JP2021113292A - 熱硬化性粉体塗料、該塗料を用いて形成された塗膜、及び該塗膜を備えた被塗装体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高温環境での使用に適しつつも、意図する特性が得られる硬化状態に極めて短時間で到達可能な速硬化性を備えた熱硬化性粉体塗料を提供する。【解決手段】 金属製の塗装対象物表面を被覆する硬化物を形成するための粉体塗料であり、組成物の微粉砕物で構成される。組成物は、(A)、(C)、及び(D)を含み、かつ(B)を含まない。(A)は、(A1)及び(A2)を含み、全(A)中での、(A1):1に対する(A2)の質量比は0.5以上1未満である。(D)は、(D1)及び(D2)を含む。(A)に対する(C)の当量比は1.0以上1.2以下である。なお、(A)常温で固体の混合エポキシ樹脂、(A1)二官能エポキシ樹脂、(A2)多官能エポキシ樹脂、(B)ゴム変性エポキシ樹脂、(C)ジシアンジアミド、(D)ジシアンジアミドを活性化させる化合物、(D1)イミダゾール化合物、(D2)アミン−エポキシアダクト系化合物とする。【選択図】 なし

Description

本発明は、熱硬化性の粉体塗料(組成物)と、この塗料を用いて形成された塗膜(硬化物)と、この塗膜を塗装対象物上に備えた被塗装体(塗装物品)と、に関する。
熱硬化性粉体塗料の一つであるエポキシ樹脂粉体塗料は、エポキシ樹脂をベースにした絶縁用粉体塗料であり、その塗膜は機械特性、耐薬品性、耐食性、電気特性に優れている。特に、形成される塗膜が電気特性及び耐食性に優れることから、バスバー、鋼管などの金属加工分野で、塗装対象物を被覆する絶縁材料として利用されている。
エポキシ樹脂粉体塗料としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノール系硬化剤、ジシアンジアミド、イミダゾール系硬化促進剤及び又はイミダゾリン系硬化促進剤を含有したものが知られている(特許文献1)。
特開平10−323616号公報
金属加工分野において、塗料を塗装対象物(例えば、加工鋼材など)に塗装し、該塗装対象物の表面に塗膜を形成して得られる被塗装体は、その施工時(利用の際)に、任意の角度に曲げ加工して使用される場合がある。特許文献1のエポキシ樹脂粉体塗料を用いて塗膜を形成した場合、比較的短時間(140℃で8〜16分、160℃で2〜4分、180℃で1〜2分)で形成することができるものの(段落0044)、その塗膜を有する被塗装体では、塗装対象物表面に形成された塗膜が曲げ加工によって発生した応力で変形し、塗膜にクラックや剥がれが生じやすい。
かかる金属加工分野での利用に際し、塗装対象物表面に形成した塗膜にクラックや剥がれを生じさせずに曲げ加工を施せること(すなわち塗膜に十分な可とう性があり、かつ塗膜が塗装対象物表面への密着性に優れていること)は重要である。
また、特許文献1のエポキシ樹脂粉体塗料は、高温(例えば80〜90℃程度)環境で使用(塗装)されることがあり、この場合、その環境よりさらに高温(例えば150〜190℃程度)の熱が、塗装後の硬化(塗膜形成)に必要である。
しかしながら、特許文献1のエポキシ樹脂粉体塗料を用いて高温硬化による塗膜形成を行う場合、意図とする特性(例えば、得られる塗膜に十分な可とう性が付与され、かつ塗膜の塗装対象物表面への密着性が優れている)が得られる硬化状態に到達するまでに多くの時間(例えば2時間程度)を要することとなり、硬化物(塗膜)の生産性の点で課題を有していた。
エポキシの重合反応は化学反応であるため、温度が高いほどすぐに硬化し、可使時間(ポットライフ)が短くなることは広く知られている。したがって、例えば硬化条件を150℃・2時間と設計した粉体塗料に、180℃の熱をかければ、所定の硬化状態へ到達するまでに、当初の設計時間(2時間)までは要さない(例えば数分程度)。
しかしながら、高温環境での使用に際し、硬化時間が数分もかかるのでは、依然として生産性の点で問題である。一方、生産性を重視し、硬化温度をさらに高め(例えば200℃程度)、硬化時間を20秒程度とさらに短縮化した場合、塗膜が硬化不足となって意図する特性が得られない、あるいは、うまく硬化反応が進行しないなどの不都合を生じ得る。
本発明は、高温環境での使用(塗装)に適しつつも、意図する特性が得られる硬化状態に極めて短時間で到達可能な速硬化性を備えた熱硬化性の粉体塗料と、該塗料の硬化物からなり、十分な可とう性と塗装対象物(加工鋼材など)への密着性を備えた塗膜と、該塗膜を塗装対象物上に備えた被塗装体と、を提供することを課題とする。
本発明者らは、下記に示す(A)、(C)、及び(D)を含み(但し(B)は含まない)、(A)中に(A2)を含め、かつ(D)中に(D1)を含めつつ、(A1)及び(A2)を含む組成物中での(A2)の配合範囲と、(A)に対する(C)の当量比範囲を調整することによって、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明によれば、以下に示す構成の熱硬化性粉体塗料が提供される。
また本発明によれば、以下に示す構成の熱硬化性粉体塗料を熱硬化して得られる塗膜と、該塗膜が塗装対象物の少なくとも一部に形成された被塗装体も提供される。
以下では、
(A)常温で固体の混合エポキシ樹脂(主剤)、
(A1)エポキシ当量が1450〜2010g/eqの二官能エポキシ樹脂、
(A2)分子内にエポキシ基を3個以上有し、エポキシ当量が450以上550以下の多官能エポキシ樹脂、
(B)ゴム変性エポキシ樹脂、
(C)ジシアンジアミド(硬化剤)、
(D)ジシアンジアミドを活性化させる化合物(硬化触媒、または硬化促進剤)、
(D1)イミダゾール化合物、
(D2)アミン−エポキシアダクト系化合物、
とする。
このとき、本発明に係る熱硬化性粉体塗料は、
金属製の塗装対象物表面を被覆する硬化物を形成するための塗料であって、
組成物の微粉砕物で構成してあり、
前記組成物は、(A)、(C)、及び(D)を含み、かつ(B)を含まず、
(A)は、(A1)及び(A2)を含み、全(A)中での、(A1):1に対する(A2)の質量比が0.5以上1未満であり、
(D)は、(D1)及び(D2)を含み、
(A)に対する(C)の当量比が1.0以上1.2以下であることを特徴とする。
本発明において、全(D)中での、(D1):1に対する(D2)の質量比が、5以上7以下であるとよい。
本発明において、100質量部の(A)に対する(D)の含有量が、1.2質量部以上1.6質量部以下であるとよい。
本発明の塗膜は、前記本発明の熱硬化性粉体塗料を熱硬化して得られるものゆえ、
該塗膜を150〜250μmの厚さで表面に形成した試験片を、JIS K 5600−5−1:1999のタイプ1に準拠した方法(円筒形マンドレル法)により、塗膜が外側となるように直径3mmの円筒マンドレルに巻き付けたとき、その巻き付け部分の塗膜に割れ及び剥がれを生じない可とう性と、
前記塗膜を10〜80μmの厚さで2枚の鉄板間に形成した試験片を用いた引張試験におけるせん断接着強さが20MPa以上の、密着性と、
を備えたものとすることができる。
本発明の被塗装体は、前記本発明の塗膜が塗装対象物の少なくとも一部に形成されたものである。
本発明の熱硬化性粉体塗料は、(A)、(C)、及び(D)を含み(但し(B)は含まない)、(A)中に(A2)を含め、かつ(D)中に(D1)を含めつつ、(A1)及び(A2)を含む、微粉砕物を構成する組成物中での(A2)の配合範囲と、(A)に対する(C)の当量比範囲を調整してある。このため、高温環境での使用(塗装)に適しつつも、意図する特性(十分な可とう性と塗装対象物への密着性)が得られる硬化状態に極めて短時間(例えば数十秒)で到達可能な速硬化性(例えば200℃におけるゲル化時間が17秒未満)を備えた粉体塗料を提供することができる。また、この特定塗料の硬化物からなり、十分な可とう性と塗装対象物(加工鋼材など)への密着性を備えた塗膜を提供することができる。さらに、この特定塗膜を塗装対象物上に備えた被塗装体を提供することができる。
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し、適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲のものである。
本発明の粉体塗料は、金属製の塗装対象物表面を被覆する硬化物を形成するための塗料であり、組成物の微粉砕物で構成してある。組成物は、少なくとも、(A)常温で固体の混合エポキシ樹脂、(C)ジシアンジアミド、及び(D)ジシアンジアミドを活性化させる化合物を含む。(A)は、(A1)二官能エポキシ樹脂、(A2)多官能エポキシ樹脂、を含有する。(D)は、(D1)イミダゾール化合物、(D2)アミン−エポキシアダクト系化合物、を含有する。「少なくとも」であるから、(A)、(C)及び(D)以外の成分を含むことはあるが、塗膜形成後(硬化塗膜)の耐熱性低下を抑制する観点から、本発明の粉体塗料は、(B)ゴム変性エポキシ樹脂、を含まない。
すなわち、本発明の粉体塗料は、(A)、(C)及び(D)を含み、かつ(B)を含まない組成物の微粉砕物で構成される。
以下に、本発明の粉体塗料の詳細について説明する。
<(A)>
本発明の粉体塗料に用いられる(A)は、常温で固体のエポキシ樹脂を複数、組み合わせてなることが必須であり、特に、(A)として、少なくとも、(A1)二官能エポキシ樹脂と、(A2)多官能エポキシ樹脂と、を組み合わせて使用する。
<(A1)>
(A)の一部に用いられる(A1)は、常温(25℃)下で固体であり、1分子中に2つのエポキシ基を含む化合物である。(A1)には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂; ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂などが含まれる。(A1)は、2種類以上組み合わせて使用してもよい。中でも、樹脂強度、耐熱性、耐薬品性、接着性などの特性バランスが良好であるとの観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂を使用することが好ましい。
(A1)のエポキシ当量(官能基濃度)は、1450g/eq以上2010g/eq以下である。これにより、架橋密度が調整され、可とう性、密着性の性能向上へ寄与する。詳細には、エポキシ当量を1450g/eq以上とすることで、柔軟性を高めることができ、2010g/eq以下とすることで、耐熱性を維持することができる。(A1)は、エポキシ当量が1450g/eq以上2010g/eq以下の範囲となるように、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
(A1)の物性は、特に限定されないが、塗装性を考慮すると、軟化点が118〜130℃であることが好ましい。(A1)を2種類以上組み合わせて使用する場合、軟化点が前記範囲となるように組み合わせることが好ましい。(A1)の軟化点を前記範囲内とすることにより、塗膜の均一性の確保が可能となり、また凹凸が少ない平滑な塗膜が得られる。
<(A2)>
(A)の一部に用いられる(A2)は、常温下で固体であり、1分子中のエポキシ基の数が平均で2つより多く、つまりエポキシ基を分子長軸方向末端以外にも有する化合物である。(A2)には、平均官能基数が3つの3官能エポキシ樹脂や、4つの4官能エポキシ樹脂、他の多官能エポキシ樹脂が含まれる。
3官能エポキシ樹脂には、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、1,1,1−(トリグリシジルオキシフェニル)メタンなどが含まれる。
4官能エポキシ樹脂には、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−4,4−(4−アミノフェニル)−p−ジイソピルベンゼン、1,1,2,2−(テトラグリシジルオキシフェニル)エタン、1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,1,2,2−テトラビス(ヒドロキシフェニル)エタンテトラグリシジルエーテル、トリフェニルグリシジルエーテルメタン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンなどが含まれる。
他の多官能エポキシ樹脂には、例えば、グリセロ−ルポリグリシジルエーテル、トリメチルプロパノールグリシジルエーテル、ペンタエリスト−ルポリグリシジルエーテル、ジグリセロ−ルポリグリシジルエーテル、ポリグリセロ−ルポリグリシジルエーテル、ソルビト−ルポリグリシジルエーテルなどが含まれる。
他の多官能エポキシ樹脂としては、
商品名「jER−152」、「jER−154」、「jER−157S70」、「jER−1031S」、「jER−1032H60」、「jER−604」、「jER−630」(以上、三菱化学社製)、
商品名「EPICLON5500」、「EPICLON5800」、「EPICLON5300−70」、「EPICLON5500−60」(以上、DIC社製)、
商品名「YH−434」、「YH−434L」(以上、東都化成社製)、
商品名「デナコールEX−313」、「デナコールEX−314」、「デナコールEX−321」、「デナコールEX−411」、「デナコールEX−421」、「デナコールEX−512」、「デナコールEX−521」、「デナコールEX−611」、「デナコールEX−612」、「デナコールEX−614」、「デナコールEX−614B」、「デナコールEX−622」(以上、ナガセケムテックス社製)、
などの市販品を用いることもできる。
(A2)は、2種類以上組み合わせて使用してもよい。中でも、短い硬化時間でも樹脂強度および可とう性が発現できるという観点から、他の多官能エポキシ樹脂を使用することが好ましく、特にDIC社製、商品名「EPICLON5500」、「EPICLON5800」を使用することがより好ましい。
(A2)のエポキシ当量は、450g/eq以上550g/eq以下である。これにより、ゲル化時間が短くなり、可とう性、速硬化の性能向上へ寄与する。詳細には、エポキシ当量を450g/eq以上とすることで、柔軟性を高めることができ、550g/eq以下とすることで、架橋密度が高くなり、反応速度を速めることができる。(A2)は、エポキシ当量が前記範囲となるように、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
(A2)の物性は、特に限定されないが、塗装性を考慮すると、軟化点が82〜88℃であることが好ましい。(A2)を2種類以上組み合わせて使用する場合、軟化点が前記範囲となるように組み合わせることが好ましい。(A2)の軟化点を前記範囲内とすることにより、塗膜の均一性の確保が可能となり、また凹凸が少ない平滑な塗膜が得られる。
(A1)及び(A2)につき、軟化点は、JIS K 7234の環球法で測定することができる。
本発明では、(A1)と(A2)の質量比は、全(A)中に、(A1):1に対して、(A2):0.5以上1.0未満である。つまり(A1):(A2)=(66.7以下50超):(33.3以上50未満)である。好ましくは、(A1):1に対して、(A2):0.53以上0.82以下である。つまり、(A1):(A2)=(65以下55以上):(35以上45以下)である。この質量比範囲で、(A1)と(A2)を組み合わせて用いることにより、粉体塗料の硬化物(塗膜)の強度を保持しながら、柔軟性(可とう性)が付与されることが期待される。(A1)の割合が多すぎると、塗料の融点が高くなり塗膜外観が悪化すること、また架橋密度が大きくなり必要な樹脂強度や耐熱性が得られにくくなる。(A1):1に対する(A2)の割合が少なすぎる(つまり(A1)の割合が多すぎると)と、硬化物(塗膜)の架橋密度が低く(網目が大きく)なり過ぎ、その結果、塗膜強度が弱くなりやすい。(A1):1に対する(A2)の割合が多すぎると、塗膜の架橋密度が高く(網目が小さく)なり過ぎ、その結果、塗膜の柔軟性に欠け(伸びない)、硬く、脆くなりやすい。
なお、本発明においては、(A)中に、クレゾールノボラック変性エポキシ樹脂を配合してもよいが、可とう性を低下させないために、また配合調整の煩雑さを考慮すると、(A)中に、クレゾールノボラック変性エポキシ樹脂を配合しないことが好ましい。クレゾールノボラック変性エポキシ樹脂の市販品としては、商品名「NPCN−702」、「NPCN−704」(以上、台湾南亜プラスチック社製)、商品名「EPICLON−670」、「EPICLON−680」、「EPICLON−695」(以上、DIC社製)などが挙げられる。
また、後述のとおり、(A1)と(A2)は、ともに、ゴム変性されたもの((B)の範疇に入るもの)を含まない。
<(B)>
本発明の粉体塗料では、(B)のゴム変性エポキシ樹脂は用いない。(B)のゴム成分は、(A)の架橋反応には寄与せず、かつ接着する機能も持たないため、ゴム成分が存在することで接着面(反応点)が減少することにより、塗装対象物表面での塗膜の接着強さ(密着性)が弱くなることが理由である。
本発明においてゴム変性エポキシ樹脂とは、エポキシ樹脂中のエポキシ基にゴム成分を反応(変性)させることにより得られたものを言う。
エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オールソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
ゴム成分は、エポキシ樹脂中のエポキシ基と反応する官能基を有するゴムのことを言い、特に限定されないが、例えば、ブタジエンゴム、アクリルゴム、シリコ−ンゴム、ブチルゴム、オレフィンゴム、スチレンゴム、NBR(ブタジエン・アクリロニトリルゴム)、SBR、IR、EPRなどが挙げられる。該ゴム成分の官能基はアミノ変性、ヒドロキシ変性、またはカルボキシル変性されたもの等が挙げられる。
これらのゴム成分とエポキシ樹脂とを公知の重合方法により適宜の配合比に反応させた生成物が本発明において配合が除外される(B)である。(B)の配合を除外することで、塗膜形成後(硬化塗膜)の耐熱性低下を抑制することができ、要求される耐熱性維持に寄与することができる。
<(C)>
本発明の粉体塗料に(C)として配合するジシアンジアミド(DICY)は、一般的に入手可能なものが利用可能である。(C)は、(A)の硬化剤として働き、特に、塗装対象物表面への硬化物の接着性(密着性)を向上させる作用や、粉体塗料を長期保存してもゲル化を発生させない、いわゆる貯蔵安定性を向上させる作用などがある。
(C)は、平均粒径が3〜18μmの範囲にある固体粒子を用いることが好ましい。(C)の平均粒径が小さすぎると、粉体塗料の保存安定性が低下しやすい。(C)の平均粒径が大きすぎると、粉体塗料の硬化速度が遅くなりやすく、結果、硬化不足となって、硬化物の可とう性付与へ悪影響を与えやすい。
(C)の配合量は、(A)に対する(C)の当量比が好ましくは1.0以上1.2以下(より好ましくは1.05以上1.15以下)となるように決定することが望ましい。この当量比範囲(つまり(A)に対して(C)を当量以上)で配合することにより、意図する特性(十分な可とう性と塗装対象物への密着性)が得られる硬化状態に極めて短時間で到達可能な速硬化性が粉体塗料に付与される。(C)の当量比が(A)に対して小さすぎる(つまり当量以下である)と、架橋密度が低下し、硬化物(塗膜)の強度が不足しやすい。一方で、(C)の当量比が(A)に対して大きすぎると、塗膜が柔軟性に欠けるためのびにくく、硬く、脆くなりやすい、との不都合を生じやすい。具体的には、100質量部の(A)に対して、例えば、2.6質量部以上3.1質量部以下の(C)を配合するとよい。
<(D)>
本発明の粉体塗料に用いられる(D)は、(C)を活性化できる化合物を複数、組み合わせてなることが必須であり、特に、(D)として、少なくとも、(D1)イミダゾール化合物と、(D2)アミン−エポキシアダクト系化合物と、を組み合わせて使用する。
本発明において(D)は、(A)の硬化触媒(硬化促進剤)として働く。本発明では(D)として(D1)単独ではなく、これに(D2)を組み合わせて使用することとした理由は次のとおりである。触媒作用として(D1)は(D2)より反応性が高い(より低温で反応に寄与する)ため、(D1)単体で(D)を構成した場合、粉体塗料の保存安定性が悪化する。また、反応が急激に進行することにより、塗膜が固く、可とう性が低下してしまう(脆くなりやすい)。このため、(D1)単体に比べ、より高い温度で活性化して反応に寄与し、反応を緩やかに進行させる(D2)を併用することとしたものである。また本発明では、特に、(D1)と(D2)を所定の質量比で組み合わせて使用することで、硬化物に十分な可とう性を付与するとともに、効率向上のための速硬化性を実現させる作用を発現する。
<(D1)>
(D)の一部に用いられる(D1)には、イミダゾール、イミダゾール誘導体が含まれる。イミダゾール誘導体は、イミダゾールに置換基などが導入された化合物であり、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−アミノメチル−2−メチルイミダゾールなどが含まれる。(D1)は、2種類以上組み合わせて使用してもよい。中でも、速硬化性の観点から、2−メチルイミダゾールを使用することが好ましい。
<(D2)>
(D)の一部に用いられる(D2)は、アミン化合物にエポキシ化合物を付加反応させることにより形成されたものである。(D2)は、それ単独で使用した場合、(D1)より高い温度(約80℃付近)で活性化し、作用を示すため、(D1)と併用すると、(D1)単体で使用した場合に生ずる不都合(塗膜の可とう性低下。前出)を抑制しつつ、速硬化性にも寄与する。この作用ととともに、(D2)を(D1)と併用した場合、粉体塗料の保存安定性が向上することも期待される。
エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、カテコール、レゾールシノールなどの多価フェノール又はグリセリンやポリエチレングリコールのような多価アルコールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル、p−ヒドロキシ安息香酸、β−ヒドロキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル、フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸とエピクロルヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエステル、4,4′−ジアミノジフェニルメタンやm−アミノフェノールなどとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるグリシジルアミン化合物、エポキシ化フェノールノボラック樹脂、エポキシ化クレゾールノボラック樹脂、エポキシ化ポリオレフィンなどの多官能性エポキシ化合物やブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレ−トなどの単官能性エポキン化合物などがある。
アミン化合物としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、n−プロピルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタンのような脂肪族アミン類、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、2−メチルアニリンなどの芳香族アミン化合物、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、ピペリジン、ピペラジンなどの含窒素複素環化合物、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジ−n−プロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、N−メチルピペラジンなどのアミン化合物や、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール化合物のような、分子内に第三級アミノ基を有する第一級若しくは第二級のアミン類、2−ジメチルアミノエタノール、1−メチル−2−ジメチルアミノエタノール、1−フェノキシメチル−2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、1−ブトキシメチル−2−ジメチルアミノエタノール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−フェニルイミダゾリン、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾリン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N−β−ヒドロキシエチルモルホリン、2−ジメチルアミノエタンチオール、2−メルカプトピリジン、2−ベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、4−メルカプトピリジン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸、N,N−ジメチルグリシン、ニコチン酸、イソニコチン酸、ピコリン酸、N,N−ジメチルグリシンヒドラジド、N,N−ジメチルプロピオン酸ヒドラジド、ニコチン酸ヒドラジド、イソニコチン酸ヒドラジドなどのような、分子内に第三級アミノ基を有するアルコール類、フェノール類、チオール類、カルボン酸類及びヒドラジド類などがある。
(D2)としては、例えば、2−メチルイミダゾールとビスフェノールA型エポキシ樹脂の付加反応物、2−エチル−4−メチルイミダゾールとビスフェノールA型エポキシ樹脂の付加反応物が含まれる。アミン−エポキシアダクト系化合物は、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
(D2)の中のいくつかは、例えば、「アミキュアPN−23」、「アミキュアMY−24」、「アミキュアAH−203」(以上、味の素社製)、「エピキュアP−101」、「P−103」、「P−104」、「P−108」(以上、Hexion社製)、「ハードナーX−3361S」、「ハードナーX−3670S」(以上、旭電化工業社製)などの商品名で市販されている。中でも、硬化後の塗膜(硬化物)に低温でのより高い可とう性を付与する観点から、2−エチル−4−メチルイミダゾールとビスフェノールA型エポキシ樹脂の付加反応物(アミキュアPN−23)を使用することが好ましい。
本発明において、(D1)と(D2)は、質量比が、すべての(D)中に、(D1):1に対して、(D2):5以上7以下(特に5.5以上6.5以下)であることが好ましい。この質量比範囲で、特定の(D1)と(D2)を組み合わせて用いることにより、硬化速度を調整することができ、これにより可とう性の向上が期待される。(D1)の割合が多すぎると、硬化速度が速くなりすぎ、塗膜化した際に架橋密度が高くなり塗膜が脆くなりやすくなる。また、(D1)の割合が少なすぎると、硬化速度が不十分となり、塗膜化した際に硬化が不十分なものとなる。
本発明において、(D)の配合量は、100質量部の(A)に対して、例えば、1.2質量部以上1.6質量部以下、好ましくは1.3質量部以上1.5質量部以下である。(D)の配合量が少なすぎると、速硬化性が達成されず、架橋密度が低くなり、塗膜の強度が不十分となるため塗膜が割れやすくなり、一方で、(D)の配合量が多すぎると、架橋密度が高くなり、塗膜が固く、可とう性が低下するため塗膜が割れやすくなる。
<補助成分>
本発明の粉体塗料には、発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、前記成分((A)、(C)および(D))以外の、補助成分を適宜配合することができる。補助成分としては、(A)以外のエポキシ樹脂、(C)以外の硬化剤、(D)以外の硬化促進剤、難燃剤、着色剤、充填剤、レベリング剤、垂れ止め剤、カップリング剤、消泡剤、離型剤、流動性調整剤等が挙げられる。
難燃剤としては、リン系化合物、ハロゲン化合物、アンチモン化合物、金属水酸化物を挙げることができる。
着色剤としては、酸化チタン、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、銅等を挙げることができる。
充填剤としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄、バリウムチタン酸化物、アルミナ−シリカ複合酸化物等の酸化物;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の窒化物;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウム等の難溶性イオン結晶;シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶;シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレイ、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ベーマイト、アパタイト、ムライト、スピネル、オリビン等、または、これらを含む化合物等を挙げることができる。
<粉体塗料の製造方法>
本発明の粉体塗料の製造方法は特に限定されないが、例えば以下の方法により製造することができる。初めに、ミキサー等により配合成分を乾式混合した後、エクストルーダーを用いて溶融混練等を行う。混合温度や混合時間は、特に限定されず、原料の種類や組成比等に応じて設定される。通常、混合温度は、80〜150℃が好ましい。その後、得られた混合物を冷却固化し、固化した混練混合物(溶融混練物)を微粉砕して、分級することにより粉体塗料が得られる。
<粉体塗料>
本発明の粉体塗料は、少なくとも(A)、(C)、及び(D)を含有する。混合条件によっては、一部重合が進行し、(A)に由来する構造単位を含む重合体を含有する。
(i)体積平均粒子径
本発明の粉体塗料の粒子径は、特に限定されないが、レーザー回折・散乱法(JIS Z8825)による体積平均粒子径が30〜60μmの範囲であることが好ましい。なお、前記体積平均粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置(SYMPATEC社製、HELOS and PRODOS 解析ソフト:WINDOX5)を用いて測定することができる。体積平均粒子径が前記範囲の粉体塗料を用いることにより、より優れた成膜性が得られる。
(ii)速硬化性
本発明の粉体塗料は、JIS C 2104準拠による200℃におけるゲル化時間が17秒未満となる速硬化性を備えている。ゲル化時間が17秒未満であれば、速硬化性を満たし、優れた塗膜特性が得られやすい。粉体塗料のゲル化時間は、より好ましくは10秒以上15秒以下である。ゲル化時間が長すぎると速硬化性は満たされず、塗膜強度が劣る。前記所定条件での試験後のゲル化時間が17秒を超えるようであれば、要求される速硬化性を具備することにはならない。
<粉体塗料の塗装方法>
本発明の粉体塗料の塗装方法は、特に限定されず、公知の塗装方法が適用できる。具体的には、静電塗装、摩擦帯電塗装、無荷電塗装、流動浸漬等が挙げられる。この中でも充分な膜厚の塗膜を得る場合には流動浸漬法であることが好ましい。前記方法により、塗装対象物表面に粉体塗料を塗装した後、硬化することにより塗膜を得ることができる。必要に応じて塗装対象物に予め表面処理を施すことにより、塗膜の密着性等を向上させることもできる。
本発明の粉体塗料から得られる塗膜の膜厚は、特に限定されないが、100〜300μmであることが好ましい。
<塗装対象物>
本発明の粉体塗料が適用される塗装対象物(部材)の種類及び形状は、特に限定されないが、本発明の粉体塗料は、特に、塗装した後、硬化することによって硬化塗膜を形成した後、任意の角度に高度な曲げ加工(例えばヘアピンのような屈曲)を施し得る加工鋼材に好適に使用され、本発明の効果が有効に発揮される。塗装対象物としての加工鋼材は、バスバー、鋼管等の金属加工分野に限らず、コンクリート内に包蔵される鉄筋、その他の土木建築分野への使用も可能である。
即ち、本発明の粉体塗料は、塗膜形成後に高度な曲げ加工を施し得る加工鋼材に対しての追従性が良好であることから、例えば、棒状物、線状物、筒状物、波板状物等にも好適に用いられる。
<粉体塗料の塗膜硬化物(塗膜)>
(i)可とう性
本発明の、粉体塗料を塗布後硬化して得られる塗膜は、該塗膜を150〜250μmの厚さで表面に形成した試験片を、JIS K 5600−5−1:1999のタイプ1に準拠した方法(円筒形マンドレル法)により、塗膜が外側となるように直径3mmの円筒マンドレルに巻き付けたとき、その巻き付け部分の塗膜に割れ及び剥がれを生じない可とう性を備えるように調整する。前記所定条件での試験後の塗膜に割れ及び剥がれを生じるようであれば、要求される可とう性を具備することにはならない。
本発明の、粉体塗料を塗布後硬化して得られる塗膜は、さらに、JIS K 7161−2に準拠した方法で測定された伸び率が5%以上となる可とう性を備えるように調整するとよい。前記所定条件での試験後の、塗膜の伸び率が5%未満では、要求される可とう性を具備することにならない可能性がある。
(ii)密着性
本発明の、粉体塗料を塗布後硬化して得られる塗膜は、JIS K 6850に準拠した方法で測定された引張試験における引張せん断接着強さが20MPa以上の、密着性を備えるように調整する。前記所定条件での試験後の塗膜の引張せん断接着強さが20MPa未満では、要求される密着性を具備することにはならない。
<被塗装体>
本発明の被塗装体は、本発明の塗膜が塗装対象物の少なくとも一部に形成されていればよく、全部に形成されていてもよい。
以下、本発明を実験例(実施例および比較例を含む)に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。以下の記載において、「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示すものとする。
[粉体塗料の構成成分]
A1(二官能エポキシ樹脂)として、以下のものを準備した。
・A12: エポキシ当量780〜810g/eqのビスフェノールA型(固形)エポキシ樹脂
(GESR904S、Epoxy Base Electronic Material Corporation Limited社(CN))
・A13: エポキシ当量1450〜1600g/eqのビスフェノールA型(固形)エポキシ樹脂
(GESR907S、Epoxy Base Electronic Material Corporation Limited社(CN))
・A14: エポキシ当量200〜220g/eqのクレゾールノボラック変性エポキシ樹脂
(NPCN−704、南亜プラスチック社(台湾))
なお、AとB全体のエポキシ当量は、全体を100質量部としたときの各成分の配合量(例えば実験例3の場合、A13が60質量部、A22が40質量部、B1が0質量部)を、各成分のエポキシ当量の中央値(例えばA13の中央値は、下限が1450g/eq、上限が1600g/eqゆえ、(1450+1600)/2で1525)で除した値(A13の場合、0.03934、A22の場合、0.08368、B1は0)をすべて加えた値(0.12302)を分母とし、AとB全体の質量(100)を分子とした場合に算出される値(実験例3の場合、約812)である。
A2(多官能エポキシ樹脂)として、以下のものを準備した。
・A21: エポキシ当量750〜850g/eqの多官能成分含有(固形)エポキシ樹脂
(EPICLON5800、DIC社)
・A22: エポキシ当量450〜500g/eqの多官能成分含有(固形)エポキシ樹脂
(EPICLON5500、DIC社)
B(ゴム変性エポキシ樹脂)として、以下のものを準備した。
・B1: エポキシ当量950〜1200g/eqのブタジエン・アクリロニトリルゴム変性エポキシ樹脂
(EPOX―MK SR―35K、プリンテック社、軟化点95℃)
C(ジシアンジアミド)として、以下のものを準備した。
・C1: jERキュアDICY20
(固体分散型アミン系硬化剤、三菱ケミカル社)
D1(イミダゾール化合物)として、以下のものを準備した。
・D11: 2−メチルイミダゾール
(キュアゾール2MZ−H、四国化成社)
D2として、以下のものを準備した。
・D21: アミン−エポキシアダクト系化合物
(2−エチル−4−メチルイミダゾールとビスフェノールA型エポキシ樹脂の付加反応物、アミキュアPN−23、Hexion社)
・D22: ウレア化合物
(芳香族ジメチルウレア、U−CAT3512T、サンアプロ社)
・D23: アミン−尿素アダクト系化合物
(フジキュアFXE−1000、T&K TOKA社)
E(補助成分)として、以下のものを準備した。
・E1: 充填剤(酸化チタン)
(タイペークR−830、石原産業社)
・E2: 充填剤(カーボンブラック)
(三菱カーボンブラック、三菱化学社)
・E3: レベリング剤
(アクリル酸エステル共重合体、日本カーバイド社)
1.粉体塗料の作製
[実験例1〜15]
表1に示す配合比(質量)で、実験例ごとのすべての材料をドライブレンドした後、エクストルーダーにより90℃〜130℃で約30〜100秒、混練することによって混練物を得た。得られた混練物を冷却固化した後、微粉砕することにより粉体塗料を得た。
2.評価
各実験例で得られた粉体塗料について、下記に示す方法で速硬化性を評価した。また、各実験例で得られた粉体塗料の硬化物(熱硬化塗膜)について、下記に示す方法で各種特性(可とう性、密着性)を評価した。結果を表1に示す。
(2−1)速硬化性
粉体塗料の速硬化性は、ゲル化時間を測定することにより、以下の基準で評価した。
各実験例で得られた粉体塗料の約0.05〜0.1gを200℃に保持した熱板の円形凹部に入れ、かきまぜ棒でかきまぜ、糸がひかなくなるまでの時間、すなわちゲル化に至るまでの時間(秒)を測定した。JIS C 2104に準じて測定した。評価基準は、以下のとおりである。
◎:ゲル化時間が15秒以下
○:ゲル化時間が17秒未満
×:ゲル化時間が17秒以上
(2−2)可とう性
熱硬化塗膜の可とう性は、耐屈曲性、伸び率のそれぞれを評価・測定することにより行った。
(a)耐屈曲性
240℃に予熱した矩形状のSPCC−SB板(長さ100mm、幅50mm、厚さ1mm)を準備し、これの片面に、各実験例で得られた粉体塗料を硬化後の厚みが150〜250μmとなるように流動浸漬法で塗布した。塗装時間は、0.5〜2秒とした。恒温送風炉にて240℃下、30秒間で硬化させた。硬化直後に水に20〜30秒間浸漬し冷却し、試験片を得た。得られた試験片に対し、円筒形マンドレル屈曲試験器(ティーキューシー社製)を用いて、JIS K 5600−5−1:1999のタイプ1に規定する耐屈曲性試験を行った。直径3mmの円筒マンドレルをセットとした試験器に、試験片を本体クランプで挟みこみ固定した後、ローラーを試験片の塗膜非形成面に近づけ、ハンドルを1〜2秒の時間をかけて急激ではなく均等に180°回した。その後、塗膜の割れ及びSPCC−SB板からの塗膜の剥がれを目視により確認した。評価基準は、以下のとおりである。
◎:塗膜の、割れおよび剥がれ、全くなし
〇:塗膜の、割れおよび剥がれ、一部あるも問題なし
×:塗膜の、割れまたは剥がれ、あり
××:塗膜の、割れまたは剥がれ、多数あり
(b)伸び率(%)
JIS K 7161−2に準拠した方法により、厚さ200〜400μmの塗膜を備えた1A形試験片を準備した。塗膜は、各実験例で得られた粉体塗料を硬化後の厚みが200〜400μmとなるように試験基材に付着させ、240℃下で30秒放置して得られたものである。準備した試験片に対し、万能引張試験機(インストロンジャパン社製)を使用して、室温にて、試験片が破壊に至るまで、試験片を主軸に沿って毎分5mmの速度で引っ張り、試験片(ひいては塗膜)の伸びを測定し、伸び率を算出した。試験片の伸び率は、試験開始からのつかみ具間の変位量より算出した。評価基準は、以下のとおりである。
〇:塗膜伸び率の算出値が5%以上
×:塗膜伸び率の算出値が5%未満
(2−3)密着性
熱硬化塗膜の密着性は、JIS K 6850に準拠した方法による、引張せん断接着強さを測定することにより、以下の基準で評価した。
240℃に熱した、矩形状のSPCC−SD板(長さ100mm、幅25mm、厚さ1.6mm)を2枚用意し、それぞれの、長手方向片面の端部から約12.5mmの位置まで、各実験例で得られた粉体塗料を硬化後の厚みが10〜80μmとなるように塗布した。その後、2枚の板を、塗料塗布部分が対面するように重ね、溶融した塗料を伸ばすように板同士を擦り合わせ、塗料を馴染ませた後(塗装面のサイズは長さ25mm×幅12.5mm)に張り合わせた。
次いで、重ね合わせ部分をダブルクリップにて挟み、240℃下で30秒放置後、室温で放置したところ、2枚の板は重ね合わせ部の塗料により接合一体化され、試験片を得た。得られた試験片に対し、室温にて、その両端を万能引張試験機(インストロンジャパン社製)を使用して引張り、引張せん断接着強さを測定した。評価基準は、以下のとおりである。
○:せん断接着強さが20MPa以上
×:せん断接着強さが20MPa未満
Figure 2021113292
3.考察
表1で示すように、塗料中に含める成分種が同じ場合(実験例1〜7)、全A成分中での、A1成分:1に対するA2成分の質量比が、0.5未満か(実験例1)、1以上(実験例7)であると、塗料の速硬化性、並びに、塗膜の可とう性及び密着性、のすべてを満足させることができなかった。これに対し、A1成分:1に対するA2成分の質量比が、0.5以上1未満にあると(実験例2〜6)、速硬化性、可とう性及び密着性のすべてを満足させることができた。
A成分中にA2成分を含めないと(実験例8、12〜15)、速硬化性、可とう性及び密着性の少なくとも何れかを満足させることができなかった。A成分中にA1成分を含めない場合も同様であった(実験例9〜11)。
塗料中にB成分を含めると(実験例8〜15)、塗膜の密着性が劣化した。D成分中にD2成分を含めないと(実験例12、13)、塗膜の可とう性(特に耐屈曲性)が悪化した。
なお、全D成分中での、D1成分:1に対するD2成分の質量比が、5未満か(実験例4)、7を超えると(実験例5)、5以上7以下である場合(実験例3)と比較して、若干ではあるが、可とう性(耐屈曲性)が劣化する傾向にあったが、性能上、問題はなかった。
ただし、塗料中にB成分を含め、かつD1成分:1に対するD2成分の質量比が大きすぎると(実験例14、15)、A2成分の非含有かつB成分の含有と相まって、可とう性(耐屈曲性)の劣化が進みやすいことも確認できた。

Claims (5)

  1. 金属製の塗装対象物表面を被覆する硬化物を形成するための熱硬化性粉体塗料であって、
    組成物の微粉砕物で構成してあり、
    前記組成物は、下記に示す(A)、(C)及び(D)を含み、かつ(B)を含まず、
    (A)は、下記に示す(A1)及び(A2)を含み、全(A)中に、(A1):1に対して、(A2)が0.5以上1未満となる質量比で含有されており、
    (D)は、下記に示す(D1)及び(D2)を含み、
    (C)は、(A)に対して、1.0以上1.2以下となる当量比で配合されている粉体塗料。
    (A)常温で固体の混合エポキシ樹脂
    (A1)エポキシ当量が1450以上2010以下の二官能エポキシ樹脂
    (A2)分子内にエポキシ基を3個以上有し、エポキシ当量が450以上550以下の多官能エポキシ樹脂
    (B)ゴム変性エポキシ樹脂
    (C)ジシアンジアミド
    (D)(C)を活性化させる化合物
    (D1):イミダゾール化合物
    (D2):アミン−エポキシアダクト系化合物
  2. (D2)は、全(D)中に、(D1):1に対して、5以上7以下となる質量比で含有されている、請求項1に記載の粉体塗料。
  3. (D)は、100質量部の(A)に対して、1.2質量部以上1.6質量部以下の範囲で含有されている、請求項1又は2に記載の粉体塗料。
  4. 請求項1〜3のいずれか記載の熱硬化性粉体塗料を熱硬化して得られる塗膜であって、
    該塗膜を100〜300μmの厚さで表面に形成した試験片を、JIS K 5600−5−1:1999のタイプ1に準拠した方法(円筒形マンドレル法)により、塗膜が外側となるように直径3mmの円筒マンドレルに巻き付けたとき、その巻き付け部分の塗膜に割れ及び剥がれを生じない可とう性を備えており、かつ
    前記塗膜を10〜80μmの厚さで2枚の鉄板間に形成した試験片を用いた引張試験におけるせん断接着強さが20MPa以上の、密着性を備えた塗膜。
  5. 請求項4に記載の塗膜が塗装対象物の少なくとも一部に形成された被塗装体。
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