JP2021118338A - 電線用スペーサー、電線用複合材、電線、コイル、トランス及び電力変換回路装置 - Google Patents

電線用スペーサー、電線用複合材、電線、コイル、トランス及び電力変換回路装置 Download PDF

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寛之 深井
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Abstract

【課題】高周波数における損失を効果的に低減できる電線を、簡便に、かつ、低コストで得ることを可能とする電線用部材、この部材を用いた電線並びにこの電線を用いたコイル、トランス及び電力変換回路装置を提供する。【解決手段】電線100Bを構成する導体部間の距離を一定の範囲に保つための凹部を表面に複数有するスペーサー20Eであって、スペーサー20Eは絶縁材料で構成され、表面の凹部が、互いに隣接する凹部に導体部を保持させた状態において、互いに隣接する導体部間の距離D1が、170μm≦D1≦540μmを、満たす。【選択図】図2

Description

本発明は、電線用スペーサー、電線用複合材、電線、コイル、トランス及び電力変換回路装置に関する。
電気・電子機器には、消費電力の低減等を図るため、通常、インバータとトランス(変圧器ともいう。)とを内蔵している。高周波で使用されるトランスは、一般に、表皮効果に起因する抵抗の増大を抑えるために、導体半径が、周波数によって決まる表皮深さよりも小さな電線が芯に巻回されたコイルを備えている。
このようなトランスにおいて、出力を高めるためには、芯に巻回される電線の導体断面積を増やす必要がある。この場合、上述のように表皮効果による抵抗増大を考慮すると大径の導体を有する電線の使用は避けることが重要であり、巻回する電線数を増やすことになる。電線数を増やす方法としては、一般的には、複数の電線を使って並列数を増やす方法、複数の素線をスパイラル状に撚り合わせたリッツ線を電線として使用する方法が挙げられる。
リッツ線としては、例えば、複数本のエナメル線素線と融着性繊維素線とを撚り合わせて成る自己融着性リッツ線が特許文献1に記載されている。このリッツ線は、自己融着性エナメル線素線を用いることなく、素線相互間の絶縁破壊電圧を高めることができるため、自己融着性エナメル線素線の製造に必要なエナメル塗料及び自己融着性塗料の複数回の塗布、焼付け工程を不要とし、製造コストを抑えられるとされている。
トランスは、通常、入力側(1次側)コイル及び出力側(2次側)コイルを備えており、各コイルに印加される電流の電圧及び電流値が設定される。トランスでは、通常、相対的に、1次側コイル及び2次側コイルのいずれか一方が低圧大電流側コイルとなり、他方が高圧小電流側コイルとなる。
高周波用トランスの低圧大電流側コイルには、従来、上記表皮効果の影響を考慮して設計された導体と、導体の外周を被覆する薄膜の絶縁層とを有する電線が用いられてきた。このように絶縁層が薄膜に形成されるのは、この電線には低圧の電流を流すためである。また、大電流によるジュール損失を防ぐ目的で占積率を高く設定する必要があり、これには絶縁層を可能な限り薄膜に形成することが有効な手段となっていた。
このような高周波用トランスに1000W以上の高出力を要求する場合、特に、低圧大電流側コイルでは抵抗が大きくなり、それに伴ってトランスの損失も大きくなる。そのため、低圧大電流側コイルに用いられる電線数を更に増やす必要がある。これにより、直流抵抗を小さくして損失を低減することができる。しかし、電線数を増すほど、電線間に作用する近接効果による交流抵抗が増大する。このような近接効果による影響は、例えば周波数が30kHz程度以上の交流になると無視できなくなる。
特許文献2には、上記低圧大電流側コイルに生じる抵抗を抑制し、高周波用高出力トランスの損失を効果的に低減することができる、低圧大電流側コイルが記載されている。この特許文献2に記載の低圧大電流側コイルを構成する電線は、絶縁層を厚く形成したうえで、導体部と絶縁層との外径比を特定の範囲を満たすように設定されている。
特開平8−222034号公報 特開2019−114573号公報
特許文献2に記載の低圧大電流側コイルを構成する電線を製造するにあたり、互いに隣接する導体部間の距離を特定の範囲に設定する方法としては、例えば、以下のような方法が考えられる。
導体部をリッツ線で構成した図43に示すような電線において導体部間の距離を特定の範囲に制御する方法として、複数の導体部を押出しによって一体化する方法が考えられる。しかし、この方法では、押出しの圧力を受けながら各導体部間の距離を適正な範囲に保った電線を製造することは簡単ではなく、改善の余地がある。
一方、互いに隣接する導体部間の距離を特定の範囲に設定した電線を製造する方法としては、例えば、図44に示すように、押出しによって1つずつ作製しておいた複数の導体部を撚り合わせることで、図43に示す電線と同等の損失低減効果を持つ電線を製造することができる。しかし、この方法では、作製する導体部の本数に応じて押出し工程が複数回必要であり、さらに撚り合せる工程が追加されるため、製造コストが上昇するという問題点がある。
本発明は、高周波数における損失を効果的に低減することができる電線を、簡便に、かつ、低コストで得ることを可能とする電線用部材を提供することを課題とする。また、本発明は、この部材を用いた電線、並びに、この電線を用いたコイル、トランス及び電力変換回路装置を提供することを課題とする。
上記事情に鑑み、本発明者らが鋭意検討を重ね、互いに隣接する導体部間の距離を一定に保つために、絶縁被覆層の層厚による制御に代えて、絶縁材料で構成された電線用スペーサーを利用する着想に至った。この着想の下で本発明者らがさらに検討を重ねた結果、このスペーサーを特定形状とすることにより、互いに隣接する導体部間を所望の距離に保持することができ、高周波数における損失が効果的に低減された電線を、より簡便に、より確実に提供できることを見出した。本発明者らはこの知見に基づき更に研究を重ね、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明の課題は以下の手段によって達成された。
<1>
電線を構成する導体部間の距離を一定の範囲に保つための凹部を表面に複数有するスペーサーであって、該スペーサーが絶縁材料で構成され、前記スペーサー表面の凹部が下記(条件1)を満たす、電線用スペーサー。
(条件1)互いに隣接する凹部に導体部を保持させた状態において、互いに隣接する導体部間の距離hを170μm≦h≦540μmとする。
<2>
前記電線用スペーサーが該スペーサーの中心軸に沿って導体部を有する、<1>に記載の電線用スペーサー。
<3>
前記中心軸に沿って配された導体部と、前記電線用スペーサー表面の凹部とが下記(条件1A)を満たす、<2>に記載の電線用スペーサー。
(条件1A)凹部に導体部を保持させた状態において、中心軸に沿って配された導体部と凹部に保持させた導体部との距離hを170μm≦h≦540μmとする。
<4>
前記電線用スペーサー表面の凹部の数が6つである、<2>又は<3>に記載の電線用スペーサー。
<5>
<1>〜<4>のいずれか1つに記載の電線用スペーサーと、該電線用スペーサー表面の凹部の少なくとも一部に保持された導体部とを有する、電線用複合材。
<6>
前記電線用スペーサー表面の互いに隣接する少なくとも2つの凹部に導体部が保持され、下記(条件2)を満たす、<5>に記載の電線用複合材。
(条件2)互いに隣接する導体部間の距離hと、当該互いに隣接する導体部の各々の外径dとの関係が、0.21≦h/d≦1.08を満たすこと。
<7>
前記複合材が有する電線用スペーサーが<2>〜<4>のいずれか1つに記載の電線用スペーサーであり、下記(条件2A)を満たす、<5>又は<6>に記載の電線用複合材。
(条件2A)電線用スペーサーの中心軸に沿って配された導体部と凹部に保持された導体部との間の距離hと、当該凹部に保持された導体部の外径dとの関係が0.21≦h/d≦1.08を満たし、かつ、前記距離hと、電線用スペーサーの中心軸に沿って配された導体部の外径dとの関係が0.21≦h/d≦1.08を満たす。
<8>
<1>〜<3>のいずれか1つに記載の電線用スペーサーを複数組み合わせて、全体として、電線を構成する導体部間の距離を一定の範囲に保つための凹部を表面に複数有する複合スペーサーとし、該複合スペーサーの表面凹部の少なくとも一部に導体部を保持してなる電線用複合材。
<9>
前記複合スペーサー表面の互いに隣接する少なくとも2つの凹部に導体部が保持され、下記(条件2)を満たす、<8>に記載の電線用複合材。
(条件2)互いに隣接する導体部間の距離hと、当該互いに隣接する導体部の各々の外径dとの関係が、0.21≦h/d≦1.08を満たすこと。
<10>
前記電線用スペーサー表面の凹部の数が3つである、<8>又は<9>に記載の電線用複合材。
<11>
前記導体部がリッツ線に由来する、<5>〜<10>のいずれか1つに記載の電線用複合材。
<12>
<5>〜<11>のいずれか1つに記載の電線用複合材の外周を絶縁被覆してなる電線。
<13>
<12>に記載の電線を用いたコイル。
<14>
<13>に記載のコイルを用いたトランス。
<15>
<14>に記載のトランスを用いた電力変換器。
本発明の説明において、「互いに隣接する導体部」とは、対象となる2つの導体部が、他の導体部が介在せずに並んでいる状態を意味する。例えば図27を例にとると、導体部である導線11a〜導線11eにおいて導線11aと導線11b、及び、導線11aと導線11eはそれぞれ互いに隣接する導体部である。他方、導線11aと導線11cは、導線11bを介在して並んでいるので、互いに隣接する導体部ではない。また、導線11aと導線11dは、導線11bと導線11cを介在して並んでいるので、互いに隣接する導体部ではない。
本発明の説明において、上記「低圧大電流側コイル」とは、2つのコイルのうち相対的に、低圧大電流値の電流が流れるコイルを意味し、上記「高圧小電流側コイル」とは、2つのコイルのうち相対的に、高圧小電流値の電流が流れるコイルを意味する用語として、それぞれ使用する。
また、本発明の説明において、トランスについて高周波とは、特に限定されないが、例えば作動周波数が30kHz以上であることをいう。周波数の上限に制限はなく、例えば150kHz以下である。また、トランスについて高出力とは、特に限定されないが、例えば1000W以上の出力をいい、その上限は例えば10kWである。
本発明において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明の説明において、「断面」とは、特に言及しない限り、軸線(長軸方向)に対して垂直な断面を意味する。そのため、本発明の電線用スペーサー、電線用複合材及び電線、並びに、本発明に用いられる導線、線心(単線及びリッツ線)及び素線における断面とは、各軸線に対して垂直な断面を意味する。
本発明の電線用スペーサー及び電線用複合材は、高周波数における損失を低減可能な電線を、簡便に、確実に、低コストで製造することができる。また、本発明の電線、並びに、この電線を用いた本発明のコイル、トランス及び電力変換回路装置は、本発明の電線用スペーサー又は電線用複合材を用いているため、高周波数における損失を低減することができる。
図1は、比較例1で作製した電線(1つの導体部が1本の導線)を示す概略断面図である。 図2は、実施例1で作製した電線(1つの導体部が1本の導線)を示す概略断面図である。 図3は、本発明のスペーサーを有する電線の一例を示す概略断面図である。 図4は、比較例1で作製したコイルを示す概略断面図である。 図5は、実施例1で作製したコイルを示す概略断面図である。 図6は、本発明の電線を用いて作製したコイルを示す概略断面図である。 図7は、導線7本を用いて作製した、同じ外径(仕上がり径)の電線を使用したコイルにおける、導体部間距離/導体部の外径とコイルの抵抗値との関係を示すグラフである(周波数30kHz)。 図8は、導線7本を用いて作製した、同じ外径(仕上がり径)の電線を使用したコイルにおける、導体部間距離/導体部の外径とコイルの抵抗値との関係を示すグラフである(周波数50kHz)。 図9は、導線7本を用いて作製した、同じ外径(仕上がり径)の電線を使用したコイルにおける、導体部間距離/導体部の外径とコイルの抵抗値との関係を示すグラフである(周波数150kHz)。 図10は、従来のトランスに用いる電線(1つの導体部が複数の素線を撚り合せてなる)の一例を示す概略断面図である。 図11は、本発明のスペーサーを用いて作製した電線(1つの導体部が複数の素線を撚り合せてなるもの)を示す概略断面図である。 図12は、従来の電線を用いて作製したコイルの一例を示す概略断面図である。 図13は、本発明の電線を用いて作製したコイルを示す概略断面図である。 図14は、7本の素線を撚り合せてなるリッツ線7本を用いて作製した、同じ外径(仕上がり径)の電線を使用したコイルにおける、導体部間距離/導体部の外径とコイルの抵抗値との関係を示すグラフである(周波数30kHz)。 図15は、7本の素線を撚り合せてなるリッツ線7本を用いて作製した、同じ外径(仕上がり径)の電線を使用したコイルにおける、導体部間距離/導体部の外径とコイルの抵抗値との関係を示すグラフである(周波数50kHz)。 図16は、7本の素線を撚り合せてなるリッツ線7本を用いて作製した、同じ外径(仕上がり径)の電線を使用したコイルにおける、導体部間距離/導体部の外径とコイルの抵抗値との関係を示すグラフである(周波数150kHz)。 図17は、比較例1で作製したコイルと実施例1で作製したコイルそれぞれにおける、周波数と抵抗値との関係を示すグラフである。 図18は、本発明のスペーサー(表面の凹部が3つ)の一例を示す概略断面図である。 図19は、本発明のスペーサー(表面の凹部が3つ)の一例を示す概略斜視投影図である。図19(a)が捩れ構造を有するスペーサーを示し、図19(b)が捩れ構造を有しないスペーサーを示す。 図20は、本発明のスペーサー(表面の凹部が3つ)の別の一例を示す概略断面図である。 図21は、本発明のスペーサー(表面の凹部が5つ)のさらに別の一例を示す概略断面図である。 図22は、本発明のスペーサー(表面の凹部が3つ)のさらに別の一例を示す概略断面図である。 図23は、本発明のスペーサー(中心軸に沿って導体部を有し、表面の凹部が6つ)のさらに別の一例を示す概略断面図である。 図24は、本発明の複合材(スペーサー表面の凹部が3つ)の一例を示す概略断面図である。 図25は、本発明の複合材(スペーサー表面の凹部が3つ)の一例を示す概略斜視投影図である。図25(a)が捩れ構造を有する複合材を示し、図25(b)が捩れ構造を有しない複合材を示す。 図26は、本発明の電線(スペーサー表面の凹部が3つ)の一例を示す概略断面図である。 図27は、本発明の複合材(スペーサー表面の凹部が5つ)の別の一例を示す概略断面図である。 図28は、本発明の複合材(スペーサー表面の凹部が5つ)の別の一例を示す概略斜視投影図である。図28(a)が捩れ構造を有する複合材を示し、図28(b)が捩れ構造を有しない複合材を示す。 図29は、本発明の電線(スペーサー表面の凹部が5つ)の別の一例を示す概略断面図である。 図30は、本発明の複合材(スペーサー表面の凹部が3つ)のさらに別の一例を示す概略断面図である。 図31は、本発明のスペーサーを複数組み合わせてなる形態の複合材(表面の凹部が3つのスペーサーを6つ)の一例を示す概略図である。図31(a)が概略断面図であって、図31(b)が投影斜視図である。 図32は、本発明の電線(表面の凹部が3つのスペーサーを6つ組み合わせてなる形態の複合材)のさらに別の一例を示す概略断面図である。 図33は、本発明の複合材(中心に導体部を有し、表面の凹部が6つ)のさらに別の一例を示す概略断面図である。 図34は、本発明の複合材(中心に導体部を有し、スペーサー表面の凹部が6つ)のさらに別の一例を示す投影斜視図である。図34(a)が捩れ構造を有する複合材を示し、図34(b)が捩れ構造を有しない複合材を示す。 図35は、本発明の複合材(中心に導体部を有し、スペーサー表面の凹部が6つ)のさらに別の一例を示す概略図である。図35(a)が概略断面図であって、図35(b)が投影斜視図である。 図36は、本発明の電線(中心に導体部を有し、表面の凹部が6つ)のさらに別の一例を示す概略断面図である。 図37は、本発明の電線(中心に導体部を有し、表面の凹部が6つで、1つの導体部が複数の素線を撚り合せてなるリッツ線に由来する)のさらに別の一例を示す概略断面図である。 図38は、本発明の電線(1つの導体部が複数の素線を撚り合せてなるリッツ線に由来するもの)のさらに別の一例を示す概略断面図である。 図39は、本発明のトランス(分割巻きトランス)の一例を示す概略断面図である。 図40は、本発明のトランス(サンドイッチ巻きトランス)の一例を示す概略断面図である。 図41は、本発明における導体部が複数の素線を撚り合せてなるリッツ線に由来する場合の、導体部の外径を説明するためのリッツ線の概略端面図である。 図42は、本発明における導体部が複数の素線を撚り合せてなるリッツ線に由来する場合の、導体部間の距離を説明するための本発明の複合材の概略端面図(図11の部分拡大図)である。 図43は、本発明のスペーサーを有しない従来の電線(1つの導体部が複数の素線を撚り合せてなるリッツ線に由来する)の一例を示す概略断面図である。 図44は、本発明のスペーサーを有しない従来の電線(1つの導体部が複数の素線を撚り合せてなるリッツ線に由来する)の別の一例を示す概略断面図である。
<<電線用スペーサー>>
本発明の電線用スペーサー(以下、単に「本発明のスペーサー」とも称す。)は、電線を構成する導体部間の距離を一定の範囲に保つための凹部を表面に複数有するスペーサーであって、このスペーサーが絶縁材料で構成され、スペーサー表面の凹部が下記(条件1)を満たす。
(条件1)互いに隣接する凹部に導体部を保持させた状態において、互いに隣接する導体部間の距離h(各図面中におけるD、Dに相当)を170μm≦h≦540μmとする。
なお、上記(条件1)における「互いに隣接する凹部に導体部を保持させた状態」において、凹部に保持させる導体部は、互いに隣接する凹部間の最短距離が、互いに隣接する導体部間の最短距離と同じであるか又は互いに隣接する導体部間の最短距離よりも長くなる導体部である。
本発明のスペーサーは、スペーサー表面の全ての凹部が上記(条件1)を満たすことが好ましい。
本発明の電線用スペーサーを用いることにより、スペーサー表面の凹部に導体部を配し、当該導体部間の距離を一定の範囲に(上記(条件1)を満たすように)簡単かつ確実に維持することができる。このため、導体部が上記(条件1)を満たす本発明の電線、すなわち、高周波数における損失を低減可能な電線を、簡便に、確実に、かつ低コストで得ることができる。
(構成材料)
本発明のスペーサーは絶縁材料で構成される。
上記絶縁材料としては、スペーサーとして導体部間の距離を一定に保つことが可能な形状保持性を有する絶縁性材料であれば特に制限されず、樹脂、ゴム等を挙げることができる。これらのなかでも樹脂が好ましく、電線又は巻線の絶縁材料として常用されている熱可塑性樹脂がより好ましい。上記「形状保持性を有する」は、融着しない性質を含む意味で使用する。
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド(ナイロン)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(PPE、変性ポリフェニレンエーテルを含む)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、超高分子量ポリエチレン等の汎用エンジニアリングプラスチックの他、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK、変性PEEKを含む)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、熱可塑性ポリイミド樹脂(TPI)、熱可塑性ポリアミドイミド(TPAI)、液晶ポリエステル等のスーパーエンジニアリングプラスチック、更に、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンナフタレートをベース樹脂とするポリマーアロイ、ABS/ポリカーボネート、ナイロン6,6、芳香族ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル/ナイロン6,6、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン、ポリブチレンテレフタレート/ポリカーボネート等の上記エンジニアリングプラスチックを含むポリマーアロイが挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、1種を用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の電線が複数のスペーサーにより構成されている場合、この複数のスペーサーの絶縁材料は、互いに、同じでも異なるものでもよいが、互いに同じであることが好ましい。
上記絶縁材料は、電線で通常用いられる各種の添加剤を含有していてもよい。この場合、添加剤の含有量としては、特に限定されないが、絶縁材料100質量部に対して、5質量以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。
(形状)
本発明のスペーサーは、導体部間の距離を一定に保持するための凹部をスペーサー表面に複数有し、このスペーサー表面の凹部が上記(条件1)を満たすスペーサーであり、スペーサー表面の全ての凹部が上記(条件1)を満たすことが好ましい。
本発明のスペーサーの形状は、電線を構成する導体部を保持するため、長手方向に連続した凹部(一の導体部を保持する凹部)を複数有していることが好ましい。
本発明のスペーサーは、図19(a)に示すように捩れ構造を有していてもよく、図19(b)に示すように捩れ構造を有していなくてもよい。
上記捩れ構造は、スペーサーの軸線を中心とした捩れ構造であることが好ましい。また、上記捩れ構造における捩り方向、捩りピッチ等の捩れ構造の形態は、本発明の効果を損なわない範囲で、特に制限されることなく、電線として通常用いられる際の捩れ構造(撚り構造)の形態を採用することができる。
(断面形状)
本発明のスペーサーは、スペーサーの長手方向(中心軸方向、軸線方向)に対する垂直な断面(以下、単に「スペーサーの断面」とも称す。)がいずれも、上記複数の凹部を有することが好ましい。すなわち、この複数の凹部の1つずつに導体部が保持されることで、導体部間の距離を一定に保持する機能を果たす。
以下に、スペーサーの断面形状を具体的に説明する。ただし、下記説明における「同一」、「一致」及び「正n角形」等の用語は、それぞれ「略同一」、「略一致」、「略正n角形」を含む意味で使用する。
上記スペーサーの断面は、回転対称な形状であることが好ましい。
回転対称とは、図形を1つの軸まわりに回転させると、360°/nの回転毎に、回転する前の初めの図形と一致する図形をいう。nは2以上の整数であり、3〜12の整数が好ましく、3〜6の整数がより好ましく、3、5又は6がさらに好ましい。
なかでも、正n角形において、n個の各頂点に1つの導体部を保持できるような凹部を有する形状、すなわち、正n角形のn個の角(かど)を切り取り、n個の凹部を形成した形状がより好ましい。当該nは、上記回転対称におけるnと同義である。
上記正n角形の角からn個の凹部を形成するために切り取る形状は、上記(条件1)を満たし、導体部間の距離を一定に保つことが可能である限り特に制限されない。例えば、図18及び図21に示すような四角形の形状、並びに、図22に示すような扇形の形状が挙げられる。また、これらの図18及び図21〜図23に示すようなスペーサーの断面形状における角(かど)は、図20に示すように、一部又は全部が丸みを帯びていてもよい。このようなスペーサーの断面形状における角が丸みを帯びたスペーサーは、押出によりスペーサーを作製する場合を含め、角があると作製しにくい場合に好ましく、上記(条件1)を満たし、導体部間の距離を一定に保つことが可能である限り、問題なく使用することができる。
本発明のスペーサーは、図23に示すように、当該スペーサーの中心軸に沿って導体部を有すること、すなわち、スペーサーの長手方向の中心軸に沿って導体部を有することも、好ましい形態の1つである。上記スペーサーの中心軸に沿って有する導体部は、導体部の中心軸がスペーサーの中心軸と同じであることが好ましい。
上記中心軸に沿って導体部を有するスペーサーは、本発明のスペーサーを準備する工程を省くことができる。
この場合、上記中心軸に沿って配された導体部とスペーサー表面の凹部とが下記(条件1A)を満たすことが好ましく、上記中心軸に沿って配された導体部とスペーサー表面の全ての凹部とが下記(条件1A)を満たすことがより好ましい。
(条件1A)凹部に導体部を保持させた状態において、中心軸に沿って配された導体部と凹部に保持させた導体部との距離h(各図面中のDに相当)が170μm≦h≦540μmを満たす。
なかでも、高周波での損失を効率よく低減できる点から、上記導体部間距離h及びhが同じ距離であることが好ましい。
スペーサーの中心軸に沿って導体部を有するスペーサーとしては、スペーサー表面の凹部の数は特に制限はないが、5又は6個であることが好ましく、6個であることがより好ましく、n=6の回転対称な断面形状であることがさらに好ましく、正6角形における各頂点に凹部を有する断面形状であることが特に好ましく、正6角形における各頂点から扇形の形状を切り取った形状であることが最も好ましい。
(作製方法)
本発明のスペーサーは、特に制限することなく、絶縁材料(好ましくは、ゴム、樹脂)の成形方法及びスペーサーの作製方法等、広く常用されている方法に基づき、又は、参考にして、作製することができる。図18、図20〜図22に示すようなスペーサーは、例えば、所望の形状が得られる型(型を構成する材料は特に制限されないが、例えば、プラスチックの型が挙げられる。)に溶融した絶縁材料を流し込む方法、所望の形状より大きな形状の絶縁材料を用意し、そこから切り出す方法、及び、所望の断面形状と相似又は略相似型の開口を有する押出ダイスを用いて溶融した絶縁材料を押出す方法が挙げられる。これらの中でも、連続的に成型できる高生産性の点から、溶融押出する方法が好ましい。
また、図23に示すような中心軸に沿って導体部を有するスペーサーは、例えば、中心軸に沿って有する導体部の断面形状と相似形又は略相似形の開口を有する押出ダイスを用いて、溶融した絶縁材料を押出す方法が挙げられる。
上記の各作製方法において、絶縁材料に代えて絶縁材料組成物を用いることもできる。絶縁材料組成物とは、上述の絶縁材料と、必要により各種の添加剤とを含有する。
本発明のスペーサーが上記捩れ構造を有する場合には、上記の作製方法によって作製したスペーサーを捩ることにより作製してもよいし、上記の作製方法において直接(一度の工程により)、捩れ構造を有するスペーサーを作製してもよい。
<導体部>
本発明における「導体部」とは、上記スペーサーと共に本発明の電線を構成する。
「導体部」とは、具体的には線心における全ての導体部分を含む部分を意味し、例えば、(i)線心が単線である場合は導線そのものが、(ii)線心がリッツ線である場合は、リッツ線から最外部に位置する素線絶縁層を除いたものが挙げられる。なお、(ii)については、「導体部が複数の素線を撚り合せてなるリッツ線に由来する」又は「導体部がリッツ線に由来する」とも称す。
「単線」とは、導体部が1本の導線で構成されてなる線であり、「リッツ線」とは、複数の素線を撚り合せてなる線(より線)を意味する。「素線」とは、導線の外周に素線絶縁層を有する線を意味する。
高周波数における損失をより低減可能な電線が得られる点からは、上記導体部はリッツ線に由来することが好ましい。
(i)単線における導体部径及び導体部間距離
導体部が単線である場合、「導体部径」とは、導線の外径である。またこの場合、「導体部間距離」は、互いに隣接する導体部において、導線と導線との最短距離である。
すなわち、後述するように、単線が導線の外周に絶縁層を有する場合でも、「導体部」とは、絶縁層を除く導線そのもの(断面が真円でない場合は、下記のように導線そのものから導きだされるもの)を意味する。
なお、導線の軸線に垂直な断面が真円でない場合、導体部径は、この断面と等面積の真円における直径とする。
(ii)リッツ線における導体部径及び導体部間距離
導体部がリッツ線に由来する場合、本発明では、断面として以下の方法により規定される仮想外接円を有する部分が「導体部」となる。したがって、この仮想外接円に基づく導体部に基づき「導体部径」及び「導体部間距離」を算出する。
導体部がリッツ線に由来する場合の「導体部」とは、リッツ線の軸線に垂直な断面において、リッツ線の半径方向に対して最外列に配置された複数の素線(図41においては中央に配列された素線以外の6本の素線13)中の各導線に外接する仮想外接円(図41において破線で示す円)で規定される断面を有する部分をいう。換言すると、リッツ線の半径方向に対して最外列に配置された素線の、半径方向外側に存在する素線絶縁層を除外した部分それぞれに外接する仮想外接円で規定される断面を有する部分をいう。
「導体部径」とは導体部の外径であり、リッツ線の軸線に垂直な断面において、導体部を規定する上記仮想外接円の直径C(導体部径C)とする(図41参照)。また、「導体部間距離」は、互いに隣接する導体部において、導体部を規定する上記仮想外接円とこれに隣接する導体部を規定する上記仮想外接円との最短距離Dである(図42参照)。ここで、上述の、リッツ線の半径方向に対して最外列に配置された素線とは、リッツ線の半径方向に互いに隣接して配置された素線のうち最外列に位置する素線をいう。
すなわち、後述するように、リッツ線が複数の素線を撚り合わせてなる線の外周にさらに絶縁皮膜を有する場合でも、「導体部」とは、上記仮想外接円で規定される断面を有する部分(仮想外接円が真円でない場合は、下記のように導きだされるもの)を意味する。
導体部径Cは、導線の外径や素線絶縁層の厚さ等により調整でき、定法により測定又は算出することができる。上記断面における仮想外接円が真円でない場合、導体部径は、仮想外接円と等面積の真円における直径とする。
上記(i)及び(ii)における「導体部間距離」は、本発明の電線用スペーサーが有する互いに隣接する凹部間の距離によりコントロールすることができる。本発明のスペーサーを用いて電線を製造することにより、導体部間距離が一定範囲内に保たれた電線を、簡便且つ低コストで作製することができる。
以下、本発明のスペーサーの好ましい形態について説明するが、本発明のスペーサーはこれらの好ましい形態に限定されない。
図18に示されるスペーサー20Aは、スペーサー表面に凹部を3つ有する。スペーサー20Aにおいて、3つの凹部は、正3角形の各頂点から四角形を切り取ることにより形成される形状を有する。また、導体部間距離Dは、スペーサー20Aにおける互いに隣接する凹部間の最短距離である。
図19は、図18に示される断面形状を有するスペーサー20Aの概略斜視投影図を示す。図19(a)に示されるスペーサー20Aaは、スペーサー20Aの軸線を中心線とした捩れ構造を有するスペーサーであり、図19(b)に示されるスペーサー20Abは、スペーサー20Aの軸線を中心線とした捩れ構造を有しないスペーサーである。
図20に示されるスペーサー20Bは、スペーサー表面に凹部を3つ有する。スペーサー20Bにおいて、3つの凹部は、正3角形の各頂点から四角形を切り取ることにより形成される形状において、さらに、各凹部を構成する3つの角(かど)を丸くした形状を有する。各凹部を構成する3つの角とは、凹部における両端部の角(スペーサーにおける凸角)と、凹部における両端部の角を通る線分の交点の角(スペーサーにおける凹角)とを意味し、スペーサー20B全体では、9つの角が丸い形状を有する。また、導体部間距離Dは、スペーサー20Bにおける互いに隣接する凹部間の最短距離である。
図21に示されるスペーサー20Cは、スペーサー表面に凹部を5つ有する。スペーサー20Cにおいて、5つの凹部は、正5角形の各頂点から四角形を切り取ることにより形成される形状を有する。また、導体部間距離Dは、スペーサー20Cにおける互いに隣接する凹部間の最短距離である。
図22に示されるスペーサー20Dは、スペーサー表面に凹部を3つ有する。スペーサー20Dにおいて、3つの凹部は、正3角形の各頂点から扇形を切り取ることにより形成される形状を有する。また、導体部間距離Dは、スペーサー20Dにおける互いに隣接する凹部間の最短距離である。
図22に示されるスペーサー20Dは、図31に示される複合材30D2のようなパターンによって、任意の数の導体部を導体間距離が一定になるように配置できるため、大電流に対応した電線構造を簡便に、確実かつ、低コストで製造することができる。
図23に示されるスペーサー20Eは、中心軸に沿って導線11を有し、スペーサー表面に凹部を6つ有する。スペーサー20Eにおいて、6つの凹部は、正6角形の各頂点から扇形を切り取ることにより形成される形状を有する。スペーサー20Eにおいて、中心軸に沿った導線11は導体部であり、この導線11の中心は、上記正6角形の中心と同じである。また、導体部間距離Dは、スペーサー20Eにおける互いに隣接する凹部間の最短距離であり、導体部間距離Dは、スペーサー20Eにおける中心軸に沿った導線11の外周部とスペーサー表面の凹部との最短距離である。
<<電線用複合材>>
本発明の電線用複合材(本明細書中において、単に「本発明の複合材」とも称す。)は、本発明のスペーサーと、このスペーサー表面の凹部の少なくとも一部に保持された導体部とを有する複合材である。本発明の複合材は、スペーサー表面の凹部の全てに導体部が保持されていることが好ましい。
本発明の複合材は、本発明のスペーサーと導体部とが、ばらけないように一体化されている。一体化された形態として、例えば、以下の形態が挙げられる。
・電線用スペーサーと導体部とを一体にして撚り合わせた形態
・複合材の長手方向の両端部で張力等によって保持する形態
・最外周に自己融着層を有する単線又はリッツ線を使用し、この自己融着層が融着可能な温度条件で加熱することにより、電線用スペーサーと導体部とを融着した形態
なお、上記自己融着層については、後述する。
本発明の複合材は、スペーサー表面の互いに隣接する少なくとも2つの凹部に導体部が保持され、下記(条件2)を満たすことが好ましく、スペーサー表面の全ての凹部に導体部が保持され、下記(条件2)を満たすことがより好ましい。これらの複合材のなかでも、導体部を保持する全ての凹部において下記(条件2)を満たすことがさらに好ましい。
(条件2)互いに隣接する導体部間の距離h(各図面中のD、Dに相当)と、当該互いに隣接する導体部の各々の外径d(各図面中のCに相当)との関係が、0.21≦h/d≦1.08を満たすこと。
なお、上記(条件2)における「互いに隣接する少なくとも2つの凹部に導体部が保持された状態」において、凹部に保持される導体部は、互いに隣接する凹部間の最短距離が、互いに隣接する導体部間の最短距離と同じであるか又は互いに隣接する導体部間の最短距離よりも長くなる導体部である。
また、本発明の複合材は、複合材を構成するスペーサーがスペーサーの中心軸に沿って導体部を有するスペーサーであって、下記(条件2A)を満たすことも、好ましい形態の1つである。この形態のうち、スペーサー表面の全ての凹部に導体部が保持され、下記(条件2A)を満たすことが好ましい。これらの複合材のなかでも、導体部を保持するスペーサー表面の全ての凹部が、下記(条件2A)を満たすことがより好ましい。
(条件2A)電線用スペーサーの中心軸に沿って配された導体部と凹部に保持された導体部との間の距離h(各図面中のDに相当)と、当該凹部に保持された導体部の外径dとの関係が0.21≦h/d≦1.08を満たし、かつ、前記距離hと、電線用スペーサーの中心軸に沿って配された導体部の外径dとの関係が0.21≦h/d≦1.08を満たす。
また、本発明の複合材は、複数の本発明のスペーサーと、複数の導体部とを有する電線用複合材であって、複数のスペーサーのうち隣接するスペーサー同士が、スペーサー表面の凹部で同一の導体部を保持することにより組み合わされてなる複合材(以下、「スペーサーを複数組み合わせてなる複合材」とも称す。)も、好ましい形態の1つである。言い換えると、上記の本発明のスペーサーを複数組み合わせてなる複合材は、1つの導体部が、2以上の異なるスペーサーが有する凹部によって保持されている構成を少なくとも2つ有する。すなわち、上記の本発明のスペーサーを複数組み合わせてなる複合材は、本発明のスペーサーを複数組み合わせて、全体として、電線を構成する導体部間の距離を一定の範囲に保つための凹部を表面に複数有する複合スペーサーとし、該複合スペーサーの表面凹部の少なくとも一部に導体部を保持してなる電線用複合材である。
上記のスペーサーを複数組み合わせてなる複合材における複数のスペーサーの組合わせは、本発明の効果を損なわない限り特に制限されない。複数のスペーサーは互いに同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。また、上記のスペーサーを複数組み合わせてなる複合材の断面形状は、略円形となることが好ましい。
上記のスペーサーを複数組み合わせてなる複合材を構成するスペーサーは、スペーサー表面に3つの凹部を有するスペーサーであることが好ましい。なかでも、スペーサー表面に凹部を3つ有するスペーサーを図31のように6つ組み合わせることが可能な形態が好ましい。これにより、図33に示す複合材30Eと等価な形態を形成することができる。
この形態において、スペーサー表面の互いに隣接する少なくとも2つの凹部に導体部が保持され、上記(条件2)を満たすことが好ましい。
本発明のスペーサーのサイズないし形状を調整したり、凹部に保持する導体部の外径を調整したりすることにより、上記(条件2)の充足を制御することができる。また、(条件2A)の充足についても同様に制御することができる。
なお、上記(条件2)及び(条件2A)における、導体部の外径に対する導体部間の距離の比は、同じ単位(例えば、いずれもmm)を用いて計算される値である。
本発明の複合材は、複合材を構成するスペーサーの表面の全ての凹部に導体部を保持した形態(形態I)において、この複合材の更に外周に、スペーサーとして機能する絶縁層を有していてもよい。
「スペーサーとして機能する絶縁層」とは、複合材の外周に配した形態において、導体部間の距離を一定の範囲に保つための凹部を表面に複数有し、これらの凹部全てが、本発明のスペーサーで規定する凹部の(条件1)を満たす絶縁層を意味する。
このスペーサーとして機能する絶縁層を構成する絶縁材料としては、前述のスペーサーにおける絶縁材料の記載を好ましく適用することができる。このスペーサーとして機能する絶縁層の凹部には、導体部が保持されていることが好ましく、全ての凹部に導体部が保持されていることがより好ましい。
上記形態Iを有する複合材の外周に、スペーサーとして機能する絶縁層を有し、この絶縁層の表面凹部に導体部が保持されている形態において、複合材及び絶縁層の表面凹部に配されたすべての導体部間の距離が、同一であることが好ましい。
絶縁層表面の全ての凹部に導体部が保持されて形態において、スペーサーとして機能する絶縁層をさらに外周に有する形態も本発明の複合材の一実施形態として好ましい。すなわち本発明の複合材は、このようなスペーサーとして機能する絶縁層を上記形態Iの外周に複数層繰り返して有する形態とすることができる。
(形状)
本発明の複合材は、図25(a)、図28(a)及び図34(a)に示すように捩れ構造を有していてもよく、図25(b)、図28(b)及び図34(b)に示すように捩れ構造を有していなくてもよい。本発明の複合材が捩れ構造を有することにより、コイルに用いる場合等、磁場が発生するときには電流密度が均一となり、損失をさらに低減することができる。
上記捩れ構造は、複合材の軸線(好ましくは複合材の軸線とスペーサーの軸線とが同じである場合の複合材の軸線)を中心とした捩れ構造であることが好ましい。また、上記捩れ構造における捩り方向、捩りピッチ等の捩れ構造の形態は、本発明の効果を損なわない範囲で、特に制限されることなく、電線として通常用いられる際の捩れ構造(撚り構造)の形態を採用することができる。
(作製方法)
本発明の複合材は、本発明のスペーサーと導体部とを、上述のように一体化することにより作製することができる。
なお、複合材が捩れ構造を有する場合、捩れ構造を有する本発明のスペーサーに導体部を保持させることにより作製することができる。また、捩れ構造を有しない本発明のスペーサーに導体部を保持させる工程と同時に又は保持させる工程の後に、これを捩って、捩れ構造を有する複合材を作製することもできる。
本発明の複合材の一つの形態として、図35に示すような、上記形態Iを有する複合材の外周に、スペーサーとして機能する絶縁層を有する複合材は、例えば、上記形態Iを有する複合材の断面形状と相似形又は略相似形の開口を有する押出ダイスを用いて、スペーサーとして機能する絶縁層を形成するための熱可塑性樹脂を押出す方法が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂は、上述の絶縁材料として挙げた熱可塑性樹脂を好ましく適用することができる。また、上記熱可塑性樹脂に代えて、熱可塑性樹脂と必要により各種の添加剤とを含有する樹脂組成物を用いてもよい。
以下、本発明の複合材の好ましい形態について説明するが、本発明の複合材はこれらの好ましい形態に限定されない。捩れ構造を有しない複合材は、図中に示していないが、上述の少なくともいずれかの一体化形態を採ることにより、複合材がスペーサー表面の凹部に導体部が保持されている。また、捩れ構造を有する複合材が、さらに上述の一体化形態を採っていてもよい。また、図24、図25、図27、図28、図30、図31、図33、図34及び図35に示す複合材では、導体部が導線そのものである形態を記載しているが、導体部がリッツ線に由来する形態であってもよい。
図24に示される複合材30Aは、図18に示されるスペーサー20A表面の3つの凹部に、それぞれ導線11を有する複合材である。複合材30Aにおいて、3本の導線11が導体部であり、導体部径Cは、導線11の直径である。また、導体部間距離Dは、互いに隣接する導体部間の最短距離であり、スペーサー20Aにおける互いに隣接する凹部間の最短距離と同じである。
図25は、図24に示される断面形状を有する複合材30Aの概略斜視投影図を示す。図25(a)に示される複合材30Aaは、複合材30Aの軸線(及びスペーサー20Aの軸線)を中心線とした捩れ構造を有する複合材であり、図25(b)に示される複合材30Abは、複合材30Aの軸線(及びスペーサー20Aの軸線)を中心線とした捩れ構造を有しない複合材である。
図27に示される複合材30Cは、図21に示されるスペーサー20C表面の5つの凹部に、それぞれ導線11を有する複合材である。複合材30Cにおいて、5本の導線11(11a〜11e)が導体部であり、導体部径Cは、導線11の直径である。また、導体部間距離Dは、互いに隣接する導体部間の最短距離であり、スペーサー20Cにおける互いに隣接する凹部間の最短距離と同じである。
図28は、図27に示される断面形状を有する複合材30Cの概略斜視投影図を示す。図28(a)に示される複合材30Caは、複合材30Cの軸線(及びスペーサー20Cの軸線)を中心線とした捩れ構造を有する複合材であり、図28(b)に示される複合材30Cbは、複合材30Cの軸線(及びスペーサー20Cの軸線)を中心線とした捩れ構造を有しない複合材である。
図30に示される複合材30D1は、図22に示されるスペーサー20D表面の3つの凹部に、それぞれ導線11を有する複合材である。複合材30D1において、3本の導線11が導体部であり、導体部径Cは、導線11の直径である。また、導体部間距離Dは、互いに隣接する導体部間の最短距離であり、スペーサー20Dにおける互いに隣接する凹部間の最短距離と同じである。
図31に示される複合材30D2は、図22に示されるスペーサー20Dを6つ組み合わせてなる形態の複合材である。
図31(a)は、複合材30D2の概略断面図である。複合材30D2において、6つのスペーサー20Dは、1本の導線11を中心とし、この導線11を1つの凹部で保持するように配置される。また、複合材30D2のスペーサー20Dにおいて、中心となる導線11を保持する凹部以外の2つの凹部は、隣接するスペーサー20とともに1本の導線11を共有する。すなわち、複合材30D2は、6つのスペーサー20Dを組み合わせて、全体として、電線を構成する導体部間の距離を一定の範囲に保つための凹部を表面に6つ有する複合スペーサーとし、該複合スペーサーの中心に1本の導線を、さらに該複合スペーサー表面の6つの凹部にそれぞれ導線11を保持し、合計で7本の導線11が配置される。
隣接するスペーサー20D間には、空隙があってもなくてもよい。複合材30D2において、中心の1本と外周に位置する6本の導線11がそれぞれ導体部であり、導体部径Cは、導線11の直径である。また、導体部間距離Dは、外周に位置する互いに隣接する導体部間の最短距離であり、導体部間距離Dは、中心に位置する導体部と外周に位置する導体部との最短距離である。導体部間距離D及びDは、いずれも、スペーサー20Dにおける互いに隣接する凹部間の最短距離(図22に示す導体部間距離D)と同じである。
図31(b)は、図31(a)に示される断面形状を有する複合材30D2の概略斜視投影図を示す。図31(b)に示される複合材30D2は、複合材30D2の軸線を中心線とした捩れ構造を有しない複合材である。
図33に示される複合材30Eは、図23に示されるスペーサー20E表面の6つの凹部に、それぞれ導線11を有する複合材である。複合材30Eにおいて、スペーサー20E表面の6本の導線11及びスペーサー20Eにおける中心軸に沿った1本の導線11が導体部であり、導体部径Cは、導線11の直径である。また、導体部間距離Dは、外周に位置する互いに隣接する導体部間の最短距離であり、導体部間距離Dは、スペーサー20Eにおける中心軸に沿った導体部と外周に位置する導体部との最短距離であり、スペーサー20Eにおける導体部間距離D及びDとそれぞれ同じである。
図34は、図33に示される断面形状を有する複合材30Eの概略斜視投影図を示す。図34(a)に示される複合材30Eaは、複合材30Eの軸線(及びスペーサー20Eの軸線)を中心線とした捩れ構造を有する複合材であり、図34(b)に示される複合材30Ebは、複合材30Eの軸線(及びスペーサー20Eの軸線)を中心線とした捩れ構造を有しない複合材である。
図35に示される複合材30E2は、図33に示される複合材30Eの表面に、スペーサーとして機能する絶縁層40を有し、このスペーサーとして機能する絶縁層40が表面に有する12個の凹部に、それぞれ導線11を有する複合材である。複合材30E2において、複合材30Eにおける7本の導線11に加え、スペーサーとして機能する絶縁層40表面の12本の導線11が導体部であり、導体部径Cは、導線11の直径である。また、複合材30Eにおける導体部間距離D及びDに加え、導体部間距離Dは、複合材30E2の外周(表面)に位置する互いに隣接する導体部間の最短距離であり、導体部間距離Dは、複合材30Eの外周(表面)に位置する導体部と複合材30E2の外周(表面)に位置する導体部との間で、互いに隣接する導体部間の最短距離である。
<<電線>>
本発明の電線は、本発明の複合材を有し、この複合材の外周が絶縁被覆されてなる。なお、この電線中における本発明の複合材は、通常、スペーサー表面及びスペーサーとして機能する絶縁層における全ての凹部に導体部を有する。すなわち、スペーサーないし絶縁層表面における全ての凹部に導体部を保持した状態でその表面を絶縁被覆して電線を構成することが好ましい。
上記電線の形態に適用される複合材は、本発明の複合材であれば特に制限されず、用いることができる。
例えば、本発明の電線の形態としては、図26及び図29に示すような、絶縁材料で構成された本発明のスペーサーを1つ有する複合材の外周を絶縁被覆してなる電線、図2、図36及び図37に示すような、スペーサーの中心軸に沿って配された導体部を有するスペーサーを有する複合材の外周を絶縁被覆してなる電線、並びに、図32に示すような、スペーサーを複数組み合わせてなる複合材の外周を絶縁被覆してなる電線が挙げられる。
本発明の電線の外径(仕上がり径、例えば、図2、図3、図26、図29、図32、図36及び図37のF)は、導体部が上記(条件1)(好ましくは上記(条件1)及び(条件2))を満たす限り特に限定されない。本発明の電線の断面形状は、特に限定されず、電線の外周や外接周が円形でも矩形(平角形状)でもよいが、円形(丸線)が好ましい。
本発明の電線は、本発明のスペーサーを用いることにより、個々の導体部の外周に絶縁皮膜(導体部を被覆する絶縁体のうち、導体部の外周に存在し、各導体部を個別に被覆する膜)を有していなくても導体部間距離を一定の範囲に保つことができる。本発明の電線は、個々の導体部の外周に絶縁皮膜を有し、この絶縁皮膜がスペーサー凹部等と接する形態とすることもできる。
本発明において、電線の外周部分を構成する絶縁皮膜(複合材を被覆する絶縁皮膜。本発明では絶縁体とも称す。)は、いずれも、単層であっても2層以上の複数層であってもよい。本発明において、層の数は、層を形成する樹脂及び添加剤の種類及び含有量の異同にかかわらず、層を断面観察することによって、決定される。具体的には、ある層の断面を倍率200倍で観察したときに、年輪状の境界を確認できない場合、ある層の総数は1とし、年輪状の境界を確認できる場合、ある層の層数は(境界数+1)とする。
以下、本発明の電線の好ましい形態について説明するが、本発明の電線はこれらの形態に限定されない。複合材の外周を覆う絶縁体14aは、導体部とスペーサーとの間隙の一部又は全部に存在していてもよい。
図2に示される電線100Bは、図33に示される、中心軸に沿って配された導体部を有し、表面の凹部が6つであるスペーサーを有する複合材30Eの外周を、絶縁体14aが覆う電線である。電線100Bにおいて、Fは電線100Bの外径(仕上がり径)を示す。
図3に示される電線100Cは、図33に示される複合材30Eにおいて、導体部間の距離が短く、導体部径に対する導体部間距離の比が小さくなるように調整した複合材の外周を、絶縁体14aが覆う電線である。電線100Cにおいて、Fは電線100Cの外径(仕上がり径)を示す。
図26に示される電線100Fは、図24に示される、スペーサー表面の凹部が3つであるスペーサーを有する複合材30Aの外周を、絶縁体14aが覆う電線である。電線100Fにおいて、Fは電線100Fの外径(仕上がり径)を示す。
図29に示される電線100Gは、図27に示される、スペーサー表面の凹部が5つであるスペーサーを有する複合材30Cの外周を、絶縁体14aが覆う電線である。電線100Gにおいて、Fは電線100Gの外径(仕上がり径)を示す。
図32に示される電線100Hは、図31に示される、表面に凹部を3つ有するスペーサーを6つ組み合わせてなる形態の複合材30D2の外周を、絶縁体14aが覆う電線である。電線100Hにおいて、Fは電線100Hの外径(仕上がり径)を示す。
図36に示される電線100Iは、図35に示される複合材30E2の外周を絶縁体14aが覆う電線である。電線100Iにおいて、Fは電線100Iの外径(仕上がり径)を示す。
本発明において、1つの導体部が1本の導線である電線は図面に示された電線に限られるものではない。例えば、導線の本数を適宜変えることができる。
導体部が、リッツ線から最外部の素線絶縁層を除いたものである電線について、図11、図37及び図38の絶縁電線を例に挙げて説明するが、リッツ線を用いた形態がこれらに限定されるものではない。例えば、上述してきた各実施形態において、導体部を、リッツ線から最外部の素線絶縁層を除いた形態とすることができ、このような形態も本発明の実施の形態として好ましい。
図11に示される電線10Bは、図2に示される電線100Bにおいて、7つの導体部がリッツ線16aに由来するものであること以外は、図2に示される電線100Bと同様の構成である。リッツ線16aは、導体11及び素線絶縁層12からなる素線13を撚り合せて導体部を形成している(図41及び上記(ii)を参照)。
図37に示される電線100Jは、図2に示される電線100Bにおいて、7つの導体部がリッツ線16aに由来するものであること以外は、図2に示される電線100Bと同様の構成である。電線100Jにおいて、Fは電線100Jの外径(仕上がり径)を示す。
図38に示される電線100Kは、図37に示される電線100Jにおいて、リッツ線16aに代えてリッツ線16bを用いたこと以外は、図37に示される電線100Jと同様の構成である。リッツ線16bは、リッツ線16aを円形ダイスに通して素線間の空間が無くなるように円形に圧縮したものである。電線100Kは、電線100Jよりも大きな外径の導線を使用して、電線100Jと同じ仕上がり径とすることがでる。そのため、電線100Kは、電線100Jよりも導体断面積が大きいことにより直流抵抗を低減しつつ、導体間距離がより大きくなるため、近接効果もより低減し、交流抵抗もより低減できる。
本発明において、導体部が、リッツ線から最外部の素線絶縁層を除いたものである電線は図面に示す電線に限られるものではない。例えば、単位電線の数を適宜変えることができる。
本発明の電線において、本発明のスペーサーと導体部との間には空隙が生じていてもよい。また、複合材の状態において生じたスペーサーと導体部間の空隙が、複合材の外周への絶縁被覆により一部又は全部が絶縁材料によって埋められた形態であってもよい。
本発明のスペーサーを有する電線に該当するか否かは、電線を軸線に沿って切断した断面を観察することにより、判別することが可能である。切断に用いる装置としては、ニッパーなどの一般的な工具が挙げられ、肉眼で観察することが可能である。切り口がつぶれてしまっていたり小さすぎて判別できない場合には、電線の切断片を透明な樹脂に埋めたうえで、旋盤などで切り口を研磨することにより、つぶれていない断面が得られる。この断面を光学顕微鏡で観察することにより、判別することができる。ただし、判別方法はこれらに限定されない。
以下、本発明において用いられる線心について、具体的に説明する。
− 線心 −
本発明に用いられる線心の形態としては、上述したように、線心が単線で構成される形態と、線心がリッツ線(複数の素線をより合わせてなる線)で構成される形態とがある。
(導線)
線心を構成する導線としては、従来、コイル用等の巻線で用いられているものを使用することができる。好ましくは、酸素含有量が30ppm以下(より好ましくは20ppm以下)の低酸素銅若しくは素銅からなる銅線が挙げられる。
導線の断面形状は、円形でも矩形(平角形状)でもよいが、円形が好ましい。
導線の外径φ(線径)は、本発明の電線において上記(条件1)及び(条件2)を満足するものであれば特に限定されない。
本発明の電線において、互いに隣接する導体部を構成する導線の外径は同じであることが好ましく、全ての導体部を構成する導線の外径が同じであることがより好ましい。導線の外径が同じであるとは、導体部を構成する導線の外径の平均に対して、±5%の範囲内であることを意味する。
(素線絶縁層)
線心がリッツ線の場合、リッツ線を構成する各素線は、導線の外周に絶縁層(素線絶縁層)が形成されてなる。この素線絶縁層は、樹脂成分として熱硬化性樹脂を含む素線絶縁層(エナメル層ともいう。)であることが好ましい。
素線絶縁層を形成する熱硬化性樹脂としては、電線で通常用いられる熱硬化性樹脂であれば、特に制限されることなく、用いることができる。例えば、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエステルイミド(PEsI)、ポリウレタン(PU)、ポリエステル(PEst)、ポリベンゾイミダゾール、メラミン樹脂及びエポキシ樹脂等が挙げられる。なかでも、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリウレタン又はポリエステルが好ましい。素線絶縁層中に含有される熱硬化性樹脂は、1種であっても2種以上であってもよい。
この素線絶縁層は、電線で通常用いられる各種の添加剤を含有していてもよい。この場合、添加剤の含有量としては、特に限定されないが、樹脂成分100質量部に対して、5質量以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。
素線絶縁層の厚さは、特に限定されないが、電線間の絶縁性を確保し、更には導線の占積率を高める点で、例えば、8〜18μmが好ましい。
素線絶縁層は、通常の方法により、形成できる。例えば、導線の外周に、熱硬化性樹脂等の樹脂成分のワニスを塗布して焼付けする方法が好ましい。このワニスは樹脂成分と、溶媒と、必要により、樹脂成分の硬化剤又は各種の添加剤とを含有する。溶媒は、有機溶媒が好ましく、樹脂成分を溶解又は分散できるものが適宜に選択される。
ワニスの塗布方法は、通常の方法を選択することができ、例えば、導線の断面形状と相似形若しくは略相似形の開口を有するワニス塗布用ダイスを用いる方法等が挙げられる。ワニスの焼付けは、通常、焼付炉で行われる。焼付炉を用いた焼付けの条件は、樹脂成分又は溶媒の種類等に応じて一義的に決定できないが、例えば、炉内温度400〜650℃にて通過時間を10〜90秒とする条件が挙げられる。
(自己融着層)
線心が単線の場合、単線を構成する導線は、導線の外周に自己融着性を有する層(「自己融着層」とも称す。)を有していてもよい。また、線心がリッツ線の場合、複数の素線が撚り合わされてなる撚り線の外周に自己融着層を有していてもよい。
上記自己融着層は、自己融着性を有する樹脂成分を含有する層であることが好ましい。自己融着性を有する樹脂成分としては、電線で通常用いられる、自己融着性を有する樹脂等を用いることができ、例えば、ポリビニルブチラール、ポリアミド、変性ポリアミド、ポリエステルが挙げられる。自己融着層中に含有される上記樹脂成分は、1種であっても2種以上であってもよい。
自己融着層の厚さは特に制限されないが、十分な融着機能を示し、導体部の位置ずれの影響を十分小さくすることを考えると、1μm〜20μmであることが好ましい。
(リッツ線)
本発明の一実施形態において、導体部を構成するリッツ線は、上述のように、複数の素線が撚り合わされてなる撚り線である。
リッツ線を形成する素線は上記のように、導線と素線絶縁層とからなる。
リッツ線を構成する素線の数としては、2本以上であれば特に限定されないが、素線の整列性を考えると1本の周囲に6本を配置した7本以上が好ましく、交流抵抗と実用的な加工性を考えると100本以下が好ましい。特に整列性を考えると、より好ましくは7〜37本である。
素線を撚り合わせる際の、素線の配置、撚り方向、撚りピッチ等は、用途等に応じて、適宜に設定できる。
本発明に用いる別の好ましいリッツ線の一例として、図38に示されるリッツ線16cが挙げられる。このリッツ線16cは、7本の素線13をリッツ線16aと同様にして撚り合せ、円形ダイスに通して素線間の空間が無くなるように円形に圧縮したものである。
<<コイル(低圧大電流側コイル)>>
本発明のコイルは、本発明の電線を用いてなり、具体的には、本発明の電線をボビンの芯の外周面に巻回したものである。よって、本発明のコイルは、上述の本発明の電線を用いていること以外は、従来のコイルと同じである。
本発明のコイルに本発明の電線を用いることにより、このコイルに生じる抵抗値を小さくすることができる。本発明のコイルは、従来のトランスと比較して高周波高出力トランスの損失を低減できる点から、トランスにおける低圧大電流側コイルとして、好適に用いることができる。
本発明のコイルについて、図5、図6及び図13を例に挙げて説明する。
図5に示されるコイル4Bは、ボビン5の芯6の外周面(ボビン5に形成されたスロット7の内周面)に本発明の電線100Bを巻回した(10ターン)ものである。
図6に示されるコイル4Cは、ボビン5の芯6の外周面に本発明の電線100Cを巻回した(10ターン)ものである。
図13に示されるコイル4Eは、ボビン5の芯6の外周面に本発明の電線10Bを巻回した(20ターン)ものである。
本発明において、各電線が巻回される芯(コアともいう。)については、材質(鉄芯、磁性体芯又は空気芯等)やサイズは、用途等に応じて、適宜に選択される。また、電線の巻き方、巻数(2巻以上)及びピッチ等についても、用途等に応じて、適宜に選択される。
<<トランス>>
本発明のトランスは、上述の本発明のコイルを用いてなること(好ましくは低圧大電流側コイルに用いてなること)以外は、従来のトランスと同じである。
トランスとは、交流電力の電圧の高さを、電磁誘導を利用して変換するための装置である。トランスは、一般に、2つのコイル、すなわち、入力側コイル(1次側コイル)及び出力側コイル(2次側コイル)を有している。トランスにおいては、1次側コイルに交流電流を流して交流磁場を発生させ、それを磁気的に結合された2次側コイルが受け取り、再び電流を発生させて、出力する。このときの1次側コイルと2次側コイルとに発生する電圧の比は、各コイルにおける電線の巻き数の比と同じになるので、目的とする電圧の比に応じて、各コイルにおける電線の巻数が決定される。
1次側コイルの電圧が2次側コイルに対して相対的に高く設定されるトランスを降圧トランスという。この降圧トランスでは、1次側コイルに高圧小電流の電流が流れ(高圧小電流側コイル)、2次側コイルに低圧大電流の電流が流れる(低圧大電流側コイル)。一方、1次側コイルの電圧が2次側コイルに対して相対的に低く設定されるトランスを昇圧トランスという。この昇圧トランスでは、1次側コイルに低圧大電流の電流が流れ(低圧大電流側コイル)、2次側コイルに高圧小電流の電流が流れる(高圧小電流側コイル)。
本発明のトランスは、降圧トランス及び昇圧トランスのいずれであっても、低圧大電流側コイルとして、本発明の電線を巻回したコイルを用いることが好ましい。
本発明のトランスの構造又はサイズ等は特に限定されない。
(高圧小電流側コイル)
本発明のトランスにおける高圧小電流側コイル及び高圧小電流側コイルに用いる電線は、特に限定されず、通常のトランスの高圧小電流側コイル及び高圧小電流側コイルに通常用いる電線を使用することができる。このような電線として、例えば、特開平5−13247号公報に記載の、2次巻線に用いるリッツ線が挙げられる。なお、トランスにおける1次側コイル及び2次側コイルは、電流の電圧及び電流値が相対的に決定されるものであるから、低圧大電流側コイルに加えて高圧小電流側コイルとしても、本発明の電線を巻回した本発明のコイルを用いることもできる。
本発明のトランスが有する高圧小電流側コイルは上述した公知の電線又は本発明の電線を、本発明の電線(例えば、図3に示す電線100C)が巻回された芯の外周面とは異なる外周面に巻回したものが挙げられる(図39参照)。また、本発明のトランスが有する高圧小電流側コイルは上述した公知の電線又は本発明の電線を、上記芯に巻回された本発明の電線(例えば、図3に示す電線100C)の外周面に巻回したものが挙げられる(図40参照)。
本発明のトランスにおいて、各コイルに流れる電流は上述のように、用途や特性に応じて、適宜に決定される。特に限定されるものではないが、その一例を挙げると、例えば、低圧大電流側コイルに流れる電流は、電圧が100V以上500V未満であり、電流値が1A以上30A以下であることが好ましく、また、高圧小電流側コイルに流れる電流は、電圧が500V以上5000V以下であり、電流値が0.3A以上1A未満であることが好ましい。
本発明のトランスにおいて、芯及びボビンは、通常のトランスに用いられる形状、寸法ないしは材料を適宜に選択できる。
本発明のトランスは、上記構成を有していればよく、例えば、図39又は図40に示されるトランスが挙げられる。
図39に示されるトランス1Aは、1次側コイル2として図6に示す低圧大電流側コイル4Bと、2次側コイル3として従来の高圧小電流側コイルとを有し、1次側コイル2と2次側コイル3とは、互いに軸を揃えて軸方向に一列に配置されている。低圧大電流側コイル4Bは、ボビン5Bの芯6Bの外周面に電線100Cが巻回されており、高圧小電流側コイル3は、ボビン5Aの芯6Aの外周面に導体11A及び絶縁層12Bからなる線が巻回されている。
図40に示されるトランス1Bは、1次側コイル2として図6に示す低圧大電流側コイル4Bと、2次側コイル3として従来の高圧小電流側コイルとを有し、1次側コイル2と2次側コイル3とは、同じ芯に3層絶縁テープを介して巻回されている。低圧大電流側コイル4Bは、ボビン5の芯6の外周面に電線100Cが巻回されている。高圧小電流側コイル3は、低圧大電流側コイル4Bの外周に巻回された3層絶縁テープの外周に導体11A及び絶縁層12Bからなる線が巻回されている。
本発明のトランスは、低圧大電流側コイルとして全ての導体部が上記(条件1)(好ましくは上記(条件1)及び(条件2))を満たす電線が巻回されたコイルを有しているから、高周波用高出力トランスであっても、上述のように、損失を効果的に抑えることができる。更には、近年の小型軽量化に資すこともできる。
<<電力変換器>>
本発明の電力変換器は、本発明のトランスを用いてなること以外は、従来の電力変換器(電力変換回路を有する装置)と同じである。
本発明のトランスは、高周波用高出力が求められる電力変換器、更には大電流値の電流が流れる電力変換器に好適に用いられる。例えば、交流の商用電源を変圧して整流し、電気・電子機器に適した電圧の直流に変換する、交流(AC)/直流(DC)コンバータとしてより好ましく用いられる。具体的には、電子レンジ用又は工業用マイクロ波電源の電源基板において、マグネトロンに供給するための高電圧を生み出すための各トランスとして本発明のトランスを有する装置が挙げられる。
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
<実施例1>
図2に示す電線100Bを用いて図5に示すコイル4Bを作製して、評価した。
上記評価にあたり、低圧大電流側コイル4Bに用いる、図2に示す電線100Bを作製した。
(1)中心に導体部を有するスペーサーの作製
外径0.5mmの導線11(断面円形の銅線)を中心として、この導線11の周りにPET樹脂を押出成形して、スペーサー表面に6つの凹部を有する、図23に示す形状のスペーサー20Eを作製した。このスペーサー20Eは、6つの凹部に外径0.5mmの導線11(断面円形の銅線)を保持させた状態において、中心の導体部を含む全ての導体部間(以下、「全ての導体部間」とも称す。)において、互いに隣接する導体部間の距離(図23中におけるD及びD)が0.536mmとなる。
(2)電線の作製
上記で作製したスペーサー20E表面の6つの凹部に、外径0.5mmの導線11(断面円形の銅線)を配置、保持した状態で、撚りピッチ64.3mmで撚り合せた後、得られる電線の外径(仕上がり径)が3.108mmになるように、PET樹脂を押出成形して、導線11とスペーサー20Eと絶縁体14aとを有する電線100Bを作製した。
作製した電線は、全ての導体部間において、互いに隣接する導体部間の距離は0.536mmであり、互いに隣接する導体部間の距離/導体部の外径=1.072であり、外周押出し被覆層の最も薄い部分の厚さは0.268mmであった。
(3)コイルの作製
図5に示すように、芯6の外周面に、上記電線100Bを、5ターンからなる1列を2列(並列数2)、合計10ターン(巻き数)巻回して、低圧大電流側コイル4Bを作製した。
用いた芯6及びボビン5は電線100Bを巻回す外周面(スロット7の内周面)の直径が30.2mm、スロットの幅(軸線長さ)が18mmであった(図5(概略断面図)に示す芯6及びボビン5の寸法は、説明の便宜上、実施例1に記載の上記寸法と正確には一致していない。)。
<比較例1>
図1に示す電線100Aを用いて図4に示すコイル4Aを作製して、評価した。
外径1.0mmの導線11(断面円形の銅線)の表面に、ポリアミドイミド樹脂ワニスを塗布して焼き付ける工程にて、厚さ18μmの素線絶縁層12(エナメル層)を有する素線13を作製した。この素線を7本束ねて撚りピッチ25.9mmで撚り合せた後、得られる電線の外径(仕上がり径)が3.108mmになるように、PET樹脂を押出成形して、導線11と絶縁体14aとを有する電線100Aを作製した。
作製した電線100Aは、導体部(導線11)径が1.0mmであり、電線100Aの外径(仕上がり径)が3.108mmであった。この電線100Aにおいて、互いに隣接する導体部11間の距離は36μm(エナメル層の厚さ×2)であり、導体部間距離/導体部径=0.036であり、外周押出し被覆層の最も薄い部分の厚さは0.204mmであった。
この電線100Aを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、図4に示すコイル4Aを作製した。
<抵抗の測定>
上記で作製したコイルを用いて、周波数を変更してコイルに生じる抵抗値を、プレジションLCRメータ(商品名:E4980A、KEY SIGHT TECHNOLOGIES社(旧Agilent社)製)を用いて、測定した。
具体的には、各低圧大電流側コイルの両端部から巻回した側とは反対側に40mmほどの範囲を直線状態にし、その端部は、絶縁体を剥がしてむき出しになった導線をハンダで覆った。そのハンダ部分をプレジションLCRメータの測定治具に挟みこんで、押さえつけることによって、接触抵抗を十分に小さくし、抵抗値を測定した。得られた抵抗値を、直線部分を除いたコイル長さ(巻線部分の長さ)で割って、1mあたりの抵抗値(Ω/m)を算出した。
実施例1及び比較例1のコイルの各周波数における抵抗値の値を表1に、周波数に対する抵抗値のグラフを図17に、それぞれ示した。
Figure 2021118338
図17及び表1から以下のことが分かる。
従来のコイル(比較例1)では、30kHz以上の高周波数では、近接効果が無視できなくなる。しかし、低圧大電流側コイルに用いる電線の全ての導体部が上記(条件1)及び(条件2)を満たす実施例1のコイルは、直流抵抗と交流抵抗のバランスがよくなり、従来のコイル(比較例1)に対して、より抵抗値を小さく抑えたコイルを実現できることがわかる(図17及び表1参照)。
周波数が高くなるほど近接効果が大きくなってコイルに生じる抵抗値も増大する。しかし、比較例1のコイルと比較して、周波数150kHzにおける実施例1の低圧大電流側コイルは、抵抗値の低減効果に優れることが分かる。
インバータ式電子レンジに使われる昇圧トランスの場合、30〜150kHzの作動周波数が一般的である。したがって、インバータ式電子レンジに実施例1の上記低圧大電流側コイルを有する昇圧トランスを用いると、低圧大電流側コイルの抵抗を効果的に低減でき、昇圧トランスの損失を低減できることが分かる。
実施例1により、本発明で規定する電線を用いたコイルは、低圧大電流側コイルとしてトランスに用いられると、小さな抵抗を示し、トランスの損失を効果的に低減できることが分かる。
すなわち、本発明の電線用スペーサーは、高周波数における損失を効果的に低減することができる電線を、簡便に、かつ、低コストで得られることがわかる。
1A、1B トランス
2 一次側コイル(低圧大電流側コイル)
3 二次側コイル(高圧小電流側コイル)
4A〜4D コイル
5、5A、5B ボビン
6、6A、6B 芯
7 スロット
11A、11、11a〜11e 線心(導線)
12 素線絶縁層(エナメル層)
12B 絶縁層
13 素線
14a、14b 絶縁体
16a、16b 線心(リッツ線)
18B 3層絶縁テープ
20A〜20G 電線用スペーサー
30A〜30E 電線用複合材
40 スペーサーとして機能する絶縁層
10A〜10C 電線
100A〜100D、100F〜100M 電線
C 導体部径
D 導体部間距離
F 外径(仕上がり径)

Claims (15)

  1. 電線を構成する導体部間の距離を一定の範囲に保つための凹部を表面に複数有するスペーサーであって、該スペーサーが絶縁材料で構成され、前記スペーサー表面の凹部が下記(条件1)を満たす、電線用スペーサー。
    (条件1)互いに隣接する凹部に導体部を保持させた状態において、互いに隣接する導体部間の距離hを170μm≦h≦540μmとする。
  2. 前記電線用スペーサーが該スペーサーの中心軸に沿って導体部を有する、請求項1に記載の電線用スペーサー。
  3. 前記中心軸に沿って配された導体部と、前記電線用スペーサー表面の凹部とが下記(条件1A)を満たす、請求項2に記載の電線用スペーサー。
    (条件1A)凹部に導体部を保持させた状態において、中心軸に沿って配された導体部と凹部に保持させた導体部との距離hを170μm≦h≦540μmとする。
  4. 前記電線用スペーサー表面の凹部の数が6つである、請求項2又は3に記載の電線用スペーサー。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の電線用スペーサーと、該電線用スペーサー表面の凹部の少なくとも一部に保持された導体部とを有する、電線用複合材。
  6. 前記電線用スペーサー表面の互いに隣接する少なくとも2つの凹部に導体部が保持され、下記(条件2)を満たす、請求項5に記載の電線用複合材。
    (条件2)互いに隣接する導体部間の距離hと、当該互いに隣接する導体部の各々の外径dとの関係が、0.21≦h/d≦1.08を満たすこと。
  7. 前記複合材が有する電線用スペーサーが請求項2〜4のいずれか1項に記載の電線用スペーサーであり、下記(条件2A)を満たす、請求項5又は6に記載の電線用複合材。
    (条件2A)電線用スペーサーの中心軸に沿って配された導体部と凹部に保持された導体部との間の距離hと、当該凹部に保持された導体部の外径dとの関係が0.21≦h/d≦1.08を満たし、かつ、前記距離hと、電線用スペーサーの中心軸に沿って配された導体部の外径dとの関係が0.21≦h/d≦1.08を満たす。
  8. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の電線用スペーサーを複数組み合わせて、全体として、電線を構成する導体部間の距離を一定の範囲に保つための凹部を表面に複数有する複合スペーサーとし、該複合スペーサーの表面凹部の少なくとも一部に導体部を保持してなる電線用複合材。
  9. 前記複合スペーサー表面の互いに隣接する少なくとも2つの凹部に導体部が保持され、下記(条件2)を満たす、請求項8に記載の電線用複合材。
    (条件2)互いに隣接する導体部間の距離hと、当該互いに隣接する導体部の各々の外径dとの関係が、0.21≦h/d≦1.08を満たすこと。
  10. 前記電線用スペーサー表面の凹部の数が3つである、請求項8又は9に記載の電線用複合材。
  11. 前記導体部がリッツ線に由来する、請求項5〜10のいずれか1項に記載の電線用複合材。
  12. 請求項5〜11のいずれか1項に記載の電線用複合材の外周を絶縁被覆してなる電線。
  13. 請求項12に記載の電線を用いたコイル。
  14. 請求項13に記載のコイルを用いたトランス。
  15. 請求項14に記載のトランスを用いた電力変換器。
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JP2008053143A (ja) * 2006-08-28 2008-03-06 Matsushita Electric Works Ltd 高周波用給電線
JP2019114573A (ja) * 2017-12-20 2019-07-11 古河電気工業株式会社 コイル及びトランス

Patent Citations (3)

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