JP2021120152A - 流体フィルタ - Google Patents
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Abstract
【課題】流体に含まれる正に帯電した粒子と負に帯電した粒子の両方を効率良く捕集できる流体フィルタを提供する。【解決手段】流体フィルタ1は、網目状の基布11と、互いに異なる種類の材質から形成された複数種類のパイル121を含む複数のパイル群12と、を備える。また、複数のパイル群12それぞれに含まれる複数種類のパイル121の基端部は、基布11における複数の支持位置P1のいずれか1つに纏めて支持されている。また、複数種類のパイル121全体における、複数種類のパイル121同士が擦れ合うことにより正に帯電するパイル121の割合は、10%以上90%以下である。【選択図】図1
Description
本発明は、流体フィルタに関する。
網目状の基布と、基布に編み込まれ基布の表面上にブラシ状にフィルタ層を形成するパイルと、を備え、パイルを、繊維径10μm以上71.7μm以下の繊維からなるマルチフィラメント捲縮糸に、直径35μm乃至316μmの非捲縮モノフィラメント糸を27本/in2以上324本/in2以下を混入してなる再生式エアフィルタが提案されている(例えば特許文献1参照)。
ところで、特許文献1に記載されているような再生式エアフィルタでは、単一種類の材質から形成されたパイルが使用されることが多い。但し、この場合、PM2.5、UFP等のいわゆる小径の粒子を十分に捕集することができない虞がある。
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、流体に含まれる正に帯電した粒子と負に帯電した粒子の両方を効率良く捕集できる流体フィルタを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る流体フィルタは、
網目状の基布と、
互いに異なる種類の材質から形成された複数種類のパイルを含む複数のパイル群と、を備える流体フィルタであって、
前記複数のパイル群それぞれに含まれる前記複数種類のパイルの基端部は、前記基布における複数の支持位置のいずれか1つに纏めて支持され、
前記複数種類のパイル全体における、前記複数種類のパイル同士が擦れ合うことにより正に帯電するパイルの割合は、10%以上90%以下である。
網目状の基布と、
互いに異なる種類の材質から形成された複数種類のパイルを含む複数のパイル群と、を備える流体フィルタであって、
前記複数のパイル群それぞれに含まれる前記複数種類のパイルの基端部は、前記基布における複数の支持位置のいずれか1つに纏めて支持され、
前記複数種類のパイル全体における、前記複数種類のパイル同士が擦れ合うことにより正に帯電するパイルの割合は、10%以上90%以下である。
本発明によれば、複数のパイル群それぞれに含まれる複数種類のパイルの基端部が、基布における複数の支持位置のいずれか1つに纏めて支持されている。そして、複数種類のパイル全体における、複数種類のパイル同士が擦れ合うことにより正に帯電するパイルの割合が、10%以上90%以下である。これにより、複数のパイル群それぞれに含まれる複数種類のパイルが、基布を透過する流体により互いに擦れ合うことにより正に帯電したパイルと負に帯電したパイルとが混在した状態となる。これにより、複数のパイル群の中に不均一な電界が形成され、不均一な電界における電場勾配により帯電量の小さい粒子をパイルに捕捉することができるので、帯電量の小さい粒子を効率良く補足できる。また、複数のパイル群それぞれに含まれる正に帯電したパイルと負に帯電したパイルとが、流体に含まれる正に帯電した粒子と負に帯電した粒子との両方を捕集することができるので、流体に含まれる正に帯電した粒子と負に帯電した粒子との両方を効率良く捕集できる。
以下、本発明の実施の形態に係る流体フィルタについて、図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係る流体フィルタは、網目状の基布と、互いに異なる種類の材質から形成された複数種類のパイルを含む複数のパイル群と、を備える。そして、複数のパイル群それぞれに含まれる複数種類のパイルの基端部は、基布における複数の支持位置のいずれか1つに纏めて編み込まれている。これにより、複数のパイル群それぞれに含まれる複数種類のパイルは、基布を透過する流体により互いに擦れ合うことにより正に帯電したパイルと負に帯電したパイルとが混在した状態となる。
図1(A)および(B)に示すように、本実施の形態に係る流体フィルタ1は、基布11と、複数のパイル群12と、複数のパイル群それぞれを基布11に接着するための接着剤(図示)と、を備える。基布11は、例えば地糸111をいわゆる横編みすることにより形成される編物からなり、網目状の構造を有する。なお、基布11は、地糸111をいわゆる縦編みすることにより形成される編み物からなるものであってもよい。地糸111としては、例えば合成繊維から形成された糸を採用することができる。
複数のパイル群12は、それぞれ、基布11における複数の支持位置P1の1つに基端部が纏めて編み込まれた複数種類のパイル121から構成されている。複数種類のパイル121は、それぞれ、帯電列において互いに異なる順位の材料から形成されている。複数種類のパイル121は、それぞれ、繊維から形成される。繊維を構成するポリマとしては、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン・アクリレート共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン三元共重合体、メタクリル酸メチル・スチレン共重合体、ポリアミド、ポリエステル、アラミド、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレンを含む共重合体、ポリヒドロキシブチレート、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリブチレンサクシネート、ポリエーテルケトン、ポリアリレンエーテルケトン、ポリアクリロニトリル・メタクリレート共重合体、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルイミド、ポリエチレンサルファイド、ポリエステルウレタン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピロリドン、ポリメタクリル酸メチル、非晶性のポリ−DL−乳酸(PDLLA)、ポリ乳酸の誘導体、ポリ乳酸−グリコール酸共重合体、セルロース、酢酸セルロース等が挙げられる。ここで、ポリプロピレン繊維は、ポリプロピレンから形成されたポリマ繊維に相当し、アクリル繊維は、アクリロニトリルから形成されたポリマ繊維に相当する。また、ポリアミド繊維は、ポリアミドから形成されたポリマ繊維に相当する。更に、パイル121を形成する繊維として、絹、ウール、レーヨン、ビニロン等を採用してもよい。
なお、複数種類のパイル121を形成する繊維の標準状態での水分率の平均値は、3未満であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。ここで、「標準状態での水分率」とは、温度25℃、湿度60%の標準状態における繊維の水分率を意味している。また、複数種類のパイル121のうちの少なくとも1種類のパイル121は、標準状態での水分率が0である繊維から形成されているとより好ましい。標準状態での水分率が0である繊維としては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、フッ素樹脂繊維等が挙げられる。また、標準状態での水分率が0よりも大きく2以下の繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、アクリル繊維等が挙げられる。
パイル121の断面形状は、例えば断面形状が4つの円を1つの軸周りに隣接して配置したときの外周形状と同一の形状であるいわゆるクローバ形状であることが好ましい。この場合、パイル121の表面に形成される微細な溝に電荷が保持されるので、帯電し易くなる。また、パイル121の表面積が大きくなるので、その分、パイル121の表面に粒子が付着し易くなる。なお、パイル121の断面形状は、円形状であってもよいし、扁平な形状であってもよい。また、パイル121の表面に付着した帯電を阻害する成分を含む油剤は、除去されていることが好ましい。ここで、帯電を阻害する成分を含む油剤としては、例えば、ポリエステル繊維等の合成繊維を製造する際に通常使用される紡糸油である。紡糸油剤としては、例えば、鉱物油系、特殊アニオン系、特殊ノニオン系、特殊カチオン系が挙げられる。また、これらの紡糸油剤には、酸化防止剤、制電剤、浸透剤、消泡剤、防腐剤、抗菌剤等を添加したものも含まれる。
パイル群12全体における複数種類のパイル121同士が擦れ合うことにより正に帯電するパイル121の割合は、10%以上90%以下であることが好ましい。例えばパイル群がポリプロピレン繊維から形成されたパイルと、アクリロニトリルの含有率が35%以上85%以下である共重合体からなる繊維(以下、「アクリロニトリル共重合体繊維」と称する。)から形成されたパイルと、から構成される場合、パイル群におけるアクリロニトリル共重合体繊維から形成されたパイルの含有率は、10%以上90%以下であることが好ましく、25%以上75%以下であることがより好ましい。
複数のパイル群12の目付量は、200g/m2以上1500g/m2以下であることが好ましく、300g/m2以上1300g/m2以下であることがより好ましい。ここで、「目付量」とは、流体フィルタ1の完成品における1m2当たりの重量に相当する。複数のパイル群12の目付量が200g/m2未満の場合、パイル群12同士が接触しにくくなりパイル群12の帯電量が低下してしまう。また、この場合、流体に含まれる捕捉対象の粒子が流体フィルタ1を透過する確率が過度に増加してしまう。一方、複数のパイル群12の目付量が1500g/m2を超えると、パイル群12が過密になることによりパイル群12を構成するパイル121の揺動が阻害されてしまう。また、この場合、流体フィルタ1における圧力損失が過度に増加してしまう。従って、複数のパイル群12の目付量は、200g/m2以上1500g/m2以下であることが好ましい。
パイル群12を構成するパイル121の平均パイル長は、3mm以上50mm以下であることが好ましく、5mm以上30mm以下であることがより好ましい。平均パイル長が3mm未満の場合、パイル121同士が接触しにくくなりパイル群12の帯電量が低下してしまう。一方、平均パイル長が50mmを超えると、流体フィルタ1における圧力損失が過度に増加してしまう。従って、平均パイル長は、3mm以上50mm以下であることが好ましい。パイル群12を構成するパイル121を形成する繊維の単糸繊度の平均値は、11dtex以下であることが好ましく、7dtex以下であることがより好ましい。パイル121を形成する繊維の単糸繊度の平均値が11dtex以下の場合、パイル121が気流により揺動し易くなるとともに、表面積が大きくなるので、その分、流体中の粒子がパイル121に付着し易くなる。
接着剤としては、例えば共重合ポリエステル樹脂接着剤を採用することができる。また、接着剤としては、その他に、エポキシ樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、塩化ビニル樹脂系接着剤、ニトロセルロース系接着剤等を採用することができる。
以上説明したように、本実施の形態に係る流体フィルタによれば、複数のパイル群12それぞれに含まれる複数種類のパイル121の基端部が、基布11における複数の支持位置P1のいずれか1つに纏めて編み込まれている。そして、複数のパイル群12それぞれに含まれる複数種類のパイル121が、基布11を透過する流体により互いに擦れ合うことにより正に帯電したパイル121と負に帯電したパイル121とが混在した状態となる。これにより、複数のパイル群12の中に不均一な電界が形成され、不均一な電界における電場勾配により帯電量の小さい粒子をパイル121に捕捉することができるので、帯電量の小さい粒子を効率良く補足できる。また、正に帯電したパイル121と負に帯電したパイル121とが、それぞれが流体に含まれる正に帯電した粒子と負に帯電した粒子との両方を捕集することができるので、流体に含まれる正に帯電した粒子と負に帯電した粒子との両方を効率良く捕集できる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、図2および図3に示す流体フィルタ2のように、基布21が、経糸211と緯糸212とからなる織物からなるものであってもよい。ここで、複数のパイル群12は、それぞれ、基布21における複数の支持位置P2の1つに基端部が纏めて編み込まれた複数種類のパイル121から構成されている。また、基布21におけるパイル群12が設けられていない箇所には、流体を透過させるための複数の開口21aが形成されている。なお、基布21全体における開口21aの占有率は、5%以上95%以下に設定されてもよい。
以上、本発明の実施の形態および変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態および変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
以下、本発明について実施例および比較例に基づいて具体的に説明する。まず、複数種類のパイルを含むパイル群の捕集性能と1種類のパイルのみからなるパイル群の捕集性能とを比較した結果について説明する。パイル群の捕集性能の比較は、試料に正帯電性トナーと負帯電性トナーとを吹き付けたときの付着量を比較することにより行った。具体的には、ふるい振盪器の中に設けられた孔径3mmのメッシュ状の保持部にパイル群の塊からなる試料を保持させた状態で、正帯電性トナーと負帯電性トナーを振りかけたときのトナーの付着量を測定することにより行った。ふるい振盪器としては、アズワン株式会社製MVS−1Nを使用した。正帯電性トナーと負帯電性トナーとの混合比は、1対1とした。また、正帯電性トナーとしては、ブラザー工業株式会社製の黒色トナーを採用し、負帯電性トナーとしては、富士ゼロックス株式会社製の黄色トナーを採用した。実験は、まず、試料の重量を測定した後、イオナイザを使用して試料を除電し、その後、風圧を0.3MPaに調整したノズルの直径6mmのエアガンを使用して1分間空気を試料へ吹き付けた。次に、ふるい振盪器の中に設けられた保持部に試料を保持させた後、試料の鉛直上方に孔径150μmのふるいを配置し、ふるい上にトナーを5g載置した。続いて、トナーが載置されたふるいを2分間振動させ続けることによりトナーを試料に振りかけた。その後、試料をふるい振盪器から取り出して試料の重量を測定した。そして、ふるい振盪器への投入前後における試料の重量の差分を算出することにより、試料へのトナーの付着量を求めた。
また、試料としては、下記表1に示す実施例1乃至5に係る試料と比較例1、2に係る試料とを使用した。なお、実施例1乃至5、比較例1、2に係る試料は、いずれも実施の形態で説明した流体フィルタ1と同様の構造を有する。また、実施例1乃至5に係る試料と比較例1、2に係る試料のパイル群を構成するパイルは、いずれもその表面に付着した油剤が除去されている。油剤の除去は、55℃の温水で30分間超音波洗浄を行った後、純水で濯ぐことにより行った。
ここで、「PP」は、ポリプロピレン繊維を示し、「K」は、アクリロニトリルの含有率が35%以上85%以下である共重合体からなる繊維(以下、「アクリロニトリル共重合体繊維」と称する。)を示す。ポリプロピレン繊維としては、ダイワボウポリテックス社製の「ミラクルファイバー4+(登録商標)」を採用した。また、アクリロニトリル共重合体繊維としては、カネカ社製の「カネカロン(登録商標)」を採用した。更に、「クローバ」とは、断面形状が4つの円を1つの軸周りに隣接して配置したときの外周形状と同一の形状であることを意味する。また、パイル長は、パイル群を構成するパイルの平均パイル長に相当する。また、表1中の「繊度」は、パイルを形成する繊維の単糸繊度、即ち、パイルを構成する繊維一本の太さの平均値を表し、10000m当たりのパイルの質量をグラム単位で表したもの(デシテックス)に相当する。
次に、比較例1、2に係る試料および実施例1乃至5に係る試料について、正帯電性トナーおよび負帯電性トナーを吹き付けたときの付着量を比較した結果について説明する。図4(A)乃至(E)は、それぞれ、実験後における実施例2乃至4に係る試料および比較例1、2に係る試料の外観を示す図である。なお、図4(A)乃至(E)は、それぞれ、試料の表面を1倍、10倍、50倍に拡大して観察した様子を示している。図4(A)に示すように、比較例2に係る試料は、試料全体として黄色の外観を示した。このことから、比較例2に係る試料は、負帯電性トナーを捕集し正帯電性トナーをほとんど捕集しないことが判る。一方、図4(B)乃至(D)に示す結果から、実施例2乃至4に係る試料は、それぞれ、正帯電性トナーと負帯電性トナーとの両方を捕集することが判る。また、図4(E)に示す結果から、比較例1に係る試料は、主として正帯電性トナーを捕集し、負帯電性トナーをほとんど捕集しないことが判る。
また、比較例1、2に係る試料および実施例1乃至5に係る試料におけるトナーの試料の単位重量当たりのトナーの付着量を図5に示す。図5において横軸の「K」はアクリル繊維の含有率を示し、「PP」はポリプロピレン繊維の含有率を示す。図5に示すように、実施例1乃至5に係る試料、即ち、アクリロニトリル共重合体繊維の含有率が10%、25%、50%、75%、90%である試料それぞれにおいて、比較例1、2に係る試料に比べてトナーの付着量が増加する結果が得られた。これは、実施例1乃至5に係る試料では、正帯電性トナーと負帯電性トナーとの両方を捕集した分、比較例1、2に係る試料に比べてトナーの捕集量が増加することを反映しているものと考えられる。また、実施例1乃至5に係る試料のうち、特に、実施例2乃至4に係る試料、即ち、アクリロニトリル共重合体繊維の含有率が25%、50%、75%である試料において、トナー付着量が2g以上となる結果が得られた。このことから、アクリロニトリル共重合体繊維の含有率は、25%以上75%以下であることが好ましいことが判る。
このように、実施例1乃至5に係るポリプロピレン繊維から形成されたパイルとアクリル繊維から形成されたパイルとを含む試料では、比較例1、2に係る単一種類のポリマ繊維のみを含む試料に比べてトナーの捕集率が向上している。このことから、実施例1乃至5に係るポリプロピレン繊維から形成されたパイルと、アクリロニトリル共重合体繊維から形成されたパイルと、を含む試料では、パイル群の中に正に帯電したパイルと負に帯電したパイルとが十分に混在した状態が生じて、パイル群の中に不均一電界が形成されていると考えられる。
次に、実施の形態で説明した流体フィルタ1と同様の構造を有する試料について、フィルタ性能を評価した結果について説明する。このフィルタ性能の評価は、試料を帯電させた後、アトマイザで噴霧したDOP粒子(フタル酸ビス(2−エチルヘキシル))を含む気体を試料に通気させたときの試料の前後におけるDOP粒子濃度を測定することにより行った。ここで、気体に含まれるDOP粒子の濃度は、50000/cc以上60000個/cc以下とし、気流の流速は、0.3m/secとした。また、試料の表面から多方向に3乃至10cm程度離間した位置それぞれにエアノズルを配置した状態で、エアノズルから吐出される空気を試料の表面に十分な時間当てることにより試料のパイルを帯電させた。ここで、エアノズルとしては、口径が6mmのものを使用し、エアノズルに0.3MPaの圧力が加わった状態でエアノズルから吐出される空気を試料表面に当てた。この評価に使用した実験装置は、図6に示すように、試料Sを保持する保持具Bと、保持具Bの上流側に接続された管T1と、保持具Bの下流側に接続された管T2と、管T1、T2内へ気体を引き込むための真空ポンプPM1と、を備える。また、実験装置は、管T1、T2を流れる気体の流量を制御するマスフローコントローラMC1と、管T2を流れる気体中に含まれる不純物の下流側への流出を防止するためのフィルタFL1と、を備える。更に、実験装置は、管T1を流れる気体中に含まれる粒子濃度を検出する粒子濃度検出器D1と、管T2を流れる気体中に含まれる粒子濃度を検出する粒子濃度検出器D2と、を備える。粒子濃度検出器D1、D2としては、TSI社製CPC−3007を採用した。そして、管T1の上流側からDOP粒子を含む気体を試料に通気させたときの試料の前後におけるDOP粒子濃度を粒子濃度検出器D1、D2で測定し、粒子濃度検出器D1、D2それぞれで検出されたDOP粒子濃度の比率からDOP粒子の除去率を算出した。
また、試料としては、表1に示す実施例1乃至5に係る試料と比較例1、2に係る試料とに加えて下記表2に示す実施例6、7に係る試料を使用した。なお、実施例6、7に係る試料は、いずれも実施の形態で説明した流体フィルタ1と同様の構造を有する。また、下記表2に示す実施例1乃至7係る試料および比較例1、2に係る試料に加えて比較例3に係る試料も使用した。比較例3に係る試料は、ポリプロピレン繊維とアクリロニトリル共重合体繊維とを含む厚さ10mmの不織布である。また、実施例6、7に係る試料は、実施例1乃至5に係る試料と同様にいずれもその表面に付着した油剤が除去されている。更に、表2中の「繊度」は、パイルを形成する繊維の単糸繊度の平均値を表している。
比較例1、2に係る試料および実施例1乃至7に係る試料それぞれについて、図6に示す実験装置を使用して算出した除去率を図7(A)に示す。図7(A)に示すように、実施例1乃至7に係る試料は、いずれも比較例1、2に係る試料に比べて除去率が大きく上昇していることが判る。また、流体フィルタに求められるDOP粒子の除去率が40%以上である場合、パイル同士が擦れ合うことにより正に帯電するパイル、即ち、前述のアクリロニトリル共重合体繊維から形成されたパイルの割合は、10%以上90%以下であることが好ましい。更に、流体フィルタとして除去率60%以上が要求される場合、パイル同士が擦れ合うことにより正に帯電するパイル、即ち、アクリロニトリル共重合体繊維から形成されたパイルの割合は、10%以上90%以下であることが好ましい。
次に、流体フィルタのパイル群の目付量とフィルタ性能との関係を評価した結果について説明する。試料としては、下記表3に示すように、実施例2の試料に加えて実施例8乃至12に係る試料を使用した。なお、実施例8乃至12に係る試料は、いずれも実施の形態で説明した流体フィルタ1と同様の構造を有する。また、表3において、「PP」、「K」は、表1の場合と同様である。更に、実施例8乃至12に係る試料は、実施例1乃至5に係る試料と同様にいずれもその表面に付着した油剤が除去されている。また、表3中の「繊度」は、パイルを形成する繊維の単糸繊度の平均値を表している。
実施例2および実施例8乃至12に係る試料それぞれについて、図6に示す実験装置を使用して算出した除去率を図7(B)に示す。図7(B)に示すように、目付量が上昇するのに伴い除去率が上昇していることが判る。また、目付量を200g/cm2とすれば、除去率が40%以上となり、目付量を400g/cm2とすれば、除去率が70%以上となることが判る。
次に、流体フィルタのパイル群を構成するパイルの太さとフィルタ性能との関係を評価した結果について説明する。試料としては、下記表4に示すように、実施例13乃至20に係る試料を使用した。なお、実施例13乃至20に係る試料は、いずれも実施の形態で説明した流体フィルタ1と同様の構造を有する。また、実施例13乃至20に係る試料は、実施例1乃至5に係る試料と同様にいずれもその表面に付着した油剤が除去されている。
表4において、「PET」は、ポリエチレンテレフタラート繊維を示し、「PA」は、ナイロン(登録商標)から形成された繊維を示す。また、表3において、「PP」は、表1の場合と同様である。また、表3中の「繊度」は、各試料に含まれるパイルを形成する繊維の単糸繊度の平均値を示す。なお、試料が例えば種類A、Bの2種類のパイルを含む場合、単糸繊度の平均値は、(種類Aのパイルの重量比率)×(種類Aのパイルを形成する繊維の単糸繊度の平均値)+(種類Bのパイルの重量比率)×(種類Bのパイルを形成する繊維の単糸繊度の平均値)の関係式を用いて算出される。更に、表2中の「繊度」は、パイルを形成する繊維の単糸繊度の平均値を表している。
実施例13乃至20に係る試料それぞれについて、図6に示す実験装置を使用して算出した除去率を図8に示す。図8に示すように、パイルを形成する繊維の単糸繊度が上昇するのに伴い除去率が低下していることが判る。特に、パイルを形成する繊維の単糸繊度の平均値が16dtex以上(実施例16、実施例20)の場合、パイルを形成する繊維の単糸繊度の平均値が2dtex(実施例13、実施例17)の場合に比べて、50%以上の除去率の低下が見られた。パイルを形成する繊維の単糸繊度の平均値が11dtex以下の場合、除去率が40%以上であるのに対して、パイルを形成する繊維の単糸繊度の平均値が30dtexまで大きくなると、除去率が14%程度まで大きく減少していることが判る。このことから、パイルを形成する繊維の単糸繊度の平均値は、16dtex未満であることが好ましく、11dtex以下であることがより好ましいことが判る。
次に、流体フィルタのパイル群を構成するパイルを形成する繊維の標準状態での水分率とフィルタ性能との関係を評価した結果について説明する。試料としては、下記表5に示すように、実施例21乃至42に係る試料を使用した。なお、実施例21乃至42に係る試料は、いずれも実施の形態で説明した流体フィルタ1と同様の構造を有する。また、実施例21乃至42に係る試料のパイル群の目付量は、いずれも600g/m2であり、実施例21乃至42に係る試料のパイル群の平均パイル長は、いずれも20mmである。更に、実施例21乃至42に係る試料は、実施例1乃至5に係る試料と同様にいずれもその表面に付着した油剤が除去されている。
表5において、「PE」は、ポリエチレン樹脂を示し、「アクリル」は、アクリル繊維を示し、「ビニロン」は、ビニロン繊維を示す。また、「レーヨン」は、レーヨン繊維を示し、「PTFE」は、ポリテトラフルオロエチレン繊維を示す。なお、表5において、「PP」、「K」、「PET」、「PA」は、前述の表1乃至4それぞれの場合と同様である。表5における「水分率」は、温度25℃、湿度60%の標準状態での水分率を表している。また、「全体水分率」は、各試料に含まれるパイル全体の標準状態での水分率を表す。更に、表5中の「繊度」は、パイルを形成する繊維の単糸繊度の平均値を表している。
実施例21乃至42に係る試料それぞれについて、図6に示す実験装置を使用して算出した除去率を図9に示す。図9に示す結果から、全体水分率が3未満の試料では、DOP粒子の除去率が40%以上に向上することが判った。また、全体水分率が2以下の試料では、DOP粒子の除去率が60%以上に向上することが判った。このことから、パイル群の中に含まれるパイルの全体水分率が3未満であることが好ましく、2以下であることがより好ましいことが判る。
更に、全体水分率が2以下であり且つ標準状態での水分率が0の繊維から形成されたパイルを含む試料は、DOP粒子の除去率が75%以上となることが判った。このことから、パイル群の中に標準状態での水分率が0の繊維から形成されたパイルを含まれていることが好ましいことが判る。
次に、流体フィルタの性能の空気の流入時間に対する依存性を評価した結果について説明する。試料としては、前述の比較例1、2に係る試料と前述の実施例1乃至5に係る試料に加えて比較例3に係る試料を使用した。比較例3に係る試料は、ポリプロピレン繊維とアクリロニトリル共重合体繊維とを含む不織布である。
この流体フィルタの性能の空気の流入時間に対する依存性の評価は、まず、40mm×40mmの矩形状の断面を有するフィルタボックスを準備し、その中に比較例1、2に係る試料および実施例1乃至5に係る試料を装着した。ここで、フィルタボックスの長さは、比較例1、2に係る試料および実施例1乃至5に係る試料のパイル群を構成するパイルの先端が内壁に接触しない程度の長さを有しており、200mm程度である。次に、比較例1、2に係る試料および実施例1乃至5に係る試料それぞれについて除電処理を行った後、フィルタボックス内へ風圧0.3MPaで予め設定された時間(2分間、4分間、6分間)だけ空気を流入させた。このとき、空気は一定の方向(フィルタボックスの長手方向に沿った方向)から試料に当たるようにした。なお、除電処理は、試料を純水に浸漬させた後、遠心脱水機で1分間脱水処理を行った。その後、図6に示す実験装置を用いて測定したDOP粒子の濃度に基づいて除去率を算出した。
比較例1乃至3に係る試料および実施例1乃至5に係る試料について、それぞれ、除電処理を行った直後、2分間、4分間、6分間だけ空気を流入させた後、パイル群を強制的に摩擦した場合、のDOP粒子の除去率を図10(A)に示す。図10(A)に示す結果から、比較例1、2、即ち、パイル群が1種類のパイルから構成されている場合、空気の流入時間に関わらず除電処理直後とほとんど除去率が変わらなかった。また、比較例3では、パイル群を強制的に摩擦した場合に除去率の上昇が見られたが、フィルタボックスに空気を流入させただけでは、除電処理直後とほとんど除去率が変わらなかった。一方、実施例1乃至5に係る試料の場合、いずれにおいても空気を流入させた場合の除去率が除電処理直後の除去率よりも上昇した。そして、実施例1乃至5に係る試料では、いずれも、空気の流入時間に伴う除去率の上昇が確認できた。
次に、流体フィルタのパイル群を構成するパイルの平均パイル長とフィルタ性能との関係を評価した結果について説明する。試料としては、下記表6に示すように、実施例3に係る試料に加えて実施例43乃至48に係る試料を使用した。なお、実施例43乃至48に係る試料は、いずれも実施の形態で説明した流体フィルタ1と同様の構造を有する。なお、表6において、「PP」、「K」は、前述の表1乃至4それぞれの場合と同様である。また、実施例43乃至48に係る試料は、実施例1乃至5に係る試料と同様にいずれもその表面に付着した油剤が除去されている。更に、表6中の「繊度」は、パイルを形成する繊維の単糸繊度の平均値を表している。
この流体フィルタの平均パイル長依存性の評価は、前述の流体フィルタの性能の空気の流入時間に対する依存性の評価と同様にして行った。具体的には、まず、前述のフィルタボックスを準備し、その中に実施例3、43乃至48に係る試料を装着し、次に、試料それぞれについて除電処理を行った後、フィルタボックス内へ風圧0.3MPaで6分間だけ空気を流入させた。その後、図6に示す実験装置を用いて測定したDOP粒子の濃度に基づいて除去率を算出した。
実施例3、43乃至48に係る試料についてのDOP粒子の除去率を図10(B)に示す。図10(B)に示す結果から、平均パイル長が3mm以上50mm以下とすることにより、除去率を40%以上とすることができることが判った。
次に、流体フィルタのパイル群を構成するパイルの表面における帯電を阻害する油剤の付着状態とフィルタ性能との関係を評価した評価した結果について説明する。試料としては、下記表7に示すように、実施例2に係る試料に加えて、実施例2に係る試料においてパイル表面における油剤の付着状態が異なる実施例49乃至51に係る試料を用いた。なお、実施例6乃至8に係る試料は、いずれも実施の形態で説明した流体フィルタ1と同様の構造を有する。また、表7において、「PP」、「K」は、前述の表1の場合と同様である。更に、表7中の「繊度」は、パイルを形成する繊維の単糸繊度の平均値を表している。
ここで、表5中の二重丸は、試料を55℃の温水で30分間超音波洗浄を行った後、試料を純水で濯ぐことによりパイル表面に付着した油剤を除去したことを示す。一重丸は、試料を55℃の温水で10分間超音波洗浄を行った後、試料を純水で濯いだことを示す。三角は、15℃の水で10分間超音波洗浄を行ったことを示す。「無し」は、パイル表面に付着した油剤を除去していないことを示す。
この流体フィルタのパイルの表面における油剤の付着状態とフィルタ性能との関係との評価は、実施例2、49乃至51に係る試料それぞれについて、前述の図6の実験装置を使用したDOP粒子の除去率の評価と、試料の表面の帯電量の測定と、を行うことにより実施した。試料の表面の帯電量の測定は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂から形成された部材で試料の表面を30sec摩擦した後、帯電量測定装置のプローブを試料表面から5mmだけ離間させた状態で試料の表面の帯電量を測定した。
実施例2、49乃至51に係る試料について、表面電位を測定した結果とDOP粒子の除去率を評価した結果を下記表8に示す。
表8に示すように、実施例51では、表面電位が0Vであったのに対して、実施例2、49、50では、表面電位が0Vを超えている。これに伴い、除去率も表面電位が高い実施例ほど大きくなっていることが判る。このことから、パイルの表面に存在する油剤の有無が、フィルタ性能に大きく影響していることが判る。また、表6に示す結果から、60%以上の除去率を達成するためには、パイルの表面に付着した油剤は、帯電が認められる程度、即ち、少なくとも60V程度の帯電が認められる程度には除去されている必要があることが判る。
次に、流体フィルタのパイル群を構成するパイルの断面形状とフィルタ性能との関係を評価した結果について説明する。試料としては、下記表9に示すように、実施例52、53に係る試料を使用した。なお、実施例52、53に係る試料は、いずれも実施の形態で説明した流体フィルタ1と同様の構造を有する。また、実施例52、53に係る試料は、実施例1乃至5に係る試料と同様にいずれもその表面に付着した油剤が除去されている。また、表9において、「PP」、「K」は、前述の表1の場合と同様である。更に、表9中の「繊度」は、パイルを形成する繊維の単糸繊度の平均値を表している。
実施例52、53に係る試料それぞれについて、図6に示す実験装置を使用して算出した除去率を図11に示す。実施例52、53に係る試料の除去率を比較すると、実施例52に係る試料のほうが高い。このことから、パイルの断面形状が円形よりもいわゆるクローバ形状のほうが、フィルタ性能が向上することが判る。
本発明は、空気調和機に使用されるエアフィルタとして好適である。
1,2:流体フィルタ、11,21:基布、12:パイル群、111:地糸、121:パイル、211:経糸、212:緯糸、P1,P2:支持位置
Claims (8)
- 網目状の基布と、
互いに異なる種類の材質から形成された複数種類のパイルを含む複数のパイル群と、を備える流体フィルタであって、
前記複数のパイル群それぞれに含まれる前記複数種類のパイルの基端部は、前記基布における複数の支持位置のいずれか1つに纏めて支持され、
前記複数種類のパイル全体における、前記複数種類のパイル同士が擦れ合うことにより正に帯電するパイルの割合は、10%以上90%以下である、
流体フィルタ。 - 前記複数種類のパイルを形成する繊維の標準状態での水分率は、3未満である、
請求項1に記載の流体フィルタ。 - 前記複数種類のパイルを形成する繊維の標準状態での水分率は、2以下である、
請求項2に記載の流体フィルタ。 - 前記複数種類のパイルのうち少なくとも1種類のパイルは、標準状態での水分率が0の繊維から形成されている、
請求項3に記載の流体フィルタ。 - 前記複数種類のパイルは、前記複数種類のパイルの表面に付着した帯電を阻害する成分を含む油剤が除去されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の流体フィルタ。 - 前記複数のパイル群の目付量は、200g/m2以上1500g/m2以下である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の流体フィルタ。 - 前記複数のパイル群それぞれを構成するパイルの平均パイル長は、3mm以上50mm以下である、
請求項1から6のいずれか1項に記載の流体フィルタ。 - 前記複数のパイル群それぞれを構成するパイルを形成する繊維の単糸繊度の平均値は、11dtex以下である、
請求項1から7のいずれか1項に記載の流体フィルタ。
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2020
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