JP2021087001A - 自発光素子、及び自発光表示パネル - Google Patents

自発光素子、及び自発光表示パネル Download PDF

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Abstract

【課題】ホールブロック性と電子注入性とを担保して発光層のキャリアバランスを改善し、発光効率を向上する。【解決手段】自発光素子において、画素電極13と、画素電極13の上方に配された発光材料を含む発光層17と、発光層17の上に配され、電子輸送性および電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有する第1の有機材料と金属フッ化物とが混合されてなる第1の機能層18と、第1の機能層18の上に配され、電子輸送性および電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有する第2の有機材料を含む、金属フッ化物に対する還元性を有する、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び希土類元素に属する金属元素から選択される1以上の金属元素がドープされていない第2の機能層191と、第2の機能層191の上方に配された対向電極20とを備えた。【選択図】図4

Description

本開示は、自発光素子、及び自発光表示パネルに関する。
近年、有機材料の電界発光現象を利用した有機EL(Electro Luminescence)素子を用いた自発光型のディスプレイとして、基板上に行列方向に沿って有機EL素子を複数配列した有機ELパネルが、電子機器のディスプレイとして実用化されている。各有機EL素子は、陽極と陰極の一対の電極対の間に有機発光材料を含む有機発光層を含む、電子輸送層等の各種の機能層が複数積層された基本構造を有し、駆動時に一対の電極対間に電圧を印加し、陽極から有機発光層に注入されるホールと、陰極から有機発光層に注入される電子との再結合に伴って発生する電流駆動型の発光素子である。
このような有機EL素子では、各機能層の最低空軌道(LUMO:Lowest Unoccupied Molecular Orbital)と最高被占軌道(HOMO:Highest Occupied Molecular Orbital)とを適切に配列することにより、発光層のホールと電子とのキャリアバランスを向上させて、発光素子の高効率化を図ることが求められる。
これに対し、例えば、特許文献1では、発光層の陰極側の隣接層にホールブロック層(HBL:Hole Block Layer)を設けた発光素子が提案されている。
また、特許文献2では、有機材料で構成した電子輸送層と有機発光層との間にアルカリ金属のフッ化物からなる中間層を設け、電子輸送層中に仕事関数の低い金属材料をドープすることにより、電子注入性を高めた発光素子が提案されている。
特開2007−36175号公報 国際公開WO2015−194189号公報
しかしながら、発光層の陰極側の隣接層としてホールブロック層を配した構成では、ホールブロック層から発光層への電子注入性が低く、発光層内において電子が不足するために、十分な発光効率を得られず、また、発光層の陰極側の隣接層としてアルカリ金属のフッ化物からなる中間層を配した構成では、発光層から中間層へのホールブロック性が低く、発光層内においてホールが不足するために、十分な発光効率を得られないという課題があった。
本開示は、上記事情に鑑み、ホールブロック性と電子注入性とを担保して、発光層におけるキャリアバランスを向上し、発光効率を向上する自発光素子及び自発光表示パネルを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本開示の一態様における自発光素子は、画素電極と、前記画素電極の上方に配された発光材料を含む発光層と、前記発光層の上に配され、電子輸送性および電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有する第1の有機材料と金属フッ化物とが混合されてなる第1の機能層と、前記第1の機能層の上に配され、電子輸送性および電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有する第2の有機材料を含む、前記金属フッ化物に対する還元性を有する、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び希土類元素に属する金属元素から選択される1以上の金属元素がドープされていない第2の機能層と、前記第2の機能層の上方に配された対向電極とを備えたことを特徴とする。
本開示の一態様に係る自発光素子及び自発光表示パネルでは、ホールブロック性と電子注入性とを担保して、発光層におけるキャリアバランスを向上し、発光効率を向上する。
本開示の態様に係る有機EL表示装置の全体構成を示すブロック図である。 上記有機EL表示装置における有機ELパネルの画像表示面の一部を拡大した模式平面図である。 図2のA−A線に沿った模式断面図である。 本開示の一態様に係る有機EL素子2の積層構造を示す模式図である。 (a)は、有機EL素子2におけるホール輸送層、発光層、電子輸送層のエネルギー準位を示す概略図、(b)は動作説明図である。 本開示の一態様に係る有機EL表示パネルの製造工程を示すフローチャートである。 (a)〜(d)は、有機EL素子の製造過程を模式的に示す部分断面図である。 (a)〜(d)は、図14に続く有機EL素子の製造過程を模式的に示す部分断面図である。 (a)、(b)は、図15に続く有機EL素子の製造過程を模式的に示す部分断面図である。 (a)〜(e)は、図16に続く有機EL素子の製造過程を模式的に示す部分断面図である。 有機EL素子2における、第1の機能層中のフッ化ナトリウムの混合比と発光効率との関係を示す実験結果である。 有機EL素子2におけるホール輸送層、発光層、電子輸送層のエネルギー準位が適切にバランスされている状態を示す概略図である。 (a)(b)は、従来の有機EL素子2Y、2Xの積層構造を示す模式図である。 (a)(b)は、従来の有機EL素子2Y、2Xの動作説明図である。
≪発明を実施するための形態に至った経緯≫
有機EL素子では、各機能層の最低空軌道(LUMO)と最高被占軌道(HOMO)との配列を最適に設計することにより、発光層のホールと電子とのキャリアバランスを向上させて、発光素子の高効率化を図ることが求められる。
以下、有機EL素子における発光層中のキャリア移動を適正化するための方法について図面を参照しながら説明する。図12は、有機EL素子におけるホール輸送層、発光層、電子輸送層のエネルギー準位が適切に設定されている状態を示す模式図である。
同図に示すように、画素電極(陽極)と対向電極(陰極)との間に電圧が印加された状態において、画素電極からホール輸送層を介して発光層の最高被占軌道(HOMO)に正孔(ホール)が供給されると共に、対向電極から電子輸送層介して発光層の最低空軌道(LUMO)に電子が供給される。そして、発光層に対しホール輸送層側から供給されたホールと電子輸送層側から供給された電子とが発光層内で再結合し励起状態を生成して発光する。
この再結合において、良好なキャリアバランスが保たれて発光層に注入される電子とホールとが量的に均衡していると、電子とホールとが過不足が少なく再結合される。そのため、残余のホール又は電子が発生することが少なく、多くのホール及び電子を発光に寄与させることができ有機EL素子の発光効率を最適化することができる。
図13(a)は、従来の有機EL素子2Yの主要部(陽極から陰極に至るまでの部分:以下、「発光部」ともいう。)の積層構造を示す模式図であり、図14(a)は、有機EL素子2Yの動作説明図である。
有機EL素子2Yでは、図13(a)に示すように、画素電極13上にホール注入層15、ホール輸送層16、発光層17、ホールブロック層18Y(HBL)電子輸送層191Y、電子注入輸送層192Yおよび対向電極20を積層して発光部が形成されている。
有機EL素子2Yでは、図14(a)に示すように、発光層17の陰極側の隣接層として発光層17よりもHOMO準位の絶対値が大きいホールブロック層18Yを設けた構成を採ることにより、発光層17から電子輸送層191Yへのホールや励起子の移動を遮断する。これにより、発光層17内にホールを閉じ込めて電子との結合するホールの量を増加させるとともに、励起子のエネルギーを効率的に光に変換することが可能となる。
しかしながら、有機EL素子2Yでは、ホールブロック層18Yに用いる有機材料の発光層17への電子注入性が低く、発光層17内において電子が不足するために十分な発光効率を得られないという課題があった。
一方、有機EL素子2Xでは、図13(b)に示すように、画素電極13上にホール注入層15、ホール輸送層16、発光層17、電子注入性が高い材料から構成された中間層18X、電子注入輸送層19Xおよび対向電極20を積層して発光部が形成されている。中間層18Xは、アルカリ金属のフッ化物からなる中間層、例えば、フッ化ナトリウム等の金属化合物からなる層から構成され、隣接する電子輸送層19Yにドープされたアルカリ金属又はアルカリ土類金属から選択された仕事関数の低い金属元素M1、例えば、バリウム、セシウム、リチウム等により、中間層のアルカリ金属のフッ化物が還元されて、部分的にアルカリ金属に解離することにより、電子注入性が高められた構成が採られている。
この有機EL素子2Xでは、図14(b)に示すように、発光層17の陰極側の隣接層としてホールブロック層18Yより電子注入性が高い材料からなる中間層18Xを用いたことから、発光層17への電子注入性が良化し、発光層17内において電子が不足することは防止できる。
しかしながら、有機EL素子2Xでは、発光層17の陰極側の隣接層としてホールブロック層18YよりもHOMO準位の絶対値が小さい中間層18Xを設けているために、発光層17から電子輸送層191Yへのホールや励起子のブロックが十分でない。さらに、発明者の検討では、中間層18Xの金属化合物一部が電子輸送層19Yに含まれる金属元素により還元されることにより、中間層18Xのホールや励起子に対するブロック性が低下すると考えられる。これにより、発光層17からホールが中間層18Xに移動し、発光層17において電子との結合するホールの量が減少し、発光層17から励起子が中間層18Xに移動して励起子のエネルギーを効率的に光に変換できないという課題があった。
上記課題を解決するため、発明者は、ホールブロック性と電子注入性とを担保して、発光層におけるキャリアバランスを向上する有機EL素子の積層構成について鋭意検討を行い、本開示の一態様に係る有機EL素子及び有機EL表示パネルに想到したものである。
≪発明を実施するための形態の概要≫
本開示の一態様に係る自発光素子は、画素電極と、前記画素電極の上方に配された発光材料を含む発光層と、前記発光層の上に配され、電子輸送性および電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有し、ホールブロック性を有する第1の有機材料と金属フッ化物とが混合されてなる第1の機能層と、前記第1の機能層の上に配され、電子輸送性および電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有する第2の有機材料を含み、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び希土類元素から選択され、前記金属フッ化物に対する還元性を有する1以上の金属元素を含まない第2の機能層と、前記第2の機能層の上方に配された対向電極とを備えたことを特徴とする。また、別の態様では、前記金属フッ化物は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び希土類元素のフッ化物としてもよい。また、別の態様では、前記金属フッ化物は、フッ化ナトリウムとしてもよい。
係る構成により、フッ化ナトリウム等の金属フッ化物に対する還元性を有する金属元素M1が第1の機能層に波及して、第1の機能層中のアルカリ金属のフッ化物が還元されて、部分的にアルカリ金属に解離することを防止して、ホールブロック性が低下することを防止できる。併せて、第1の機能層から発光層への電子注入性を良化させることができる。これより、発光層におけるキャリアバランスを向上して、発光効率を向上できる。
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記金属元素は、バリウム、リチウム、セシウム、及びイッテルビウムから選択される1以上の金属元素である構成としてもよい。また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記第1の機能層の膜厚は、1nm以上10nm以下である構成としてもよい。
係る構成により、ホールブロック性と電子注入性とを担保して、発光層におけるキャリアバランスを向上し、発光効率を向上する自発光素子を実現できる。
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記第1の機能層は、前記第1の有機材料とフッ化ナトリウムとの蒸着膜である構成としてもよい。
係る構成により、電子輸送性および電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有し、ホールブロック性を有する第1の有機材料とフッ化ナトリウムとが混合されてなる第1の機能層を実現できる。
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記第1の機能層に含まれるフッ化ナトリウムの濃度は、70wt%以下である構成としてもよい。
係る構成により、上記以外の範囲に比べて、発光効率及び駆動電圧低下率を急峻に増加させることができる。
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記第1の機能層に含まれるフッ化ナトリウムの濃度は、10wt%以上50wt%以下である構成としてもよい。
係る構成により、発光効率、駆動電圧低下率をより一層増加させることができる。
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記第2の機能層の膜厚は、5nm以上30nm以下である構成としてもよい。
係る構成により、電子注入輸送層に含まれる金属元素M2が第1の機能層に波及し、第1の機能層中のフッ化ナトリウムが還元されることを抑止するとともに、発光層への電子注入性を良化させることができる。
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記第1の機能層の膜厚は、前記第2の機能層の膜厚以下である構成としてもよい。
係る構成により、第1の機能層における電子注入性を確保することができる。
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記第1の有機材料のHOMOの絶対値は6.0eV以上である構成としてもよい。
係る構成により、第1の機能層におけるホールブロック性を確保することができる。
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記第1の有機材料の3重項励起準位の値が2.0eV以上である構成としてもよい。
係る構成により、発光層に含まれる発光材料が燐光材料の場合、発光層から第2の機能層への励起子の移動を遮断することができる。
また、別の態様では、上記何れかの態様において、さらに、前記第2の機能層の上であって、前記対向電極の下方に、電子輸送性又はおよび電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有する第3の有機材料に、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類金属から選択された1以上の金属元素がドープされてなる第3の機能層を備えた構成としてもよい。また、別の態様では、上記何れかの態様において、さらに、前記第2の機能層の上であって、前記対向電極の下方に、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類金属から選択された1以上の金属元素からなる第3の機能層を備えた構成としてもよい。また、前記第3の機能層に含まれる金属元素がイッテルビウムである構成としてもよい。
係る構成により、フッ化ナトリウム等の金属フッ化物に対する還元性を有する金属元素M1が電子輸送層中に存在しないことにより、電子注入輸送層に含まれる金属元素等M2の影響が、第1の機能層中のフッ化ナトリウムには波及しない構成を採る。そのため、第3の機能層に含まれる金属元素等M2の含有量を第3の機能層における電子注入性及び電子輸送性に対して最適に設定することができる。第1の機能層におけるアルカリ金属のフッ化物が還元性を考慮して金属元素等M2の含有量を決定する必要がなく、第3の機能層における電子注入性及び電子輸送性をより一層高めることができる。
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記画素電極は光反射性であり、前記対向電極は半透光性である構成としてもよい。
係る構成により、トップエミッション型の自発光素子を実現できる。
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記画素電極の上方であって、前記発光層の下方に、ホール輸送性およびホール注入性のうち少なくとも一方の性質を有する有機材料を含む第4の機能層を備えた構成としてもよい。
係る構成により、画素電極からのホール注入性及びホール輸送性を向上して、発光層へのホールの供給を促進して高効率化が可能となる。
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記発光層および前記第4の機能層のうち少なくとも一方の膜厚は、前記発光層の発する光の波長に応じて異なる構成としてもよい。
係る構成により、光共振器構造を構築が容易になり、発光効率のさらなる向上が望める。
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記発光層および前記第4の機能層のうち少なくとも一方は塗布膜である構成としてもよい。
係る構成により、ウエットプロセスの採用により製造コストを低減化できる。ウエットプロセスで成膜する場合には、水分等の不純物の残存量がドライプロセスの場合よりも増えるが、第1の機能層に含まれるフッ化ナトリウムにより残留水分による第2の機能層及び第3の機能層の劣化を抑制して長寿命化が可能である。
また、別の態様では、上記何れかの態様において、基板上方に、請求項1から15までのいずれか1項に記載の自発光素子を複数、行列状に配列し、行方向に隣接する自発光素子における発光層は、列方向に延在するバンクによって仕切られている自発光表示パネルとしてもよい。
係る構成により、ホールブロック性と電子注入性とを担保して、発光層におけるキャリアバランスを向上し、発光効率を向上する自発光表示パネルを実現できる。
≪実施の形態≫
以下、本開示の一態様に係る自発光素子及び自発光表示パネルとして有機EL素子および有機ELパネル、有機EL表示装置について、図面を参照しながら説明する。なお、図面は、模式的なものを含んでおり、各部材の縮尺や縦横の比率などが実際とは異なる場合がある。
1.有機EL表示装置1の全体構成
図1は、有機EL表示装置1の全体構成を示すブロック図である。有機EL表示装置1は、例えば、テレビ、パーソナルコンピュータ、携帯端末、業務用ディスプレイ(電子看板、商業施設用大型スクリーン)などに用いられる表示装置である。
有機EL表示装置1は、有機EL表示パネル10(以後、「表示パネル10」とする)と、これに電気的に接続された駆動制御部200とを備える。
表示パネル10は、本実施の形態では、上面が長方形状の画像表示面であるトップエミッション型の表示パネルである。表示パネル10では、画像表示面に沿って複数の有機EL素子(不図示)が配列され、各有機EL素子の発光を組み合わせて画像を表示する。なお、表示パネル10は、一例として、アクティブマトリクス方式を採用している。
駆動制御部200は、表示パネル10に接続された駆動回路210と、計算機などの外部装置又はアンテナなどの受信装置に接続された制御回路220とを有する。駆動回路210は、各有機EL素子に電力を供給する電源回路、各有機EL素子への供給電力を制御する電圧信号を印加する信号回路、一定の間隔ごとに電圧信号を印加する箇所を切り替える走査回路などを有する。
制御回路220は、外部装置や受信装置から入力された画像情報を含むデータに応じて、駆動回路210の動作を制御する。
なお、図1では、一例として、駆動回路210が表示パネル10の周囲に4つ配置されているが、駆動制御部200の構成はこれに限定されるものではなく、駆動回路210の数や位置は適宜変更可能である。また、以下では説明のため、図1に示すように、表示パネル10上面の長辺に沿った方向をX方向、表示パネル10上面の短辺に沿った方向をY方向とする。
2.表示パネル10の構成
(A)平面構成
図2は、表示パネル10の画像表示面の一部を拡大した模式平面図である。表示パネル10では、一例として、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)(以下、単にR、G、Bともいう。)にそれぞれ発光する副画素100R、100G、100Bが行列状に配列されている。副画素100R、100G、100Bは、X方向に交互に並び、X方向に並ぶ一組の副画素100R、100G、100Bが、一つの画素Pを構成している。画素Pでは、階調制御された副画素100R、100G、100Bの発光輝度を組み合わせることにより、フルカラーを表現することが可能である。
また、Y方向においては、副画素100R、副画素100G、副画素100Bのいずれかのみが並ぶことでそれぞれ副画素列CR、副画素列CG、副画素列CBが構成されている。これにより、表示パネル10全体として画素Pが、X方向及びY方向に沿った行列状に並び、この行列状に並ぶ画素Pの発色を組み合わせることにより、画像表示面に画像が表示される。
副画素100R、100G、100Bには、それぞれR、G、Bの色に発光する有機EL素子2(R)、2(G)、2(B)(図3参照)が配置されている。
また、本実施の形態に係る表示パネル10では、いわゆるラインバンク方式を採用している。すなわち、副画素列CR、CG、CBを1列ごとに仕切るバンク14がX方向に間隔をおいて複数配置され、各副画素列CR、CG、CBでは、副画素100R、100G、100Bが、有機発光層を共有している。
ただし、各副画素列CR、CG、CBでは、副画素100R、100G、100B同士を絶縁する画素規制層141がY方向に間隔をおいて複数配置され、各副画素100R、100G、100Bは、独立して発光することができるようになっている。
なお、画素規制層141の高さは、有機発光層のインク塗布時における液面の高さよりも低い。図2では、バンク14及び画素規制層141は点線で表されているが、これは、画素規制層141及びバンク14が、画像表示面の表面に露出しておらず、画像表示面の内部に配置されているからである。
(B)断面構成
図3は、図2のA−A線に沿った模式断面図である。表示パネル10において、一つの画素は、R、G、Bをそれぞれ発光する3つの副画素からなり、各副画素は、対応する色を発光する有機EL素子2(R)、2(G)、2(B)で構成される。
各発光色の有機EL素子2(R)、2(G)、2(B)は、基本的には、ほぼ同様の構成を有するので、区別しないときは、有機EL素子2として説明する。
図3に示すように、有機EL素子2は、基板11、層間絶縁層12、画素電極(陽極)13、バンク14、ホール注入層15、ホール輸送層16、発光層17、ホールブロック・電子輸送層(第1の機能層)18、電子輸送層(第2の機能層)191、電子注入輸送層(第3の機能層)192、対向電極(陰極)20、および、封止層21とからなる。
基板11、層間絶縁層12、中間層18、第2機能層19、対向電極20、および、封止層21は、画素ごとに形成されているのではなく、表示パネル10が備える複数の有機EL素子2に共通して形成されている。
(1)基板
基板11は、絶縁材料である基材111と、TFT(Thin Film Transistor)層112とを含む。TFT層112には、副画素ごとに駆動回路が形成されている。基材111は、例えば、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、硫化モリブデン、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、マグネシウム、鉄、ニッケル、金、銀などの金属基板、ガリウム砒素などの半導体基板、プラスチック基板等を採用することができる。
プラスチック材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂いずれの樹脂を用いてもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうち1種、または2種以上を積層した積層体を用いることができる。
(2)層間絶縁層
層間絶縁層12は、基板11上に形成されている。層間絶縁層12は、樹脂材料からなり、TFT層112の上面の段差を平坦化するためのものである。樹脂材料としては、例えば、ポジ型の感光性材料が挙げられる。また、このような感光性材料として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂が挙げられる。また、図3の断面図には示されていないが、層間絶縁層12には、副画素ごとにコンタクトホールが形成されている。
(3)画素電極
画素電極13は、光反射性の金属材料からなる金属層を含み、層間絶縁層12上に形成されている。画素電極13は、副画素ごとに設けられ、コンタクトホール(不図示)を通じてTFT層112と電気的に接続されている。本実施の形態においては、画素電極13は、陽極として機能する。
光反射性を具備する金属材料の具体例としては、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、アルミニウム合金、Mo(モリブデン)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、MoW(モリブデンとタングステンの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)、などが挙げられる。
画素電極13は、金属層単独で構成してもよいが、金属層の上に、ITO(酸化インジウム錫)やIZO(酸化インジウム亜鉛)のような金属酸化物からなる層を積層した積層構造としてもよい。
(4)バンク・画素規制層
バンク14は、基板11の上方に副画素ごとに配置された複数の画素電極13を、X方向(図2参照)において列毎に仕切るものであって、X方向に並ぶ副画素列CR、CG、CBの間においてY方向に延伸するラインバンク形状である。
このバンク14には、電気絶縁性材料が用いられる。電気絶縁性材料の具体例として、例えば、絶縁性の有機材料(例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂等)が用いられる。
バンク14は、発光層17を塗布法で形成する場合に塗布された各色のインクが溢れて混色しないようにするための構造物として機能する。
なお、樹脂材料を用いる際は、加工性の点から感光性を有することが好ましい。当該感光性は、ポジ型、ネガ型のいずれであってもよい。
バンク14は、有機溶媒や熱に対する耐性を有することが好ましい。また、インクの流出を抑制するために、バンク14の表面は所定の撥液性を有することが好ましい。
画素電極13が形成されていない部分において、バンク14の底面が層間絶縁層12の上面と接している。
画素規制層141は、電気絶縁性材料からなり、各副画素列においてY方向(図2)に隣接する画素電極13の端部を覆い、当該Y方向に隣接する画素電極13同士を仕切っている。
画素規制層141の膜厚は、画素電極13の膜厚よりも若干大きいが、発光層17の上面までの厚みよりも小さくなるように設定されている。これにより、各副画素列CR、CG、CBにおける発光層17は、画素規制層141によっては仕切られず、発光層17を形成する際のインクの流動が妨げられない。そのため、各副画素列における発光層17の厚みを均一に揃えることを容易にする。
画素規制層141は、上記構造により、Y方向に隣接する画素電極13の電気絶縁性を向上しつつ、各副画素列CR、CG、CBにおける発光層17の段切れ抑制、画素電極13と対向電極20との間の電気絶縁性の向上などの役割を有する。
画素規制層141に用いられる電気絶縁性材料の具体例としては、上記バンク14の材料として例示した樹脂材料や無機材料などが挙げられる。また、上層となる発光層17を形成する際、インクが濡れ広がりやすいように、画素規制層141の表面はインクに対する親液性を有することが好ましい。
(5)ホール注入層
ホール注入層15は、画素電極13から発光層17へのホール(正孔)の注入を促進させる目的で、画素電極13上の開口部14a内に設けられている。ホール注入層15は、例えば、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)などの酸化物、あるいは、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料からなる層である。上記の内、酸化金属からなるホール注入層15は、ホールを安定的に、またはホールの生成を補助して、発光層17に対しホールを注入する機能を有する。本実施の形態においては、ホール注入層15は、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料で印刷法などのウエットプロセスにより形成する。
(6)ホール輸送層
ホール輸送層16は、ホール注入層15から注入された正孔を発光層17へ輸送する機能を有する。ホール輸送層16は、例えば、アリールアミン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン化合物、ポリスチレン誘導体、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、テトラフェニルベンジン誘導体等、または、これらの組み合わせからなる材料である。
また、ポリフルオレンやその誘導体、あるいは、ポリアリールアミンやその誘導体などの高分子化合物であって、親水基を備えないものなどを用いて印刷法などのウエットプロセスにより形成されてもよい。
(7)有機発光層
発光層17は、開口部14a内に形成されており、正孔と電子の再結合により、R、G、Bの各色の光を発光する機能を有する。なお、特に、発光色を特定して説明する必要があるときには、発光層17(R)、17(G)、17(B)と記す。
発光層17に用いられる有機発光材料としては公知の材料を利用することができる。例えば、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属鎖体、2−ビピリジン化合物の金属鎖体、シッフ塩とIII族金属との鎖体、オキシン金属鎖体、希土類鎖体等の蛍光物質や、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウムなどの燐光を発光する金属錯体等の公知の燐光物質を用いることができる。
(8)ホールブロック・電子輸送層18(第1の機能層)
ホールブロック・電子輸送層18は、発光層17から電子輸送層191へのホール、励起子の移動を遮断すると共に、対向電極20からの電子を発光層17へ輸送する機能を有する。ホールブロック・電子輸送層18は、画素電極13から注入されたホールが再結合に寄与することなく発光層17を通過して電子輸送層191へ注入されることを防ぐことでホールを発光層17内に閉じ込めるとともに、発光層17で生成された励起エネルギーが電子輸送層191内の分子にエネルギー移動することを防ぐ機能を有する。これにより、発光効率の低下を防ぐことができる。
ホールブロック・電子輸送層18は、発光層17の陰極側に隣接して配され、電子輸送性および電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有し、ホールブロック性を有する第1の有機材料と、金属フッ化物、例えば、フッ化ナトリウム(NaF)とが、共蒸着により混合されてなる第1の機能層である。また、金属フッ化物は、フッ化ナトリウムの他に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び希土類元素のフッ化物としてもよい。例えば、フッ化イッテルビウム(YbF3)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化バリウム(BaF2)が好適である。その他に、アルカリ金属フッ化物として、フッ化セリウム(CeF3)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、アルカリ土類金属フッ化物として、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化バリウム(BaF2)、希土類金属フッ化物として、フッ化ランタン(LaF3)、フッ化ネオジウム(NdF3)、フッ化サマリウム(SmF3)、フッ化イッテルビウム(YbF3)、フッ化イットリウム(YF3)、フッ化ガドリニウム(GdF3)等を用いてもよい。 第1の有機材料としては、発光層17内の分子よりもHOMO準位が低く(HOMO準位の絶対値が大きい)、バンドギャップが大きい材料を用いることが好ましい。具体的には、ホールブロック・電子輸送層18に含まれる分子のHOMO準位と発光層17に含まれる分子のそれとの差は、0.2eV以上が好ましく、0.5eV以上であることがより好ましい。また、ホールブロック・電子輸送層18に含まれる分子のバンドギャップと発光層に含まれる分子のバンドギャップとの差は0.2eV以上が好ましく、0.5eV以上であることがより好ましい。具体的な第1の有機材料としては、例えば、CBPやBCPなどを用いることができる。さらに、フェナントロリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−ヒドロキシ−ビフェニリル)アルミニウムなどの比較的バンドギャップの大きい(例えば2.8eV以上)金属錯体などを用いることができる。
また、発光層17に含まれる有機発光材料が燐光材料の場合、発光材料よりも三重項準位(T1)の高い材料を用いることが好ましい。この場合、有機発光材料の三重項準位がホールブロック・電子輸送層18に含まれる第1の有機材料の三重項準位より0.2eV以上高いことが好ましく、0.5eV以上であることがより好ましい。
また、ホールブロック・電子輸送層18を構成する有機材料の3重項励起準位の値は、2.0eV以上とすることにより、発光層17から電子輸送層191への励起子の移動を遮断することができる。
また、ホールブロック・電子輸送層18では、第1の有機材料にフッ化ナトリウムを混合することにより、電子輸送性をより一層向上させることができる。そのため、混合されたフッ化ナトリウムは、後述する金属元素M1及び金属元素M2によって還元されることがないため、ホールブロック・電子輸送層18中において化合物として存在する。そのため、フッ化ナトリウムの解離を防止することにより、ホールブロック性の低下を防止することができる。
第1の有機材料とフッ化ナトリウムとの混合において、フッ化ナトリウムの重量比率は、ホールブロック・電子輸送層18の重量に対し、70wt%以下であることが好ましく、10wt%以上50wt%以下であることがより好ましい。
また、ホールブロック・電子輸送層18の膜厚は、1nm以上10nm以下であることが好ましい。フッ化ナトリウムを所定量含み、厚みを1nm以上であることにより、ホール及び励起子の移動を遮断し、厚みを10nm以下であることにより、発光層17への電子注入性を良化させる機能を有する。
すなわち、ホールブロック・電子輸送層18における発光層と隣接層との間のキャリア移動の適正化することができる。図5(a)は、有機EL素子2におけるホール輸送層、発光層、電子輸送層のエネルギー準位を示す概略図、(b)は動作説明図である。
ホールブロック・電子輸送層18は、発光層17よりも構成材料のHOMO準位が低い(HOMO準位の絶対値が大きい)ことにより、発光層17から電子輸送層191へのホール、励起子の移動を遮断する機能を有する。具体的には、ホールブロック・電子輸送層18を構成する有機材料のHOMOの絶対値は6.0eV以上とすることにより、ホールブロック・電子輸送層18に含まれる分子のHOMO準位と発光層17に含まれる分子のそれとの差(図5(a)におけるA)を、0.2eV以上、より好ましくは、0.5eV以上とした構成を採ることができる。これにより、図5(b)に示すように、発光層17から電子輸送層191へのホール移動を遮断することができる。
また、ホールブロック・電子輸送層18の膜厚は、1nm以上10nm以下とし、フッ化ナトリウムの濃度を70wt%以下、より好ましくは、10wt%以上50wt%以下とすることにより、図5(b)に示すように、ホールブロック・電子輸送層18から発光層17への電子注入性を良化させることができる。
(9)電子輸送、電子注入輸送層:19
(9−1)電子輸送層191(第2の機能層)
電子輸送層191は、対向電極20からの電子を発光層17へ輸送する機能を有する。電子輸送層191は、ホールブロック・電子輸送層18の陰極側に隣接して配され、電子輸送性および電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有する第2の有機材料から構成されている。第2の有機材料(ホスト材料)として、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などのπ電子系低分子有機材料が挙げられるが、これらに限定されない。
さらに、電子輸送層191は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び希土類元素、例えば、バリウム、セシウム、リチウム、イッテルビウム等から選択され、フッ化ナトリウム等の金属フッ化物に対する還元性を有する1以上の金属元素M1を含まない構成を採る。これより、フッ化ナトリウム等の金属フッ化物に対する還元性を有する金属元素M1がホールブロック・電子輸送層18に波及して、ホールブロック・電子輸送層18中のアルカリ金属のフッ化物が還元されて、部分的にアルカリ金属に解離することを防止できる。ここで、電子輸送層191は、上記した「金属元素M1を含まない」場合であっても、例えば、電子輸送層191中に、実質的に、ホールブロック・電子輸送層18を構成するアルカリ金属のフッ化物を解離させない程度であればの金属元素M1を含むことは許容してもよい。
電子輸送層191の膜厚は、5nm以上とすることにより、電子注入輸送層192に含まれる金属元素M2がホールブロック・電子輸送層18に波及し、ホールブロック・電子輸送層18中のアルカリ金属のフッ化物が還元されることを抑止できる。また、電子輸送層191の厚みを30nm以下であることにより、発光層17への電子注入性を良化させることができる。
以上に示した、電子輸送層191にフッ化ナトリウム等の金属フッ化物に対する還元性を有する金属元素M1が存在しない構成により、ホールブロック・電子輸送層18には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び希土類元素等、フッ化ナトリウム等の金属フッ化物に対する還元性を有する金属元素が存在しない状態を構成することができる。これより、化合物の状態で存在するフッ化ナトリウムの解離を抑止できる。
(9−2)電子注入輸送層192(第3の機能層)
電子注入輸送層192は、対向電極20から供給される電子を発光層17側へと注入・輸送する機能を有する。電子注入輸送層192は、電子輸送性を有する第2の有機材料に、電子輸送性を高める金属元素等M2がドープされた構成を採ってもよい。
第2の有機材料(ホスト材料)には、上記した第1の有機材料と同様の有機材料群から選択することができる。第2の有機材料は、第1の有機材料と同一の材料であってもよく、また、異なる材料であってもよい。
金属元素等M2としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び希土類元素、例えば、リチウム、バリウム、カルシウム、カリウム、セシウム、ナトリウム、ルビジウム等の低仕事関数金属、フッ化リチウム、イッテルビウム等から選択される等の低仕事関数金属塩、酸化バリウム等の低仕事関数金属酸化物、リチウムキノリノール等の低仕事関数金属有機錯体などが用いられる。なお、電子注入輸送層192にリチウムキノリノールが含まれている場合には、対向電極20の金属材料により還元性されて、電子注入輸送層192のリチウムキノリノールは解離されてリチウムとして存在している場合がある。
また、電子注入輸送層192は、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類金属から選択された1以上の金属元素からなる構成としてもよい。このとき、金属元素がイッテルビウムである構成としてもよい。
(10)対向電極
対向電極20は、透光性の導電性材料からなり、第2機能層19上に形成されている。対向電極20は、陰極として機能する。
対向電極20としては、例えば、金属薄膜または、ITOやIZOなどの透明導電膜を用いることができる。光共振器構造をより効果的に得るためには、対向電極20の材料として、アルミニウム、マグネシウム、銀、アルミニウム−リチウム合金、マグネシウム−銀合金等のうち少なくとも1つの材料からなる金属薄膜を形成するのが望ましい。この場合において、金属薄膜の膜厚は、5nm以上30nm以下とすることが望ましい。これにより、対向電極20が半透光性となり、画素電極13と対向電極20の各反射面との間で光共振器構造を構築することができるため、発光効率をさらに向上できる。
なお、上記のような光共振器構造を採用する場合には、第2機能層19と対向電極20の間にITOやIZOなどの透明導電膜を所望の膜厚で形成して、発光層17と対向電極20間の光学的距離を適切な大きさに調整するのが望ましい。
また、対向電極20上に同じくITOやIZOなどの透明導電膜を形成して、これにより、色度や視野角を調整するようにしてもよい。
(11)封止層
封止層21は、ホール輸送層16、発光層17、第2機能層19などの有機層が水分に晒されたり、空気に晒されたりして劣化するのを防止するために設けられるものである。
封止層21は、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの透光性材料を用いて形成される。
(12)その他
図3には示されてないが、封止層21上に透明な接着剤を介して防眩用の偏光板や上部基板を貼り合せてもよい。また、各有機EL素子2により発光される光の色度を補正するためのカラーフィルターを貼り合わせてもよい。これらにより、ホール輸送層16、発光層17、第2機能層19などを外部の水分および空気などからさらに保護できる。
3.有機EL素子の製造方法
実施の形態に係る有機EL素子2の製造方法について、図6〜図10を用いて以下に説明する。なお、図6は、有機EL素子2の製造過程を示すフローチャートであり、図7〜図10は、有機EL素子2の製造過程を模式的に示す断面図である。
(1)基板準備工程
まず、図7(a)に示すように、基材111上にTFT層112を形成して基板11を準備する(図6のステップS1)。TFT層112は、公知のTFTの製造方法により形成することができる。
(2)層間絶縁層形成工程
次に、図7(b)に示すように、基板11上に、層間絶縁層12を形成する。(図6のステップS2)。
具体的には、一定の流動性を有する樹脂材料を、例えば、ダイコート法により、基板11の上面に沿って、TFT層112による基板11上の凹凸を埋めるように塗布する。これにより、層間絶縁層12の上面は、基材111の上面に沿って平坦化した形状となる。
また、層間絶縁層12における、TFT素子の例えばソース電極上の個所にドライエッチング法を行い、コンタクトホール(不図示)を形成する。コンタクトホールは、その底部にソース電極の表面が露出するようにパターニングなどを用いて形成される。
次に、コンタクトホールの内壁に沿って接続電極層を形成する。接続電極層の上部は、その一部が層間絶縁層12上に配される。接続電極層の形成は、例えば、スパッタリング法を用いることができ、金属膜を成膜した後、フォトリソグラフィ法およびウエットエッチング法を用いてパターニングすればよい。
(3)画素電極形成工程
次に、図7(c)に示すように、層間絶縁層12上に画素電極材料層130を形成する。画素電極材料層130は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法などを用いて形成することができる。
そして、図7(d)に示すように、画素電極材料層130をエッチングによりパターニングして、副画素ごとに区画された複数の画素電極13を形成する(図6のステップS3)。
(4)バンク・画素規制層形成工程
次に、バンク14および画素規制層141を形成する(図6のステップS4)。
本実施の形態では、画素規制層141とバンク14を別工程で形成するようにしている。
(4−1)画素規制層形成
まず、Y方向(図2)における画素電極列を副画素毎に仕切るため、X方向に伸びる画素規制層141を形成する。
図8(a)に示すように、画素電極13が形成された層間絶縁層12上に、画素規制層141の材料となる感光性の樹脂材料を一様に塗布して、画素規制層材料層1410を形成する。このときの樹脂材料の塗布量は、乾燥後に狙いの画素規制層141の膜厚となるように予め求められている。
具体的な塗布方法として、例えばダイコート法やスリットコート法、スピンコート法などのウエットプロセスを用いることができる。塗布後には、例えば、真空乾燥及び60℃〜120℃程度の低温加熱乾燥(プリベーク)などを行って不要な溶媒を除去するとともに、画素規制層材料層1410を層間絶縁層12に定着させることが好ましい。
そして、フォトリソグラフィ法を用いて、画素規制層材料層1410をパターニングする。
例えば、画素規制層材料層1410がポジ型の感光性を有する場合は、画素規制層141として残す箇所を遮光し、除去する部分が透明なフォトマスク(不図示)を介して画素規制層材料層1410を露光する。
次に、現像を行い、画素規制層材料層1410の露光領域を除去することにより、画素規制層141を形成することができる。具体的な現像方法としては、例えば、基板11全体を、画素規制層材料層1410の露光により感光した部分を溶解させる有機溶媒やアルカリ液などの現像液に浸した後、純水などのリンス液で基板11を洗浄すればよい。
その後、所定温度で焼成(ポストベーク)することにより、層間絶縁層12上に、X方向に延伸する画素規制層141を形成することができる(図8(b))。
(4−2)バンク形成
次に、Y方向に伸びるバンク14を上記画素規制層141と同様にして形成する。
すなわち、上記画素電極13、画素規制層141が形成された層間絶縁層12上に、バンク用の樹脂材料を、ダイコート法などを用いて塗布して、バンク材料層140を形成する(図8(c))。このときの樹脂材料の塗布量は、乾燥後に狙いのバンク14の高さとなるように予め求められている。
そして、フォトリソグラフィ法によりバンク材料層140にY方向に延在するバンク14をパターニングした後、所定の温度で焼成してバンク14を形成する(図8(d))。
なお、上記では、画素規制層141とバンク14のそれぞれの材料層をウエットプロセスで形成した後にパターニングするようにしたが、いずれか一方または双方の材料層をドライプロセスで形成して、フォトリソグラフィ法とエッチング法により、パターニングするようにしてもよい。
(5)第4の機能層(ホール注入層、ホール輸送層)形成工程
第4の機能層形成工程は、ホール注入層15の形成とホール輸送層16の形成を含む(図6のステップS5)。
まず、ホール注入層15は、PEDOT:PSS(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料を含むインクを印刷装置の塗布ヘッド301のノズル3011から吐出して、開口部14a内に塗布し、溶媒を揮発除去させ、および/または焼成することにより形成される。
ホール輸送層16は、上記ホール注入層15上に、ホール輸送層16の構成材料を含むインクを塗布した後、溶媒を揮発除去させ、および/または、焼成することにより形成される。ホール輸送層16の構成材料として、例えば、ポリフルオレンやその誘導体、あるいは、ポリアリールアミンやその誘導体などの高分子化合物であって、親水基を備えないものなどである。塗布方法は、ホール注入層15の場合と同じである。
なお、図9(a)は、ホール注入層15形成後にホール輸送層16を形成している際における表示パネル10の模式断面図を示している。
(6)有機発光材料層形成工程
次に、上記ホール輸送層16の上方に、発光層17の前駆体として有機発光材料層170(R)、170(G)、170(B)(以下、各発光色を区別しないで、単に「有機発光材料層170」という。)を形成する(図6のステップS6)。
具体的には、図9(b)に示すように、各開口部14aに対応する発光色の有機発光層の構成材料である有機発光材料を含むインクを、印刷装置の塗布ヘッド301のノズル3011から順次吐出して開口部14a内のホール輸送層16上に塗布し、インク塗布後の基板11を真空乾燥室内に搬入して真空環境下で加熱することにより、インク中の有機溶媒を蒸発させる。これにより、有機発光材料層170を形成できる。
(7)ホールブロック・電子輸送層18(第1の機能層)形成工程
図10(a)に示すように、有機発光材料層170およびバンク14の上に、真空蒸着法などにより、電子輸送性および電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有し、ホールブロック性を有する第1の有機材料と、フッ化ナトリウムとを真空蒸着法を用いた共蒸着により、1nm以上10nm以下の膜厚、例えば膜厚5〔nm〕で成膜して、ホールブロック・電子輸送層18を形成する(図6のステップS7)。ホールブロック・電子輸送層18は、各副画素に共通して成膜することにより形成される。
(8)電子輸送層191(第2の機能層)形成工程
図10(b)に示すように、ホールブロック・電子輸送層18上に、電子輸送性および電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有する第2の有機材料を真空蒸着法により、5nm以上30nm以下の膜厚、例えば膜厚10〔nm〕で成膜して電子輸送層191を形成する(図6のステップS9)。このとき、電子輸送層191の製膜では、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び希土類元素から選択され、フッ化ナトリウム等の金属フッ化物に対する還元性を有する1以上の金属元素M1を含まないように第2の有機材料を蒸着する。電子輸送層191は、各副画素に共通して成膜することにより形成される。
(9)電子注入輸送層192(第3の機能層)形成工程
図10(c)に示すように、電子輸送層191上に、電子輸送性および電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有する第2の有機材料と、ドープ金属である金属元素M2を、真空蒸着法を用いた共蒸着により、5nm以上50nm以下の膜厚、例えば膜厚10nm〔nm〕で成膜して、電子注入輸送層192を形成する濃度は、ドープ金属の重量含有比率が3wt以上60wt%のドープ濃度、例えば10wt%とする。また、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び希土類元素から選択された金属薄膜でも良い。その場合、膜厚は、0.1nm以上5nm以下の膜厚、例えば1nmで成膜して、電子注入輸送層192を形成する(図6のステップS9)。電子注入輸送層192は、各副画素に共通して成膜することにより形成される。
(10)対向電極形成工程
次に、機能層19上に対向電極20を形成する(図6のステップS10)
対向電極形成工程は、まず、機能層19上に銀、アルミニウム等を、スパッタリング法、真空蒸着法により成膜して形成する(図10(d))。
(11)封止層形成工程
次に、図10(e)に示すように、対向電極20上に、封止層21を形成する(図6のステップS11)。封止層21は、SiON、SiN等を、スパッタリング法、CVD法などにより成膜することにより形成することができる。
以上により図3に示す表示パネル10が製造される。なお、上記の製造方法は、あくまで例示であり、趣旨に応じて適宜変更可能である。
4.有機EL素子2を用いた発光効率及び駆動電圧の実験結果について
先ず、有機EL素子2においてホールブロック・電子輸送層中のフッ化ナトリウムの重量比率を異ならせて、所定電圧印加時の駆動電圧及び発光効率を測定した。表1は、駆動電圧及び発光効率の測定結果である。表1における、駆動電圧低下率及び発光効率は、フッ化ナトリウムの重量比率0%のサンプルを基準とした相対値である。
Figure 2021087001
供試サンプルとして、以下の仕様のサンプルを用いた。
No.1:有機EL素子2の積層構成において、発光層17の陰極側の隣接層(ホールブロック・電子輸送層18)をフッ化ナトリウム重量比率が0%であるホールブロック層に変更したサンプル
No.2:有機EL素子2の積層構成において、ホールブロック・電子輸送層18におけるフッ化ナトリウムの重量比率を30wt%としたサンプル
No.3:有機EL素子2の積層構成において、発光層17の陰極側の隣接層(ホールブロック・電子輸送層18)をフッ化ナトリウムの重量比率が100%である中間層を変更したサンプル
なお、サンプルNo.1〜3における積層構成及び膜厚は、ホール注入層[50nm]、ホール輸送層[20nm]、発光層[85nm]、発光層の陰極側の隣接層[5nm]、電子輸送層[10nm]、電子注入輸送層[1nm]、対向電極とした。駆動電圧は、電流密度1mA/cm2における印加電圧であり、駆動電圧低下率は、[変化前の駆動電圧]/[変化後の駆動電圧]である。
表1に示すように、駆動電圧低下率及び発光効率は、測定値の大きい方から、サンプル2>サンプル3>サンプル1の順となった。具体的には、フッ化ナトリウムの重量比率0%のサンプル1は、ホールブロック性は高いが電子注入性が低いために発光層におけるキャリアバランスが悪く、発光効率が最も低い結果となった。また、重量比率100%のサンプル3は、サンプル1に比べて、ホールブロック性は低いが電子注入性に良化するため、駆動電圧低下率、発光効率に、それぞれ5%、18%程度の改善が見られた。
これに対し、重量比率30%のサンプル3では、サンプル1に比べて駆動電圧低下率、発光効率に、それぞれ15%、40%の改善が見られた。サンプル3では、電子輸送性および電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有し、ホールブロック性を有する第1の有機材料にフッ化ナトリウムを重量比率30%混合することにより、少量のフッ化ナトリウムに電界が集中して電子注入性が良化するとともに、少なくとも第1の有機材料の有するホールブロック性により、発光層におけるキャリアバランスが改善して、サンプル1、3に比べて駆動電圧低下率及び発光効率が増加したものと考えられる。
次に、有機EL素子2においてホールブロック・電子輸送層18中のフッ化ナトリウムの重量比率を段階的に異ならせて重量比率と駆動電圧低下率及び発光効率との関係を調べた。図11は、有機EL素子2における、ホールブロック・電子輸送層18のフッ化ナトリウムの重量比率と発光効率との関係を示す実験結果である。図11における、駆動電圧低下率及び発光効率は、フッ化ナトリウムの重量比率0%における測定値を基準とした相対値である。
供試サンプルは、有機EL素子2において発光層17の陰極側の隣接層をフッ化ナトリウムの重量比率が0、10、30、50、70、100wt%である中間層を配したサンプルであり、各サンプルにおける積層構成及び膜厚。駆動電圧低下率も同じである。
図11に示すように、ホールブロック・電子輸送層18中のフッ化ナトリウムの重量比率0%を超え70wt%以下の範囲において、それ以外の範囲に比べて、発光効率及び駆動電圧低下率の急峻な増加がみられた。
また、5%〜70wt%の範囲において、発光効率は約19%以上に増加し、駆動電圧低下率は約7%以上に増加した。
さらに、10%〜50wt%の範囲において、発光効率は約37%以上、駆動電圧低下率は約13%以上となるピーク領域Bが確認された。
ピーク領域Bにおいては、重量比率が50%を超える場合に比べて、ホールブロック性が高いために発光層における励起子密度が増加に伴うキャリアバランスの改善により駆動電圧が低下すると考えられる。また、ピーク領域Bにおいては、重量比率が10%未満の場合に比べて、電子注入性が高く、発光層のキャリアバランスの改善にして駆動電圧が低下すると考えられる。そして、ホールブロック性及び電子注入性が高いことにより、キャリアバランスが改善し発光効率が増加したと考えられる。
また、フッ化ナトリウムの重量比率が50%を超える場合において、重量比率が10%未満の場合よりも、駆動電圧低下率及び発光効率が増加することから、今回の場合、キャリアバランスの確保に対して電子注入性の方がホールブロック性よりも影響度が大きいと考えられる。
なお、従来の有機EL素子2Xでは、上述のとおり、フッ化ナトリウム等の金属化合物からなる層から構成される中間層は、隣接する電子輸送層に含まれる金属元素M2、例えば、バリウム、セシウム、リチウム等により、中間層のアルカリ金属のフッ化物が還元されて、部分的にアルカリ金属に解離することにより、電子移動度が高められる。
これに対し、有機EL素子2では、電子輸送層191は、フッ化ナトリウム等の金属フッ化物に対する還元性を有する、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び希土類元素等の金属元素を含まないことから、フッ化ナトリウムが解離することはない。そのため、ホールブロック・電子輸送層18中においてフッ化ナトリウムは化合物として存在している。有機EL素子2において、ピーク領域Bにおいて、駆動電圧低下性及び発光効率が増加した理由は、第1の有機材料中のフッ化ナトリウムを局所的に存在させることにより、フッ化ナトリウムに局所的に電界集中が生じトンネル現象により電子注入性が高まり、発光層のキャリアバランスが改善したためと考えられる。他方、発明者の検討によると、有機EL素子2では、従来の有機EL素子2Xと比較して駆動電圧低下性及び発光効率において改善が見られることから、有機EL素子2においてフッ化ナトリウムの解離を防止し、フッ化ナトリウムを化合物として存在させることは、ホールブロック性低下の抑制にも寄与していると考えられる。
なお、有機EL素子におけるトンネル現象については、"Bright high efficiency blue organic light-emitting diodes with Al2O3/Al cathodes" H. Tang, et al(Applied Physics Letters, November 3, 1997, Volume 71, Issue 18, pp. 2560-2562)において、電子輸送層に電子を注入する陰極に、電子輸送層側にAl23からなる絶縁体の層の形成された アルミニウム膜を用いることで、Al23の層を介してトンネル現象によって電子が電子輸送層に注入され、 電流注入効率が向上することが開示されている。
5.まとめ
以上のとおり、本開示の実施の形態に有機EL素子2は、画素電極13の上方に配された有機発光材料を含む発光層17と、発光層17の上に配され、電子輸送性および電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有し、ホールブロック性を有する第1の有機材料とフッ化ナトリウムとが混合されてなる第1の機能層18と、第1の機能層18の上に配され、電子輸送性および電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有する第2の有機材料を含み、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び希土類元素から選択され、フッ化ナトリウム等の金属フッ化物に対する還元性を有する1以上の金属元素M2を含まない第2の機能層191と、機能層の上方に配された対向電極20とを備えたことを特徴とする。
また、金属元素M2は、バリウム、リチウム、セシウム、及びイッテルビウムから選択される1以上の金属元素である構成としてもよい。
係る構成により、フッ化ナトリウム等の金属フッ化物に対する還元性を有する金属元素M1がホールブロック・電子輸送層18に波及して、ホールブロック・電子輸送層18中のアルカリ金属のフッ化物が還元されて、部分的にアルカリ金属に解離することを防止して、ホールブロック性が低下することを防止できる。併せて、発光層17への電子注入性を良化させることができる。これにより、ホールブロック性と電子注入性とを担保して、発光層におけるキャリアバランスを向上し、発光効率を向上できる。
従来の有機EL素子2Xでは、上述のとおり、フッ化ナトリウム等の金属化合物からなる層から構成される中間層は、隣接する電子輸送層に含まれる金属元素M2、例えば、バリウム、セシウム、リチウム等により、中間層のアルカリ金属のフッ化物が還元されて、部分的にアルカリ金属に解離することにより、電子注入性が高められていた。
これに対し、有機EL素子2では、上述のとおり、フッ化ナトリウム等の金属フッ化物に対する還元性を有する金属元素M1が電子輸送層191中に存在しないことにより、電子注入輸送層192に含まれる金属元素等M2の影響が、ホールブロック・電子輸送層18中のフッ化ナトリウムには波及しない構成を採る。そのため、電子注入輸送層192に含まれる金属元素等M2の含有量を電子注入輸送層192における電子注入性及び電子輸送性に対して最適に設定することができる。中間層におけるアルカリ金属のフッ化物が還元性を考慮して金属元素等M2の含有量を決定する必要がなく、電子注入輸送層192における電子注入性及び電子輸送性をより一層高めることができる。
≪変形例≫
以上、実施の形態に係る有機EL素子2等を説明したが、本発明は、その本質的な特徴的構成要素を除き、以上の実施の形態に何ら限定を受けるものではない。例えば、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。以下では、そのような形態の一例として、有機EL素子、有機EL表示パネルの変形例を説明する。
(1)実施の形態に係る有機EL素子では、画素電極と発光層の間に、ホール注入層、ホール輸送層が存在する構成であったが、本発明はこれに限られない。例えば、ホール注入層、ホール輸送層を用いずに、ホール輸送層又はホール輸送層が存在する構成が存在する構成としてもよい。また、ホール注入層、ホール輸送層、電子注入輸送層の何れかを備える構成や、これらの複数又は全部を同時に備える構成であってもよい。また、これらの層はすべて有機化合物からなる必要はなく、無機物などで構成されていてもよい。
(2)上記実施の形態に係る表示パネル10では、図2に示すように、画素規制層141の延伸方向が表示パネル10の長軸X方向、バンク14の延伸方向が表示パネル10の短軸Y方向であったが、画素規制層141とバンク14の延伸方向は、逆であってもよい。また、画素絶縁層及びバンクの延伸方向は、表示パネル10の形状とは無関係な方向であってもよい。
また、上記実施の形態に係る表示パネル10では、一例として画像表示面を長方形状としたが、画像表示面の形状に限定はなく、適宜変更可能である。
また、上記実施の形態に係る表示パネル10では、画素電極13を長方形平板状の部材としたが、これに限られない。
さらに、上記実施の形態においてはラインバンク方式の有機EL表示パネルについて説明したが、一つの副画素ごとにその四方をバンクで囲むようにした、いわゆるピクセルバンク方式の表示パネルであっても構わない。
(3)上記実施の形態では、ホール注入層15、ホール輸送層16、発光層17の全てについて印刷法(塗布法)により形成したが、そのうち1層のみを印刷法で形成された塗布膜としてもよい。なお、表示パネル10の完成品において、ある特定の層が塗布膜であるか否かは、その膜に残存する水分や溶媒を検出することにより容易に判別できる。
(4)上記実施の形態では、ホール注入層15を、導電性ポリマー材料を含むインクを用いて、印刷法により形成したが、遷移金属の酸化物を蒸着法もしくはスパッタ法により成膜してもよい。遷移金属の酸化物は、複数の酸化数をとるためこれにより複数の準位をとることができ、その結果、ホールの注入が容易になり駆動電圧を低減することができる。このような酸化金属として、酸化タングステンが好適である。
これにより、電子注入量の増加に合わせてホール注入量も増加することができ、より励起子量の多い状態でのキャリアバランスを達成でき、発光効率のさらなる向上が望める。
この場合には、画素電極の金属材料層と酸化タングステンの層を先に積層してから、フォトリソグラフィ法およびウエットエッチング法を用いてパターニングして画素電極13とホール注入層15を同時に形成し、その後、バンク14や画素規制層141を形成することにより製造工程が簡易化できる。
(5)上記実施の形態に係る表示パネル10では、R、G、B色にそれぞれ発光する副画素100R、100G、100Bが配列されていたが、副画素の発光色はこれに限られず、例えば、R、G、Bに加えて黄色(Y)の4色であってもよい。また、一つの画素Pにおいて、副画素は1色あたり1個に限られず、複数配置されてもよい。また、画素Pにおける副画素の配列は、図2に示すような、赤色、緑色、青色の順番に限られず、これらを入れ替えた順番であってもよい。
(6)また、上記実施の形態に係る表示パネル10は、アクティブマトリクス方式を採用したが、これに限られず、パッシブマトリクス方式を採用してもよい。
また、トップエミッション型の有機EL表示パネルだけでなくボトルエミッション型の有機EL表示パネルにも適用可能である。
なお、ボトムエミッション型の場合には、対向電極20を光反射性の陽極とし、画素電極13を光透過性(半光透過性を含む)の材料で構成して陰極とする。これに合せて他の第1機能層22、中間層18、第2機能層19等の積層順も異なる。
また、コロイド状量子ドット(Quantum Dot)を用いた量子ドットディスプレイ装置などの自発光表示パネルに適用することもできる。
≪補足≫
以上で説明した実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、工程、工程の順序などは一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない工程については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。
また、上記の工程が実行される順序は、本発明を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記工程の一部が、他の工程と同時(並列)に実行されてもよい。
また、発明の理解の容易のため、上記各実施の形態で挙げた各図の構成要素の縮尺は実際のものと異なる場合がある。また本発明は上記各実施の形態の記載によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
また、各実施の形態及びその変形例の機能のうち少なくとも一部を組み合わせてもよい。
さらに、本実施の形態に対して当業者が思いつく範囲内の変更を施した各種変形例も本発明に含まれる。
本開示に係る有機EL素子等は、例えば、家庭用もしくは公共施設、あるいは業務用の各種表示装置、テレビジョン装置、携帯型電子機器用ディスプレイ等として用いられる有機EL素子および有機ELパネルの製造方等に好適に利用可能である。
1 有機EL表示装置
2 有機EL素子
10 有機ELパネル
11 基板
12 層間絶縁層
13 画素電極(陽極)
15 ホール注入層
16 ホール輸送層
17 発光層
170 有機発光材料層
18 ホールブロック・電子輸送層(第1の機能層)
19 電子輸送層/電子注入輸送層
191 電子輸送層(第2の機能層)
192 電子注入輸送層(第3の機能層)
20 対向電極(陰極)
21 封止層
23 透明導電膜

Claims (20)

  1. 画素電極と、
    前記画素電極の上方に配された発光材料を含む発光層と、
    前記発光層の上方に配され、電子輸送性および電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有し、ホールブロック性を有する第1の有機材料と金属フッ化物とが混合されてなる第1の機能層と、
    前記第1の機能層の上方に配され、電子輸送性および電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有する第2の有機材料を含み、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び希土類元素から選択され、前記金属フッ化物に対する還元性を有する1以上の金属元素を含まない第2の機能層と、
    前記第2の機能層の上方に配された対向電極と、
    を備えた自発光素子。
  2. 前記金属フッ化物は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び希土類元素のフッ化物である
    請求項1に記載の自発光素子。
  3. 前記金属フッ化物は、フッ化ナトリウムである
    請求項1又は2に記載の自発光素子。
  4. 前記金属元素は、バリウム、リチウム、セシウム、及びイッテルビウムから選択される1以上の金属元素である
    請求項1から3の何れか1項に記載の自発光素子。
  5. 前記第1の機能層の膜厚は、1nm以上10nm以下である
    請求項1から4の何れか1項に記載の自発光素子。
  6. 前記第1の機能層は、前記第1の有機材料とフッ化ナトリウムとの蒸着膜である
    請求項1〜5の何れか1項に記載の自発光素子。
  7. 前記第1の機能層に含まれるフッ化ナトリウムの濃度は、70wt%以下である
    請求項1〜6の何れか1項に記載の自発光素子。
  8. 前記第1の機能層に含まれるフッ化ナトリウムの濃度は、10wt%以上50wt%以下である
    請求項7に記載の自発光素子。
  9. 前記第2の機能層の膜厚は、5nm以上30nm以下である
    請求項1〜8の何れか1項に記載の自発光素子。
  10. 前記第1の機能層の膜厚は、前記第2の機能層の膜厚以下である
    請求項1〜9の何れか1項に記載の自発光素子。
  11. 前記第1の有機材料のHOMOの絶対値は6.0eV以上である
    請求項1〜10の何れか1項に記載の自発光素子。
  12. 前記第1の有機材料の3重項励起準位の値が2.0eV以上である
    請求項1〜11の何れか1項に記載の自発光素子。
  13. さらに、前記第2の機能層の上であって、前記対向電極の下方に、電子輸送性又はおよび電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有する第3の有機材料に、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類金属から選択された1以上の金属元素がドープされてなる第3の機能層を備えた
    請求項1〜12の何れか1項に記載の自発光素子。
  14. さらに、前記第2の機能層の上であって、前記対向電極の下方に、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類金属から選択された1以上の金属元素からなる第3の機能層を備えた請求項1〜12の何れか1項に記載の自発光素子。
  15. 前記第3の機能層に含まれる金属元素がイッテルビウムである
    請求項13又は14に記載の自発光素子。
  16. 前記画素電極は光反射性であり、前記対向電極は半透光性である
    請求項1〜14の何れか1項に記載の自発光素子。
  17. 前記画素電極の上方であって、前記発光層の下方に、ホール輸送性およびホール注入性のうち少なくとも一方の性質を有する有機材料を含む第4の機能層を備えた
    請求項1〜16の何れか1項に記載の自発光素子。
  18. 前記発光層および前記第4の機能層のうち少なくとも一方の膜厚は、前記発光層の発する光の波長に応じて異なる
    請求項17に記載の自発光素子。
  19. 前記発光層および前記第4の機能層のうち少なくとも一方は塗布膜である
    請求項17又は18に記載の自発光素子。
  20. 基板上方に、請求項1から19までのいずれか1項に記載の自発光素子を複数、行列状に配列し、行方向に隣接する自発光素子における発光層は、列方向に延在するバンクによって仕切られている
    自発光表示パネル。
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