JP2021088480A - 炭素材料の製造方法、炭素材料、炭素材料含有材料の製造方法、炭素材料含有材料、および有機無機複合体 - Google Patents

炭素材料の製造方法、炭素材料、炭素材料含有材料の製造方法、炭素材料含有材料、および有機無機複合体 Download PDF

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Abstract

【課題】構造が精密に制御された炭素材料を温和な条件で簡便に製造する方法および該炭素材料の提供。該炭素材料含有材料を、温和な条件で簡便に製造する方法の提供。該炭素材料と無機物とが共有結合によって結合されている炭素材料含有材料の提供。カーボンコート無機粒子や中空炭素微粒子等を製造するために有用な、温和な条件で工業的に製造可能な中間材料の提供。【解決手段】加熱によって同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きる化合物(A)を含む組成物を加熱する加熱工程(i)を含み、該工程(i)における加熱温度は、該化合物(A)の縮合反応温度がT℃であるとき(T−150)℃以上であり、該化合物(A)が分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有し、該工程(i)が、該化合物(A)の、同一分子間および/または異種分子間における2つの該フェノール性OH基間の縮合反応を含む製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、炭素材料の製造方法、炭素材料、炭素材料含有材料の製造方法、炭素材料含有材料、および有機無機複合体に関する。
近年、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラファイト、グラフェン、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン、人造黒鉛、カーボンブラックなどの炭素材料は、それぞれ、その特徴的な物性に起因して、各種分野における新規な機能性材料として期待されている(例えば、非特許文献1〜3)。
グラフェンは2次元シート状の炭素材料であり、sp2炭素による六員環で敷き詰められた構造をしている。グラファイトは、通常、2次元シート状のグラフェン同士がファンデルワールス力で結合した多数の積層構造をしているものを指すが、1層のものをグラフェンと称する。2層−10層のグラフェンが積層した材料を多層グラフェンと呼び,2層−5層のグラフェンが積層した材料は数層グラフェンと呼ぶ。1層のグラフェンではベーサル面に官能基を導入することでグラフェン自体の特性や形状が大きく変化する。3層以上となると、グラフェンのベーサル面に官能基を導入しても中心部のグラフェンは直接影響を受けにくくなる。そのため,3層以上のグラフェンは基本的には層数が増加し、比表面積が減少する以外には際立った性質の違いは現れにくくなる。
グラフェンの存在は古くから知られていたが、グラファイトから1枚のグラフェンを取り出す方法は最近まで確立されていなかった。2004年になって、高配向性の無水グラファイトの表面を粘着テープで剥離し、剥離したものを基板の上に貼り付ける方法によってグラフェンの薄片を取り出せることが見出され、その後、大量生産や低コスト生産を目指して、CVD(化学気相蒸着製膜法)などの気相製膜法によるグラフェンの製造方法や、酸化グラフェン(GO)の還元法によるグラフェン(還元型酸化グラフェン:RGO)の製造方法が検討されている。
しかし、CVD(化学気相蒸着製膜法)などの気相製膜法によるグラフェンの製造方法は、膜以外の形状(代表的には、バルク状)として得ることができないという問題、可燃性ガスを使用しなければならないという問題、Cu等の触媒性能を有する金属基板上に製膜させるため、金属が不純物として含有してしまうという問題がある。
また、同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きる化合物を加熱して炭素材料を製造する方法が開示されている(特許文献1)。この技術では温和な条件で炭素材料が合成できることが示されている。
工業的に製造されている炭素材料は、様々な官能基を有している。このため、炭素材料の構造を精密に制御することが難しく、物性にばらつきが生じてしまうという問題がある。近年、狙った物性を確実に発現できる炭素材料が求められており、このため、構造が精密に制御された炭素材料の開発が求められている。
また、近年の省資源化や省エネルギー化のトレンドを踏まえ、軽量な炭素材料が開発され、各種分野で用いられている。このような軽量な炭素材料を備えた各種分野で有用な化合物として、例えば、カーボンコート無機粒子、中空炭素微粒子などの炭素材料含有材料が報告されている(例えば、特許文献2〜5、非特許文献3〜6)。また、工業的に製造されている炭素材料含有材料として、活性炭やカーボンブラックなどが知られている。
しかし、従来のカーボンコート無機粒子や中空炭素微粒子などの炭素材料含有材料は、カーボンコートさせる無機粒子や中空構造のベースとなる微粒子の表面に、気相反応や高温蒸着反応などによって炭素材料膜を形成させて製造しなければならず、低コストで大量生産を行う工業的な製造に対して適用することが困難である。
また、工業的に製造されている活性炭やカーボンブラックなども含めて上記のような炭素材料含有材料は、様々な官能基を有している。このため、炭素材料含有材料の構造を精密に制御することが難しく、物性にばらつきが生じてしまうという問題がある。近年、狙った物性を確実に発現できる炭素材料含有材料が求められており、このため、構造が精密に制御された炭素材料含有材料の開発が求められている。
特開2019−085298号公報 特開平7−187849号公報 特開平7−267618号公報 特開2005−281065号公報 特開2010−168251号公報
Nature,354,p.56−58(1991) Science,306,p.666−669(2004) H.Nishihara et.al., Adv.Funct.Mater., 26, 6418−6427(2016) 齋藤理一郎著, 「グラフェンの最先端技術と広がる応用」, 第2章.グラフェンの基礎物性, 3.グラフェンの光電子物性 Dawei Pan et.al., Langmuir, 22, 5872−5876(2006) V.Ruiz et.al., Electrochemistry Communications, 24, 35−38(2012)
本発明の課題は、構造が精密に制御された炭素材料を、温和な条件で簡便に製造する方法を提供することにある。また、構造が精密に制御された炭素材料を提供することにある。また、溶媒への可溶性を有する炭素材料含有材料や、構造が精密に制御された炭素材料含有材料を、温和な条件で簡便に製造する方法を提供することにある。また、構造が精密に制御され、炭素材料と無機物とが共有結合によって結合されている炭素材料含有材料を提供することにある。さらに、カーボンコート無機粒子や中空炭素微粒子などの炭素材料含有材料を工業的に製造するため等に有用な、温和な条件で工業的に製造可能な有機無機複合体を提供することにある。
本発明の炭素材料の製造方法は、
加熱によって同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きる化合物(A)を含む組成物を加熱する加熱工程(i)を含み、
該加熱工程(i)における加熱温度は、該化合物(A)の縮合反応温度がT℃であるときに、(T−150)℃以上であり、
該化合物(A)が分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物であり、
該加熱工程(i)が、該化合物(A)の、同一分子間および/または異種分子間における2つの該フェノール性OH基間の縮合反応を含む。
本発明の炭素材料は、
元素分析における炭素原子と水素原子と酸素原子の含有割合が、炭素原子の含有割合を6.0atom%としたときに、水素原子の含有割合が1.0atom%〜8.0atom%であり、酸素原子の含有割合が0.1atom%〜4atom%である。
本発明の炭素材料含有材料の製造方法は、
炭素材料含有材料を製造する方法であって、
加熱によって同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きる化合物(A)と無機物を含む組成物を加熱する加熱工程(I)を含み、
該加熱工程(I)における加熱温度は、該化合物(A)の縮合反応温度がT℃であるときに、(T−150)℃以上であり、
該化合物(A)が分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物であり、
該加熱工程(I)が、該化合物(A)の、同一分子間および/または異種分子間における2つの該フェノール性OH基間の縮合反応を含む。
一つの実施形態においては、上記加熱工程(I)の後、上記化合物(A)の加熱によって生成する炭素材料の少なくとも一部を除去する炭素材料除去工程を含む。
一つの実施形態においては、上記炭素材料除去工程の後、さらに加熱する加熱工程(II)を含む。
一つの実施形態においては、上記加熱工程(I)の後、前記無機物を除去する無機物除去工程を含む。
一つの実施形態においては、上記無機物除去工程の後、さらに加熱する加熱工程(II)を含む。
一つの実施形態においては、上記化合物(A)の分子量が500以下である。
一つの実施形態においては、上記化合物(A)の縮合反応温度が450℃以下である。
一つの実施形態においては、上記化合物(A)の縮合反応温度が400℃以下である。
一つの実施形態においては、上記化合物(A)の、窒素ガス雰囲気下、40℃から、10℃/分の昇温条件によってTG−DTA分析を行ったときの、温度50℃における初期重量M50に対する温度500℃における重量M500の重量比(M500/M50)が0.2以上である。
一つの実施形態においては、上記縮合反応が酸触媒によって促進される。
一つの実施形態においては、上記無機物が、無機酸化物、無機窒化物、無機硫化物、無機炭化物、不溶性塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
一つの実施形態においては、上記無機酸化物が、表面に官能基を有する無機酸化物粒子である。
一つの実施形態においては、上記無機酸化物粒子が、シリカ粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、酸化マグネシウム粒子、ポリ酸粒子、その表面の少なくとも一部が酸化された金属粒子、複合酸化物粒子、固溶体酸化物粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
一つの実施形態においては、上記ポリ酸粒子を構成する金属が、モリブデン、バナジウム、タングステン、ニオブ、チタン、タンタルからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
一つの実施形態においては、上記無機酸化物の分解温度が800℃以上である。
本発明の炭素材料含有材料は、
炭素材料と無機物を含む炭素材料含有材料であって、
該炭素材料の少なくとも一部と該無機物の少なくとも一部とが共有結合によって結合しており、
該炭素材料の元素分析における炭素原子と水素原子と酸素原子の含有割合が、炭素原子の含有割合を6.0atom%としたときに、水素原子の含有割合が1.0atom%〜8.0atom%であり、酸素原子の含有割合が0.1atom%〜4atom%である。
一つの実施形態においては、本発明の炭素材料含有材料は、13C−NMR分析において、125ppm〜135ppmの間にピークを示す。
一つの実施形態においては、本発明の炭素材料含有材料は、13C−NMR分析において、140ppm〜160ppmの間にピークを示す。
本発明の有機無機複合体は、
炭素材料と無機物を含む有機無機複合体であって、
該炭素材料が溶媒に可溶であり、
該炭素材料の元素分析における炭素原子と水素原子と酸素原子の含有割合が、炭素原子の含有割合を6.0atom%としたときに、水素原子の含有割合が1.0atom%〜8.0atom%であり、酸素原子の含有割合が0.1atom%〜4atom%である。
一つの実施形態においては、上記溶媒がN−メチルピロリドンである。
一つの実施形態においては、上記無機物が、無機酸化物、無機窒化物、無機硫化物、無機炭化物、不溶性塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
一つの実施形態においては、上記無機酸化物が、表面に官能基を有する無機酸化物粒子である。
一つの実施形態においては、上記無機酸化物粒子が、シリカ粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、酸化マグネシウム粒子、ポリ酸粒子、その表面の少なくとも一部が酸化された金属粒子、複合酸化物粒子、固溶体酸化物粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
一つの実施形態においては、上記ポリ酸粒子を構成する金属が、モリブデン、バナジウム、タングステン、ニオブ、チタン、タンタルからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
本発明によれば、構造が精密に制御された炭素材料を、温和な条件で簡便に製造する方法を提供することができる。また、構造が精密に制御された炭素材料を提供することができる。また、溶媒への可溶性を有する炭素材料含有材料や、構造が精密に制御された炭素材料含有材料を、温和な条件で簡便に製造する方法を提供することができる。また、本発明によれば、構造が精密に制御され、炭素材料と無機物とが共有結合によって結合されている炭素材料含有材料を提供することができる。さらに、本発明によれば、カーボンコート無機粒子や中空炭素微粒子などの炭素材料含有材料を工業的に製造するため等に有用な、温和な条件で工業的に製造可能な有機無機複合体を提供することができる。
本発明の製造方法によって得られる炭素材料含有材料の一つの実施形態である有機無機複合体、ならびに、本発明の有機無機複合体の一つの好ましい実施形態を示す概略断面図である。 本発明の製造方法によって得られる炭素材料含有材料の一つの実施形態である炭素材料含有粒子の一例であるコアシェル粒子、ならびに、本発明の有機無機複合体から得られ得るコアシェル粒子を示す概略断面図である。 実施例1〜4で得られる有機無機複合体(1)〜(4)のXPSスペクトル(C1s)図である。 実施例1〜4で得られる有機無機複合体(1)〜(4)のTG−DTA分析におけるDTA分析の結果を示す測定図である。 実施例1〜4で得られる有機無機複合体(1)〜(4)のIRスペクトル図である。 実施例1〜4で得られる有機無機複合体(1)〜(4)のラマンスペクトル図である。 実施例5〜8で得られる有機無機複合体(5)〜(8)のXPSスペクトル(C1s)図である。 実施例5〜8で得られる有機無機複合体(5)〜(8)のIRスペクトル図である。 実施例9で得られる有機無機複合体(9)のラマンスペクトル図である。 実施例9で得られる高炭素化コアシェル粒子(9)のSEM写真図である。 実施例9で得られる高炭素化コアシェル粒子(9)の表面のラマンスペクトル図である。 実施例9で得られる高炭素化コアシェル粒子(9)および比較例3で得られた粒子の13C−NMR図である。 実施例9で得られる高炭素化コアシェル粒子(9)、比較例3で得られた粒子、およびシリカ粒子の29Si−NMR図である。 実施例10で得られる高炭素化コアシェル粒子(10)の表面のラマンスペクトル図である。 実施例11で得られる高炭素化コアシェル粒子(11)の表面のラマンスペクトル図である。 高炭素化コアシェル粒子(11)のSPS焼結により得られる焼結体と、アルミニウムのSPS焼結により得られる焼結体の、ビッカース硬度の比較グラフ図である。 実施例12で得られる高炭素化コアシェル粒子(12)の表面のラマンスペクトル図である。 実施例13で得られる高炭素化コアシェル粒子(13)の表面のラマンスペクトル図である。 実施例14で得られる高炭素化コアシェル粒子(14)の表面のラマンスペクトル図である。 実施例15で得られる高炭素化コアシェル粒子(15)の表面のラマンスペクトル図である。 実施例16で得られる高炭素化コアシェル粒子(16)の表面のラマンスペクトル図である。 実施例17で得られる高炭素化コアシェル粒子(17)の表面のラマンスペクトル図である。 実施例18で得られる高炭素化コアシェル粒子(18)の表面のラマンスペクトル図である。 実施例19で得られる高炭素化コアシェル粒子(19)の表面のラマンスペクトル図である。 実施例20で得られる高炭素化コアシェル粒子(20)の表面のラマンスペクトル図である。 実施例21で得られる有機無機複合体(21)の表面のラマンスペクトル図である。 実施例21で得られる高炭素化コアシェル粒子(21)の表面のラマンスペクトル図である。 実施例22で得られる有機無機複合体(22)の表面のラマンスペクトル図である。 実施例22で得られる高炭素化コアシェル粒子(22)の表面のラマンスペクトル図である。 実施例23で得られる有機無機複合体(23)の表面のラマンスペクトル図である。 実施例23で得られる高炭素化コアシェル粒子(23)の表面のラマンスペクトル図である。 実施例24で得られる有機無機複合体(24)の表面のラマンスペクトル図である。 実施例24で得られる高炭素化コアシェル粒子(24)の表面のラマンスペクトル図である。 実施例1〜8で得られた炭素材料の13C−NMR分析結果である。
≪≪1.炭素材料の製造方法≫≫
本発明の炭素材料の製造方法は、加熱によって同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きる化合物(A)を含む組成物を加熱する加熱工程(i)を含み、該加熱工程(i)における加熱温度は、該化合物(A)の縮合反応温度がT℃であるときに、(T−150)℃以上であり、該化合物(A)が分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物であり、該加熱工程(i)が、該化合物(A)の、同一分子間および/または異種分子間における2つの該フェノール性OH基間の縮合反応を含む。
加熱によって同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きる化合物(A)を含む組成物中の該化合物(A)の含有割合は、好ましくは50重量%〜100重量%であり、より好ましくは80重量%〜100重量%であり、さらに好ましくは90重量%〜100重量%であり、特に好ましくは95重量%〜100重量%であり、最も好ましくは実質的に100重量%である。
ここにいう「実質的に、」とは、化合物(A)に起因する効果以外の効果を発現させるための別の成分が、化合物(A)に積極的に備えられたり、化合物(A)と積極的に併用されたりする形態を除くことを意味し、例えば、本発明の効果を損なわない範囲で、製造過程などによって不可避に混入する不純物等の含有は許容される。
加熱によって同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きる化合物(A)を含む組成物中には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分が含まれていてもよい。このような他の成分としては、例えば、溶媒、触媒、母材、担体などが挙げられる。
なお、上記の任意の適切な他の成分には、後述する炭素材料含有材料を製造する際に用いる、化合物(A)を含む組成物中に含まれる無機物は除かれる。
加熱工程(i)における加熱温度は、化合物(A)の縮合反応温度がT℃であるときに、(T−150)℃以上であり、好ましくは(T−150〜T+50)℃であり、より好ましくは(T−130〜T+45)℃であり、さらに好ましくは(T−100〜T+40)℃であり、特に好ましくは(T−80〜T+35)℃であり、最も好ましくは(T−50〜T+30)℃である。加熱温度を上記範囲に調整することにより、構造が精密に制御された炭素材料を、温和な条件で簡便に製造し得る。
化合物(A)の縮合反応温度は、TG−DTA分析によって決定できる。具体的には、下記の通りである。
(1)化合物(A)として1種の化合物を用いる場合には、化合物(A)のTG−DTA分析を、窒素ガス雰囲気下、40℃から、昇温速度10℃/分で昇温し、DTAの最も低温側のピークトップ温度を化合物(A)の縮合反応温度(T℃)と決定する。
(2)化合物(A)として2種以上の化合物の混合物を用いる場合には、該混合物のTG−DTA分析を、窒素ガス雰囲気下、40℃から、昇温速度10℃/分で昇温し、DTAの最も低温側のピークトップ温度を化合物(A)(2種以上の化合物の混合物)の縮合反応温度(T℃)と決定する。
(3)ただし、1種の化合物や2種以上の化合物の混合物としての化合物(A)に、例えば、溶媒や水分や水和水等の不純物が含まれている場合は、該不純物の脱離に伴うDTAピーク(不純物ピークと称することもある)が縮合反応温度よりも低温で観測されることがある。このような場合には、上記の不純物ピークは無視して、その化合物(A)の縮合反応温度を決定する。通常は、上記の不純物ピークは無視した上で、DTAの最も低温側のピークトップ温度を、その化合物(A)の縮合反応温度と決定する。
加熱工程(i)における加熱温度は、具体的な加熱温度として、好ましく100℃〜800℃であり、より好ましくは150℃〜700℃であり、さらに好ましくは200℃〜650℃であり、最も好ましくは250℃〜600℃である。加熱温度を上記範囲に調整することにより、構造が精密に制御された炭素材料を、温和な条件で簡便に製造し得る。
なお、得られる炭素材料の溶解性を考慮すると、加熱工程(i)における加熱温度は、好ましくは200℃以上500℃未満であり、より好ましくは220℃以上400℃未満であり、さらに好ましくは230℃〜350℃であり、特に好ましくは250℃〜300℃である。
加熱工程(i)における加熱時間は、具体的な加熱時間として、好ましくは0.1時間〜120時間であり、より好ましくは0.5時間〜100時間であり、さらに好ましくは1時間〜50時間であり、最も好ましくは2時間〜24時間である。加熱時間を上記範囲に調整することにより、構造が精密に制御された炭素材料を、温和な条件で簡便に製造し得る。
本発明の炭素材料の製造方法においては、好ましくは、分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物を含む組成物(好ましくは、分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物)を、金属と接触させない状態で焼成する。分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物を含む組成物(好ましくは、分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物)を、金属と接触させない状態で焼成することにより、得られる炭素材料中に金属が不純物として含有してしまうことを抑制し得る。ただし、上記のように金属と接触させないというのは積極的に金属に接触させないという意味であり、製造の工程上、例えば焼成炉の底面、壁面に接触してしまう場合は含まない。積極的に接触させるというのは、後述のような、分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物を含む組成物(好ましくは、分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物)を薄膜状にすることで、金属との接触面積を積極的に増やす等の操作を意味する。
本発明の炭素材料の製造方法においては、好ましくは、分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物を含む組成物(好ましくは、分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物)を、触媒反応を用いずに焼成する。分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物を含む組成物(好ましくは、分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物)を、触媒反応を用いずに焼成することにより、反応触媒が炭素材料中に存在してしまって致命的な不純物となることを抑制し得る。
本発明の炭素材料の製造方法においては、好ましくは、分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物を含む組成物(好ましくは、分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物)をバルク状態で焼成する。分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物を含む組成物(好ましくは、分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物)をバルク状態で焼成するとは、例えば、(i)分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物を含む組成物(好ましくは、分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物)からなる粒子(粉体)を焼成する、(ii)分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物を含む組成物(好ましくは、分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物)からなる粒子(例えば、粉体)を圧縮成形等でペレット状やフィルム状に成形を行った後、その成形体を焼成する、等の行為を包含する。粒子(例えば、粉体)や成形体を焼成する際、例えば、容器に入れて加熱してもよい。容器としては、任意の適切な容器を採用し得る。このような容器としては、例えば、加熱温度で実質的に変質しない材質からなるものが好ましい。また、粒子(例えば、粉体)や成形体が接触する表面が、焼成する際に、分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物を含む組成物(好ましくは、分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物)と化学反応しないような材質であることが好ましい。粒子(例えば、粉体)や成形体を好ましい条件で焼成することにより、炭素材料を得ることが可能となり、その加熱する工程において、分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物の融点付近で該化合物(a)が融解して液体状になることがある。このような経過を経る場合も「分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物を含む組成物(好ましくは、分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物)をバルク状態で焼成する」ことに含まれる。一方、本発明の意味する「バルク状態で焼成する」ものではない例としては、例えば、分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物を含む組成物(好ましくは、分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物)を溶剤に溶解して任意の基材状に塗布して膜状にして該基材とともに加熱することにより薄膜を形成する方法、化学気相成長法(CVD)法、物理気相成長法(PVD)、薄膜蒸着加熱法、などが挙げられる。薄膜としてはおおむね膜厚が1μm以下の範囲を意味する。
加熱工程(i)における加熱(焼成と称する場合もある)の方法としては、管状炉、ボックス炉のような焼成炉、熱媒を利用した加熱反応装置、マイクロ波を利用した加熱反応装置などが使用できる。加熱の条件としては、真空下、常圧下、加圧下などで行うことができる。加熱雰囲気の条件としては、大気下、不活性ガス雰囲気下などで行うことができる。加熱雰囲気の条件としては、好ましくは、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下である。
≪1−1.化合物(A)≫
化合物(A)は、加熱によって同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きる。そして、化合物(A)を含む組成物を加熱する加熱工程(i)によって、化合物(A)は炭素材料となり得る。
化合物(A)は、分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物である。分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
本発明の炭素材料の製造方法において、化合物(A)として、分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物を採用することにより、加熱工程(i)が、該化合物(A)の、同一分子間および/または異種分子間における2つの該フェノール性OH基間の縮合反応を含む。なお、加熱工程(i)においては、上記の同一分子間および/または異種分子間における2つの該フェノール性OH基間の縮合反応以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、同一分子間および/または異種分子間における、任意の適切な他の2つの基の間の縮合反応を含んでいてもよい。
分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物の、同一分子間および/または異種分子間における2つの該フェノール性OH基間の縮合反応により、好ましくは、少なくともC−O−C結合によって2つの芳香環が結合した構造が形成される。さらに、上記の縮合反応、および該縮合反応に続いたり併行して起こったりする他の反応により、2つ以上の芳香環同士の間に新たな結合(例えば、C−C結合など)が形成したり、高分子量化が進行したりし得る。
なお、上記C−C結合の形成は、例えば、C−O−C結合からの脱酸素反応、芳香環に直接結合したH基とOH基との間の脱水反応、芳香環に直接結合したH基とH基との間の脱水素反応などによって起こり得る。
また、化合物(A)の選択や、加熱工程(i)における各種条件の選択によって、2つ以上の芳香環同士の間での縮環反応も起こり得る。
分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物としては、例えば、一般式(1)〜(11)に示す化合物が挙げられる。
Figure 2021088480
一般式(1)〜(11)のそれぞれにおいて、Xは水素原子または水酸基を表し、Xの中の2つ以上がフェノール性OH基である。
ここで、フェノール性OH基とは、芳香環に結合した水酸基を意味する。すなわち、一般式(1)においては、芳香環に結合した6つのXの中の2つ以上がフェノール性OH基であり、一般式(2)においては、芳香環に結合した6つのXの中の2つ以上がフェノール性OH基であり、一般式(3)においては、芳香環に結合した10個のXの中の2つ以上がフェノール性OH基であり、一般式(4)においては、芳香環に結合した11個のXの中の2つ以上がフェノール性OH基であり、一般式(5)においては、芳香環に結合した9つのXの中の2つ以上がフェノール性OH基であり、一般式(6)においては、芳香環に結合した9つのXの中の2つ以上がフェノール性OH基であり、一般式(7)においては、芳香環に結合した10個のXの中の2つ以上がフェノール性OH基であり、一般式(8)においては、芳香環に結合した11個のXの中の2つ以上がフェノール性OH基であり、一般式(9)においては、芳香環に結合した9つのXの中の2つ以上がフェノール性OH基であり、一般式(10)においては、芳香環に結合した9つのXの中の2つ以上がフェノール性OH基であり、一般式(11)においては、芳香環に結合した12個のXの中の2つ以上がフェノール性OH基である。
分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物の中でも、同一分子間および/または異種分子間における2つのフェノール性OH基間の縮合反応が起こりやすいと推察され、反応が進行しやすいと推察される点で、好ましくは、フロログルシノール、ヘキサヒドロキシトリフェニレン、ポリフェノール、ジヒドロキシベンゼン(例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコールなど)、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシアントラセン、ジヒドロキシフェナントレン、ジヒドロキシピレン、ジヒドロキシトリフェニレンなどが挙げられる。また、上記に挙げた化合物がさらに置換基を有するものや、ヘテロ元素含有環を有するものも挙げられる。これらの中でも、本発明の効果をより発現し得る点で、より好ましくは、フロログルシノール、ヘキサヒドロキシトリフェニレン、ポリフェノールが挙げられる。
ポリフェノールとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なポリフェノールを採用し得る。このようなポリフェノールとしては、例えば、イチョウ葉エキス、マンゴスチンエキス、イチゴ種子エキス、クルミポリフェノール、ガラナエキス、ジャワショウガエキス、ノビレチン、ブルーベリー葉エキス、メリンジョエキス、ブドウレスベラトロール、リンゴンベリーエキス、コケモモエキス、グネチンC、ε−ビニフェリン、レスベラトロール、ブドウ種子エキス、黒大豆種皮ポリフェノール、黒豆種皮ポリフェノール、カシスエキス、クルクミン、ホワイトクルクミノイド、ポリメトキシフラボノイド(PMF)、ジヒドロケルセチン、マリアアザミエキス、シリマリン、シリビニン、αGヘスペリジン、ヘスペリジン、メチルヘスペリジン、オレンジ由来ルチノシド、ヘスペレチン、ピクノジェノール、オリゴノール、アマニリグナン、パセリエキス、マキベリーエキス、キウイ種子エキス、シソの実エキス、アカジソエキス、紫蘇葉、アロニアエキス、ハスカップエキス、シアニジン−3−グルコシド、ウラジロガシ抽出エキス、アサイーエキス、カムカムエキス、マロンポリフェノール、大豆イソフラボン、柑橘フルーツエキス、海藻ポリフェノール、パミスエキス、オリーブ果実エキス、スダチ果皮エキス、レンコンエキス、ウコンエキス、エキナケア(エキナセア)、荷葉エキス(ハスの葉)、カンカニクジュヨウ、グアバ葉エキス、クワ葉エキス、ベニバナエキス、コーンシルクエキス、サラシアエキス、シャゼンソウエキス(オオバコ)、セイヨウサンザシエキス、チンピエキス、田七人参エキス、甜茶エキス、トウヒ抽出液、ドクダミエキス、ヤーコンエキス、ラフマエキス、緑茶エキスなどが挙げられる。ポリフェノールは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物は、好ましくは、23℃環境下で固体であって融点を有する。融点を有することで、焼成の過程で融解し、分子間での反応が良好に進行する。仮に融点を有さない場合、焼成の過程で融解しないので、分子の位置が固定され、分子間での反応が促進されにくく、炭素材料化しにくい。このような化合物を採用することにより、縮合反応を促進し得るとともに、分解反応を抑制し得る。
≪≪2.炭素材料≫≫
本発明の炭素材料は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な方法で製造し得る。好ましくは、≪≪1.炭素材料の製造方法≫≫において説明した製造方法によって製造し得る。
本発明の炭素材料は、元素分析における炭素原子と水素原子と酸素原子の含有割合が、炭素原子の含有割合を6.0atom%としたときに、水素原子の含有割合が1.0atom%〜8.0atom%であり、酸素原子の含有割合が0.1atom%〜4atom%である。
本発明の炭素材料は、元素分析における炭素原子と水素原子と酸素原子の含有割合が、炭素原子の含有割合を6.0atom%としたときに、水素原子の含有割合の下限が、好ましくは1.2atom%以上であり、より好ましくは1.5atom%以上であり、水素原子の含有割合の上限が、好ましくは7.0atom%以下であり、より好ましくは5.0atom%以下である。
本発明の炭素材料は、元素分析における炭素原子と水素原子と酸素原子の含有割合が、炭素原子の含有割合を6.0atom%としたときに、酸素原子の含有割合の下限が、好ましくは1.0atom%以上であり、より好ましくは1.2atom%以上であり、さらに好ましくは1.5atom%以上であり、酸素原子の含有割合の上限が、好ましくは3.5atom%以下であり、より好ましくは3.2atom%以下であり、さらに好ましくは2.5atom%以下である。
本発明の炭素材料における、元素分析における炭素原子と水素原子と酸素原子の含有割合が上記範囲内にあれば、構造が精密に制御された炭素材料を提供することができる。また、提供される炭素材料の溶解性を向上させることができる。なお、炭素原子と水素原子と酸素原子の含有割合は、市販の元素分析装置を用いて、C、H、Oの元素分析を行い、得られた結果に基づき、求めることができる。このような分析装置としては、例えば、Exeter Analytical, Inc.社製の元素分析装置(CE−440F)などを採用し得る。
本発明の炭素材料は、好ましくは、C−O−C結合とC−C結合を有する。ここにいう結合の炭素原子(C)は、好ましくは、芳香環の炭素原子である。
本発明の炭素材料が有するC−O−C結合は、好ましくは、分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物の、同一分子間および/または異種分子間における2つの該フェノール性OH基間の縮合反応により形成される。
本発明の炭素材料が有するC−C結合は、好ましくは、C−O−C結合からの脱酸素反応、芳香環に直接結合したH基とOH基との間の脱水反応、芳香環に直接結合したH基とH基との間の脱水素反応などによって形成される。
本発明の炭素材料が有するC−O−C結合とC−C結合の割合は、C−O−C結合数1に対して、C−C結合数が、好ましくは0.1〜2.0であり、より好ましくは0.1〜1.2であり、さらに好ましくは0.1〜0.6であり、特に好ましくは0.1〜0.3である。本発明の炭素材料が有するC−O−C結合とC−C結合の割合が上記範囲内にあれば、構造が精密に制御された炭素材料を提供することができる。また、提供される炭素材料の溶解性を向上させることができる。このようなC−O−C結合とC−C結合の割合は、例えば、XPS分析などで評価することができる。
本発明の炭素材料は、好ましくは、下記の(1)〜(6)からなる群から選ばれる少なくとも1種の態様を有する。
(1)C1sXPS分析による、全結合、すなわち、C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合(アルコール由来のC−O結合、エーテル由来のC−O結合、エポキシ由来のC−O結合等含む)とC=O結合(カルボニル由来のC=O結合、カルボキシル由来のC=O結合、エステル由来のC=O結合、ラクトン由来のC=O結合等含む)の合計量に対する、全炭素酸素結合、すなわち、C−O結合とC=O結合の合計量の割合が、好ましくは10%以上であり、より好ましくは20%以上であり、さらに好ましくは25%以上であり、上記割合の上限が、好ましくは35%以下である。炭素材料において、C1sXPS分析による、C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合の合計量に対する、C−O結合とC=O結合の合計量の割合が、上記範囲内にあれば、本発明の炭素材料は、従来知られている単純な炭素材料と異なり、溶解性等の様々な物性をもつ新規な炭素材料となり得る。
(2)C1sXPS分析による、全炭素酸素結合、すなわち、C−O結合(アルコール由来のC−O結合、エーテル由来のC−O結合、エポキシ由来のC−O結合等含む)とC=O結合(カルボニル由来のC=O結合、カルボキシル由来のC=O結合、エステル由来のC=O結合、ラクトン由来のC=O結合等含む)の合計量に対する、エーテル由来のC−O結合(すなわち、C−O−C結合)とアルコール由来のC−O結合(すなわち、C−OH結合)の合計量の割合が、好ましくは50%以上であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは65%以上であり、特に好ましくは70%以上であり、最も好ましくは75%以上である。上記割合の上限は、好ましくは90%以下である。炭素材料において、C1sXPS分析による、C−O結合とC=O結合の合計量に対する、エーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合が、上記範囲内にあれば、本発明の炭素材料は、炭素材料部分の構造制御率を高め得るとともに、構造がより精密に制御され得る。すなわち、分解反応に由来するC=O結合の比率が少ないほど分解反応が抑制されており、このような炭素材料は、構造がより精密に制御された炭素材料であると言える。
(3)C1sXPS分析による、全結合、すなわち、C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合(アルコール由来のC−O結合、エーテル由来のC−O結合、エポキシ由来のC−O結合等含む)とC=O結合(カルボニル由来のC=O結合、カルボキシル由来のC=O結合、エステル由来のC=O結合、ラクトン由来のC=O結合等含む)の合計量に対する、エーテル由来のC−O結合(すなわち、C−O−C結合)とアルコール由来のC−O結合(すなわち、C−OH結合)の合計量の割合が、好ましくは15%以上であり、より好ましくは17%以上であり、さらに好ましくは20%以上である。上記割合の上限は、好ましくは30%以下である。炭素材料において、C1sXPS分析による、全結合の合計量に対する、エーテル由来のC−O結合(すなわち、C−O−C結合)とアルコール由来のC−O結合(すなわち、C−OH結合)の合計量の割合が、上記範囲内にあれば、本発明の炭素材料は、構造がより精密に制御された炭素材料含有材料であると言える。
(4)C1sXPS分析による、全結合、すなわち、C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合(アルコール由来のC−O結合、エーテル由来のC−O結合、エポキシ由来のC−O結合等含む)とC=O結合(カルボニル由来のC=O結合、カルボキシル由来のC=O結合、エステル由来のC=O結合、ラクトン由来のC=O結合等含む)の合計量に対する、全炭素酸素結合、すなわち、C−O結合とC=O結合の合計量の割合が、上記(1)に記載の範囲内にあって、且つ、C1sXPS分析による、全炭素酸素結合、すなわち、C−O結合(アルコール由来のC−O結合、エーテル由来のC−O結合、エポキシ由来のC−O結合等含む)とC=O結合(カルボニル由来のC=O結合、カルボキシル由来のC=O結合、エステル由来のC=O結合、ラクトン由来のC=O結合等含む)の合計量に対する、エーテル由来のC−O結合(すなわち、C−O−C結合)とアルコール由来のC−O結合(すなわち、C−OH結合)の合計量の割合が、上記(2)に記載の範囲内にある態様である。このような態様であれば、本発明の炭素材料は、炭素材料部分の溶解性をより高め得るとともに、炭素材料部分の構造制御率をより高め得る。また、このような態様であれば、本発明の炭素材料は、構造がより一層精密に制御され得る。
(5)IR分析において、好ましくは、1660cm−1〜1800cm−1の間にC=O伸縮振動に起因するピークが見られない。炭素材料含有材料のIR分析において1660cm−1〜1800cm−1の間にC=O伸縮振動に起因するピークが見られない場合、炭素材料含有材料は、構造がより精密に制御され得る。炭素材料含有材料のIR分析において1660cm−1〜1800cm−1の間にC=O伸縮振動に起因するピークが見られない場合に該炭素材料の構造がより精密に制御され得るという理由は、前述の通りである。
(6)本発明の炭素材料が溶媒に可溶である。
本発明の炭素材料は、C1sXPS分析により容易に炭素成分の存在が確認できる。また、本発明の炭素材料は、好ましくは、その構造内にベンゼン環由来のハニカム構造(グラフェン構造)を有する。グラフェン構造は、ラマン分光分析によってその有無の確認ができる(非特許文献4)。
本発明の炭素材料は、不純物となる金属成分の含有量が合計で、通常、炭素原子100原子%に対し、好ましくは0.1原子%以下であり、より好ましくは0.01原子%以下であり、特に好ましくは実質的にゼロである。これらは、本発明の炭素材料を蛍光X線元素分析法(XRF)により分析することによって確認することができる。
本発明の炭素材料は、その構成する元素として、炭素を必須とし、炭素以外の元素を含んでいてもよい。このような炭素以外の元素としては、好ましくは、酸素、水素、窒素、硫黄、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれる少なくとも1種の元素であり、より好ましくは、酸素、水素、窒素、硫黄から選ばれる少なくとも1種の元素であり、さらに好ましくは、酸素、水素、窒素から選ばれる少なくとも1種の元素であり、特に好ましくは、酸素、水素から選ばれる少なくとも1種の元素である。本発明の炭素材料を構成する元素のうち水素以外の元素の総量を100原子%としたとき、炭素は、好ましくは60原子%以上であり、より好ましくは70原子%以上であり、さらに好ましくは75原子%以上である。また、炭素以外の元素は、好ましくは10原子%以上である。各元素の割合がこの範囲に入ることで、炭素材料でありながら良好な溶解性を発現することが可能となる。これらは、炭素材料をX線光電子分光法(C1sXPS)により定量することによって確認することができる。
本発明の炭素材料は、好ましくは、溶媒に可溶である。
ここで、本発明の炭素材料が溶媒に可溶である場合とは、従来の炭素材料に比べて溶媒への溶解性に優れ、良好な取り扱い性を実現し得る場合である。
本発明の炭素材料が溶媒に可溶という態様としては、好ましくは、下記の実施態様を採りうる。
(実施態様1)炭素材料の全てが溶媒に溶解する実施態様。すなわち、炭素材料が、溶媒に溶解する成分(成分A)のみからなる実施態様。
(実施態様2)炭素材料の一部が溶媒に溶解する態様。すなわち、炭素材料が、溶媒に溶解する成分(成分A)と溶媒に溶解しない成分(成分B)からなる実施態様。
本発明において「溶媒に可溶」とは、任意の溶媒に溶解する成分がある態様を意味し、該溶媒としては、好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、クロロホルム、ジクロロメタン等が挙げられる。すなわち、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、クロロホルム、ジクロロメタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒に溶解する成分がある態様が好ましい。より好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、クロロホルムからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒に溶解する成分がある態様であり、さらに好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒に溶解する成分がある態様であり、特に好ましくは、N−メチルピロリドンに溶解する成分がある態様である。
本発明の炭素材料が溶媒に可溶である一つの実施形態は、例えば、本発明の炭素材料が、溶媒に可溶である炭素系化合物を含む実施形態である。
溶媒に可溶であるか否かの判定方法としては、例えば、炭素材料を上記溶媒に対して0.001質量%となるように混合したのち、超音波処理を1時間行い、得られた液をPTFE製濾紙(孔径0.45μm)に通したとき、濾紙を通過した液に炭素系化合物が含まれるか否かで判定することができる。濾紙を通過した液に炭素系化合物が含まれる場合、本発明の炭素材料が溶媒に可溶である炭素系化合物を含むと判定される。上記PTFE製濾紙としては、例えば、ジーエルサイエンス株式会社製のGLクロマトディスク(型式13P)を用いることができる。
本発明の炭素材料は、好ましくは、(i)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてGバンド(一般的に1550cm−1〜1650cm−1の範囲内)にピークを示す。したがって、本発明の炭素材料が、ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてGバンド(一般的に1550cm−1〜1650cm−1の範囲内)にピークを有することは、本発明の炭素材料がグラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有していることを意味している。Gバンドは、強度が高く、シャープであれば、よりきれいなグラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有しているといえる。
本発明の炭素材料は、好ましくは、(ii)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてDバンド(一般的に1300cm−1〜1400cm−1の範囲内)にピークを示す。グラフェン構造の欠陥に由来する構造を有する炭素材料は、ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいて、Dバンド(一般的に1300cm−1〜1400cm−1の範囲内)にピークを示す。したがって、本発明の炭素材料が、ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおけるDバンド(一般的に1300cm−1〜1400cm−1の範囲内)にピークを有することは、本発明の炭素材料が官能基を含むことや、グラフェン構造の欠陥に由来する構造またはグラフェン構造の欠陥に由来する構造に類似の構造を有していることを意味している。Dバンドは、強度が低ければ、よりきれいなグラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有しているといえる。また、Dバンドが確認できるということは、本発明の炭素材料が官能基を有することを意味しており、これにより、溶媒に対する溶解性を高め得る。
本発明の炭素材料は、好ましくは、(i)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてGバンド(一般的に1550cm−1〜1650cm−1の範囲内)にピークを示し、さらに、(ii)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてDバンド(一般的に1300cm−1〜1400cm−1の範囲内)にピークを示す。
本発明の炭素材料は、好ましくは、(iii)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてG′バンド(一般的に2650cm−1〜2750cm−1の範囲内)にピークを示す。したがって、本発明の炭素材料が、ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてG′バンド(一般的に2650cm−1〜2750cm−1の範囲内)にピークを有することは、本発明の炭素材料がグラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有していることを意味している。G′バンドの強度は、グラフェン構造が1層のときに最も強く、グラフェン構造の積層数が増えるにつれて徐々に小さくなる。しかしながら、G′バンドは、グラフェン構造の積層数が増えるにつれて徐々に強度が小さくなっても、ピークは観察することができる。したがって、G′バンドにピークを有することは、本発明の炭素材料がグラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有しているといえる。G′バンドは、2Dバンドとも呼ばれることがある。
本発明の炭素材料は、好ましくは、(i)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてGバンド(一般的に1550cm−1〜1650cm−1の範囲内)にピークを示し、さらに、(ii)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてDバンド(一般的に1300cm−1〜1400cm−1の範囲内)にピークを示し、さらに、(iii)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてG′バンド(一般的に2650cm−1〜2750cm−1の範囲内)にピークを示す。
本発明の炭素材料は、好ましくは、(iv)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてD+D′バンド(一般的に2800cm−1〜3000cm−1の範囲内)にピークを示す。グラフェン構造の欠陥に由来する構造を有する炭素材料は、ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいて、D+D′バンド(一般的に2800cm−1〜3000cm−1の範囲内)にピークを示す。したがって、本発明の炭素材料が、ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてD+D′バンド(一般的に2800cm−1〜3000cm−1の範囲内)にピークを有することは、本発明の炭素材料が官能基を含むことや、グラフェン構造の欠陥に由来する構造またはグラフェン構造の欠陥に由来する構造に類似の構造を有していることを意味している。D+D′バンドは、強度が低ければ、よりきれいなグラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有しているといえる。D+D′バンドは、D+Gバンドとも呼ばれることがある。また、D+D′バンドが確認できるということもまた、本発明の炭素材料が官能基を有することを意味しており、これにより、溶媒に対する溶解性を高め得る。
本発明の炭素材料は、好ましくは、(i)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてGバンド(一般的に1550cm−1〜1650cm−1の範囲内)にピークを示し、さらに、(ii)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてDバンド(一般的に1300cm−1〜1400cm−1の範囲内)にピークを示し、さらに、(iii)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてG′バンド(一般的に2650cm−1〜2750cm−1の範囲内)にピークを示し、さらに、(iv)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてD+D′バンド(一般的に2800cm−1〜3000cm−1の範囲内)にピークを示す。
本発明の炭素材料は、好ましくは、溶媒に可溶である炭素系化合物を含む。
一つの実施形態として、本発明の炭素材料は、例えば、(i)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてGバンド(一般的に1550cm−1〜1650cm−1の範囲内)にピークを示し、さらに、(ii)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてDバンド(一般的に1300cm−1〜1400cm−1の範囲内)にピークを示し、さらに、溶媒に可溶である炭素系化合物を含む。
本発明の炭素材料において、官能基を含むことと共に、グラフェン構造の一部に欠陥を有している場合、この欠陥が、本発明の炭素材料の溶媒への溶解性の発現に寄与し得る。
本発明の炭素材料は、上記のように、従来公知の炭素材料とは異なり、グラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有し、溶媒への溶解性がより優れる(例えば、溶媒に溶解する炭素材料の成分がより多くなったり、溶解できる溶媒の種類がより増えたりする)。
本発明の炭素材料に含まれる炭素系化合物の分子量は、好ましくは1000〜1300000であり、より好ましくは5000〜1000000であり、さらに好ましくは10000〜700000であり、特に好ましくは15000〜500000であり、最も好ましくは20000〜300000である。本発明の炭素材料に含まれる炭素系化合物の分子量が上記範囲内にあれば、上記(i)の特徴と相まって、本発明の炭素材料の溶媒への溶解性がより優れる(例えば、溶媒に溶解する炭素材料の成分がより多くなったり、溶解できる溶媒の種類がより増えたりする)。炭素材料に含まれる炭素系化合物の分子量が1300000を超えると、炭素材料の溶媒への溶解性が悪くなるおそれがある。炭素材料に含まれる炭素系化合物の分子量が1000未満であると、炭素材料としての特徴が薄れるおそれがある。これらの分子量は、後述する手法により分析できる。
本発明の炭素材料中の炭素系化合物の含有割合は、好ましくは50質量%〜100質量%であり、より好ましくは70質量%〜100質量%であり、さらに好ましくは90質量%〜100質量%であり、特に好ましくは95質量%〜100質量%であり、最も好ましくは実質的に100質量%である。本発明の炭素材料中の炭素系化合物の含有割合が上記範囲内にあれば、上記(i)、(ii)の特徴と相まって、本発明の炭素材料の溶媒への溶解性がより優れる(例えば、溶媒に溶解する炭素材料の成分がより多くなったり、溶解できる溶媒の種類がより増えたりする)。
本発明の炭素材料は、好ましくは、XRD分析によって得られるXRDスペクトルチャートにおいて、20°〜30°の範囲内にピークを示す。すなわち本発明の炭素材料は、グラフェン構造が積層した構造(グラフェン積層構造)を有することも、好ましい実施形態の一つである。積層構造を有することで、本発明の炭素材料はより強固になり得るとともに、より安定なものとなり得る。
本発明の炭素材料のさらに好ましい形態は、ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいて上述した形態(i)〜(iv)のいずれの形態、あるいは組合せた形態;(i)および(ii)、(i)、(ii)および(iii)、(i)、(ii)、(iii)および(iv)を有し、且つ、XRD分析によって得られるXRDスペクトルチャートにおいて、20°〜30°の範囲内にピークを示す形態である。
≪≪3.炭素材料含有材料の製造方法≫≫
本発明の炭素材料含有材料の製造方法は、加熱によって同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きる化合物(A)と無機物を含む組成物を加熱する加熱工程(I)を含み、該加熱工程(I)における加熱温度は、該化合物(A)の縮合反応温度がT℃であるときに、(T−150)℃以上であり、該化合物(A)が分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物であり、該加熱工程(I)が、該化合物(A)の、同一分子間および/または異種分子間における2つの該フェノール性OH基間の縮合反応を含む。
加熱工程(I)においては、加熱によって同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きる化合物(A)と無機物を含む組成物を加熱する。化合物(A)と無機物との配合割合は、無機物100質量%に対して、化合物(A)が、好ましくは0.01質量%〜1000000質量%であり、より好ましくは0.1質量%〜100000質量%であり、特に好ましくは1質量%〜1000質量%である。化合物(A)と無機物との配合割合が上記範囲内にあれば、構造がより精密に制御された炭素材料含有材料をより温和な条件でより簡便に製造し得る。これらの無機物と化合物(A)の配合割合は、目的とする複合体の物性に応じて、任意に調整することができる。例えば、無機物と化合物(A)の配合割合を調整することにより、得られる炭素材料含有材料の物性、形態(例えば、溶媒への溶解性や、炭素成分または無機成分の形状(粒子状や非粒子状)、炭素成分または無機成分のサイズなど)を制御することができる。
加熱によって同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きる化合物(A)と無機物を含む組成物中には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分が含まれていてもよい。このような他の成分としては、例えば、溶媒、触媒、母材、担体などが挙げられる。
加熱工程(I)で加熱する組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な方法で調製すればよい。このような方法としては、例えば、化合物(A)と無機物とを、任意の適切な方法(例えば、破砕、粉砕など)で固体状態のまま混合する方法が挙げられる。また、化合物(A)と無機物と溶剤と、必要に応じて溶剤以外の他の成分とを、任意の適切な方法(例えば、超音波処理など)で混合し、任意の適切な方法(例えば、真空乾燥)によって溶剤を除去する方法などが挙げられる。また、必要に応じて、解砕を行ってもよい。
加熱工程(I)における加熱温度は、化合物(A)の縮合反応温度がT℃であるときに、(T−150)℃以上であり、好ましくは(T−150〜T+50)℃であり、より好ましくは(T−130〜T+45)℃であり、さらに好ましくは(T−100〜T+40)℃であり、特に好ましくは(T−80〜T+35)℃であり、最も好ましくは(T−50〜T+30)℃である。本発明の炭素材料含有材料の製造方法においては、無機物の触媒能や、無機物上の官能基と炭素材料の反応性が高いことから、上記のように化合物(A)の縮合反応温度と比べて比較的低温から反応が進行して炭素化が進み得る。加熱温度を上記範囲に調整することにより、溶媒への可溶性を有する炭素材料含有材料や、構造がより精密に制御された炭素材料含有材料をより温和な条件でより簡便に製造し得る。
化合物(A)の縮合反応温度は、TG−DTA分析によって決定できる。具体的には、下記の通りである。
(1)化合物(A)として1種の化合物を用いる場合には、化合物(A)のTG−DTA分析を、窒素ガス雰囲気下、40℃から、昇温速度10℃/分で昇温し、DTAの最も低温側のピークトップ温度を化合物(A)の縮合反応温度(T℃)と決定する。
(2)化合物(A)として2種以上の化合物の混合物を用いる場合には、該混合物のTG−DTA分析を、窒素ガス雰囲気下、40℃から、昇温速度10℃/分で昇温し、DTAの最も低温側のピークトップ温度を化合物(A)(2種以上の化合物の混合物)の縮合反応温度(T℃)と決定する。
(3)ただし、1種の化合物や2種以上の化合物の混合物としての化合物(A)に、例えば、溶媒や水分や水和水等の不純物が含まれている場合は、該不純物の脱離に伴うDTAピーク(不純物ピークと称することもある)が縮合反応温度よりも低温で観測されることがある。このような場合には、上記の不純物ピークは無視して、その化合物(A)の縮合反応温度を決定する。通常は、上記の不純物ピークは無視した上で、DTAの最も低温側のピークトップ温度を、その化合物(A)の縮合反応温度と決定する。
加熱工程(I)における加熱温度は、具体的な加熱温度として、好ましくは200℃〜500℃であり、より好ましくは220℃〜400℃であり、さらに好ましくは230℃〜350℃であり、最も好ましくは250℃〜300℃である。加熱温度を上記範囲に調整することにより、溶媒への可溶性を有する炭素材料含有材料や、構造がより精密に制御された炭素材料含有材料をより温和な条件でより簡便に製造し得る。特に、加熱工程(I)における加熱温度がこのように低いため、炭素材料含有材料をより温和な条件で工業的に製造可能である。
加熱工程(I)における加熱時間は、具体的な加熱時間として、好ましくは0.1時間〜120時間であり、より好ましくは0.5時間〜100時間であり、さらに好ましくは1時間〜50時間であり、最も好ましくは2時間〜24時間である。加熱時間を上記範囲に調整することにより、溶媒への可溶性を有する炭素材料含有材料や、構造がより精密に制御された炭素材料含有材料をより温和な条件でより簡便に製造し得る。
≪3−1.化合物(A)≫
化合物(A)は、加熱によって同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きる。そして、化合物(A)と無機物を含む組成物を加熱する加熱工程(I)によって、化合物(A)は炭素材料となり得る。
化合物(A)は、分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物である。分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
本発明の炭素材料含有材料の製造方法において、化合物(A)として、分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物を採用することにより、加熱工程(I)が、該化合物(A)の、同一分子間および/または異種分子間における2つの該フェノール性OH基間の縮合反応を含む。なお、加熱工程(I)においては、上記の同一分子間および/または異種分子間における2つの該フェノール性OH基間の縮合反応以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、同一分子間および/または異種分子間における、任意の適切な他の2つの基の間の縮合反応を含んでいてもよい。
分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物の、同一分子間および/または異種分子間における2つの該フェノール性OH基間の縮合反応により、好ましくは、少なくともC−O−C結合によって2つの芳香環が結合した構造が形成される。さらに、上記の縮合反応、および該縮合反応に続いたり併行して起こったりする他の反応により、2つ以上の芳香環同士の間に新たな結合(例えば、C−C結合など)が形成したり、高分子量化が進行したりし得る。
なお、上記C−C結合の形成は、例えば、C−O−C結合からの脱酸素反応、芳香環に直接結合したH基とOH基との間の脱水反応、芳香環に直接結合したH基とH基との間の脱水素反応などによって起こり得る。
また、化合物(A)の選択や、加熱工程(I)における各種条件の選択によって、2つ以上の芳香環同士の間での縮環反応も起こり得る。
化合物(A)については、≪1−1.化合物(A)≫における説明を援用し得る。
≪3−2.無機物≫
無機物は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な無機物を採用し得る。このような無機物としては、例えば、粒子状の無機物(無機物粒子)、非粒子状の無機物(例えば、繊維状の無機物、薄膜状の無機物など)などを採用し得る。無機物としては、粒子状の無機物(無機物粒子)が好ましい。
無機物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
無機物としては、好ましくは、無機酸化物、無機窒化物、無機硫化物、無機炭化物、不溶性塩からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
本発明にいう「無機酸化物」の例としては、その一部が酸化された金属、好ましくは、その表面の少なくとも一部が酸化された金属も含まれる。後述するように、金属は、一般に、その一部、好ましくは、その表面の少なくとも一部が酸化されているからである。このような金属としては、好ましくは、酸化されやすい金属であり、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、アルミニウム(Al)、錫(Sn)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ケイ素(シリコン、Si)などが挙げられ、より好ましくは、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ケイ素(シリコン、Si)である。すなわち、このような金属は、酸化されやすく、その一部、好ましくは、その表面の少なくとも一部が酸化されており、本発明にいう「無機酸化物」に含まれる。
本発明にいう「無機酸化物」としては、具体的には、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ポリ酸、その一部が酸化された金属(好ましくは、その表面の少なくとも一部が酸化された金属)、複合酸化物、固溶体酸化物などが挙げられる。すなわち、本発明にいう「無機酸化物」としては、構成する金属元素が1種からなる酸化物であってもよいし、構成する金属元素が2種以上の複合酸化物であってもよいし、構成する金属元素が1種からなる酸化物(単一金属酸化物ともいう)または複合酸化物にさらに異種元素が固溶した、いわゆる、固溶体酸化物であってもよい。なお、固溶体酸化物における異種元素としては、金属元素であってもよいし、酸素以外の、窒素やフッ素等の非金属元素であってもよい。
無機酸化物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。なお、2種以上の無機酸化物が採用される例としては、例えば、2種以上の無機酸化物が単に併用(混合など)されている場合や、2種以上の無機酸化物が結着している場合などが挙げられる。
上記の「構成する金属元素が1種からなる酸化物」としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化ケイ素などが挙げられ、好ましくは、酸化マグネシウム、酸化チタン(チタニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素(シリカ)である。
上記の「構成する金属元素が2種以上の複合酸化物」としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な複合酸化物を採用し得る。このような複合酸化物としては、代表的には、2種以上の金属を含む酸化物であり、例えば、ペロブスカイト構造の複酸化物、スピネル構造の複酸化物などが挙げられる。
ペロブスカイト構造の複酸化物としては、代表的には、ABO(A、Bは異なる元素を表す)で表される酸化物であり、例えば、灰チタン石(ペロブスカイト、CaTiO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr、Ti)O)、ジルコン酸バリウム(BaZrO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)などが挙げられる。
スピネル構造の複酸化物としては、例えば、スピネル(MgAl)、チタン酸リチウム(LiTi)、クリソベリル(BeAl)などが挙げられる。
上記の「固溶体酸化物」としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な固溶体酸化物を採用し得る。このような固溶体酸化物としては、代表的には、単一金属酸化物または複合酸化物に異種金属元素および/または酸素以外の非金属元素、たとえば窒素、フッ素が固溶したものである。
本発明にいう「無機酸化物」は、その形状を問わず(すなわち、例えば、無機酸化物粒子であっても、非粒子状の無機酸化物であっても)、全体が無機酸化物である実施形態であってもよいし、一部が無機酸化物である実施形態であってもよい。一部が無機酸化物である実施形態としては、好ましくは、表面に無機酸化物を有する実施形態である。
一部が無機酸化物である実施形態(好ましくは、表面に無機酸化物を有する実施形態)としては、その形状を問わず、例えば、その一部が酸化された金属(好ましくは、その表面の少なくとも一部が酸化された金属)が挙げられる。金属は、酸素の存在下によってその一部(好ましくは、その表面の少なくとも一部)が酸化され得る。したがって、本発明でいう無機酸化物の一形態である「表面に無機酸化物を有する実施形態」には、その形状を問わず、その表面の少なくとも一部が酸化された金属が含まれる。
無機酸化物として無機酸化物粒子を用いる場合、化合物(A)と無機酸化物を含む組成物を加熱する加熱工程(I)によって、代表的には、無機酸化物粒子を多数含む塊状の炭素材料含有材料が得られ得る(この場合、解砕などによって粒子状の炭素材料含有材料を得ることができ得る)。しかしながら、化合物(A)と無機酸化物の配合割合を調整することにより、化合物(A)と無機酸化物を含む組成物を加熱する加熱工程(I)によって、粒子状の炭素材料含有材料が得られる場合もある。
無機酸化物として繊維状の無機酸化物を用いる場合は、例えば、後述するコアシェル粒子の代わりに繊維状のコアシェル繊維が得られ得る。また、繊維状の無機酸化物を用いる場合は、例えば、後述する中空炭素微粒子の代わりにチューブ状の中空炭素材料が得られ得る。
無機酸化物として薄膜状の無機酸化物を用いる場合は、化合物(A)と無機酸化物を含む組成物を加熱する加熱工程(I)によって、例えば、積層状の炭素材料含有材料が得られ得る。また、このような積層状の炭素材料含有材料に対して、さらに、後述する加熱工程(II)や炭素材料除去工程や無機酸化物除去工程などを施すことにより、例えば、薄膜状の各種炭素材料が得られ得る。
無機酸化物の分解温度は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは800℃以上であり、より好ましくは850℃以上であり、さらに好ましくは900℃以上であり、特に好ましくは950℃以上である。
本発明において、本発明の効果をより発現させ得る点で、無機酸化物としては無機酸化物粒子が好ましい。
本明細書にいう「無機酸化物粒子」としては、好ましくは、粒子全体が無機酸化物である粒子、または、粒子の一部が無機酸化物である粒子である。粒子の一部が無機酸化物である粒子としては、表面に無機酸化物を有する粒子が好ましい。本明細書にいう「無機酸化物粒子」としては、より好ましくは、粒子全体が無機酸化物である粒子である。
粒子の一部が無機酸化物である粒子(好ましくは、表面に無機酸化物を有する粒子)の例としては、例えば、その一部が酸化された金属粒子(好ましくは、その表面の少なくとも一部が酸化された金属粒子)が挙げられる。金属粒子は、酸素の存在下によってその一部(好ましくは、その表面の少なくとも一部)が酸化され得る。したがって、本発明でいう無機酸化物粒子の一形態である「表面に無機酸化物を有する粒子」には、その表面の少なくとも一部が酸化された金属粒子が含まれる。
金属粒子以外の無機酸化物粒子(例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子など)は、粒子全体が無機酸化物である粒子である場合だけでなく、粒子の一部が無機酸化物である粒子(好ましくは、表面に無機酸化物を有する粒子)である場合もあり得る。すなわち、例えば、シリカ粒子を例に挙げると、シリカ粒子は、粒子全体がシリカである場合だけでなく、粒子の一部がシリカである粒子(好ましくは、表面にシリカを有する粒子)である場合もあり得る。
無機酸化物粒子の平均粒子径は、目的によって適宜設定され得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、無機酸化物粒子の平均粒子径は、好ましくは0.01μm〜100μmであり、特に好ましくは0.1μm〜10μmである。
無機酸化物粒子の平均粒子径は、体積基準の粒度分布における平均粒子径であり、レーザー回折散乱法で測定することが好ましい。
本発明の効果をより発現させ得る点で、無機酸化物粒子は、好ましくは、表面に官能基を有する無機酸化物粒子である。このような官能基としては、例えば、M−OHのようなヒドロキシル性官能基;M−O−Mのようなエーテル性官能基を含む酸素官能基;M−NH、M−NH−Mのようなアミン性官能基を含む窒素官能基;M−SH、M−S−Mのようなチオール性官能基を含む硫黄官能基;その他、ケイ素官能基、ホウ素官能基、リン官能基など;等が挙げられる(Mは、官能基が結合する対象を概念的に示したものであり、無機酸化物そのもの、たとえば無機酸化物を構成する金属元素や有機基など、官能基が結合できる任意の適切な対象を示す)。これらの官能基は、無機酸化物に各種化合物を表面処理する等で容易に形成できる。これらの中でも、無機酸化物粒子としては、好ましくは、表面に酸素官能基を有する無機酸化物粒子である。
無機酸化物として表面に官能基を有する無機酸化物粒子を採用すれば、炭素材料含有材料において、無機酸化物粒子の表面に存在する官能基が、炭素材料と結合を形成し得る。このような結合に寄与している炭素材料の領域(炭素材料結合領域)は、炭素材料そのものではない。すなわち、図1に示すように、炭素材料含有材料の一つの好ましい実施形態においての有機無機複合体(詳細は後述)100は、マトリックスとしての炭素材料10中に複数の無機物粒子20(この場合、無機酸化物粒子である)が分散したものであり、炭素材料10と無機物粒子20との界面には、炭素材料が無機物粒子20の表面に存在する官能基と結合を形成して生じた炭素材料の領域(炭素材料結合領域)30が存在している。そうすると、例えば、炭素材料が溶媒に可溶である場合には、有機無機複合体100を、炭素材料を溶解する溶媒によって処理すると、図2に示すように、無機物粒子20の表面に炭素材料結合領域(溶媒によって溶解しない領域)30がコーティングされたコアシェル粒子(コア部分:無機酸化物粒子、シェル部分:炭素材料結合領域)200が得られ得る。こうして得られるコアシェル粒子200からコア部分としての無機物粒子20を除去すると、炭素材料を有する中空炭素微粒子が得られ得る。
表面に官能基を有する無機酸化物粒子としては、好ましくは、シリカ粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、酸化マグネシウム粒子、ポリ酸粒子、その表面の少なくとも一部が酸化された金属粒子、複合酸化物粒子、固溶体酸化物粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種である。表面に官能基を有する無機酸化物粒子として、シリカ粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、酸化マグネシウム粒子、ポリ酸粒子、その表面の少なくとも一部が酸化された金属粒子、複合酸化物粒子、固溶体酸化物粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種を採用すれば、無機酸化物粒子の表面に存在する官能基が、炭素材料と結合をより形成し得る。
表面に官能基を有する無機酸化物粒子としては、より好ましくは、ポリ酸粒子である。ポリ酸粒子を構成するポリ酸としては、イソポリ酸、ヘテロポリ酸が挙げられる。前述の通り、化合物(A)を用いると触媒効果を利用することなく炭素材料含有材料を得ることができるが、特に、表面に官能基を有する無機酸化物粒子としてポリ酸粒子を採用すると、強酸性の触媒効果と表面官能基の存在が相まって、炭素材料含有材料とした場合に、脱水縮合反応が促進されC−O結合の総量に対する、−OH基と−O−基の合計量の割合が高くなり、高い構造制御率を有し得る。
イソポリ酸としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なイソポリ酸を採用し得る。このようなイソポリ酸としては、例えば、モリブテン、バナジウム、タングステン、ニオブ、チタン、タンタル、クロム、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、コバルト、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、スズ、チタン、ジルコニウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、亜鉛等の無機元素を主体とする無機酸およびそれらの塩が挙げられ、代表的には、モリブデン酸、バナジウム酸、タングステン酸、ニオブ酸、チタン酸、タンタル酸などが挙げられる。
ヘテロポリ酸としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なヘテロポリ酸を採用し得る。このようなヘテロポリ酸としては、例えば、イソポリ酸またはその金属塩にヘテロ原子を導入したものが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素、硫黄、リン、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、ケイ素などが挙げられる。ヘテロポリ酸は水和物であってよい。
ヘテロポリ酸としては、具体的には、例えば、タングステンを含むイソポリ酸にヘテロ原子を導入してなるタングステン系ヘテロポリ酸や、モリブデンを含むイソポリ酸にヘテロ原子を導入してなるモリブデン系ヘテロポリ酸などが挙げられる。
タングステン系ヘテロポリ酸としては、例えば、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、コバルトタングステン酸、ゲルマノタングステン酸、ホウタングステン酸、リンバナドタングステン酸、リンタングストモリブデン酸などが挙げられる。
モリブデン系ヘテロポリ酸としては、例えば、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、リンバナドモリブデン酸などが挙げられる。
無機窒化物としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な無機窒化物を採用し得る。このような無機窒化物としては、例えば、窒化ホウ素、窒化炭素、窒化アルミニウム、窒化ガリウムなどが挙げられ、好ましくは、窒化ホウ素、窒化アルミニウムである。
無機窒化物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
本発明において、本発明の効果をより発現させ得る点で、前述の無機酸化物と同様、無機窒化物としては無機窒化物粒子が好ましい。
無機窒化物粒子の平均粒子径は、目的によって適宜設定され得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、無機窒化物粒子の平均粒子径は、好ましくは0.01μm〜100μmであり、特に好ましくは0.1μm〜10μmである。
無機窒化物粒子の平均粒子径は、体積基準の粒度分布における平均粒子径であり、レーザー回折散乱法で測定することが好ましい。
本発明の効果をより発現させ得る点で、無機窒化物粒子は、好ましくは、表面に官能基を有する無機窒化物粒子である。このような官能基としては、例えば、M−OHのようなヒドロキシル性官能基;M−O−Mのようなエーテル性官能基を含む酸素官能基;M−NH、M−NH−Mのようなアミン性官能基を含む窒素官能基;M−SH、M−S−Mのようなチオール性官能基を含む硫黄官能基;その他、ケイ素官能基、ホウ素官能基、リン官能基など;等が挙げられる(Mは、官能基が結合する対象を概念的に示したものであり、無機窒化物そのもの、たとえば無機窒化物を構成する金属元素や有機基など、官能基が結合できる任意の適切な対象を示す)。これらの官能基は、無機窒化物に各種化合物を表面処理する等で容易に形成できる。
無機窒化物として表面に官能基を有する無機窒化物粒子を採用すれば、炭素材料含有材料において、無機窒化物粒子の表面に存在する官能基が、炭素材料と結合を形成し得る。このような結合に寄与している炭素材料の領域(炭素材料結合領域)は、炭素材料そのものではない。すなわち、前述の表面に官能基を有する無機酸化物粒子と同様、図1に示すように、炭素材料含有材料の一つの好ましい実施形態においての有機無機複合体(詳細は後述)100は、マトリックスとしての炭素材料10中に複数の無機物粒子20(この場合、無機窒化物粒子である)が分散したものであり、炭素材料10と無機物粒子20との界面には、炭素材料が無機物粒子20の表面に存在する官能基と結合を形成して生じた炭素材料の領域(炭素材料結合領域)30が存在している。そうすると、例えば、炭素材料が溶媒に可溶である場合には、有機無機複合体100を、炭素材料を溶解する溶媒によって処理すると、図2に示すように、無機物粒子20の表面に炭素材料結合領域(溶媒によって溶解しない領域)30がコーティングされたコアシェル粒子(コア部分:無機窒化物粒子、シェル部分:炭素材料結合領域)200が得られ得る。こうして得られるコアシェル粒子200からコア部分としての無機物粒子20を除去すると、炭素材料を有する中空炭素微粒子が得られ得る。
無機硫化物としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な無機硫化物を採用し得る。このような無機硫化物としては、例えば、硫化銅、硫化亜鉛、硫化カドミウムなどが挙げられる。
無機硫化物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
本発明において、本発明の効果をより発現させ得る点で、前述の無機酸化物と同様、無機硫化物としては無機硫化物粒子が好ましい。
無機硫化物粒子の平均粒子径は、目的によって適宜設定され得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、無機硫化物粒子の平均粒子径は、好ましくは0.01μm〜100μmであり、特に好ましくは0.1μm〜10μmである。
無機硫化物粒子の平均粒子径は、体積基準の粒度分布における平均粒子径であり、レーザー回折散乱法で測定することが好ましい。
本発明の効果をより発現させ得る点で、無機硫化物粒子は、好ましくは、表面に官能基を有する無機硫化物粒子である。このような官能基としては、例えば、M−OHのようなヒドロキシル性官能基;M−O−Mのようなエーテル性官能基を含む酸素官能基;M−NH、M−NH−Mのようなアミン性官能基を含む窒素官能基;M−SH、M−S−Mのようなチオール性官能基を含む硫黄官能基;その他、ケイ素官能基、ホウ素官能基、リン官能基など;等が挙げられる(Mは、官能基が結合する対象を概念的に示したものであり、無機硫化物そのもの、たとえば無機硫化物を構成する金属元素や有機基など、官能基が結合できる任意の適切な対象を示す)。これらの官能基は、無機硫化物に各種化合物を表面処理する等で容易に形成できる。
無機硫化物として表面に官能基を有する無機硫化物粒子を採用すれば、炭素材料含有材料において、無機硫化物粒子の表面に存在する官能基が、炭素材料と結合を形成し得る。このような結合に寄与している炭素材料の領域(炭素材料結合領域)は、炭素材料そのものではない。すなわち、前述の表面に官能基を有する無機酸化物粒子と同様、図1に示すように、炭素材料含有材料の一つの好ましい実施形態においての有機無機複合体(詳細は後述)100は、マトリックスとしての炭素材料10中に複数の無機物粒子20(この場合、無機硫化物粒子である)が分散したものであり、炭素材料10と無機物粒子20との界面には、炭素材料が無機物粒子20の表面に存在する官能基と結合を形成して生じた炭素材料の領域(炭素材料結合領域)30が存在している。そうすると、例えば、炭素材料が溶媒に可溶である場合には、有機無機複合体100を、炭素材料を溶解する溶媒によって処理すると、図2に示すように、無機物粒子20の表面に炭素材料結合領域(溶媒によって溶解しない領域)30がコーティングされたコアシェル粒子(コア部分:無機窒化物粒子、シェル部分:炭素材料結合領域)200が得られ得る。こうして得られるコアシェル粒子200からコア部分としての無機物粒子20を除去すると、炭素材料を有する中空炭素微粒子が得られ得る。
無機炭化物としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な無機炭化物を採用し得る。このような無機炭化物としては、例えば、炭化ケイ素、炭化タングステン、炭化カルシウムなどが挙げられる。
無機炭化物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
本発明において、本発明の効果をより発現させ得る点で、前述の無機酸化物と同様、無機炭化物としては無機炭化物粒子が好ましい。
無機炭化物粒子の平均粒子径は、目的によって適宜設定され得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、無機炭化物粒子の平均粒子径は、好ましくは0.01μm〜100μmであり、特に好ましくは0.1μm〜10μmである。
無機炭化物粒子の平均粒子径は、体積基準の粒度分布における平均粒子径であり、レーザー回折散乱法で測定することが好ましい。
本発明の効果をより発現させ得る点で、無機炭化物粒子は、好ましくは、表面に官能基を有する無機炭化物粒子である。このような官能基としては、例えば、M−OHのようなヒドロキシル性官能基;M−O−Mのようなエーテル性官能基を含む酸素官能基;M−NH、M−NH−Mのようなアミン性官能基を含む窒素官能基;M−SH、M−S−Mのようなチオール性官能基を含む硫黄官能基;その他、ケイ素官能基、ホウ素官能基、リン官能基など;等が挙げられる(Mは、官能基が結合する対象を概念的に示したものであり、無機炭化物そのもの、たとえば無機炭化物を構成する金属元素や有機基など、官能基が結合できる任意の適切な対象を示す)。これらの官能基は、無機炭化物に各種化合物を表面処理する等で容易に形成できる。
無機炭化物として表面に官能基を有する無機炭化物粒子を採用すれば、炭素材料含有材料において、無機炭化物粒子の表面に存在する官能基が、炭素材料と結合を形成し得る。このような結合に寄与している炭素材料の領域(炭素材料結合領域)は、炭素材料そのものではない。すなわち、前述の表面に官能基を有する無機酸化物粒子と同様、図1に示すように、炭素材料含有材料の一つの好ましい実施形態においての有機無機複合体(詳細は後述)100は、マトリックスとしての炭素材料10中に複数の無機物粒子20(この場合、無機炭化物粒子である)が分散したものであり、炭素材料10と無機物粒子20との界面には、炭素材料が無機物粒子20の表面に存在する官能基と結合を形成して生じた炭素材料の領域(炭素材料結合領域)30が存在している。そうすると、例えば、炭素材料が溶媒に可溶である場合には、有機無機複合体100を、炭素材料を溶解する溶媒によって処理すると、図2に示すように、無機物粒子20の表面に炭素材料結合領域(溶媒によって溶解しない領域)30がコーティングされたコアシェル粒子(コア部分:無機窒化物粒子、シェル部分:炭素材料結合領域)200が得られ得る。こうして得られるコアシェル粒子200からコア部分としての無機物粒子20を除去すると、炭素材料を有する中空炭素微粒子が得られ得る。
不溶性塩としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な不溶性塩を採用し得る。このような不溶性塩としては、好ましくは、有機溶媒に不溶な金属含有塩であり、例えば、リン酸鉄リチウムなどの金属リン酸塩、金属硫酸塩などが挙げられ、好ましくは、リン酸鉄リチウムである。
不溶性塩は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
不溶性塩は、本発明の実施形態における炭素材料含有材料の製造方法において使用される溶媒に不溶であればよい。例えば、化合物(A)と無機物を混合する工程で溶媒を使用する場合には、該溶媒に溶けない無機物であればよい。言い換えれば、無機物に応じて、該無機物を溶解しない適切な溶媒を選択すればよい。本発明の実施形態における炭素材料含有材料の製造方法が炭素材料除去工程を含む場合の該炭素材料除去工程においても同様である。なお、本発明の実施形態における炭素材料含有材料の製造方法において、中空炭素微粒子などを製造する場合には、無機物を溶解する工程を含むことが好ましいが、このような無機物を溶解する工程を含む場合であっても、該工程の前の工程においては、溶媒に溶解しない無機物を選択し得る。不溶性塩は、ある条件下では溶媒に溶解可能であるが、本発明の効果を発揮し得る製造方法においては溶媒に不溶という意味である。また、不溶性塩についても、粒子である形態が好ましく、平均粒子径の好ましい範囲も酸化物と同様である。
なお、表面に官能基を有する無機酸化物粒子として、シリカ粒子、ポリ酸粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種を採用すると、無機酸化物粒子の表面に存在する官能基が、炭素材料と結合をより形成し得、得られる炭素材料含有材料が、好ましくは、IR分析において、1660cm−1〜1800cm−1の間にC=O伸縮振動に起因するピークが見られない。炭素材料含有材料のIR分析において1660cm−1〜1800cm−1の間にC=O伸縮振動に起因するピークが見られない場合、炭素材料含有材料は、構造がより精密に制御され得る。
≪≪4.炭素材料含有材料の製造方法の代表例≫≫
本発明の炭素材料含有材料の製造方法によって製造し得る炭素材料含有材料としては、多種多様なものが挙げられ、形状としても、粒子状、非粒子状(例えば、繊維状、薄膜状など)など、各種の形状を取り得る。形状としては、粒子状が好ましい。
前述したように、例えば、無機物として、例えば、粒子状の無機物(無機物粒子)、非粒子状の無機物(例えば、繊維状の無機物、薄膜状の無機物など)などの各種の形状の無機物を採用する場合、それぞれの形状に応じて、多種多様な炭素材料含有材料が得られ得る。無機物としては、粒子状の無機物(無機物粒子)が好ましい。
無機物粒子を用いる場合は、本発明の炭素材料含有材料の製造方法によって、代表的には、無機物粒子を多数含む塊状の炭素材料含有材料が得られ得る。この場合、解砕などによって、粒子状の炭素材料含有材料を得ることができ得る。また、化合物(A)と無機物の配合割合を調整することにより、本発明の炭素材料含有材料の製造方法によって、粒子状の炭素材料含有材料が得られる場合もある。
繊維状の無機物を用いる場合は、本発明の炭素材料含有材料の製造方法によって、後述するコアシェル粒子の代わりに繊維状のコアシェル繊維が得られ得る。また、繊維状の無機物を用いる場合は、本発明の炭素材料含有材料の製造方法によって、後述する中空炭素微粒子の代わりにチューブ状の中空炭素材料が得られ得る。
薄膜状の無機物を用いる場合は、本発明の炭素材料含有材料の製造方法によって、積層状の炭素材料含有材料が得られ得る。また、このような積層状の炭素材料含有材料に対して、さらに、後述する加熱工程(II)や炭素材料除去工程や無機物除去工程などを施すことにより、薄膜状の各種炭素材料が得られ得る。
本発明の炭素材料含有材料の製造方法によって製造し得る炭素材料含有材料において、炭素材料部分の膜厚は、その大きさを制御することによって各種用途に採用し得る。このような炭素材料部分の膜厚としては、例えば、具体的な態様を代表的な例として説明すると、
(態様1)炭素材料除去工程によって、無機物の最表面と強固に相互作用して該無機物表面に存在している炭素材料以外の炭素材料を全て除去して得られる、炭素材料含有材料における炭素材料部分の膜厚、
(態様2)炭素材料含有材料が有する炭素材料部分の全てまたは一部を残した状態の該炭素材料含有材料における炭素材料部分の膜厚、
が挙げられる。
上記(態様1)における炭素材料部分は、より具体的には、炭素材料除去工程によって、無機物の最表面と強固に相互作用して該無機物表面に存在している炭素材料以外の炭素材料(代表的には、可溶性炭素材料)を全て除去して得られる、該無機物の最表面と強固に相互作用している炭素材料部分である。このような炭素材料部分の膜厚は薄く、炭素材料の構造にもよるが、好ましくは0.3nm〜10nmであり、より好ましくは0.4nm〜3nmである。炭素材料部分の膜厚をこのような範囲内に制御すれば、無機物と強固に相互作用した炭素成分を、各種用途に十分に利用し得る。
なお、上記(態様1)において、代表的には、炭素材料部分の膜厚は薄いものの、適切な炭素材料除去方法を用いることで、上限無く厚みを調整することも可能である。
上記(態様2)における炭素材料部分の膜厚は、上記(態様1)における炭素材料部分の膜厚よりも代表的には厚いが、炭素材料膜としての機能をより発揮させ得るには、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下であり、最も好ましくは1μm以下である。上記(態様2)において、炭素材料部分の膜厚をこのような範囲に制御すれば、膜としての機能を十分に発揮し得る。
なお、炭素材料部分の膜厚は、炭素材料含有材料の製造方法において用いる原料化合物(例えば、化合物(A))の種類や、製造条件によっても、適切に制御し得る。
このような炭素材料部分の膜厚は、種々の分析方法により確認することができる。このような分析方法としては、例えば、電子顕微鏡による直接観察による方法(方法A)や、元素分析や熱重量分析から算出される炭素量を無機物のマクロな表面積(本発明のような有機分子が侵入できないようなミクロ構造の表面積を除く)と炭素材料の密度から推定する方法(方法B)が挙げられる。
上記(方法A)としては、より具体的には、例えば、試料となる炭素材料含有材料の断面を透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡、好ましくは、エネルギー分散型X線分析装置を付帯した透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡を用いる方法が挙げられる。
上記(方法B)において、無機物のマクロな表面積は、試料となる炭素材料含有材料の形状や含有される無機物の形状等から推定できる。
上記(方法A)においては、例えば、試料が粒子である場合には、好ましくは、試料に含まれる個々の粒子について3箇所以上の厚みを測定し、その単純平均値をその粒子の膜厚とし、より好ましくは10個以上の粒子について膜厚を求め、その単純平均値を試料の平均膜厚とすることができる。このようにして得られた膜厚(平均膜厚)が、例えば、上述した制御したい所望の膜厚範囲となることが好ましい。
上記(方法B)においては、分析された膜厚が試料の平均的な膜厚とみなせる。この(方法B)により分析された膜厚が、例えば、上述した制御したい所望の膜厚範囲となることが好ましい。
このような炭素材料含有材料の代表的な実施形態としては、有機無機複合体、炭素材料含有粒子などが挙げられる。炭素材料含有粒子としては、例えば、コアシェル粒子、高炭素化コアシェル粒子、中空炭素微粒子、高炭素化中空炭素微粒子などが挙げられる。以下、代表的且つ具体的な炭素材料含有材料について、その製造方法を説明する。
≪4−1.有機無機複合体の製造方法≫
本発明の製造方法によって得られる炭素材料含有材料の一つの実施形態は、有機無機複合体である。
有機無機複合体は、代表的には、加熱によって同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きる化合物(A)と無機物を含む組成物を加熱する加熱工程(I)によって得られ得る。
有機無機複合体は、炭素材料と無機物を含む。炭素材料は、代表的には、加熱によって同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きる化合物(A)と無機物を含む組成物を加熱する加熱工程(I)によって、該組成物中の化合物(A)が加熱されることによって生成し得る。
炭素材料は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。無機物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。なお、「無機物」については、≪3−2.無機物≫における説明を援用し得る。
有機無機複合体中の炭素材料の含有割合は、質量割合として、好ましくは0.01質量%〜99.99質量%であり、特に好ましくは0.1質量%〜99.9質量%である。有機無機複合体中の炭素材料の含有割合が上記範囲内にあれば、有機無機複合体は温和な条件で工業的に製造可能であり、また、有機無機複合体を材料として中空炭素微粒子等を工業的に製造することができる。これらの炭素材料の含有割合は、目的とする物性に応じて、後述する各種除去工程等により容易に任意の割合にすることが可能である。
有機無機複合体中の無機物の含有割合は、質量割合として、好ましくは0.01質量%〜99.99質量%であり、特に好ましくは0.1質量%〜99.9質量%である。有機無機複合体中の無機物の含有割合が上記範囲内にあれば、有機無機複合体は温和な条件で工業的に製造可能であり、また、有機無機複合体を材料として中空炭素微粒子等を工業的に製造することができる。これらの無機物の含有割合は、目的とする物性に応じて、後述する各種除去工程等により容易に任意の割合にすることが可能である。
有機無機複合体は、C1sXPS分析による、全結合、すなわち、C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合(アルコール由来のC−O結合、エーテル由来のC−O結合、エポキシ由来のC−O結合等含む)とC=O結合(カルボニル由来のC=O結合、カルボキシル由来のC=O結合、エステル由来のC=O結合、ラクトン由来のC=O結合等含む)の合計量に対する、全炭素酸素結合、すなわち、C−O結合とC=O結合の合計量の割合が、好ましくは10%以上であり、より好ましくは20%以上であり、さらに好ましくは25%以上である。上記割合の上限は、好ましくは35%以下である。有機無機複合体において、C1sXPS分析による、C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合の合計量に対する、C−O結合とC=O結合の合計量の割合が、上記範囲内にあれば、有機無機複合体は、従来知られている単純な炭素材料と異なり、溶解性等の様々な物性をもつ新規な炭素材料含有材料となり得る。
有機無機複合体は、C1sXPS分析による、全炭素酸素結合、すなわち、C−O結合(アルコール由来のC−O結合、エーテル由来のC−O結合、エポキシ由来のC−O結合等含む)とC=O結合(カルボニル由来のC=O結合、カルボキシル由来のC=O結合、エステル由来のC=O結合、ラクトン由来のC=O結合等含む)の合計量に対する、エーテル由来のC−O結合(すなわち、C−O−C結合)とアルコール由来のC−O結合(すなわち、C−OH結合)の合計量の割合が、好ましくは50%以上であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは65%以上であり、特に好ましくは70%以上であり、最も好ましくは75%以上である。上記割合の上限は、好ましくは90%以下である。有機無機複合体において、C1sXPS分析による、C−O結合とC=O結合の合計量に対する、エーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合が、上記範囲内にあれば、有機無機複合体は、炭素材料部分の構造制御率を高め得るとともに、構造がより精密に制御され得る。すなわち、分解反応に由来するC=O結合の比率が少ないほど分解反応が抑制されており、このような有機無機複合体は、構造がより精密に制御された炭素材料含有材料であると言える。
有機無機複合体は、C1sXPS分析による、全結合、すなわち、C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合(アルコール由来のC−O結合、エーテル由来のC−O結合、エポキシ由来のC−O結合等含む)とC=O結合(カルボニル由来のC=O結合、カルボキシル由来のC=O結合、エステル由来のC=O結合、ラクトン由来のC=O結合等含む)の合計量に対する、エーテル由来のC−O結合(すなわち、C−O−C結合)とアルコール由来のC−O結合(すなわち、C−OH結合)の合計量の割合が、好ましくは15%以上であり、より好ましくは17%以上であり、さらに好ましくは20%以上である。上記割合の上限は、好ましくは30%以下である。炭素材料含有材料において、C1sXPS分析による、全結合の合計量に対する、エーテル由来のC−O結合(すなわち、C−O−C結合)とアルコール由来のC−O結合(すなわち、C−OH結合)の合計量の割合が、上記範囲内にあれば、有機無機複合体は、構造がより精密に制御された有機無機複合体であると言える。
有機無機複合体は、特に好ましくは、C1sXPS分析による、全結合、すなわち、C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合(アルコール由来のC−O結合、エーテル由来のC−O結合、エポキシ由来のC−O結合等含む)とC=O結合(カルボニル由来のC=O結合、カルボキシル由来のC=O結合、エステル由来のC=O結合、ラクトン由来のC=O結合等含む)の合計量に対する、全炭素酸素結合、すなわち、C−O結合とC=O結合の合計量の割合が、上記範囲内にあって、且つ、C1sXPS分析による、全炭素酸素結合、すなわち、C−O結合(アルコール由来のC−O結合、エーテル由来のC−O結合、エポキシ由来のC−O結合等含む)とC=O結合(カルボニル由来のC=O結合、カルボキシル由来のC=O結合、エステル由来のC=O結合、ラクトン由来のC=O結合等含む)の合計量に対する、エーテル由来のC−O結合(すなわち、C−O−C結合)とアルコール由来のC−O結合(すなわち、C−OH結合)の合計量の割合が、上記範囲内にある態様である。このような態様であれば、有機無機複合体は、炭素材料部分の溶解性をより高め得るとともに、炭素材料部分の構造制御率をより高め得る。また、このような態様であれば、有機無機複合体は、構造がより一層精密に制御され得る。
有機無機複合体は、特に好ましくは、C1sXPS分析による、全結合、すなわち、C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合(アルコール由来のC−O結合、エーテル由来のC−O結合、エポキシ由来のC−O結合等含む)とC=O結合(カルボニル由来のC=O結合、カルボキシル由来のC=O結合、エステル由来のC=O結合、ラクトン由来のC=O結合等含む)の合計量に対する、全炭素酸素結合、すなわち、C−O結合とC=O結合の合計量の割合が、上記範囲内にあって、且つ、C1sXPS分析による、全結合、すなわちC−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合(アルコール由来のC−O結合、エーテル由来のC−O結合、エポキシ由来のC−O結合等含む)とC=O結合(カルボニル由来のC=O結合、カルボキシル由来のC=O結合、エステル由来のC=O結合、ラクトン由来のC=O結合等含む)の合計量に対する、エーテル由来のC−O結合(すなわち、C−O−C結合)とアルコール由来のC−O結合(すなわち、C−OH結合)の合計量の割合が、上記範囲内にある態様である。このような態様であれば、有機無機複合体は、炭素材料部分の溶解性をより高め得るとともに、炭素材料部分の構造制御率をより高め得る。また、このような態様であれば、有機無機複合体は、構造がより一層精密に制御され得る。
有機無機複合体は、最も好ましくは、C1sXPS分析による、全結合、すなわち、C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合(アルコール由来のC−O結合、エーテル由来のC−O結合、エポキシ由来のC−O結合等含む)とC=O結合(カルボニル由来のC=O結合、カルボキシル由来のC=O結合、エステル由来のC=O結合、ラクトン由来のC=O結合等含む)の合計量に対する、全炭素酸素結合、すなわち、C−O結合とC=O結合の合計量の割合が、上記範囲内にあって、且つ、C1sXPS分析による、全炭素酸素結合、すなわち、C−O結合(アルコール由来のC−O結合、エーテル由来のC−O結合、エポキシ由来のC−O結合等含む)とC=O結合(カルボニル由来のC=O結合、カルボキシル由来のC=O結合、エステル由来のC=O結合、ラクトン由来のC=O結合等含む)の合計量に対する、エーテル由来のC−O結合(すなわち、C−O−C結合)とアルコール由来のC−O結合(すなわち、C−OH結合)の合計量の割合が、上記範囲内にあって、且つ、C1sXPS分析による、全結合、すなわちC−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合(アルコール由来のC−O結合、エーテル由来のC−O結合、エポキシ由来のC−O結合等含む)とC=O結合(カルボニル由来のC=O結合、カルボキシル由来のC=O結合、エステル由来のC=O結合、ラクトン由来のC=O結合等含む)の合計量に対する、エーテル由来のC−O結合(すなわち、C−O−C結合)とアルコール由来のC−O結合(すなわち、C−OH結合)の合計量の割合が、上記範囲内にある態様である。このような態様であれば、有機無機複合体は、炭素材料部分の溶解性をより高め得るとともに、炭素材料部分の構造制御率をさらにより高め得る。また、このような態様であれば、有機無機複合体は、構造がさらにより一層精密に制御され得る。
有機無機複合体は、好ましくは、IR分析において1660cm−1〜1800cm−1の間にC=O伸縮振動に起因するピークが見られない。有機無機複合体のIR分析において1660cm−1〜1800cm−1の間にC=O伸縮振動に起因するピークが見られない場合、有機無機複合体は、構造がより精密に制御され得る。
有機無機複合体のIR分析において1660cm−1〜1800cm−1の間にC=O伸縮振動に起因するピークが見られない場合に該有機無機複合体の構造がより精密に制御され得るという理由は次のように考えられる。すなわち、後述するような化合物および製法を用いて有機無機複合体を形成した場合、縮合反応により、反応後の生成物には骨格である芳香族と酸素官能基が残ることになる。このとき、芳香族の構造を保ったまま(言い換えれば、構造が制御された場合)では、エーテル架橋のC−O結合もしくはアルコール由来のC−O結合、さらに酸素官能基も脱離縮合し、骨格の芳香族同士が結合したC−C結合が生成すると考えられる。一方で、望まない分解反応が起こり、骨格の芳香族構造が開裂した場合は、分解反応に由来するC=O結合が生じてしまう。したがって、IR分析において1660cm−1〜1800cm−1の間にC=O伸縮振動に起因するピークが見られないことは、分解反応が抑制されていることを意味し、このような有機無機複合体は、構造がより精密に制御された炭素材料含有材料であると言える。上記範囲は、特に好ましくは1700cm−1〜1800cm−1の範囲である。
有機無機複合体は、空気雰囲気下、40℃から、10℃/分の昇温条件によってTG−DTA分析を行ったときの、DTAの立ち上がり温度で示される酸化開始温度が、好ましくは200℃以上であり、より好ましくは250℃以上であり、最も好ましくは300℃以上である。有機無機複合体において、空気雰囲気下、40℃から、10℃/分の昇温条件によってTG−DTA分析を行ったときの、DTAの立ち上がり温度で示される酸化開始温度が、上記範囲内にあれば、本発明の炭素材料含有材料は、酸化安定性が高く、すなわち構造が制御され、骨格構造が保たれているために耐酸化性(耐分解性)が高くなる。仮に、C=O結合が生成するような骨格の開裂が生じていると、骨格の安定性が下がり、耐酸化性(耐分解性)が低くなってしまうというおそれがある。
本発明の製造方法によって得られる炭素材料含有材料の一つの実施形態である有機無機複合体は、前述の通り、炭素材料と無機物を含む。本発明の製造方法によって得られる炭素材料含有材料の一つの実施形態である有機無機複合体は、このように「炭素材料」を含み、代表的には、前述したように、加熱によって同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きる化合物(A)と無機物を含む組成物を加熱する加熱工程(I)によって、該組成物中の化合物(A)が加熱されることによって生成し得る。なお、本発明の製造方法によって得られる炭素材料含有材料の一つの実施形態である有機無機複合体に含まれる「炭素材料」についての下記の説明は、先の≪≪3.炭素材料含有材料の製造方法≫≫の項目における説明中で言及する「炭素材料」、この≪4−1.有機無機複合体の製造方法≫以外の≪≪3.炭素材料含有材料の製造方法の代表例≫≫の項目における説明中で言及する「炭素材料」、≪≪5.炭素材料含有材料≫≫の項目における説明中で言及する「炭素材料」、≪≪6.有機無機複合体≫≫の項目における説明中で言及する「炭素材料」、≪≪7.有機無機複合体の応用≫≫の項目における説明中で言及する「炭素材料」についての説明として援用し得る。
炭素材料は、C1sXPS分析により容易に炭素成分の存在が確認できる。また、炭素材料は、好ましくは、その構造内にベンゼン環由来のハニカム構造(グラフェン構造)を有する。グラフェン構造は、ラマン分光分析によってその有無の確認ができる(非特許文献4)。
炭素材料は、不純物となる金属成分の含有量が合計で、通常、炭素原子100原子%に対し、好ましくは0.1原子%以下であり、より好ましくは0.01原子%以下であり、特に好ましくは実質的にゼロである。これらは、炭素材料を蛍光X線元素分析法(XRF)により分析することによって確認することができる。また、炭素材料含有材料(この項目では有機無機複合体)を蛍光X線元素分析法(XRF)により分析した場合、炭素材料含有材料(この項目では有機無機複合体)を構成する無機物に含まれる金属成分以外の金属成分の含有量が、炭素原子100原子%に対し、好ましくは0.1原子%以下であり、より好ましくは0.01原子%以下であり、特に好ましくは実質的にゼロである。例えば、無機物にアルミナを使用した炭素材料含有材料(この項目では有機無機複合体)を蛍光X線元素分析法(XRF)にて分析した場合、アルミナに含まれる金属成分がアルミニウムのみの場合、アルミニウム以外の金属成分の含有量が、炭素原子100原子%に対し、好ましくは0.1原子%以下であり、より好ましくは0.01原子%以下であり、特に好ましくは実質的にゼロである。
炭素材料は、その構成する元素として、炭素を必須とし、炭素以外の元素を含んでいてもよい。このような炭素以外の元素としては、好ましくは、酸素、水素、窒素、硫黄、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれる少なくとも1種の元素であり、より好ましくは、酸素、水素、窒素、硫黄から選ばれる少なくとも1種の元素であり、さらに好ましくは、酸素、水素、窒素から選ばれる少なくとも1種の元素であり、特に好ましくは、酸素、水素から選ばれる少なくとも1種の元素である。炭素材料を構成する元素のうち水素以外の元素の総量を100原子%としたとき、炭素は、好ましくは60原子%以上であり、より好ましくは70原子%以上であり、さらに好ましくは75原子%以上である。また、炭素以外の元素は、好ましくは10原子%以上である。各元素の割合がこの範囲に入ることで、炭素材料でありながら良好な溶解性を発現することが可能となる。これらは、炭素材料をX線光電子分光法(C1sXPS)により定量することによって確認することができる。また、炭素材料含有材料(この項目では有機無機複合体)をX線光電子分光法(C1sXPS)により定量した場合、炭素材料含有材料(この項目では有機無機複合体)を構成する無機物に含まれる元素以外の元素の総量を100原子%としたとき、炭素は、好ましくは60原子%以上であり、より好ましくは70原子%以上であり、さらに好ましくは75原子%以上である。また、炭素以外の元素は、好ましくは10原子%以上である。例えば、無機物にリンタングステン酸を使用した炭素材料含有材料(この項目では有機無機複合体)をX線光電子分光法(C1sXPS)にて分析した場合、リンおよびタングステンが検出されるが、リン、タングステン、および、リンとタングステンの含有量から計算されるリンタングステン酸を構成する酸素量以外の元素の総量(水素を除く)に対しての炭素の量の割合、炭素以外の元素の割合が上記範囲内に入ることが好ましい。
炭素材料は、好ましくは、溶媒に可溶である。
ここで、炭素材料が溶媒に可溶である場合とは、従来の炭素材料に比べて溶媒への溶解性に優れ、良好な取り扱い性を実現し得る場合である。
炭素材料が溶媒に可溶という態様としては、好ましくは、下記の実施態様を採りうる。
(実施態様1)炭素材料の全てが溶媒に溶解する実施態様。すなわち、炭素材料が、溶媒に溶解する成分(成分A)のみからなる実施態様。
(実施態様2)炭素材料の一部が溶媒に溶解する態様。すなわち、炭素材料が、溶媒に溶解する成分(成分A)と溶媒に溶解しない成分(成分B)からなる実施態様。
本発明において「溶媒に可溶」とは、任意の溶媒に溶解する成分がある態様を意味し、該溶媒としては、好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、クロロホルム、ジクロロメタン等が挙げられる。すなわち、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、クロロホルム、ジクロロメタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒に溶解する成分がある態様が好ましい。より好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、クロロホルムからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒に溶解する成分がある態様であり、さらに好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒に溶解する成分がある態様であり、特に好ましくは、N−メチルピロリドンに溶解する成分がある態様である。
炭素材料が溶媒に可溶である一つの実施形態は、例えば、炭素材料が、溶媒に可溶である炭素系化合物を含む実施形態である。
溶媒に可溶であるか否かの判定方法としては、例えば、炭素材料含有材料(この項目では有機無機複合体)を上記溶媒に対して0.001質量%となるように混合したのち、超音波処理を1時間行い、得られた液をPTFE製濾紙(孔径0.45μm)に通したとき、濾紙を通過した液に炭素系化合物が含まれるか否かで判定することができる。濾紙を通過した液に炭素系化合物が含まれる場合、炭素材料が溶媒に可溶である炭素系化合物を含むと判定される。上記PTFE製濾紙としては、例えば、ジーエルサイエンス株式会社製のGLクロマトディスク(型式13P)を用いることができる。
炭素材料は、好ましくは、(i)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてGバンド(一般的に1550cm−1〜1650cm−1の範囲内)にピークを示す。したがって、炭素材料が、ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてGバンド(一般的に1550cm−1〜1650cm−1の範囲内)にピークを有することは、炭素材料がグラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有していることを意味している。Gバンドは、強度が高く、シャープであれば、よりきれいなグラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有しているといえる。
炭素材料は、好ましくは、(ii)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてDバンド(一般的に1300cm−1〜1400cm−1の範囲内)にピークを示す。グラフェン構造の欠陥に由来する構造を有する炭素材料は、ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいて、Dバンド(一般的に1300cm−1〜1400cm−1の範囲内)にピークを示す。したがって、炭素材料が、ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおけるDバンド(一般的に1300cm−1〜1400cm−1の範囲内)にピークを有することは、その炭素材料が官能基を含むことや、グラフェン構造の欠陥に由来する構造またはグラフェン構造の欠陥に由来する構造に類似の構造を有していることを意味している。Dバンドは、強度が低ければ、よりきれいなグラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有しているといえる。また、Dバンドが確認できるということは、本発明の製造方法で得られる炭素材料含有材料が官能基を有することを意味しており、これにより、溶媒に対する溶解性を高め得る。
炭素材料は、好ましくは、(i)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてGバンド(一般的に1550cm−1〜1650cm−1の範囲内)にピークを示し、さらに、(ii)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてDバンド(一般的に1300cm−1〜1400cm−1の範囲内)にピークを示す。
炭素材料は、好ましくは、(iii)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてG′バンド(一般的に2650cm−1〜2750cm−1の範囲内)にピークを示す。したがって、炭素材料が、ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてG′バンド(一般的に2650cm−1〜2750cm−1の範囲内)にピークを有することは、炭素材料がグラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有していることを意味している。G′バンドの強度は、グラフェン構造が1層のときに最も強く、グラフェン構造の積層数が増えるにつれて徐々に小さくなる。しかしながら、G′バンドは、グラフェン構造の積層数が増えるにつれて徐々に強度が小さくなっても、ピークは観察することができる。したがって、G′バンドにピークを有することは、炭素材料がグラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有しているといえる。G′バンドは、2Dバンドとも呼ばれることがある。
炭素材料は、好ましくは、(i)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてGバンド(一般的に1550cm−1〜1650cm−1の範囲内)にピークを示し、さらに、(ii)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてDバンド(一般的に1300cm−1〜1400cm−1の範囲内)にピークを示し、さらに、(iii)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてG′バンド(一般的に2650cm−1〜2750cm−1の範囲内)にピークを示す。
炭素材料は、好ましくは、(iv)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてD+D′バンド(一般的に2800cm−1〜3000cm−1の範囲内)にピークを示す。グラフェン構造の欠陥に由来する構造を有する炭素材料は、ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいて、D+D′バンド(一般的に2800cm−1〜3000cm−1の範囲内)にピークを示す。したがって、炭素材料が、ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてD+D′バンド(一般的に2800cm−1〜3000cm−1の範囲内)にピークを有することは、その炭素材料が官能基を含むことや、グラフェン構造の欠陥に由来する構造またはグラフェン構造の欠陥に由来する構造に類似の構造を有していることを意味している。D+D′バンドは、強度が低ければ、よりきれいなグラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有しているといえる。D+D′バンドは、D+Gバンドとも呼ばれることがある。また、D+D′バンドが確認できるということもまた、本発明の製造方法で得られる炭素材料含有材料が官能基を有することを意味しており、これにより、溶媒に対する溶解性を高め得る。
炭素材料は、好ましくは、(i)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてGバンド(一般的に1550cm−1〜1650cm−1の範囲内)にピークを示し、さらに、(ii)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてDバンド(一般的に1300cm−1〜1400cm−1の範囲内)にピークを示し、さらに、(iii)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてG′バンド(一般的に2650cm−1〜2750cm−1の範囲内)にピークを示し、さらに、(iv)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてD+D′バンド(一般的に2800cm−1〜3000cm−1の範囲内)にピークを示す。
炭素材料は、好ましくは、溶媒に可溶である炭素系化合物を含む。
一つの実施形態として、炭素材料は、例えば、(i)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてGバンド(一般的に1550cm−1〜1650cm−1の範囲内)にピークを示し、さらに、(ii)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてDバンド(一般的に1300cm−1〜1400cm−1の範囲内)にピークを示し、さらに、溶媒に可溶である炭素系化合物を含む。
炭素材料において、官能基を含むことと共に、グラフェン構造の一部に欠陥を有している場合、この欠陥が、炭素材料の溶媒への溶解性の発現に寄与し得る。
炭素材料は、上記のように、従来公知の炭素材料とは異なり、グラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有し、炭素材料の溶媒への溶解性がより優れる(例えば、溶媒に溶解する炭素材料の成分がより多くなったり、炭素材料が溶解できる溶媒の種類がより増えたりする)。
炭素材料に含まれる炭素系化合物の分子量は、好ましくは1000〜1300000であり、より好ましくは5000〜1000000であり、さらに好ましくは10000〜700000であり、特に好ましくは15000〜500000であり、最も好ましくは20000〜300000である。炭素材料に含まれる炭素系化合物の分子量が上記範囲内にあれば、上記(i)の特徴と相まって、炭素材料の溶媒への溶解性がより優れる(例えば、溶媒に溶解する炭素材料の成分がより多くなったり、炭素材料が溶解できる溶媒の種類がより増えたりする)。炭素材料に含まれる炭素系化合物の分子量が1300000を超えると、炭素材料の溶媒への溶解性が悪くなるおそれがある。炭素材料に含まれる炭素系化合物の分子量が1000未満であると、炭素材料としての特徴が薄れるおそれがある。これらの分子量は、後述する手法により分析できる。
炭素材料中の炭素系化合物の含有割合は、好ましくは50質量%〜100質量%であり、より好ましくは70質量%〜100質量%であり、さらに好ましくは90質量%〜100質量%であり、特に好ましくは95質量%〜100質量%であり、最も好ましくは実質的に100質量%である。炭素材料中の炭素系化合物の含有割合が上記範囲内にあれば、上記(i)、(ii)の特徴と相まって、炭素材料の溶媒への溶解性がより優れる(例えば、溶媒に溶解する炭素材料の成分がより多くなったり、炭素材料が溶解できる溶媒の種類がより増えたりする)。
炭素材料は、好ましくは、XRD分析によって得られるXRDスペクトルチャートにおいて、20°〜30°の範囲内にピークを示す。すなわち炭素材料は、グラフェン構造が積層した構造(グラフェン積層構造)を有することも、好ましい実施形態の一つである。積層構造を有することで、炭素材料はより強固になり得るとともに、より安定なものとなり得る。
炭素材料のさらに好ましい形態は、ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいて上述した形態(i)〜(iv)のいずれの形態、あるいは組合せた形態;(i)および(ii)、(i)、(ii)および(iii)、(i)、(ii)、(iii)および(iv)を有し、且つ、XRD分析によって得られるXRDスペクトルチャートにおいて、20°〜30°の範囲内にピークを示す形態である。
炭素材料は、好ましくは、バルク状態で存在し得る。一般には、バルク状態の物質が備える性質が、その物質の固有の性質である。すなわち、バルク状態の物質は、その物質のもつ基本的な性質、例えば、沸点、融点、粘度、密度などの値を決定できる。ある物質の物性といえば、バルク部分が持つ性質を指す。バルク状態の例としては、粒子、ペレット、フィルム等である。粒子の存在状態としては、例えば、粉体が挙げられる。フィルムとしては、自立したフィルムであることが好ましい。
≪4−2.炭素材料含有粒子の製造方法≫
本発明の製造方法によって得られる炭素材料含有材料の一つの実施形態は、炭素材料含有粒子である。炭素材料含有粒子としては、代表的には、コアシェル粒子、高炭素化コアシェル粒子、中空炭素微粒子、高炭素化中空炭素微粒子などが挙げられる。
<4−2−1.コアシェル粒子の製造方法>
コアシェル粒子は、本発明の炭素材料含有材料の製造方法において、加熱工程(I)の後、化合物(A)の加熱によって生成する炭素材料の少なくとも一部を除去する炭素材料除去工程を含むことによって製造し得る。すなわち、加熱工程(I)を経て炭素材料含有材料の一つの実施形態である有機無機複合体を製造した後、該有機無機複合体に含まれる炭素材料の少なくとも一部を除去する炭素材料除去工程に付すことによって製造し得る。炭素材料除去工程においては、有機無機複合体に含まれる炭素材料を溶解する溶媒によって処理する。これにより、図2に示すように、無機物粒子20の表面に炭素材料結合領域(溶媒によって溶解しない領域)30がコーティングされたコアシェル粒子(コア部分:無機物粒子、シェル部分:炭素材料結合領域)200が得られ得る。このようなコアシェル粒子も炭素材料含有材料である。
溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、クロロホルム、ジクロロメタン等が挙げられ、好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、クロロホルムであり、より好ましくはN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンであり、特に好ましくはN−メチルピロリドンである。
<4−2−2.高炭素化コアシェル粒子の製造方法>
高炭素化コアシェル粒子は、本発明の炭素材料含有材料の製造方法において、加熱工程(I)、およびそれに続く炭素材料除去工程の後、さらに加熱する加熱工程(II)を含むことによって製造し得る。すなわち、上述のコアシェル粒子(コア部分:無機物粒子、シェル部分:炭素材料結合領域)をさらに加熱する。この加熱工程(II)により、シェル部分を高炭素化させ得る。これにより、高炭素化コアシェル粒子(コア部分:無機物粒子、シェル部分:高炭素化物)が得られ得る。高炭素化することで、得られた炭素材料または炭素材料複合体の強度や耐熱性を向上することができる。高炭素化コアシェル粒子も炭素材料含有材料である。
加熱工程(II)における加熱温度は、コアの無機成分が耐えられる温度内であればよいが、具体的な加熱温度として、好ましくは500℃〜3000℃であり、より好ましくは600℃〜2500℃であり、最も好ましくは700℃〜2000℃である。加熱工程(II)における加熱温度を上記範囲に調整することにより、シェル部分を効果的に高炭素化させることができる。
加熱工程(II)における加熱時間は、具体的な加熱時間として、好ましくは0.1時間〜120時間であり、より好ましくは0.5時間〜100時間であり、さらに好ましくは1時間〜50時間であり、最も好ましくは2時間〜24時間である。加熱時間を上記範囲に調整することにより、シェル部分を効果的に高炭素化させることができる。
<4−2−3.中空炭素微粒子の製造方法>
中空炭素微粒子は、本発明の炭素材料含有材料の製造方法において、加熱工程(I)の後、無機物を除去する無機物除去工程を含むことによって製造し得る(製造形態1)。すなわち、加熱工程(I)を経て炭素材料含有材料の一つの実施形態である有機無機複合体を製造した後、該有機無機複合体に含まれる無機物を除去する無機物除去工程に付すことによって製造し得る。
中空炭素微粒子は、また、本発明の炭素材料含有材料の製造方法において、加熱工程(I)、およびそれに続く炭素材料除去工程の後、無機物を除去する無機物除去工程を含むことによっても製造し得る(製造形態2)。すなわち、加熱工程(I)、およびそれに続く炭素材料除去工程を経て炭素材料含有材料の一つの実施形態であるコアシェル粒子を製造した後、該コアシェル粒子に含まれる無機物を除去する無機物除去工程に付すことによって製造し得る。
無機物除去工程における無機物の除去の方法は、例えば、炭素材料が溶解されずに無機物を溶解できる溶剤で除去する方法が挙げられる。上記のような溶解特性をもつ溶剤としては、特に限定はされないが、水系溶剤が好ましい。このように水系溶剤が好ましい理由としては、本発明の製造方法で製造される炭素材料含有材料に含まれる炭素材料は水に溶けにくく、一方、無機物は水(特に酸性水や塩基性水)に溶けるものが多いためである。水系溶剤としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等の酸性水溶液;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の塩基性水溶液;などが挙げられる。また、除去工程において、温度は、特に限定はされないが、水系溶剤の溶解特性を効果的に発現させ得る点で、好ましくは0℃〜150℃であり、より好ましくは20℃〜100℃である。さらに、除去工程の物理的な処理としては、特に限定はされないが、除去性を効果的に発現させ得る点で、好ましくは、静置、撹拌、超音波処理、せん断操作であり、より好ましくは、撹拌、超音波処理、せん断操作である。
<4−2−4.高炭素化中空炭素微粒子の製造方法>
高炭素化中空炭素微粒子は、本発明の炭素材料含有材料の製造方法において、加熱工程(I)、およびそれに続く無機物除去工程の後、さらに加熱する加熱工程(II)を含むことによって製造し得る。すなわち、上述の製造形態1で得られる中空炭素微粒子をさらに加熱する。この加熱工程(II)により、炭素材料部分を高炭素化させ得る。これにより、高炭素化中空炭素微粒子が得られ得る。高炭素化することで、得られた炭素材料または炭素材料複合体の強度や耐熱性を向上することができる。高炭素化中空炭素微粒子も炭素材料含有材料である。
高炭素化中空炭素微粒子は、また、本発明の炭素材料含有材料の製造方法において、加熱工程(I)、およびそれに続く炭素材料除去工程、およびそれに続く無機物除去工程の後、さらに加熱する加熱工程(II)を含むことによって製造し得る。すなわち、上述の製造形態2で得られる中空炭素微粒子をさらに加熱する。この加熱工程(II)により、炭素材料部分を高炭素化させ得る。
≪≪5.炭素材料含有材料≫≫
本発明の炭素材料含有材料は、炭素材料と無機物を含む炭素材料含有材料であって、該炭素材料の少なくとも一部と該無機物の少なくとも一部とが共有結合によって結合しており、該炭素材料の元素分析における炭素原子と水素原子と酸素原子の含有割合が、炭素原子の含有割合を6.0atom%としたときに、水素原子の含有割合が1.0atom%〜8.0atom%であり、酸素原子の含有割合が0.1atom%〜4atom%である。
本発明の炭素材料含有材料は、炭素材料の少なくとも一部と無機物の少なくとも一部とが共有結合によって結合している。好ましくは、無機物の最表面の少なくとも一部に炭素材料の少なくとも一部が共有結合している。より好ましくは、無機物粒子の最表面の少なくとも一部に炭素材料の少なくとも一部が共有結合している。
本発明の炭素材料含有材料の説明において、「炭素材料」については、≪≪2.炭素材料≫≫における説明を援用し得る。本発明の炭素材料含有材料の説明において、「無機物」については、≪≪3.炭素材料含有材料の製造方法≫≫、≪≪4.炭素材料含有材料の製造方法の代表例≫≫における説明を援用し得る。
本発明の炭素材料含有材料は、任意の適切な方法によって製造し得る。本発明の炭素材料含有材料は、好ましくは、本発明の炭素材料含有材料の製造方法によって製造し得る。
本発明の炭素材料含有材料としては、多種多様なものが挙げられ、形状としても、粒子状、非粒子状(例えば、繊維状、薄膜状など)など、各種の形状を取り得る。形状としては、粒子状が好ましい。
先の≪≪3.炭素材料含有材料の製造方法≫≫や≪≪4.炭素材料含有材料の製造方法の代表例≫≫において説明したように、例えば、無機物として、例えば、粒子状の無機物(無機物粒子)、非粒子状の無機物(例えば、繊維状の無機物、薄膜状の無機物など)などの各種の形状の無機物を採用する場合、それぞれの形状に応じて、多種多様な炭素材料含有材料が得られ得る。無機物としては、粒子状の無機物(無機物粒子)が好ましい。
先の≪≪3.炭素材料含有材料の製造方法≫≫や≪≪4.炭素材料含有材料の製造方法の代表例≫≫において説明したように、無機物粒子を用いる場合は、本発明の炭素材料含有材料として、代表的には、無機物粒子を多数含む塊状の炭素材料含有材料が挙げられる。この場合、解砕などによって、粒子状の炭素材料含有材料となり得る。また、化合物(A)と無機物の配合割合を調整することにより、粒子状の炭素材料含有材料となり得る。また、繊維状の無機物を用いる場合は、本発明の炭素材料含有材料としては、繊維状のコアシェル繊維やチューブ状の中空炭素材料が挙げられる。さらに、薄膜状の無機物を用いる場合は、本発明の炭素材料含有材料として、積層状の炭素材料含有材料が挙げられる。また、このような積層状の炭素材料含有材料に対して、さらに、前述の加熱工程(II)や炭素材料除去工程や無機物除去工程などを施すことにより、薄膜状の各種炭素材料となり得る。
本発明の炭素材料含有材料の代表的な実施形態としては、≪≪4.炭素材料含有材料の製造方法の代表例≫≫において説明した製造方法によって得られる炭素材料含有材料のように、有機無機複合体、炭素材料含有粒子などが挙げられる。炭素材料含有粒子としては、例えば、コアシェル粒子、高炭素化コアシェル粒子、中空炭素微粒子、高炭素化中空炭素微粒子などが挙げられる。
本発明の炭素材料含有材料は、好ましくは、13C−NMR分析において、125ppm〜135ppmの間にピークを示す。13C−NMR分析において、125ppm〜135ppmの間にピークを示すことは、炭素材料含有材料が少なくともsp2炭素を含む炭素材料を含むことを意味する。
本発明の炭素材料含有材料は、好ましくは、13C−NMR分析において、140ppm〜160ppmの間にピークを示す。13C−NMR分析において、140ppm〜160ppmの間にピークを示すことは、C−O結合の存在を意味している。したがって、13C−NMR分析において、140ppm〜160ppmの間にピークを示すことは、代表的には、無機物の最表面に「酸素を有する基」(例えば、無機酸化物由来の酸素を有する基、金属水酸基など)を有していて、その酸素と、炭素材料の炭素とが、共有結合していることを意味する。
また、本発明の炭素材料含有材料が、29Si−NMR分析において、C−O−Si結合に由来するピークを有する場合は、炭素材料の少なくとも一部とSiを有する無機物の少なくとも一部とが共有結合によって結合していることを意味する。代表的には、シリカ粒子の最表面の少なくとも一部に炭素材料の少なくとも一部が共有結合していることを意味する。
本発明の炭素材料含有材料において、炭素材料部分の膜厚については、≪≪4.炭素材料含有材料の製造方法の代表例≫≫の項目において説明した内容を援用し得る。
≪≪6.有機無機複合体≫≫
本発明の有機無機複合体は、炭素材料と無機物を含む有機無機複合体であって、該炭素材料が溶媒に可溶である。
本発明の有機無機複合体において、有機無機複合体の組成、物性、および「炭素材料」については、≪≪2.炭素材料≫≫における説明、≪4−1.有機無機複合体の製造方法≫における説明を援用し得る。本発明の有機無機複合体において、「化合物(A)」については、≪1−1.化合物(A)≫における説明を援用し得る。本発明の有機無機複合体において、「無機物」については、≪3−2.無機物≫における説明を援用し得る。
本発明の有機無機複合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な方法によって製造し得る。このような製造方法は、代表的には、加熱によって同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きる化合物(A)と無機物を含む組成物を加熱する加熱工程(I)を含む。この加熱工程(I)によって、化合物(A)と無機物を含む組成物中の該化合物(A)が加熱されて炭素材料となり得る。
本発明の有機無機複合体を製造する際の加熱工程(I)における加熱温度は、化合物(A)の縮合反応温度がT℃であるときに、好ましくは、(T−150)℃以上である。
本発明の有機無機複合体を製造する際の加熱工程(I)においては、加熱によって同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きる化合物(A)と無機物を含む組成物を加熱する。化合物(A)と無機物との配合割合は、無機物100質量%に対して、化合物(A)が、好ましくは0.01質量%〜1000000質量%であり、より好ましくは0.1質量%〜100000質量%であり、特に好ましくは1質量%〜1000質量%である。化合物(A)と無機物との配合割合が上記範囲内にあれば、構造がより精密に制御された有機無機複合体をより温和な条件でより簡便に製造し得る。これらの無機物と化合物(A)の配合割合は、目的とする複合体の物性に応じて、任意に調整することができる。例えば、無機物と化合物(A)の配合割合を調整することにより、得られる有機無機複合体の物性、形態(例えば、溶媒への溶解性や、炭素成分または無機成分の形状(粒子状や非粒子状)、炭素成分または無機成分のサイズなど)を制御することができる。
加熱によって同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きる化合物(A)と無機物を含む組成物中には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分が含まれていてもよい。このような他の成分としては、例えば、溶媒、触媒、母材、担体などが挙げられる。
本発明の有機無機複合体を製造する際の加熱工程(I)で加熱する組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な方法で調製すればよい。このような方法としては、例えば、化合物(A)と無機物とを、任意の適切な方法(例えば、破砕、粉砕など)で固体状態のまま混合する方法が挙げられる。また、化合物(A)と無機物と溶剤と、必要に応じて溶剤以外の他の成分とを、任意の適切な方法(例えば、超音波処理など)で混合し、任意の適切な方法(例えば、真空乾燥)によって溶剤を除去する方法などが挙げられる。また、必要に応じて、解砕を行ってもよい。
本発明の有機無機複合体を製造する際の加熱工程(I)における加熱温度は、化合物(A)の縮合反応温度がT℃であるときに、好ましくは(T−150)℃以上であり、より好ましくは(T−150〜T+50)℃であり、さらに好ましくは(T−130〜T+45)℃であり、さらに好ましくは(T−100〜T+40)℃であり、特に好ましくは(T−80〜T+35)℃であり、最も好ましくは(T−50〜T+30)℃である。本発明の有機無機複合体を製造する際においては、無機物の触媒能や、無機物上の官能基と炭素材料の反応性が高いことから、上記のように化合物(A)の縮合反応温度と比べて比較的低温から反応が進行して炭素化が進み得る。加熱温度を上記範囲に調整することにより、溶媒への可溶性を有する有機無機複合体や、構造がより精密に制御された有機無機複合体をより温和な条件でより簡便に製造し得る。
化合物(A)の縮合反応温度は、TG−DTA分析によって決定できる。具体的には、下記の通りである。
(1)化合物(A)として1種の化合物を用いる場合には、化合物(A)のTG−DTA分析を、窒素ガス雰囲気下、40℃から、昇温速度10℃/分で昇温し、DTAの最も低温側のピークトップ温度を化合物(A)の縮合反応温度(T℃)と決定する。
(2)化合物(A)として2種以上の化合物の混合物を用いる場合には、該混合物のTG−DTA分析を、窒素ガス雰囲気下、40℃から、昇温速度10℃/分で昇温し、DTAの最も低温側のピークトップ温度を化合物(A)(2種以上の化合物の混合物)の縮合反応温度(T℃)と決定する。
(3)ただし、1種の化合物や2種以上の化合物の混合物としての化合物(A)に、例えば、溶媒や水分や水和水等の不純物が含まれている場合は、該不純物の脱離に伴うDTAピーク(不純物ピークと称することもある)が縮合反応温度よりも低温で観測されることがある。このような場合には、上記の不純物ピークは無視して、その化合物(A)の縮合反応温度を決定する。通常は、上記の不純物ピークは無視した上で、DTAの最も低温側のピークトップ温度を、その化合物(A)の縮合反応温度と決定する。
本発明の有機無機複合体を製造する際の加熱工程(I)における加熱温度は、具体的な加熱温度として、好ましくは200℃〜500℃であり、より好ましくは220℃〜400℃であり、さらに好ましくは230℃〜350℃であり、最も好ましくは250℃〜300℃である。加熱温度を上記範囲に調整することにより、溶媒への可溶性を有する有機無機複合体や、構造がより精密に制御された有機無機複合体をより温和な条件でより簡便に製造し得る。特に、加熱工程(I)における加熱温度がこのように低いため、有機無機複合体をより温和な条件で工業的に製造可能である。
本発明の有機無機複合体を製造する際の加熱工程(I)における加熱時間は、具体的な加熱時間として、好ましくは0.1時間〜120時間であり、より好ましくは0.5時間〜100時間であり、さらに好ましくは1時間〜50時間であり、最も好ましくは2時間〜24時間である。加熱時間を上記範囲に調整することにより、溶媒への可溶性を有する有機無機複合体や、構造がより精密に制御された有機無機複合体をより温和な条件でより簡便に製造し得る。
本発明の有機無機複合体において、炭素材料部分の膜厚については、≪≪2.炭素材料含有材料の製造方法の代表例≫≫の項目において説明した内容を援用し得る。
≪≪7.有機無機複合体の応用≫≫
本発明の有機無機複合体は、様々な応用展開が可能である。このような応用展開によって得られる代表的なものは、炭素材料含有粒子である。炭素材料含有材料としては、多種多様なものが挙げられ、形状としても、粒子状、非粒子状(例えば、繊維状、薄膜状など)など、各種の形状を取り得る。形状としては、粒子状が好ましい。炭素材料含有粒子としては、代表的には、コアシェル粒子、高炭素化コアシェル粒子、中空炭素微粒子、高炭素化中空炭素微粒子などが挙げられる。
≪7−1.コアシェル粒子≫
コアシェル粒子は、本発明の有機無機複合体を製造する際において、加熱工程(I)の後、化合物(A)の加熱によって生成する炭素材料の少なくとも一部を除去する炭素材料除去工程に付すことによって製造し得る。すなわち、加熱工程(I)を経て本発明の有機無機複合体を製造した後、本発明の有機無機複合体に含まれる炭素材料の少なくとも一部を除去する炭素材料除去工程に付すことによって製造し得る。炭素材料除去工程においては、本発明の有機無機複合体に含まれる炭素材料を溶解する溶媒によって処理する。これにより、図2に示すように、無機物粒子20の表面に炭素材料結合領域(溶媒によって溶解しない領域)30がコーティングされたコアシェル粒子(コア部分:無機物粒子、シェル部分:炭素材料結合領域)200が得られ得る。
溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、クロロホルム、ジクロロメタン等が挙げられ、好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、クロロホルムであり、より好ましくはN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンであり、特に好ましくはN−メチルピロリドンである。
コアシェル粒子において、炭素材料部分の膜厚については、≪≪2.炭素材料含有材料の製造方法の代表例≫≫の項目において説明した内容を援用し得る。
≪7−2.高炭素化コアシェル粒子≫
高炭素化コアシェル粒子は、本発明の有機無機複合体を製造する際において、加熱工程(I)の後、炭素材料除去工程を続いて行った後、さらに加熱する加熱工程(II)に付すことによって製造し得る。すなわち、炭素材料除去工程によって得られるコアシェル粒子(コア部分:無機物粒子、シェル部分:炭素材料結合領域)をさらに加熱する。この加熱工程(II)により、シェル部分を高炭素化させ得る。これにより、高炭素化コアシェル粒子(コア部分:無機物粒子、シェル部分:高炭素化物)が得られ得る。高炭素化することで、得られた炭素材料または炭素材料複合体の強度や耐熱性を向上することができる。
加熱工程(II)における加熱温度は、コアの無機成分が耐えられる温度内であればよいが、具体的な加熱温度として、好ましくは500℃〜3000℃であり、より好ましくは600℃〜2500℃であり、最も好ましくは700℃〜2000℃である。加熱工程(II)における加熱温度を上記範囲に調整することにより、シェル部分を効果的に高炭素化させることができる。
加熱工程(II)における加熱時間は、具体的な加熱時間として、好ましくは0.1時間〜120時間であり、より好ましくは0.5時間〜100時間であり、さらに好ましくは1時間〜50時間であり、最も好ましくは2時間〜24時間である。加熱時間を上記範囲に調整することにより、シェル部分を効果的に高炭素化させることができる。
高炭素化コアシェル粒子において、炭素材料部分の膜厚については、≪≪2.炭素材料含有材料の製造方法の代表例≫≫の項目において説明した内容を援用し得る。
≪7−3.中空炭素微粒子≫
中空炭素微粒子は、本発明の有機無機複合体を製造する際において、加熱工程(I)の後、無機物を除去する無機物除去工程を含むことによって製造し得る(製造形態1)。すなわち、加熱工程(I)を経て有機無機複合体を製造した後、該有機無機複合体に含まれる無機物を除去する無機物除去工程に付すことによって製造し得る。
中空炭素微粒子は、また、本発明の有機無機複合体を製造する際において、加熱工程(I)の後、炭素材料除去工程を続いて行った後、無機物を除去する無機物除去工程を含むことによっても製造し得る(製造形態2)。すなわち、加熱工程(I)、およびそれに続く炭素材料除去工程を経てコアシェル粒子を製造した後、該コアシェル粒子に含まれる無機物を除去する無機物除去工程に付すことによって製造し得る。
無機物除去工程における無機物の除去の方法は、例えば、炭素材料が溶解されずに無機物を溶解できる溶剤で除去する方法が挙げられる。上記のような溶解特性をもつ溶剤としては、特に限定はされないが、水系溶剤が好ましい。このように水系溶剤が好ましい理由としては、本発明の製造方法で製造される有機無機複合体に含まれる炭素材料は水に溶けにくく、一方、無機物は水(特に酸性水や塩基性水)に溶けるものが多いためである。水系溶剤としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等の酸性水溶液;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の塩基性水溶液;などが挙げられる。また、除去工程において、温度は、特に限定はされないが、水系溶剤の溶解特性を効果的に発現させ得る点で、好ましくは0℃〜150℃であり、より好ましくは20℃〜100℃である。さらに、除去工程の物理的な処理としては、特に限定はされないが、除去性を効果的に発現させ得る点で、好ましくは、静置、撹拌、超音波処理、せん断操作であり、より好ましくは、撹拌、超音波処理、せん断操作である。
中空炭素微粒子において、炭素材料部分の膜厚については、≪≪4.炭素材料含有材料の製造方法の代表例≫≫の項目において説明した内容を援用し得る。
≪7−4.高炭素化中空炭素微粒子≫
高炭素化中空炭素微粒子は、本発明の有機無機複合体を製造する際において、加熱工程(I)の後、無機物除去工程を続いて行った後、さらに加熱する加熱工程(II)を含むことによって製造し得る。すなわち、上述の製造形態1で得られる中空炭素微粒子をさらに加熱する。この加熱工程(II)により、炭素材料部分を高炭素化させ得る。これにより、高炭素化中空炭素微粒子が得られ得る。高炭素化することで、得られた炭素材料または炭素材料複合体の強度や耐熱性を向上することができる。
高炭素化中空炭素微粒子は、また、本発明の有機無機複合体を製造する際において、加熱工程(I)の後、炭素材料除去工程を続いて行った後、さらに無機物除去工程を続いて行った後、さらに加熱する加熱工程(II)を含むことによって製造し得る。すなわち、上述の製造形態2で得られる中空炭素微粒子をさらに加熱する。この加熱工程(II)により、炭素材料部分を高炭素化させ得る。
高炭素化中空炭素微粒子において、炭素材料部分の膜厚については、≪≪2.炭素材料含有材料の製造方法の代表例≫≫の項目において説明した内容を援用し得る。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。また、本明細書において、「質量」は「重量」と読み替えても良い。ただし、本明細書中のC1sXPSに係る部分の%は原子%を意味する。
<ラマン分光分析>
ラマン分光分析は以下の装置、条件により行った。
測定装置:顕微ラマン(日本分光NRS−3100)
測定条件:532nmレーザー使用、対物レンズ20倍、CCD取り込み時間1秒、積算64回(分解能=4cm−1)
なおラマン分析においてG’バンド、D+D’バンドは重なって現れることがあり、D+D’バンドが特にショルダーを持つブロードなピークとして分析されることがある。この場合はショルダーピークの変曲点をG’バンドのピークとみなす。
<XRD分析>
XRD測定は、全自動水平型X線回折装置(リガク社製、SMART LAB)を用いて、以下の条件により行った。
CuKα1線:0.15406nm
走査範囲:10°−90°
X線出力設定:45kV−200mA
ステップサイズ:0.020°
スキャン速度:0.5°min−1−4°min−1
なお、XRD測定は、試料をグローブボックス中にて気密試料台に装填することにより、不活性雰囲気を保った状態で行った。
<C1sXPS分析>
C1sXPS測定は、光電子分光装置(AXIS−ULTRA、島津製作所製)を用いて、以下の条件により行った。
ソース:Mg(デュアルノード)
エミッション:10mA
アノード:10kV
アナライザー:Pass Energy:40
測定範囲:C1s:296〜270eV
積算回数:10回
解析条件:C1s軌道に由来するピークを官能基ごとに、下記に記載のエネルギーでピーク分離し、各面積から割合を算出した。官能基の種類は(1)−COO−、ラクトン、および一部のケトン@288.3eV、(2)C=Oおよびエポキシ基@286.2eV、(3)C−OHおよびC−O−C@285.6eV、(4)6員環性C=C@284.3eV、(5)C−C、C−Hおよび5員環性C=C@283.6eVの5ピークで分離した。ただし、割合算出上(4)と(5)はまとめて計算した。なおC1sXPSに係る部分の%は原子%を意味する。なお、表には、(1)、(2)、(3)のそれぞれに対応するピークの割合を(A)、(B)、(C)で示し、(4)および(5)に対応するピークの合計割合を(D)で示した。
<TG−DTA分析>
TG−DTA分析は、以下の装置、条件により行った。
測定装置:示唆熱熱重量同時測定装置(セイコーインスツルメンツ社製、TG/DTA6200)
化合物(A)の縮合反応温度の決定は、下記のように行った。
(1)化合物(A)として1種の化合物を用いる場合には、化合物(A)のTG−DTA分析を、窒素ガス雰囲気下、40℃から、昇温速度10℃/分で昇温し、DTAの最も低温側のピークトップ温度を化合物(A)の縮合反応温度(T℃)と決定した。
(2)化合物(A)として2種以上の化合物の混合物を用いる場合には、該混合物のTG−DTA分析を、窒素ガス雰囲気下、40℃から、昇温速度10℃/分で昇温し、DTAの最も低温側のピークトップ温度を化合物(A)(2種以上の化合物の混合物)の縮合反応温度(T℃)と決定した。
(3)ただし、1種の化合物や2種以上の化合物の混合物としての化合物(A)に、例えば、溶媒や水分や水和水等の不純物が含まれている場合は、該不純物の脱離に伴うDTAピーク(不純物ピークと称することもある)が縮合反応温度よりも低温で観測されることがある。このような場合には、上記の不純物ピークは無視して、その化合物(A)の縮合反応温度を決定した。具体的には、上記の不純物ピークは無視した上で、DTAの最も低温側のピークトップ温度を、その化合物(A)の縮合反応温度と決定した。
有機無機複合体の酸化開始温度は、空気雰囲気下、40℃から、昇温速度10℃/分で行い、DTAの立ち上がり温度のうち、最も低温側のDTAの立ち上がり温度より推定した。
<IR分析>
FT−IR分析は以下の装置、条件により行った。
測定装置:フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光製FT/IR−4200)
測定条件:拡散反射(DRIFT)法、MCT検出器、分解能4cm−1、積算回数128回
サンプル条件:試料とKBrを重量比=1:50で混合したものを使用した。
13C−NMRおよび29Si−NMRの測定>
13C−NMRおよび29Si−NMRの測定は、以下の装置、条件により行った。
装置:Bruker Avance NEO 400MHz/263GHz 9.4T DNP system
プローブ:2ch 3.2mm DNPプローブ
サンプル管:3.2mmサファイアローター+テフロンインサート+ジルコニアキャップ
測定温度:105K〜107K
マジックアングルスピニング(MAS):10kHz
パルスプログラム:CP(1H−13C、1H−29Si)
CPコンタクトタイム:3ms
サンプル調製条件:40mgサンプル+20μLTEKPol/1,1,2,2−tetrachloroethane(16mM)
<分子量の測定>
分子量の測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、東ソー株式会社製HLC−8220GPC)を用いて、各炭素材料が0.02質量%となるようN,N−ジメチルホルムアミド(0.1%LiBr含有)に混合し、1時間超音波処理後、PTFE製濾紙(0.45μm)に通して前処理したのち、濾液をN,N−ジメチルホルムアミド(0.1%LiBr含有)を展開溶媒に使用し、ポリスチレン換算で分子量を算出した。炭素材料中の最大分子量はピークの立ち上がり点から算出した。
<熱伝導特性(熱拡散率、熱伝導率)の測定>
熱伝導特性としての熱拡散率は、株式会社アイフェイズ社製M3type2を用いて、膜の厚み方向の熱拡散率を測定した。熱伝導特性としての熱伝導率は、膜の比熱×密度×熱拡散率から計算した。
<SPS焼結>
SPS焼結は以下の装置、条件で行った。
装置:株式会社シンターランド・LABOX−125C
雰囲気:真空下
昇温:10℃/min(〜5Paから昇温)
焼結温度:610℃
保持時間:5分
加圧:50MPa(昇温〜焼結まで)
冷却:無加圧・自然冷却
<粉体抵抗の測定>
粉体抵抗は、4mmのテフロン板に1cm角の穴をあけ、その穴に粉体を充填し、両側から銅電極で挟み込み、粉体の抵抗を測定した。用いた装置は、テクトロニクス社製高抵抗率計6517BJで、印加電圧10Vで測定した。
<元素構成比>
Exeter Analytical, Inc.社製の元素分析装置(CE−440F)によりC、H、Oの元素分析を行い、得られた結果に基づき、原子数比を求めた。
<実施例1〜8における炭素材料の収率>
フロログルシノール100質量部に対して、得られた炭素材料(生成物)がX質量部である場合、炭素材料の収率をX(%)とした。
<固体13C−DD/MAS−NMR分析>
Bruker Corp.社製のNMR装置(AvanceIII 600)を用いて分析した。
〔実施例1〕:フロログルシノール+シリカ粒子+250℃×1時間
フロログルシノール(東京化成工業株式会社製、融点:220℃、縮合反応温度:330℃):理論比表面積750m/gがシリカ粒子に対して1.5層分となるようにシリカ粒子(富士シリシア化学株式会社製、商品名「Q−10HT60315」、比表面積259m/g)と十分に混合した。
得られた混合物を石英アンプル管に真空封入した後、あらかじめ250℃に加熱していた電気炉にて1時間加熱した。
これにより、炭素材料(1A)と無機酸化物(1B)を含む有機無機複合体(1)を得た。
得られた炭素材料の分析から、炭素材料(1A)は、フェノール性OH基同士(C−OH同士)の脱水縮合をメインに、C−H同士、C−HとC−OH間の縮合反応と共に進行しながら炭素化が進んで得られたことが分かった。
有機無機複合体(1)をNMP(N−メチルピロリドン)に分散させ、前述の手法により炭素成分の溶解性を確認したところ、溶媒に可溶であった。
得られた有機無機複合体(1)のC1sXPS分析の結果を図3(XPSスペクトル(C1s))、表1に示す。表1から、有機無機複合体(1)が炭素材料と無機酸化物を含む有機無機複合体であることがわかり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対する全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量の割合は26%であり、全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は62%であり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は16%であった。このことから、構造制御率が高いことがわかる。
フロログルシノールの、窒素ガス雰囲気下、10℃/分の昇温条件によってTG−DTA分析を行ったときの、温度50℃における初期重量M50に対する温度500℃における重量M500の重量比(M500/M50)が0.49であった。このことから、フロログルシノールは炭素化後も十分に無機酸化物上に存在し得ることがわかる。
得られた有機無機複合体(1)のTG−DTA分析におけるDTA分析の結果を図4に示す。図4によれば、有機無機複合体(1)は、空気雰囲気下、40℃から、10℃/分の昇温条件によってTG−DTA分析を行ったときの、DTAの立ち上がり温度で示される酸化開始温度が200℃であった。このことから、耐酸化性が高いことがわかる。
さらに、得られた有機無機複合体(1)のIR分析を行った結果を図5に示す。図5によれば、有機無機複合体(1)のIRスペクトルにおいては、C=O構造に由来する1660cm−1〜1800cm−1にピークが無く、高く構造が制御できている。
さらに、得られた有機無機複合体(1)のラマンスペクトルを図6に示す。ラマンスペクトルにおいて1365cm−1、1590cm−1、2650cm−1、2835cm−1にピークを有することから、炭素材料(1A)はグラフェン構造を有し且つグラフェン構造が積層した構造の炭素系化合物を含む炭素材料であることがわかった。
以上のように、本発明の製造方法によれば、溶媒に可溶であり、構造が精密に制御された炭素材料含有材料を、温和な条件で簡便に製造できる。また、以上のように、本発明によれば、溶媒に可溶であり、構造が精密に制御された、温和な条件で工業的に製造可能な有機無機複合体を提供することができる。
〔実施例2〕フロログルシノール+アルミナ粒子+250℃×1時間
シリカ粒子をアルミナ粒子(一般社団法人触媒学会無償配布試料「JRC−ALO7」、比表面積180m/g)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、炭素材料(2A)と無機酸化物(2B)を含む有機無機複合体(2)を得た。
得られた炭素材料の分析から、炭素材料(2A)は、フェノール性OH基同士(C−OH同士)の脱水縮合をメインに、C−H同士、C−HとC−OH間の縮合反応と共に進行しながら炭素化が進んで得られたことが分かった。
有機無機複合体(2)をNMP(N−メチルピロリドン)に分散させ、前述の手法により炭素成分の溶解性を確認したところ、溶媒に可溶であった。
得られた有機無機複合体(2)のC1sXPS分析の結果を図3(XPSスペクトル(C1s))、表1に示す。表1から、有機無機複合体(2)が炭素材料と無機酸化物を含む有機無機複合体であることがわかり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対する全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量の割合は29%であり、全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は59%であり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は17%であった。このことから、構造制御率が高いことがわかる。
得られた有機無機複合体(2)のTG−DTA分析におけるDTA分析の結果を図4に示す。図4によれば、有機無機複合体(2)は、空気雰囲気下、40℃から、10℃/分の昇温条件によってTG−DTA分析を行ったときの、DTAの立ち上がり温度で示される酸化開始温度が230℃であった。このことから、耐酸化性が高いことがわかる。
さらに、得られた有機無機複合体(2)のIR分析を行った結果を図5に示す。図5によれば、有機無機複合体(2)のIRスペクトルにおいては、C=O構造に由来する1660cm−1〜1800cm−1にピークが存在しており、C1sXPSによる構造制御率は高いが、FT−IR分析による構造制御率はやや低い。
さらに、得られた有機無機複合体(2)のラマンスペクトルを図6に示す。ラマンスペクトルにおいて1340cm−1、1585cm−1、2650cm−1、2835cm−1にピークを有することから、炭素材料(2A)はグラフェン構造を有し且つグラフェン構造が積層した構造の炭素系化合物を含む炭素材料であることがわかった。
以上のように、本発明の製造方法によれば、溶媒に可溶であり、構造が精密に制御された炭素材料含有材料を、温和な条件で簡便に製造できる。また、以上のように、本発明によれば、溶媒に可溶であり、構造が精密に制御された、温和な条件で工業的に製造可能な有機無機複合体を提供することができる。
〔実施例3〕フロログルシノール+チタニア粒子+250℃×1時間
シリカ粒子をチタニア粒子(一般社団法人触媒学会無償配布試料「JRC−TIO−4(2)」、比表面積50m/g)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、炭素材料(3A)と無機酸化物(3B)を含む有機無機複合体(3)を得た。
得られた炭素材料の分析から、炭素材料(3A)は、フェノール性OH基同士(C−OH同士)の脱水縮合をメインに、C−H同士、C−HとC−OH間の縮合反応と共に進行しながら炭素化が進んで得られたことが分かった。
有機無機複合体(3)をNMP(N−メチルピロリドン)に分散させ、前述の手法により炭素成分の溶解性を確認したところ、溶媒に可溶であった。
得られた有機無機複合体(3)のC1sXPS分析の結果を図3(XPSスペクトル(C1s))、表1に示す。表1から、有機無機複合体(3)が炭素材料と無機酸化物を含む有機無機複合体であることがわかり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対する全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量の割合は27%であり、全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は56%であり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は15%であった。このことから、構造制御率が高いことがわかる。
得られた有機無機複合体(3)のTG−DTA分析におけるDTA分析の結果を図4に示す。図4によれば、有機無機複合体(3)は、空気雰囲気下、40℃から、10℃/分の昇温条件によってTG−DTA分析を行ったときの、DTAの立ち上がり温度で示される酸化開始温度が200℃であった。このことから、耐酸化性が高いことがわかる。
さらに、得られた有機無機複合体(3)のIR分析を行った結果を図5に示す。図5によれば、有機無機複合体(3)のIRスペクトルにおいては、C=O構造に由来する1660cm−1〜1800cm−1にピークが存在しており、C1sXPSによる構造制御率は高いが、FT−IR分析による構造制御率はやや低い。
さらに、得られた有機無機複合体(3)のラマンスペクトルを図6に示す。ラマンスペクトルにおいて1340cm−1、1580cm−1、2650cm−1、2820cm−1にピークを有することから、炭素材料(3A)はグラフェン構造を有し且つグラフェン構造が積層した構造の炭素系化合物を含む炭素材料であることがわかった。
以上のように、本発明の製造方法によれば、溶媒に可溶であり、構造が精密に制御された炭素材料含有材料を、温和な条件で簡便に製造できる。また、以上のように、本発明によれば、溶媒に可溶であり、構造が精密に制御された、温和な条件で工業的に製造可能な有機無機複合体を提供することができる。
〔実施例4〕フロログルシノール+ヘテロポリ酸粒子(HPW)+250℃×1時間
シリカ粒子をヘテロポリ酸粒子としてHPW(富士フイルム和光純薬株式会社製、12−タングスト(VI)リン酸n水和物、比表面積278m/g)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、炭素材料(4A)と無機酸化物(4B)を含む有機無機複合体(4)を得た。
得られた炭素材料の分析から、炭素材料(4A)は、フェノール性OH基同士(C−OH同士)の脱水縮合をメインに、C−H同士、C−HとC−OH間の縮合反応と共に進行しながら炭素化が進んで得られたことが分かった。
有機無機複合体(4)をNMP(N−メチルピロリドン)に分散させ、前述の手法により炭素成分の溶解性を確認したところ、溶媒に可溶であった。
得られた有機無機複合体(4)のC1sXPS分析の結果を図3(XPSスペクトル(C1s))、表1に示す。表1から、有機無機複合体(4)が炭素材料と無機酸化物を含む有機無機複合体であることがわかり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対する全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量の割合は29%であり、全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は76%であり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は22%であった。このことから、構造制御率が高いことがわかる。
得られた有機無機複合体(4)のTG−DTA分析におけるDTA分析の結果を図4に示す。図4によれば、有機無機複合体(4)は、空気雰囲気下、40℃から、10℃/分の昇温条件によってTG−DTA分析を行ったときの、DTAの立ち上がり温度で示される酸化開始温度が300℃であった。このことから、耐酸化性が高いことがわかる。
さらに、得られた有機無機複合体(4)のIR分析を行った結果を図5に示す。図5によれば、有機無機複合体(4)のIRスペクトルにおいては、C=O構造に由来する1660cm−1〜1800cm−1にピークが無く、高く構造が制御できている。
さらに、得られた有機無機複合体(4)のラマンスペクトルを図6に示す。ラマンスペクトルにおいて1350cm−1、1585cm−1、2650cm−1、2810cm−1にピークを有することから、炭素材料(4A)はグラフェン構造を有し且つグラフェン構造が積層した構造の炭素系化合物を含む炭素材料であることがわかった。また、炭素材料(4A)部分の分子量を測定したところ、重量平均分子量は8000、最大分子量は50000であった。
以上のように、本発明の製造方法によれば、溶媒に可溶であり、構造が精密に制御された炭素材料含有材料を、温和な条件で簡便に製造できる。また、以上のように、本発明によれば、溶媒に可溶であり、構造が精密に制御された、温和な条件で工業的に製造可能な有機無機複合体を提供することができる。
〔実施例5〕フロログルシノール+ヘテロポリ酸粒子(HPMo)+250℃×1時間
シリカ粒子をヘテロポリ酸粒子としてHPMo(富士フイルム和光純薬株式会社製、12−モリブド(VI)リン酸n水和物)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、炭素材料(5A)と無機酸化物(5B)を含む有機無機複合体(5)を得た。
得られた炭素材料の分析から、炭素材料(5A)は、フェノール性OH基同士(C−OH同士)の脱水縮合をメインに、C−H同士、C−HとC−OH間の縮合反応と共に進行しながら炭素化が進んで得られたことが分かった。
有機無機複合体(5)をNMP(N−メチルピロリドン)に分散させ、前述の手法により炭素成分の溶解性を確認したところ、溶媒に可溶であった。
得られた有機無機複合体(5)のC1sXPS分析の結果を図7(XPSスペクトル(C1s))、表1に示す。表1から、有機無機複合体(5)が炭素材料と無機酸化物を含む有機無機複合体であることがわかり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対する全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量の割合は27%であり、全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は63%であり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は17%であった。このことから、構造制御率が高いことがわかる。
さらに、得られた有機無機複合体(5)のIR分析を行った結果を図8に示す。図8によれば、有機無機複合体(5)のIRスペクトルにおいては、C=O構造に由来する1660cm−1〜1800cm−1にピークが無く、高く構造が制御できている。
以上のように、本発明の製造方法によれば、溶媒に可溶であり、構造が精密に制御された炭素材料含有材料を、温和な条件で簡便に製造できる。また、以上のように、本発明によれば、溶媒に可溶であり、構造が精密に制御された、温和な条件で工業的に製造可能な有機無機複合体を提供することができる。
〔実施例6〕フロログルシノール+ヘテロポリ酸粒子(HSiW)+250℃×1時間
シリカ粒子をヘテロポリ酸粒子としてHSiW(日本新金属株式会社製、ケイタングステン酸)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、炭素材料(6A)と無機酸化物(6B)を含む有機無機複合体(6)を得た。
得られた炭素材料の分析から、炭素材料(6A)は、フェノール性OH基同士(C−OH同士)の脱水縮合をメインに、C−H同士、C−HとC−OH間の縮合反応と共に進行しながら炭素化が進んで得られたことが分かった。
有機無機複合体(6)をNMP(N−メチルピロリドン)に分散させ、前述の手法により炭素成分の溶解性を確認したところ、溶媒に可溶であった。
得られた有機無機複合体(6)のC1sXPS分析の結果を図7(XPSスペクトル(C1s))、表1に示す。表1から、有機無機複合体(6)が炭素材料と無機酸化物を含む有機無機複合体であることがわかり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対する全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量の割合は29%であり、全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は72%であり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は21%であった。このことから、構造制御率が高いことがわかる。
さらに、得られた有機無機複合体(6)のIR分析を行った結果を図8に示す。図8によれば、有機無機複合体(6)のIRスペクトルにおいては、C=O構造に由来する1660cm−1〜1800cm−1にピークが無く、高く構造が制御できている。
以上のように、本発明の製造方法によれば、溶媒に可溶であり、構造が精密に制御された炭素材料含有材料を、温和な条件で簡便に製造できる。また、以上のように、本発明によれば、溶媒に可溶であり、構造が精密に制御された、温和な条件で工業的に製造可能な有機無機複合体を提供することができる。
〔実施例7〕フロログルシノール+ヘテロポリ酸粒子(HPVMo)+250℃×1時間
シリカ粒子をヘテロポリ酸粒子としてHPVMo(日本新金属株式会社製、リンバナドモリブデン酸)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、炭素材料(7A)と無機酸化物(7B)を含む有機無機複合体(7)を得た。
得られた炭素材料の分析から、炭素材料(7A)は、フェノール性OH基同士(C−OH同士)の脱水縮合をメインに、C−H同士、C−HとC−OH間の縮合反応と共に進行しながら炭素化が進んで得られたことが分かった。
有機無機複合体(7)をNMP(N−メチルピロリドン)に分散させ、前述の手法により炭素成分の溶解性を確認したところ、溶媒に可溶であった。
得られた有機無機複合体(7)のC1sXPS分析の結果を図7(XPSスペクトル(C1s))、表1に示す。表1から、有機無機複合体(7)が炭素材料と無機酸化物を含む有機無機複合体であることがわかり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対する全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量の割合は29%であり、全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は55%であり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は16%であった。このことから、構造制御率が高いことがわかる。
さらに、得られた有機無機複合体(7)のIR分析を行った結果を図8に示す。図8によれば、有機無機複合体(7)のIRスペクトルにおいては、C=O構造に由来する1660cm−1〜1800cm−1にピークが無く、高く構造が制御できている。
以上のように、本発明の製造方法によれば、溶媒に可溶であり、構造が精密に制御された炭素材料含有材料を、温和な条件で簡便に製造できる。また、以上のように、本発明によれば、溶媒に可溶であり、構造が精密に制御された、温和な条件で工業的に製造可能な有機無機複合体を提供することができる。
〔実施例8〕フロログルシノール+ヘテロポリ酸粒子(HPWMo)+250℃×1時間
シリカ粒子をヘテロポリ酸粒子としてHPWMo(日本新金属株式会社製、リンタングストモリブデン酸)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、炭素材料(8A)と無機酸化物(8B)を含む有機無機複合体(8)を得た。
得られた炭素材料の分析から、炭素材料(8A)は、フェノール性OH基同士(C−OH同士)の脱水縮合をメインに、C−H同士、C−HとC−OH間の縮合反応と共に進行しながら炭素化が進んで得られたことが分かった。
有機無機複合体(8)をNMP(N−メチルピロリドン)に分散させ、前述の手法により炭素成分の溶解性を確認したところ、溶媒に可溶であった。
得られた有機無機複合体(8)のC1sXPS分析の結果を図7(XPSスペクトル(C1s))、表1に示す。表1から、有機無機複合体(8)が炭素材料と無機酸化物を含む有機無機複合体であることがわかり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対する全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量の割合は27%であり、全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は70%であり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は19%であった。このことから、構造制御率が高いことがわかる。
さらに、得られた有機無機複合体(8)のIR分析を行った結果を図8に示す。図8によれば、有機無機複合体(8)のIRスペクトルにおいては、C=O構造に由来する1660cm−1〜1800cm−1にピークが無く、高く構造が制御できている。
以上のように、本発明の製造方法によれば、溶媒に可溶であり、構造が精密に制御された炭素材料含有材料を、温和な条件で簡便に製造できる。また、以上のように、本発明によれば、溶媒に可溶であり、構造が精密に制御された、温和な条件で工業的に製造可能な有機無機複合体を提供することができる。
〔実施例9〕:フロログルシノール+シリカ粒子+300℃×3時間、中空炭素微粒子
フロログルシノール(東京化成工業株式会社製、融点:220℃、縮合反応温度:330℃):300mgを3gのイソプロピルアルコールに溶解し、そこにシリカ球状微粒子(株式会社日本触媒製、平均粒子径:0.19μm):1000mgを加え、超音波処理によって十分に混合した。
得られた混合物から常温真空乾燥によってイソプロピルアルコールを除去し、残った塊状物を解砕した後、300℃にて3時間加熱した。
これにより、炭素材料(9A)と無機酸化物(9B)を含む有機無機複合体(9)を得た。
得られた炭素材料の分析から、炭素材料(9A)は、フェノール性OH基同士(C−OH同士)の脱水縮合をメインに、C−H同士、C−HとC−OH間の縮合反応と共に進行しながら炭素化が進んで得られたことが分かった。
有機無機複合体(9)のラマンスペクトルを図9に示した。ラマンスペクトルにおいて1375cm−1、1600cm−1、2700cm−1、2890cm−1にピークを有することから、炭素材料(9A)はグラフェン構造を有し且つグラフェン構造が積層した構造の炭素系化合物を含む炭素材料であることがわかった。また、炭素材料(9A)部分の分子量を測定したところ、重量平均分子量は200000、最大分子量は1100000であった。
得られた有機無機複合体(9)をNMP(N−メチルピロリドン)にて処理した。これにより、炭素材料(9A)が除去され、無機酸化物(9B)の表面に炭素材料結合領域がコーティングされたコアシェル粒子(9)(コア部分:無機酸化物粒子、シェル部分:炭素材料結合領域)が得られた。
コアシェル粒子(9)をさらに700℃で1時間焼成した。これにより、シェル部分の炭素材料が高炭素化され、高炭素化コアシェル粒子(9)が得られた。高炭素化コアシェル粒子(9)のSEM写真を図10に示し、高炭素化コアシェル粒子(9)の表面のラマンスペクトルを図11に示した。図10、図11により、高炭素化コアシェル粒子(9)の表面(シェル部分)が形状を損なうことなく高炭素化された炭素材料で構成されていることがわかる。
高炭素化コアシェル粒子(9)の13C−NMRおよび29Si−NMR分析結果を図12、図13に示した。まず13C−NMRから129ppmのピークおよび140ppm〜160ppmにかけてショルダーピークが確認できた。これはsp2炭素の存在(129ppm)および無機物表面の酸素原子と炭素材料由来の炭素原子の結合(140ppm〜160ppm)に由来すると考えられる。後述する比較例3においては、sp2炭素が形成せず、sp3炭素が主となり、溶媒ピークに隠れていると考えられる。また、29Si−NMRから原料のシリカ球状微粒子および後述する比較例3と比較してSi−O−C結合に由来するピークが確認できていることから、炭素材料由来の炭素原子と無機物最表面の原子との共有結合が形成されていることがわかった。なお、上述のように、無機物最表面のみとの共有結合であるので、ピーク強度は小さく、ショルダーピークとして確認できた。
高炭素化コアシェル粒子(9)の粉体抵抗を測定したところ、3×10Ωcmであった。原料のシリカ球状微粒子の粉末抵抗は1014Ωcmオーダーであるため、コアシェル粒子とすることで9ケタ程度、導電性を向上できることがわかった。
高炭素化コアシェル粒子(9)の炭素部分の膜厚を、TG−DTA分析から推定した。推定方法は、空気雰囲気下、原料のシリカ球状微粒子および高炭素化コアシェル粒子(9)をそれぞれ室温から1000℃まで10℃/分で昇温し、炭素成分を燃焼させ、原料のシリカ球状微粒子と高炭素化コアシェル粒子(9)で差分をとることで炭素成分の量を分析した。上記方法によると高炭素化コアシェル粒子(9)の炭素成分は1.39質量%となった。球状シリカ粒子の直径を0.19μm、炭素成分の密度を2として計算すると炭素成分の平均膜厚は0.49nmであった。
コアシェル粒子(9)500mgを10%水酸化ナトリウム水溶液にて5時間超音波洗浄し、濾過することにより、中空炭素微粒子(9)が20mg得られた。濾液は無色透明であったことと、除去量から考えて、炭素成分のみが残り、内部の無機成分が除去できたことから、中空構造を有する中空炭素微粒子(9)の形成が達成されたと考えられる。
〔実施例10〕:フロログルシノール+銅粒子+300℃×2時間、高炭素化コアシェル粒子
フロログルシノール(東京化成工業株式会社製、融点:220℃、縮合反応温度:330℃):1gを200gのアセトンに溶解し、そこに銅粒子(ECKA Granules Germany GmbH製、粒子径:95vol%以上が36μm以下):20gを加え、超音波処理によって十分に混合した。
得られた混合物から常温真空乾燥によってアセトンを除去し、残った塊状物を解砕した後、300℃にて2時間加熱した。
これにより、炭素材料(10A)と無機酸化物(10B)を含む有機無機複合体(10)を得た。
得られた炭素材料の分析から、炭素材料(10A)は、フェノール性OH基同士(C−OH同士)の脱水縮合をメインに、C−H同士、C−HとC−OH間の縮合反応と共に進行しながら炭素化が進んで得られたことが分かった。
得られた有機無機複合体(10)をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)にて処理した。これにより、炭素材料(10A)が除去され、無機酸化物(10B)の表面に炭素材料結合領域がコーティングされたコアシェル粒子(10)(コア部分:無機酸化物粒子、シェル部分:炭素材料結合領域)が得られた。
コアシェル粒子(10)をさらに700℃で1時間焼成した。これにより、シェル部分の炭素材料が高炭素化され、高炭素化コアシェル粒子(10)が得られた。高炭素化コアシェル粒子(10)の表面のラマンスペクトルを図14に示した。図14により、高炭素化コアシェル粒子(10)の表面(シェル部分)が形状を損なうことなく高炭素化された炭素材料で構成されていることがわかる。
〔実施例11〕:フロログルシノール+アルミニウム粒子+300℃×2時間、高炭素化コアシェル粒子
フロログルシノール(東京化成工業株式会社製、融点:220℃、縮合反応温度:330℃):0.2gを200gのアセトンに溶解し、そこにアルミニウム粒子(ECKA Granules Germany GmbH製、D50=5μm):2gを加え、超音波処理によって十分に混合し、乾燥させ、アルミニウム粒子−フロログルシノール混合体を得た。この混合体を、窒素雰囲気下でクーゲルロールにより300℃で2時間焼成した。これにより、炭素材料(11A)と無機酸化物(11B)を含む有機無機複合体(11)を得た。
得られた炭素材料の分析から、炭素材料(11A)は、フェノール性OH基同士(C−OH同士)の脱水縮合をメインに、C−H同士、C−HとC−OH間の縮合反応と共に進行しながら炭素化が進んで得られたことが分かった。
得られた有機無機複合体(11)をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)中で超音波処理し、余分な炭素材料(11A)をろ過により除去精製し、無機酸化物(11B)の表面に炭素材料結合領域がコーティングされたコアシェル粒子(11)(コア部分:無機酸化物粒子、シェル部分:炭素材料結合領域)が得られた。
コアシェル粒子(11)をさらに600℃で2時間焼成した。これにより、シェル部分の炭素材料が高炭素化され、高炭素化コアシェル粒子(11)が得られた。高炭素化コアシェル粒子(11)の表面のラマンスペクトルを図15に示した。図15により、高炭素化コアシェル粒子(11)の表面(シェル部分)が形状を損なうことなく高炭素化された炭素材料で構成されていることがわかる。
また、得られた高炭素化コアシェル粒子(11)をSPS焼結し、アルミニウム−炭素合金焼結体とした。比較として、原料のアルミニウム粒子をSPS焼結し、アルミニウム焼結体も作製した。それぞれの焼結体のビッカース硬度を確認したところ、図16の通りとなり、本発明におけるカーボンコート技術により作製したものを用いると、焼結したときに強度(硬度)を上昇させることができることがわかった。すなわち、本発明の製造方法で得られる炭素材料含有材料は、焼結体への強度付与用途(焼結体強度向上剤)に適用し得る。
〔実施例12〕:フロログルシノール+チタン酸バリウム粒子+300℃×2時間、高炭素化コアシェル粒子
フロログルシノール(東京化成工業株式会社製、融点:220℃、縮合反応温度:330℃):0.2gを200gのアセトンに溶解し、そこにチタン酸バリウム粒子(富士フイルム和光純薬製):2gを加え、超音波処理によって十分に混合し、乾燥させ、チタン酸バリウム粒子−フロログルシノール混合体を得た。この混合体を、窒素雰囲気下でクーゲルロールにより300℃で2時間焼成した。これにより、炭素材料(12A)と無機酸化物(12B)を含む有機無機複合体(12)を得た。
得られた炭素材料の分析から、炭素材料(12A)は、フェノール性OH基同士(C−OH同士)の脱水縮合をメインに、C−H同士、C−HとC−OH間の縮合反応と共に進行しながら炭素化が進んで得られたことが分かった。
得られた有機無機複合体(12)をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)中で超音波処理し、余分な炭素材料(12A)を遠心分離により除去精製し、無機酸化物(12B)の表面に炭素材料結合領域がコーティングされたコアシェル粒子(12)(コア部分:無機酸化物粒子、シェル部分:炭素材料結合領域)が得られた。
コアシェル粒子(12)をさらに700℃で2時間焼成した。これにより、シェル部分の炭素材料が高炭素化され、高炭素化コアシェル粒子(12)が得られた。高炭素化コアシェル粒子(12)の表面のラマンスペクトルを図17に示した。図17により、高炭素化コアシェル粒子(12)の表面(シェル部分)が形状を損なうことなく高炭素化された炭素材料で構成されていることがわかる。
〔実施例13〕:フロログルシノール+チタン酸ストロンチウム粒子+300℃×2時間、高炭素化コアシェル粒子
フロログルシノール(東京化成工業株式会社製、融点:220℃、縮合反応温度:330℃):0.2gを200gのアセトンに溶解し、そこにチタン酸ストロンチウム粒子(アルドリッチ製):2gを加え、超音波処理によって十分に混合し、乾燥させ、チタン酸ストロンチウム粒子−フロログルシノール混合体を得た。この混合体を、窒素雰囲気下でクーゲルロールにより300℃で2時間焼成した。これにより、炭素材料(13A)と無機酸化物(13B)を含む有機無機複合体(13)を得た。
得られた炭素材料の分析から、炭素材料(13A)は、フェノール性OH基同士(C−OH同士)の脱水縮合をメインに、C−H同士、C−HとC−OH間の縮合反応と共に進行しながら炭素化が進んで得られたことが分かった。
得られた有機無機複合体(13)をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)中で超音波処理し、余分な炭素材料(13A)を遠心分離により除去精製し、無機酸化物(13B)の表面に炭素材料結合領域がコーティングされたコアシェル粒子(13)(コア部分:無機酸化物粒子、シェル部分:炭素材料結合領域)が得られた。
コアシェル粒子(13)をさらに700℃で2時間焼成した。これにより、シェル部分の炭素材料が高炭素化され、高炭素化コアシェル粒子(13)が得られた。高炭素化コアシェル粒子(13)の表面のラマンスペクトルを図18に示した。図18により、高炭素化コアシェル粒子(13)の表面(シェル部分)が形状を損なうことなく高炭素化された炭素材料で構成されていることがわかる。
〔実施例14〕:フロログルシノール+ニオブ酸リチウム粒子+300℃×2時間、高炭素化コアシェル粒子
フロログルシノール(東京化成工業株式会社製、融点:220℃、縮合反応温度:330℃):0.2gを200gのアセトンに溶解し、そこにニオブ酸リチウム粒子(アルドリッチ製):2gを加え、超音波処理によって十分に混合し、乾燥させ、ニオブ酸リチウム粒子−フロログルシノール混合体を得た。この混合体を、窒素雰囲気下でクーゲルロールにより300℃で2時間焼成した。これにより、炭素材料(14A)と無機酸化物(14B)を含む有機無機複合体(14)を得た。
得られた炭素材料の分析から、炭素材料(14A)は、フェノール性OH基同士(C−OH同士)の脱水縮合をメインに、C−H同士、C−HとC−OH間の縮合反応と共に進行しながら炭素化が進んで得られたことが分かった。
得られた有機無機複合体(14)をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)中で超音波処理し、余分な炭素材料(14A)をろ過により除去精製し、無機酸化物(14B)の表面に炭素材料結合領域がコーティングされたコアシェル粒子(14)(コア部分:無機酸化物粒子、シェル部分:炭素材料結合領域)が得られた。
コアシェル粒子(14)をさらに700℃で2時間焼成した。これにより、シェル部分の炭素材料が高炭素化され、高炭素化コアシェル粒子(14)が得られた。高炭素化コアシェル粒子(14)の表面のラマンスペクトルを図19に示した。図19により、高炭素化コアシェル粒子(14)の表面(シェル部分)が形状を損なうことなく高炭素化された炭素材料で構成されていることがわかる。
〔実施例15〕:フロログルシノール+シリコン粒子+300℃×2時間、高炭素化コアシェル粒子
フロログルシノール(東京化成工業株式会社製、融点:220℃、縮合反応温度:330℃):0.2gを200gのアセトンに溶解し、そこにシリコン粒子(日新化成株式会社製):2gを加え、超音波処理によって十分に混合し、乾燥させ、シリコン粒子−フロログルシノール混合体を得た。この混合体を、窒素雰囲気下でクーゲルロールにより300℃で2時間焼成した。これにより、炭素材料(15A)と無機酸化物(15B)を含む有機無機複合体(15)を得た。
得られた炭素材料の分析から、炭素材料(15A)は、フェノール性OH基同士(C−OH同士)の脱水縮合をメインに、C−H同士、C−HとC−OH間の縮合反応と共に進行しながら炭素化が進んで得られたことが分かった。
得られた有機無機複合体(15)をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)中で超音波処理し、余分な炭素材料(15A)を遠心分離により除去精製し、無機酸化物(15B)の表面に炭素材料結合領域がコーティングされたコアシェル粒子(15)(コア部分:無機酸化物粒子、シェル部分:炭素材料結合領域)が得られた。
コアシェル粒子(15)をさらに700℃で2時間焼成した。これにより、シェル部分の炭素材料が高炭素化され、高炭素化コアシェル粒子(15)が得られた。高炭素化コアシェル粒子(15)の表面のラマンスペクトルを図20に示した。図20により、高炭素化コアシェル粒子(15)の表面(シェル部分)が形状を損なうことなく高炭素化された炭素材料で構成されていることがわかる。
〔実施例16〕:フロログルシノール+窒化ホウ素粒子+300℃×2時間、高炭素化コアシェル粒子
フロログルシノール(東京化成工業株式会社製、融点:220℃、縮合反応温度:330℃):0.2gを200gのアセトンに溶解し、そこに窒化ホウ素粒子(昭和電工製):2gを加え、超音波処理によって十分に混合し、乾燥させ、窒化ホウ素粒子−フロログルシノール混合体を得た。この混合体を、窒素雰囲気下でクーゲルロールにより300℃で2時間焼成した。これにより、炭素材料(16A)と無機酸化物(16B)を含む有機無機複合体(16)を得た。
得られた炭素材料の分析から、炭素材料(16A)は、フェノール性OH基同士(C−OH同士)の脱水縮合をメインに、C−H同士、C−HとC−OH間の縮合反応と共に進行しながら炭素化が進んで得られたことが分かった。
得られた有機無機複合体(16)をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)中で超音波処理し、余分な炭素材料(16A)をろ過により除去精製し、無機酸化物(16B)の表面に炭素材料結合領域がコーティングされたコアシェル粒子(16)(コア部分:無機酸化物粒子、シェル部分:炭素材料結合領域)が得られた。
コアシェル粒子(16)をさらに700℃で2時間焼成した。これにより、シェル部分の炭素材料が高炭素化され、高炭素化コアシェル粒子(16)が得られた。高炭素化コアシェル粒子(16)の表面のラマンスペクトルを図21に示した。図21により、高炭素化コアシェル粒子(16)の表面(シェル部分)が形状を損なうことなく高炭素化された炭素材料で構成されていることがわかる。
〔実施例17〕:フロログルシノール+アルミナ粒子+300℃×2時間、高炭素化コアシェル粒子
フロログルシノール(東京化成工業株式会社製、融点:220℃、縮合反応温度:330℃):0.2gを200gのアセトンに溶解し、そこにアルミナ粒子(昭和電工製):2gを加え、超音波処理によって十分に混合し、乾燥させ、アルミナ粒子−フロログルシノール混合体を得た。この混合体を、窒素雰囲気下でクーゲルロールにより300℃で2時間焼成した。これにより、炭素材料(17A)と無機酸化物(17B)を含む有機無機複合体(17)を得た。
得られた炭素材料の分析から、炭素材料(17A)は、フェノール性OH基同士(C−OH同士)の脱水縮合をメインに、C−H同士、C−HとC−OH間の縮合反応と共に進行しながら炭素化が進んで得られたことが分かった。
得られた有機無機複合体(17)をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)中で超音波処理し、余分な炭素材料(17A)をろ過により除去精製し、無機酸化物(17B)の表面に炭素材料結合領域がコーティングされたコアシェル粒子(17)(コア部分:無機酸化物粒子、シェル部分:炭素材料結合領域)が得られた。
コアシェル粒子(17)をさらに700℃で2時間焼成した。これにより、シェル部分の炭素材料が高炭素化され、高炭素化コアシェル粒子(17)が得られた。高炭素化コアシェル粒子(17)の表面のラマンスペクトルを図22に示した。図22により、高炭素化コアシェル粒子(17)の表面(シェル部分)が形状を損なうことなく高炭素化された炭素材料で構成されていることがわかる。
また、得られた高炭素化コアシェル粒子(17)および原料のアルミナを用いて、DMF中、PMMA(ポリメチルメタクリレート):原料のアルミナ粒子、および、PMMA:高炭素化コアシェル粒子(17)が、体積比で1:2となるように混合し、乾燥させることで、PMMA/アルミナ、および、PMMA/高炭素化コアシェル粒子(17)を得た。それぞれの膜厚方向の熱伝導特性を分析したところ、表2に示すように、高炭素化コアシェル粒子(17)を使用した場合に熱伝導性が向上することがわかった。なお、比熱および密度は混合比から計算し、それぞれ920J/kg・K、3000kg/mを用いた。すなわち、本発明の有機無機複合体は、熱伝導特性向上用途(熱伝導特性向上剤)に適用し得る。
〔実施例18〕:フロログルシノール+酸化マグネシウム粒子+300℃×2時間、高炭素化コアシェル粒子
フロログルシノール(東京化成工業株式会社製、融点:220℃、縮合反応温度:330℃):0.2gを200gのアセトンに溶解し、そこに酸化マグネシウム粒子(宇部興産製のMgO):2gを加え、超音波処理によって十分に混合し、乾燥させ、酸化マグネシウム粒子−フロログルシノール混合体を得た。この混合体を、窒素雰囲気下でクーゲルロールにより300℃で2時間焼成した。これにより、炭素材料(18A)と無機酸化物(18B)を含む有機無機複合体(18)を得た。
得られた炭素材料の分析から、炭素材料(18A)は、フェノール性OH基同士(C−OH同士)の脱水縮合をメインに、C−H同士、C−HとC−OH間の縮合反応と共に進行しながら炭素化が進んで得られたことが分かった。
得られた有機無機複合体(18)をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)中で超音波処理し、余分な炭素材料(18A)を遠心分離により除去精製し、無機酸化物(18B)の表面に炭素材料結合領域がコーティングされたコアシェル粒子(18)(コア部分:無機酸化物粒子、シェル部分:炭素材料結合領域)が得られた。
コアシェル粒子(18)をさらに700℃で2時間焼成した。これにより、シェル部分の炭素材料が高炭素化され、高炭素化コアシェル粒子(18)が得られた。高炭素化コアシェル粒子(18)の表面のラマンスペクトルを図23に示した。図23により、高炭素化コアシェル粒子(18)の表面(シェル部分)が形状を損なうことなく高炭素化された炭素材料で構成されていることがわかる。
〔実施例19〕:フロログルシノール+窒化アルミニウム粒子+300℃×2時間、高炭素化コアシェル粒子
フロログルシノール(東京化成工業株式会社製、融点:220℃、縮合反応温度:330℃):0.2gを200gのアセトンに溶解し、そこに窒化アルミニウム粒子(トクヤマ製):2gを加え、超音波処理によって十分に混合し、乾燥させ、窒化アルミニウム粒子−フロログルシノール混合体を得た。この混合体を、窒素雰囲気下でクーゲルロールにより300℃で2時間焼成した。これにより、炭素材料(19A)と無機酸化物(19B)を含む有機無機複合体(19)を得た。
得られた炭素材料の分析から、炭素材料(19A)は、フェノール性OH基同士(C−OH同士)の脱水縮合をメインに、C−H同士、C−HとC−OH間の縮合反応と共に進行しながら炭素化が進んで得られたことが分かった。
得られた有機無機複合体(19)をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)中で超音波処理し、余分な炭素材料(19A)を遠心分離により除去精製し、無機酸化物(19B)の表面に炭素材料結合領域がコーティングされたコアシェル粒子(19)(コア部分:無機酸化物粒子、シェル部分:炭素材料結合領域)が得られた。
コアシェル粒子(19)をさらに700℃で2時間焼成した。これにより、シェル部分の炭素材料が高炭素化され、高炭素化コアシェル粒子(19)が得られた。高炭素化コアシェル粒子(19)の表面のラマンスペクトルを図24に示した。図24により、高炭素化コアシェル粒子(19)の表面(シェル部分)が形状を損なうことなく高炭素化された炭素材料で構成されていることがわかる。
〔実施例20〕:フロログルシノール+リン酸鉄リチウム粒子+300℃×2時間、高炭素化コアシェル粒子
フロログルシノール(東京化成工業株式会社製、融点:220℃、縮合反応温度:330℃):0.2gを200gのアセトンに溶解し、そこにリン酸鉄リチウム粒子(豊島製作所製):2gを加え、超音波処理によって十分に混合し、乾燥させ、リン酸鉄リチウム粒子−フロログルシノール混合体を得た。この混合体を、窒素雰囲気下でクーゲルロールにより300℃で2時間焼成した。これにより、炭素材料(20A)と無機酸化物(20B)を含む有機無機複合体(20)を得た。
得られた炭素材料の分析から、炭素材料(20A)は、フェノール性OH基同士(C−OH同士)の脱水縮合をメインに、C−H同士、C−HとC−OH間の縮合反応と共に進行しながら炭素化が進んで得られたことが分かった。
得られた有機無機複合体(20)をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)中で超音波処理し、余分な炭素材料(20A)を遠心分離により除去精製し、無機酸化物(20B)の表面に炭素材料結合領域がコーティングされたコアシェル粒子(20)(コア部分:無機酸化物粒子、シェル部分:炭素材料結合領域)が得られた。
コアシェル粒子(20)をさらに700℃で2時間焼成した。これにより、シェル部分の炭素材料が高炭素化され、高炭素化コアシェル粒子(20)が得られた。高炭素化コアシェル粒子(20)の表面のラマンスペクトルを図25に示した。図25により、高炭素化コアシェル粒子(20)の表面(シェル部分)が形状を損なうことなく高炭素化された炭素材料で構成されていることがわかる。
〔実施例21〕:フロログルシノール+シリカ粒子+250℃×2時間、高炭素化コアシェル粒子、溶媒違い
フロログルシノール(東京化成工業株式会社製、融点:220℃、縮合反応温度:330℃):1gを30gのアセトンに溶解し、そこにシリカ球状微粒子(株式会社日本触媒製、平均粒子径:0.19μm):10gを加え、超音波処理によって十分に混合した。
得られた混合物から常温真空乾燥によってアセトンを除去し、残った塊状物を解砕した後、250℃にて2時間加熱した。
これにより、炭素材料(21A)と無機酸化物(21B)を含む有機無機複合体(21)を得た。
得られた炭素材料の分析から、炭素材料(21A)は、フェノール性OH基同士(C−OH同士)の脱水縮合をメインに、C−H同士、C−HとC−OH間の縮合反応と共に進行しながら炭素化が進んで得られたことが分かった。
有機無機複合体(21)のラマンスペクトルを図26に示した。炭素材料(21A)はグラフェン構造を有し且つグラフェン構造が積層した構造の炭素系化合物を含む炭素材料であることがわかった。
得られた有機無機複合体(21)をアセトン中で超音波処理し、余分な炭素材料(21A)を遠心分離により除去精製し、無機酸化物(21B)の表面に炭素材料結合領域がコーティングされたコアシェル粒子(21)(コア部分:無機酸化物粒子、シェル部分:炭素材料結合領域)が得られた。
コアシェル粒子(21)をさらに700℃で1時間焼成した。これにより、シェル部分の炭素材料が高炭素化され、高炭素化コアシェル粒子(21)が得られた。高炭素化コアシェル粒子(21)の表面のラマンスペクトルを図27に示した。
〔実施例22〕:フロログルシノール+窒化ホウ素+250℃×2時間、高炭素化コアシェル粒子、溶媒違い
原料に窒化ホウ素を用いた以外は実施例21と同様に有機無機複合体(22)、コアシェル粒子(22)および、高炭素化コアシェル粒子(22)を得た。有機無機複合体(22)および高炭素化コアシェル粒子(22)のラマンスペクトルを図28、図29に示した。実施例21、22からわかる通り、焼成温度を調整する等の操作により、用いる溶媒を変えることが可能であるとわかった。
〔実施例23〕:ヘキサヒドロキシトリフェニレン+シリカ粒子+350℃×2時間、高炭素化コアシェル粒子、原料違い
2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン(東京化成工業株式会社製、融点:なし、縮合反応温度:430℃):1gを30gのDMFに溶解し、そこにシリカ球状微粒子(株式会社日本触媒製、平均粒子径:0.19μm):10gを加え、超音波処理によって十分に混合した。
得られた混合物からエバポレーターを用いてDMFを除去し、残った塊状物を解砕した後、350℃にて2時間加熱した。
これにより、炭素材料(23A)と無機酸化物(23B)を含む有機無機複合体(23)を得た。
得られた炭素材料の分析から、炭素材料(23A)は、フェノール性OH基同士(C−OH同士)の脱水縮合をメインに、C−H同士、C−HとC−OH間の縮合反応と共に進行しながら炭素化が進んで得られたことが分かった。
有機無機複合体(23)のラマンスペクトルを図30に示した。ラマンスペクトルにおいて1340cm−1、1590cm−1、2700cm−1、2895cm−1にピークを有することから、炭素材料(23A)はグラフェン構造を有し且つグラフェン構造が積層した構造の炭素系化合物を含む炭素材料であることがわかった。
得られた有機無機複合体(23)をDMF中で超音波処理し、余分な炭素材料(23A)を遠心分離により除去精製し、無機酸化物(23B)の表面に炭素材料結合領域がコーティングされたコアシェル粒子(23)(コア部分:無機酸化物粒子、シェル部分:炭素材料結合領域)が得られた。
コアシェル粒子(23)をさらに700℃で1時間焼成した。これにより、シェル部分の炭素材料が高炭素化され、高炭素化コアシェル粒子(23)が得られた。高炭素化コアシェル粒子(23)の表面のラマンスペクトルを図31に示した。
〔実施例24〕:(+)−カテキン+シリカ粒子+250℃×2時間、高炭素化コアシェル粒子、原料違い
(+)−カテキン水和物(東京化成工業株式会社製、融点:なし、縮合反応温度:270℃):1gを30gのアセトンに溶解し、そこにシリカ球状微粒子(株式会社日本触媒製、平均粒子径:0.19μm):10gを加え、超音波処理によって十分に混合した。なお、このカテキンは水和物のため、TGDTAにおける縮合反応温度の確認は、脱水和ピークは無視し、脱水和した後に縮合が進行する温度を確認した。
得られた混合物から常温真空乾燥を用いてアセトンを除去し、残った塊状物を解砕した後、250℃にて2時間加熱した。
これにより、炭素材料(24A)と無機酸化物(24B)を含む有機無機複合体(24)を得た。
得られた炭素材料の分析から、炭素材料(24A)は、フェノール性OH基同士(C−OH同士)の脱水縮合をメインに、C−H同士、C−HとC−OH間の縮合反応と共に進行しながら炭素化が進んで得られたことが分かった。
有機無機複合体(24)のラマンスペクトルを図32に示した。ラマンスペクトルにおいて13cm−1、15cm−1、27cm−1、28cm−1にピークを有することから、炭素材料(24A)はグラフェン構造を有し且つグラフェン構造が積層した構造の炭素系化合物を含む炭素材料であることがわかった。
得られた有機無機複合体(24)をDMF中で超音波処理し、余分な炭素材料(24A)を遠心分離により除去精製し、無機酸化物(24B)の表面に炭素材料結合領域がコーティングされたコアシェル粒子(24)(コア部分:無機酸化物粒子、シェル部分:炭素材料結合領域)が得られた。
コアシェル粒子(24)をさらに700℃で1時間焼成した。これにより、シェル部分の炭素材料が高炭素化され、高炭素化コアシェル粒子(24)が得られた。高炭素化コアシェル粒子(24)の表面のラマンスペクトルを図33に示した。
〔比較例1〕
加熱温度を170℃とした以外は実施例9に記載の方法で有機無機複合体(C1)を得た。しかしながら、ラマン分析による炭素材料のシグナルは確認できず、低分子化合物由来の蛍光のみ確認された。すなわち、フロログルシノールは十分に炭素化しないことがわかった。
〔比較例2〕
加熱温度を270℃とした以外は実施例23に記載の方法で有機無機複合体(C2)を得た。しかしながら、ラマン分析による炭素材料のシグナルは確認できず、低分子化合物由来の蛍光のみ確認された。すなわち、ヘキサヒドロキシトリフェニレンは十分に炭素化しないことがわかった。
〔比較例3〕
実施例9で使用したシリカ球状微粒子を窒素雰囲気下700℃で2時間焼いたものに、クイックカーボンコーター(サンユー電子社製、SC−701CT)を用いて気相でカーボンコートさせた粒子を作製した。カーボンの存在はラマン分析から確認された。この粒子の13C−NMRおよび29Si−NMR分析結果を図12、図13に示した。実施例9と比較し、比較例3で得られた粒子は、カーボンは表面に存在するが、sp2炭素ではなく、さらにSi−O−C結合が無く、共有結合で粒子の表面に存在するのではないことがわかった(もちろん、原料のシリカ球状微粒子でも結合は確認できない)。比較例3の結果を実施例と比較考量すると、本発明によれば、無機物の表面にsp2炭素成分が共有結合で強固にコートされた炭素材料含有材料を提供できることがわかった。
〔参考例1〕
加熱温度を520℃とした以外は実施例9に記載の方法で有機無機複合体(R1)を得た。しかしながら、炭素成分はNMP(N−メチルピロリドン)に不溶であり、続く処理が不可能であった。
Figure 2021088480
Figure 2021088480
〔実施例25〜32〕
フロログルシノール(東京化成工業社製)1gを石英ボート(容積:5ml)に乗せ、環状炉(東洋サーモシステム株式会社製、KTF045N1、炉心管:石英φ50mm×1m)を用いて、窒素流通下、2時間、表1の温度で加熱した。得られた炭素材料の収率、元素分析による炭素、水素、酸素比およびその比から計算される組成式、NMP(N−メチルピロリドン)に対する溶解性(完溶:〇、一部可溶:△、不溶:×)を表3に示した。
また、得られた炭素材料の13C−NMR分析結果を図34に示した。
これらの結果から、分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物は、高い炭素化収率を示し、フェノール性OH基同士(C−OH同士)の脱水縮合をメインに、C−H同士、C−HとC−OH間の縮合反応と共に進行しながら炭素化が進むことが分かる。
なお、実施例26で得られた炭素材料の推定される単位構造を下記の化学式(A)に、実施例27で得られた炭素材料の推定される単位構造を下記の化学式(B)に、実施例31で得られた炭素材料の推定される単位構造を下記の化学式(C)に示した。実際の分子量ははるかに大きいが、平均単位構造は下記の化学式(A)、(B)、(C)であると推定される。
Figure 2021088480
Figure 2021088480
以上の実施例等から、本発明によれば、構造が精密に制御された炭素材料を、温和な条件で簡便に製造する方法を提供することができることがわかった。また、構造が精密に制御された炭素材料を提供することができることがわかった。また、溶媒への可溶性を有する炭素材料含有材料や、構造が精密に制御された炭素材料含有材料を、温和な条件で簡便に製造する方法を提供することができることがわかった。また、本発明によれば、構造が精密に制御され、炭素材料と無機物とが共有結合によって結合されている炭素材料含有材料を提供することができることがわかった。さらに、本発明によれば、カーボンコート無機粒子や中空炭素微粒子などの炭素材料含有材料を工業的に製造するため等に有用な、温和な条件で工業的に製造可能な有機無機複合体を提供することができることがわかった。
本発明の製造方法で得られる炭素材料および本発明の炭素材料は、従来の炭素材料に比べて、構造が精密に制御され、各種用途に展開可能である。
本発明の製造方法で得られる炭素材料含有材料および本発明の炭素材料含有材料は、軽量で、優れた潤滑性、優れた電気伝導性、優れた熱伝導性、優れた抗酸化性を持つようなフィラー等として有用なカーボンコート無機粒子や中空炭素微粒子などを工業的に製造する際の材料として有効に利用可能である。利用が想定される用途としては、固体潤滑剤として、潤滑油等への潤滑用添加剤として、無機材料や樹脂等の有機材料への導電助剤、帯電防止剤、強度付与剤、摩擦低減剤、熱伝導性付与剤等が挙げられる。また、本発明の有機無機複合体は、軽量で、優れた潤滑性、優れた電気伝導性、優れた熱伝導性、優れた抗酸化性を持つようなフィラー等として有用なカーボンコート無機粒子や中空炭素微粒子などを工業的に製造する際の材料として有効に利用可能である。利用が想定される用途としては、固体潤滑剤として、潤滑油等への潤滑用添加剤として、無機材料や樹脂等の有機材料への導電助剤、帯電防止剤、強度付与剤、摩擦低減剤、熱伝導性付与剤等が挙げられる。
10 炭素材料
20 無機物粒子
30 炭素材料結合領域
100 有機無機複合体
200 コアシェル粒子

Claims (26)

  1. 炭素材料を製造する方法であって、
    加熱によって同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きる化合物(A)を含む組成物を加熱する加熱工程(i)を含み、
    該加熱工程(i)における加熱温度は、該化合物(A)の縮合反応温度がT℃であるときに、(T−150)℃以上であり、
    該化合物(A)が分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物であり、
    該加熱工程(i)が、該化合物(A)の、同一分子間および/または異種分子間における2つの該フェノール性OH基間の縮合反応を含む、
    炭素材料の製造方法。
  2. 元素分析における炭素原子と水素原子と酸素原子の含有割合が、炭素原子の含有割合を6.0atom%としたときに、水素原子の含有割合が1.0atom%〜8.0atom%であり、酸素原子の含有割合が0.1atom%〜4atom%である、
    炭素材料。
  3. 炭素材料含有材料を製造する方法であって、
    加熱によって同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きる化合物(A)と無機物を含む組成物を加熱する加熱工程(I)を含み、
    該加熱工程(I)における加熱温度は、該化合物(A)の縮合反応温度がT℃であるときに、(T−150)℃以上であり、
    該化合物(A)が分子内に2つ以上のフェノール性OH基を有する化合物であり、
    該加熱工程(I)が、該化合物(A)の、同一分子間および/または異種分子間における2つの該フェノール性OH基間の縮合反応を含む、
    炭素材料含有材料の製造方法。
  4. 前記加熱工程(I)の後、前記化合物(A)の加熱によって生成する炭素材料の少なくとも一部を除去する炭素材料除去工程を含む、請求項3に記載の炭素材料含有材料の製造方法。
  5. 前記炭素材料除去工程の後、さらに加熱する加熱工程(II)を含む、請求項4に記載の炭素材料含有材料の製造方法。
  6. 前記加熱工程(I)の後、前記無機物を除去する無機物除去工程を含む、請求項3に記載の炭素材料含有材料の製造方法。
  7. 前記無機物除去工程の後、さらに加熱する加熱工程(II)を含む、請求項6に記載の炭素材料含有材料の製造方法。
  8. 前記化合物(A)の分子量が500以下である、請求項3から7までのいずれかに記載の炭素材料含有材料の製造方法。
  9. 前記化合物(A)の縮合反応温度が450℃以下である、請求項3から8までのいずれかに記載の炭素材料含有材料の製造方法。
  10. 前記化合物(A)の縮合反応温度が400℃以下である、請求項9に記載の炭素材料含有材料の製造方法。
  11. 前記化合物(A)の、窒素ガス雰囲気下、40℃から、10℃/分の昇温条件によってTG−DTA分析を行ったときの、温度50℃における初期重量M50に対する温度500℃における重量M500の重量比(M500/M50)が0.2以上である、請求項3から10までのいずれかに記載の炭素材料含有材料の製造方法。
  12. 前記縮合反応が酸触媒によって促進される、請求項3から11までのいずれかに記載の炭素材料含有材料の製造方法。
  13. 前記無機物が、無機酸化物、無機窒化物、無機硫化物、無機炭化物、不溶性塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項3から12までのいずれかに記載の炭素材料含有材料の製造方法。
  14. 前記無機酸化物が、表面に官能基を有する無機酸化物粒子である、請求項13に記載の炭素材料含有材料の製造方法。
  15. 前記無機酸化物粒子が、シリカ粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、酸化マグネシウム粒子、ポリ酸粒子、その表面の少なくとも一部が酸化された金属粒子、複合酸化物粒子、固溶体酸化物粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項14に記載の炭素材料含有材料の製造方法。
  16. 前記ポリ酸粒子を構成する金属が、モリブデン、バナジウム、タングステン、ニオブ、チタン、タンタルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項15に記載の炭素材料含有材料の製造方法。
  17. 前記無機酸化物の分解温度が800℃以上である、請求項13から16までのいずれかに記載の炭素材料含有材料の製造方法。
  18. 炭素材料と無機物を含む炭素材料含有材料であって、
    該炭素材料の少なくとも一部と該無機物の少なくとも一部とが共有結合によって結合しており、
    該炭素材料の元素分析における炭素原子と水素原子と酸素原子の含有割合が、炭素原子の含有割合を6.0atom%としたときに、水素原子の含有割合が1.0atom%〜8.0atom%であり、酸素原子の含有割合が0.1atom%〜4atom%である、
    炭素材料含有材料。
  19. 13C−NMR分析において、125ppm〜135ppmの間にピークを示す、請求項18に記載の炭素材料含有材料。
  20. 13C−NMR分析において、140ppm〜160ppmの間にピークを示す、請求項19に記載の炭素材料含有材料。
  21. 炭素材料と無機物を含む有機無機複合体であって、
    該炭素材料が溶媒に可溶であり、
    該炭素材料の元素分析における炭素原子と水素原子と酸素原子の含有割合が、炭素原子の含有割合を6.0atom%としたときに、水素原子の含有割合が1.0atom%〜8.0atom%であり、酸素原子の含有割合が0.1atom%〜4atom%である、
    有機無機複合体。
  22. 前記溶媒がN−メチルピロリドンである、請求項21に記載の有機無機複合体。
  23. 前記無機物が、無機酸化物、無機窒化物、無機硫化物、無機炭化物、不溶性塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項21または22に記載の有機無機複合体。
  24. 前記無機酸化物が、表面に官能基を有する無機酸化物粒子である、請求項23に記載の有機無機複合体。
  25. 前記無機酸化物粒子が、シリカ粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、酸化マグネシウム粒子、ポリ酸粒子、その表面の少なくとも一部が酸化された金属粒子、複合酸化物粒子、固溶体酸化物粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項24に記載の有機無機複合体。
  26. 前記ポリ酸粒子を構成する金属が、モリブデン、バナジウム、タングステン、ニオブ、チタン、タンタルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項25に記載の有機無機複合体。
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