JP2021154614A - メンテナンス方法及び記録装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】連続多段構造ヘッドを用いた水系インク組成物を吐出するインクジェット記録装置における連続印字安定性を実現する。【解決手段】インクジェット記録装置は、内壁に連続多段構造121を有するインクジェットヘッドのノズルから、水と樹脂粒子を含有する水系インク組成物を吐出して、加熱された記録媒体に記録を行うものであり、インクジェットヘッドのノズル面を、吸収性の払拭部材21を用いて払拭する払拭工程を備えるメンテナンス方法によって、連続印字安定性を実現することが可能となる。【選択図】図4

Description

本発明は、メンテナンス方法及び記録装置に関する
インクジェット記録方法は、比較的単純な装置で、高精細な画像の記録が可能であり、各方面で急速な発展を遂げている。その中で、吐出安定性等について種々の検討がなされている。例えば、特許文献1には、高温環境下に置かれた場合における連続印字安定性の向上を目的として、20℃における粘度が2mPa・s以上7mPa・s以下であり、20℃における降伏値が0.2mPa未満であり、かつ、前記水を25%蒸発させたときの20℃における降伏値が0.8mPa未満である、水系インク組成物が開示されている。
特開2018−002778号公報
ノズル孔の配列密度を、より高くすることが可能で、高速高画質を実現できる吐出ヘッドとして、ノズル出口近傍の側壁面に凹凸形状が繰り返し形成されている吐出ヘッドがある。このような凹凸形状が繰り返し形成されている構造は、スキャロップ構造又は連続多段構造ともいわれる。
このような構造を有するインクジェットヘッドを用いて、加熱した記録媒体にインクを付着し記録を行う場合に、連続印字安定性が損なわれてしまうという点で、未だ十分ではなかった。
本発明は、記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置のメンテナンス方法であって、インクジェット記録装置は、インクジェットヘッドを備え、インクジェットヘッドのノズルから、水系インク組成物を吐出して、加熱された記録媒体に付着させて記録を行うものであり、インクジェットヘッドは、内壁に連続多段構造を有するノズルを有し、インクジェットヘッドのノズル面を、吸収性の払拭部材を用いて払拭する払拭工程を有し、水系インク組成物は、水と、樹脂粒子と、を含有する、メンテナンス方法である。
本発明は、水と樹脂粒子とを含有する水系インク組成物を吐出するインクジェットヘッドと、吸収性の払拭部材によりインクジェットヘッドのノズル面を、払拭する払拭機構と、記録媒体を加熱する加熱機構と、を備え、インクジェットヘッドは、ノズル内壁に、連続多段構造を有するものである、記録装置である。
本実施形態のインクジェットヘッドの一例を示す断面図である。 本実施形態のメンテナンス方法の払拭工程の一例を示す概略図である。 内壁に連続多段構造を有するノズルを示す概略断面図である。 内壁に連続多段構造を有するノズルからメンテナンスにより堆積物が除去されることを示す概念図である。 本実施形態のインクジェット記録装置の一例を表す斜視図である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
1.メンテナンス方法
本実施形態のメンテナンス方法は、加熱された記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置のメンテナンス方法であって、インクジェット記録装置は、内壁に連続多段構造を有するノズルから水系インク組成物を吐出するインクジェットヘッドを備えるものであり、インクジェットヘッドのノズル面を、吸収性の払拭部材を用いて払拭する払拭工程を有し、水系インク組成物は、水と、樹脂粒子と、を含有する。
近年、高配列密度及び多ノズル化を実現するために、側壁面に連続多段構造を有する吐出ヘッドが用いられている。このような連続多段構造を有するノズルにおいては、ノズル孔内部の表面積が大きいため吐出の際にメニスカスが引き込まれた時にノズル孔内部でインクが乾燥して、連続多段構造部分に、水系インク組成物の固形分が付着し、徐々に堆積し得る。このような堆積が生じると、吐出方向のずれが発生したり、吐出不良となったりする。特に、樹脂を含む水系インク組成物においては、このような堆積が生じやすい。また、加熱した記録媒体に記録を行う場合にも、ノズルが熱を受けることにより水系インク組成物がより乾燥しやすくなり、堆積が生じやすくなる。
これに対して、本実施形態においてはこのようなノズル内の水系インク組成物の堆積を解消するために、インクジェットヘッドのノズル面を、吸収性の払拭部材を用いて払拭することにより、連続多段構造部分に堆積した水系インク組成物を除去することができる。また、本実施形態のメンテナンス方法では、ノズル内の堆積を解消するほか、同時に、ノズル面に付着(固着)した水系インク組成物を除去することが可能となる。
通常は、このような払拭はノズル面を清掃するものであるため、ノズル内部の連続多段構造部分に堆積した水系インク組成物の除去には関係しないものと考えられるが、この点については以下のように考えられる。本実施形態のメンテンナンス方法では、吸収性の払拭部材を用いる。これにより、吸収性の払拭部材がノズル面の水系インク組成物の吸収除去とともに、ノズル内の水系インク組成物も吸収するため、ノズル内の堆積物も除去されると考えられる。しかしながら、ノズル内の堆積物が除去される理由は上記に限定されない。
1.1.インクジェットヘッド
本実施形態のメンテナンス方法の対象となるインクジェット記録装置は、内壁に連続多段構造を有するノズルから水系インク組成物を吐出するインクジェットヘッドを備えるものであり、また、加熱された記録媒体に記録を行うものである。具体的には、加熱された記録媒体に対して、インクを吐出して付着させることにより、記録を行うものである。
初めに、連続多段構造を有するインクジェットヘッドについて説明する。
図1に、インクジェットヘッドの断面図を示す。インクジェットヘッド11は、記録媒体(付着対象)と対向する面に複数のノズル111を有するノズルプレート112と、ノズルプレート112に形成された複数のノズル111のそれぞれに連通する複数の圧力室114と、複数の圧力室114のそれぞれの容積を変化させる加圧部115と、複数の圧力室114にインクを供給するインク供給室116と、を備える。本実施形態において、ノズル面12とは、ノズルプレート112の表面を含む面をいう。ノズル面をノズル形成面とも言う。
なお、加圧部115としては、例えば、圧電素子の駆動圧力によりインクを吐出させるピエゾ方式や、インクを加熱して発生した泡(バブル)によりインクを吐出させるサーマル方式が挙げられる。ピエゾ方式を用いるインクジェットヘッドをピエゾヘッドといい、サーマル方式を用いるインクジェットヘッドをサーマルヘッドともいう。
ノズルプレート112は、インクを吐出するための複数のノズル111が列状に開設された板材である。記録物に付着させる水系インク組成物の解像度を向上させるには、ノズルプレート112にノズル111を高密度に配列し、多ノズル化する必要がある。このような高密度なインクジェットヘッドの製造方法としては、ノズルを形成するシリコンウェハに対して、例えば、Boschプロセスにより、高密度に貫通孔を形成する方法が知られている。
Boschプロセスでは、シリコンウェハの厚さ方向へのエッチングと、エッチング側壁保護と、を交互に繰り返し多数回行うことで貫通孔が形成される。このようにして形成された貫通孔、すなわちノズルは、内壁に連続多段構造を有するものとなる。
ノズルの内壁が有するこのような連続多段構造の一例を図3に示す。ノズルを円筒状の空間とすると、円筒断面を側方から見た図である。円筒の円に沿った円状の段が、円筒の内面に、筒の方向に連続して形成されている。
連続多段構造121とは、このように、ノズルの断面を見た時に、ノズル側壁が、ノズルをインクが通過する方向に対して形成される凹凸形状をいう。このような凹凸形状は、例えば、内壁側に湾曲した凹部122と、湾曲した部分の境目となる凸部123とが繰り返された形状を有する。なお、図においては連続多段構造の凸凹を拡大して示している。
このような連続多段構造121は、凹部の深さaと、隣り合う凸部間の距離bによって規定することもできる。なお、凸部又は凹部が複数ある場合には、凹部の深さa及び凸部間の距離bは、凹部の深さの平均値及び凸部間の距離の平均値で表すことができる。
凹部の深さaは、好ましくは1.0μm以下である。さらに好ましくは0.01μm以上1.0μm以下であり、より好ましくは0.015μm以上0.5μm以下であり、さらに好ましくは0.02μm以上0.3μm以下である。特に好ましくは0.02〜0.15μmである。
一方、隣り合う凸部間の距離bは、好ましくは1.0μm以下である。さらに好ましくは0.3μm以上1.0μm以下であり、より好ましくは0.4μm以上0.8μm以下であり、さらに好ましくは0.45μm以上0.7μm以下である。凹部の深さa及び凸部間の距離bがそれぞれ上記範囲内であることにより、連続多段構造に堆積した水系インク組成物をより除去しやすくなる傾向にある。
また、連続多段構造の凹部の深さaに対する、連続多段構造の隣り合う凸部間の距離bの比b/aは、好ましくは1.0〜25であり、より好ましくは1.5〜20であり、さらに好ましくは2.0〜15であり、特に好ましくは3.0〜10である。比b/aが1.0以上であることにより、深さaが浅く、距離bが長くなるため、連続多段構造に水系インク組成物が堆積し難く、堆積した水系インク組成物を、より除去しやすくなる傾向にある。また、比b/aが25以下であることにより、連続多段構造に水系インク組成物が堆積しやすく、本発明が特に有用となる。
インクジェットヘッドのノズルが形成された基板であるノズルプレートの厚さは、限るものではないが、20μm以上が好ましく、20〜300μmがより好ましく、40〜100μmがさらに好ましく、45〜80μmが特に好ましい。
ノズル直径は、限るものではないが、5〜50μm以上が好ましく、10〜40μmがより好ましく、15〜30μmがさらに好ましい。
1.2.加熱機構
本実施形態のメンテナンス方法の対象となるインクジェット記録装置は、記録に際し、記録媒体を加熱するために加熱機構を有していてもよい。このような加熱機構としては、特に制限されないが、例えば、プラテンヒーター、プレヒーター、IRヒーター、送風ファン(温風ヒーター)などが挙げられる。インク組成物を付着させる工程において、記録媒体を加熱する場合、加熱機構を用いて加熱すればよい。これにより、優れた画質が得られる。
1.3.払拭工程
払拭工程は、インクジェットヘッドのノズル面を、吸収性の払拭部材を用いて払拭する工程である。払拭方法は、特に制限されないが、例えば、払拭部材をノズル面に対して押圧し、払拭部材をノズル面に沿った方向に相対的に移動させるように、払拭部材またはノズル形成面を移動しながら払拭を行うことができる。
図2に、インクジェットヘッドのノズル形成面に対して払拭部材(布ワイパー)を接触させる状態を表す概略断面図を示す。図2は、インクジェットヘッド11のノズル形成面12に対して、矢印F1方向に払拭部材21を押圧する状態の図である。また、図4に内壁に連続多段構造を有するノズルからメンテナンスにより堆積物が除去されることを示す概念図を示す。ノズル形成面113に対して、吸収性の払拭部材21で払拭を行うことで、ノズル内のインクが払拭部材21に吸収されてノズルから吸引される。このとき、ノズルの内壁に生成した堆積物118もインクとともに排出される力が働き、堆積物118がノズル内壁から矢印方向に除去されると推測する。一方、吸収性の払拭部材21で払拭を行わない場合、堆積物が除去されずにノズル内壁に蓄積し、これが次第に固着して除去し難くなり、着弾位置ずれが徐々に増大してしまうと推測する。117は払拭部材に吸収されたインクを示す。
払拭方向は特に制限されないが、ノズル列に沿った方向に払拭することが好ましい。これにより、払拭部材のうち一のノズル列に接触した部分が、他のノズル列に接触することにより、かえってノズル面12を汚染することを回避することができる。
ノズル形成面12に対する吸収部材21の押圧荷重は、好ましくは8gf/cm以上である。一方、好ましくは300gf/cm以下である。さらには、好ましくは8〜300gf/cmであり、より好ましくは15〜200gf/cmであり、さらに好ましくは25〜100gf/cmである。特に好ましくは、30〜50gf/cmである。
荷重が8gf/cm以上であることにより、ノズル形成面のインク拭き取り性に優れるほか、ノズル内の堆積物の除去をより効果的に行うことができる。また、荷重が300gf/cm以下であることにより、ノズル形成面に形成される撥液膜の保存性に一層優れる。なお、ここでいう荷重は、インクジェットヘッド11に印加される荷重の総和から接触長さを除した値(つまり平均線圧)である。さらに接触長さとは、インクジェットヘッド11と吸収部材21との長手方向の接触長さであり、ノズルプレートカバーと吸収部材が接する場合はその長さも含むものである。
1.3.1.払拭部材
払拭部材は液体の吸収性のものであれば特に制限されず、スポンジや、織布又は不織布などの布帛などを用いることができる。なお、吸収性とは、メンテナンス液やインク組成物などを吸収できることをいう。ここで、払拭部材が織布又は不織布である場合、その構成繊維としては、特に制限されないが、例えば、セルロース繊維などの天然繊維や、ポリエステル繊維などの合成繊維が挙げられる。このなかでも天然繊維が好ましく、セルロース繊維がより好ましい。ポリエステル繊維やセルロース繊維は、共に洗浄性に優れる傾向にある。さらに、セルロース繊維は水により膨潤するため、メンテナンス液により繊維が柔らかくなり、ノズル形成面の撥水膜の摩耗をより軽減することができる。また、膨潤したセルロース繊維の隙間に異物が入り込むため、洗浄性もより向上する傾向にある。
図2において示す払拭部材は、長尺の布帛であり、第1ロール22から使用前の払拭部材21の送り出し、第2ロール23から使用済の払拭部材21を巻き取る。これにより、ノズル形成面12には、使用前の新しい払拭部材21が接触することができる。そのため、ノズル形成面12に使用済の払拭部材21が再接触することにより、ノズル形成面12が使用済の払拭部材21に浸透したインク組成物によって再汚染されることを回避することができる。
1.3.2.メンテナンス液
払拭工程においては、メンテナンス液を用いて払拭を行ってもよい。メンテナンス液は、払拭部材に染み込ませて用いてもよいし、ノズル面に付着させて用いてもよい。メンテナンス液に含まれる成分としては、特に制限されないが、例えば、水、有機溶剤、pH調整剤等が挙げられる。
1.3.2.1.水
メンテナンス液としては、水、水系の組成物であるものなどが好ましい。
メンテナンス液は、総質量に対して、50質量%以上の水を含有することが好ましい。さらに、70質量%以上の水を含有することがより好ましく、80質量%以上の水を含有することが特に好ましい。これにより、払拭部材の浸透性が向上し、異物を払拭部材内へ取り込ませやすくなるため、ノズル面の洗浄性向上に加え、ノズル内の堆積物の除去性がより向上する傾向にある。また、水の含有量が上記範囲内であることにより、固化した水系インク組成物の成分が再分散しやすくなり、除去しやすくなる傾向にある。
上記観点から、メンテナンス液における水の含有量は、好ましくは85質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%である。また、メンテナンス液における水の含有量は、100質量%以下であり、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは98.5質量%以下であり、さらに好ましくは98質量%以下である。メンテナンス液の水の含有量が上記範囲以上の場合、異物を払拭部材内へより取り込ませやすく、洗浄性がより優れる傾向にある。
メンテナンス液の水の含有量が上記範囲以下の場合、たとえば、全て水であるメンテナンス液よりも、所定量以下の有機溶剤を含むメンテナンス液の場合、ノズル形成面における異物の除去性に優れ、洗浄性がより向上する傾向にある。
1.3.2.2.有機溶剤
上記のような観点から、メンテナンス液は有機溶剤を有することが好ましい。これにより洗浄性がより向上する傾向にある。有機溶剤としては、特に制限されないが、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、メタノール、エタノールなどの水と混和可能な有機溶剤が挙げられる。後述する水系インク組成物に含んでもよい有機溶剤も挙げられる。
有機溶剤のなかでも、ポリオール類、グリコールエーテル、炭素数5以上のアルカンジオールが、上記の点で特に優れ好ましい。
炭素数5以上のアルカンジオールは、炭素数は、好ましくは5〜10であり、より好ましくは6〜8である。炭素数5以上のアルカンジオール類としては、特に限定されないが、例えば、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等が挙げられる。このなかでも1,2−アルカンジオールが好ましく、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールがより好ましい。
グリコールエーテルは、アルキレングリコール又はアルキレングリコールの水酸基同士が分子間で縮合した縮合物が、エーテル化したものである。縮合物の場合は、縮合数は2〜6が好ましく、2〜4がより好ましい。アルキレングリコールやその縮合物において、アルキレンは、直鎖状または分岐状であってもよく、炭素数1〜7が好ましく、2〜5がより好ましい。グリコールエーテルのエーテルは、アルキルエーテルが好ましい。アルキルエーテルのアルキル基の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜4がより好ましい。グリコールエーテルは、グリコールモノエーテル又はグリコールジエーテルであってよく、グリコールモノエーエテルが好ましい。
グリコールエーテルとしては、例えば後述するインクに含んでもよいものなどがあげられる。
ポリオール類も、洗浄性が優れ好ましい。ポリオール類は、炭素数4以下のアルカンポリオール、または炭素数4以下のアルカンポリオールが分子間で水酸基同士が縮合した縮合物が挙げられる。これらの上記炭素数は、好ましくは2〜3である。縮合物の場合、縮合数は2〜4が好ましい。ポリオール類は、分子中の水酸基数が2以上であり、好ましくは2〜4である。
グリコールエーテル、ポリオール類、炭素数5以上のアルカンジオール類は、1種単独で用いても又は2種以上を併用してもよい。
有機溶剤の含有量は、メンテナンス液の総質量に対して、好ましくは20質量%以下である。有機溶剤の含有量の下限は0質量%以上であり、つまり含まなくてもよい。さらには、有機溶剤の含有量は、好ましくは0.5〜20質量%であり、さらに好ましくは1.0〜10質量%であり、よりさらに好ましくは1.0〜5.0質量%であり、特に好ましくは1.0〜3.0質量%である。有機溶剤の含有量が上記範囲以上であることにより、有機溶剤がノズル形成面やノズル内に固着した異物等に浸透して、異物を膨潤または溶解し、異物の除去がより容易となるため、洗浄性がより向上する傾向にある。また、有機溶剤の含有量が上記範囲以下であることにより、水の含有量が相対的に減ることによる払拭部材へのメンテナンス液の吸収低下を抑制できる傾向にある。
有機溶剤の中でも、ポリオール類、グリコールエーテル、炭素数5以上のアルカンジオールが上記の点で好ましく、これらの含有量を上記範囲としてもよい。
特に、グリコールエーテル、炭素数5以上のアルカンジオールが上記の点でより好ましく、これらの含有量を上記範囲としてもよい。
1.3.2.3.pH調整剤
メンテナンス液はpH調整剤を含んでもよい。pH調整剤としては、水系インク組成物のpH値の調整を容易にすることができる。pH調整剤としては、特に限定されないが、例えば、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸等)、無機塩基(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等)、有機塩基(トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン)、有機酸(例えば、アジピン酸、クエン酸、コハク酸等)等が挙げられる。このなかでも、有機塩基が好ましく、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンがより好ましい。pH調整剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
pH調整剤の含有量は、メンテナンス液の総質量に対して、好ましくは0.01〜2質量%であり、より好ましくは0.05〜1質量%であり、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%である。
1.3.2.4.界面活性剤
メンテナンス液は、界面活性剤をさらに含んでいてもよい。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、又はシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキサイド付加物、並びに2,4−ジメチル−5−デシン−4−オール及び2,4−ジメチル−5−デシン−4−オールのアルキレンオキサイド付加物から選択される一種以上が好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、オルフィン104シリーズやオルフィンE1010等のEシリーズ(商品名、エアプロダクツ社(Air Products Japan, Inc.)製)、サーフィノール465やサーフィノール61(商品名、日信化学工業社(Nissin Chemical Industry CO.,Ltd.)製)などが挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
フッ素系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、S−144、S−145(以上商品名、旭硝子株式会社製);FC−170C、FC−430、フロラード−FC4430(以上商品名、住友スリーエム株式会社製);FSO、FSO−100、FSN、FSN−100、FS−300(以上商品名、Dupont社製);FT−250、251(以上商品名、株式会社ネオス製)などが挙げられる。フッ素系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
シリコーン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、具体的には、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BYK−349(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学株式会社製)等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤を含む場合、その含有量は、メンテナンス液の総質量に対して、好ましくは0.1〜3.0質量%である。界面活性剤は、より好ましくは0.1〜2.0質量%であり、さらに好ましくは0.3〜1.0質量%である。
一方で、メンテナンス液が界面活性剤を含むことにより、ノズル形成面に対する接触角が低下するため、ノズル形成面において異物等を含むメンテナンス液を塗り広げてしまい、かえって洗浄性が低下する場合がある。このような観点から、界面活性剤を含まないあるいは極力含まない、または含有量が少ないことが好ましい。この場合、界面活性剤の含有量は、メンテナンス液の総質量に対して、好ましくは3.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以下であり、特に好ましくは0.01質量%以下である。下限は0質量%以上である。また、下限は、検出限界以下が好ましい。
なお、組成物のある成分の含有量が、組成物の総質量に対し○○質量%以下であることを、組成物が、該成分を○○質量%を超えて含有しないともいう。組成物が、該成分を含有しなくてもよいし、○○質量%を超えなければ含有しても良い、の意味である。
1.3.2.5.表面張力
メンテナンス液の表面張力は、好ましくは20mN/m以上であり、より好ましくは45mN/m以上である。さらには、より好ましくは50mN/m以上であり、さらに好ましくは55mN/m以上であり、特に好ましくは60mN/m以上である。メンテナンス液の表面張力が20mN/m以上であることにより、液滴状のメンテナンス液中に異物が取り込まれ、さらにその異物が払拭部材に吸収されるため、洗浄性がより向上する傾向にある。また、メンテナンス液の表面張力は、好ましくは80mN/m以下であり、より好ましくは75mN/m以下であり、さらに好ましくは73mN/m以下である。メンテナンス液の表面張力が80mN/m以下であることにより、メンテナンス液あたりのノズル形成面の濡れ面積が向上し、洗浄性がより向上する傾向にある。
メンテナンス液の表面張力は、メンテナンス液に含有する有機溶剤の量及び種類や、界面活性剤の使用の有無により調整することができる。また、メンテナンス液の表面張力は、実施例に記載の方法により測定することができる。
1.4.メンテナンス液の付着工程
本実施形態のメンテナンス方法は、メンテナンス液を、ノズル面又は払拭部材に付着させる付着工程をさらに備えていてもよい。ノズル形成面又は払拭部材に対してメンテナンス液を付着させる方法としては、特に制限されないが、例えば、メンテナンス液を噴射、滴下、塗布(コート)などしてノズル形成面や払拭部材にメンテナンス液を付着する方法や、メンテナンス液に払拭部材を含浸させる方法などを挙げることができる。これにより、メンテナンス液が存在する状態で、払拭部材によるノズル形成面の払拭が行われる。
例えば、図2においては、メンテナンス液31の付着は、第1噴射機24によって、使用前の払拭部材21が巻かれた第1ロール22に対して、行うことができる。また、これに代えて、メンテナンス液31のプール26に対して、使用前の払拭部材が巻かれた第1ロール22を付着させることで、払拭部材21に対するメンテナンス液31の付着を行ってもよい。
なお、ノズル形成面12に到達される前の段階の払拭部材21にメンテナンス液を付着する位置は、図2における位置に限らず、第1ロール22から矢印F2方向に送り出された使用前の払拭部材21に、ノズル形成面12へ到達される前の任意の段階で、メンテナンス液31の付着を行ってもよい。例えば、よりノズル形成面12に近い位置としてもよい。例えば、矢印F1方向に払拭部材21を押圧するローラーの直前の位置でもよい。また、ノズル形成面12へのメンテナンス液31の付着は、第2噴射機25によって、行うことができる。
なお、本実施形態のメンテナンス方法は、ノズル形成面又は払拭部材に対するメンテナンス液の付着を行う付着工程を備えなくてもよい。この場合は、予めメンテナンス液が付着されている払拭部材を用いてメンテナンスを行えばよい。
なお、ノズル形成面又は払拭部材に対するメンテナンス液の付着を行う付着工程は、上記噴射機やプール(浸漬機)などの付着機構を用いたものに限られるものではなく、適宜変更することができる。例えば、付着機構として、滴下機、コート機なども用いることができる。
付着工程において、メンテナンス液の付着量は、払拭部材やノズル形成面へ付着したメンテナンス液の付着量である。該付着量は、メンテナンスを1回行う時のメンテナンス液の使用量であり、かつ、1つ(1種)のインク組成物を吐出するノズル列当たりのメンテナンス液の使用量である。
メンテナンス液の付着量は、好ましくは0.1g以上であり、より好ましくは0.3g以上であり、さらに好ましくは0.5g以上である。一方、該付着量は、好ましくは5g以下であり、より好ましくは3.0g以下であり、さらに好ましくは1.0g以下である。この場合、洗浄性がより優れ、メンテナンス液の無駄が低減でき好ましい。
メンテナンス液の付着量は、払拭工程を1回行う際のメンテナンス液の付着量であり、1つのインクのノズル列に対するメンテナンス液の付着量である。
1.5.水系インク組成物
本実施形態のメンテナンス方法の対象となるインクジェット記録装置で用いる水系インク組成物は、水と、樹脂粒子と、を含有する。必要に応じて、有機溶剤と、顔料と、ワックス、消泡剤、界面活性剤及びpH調整剤等を含有してもよい。なお、本実施形態において「水系」とは水を主要な溶媒成分の1つとする組成物をいう。具体的には組成物の総質量に対する水の含有量が凡そ40質量%以上の組成物をいう。以下、各成分について詳説する。
1.5.1.水
水の含有量は、水系インク組成物の総量に対して、40質量%以上が好ましい。さらには、40〜99質量%が好ましく、さらに好ましくは50〜90質量%であり、より好ましくは60〜80質量%であり、さらに好ましくは65〜70質量%である。水の含有量が上記範囲以上であることにより、VOC(揮発性有機化合物)の放散量がより少なくなるほか、送風による水系インク組成物の乾燥性がより向上する傾向にある。
1.5.2.樹脂粒子
樹脂粒子は、エマルションやサスペンジョンなどの形態で分散しているものが挙げられる。このような樹脂を用いることにより、耐擦性により優れた記録物が得られる傾向にある。特に、記録媒体と水系インク塗膜との結着性(耐擦性)の向上に寄与する傾向がある。
一方、インクが樹脂粒子を多く含む場合、樹脂粒子が堆積物として連続多段構造に生じやすくなる。
樹脂粒子を構成する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ブタジエン樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、パラフィン樹脂、フッ素樹脂、及び水溶性樹脂、並びにこれらの樹脂を構成する単量体を組み合わせた共重合体が挙げられる。共重合体としては、特に限定されないが、例えば、スチレンブタジエン樹脂、スチレンアクリル樹脂が挙げられる。また、樹脂としては、これら樹脂を含むポリマーラテックスを用いることができる。例えば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、スチレン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン樹脂の微粒子を含むポリマーラテックスが挙げられる。なお、樹脂は、1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。特に、本実施形態の水系インク組成物に含まれる樹脂粒子が、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂又はポリエステル系樹脂の少なくとも1つを含むことが好ましい。
上記のアクリル系樹脂は、アクリルモノマーを少なくとも重合させて得たポリマーであり、アクリルモノマーと他のモノマーの共重合ポリマーも含む。アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸などがあげられる。他のモノマーとしては、ビニルモノマーなどがあげられ、例えばスチレンなどがあげられる。
ウレタン系樹脂は、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とのウレタン重合により得られた樹脂である。
樹脂粒子の含有量としては、水系インク組成物の総量に対して、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上である。さらには、好ましくは2.0質量%以上であり、さらに好ましくは3.0〜15.0質量%であり、より好ましくは4.0〜10.0質量%であり、さらに好ましくは3.0〜8.0質量%である。樹脂の含有量が上記範囲以上であることにより、耐擦性がより優れるが、連続多段構造に堆積物が生じやすいため、本発明が特に有用となる。樹脂の含有量が上記範囲以下であることにより着弾位置ずれ抑制がより優れる。
1.5.3.有機溶剤
水系インク組成物に含まれる有機溶剤としては、特に制限されないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールモノエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコールジエーテル;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン等の含窒素溶剤;グリセリン;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のグリコール類;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、n−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、及びtert−ペンタノール等のアルコール類が挙げられる。
含窒素溶剤としては、環状アミド、非環状アミドなどがあげられる。環状アミドとしては、上記のピロリドン類などがあげられる。非環状アミドとしては、例えばN,N−ジアルキル−アルキルアミドなどがあげられる。N,N−ジアルキル−アルキルアミドとして、例えばN,N−ジアルキル−アルコキシアルキルアミドなどがあげられる。
有機溶剤の中でも、前述のメンテナンス液に含んでも良い有機溶剤が好ましい。また、含窒素溶剤、ポリオール類、グリコールエーテル、炭素数5以上のアルカンジオールが好ましい。
また、なかでも、プロピレングリコール、2−ピロリドン、1,2−ヘキサンジオール、グリセリン等が好ましい。有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機溶剤の含有量としては、水系インク組成物の総量に対して、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは1〜45質量%である。さらには、好ましくは10〜45質量%であり、より好ましくは15〜40質量%であり、さらに好ましくは20〜35質量%である。有機溶剤の標準沸点が上記範囲内であることにより、着弾位置のずれがより抑制され、吐出安定性がより向上する傾向にある。
標準沸点が280℃超の有機溶剤は、水系インク組成物の総量に対して、2.0質量%を超えて含有しないことが好ましく、1.0質量%を超えて含有しないことがより好ましく、0.5質量%を超えて含有しないことがさらに好ましく、0.1質量%を超えて含有しないことが特に好ましい。標準沸点が280℃超の有機溶剤の含有量の下限は0質量%以上である。○○質量%を超えて含有しないとは、越えなければ含有しても良いし含有しなくても良い意味である。
このような有機溶剤の含有量が上記範囲内であることにより、インクの乾燥性が向上し、得られる記録物の画質や耐擦性がより向上する傾向にある。
1.5.4.顔料
顔料としては、特に制限されないが、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタン等の無機顔料;キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料、マゼンタ顔料、及びアゾ系顔料等の有機顔料が挙げられる。顔料は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
顔料の含有量としては、水系インク組成物の総量に対して、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは0.5〜20質量%である。さらには、好ましくは2.0質量%以上であり、より好ましくは3.0〜18質量%であり、さらに好ましくは5.0〜10質量%である。顔料の含有量が上記範囲以下であることにより、水性インク組成物の固化がより抑制され、吐出安定性がより向上する傾向にある。また、顔料の含有量が上記範囲以上であることにより、得られる記録物の光学濃度がより向上する傾向にある。なお、顔料の含有量は固形分量をいい、顔料を顔料分散液の形で水系インク組成物に混合する場合には、その固形分量を意味する。
1.5.5.ワックス
ワックスは、水系インク組成物中で溶解するもの、又は、エマルションの形態で分散するものが挙げられる。
このようなワックスとしては、特に制限されないが、例えば、高級脂肪酸と高級1価アルコールまたは2価アルコール(好ましくは1価アルコール)とのエステルワックス、パラフィンワックス、若しくはオレフィンワックス又はこれらの混合物が挙げられる。このなかでも、オレフィンワックスが好ましく、ポリエチレン系ワックスがより好ましい。
ワックスの含有量は、水系インク組成物の総量に対して、好ましくは0.1〜3.0質量%であり、好ましくは0.3〜2.0質量%であり、好ましくは0.3〜1.0質量%である。ワックスの含有量が0.1質量%以上であることにより、上記のとおり、耐擦性がより向上する傾向にある。また、ワックスの含有量が3.0質量%以下であることにより、インクの粘度が低下し吐出安定性に優れる傾向にある
1.5.6.消泡剤
消泡剤は、特に制限されないが、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、及びアセチレングリコール系消泡剤が挙げられる。消泡剤の市販品としては、BYK−011、BYK−012、BYK−017、BYK−018、BYK−019、BYK−020、BYK−021、BYK−022、BYK−023、BYK−024、BYK−025、BYK−028、BYK−038、BYK−044、BYK−080A、BYK−094、BYK−1610、BYK−1615、BYK−1650、BYK−1730、BYK−1770(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、サーフィノールDF37、DF110D、DF58、DF75、DF220、MD−20、エンバイロジェムAD01(以上全て商品名、日信化学工業社(Nissin Chemical Industry Co.,Ltd.)製)が挙げられる。消泡剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
消泡剤の含有量は、水系インク組成物の総量に対して、好ましくは0.03〜0.7質量%であり、より好ましくは0.05〜0.5質量%であり、さらに好ましくは0.08〜0.3質量%である。
1.5.7.界面活性剤
界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、上記メンテナンス液で例示したものと同様のものが挙げられる。界面活性剤の含有量としては、水系インク組成物の総量に対して、好ましくは0.3〜3.0質量%であり、より好ましくは0.5〜2.0質量%であり、さらに好ましくは0.8〜1.5質量%である。
1.5.8.pH調整剤
水系インク組成物にはpH調整剤を含んでもよい。pH調整剤は、水系インク組成物のpH値の調整を容易にすることができる。
pH調整剤としては、特に制限されないが、例えば、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸等)、無機塩基(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等)、有機塩基(トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリプロパノールアミン)、有機酸(例えば、アジピン酸、クエン酸、コハク酸等)等が挙げられる。pH調整剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
pH調整剤の含有量としては、水系インク組成物の総量に対して、好ましくは0.1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.1質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.1質量%である。
インク組成物の表面張力は、好ましくは15mN/m以上であり、より好ましくは1740mN/m以上である。さらに好ましくは2030mN/m以上であり、より好ましくは22〜25mN/m以上であり。また、前述のメンテナンス液のほうがインク組成物よりも、表面張力が高いことが好ましく、10mN/m以上高いことがより好ましく、
20〜50mN/m高いことがさらに好ましい。この場合、洗浄性がより向上する傾向にある。インクの表面張力の調整方法や測定方法は、メンテナンス液におけるものと同様にすることで、行うことができる。
1.6.加熱工程
本実施形態の記録装置は、記録媒体に水系インク組成物を付着させる工程において、記録媒体を加熱する加熱工程を有する記録方法にて、記録を行うものである。つまり、加熱された記録媒体に水系インク組成物を付着させる記録方法で記録を行うものである。記録媒体に着弾したインクを速やかに加熱し、迅速に乾燥を促進させる工程である。インク組成物を付着させる工程において記録媒体を加熱する工程を一次加熱工程や一次乾燥工程ともいう。
加熱工程としては、特に制限されないが、例えば、前述するような加温機能を用いる。プラテンヒーター、温風ヒーター、IRヒーター、プレヒーター等が挙げられる。
上記水系インク組成物を付着させる工程において、記録媒体を加熱することにより、記録媒体に付着した水系インク組成物の揮発成分が揮発しやすくなり、これにより得られる記録物の画質がより向上する傾向にある。
なお、水系インク組成物を付着させる工程において、記録媒体を加熱する場合の、その工程における記録媒体の表面温度は、好ましくは50℃以下であり、さらに好ましくは45℃以下であり、より好ましくは40℃以下であり、さらに好ましくは38℃以下であり、より好ましくは35℃以下であり、さらに好ましくは20〜35℃である。
一方、記録媒体の表面温度は、好ましくは15℃以上であり、さらに好ましくは20℃以上であり、より好ましくは25℃以上であり、さらに好ましくは30℃以上であり、より好ましくは32℃以上である。
温度が上記範囲以上の場合、画質がより優れ、上記範囲以下の場合、インク着弾位置ズレ低減、ノズル面拭き取り性などがより優れ好ましい。
記録媒体の表面温度は、記録中における、インクジェットヘッドが記録媒体と対向する位置の記録媒体の表面温度であり、記録中に最高温度である。
記録方法において、インク付着工程の完了後に、プラテンよりも記録媒体の搬送方向の下流側などにおいて、更に記録媒体を加熱してインクを充分に乾燥させる二次乾燥工程(二次加熱工程)を備えても良い。二次乾燥工程の記録媒体の表面温度は、60℃以上が好ましく、70〜120℃がより好ましい。
1.7.記録媒体
本実施形態で用いる記録媒体としては、特に制限されないが、例えば、吸収性記録媒体、低吸収性又は非吸収性の記録媒体が挙げられる。このなかでも、低吸収又は非吸収性記録媒体を用いることが好ましい。特に、非吸収性記録媒体を用いることが好ましい。
吸収性記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、インクの浸透性が高い電子写真用紙などの普通紙、インクジェット用紙(シリカ粒子やアルミナ粒子から構成されたインク吸収層、あるいは、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドン(PVP)等の親水性ポリマーから構成されたインク吸収層を備えたインクジェット専用紙)が挙げられる。または布帛なども挙げられる。
低吸収性記録媒体としては、例えば、インクの浸透性が比較的低い一般のオフセット印刷に用いられるアート紙、コート紙、キャスト紙等が挙げられる。これらは、紙などの基材に、インクの浸透性が比較的低い塗工層が設けられたものであり塗工紙ともいう。塗工層は、水の吸収性の低い、樹脂、無機化合物などからなる層であり、インク吸収性が低い層である。
非吸収性記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン等のプラスチック類のフィルムやプレート;鉄、銀、銅、アルミニウム等の金属類のプレート;又はそれら各種金属を蒸着により製造した金属プレートやプラスチック製のフィルム、ステンレスや真鋳等の合金のプレート;紙製の基材にポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン等のプラスチック類のフィルムを接着(コーティング)した記録媒体等が挙げられる。
2.インクジェット記録装置
本実施形態のインクジェット記録装置は、水と樹脂とを含有する水系インク組成物を吐出するインクジェットヘッドと、吸収性の払拭部材によりインクジェットヘッドのノズル面を、払拭する払拭機構と、記録媒体を加熱する加熱機構と、を備え、インクジェットヘッドは、ノズル内壁に、連続多段構造を有する。また、記録装置は前述のメンテナンス方法でメンテナンスを行う。
本実施形態のメンテナンス方法に用いるインクジェット記録装置の一例として、図5に、シリアルプリンタの斜視図を示す。図5に示すように、シリアルプリンタ200は、搬送部220と、記録部230とを備えている。搬送部220は、シリアルプリンタに給送された記録媒体Fを記録部230へと搬送し、記録後の記録媒体をシリアルプリンタの外に排出する。具体的には、搬送部220は、各送りローラーを有し、送られた記録媒体Fを副走査方向T1,T2へ搬送する。
また、記録部230は、搬送部220から送られた記録媒体Fに対して組成物を吐出するインクジェットヘッド11と、それを搭載するキャリッジ234と、キャリッジ234を記録媒体Fの主走査方向S1,S2に移動させるキャリッジ移動機構235を備える。
インクジェット記録装置は、さらに、図2に示す様な払拭部材や、メンテナンス液付着機構を備えていても良い。この場合、インクジェット記録装置の図示しない制御部は、払拭部材やメンテナンス液付着機構を制御して、払拭工程や、メンテナンス液付着工程を行う。
図5の例のインクジェット記録装置は、シリアルプリンタの例であるが、インクジェット記録装置は、インクジェットヘッドがラインヘッドであるラインプリンタとしてもよい。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
1.水系インク組成物の調整
1.1.顔料分散液の調製
St−Ac酸共重合体(メタクリル酸/ブチルアクリレート/スチレン/ヒドロキシエチルアクリレート=25/50/15/10の質量比で共重合したもの。重量平均分子量7000、酸価150mgKOH/g)40質量部を、水酸化カリウム7質量部、水53質量部を混合した液に投入し、80℃で撹拌しながら加熱して樹脂水溶液を調製した。顔料(PB15:3)20質量部、上記樹脂水溶液10質量部、及びイオン交換水70質量部を混合し、ジルコニアビーズミルを用いて分散させて、顔料分散液を得た。
表1に記載の組成となるように、混合物用タンクに各成分を入れ、混合攪拌し、さらに5μmのメンブランフィルターでろ過することにより各例の水系インク組成物を得た。なお、表中の各例に示す各成分の数値は特段記載のない限り質量%を表す。また、表中において、顔料分散液の数値は、固形分の質量%を表す。
Figure 2021154614
表1中で使用した略号や製品成分は以下のとおりである。
〔有機溶剤〕
・プロピレングリコール(沸点188℃)
・2−ピロリドン(沸点245℃)
・1,2−ヘキサンジオール(沸点223℃)
・グリセリン(沸点290℃)
〔顔料分散液〕
・PB15:3
〔樹脂粒子〕
・ジョンクリル631(アクリル系樹脂粒子、BASFジャパン(株))
・タケラックW−6010(ウレタン系樹脂粒子、三井化学(株))
〔ワックス〕
・AQUACER539(ポリエチレン系ワックス、ビックケミージャパン(株))
〔消泡剤〕
・サーフィノールDF110D(アセチレンジオール系界面活性剤、日信化学工業(株))
〔界面活性剤〕
・BYK348(シリコーン系界面活性剤、ビックケミージャパン(株))
〔pH調整剤〕
・トリエタノールアミン
1.2.メンテナンス液の調製
表2に記載の組成となるように、混合物用タンクに各成分を入れ、混合攪拌し、さらに5μmのメンブランフィルターでろ過することにより各例のメンテナンス液を得た。
Figure 2021154614
表2中で使用した略号や製品成分は以下のとおりである。
〔有機溶剤〕
・プロピレングリコール
・1,2−ヘキサンジオール
・3−メトキシ−3−メチルブタノール
〔界面活性剤〕
・BYK348(シリコーン系界面活性剤、ビックケミージャパン(株))
〔pH調整剤〕
・トリエタノールアミン
1.3.表面張力
表1に記載の表面張力は、自動表面張力計CBVP−Z(協和界面科学株式会社製)を用いて、Wilhelmy法で測定した。具体的には、25℃の環境下で白金プレートをインク組成物またはメンテナンス液で濡らしたときに、白金プレートをインク中に引き込もうとする力を測定した。なお表2インクの表面張力も同様に測定し、何れのインクも24.0mN/mであった。
2.インクジェット記録装置
インクジェット記録装置としては、シリアル方式のSC−S40650(セイコーエプソン社(Seiko Epson Corporation)製)を改造して用いた。なお、インクジェットヘッドよりも下流に記録媒体上のインク等を乾燥させるための二次乾燥用ヒーターを取り付けた。
また、シリコン基板であるノズルプレートを、BOSCH法で多段階でドライエッチング処理を行うことで、連続多段構造を形成し、これをインクジェットヘッドに用いた。凹部の深さaに対する隣り合う凸部間の距離bの比b/aが異なるインクジェットヘッドを用意した。比b/aを下記表3に示す。各インクジェットヘッドのa、bは下記であった。なお各インクジェットヘッドは、ノズルプレートの厚さは50μmとし、ノズル直径は約20μmとした。
Figure 2021154614
なお、参考例2〜5については、いずれも連続多段構造を有しないインクジェットヘッドを用いた。参考例2及び4の「非スキャロップ1」とは、ステンレス製のノズルプレートにパンチで穴を打ち、ノズルを形成したものであり、スキャロップ形状を有しないノズルを備えるインクジェットヘッドを意味する。また、参考例3及び5の「非スキャロップ2」とは、他ヘッド1と同様にしてノズルを形成したものであるが、パンチ穴の直径をノズル内で変えることで、ノズル側壁の、ノズルプレート厚み方向の約中央に、ノズル直径方向に0.2μmの段差を1段設けたインクジェットヘッドとしたものであり、スキャロップ形状を有しないノズルを備えるインクジェットヘッドを意味する。
また、下記表4において、メンテナンス方法は、吸収性の払拭部材として、布製の布ワイパーとして下記W1、W2を用いた。
W1:布の種類ベンリーゼ(セルロース繊維、旭化成(株))。
W2:布の種類トレシー(ポリエステル繊維、東レ(株))。
また、吸収性ではない払拭部材として、シリコーンゴム製のゴムワイパ−を用意した。表中に記載したその他のメンテナンス方法は下記とした。
ゴムワイパ:ゴムワイパーで払拭した。
FL+ゴムワイパ:フラッシングを行い、続いてゴムワイパ−で払拭した。
吸引+ゴムワイパ:吸引を行い、続いてゴムワイパ−で払拭した。
フラッシングは、ノズル列からインク受けに、ノズル当たり1000滴のインク滴を吐出した。吸引はノズル列から2gのインクを吸引して排出した。
各払拭部材による払拭は、ノズル面をノズル列の方向と直行する方向に、1回払拭を行った。
なお、下記表4において、払拭工程においてメンテナンス液を用いた場合は、メンテナンス液の付着量(g)は、1インク(1ノズル列)あたりの量として表記した。
下記の様にして記録試験を行った。
上記インクジェット記録装置に、水系インク組成物を充填して、記録媒体にベタパターンを記録した。記録条件としては、各例ごとに表4の条件とした。ベタパターンの記録解像度:720×1440dpi、インク付着量12mg/inch2、走査回数:8回、記録媒体:Orajet−3169G(型番、塩ビフィルム、オラフォルジャパン(株))とした。
一次加熱工程ありの例はプラテンヒーターで記録媒体を加熱し、インク付着工程における記録媒体の表面温度を表中の値とした。インク付着工程後の二次加熱ヒーターによる二次乾燥温度:90℃とした。各工程の記録媒体表面温度は、熱電対により記録媒体の温度を測定することにより求めた。
3.評価方法
3.1.水系インク組成物の着弾位置のずれ
上記の記録試験の条件で、記録を2時間連続で行った。その後、表4に記載の条件で、払拭部材でノズル面に対して払拭を行うメンテナンスを行った。これを1セットとし、続けて、再び記録とメンテナンスを繰返し行った。これを繰返し記録時間が合計で100時間となるまで繰り返した。このようにして記録とメンテナンスを終えた。そして、記録前の初期と、100時間の記録後で、それぞれノズルチェックパターンを作成して比較し、着弾位置のずれを確認した。なお、ノズルチェックパターンの作成時には、ノズル面をきれいに拭き取りインク組成物の付着がない状態にして、ノズル面の汚れによる飛行曲がりの影響がないようにした。
(評価基準)
AA:ノズル間距離の1/3未満のずれが認められる。
A:ノズル間距離の1/3以上2/3未満のずれが認められる。
B:ノズル間距離の2/3以上、3/3未満のずれが認められる。
C:ノズル間距離の3/3以上のずれが認められる。
3.2.ベタ画質
記録試験の条件で、記録媒体にベタ画像を印刷した。なお、印刷条件は表4に記載の条件とした。画像の画質を目視で確認し、下記評価基準によりベタ画質を判定した。
(評価判定)
AA:パターン内でインクが均一で、濃淡むらは認められない。
A:濃度むらが若干認められる。
B:濃度むらが若干認められ、かつ、パターンのふちが若干直線になっていない。
C:パターンのふちがかなり直線になっていない。
3.3.拭き取り性
記録試験の条件で、記録媒体にベタ画像を2時間連続で印刷した。その後に表4の条件でメンテナンスを行った。メンテナンス後、ノズル面のふき取り性を目視で確認した。
(評価判定)
AA:ノズル面にインク付着が認められない。
A:ノズル面にインク付着が認められないが、ルーペで観察すると、水系インク組成物の固形分の付着が確認された。
B:ノズル面にインク拭き残りが若干認められる。
C:ノズル面にインク拭き残りがかなり認められる。
3.4.耐擦性
記録試験の条件で、記録媒体にベタ画像を印刷した。印刷条件は表4の評価に記載の条件とした。得られたベタ画像を30分室温で放置し、その後、ベタ画像印字部を30×150mm矩形に切断した。得られたサンプルの記録面を、平織布を使用して学振式耐摩擦試験機(荷重500g)で30回擦った際のインクの剥がれ度合を目視で確認し、下記評価基準により耐擦性を判定した。
(評価基準)
AA:平織布へのインク転写もなく、インク塗膜の剥がれもない。
A:平織布に一部インクが転写するが、インク塗膜の剥がれはない。
B:平織布に一部インクが転写し、わずかにインク塗膜の剥がれが認められる。
C:インク塗膜が著しく剥がれる、又は基材そのものが破れる。
Figure 2021154614
3.評価結果
表4に、各例で用いたインクジェット記録装置の構成、水性インク組成物、及びメンテナンス液の各条件、並びに、評価結果を示した。
加熱した記録媒体にインクの付着を行う記録方法で記録を行った記録装置の連続多段構造を有するノズルのノズル面に対して、吸収性の払拭部材で払拭を行った実施例は、何れも着弾位置ずれ抑制と画質が優れていた。これに対し、そうではない比較例は、何れも着弾位置ずれ抑制と画質の何れかが劣っていた。
実施例1、7、8から、インク付着時の記録媒体の表面温度が、高いほうが画質がより優れ、低いほうが着弾位置ずれ抑制がより優れた。
実施例1〜3から、インクに含む樹脂粒子の含有量が、少ないほうが着弾位置ずれがより優れ、樹脂粒子が着弾位置ずれと関係していると考えられた。また、多いほうが耐擦性がより優れた。
実施例1、10、11から、ノズルの連続多段構造の比(b/a)が大きいほうが着弾位置ずれ抑制がより優れた。
実施例1、14〜21から、払拭部材による払拭に際しメンテナンス液を用いても用いなくても、優れた着弾位置が得られたが、メンテナンス液の種類によっては、着弾位置ずれ抑制やノズル面ふき取り性がより優れた。
比較例1、2から、吸収性ではない払拭部材を用いた払拭では、着弾位置ずれ抑制が劣った。これらの払拭部材は、インクの吸収性がないためノズル面ふき取り性が劣ったが、着弾位置ずれ評価においてはノズル面をきれいに拭いて影響がでないようにしたにもかかわらず、着弾位置ずれ抑制が劣った。また、比較例2は、フラッシングでノズルのインクを排出したが着弾位置ずれ抑制が劣った。このことから、実施例においては、吸収性の払拭部材で払拭することで着弾位置ずれ抑制が優れたと推測する。
比較例3、4から、インク付着時に記録媒体の加熱を行わない場合には、着弾位置ずれ抑制が優れた。加熱を行わない場合、そもそも堆積物が生じにくく着弾位置ずれの課題が生じないと推測する。但し、比較例3、4では、加熱を行わないため、画質が明らかに劣るという別の問題が生じていた。
参考例1から、吸引によりノズルのインクを排出する吸引クリーニングを行うことで、着弾位置ずれが抑制できた。ただし、吸引クリーニングは吸引によるインクの無駄が多くなってしまうことや、吸引に時間がかかりメンテナンスの時間を要するという欠点があった。またノズル面の拭き取り性が劣っていた。
参考例2〜5から、連続多段構造を有しないノズルを用いた場合には、そもそも、連続多段構造に由来する堆積物の問題及びそれに起因する着弾位置ずれの問題が生じないことが分かった。
なお、表中には記載しなかったが、インクAにおいて樹脂粒子を含有しないこと以外は同様にしてインクを調製し、このインクを用いて比較例1と同様にして評価を行ったところ、着弾位置ずれがAA、耐擦性がCであった。このことから、インクに樹脂粒子を含むことで、優れた耐擦性が得られる反面、着弾位置ずれの課題が発生すると推測する。
11…インクジェットヘッド、12…ノズル形成面、21…払拭部材、22…第1ロール、23…第2ロール、24…第1噴射機、25…第2噴射機、26…プール、31…メンテナンス液、111…ノズル孔、112…ノズルプレート、114…圧力室、115…加圧部、116…インク供給室、117…払拭部材に吸収されたインク、118…堆積物、121…連続多段構造、122…凹部、123…凸部、200…シリアルプリンタ、220…搬送部、230…記録部、234…キャリッジ、235…キャリッジ移動機構

Claims (15)

  1. 記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置のメンテナンス方法であって、
    前記インクジェット記録装置は、インクジェットヘッドを備え、該インクジェットヘッドのノズルから水系インク組成物を吐出して、加熱された記録媒体に付着させ記録を行うものであり、
    前記インクジェットヘッドは、内壁に連続多段構造を有するノズルを有し、
    前記水系インク組成物は、水と、樹脂粒子と、を含有し、
    前記インクジェットヘッドのノズル面を、吸収性の払拭部材を用いて払拭する払拭工程を備える、
    メンテナンス方法。
  2. 前記樹脂粒子の含有量が、前記水系インク組成物の総量に対して、3.0質量%以上である、
    請求項1に記載のメンテナンス方法。
  3. 前記連続多段構造の凹部の深さaに対する、前記連続多段構造の隣り合う凸部間の距離bの比b/aが、1.0〜25である、
    請求項1又は2に記載のメンテナンス方法。
  4. 前記払拭部材が、セルロース繊維を含む、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載のメンテナンス方法。
  5. 前記連続多段構造が、シリコンウェハの厚さ方向へのエッチングと、エッチング側壁保護と、を交互に繰り返し多数回行うことで製造されたものである、
    請求項1〜4のいずれか一項に記載のメンテナンス方法。
  6. 前記水系インク組成物が、標準沸点が280℃超の有機溶剤を、前記水系インク組成物の総量に対して、2.0質量%を超えて含有しない、
    請求項1〜5のいずれか一項に記載のメンテナンス方法。
  7. 加熱された前記記録媒体の表面温度が45℃以下である、
    請求項1〜6のいずれか一項に記載のメンテナンス方法。
  8. 前記記録媒体が、低吸収記録媒体又は非吸収記録媒体である、
    請求項1〜7のいずれか一項に記載のメンテナンス方法。
  9. 前記払拭工程において、メンテナンス液を用いて払拭を行う、
    請求項1〜8のいずれか一項に記載のメンテナンス方法。
  10. 前記メンテナンス液が、水を含み、
    該水の含有量が、前記メンテナンス液の総量に対して、80質量%以上である、
    請求項9に記載のメンテナンス方法。
  11. 前記メンテナンス液が、有機溶剤を含み、
    該有機溶剤の含有量が、前記メンテナンス液の総量に対して、0.5〜20質量%である、
    請求項9又は10に記載のメンテナンス方法。
  12. 前記メンテナンス液に含まれる前記有機溶剤が、グリコールエーテル又は炭素数5以上のアルカンジオールを含む、
    請求項11に記載のメンテナンス方法。
  13. 前記メンテナンス液を、前記ノズル面又は前記払拭部材に付着させる工程をさらに備える、
    請求項9〜12のいずれか一項に記載のメンテナンス方法。
  14. 前記メンテナンス液が、界面活性剤をメンテナンス液の総質量に対し0.01質量%を超えて含まない、
    請求項9〜13のいずれか一項に記載のメンテナンス方法。
  15. 水と樹脂粒子とを含有する水系インク組成物を吐出するインクジェットヘッドと、
    吸収性の払拭部材により前記インクジェットヘッドのノズル面を、払拭する払拭機構と、
    記録媒体を加熱する加熱機構と、を備え、
    前記インクジェットヘッドは、ノズル内壁に、連続多段構造を有するものであり、
    請求項1〜14の何れか一項に記載のメンテナンス方法でメンテナンスを行う、
    記録装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024034219A1 (ja) * 2022-08-12 2024-02-15 コニカミノルタ株式会社 ノズルプレートの製造方法、ノズルプレート、インクジェットヘッドの製造方法、インクジェットヘッド、および画像形成装置

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