JP2021095822A - 床版防水構造体、その製造方法およびそれに用いる材料 - Google Patents

床版防水構造体、その製造方法およびそれに用いる材料 Download PDF

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Abstract

【課題】床版の接着性に優れ、不陸を調整でき、短時間で施工できる床版防水構造体を提供する。【解決手段】コンクリート床版の上に、プライマー組成物硬化層と不陸調整層が設けられている床版防水構造体であって、前記プライマー組成物が含浸機能を有し、ラジカル反応硬化型アクリル樹脂を含む、床版防水構造体。不陸調整層が、樹脂モルタルまたはポリマーセメントモルタルによって構成されていることが好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、床版防水構造体、その製造方法およびそれに用いる材料に関する。
道路橋に用いられる鉄筋コンクリート床版は、自動車荷重の繰り返し載荷による疲労現象により、劣化・損傷する。コンクリート床版の疲労では移動載荷される自動車荷重によりひび割れが徐々に進行し、最終的には床版コンクリートの抜け落ちに至る事もある。この際、コンクリート床版の表面に水が存在すると、ひび割れの進行と劣化が著しく促進される事が知られている。このためアスファルト舗装面から床版への雨水の侵入を遮断する床版防水工法が使用されている。
特許文献1には、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリレート単量体混合物(A)、(メタ)アクリレート単量体混合物(A)に溶解または膨潤可能な(メタ)アクリレート系重合体(B)、及びポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(C)を含有し、該ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(C)における(CO)で示される繰り返し単位の質量平均分子量が500以上である硬化性樹脂組成物(S)と、骨材(D)とを含有する床版防水材料が開示されている。
特許文献2には、コンクリート床版あるいは鋼床版などの道路橋床面上に、硬化型樹脂層、該硬化型樹脂層に保持された石油アスファルトで被覆された硅砂層、加熱式アスファルト塗膜防水材層、およびアスファルト舗装層を順次積層してなることを特徴とする道路橋床版の防水構造が開示されている。
特許文献3には、床版上に防水舗装が施された、コンクリート床版の防水舗装構造において、コンクリート床版の上に、下層から順に、プライマー層と、防水層と、接着層とが設けられ、接着層は、メタクリル系樹脂を主剤として形成された層であり、防水層表面に、メタクリル系樹脂を1平方メートル当り0.7〜1.1kg塗布することによって形成されたものであり、接着層の表面は、全面に粒状の硬質骨材が散布されたものであり、硬質骨材の上に、アスファルト乳剤が散布されたものであり、硬質骨材は、粒径が0.5〜2.0mmのものが骨材全体の80質量%以上を占めるコンクリート床版の防水舗装構造が開示されている。
コンクリート床版橋の補修において既設のアスファルト舗装を除去する際、切削機の使用等によりコンクリート床版表面まで切削され、コンクリート床版表面上に不陸(凹凸の切削跡)が残っている場合がある。また切削機が床版に及ぼす衝撃により、床版表面にマイクロクラック(微細なひび割れ)が発生する場合がある。マイクロクラックが存在する床版表面の近傍は脆弱化しており、床版と防水層の間の接着性が低下することが知られている。これに対して、非特許文献1では高浸透性のプライマーを使用し、床版を補修するとよいことが記載されている。
特許文献4には、コンクリート床版に含浸させた後硬化させる材料として、アクリル系ラジカル硬化性液状樹脂組成物が記載されている。しかしながら、アクリル系ラジカル硬化性液状樹脂組成物は接着性に劣ることから、表面改質剤を塗布する必要があり、樹脂を硬化させるための養生時間以外に、表面改質剤を塗布する作業時間がかかるといった問題があった。この問題を解決するため、特許文献5には、接着力を増強する方法として、低粘度なエポキシ樹脂接着剤をコンクリート床版に塗布、含浸させた後、加熱されたアスファルト防水材を塗布し、アスファルト防水材の熱によりエポキシ樹脂接着剤とアスファルト防水材を同時に短時間で硬化させることが記載されている。
一方、切削痕が存在する床版上に直接床版防水を施工し車両が走行した場合、荷重が床版凸部上の防水層に集中し防水層の貫通及び防水性能の喪失が懸念されるほか、床版と防水層の間の接着強度が低下することが報告されている。これに対して、非特許文献1および2では樹脂モルタル等の不陸調整材により床版面を平滑にする必要があることが記載されている。
特開2009−256505号公報 特許5323980号 特開2011−157772号公報 特開2005−344341号公報 特開2008−57119号公報
構造物施工管理要領(平成29年7月)III−95〜97 土木学会第72回年次学術講演会(平成29年9月) CS7−006
本発明は、床版との接着性に優れ、不陸を調整でき、短時間で施工できる床版防水構造体を提供すること、及びその製造方法を提供することである。
本発明者らは、コンクリート床版の上に、含浸性のラジカル反応硬化型アクリル樹脂層及び不陸調整層を設けることにより、接着性に優れ、不陸を調整でき、短時間で硬化可能な床版防水構造体を得ることを可能とした。
本発明の好ましい態様は次のとおりである。
態様1:
コンクリート床版の上に、プライマー組成物硬化層と不陸調整層が設けられている床版防水構造体であって、
プライマー組成物が含浸機能を有し、ラジカル反応硬化型アクリル樹脂を含む、床版防水構造体。
態様2:
コンクリート床版の上に、順に、前記プライマー組成物硬化層、不陸調整層が設けられている、態様1に記載の床版防水構造体。
態様3:
コンクリート床版の上に、さらに防水層が設けられている、態様1に記載の床版防水構造体。
態様4:
コンクリート床版の上に、順に、前記プライマー組成物硬化層、不陸調整層及び防水層が設けられている、態様3に記載の床版防水構造体。
態様5:
不陸調整層が、樹脂モルタルによって構成されている態様1〜4のいずれかに記載の床版防水構造体。
態様6:
樹脂モルタルに使用される樹脂がラジカル反応硬化型アクリル樹脂である態様5に記載の床版防水構造体。
態様7:
不陸調整層が、ポリマーセメントモルタルによって構成されている態様1〜4のいずれかに記載の床版防水構造体。
態様8:
防水層が樹脂塗膜防水層によって構成されている態様3〜7のいずれかに記載の床版防水構造体。
態様9:
樹脂塗膜防水層がラジカル反応硬化型アクリル樹脂によって構成されている態様8に記載の床版防水構造体。
態様10:
ラジカル反応硬化型アクリル樹脂にポリカーボネートポリオール由来の構造を有するウレタンアクリレートが含まれる態様9に記載の床版防水構造体。
態様11:
前記ラジカル反応硬化型アクリル樹脂によって構成されている樹脂塗膜防水層の伸度は、含浸機能を有しラジカル反応硬化型アクリル樹脂を含むプライマー組成物硬化層の伸度よりも大きい、態様9又は10に記載の床版防水構造体。
態様12:
防水層の上にアスファルト塗膜系の舗装接着層が設けられている態様3〜11のいずれかに記載の床版防水構造体。
態様13:
舗装接着層中に骨材を含む態様12に記載の床版防水構造体。
態様14:
コンクリート床版の上に、プライマー組成物硬化層と不陸調整層が設けられている床版防水構造体の製造方法であって、
以下の2つの工程を含む床版防水構造体の製造方法。
工程A)含浸機能を有する、ラジカル反応硬化型アクリル樹脂を含むプライマー組成物を塗布 し、硬化し、プライマー組成物硬化層を得る工程、及び
工程B)不陸調整層を形成する樹脂を塗布し、硬化させ、不陸調整層を得る工程。
態様15:
前記工程A又はBにおいて得られた層の上に、樹脂塗膜防水層を形成する樹脂を塗布し、硬化させ、樹脂塗膜防水層を得る工程を含む、態様14に記載の床版防水構造体の製造方法。
態様16:
不陸調整層が、樹脂モルタルによって構成され、当該樹脂モルタルに使用される樹脂がラジカル反応硬化型アクリル樹脂である、態様14又は15に記載の床版防水構造体の製造方法。
態様17:
プライマー組成物の塗布を開始してから樹脂塗膜防水層を得るまでの時間が3時間以内である、態様15又は16のいずれかに記載の床版防水構造体の製造方法。
態様18:
コンクリート床版の上に、プライマー組成物硬化層と不陸調整層が設けられている床版防水構造体の製造方法であって、
以下の2つの工程を含む床版防水構造体の製造方法。
A)含浸機能を有する、ラジカル反応硬化型アクリル樹脂を含むプライマー組成物を塗布し、プライマー組成物硬化層を得る工程、及び
B)得られたプライマー組成物硬化層の上に、ラジカル反応硬化型アクリル樹脂を含む 不陸調整層を形成する樹脂を塗布し、不陸調整層を得る工程。
態様19:
前記工程A又はBにおいて得られた層の上に、樹脂塗膜防水層を形成する樹脂を塗布し、樹脂塗膜防水層を得る工程を含む、態様18に記載の床版防水構造体の製造方法。
態様20:
コンクリート床版の上に、前記工程Aを実施し、工程Aで得られた層の上に前記工程Bを実施する、態様14〜19のいずれかに記載の床版防水構造体の製造方法。
態様21:
態様1〜13のいずれかに記載の床版防水構造体あるいは態様14〜20のいずれかに記載の床版防水構造体の製造方法に用いるプライマー組成物であって、
含浸機能を有し、ラジカル反応硬化型アクリル樹脂を含むプライマー組成物。
態様22:
態様1〜13のいずれかに記載の床版防水構造体あるいは態様14〜20のいずれかに記載の床版防水構造体の製造方法において、不陸調整層を形成する樹脂として用いる、ラジカル反応硬化型アクリル樹脂。
本発明の床版防水構造体は、床版の接着性に優れ、不陸を調整でき、短時間で硬化可能である。
本発明の床版防水構造体の1つの態様を示す概略断面図である。 本発明の床版防水構造体の別の態様を示す概略断面図である。
以下、場合によって図面を参照しながら、本開示の実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。上下等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。各要素の寸法比率は図面に図示された比率に限られるものではない。
本発明の床版防水構造体は、コンクリート床版の上に、プライマー組成物硬化層と不陸調整層が設けられている床版防水構造体である。プライマー組成物硬化層、不陸調整層、防水層、または接着層の上に舗装層が存在してもよい。
[コンクリート床版]
コンクリート床版は、一般に橋の上を通る車両や列車の重みを橋桁や橋脚に伝えるためのコンクリート床版を意味するが、本明細書においては、端部の立ち上がり部分、コンクリートを使用する基礎部材を含める。コンクリート床版は、例えば、鉄筋コンクリート床版(RC床版)、プレストレストコンクリート床版(PC床版)、鋼とコンクリートの合成構造から成る合成床版である。
コンクリート床版の上面はコンクリート養生後の未処理の状態でもよく、研磨などの表面処理が行われていてもよい。また、一旦舗装された後に改修のため舗装を撤去した床版でもよい。改修時の床版の表面には、舗装切削器具による凹凸(不陸)の存在や、ヒビの存在、断面修復材の存在、アスファルト乳剤の残存、旧防水層の残存、などがあってよい。床版の表面は乾燥していてもよいし、湿潤していてもよい。
[プライマー組成物硬化層]
プライマー組成物が硬化して得られる層をプライマー組成物硬化層という。本発明において、プライマー組成物硬化層をプライマー層ということもある。
プライマー組成物硬化層が、不陸調整層の上または下に存在してよいが、プライマー組成物硬化層の位置は不陸調整層の下であることが好ましい。
プライマー組成物は、コンクリート床版及び/又は不陸調整層に含浸できる。プライマー組成物は、ラジカル反応硬化型アクリル樹脂を含む。
ラジカル反応硬化型アクリル樹脂層は、不陸調整層との接着性に優れる。
ラジカル反応硬化型アクリル樹脂層は、加熱による硬化促進を用いなくとも短時間で硬化する。ラジカル反応硬化型アクリル樹脂層は、そのものでも硬化性に優れ、不陸調整層で覆うことで酸素による硬化阻害が生じなくなるので、さらに硬化性が良くなる。
プライマー層を用いることによって、防水性が発現するほか、コンクリート床版の表面の強度や、続いて塗布される層との接着強度を高める事ができる。プライマー層は含浸機能を有する。
ここで、含浸機能とはNEXCO試験法426により測定される含浸深さ、硬化前の23℃における粘度、コンクリート床版表面の引張強度向上性能のいずれかが以下の範囲であることを示す。測定方法は前記の通りである。
プライマー層は、NEXCO試験法426により測定して、含浸深さ10mm以上、例えば、10〜100mm、20〜100mmであることが好ましく、曲げ強度1.0N/mm以上、例えば、2.0N/mm以上を有することが好ましい。
プライマー層を形成するプライマー樹脂は、硬化前において、23℃における粘度が3000〜10cP、好ましくは1000〜10cP、例えば500〜10cP、特に100〜10cPであってよい。
プライマー層は、表面の引張強度が2.0N/mm未満であるコンクリートに0.3kg/m塗布し硬化した後に、引張強度が0.5N/mm以上向上するプライマーであってよい。
プライマー樹脂の塗布量は、0.05〜1.0kg/m、好ましく0.1〜0.5kg/m、例えば0.15〜0.3kg/mであってよい。
[不陸調整層]
不陸調整層が存在する。不陸調整層が存在することによって、防水性が発現するほか、凹凸で防水層が凹部に溜まる事を回避でき、防水層の使用量を低減できる。また床版凸部上での走行荷重やアスファルト合材の転圧時の応力により床版の強度が低下したり、防水層が貫通されたりすることを防ぐ。
不陸調整層を形成する材料(不陸調整材)は、セメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、樹脂モルタルなどであってよく、好ましくは、ポリマーセメントモルタル、樹脂モルタルである。ポリマーセメントモルタルは、セメントおよび骨材にポリマーディスパージョン(または再乳化形粉末樹脂)を混合して得られたモルタルである。樹脂モルタルは、合成樹脂および骨材によって構成される。本発明において、樹脂モルタルと標記する際には、樹脂モルタルを使用する不陸調整材又は樹脂モルタルによって形成された不陸調整層であることを意味する。
樹脂モルタル中の骨材の質量比率は、施工の簡易性、圧縮及び/または曲げ強度の観点から、50〜95%であってよく、70〜90%が好ましい。骨材の質量比率が適量であると、施工の簡易性、圧縮及び/または曲げ強度が向上する。
骨材は、石、砂、無機粉体等からなり、好ましくは珪砂及び/または炭酸カルシウムを含む。珪砂は3〜8号であってよく、4〜6号が好ましく、5号が更に好ましい。炭酸カルシムの平均粒子径またはメジアン径は、0.5〜300μmであってよく、1〜200μmが好ましく、10〜100μmが更に好ましい。
珪砂と炭酸カルシウムを両方使う場合の珪砂の体積比率は40−99%であってよく、60−95%が好ましく、70−95%が更に好ましい。
ポリマーディスパージョンおよび合成樹脂における樹脂の例は、後述のラジカル反応硬化型アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂、水性エポキシ樹脂、水性EVA樹脂であってよく、防水機能、接着性、短時間の施工の実現の観点から、ラジカル反応硬化型アクリル樹脂であることが好ましい。
樹脂モルタルは樹脂と骨材をあらかじめ混合することで製造してから施工してもよいし、樹脂と骨材のどちらかを先に施工面上に存在させた後にもう一方を添加することで床版やプライマー層上で製造してもよい。
不陸調整材の使用量は不陸の状態により異なる。路面を平滑に直すのに十分な量を状態に合わせて使用できる。舗装・調査試験法便覧 (日本道路協会)に記載されているサンドパッチング法で平均深さを求め、この平均深さの0.5〜1.3倍になるように不陸調整材を使用するのが好ましい。
[防水層]
防水層は、コンクリート床版より上部に形成された防水機能を有する防水層であれば特に限定されるものではない。
防水層としては樹脂塗膜防水層、加熱アスファルト塗膜防水層、アスファルトシート防水層、アスファルトウレタン防水層が挙げられ、中でも防水性や接着性向上の観点から、樹脂塗膜防水層であることが好ましい。防水層を形成する樹脂(防水材)は、例えば、アクリル系ラジカル硬化樹脂、2液ウレタン樹脂、1液ウレタン樹脂であってよい。低温から高温においても硬化性が制御しやすく、短時間で硬化可能であり、遮水性に優れることから、アクリル系ラジカル硬化樹脂が好ましい。
樹脂塗膜防水層は、コンクリート床版のひび割れに追従するため、防水層のみをモルタル上に塗布して道路橋床版防水便覧におけるひび割れ追従性試験を実施する際のひび割れ追従性が0.3mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることが更に好ましい。このようなひび割れ追従性を示すために、樹脂塗膜防水層は以下の伸度及び/または引張強度を満たすことが好ましい。すなわち厚み200μmの硬化膜をダンベル状1号形(JIS K 6251)に成形し、−10℃でJIS K 7161−1:2014「プラスチック−引張特性の求め方」に準拠した引張試験を行った際の伸度が10%以上であってよく50%以上が好ましく、100%以上が更に好ましい。また同試験を行った際の破断応力が10MPa以上であってよく30MPa以上が好ましく、50MPa以上が更に好ましい。
樹脂塗膜防水層の厚さは、接着性に優れ、塗膜の特性(機械特性、遮水性)にも優れることから薄膜とすることが可能であり、0.1〜2.0mmが好ましく、0.3〜1.5mmがより好ましく、0.5〜1.2mmが特に好ましい。
[接着層]
床版とアスファルト舗装の接着性を高めるため、床版防水構造体製造の最終工程に接着層を設けることができる。この接着層は、舗装接着層ということもある。
この舗装接着層はプライマー層、不陸調整層、防水層のいずれかの上に存在し、アスファルト舗装の下に存在する。舗装接着層はアスファルト舗装舗設時の熱により溶融して接着効果が高まるホットメルト型の材料が好ましい。ホットメルト型の材料としてはアスファルト系、熱可塑樹脂系が挙げられる。接着層の強度を高めたり、接着層と施工機械もしくは施工作業者の接着を防いだりするために接着層中もしくは接着層上に骨材を存在させてもよい。
アスファルト系の接着層としては、加熱溶融アスファルト塗膜、アスファルトシート、アスファルト乳剤由来のアスファルト層が挙げられる。加熱溶融アスファルト層の原料としてはストレートアスファルト、改質アスファルト、加熱溶融アスファルト防水材などが使用できる。アスファルトシートとしては、不織布やメッシュなどにアスファルトが含浸させられたシート、アスファルトルーフィングシート、アスファルトシート流し張り工法に使用されるアスファルトシートなどが使用できる。アスファルト乳剤由来のアスファルト層は、アスファルト乳剤が乾燥し、固化したアスファルト層である。すなわち、アスファルト層とは、アスファルト乳剤の蒸発残留物である。なお、前記「由来」とは、例えば、アスファルト層の原料が、アスファルト乳剤であることを示す。 アスファルト乳剤は、プライマー層、樹脂モルタル、又は樹脂塗膜防水層とアスファルト層との接着性を改善することできるため、蒸発残留物の温度25℃での針入度が100(単位1/10mm)以下、好ましくは1〜100、より好ましくは2〜50、特に好ましくは5〜30である。なお、アスファルト乳剤は、JIS K2208:2000の石油アスファルト乳剤に定義されるものであり、また蒸発残留物の温度25℃での針入度は、JIS K2208:2000 6.13 蒸発残留物の針入度試験方法にしたがって測定されるものである。
このようなアスファルト乳剤としては、例えば、日本アスファルト乳剤協会規格JEAAS2011に定める、タイヤ付着抑制型アスファルト乳剤(記号PKM−T)や、PKM−T規格に準拠した改質アスファルト乳剤と分解剤を使用する速分解型アスファルト乳剤が好適に使用できる。アスファルト乳剤の具体的な製品名は、例えば、東亜道路工業株式会社製タックファインE、ニチレキ株式会社製ファームゾール、株式会社NIPPO製クリアゾル、前田道路株式会社製ノンスティックゾル、昭和瀝青工業株式会社製ハイタックAS、シンレキ株式会社製クリーンタック、東亜道路工業株式会社製タックファインSQ、ニチレキ株式会社製スーパータックゾールなどである。
アスファルト接着層は、アスファルト成分に加えて樹脂系の材料が含まれてもよく、アスファルト層において使用するこの樹脂系の材料は、ウレタン系、エポキシ系、アクリル系、酢酸ビニル系等の樹脂からなる接着剤、及び場合によってこれら樹脂の架橋剤を含むものである。樹脂系の材料の量は、アスファルト層に対して、40質量%以下又は30質量%以下、例えば、1〜25質量%であってよい。
アスファルト層において使用するその他の添加材料は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素等からなる溶剤、シリカ等からなる骨材、アスファルト乳剤の分解促進剤を含むものである。その他の添加材料の量は、アスファルト層に対して、30質量%以下又は20質量%以下、例えば、1〜15質量%であってよい。
熱可塑樹脂としては熱可塑性ポリオレフィン、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性EVA、熱可塑性アクリル樹脂等が挙げられる。
接着層の使用量は、乾燥できる物は乾燥後の質量として、0.2〜2.0kg/mであってよく、0.4〜1.5kg/mがより好ましく、0.6〜1.2kg/mが更に好ましい。
[舗装接着層中の骨材]
接着層中もしくは接着層上の骨材としては、例えば、砂、硅砂、川砂、寒水石、エメリー、大理石、炭酸カルシウム、カオリン、ベントナイト、マイカ、タルク、炭化珪素粉、窒化珪素粉、窒化ほう素粉、アルミナ、スラグ、ガラス粉末、セラミック骨材、陶器屑、着色骨材、中空粒子等が好ましく、硅砂がより好ましい。
骨材の平均粒径は、接着性に優れることから、0.6mm以下(例えば硅砂4号以上)が好ましく、0.5mm以下(例えば硅砂5号以上)がより好ましく、0.2mm以下(例えば硅砂7号以上)または0.3mm以下(例えば硅砂6号以上)が特に好ましい。骨材の平均粒径は、0.08mm以上であってよい。
骨材の塗布量は、接着性に優れることから、0.01〜2.0kg/mが好ましく、0.1〜1.3kg/mがより好ましく、0.2〜0.6kg/mが特に好ましい。
[床版防水構造体]
本発明の床版防水構造体は、コンクリート床版の上に、プライマー組成物硬化層と不陸調整層が設けられている床版防水構造体である。プライマー層、不陸調整層、防水層、または接着層の上に舗装層が存在してもよい。
コンクリート床版橋において、既設のアスファルト舗装を除去で生じたマイクロクラックを補修する目的で使用される含浸プライマーは、これまで表面改質剤を使用せずとも接着性に優れ、加熱による硬化促進を用いなくとも短時間で硬化するものは知られていなかった。本発明の床版防水構造体は、床版との接着性に優れ、短時間で硬化可能であるため、特に含浸プライマーと不陸調整材が必要とされる橋梁補修向け床版防水工法において、好適に使用される。
本発明の床版防水構造体は、コンクリート床版の上に、プライマー組成物硬化層と不陸調整層が設けられている。さらに、コンクリート床版の上に、順に、前記プライマー組成物硬化層、不陸調整層が設けられていることが好ましい。
コンクリート床版の上に、さらに防水層が設けられていることが好ましい。コンクリート床版の上に、順に、前記プライマー組成物硬化層、不陸調整層及び防水層が設けられていることが好ましい。
本発明の床版防水構造体に用いられるプライマー組成物と不陸調整層用樹脂モルタルは、いずれにもラジカル硬化性アクリル樹脂(アクリル系ラジカル硬化樹脂)が使用されることが好ましい。これにより前層が未硬化のまま次の層を施工しても界面での接着不良が起きず、複数層を未硬化のまま速やかに施工することができる。通常、異なる種類の材料樹脂を前層が未硬化の状態で施工すると界面での接着不良が起きる可能性があり望ましくない。しかしラジカル硬化性アクリル樹脂同士であると未硬化の上に積層しても界面で接着性が低下することがない。同様の理由で、プライマー組成物と不陸調整層用樹脂モルタルに加えて、樹脂塗膜防水層を形成する樹脂もラジカル硬化性アクリル樹脂であると更に好ましい。
少なくともプライマー組成物硬化層と不陸調整層を設けることにより防水機能を有し、更に防水層を設けることで防水性能が更に向上する。
防水機能とは、コンクリート床版に水が浸入するのを防ぐ効果であれば制限はないが、例えば以下の方法により評価される。
作成した床版防水構造体の上面及び下面を湿潤させ、道路橋床版水分計 HI-100(ケツト科学研究所、電気抵抗式)の電極を上面及び下面に接続し、23℃で、カウント値を測定する。水分計のカウント値が低い方が床版防水構造体の電気抵抗が高いことを意味しており、防水性能が高いと判定する。この評価方法において、320以下のとき、防水性能を有すると判定する。
[アクリル系ラジカル硬化樹脂]
アクリル系ラジカル硬化樹脂は、少なくとも1種以上の(メタ)アクリレート基構造を有する化合物(アクリレート基構造を有する化合物及び、またはメタクリレート基構造を有する化合物を意味する。)を主成分とし、ラジカル反応によって、重合・硬化させて得られる硬化物である。そのため、この硬化樹脂には(メタ)アクリレート基構造を有する化合物由来の構造(以降、(メタ)アクリレート由来の構造と記載することもあり、メタクリレート基構造を有する化合物由来の構造をメタクリレート由来の構造、アクリレート基構造を有する化合物をアクリレート由来の構造と記載することもある)を有する。
(メタ)アクリレート基構造を有する化合物(以降、(メタ)アクリレート化合物と記載することもあり、メタクリレート基構造を有する化合物をメタクリレート化合物、アクリレート基構造を有する化合物をアクリレート化合物と記載することもある)とは、分子構造中に一つ以上の(メタ)アクリレート基構造を有する化合物(単官能(メタ)アクリレート化合物又は多官能(メタ)アクリレート化合物)であれば特に限定されない。耐熱性や塗膜の靭性に優れることから、メタクリレート化合物が含まれることが好ましい。また、ラジカル反応は、過酸化物などの分解により発生したラジカルによって反応を開始させることが好ましい。
[アクリル系ラジカル硬化性樹脂組成物]
アクリル系ラジカル硬化性樹脂組成物は、少なくとも1種以上の(メタ)アクリレート基構造を有する化合物を含み、ラジカル反応により硬化させることができる組成物である。このアクリル系ラジカル硬化性樹脂組成物は、一般に液状であり、硬化して前述のアクリル系ラジカル硬化樹脂を与える。特に限定されるわけではないが、このアクリル系ラジカル硬化性樹脂組成物は、その他の成分として、硬化剤、硬化触媒及びその他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、硬化助剤、硬化触媒、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、滑剤、顔料、充填剤、レオロジーコントロール剤、粘着付与剤、溶剤、反応性希釈剤が挙げられる。アクリル系ラジカル硬化性樹脂組成物は、前記床版防水構造体のプライマー層、樹脂モルタル、及び樹脂塗膜防水層を形成する樹脂組成物、あるいは後述の床版防水構造体の製造方法においてプライマー層、樹脂モルタル、及び樹脂塗膜防水層を形成する樹脂組成物として用いることができる。
<ウレタン(メタ)アクリレート>
アクリル系ラジカル硬化樹脂には、強靭性や、他のアクリル系ラジカル硬化樹脂を含有する層との接着性、アスファルト層との接着性に優れることから、(メタ)アクリレート由来の構造として、ウレタン(メタ)アクリレート由来の構造を有することが好ましく、耐熱性に優れることから、メタクリル基を有するウレタンメタクリレート由来の構造を有することがより好ましい。
「ウレタン(メタ)アクリレート」とは、(メタ)アクリル基を有するウレタンアクリレート、特に、分子末端に(メタ)アクリル基を有するウレタンアクリレートを意味する。「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリオールの部分構造(a)と、ポリイソシアネートの部分構造(b)と、(メタ)アクリレートの部分構造(c)とを有する。そのため、アクリル系ラジカル硬化性樹脂組成物にウレタン(メタ)アクリレートを用いた場合、アクリル系ラジカル硬化樹脂には、すくなくとも(メタ)アクリレート由来の構造、ポリオール由来の構造およびポリイソシアネート由来の構造を有することとなる。
(ポリオール由来の構造)
前記ポリオール由来の構造には、2つ以上の水酸基が含まれていれば、特に限定されない。前記ポリオール由来の構造を製造する際に使用するポリオール化合物は、脂肪族ジオール、脂環式ジオール、芳香族ジオール、多官能ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリエステルポリオール、ポリエーテルポリカーボネートポリオール等の構造中に繰り返し単位を有するオリゴマーポリオールと、繰り返し単位を有さないモノマーポリオールが挙げられる。前記ポリオール化合物のうち、ポリカーボネートポリオールを用いることが好ましい。
プライマー層、樹脂モルタル、及び樹脂塗膜防水層中には、強靭な塗膜が得られることから、ポリカーボネートポリオール由来の構造を有することが好ましく、さらに柔軟性や保存安定性に優れることから、非晶質のポリカーボネートポリオール由来の構造を有することがより好ましい。特に限定されるわけではないが、ポリカーボネートポリオール由来の構造はウレタン(メタ)アクリレートのポリオール由来の構造として、好適に用いることができる。
(ポリカーボネートポリオール由来の構造)
ポリオール由来の構造として用いられるポリカーボネートポリオール由来の構造とは、例えば、ポリカーボネートポリオールの分子構造のうち、ウレタン化反応などに関与する中の結合基以外の部分構造のことを示す。ポリカーボネートポリオールは、ポリオール由来の構造と、場合によりラクトン由来の構造と、カーボネート結合とを有する。ポリカーボネートポリオールは、例えば、ポリオールと、炭酸エステルとを、触媒の存在下で反応させることによって得られる。
ポリカーボネートポリオールを構成するジオールは、式:
HO−R−OH
[式中、Rは、炭素数2〜22の二価の炭化水素基もしくはその一部にエーテル結合を含む]
で示される炭化水素基含有ジオールであることが好ましく、その一部にエーテル結合を有していても良い。
炭化水素基含有ジオールにおいて、二価の炭化水素基は、炭素数2〜22の直鎖状、分岐状若しくは環状の飽和又は不飽和の炭化水素基であってよい。炭化水素基は、脂肪族、芳香族又は芳香脂肪族であってよいが、脂肪族炭化水素基であることが好ましい。直鎖状の脂肪族炭化水素基がより好ましい。炭化水素基の炭素数は、3〜16、好ましくは4〜12、特に4、5、6又は8であってよい。
なお、プライマー層、樹脂モルタル、及び樹脂塗膜防水層は、低温から高温においても硬化性が制御しやすく、短時間で硬化可能であり、遮水性に優れ、同時にアスファルト層との接着性と、強靭な塗膜が得られることから、ポリカーボネートポリオールを部分構造に有するウレタン(メタ)アクリレート由来の構造を有するアクリル系ラジカル硬化樹脂が好ましい。
ポリカーボネートポリオール系ウレタン(メタ)アクリレートは、特に限定されるわけではないが、ポリカーボネートポリオール由来の構造と、ポリイソシアネート由来の構造と、(メタ)アクリレート由来の構造とを有する。さらにポリカーボネートポリオール由来の構造は、非晶性のポリカーボネートポリオール由来の構造及び/又は2種類以上の繰り返し単位を含むポリカーボネートポリオール由来の構造を有することが好ましい。
さらに、ポリカーボネートポリオールがポリカーボネートジオールであることが好ましい。このポリカーボネートジオール系ウレタン(メタ)アクリレートを、ポリカーボネートジオール−ウレタン(メタ)アクリレート又はPCD−UAと称することもある。
(ポリイソシアネート由来の構造)
ポリイソシアネート由来の構造とは、例えば、ポリイソシアネートの分子構造のうち、ウレタン化反応に関与する基以外の部分構造のことを示す。
ポリイソシアネート由来の構造はポリイソシアネートによってウレタン(メタ)アクリレートに導入される。
ポリイソシアネートは、2官能以上のイソシアネートを使用することができるが、ジイソシアネートであることが好ましい。
ジイソシアネートは、式:
OCN−R−NCO
[式中、Rは、炭素原子数2〜20の二価の炭化水素基である。]
で示される化合物であることが好ましい。
二価の炭化水素基は、炭素原子数2〜12の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素原子数3〜12の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜18の環状脂肪族炭化水素基、又は炭素原子数6〜18の芳香族炭化水素基であってよい。耐侯性に優れることから、直鎖状脂肪族炭化水素基、環状脂肪族炭化水素基が好ましく、特に高強度な塗膜が得られることから、芳香族炭化水素が好ましい。
ポリイソシアネートは、単独を用いてもよいし、あるいは2種以上を併用してもよい。ポリイソシアネートの構造の一部又は全部がイソシアヌレート化、カルボジイミド化、又はビウレット化など誘導化されていても良い。その中でも、耐侯性に優れることから、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネートが好ましく、特に高強度な塗膜が得られることから、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、が好ましい。また、ウレタンアクリレートを好適に製造するため、非対称な構造を有するものが好ましく、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートが挙げられる。
((メタ)アクリレート由来の構造)
(メタ)アクリレート由来の構造とは、ウレタン(メタ)アクリレートではウレタン化反応に関与する基以外の部分の分子構造、アクリル系ラジカル硬化樹脂では、それらに加え、ラジカル反応に関与する基以外の部分の分子構造のことを示す。
すなわち、下記式(1)において、Y以外の基が「ウレタン化反応に関与する基以外の部分の分子構造」を示す。
Figure 2021095822
は水素原子又はメチル基であることを示す。Yはウレタン化反応に関与する基を示す。Rは炭化水素基を示す。
ウレタン(メタ)アクリレートへの(メタ)アクリレート由来の構造は、(メタ)アクリレートによって、ウレタン(メタ)アクリレートに導入される。ウレタン(メタ)アクリレートへの(メタ)アクリレート由来の構造の導入には、水酸基を有する(メタ)アクリレート、イソシアナト基を有する(メタ)アクリレート等を使用することができるが、イソシアネートと反応する水酸基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
(水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物)
アクリル系ラジカル硬化樹脂には、他のアクリル系ラジカル硬化樹脂を含有する層との接着性、アスファルト層との接着性に優れることから、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物由来の構造を有することが好ましく、耐熱性に優れることから、水酸基を有するメタクリレート化合物由来の構造を有することがより好ましい。
水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物は、水酸基を1個以上有する(メタ)アクリレート化合物である。水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ヘプチル)メタアクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート;
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
(分岐構造を有する(メタ)アクリレート化合物)
アクリル系ラジカル硬化樹脂には、他のアクリル系ラジカル硬化樹脂を含有する層との接着性、アスファルト層との接着性に優れることから、分岐構造を有する(メタ)アクリレート化合物由来の構造を有することが好ましく、耐熱性に優れることから、分岐構造を有するメタクリレート化合物由来の構造を有することがより好ましい。
分岐構造を有する(メタ)アクリレート化合物は、脂肪族炭化水素構造中に分岐を有する(メタ)アクリレート化合物である。なお、当該脂肪族炭化水素構造は前記式(1)のR中に含まれる。
(環構造を有する(メタ)アクリレート化合物)
アクリル系ラジカル硬化樹脂には、他のアクリル系ラジカル硬化樹脂を含有する層との接着性、アスファルト層との接着性に優れることから、環構造を有する(メタ)アクリレート化合物由来の構造を有することが好ましく、耐熱性に優れることから、分岐構造を有するメタクリレート化合物由来の構造を有することがより好ましい。 環構造を有する(メタ)アクリレート化合物は、脂肪族炭化水素構造中に環を有する(メタ)アクリレート化合物である。硬化性に優れることから、縮合環を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましく、耐熱性に優れることから、縮合環を有するアクリレート化合物がより好ましい。
特に、縮合環含有(メタ)アクリレート化合物においては、空気中での硬化性に優れることから、縮合環は反応性の二重結合を有することが好ましい。したがって、縮合環含有(メタ)アクリレートはジシクロペンテニル(メタ)アクリレート及び/又はジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
アクリル系ラジカル硬化樹脂は、前述のウレタン(メタ)アクリレート由来の構造、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物由来の構造、分岐構造を有する(メタ)アクリレート化合物由来の構造、環構造を有する(メタ)アクリレート化合物由来の構造から選択された少なくとも1種であることが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレート由来の構造、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物由来の構造と環構造を有する(メタ)アクリレート化合物由来の構造の組み合わせがより好ましい。
また、アクリル系ラジカル硬化性樹脂組成物に水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物を含むことにより、樹脂組成物の臭気を低減することができる。また、環構造を有する(メタ)アクリレート化合物を含むことにより、樹脂組成物を硬化させた際の塗膜表面の硬化性がより高まる。
(メタ)アクリレート化合物の配合比は、特に限定されないが、配合時に低粘度な溶液が得られることから、ウレタン(メタ)アクリレート 100質量部に対して、その他の(メタ)アクリレート化合物は1〜400質量部が好ましく、10〜300質量部がより好ましく、30〜200質量部がさらに好ましい。
<硬化剤>
アクリル系ラジカル硬化性樹脂組成物は、ラジカルによって反応を開始させる硬化剤を用いることが好ましい。その硬化剤としては、過酸化物が好ましく、常温で硬化可能で十分な可使時間を得られることから、有機過酸化物がより好ましい。
<硬化触媒>
アクリル系ラジカル硬化性樹脂組成物は、硬化剤に加えて、硬化反応を制御する目的で硬化触媒を使用することが好ましい。硬化触媒としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩;イミダゾール類及びその誘導体;ホスフィン類、ホスホニウム塩等の有機リン系化合物;第二級アミン類、第三級アミン類、第四級アンモニウム塩などが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。硬化触媒は、保存安定性と硬化性に優れるため、ナフテン酸コバルトやオクチル酸コバルトが好ましい。
硬化触媒の量は、(メタ)アクリレート化合物の合計100質量部に対して、0.01〜3質量部が好ましく、0.05〜1.5質量部がより好ましく、0.1〜1質量部がさらに好ましい。硬化触媒の含有量が上記範囲内であると、硬化促進効果及び保存安定性が優れる傾向にある。
<ワックス>
アクリル系ラジカル硬化性樹脂組成物は、アスファルト層とのせん断接着性に優れ、表面硬化性に優れる硬化樹脂を与えることから、ワックスを含むことが好ましい。そのようなワックスとしては、動物ワックス、植物ワックス、鉱物ワックス、石油ワックス、合成ワックス、これらを配合及び又は変性したワックスが好ましく、変性ワックス、パラフィンワックスがより好ましい。
<その他の添加剤>
その他の添加剤としては、硬化促進剤(アミン類)、消泡剤、湿潤分散剤、界面活性剤、レオロジーコントロール剤、難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アンチモン系難燃剤)、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤(ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、チオエーテル化合物)、滑剤(タルクやシリカ、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等)、顔料(二酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛等)、充填剤(無機化合物(炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、クレー、タルク)、有機化合物(例えば、有機樹脂、セルロース))、粘着付与剤、溶剤、反応性希釈剤が挙げられる。レオロジーコントロール剤を使用することで床版端部の立ち上がり部分での施工性が向上する。
その他の添加剤の量は、硬化性樹脂組成物全量に対して、0〜20質量%、例えば0.1〜10質量%であってよい。
[硬化性樹脂組成物の形態]
特に限定されるわけではないが、プライマー層、樹脂モルタル、及び樹脂塗膜防水層を形成する塗料となる硬化性樹脂組成物(例えば、アクリル系ラジカル硬化性樹脂組成物)は、混合が不要である一液型であってもよいし、保存安定性や硬化時に天候等の外的要因により調整できることから、二液混合反応型の硬化性樹脂組成物であることが好ましい。二液混合反応型の場合、例えばA液に(メタ)アクリレート化合物、硬化触媒を含み、B液に硬化剤を含む場合や、A液に(メタ)アクリレート化合物、硬化触媒を含み、B液に(メタ)アクリレート化合物、硬化剤を含む場合がある。前者は、B液が硬化剤のほかに反応性を有する化合物を含まないため、安全性に優れ、後者は、A液とB液の配合比を任意に設定できるため、混合時の作業性に優れる。また、その他成分は、A液及びB液のどちらに配合してもよい。上述の硬化性樹脂組成物は、A液及びB液以外の第三の成分を含んで構成されてもよい。
[硬化性樹脂組成物の特性]
前記の硬化性樹脂組成物は、特に限定されるわけではないが、ポリカーボネートポリオール系ウレタン(メタ)アクリレートとして、ポリカーボネートポリオール由来の構造が非晶性のポリカーボネートポリオール由来の構造(a−1)であるか及び/又は2種類以上の繰り返し単位を含むポリカーボネートポリオール由来の構造(a−2)を有するので、従来のポリカーボネートポリオール系ウレタン(メタ)アクリレートに比較して、保存安定性が大幅に改善される。
[硬化性樹脂組成物の製造方法]
前記の硬化性樹脂組成物(A液及びB液)は、当業者において通常用いられる方法によって製造することができる。A液及びB液はそれぞれ、A液及びB液の各成分を、例えば、反応槽、ブレンド槽、ディスパー、ボールミル、S.G.ミル、ロールミル、及びプラネタリーミキサー等で混合することにより調製することができる。
[硬化性樹脂組成物の硬化方法]
プライマー層、樹脂モルタル及び樹脂塗膜防水層は、例えば、前記の硬化性樹脂組成物をコンクリート床版等の基材の上に塗布し、重合・硬化させて硬化物とすることにより得られる。硬化は、過酸化物によるラジカル反応や、活性エネルギー線の照射による光反応、加熱による熱反応の適用などによって行うことができるが、特に硬化剤、硬化触媒を添加する場合、それらを混合することで、常温(外気温又は室温、例えば−10〜30℃)でラジカル反応により硬化できるため、床版防水のプライマー層、樹脂モルタル及び樹脂塗膜防水層として好ましい。
[プライマー層及び樹脂塗膜防水層(硬化樹脂)の特性]
プライマー層及び樹脂塗膜防水層は、例えば、ポリカーボネートポリオール系ウレタン(メタ)アクリレート成分を含むことから、以下の特性を有する。
プライマー層及び樹脂塗膜防水層(硬化樹脂)の硬化物の破断伸度(23℃における引張り試験における)は、特に限定されるわけではないが、45%以上、例えば60%以上、特に80%以上、特別に100%以上、より特別に130%以上が好ましい。この範囲であれば、十分な伸びを有するため、床版防水等などの土木建築用樹脂として好適に用いることができる。
[骨材]
床版防水構造体に使用される骨材は、アスファルト乳剤塗布時の濡れ性改善や、舗装車輌や歩行者へのアスファルト成分の付着を抑制するため、アスファルト層と樹脂塗膜防水層の層間または、アスファルト層中に有することが好ましい。骨材の施工方法としては、防水層塗布(又は硬化)後アスファルト乳剤を施工する前に骨材を散布する方法、骨材をアスファルト乳剤にあらかじめ混合してから塗布する方法、アスファルト乳剤塗布後に骨材を散布する方法が挙げられる。特にアスファルト乳剤が未乾燥の間にアスファルト乳剤中に少なくとも部分的に骨材を有することが好ましく、これにより、防水層の硬化性を高めるためにワックスが使用されていてもアスファルト層が容易に施工できるという効果が得られる。さらに防水層を塗布した後(好ましくは硬化させた後)でアスファルト乳剤を施工する前に骨材を散布することが好ましく、アスファルト乳剤塗布時の濡れ性を効果的に改善できるという効果が得られる。
[舗装層]
本発明の床版防水構造体上に舗装される舗装層は、一般に、アスファルトと骨材から形成されている。アスファルトは、例えばレーキアスファルト、ロックアスファルト、アスファルタイト等の天然アスファルト、ストレートアスファルト、ブローンアスファルト等の石油アスファルト、セミブローンアスファルト、硬質アスファルト、これらに熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、ゴム等を入れて改質されたアスファルトも含むものである。
[床版防水構造体の製造方法]
本発明の床版防水構造体は以下のA及びBの工程を含む方法により製造される。ここでA及びBの順序は逆でもよいが、工程Aの後に工程Bが実施されることが好ましい。コンクリート床版の上に、工程A及びBを実施した後、更に工程C及び/または工程Dを含む製造方法であることがより好ましい。工程Dを含む場合、工程Dは最終工程である。
工程A):
含浸機能を有する、ラジカル反応硬化型アクリル樹脂を含むプライマー組成物を塗布し、硬化させ、プライマー組成物硬化層を得る工程、及び
工程B):
不陸調整層を形成する樹脂を塗布し、硬化させ、不陸調整層を得る工程。
ここで、不陸調整層に樹脂モルタルを使用する場合、樹脂組成物と骨材をあらかじめ混合して施工してもよいし、骨材を最初に施工面上に配置した後に樹脂組成物を上からかけることで施工面上で樹脂モルタルを形成させてもよいし、樹脂組成物を最初に施工面上に配置した後に骨材を上からかけることで施工面上で樹脂モルタルを形成させてもよい。
また、工程Aの後に工程Bが実施される場合の各工程の説明は以下の通りである。
工程A):
コンクリート床板の上に、含浸機能を有する、ラジカル反応硬化型アクリル樹脂を含むプライマー組成物を塗布し、硬化させ、プライマー組成物硬化層を得る工程、
工程B):
前記工程A)で得られたプライマー組成物硬化層に、不陸調整層を形成する樹脂を塗布し、硬化させ、不陸調整層を得る工程。
工程C):
前記工程AまたはBにおいて得られた層の上に、樹脂塗膜防水層を形成する樹脂を塗布し、硬化させ、樹脂塗膜防水層を得る工程。
工程D):
前記工程A、BまたはCにおいて得られた層の上に、接着層を塗布する工程。
ここで接着層に骨材を含む場合、接着層と骨材をあらかじめ混合して施工してもよいし、骨材を最初に施工面上に配置した後に接着層を上から施工してもよいし、接着層を最初に施工面上に配置した後に上から骨材を施工してもよい。
前記不陸調整層が、樹脂モルタルによって構成され、当該樹脂モルタルに使用される樹脂がラジカル反応硬化型アクリル樹脂であることが好ましい。これにより、防水性や接着力を向上させることができる。
プライマー組成物硬化層及び不陸調整層及び防水層において使用される樹脂がアクリル樹脂であると、プライマー組成物を塗布した後、硬化することを要することなく、不陸調整層を形成する樹脂を塗布することができるため好ましい。加えて樹脂塗膜防水層もアクリル樹脂であると、同様の理由から更に好ましい。
工程A及びB、必要に応じてCが、最初の工程を開始してから最終工程の硬化層を得るまでの時間が3時間以内とすることができる。
特に限定されるわけでないが、コンクリート床版上でプライマー層、不陸調整層または樹脂塗膜防水層を形成する塗料となる硬化性樹脂組成物(例えば、アクリル系ラジカル硬化性樹脂組成物)を施工するには、ローラー、刷毛、ゴムヘラ、レーキ、スプレー、コテ、箒等を用いて塗布し、常温で硬化させることができる。
その上に接着層としてアスファルト乳剤を施工する場合は、ローラー、刷毛、ゴムヘラ、レーキ、スプレー、アスファルトディストリビュータを備えたタンクローリー車等を用い塗布し、常温で乾燥させ、アスファルト層を得ることができる。この場合加熱等が不要であるため経済性に優れ、ローラー、刷毛、ゴムヘラ、レーキ、スプレー等を用いるため、特殊な技術が不要となり、短時間で塗布することが可能である。アスファルト乳剤を使用する場合、必要に応じて、樹脂塗膜防水層の上に、骨材を散布することで、防水層等の硬化性を高めるためにワックスが使用されていても接着層の材料となるアスファルト乳剤が容易に施工できるという効果が得られる。接着層として加熱溶融アスファルトを施工する場合は、溶融釜から取り出したアスファルトをレーキ等によって施工することができる。接着層としてアスファルトシートを施工する場合は、加熱溶融アスファルトなどを接着剤として流し張りすることができ、自着アスファルトシートであれば単体で施工することができる。
<アクリル系ラジカル硬化樹脂>
アクリル系ラジカル硬化樹脂は、前述の床版防水構造体あるいは前述の床版防水構造体の製造方法に用いるアクリル系ラジカル硬化樹脂である。アクリル系ラジカル硬化樹脂は、床版防水構造体のプライマー層、不陸調整層、防水層の原料として好適に用いることができる。
以下、添付図面を参照して、好ましい態様を具体的に説明するが、本発明は添付図面に限定されるものではない。
図1は、本発明の床版防水構造体の1つの態様を示す概略断面図である。床版防水構造体10は、下から順に、コンクリート床版1、プライマー層2及び不陸調整層3を有する。
図2は、本発明の床版防水構造体の別の態様を示す概略断面図である。床版防水構造体20は、下から順に、コンクリート床版1、プライマー層2、不陸調整層3、防水層4、接着層5、通常、接着層5上に舗装層6が施されている。
図2において、接着層5は骨材を含んでいてよい。
プライマー層2及び防水層4は、硬化性樹脂組成物によって形成されている。液状の硬化性樹脂組成物が硬化して、固体状の硬化物になる。
硬化性樹脂組成物は、アクリル系ラジカル硬化性樹脂組成物であることが好ましい。アクリル系ラジカル硬化性樹脂組成物がウレタン(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
以下、実施例を挙げて本開示を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
操作の手順は次のとおりである。特別に記載のない場合、操作は23℃で実施した。
[引張接着試験]
作成した床版防水構造体の上面に40×40mmの引張り接着試験治具を接着剤で取り付け、周囲に40×40mmの切り込みを基板に達するまで入れた後、23℃で、載荷速度毎秒0.1N/mmで鉛直方向に、接着界面またはコンクリート基板が破壊するまで引張り、接着強度を求めた。また破壊位置を記録した。
[防水性試験]
作成した床版防水構造体の上面及び下面を湿潤させ、道路橋床版水分計 HI−100(ケツト科学研究所、電気抵抗式)の電極を上面及び下面に接続し、23℃で、カウント値を測定した。水分計のカウント値が低い方が床版防水構造体の電気抵抗が高いことを意味しており、防水性能が高いと判定した。
[表面粗度(凹凸の平均深さ)の測定]
舗装・調査試験法便覧 (日本道路協会)の「砂を用いた舗装路面のきめ深さ測定方法(サンドパッチング方法)」に準拠した方法でコンクリート版及び床版防水構造体表面の表面粗度(凹凸の平均深さ)を求めた。
[連続施工性]
前層の施工開始から次層の施工開始まで0.5時間間隔で連続施工した際に、次層が施工できたものを○、前層が未硬化で次層が施工できなかったものを×とした。
以下において、略号の意味は次のとおりである。
(水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物)
HPMA: 2−ヒドロキシプロピルメタクリレート
(分岐構造を有する(メタ)アクリレート化合物)
EHMA: 2−エチルヘキシルメタクリレート
(環構造を有する(メタ)アクリレート化合物)
DCPOEMA: ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート
(硬化剤)
ナイパーNS:ベンゾイルパーオキサイドのフタル酸ジブチルによる濃度40%のサスペンジョン
[製造例1]ウレタンメタクリレート(1)の合成
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、空気導入口及び還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオール及び1,5−ペンタンジオール(モル比50:50)を原料とする数平均分子量1958g/molの非晶性ポリカーボネートジオール450質量部と、2,4−トリレンジイソシアネート82質量部、ジラウリン酸スズジブチル0.47質量部を仕込み、窒素気流下90℃で1時間反応させた。水酸基転化率が100.0%と理論値となったのを確認して、次いで、空気気流下で2−ヒドロキシプロピルメタクリレート74質量部を加え、90℃で2時間反応させた。イソシアネート基転化率が100.0%以上となった時点でターシャリーブチルカテコール0.030質量部を加え、数平均分子量;2594g/molのウレタンメタクリレート(1)を得た。
[製造例2]アクリル系ラジカル硬化樹脂含浸プライマー(含浸プライマー)の製造
合成例1で得られたウレタンメタクリレート(1)を20質量部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)を45質量部、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(DCPOEMA)を35質量部、パラフィンワックスを1質量部、オクチル酸コバルトを0.5質量部、p−トリルジエタノールアミンを0.15質量部及びベンゾイルパーオキサイドのフタル酸ジブチルによる濃度40%のサスペンジョン(ナイパーNS)を2質量部の割合で混合、撹拌し、23℃での粘度が79cPのアクリル系ラジカル硬化性樹脂含浸プライマー組成物(塗料)を調製した。
[製造例3]アクリル系ラジカル硬化樹脂モルタル(樹脂モルタル)の製造
合成例1で得られたウレタンメタクリレート(1)を20質量部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)を45質量部、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(DCPOEMA)を35質量部、パラフィンワックスを1質量部、オクチル酸コバルトを0.5質量部、p−トリルジエタノールアミンを0.15質量部、ベンゾイルパーオキサイドのフタル酸ジブチルによる濃度40%のサスペンジョン(ナイパーNS)を2質量部、5号珪砂を357質量部、及び炭酸カルシウムを210質量部の割合で混合、撹拌しアクリル系ラジカル硬化性樹脂モルタルを調製した。
[製造例4]アクリル系ラジカル硬化樹脂防水材(防水材)の製造
合成例1で得られたウレタンメタクリレート(1)を43質量部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)を14質量部、2−エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)を28質量部、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(DCPOEMA)を14質量部、パラフィンワックスを1質量部、オクチル酸コバルトを0.5質量部、p−トリルジエタノールアミンを0.15質量部及びベンゾイルパーオキサイドのフタル酸ジブチルによる濃度40%のサスペンジョン(ナイパーNS)を2質量部の割合で混合、撹拌し、アクリル系ラジカル硬化性樹脂組成物(塗料)を調製した。
[実施例1]
NEXCO試験方法 第4編 試験法433−2013に記載されているサイズ60×300×300mmのコンクリート平板を小型切削機(W50DC)で切削し、凹凸の平均深さ3.5mmとした上に含浸プライマーを0.3kg/mで施工し、含浸プライマーの塗布開始時間から30分後に樹脂モルタルを3.5L/mで施工した。樹脂モルタルの施工開始時間から30分後に引張接着性試験、防水性試験、表面粗度(凹凸の平均深さ)の測定を実施した。評価結果は表1に示す。
[実施例2]
NEXCO試験方法 第4編 試験法433−2013に記載されているサイズ60×300×300mmのコンクリート平板を小型切削機(W50DC)で切削し、凹凸の平均深さ3.5mmとした上に含浸プライマーを0.3kg/mで施工し、含浸プライマーの塗布開始時間から30分後に樹脂モルタルを3.5L/mで施工し、樹脂モルタルの塗布開始時間から30分後に防水材を0.8kg/mで施工した。防水材の施工開始時間から30分後に引張接着性試験、防水性試験、表面粗度(凹凸の平均深さ)の測定を実施した。評価結果は表1に示す。
[比較例1]
NEXCO試験方法 第4編 試験法433−2013に記載されているサイズ60×300×300mmのコンクリート平板を小型切削機(W50DC)で切削し、凹凸の平均深さ3.5mmとした上にコニシ株式会社製のエポキシ樹脂含浸プライマー:E−810を0.3kg/mで施工した。30分後に未硬化であったため、樹脂モルタル及び防水材は施工できなかった。
[比較例2]
NEXCO試験方法 第4編 試験法433−2013に記載されているサイズ60×300×300mmのコンクリート平板を小型切削機(W50DC)で切削し、凹凸の平均深さ3.5mmとした上に防水材を0.3kg/mで施工し、防水材の塗布開始時間から30分後に樹脂モルタルを3.5L/mで施工し、樹脂モルタルの塗布開始時間から30分後に防水材を0.8kg/mで施工した。防水材の施工開始時間から30分後に引張接着性試験、防水性試験、表面粗度(凹凸の平均深さ)の測定を実施した。評価結果は表1に示す。
[参考例1]
NEXCO試験方法 第4編 試験法433−2013に記載されているサイズ60×300×300mmのコンクリート平板にて接着性試験、防水性試験、表面粗度(凹凸の平均深さ)の測定を実施した。評価結果は表1に示す。
[参考例2]
NEXCO試験方法 第4編 試験法433−2013に記載されているサイズ60×300×300mmのコンクリート平板を小型切削機(W50DC)で切削し、凹凸の平均深さ3.5mmとし、接着性試験、防水性試験を実施した。評価結果は表1に示す。
Figure 2021095822
表1の参考例2、実施例1及び比較例2の結果より、含浸プライマーを使用することで切削済コンクリート板との接着強度が未切削下地並み以上に回復している事が分かる。
参考例2、実施例1の表面粗度の結果より、樹脂モルタルを使用することで切削済コンクリート板の凹凸が平面化されている事が分かる。
参考例2、実施例1及び実施例2の結果より、含浸プライマー及び不陸調整材(樹脂モルタル)の使用で防水性が発揮され、防水層の併用により更に防水性が高まる事が分かる。
実施例1と比較例1の結果より、ラジカル硬化アクリル樹脂系含浸プライマーは短時間施工に適する事が分かる。
本発明の床版防水構造体は、例えば、橋梁及び建築物の防水、特に道路橋や鉄道橋の防水に有用である。
1 コンクリート床版
2 プライマー層
3 不陸調整層
4 防水層
5 接着層
6 舗装層
10、20 床版防水構造体

Claims (22)

  1. コンクリート床版の上に、プライマー組成物硬化層と不陸調整層が設けられている床版防水構造体であって、
    プライマー組成物が含浸機能を有し、ラジカル反応硬化型アクリル樹脂を含む、床版防水構造体。
  2. コンクリート床版の上に、順に、前記プライマー組成物硬化層、不陸調整層が設けられている、請求項1に記載の床版防水構造体。
  3. コンクリート床版の上に、さらに防水層が設けられている、請求項1に記載の床版防水構造体。
  4. コンクリート床版の上に、順に、前記プライマー組成物硬化層、不陸調整層及び防水層が設けられている、請求項3に記載の床版防水構造体。
  5. 不陸調整層が、樹脂モルタルによって構成されている請求項1〜4のいずれかに記載の床版防水構造体。
  6. 樹脂モルタルに使用される樹脂がラジカル反応硬化型アクリル樹脂である請求項5に記載の床版防水構造体。
  7. 不陸調整層が、ポリマーセメントモルタルによって構成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の床版防水構造体。
  8. 防水層が樹脂塗膜防水層によって構成されている請求項3〜7のいずれか一項に記載の床版防水構造体。
  9. 樹脂塗膜防水層がラジカル反応硬化型アクリル樹脂によって構成されている請求項8に記載の床版防水構造体。
  10. ラジカル反応硬化型アクリル樹脂にポリカーボネートポリオール由来の構造を有するウレタンアクリレートが含まれる請求項9に記載の床版防水構造体。
  11. 前記ラジカル反応硬化型アクリル樹脂によって構成されている樹脂塗膜防水層の伸度は、含浸機能を有しラジカル反応硬化型アクリル樹脂を含むプライマー組成物硬化層の伸度よりも大きい、請求項9又は10に記載の床版防水構造体。
  12. 防水層の上にアスファルト塗膜系の舗装接着層が設けられている請求項3〜11のいずれか一項に記載の床版防水構造体。
  13. 舗装接着層中に骨材を含む請求項12に記載の床版防水構造体。
  14. コンクリート床版の上に、プライマー組成物硬化層と不陸調整層が設けられている床版防水構造体の製造方法であって、
    以下の2つの工程を含む床版防水構造体の製造方法。
    工程A)含浸機能を有する、ラジカル反応硬化型アクリル樹脂を含むプライマー組成物を塗布し、硬化し、プライマー組成物硬化層を得る工程、及び
    工程B)不陸調整層を形成する樹脂を塗布し、硬化させ、不陸調整層を得る工程。
  15. 前記工程A又はBにおいて得られた層の上に、樹脂塗膜防水層を形成する樹脂を塗布し、硬化させ、樹脂塗膜防水層を得る工程を含む、請求項14に記載の床版防水構造体の製造方法。
  16. 不陸調整層が、樹脂モルタルによって構成され、当該樹脂モルタルに使用される樹脂がラジカル反応硬化型アクリル樹脂である、請求項14又は15に記載の床版防水構造体の製造方法。
  17. プライマー組成物の塗布を開始してから樹脂塗膜防水層を得るまでの時間が3時間以内である、請求項15又は16のいずれか一項に記載の床版防水構造体の製造方法。
  18. コンクリート床版の上に、プライマー組成物硬化層と不陸調整層が設けられている床版防水構造体の製造方法であって、 以下の2つの工程を含む床版防水構造体の製造方法。
    A)含浸機能を有する、ラジカル反応硬化型アクリル樹脂を含むプライマー組成物を塗布し、プライマー組成物硬化層を得る工程、及び
    B)得られたプライマー組成物硬化層の上に、ラジカル反応硬化型アクリル樹脂を含む不陸調整層を形成する樹脂を塗布し、不陸調整層を得る工程。
  19. 前記工程A又はBにおいて得られた層の上に、樹脂塗膜防水層を形成する樹脂を塗布し、樹脂塗膜防水層を得る工程を含む、請求項18に記載の床版防水構造体の製造方法。
  20. コンクリート床版の上に、前記工程Aを実施し、工程Aで得られた層の上に前記工程Bを実施する、請求項14〜19のいずれか一項に記載の床版防水構造体の製造方法。
  21. 請求項1〜13のいずれか一項に記載の床版防水構造体あるいは請求項14〜20のいずれか一項に記載の床版防水構造体の製造方法に用いるプライマー組成物であって、
    含浸機能を有し、ラジカル反応硬化型アクリル樹脂を含むプライマー組成物。
  22. 請求項1〜13のいずれか一項に記載の床版防水構造体あるいは請求項14〜20のいずれか一項に記載の床版防水構造体の製造方法において、不陸調整層を形成する樹脂として用いる、ラジカル反応硬化型アクリル樹脂。
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