JP2021102338A - 万年筆およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】金合金製のペン先を具備した万年筆に相当するソフトな筆感と優れた耐食性に加えて、優れた耐久性をも兼ね備えた万年筆と、その製造方法の提供。【解決手段】金属製のペン先103を具備してなる万年筆100であって、ペン先103の一部または全てが、質量比でCo 30.9〜37.2%、Ni 31.4〜33.4%、Cr 19.5〜20.5%、Mo 9.5〜10.5%、Mn 0.1〜0.5%、Ti 0.3〜0.7%、Fe 1.1〜2.1%、Nb 0.8〜1.2%、希土類金属0.01〜0.02%、および不可避不純物からなるCo−Ni基合金で構成される。【選択図】図1

Description

本発明は万年筆に関するものである。より詳細には、特定の組成を有する合金からなり、かつ特定の硬度を有するペン先を具備した万年筆に関する。さらに本発明は、その万年筆の製造方法にも関する。
万年筆は古くから使われている筆記具である。万年筆は、軸筒内にインキタンクを収蔵し、筆記時にそのインキタンクからペン先にインクを供給し、ペン先から紙面にインキを供給することで筆跡を形成することができるものである。
ペン先は、筆記時に紙面と接触する部分であるペンポイントと、そのペンポイントを担持するペン先本体とを具備する。ペンポイントは紙面との摩擦によって摩耗することが少ない材質が選ばれ、またペン先本体は、筆記時の筆圧調整機能を発揮するのに適切な硬度を有する材質が得られる。また、ペン先はインキに接触するが、インキによって変性したり、腐食を受けることが少ない、耐食性の高いものが好ましい。
このような観点から、ペン先本体には金合金が使われることが多い。金合金を用いたペン先を備える万年筆は筆感がソフトであるため、高価ではあるがニーズは高い。
一方で、金合金に代えて安価なステンレス製のペン先が使われることも多くなっている。しかし、ステンレス製ペン先は一般に筆感がハードであり、金合金のペン先のようなソフトな筆感を実現することが難しい。そして、ステンレス以外の金属材料をペン先に用いることも検討されているが、本発明者らの知る限り、インキに対して十分な耐食性を有し、かつ適切な筆感を実現できる金属材料がこれまでに提案されていない。さらに樹脂製ペン先を有する万年筆も提案され、市販されているが、その筆感は過度にソフトであり、十分に満足な筆感を実現することが難しい。また、十分な耐摩耗性を実現することが難しく、摩耗による字幅変化を抑制することも難しい。
特許第3044585号公報
上記のとおり、従来は、低いコスト、優れた筆感、およびペン先先端の高い耐摩耗性を同時に満足する万年筆を実現することが困難であった。
本発明の第一の実施形態による万年筆は、金属製のペン先を具備してなるものであって、前記ペン先の一部または全てが、質量比で
Co 30.9〜37.2%、
Ni 31.4〜33.4%、
Cr 19.5〜20.5%、
Mo 9.5〜10.5%、
Mn 0.1〜0.5%、
Ti 0.3〜0.7%、
Fe 1.1〜2.1%、
Nb 0.8〜1.2%、
希土類金属 0.01〜0.02%、および
不可避不純物
からなり、かつそのビッカース硬度が450〜800であるCo−Ni基合金で構成されていることを特徴とするものである。
本発明の第二の実施形態による万年筆は、金属製のペン先を具備してなるものであって、前記ペン先の一部または全てが、質量比で
Co 30.9〜37.2%、
Ni 31.4〜33.4%、
Cr 19.5〜20.5%、
Mo 9.5〜10.5%、
Mn 0.1〜0.5%、
Ti 0.3〜0.7%、
Fe 1.1〜2.1%、
Nb 0.8〜1.2%、
希土類金属 0.01〜0.02%、および
不可避不純物
からなるCo−Ni基合金で構成されており、前記ペン先の中心線またはその近傍にビッカース硬度が450〜800Hvである部分を有することを特徴とするものである。
また本発明による万年筆の製造方法は、
(a)質量比で
Co 30.9〜37.2%、
Ni 31.4〜33.4%、
Cr 19.5〜20.5%、
Mo 9.5〜10.5%、
Mn 0.1〜0.5%、
Ti 0.3〜0.7%、
Fe 1.1〜2.1%、
Nb 0.8〜1.2%、
希土類金属 0.01〜0.02%、および
不可避不純物
からなるCo−Ni基合金からなる板状材料をペン先本体の形状に打ち抜いて金属片を得る工程、
(b)得られた金属片を成形することでペン先本体の形状に加工する工程を含む、ペン先製造工程を含み、
さらに前記ペン先製造工程が、工程(a)の前、工程(a)と工程(b)の間、または工程(b)の後に、金属片の一部または全てを、400〜620℃で1〜3時間、熱処理する工程をさらに含むことを特徴とするものである。
本発明によれば、金合金製のペン先を具備した万年筆に相当するソフトな筆感と優れた耐食性に加えて、優れた耐久性をも兼ね備えた万年筆が提供される。この万年筆は金合金製のペン先を具備した万年筆に比較して安価に製造することができる。
一実施形態による万年筆の断面図。 一実施形態による万年筆に用いられるペン先の三面図。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
<万年筆>
本発明による万年筆は、ペン先に特徴を有している。このためペン先以外の部分は、任意の形状、任意の材料から形成することができる。ここでは、インキ収納タンクを内包した軸筒と、前記軸筒の前方部に設けられたペン先とを具備し、前記インキ収納タンクからペン先にインキを供給して筆記を可能とする万年筆に基づいて説明する。
図1は、本発明による万年筆の断面図の一例である。万年筆100は、万年筆本体101とキャップ102を具備している。そして、万年筆本体は、軸筒前方部106aと軸筒後方部106bとを具備する軸筒106と、その前方部に設けられたペン先103とを具備している。図1において、ペン先103は、軸筒106に接合されたペン心105と軸筒106とに保持されている。ペン先には、軸筒内部に収容されたインキ収納タンク107から、ペン心に設けられたインキ流通溝105aを通じてインキが供給される。
図2はペン先103の三面図である。ペン先103は、ペン先本体103aとその筆記単に溶接されたペンポイント103bとを有している。ペンポイント103bは、ペン先の摩耗を抑制するために、また筆記時の線幅を調整するために設けられている。一般に、略球形の形状を有しており、イリジウムなどを含む合金が用いられる。ペンポイントまたペン先には、図2(a)に示されたように、ペン先の先端から切り割り103cが、切り割りの端部にはハート穴103dが設けられていてもよい。そして、ペン先の軸筒側はペン先を軸筒に固定する機能を有し、ペンポイント側が、筆記時の圧力を調整する機能を有している。一般にハート穴が設けられている場合、ハート穴よりペンポイント側が弾力調整に大きく寄与することから、弾力部と呼ばれることもある。また、ペン先本体は、一般に図2(c)に示されるように湾曲している。
本発明においては、このペン先として特定のものを用いることを特徴の一つとしている。
まず、本発明に用いられるペン先は、ペン先の一部または全てが
質量比で
Co 30.9〜37.2%、
Ni 31.4〜33.4%、
Cr 19.5〜20.5%、
Mo 9.5〜10.5%、
Mn 0.1〜0.5%、
Ti 0.3〜0.7%、
Fe 1.1〜2.1%、
Nb 0.8〜1.2%、
希土類金属 0.01〜0.02%、および
不可避不純物
からなるCo−Ni基合金から構成されている。本発明者らの検討によれば、各種のCo−Ni基合金が知られているが、上記組成を満たすCo−Ni基合金は、その他のCoおよびNiを高い比率で含む合金に比較すると、インキに適した成分を含有し、場合によっては低いpH値を有するインキ組成物に対して、優れた耐食性を有していることがわかった。また、耐食性のみならず、硬さや耐久性など機械的特性においても優れている。耐食性、高強度、および高耐久性とを兼ね揃えたCo−Ni基合金は、例えば特許文献1にも記載されている。また、商品名SPRON510(セイコーインスツル株式会社製)として上市されている。
本発明者らの検討によれば、このような合金を用いることでインキ組成物に対する耐食性の高いペン先を実現できることがわかったが、この合金は、そのままでは硬度が高く、目的とするソフトな筆感が達成できないこともわかった。
本発明者らの検討によれば、上記合金のペン先の板厚を圧延などにより薄くすることによって、金合金製ペン先と同等のソフトな筆感を達成できる。通常、ペン先の板厚を薄くすると、筆感と引き換えに強度、耐久性において劣化が生じる。その点、このCo−Ni基合金で構成されたペン先は高硬度、高ヤング率を有するため、万年筆として実用レベル以上の強度、耐久性を維持することができる。さらに特定の処理条件で加熱処理することによって、このCo−Ni基合金で構成されたペン先の硬度を向上させることができることがわかった。そして、さらに驚くべきことに、特定の硬度とすることで、ソフトな筆感を達成できると同時に、より優れた機械的耐久性をも実現できる。
具体的には、本発明に用いられるペン先の一部または全てにおいて、ビッカース硬度が450〜800Hv、好ましくは500〜600Hv、より好ましくは550〜600Hvである。このような硬度を有するCo−Ni基合金製のペン先は、ペン先を構成する板材の厚さを調整することにより、ソフトな筆感を達成し得ながら、本発明により特定された範囲よりも硬度が低いペン先、例えばステンレス製ペン先や金合金製のペン先に比べても優れた強度、および耐久性を示す。一方、本発明により特定された範囲よりも硬度が高い合金、または、セラミックスや超硬合金に代表される硬質無機材料の焼結体で構成されたペン先は、一般的に硬度に比例して優れた強度、耐久性を有する。しかしながら、そのようなペン先では、ソフトな筆感を得られないばかりでなく、ペン先のしなりを得ることすら極めて困難になり、満足できる筆感を達成することも困難である。
なお、ペン先は、その部位によってビッカース硬度が異なることがある。すなわち、ペン先は必要に応じて成形、圧延、または加熱などの処理に付されることがある。これらの処理によって、ペン先の硬度は部分ごとに変化する。例えば、ペン先は筆感を調整したり、先端部にペンポイントを接合したりするために、部位ごとに厚さを変化させることがある。一般的には、ペンポイントに近い側が厚く、その反対側が薄くなる。そのような厚さの変化を実現するために圧延をすることがあるが、圧延率が高いほど、すなわち厚さを薄くするほど、硬度が高くなる傾向にある。また、ペン先はペン軸と組み合わせることを容易にするために、湾曲させることがある。このような湾曲を設ける場合には、その湾曲部の曲率半径が小さくなるほど、硬度が高くなる傾向にある。
一方、優れた筆感を達成するためには、ペン先の特定部位、特に弾性部の硬度を制御することが有効である。例えばペン先の中心線に沿った部分は、筆感に大きな影響を与える。この部分に適切な硬度を付与することによって、ペン先に適切なしなりを与えて、優れた筆感を達成できる。具体的には、ペン先の中心線またはその近傍にビッカース硬度が450〜800Hvである部分を有することが好ましく、500〜600Hvである部分を有することがより好ましく、550〜600Hvである部分を有することが特に好ましい。ここで、ペン先の中心線とは、ペン先の長さ方向、つまりペン先を万年筆に装着したときのペン軸の長さ方向に平行で、ペン先の中心となる線である。したがって、ペン先の中心線は、典型的には、ペン先本体の先端部を通る線である。また、中心線の近傍とは中心線に沿った、幅の狭い帯状の領域をいい、具体的には、中心線から1mm程度離れた部分をいう。ペン席の中心線には、一般的に切り割りが存在するが、そのような切り割りが形成された部分ではビッカース硬度の測定が困難であるので、中心線の近傍におけるビッカース硬度を測定する。
また、特定の硬度を有する部分が、中心線またはその近傍の、いずれの箇所にあるかによっても筆感は変動し得る。優れた筆感を得るためには、ペン先の弾性部に特定の硬度を有する部分があることが好ましい。一般的には、ペン先本体の先端部から後端部に向かって、好ましくは3〜7mmの部分、より好ましくは4〜6mmの部分に、ビッカース硬度が450〜800Hvである部分があることが好ましい。この特定の部分は、典型的にはハート穴よりも先端側に設けられる。
なお、本発明において、ビッカース硬度は、JIS Z 2244に示される、ビッカース硬さ試験に則して測定することができる。
また、本発明に用いられるペン先は耐食性に優れている。金属材料は、一般的に耐食性が低い傾向にあり、例えば酸に浸漬させたときには酸に溶解して重量が減少する。しかし、本発明において用いられるCo−Ni基合金は、耐食性が高く、インキに接触しても変成しにくいという特徴がある。合金の耐食性は、耐食性試験によって評価することができる。具体的には、本発明に用いられるCo−Ni基合金は、60℃の条件下で、直径20mm、質量0.25gの試料を36%塩酸に72時間浸漬したとき、浸漬前の試料質量を基準とした、浸漬後の試料質量の質量減少量が30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがより好ましい。一般的に耐食性の高い金属材料であるステンレス(SUS301、SUS304、SUS316Lなど)は、このような条件で耐食性を評価すると質量減少率は90%を超えるため、本発明によるペン先は極めて耐食性が高いものである。
また、本発明に用いられるペン先は、ヤング率が210〜230GPaであることが好ましく、215〜225GPaであることがより好ましい。本発明に用いられるペン先は、ステンレスを凌ぐ高いヤング率を有することによって、筆圧の強弱に対しての応答性に優れた、満足できる筆感を達成することができる。なお、本発明においてヤング率は、例えば自由共振法により測定することができる。
本発明に用いられるペン先は、全体が前記のCo−Ni基合金から構成されていてもよいが、その一部だけが前記のCo−Ni基合金から構成されていてもよい。すなわち、ソフトな筆感を達成するためには、筆記時に圧力を調整する部分が前記Co−Ni基合金で構成されていればよい。より具体的には、ペン先のペンポイント側、特に弾力部が、前記Co−Ni基合金で構成されていればよい。そのような場合、ペン先の残余の部分には、その他の合金が接合されるのが一般的である。ただし、このような場合であっても、ペン先を構成する金属部分には耐食性があることが望ましいので、ペン先の残余の部分を構成する合金も、組成は前記したCo−Ni基合金の組成を有することが好ましい。そのようなペン先は、Co−Ni基合金でペン先の先端部を形成し、特定の熱処理をした後、ペン先の残余の部分にその他の合金を接合することによって、硬度が高い材料を用いながら、成形性を過度に損なわずにペン先を製造することが可能となる。
また、ソフトな筆感を達成すると同時に、その他の特性を満たすように、ペン先の形状を調整することもできる。例えば、筆跡の線幅を太くするためには、ペン先本体の先端部の巾を広くするほか、先端に接合するペンポイントを大きくすることもできる。しかしながら、ペン先本体の先端に大きなペンポイントを接合するには、十分な密着強度を確保するためにペン先本体の厚さが大きいことが望まれる。一方で、ペン先本体を厚くすると、ソフトな筆感が損なわれることがある。このため、ペン先本体の先端部の厚さをその他の部分より厚くすることによって、太い筆跡とソフトな筆感とを両立できる。筆感は、特に弾力部の形状に影響を受けるため、ペン先本体の先端部の厚さと、弾力部の根元の厚さとを適切に調整することが好ましい。具体的には、ペン先本体の先端部の厚さを、弾力部の根元、一般的にはハート穴付近の厚さに比較して、2.0〜3.0倍とすることが好ましく、2.1〜2.5倍とすることがより好ましい。ここでペン先本体の先端部、および弾力部の根元とは、図2(b)のAおよびBの部分を指し、その間の部分が弾力部Eである。
なお、万年筆の形状は、上記に置いて説明した以外の形状であってもよい。たとえば、ペン先と軸筒が一体となっていて、金属製の軸筒の先端の形状がペン先として機能するように構成されたものであってもよい。このような形状の万年筆においては、ペン先と軸筒との境界が明確ではないことがあるが、このような場合は筆記に使用する端部がペン先であると解することができる。したがって、軸筒を含めた万年筆全体が、特定のCo−Ni基合金で構成されていてもよい。
また、本発明による万年筆は、ペン先以外の部分は、一般的に用いられる万年筆と同様の構成とすることができる。したがって、軸筒は金属、樹脂、木材など任意の材料により形成することができる。また軸筒内部にはインキカートリッジやインキ吸入器を内蔵するようになっていてもよい。また、インキ供給を安定化するために櫛溝構造を有していてもよい。
さらにキャップを具備する構造であっても、ペン先を繰り出す構成を有する、いわゆるキャップレス万年筆であってもよい。
<万年筆の製造方法>
本発明による万年筆は、ペン先の製造工程に特徴がある。本発明において、ペン先の製造工程は、基本的に、
(a)質量比で
Co 30.9〜37.2%、
Ni 31.4〜33.4%、
Cr 19.5〜20.5%、
Mo 9.5〜10.5%、
Mn 0.1〜0.5%、
Ti 0.3〜0.7%、
Fe 1.1〜2.1%、
Nb 0.8〜1.2%、
希土類金属 0.01〜0.02%、および
不可避不純物
からなるCo−Ni基合金からなる板状材料をペン先本体の形状に打ち抜いて金属片を得る工程と、
(b)得られた金属片を成形することでペン先本体の形状に加工する工程とを含む。
本発明に用いられる合金からなる板状材料は、原料金属を所定の比率で配合し、真空溶解によって溶製した後、圧延することにより製造される。圧延された板状材量は、厚さが均一である場合の他、例えば一方向で厚さが連続的に変化するものであってもよい。後者の板状材料を用いると、打ち抜きをする際に打ち抜かれる金属片の向きを調整することによって、例えばペン先部の厚さが相対的に厚い金属片を得ることができる(工程(a))。
ペン先本体の先端にペンポイントを接合する場合、接合工程は、一般に打ち抜きの後に行われる。ペンポイントは、イリジウムを含む耐摩耗性合金が用いられることが好ましい。ペンポイントは略球形の形状を有することが好ましい。このような略球形のペンポイントは、材料となる合金をプラズマによって溶解することによって製造することができる。そして、この略球形のペンポイントを打ち抜きによって得られた金属片の先端に溶接、例えば電気溶接、によって接合する。
必要に応じてペンポイントが接合された後、金属片は、成型される(工程(b))。一般には、プレス加工によって、ペン先長手方向および巾手方向にそれぞれ湾曲させる。なお、ペンポイントの接合は、金属片の接合後に行うこともできる。
成型された後、ペン先に切り割りを設ける場合には、金属片はさらに切り割り加工に付される。切り割り加工は、例えば円盤状カッターによってペンポイント側から切り込みを入れることによって行う。形成される切り割りの巾は、一般に0.5mm以下、好ましくは0.1〜0.2mmである。
一般的なペン先は上記の工程によって製造することができるが、本発明においては、さらに特定の熱処理を行う。具体的には工程(a)の前、工程(a)と工程(b)の間、または工程(b)の後に、金属片の一部または全てを、400〜620℃、好ましくは500〜550℃で、1〜3時間、好ましくは1.5〜2.5時間熱処理する工程をさらに含む。加熱は真空中または不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。この熱処理によって、ペン先の硬度を適切に向上させることができると同時に、耐久性を付与することができる。加熱手段も特に限定されず、加熱炉中で加熱する方法の他、高周波誘導またはマイクロ波、赤外線照射による加熱する方法も採用可能である。
また、成形性と耐久性の両立のため、ペン先本体の先端部と、それ以外の部分、例えばペン先本体の後端部とで異なる熱処理をすることができる。具体的には、成形工程の前にペン先の後端部のみを焼鈍することで硬度を下げ、成形性を改善させる工程が追加される。部分加熱のため、万年筆としての強度、耐久性に関わる弾力部の硬度は維持される。この場合の焼鈍温度は620〜1000℃の領域で行われる。そのような熱処理は、高周波誘導またはマイクロ波、赤外線照射による加熱であれば容易に実現できるし、加熱したい部位に直接通電し、ジュール熱を発生させて加熱する直接通電加熱方式を採用することもできる。
本発明による万年筆の製造方法は、上記に説明したペン先の製造工程のほかには従来知られている任意の方法を組み合わせることができる。例えば、装飾目的でペン先に刻印を付したり、ロジウムや金メッキなどのコーティングを付すこともできる。さらに、耐スクラッチ性を改良するために、硬質クロムメッキやダイヤモンドライクカーボンコーティングを付すこともできる。
本発明を諸例を用いて説明すると以下の通りである。
[実施例1]
Co−Ni基合金(商品名SPRON510(セイコーインスツル株式会社製)からなる板状材料を圧延し、打ち抜きすることで先端部(図2(b)のA部分)の厚さ0.41mm、弾力部の根本(図2(b)のB部分)の厚さ0.18mmの、ペン先本体の形状を有する金属片を得た。ペン種SFに該当する球径を有する略球状のペンポイントを金属片先端部に接合した後、成形、切り割り工程に付し、さらにアルゴン雰囲気にて515℃、2時間の熱処理工程を行った。次いで得られたペン先を、別に用意した万年筆本体に組み込んだ。
マイクロビッカース硬さMVK−G2(商品名、株式会社ミツトヨ製)を用いて1kgfの荷重で、成形工程、切り割り工程、および熱処理工程を経たペン先表面の硬さを測定したところ、ペン先の中心線近傍のうち、ペン先本体の先端部から後端部に向かって6mmの部分におけるビッカース硬度は564Hvであった。また、用いたCo−Ni基合金を前記の耐食性試験に付したところ、質量減少率は5%未満であった。
[比較例1]
Co−Ni基合金(商品名SPRON510(セイコーインスツル株式会社製)からなる板状材料を圧延し、打ち抜きすることで先端部(図2(b)のA部分)の厚さ0.41mm、弾力部の根本(図2(b)のB部分)の厚さ0.20mmの、ペン先本体の形状を有する金属片を得た。ペン種SFに該当する球径を有する略球状のペンポイントを金属片先端部に接合した後、成形、切り割り工程に付してペン先を得て、そのペン先を万年筆本体に組み込んだ。
実施例1と同様の方法で成形工程および切り割り工程に付した後、熱処理をせずに得たペン先表面の硬さを測定したところ、ペン先の中心線近傍のうち、ペン先本体の先端部から後端部に向かって6mmの部分におけるビッカース硬度は438Hvであった。
[比較例2]
比較となる万年筆として、ステンレスペン先を有する万年筆(商品名カクノ、ペン種F、株式会社パイロットコーポレーション製)を準備した。
[比較例3]
比較となる他の万年筆として、金合金ペン先を有する万年筆(商品名カスタム74、ペン種SF、株式会社パイロットコーポレーション製)を準備した。
[評価]
実施例1、ならびに比較例1〜3の万年筆について、以下の評価を行った。得られた結果は表1に示すとおりであった。
[たわみ試験]
万年筆軸筒部(図1の106)から10°の角度でペン先端部(図2(b)のA部分)に向かって100gfの荷重を付与した。荷重付与時のペン先端部の変位量からたわみ量を算出した。たわみ量が大きいほど、ソフトな筆感となる。
[動荷重試験]
万年筆軸筒部(図1 106)から60°の角度でペン先端部(図2(b)のA)部分に向かって700gfの荷重を20万回連続で付与した。試験終了後、ペン先の状態を目視にて確認した。
Figure 2021102338
100 万年筆
101 万年筆本体
102 キャップ
103 ペン先
106 軸筒

Claims (10)

  1. 金属製のペン先を具備してなる万年筆であって、前記ペン先の一部または全てが、質量比で
    Co 30.9〜37.2%、
    Ni 31.4〜33.4%、
    Cr 19.5〜20.5%、
    Mo 9.5〜10.5%、
    Mn 0.1〜0.5%、
    Ti 0.3〜0.7%、
    Fe 1.1〜2.1%、
    Nb 0.8〜1.2%、
    希土類金属 0.01〜0.02%、および
    不可避不純物
    からなり、かつそのビッカース硬度が450〜800HvであるCo−Ni基合金で構成されていることを特徴とする万年筆。
  2. 金属製のペン先を具備してなる万年筆であって、前記ペン先の一部または全てが、質量比で
    Co 30.9〜37.2%、
    Ni 31.4〜33.4%、
    Cr 19.5〜20.5%、
    Mo 9.5〜10.5%、
    Mn 0.1〜0.5%、
    Ti 0.3〜0.7%、
    Fe 1.1〜2.1%、
    Nb 0.8〜1.2%、
    希土類金属 0.01〜0.02%、および
    不可避不純物
    からなるCo−Ni基合金で構成されており、前記ペン先の中心線またはその近傍にビッカース硬度が450〜800Hvである部分を有することを特徴とする万年筆。
  3. 前記Co−Ni基合金が、前記合金からなる直径20mm、質量0.025gの試料を60℃の条件下で36%塩酸に72時間浸漬したとき、浸漬前の試料質量を基準とした、浸漬後の試料質量の質量減少量が30%以下である、請求項1または2に記載の万年筆。
  4. 前記ペン先が、前記Co−Ni基合金からなるペン先本体と、その先端側末端に溶接されたペンポイントから構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の万年筆。
  5. 前記ペン先のペン先本体が前記Co−Ni基合金からなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の万年筆。
  6. 前記ペン先本体のヤング率が、210〜230GPaである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の万年筆。
  7. 前記ペン先本体の先端部における厚さが、前記ペン先本体の弾力部の根元における厚さの2.0〜3.0倍である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の万年筆。
  8. 万年筆の製造方法であって、
    前記万年筆を構成するペン先本体を、
    (a)質量比で
    Co 30.9〜37.2%、
    Ni 31.4〜33.4%、
    Cr 19.5〜20.5%、
    Mo 9.5〜10.5%、
    Mn 0.1〜0.5%、
    Ti 0.3〜0.7%、
    Fe 1.1〜2.1%、
    Nb 0.8〜1.2%、
    希土類金属 0.01〜0.02%、および
    不可避不純物
    からなるCo−Ni基合金からなる板状材料をペン先本体の形状に打ち抜いて金属片を得る工程、
    (b)得られた金属片を成形することでペン先本体の形状に加工する工程を含む、ペン先製造工程を含み、
    さらに前記ペン先製造工程が、工程(a)の前、工程(a)と工程(b)の間、または工程(b)の後に、金属片の一部または全てを、400〜620℃で1〜3時間、熱処理する工程をさらに含むことを特徴とする、方法。
  9. 前記ペン先本体の先端部と、前記ペン先本体の後端部とで、異なる熱処理を行う、請求項8に記載の方法。
  10. 前記ペン先本体の先端側末端に、ペンポイントを溶接することをさらに含む請求項8または9に記載の方法。
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