以下に説明する実施形態は本開示の一例に過ぎず、本開示は、実施形態に限定されることなく、以下の実施形態以外であっても、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
(1)実施形態に係る電力変換システムの概要
実施形態に係る電力変換システム(以下、電力変換システムと略す。)A1は、図1に示すように、一対の第1端子T11、T12と、一対の第2端子T21、T22と、4つの電圧変換回路1A、1B、1C、1Dとを備えている。なお、電圧変換回路1Aは、本開示の第1電圧変換回路に相当する。電圧変換回路1Bは、本開示の第2電圧変換回路に相当する。電圧変換回路1Cは、本開示の第3電圧変換回路に相当する。電圧変換回路1Dは、本開示の第4電圧変換回路に相当する。
電力変換システムA1は、例えば、ハイブリッド車に搭載される。第1端子T11、T12は、第1蓄電池B1と電気的に接続される。第2端子T21、T22は、第2蓄電池B2と電気的に接続される。
第1蓄電池B1は、第2蓄電池B2よりも定格電圧の高い蓄電池である。第1蓄電池B1として、例えば、定格電圧が48Vのリチウムイオン蓄電池が用いられることが好ましい。なお、第1蓄電池B1は、例えば、ハイブリッド車のエンジンの駆動を補助するモータに給電するための電源となる。
第2蓄電池B2は、第1蓄電池B1よりも定格電圧の低い蓄電池である。第2蓄電池B2として、例えば、定格電圧が12Vの鉛蓄電池が用いられることが好ましい。なお、第2蓄電池B2は、例えば、自動車に搭載されている電装品(方向指示器、室内灯など)に給電するための電源となる。また、例えば第1蓄電池B1の充電レベルが低い場合、第1蓄電池B1は、電力変換システムA1を介して第2蓄電池B2から供給される直流電力によって充電される。さらに、第1蓄電池B1を充電する発電機(オルタネータ)が発電している場合、電力変換システムA1を介して、発電機で発電された直流電力によって第2蓄電池B2が充電される。ただし、第1蓄電池B1及び第2蓄電池B2は、それぞれニッケル水素蓄電池又は電気二重層キャパシタなどの蓄電デバイスであっても構わない。
しかして、電力変換システムA1は、降圧動作と昇圧動作を双方向に切り替えることができる。電力変換システムA1が降圧動作を行う場合、第1端子T11、T12に入力する第1電圧V1(48Vの直流電圧)を所定の第2電圧V2(12Vの直流電圧)に降圧して第2端子T21、T22から出力する。一方、電力変換システムA1が昇圧動作を行う場合、第2端子T21、T22に入力する第2電圧V2を第1電圧V1に昇圧して第1端子T11、T12から出力する。
なお、電力変換システムA1は、上述した使用形態に限定されない。例えば、蓄電装置(据置き型の蓄電装置又はハイブリッド車若しくは電気自動車の車載バッテリ)と連係する太陽光発電システムのパワーコンディショナに電力変換システムA1が使用されても構わない。この場合、電力変換システムA1の第1端子T11、T12は太陽光発電システムと電気的に接続され、第2端子T21、T22は蓄電装置と電気的に接続される。そして、電力変換システムA1は、太陽光発電システムから供給される直流電圧を降圧して蓄電装置を充電し、蓄電装置から供給される直流電圧を昇圧して、太陽光発電システムの代わりに負荷に給電する。
(2)4相の電力変換システムの回路構成
電力変換システムA1は、一対の第1端子T11、T12と、一対の第2端子T21、T22と、4つの電圧変換回路1A〜1Dとを備えている(図1参照)。すなわち、電力変換システムA1は、4相の電力変換システムである。なお、電力変換システムA1は、4つの電圧変換回路1A〜1Dを制御する制御回路2を更に備えることが好ましい。
一方の第1端子T11は、第1蓄電池B1の正極と電気的に接続される。他方の第1端子T12は、第1蓄電池B1の負極と電気的に接続される。また、一方の第2端子T21は、第2蓄電池B2の正極と電気的に接続される。他方の第2端子T22は、第2蓄電池B2の負極と電気的に接続される。なお、一対の第1端子T11、T12及び一対の第2端子T21、T22はそれぞれ、ねじ端子又はねじなし端子(速結端子とも呼ばれる。)であってもよいし、コネクタでもよい。あるいは、一対の第1端子T11、T12及び一対の第2端子T21、T22はそれぞれ、プリント配線板の部品面又ははんだ面に形成されるランドなどであってもよい。
一対の第1端子T11、T12には、第1コンデンサC1が電気的に直列接続されている。また、一対の第2端子T21、T22には、第2コンデンサC2が電気的に直列接続されている。第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2はそれぞれ、電解コンデンサであって、第1電圧V1及び第2電圧V2を平滑している。
電圧変換回路1Aは、ハイサイドのスイッチング素子Q1と、ローサイドのスイッチング素子Q2と、1つの第1リアクトルL1とを備えている。2つのスイッチング素子Q1、Q2はそれぞれ、エンハンスメント形のnチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。したがって、2つのスイッチング素子Q1、Q2のドレイン・ソース間には寄生ダイオードが形成されている。ただし、2つのスイッチング素子Q1、Q2はそれぞれ、バイポーラトランジスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体スイッチング素子であっても構わない。
スイッチング素子Q1のドレインは、正極の第1端子T11と電気的に接続されている。スイッチング素子Q1のソースは、スイッチング素子Q2のドレイン及び第1リアクトルL1の第1端(巻き始め)と電気的に接続されている。スイッチング素子Q2のソースは、負極の第1端子T12及び負極の第2端子T22と電気的に接続されている。なお、第1リアクトルL1の第2端(巻き終わり)は、正極の第2端子T21と電気的に接続されている。
電圧変換回路1Bは、ハイサイドのスイッチング素子Q3と、ローサイドのスイッチング素子Q4と、1つの第2リアクトルL2とを備えている。2つのスイッチング素子Q3、Q4はそれぞれ、エンハンスメント形のnチャネルMOSFETである。したがって、2つのスイッチング素子Q3、Q4のドレイン・ソース間には寄生ダイオードが形成されている。ただし、2つのスイッチング素子Q3、Q4はそれぞれ、バイポーラトランジスタ、IGBTなどの半導体スイッチング素子であっても構わない。
スイッチング素子Q3のドレインは、正極の第1端子T11と電気的に接続されている。スイッチング素子Q3のソースは、スイッチング素子Q4のドレイン及び第2リアクトルL2の第1端(巻き終わり)と電気的に接続されている。スイッチング素子Q4のソースは、負極の第1端子T12及び負極の第2端子T22と電気的に接続されている。なお、第2リアクトルL2の第2端(巻き始め)は、正極の第2端子T21と電気的に接続されている。
電圧変換回路1Cは、ハイサイドのスイッチング素子Q5と、ローサイドのスイッチング素子Q6と、1つの第3リアクトルL3とを備えている。2つのスイッチング素子Q5、Q6はそれぞれ、エンハンスメント形のnチャネルMOSFETである。したがって、2つのスイッチング素子Q5、Q6のドレイン・ソース間には寄生ダイオードが形成されている。ただし、2つのスイッチング素子Q5、Q6はそれぞれ、バイポーラトランジスタ、IGBTなどの半導体スイッチング素子であっても構わない。
スイッチング素子Q5のドレインは、正極の第1端子T11と電気的に接続されている。スイッチング素子Q5のソースは、スイッチング素子Q6のドレイン及び第3リアクトルL3の第1端(巻き始め)と電気的に接続されている。スイッチング素子Q6のソースは、負極の第1端子T12及び負極の第2端子T22と電気的に接続されている。なお、第3リアクトルL3の第2端(巻き終わり)は、正極の第2端子T21と電気的に接続されている。
電圧変換回路1Dは、ハイサイドのスイッチング素子Q7と、ローサイドのスイッチング素子Q8と、1つの第4リアクトルL4とを備えている。2つのスイッチング素子Q7、Q8はそれぞれ、エンハンスメント形のnチャネルMOSFETである。したがって、2つのスイッチング素子Q7、Q8のドレイン・ソース間には寄生ダイオードが形成されている。ただし、2つのスイッチング素子Q7、Q8はそれぞれ、バイポーラトランジスタ、IGBTなどの半導体スイッチング素子であっても構わない。
スイッチング素子Q7のドレインは、正極の第1端子T11と電気的に接続されている。スイッチング素子Q7のソースは、スイッチング素子Q8のドレイン及び第4リアクトルL4の第1端(巻き終わり)と電気的に接続されている。スイッチング素子Q8のソースは、負極の第1端子T12及び負極の第2端子T22と電気的に接続されている。なお、第4リアクトルL4の第2端(巻き始め)は、正極の第2端子T21と電気的に接続されている。
ここで、第1リアクトルL1と第2リアクトルL2は磁気結合されており、互いに磁気結合された第1リアクトルL1及び第2リアクトルL2は結合リアクトルL12を構成する。例えば、第1リアクトルL1と第2リアクトルL2は、1つの鉄心に対して逆極性となるように巻線が巻回されている。また、第3リアクトルL3と第4リアクトルL4は磁気結合されており、互いに磁気結合された第3リアクトルL3及び第4リアクトルL4は結合リアクトルL34を構成する。例えば、第3リアクトルL3と第4リアクトルL4は、1つの鉄心に対して逆極性となるように巻線が巻回されている。
しかして、電圧変換回路1A〜1Dは、一対の第1端子T11、T12及び一対の第2端子T21、T22に対して電気的に並列接続されている。
制御回路2は、例えば、マイクロコントローラと、スイッチング素子Q1、Q3、Q5、Q7を駆動するハイサイドドライバと、スイッチング素子Q2、Q4、Q6、Q8を駆動するローサイドドライバとを有している。マイクロコントローラは、ハイサイドドライバに対してスイッチング素子Q1、Q3、Q5、Q7のそれぞれの制御信号を個別に出力する。マイクロコントローラは、ローサイドドライバに対してスイッチング素子Q2、Q4、Q6、Q8のそれぞれの制御信号を個別に出力する。なお、4つのスイッチング素子Q2、Q4、Q6、Q8はそれぞれ、マイクロコントローラから出力される制御信号によって直接駆動されてもよい。あるいは、電圧変換回路1Aの2つのスイッチング素子Q1、Q2、及び電圧変換回路1Bの2つのスイッチング素子Q3、Q4はそれぞれ、マイクロコントローラから出力する制御信号に応じて、同期整流用ドライバから出力される駆動信号によって交互に駆動されても構わない。
なお、電力変換システムA1は制御回路2を備えなくてもよい。電力変換システムA1が制御回路2を備えない場合、例えば、ハイブリッド車に搭載されているECU(Electronic Control Unit)が制御回路2の役割を担ってもよい。
(3)4相の電力変換システムの動作説明
(3.1)電圧変換回路の動作説明
4つの電圧変換回路1A〜1Dはそれぞれ、降圧チョッパ回路と昇圧チョッパ回路を組み合わせた双方向の電力変換を行うDC/DCコンバータである。
4つの電圧変換回路1A〜1Dのそれぞれは、降圧チョッパ回路として動作するとき、第1電圧V1を第2電圧V2に降圧する。なお、降圧チョッパ回路として動作する電圧変換回路を、降圧モードで動作する電圧変換回路と称する。
具体的に、降圧モードで動作する電圧変換回路1Aでは、スイッチング素子Q1がオン、スイッチング素子Q2がオフすることで、第1コンデンサC1の正極から、スイッチング素子Q1、第1リアクトルL1、第2コンデンサC2を通って、第1コンデンサC1の負極へ向かう経路に電流が流れる。この電流によって、第2コンデンサC2に降圧電圧が充電され、かつ、第1リアクトルL1に磁気エネルギーが蓄積される。次に、スイッチング素子Q1がオフ、スイッチング素子Q2がオンすることで、第1リアクトルL1の磁気エネルギーが放出され、第1リアクトルL1の第2端から、第2コンデンサC2、スイッチング素子Q2を通って、第1リアクトルL1の第1端へ向かう経路に電流が流れる。この電流によって第2コンデンサC2に降圧電圧が充電される。スイッチング素子Q1のデューティ(スイッチング周期に対するオン時間の割合)を可変とすることで、降圧電圧が調整される。なお、スイッチング素子Q1、Q2の各ターンオン前には、スイッチング素子Q1、Q2がそれぞれオフ状態になるデッドタイムを設ける。
4つの電圧変換回路1A〜1Dのそれぞれは、昇圧チョッパ回路として動作するとき、第2電圧V2を第1電圧V1に昇圧する。なお、昇圧チョッパ回路として動作する電圧変換回路を、昇圧モードで動作する電圧変換回路と称する。
昇圧モードで動作する電圧変換回路1Aでは、スイッチング素子Q1がオフ、スイッチング素子Q2がオンすることで、第2コンデンサC2の正極から、第1リアクトルL1、スイッチング素子Q2、第2コンデンサC2の負極へ向かう経路に電流が流れる。この電流によって、第1リアクトルL1に磁気エネルギーが蓄積される。次に、スイッチング素子Q1がオン、スイッチング素子Q2がオフすることで、第1リアクトルL1の磁気エネルギーが放出され、第1リアクトルL1の第1端から、スイッチング素子Q1、第1コンデンサC1、第2コンデンサC2を通って、第1リアクトルL1の第2端へ向かう経路に電流が流れる。この電流によって第1コンデンサC1に昇圧電圧が充電される。スイッチング素子Q2のデューティを可変とすることで、昇圧電圧が調整される。なお、スイッチング素子Q1、Q2の各ターンオン前には、スイッチング素子Q1、Q2がそれぞれオフ状態になるデッドタイムを設ける。
電圧変換回路1B、電圧変換回路1C、電圧変換回路1Dも、電圧変換回路1Aと同様に降圧モード又は昇圧モードで動作する。具体的な動作は、電圧変換回路1Aと同様であり、説明は省略する。
なお、降圧モードで動作する電圧変換回路1A〜1Dでは、スイッチング素子Q1、Q3、Q5、Q7が、本開示のスイッチング素子、又は第1スイッチング素子、第2スイッチング素子、第3スイッチング素子、第4スイッチング素子にそれぞれ相当する。また、電圧変換回路1A〜1Dが降圧モードのみで動作するのであれば、スイッチング素子Q2、Q4、Q6、Q8のそれぞれをダイオードに置き換えてもよい。ダイオードは、スイッチング素子Q2、Q4、Q6、Q8の各寄生ダイオードと同じ向きに接続される。
また、昇圧モードで動作する電圧変換回路1A〜1Dでは、スイッチング素子Q2、Q4、Q6、Q8が、本開示のスイッチング素子、又は第1スイッチング素子、第2スイッチング素子、第3スイッチング素子、第4スイッチング素子にそれぞれ相当する。また、電圧変換回路1A〜1Dが昇圧モードのみで動作するのであれば、スイッチング素子Q1、Q3、Q5、Q7のそれぞれをダイオードに置き換えてもよい。ダイオードは、スイッチング素子Q1、Q3、Q5、Q7の各寄生ダイオードと同じ向きに接続される。
(3.2)インタリーブ方式の動作説明
電力変換システムA1は、降圧モード又は昇圧モードで動作する4相のインタリーブ方式の電力変換システムである。制御回路2は、電圧変換回路1A〜1Dの各スイッチング素子Q1〜Q8をオンオフ駆動することで、電力変換システムA1をインタリーブ方式で動作させる。制御回路2は、第1リアクトルL1に流れる第1電流IL1、第2リアクトルL2に流れる第2電流IL2、第3リアクトルL3に流れる第3電流IL3、第4リアクトルL4に流れる第4電流IL4の各実効値をそれぞれの目標値に一致させる実効値制御を行う。以下、制御回路2による各スイッチング素子Q1〜Q8の駆動制御について説明する。
(3.2.1)4相降圧
以下、降圧モードの電力変換システムA1による4相降圧動作について説明する。
電圧変換回路1A〜1Dの各動作は、予め決められたスイッチング周期Taに同期する。そして、スイッチング周期Taを360度(2π)とすると、電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Bとは、90度(π/4)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Cとは、180度(π/2)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Dとは、270度(3π/4)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。
図2を用いて、降圧モードで動作する電力変換システムA1について説明する。図2は、降圧モードにおける電圧変換回路1Aのスイッチング素子Q1、Q2、電圧変換回路1Bのスイッチング素子Q3、Q4、電圧変換回路1Cのスイッチング素子Q5、Q6、及び電圧変換回路1Dのスイッチング素子Q7、Q8の各動作を示すタイムチャートである。
スイッチング素子Q1、Q2はスイッチング周期Taで交互にオン、オフする。スイッチング素子Q3、Q4はスイッチング周期Taで交互にオン、オフする。スイッチング素子Q5、Q6はスイッチング周期Taで交互にオン、オフする。スイッチング素子Q7、Q8はスイッチング周期Taで交互にオン、オフする。
スイッチング素子Q1がターンオンするタイミングをオンタイミングt1、スイッチング素子Q3がターンオンするタイミングをオンタイミングt2とする。また、スイッチング素子Q5がターンオンするタイミングをオンタイミングt3、スイッチング素子Q7がターンオンするタイミングをオンタイミングt4とする。この場合、オンタイミングt2は、オンタイミングt1に比べて位相90度だけ遅れる。オンタイミングt3は、オンタイミングt1に比べて位相180度だけ遅れる。オンタイミングt4は、オンタイミングt1に比べて位相270度だけ遅れる。
すなわち、互いに磁気結合している第1リアクトルL1及び第2リアクトルL2を含む電圧変換回路1A、1Bでは、スイッチング素子Q1のオンタイミングt1とスイッチング素子Q3のオンタイミングt2とが位相90度だけずれている。また、互いに磁気結合している第3リアクトルL3及び第4リアクトルL4を含む電圧変換回路1C、1Dでは、スイッチング素子Q5のオンタイミングt3とスイッチング素子Q7のオンタイミングt4とが位相90度だけずれている。
このとき、第1リアクトルL1に流れる第1電流IL1、第2リアクトルL2に流れる第2電流IL2、第3リアクトルL3に流れる第3電流IL3、第4リアクトルL4に流れる第4電流IL4の各波形を、図3に示す。
第1電流IL1は、スイッチング素子Q1のオンタイミングt1(スイッチング素子Q2はオフ状態)で増加し始め、オンタイミングt1以降では直線状に増加する。次に、スイッチング素子Q1がターンオフし、スイッチング素子Q2がターンオンすると、第1電流IL1は、スイッチング素子Q3がターンオフするまでほぼ一定値を維持する。その後、スイッチング素子Q3がターンオフすると、第1電流IL1は直線状に減少する。そして、第1電流IL1は、スイッチング素子Q2がターンオフした後、次のオンタイミングt1でスイッチング素子Q1がターンオンすると再び直線状に増加する。スイッチング素子Q1がターンオフするときの第1電流IL1が、第1電流IL1のピーク値Ip1になる。
第2電流IL2は、スイッチング素子Q3のオンタイミングt2(スイッチング素子Q4はオフ状態)で増加し始め、オンタイミングt2以降では直線状に増加する。次に、スイッチング素子Q3がターンオフし、スイッチング素子Q4がターンオンすると、第2電流IL2は直線状に減少し、スイッチング素子Q1がターンオンするとほぼ一定値を維持する。そして、第2電流IL2は、スイッチング素子Q4がターンオフした後、次のオンタイミングt2でスイッチング素子Q3がターンオンすると再び直線状に増加する。スイッチング素子Q3がターンオフするときの第2電流IL2が、第2電流IL2のピーク値Ip2になる。
第3電流IL3は、スイッチング素子Q5のオンタイミングt3(スイッチング素子Q6はオフ状態)で増加し始め、オンタイミングt3以降では直線状に増加する。次に、スイッチング素子Q5がターンオフし、スイッチング素子Q6がターンオンすると、第3電流IL3は、スイッチング素子Q7がターンオフするまでほぼ一定値を維持する。その後、スイッチング素子Q7がターンオフすると、第3電流IL3は直線状に減少する。そして、第3電流IL3は、スイッチング素子Q6がターンオフした後、次のオンタイミングt3でスイッチング素子Q5がターンオンすると再び直線状に増加する。スイッチング素子Q5がターンオフするときの第3電流IL3が、第3電流IL3のピーク値Ip3になる。
第4電流IL4は、スイッチング素子Q7のオンタイミングt4(スイッチング素子Q8はオフ状態)で増加し始め、オンタイミングt4以降では直線状に増加する。次に、スイッチング素子Q7がターンオフし、スイッチング素子Q8がターンオンすると、第4電流IL4は直線状に減少し、スイッチング素子Q5がターンオンするとほぼ一定値を維持する。そして、第4電流IL4は、スイッチング素子Q8がターンオフした後、次のオンタイミングt4でスイッチング素子Q7がターンオンすると再び直線状に増加する。スイッチング素子Q7がターンオフするときの第4電流IL4が、第4電流IL4のピーク値Ip4になる。
ピーク値Ip1とピーク値Ip3とはほぼ等しく、ピーク値Ip2とピーク値Ip4とはほぼ等しい。そして、ピーク値Ip2及びピーク値Ip4は、ピーク値Ip1及びピーク値Ip3よりも大きくなる。ピーク値Ip2はスイッチング素子Q3で発生し、ピーク値Ip4はスイッチング素子Q7で発生し、ピーク値Ip1はスイッチング素子Q1で発生し、ピーク値Ip3はスイッチング素子Q5で発生する。
したがって、図4Aに示すように、スイッチング素子Q1、Q3の発熱バランス、スイッチング素子Q5、Q7の発熱バランスのそれぞれがアンバランス(不平衡)になる。具体的に、スイッチング素子Q3、Q7での各電力損失は、スイッチング素子Q1、Q5での各電力損失よりも大きくなる。
また、図4Bに示すように、スイッチング素子Q2、Q4の発熱バランス、スイッチング素子Q6、Q8の発熱バランスのそれぞれもアンバランスになる。具体的に、スイッチング素子Q2、Q6での各電力損失は、スイッチング素子Q4、Q8での各電力損失よりも大きくなる。
(3.2.2)4相昇圧
以下、昇圧モードの電力変換システムA1による4相昇圧動作について説明する。
電圧変換回路1A〜1Dの各動作は、予め決められたスイッチング周期に同期する。そして、スイッチング周期を360度(2π)とすると、電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Bとは、90度(π/2)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Cとは、180度(π)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Dとは、270度(3π/2)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。
スイッチング素子Q1、Q2はスイッチング周期で交互にオン、オフする。スイッチング素子Q3、Q4はスイッチング周期で交互にオン、オフする。スイッチング素子Q5、Q6はスイッチング周期で交互にオン、オフする。スイッチング素子Q7、Q8はスイッチング周期で交互にオン、オフする。
このとき、スイッチング素子Q2、Q4、Q6、Q8のそれぞれがターンオンするタイミングは以下のようになる。スイッチング素子Q4がターンオンするタイミングは、スイッチング素子Q2がターンオンするタイミングに比べて位相90度だけ遅れる。スイッチング素子Q6がターンオンするタイミングは、スイッチング素子Q2がターンオンするタイミングに比べて位相180度だけ遅れる。スイッチング素子Q8がターンオンするタイミングは、スイッチング素子Q2がターンオンするタイミングに比べて位相270度だけ遅れる。
すなわち、互いに磁気結合している第1リアクトルL1及び第2リアクトルL2を含む電圧変換回路1A、1Bでは、スイッチング素子Q2のオンタイミングとスイッチング素子Q4のオンタイミングとが位相90度だけずれている。また、互いに磁気結合している第3リアクトルL3及び第4リアクトルL4を含む電圧変換回路1C、1Dでは、スイッチング素子Q6のオンタイミングとスイッチング素子Q8のオンタイミングとが位相90度だけずれている。
そして、上述の昇圧モードで動作する電力変換システムA1では、スイッチング素子Q2がオンしているときの第1電流IL1、スイッチング素子Q6がオンしているときの第3電流IL3の各ピーク値が、第2電流IL2、第4電流IL4の各ピーク値よりも大きくなる。
したがって、図5Bに示すように、スイッチング素子Q2、Q4の発熱バランス、スイッチング素子Q6、Q8の発熱バランスのそれぞれがアンバランスになる。具体的に、スイッチング素子Q2、Q6での各電力損失は、スイッチング素子Q4、Q8での各電力損失よりも大きくなる。一方、図5Aに示すように、スイッチング素子Q1、Q3の発熱バランス、スイッチング素子Q5、Q7の発熱バランスはほぼ平衡になっている。
(3.3)4相の電力変換システムの作用
上述のように、互いに磁気結合している第1リアクトルL1及び第2リアクトルL2を含む電圧変換回路1A、1Bは、90度の位相差(0−90度)が生じるようにそれぞれ動作する。また、互いに磁気結合している第3リアクトルL3及び第4リアクトルL4を含む電圧変換回路1C、1Dは、90度の位相差(180−270度)が生じるようにそれぞれ動作する。すなわち、結合リアクトルL12を含む2相の電圧変換回路1A、1Bは、90度の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。また、結合リアクトルL34を含む2相の電圧変換回路1C、1Dは、90度の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。
この結果、第1電流IL1の波形と第2電流IL2の波形とが互いに異なり、スイッチング素子Q1、Q3の発熱バランスがアンバランスになる。すなわち、電力変換システムA1は、2つの電圧変換回路1A、1Bの発熱バランスがアンバランスになるように、第1電流IL1の波形及び第2電流IL2の波形をそれぞれ能動的に制御している。
また、第3電流IL3の波形と第4電流IL4の波形とが互いに異なり、スイッチング素子Q5、Q7の発熱バランスがアンバランスになる。すなわち、電力変換システムA1は、2つの電圧変換回路1C、1Dの発熱バランスがアンバランスになるように、第3電流IL3の波形及び第4電流IL4の波形をそれぞれ能動的に制御している。
このように、電力変換システムA1は、4つの電圧変換回路1A〜1Dの各電力損失のばらつきを能動的に制御することができる。
(4)冷却装置
電力変換システムA1は、図6に示す冷却装置3を更に備えることが好ましい。冷却装置3は、ヒートシンク31、及びファン32を有する。ヒートシンク31は、アルミニウム合金などの金属からなり、矩形板状の実装部31a、及び実装部31aの一面に形成された複数の放熱フィン31bを有する。複数の放熱フィン31bのそれぞれは、実装部31aの一面において、実装部31aの長手方向に沿って形成されている。実装部31aの他面は実装面31cであり、実装面31cには、電圧変換回路1A、1Cを含む電力変換ユニットU1、及び電圧変換回路1B、1Dを含む電力変換ユニットU2が実装されている。
ヒートシンク31の長手方向の両端をそれぞれ第1端31d、第2端31eとすると、ファン32は、第1端31dに対向して配置される。そして、ファン32は、第1端31dに向かって空気(冷媒)を吐き出し、複数の放熱フィン31bの各間では、第1端31dから第2端31eに向かう方向Y1に沿って空気が流れる。したがって、ヒートシンク31における放熱量の分布では、第1端31dに近い位置での放熱量が、第1端31dから遠い位置での放熱量よりも大きくなる。
ここで、電力変換システムA1は、上述のように4つの電圧変換回路1A〜1Dの各電力損失のばらつきを能動的に制御している。そこで、能動的に制御した4つの電圧変換回路1A〜1Dの各電力損失のばらつきに応じて、電力変換ユニットU1、U2を配置する。そして、電圧変換回路1A〜1Dのそれぞれは冷却対象をそれぞれ有し、複数の冷却対象は、当該冷却対象の電力損失が大きいほど、複数の冷却対象のうちの他の冷却対象に比べて優先的に冷却されることが好ましい。
具体的に、電圧変換回路1A〜1Dのスイッチング素子Q1〜Q8が冷却対象となる。そして、4相降圧動作時では、スイッチング素子Q3、Q7での各電力損失が、他のスイッチング素子Q1、Q2、Q4〜Q6、Q8での各電力損失よりも大きくなる(図4A参照)。したがって、4相降圧動作時の冷却を4相昇圧動作時の冷却よりも重視すると、スイッチング素子Q3、Q7が、優先的に冷却される冷却対象になる。そこで、スイッチング素子Q3、Q7を含む電力変換ユニットU2を、スイッチング素子Q1、Q5を含む電力変換ユニットU1よりも、第1端31dに近い位置に配置する。この場合、電力変換ユニットU2に対する放熱能力は、電力変換ユニットU1に対する放熱能力よりも大きくなり、電力損失がより大きい電力変換ユニットU1を十分に冷却することができる。
さらに、スイッチング素子Q3、Q7が、スイッチング素子Q4、Q8よりも第1端31dに近くなるように、電力変換ユニットU2の向きを決めることが好ましい。すなわち、優先的に冷却される冷却対象であるスイッチング素子Q3、Q7は、他のスイッチング素子Q1、Q2、Q4〜Q6、Q8に比べて、空気が流れる経路の上流側に位置する。この場合、スイッチング素子Q3、Q7に対する放熱能力は、スイッチング素子Q4、Q8に対する放熱能力よりも大きくなり、電力損失がより大きいスイッチング素子Q3、Q7を十分に冷却することができる。
従来、インタリーブ方式の電力変換システムは、複数の電圧変換回路の各電力損失にもばらつきを能動的に制御することはできなかった。この結果、複数の電圧変換回路には、冷却されやすい電圧変換回路、及び冷却され難い電圧変換回路が混在してしまう。したがって、従来、複数の電圧変換回路を冷却する冷却装置を、冷却され難い電圧変換回路に合わせて設計する必要があり、冷却装置の大型化を招いていた。
しかし、電力変換システムA1は、4つの電圧変換回路1A〜1Dの各電力損失のばらつきを能動的に制御できる。この結果、冷却装置3の冷却性能、並びに電力変換ユニットU1、U2の配置及びスイッチング素子Q1〜Q8の各配置に応じて、4つの電圧変換回路1A〜1Dの各電力損失のばらつきを能動的に制御することで、冷却装置3の小型化を図ることができる。
なお、電力変換ユニットU1、U2、及びスイッチング素子Q1〜Q8の各配置は、図6の配置に限定されない。すなわち、スイッチングQ1〜Q8のうち、電力損失が大きい少なくとも1つのスイッチング素子を優先的に冷却される冷却対象とし、優先的に冷却される冷却対象が最も効率よく冷却されるように、電力変換ユニットU1、U2、及びスイッチング素子Q1〜Q8のそれぞれを配置すればよい。例えば、4相昇圧動作時では、スイッチング素子Q2、Q6での各電力損失が、他のスイッチング素子Q1、Q2、Q4〜Q6、Q8での各電力損失よりも大きくなる(図5B参照)。したがって、4相昇圧動作時の冷却を4相降圧動作時の冷却よりも重視すると、スイッチング素子Q2、Q6が、優先的に冷却される冷却対象になる。
また、ファン32は、第1端31dから外部に空気を吐き出し、複数の放熱フィン31bの各間では、第2端31eから第1端31dに向かう方向Y2(図6参照)に沿って空気が流れてもよい。
(5)6相の電力変換システム
(5.1)6相の電力変換システムの回路構成
図7は、6相の電力変換システムA2の構成を示す。電力変換システムA2は、上述の4つの電圧変換回路1A〜1Dに加えて、2つの電圧変換回路1E、1Fを備えており、合計6つの電圧変換回路1A〜1Fを有する。電力変換システムA2の制御回路2は、6つの電圧変換回路1A〜1Fを制御する。なお、電圧変換回路1Eは、本開示の第5電圧変換回路に相当する。電圧変換回路1Fは、本開示の第6電圧変換回路に相当する。
電圧変換回路1Eは、ハイサイドのスイッチング素子Q9と、ローサイドのスイッチング素子Q10と、1つの第5リアクトルL5とを備えている。2つのスイッチング素子Q9、Q10はそれぞれ、エンハンスメント形のnチャネルMOSFETである。したがって、2つのスイッチング素子Q9、Q10のドレイン・ソース間には寄生ダイオードが形成されている。ただし、2つのスイッチング素子Q9、Q10はそれぞれ、バイポーラトランジスタ、IGBTなどの半導体スイッチング素子であっても構わない。
スイッチング素子Q9のドレインは、正極の第1端子T11と電気的に接続されている。スイッチング素子Q9のソースは、スイッチング素子Q10のドレイン及び第5リアクトルL5の第1端(巻き始め)と電気的に接続されている。スイッチング素子Q10のソースは、負極の第1端子T12及び負極の第2端子T22と電気的に接続されている。なお、第5リアクトルL5の第2端(巻き終わり)は、正極の第2端子T21と電気的に接続されている。
電圧変換回路1Fは、ハイサイドのスイッチング素子Q11と、ローサイドのスイッチング素子Q12と、1つの第6リアクトルL6とを備えている。2つのスイッチング素子Q11、Q12はそれぞれ、エンハンスメント形のnチャネルMOSFETである。したがって、2つのスイッチング素子Q11、Q12のドレイン・ソース間には寄生ダイオードが形成されている。ただし、2つのスイッチング素子Q11、Q12はそれぞれ、バイポーラトランジスタ、IGBTなどの半導体スイッチング素子であっても構わない。
スイッチング素子Q11のドレインは、正極の第1端子T11と電気的に接続されている。スイッチング素子Q11のソースは、スイッチング素子Q12のドレイン及び第6リアクトルL6の第1端(巻き始め)と電気的に接続されている。スイッチング素子Q12のソースは、負極の第1端子T12及び負極の第2端子T22と電気的に接続されている。なお、第6リアクトルL6の第2端(巻き終わり)は、正極の第2端子T21と電気的に接続されている。
ここで、第5リアクトルL5と第6リアクトルL6は磁気結合されており、互いに磁気結合された第5リアクトルL5及び第6リアクトルL6は結合リアクトルL56を構成する。例えば、第5リアクトルL5と第6リアクトルL6は、1つの鉄心に対して逆極性となるように巻線が巻回されている。
しかして、電圧変換回路1A〜1Fは、一対の第1端子T11、T12及び一対の第2端子T21、T22に対して電気的に並列接続されている。なお、電圧変換回路1A〜1Dの各構成については説明を省略する。
制御回路2は、スイッチング素子Q1〜Q12を個別に駆動制御する。制御回路2は、第1リアクトルL1に流れる第1電流IL1、第2リアクトルL2に流れる第2電流IL2、第3リアクトルL3に流れる第3電流IL3、第4リアクトルL4に流れる第4電流IL4、第5リアクトルL5に流れる第5電流IL5、第6リアクトルL6に流れる第6電流IL6の各実効値をそれぞれの目標値に一致させる実効値制御を行う。
(5.2)6相の電力変換システムの動作説明
電力変換システムA2は、降圧モード又は昇圧モードで動作する6相のインタリーブ方式の電力変換システムである。制御回路2は、電圧変換回路1A〜1Fの各スイッチング素子Q1〜Q12をオンオフ駆動することで、電力変換システムA2をインタリーブ方式で動作させる。以下、制御回路2による各スイッチング素子Q1〜Q12の駆動制御について説明する。
(5.2.1)6相降圧
(6相降圧の第1例)
以下、降圧モードの電力変換システムA2による6相降圧動作の第1例について説明する。
電圧変換回路1A〜1Fの各動作は、予め決められたスイッチング周期に同期する。そして、スイッチング周期を360度(2π)とすると、電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Bとは、60度(π/3)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Cとは、120度(2π/3)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Dとは、180度(π)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Eとは、240度(4π/3)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Fとは、300度(5π/3)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。
すなわち、互いに磁気結合している第1リアクトルL1及び第2リアクトルL2を含む電圧変換回路1A、1Bでは、スイッチング素子Q1のオンタイミングとスイッチング素子Q3のオンタイミングとが位相60度だけずれている。また、互いに磁気結合している第3リアクトルL3及び第4リアクトルL4を含む電圧変換回路1C、1Dでは、スイッチング素子Q5のオンタイミングとスイッチング素子Q7のオンタイミングとが位相60度だけずれている。また、互いに磁気結合している第5リアクトルL5及び第6リアクトルL6を含む電圧変換回路1E、1Fでは、スイッチング素子Q9のオンタイミングとスイッチング素子Q11のオンタイミングとが位相60度だけずれている。
上述のスイッチング素子Q1〜Q12の各動作によって、第1リアクトルL1には第1電流IL1が流れ、第2リアクトルL2には第2電流IL2が流れ、第3リアクトルL3には第3電流IL3が流れる。また、第4リアクトルL4には第4電流IL4が流れ、第5リアクトルL5には第5電流IL5が流れ、第6リアクトルL6には第6電流IL6が流れる。
そして、スイッチング素子Q3がオンしているときの第2電流IL2、スイッチング素子Q7がオンしているときの第4電流IL4、スイッチング素子Q11がオンしているときの第6電流IL6の各ピーク値が、第1電流IL1、第3電流IL3、第5電流IL5の各ピーク値よりも大きくなる。したがって、図8Aに示すように、スイッチング素子Q1、Q3の発熱バランス、スイッチング素子Q5、Q7の発熱バランス、スイッチング素子Q9、Q11の発熱バランスのそれぞれがアンバランスになる。具体的に、スイッチング素子Q3、Q7、Q11での各電力損失は、スイッチング素子Q1、Q5、Q9での各電力損失よりも大きくなる。
また、図8Bに示すように、スイッチング素子Q2、Q4の発熱バランス、スイッチング素子Q6、Q8の発熱バランス、スイッチング素子Q10、Q12の発熱バランスのそれぞれもアンバランスになる。具体的に、スイッチング素子Q2、Q6、Q10での各電力損失は、スイッチング素子Q4、Q8、Q12での各電力損失よりも大きくなる。
(6相降圧の第2例)
以下、降圧モードの電力変換システムA2による6相降圧動作の第2例について説明する。
電圧変換回路1A〜1Fの各動作は、予め決められたスイッチング周期に同期する。そして、スイッチング周期を360度(2π)とすると、電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Bとは、120度(2π/3)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Cとは、60度(π/3)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Dとは、180度(π)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Eとは、240度(4π/3)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Fとは、300度(5π/3)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。
すなわち、互いに磁気結合している第1リアクトルL1及び第2リアクトルL2を含む電圧変換回路1A、1Bでは、スイッチング素子Q1のオンタイミングとスイッチング素子Q3のオンタイミングとが位相120度だけずれている。また、互いに磁気結合している第3リアクトルL3及び第4リアクトルL4を含む電圧変換回路1C、1Dでは、スイッチング素子Q5のオンタイミングとスイッチング素子Q7のオンタイミングとが位相120度だけずれている。また、互いに磁気結合している第5リアクトルL5及び第6リアクトルL6を含む電圧変換回路1E、1Fでは、スイッチング素子Q9のオンタイミングとスイッチング素子Q11のオンタイミングとが位相60度だけずれている。
そして、スイッチング素子Q3がオンしているときの第2電流IL2、スイッチング素子Q7がオンしているときの第4電流IL4、スイッチング素子Q11がオンしているときの第6電流IL6の各ピーク値が、第1電流IL1、第3電流IL3、第5電流IL5の各ピーク値よりも大きくなる。したがって、図9Aに示すように、スイッチング素子Q1、Q3の発熱バランス、スイッチング素子Q5、Q7の発熱バランス、スイッチング素子Q9、Q11の発熱バランスのそれぞれがアンバランスになる。具体的に、スイッチング素子Q3、Q7、Q11での各電力損失は、スイッチング素子Q1、Q5、Q9での各電力損失よりも大きくなる。
また、図9Bに示すように、スイッチング素子Q2、Q4の発熱バランス、スイッチング素子Q6、Q8の発熱バランス、スイッチング素子Q10、Q12の発熱バランスのそれぞれもアンバランスになる。具体的に、スイッチング素子Q4、Q8、Q10での各電力損失は、スイッチング素子Q2、Q6、Q12での各電力損失よりも大きくなる。
(6相降圧の第3例)
以下、降圧モードの電力変換システムA2による6相降圧動作の第3例について説明する。
電圧変換回路1A〜1Fの各動作は、予め決められたスイッチング周期に同期する。そして、スイッチング周期を360度(2π)とすると、電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Bとは、120度(2π/3)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Cとは、180度(π)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Dとは、300度(5π/3)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Eとは、60度(π/3)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Fとは、240度(4π/3)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。
すなわち、互いに磁気結合している第1リアクトルL1及び第2リアクトルL2を含む電圧変換回路1A、1Bでは、スイッチング素子Q1のオンタイミングとスイッチング素子Q3のオンタイミングとが位相120度だけずれている。また、互いに磁気結合している第3リアクトルL3及び第4リアクトルL4を含む電圧変換回路1C、1Dでは、スイッチング素子Q5のオンタイミングとスイッチング素子Q7のオンタイミングとが位相120度だけずれている。また、互いに磁気結合している第5リアクトルL5及び第6リアクトルL6を含む電圧変換回路1E、1Fでは、スイッチング素子Q9のオンタイミングとスイッチング素子Q11のオンタイミングとが位相180度だけずれている。
そして、スイッチング素子Q3がオンしているときの第2電流IL2、スイッチング素子Q7がオンしているときの第4電流IL4の各ピーク値が、第1電流IL1、第3電流IL3の各ピーク値よりも大きくなる。したがって、図10Aに示すように、スイッチング素子Q1、Q3の発熱バランス、スイッチング素子Q5、Q7の発熱バランスのそれぞれがアンバランスになる。具体的に、スイッチング素子Q3、Q7での各電力損失は、スイッチング素子Q1、Q5での各電力損失よりも大きくなる。
一方、図10Bに示すように、スイッチング素子Q2、Q4の発熱バランス、スイッチング素子Q6、Q8の発熱バランス、スイッチング素子Q10、Q12の発熱バランスはほぼ平衡になっている。
(5.2.2)6相昇圧
(6相昇圧の第1例)
以下、昇圧モードの電力変換システムA2による6相昇圧動作の第1例について説明する。
電圧変換回路1A〜1Fの各動作は、予め決められたスイッチング周期に同期する。そして、スイッチング周期を360度(2π)とすると、電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Bとは、60度(π/3)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Cとは、120度(2π/3)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Dとは、180度(π)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Eとは、240度(4π/3)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Fとは、300度(5π/3)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。
すなわち、互いに磁気結合している第1リアクトルL1及び第2リアクトルL2を含む電圧変換回路1A、1Bでは、スイッチング素子Q2のオンタイミングとスイッチング素子Q4のオンタイミングとが位相60度だけずれている。また、互いに磁気結合している第3リアクトルL3及び第4リアクトルL4を含む電圧変換回路1C、1Dでは、スイッチング素子Q6のオンタイミングとスイッチング素子Q8のオンタイミングとが位相60度だけずれている。また、互いに磁気結合している第5リアクトルL5及び第6リアクトルL6を含む電圧変換回路1E、1Fでは、スイッチング素子Q10のオンタイミングとスイッチング素子Q12のオンタイミングとが位相60度だけずれている。
上述のスイッチング素子Q1〜Q12の各動作によって、第1リアクトルL1には第1電流IL1が流れ、第2リアクトルL2には第2電流IL2が流れ、第3リアクトルL3には第3電流IL3が流れる。また、第4リアクトルL4には第4電流IL4が流れ、第5リアクトルL5には第5電流IL5が流れ、第6リアクトルL6には第6電流IL6が流れる。
そして、スイッチング素子Q1がオンしているときの第1電流IL1、スイッチング素子Q5がオンしているときの第3電流IL3、スイッチング素子Q9がオンしているときの第5電流IL5の各ピーク値が、第2電流IL2、第4電流IL4、第6電流IL6の各ピーク値よりも大きくなる。したがって、図11Aに示すように、スイッチング素子Q1、Q3の発熱バランス、スイッチング素子Q5、Q7の発熱バランス、スイッチング素子Q9、Q11の発熱バランスのそれぞれがアンバランスになる。具体的に、スイッチング素子Q1、Q5、Q9での各電力損失は、スイッチング素子Q3、Q7、Q11での各電力損失よりも大きくなる。
また、図11Bに示すように、スイッチング素子Q2、Q4の発熱バランス、スイッチング素子Q6、Q8の発熱バランス、スイッチング素子Q10、Q12の発熱バランスのそれぞれもアンバランスになる。具体的に、スイッチング素子Q2、Q6、Q10での各電力損失は、スイッチング素子Q4、Q8、Q12での各電力損失よりも大きくなる。
(6相昇圧の第2例)
以下、昇圧モードの電力変換システムA2による6相昇圧動作の第2例について説明する。
電圧変換回路1A〜1Fの各動作は、予め決められたスイッチング周期に同期する。そして、スイッチング周期を360度(2π)とすると、電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Bとは、120度(2π/3)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Cとは、60度(π/3)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Dとは、180度(π)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Eとは、240度(4π/3)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Fとは、300度(5π/3)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。
すなわち、互いに磁気結合している第1リアクトルL1及び第2リアクトルL2を含む電圧変換回路1A、1Bでは、スイッチング素子Q2のオンタイミングとスイッチング素子Q4のオンタイミングとが位相120度だけずれている。また、互いに磁気結合している第3リアクトルL3及び第4リアクトルL4を含む電圧変換回路1C、1Dでは、スイッチング素子Q6のオンタイミングとスイッチング素子Q8のオンタイミングとが位相120度だけずれている。また、互いに磁気結合している第5リアクトルL5及び第6リアクトルL6を含む電圧変換回路1E、1Fでは、スイッチング素子Q10のオンタイミングとスイッチング素子Q12のオンタイミングとが位相60度だけずれている。
そして、スイッチング素子Q1がオンしているときの第1電流IL1、スイッチング素子Q5がオンしているときの第3電流IL3、スイッチング素子Q11がオンしているときの第6電流IL6の各ピーク値が、第2電流IL2、第4電流IL4、第5電流IL5の各ピーク値よりも大きくなる。したがって、図12Aに示すように、スイッチング素子Q1、Q3の発熱バランス、スイッチング素子Q5、Q7の発熱バランス、スイッチング素子Q9、Q11の発熱バランスのそれぞれがアンバランスになる。具体的に、スイッチング素子Q1、Q5、Q11での各電力損失は、スイッチング素子Q3、Q7、Q9での各電力損失よりも大きくなる。
また、図12Bに示すように、スイッチング素子Q2、Q4の発熱バランス、スイッチング素子Q6、Q8の発熱バランス、スイッチング素子Q10、Q12の発熱バランスのそれぞれもアンバランスになる。具体的に、スイッチング素子Q2、Q6、Q12での各電力損失は、スイッチング素子Q4、Q8、Q10での各電力損失よりも大きくなる。
(6相昇圧の第3例)
以下、昇圧モードの電力変換システムA2による6相昇圧動作の第3例について説明する。
電圧変換回路1A〜1Fの各動作は、予め決められたスイッチング周期に同期する。そして、スイッチング周期を360度(2π)とすると、電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Bとは、120度(2π/3)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Cとは、180度(π)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Dとは、300度(5π/3)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Eとは、60度(π/3)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。電圧変換回路1Aと電圧変換回路1Fとは、240度(4π/3)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。
すなわち、互いに磁気結合している第1リアクトルL1及び第2リアクトルL2を含む電圧変換回路1A、1Bでは、スイッチング素子Q2のオンタイミングとスイッチング素子Q4のオンタイミングとが位相120度だけずれている。また、互いに磁気結合している第3リアクトルL3及び第4リアクトルL4を含む電圧変換回路1C、1Dでは、スイッチング素子Q6のオンタイミングとスイッチング素子Q8のオンタイミングとが位相120度だけずれている。また、互いに磁気結合している第5リアクトルL5及び第6リアクトルL6を含む電圧変換回路1E、1Fでは、スイッチング素子Q10のオンタイミングとスイッチング素子Q12のオンタイミングとが位相180度だけずれている。
そして、スイッチング素子Q1がオンしているときの第1電流IL1、スイッチング素子Q5がオンしているときの第3電流IL3の各ピーク値が、第2電流IL2、第4電流IL4の各ピーク値よりも大きくなる。したがって、図13Aに示すように、スイッチング素子Q1、Q3の発熱バランス、スイッチング素子Q5、Q7の発熱バランスのそれぞれがアンバランスになる。具体的に、スイッチング素子Q1、Q5での各電力損失は、スイッチング素子Q3、Q7での各電力損失よりも大きくなる。
また、図13Bに示すように、スイッチング素子Q2、Q4の発熱バランス、スイッチング素子Q6、Q8の発熱バランスのそれぞれもアンバランスになる。具体的に、スイッチング素子Q2、Q6での各電力損失は、スイッチング素子Q4、Q8での各電力損失よりも大きくなる。
(5.3)6相の電力変換システムの作用
電力変換システムA2は、電圧変換回路1A、1Bの発熱バランス、電圧変換回路1C、1Dの発熱バランス、及び電圧変換回路1E、1Fの発熱バランスの少なくとも1つがアンバランスになるように、第1電流IL1〜第6電流IL6の波形をそれぞれ能動的に制御している。
このように、電力変換システムA2は、6つの電圧変換回路1A〜1Fの各電力損失のばらつきを能動的に制御することができる。
(5.4)冷却装置
電力変換システムA2は、冷却装置(例えば図6の冷却装置3)を更に備えることが好ましい。電力変換システムA2は、上述のように6つの電圧変換回路1A〜1Fの各電力損失のばらつきを能動的に制御している。そして、電圧変換回路1A〜1Fのそれぞれは冷却対象をそれぞれ有し、複数の冷却対象は、当該冷却対象の電力損失が大きいほど、複数の冷却対象のうちの他の冷却対象に比べて優先的に冷却されることが好ましい。この結果、冷却装置の冷却性能、並びに電圧変換回路1A〜1Fの配置及びスイッチング素子Q1〜Q12の各配置に応じて、6つの電圧変換回路1A〜1Fの各電力損失のばらつきを能動的に制御することで、冷却装置の小型化を図ることができる。
(6)変形例
4相の電力変換システムA1(図1参照)では、降圧モードで動作する場合、スイッチング素子Q1、Q3の各オンタイミングの位相差、及びスイッチング素子Q5、Q7の各オンタイミングの位相差の一方が90度、他方が180度であってもよい。
また、4相の電力変換システムA1では、昇圧モードで動作する場合、スイッチング素子Q2、Q4の各オンタイミングの位相差、及びスイッチング素子Q6、Q8の各オンタイミングの位相差の一方が90度、他方が180度であってもよい。これらの場合には、スイッチング素子Q1〜Q8での電力損失をアンバランスにすることができる。
また、6相の電力変換システムA2(図7参照)では、降圧モードで動作する場合、スイッチング素子Q1、Q3の各オンタイミングの位相差、スイッチング素子Q5、Q7の各オンタイミングの位相差、及びスイッチング素子Q9、Q11の各オンタイミングの位相差のうち、1つ又は2つが60度又は120度、残りが180度であってもよい。
また、6相の電力変換システムA2では、昇圧モードで動作する場合、スイッチング素子Q2、Q4の各オンタイミングの位相差、スイッチング素子Q6、Q8の各オンタイミングの位相差、及びスイッチング素子Q10、Q12の各オンタイミングの位相差のうち、1つ又は2つが60度、残りが180度又は120度であってもよい。これらの場合には、スイッチング素子Q1〜Q12での電力損失をアンバランスにすることができる。
また、電力変換システムA1は4相の電力変換システム、電力変換システムA2は6相の電力変換システムであるが、電力変換システムの相数は2相以上であればよく、特定の相数に限定されない。
また、結合リアクトルL12、L34、L56は、それぞれ2つリアクトルを磁気結合した2相の結合リアクタンスである。本開示の電力変換システムでは、2相の結合リアクタンスを備える構成に限定されず、3相以上の結合リアクタンスを備える構成であってもよい。すなわち、多相結合リアクトルの相数は特定の相数に限定されない。
また、電力変換システムは、降圧動作及び昇圧動作の両方を行う双方向の電力変換システム以外に、降圧動作及び昇圧動作のいずれか一方のみを行う単方向の電力変換システムであってもよい。
また、制御回路2は、第1リアクトルL1に流れる第1電流IL1、第2リアクトルL2に流れる第2電流IL2、第3リアクトルL3に流れる第3電流IL3、第4リアクトルL4に流れる第4電流IL4の各ピーク値をそれぞれの目標値に一致させるピーク値制御を行ってもよい。
また、冷却装置は、図6に示すヒートシンクを用いた構造に限定されず、例えばヒートパイプ、熱交換器などを用いた構造であってもよい。また、冷媒として空気以外の気体、又は水などの液体を用いてもよい。
(7)まとめ
実施形態に係る第1の態様の電力変換システム(A1、A2)は、複数の電圧変換回路(1A〜1F)を備える。複数の電圧変換回路(1A〜1F)は、複数のリアクトル(L1〜L6)が互いに磁気結合された結合リアクトル(L12、L34、L56)を含む。複数の電圧変換回路(1A〜1F)のそれぞれは、複数のリアクトル(L1〜L6)のうちいずれか1つのリアクトル、及びいずれか1つのリアクトルを流れる電流(IL1〜IL6)を導通、遮断するスイッチング素子(Q1〜Q12)を有する。複数の電圧変換回路(1A〜1F)のそれぞれのスイッチング素子(Q1〜Q12)における各電力損失のうち、少なくとも1つの電力損失が他の電力損失と異なるように、複数のスイッチング素子(Q1〜Q12)はそれぞれオン、オフする。
上述の電力変換システム(A1、A2)は、複数の電圧変換回路(1A〜1F)の各電力損失のばらつきを能動的に制御することができる。
実施形態に係る第2の態様の電力変換システム(A1、A2)では、第1の態様において、複数の電圧変換回路(1A〜1F)のそれぞれは、冷却対象をそれぞれ有する。複数の冷却対象は、当該冷却対象の電力損失が大きいほど、複数の冷却対象のうちの他の冷却対象に比べて優先的に冷却されることが好ましい。
上述の電力変換システム(A1、A2)は、複数の冷却対象を冷却するための冷却装置(3)の小型化を図ることができる。
実施形態に係る第3の態様の電力変換システム(A1、A2)では、第2の態様において、複数の冷却対象のそれぞれは、スイッチング素子(Q1〜Q12)であることが好ましい。
上述の電力変換システム(A1、A2)では、発熱源となるスイッチング素子(Q1〜Q12)を冷却対象とすることで、冷却効率が向上する。
実施形態に係る第4の態様の電力変換システム(A1、A2)では、第2又は第3の態様において、優先的に冷却される冷却対象は、他の冷却対象に比べて、冷媒が流れる経路の上流側に位置することが好ましい。
上述の電力変換システム(A1、A2)は、冷却対象を効率よく冷却することができる。
実施形態に係る第5の態様の電力変換システム(A1、A2)は、第2乃至第4の態様のいずれか1つにおいて、複数の冷却対象を冷却する冷却装置(3)を更に備えることが好ましい。
上述の電力変換システム(A1、A2)は、冷却装置(3)の小型化を図ることができる。
実施形態に係る第6の態様の電力変換システム(A1、A2)では、第1乃至第5の態様のいずれか1つにおいて、結合リアクトル(L12、L34、L56)は、2つのリアクトル(L1とL2、L3とL4、L5とL6)を有することが好ましい。
上述の電力変換システム(A1、A2)は、偶数相のインタリーブ方式の電力変換システムを構成できる。
実施形態に係る第7の態様の電力変換システム(A1、A2)では、第1乃至第6の態様のいずれか1つにおいて、複数の電圧変換回路(1A〜1F)のそれぞれは、双方向の電力変換を行うように構成されていることが好ましい。
上述の電力変換システム(A1、A2)は、双方向の電圧変換において、複数の電圧変換回路(1A〜1F)の各電力損失のばらつきを能動的に制御することができる。
実施形態に係る第8の態様の電力変換システム(A1、A2)は、第1乃至第7の態様のいずれか1つにおいて、複数の電圧変換回路(1A〜1F)のそれぞれのスイッチング素子(Q1〜Q12)をそれぞれ制御する制御回路(2)を更に備えることが好ましい。
上述の電力変換システム(A1、A2)は、複数の電圧変換回路(1A〜1F)の各電力損失のばらつきを能動的に制御することができる。
実施形態に係る第9の態様の電力変換システム(A1、A2)では、第8の態様において、制御回路(2)は、複数の電圧変換回路(1A〜1F)のそれぞれを流れる電流(IL1〜IL6)の実効値を制御することが好ましい。
上述の電力変換システム(A1、A2)は、出力の実効値を所望の値に制御できる。
実施形態に係る第10の態様の電力変換システム(A1)は、第1電圧変換回路(1A)と、第2電圧変換回路(1B)と、第3電圧変換回路(1C)と、第4電圧変換回路(1D)と、を備える。第1電圧変換回路(1A)は、第1リアクトル(L1)、及び第1リアクトル(L1)を流れる電流(IL1)を導通、遮断する第1スイッチング素子(Q1、Q2)を有する。第2電圧変換回路(1B)は、第2リアクトル(L2)、及び第2リアクトル(L2)を流れる電流(IL2)を導通、遮断する第2スイッチング素子(Q3、Q4)を有する。第3電圧変換回路(1C)は、第3リアクトル(L3)、及び第3リアクトル(L3)を流れる電流(IL3)を導通、遮断する第3スイッチング素子(Q5、Q6)を有する。第4電圧変換回路(1D)は、第4リアクトル(L4)、及び第4リアクトル(L4)を流れる電流(IL4)を導通、遮断する第4スイッチング素子(Q7、Q8)を有する。第1リアクトル(L1)と第2リアクトル(L2)とは、互いに磁気結合され、第3リアクトル(L3)と第4リアクトル(L4)とは、互いに磁気結合される。第1スイッチング素子(Q1、Q2)及び前記第2スイッチング素子(Q3、Q4)の各オンタイミングの位相差は90度である。第1スイッチング素子(Q1、Q2)及び第3スイッチング素子(Q5、Q6)の各オンタイミングの位相差は180度である。第1スイッチング素子(Q1、Q2)及び第4スイッチング素子(Q7、Q8)の各オンタイミングの位相差は270度である。
上述の電力変換システム(A1)は、複数の電圧変換回路(1A〜1D)の各電力損失のばらつきを能動的に制御することができる。