JP2021110026A - 金属除去方法および金属回収方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】スクラップ等を原料としたAl基溶湯から、Mgを効率的に除去できる方法を提供する。【解決手段】本発明の金属除去方法は、Mgを含むアルミニウム基溶湯に接触してアルミニウム基溶湯の湯面の少なくとも一部を覆う溶融塩層を形成する処理工程を備える。これにより、アルミニウム基溶湯側から溶融塩層側へMgが取り込まれて除去される。溶融塩層は、ClまたはBrの一種以上である特定ハロゲン元素とCu、ZnまたはMnの一種以上である特定金属元素とを含む。特定金属元素は、特定金属元素の酸化物として溶融塩層に補給されるとよい。このとき、溶融塩層にはMgが含まれているとよい。Mgの除去工程は、アルミニウム基溶湯と溶融塩層を架橋する導電体を配置してなされるとよい。これにより、Mg除去効率と特定金属元素の回収効率が高まる。【選択図】図2B

Description

本発明は、アルミニウム基溶湯からMgを除去する方法等に関する。
環境意識等の高揚に伴い、軽量なアルミニウム系部材が様々な分野で用いられている。新規に精錬されたアルミニウムを用いるよりもスクラップを再利用すれば、大幅な省エネルギ化や環境負荷低減を図りつつ、アルミニウム系部材の利用を促進できる。
もっとも、スクラップを利用すると、Al以外の様々な元素が溶湯中に混在し易い。所望組成の溶湯調製には、スクラップを溶解した原料溶湯(「Al合金溶湯」ともいう。)から、不要または過剰な元素を除去する必要がある。その一例として、Mgの除去に関連する記載が下記の文献にある。
米国特許第4097270号 特開2007−154268号 特開2008−50637号 特開2011−168830号
軽金属33(1983)243-248 軽金属54(2004)75-81
特許文献1には、Mgを含むAl合金溶湯とシリカ(SiO)を反応させて(2Mg+SiO→2MgO+Si)、MgをMgOとして除去する方法(金属酸化物処理法の一種)に関する記載がある。
特許文献2は、Mgを含むAl合金溶湯へ、ホウ酸アルミニウム(9Al・2B)を含むペレットを添加し、Mgをそのペレット上に付着させ、反応生成物(MgAl)として除去する方法を提案している。
特許文献3、4は、使用済みの乾電池を焙焼して得た粉末状の電池滓を、Mgを含むAl合金溶湯へ添加して、Mgを除去する方法を提案している。電池滓の主成分はZnO、MnOであり、Mgはそれら酸化物との反応物(MgO、MgMnまたはMgMnO)として除去される。また電池滓に含まれる塩化物は、それら酸化物とAl合金溶湯の濡れ性を高め、反応物の生成を促進する。但し、アルカリ乾電池の電池滓は、マンガン乾電池の電池滓よりも塩化物の含有量が少ない。そこで特許文献4では、KClとNaClの混合塩をAl合金溶湯中へ添加して、塩化物を補充することを提案している。
非特許文献1、2には、塩素ガス処理法とフラックス処理法に関する記載がある。塩素ガス処理法では、Al合金溶湯中へ吹き込まれた塩素、六塩化エタン、四塩化炭素等のガスがMgと反応し(Mg+Cl→MgCl)、MgはMgClとして除去される。
フラックス処理法(金属ハロゲン化物処理法の一種)では、Al合金溶湯中へ添加されたフラックス(AlF、NaAlF、KAlF等)がMgと反応し(例えば、3Mg+2AlF→3MgF+2Al)、MgはMgFとして除去される。なお、Al合金溶湯とフラックスの濡れ性を改善するため、塩化物等も補助的に添加され得る。
いずれの方法も、Al合金溶湯中における化学反応で生成した、酸化物(MgO等)やハロゲン化物(MgCl、MgF等)として、Mgを除去している点で共通する。このような方法では、Mg除去に用いた物質や反応生成物がAl合金溶湯中に残存し、介在物となり易い。また、従来の方法では、副生成物(ドロス(主にAl)、AlCl等)にトラップされるAlがロスとなり易い上、Mgの酸化物やハロゲン化物以外にも大量の廃棄物を生じ得る。さらに、塩素ガス処理法やフラックス処理法では、蒸気圧が高いAlClやフラックス中の発熱成分がヒュームとなるため、安全性や作業環境等を確保する設備が別途必要となる。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、従来とは異なる手法により、アルミニウム基溶湯からMgを除去する方法等を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究した結果、アルミニウム基溶湯とその湯面上に形成した溶融塩層とを接触させて、溶融塩層中へMgを取り込んで除去することに成功した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《金属除去方法》
(1)本発明は、
Mgを含むアルミニウム基溶湯に接触して該アルミニウム基溶湯の湯面の少なくとも一部を覆う溶融塩層を形成する処理工程を備え、該溶融塩層は、ClまたはBrの一種以上である特定ハロゲン元素とCu、ZnまたはMnの一種以上である特定金属元素とを含み、該アルミニウム基溶湯側から該溶融塩層側へMgを取り込んで除去する金属除去方法である。
(2)本発明の金属除去方法(「Mg除去方法」または単に「除去方法」ともいう。)では、アルミニウム基溶湯(「Al基溶湯」ともいう。)中に含まれるMgが、Al基溶湯と溶融塩層の接触界面を通じて、溶融塩層側へ取り込まれて除去される。この方法によれば、Alロスや廃棄物の低減が図られ、Mgを効率的にまたは低コストで除去できる。また、塩素ガス等の使用や発生を伴わないため、作業環境の悪化も回避できる。
本発明の除去方法は、アルミニウム系スクラップの再生に限らず、種々のAl系溶湯の調製に用いられ得る。もっとも本発明の除去方法を用いると、例えば、Mg含有量が多い低廉なスクラップからも、所望組成の再生Al合金を、短時間で効率的に得ることも可能となる。このため本発明の金属除去方法は、「再生Al合金の製造方法」としても把握される。なお、Mgが除去された再生Al合金は、凝固物(インゴット等)として利用されても、溶湯(半溶融状態を含む)のまま利用されてもよい。
《金属回収方法》
本発明は、上述した除去方法で用いた特定金属元素の回収方法としても把握される。すなわち、本発明は、Mgを含むアルミニウム基溶湯に接触して該アルミニウム基溶湯の湯面の少なくとも一部を覆う溶融塩層を形成する処理工程を備え、該溶融塩層は、ClまたはBrの一種以上である特定ハロゲン元素とCu、ZnまたはMnの一種以上である特定金属元素とを含み、少なくとも該アルミニウム基溶湯と該溶融塩層の接触界面付近に、該アルミニウム基溶湯と該溶融塩層を架橋する導電体を配置し、該導電体上に該特定金属元素を析出させて回収する金属回収方法でもよい。
本発明の金属回収方法(単に「回収方法」ともいう。)によれば、Mg除去に用いた特定金属元素を効率的に回収できる。回収された特定金属元素を再利用すれば、Mg除去に伴って発生する廃棄物の低減も図られる。また、安価な特定金属元素の化合物(酸化物等)をMg除去に利用しつつ、高価な特定金属元素(純金属)の回収が可能となり得る。このため本発明の回収方法は、全体的に観て、Mg除去の低コスト化にも寄与し得る。
《金属除去剤》
本発明は、上述した溶融塩層の形成(または調製)に用いられる金属除去剤としても把握される。具体的にいうと次の通りである。
(1)本発明は、アルミニウム基溶湯からMgを取り込む溶融塩層の形成に用いられる金属除去剤であって、Cu、ZnまたはMnの一種以上である特定金属元素と、ClまたはBrの一種以上である特定ハロゲン元素と、Mgとを含む金属除去剤でもよい。
金属除去剤(「Mg除去剤」または単に「除去剤」ともいう。)中で、特定金属元素とMgの全部または一部は、例えば、酸化物および/またはハロゲン化物として存在してもよい。このとき、Mgの酸化物(MgO)は、特定金属元素(M)の酸化物(特定金属酸化物:MO)とMgハロゲン化物(MgX)との反応生成物でもよい。
除去剤中において、特定金属元素はモル量で、Mgと同量でも、Mgより多くても少なくてもよい。特定金属元素がMgよりモル量で多いとき、特定金属元素の少なくとも一部は酸化物であってもよい。特定金属元素がMgよりモル量で少ないとき、特定金属元素は全てハロゲン化物であってもよい。なお、除去剤は、さらに、溶融塩層の基材となるベースハロゲン化物を含んでいてもよい。
(2)また本発明は、アルミニウム基溶湯からMgを取り込む溶融塩層の形成に用いられる金属除去剤であって、該溶融塩層の基材となるベースハロゲン化物と、Cu、ZnまたはMnの一種以上である特定金属元素とClまたはBrの一種以上である特定ハロゲン元素との化合物である特定金属ハロゲン化物と、を含む金属除去剤でもよい。
(3)これらの除去剤を用いれば、上述したMgの除去方法や特定金属元素の回収方法の実施に必要となる溶融塩層の形成を効率的に行える。但し、除去剤のみで溶融塩層が形成される必要はない。除去方法や回収方法の実施状況に応じて、適宜、特定金属酸化物、Mgハロゲン化物、特定金属ハロゲン化物、ベースハロゲン化物等が補充、併用等されてもよい。
除去剤の形態は、例えば、塊状、粉末状、層状等のいずれでもよい。除去剤の段階では、構成物(特定金属酸化物、Mgハロゲン化物、特定金属ハロゲン化物、ベースハロゲン化物等)が均一的に混在していなくてもよい。なお、本明細書では、除去剤を構成する各物質、または除去方法や回収方法の実施に有効な物質を「除去材」という。「除去剤」は、そのような各物質(単体、化合物等)を配合、調合または調製等して得られた混合物または組成物である。
《その他》
(1)本明細書でいう濃度や組成は、特に断らない限り、対象物(溶湯、組成物等)の全体に対する質量割合(質量%)で示す。適宜、質量%を単に「%」で示す。
(2)本明細書でいうアルミニウム基溶湯または溶融塩層は、固液共存状態(半溶融状態)を含む。アルミニウム基溶湯は、Alが主成分(溶湯全体に対してAl含有量が50原子%超、70原子%以上さらには85原子%以上)であり、Mgを含む限り、具体的な組成を問わない。原料溶湯(Mg除去前のAl基溶湯)中のMg量は問わないが、通常、その溶湯全体に対して、10質量%以下さらには5質量%以下程度である。
(3)特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
金属酸化物と金属塩化物の660℃における標準生成自由エネルギ図である。 金属酸化物と金属臭化物の660℃における標準生成自由エネルギ図である。 Al基溶湯から溶融塩層へMgが取り込まれる機序を示すモデル図である。 導電体上に特定金属元素(例えばCu)が析出する機序を示すモデル図である。 CuClを含む溶融塩層によるMg除去工程を示す模式図と凝固物(凝固塩とAl合金)を示す写真である。 Mg濃度、Cu濃度またはMg除去効率とCuCl量の関係を示すグラフである。 MgClとCuOを含む溶融塩層によるMg除去工程を示す模式図と凝固物を示す写真である。 Mg濃度またはCu濃度とCuO量の関係を示すグラフである。 MgClとCuOが凝固物に及ぼす影響を示す写真である。 Mg濃度、Cu濃度またはMg除去効率と、ZnO量またはCuO量との関係を示すグラフである。 黒鉛棒の挿入または強撹拌によるMg除去工程を示す模式図である。 Mg濃度、Cu濃度またはMg除去効率と、黒鉛棒の挿入または強撹拌との関係を示すグラフである。 Mg除去工程(Cu回収工程)後の黒鉛棒の外観写真である。 Mg除去剤の調製工程を示す模式図である。 MgCl量およびCuO量と、凝固した混合塩の外観との関係を示す写真である。 金属フッ化物の660℃における標準生成自由エネルギ図である。 金属ヨウ化物の660℃における標準生成自由エネルギ図である。
上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。本明細書で説明する内容は、方法的な構成要素であっても物(例えば、再生Al合金(溶湯))に関する構成要素ともなり得る。
《Mg除去原理》
本発明の除去方法により、Al基溶湯からMgが除去される原理は次のように考えられる。
(1)酸化還元反応(電気化学反応)
Al基溶湯中のMgは、次のように酸化されてMg2+となり、接触界面(Al基溶湯の湯面)から溶融塩層へ溶け込む。
アノード反応:Mg → Mg2++2e- (10a)
一方、溶融塩層中にある特定金属元素(M=Cu、Zn、Mnの一種以上)の2価金属イオン(M2+)は、次のように還元され、溶融塩層内(Al基溶湯との接触界面近傍を含む)に析出する。
カソード反応:M2++2e- → M (10b)
(2)Mgハロゲン化物
特定ハロゲン元素(X=Clおよび/またはBr)は、溶融塩層中で1価ハロゲンイオン(X-)として存在するため、上述した酸化還元反応は次のように示される。
MX+Mg → M+MgX (11)
ここで、各種金属元素のハロゲン化物(塩化物と臭化物)の標準生成自由エネルギ(単に「自由エネルギ」ともいう。)は、図1Aまたは図1B(両者を合わせて「図1」という。)に示す通りである。なお、図1には、各種金属元素の酸化物の自由エネルギも併せて示した。図1に示した各自由エネルギは、Knacke O., Kubaschwski O., Hesselmann K.,“Thermochemical Properties of Inorganic Substances"(1991),SPRlNGER-VERLAGに依る。後述する図8Aと図8B(両者を合わせて「図8」という。)に示す自由エネルギについても同様である。なお、図1と図8には、660℃における各自由エネルギを示した。少なくとも660〜800℃における各自由エネルギの傾向(大小関係)は、図1および図8に示した各自由エネルギと同様な傾向となる。
図1から明らかなように、特定金属元素(M)と特定ハロゲン元素からなるハロゲン化物(特定金属ハロゲン化物)はいずれも、Mgハロゲン化物よりも自由エネルギが大きい。このため式(11)または式(10a)・式(10b)は、自由エネルギ差が負(ΔG<0)となる安定な方向、すなわち、左辺から右辺に進行する。こうしてMgは、Al基溶湯中から溶融塩層中へMg2+として取り込まれて除去される。このとき、Mg除去材である特定金属ハロゲン化物(MX)を構成していた特定金属元素は、単体(M)として析出し、例えば、上述した方法により回収され得る。
(3)Mg酸化物
特定金属元素の酸化物(特定金属酸化物)をMg除去材として溶融塩層に加えて、Al基溶湯からMgを除去することもできる。この場合、Mg(Mg2+)と特定ハロゲン元素(X-)を含む溶融塩層中で、特定金属酸化物(MO)は次のような反応をする。
MO+MgX → MX+MgO (12)
図1から明らかなように、特定金属酸化物(MO)は特定金属ハロゲン化物(MX)よりも自由エネルギが大きい。逆に、Mg酸化物(MgO)はMgハロゲン化物(MgX)よりも自由エネルギが小さい(図1Aの拡大部参照)。このため式(12)は、自由エネルギ差が負(ΔG<0)となる安定な方向、すなわち、左辺から右辺へ進行する。特にMgOは、MgXよりも自由エネルギが小さく溶融塩層中で安定であり、MgXには戻らない。こうして、溶融塩層中のMg2+はMgOとして消費(除去)される。
一方、式(12)で生成したMXは、式(11)に示すように、Mg除去材として機能し、Al基溶湯から溶融塩層へ取り込まれたMg2+をMgXとする。このMgXは、さらに式(12)に示すようにMOと反応してMgOとなる。
このような循環により、溶融塩層中のMg2+濃度は変わらず、MgXを含む溶融塩層は半永続的に使用でき、MO量(モル量)に相応して、Al基溶湯から取り込まれた分のMg2+だけがMgOとして除去する。このようにしてMgが除去される様子を、M=Cuの場合を例にとり、図2Aに模式的に示した。
このようにすれば、特定金属ハロゲン化物より安価な特定金属酸化物を用いて、Mgを低コストで除去できる。また、Al基溶湯中のMgは、安定なMgOとして溶融塩層中に取り込まれるため、特定金属酸化物を用いれば、Mgをより確実に除去できる。
(4)導電体
Al基溶湯中のMgは、既述した式(10a)で示すアノード反応と、式(10b)で示すカソード反応とを経て除去される。ここで、Al基溶湯と溶融塩層を架橋する導電体を配置すると、Al基溶湯側をアノード(極)側、溶融塩層側をカソード(極)側とする電池(ガルバニ電池)と同様な構成となる。このため、特定金属元素は、溶融塩層側にある導電体の表面上に集中して析出するようになり、特定金属元素の効率的な回収が可能となる。また、析出した特定金属元素のAl基溶湯側への混入も回避される。さらに、導電体は、式(10a)および式(10b)に示す電気化学反応を促進させ、特定金属元素の析出速度やMgの除去速度を向上させ得る。
このようにして、Mg除去と併行して、特定金属元素が導電体上に析出される様子を、M=Cuの場合を例にとり、図2Bに模式的に示した。なお、図2Bには、導電体が電極棒である場合を例示したが、導電体は他の形態でもよい。例えば、導電体は、Al基溶湯内に設けた電極と、溶融塩層内に設けた電極と、両電極を電気的に接続する導体(導線等)とからなってもよい。さらに、Al基溶湯と溶融塩層を保持する容体が、導電体を兼ねてもよい。例えば、容体自体が導電材(金属等)からなる場合でもよいし、少なくとも湯面近傍(接触界面近傍)の容体内壁に配設した導電材を導電体としてもよい。
導電体は、例えば、黒鉛、金属等の導電材からなるとよい。少なくともAl基溶湯に接触する導電体部分は、Al基溶湯に不溶であるとよい。
《特定金属元素》
図1に示した金属ハロゲン化物の自由エネルギに基づけば、特定金属元素(M)は、Cu、ZnおよびMn以外でもよい。つまり、特定金属元素がTi、Al、Si、Fe、Ni等でも、式(11)に示した電気化学反応は進行し得る。
但し、式(12)に示した金属酸化物(MO)の溶融塩層中における溶解反応の進行も考慮すれば、特定金属元素(M)はCu、ZnまたはMnの一種以上であると好ましい。これは、図1に併記した金属酸化物の自由エネルギからもわかる。特に、特定金属元素がCuであると、Cuハロゲン化物はCu酸化物よりも自由エネルギが相応に小さく、溶融塩層中において、式(12)に示す反応が進行し易い。
なお、図1に示した金属酸化物の自由エネルギは、CuO、ZnO、MnO等を対象としている。従って、特定金属酸化物はCuO、ZnOまたはMnOの一種以上であるとよい。
《特定ハロゲン元素》
ハロゲン元素(X)として、Cl、Br以外に、F、Iもあり得る。しかし、図8Aに示すように、MgFはその自由エネルギが非常に小さくて安定である。このため、X=Fのとき、式(12)に示す反応が溶融塩層中で進行し難い。
逆に、図8Bに示すように、特定金属元素のヨウ化物は自由エネルギが大きく、特定金属酸化物との自由エネルギ差が小さい。このため、X=Iのとき、式(12)に示す反応が溶融塩層中で安定的に進行するとは限らない。このような事情を考慮して、特定ハロゲン元素(X)はClおよび/またはBrであると好ましい。
《溶融塩層の基材/ベースハロゲン化物》
溶融塩層は、例えば、安定な金属ハロゲン化物を基材とするとよい。例えば、図1に示すように、Mgハロゲン化物またはそれよりも自由エネルギが小さい金属元素(Ca、Na、Li、Sr、K、Cs、Ba等の一種以上)のハロゲン化物を、溶融塩層の基材(ベースハロゲン化物)とするとよい。特に、Naおよび/またはKのハロゲン化物は、安価で安定しているため、ベースハロゲン化物として好適である。さらにベースハロゲン化物は、特定ハロゲン元素からなると好適である。なお、溶湯と溶融塩の接触面積は広いほど反応効率が向上するが、溶融塩層は必ずしも溶湯の表面全体を覆っていなくてもよい。
《処理工程/除去工程》
処理工程により、Al基溶湯の湯面に接触して、その湯面の少なくとも一部を覆う溶融塩層が形成される。所望の成分に調製または維持された溶融塩層とAl基溶湯が直接接触した状態が保持されることにより、Al基溶湯から溶融塩層へMgが取り込まれて除去される(除去工程)。
Mg除去材(MX、MO)が溶融塩層中に十分にあるとき、その保持時間が長くなるほど、Al基溶湯中のMg濃度も低減され得る。但し、過長な保持時間は非現実的である。そこで保持時間は、例えば、1〜180分間さらには15〜90分間とするとよい。さらにいえば、各処理(工程)は、バッチ式に限らず、連続してなされてもよい。
溶融塩層は、Al基溶湯の湯面全体を覆い、Al基溶湯からMgを十分に取り込める量(厚さ)があるとよい。例えば、溶融塩層の厚さは3mm以上であるとよい。
溶融塩層の調製は、例えば、次のようになされる。先ず、ベースハロゲン化物(基材)を溶解したベース溶融塩層をAl基溶湯上に形成する。密度差により、ベース溶融塩層はAl基溶湯の上層側になる。次に、このベース溶融塩層へMg除去材(特定金属ハロゲン化物、Mgハロゲン化物、特定金属酸化物等)を添加して、所望する物質(元素、イオン等)を含む溶融塩層を調製する。
Mg除去材の溶融塩層への補給は、Al基溶湯に含まれるMg濃度やAl基溶湯の処理量等を考慮して、一時的、断続的または継続的になされるとよい。導電体がAl基溶湯と溶融塩層の間(少なくとも接触界面付近)に配設される場合、Mg除去材の補給は、導電体の周囲(付近)になされるとよい。これにより、特定ハロゲン元素の回収とMg除去がより効率的になされる。
Mgを含むAl基溶湯に溶融塩層を接触させた。その接触後の各凝固物(Al合金、凝固塩)を観察すると共に、Al合金中のMg濃度を測定した。このような具体例に基づいて本発明をより詳しく説明する。
《実験の概要》
(1)Al基溶湯
Mgの除去対象となるAl基溶湯(原料溶湯)として、成分組成がAl−0.87%MgまたはAl−0.7%Mgとなる溶湯を調製した。Mg濃度は、溶湯全体に対するMgの質量割合である。溶湯となる金属原料には、市販の純Alと純Mgを用いた。各試料毎に用いたAl基溶湯量はいずれも80gとした。
(2)溶融塩
溶融塩の原料として、次のハロゲン化物および酸化物を用意した。いずれの原料にも市販の試薬を用いた。
ベースハロゲン化物 :NaClおよびKCl(モル比1:1の混合塩)
特定金属ハロゲン化物 :CuCl
特定金属酸化物 :CuO(酸化銅(II))またはZnO(酸化亜鉛)
なお、各試料毎に用いたベースハロゲン化物量はいずれも29.6gとした。
(3)溶融
Al基溶湯と溶融塩層の調製は、いずれも、坩堝であるタンマン管(株式会社ニッカトー製SSA−H−T6)内で、各原料を加熱して行った。加熱は、タンマン管(内径:φ34mm、外径:φ40mm、高さ:150mm)を収容する電気炉(丸炉)を用いて行った。溶解時の設定温度:700℃または750℃、保持時の設定温度:700℃、720℃または730℃のいずれかとした。
(4)分析・観察
分析・観察は、Al基溶湯と溶融塩を円筒状の金型(ステンレス製分析型)へ注入した後、大気中で自然冷却して凝固させた円盤状の凝固物を用いて行った。本実施例では、便宜上、Al基溶湯の凝固体を「Al合金」、溶融塩の凝固体を「凝固塩」という。
Al合金の化学成分(Mg濃度、Cu濃度)は、蛍光X線分光法により分析した。Al合金の各組成(濃度)は、Al合金全体に対する質量割合である。Al合金は外観を目視で観察した。凝固塩はそれぞれの色彩を目視で観察した。
《実施例1》
ベースハロゲン化物からなるベース溶融塩(層)に、特定金属ハロゲン化物(Mg除去材)を添加した溶融塩層によるMg除去効率を、次のようにして調べた。
(1)処理
先ず、坩堝(タンマン管)に秤量した金属原料(Al−0.87%Mg:80g)とベースハロゲン化物(NaClとKClの混合塩:29.6g)を入れて、設定温度:750℃として加熱した。こうして図3Aに示すように、Al基溶湯とベース溶融塩層を形成した。Al基溶湯とベース溶融塩層は、密度(比重)差により二層分離し、低密度なベース溶融塩層がAl基溶湯の上層側となってAl基溶湯の湯面全体を覆った。
次に、そのベース溶融塩層上へCuClを0.5gまたは2gを添加して、溶融塩層を調製した。その添加後のまま、坩堝の設定温度を730℃として30分間保持した。得られたAl基溶湯と溶融塩層をそれぞれ分析型内で凝固させて、Al合金と凝固塩とした。
(2)評価
処理工程後の凝固塩は白色であった。その凝固塩は、MgCl、KClおよびNaClの混合塩になったためと考えられる。
Al合金中のMg濃度とCu濃度を図3Bに示した。Mg濃度の実測値は、ほぼ、CuClの添加量から求まる計算値(化学量論)通りに減少した。こうして本実施例の場合、Mg除去効率がほぼ100%となることが確認された。
なお、Mg濃度の計算値は、式(11)から定まるモル比に基づいて求めた。Mg除去効率(%)は、その計算値から求まるMg濃度の減少量(ΔD)に対する、実測値から求まったMg濃度の減少量(ΔD)の割合(100×ΔD/ΔD)である。濃度の計算値やMg除去効率の算出方法は、以下の実施例でも同様である。
Al合金中のCu濃度は、いずれも0.05%以下であった。このことから、Mg除去材に含まれるCu(特定金属元素)は、Al基溶湯に殆ど混入せず、溶融塩層中(Al基溶湯との境界付近(接触界面近傍)を含む)に留まることもわかった。
《実施例2》
ベースハロゲン化物からなるベース溶融塩層に、Mgハロゲン化物および特定金属酸化物(Mg除去材)を添加した溶融塩層によるMg除去効率を、次のようにして調べた。
(1)処理
先ず、坩堝(タンマン管)に秤量した金属原料(Al−0.7%Mg:80g)とベースハロゲン化物(NaClとKClの混合塩:29.6g)を入れて、設定温度:750℃として加熱した。こうして図4Aに示すように、Al基溶湯に接したベース溶融塩層が形成された。この点は実施例1の場合と同様である。
次に、そのベース溶融塩層上へ、MgClを0.43g(0.0045モル)添加し、坩堝の設定温度を730℃として10分間保持した。
その後、さらにCuOを添加して、同温度(730℃)で保持した。このとき、添加したCuO量と保持時間を種々変更した。各保持時間中、坩堝を3秒程度回転させる程度の軽い撹拌を3回(初期、中期、後期)に分けて行った。
こうしてCuO量と保持時間を種々変更して調製したAl基溶湯と溶融塩層から、Al合金と凝固塩をそれぞれ得た。
(2)評価
各Al合金中のMg濃度とCu濃度を図4Bにまとめて示した。図4Bから明らかなように、ベース溶融塩層へ添加したCuO量の増加に伴い、Al合金のMg濃度は減少した。但し、CuO量が増加するほど、Mg濃度の低減には長時間を要した。また、Mg濃度の実測値がその計算値よりも高くなった理由は、副反応生成物(Al、MgAl)にCuOが消費されてしまったためと考えられる。
本実施例でも、Al合金中のCu濃度はいずれも0.05%以下であった。つまり、Mg除去材に含まれるCuはAl基溶湯に殆ど混入せず、溶融塩層に留まることが確認された。
(3)MgClの影響
ベース溶融塩層へ、MgCl:0.43gとCuO:2.0gを添加して、保持時間を10分間とした試料Aと、そのMgClのみを添加した試料Bと、そのCuOのみを添加した試料Cとについて、凝固塩(溶融塩の上澄み部分)とAl合金と坩堝の底部をそれぞれ観察した様子を図4Cにまとめて示した。
試料Aの凝固塩は灰色または黒色であった。これは、Al基溶湯から取り込まれたMgがMgO(黒色)として除去され、溶融塩層中に留まったためである。
そのAl合金には析出したCu(赤色)が観られた。CuはAl合金よりも密度が大きく、融点も高い。しかし、溶融塩層とAl基溶湯の接触界面付近で微細に析出したために、CuはAl基溶湯中に混入しなかったと考えられる。
試料Bの凝固塩はほぼ白色であった。そのAl合金にはCuの析出等が観られなかった。これらから、Mg除去材であるCuOが添加されないと、式(12)に示した反応が進行せず、Mgが除去されないことが確認された。
試料Cのように、MgClが添加されない場合でも、凝固塩の変色やAl合金上へのCu析出が観られた。但し、試料Aと比較すると、その程度は僅かであり、未反応なCuOが坩堝の底部に多く残存した。これらから、MgClを予め溶融塩層に添加しておくと、式(12)に示す反応が促進され、Mgが効率的に除去されることがわかった。
《実施例3》
(1)処理
実施例2で用いたCuOをZnOに変更して、実施例2と同様な処理を行った。このとき、Al基溶湯には、Al−0.7%Mg溶湯(80g)を用いた。溶解時と保持時の設定温度はいずれも700℃とした。ZnOを添加した後の保持時間は30分間とした。その他は、実施例2の場合と同様とした。
(2)評価
ZnOを添加した溶融塩層に接触したAl基溶湯から得られたAl合金のMg濃度とZn濃度を測定した。その結果を図5に示した。図5には、CuOを用いた実施例2のAl合金のMg濃度とCu濃度も併せて示した。
図5から明らかなように、ZnOを用いても、Al基溶湯からMgを除去できた。但しCuOを用いたときよりも、Mg除去効率は低くなった。図1Aに示したように、ZnはCuよりも、酸化物と塩化物との自由エネルギ差が小さく、式(12)の進行が緩やかなためと考えられる。
また、ZnOを用いたときのZn濃度は、CuOを用いたときのCu濃度よりも高くなった。Znの融点(約420℃)はCuの融点(約1084℃)よりも低いため、溶融塩層内で析出したZn(式(11)参照)の一部がAl基溶湯中へ混入したためと考えられる。
《実施例4》
(1)処理
実施例2と同様に、設定温度:750℃としたベース溶融塩層へMgCl:0.43g添加し10分間保持した後、さらにCuO:2gを添加した。この後、図6Aに示すように、坩堝内に黒鉛棒(導電体)を挿入し、設定温度:730℃として30分間保持した。
比較例として、図6Aに示すように、CuOの添加後、黒鉛棒の挿入に換えて溶融塩層とAl基溶湯を保護管(セラミックス製)で強撹拌した試料も調製した。強撹拌は、CuOの添加後、10分間経過後、20分間経過後および30分間経過後にそれぞれ行った。
(2)評価
各処理後のAl基溶湯から得られたAl合金のMg濃度とCu濃度をそれぞれ測定した。その結果を図6Bに示した。図6Bから明らかなように、黒鉛棒の挿入により、Mg除去効率が向上し、Cu濃度も低減した。これは、強撹拌した場合との比較のみならず、図4Bや図5に示した場合と比較しても明らかである。式(11)に示した反応が黒鉛棒(導電体)上に集約され、Al基溶湯と溶融塩層の接触界面付近におけるAlの酸化等が抑制されたためと考えられる。
なお、処理中に強撹拌すると、溶融塩層に取り込まれたMg(Mg2+、MgO)や析出したCuがAl基溶湯に混入し易くなり、Mg濃度やCu濃度が相対的に高くなり易いことも確認された。
CuOの添加から30分間経過後に、Al基溶湯および溶融塩層から抜き出した黒鉛棒の写真を図6Cに示した。図6Cから明らかなように、溶融塩層側、特にその下部(Al基溶湯との境界上部)に、Cuが多く析出していた。このように、黒鉛棒(導電体)を配置してMgの除去工程を行うと、カソード反応とアノード反応が生じる領域を分離(制御)して、特定金属元素(Cu)の回収工程も効率的に行えることがわかった。なお、図6Cに示した黒鉛棒のAl基溶湯側にあるCuは、黒鉛棒を抜き出す際に付着したものである。
《実施例5》
ベースハロゲン化物(NaCl+KCl)、Mgハロゲン化物(MgCl)および特定金属酸化物(CuO)を調合して、溶融塩層の調製に用いれる種々の混合塩(固体/Mg除去剤)を製造した。具体的には次の通りである。なお、特に断らない限り、各混合塩は、実施例2で示した溶融塩層の凝固塩と同様に製造した。
(1)処理
図7Aに示すように、坩堝(前記タンマン管)に秤量したNaClとKClの混合塩(29.6g)を入れて、設定温度:750℃で加熱した。こうして得られたベース溶融塩層上へ、MgClおよび/またはCuOを添加した。
MgClの添加量は、0g(添加なし)または0.43g(0.0045モル)とした。CuOの添加量は、0g(添加なし)、0.05g、0.1g、0.36g(0.0045モル)のいずれかとした。CuOの添加は、MgClを添加して10分間保持した後に行った。CuOの添加後、さらに10分間保持した。保持時の設定温度は、いずれも720℃とした。こうして複数の溶融塩を調製した。十分に撹拌した各溶融塩を、分析型へ注湯し、大気中での自然冷却により凝固させた。得られた円盤状の各混合塩の外観を、図7Bにまとめて示した。
(2)評価
図7Bに示した各混合塩の色彩から次のことがわかる。先ず、MgCl:0.43g、CuO:0g(添加なし)の混合塩(#10)は白色であった。CuOの添加量の増加と共に、混合塩(#11〜#13)は灰色から黒色へ変化した。黒色はMgOによる。
次に、MgCl:0g(添加なし)、CuO:0.36gの混合塩(#20)も、基本的に無色透明であった。混合塩中に観えるやや黄色部分は、CuOが極微量溶けてできたCu2+による。このとき、CuOの大半はるつぼの内壁面に付着していた。MgClとCuOのモル比が1:1である混合塩(#13)は黒色であった。
MgClを添加しなかった混合塩(#20)と、他の混合塩を比較すると明らかなように、Mg2+の存在によりCuOの溶解性が増すことがわかる。つまり式(12)に示す反応が促進される。従って、Mgハロゲン化物と特定金属酸化物を添加して得られた混合塩は、Mg除去剤(金属除去剤)として有効である。
ちなみに、特定金属酸化物が、化学量論比でMg2+(Mgハロゲン化物)より少ないとき、上述のようにして得られる混合塩(金属除去剤)は、実質的に、ベースハロゲン化物、Mgハロゲン化物、特定金属ハロゲン化物およびMg酸化物からなる。特定金属ハロゲン化物(CuCl)は、実施例1で示した通り、Mg除去に寄与する。Al基溶湯からMgをさらに除去する場合、その金属除去剤を用いて形成された溶融塩層へ、特定金属酸化物(CuO等)が随時補給されるとよい。
以上のことから、本発明の金属除去方法によれば、Al基溶湯中からMgを効率的に除去できる。また、本発明の金属回収方法によれば、Mgを除去する際に用いた特定金属元素を効率的に回収することもできる。さらに、本発明の金属除去剤を用いると、Mgを除去する際に用いる溶融塩層を効率的に形成できる。

Claims (9)

  1. Mgを含むアルミニウム基溶湯に接触して該アルミニウム基溶湯の湯面の少なくとも一部を覆う溶融塩層を形成する処理工程を備え、
    該溶融塩層は、ClまたはBrの一種以上である特定ハロゲン元素とCu、ZnまたはMnの一種以上である特定金属元素とを含み、
    該アルミニウム基溶湯側から該溶融塩層側へMgを取り込んで除去する金属除去方法。
  2. 前記特定金属元素は、酸化物として前記溶融塩層に補給される請求項1に記載の金属除去方法。
  3. 前記溶融塩層は、Mgを含む請求項1または2に記載の金属除去方法。
  4. 前記アルミニウム基溶湯と前記溶融塩層を架橋する導電体を配置してなされる請求項1〜3のいずれかに記載の金属除去方法。
  5. 前記導電体は、少なくとも前記アルミニウム基溶湯と前記溶融塩層の接触界面付近に配設され、
    前記特定金属元素は、該溶融塩層側から該導電体の周囲へ補給される請求項4に記載の金属除去方法。
  6. 前記特定金属元素は、Cuである請求項1〜5のいずれかに記載の金属除去方法。
  7. 前記溶融塩層は、Naおよび/またはKのハロゲン化物を基材とする請求項1〜6のいずれかに記載の金属除去方法。
  8. Mgを含むアルミニウム基溶湯に接触して該アルミニウム基溶湯の湯面の少なくとも一部を覆う溶融塩層を形成する処理工程を備え、
    該溶融塩層は、ClまたはBrの一種以上である特定ハロゲン元素とCu、ZnまたはMnの一種以上である特定金属元素とを含み、
    少なくとも該アルミニウム基溶湯と該溶融塩層の接触界面付近に、該アルミニウム基溶湯と該溶融塩層を架橋する導電体を配置し、該導電体上に該特定金属元素を析出させて回収する金属回収方法。
  9. 請求項1〜7のいずれかに記載の金属除去方法と併行してなされる請求項8に記載の金属回収方法。
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