JP2021109994A - 金属粉末射出成形用組成物とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
特に、混練工程において、各々の高分子化合物並びに低分子化合物を各化合物の融点以上の温度において、金属粉末と混ぜ合わせることにより、金属粉末射出成形材料を得て、成形を行っている。
しかしながら、混練工程においては高融点化合物である高分子化合物と低分子化合物が均一分散することは困難であり、高分子化合物が数十ミクロン〜数百ミクロン程度の塊として残留することが多い。このことから、射出成形時において低分子化合物は分離し、金型に付着することが多く、長時間成形する場合において、金型のガス逃げ部分、突き出しピンの部分にワックス等の低融点化合物が滞留し、金型の動きを妨げ、最悪の場合には金型を破損したり、成形体中にガス逃げができないガスが滞留し、成形体にウエルド・気泡が発生する不具合が生じる。
また、脱脂、焼結時においては膨れ並びに数十〜数百ミクロン程度の気泡が生じることがある。
実際に、ポリオキシメチレン(POM)にポリオレフィン、ワックスを添加し、脱脂変形の少ない製品を加熱により脱脂する方法(特許文献1参照)がある。しかしながら、この方法で得られた、成形体並びに焼結体においては上記に示す欠陥が生じることが問題になっている。特にPOMを有機バインダとして用いることで、脱脂時の変形を小さくできるものの、有機バインダとしてPOMに併せてオレフィン樹脂を添加するため、加熱混練中にオレフィン樹脂が相分離を生じ、混練後の射出成形用組成物にオレフィン樹脂が析出し、成形時に低融点化合物が相分離を生じやすく、脱脂・焼結時に析出したオレフィン樹脂が原因となり、膨れ・気泡が発生しやすくなる。
成分(a)の添加量は10〜70体積%であり、望ましくは15〜60体積%であり、さらに望ましくは20〜50体積%である。成分(a)の添加量が10体積%未満の場合には脱脂時に変形が大きく発生する。また、添加量が70体積%よりも多い場合には脱脂時において分解ガスが急激に発生し、クラックが生じる。
成分(b)の添加量は10〜40体積%であり、望ましくは15〜35体積%であり、さらに望ましくは20〜30体積%である。成分(b)の添加量が10体積%未満の場合には高分子化合物成分(a)と高分子化合物成分(c)の相溶性が不十分となり、脱脂時において、膨れ・気泡が発生しやすくなる。また、添加量が40体積%よりも多い場合には脱脂時の加熱分解が不十分となり、残留物が炭素化して残留しやすくなる。
成分(c)の添加量は20〜60体積%であり、望ましくは25〜55体積%であり、さらに望ましくは30〜50体積%である。
成分(c)の添加量が20体積%未満の場合には射出成形体のじん性が低下しクラックが発生しやすくなる。また、添加量が60体積%よりも多い場合には脱脂時の変形が大きくなる。
更に成形体の流動性、靭性をさらに高めるためにアモルファスポリオレフィン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル共重合体等のオレフィン系樹脂を添加してもよい。
押出機により得られたストランドは水冷により固化され、ペレタイザーにより、ペレット化する。
本発明の射出成形用組成物として、焼結可能な金属粉末に、樹脂成分(A)、低融点化合物(B)からなる有機バインダをバッチタイプもしくは連続タイプの混練機を用いて160℃〜180℃の温度で1〜3時間程度混練し、これを数ミリの大きさに粉砕し、射出成形を行う。得られた射出成形体は不活性ガス中で500℃〜800℃で脱脂を行い、以後900℃〜1500℃の温度で不活性ガス中、還元ガス中もしくは真空中で焼結を行う。
脱脂後の成形体は900〜1500℃において焼結することにより、変形・膨れ及び割れ等の欠陥がなく、バインダからの残留カーボンが非常に少ない焼結体を短時間に得ることができる。
樹脂成分(A)として、成分(a)であるポリオキシメチレン樹脂(旭化成 テナックC9520)、成分(b)であるエチレングリシジルメタクリレート樹脂(住友化学 ボンドファースト BF-7B)並びに成分(c)であるポリプロピレン樹脂(住友ノーブレン W531D)を二軸押出機(東芝機械製TEM-26SX)を用いて、スクリュ温度を180℃〜200℃に設定、スクリュ回転速度を500rpmに設定し、ペレットを作成した。
次に加圧ニーダー中に、まず、樹脂成分(A)を投入し、180℃で溶融させた後、パラフィンワックス(低融点化合物B 融点60℃)、カルナバワックス(低融点化合物B)及びモンタン酸ワックス(低融点化合物B Licowax E)を投入し、均一に溶融させた後、SUS316L粉末(平均粒径:7μm)を投入して60分間混練し、取り出した後混練物を粉砕し、射出成形用組成物を得た。次に、成形温度180℃の条件で射出し、図1に記載の厚さ3mm、幅10mm、長さ60mmの成形体を得た。
成形用組成物
SUS316L粉末 58体積%
樹脂成分(A) 21体積%
低融点化合物(B) 21体積%
バインダ組成
樹脂成分(A)
(a)ポリオキシメチレン 30.0体積%
(b)エチレングリシジルメタクリレート 25.0体積%
(c)ポリプロピレン 45.0体積%
低融点化合物(B)
パラフィンワックス 85.0体積%
カルナバワックス 7. 0体積%
モンタン酸ワックス 8.0体積%
樹脂成分(A)として、成分(a)であるポリオキシメチレン樹脂(ポリプラスチックス NW02)、成分(b)であるエチレングリシジルメタクリレート樹脂(住友化学 ボンドファースト BF-7M)並びに成分(c)であるポリプロピレン樹脂(プライムポリマー J108M)を二軸押出機(東芝機械製TEM-26SX)を用いて、スクリュ温度を180℃〜200℃に設定、スクリュ回転速度を500rpmに設定し、ペレットを作成した。
次に加圧ニーダー中に、まず、樹脂成分(A)を投入し、180℃で溶融させた後、パラフィンワックス(低融点化合物B 融点64℃)、カルナバワックス(低融点化合物B)及びポリエチレンワックス(低融点化合物B ネオワックス)を投入し、均一に溶融させた後、SUS316L粉末(平均粒径:7μm)を投入して60分間混練し、取り出した後混練物を粉砕し、射出成形用組成物を得た。次に、成形温度180℃の条件で射出し、図1に記載の厚さ3mm、幅10mm、長さ60mmの成形体を得た。
成形用組成物
SUS316L粉末 58体積%
樹脂成分(A) 21体積%
低融点化合物(B) 21体積%
バインダ組成
樹脂成分(A)
(a)ポリオキシメチレン 30.0体積%
(b)エチレングリシジルメタクリレート 25.0体積%
(c)ポリプロピレン 45.0体積%
低融点化合物(B)
パラフィンワックス 85.0体積%
カルナバワックス 7. 0体積%
ポリエチレンワックス 8.0体積%
樹脂成分(A)として、成分(a)であるポリオキシメチレン樹脂(ユピタール F40−03)、成分(b)であるエチレングリシジルメタクリレート樹脂(ロターダ AX8900)並びに成分(c)であるポリエチレン樹脂(ハイゼックス 1300J)を二軸押出機(東芝機械製TEM-26SX)を用いて、スクリュ温度を180℃〜200℃に設定、スクリュ回転速度を500rpmに設定し、ペレットを作成した。
次に加圧ニーダー中に、まず、樹脂成分(A)を投入し、180℃で溶融させた後、パラフィンワックス(低融点化合物B 融点64℃)、カルナバワックス(低融点化合物B)及びポリエチレンワックス(低融点化合物B ネオワックス)を投入し、均一に溶融させた後、SUS316L粉末(平均粒径:7μm)を投入して60分間混練し、取り出した後混練物を粉砕し、射出成形用組成物を得た。次に、成形温度180℃の条件で射出し、図1に記載の厚さ3mm、幅10mm、長さ60mmの成形体を得た。
成形用組成物
SUS316L粉末 58体積%
樹脂成分(A) 21体積%
低融点化合物(B) 21体積%
バインダ組成
樹脂成分(A)
(a)ポリオキシメチレン 28.0体積%
(b)エチレングリシジルメタクリレート 25.0体積%
(c)ポリエチレン 47.0体積%
低融点化合物(B)
パラフィンワックス 80.0体積%
カルナバワックス 10. 0体積%
ポリエチレンワックス 10.0体積%
加圧ニーダー中に樹脂成分(A)として、成分(a)であるポリオキシメチレン樹脂(旭化成 テナックC9520)、成分(b)であるエチレングリシジルメタクリレート樹脂(住友化学 ボンドファースト BF-7B)並びに成分(c)であるポリプロピレン樹脂(住友ノーブレン W531D)を用いて、180℃で溶融させた後、パラフィンワックス(低融点化合物B 融点60℃)、カルナバワックス(低融点化合物B)及びモンタン酸ワックス(低融点化合物B Licowax E)を投入し、均一に溶融させた後、SUS316L粉末(平均粒径:7μm)を投入して60分間混練し、取り出した後混練物を粉砕し、射出成形用組成物を得た。次に、成形温度180℃の条件で射出し、図1に記載の厚さ3mm、幅10mm、長さ60mmの成形体を得た。
成形用組成物
SUS316L粉末 58体積%
樹脂成分(A) 21体積%
低融点化合物(B) 21体積%
バインダ組成
樹脂成分(A)
(a)ポリオキシメチレン 30.0体積%
(b)エチレングリシジルメタクリレート 25.0体積%
(c)ポリプロピレン 45.0体積%
低融点化合物(B)
パラフィンワックス 85.0体積%
カルナバワックス 7. 0体積%
モンタン酸ワックス 8.0体積%
加圧ニーダー中に、樹脂成分(A)として、成分(a)であるポリオキシメチレン樹脂(ポリプラスチックス NW02)、成分(b)であるエチレングリシジルメタクリレート樹脂(住友化学 ボンドファースト BF-7M)並びに成分(c)であるポリエチレン樹脂(ハイゼックス 1300J)を用いて、180℃で溶融させた後、パラフィンワックス(低融点化合物B 融点64℃)、カルナバワックス(低融点化合物B)及びポリエチレンワックス(低融点化合物B ネオワックス)を投入し、均一に溶融させた後、SUS316L粉末(平均粒径:7μm)を投入して60分間混練し、取り出した後混練物を粉砕し、射出成形用組成物を得た。次に、成形温度180℃の条件で射出し、図1に記載の厚さ3mm、幅10mm、長さ60mmの成形体を得た。
成形用組成物
SUS316L粉末 58体積%
樹脂成分(A) 21体積%
低融点化合物(B) 21体積%
バインダ組成
樹脂成分(A)
(a)ポリオキシメチレン 30.0体積%
(b)エチレングリシジルメタクリレート 25.0体積%
(c)ポリエチレン 45.0体積%
低融点化合物(B)
パラフィンワックス 85.0体積%
カルナバワックス 7. 0体積%
ポリエチレンワックス 8.0体積%
実施例1〜3及び比較例1〜2より得られた射出成形体を脱脂炉内に設置し、窒素ガスを室温から50℃/hrの昇温速度で150℃まで昇温した。以後、窒素ガス雰囲気で150℃〜200℃までを昇温速度30℃/hrで昇温し1時間保持し、200℃から400℃までを昇温速度30℃/hrで昇温後、400℃から600℃までを120℃/hrで昇温後、炉冷した(脱脂加熱時間:合計約15時間)。脱脂を終えた成形体はアルゴン雰囲気下で室温から200℃/hrで徐々に昇温し、最高温度1350℃で2時間保持し、焼結を行った。実施例1〜3においては焼結体に膨れ、クラックのない健全な焼結密度97%以上の焼結体が得られた。しかしながら、比較例1,2においては焼結体内部に50〜100ミクロン程度の気泡が生じ、焼結密度においても96%以下であった。
図2(SEM写真)は実施例1におけるバインダの混合状況を示す。また、図3(SEM写真)には比較例1のバインダ混合状況を示す。実施例1ではバインダは均一に溶融し分散していることが確認されたが、比較例1ではPPが繊維状に析出しており、これが焼結時に膨れ、気泡の原因になったと考えられる。
さらに、有機バインダ成分を種々変更して実験を行った。用いた有機バインダの組成を表1に、射出成形用組成物の組成と結果を表2に示す。なお、混練の条件、脱脂の条件並びに焼結の条件は実施例1〜3に準じて行った。成形体の肉厚については図1に記載の3mmで行った。
有機バインダ成分表(体積%)
樹脂成分(A)
ポリオキシメチレン:POM(ポリプラスチックス NW02)
エチレングリシジルメタクリレート:EGMA(住友化学 ボンドファースト BF-7B)
ポリプロピレン:PP(プライムポリマー J108M)
ポリエチレン:PE(ハイゼックス 1300J)
低融点化合物(B)
モンタン酸ワックス:Mwax、カルナバワックス:Cwax
パラフィンワックス:Pwax、ポリエチレンワックス:PEWax
樹脂成分(A)として、成分(a)であるポリオキシメチレン樹脂(旭化成 テナックC9520)、成分(b)であるエチレングリシジルメタクリレート樹脂(住友化学 ボンドファースト BF-7B)並びに成分(c)ではないポリスチレン樹脂(PSJ 679)を二軸押出機(東芝機械製TEM-26SX)を用いて、スクリュ温度を180℃〜200℃に設定、スクリュ回転速度を500rpmに設定し、ペレットを作成した。
次に加圧ニーダー中に、まず、樹脂成分(A)を投入し、180℃で溶融させた後、パラフィンワックス(低融点化合物B 融点60℃)、カルナバワックス(低融点化合物B)及びモンタン酸ワックス(低融点化合物B Licowax E)を投入し、均一に溶融させた後、SUS316L粉末(平均粒径:7μm)を投入して60分間混練し、取り出した後混練物を粉砕し、射出成形用組成物を得た。次に、成形温度180℃の条件で射出し、図1に記載の厚さ3mm、幅10mm、長さ60mmの成形体を得た。
成形用組成物
SUS316L粉末 58体積%
樹脂成分(A) 21体積%
低融点化合物(B) 21体積%
バインダ組成
樹脂成分(A)
(a)ポリオキシメチレン 30.0体積%
(b)エチレングリシジルメタクリレート 25.0体積%
(c)ポリスチレン 45.0体積%
低融点化合物(B)
パラフィンワックス 85.0体積%
カルナバワックス 7. 0体積%
モンタン酸ワックス 8.0体積%
樹脂成分(A)のうち、成分(c)に該当しないポリスチレン樹脂を用いた場合には、図4(SEM写真)に示す通り、成形体にクラックが生じ、界面にポリスチレン樹脂が分離析出していることが確認された。このことから成分(c)にはポリオレフィン樹脂を用いることにより、均一な有機バインダ組成になることが写真1に示す通り確認された。
更に成形体の流動性、靭性をさらに高めるためにアモルファスポリオレフィン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル共重合体等のオレフィン系樹脂を添加してもよい。
Claims (6)
- 有機バインダを構成する成分として、高分子化合物にa:ポリオキシメチレン、bエチレングリシジルメタクリレート共重合体、c:ポリプロピレンであり、これらa,b,cを加熱押出機により180℃〜200℃の条件で得られた樹脂(A)を用い、樹脂(A)における高分子化合物組成比がa:10〜70体積%、b:10〜40体積%、c:20〜60体積%とすることを特徴とする焼結可能な粉末の射出成形用組成物。
- 有機バインダの添加量において樹脂(A)を30〜70体積%とし、(B)として融点が120℃以下の有機化合物30〜70体積%を焼結可能な金属粉末に添加することを特徴とする請求項1記載の射出成形用組成物。
- 前記樹脂(A)における高分子化合物の成分(a)ポリオキシメチレン(POM)がポリオキシメチレンのホモポリマーもしくはコポリマーからなるPOM樹脂及び、予めPOMにオレフィン樹脂をアロイ化させたPOMから選ばれた一種もしくは複数種類からなる請求項1に記載の射出成型用組成物。
- 前記樹脂(A)における高分子化合物の成分(b)のエチレングリシジルメタクリレート共重合体がエチレングリシジルメタクリレート樹脂(EGMA)、エチレン−アクリル酸エステル−GMA(グリシジルメタクリレート)(EGMA-MA)、エチレン−ビニルアセテート−GMA(グリシジルメタクリレート)(EGMA-VA)から選ばれる一種以上の物質からなることを特徴とする請求項1または2記載の射出成形用組成物。
- 前記成分(b)の熱可塑性樹脂がポリプロピレン、ポリエチレンからなる群から選ばれる一種以上の物質からなることを特徴とする請求項1または2記載の射出成形用組成物。
- 前記成分(c)の有機化合物が、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、フタル酸エステル、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、モンタン系ワックス、ウレタン化ワックス、無水マレイン酸変性ワックス、及びポリグリコール系化合物からなる群から選ばれる一種以上の物質からなることを特徴とする請求項1または2記載の射出成形用組成物。
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