)の浸透を抑制し保護できるため、表面特性としての耐水性とは別に、リコート用化粧シート全体としての耐水性も得られる。
接着層20に用いられる接着剤としては、特に制限なく様々な樹脂からなる接着剤を用いることができる。接着剤を形成する樹脂としては、例えばウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、これらの樹脂を単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。中でも、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂が好ましく、ウレタン樹脂を採用することがより好ましい。これらの樹脂を用いると、優れた接着性が得られつつ、不織布層30に塗布したステイン塗料の溶媒(溶剤、アルコール)の紙基材10への浸透を抑制し、リコート用化粧シート1の耐水性等の表面特性を向上することができ、また強度、質量、屈曲性等の物性を保持したものとしやすくなる。
不織布層30は、接着層20を形成する樹脂、表面層40を形成する樹脂が充填してなる充填部A31、充填部B33を備え、またいずれの樹脂も充填しない繊維層32を備えているが、接着層を形成する樹脂と表面層を形成する樹脂とが接する部分も備えている。そのため、接着層20に用いられる接着剤としては、表面層40の形成に採用される樹脂と同じ種類の樹脂、すなわちウレタン樹脂を採用すると、より接着性が向上し得る。このような観点からも、接着層20に用いられる接着剤としては、ウレタン樹脂が特に好ましい。
ウレタン樹脂としては、熱可塑性ウレタン樹脂、硬化性ウレタン樹脂のいずれを採用してもよく、特に接着性の観点から、硬化性ウレタン樹脂を用いることが好ましい。
硬化性ポリウレタン樹脂としては、2液硬化型及び1液硬化型のいずれでもよく、接着性の観点から、2液硬化型ポリウレタン樹脂が好ましい。
2液硬化型ポリウレタン樹脂は、ポリオールを主剤としイソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするポリウレタン樹脂であり、ポリオール及びイソシアネートとしては、各々上記表面層の形成に用いられるものとして説明したポリオール化合物、イソシアネート硬化剤の中から適宜選択して用いればよい。
また、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基とアルコール基等の水酸基を有する化合物とが縮合してできるウレタン結合でモノマーを共重合させた共重合体である。
ポリオレフィン樹脂としては、単量体単位としてエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、4−メチル−1−ペンテン等のモノオレフィンの1種又は2種以上を含むものが挙げられ、更に、シクロペンテン、シクロヘキセン等の脂環族オレフィン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、ジビニルベンゼン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン等の鎖状もしくは環状のポリエン、スチレン、置換スチレン等の芳香族ビニル化合物等のモノオレフィン以外の単量体単位を含むもの等が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂としては、紙基材10及び不織布層30への密着性の観点から、単量体単位としてエチレンを含むポリエチレン樹脂であることが好ましい。
ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂を用いる場合、接着層20を形成する全樹脂に対するウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂の割合は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、100%であることがより更に好ましい。
本実施形態において接着層20を形成する上記樹脂は、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤等の添加物を適宜混合した樹脂組成物として使用することができる。すなわち、接着層20は、上記樹脂に加えて、添加物を含む樹脂組成物により形成することができる。
接着層20の厚さは、紙基材10及び不織布層30の材質、また不織布層30の厚さ等によって変わり得るため一概に数値を規定することはできないが、例えば、紙基材10と不織布層30との接着性、充填部A31、充填部B33及び繊維部32をバランスよく形成し、ステイナブル性とともに表面特性を向上させ、更に透明性等を向上させる観点から、接着層20及び充填部A31の合計の厚さとして、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは5μm以上、より更に好ましくは8μm以上であり、上限として好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは18μm以下、より更に好ましくは15μm以下である。また上記範囲内であると、リコート用化粧シート全体としての耐水性も向上する。
なお、接着層20及び充填部A31の合計の厚さは、表面層30及び充填部B33の合計の厚さと同様に、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)又は走査透過型電子顕微鏡(STEM)等の各種電子顕微鏡を用いて撮影した断面の画像から任意の30箇所についての厚さを測定し、当該30箇所の厚さの平均値である。
(紙基材10)
本実施形態のリコート用化粧シート1は、環境負荷の低減、また価格の低減の観点から、紙基材が採用される。紙基材10は、本実施形態のリコート用化粧シート1において、他の層を設けるための支持体としての機能を果たす。
紙基材10に採用される基材としては、例えば、上質紙、薄葉紙、リンター紙、クラフト紙、紙間強化紙、樹脂含浸紙、壁紙用裏打紙、これらの紙に難燃剤を混抄又は含侵してなる難燃紙等を用いることができる。これらの材料は、単独で使用してもよいが、例えば、紙同士の積層体等のように、任意の組み合わせによる積層体であってもよい。
紙基材10は、必要に応じて難燃剤、無機質剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、着色剤、サイズ剤、定着剤等の添加剤を適宜添加したものであってもよい。
紙基材10の厚さは、特に制限はないが、化粧シートの耐久性、取り扱いやすさ等を考慮すると、坪量が20g/m以上150g/m以下の範囲であることが好ましく、25g/m以上120g/m以下の範囲であることがより好ましく、35g/m以上100g/m以下の範囲であることが更に好ましく、40g/m以上60g/m以下の範囲であることがより更に好ましい。
(装飾層50)
本実施形態のリコート用化粧シート1は、意匠性の向上の観点から、装飾層50を有することが好ましい。装飾層50は、紙基材10と不織布層30との間に設ければよく、紙基材10と接着層20との間に設けることが好ましい。
装飾層50としては、その全面を被覆するように設けられる全面着色層51のみから構成される層であってもよいし、その一部分を被覆するように柄を形成するように設けられる絵柄層52のみから構成される層であってもよいし、全面着色層51と絵柄層52とを組み合わせた層であってもよい。これらの層構成は、所望の模様に応じて決定すればよい。
装飾層50により付与される模様としては、特に制限なく所望に応じて選択すればよく、例えば、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)、花崗岩板のへき開面等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、レザーのシボを表現したレザー(皮シボ)模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、ヘアライン、万線条溝、梨地、砂目、文字、記号、幾何学模様等、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様が挙げられる。また、これらを複合した模様として、例えば大理石等の石材の砕石を白色セメントに混ぜて固め、磨いて大理石のように仕上げた人造石、いわゆる人造大理石のような模様も挙げられる。
需要者の意匠への要望は流行等により変化するものであるが、木目模様への人気は根強いため、本実施形態のリコート用化粧シート1の模様としても、木目模様が好ましい。木目模様には、柾目模様、板目模様、杢目模様、木口模様等があるが、いずれであってもよい。
装飾層50の形成には、少なくともバインダー樹脂、並びに顔料及び染料等の着色剤を含む樹脂組成物が用いられることが好ましく、その他所望に応じて用いられる成分、例えば、艶消し剤、体質顔料、安定剤、溶剤、また紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤等を適宜混合したものを用いることができる。すなわち、装飾層50は、少なくともバインダー樹脂、及び顔料及び染料等の着色剤を含む層であり、その他、上記の所望に応じて所望に応じて用いられる成分を含み得る層である。
バインダー樹脂としては特に制限はなく、例えば、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン−アクリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−アクリル共重合体樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース樹脂等の樹脂が好ましく挙げられる。また、例えばアクリルポリオール等の各種ポリオールを主剤とし、各種イソシアネートを硬化剤とする2液硬化型樹脂等の硬化性樹脂を用いてもよい。これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
着色剤としては、例えば、チタン白、鉛白、カーボンブラック、鉄黒、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、ニッケルアゾ錯体、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等の公知のものから適宜選択して用いることができる。
また、より意匠性を向上させる観点から、装飾層50には、上記のその他所望に応じて用いられる成分の中でも、艶消し剤を含むことが好ましい。
艶消し剤としては、シリカ、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸塩、及びケイ酸微粉末等の無機フィラー;アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ナイロン樹脂、ポリプロピレン樹脂、又は尿素系樹脂等の有機フィラー、等が挙げられる。
装飾層50が艶消し剤を含むことで、装飾層はより低光沢となるため、艶差による視覚的な凹凸感を有するような意匠表現が可能となる。
例えば、好ましい模様として例示した木目模様について、木目模様は、より低光沢(艶消又は低艶)の導管部分、より高光沢(艶有又は高艶)の春材部分、更に高光沢の秋材部分(照り部分)等が存在する。装飾層50において、より低光沢な導管部分を形成する絵柄層、より高光沢な春材部分を形成する絵柄層、更に高光沢の秋材部分を形成する絵柄層等の複数の絵柄層52を組み合わせることで、意匠性の高い模様を形成することが可能である。またこの場合、例えば全面着色層51に艶消し剤を含有させない、あるいは絵柄層52よりもその含有量を少なくすることで、絵柄層52との艶差をより大きくして、意匠性を向上させることも可能である。
装飾層50の厚さは、特に制限はないが、意匠性の向上の観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上であり、上限として好ましくは10μm以下、より好ましくは9μm以下、更に好ましくは7.5μm以下である。装飾層50が2以上の層から形成される場合、各層の厚みの合計が上記範囲であることが好ましい。
(リコート用化粧シートの製造方法)
本実施形態のリコート用化粧シート1の製造方法について、本実施形態のリコート用化粧シート1として好ましい態様の一つである、図2に示されるリコート用化粧シート1を例にとって、その製造方法を説明する。
図2に示される本実施形態のリコート用化粧シート1は、紙基材10上に装飾層50を設ける工程1、当該装飾層50の上に接着層20を設ける工程2、当該接着層20の上に不織布層30と、充填部A31と、を設ける工程3、及び当該不織布層30の表面に表面層40を形成する樹脂組成物を塗布し、表面層40とともに充填部B33を形成する工程4を経て製造することができる。
工程1は、紙基材10に装飾層50を設ける層である。
装飾層50は、上記装飾層50の形成に用いられる樹脂組成物を、好ましくはグラビア印刷、シルクスクリーン印刷、グラビアオフセット印刷、フレキソ印刷、インキジェット印刷等により形成することが好ましく、大ロットの場合はグラビア印刷、小ロットの場合はインキジェット印刷を採用することがより好ましい。
工程2は、装飾層50の上に接着層20を設ける工程である。
例えば、接着層20を形成し得る樹脂として例示した中から適宜選択し、好ましくはウレタン樹脂を含む樹脂組成物を装飾層50上に塗布して接着層20を形成する。この場合、樹脂組成物の塗布方法は、上記装飾層50における樹脂組成物の塗布方法として例示した公知の方法のいずれかを選択して行えばよい。
この場合、接着層20を形成する樹脂組成物の塗布量(ドライベース)は、優れた接着性を得る観点、また充填部A31、充填部B33及び繊維部32をバランスよく形成し、ステイナブル性及び透明性を向上させる観点から、好ましくは2g/m以上、より好ましくは5g/m以上、更に好ましくは8g/m以上、より更に好ましくは10g/m以上であり、上限として好ましくは50g/m以下、より好ましくは45g/m以下、更に好ましくは40g/m以下、より更に好ましくは30g/m以下である。
工程3は、接着層20の上に不織布層30と、充填部A31と、を設ける工程である。
不織布層30及び充填部A31は、例えば、樹脂組成物の塗布により接着層20を形成した後、これの上に不織布を配置した後、ドライラミネートすることにより、不織布層30を形成し、かつ当該接着層の形成に用いられる樹脂組成物が、不織布の空隙の一部に充填されることで充填部A31が形成する。
この場合、接着層形成樹脂の厚さは、紙基材10と不織布層30との優れた接着性を得る観点、また充填部A31、充填部B33及び繊維部32をバランスよく形成し、ステイナブル性及び透明性を向上させる観点、更には透明性、触感等の向上の観点から、不織布層30の厚さに対して、好ましくは10%以上、より好ましくは12%以上、更に好ましくは14%以上であり、上限として好ましくは25%以下、より好ましくは23%以下、更に好ましくは20%以下である。
工程4は、不織布層30の表面に表面層40を形成する組成物を塗布し、表面層40とともに充填部B33を形成する工程である。
表面層40を形成する組成物の塗布は、上記装飾層50における樹脂組成物の塗布方法として例示した公知の方法のいずれかを選択して行えばよい。表面層40の形成にあたり、組成物の塗布量は、主に表面層40の厚さに加えて、不織布層30における充填部B33、繊維部32及び充填部A31のバランス等を考慮して決定すればよく、充填部A31、充填部B33及び繊維部32をバランスよく形成し、ステイナブル性とともに、表面特性を向上させる観点、更には透明性、触感等の向上の観点から、通常2g/m以上、好ましくは4g/m以上、より好ましくは6g/m以上であり、上限として好ましくは20g/m以下、より好ましくは15g/m以下、更に好ましくは12g/m以下である。
以上の工程により、紙基材10、装飾層50、接着層20、不織布層30(充填部A31、繊維部32、充填部B33)及び表面層40を順に有する、図2に示される好ましい一態様を有するリコート用化粧シート1を製造することができる。
〔化粧シートの着色方法〕
本実施形態の化粧シートの着色方法は、上記の本実施形態のリコート用化粧シートの前記表面層側に着色塗料を塗布し、前記不織布層を着色することを特徴とするものである。着色塗料としては、ステイン塗料(水性又は油性)等が挙げられる。
本実施形態のリコート用化粧シート1は不織布層30を有するため、繊維の空隙に水性ステイン塗料及び油性ステイン塗料等の着色塗料が入り込む着肉性を担保する。本実施形態の着色方法を用いて着色塗料を塗布することにより、リコート用化粧シートの最表面とともに、不織布層30の繊維部32に着色塗料が保持され、当該着色塗料による意匠を呈する化粧シートが得られる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
各実施例及び比較例で得られた化粧シートについて、以下の評価を行った。
<ステイナブル性の評価>
各実施例及び比較例で得られた化粧シートを、200mm×300mmの寸法で裁断し、水性ステイン剤(「Wステイン(商品名)」、大阪塗料工業株式会社製)、油性ステイン剤(「WOODFINISH(商品名)」、MINWAX社製)を各々均一に塗布し、乾燥させた。その後、ステイン部に幅25mmのセロハン粘着テープ(「セロテープ(登録商標)」、ニチバン株式会社製)を貼った後に引き剥がし、ステイン剤の状態を目視により以下の基準で評価して、ステイナブル性の評価とした。本評価において、A評価が合格である。
A:水性ステイン、油性ステインともに剥がれが確認されなかった。
B:水性ステインについては剥がれが確認された。
C:水性ステイン、油性ステインともに剥がれが確認された。
<表面特性(耐水性)の評価>
各実施例及び比較例で得られた化粧シートを、100mm×100mmの寸法で裁断し、水を含ませた脱脂綿を当該シートの表面に乗せて、当該脱脂綿をキャップにより覆うように配置して24時間放置した。その後、キャップを外して水をふき取り、表面の外観を目視により以下の基準で評価して、表面特性(耐水性)の評価とした。本評価において、A評価が合格である。
A:外観変化は確認されなかった。
B:表面にわずかな白化が確認された。
C:表面に著しい白化が確認された。
(実施例1)
紙基材として印刷紙(「HPT30(品番)」、北越紀州製紙株式会社製、厚さ:60μm、坪量:45g/m)を用意し、当該印刷紙に、アクリル樹脂をバインダー樹脂とし、顔料を含有するインキ(アクリル系樹脂をバインダーとし、顔料としてカーボンブラックを含有するインキ)を用いてグラビア印刷にて木目模様を呈する装飾層を形成した(厚さ:2〜6μm)。次いで、装飾層上に、接着層を形成する樹脂の組成物(ウレタン樹脂、主剤:ポリエステルポリオール(「セイカボンド E−295NTL−D50(品名)」、大日精化工業株式会社製)、イソシア系硬化剤(「セイカボンド C−55(品名)」、大日精化工業株式会社製)を用いてグラビア印刷により塗布し、接着層(厚さ:3μm)を設けた。
別途、レーヨン繊維からなる不織布(「3016(品番)」、金星製紙株式会社製、厚さ:80μm、坪量:17g/m)を用意し、上記装飾層及び接着層を形成した紙基材と、不織布とをドライラミネートすることで、紙基材、装飾層、接着層並びに充填部A及び繊維部からなる不織布層を有する積層体を得た。
次いで、当該積層体の不織布層側に、表面層を形成する組成物として、アクリルポリオール化合物1(水酸基価:41mgKOH/g)を100g、イソシアネート硬化剤(ヘキサメチレンジイソシアネート、イソシアネート基含有量:19質量%)を5g含む組成物を、塗布量12g/m(ドライベース)で塗布し、充填部B及び表面層を形成し、70℃で48時間養生して、紙基材、装飾層、接着層、充填部A、繊維部及び充填部Bからなる不織布層、並びに表面層を有するリコート用化粧シートを得た。
得られたリコート用化粧シートについて、上記の方法により評価した結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1において、表面層の形成に用いられる組成物について、アクリルポリオール化合物1をアクリルポリオール化合物2(水酸基価:24mgKOH/g)とし、イソシアネート硬化剤の使用量を5gから3gとした以外は、実施例1と同様にして、リコート用化粧シートを得た。
得られたリコート用化粧シートについて、上記の方法により評価した結果を表1に示す。
(比較例1〜4)
実施例1において、表面層の形成に用いられる組成物について、アクリルポリオール化合物1、イソシアネート硬化剤の使用量を、表1に示されるようにかえた以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。
得られた化粧シートについて、上記の方法により評価した結果を表1に示す。
Figure 2021160361
実施例の結果から、本実施形態のリコート用化粧シートは、ステイナブル性とともに、耐水性等の表面特性にも優れていることが確認された。
一方、比較例1の化粧シートは、残存水酸基の含有量が多く表面層の表面の水分との親和性が高すぎるため、耐水性に劣るものとなった。また比較例2及び3の化粧シートは、残存水酸基の含有量が少なく、また比較例3の化粧シートはモル比率(CNCO/COH)も0.20より小さいため、ステイナブル性、表面特性の少なくともいずれかの点で劣るものとなった。
比較例4の化粧シートについては、残存水酸基の含有量は適正だったものの、モル比率(CNCO/COH)が0.20よりも小さいことから、表面特性(耐水性)に劣るものとなった。
以上の結果から、残存水酸基の含有量とモル比率(CNCO/COH)とをいずれも満足しないと、ステイナブル性及び表面特性を両立し得ないことが確認された。
本実施形態のリコート用化粧シートは、ステイナブル性とともに、耐水性等の表面特性にも優れるものであるため、ステイン塗料等の着色塗料を用いて再塗装する用途、例えば壁、天井、床等の建築物の内裝材用又は外装用部材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具乃至造作部材の他、厨房機器、家具又は弱電、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内裝用又は外装用部材を構成する層として好適に用いられる。
1:リコート用化粧シート
10:紙基材
20:接着層
30:不織布層
30a:不織布層の接着層が設けられた面
30b:不織布層の表面層が設けられた面
31:充填部A
32:繊維部
33:充填部B
40:表面層
50:装飾層
51:全面着色層
52:絵柄層

Claims (9)

  1. 紙基材、接着層、不織布層、及び分子中に水酸基を有するポリオール化合物とイソシアネート硬化剤とを含む組成物の硬化物により構成される表面層を順に備え、
    前記不織布層は、層内の厚み方向の前記接着層が設けられた面側において、前記不織布層を構成する繊維の空隙の一部に前記接着層を形成する樹脂が充填してなる充填部Aと、層内の厚み方向の前記表面層が設けられた面側において、前記不織布層を構成する繊維の空隙の一部に前記硬化物が充填してなる充填部Bと、を部分的に有し、
    前記表面層に含まれる残存水酸基の含有量が、0.25質量%以上1.10質量%以下であり、
    前記イソシアネート硬化剤中のイソシアネート基量CNCO(mmol)と、前記ポリオール化合物中の水酸基量COH(mmol)と、の比率(CNCO/COH)が0.20以上である、
    リコート用化粧シート。
  2. 前記繊維が、熱可塑性樹脂繊維及び再生繊維から選ばれる少なくとも一種の繊維である請求項1に記載のリコート用化粧シート。
  3. 前記繊維が、セルロース樹脂繊維である請求項1又は2に記載のリコート用化粧シート。
  4. 前記接着層を形成する樹脂が、ウレタン樹脂及びポリオレフィン樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂である請求項1〜3のいずれか1項に記載のリコート用化粧シート。
  5. 前記ポリオール化合物が、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリカーボネートポリオールから選択される1種以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリコート用化粧シート。
  6. 前記イソシアネート硬化剤が、多価イソシアネート化合物である請求項1〜5のいずれか1項に記載のリコート用化粧シート。
  7. 前記紙基材と前記接着層との間に、更に装飾層を備える請求項1〜6のいずれか1項に記載のリコート用化粧シート。
  8. 前記装飾層が、木目模様を呈するものである請求項7に記載のリコート用化粧シート。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のリコート用化粧シートの前記表面層側の面に着色塗料を塗布し、前記不織布層を着色する、化粧シートの着色方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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