JP2021156978A - 眼鏡 - Google Patents

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知彦 服部
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Abstract

【課題】遠近両用眼鏡において、使用者が、意識的に視線の方向を上下方向に調整する必要がなく、特に、近くにある被観察物を見る際に、視線を下向きにして見る必要がなく、さらには、近くにある物を見る際に、被観察物が歪んで見えることを防止することができる遠近両用眼鏡を提供する。【解決手段】レンズ20Aは、遠用領域22Aと累進領域24Aと近用領域26Aを有し、レンズ20Bは、遠用領域22Bと累進領域24Bと近用領域26Bを有し、累進領域24A、24Bにおいては、ディオプトリーが、左右方向のみに累進するとともに、内側にいくほど左右方向の距離に略比例して大きくなり、累進領域24Aのディオプトリーと累進領域24Bのディオプトリーは、左右対称に形成されている。【選択図】図1

Description

本発明は、眼鏡に関するものであり、特に、遠近両用眼鏡に関するものである。
従来より、遠近両用眼鏡には、累進多焦点レンズが用いられてるものがあり、この累進多焦点レンズの例を示すと、図14に示すように、上側に設けられた遠用領域122と、下側に設けられた近用領域126と、遠用領域と近用領域の間に設けられた中間領域124が設けられている。
例えば、特許文献1の図3には、装用時に上方となる部分に、ほぼ一定の屈折率を持つ遠用領域21が設けられ、下方に、遠用領域21よりも高い屈折率を持つ近用領域23が設けられ、両者の中間に、屈折力が累進的に変化する中間領域22が設けられた累進屈折力レンズ(累進多焦点レンズとも呼ばれている)が開示されている。
また、遠近両用眼鏡において、境界線を挟んで、遠用領域と近用領域を有する、いわゆる二重焦点レンズが存在するが、この二重焦点レンズにおいても、特許文献2の遠近二重焦点レンズのように、レンズの上側に近視矯正用領域(つまり、遠用領域)があり、レンズの下側に遠視矯正用領域(つまり、近用領域)が設けられている。
特開2002−311397号公報 特開2008−185695号公報
しかし、従来の遠近両用眼鏡においては、上側に遠用領域が設けられ、下側に近用領域が設けられているので、遠くにある被観察物(つまり、眼鏡の使用者から遠くにある被観察物)を見るときは、視線を上向きにしてレンズの上側の遠用領域を通して見るとともに、近くにある被観察物(つまり、眼鏡の使用者の近くにある被観察物)を見るときには、視線を下向きに移動させて中間領域や近用領域を通して見なければならず、このように、レンズの使用者が、意識的に視線の方向を上下方向に調整しなければならないという問題があり、特に、近くにある被観察物を見る際には、顔の上下方向における正面方向よりも下側の方向に視線を移動させて見る必要があり、その際、顔を上向きにしなければならない。
また、累進多焦点レンズにおいて、中間領域や近用領域を通して近くにある被観察物を見ると、被観察物が歪んで見えるという問題がある。特に、中間領域においては、屈折力(つまり、度数(ディオプトリー))が累進的に変化しているので、被観察物が歪んで見えやすく、顔の正面方向にある被観察物であっても、被観察物を中間領域を通して見る場合には、被観察物が歪んで見えるという問題がある。
さらに、累進多焦点レンズにおける下側における左右両側の領域である端部領域127、129を通して被観察物を見る場合でも、物が歪んで見えるという問題がある。特に、人間は、近くの物を見る際には、視線を内側に向けて見る(つまり、左右の眼の瞳孔間距離が短くなる)ので、内側の端部領域127を通して見る傾向が高くなり、よって、近くの物が歪んで見えるという問題がある。
そこで、本発明は、遠近両用眼鏡において、使用者が、意識的に視線の方向を上下方向に調整する必要がなく、特に、近くにある被観察物を見る際に、視線を下向きにして見る必要がなく、さらには、近くにある物を見る際に、被観察物が歪んで見えることを防止することができる遠近両用眼鏡を提供することを目的とする。
本発明は上記問題点を解決するために創作されたものであって、第1には、右眼用レンズ(20A)と左眼用レンズ(20B)を有する眼鏡であって、右眼用レンズと左眼用レンズが、それぞれ累進領域を有し、右眼用レンズの累進領域である第1累進領域(24A)において、ディオプトリーが、左右方向のみに累進するとともに、ディオプトリーが、左眼用レンズ側である内側にいくほど左右方向の距離に略比例して(「左右方向の距離に比例して」としてもよい)大きくなり、左眼用レンズの累進領域である第2累進領域(24B)において、ディオプトリーが、左右方向のみに累進するとともに、ディオプトリーが、右眼用レンズ側である内側にいくほど左右方向の距離に略比例して(「左右方向の距離に比例して」としてもよい)大きくなり、第1累進領域におけるディオプトリーと、第2累進領域におけるディオプトリーが、左右対称に形成されていることを特徴とする。
第1の構成の眼鏡においては、右眼用レンズと左眼用レンズともに、ディオプトリーが、左右方向のみに累進するとともに、内側にいくほど左右方向の距離に略比例して大きくなるので、観察距離が短くなると両眼が自然に内側に輻輳するという眼の自然な動きによって、第1累進領域及び第2累進領域を通して被観察物を見ることができ、眼の自然な動きによって観察距離が短い被観察物を見ることができる。
また、第1累進領域におけるディオプトリーと、第2累進領域におけるディオプトリーが、左右対称に形成されているので、右眼の観察画像の歪みと左眼の観察画像の歪みが左右対称となり、歪みのない状態で被観察物を見ることができる。
また、第2には、上記第1の構成において、第1累進領域と第2累進領域の各累進領域におけるディオプトリーは、眼鏡を装着する使用者の瞳孔間距離であって、無限遠よりも短い観察距離で使用者の両眼の近点距離以上の長さの観察距離にある被観察物を観察した際の両眼の瞳孔間距離(d)に応じた関係であって、無限遠観察時の視線方向と直角方向の距離であって、無限遠観察時の視線(L0)のレンズにおける左右方向の位置から左右方向の距離である左右方向距離(x)と、該左右方向距離に応じたディオプトリーとの関係に基づき設定され、眼を内側に輻輳させて各累進領域を通して見ることにより、該左右方向距離に応じた観察距離の被観察物に眼の焦点が合うことを特徴とする
よって、眼鏡の使用者の瞳孔間距離(d)に応じた左右方向距離(x)とディオプトリーの関係に基づき、各累進領域におけるディオプトリーが設定され、眼を内側に輻輳させて各累進領域を通して見ることにより、該左右方向距離に応じた観察距離の被観察物に眼の焦点が合うように構成されているので、使用者に適したディオプトリーが設定された眼鏡とすることができる。
また、第3には、上記第1又は第2の構成において、右眼用レンズにおいて、第1累進領域の外側には第1遠用領域(22A)が連設され、第1累進領域と第1遠用領域の間の仮想境界面(30A)の左右方向の位置は、眼鏡を装着する使用者の右眼の無限遠観察時の視線の左右方向の位置と略一致し、左眼用レンズにおいて、第2累進領域の外側には第2遠用領域(22A)が連設され、第2累進領域と第2遠用領域の間の仮想境界面(30B)の左右方向の位置は、眼鏡を装着する使用者の左眼の無限遠観察時の視線の左右方向の位置と略一致することを特徴とする。
よって、第1累進領域と第1遠用領域の間の仮想境界面の左右方向の位置は、眼鏡を装着する使用者の右眼の無限遠観察時の視線の左右方向の位置と略一致するとともに、第2累進領域と第2遠用領域の間の仮想境界面の左右方向の位置は、眼鏡を装着する使用者の左眼の無限遠観察時の視線の左右方向の位置と略一致しているので、無限遠観察距離よりも短い観察距離の被観察物を見る場合には、両眼が自然に内側に輻輳し、第1累進領域と第2累進領域を通して被観察物を観察することができる。
また、第4には、上記第3の構成において、第1遠用領域の全ての領域において、ディオプトリーは、第1累進領域の第1遠用領域側の端部のディオプトリーと同一に形成され、第2遠用領域の全ての領域において、ディオプトリーは、第2累進領域の第2遠用領域側の端部のディオプトリーと同一に形成されていることを特徴とする。
よって、近くの被観察物は見えにくいが、遠くの被観察物は支障なく見える、いわゆる老視(老眼)の人向きの遠近両用眼鏡を提供することができる。
また、第5には、上記第1から第4までのいずれかの構成において、右眼用レンズにおいて、第1累進領域の内側には第1近用領域(26A)が設けられ、第1近用領域の全ての領域において、ディオプトリーは、第1累進領域の第1近用領域側の端部のディオプトリーと同一に形成され、左眼用レンズにおいて、第2累進領域の内側には第2近用領域(26B)が設けられ、第2近用領域の全ての領域において、ディオプトリーは、第2累進領域の第2近用領域側の端部のディオプトリーと同一に形成されていることを特徴とする。
なお、上記第1から第5までのいずれかの構成において、第1累進領域の外側の端部のディオプトリーと、第2累進領域の外側の端部のディオプトリーは、±0(D)であることを特徴とするものとしてもよい。
本発明に基づく眼鏡によれば、右眼用レンズと左眼用レンズともに、ディオプトリーが、左右方向のみに累進するとともに、内側にいくほど左右方向の距離に略比例して大きくなるので、観察距離が短くなると両眼が自然に内側に輻輳するという眼の自然な動きによって、第1累進領域及び第2累進領域を通して被観察物を見ることができ、眼の自然な動きによって観察距離が短い被観察物を見ることができる。
また、第1累進領域におけるディオプトリーと、第2累進領域におけるディオプトリーが、左右対称に形成されているので、右眼の観察画像の歪みと左眼の観察画像の歪みが左右対称となり、歪みのない状態で被観察物を見ることができる。
本実施例の眼鏡の要部正面図である。 本実施例の眼鏡を説明するための説明図である。 本実施例の眼鏡を説明するための説明図である。 本実施例の眼鏡を説明するための説明図である。 本実施例の眼鏡のレンズの設計方法を説明するための説明図である。 図5の要部拡大図である。 本実施例の眼鏡のレンズの設計方法を説明するための説明図である。 距離xとディオプトリーの関係を示す説明図である。 5m観察時の瞳孔間距離dの測定方法を説明するための説明図である。 5m観察時の瞳孔間距離dの測定方法を説明するための説明図である。 無限遠観察時の眼鏡の作用を説明するための説明図である。 短い観察距離での観察時の眼鏡の作用を説明するための説明図である。 本実施例の眼鏡の他の例を示す要部正面図である。 従来の遠近両用眼鏡を示す説明図である。
本発明においては、遠近両用眼鏡において、使用者が、意識的に視線の方向を上下方向に調整する必要がなく、特に、近くにある被観察物を見る際に、視線を下向きにして見る必要がなく、さらには、近くにある物を見る際に、被観察物が歪んで見えることを防止することができる遠近両用眼鏡を提供するという目的を以下のようにして実現した。
本発明に基づく眼鏡5は、遠近両用眼鏡であり、図1、図2に示すように構成され、眼鏡5は、フレーム10と、フレーム10に取り付けられたレンズ20A、20Bを有している。フレーム10は、フロント12と、フロント12の左右両側の端部に設けられたテンプル(図示せず)とを有し、テンプルは、フロント12に対して回動自在に設けられている。
ここで、フロント12は、フロント12の右側を構成する右側構成部12Aと、フロント12の左側を構成する左側構成部12Bと、右側構成部12Aと左側構成部12Bを連結するブリッジ12Cと、右側構成部12Aと右側のテンプルを連設するための智(図示せず)と、左側構成部12Bと左側のテンプルを連結するための智(図示せず)とを有している。右側構成部12Aには、右眼用のレンズ20Aが設けられ、左側構成部12Bには、左眼用のレンズ20Bが設けられている。
レンズ(右眼用レンズ)20Aは、遠用領域(第1遠用領域)22Aと、遠用領域22Aからレンズ20Aの内側(レンズ20B側)に連設された累進領域(第1累進領域)24Aと、累進領域24Aからレンズ20Aの内側に連設された近用領域(第1近用領域)26Aとを有し、図2における斜め方向にハッチングされた領域(右上から左下方向の直線によりハッチングされた領域)が遠用領域22Aであり、横方向にハッチングされた領域が累進領域24Aであり、斜め方向にハッチングされた領域(左上から右下方向の直線によりハッチングされた領域)が近用領域26Aである。すなわち、レンズ20Aにおいては、眼鏡5の左右方向(X1−X2方向)における外側(テンプルが設けられる側)から内側(ブリッジ12C側)に向けて、遠用領域22A、累進領域24A、近用領域26Aの順に設けられている。なお、眼鏡5の左右方向は、水平方向のうちの1つの方向であり、水平方向において前後方向に対して直角の方向である。また、レンズ20Aにおいては、他のレンズ(つまり、レンズ20B)側が内側となり、レンズ20B側とは反対側が外側となる。
遠用領域22Aと累進領域24Aの仮想境界面30A(以下「境界面30A」とする)と、累進領域24Aと近用領域26Aの仮想境界面32A(以下「境界面32A」とする)は、眼鏡5の上下方向(Y1−Y2方向)に形成され、境界面30Aと境界面32Aは、互いに平行になっている。なお、レンズ20Aとレンズ20Bは、仮想中心面Pを介して左右面対称に形成されているが、境界面30Aと境界面32Aは、仮想中心面Pと平行となっていて、境界面30Aと境界面32Aは左右方向を向いている。つまり、仮想中心面P、仮想境界面30A、32A、仮想境界面30B、32B(後述)は、上下方向(Y1−Y2方向)及び前後方向に形成された仮想平面である。なお、眼鏡5や、眼鏡5を構成するレンズ20A、20Bやフロント12における左右方向とは、仮想中心面Pに対して直角の方向であるといえる。
ここで、レンズ20Aにおいて、累進領域24Aの外側に連設された遠用領域22Aの調整力(ディオプトリ)は、±0(D)に形成されていて、遠用領域22Aの全ての領域にわたって±0Dに形成されている。
また、レンズ20Aにおいて、累進領域24Aの内側に連設された近用領域26Aの調整力(ディオプトリー)は、+3(D)に形成されていて、近用領域26Aの全ての領域にわたって+3Dに形成されている。
また、累進領域24Aにおいては、調整力(ディオプトリー)が、左右方向に連続的に変化するように形成され、レンズ20Aの外側から内側に向けて、ディオプトリーが増加するように形成され、累進領域24Aの遠用領域22A側の端部のディオプトリーが、遠用領域22Aの累進領域24A側の端部のディオプトリーと同一(つまり、±0(D))であり、累進領域24Aの近用領域26A側の端部のディオプトリーが、近用領域26Aの累進領域24A側の端部のディオプトリーと同一(つまり、+3(D))であり、累進領域24Aにおいては、遠用領域22A側の端部のディオプトリーである±0Dから近用領域26A側の端部のディオプトリーである+3(D)に向けて、ディオプトリーが、レンズにおける左右方向の距離に対して比例して増加している。つまり、左右方向の距離とディオプトリーとが正比例の関係にあり、レンズ20B側である内側にいくほど左右方向の距離に比例して大きくなる。なお、この累進領域24Aにおいては、上下方向(つまり、境界面30A、32Aと平行な方向)には、同一のディオプトリーとなっている。つまり、累進領域24Aにおけるディオプトリーは、左右方向のみに累進するように構成されている。
なお、遠用領域22Aと累進領域24Aの境界面30Aの左右方向における位置は、図4に示すように、眼鏡5を挿着した使用者が無限遠を見る状態での眼(右眼)MAの視線L0(つまり、無限遠観察時の視線)がレンズ20Aを通る位置(左右方向における位置)(具体的には、図5、図6における中心点Kの位置)と一致(略一致としてもよい)する。つまり、境界面30Aの左右方向の位置は、眼鏡5を装着する使用者の右眼の無限遠観察時の視線の左右方向の位置と一致(略一致としてもよい)する。無限遠観察時における右眼の視線と左眼の視線は平行である。なお、境界面30Aの左右方向の位置は、眼鏡5を装着する使用者の右眼の無限遠観察時の視線の左右方向の位置と一致するように設計されているが、眼鏡5の掛け具合によって視線の左右方向の位置は微妙に変化するので、厳密には、境界面30Aの左右方向の位置は、眼鏡5を装着する使用者の右眼の無限遠観察時の視線の左右方向の位置と略一致するといえる。図3のように、眼鏡5を装着した状態の正面視においては、眼MAの瞳孔中心NA(視線L0は、この瞳孔中心NAを通る)の左右方向の位置は、境界面30Aの左右方向の位置と略一致する。
また、累進領域24Aの左右方向の長さ(つまり、累進領域長さWA)は、後述するように、使用者の瞳孔間距離dに基づき、所定の計算式(式(I)(後述))において、ディオプトリーが+3(D)となるxの値が示す長さであり、境界面32Aの左右方向における位置は、境界面30Aから内側に向けて累進領域長さWAだけ移動した位置である。
また、レンズ(左眼用レンズ)20Bは、仮想中心面Pを介して、レンズ20Aと左右面対称に形成されている。すなわち、レンズ20Bは、遠用領域(第2遠用領域)22Bと、遠用領域22Bからレンズ20Bの内側(レンズ20A側)に連設された累進領域(第2累進領域)24Bと、累進領域24Bからレンズ20Bの内側に連設された近用領域(第2近用領域)26Bとを有し、図2における斜め方向にハッチングされた領域(右上から左下方向の直線によりハッチングされた領域)が遠用領域22Bであり、横方向にハッチングされた領域が累進領域24Bであり、斜め方向にハッチングされた領域(左上から右下方向の直線によりハッチングされた領域)が近用領域26Bである。すなわち、レンズ20Bにおいては、眼鏡5の左右方向における外側(テンプルが設けられる側)から内側(ブリッジ12C側)に向けて、遠用領域22B、累進領域24B、近用領域26Bの順に設けられている。なお、レンズ20Bにおいては、他のレンズ(つまり、レンズ20A)側が内側となり、レンズ20A側とは反対側が外側となる。
遠用領域22Bと累進領域24Bの仮想境界面30B(以下「境界面30B」とする)と、累進領域24Bと近用領域26Bの仮想境界面32B(以下「境界面32B」とする)は、眼鏡5の上下方向(Y1−Y2方向)に形成され、境界面30Bと境界面32Bは、互いに平行になっている。境界面30Bと境界面32Bは、仮想中心面Pと平行となっていて、境界面30Aと境界面32Aは左右方向を向いている。
ここで、レンズ20Bにおいて、累進領域24Bの外側に連設された遠用領域22Bの調整力(ディオプトリー)は、±0(D)に形成されていて、遠用領域22Bの全ての領域にわたって±0(D)に形成されている。
また、レンズ20Bにおいて、累進領域24Bの内側に連設された近用領域26Bの調整力(ディオプトリー)は、+3(D)に形成されていて、近用領域26Bの全ての領域にわたって+3(D)に形成されている。
また、累進領域24Bにおいては、ディオプトリーが、左右方向に連続的に変化するように形成され、レンズ20Bの外側から内側に向けて、ディオプトリーが増加するように形成され、累進領域24Bの遠用領域22B側の端部のディオプトリーが、遠用領域22Bの累進領域24B側の端部のディオプトリーと同一(つまり、±0(D))であり、累進領域24Bの近用領域26B側の端部のディオプトリーが、近用領域26Bの累進領域24B側の端部のディオプトリーと同一(つまり、+3(D))であり、累進領域24Bにおいては、遠用領域22B側の端部のディオプトリーである±0(D)から近用領域26B側の端部のディオプトリーである+3(D)に向けて、ディオプトリーが、レンズにおける左右方向の距離に対して比例して増加している。つまり、左右方向の距離とディオプトリーとが正比例の関係にあり、レンズ20A側である内側にいくほど左右方向の距離に比例して大きくなる。なお、この累進領域24Bにおいては、上下方向(つまり、境界面30B、32Bと平行な方向)には、同一のディオプトリーとなっている。つまり、累進領域24Bにおけるディオプトリーは、左右方向のみに累進するように構成されている。
累進領域24Bにおけるディオプトリーは、累進領域24Aにおけるディオプトリーと左右対称に形成されていて、累進領域24Bの左右方向における任意の位置のディオプトリーは、累進領域24Aにおける該任意の位置と左右対称の位置のディオプトリーと同一に形成されていて、累進領域24Bにおいて、ディオプトリーがレンズ20Bの内側に向けて増加する増加率(つまり、累進率)は、累進領域24Aにおいて、ディオプトリーがレンズ20Aの内側に向けて増加する増加率(つまり、累進率)と同一となっている。つまり、累進領域24Aにおけるディオプトリーの累進率と、累進領域24Bにおけるディオプトリーの累進率は、左右対称に形成されている。
なお、遠用領域22Bと累進領域24Bの境界面30Bの左右方向における位置は、図4に示すように、眼鏡5を挿着した使用者が無限遠を見る状態での眼(左眼)MBの視線L0(つまり、無限遠観察時の視線)がレンズ20Bを通る位置(左右方向における位置)(具体的には、図7における中心点Kの位置)と一致(略一致としてもよい)する。つまり、境界面30Bの左右方向の位置は、眼鏡5を装着する使用者の左眼の無限遠観察時の視線の左右方向の位置と一致(略一致としてもよい)する。なお、境界面30Bの左右方向の位置は、眼鏡5を装着する使用者の左眼の無限遠観察時の視線の左右方向の位置と一致するように設計されているが、眼鏡5の掛け具合によって視線の左右方向の位置は微妙に変化するので、厳密には、境界面30Bの左右方向の位置は、眼鏡5を装着する使用者の左眼の無限遠観察時の視線の左右方向の位置と略一致するといえる。図3のように、眼鏡5を装着した状態の正面視においては、眼MBの瞳孔中心NB(視線L0は、この瞳孔中心NBを通る)の左右方向の位置は、境界面30Bの左右方向の位置と略一致する。
また、累進領域24Bの左右方向の長さ(つまり、累進領域長さWB)は、後述するように、使用者の瞳孔間距離dに基づき、所定の計算式(式(I)(後述))において、ディオプトリーが+3(D)となるxの値が示す長さであり、境界面32Bの左右方向における位置は、境界面30Bから内側に向けて累進領域長さWBだけ移動した位置である。
なお、レンズ20Aとレンズ20Bの材質は任意であり、例えば、ガラスでもプラスチックでもよい。
次に、レンズ20A、20Bの設計方法について説明する。図5、図6に示すように、使用者が使用者の眼MAの無限遠側の端部(以下「眼端部」とする)Sから5(m)の距離(これを「基準観察距離」とする)の被観察物(以下「5m被観察物」とする)を見る場合(つまり、5m観察時)の両眼の瞳孔間距離をd(m)とし、5m被観察物を見た場合の視線L1とレンズ20Aの中心線Rとの交点Dと、眼端部からα(m)の位置の被観察物を見た場合の視線L2と中心線Rとの交点I間の距離(つまり、観察距離5m時の視線のレンズ上の位置(交点D)と観察距離αm時の視線のレンズ上の位置(交点I)間の距離)をx(m)とし、瞳孔間距離の中点Aを通り視線L0と平行な直線L3と中心線Rとの交点Jと、交点D間の長さ(つまり、5m観察時の視線L1と中点Aを通る正中線(L3)間の距離)をy(m)とし、中心点K(後述)と交点D間の距離(無限遠観察時のレンズ上の位置(中心点K)と5m観察時のレンズ上の位置(交点D)間の距離)をz(m)とする。
なお、中心線Rは、使用者の無限遠を見た場合の視線L0とレンズ20Aの外側の面の交点(第1交点)と、視線L0とレンズ20Aの内側の面の交点(第2交点)間の直線の中心点(該第1交点及び第2交点から等距離の点)Kを通り、視線L0に対して直角な直線である。
また、瞳孔間距離の中点Aは、両眼の眼端部Sを結ぶ直線において、一対の眼端部Sから等距離の点である。
また、5m被観察物を見た場合の瞳孔中心を示す点Cは、眼端部Sを通り、中心線Rと平行な直線L4上に位置するものと近似する。
また、眼端部Sと中心点K間の距離を10×10-3(m)とし、眼MAの形状を球体とし、その半径を12.5×10-3(m)であるとする。
上記の前提に基づき、視線L1と直線L3の交点を交点Bとし、交点Dを通り視線L0と平行な直線L5と直線L4との交点を交点Eとした場合に、中点Aと交点Bと点Cがなす三角形と、交点Eと交点Dと点Cがなす三角形に注目すると、式(A)が成り立つ。
Figure 2021156978
この式(A)からは、式(B)が導かれる。
Figure 2021156978
次に、眼MAの中心Fを通り、視線L0に対して直角の直線L6と、点Cを通り、視線L0と平行な直線L7の交点を交点Gとした場合に、中点Aと交点Bと点Cがなす三角形と、交点Gと点Cと中心Fがなす三角形に注目すると、式(C)が成り立つ。
Figure 2021156978
この式(C)からは、式(D)が導かれる。
Figure 2021156978
次に、視線L2と直線L3の交点を交点Hとした場合に、交点Jと交点Hと交点Iがなす三角形と、中心点Kと中心Fと交点Iがなす三角形に注目すると、式(E)が成り立つ。
Figure 2021156978
この式(E)からは、式(F)が導かれる。
Figure 2021156978
そして、式(F)に、式(B)と式(D)を代入すると、式(G)が導かれる。
Figure 2021156978
ここで、D(x)(D(ディオプトリー))をレンズ焦点距離αにおけるレンズの屈折力とすると、D(x)=1/αであるが、使用者にもともと備わっている調整力をD0(D(ディオプトリー))とすると、上記距離xにおける必要な補正調整力(D(x))は、D(x)=1/α−D0となり、例えば、使用者が70歳代の場合には、70歳代の人の眼の調整力は、平均0.25(D)であるとされているので、D(x)=1/α−0.25(式(H))となる。
すると、式(H)に式(G)を代入すると、式(I)となり、距離xと瞳孔間距離dを変数とする式となる。
Figure 2021156978
式(I)において、瞳孔間距離dは、使用者に依存する測定可能な変数であることから、瞳孔間距離dを特定することにより、距離xを変数とする式とすることができる。
ここで、瞳孔間距離dが、55×10-3(m)、58×10-3(m)、61×10-3(m)、64×10-3(m)、67×10-3(m)、70×10-3(m)の場合を例にとって、距離xが0.0000〜0.0024(m)の場合のD(x)の値を計算してグラフにすると、図8に示すようになる。
つまり、距離xの値が大きくなるほど、必要な補正調整力の値(D)は大きくなり、xとD(x)はほぼ正比例(つまり、略比例)することが分かる。すなわち、式(I)は、、xとD(x)の関係が正比例することを示すものではないが、xとD(x)の関係をグラフにすることにより、図8のようにほぼ正比例することが分かった。
そこで、使用者の瞳孔間距離dを測定しておくことにより、距離xの値におけるD(x)の値が計算できるので、レンズ20Aにおける距離xの位置(つまり、交点Iの位置)のディオプトリーを決定できる。
また、視線L1は5m観察時のものであり、5m観察時を無限遠観察時と近似すれば、zの値を0に近似でき、すると、xの値は、中心点Kと交点Iとの間の距離となり、レンズ20Aにおける境界面30Aの位置は、中心点Kの位置となるので、xの値は、境界面30Aからの距離となる。
なお、図8に示されるように、x=0.0000の位置では、D(x)はほぼ0(D)となるので、x=0.0000(これをx1とする)の位置(つまり、境界面30Aの位置)のD(x)を0とし、計算によりD(x)が3(D)となるx(これをx2とする)の位置におけるディオプトリーを+3(D)とし、座標(x1,D(x1))と座標(x2,D(x2))間で正比例するように、x1とx2間のxにおいて、D(x)の値を決定すればよく、決定されたディオプトリーに従いレンズを加工する。これにより、累進領域24A、24Bにおいては、ディオプトリーが、レンズの内側にいくほど左右方向の距離に比例して大きくなる。
図8によれば、瞳孔間距離dが長いほど、xの単位長さに対するD(x)の増加量は小さい、つまり、比例直線の傾きが緩やかであるといえる。
なお、上記の説明では、累進領域24A、24Bにおいては、ディオプトリーが、レンズの内側にいくほど左右方向の距離に比例して大きくなるとしたが、ディオプトリーが、レンズの内側にいくほど左右方向の距離に略比例して大きくなる構成であればよい。例えば、距離xに対するD(x)の計算値は、正確に比例するのではなく略比例するので、計算値に従ってレンズを加工することにより、ディオプトリーが、レンズの内側にいくほど左右方向の距離に略比例して大きくなる構成となる。具体的には、xを0.0001(m)ごとに計算されたD(x)の値に従いレンズを加工し、より具体的には、xが0.0000(m)〜0.0001(m)の範囲では、±0(D)とし、0.0001〜0.0002(m)の範囲では、xが0.0001(m)におけるD(x)の計算値のディオプトリーとする。なお、丁度比例する場合(つまり、正確に比例する場合)も、略比例する場合を満たしているので、略比例する場合に当然含まれるといえる。
上記の説明において、瞳孔間距離dは、5m観察時の瞳孔間距離であるとしたが、図5に従って、上記の式(A)、式(C)、式(E)の関係が成り立てばよいので、5m観察距離(基準観察距離)は、無限遠よりも短い距離の被観察物を観察した際の観察距離であればよい。ただし、距離αは、累進領域24Aにより調整力の補正を行う場合の観察距離であるので、瞳孔間距離dは、使用者(特に、老視を有する使用者)にとって調整力の補正が必要ない長さ(つまり、使用者の眼の近点距離)よりも長くする。例えば、使用者の眼の調整力が0.25(D)の場合の近点距離は、4(m)であり、観察距離が4(m)よりも長い位置の被観察物については調整力の補正を行わなくても眼の焦点が合うので、基準観察距離は4(m)以上あればよい。つまり、基準観察距離は、無限遠よりも短い距離の被観察物を観察した際の観察距離で、使用者の眼の近点距離以上の距離であればよい。なお、60歳代の人の眼の調整力は1.0(D)とされていて、1.0(D)の近点距離は1(m)であるが、基準観察距離が1m程度あればz=0に近似できるので、基準観察距離は1(m)以上程度あればよいといえる。
つまり、累進領域24Aと累進領域24Bの各累進領域におけるディオプトリーは、眼鏡を装着する使用者の瞳孔間距離であって、無限遠よりも短い観察距離で使用者の両眼の近点距離以上の長さの観察距離にある被観察物を観察した際の両眼の瞳孔間距離dに応じた関係であって、無限遠観察時の視線方向と直角方向の距離であって、無限遠観察時の視線(L0)のレンズにおける左右方向の位置(つまり、中心点Kの左右方向の位置)から左右方向の距離(左右方向距離)xと、距離xに応じたディオプトリー(つまり、D(x))との関係に基づいて設定されていて、眼を内側に輻輳させて各累進領域24A、24Bを通して見ることにより、距離xに応じた観察距離の被観察物に眼の焦点が合うようになっている。
なお、図5が眼(右眼)20Aについて説明したものとすると、眼(左眼)20Bについては、直線L3を介して左右線対称にしたものとなる(図7参照)が、累進領域24Aと累進領域24Bは左右対称であるので、xとD(x)の関係は上記と同様となる。
ここで、5m観察時の瞳孔間距離dの測定方法について説明する。眼鏡5を使用しようとする者に対して、図9に示すように、眼鏡フレーム40を装着してもらい、以下に説明するように、測定を行う。この眼鏡フレーム40は、レンズの入っていないフレームであり、フロント42と、フロント42の左右両側の端部に設けられたテンプル44とを有し、テンプル44は、フロント42に対して回動自在に設けられている。フロント42には、フロント42の左右両側の端部にリファレンスポイント42A、42Bが設けられている。リファレンスポイント42Aとリファレンスポイント42Bは、左右対称の位置に設けられている。このリファレンスポイント42A、42Bの色は、リファレンスポイント42A、42Bを画像認識できるように、フロント42の色とは異なる色で形成され、目印部材(例えば、円形の板状部材)をフロント42に接着等によって取り付けることにより、リファレンスポイント42A、42Bが形成される。なお、目印部材を取り付ける方法以外の方法でリファレンスポイントを形成してもよく、例えば、印刷を施すことによりリファレンスポイントを形成してもよい。
眼鏡フレーム40を装着した使用者100には、図10に示すように、撮影用枠50を通して、被観察物90を観察してもらい、撮影用枠50の下方からカメラ80により撮影を行なう。
この撮影用枠50は、枠本体51と、枠本体51に取り付けられた透明板70を有し、枠本体51は、板状の正面部52と、板状の背面部54と、板状の左面部56と、板状の右面部58と、板状の上面部60を有し、正面部52と背面部54と左面部56と右面部58とで四角筒状に形成され、正面部52と背面部54と左面部56と右面部58の上端が上面部60に固定されている。正面部52と背面部54は、左面部56や右面部58よりも短く形成され、正面部52の上端と上面部60間には隙間52Sが形成されるとともに、背面部54の上端と上面部60間には隙間54Sが形成され、これらの隙間を通して、枠本体51の正面側から背面側に設けられた被観察物を見ることができる。また、左面部56と右面部58間には、ガラス等により形成された透明板70が固定して設けられ、透明板70は、鉛直方向に対して45度に傾斜して設けられ、具体的には、透明板70の上端が正面側で下端が背面側となるように、傾斜して設けられている。
また、カメラ80は、撮影用枠50の下方に設けられ、カメラ80のレンズを上方に向けることにより、透明板70を撮影するように配置されている。
つまり、使用者100が、撮影用枠50を挟んで使用者の反対側に位置する被観察物90を透明板70を通して見ている状態で、カメラ80により透明板70を撮影することにより、透明板70に写った使用者100を撮影することができる。
そして、5m観察時の瞳孔間距離dについては、被観察物90を使用者100の眼端部(図5〜図7の眼端部Sに示す位置)から5mの位置に配置して(つまり、眼端部と被観察物90間の距離(観察距離)Uを5mとする)、使用者100が該被観察物を見ている状態をカメラ80により撮影する。その後、撮影した画像に従い、使用者100の左右の眼の瞳孔間距離dを測定する。つまり、撮影画像におけるリファレンスポイント42Aとリファレンスポイント42B間の画素数と、瞳孔間の画素数を比較し、その比率とリファレンスポイント42Aとリファレンスポイント42B間の実際の距離に従い、瞳孔間距離dを計算する。すなわち、瞳孔間距離d(m)=リファレンスポイント間の実測距離V(m)×瞳孔間の画素数/リファレンスポイント間の画素数の計算式により計算する(図9参照)。
以上のように、使用者について、5m観察時の瞳孔間距離dを測定することができるので、xとD(x)の関係を導くことができ、導き出されたxとD(x)の関係に従い、レンズを設計することができる。
次に、本実施例の眼鏡5の使用方法について説明する。眼鏡5の使用に際しては、通常の眼鏡と同様に使用し、テンプルを耳に係止させて、フロント12及びレンズ20A、20Bを顔の位置に装着して使用する。
眼鏡5を装着した状態で、無限遠を見る場合、図11に示すように、観察距離Zが無限遠の場合には、使用者は、遠用領域22A、22Bを通して無限遠を見ることになる。厳密には、無限遠観察時の視線の方向に境界面30A、30Bがあるので、遠用領域22Aと累進領域24Aの境界及び遠用領域22Bと累進領域24Bの境界を通して観察される。
なお、図11に示すように、遠用領域22Aと累進領域24Aの境界及び遠用領域22Bと累進領域24Bの境界を通して無限遠を見る場合(つまり、観察距離Zが無限遠の位置にある被観察物を見る場合)には、遠用領域22Aと累進領域24Aの境界及び遠用領域22Bと累進領域24Bの境界における調整力は±0(D)であるので、右眼で見た観察画像と左眼で見た観察画像は、とも歪むことがなく、右眼画像と左眼画像を結合した認識画像は歪むことがない。
次に、観察距離が無限遠よりも近くなってくると、両眼が内側に輻輳して瞳孔が内側に向いていき、累進領域24A、24Bを通して被観察物を見ることになり、これにより、使用者の調節力が補正され、眼の焦点を合わせることができる。そして、観察距離が短くなっていくと、その分、眼が内側に輻輳し、眼が内側に輻輳することにより、累進領域24A、24Bにおけるより内側の領域を通して被観察物を見ることから、累進領域24A、24Bの内側にいくほど、ディオプトリーが大きくなるので、観察距離が短くなっても眼の焦点を合わすことができる。
なお、観察距離が短くなると、両眼が自然に内側に輻輳するが、両眼が内側に輻輳することにより、累進領域24A、24Bを通して被観察物を観察することになり、観察距離が短い場合の眼の自然な動きを行なうことにより、累進領域24A、24Bによって補正された調整力を得て、眼の焦点を合わせることができる。
特に、境界面30Aの左右方向の位置は、眼鏡5を装着する使用者の右眼の無限遠観察時の視線の左右方向の位置と略一致し、境界面30Bの左右方向の位置は、眼鏡5を装着する使用者の左眼の無限遠観察時の視線の左右方向の位置と略一致するので、無限遠観察距離よりも短い観察距離の被観察物を見る場合には、両眼が自然に内側に輻輳することにより、累進領域24Aと累進領域24Bを通して被観察物を観察することになる。
また、観察距離がさらに短くなると、近用領域26A、26Bを通して被観察物を見ることになる。
ここで、従来からの眼鏡においても、累進領域を通して被観察物を見る場合には、被観察物が歪んで見えるとされており、本実施例の眼鏡5においても、累進領域24Aを通して見た右眼の観察画像と、累進領域24Bを通して見た左眼の観察画像のそれぞれにおいては、被観察物が歪んで見えるが、累進領域24Aのディオプトリーと累進領域24Bのディオプトリーとは、左右対称(つまり、左右面対称)に形成され、累進領域24A、24Bにおいて、境界面30Aと境界面30Bから同一距離の位置における調整力(つまり、ディオプトリー)は、同一に形成されているので、被観察物を両眼で見て、右眼で見た場合の観察画像と左眼で見た場合の観察画像を結合した認識画像においては、右眼の観察画像の歪みと左眼の観察画像の歪みが左右対称であるので、歪みが相殺されて、歪みのない状態で被観察物を見ることができる(図12参照)。つまり、近用領域26A、26Bを通して見る場合よりも累進領域24A、24Bを通して見る場合の方が被観察物が歪んで見えるが、上記のように累進領域24Aと累進領域24Bが左右対称なので、歪みのない状態で被観察物を見ることができる。また、観察距離がさらに短くなり、両眼で近用領域26A、26Bを通して被観察物を見る場合でも、近用領域26A、26Bのディオプトリーは同一であり、右眼の観察画像の歪みと左眼の観察画像の歪みが左右対称であるので、歪みが相殺されて、歪みのない状態で被観察物を見ることができる。
なお、被観察物を顔の正面ではなく、斜め方向から見た場合には、右眼の観察画像の歪みと左眼の観察画像の歪みが左右対称とはならないが、少なくともいずれかの眼は、累進領域又は近用領域を通して観察するので、眼の焦点を合わすことができる。例えば、顔の正面よりも右側に位置する被観察物を両面を右方向に輻輳させて観察する場合には、右眼は、遠用領域22Aを通して見る可能性があるが、左眼については、累進領域24B又は近用領域26Bを通して見るので、左眼の焦点を合わせることができる。ただし、左眼のみ焦点が合い、累進領域24B又は近用領域26Bを通して見る場合には、認識画像は歪むことになる。一方、顔の正面よりも左側に位置する被観察物を両面を左方向に輻輳させて観察する場合には、左眼は、遠用領域22Bを通して見る可能性があるが、右眼については、累進領域24A又は近用領域26Aを通して見るので、右眼の焦点を合わせることができる。ただし、右眼のみ焦点が合い、累進領域24A又は近用領域26Aを通して見る場合には、認識画像は歪むことになる。
ただし、被観察物を見る場合には、通常は斜め方向から見ることはなく、通常被観察物が顔のほぼ正面(左右方向におけるほぼ中央)に位置した状態とするので、上記のように、右眼の観察画像の歪みと左眼の観察画像の歪みが左右対称となり、歪みのない状態で被観察物を見ることができる。
ここで、上記のように、観察距離が5m未満になると、累進領域24A、24Bを通して被観察物を見ることになるが、70歳代の人の眼の調整力は、平均+0.25(D)であるとされているので、+0.25(D)ということは、観察距離が無限遠から4(m)までは焦点が合うことができるので、遠用領域22A、22Bにおいても、特に問題なく、焦点を合わすことができる。
また、累進領域24A、24Bにおけるディオプトリーの上限を+3(D)としたが、使用者の眼の調整力が+0.25(D)とすると、累進領域24A、24Bの最も内側及び近用領域26A、26Bでは、補正後の調整力が3.25(D)となり、そうすると、+3.25(D)の焦点距離は、約0.3(m)となる。これは、観察距離が約30(cm)ということであり、通常の生活における観察距離としては、最短約30(cm)あれば十分であることから、累進領域24A、24Bの最も内側及び近用領域26A、26Bにおける調整力を+3(D)とすることにより、日常生活には支障ないといえる。
つまり、日常生活において、近用領域26A、26Bを通して被観察物を見る機会は少ないといえ、観察距離が30(cm)よりも短くなると、近用領域26A、26Bを通して被観察物を見ることになるが、補正後の調整力が3.25(D)であるので、焦点が若干合わない場合があるとしても、被観察物を認識することはできるといえる。
レンズ20A、20Bは上記のように構成されていて、累進領域24A、24Bと近用領域26A、26Bにより、近くのものを見やすくし、遠用領域22A、22Bにおいては、±0(D)で調整力を補正していないので、近くの被観察物は見えにくいが、遠くの被観察物は支障なく見える、いわゆる老視(老眼)の人向きの遠近両用眼鏡であるといえる。
以上のように、本実施例の眼鏡5によれば、観察距離が短くなると両眼が自然に内側に輻輳するという眼の自然な動きによって、累進領域24A、24Bを通して被観察物を見ることができるので、従来のように、使用者が、意識的に視線の方向を上下方向に調整する必要がなく、特に、近くにある被観察物を見る際に、視線を下向きにして被観察物を見る必要がなく、眼の自然な動きによって観察距離が短い被観察物を見ることができる。
また、累進領域24Aのディオプトリーと累進領域24Bのディオプトリーとは、左右対称に形成され、右眼の観察画像の歪みと左眼の観察画像の歪みが左右対称であるので、歪みのない状態で被観察物を見ることができる。
また、上記の説明においては、レンズ20A、20Bの調整力の上限を+3(D)とした(つまり、累進領域24A、24Bにおける調整力の上限を+3(D)とするとともに、近用領域26A、26Bにおける調整力を+3(D)とした)が、累進領域24A、24Bの調整力の上限を他の値(ただし、プラスの値)としてもよく、例えば、図13に示す眼鏡5のように、+4(D)としてもよい。このように調整力の上限を他の値とした場合でも、5m観察時の所定の瞳孔間距離においては、図8に示す調整の勾配は、調整力の上限が変化しても不変であるので、調整力の上限の値に応じて、調整力の上限におけるxの値が変わって、累進領域24A、24Bにおける左右方向の長さが変わることになる。つまり、調整力の上限が+4(D)の場合には、調整力の上限を+3(D)とした場合に比べて、累進領域24A、24Bの左右方向の長さが長くなる。
なお、図13に示すように、調整力の上限を+4(D)とすることにより、使用者が持つ元来の調整力を+0.25(D)とすると、補正後の調整力は+4.25(D)となり、調整力の上限が+3(D)の場合と比べて、累進領域24A、24Bによって、観察距離約23.5(cm)まで対応することができる。
なお、上記の説明においては、遠用領域22A、22Bの調整力は±0(D)としたが、遠用領域22A、22Bをマイナスのディオプトリーとして、近視の人が遠くを見る際の調整力についても補正し、老視と近視の両方を持つ人向きの遠近両用眼鏡としてもよい。
5 眼鏡
10 フレーム
12 フロント
12A 右側構成部
12B 左側構成部
12C ブリッジ
20A レンズ
20B レンズ
22A 遠用領域
22B 遠用領域
24A 累進領域
24B 累進領域
26A 近用領域
26B 近用領域
30A 仮想境界面
30B 仮想境界面
32A 仮想境界面
32B 仮想境界面
40 眼鏡フレーム
42 フロント
42A リファレンスポイント
42B リファレンスポイント
44 テンプル
50 撮影用枠
51 枠本体
52 正面部
54 背面部
56 左面部
58 右面部
60 上面部
70 透明板
80 カメラ
90 被観察物
100 使用者
A 中点
B 交点
C 点
D 交点
d 瞳孔間距離
E 交点
F 中心
G 交点
H 交点
I 交点
J 交点
K 中心点
P 仮想中心面
R 中心線
S 眼端部
x 距離
L0 視線
L1 視線
L2 視線
L3 直線
L4 直線
L5 直線
L6 直線
L7 直線
MA 眼
MB 眼
NA 瞳孔中心
NB 瞳孔中心
WA 累進領域長さ
WB 累進領域長さ

Claims (5)

  1. 右眼用レンズ(20A)と左眼用レンズ(20B)を有する眼鏡であって、
    右眼用レンズと左眼用レンズが、それぞれ累進領域を有し、
    右眼用レンズの累進領域である第1累進領域(24A)において、ディオプトリーが、左右方向のみに累進するとともに、ディオプトリーが、左眼用レンズ側である内側にいくほど左右方向の距離に略比例して大きくなり、
    左眼用レンズの累進領域である第2累進領域(24B)において、ディオプトリーが、左右方向のみに累進するとともに、ディオプトリーが、右眼用レンズ側である内側にいくほど左右方向の距離に略比例して大きくなり、
    第1累進領域におけるディオプトリーと、第2累進領域におけるディオプトリーが、左右対称に形成されていることを特徴とする眼鏡。
  2. 第1累進領域と第2累進領域の各累進領域におけるディオプトリーは、眼鏡を装着する使用者の瞳孔間距離であって、無限遠よりも短い観察距離で使用者の両眼の近点距離以上の長さの観察距離にある被観察物を観察した際の両眼の瞳孔間距離(d)に応じた関係であって、無限遠観察時の視線方向と直角方向の距離であって、無限遠観察時の視線(L0)のレンズにおける左右方向の位置から左右方向の距離である左右方向距離(x)と、該左右方向距離に応じたディオプトリーとの関係に基づき設定され、
    眼を内側に輻輳させて各累進領域を通して見ることにより、該左右方向距離に応じた観察距離の被観察物に眼の焦点が合うことを特徴とする請求項1に記載の眼鏡。
  3. 右眼用レンズにおいて、第1累進領域の外側には第1遠用領域(22A)が連設され、第1累進領域と第1遠用領域の間の仮想境界面(30A)の左右方向の位置は、眼鏡を装着する使用者の右眼の無限遠観察時の視線の左右方向の位置と略一致し、
    左眼用レンズにおいて、第2累進領域の外側には第2遠用領域(22A)が連設され、第2累進領域と第2遠用領域の間の仮想境界面(30B)の左右方向の位置は、眼鏡を装着する使用者の左眼の無限遠観察時の視線の左右方向の位置と略一致することを特徴とする請求項1又は2に記載の眼鏡。
  4. 第1遠用領域の全ての領域において、ディオプトリーは、第1累進領域の第1遠用領域側の端部のディオプトリーと同一に形成され、
    第2遠用領域の全ての領域において、ディオプトリーは、第2累進領域の第2遠用領域側の端部のディオプトリーと同一に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の眼鏡。
  5. 右眼用レンズにおいて、第1累進領域の内側には第1近用領域(26A)が設けられ、第1近用領域の全ての領域において、ディオプトリーは、第1累進領域の第1近用領域側の端部のディオプトリーと同一に形成され、
    左眼用レンズにおいて、第2累進領域の内側には第2近用領域(26B)が設けられ、第2近用領域の全ての領域において、ディオプトリーは、第2累進領域の第2近用領域側の端部のディオプトリーと同一に形成されていることを特徴とする請求項1又は2又は3又は4に記載の眼鏡。
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