以下、信号読取システムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1に示すように、信号読取システムとしての信号読取システム1Aは、一例として、一対のプローブPLa,PLb、信号生成装置2A、CANドライバ3、出力コネクタ4、CANレシーバ5、遅延部6、比較部7、ローパスフィルタ8、処理部9および出力部10を備えている。また、信号読取システム1Aは、一対の信号線(一例として一対の被覆導線La,Lb)で構成されるCAN通信用のシリアルバスSB(以下、CANバスSBともいう)と、CANバスSBを介して伝送される2線差動電圧方式のロジック信号Saを解析するための解析装置(アナライザ)との間に介装されて、このロジック信号Saを読み取り(検出し)、このロジック信号Saに対応する符号を特定可能な符号特定用信号Sfを生成し、かつこの符号特定用信号Sfを解析装置の入力仕様に合致した送信信号STX(CAN通信プロトコルに準拠した2線差動電圧方式のロジック信号)に変換して解析装置に出力する。
なお、信号読取システム1Aでは、このロジック信号Saとして、「CANプロトコル」、「CAN FD」などの各種のCAN通信プロトコルに準拠した各種の「2線差動電圧方式のロジック信号」を対象とすることができる。この場合、このロジック信号Saが伝送されるCANバスSBでは、「高電位側信号線(CANH)/低電位側信号線(CANL)」が「ロジック信号を伝送するための一対の被覆導線」に相当する。以下では、CANバスSBの一例として、自動車に配設されているCANバスに信号読取システム1Aを適用した例について説明するが、これに限定されるものではなく、上記したような工場内の機械設備の分野において使用されるCANバスにも、この信号読取システム1Aを適用することができる。
CANバスSBには、図1に示すように、CANフレームを構成する各符号Cs(図2参照)を表すロジック信号Saが、上記のようにCANバスSBを構成する一対の被覆導線La,LbのうちのCANHigh(CANH)の被覆導線Laに伝送される電圧信号の電圧Va(以下、理解の容易のため、この電圧信号自体を電圧信号Vaともいう)と、一対の被覆導線La,LbのうちのCANLow(CANL)の被覆導線Lbに伝送される電圧信号の電圧Vb(以下、理解の容易のため、この電圧信号自体を電圧信号Vbともいう)との間の電位差(Va−Vb)である差動信号として伝送される。
なお、CANバスSBを介してのロジック信号Saの伝送原理については公知のため、詳細な説明を省略するが、CANHigh(CANH)の電圧信号VaおよびCANLow(CANL)の電圧信号Vbの仕様について簡単に説明する。図2に示すように、電圧信号Va,Vbは、ベースになる電圧(+2.5V)から逆方向に変化する電圧信号であって、電圧信号Vaがこのベースの電圧のときには、電圧信号Vbも同じ期間に亘り同じベースの電圧になって、電位差(Va−Vb)がゼロ(最小)となるこの期間に伝送されるCANフレームを構成する符号Cs(論理値)は「1」を示すものとなる。一方、電圧信号Vaがこのベースの電圧よりも高電圧の規定電圧(+3.5V)のときには、電圧信号Vbは同じ期間に亘り、逆にベースの電圧よりも低電圧の他の規定電圧(+1.5V)になって、電位差(Va−Vb)が最大となるこの期間に伝送されるCANフレームを構成する符号Cs(論理値)は「0」を示すものとなる。また、CANバスSBにおいて差動信号を伝送するための基準電位となる信号線である「SG」や、差動信号の伝送の用途以外に配設されている信号線および電力線(電源ラインおよびグランドライン)等の図示および説明を省略する。
一対のプローブPLa,PLbは、シールドケーブル(一例として、同軸ケーブル)を用いて、金属非接触型のプローブとして同一に構成されている。具体的には、プローブPLaは、対応する被覆導線Laに取り外し自在に接続される自由端側(自由端部)には、被覆導線Laの不図示の芯線と接続される(容量結合で接続される)電極部21aが配設され、また基端側(基端部)には、信号生成装置2Aの後述する入力端子部31,32のうちの対応する入力端子部31に接続される(固定的、または取り外し自在に接続される)不図示の接続コネクタが配設されて構成されている。また、プローブPLbは、対応する被覆導線Lbに取り外し自在に接続される自由端側(自由端部)には、被覆導線Lbの不図示の芯線と接続される(容量結合で接続される)電極部21bが配設され、また基端側(基端部)には、上記の入力端子部31,32のうちの対応する入力端子部32に接続される(固定的、または取り外し自在に接続される)接続コネクタ(不図示)が配設されて構成されている。
電極部21aは、図1に示すように、被覆導線Laに接続された状態において、被覆導線Laの不図示の絶縁被覆部(以下、単に「被覆部」ともいう)に接触(当接)して、被覆導線Laの不図示の芯線(導体自体(金属部))と容量結合する電極22aと、被覆導線Laの被覆部における電極22aの接触部位をこの電極22aを含めて覆うことで、電極22aの他の金属部(被覆導線Laの芯線以外の金属部)との容量結合を防止するためのシールド23aとを備えている。また、電極22aは、プローブPLaを構成するシールドケーブルの芯線および入力端子部31の一の端子を介して信号生成装置2Aの後述する第1検出部33に接続されている。また、シールド23aは、このシールドケーブルのシールドおよび入力端子部31の他の端子を介して、信号生成装置2Aにおける基準電位の部位(グランドG)に接続されている。
また、電極部21bは、図1に示すように、被覆導線Lbに接続された状態において、被覆導線Lbの不図示の絶縁被覆部(以下、単に「被覆部」ともいう)に接触(当接)して、被覆導線Lbの不図示の芯線(導体自体(金属部))と容量結合する電極22bと、被覆導線Lbの被覆部における電極22bの接触部位をこの電極22bを含めて覆うことで、電極22bの他の金属部(被覆導線Lbの芯線以外の金属部)との容量結合を防止するためのシールド23bとを備えている。また、電極22bは、プローブPLbを構成するシールドケーブルの芯線および入力端子部32の一の端子を介して信号生成装置2Aの後述する第2検出部34に接続されている。また、シールド23bは、このシールドケーブルのシールドおよび入力端子部32の他の端子を介して、信号生成装置2Aにおける基準電位の部位(グランドG)に接続されている。
また、プローブPLaを対応する被覆導線Laに正しく接続し、またプローブPLbを対応する被覆導線Lbに正しく接続し得るように、各プローブPLa,PLbには、図示はしないが、それぞれの対応する被覆導線La,Lbを明示するためのマーク等(例えば、接続すべき被覆導線La,Lbを示す「CANH」,「CANL」の文字等)が表示されている。
信号生成装置2Aは、図1に示すように、入力端子部31,32、第1検出部33、第2検出部34および信号生成部35Aを備えている。
入力端子部31は、プローブPLaの基端部側に配設された接続コネクタと接続可能な接続コネクタで構成されている。また、入力端子部32は、プローブPLbの基端部側に配設された接続コネクタと接続可能な接続コネクタで構成されている。
第1検出部33は、一例として、図1に示すように、インピーダンス素子33a、およびアンプ33bを備えて、入力端子部31およびプローブPLaを介して接続された被覆導線Laに伝送されている電圧Vaに応じて電圧が変化する電圧信号Vd1を出力する。この電圧信号Vd1は、上記の電圧信号Va,Vbのように双方の電位差(Va−Vb)で符号(データ)を表す差動電圧方式の電圧信号とは異なり、自身の電圧だけで符号(データ)を表す電圧信号(つまり、差動電圧方式ではない電圧信号)である。以下では、説明のため、この電圧信号Vd1と同種の電圧信号を「非差動電圧方式の電圧信号」ともいう。
一例として、インピーダンス素子33aは、抵抗(高抵抗値の抵抗(少なくとも数MΩ程度の高インピーダンス抵抗))、およびこの抵抗に並列接続されたコンデンサを備えて構成されて、図2に示すように、入力端子部31およびプローブPLaを介して接続された被覆導線Laに伝送されている電圧Vaに応じて電圧が変化する(電圧Vaがベースの電圧のときには低電圧となり、電圧Vaが高電圧のときには高電圧となるように変化する非差動電圧方式の電圧信号)電圧信号Vc1を出力する。アンプ33bは、一例として非反転増幅器で構成されて、この電圧信号Vc1を非反転増幅して、図2に示すような電圧信号Vd1として出力する。
第2検出部34は、一例として、図1に示すように、インピーダンス素子34a、およびアンプ34bを備えて、入力端子部32およびプローブPLbを介して接続された被覆導線Lbに伝送されている電圧Vbに応じて電圧が変化する電圧信号Vd2(非差動電圧方式の電圧信号)を出力する。
この場合、インピーダンス素子34aは、上記したインピーダンス素子33aと同一に構成されて、入力端子部32およびプローブPLbを介して接続された被覆導線Lbに伝送されている電圧Vbに応じて電圧が変化する(電圧Vbがベースの電圧のときには高電圧となり、電圧Vbが低電圧のときには低電圧となるように変化する非差動電圧方式の電圧信号)電圧信号Vc2を出力する。また、アンプ34bも、上記したアンプ33bと同一に構成されて、この電圧信号Vc2を非反転増幅して、図2に示すような電圧信号Vd2(電圧信号Vd1に対して位相の反転した電圧信号)として出力する。
なお、各アンプ33b,34bについては、非反転増幅器で構成されるものに限定されず、反転増幅器で構成されるものであってもよい。また、各アンプ33b,34bは、対応する電圧信号Vc1,Vc2に含まれる交流成分と共に直流成分も併せて増幅する構成(直流アンプとする構成)でもよいし、電圧信号Vc1,Vc2に含まれる交流成分のみを増幅する構成(交流アンプとする構成)でもよい。
信号生成部35Aは、各電圧信号Vd1,Vd2を入力すると共に、各電圧信号Vd1,Vd2の差分電圧(Vd1−Vd2)に基づいて符号特定用信号Sfを生成して出力する。この場合、信号生成部35Aは、プローブPLaが接続されるべき被覆導線Laに接続され(正しく被覆導線Laに接続され)、かつプローブPLbが接続されるべき被覆導線Lbに接続されて(正しく被覆導線Lbに接続されて)いる状態のときには、差分電圧(Vd1−Vd2)に基づいて、図2に示すように、CANバスSBにCANフレーム(符号列)を構成する符号Cs(「1」)が伝送されている期間において高電位側電圧(レセッシブ)となり、符号Cs(「0」)が伝送されている期間において低電位側電圧(ドミナント)となる符号特定用信号Sf(非差動電圧方式の電圧信号)を正しく生成して出力する。このように、符号特定用信号Sfは、高電位側電圧(レセッシブ)の期間が符号Cs(「1」)の伝送期間に対応し、低電位側電圧(ドミナント)の期間が符号Cs(「0」)の伝送期間に対応する信号であることから、ロジック信号Saに対応する符号Cs(「1」,「0」)を特定可能な信号である。
以上の構成により、信号生成装置2Aは、図1に示すように、入力端子部31に接続されたプローブPLaが被覆導線Laに接続され、かつ入力端子部32に接続されたプローブPLbが被覆導線Lbに接続されている状態において、上記したような図2に示す符号特定用信号Sfを正しく生成して出力する。
CANドライバ3は、信号変換装置として機能して、図1に示すように、符号特定用信号Sfを入力すると共に、この符号特定用信号Sfをロジック信号Saと同じCAN通信プロトコルに準拠した送信信号STX(2線差動電圧方式のロジック信号)に変換して一対の出力端子から出力する。
出力コネクタ4は、例えば、背景技術で説明したダイアグコネクタと同一のコネクタで構成されている。また、出力コネクタ4は、このダイアグコネクタにおけるCANHighの信号が割り当てられたピンに対応するピン4a(一の端子)が、CANバスSBと同等の仕様(CANバスSBと同等の抵抗値(例えば60Ω)の抵抗41が相互間に接続される仕様)の一対の伝送ラインLg,Lh(CANバスSBと同等の特性インピーダンスの内部バスISB)のうちの一方の伝送ラインLg(CANドライバ3の一対の出力端子のうちのCANHighの電圧信号Vgが出力される一方の出力端子に接続されている伝送ライン)に接続され、このダイアグコネクタにおけるCANLowの信号が割り当てられたピンに対応するピン4b(他の端子)が、一対の伝送ラインLg,Lhのうちの他方の伝送ラインLh(CANドライバ3の一対の出力端子のうちのCANLowの電圧信号Vhが出力される他方の出力端子に接続されている伝送ライン)に接続されている。
したがって、理解の容易のため、各電圧信号Vg,Vhの各電圧を電圧Vg,Vh(電圧Vgは上記した電圧Vaと同等の仕様で、かつ電圧Vhは上記した電圧Vbと同等の仕様)と表記するものとしたときに、上記の送信信号STXは、その電圧が各電圧Vg,Vh間の電位差(Vg−Vh)で表される差動信号としてCANドライバ3から一対の伝送ラインLg,Lh(内部バスISB)に出力され、さらに上記したようにCANドライバ3の一対の出力端子と共にこの内部バスISBに接続された出力コネクタ4から外部の解析装置に出力される。
CANレシーバ5は、一対の入力端子がCANドライバ3の一対の出力端子(一対の出力端子に接続された内部バスISBを構成する伝送ラインLg,Lhでもある)に接続されて、一対の出力端子間に生じる信号(つまり、伝送ラインLg,Lhに伝送されている信号(2線差動電圧方式のロジック信号))を入力すると共に、非差動電圧方式の電圧信号(符号特定用信号Sfと同じ電圧レベルの信号)に変換して受信信号SRXとして出力する。
この構成により、CANドライバ3の一対の出力端子間に生じている信号(内部バスISBに伝送されている信号)が送信信号STXそのものであるときには、CANレシーバ5は、その電圧が符号特定用信号Sfに同期して高電位(レセッシブ)や低電位(ドミナント)となる受信信号SRXを出力する。ただし、受信信号SRXは、その位相が符号特定用信号Sfの位相に対して、CANドライバ3での信号伝搬遅延時間tdtとCANレシーバ5での信号伝搬遅延時間tdrの合計時間tALL(=tdt+tdr)と同等の時間だけ遅延した信号となる。なお、一般的にCANドライバ3およびCANレシーバ5は、上記したようにCANトランシーバーとして1パッケージ化されている(近接配置されている)。このため、内部バスISB上でのCANドライバ3からCANレシーバ5への送信信号STXの伝搬時間については、無視し得るものとする。
遅延部6は、公知の遅延回路(例えば、RC型フィルタ(図3参照)や、LC型フィルタや、1個のまたは2個以上が直列接続されたバッファなど)で構成されている。また、遅延部6は、符号特定用信号Sfを入力すると共に、この符号特定用信号Sfを予め設定された遅延時間だけ遅延させて、遅延符号特定用信号Sfdとして出力する。この遅延時間には、CANドライバ3およびCANレシーバ5の各製品仕様で規定されている信号伝搬遅延時間tdt,tdr(各製品のカタログスペック)から算出した合計時間tALLの理論値や、複数の信号読取システム1Aにおいて実測された符号特定用信号Sfと受信信号SRXとの間の時間差の平均値(実験値)が用いられる。本例では一例として、予め設定された遅延時間として、上記の合計時間tALLの理論値が設定されているものとする。
これにより、遅延部6は、入力した符号特定用信号Sfを、使用されているCANドライバ3およびCANレシーバ5での各信号伝搬遅延時間tdt,tdrの合計時間tALLと同等の時間だけ遅延させて、遅延符号特定用信号Sfdとして出力する。この構成により、内部バスISBに伝送されている信号が送信信号STXそのものであるときには、遅延符号特定用信号Sfdおよび受信信号SRXは、位相がほぼ揃った状態となる。
比較部7は、遅延符号特定用信号Sfdおよび受信信号SRXを入力すると共に、遅延符号特定用信号Sfdの論理(高電位であるか低電位であるか)と受信信号SRXの論理(高電位であるか低電位であるか)とを比較して、その比較の結果(両信号Sfd,SRXの論理同士の一致・不一致)を示す出力信号Soを出力する。本例では比較部7は、一例として図1に示すようにEXOR回路で構成されて、遅延符号特定用信号Sfdの論理と受信信号SRXの論理とが一致しているとき(両信号Sfd,SRXの論理が、共に高電位のとき、または共に低電位のとき)には、低電位となり、一方、遅延符号特定用信号Sfdの論理と受信信号SRXの論理とが不一致のとき(両信号Sfd,SRXの論理のうちの一方が高電位で、他方が低電位のとき)には、高電位となる出力信号Soを出力する。
ここで、遅延符号特定用信号Sfdの論理と受信信号SRXの論理とが不一致となる2つの場合について説明する。まず、第1の場合は、信号読取システム1Aの出力コネクタ4に接続されている解析装置に対して伝送ラインLg,Lhへの信号の出力を停止する措置を施しておらずに、解析装置からCANドライバ3の一対の出力端子間(伝送ラインLg,Lh)に信号が出力されている場合である。この場合には、信号読取システム1AのCANドライバ3からの送信信号STXと、解析装置からの信号とが伝送ラインLg,Lh上で衝突する。このため、伝送ラインLg,Lhに伝送されている信号の波形は、本来伝送されるべき送信信号STXの波形(符号特定用信号Sfの論理に対応した波形)とは異なった波形になる。したがって、この波形の送信信号STXを入力するCANレシーバ5からは、この異なった波形となる期間において、符号特定用信号Sfの論理(遅延符号特定用信号Sfdの論理でもある)とは異なる論理となる受信信号SRXが出力される。また、このように信号の衝突が発生している場合には、通常は、少なくともロジック信号Saの1ビット長(例えば、数μs)に近い期間に亘って、符号特定用信号Sfの論理(具体的には遅延符号特定用信号Sfdの論理)と受信信号SRXの論理とが不一致となる状態が、繰り返し発生する。これにより、出力信号Soは、最低でもロジック信号Saの1ビット長に近い期間に亘るパルス幅で高電位となるパルス信号(以下では、後述するノイズとの区別のため、「幅広のパルス信号」ともいう)が繰り返し含まれる信号となる。
次に、第2の場合は、信号読取システム1Aの出力コネクタ4に接続されている解析装置に対して伝送ラインLg,Lhへの信号の出力を停止する措置が施されており、CANドライバ3からの送信信号STXのみが伝送ラインLg,Lhに出力されている状態ではあるが、遅延部6に予め設定された遅延時間が、CANドライバ3での実際の信号伝搬遅延時間tdtとCANレシーバ5での実際の信号伝搬遅延時間tdrの合計時間tALL(=tdt+tdr)に一致していない場合である。実際には、CANドライバ3での信号伝搬遅延時間tdtやCANレシーバ5での信号伝搬遅延時間tdrは、周囲温度の影響を受けて変化したり、CANトランシーバ毎にばらつく(製品仕様の許容範囲内でばらつく)。このため、実際の合計時間tALLが、遅延部6に対して予め規定した遅延時間(合計時間tALLの理論値)から僅かにずれる状態が生じる。
この場合には、符号特定用信号Sfの位相を基準としたときに、CANドライバ3およびCANレシーバ5の実際の各信号伝搬遅延時間tdt,tdrの合計時間tALL(実際の合計時間tALL)で遅延される受信信号SRXと、上記のような理論値や実験値に規定された合計時間tALL(本例では一例として理論値)で遅延される遅延符号特定用信号Sfdとの間には位相差が生じる。これにより、遅延符号特定用信号Sfdの論理と受信信号SRXの論理は、殆どの期間に亘って一致する状態になるものの、遅延符号特定用信号Sfdおよび受信信号SRXの各論理が低電位から高電位にこの位相差だけずれて移行する立ち上がりタイミングと、高電位から低電位にこの位相差だけずれて移行する立ち下がりタイミングとにおいては、この位相差の時間だけ不一致状態になる。このため、比較部7から出力される出力信号Soは、基本的には低電位のレベル信号に近い状態の信号ではあるものの、遅延符号特定用信号Sfdおよび受信信号SRXのこの立ち上がりタイミングと立ち下がりタイミングとにおいて、この位相差の時間だけ一時的に高電位となるノイズ(ひげ状のパルス信号)が発生する信号となる。このノイズ(ひげ状のパルス信号)は、ロジック信号Saの1ビット長(例えば、数μs)に対して十分に短い数十ns程度のパルス幅の信号(ロジック信号Saの基本周波数よりも極めて高い周波数成分(例えば数十倍以上高い高周波数成分)で構成される信号)になる。
なお、出力信号Soの論理は、上記の例の論理(両信号Sfd,SRXの論理が一致のときに低電位となり、不一致のときに高電位となる論理)に限定されるものではなく、EXOR回路の出力をインバートすることで、逆の論理(両信号Sfd,SRXの論理が一致のときに高電位となり、不一致のときに低電位となる論理)としてもよい。
ローパスフィルタ8は、比較部7と処理部9との間に配設されて、比較部7から出力される出力信号Soに高周波成分(上記のノイズ)が含まれているときには、この高周波成分(上記のノイズ)を除去(低電位まで完全に減衰させることに加えて、予め規定された閾値電圧未満に減衰させることも含む)して、新たな出力信号So1として処理部9に出力する。一方、ローパスフィルタ8は、伝送ラインLg,Lhにおいて上記のような信号の衝突が発生しているときに出力信号Soに繰り返し含まれる上記のパルス信号(最低でもロジック信号Saの1ビット長に近い期間に亘るパルス幅で高電位となるパルス信号)については、除去できない(上記の閾値電圧未満に減衰させることができない)。したがって、この場合、ローパスフィルタ8は、このパルス幅のパルス信号(幅広のパルス信号)については、上記の閾値電圧以上の状態で、出力信号So1に含めて出力する。このローパスフィルタ8は、図示はしないが、RC型フィルタやLC型フィルタなどの公知の種々のフィルタ回路で構成することができる。
処理部9は、ローパスフィルタ8から出力される出力信号So1を入力すると共に、出力信号So1が、遅延符号特定用信号Sfdの論理に受信信号SRXの論理が一致していないとの比較の結果を示すものであることを検出したときには、報知動作を実行する。具体的には、処理部9は、出力信号So1の電圧を検出しつつ上記の閾値電圧と比較して、検出している電圧が上記の閾値電圧以上になったときに、出力信号So1が遅延符号特定用信号Sfdの論理に受信信号SRXの論理が一致していないとの比較の結果を示すものであると検出する。また、処理部9は、報知動作として、遅延符号特定用信号Sfdの論理に受信信号SRXの論理が一致していないことを出力部10に出力させる動作を実行する。
処理部9は、例えば、図示はしないが、コンパレータと、単安定マルチバイブレータ回路と、バッファとで構成することができる。この場合、コンパレータは、一例として、出力信号So1の電圧と上記の閾値電圧と比較して、出力信号So1の電圧がこの閾値電圧以上のときに高電位となるパルスを出力する。単安定マルチバイブレータ回路は、一例として、コンパレータから高電位のパルスを入力したときに、予め規定した時間だけ高電位となるパルスを出力する。この場合、この予め規定した時間は、伝送ラインLg,Lhにおいて上記のような信号の衝突が発生しているときに出力信号Soに繰り返し含まれる上記の幅広のパルス信号(この幅広のパルス信号は出力信号So1にも含まれる)の最長時間よりも長い時間に規定されているものとする。この構成により、上記のような信号の衝突が伝送ラインLg,Lhにおいて発生しているときには、単安定マルチバイブレータ回路は、高電位となるレベル信号を出力する。この場合、上記のような信号の衝突が伝送ラインLg,Lhにおいて連続的に発生しているときには、単安定マルチバイブレータ回路は、高電位となるレベル信号を連続的に出力する。バッファは、単安定マルチバイブレータ回路から出力される信号を低インピーダンスで出力部10に対する制御信号Ssとして出力する。
なお、処理部9は、この構成に限定されるものではない。例えば、処理部9は、A/D変換器とコンピュータとで構成することもできる。この場合、A/D変換器は、出力信号So1を一定のサンプリング周期でサンプリングすることにより、出力信号So1の瞬時値を示す波形データを出力する。コンピュータは、この波形データを入力すると共に、予め記憶された上記の閾値電圧を示す閾値データと比較して、波形データが閾値データ以上であると判別したときには、出力部10に対して制御信号Ssを上記の予め規定した時間に亘って出力する。この構成においても、処理部9は、コンパレータと、単安定マルチバイブレータ回路と、バッファとを備えた構成と同様に動作して、同等の制御信号Ssを出力する。
さらに、処理部9をこのようにA/D変換器とコンピュータとで構成するようにしたときには、A/D変換器で出力信号Soを波形データに変換してコンピュータに出力する構成とすることで、ローパスフィルタ8の機能をソフトウェアで実現するようにしてもよい。また、出力信号Soに含まれる上記のノイズが、A/D変換器でのサンプリングによって除去し得るものであるとき(A/D変換器でのサンプリングタイミングは、このノイズの発生タイミングとは通常、非同期である。このため、ノイズの発生時間が短いときには、A/D変換器でのサンプリングでこのノイズを除去し得る場合がある)には、ローパスフィルタ8を省くこともできる。この場合、ローパスフィルタ8の機能をソフトウェアで実現することも不要になる。
また、遅延符号特定用信号Sfdおよび受信信号SRXをそれぞれA/D変換器で波形データに変換してコンピュータに出力する構成として、比較部7の機能についてもソフトウェアで実現するようにしてもよい。また、符号特定用信号Sfおよび受信信号SRXをそれぞれA/D変換器で波形データに変換してコンピュータに出力する構成として、遅延部6の機能についてもソフトウェアで実現するようにしてもよい。
出力部10は、一例として、ディスプレイ装置や発光ダイオードなどの表示装置で構成されて、処理部9から制御信号Ssが出力されているときに、出力動作としての表示動作を実行する。本例では一例として、出力部10は、ディスプレイ装置の場合には、伝送ラインLg,Lhにおいて上記のような信号の衝突が発生している旨を示す情報を画面に表示させる表示動作を実行し、また発光ダイオードの場合には、点灯(連続点灯動作や点滅動作)させる表示動作を実行する。この構成により、信号読取システム1Aは、使用者に対して、上記のような信号の衝突が伝送ラインLg,Lhにおいて発生したことを報知することが可能となっている。なお、出力部10は、表示装置を使用する構成に限定されるものではなく、ブザーやスピーカなどの可聴帯域の所定音信号を放音する放音装置で構成することもできる。
次に、信号読取システム1Aの使用例、およびその際の信号読取システム1Aの動作について、図面を参照して説明する。
最初に、図1に示すように、使用者によって、信号読取システム1AのプローブPLaが接続されるべき被覆導線Laに接続され、プローブPLbが接続されるべき被覆導線Lbに接続され、かつ出力コネクタ4が外部の解析装置に接続される。この状態の解析装置では、解析装置側のCANHighに対応する不図示の端子が出力コネクタ4を介して内部バスISBを構成する伝送ラインLgに接続され、かつ解析装置側のCANLowに対応する不図示の端子が出力コネクタ4を介して内部バスISBを構成する伝送ラインLhに接続される。また、使用者は、解析装置を操作して、伝送ラインLg,Lh(内部バスISB)への信号の出力を停止する措置を施す。
この状態において、信号読取システム1Aにおける信号生成装置2Aの第1検出部33では、インピーダンス素子33aが、図2に示すように、入力端子部31およびプローブPLaを介して接続された被覆導線Laの電圧Vaに応じて電圧が変化する(つまり、電圧Vaがベースの電圧のときに低電圧となり、電圧Vaが高電圧の規定電圧のときに高電圧となるように変化する)電圧信号Vc1を発生させ、アンプ33bが、この電圧信号Vc1を非反転増幅して電圧信号Vd1を出力する。これにより、第1検出部33は、シリアルバスSBにCANフレームを構成する符号Cs(「1」)が伝送されている期間において低電圧となり、符号Cs(「0」)が伝送されている期間において高電圧となる電圧信号Vd1を生成して出力する。
また、信号生成装置2Aの第2検出部34では、インピーダンス素子34aが、図2に示すように、入力端子部32およびプローブPLbを介して接続された被覆導線Lbの電圧Vbに応じて電圧が変化する(つまり、電圧Vbがベースの電圧のときに高電圧となり、電圧Vbが低電圧の規定電圧のときに低電圧となるように変化する)電圧信号Vc2を発生させ、アンプ34bが、この電圧信号Vc2を非反転増幅して電圧信号Vd2を出力する。これにより、第2検出部34は、シリアルバスSBにCANフレームを構成する符号Cs(「1」)が伝送されている期間において高電圧となり、符号Cs(「0」)が伝送されている期間において低電圧となる電圧信号Vd2を生成して出力する。
次いで、信号生成部35Aは、各電圧信号Vd1,Vd2を入力すると共にその差分電圧(Vd1−Vd2)に基づいて符号特定用信号Sfを生成して出力する。この場合、プローブPLaが接続されるべき被覆導線Laに接続され、かつプローブPLbが接続されるべき被覆導線Lbに接続されていることから、信号生成部35Aは、図2に示すように、この差分電圧(Vd1−Vd2)に基づいて、シリアルバスSBにCANフレーム(符号列)を構成する符号Cs(「1」)が伝送されている期間において高電位側電圧(レセッシブ)となり、符号Cs(「0」)が伝送されている期間において低電位側電圧(ドミナント)となる符号特定用信号Sfを生成して出力する。
続いて、CANドライバ3が、符号特定用信号Sfを入力すると共に、この符号特定用信号Sfを送信信号STXに変換して一対の出力端子から伝送ラインLg,Lhに出力する。上記したように、伝送ラインLg,Lhへの信号の出力を停止する措置が解析装置に対して施されているため、伝送ラインLg,Lhには送信信号STXのみが伝送されている(つまり、伝送ラインLg,Lhにおいて信号の衝突は発生していない)。
これにより、解析装置は、出力コネクタ4を介して信号読取システム1Aから送信信号STXを正常に受信すると共に、この送信信号STXからシリアルバスSBに伝送されているCANフレーム(符号列)を読み取って解析する解析動作を実行する。
また、信号読取システム1Aでは、CANレシーバ5が、伝送ラインLg,Lhに伝送されている信号(この場合には、送信信号STXそのもの)を入力すると共に、受信信号SRXに変換して出力する。この場合、受信信号SRXは、その電圧が符号特定用信号Sfに同期して高電位(レセッシブ)や低電位(ドミナント)となるものの、その位相が符号特定用信号Sfの位相に対して、CANドライバ3での信号伝搬遅延時間tdtとCANレシーバ5での信号伝搬遅延時間tdrの合計時間tALL(=tdt+tdr)と同等の時間だけ遅延した信号となっている。
次いで、遅延部6が、符号特定用信号Sfを入力すると共に、予め設定された遅延時間(上記のように合計時間tALLの理論値。つまり、実際のCANドライバ3およびCANレシーバ5での各信号伝搬遅延時間tdt,tdrの合計時間tALLと略同じ時間)だけ遅延させて、遅延符号特定用信号Sfdとして出力する。したがって、遅延符号特定用信号Sfdは、その電圧が受信信号SRXに同期して高電位(レセッシブ)や低電位(ドミナント)となり、かつその位相が受信信号SRXの位相にほぼ揃った信号となっている。
続いて、比較部7が、遅延符号特定用信号Sfdおよび受信信号SRXを入力すると共に比較して、その比較の結果を示す出力信号Soを出力する。この場合、上記したように、遅延符号特定用信号Sfdおよび受信信号SRXは、位相がほぼ揃った状態で(つまり、同じタイミングで)、電圧が高電位(レセッシブ)から低電位(ドミナント)に、また低電位(ドミナント)から高電位(レセッシブ)に変化する信号となっている(つまり、全体に亘って論理が一致する信号となっている)。このため、比較部7は、連続して低電位となる出力信号Soを出力する。なお、この出力信号Soには、上記した遅延符号特定用信号Sfdの論理と受信信号SRXの論理とが不一致となる2つの場合のうちの第2の場合において発生するノイズ(ひげ状のパルス信号)が通常は発生している。
次いで、ローパスフィルタ8は、この出力信号Soを入力すると共に、出力信号Soに含まれている高周波成分を除去して、新たな出力信号So1として処理部9に出力する。この場合、出力信号Soに含まれている高周波成分は、上記したように除去し得るノイズ(ひげ状のパルス信号)であることから、ローパスフィルタ8は、このノイズを除去して出力信号So1として出力する。これにより、出力信号So1は、その電圧が上記の閾値電圧未満となる信号となっている。
続いて、処理部9は、出力信号So1の電圧を検出しつつ上記の閾値電圧と比較して、検出している電圧が上記の閾値電圧以上になったときには、出力信号So1が遅延符号特定用信号Sfdの論理に受信信号SRXの論理が一致していないとの比較の結果を示すものであると検出して、報知動作を実行する。この場合、出力信号So1は、その電圧が上記の閾値電圧未満となる信号であることから、処理部9は、報知動作を実行しない。したがって、処理部9から出力部10への上記の制御信号Ssの出力は行われないことから、出力部10は、伝送ラインLg,Lhにおいて信号の衝突が発生している旨を示す情報を表示させる表示動作を実行しない。
これにより、信号読取システム1Aの使用者は、この出力部10の表示状態(出力部10が放音装置で構成されているときには、放音状態)に基づいて、伝送ラインLg,Lhへの信号の出力を停止させる措置が解析装置に対して施されていることを確認することが可能となっている。
次に、使用者が、伝送ラインLg,Lh(内部バスISB)への信号の出力を停止する措置を解析装置に対して施していないときの信号読取システム1Aの動作について説明する。なお、伝送ラインLg,Lhへの信号の出力を停止する措置が解析装置に対して施されているときの上記の動作と同一の動作については説明を省略する。
この場合の信号読取システム1Aでも、CANドライバ3が、符号特定用信号Sfを入力すると共に、この符号特定用信号Sfを送信信号STXに変換して一対の出力端子から伝送ラインLg,Lhに出力する。しかしながら、解析装置は、伝送ラインLg,Lhへの信号の出力を停止する措置が施されていないため、伝送ラインLg,Lhへ信号を出力することがある。この場合、伝送ラインLg,Lhには、信号読取システム1Aからの送信信号STXと解析装置からの信号とが出力されるため、伝送ラインLg,Lhにおいて信号の衝突が発生する。これにより、伝送ラインLg,Lhに伝送されている信号は、本来の信号波形の送信信号STX(送信信号STXそのもの)ではなく、解析装置からの信号の影響を受けて信号波形が歪んだ送信信号STX(本来の信号波形とは異なる信号波形の送信信号STX)となる。
このため、CANレシーバ5は、この伝送ラインLg,Lhに伝送されている信号を受信して、その電圧が符号特定用信号Sfに同期して高電位(レセッシブ)や低電位(ドミナント)とはならない状態の受信信号SRXを出力する。また、比較部7は、遅延符号特定用信号Sfdおよびこの受信信号SRXを入力して比較することにより、その比較の結果を示す出力信号Soを出力する。この場合、出力信号Soには、上記した遅延符号特定用信号Sfdの論理と受信信号SRXの論理とが不一致となる2つの場合のうちの第1の場合において発生する幅広のパルス信号が繰り返し含まれる。
ローパスフィルタ8は、この出力信号Soを入力して出力信号So1を出力するが、出力信号Soに含まれている幅広のパルス信号については除去できない。このため、出力信号So1には、この幅広のパルス信号が上記の閾値電圧以上の状態で含まれている。したがって、処理部9は、検出している出力信号So1の電圧が上記の閾値電圧以上になること(つまり、出力信号So1が遅延符号特定用信号Sfdの論理に受信信号SRXの論理が一致していないとの比較の結果を示すものであること)を検出して、報知動作を実行する。処理部9は、報知動作として、出力部10へ上記の制御信号Ssを出力することで、伝送ラインLg,Lhにおいて信号の衝突が発生している旨を示す情報を表示させる表示動作を出力部10に実行させる。
これにより、信号読取システム1Aの使用者は、この出力部10の表示状態(出力部10が放音装置で構成されているときには、放音状態)に基づいて、伝送ラインLg,Lhにおいて信号の衝突が発生していること、すなわち、伝送ラインLg,Lhへの信号の出力を停止させる措置を解析装置に対して施していないことを確認することができる。したがって、使用者は、この措置を解析装置に対して施すことが可能となる。
このように、この信号読取システム1Aによれば、上記のCANレシーバ5、比較部7、処理部9および出力部10を備えたことにより、信号読取システム1Aと解析装置との間において(具体的には、解析装置が接続されるCANドライバ3の一対の出力端子(伝送ラインLg,Lh))において信号の衝突が発生していること、すなわち、信号読取システム1A(具体的には、信号読取システム1Aの伝送ラインLg,Lh)への信号の出力を停止させる措置を解析装置に対して施していないことを使用者に報知することができる。したがって、信号読取システム1Aの使用者は、上記の措置を解析装置に対して施して信号の衝突を解消させることができ、信号読取システム1Aから解析装置に送信信号STXを正常に送信させることができる。また、これにより、解析装置に対して、この正常な送信信号STXからシリアルバスSBに伝送されているCANフレーム(符号列)を正常に読み取って解析する解析動作を実行させることができる。
また、この信号読取システム1Aでは、遅延部6を備えたことにより、CANドライバ3およびCANレシーバ5での信号伝搬遅延に起因して、符号特定用信号Sfに対して受信信号SRXが遅延しているときに、遅延部6がこの信号伝搬遅延分だけ符号特定用信号Sfを遅延させて遅延符号特定用信号Sfdとして出力することができる。このため、比較部7は、信号の衝突が発生していないときにはほぼ位相の揃った受信信号SRXと遅延符号特定用信号Sfdとを正確に比較することができるため、論理同士の一致・不一致を示す出力信号Soを正確に出力することができる。また、これにより、処理部9はこの出力信号So(具体的には、出力信号So1)に基づき、不一致を示すものであるとき(つまり、CANドライバ3と解析装置との間において信号の衝突が発生しているとき)には報知動作を確実に実行することができる。したがって、信号読取システム1Aの使用者は、CANドライバ3と解析装置との間において信号の衝突が発生しているときに、上記の措置を解析装置に対して施して信号の衝突を解消させることができ、信号読取システム1Aから解析装置に送信信号STXを正常に送信させることができる。
なお、この信号読取システム1Aでは、上記したように、遅延部6を備える構成を採用しているが、この構成に限定されるものではない。例えば、CANドライバ3およびCANレシーバ5での信号伝搬遅延が極めて少なく、符号特定用信号Sfに対する受信信号SRXの遅延を無視し得る場合には、遅延部6を省いて、比較部7に符号特定用信号Sfおよび受信信号SRXを入力して、この2つの信号Sf,SRXの論理同士を比較させて、この論理同士の一致・不一致を示す出力信号Soを出力させる構成を採用することもできる。
また、この信号読取システム1Aによれば、ローパスフィルタ8を備えたことにより、出力信号Soに含まれる上記のノイズを確実に除去して、出力信号So1として処理部9に出力することができる。したがって、この信号読取システム1Aによれば、このノイズに起因して処理部9が誤って報知動作を実行する事態の発生を回避することができる。また、この信号読取システム1Aによれば、遅延部6を図3に示すようなRC型フィルタで構成し、比較部7を図1に示すようなEXOR回路で構成し、ローパスフィルタ8を上記したような公知のフィルタ回路で構成し、かつ処理部9を上記したようなコンピュータを含まない構成とすることにより、ハードウェアのみの簡易な構成(ソフトウェアが不要な構成)で、伝送ラインLg,Lhにおいて信号の衝突が発生していることを検出して、使用者に報知することができる。
また、この信号読取システム1Aによれば、上記のように出力部10を備えたことにより、伝送ラインLg,Lhにおいて信号の衝突が発生していることを使用者に報知するための表示装置や放音装置などの出力装置を別途設ける手間を省くことができる。
なお、上記の信号読取システム1Aでは、出力部10を表示装置や放音装置で構成する好ましい構成を採用した例について説明したが、出力部10を外部インターフェース回路で構成することもできる。この場合、外部インターフェース回路で構成された出力部10は、制御信号Ssを入力したときには、信号読取システム1Aとは別体に配置された表示装置や放音装置に対して、表示動作や放音動作を実行させるための信号を出力する。したがって、この構成を採用した信号読取システム1Aでも、表示装置や放音装置を別途設ける手間は掛かるものの、出力部10を表示装置や放音装置で構成する上記の信号読取システム1Aと同等の効果を奏することができる。
また、上記したように、処理部9がコンピュータを含んで構成されているときには、A/D変換器で出力信号Soを波形データに変換してコンピュータに出力する構成とすることで、ローパスフィルタ8の機能をソフトウェアで実現することもできるが、ハードウェアで構成されたローパスフィルタ8で出力信号Soに含まれる上記のノイズを除去するようにすることで、コンピュータを含んで構成された処理部9の負荷を軽減することができる。
また、上記の信号読取システム1Aでは、自由端側に電極22aを含む電極部21aが配置されたプローブPLa、および自由端側に電極22bを含む電極部21bが配置されたプローブPLbを入力端子部31,32を介して信号生成装置2Aに接続して使用する構成を採用しているが、この構成に限定されるものではない。例えば、図示はしないが、信号生成装置2A、CANドライバ3、出力コネクタ4、CANレシーバ5、遅延部6、比較部7、ローパスフィルタ8、処理部9および出力部10が収容された不図示のケースの一部に、被覆導線La,Lbに押し当てるための一対の押し当て部位を形成する。また、ケース内におけるこの各押し当て部位の近傍に電極22a,22bを配設する。そして、ケースの内部において、電極22aを第1検出部33に接続し、かつ電極22bを第2検出部34に接続する構成とすることもできる。この構成を採用することで、プローブPLa,PLbを省くことができる。
また、上記の信号読取システム1Aは、一対の被覆導線La,Lbで構成されるCANバスSBと、CANバスSBを介して伝送される2線差動電圧方式のロジック信号Saを解析するための解析装置(一対の被覆導線La,Lbで構成されるCANバスSBに接続可能に構成された解析装置)との間に介装される構成であったが、信号読取システムはこの構成に限定されるものではない。1本の被覆導線で構成されるCANバスも存在しており、この構成のCANバスに接続されてCANバスに伝送されるロジック信号を解析する解析装置も存在している。以下では、図4を参照して、この構成のCANバスSBと解析装置との間に介装されて使用される信号読取システム1Bについて説明する。なお、信号読取システム1Aと同一の構成要素については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
信号読取システムとしての信号読取システム1Bは、一本のプローブ(例えば、プローブPLa)、信号生成装置2B、CANドライバ3、出力コネクタ4、CANレシーバ5、遅延部6、比較部7、ローパスフィルタ8、処理部9および出力部10を備えている。この信号読取システム1Bは、1本の信号線(例えば、1本の被覆導線La)で構成されるCANバスSBと、CANバスSBを介して伝送されるロジック信号Sa(自動車のボディアース(信号生成装置2Bにおける基準電位の部位(グランドG)でもある)を基準として被覆導線Laに伝送される電圧信号Va(電圧Va))を解析するための解析装置との間に介装されて、このロジック信号Saを読み取り(検出し)、このロジック信号Saに対応する符号を特定可能な符号特定用信号Sfを生成し、かつこの符号特定用信号Sfを解析装置の入力仕様に合致した送信信号STX(CAN通信プロトコルに準拠したシングルワイヤ(単線)方式のロジック信号)に変換して解析装置に出力する。
信号生成装置2Bは、図4に示すように、入力端子部31、第1検出部33および信号生成部35Bを備えている。この場合、信号生成部35Bは、電圧信号Vd1を入力すると共にこの電圧信号Vd1に基づいて符号特定用信号Sfを生成して出力する。この場合、信号生成部35Bは、プローブPLaが接続されるべき被覆導線Laに接続されている(正しく被覆導線Laに接続されている)状態のときには、電圧信号Vd1に基づいて図2に示す符号特定用信号Sfを正しく生成して出力する。
以上の構成により、信号生成装置2Bは、図4に示すように、入力端子部31に接続されたプローブPLaが被覆導線Laに接続されている状態において、上記したような図2に示す符号特定用信号Sfを正しく生成して出力する。
CANドライバ3は、信号変換装置として機能して、図4に示すように、符号特定用信号Sfを入力すると共に、この符号特定用信号Sfをロジック信号Saと同じCAN通信プロトコルに準拠した送信信号STX(単線方式のロジック信号)に変換して1つの出力端子から出力する。
出力コネクタ4は、例えば、単線方式のCANバスSBに接続されているダイアグコネクタと同一のコネクタで構成されている。また、出力コネクタ4は、このダイアグコネクタにおける電圧信号Vaが割り当てられたピンに対応するピン4a(一の端子)が、CANバスSBと同等の仕様(CANバスSBと同等の抵抗値(例えば60Ω)の抵抗41が相互間に接続される仕様)の一対の伝送ラインLg,Lh(CANバスSBと同等の特性インピーダンスの内部バスISB)のうちの一方の伝送ラインLg(CANドライバ3の出力端子に接続されている伝送ライン)に接続され、このダイアグコネクタにおけるグランドが割り当てられたピンに対応するピン4b(他の端子)が、一対の伝送ラインLg,Lhのうちの他方の伝送ラインLh(グランドGに接続されている伝送ライン)に接続されている。
したがって、理解の容易のため、電圧信号Vgの電圧を電圧Vg(電圧Vgは上記した電圧Vaと同等の仕様)と表記するものとしたときに、上記の送信信号STXは、グランドGの電位を基準とするその電圧が電圧Vgで表される非差動電圧方式の信号としてCANドライバ3から一対の伝送ラインLg,Lh(内部バスISB)に出力され、さらに出力コネクタ4から外部の解析装置に出力される。
CANレシーバ5は、1つの入力端子がCANドライバ3の1つの出力端子(内部バスISBを構成する伝送ラインLgでもある)に接続されて、この1つの出力端子に生じる信号(つまり、伝送ラインLg,Lhに伝送されている信号)を入力すると共に、非差動電圧方式の電圧信号(符号特定用信号Sfと同じ電圧レベルの信号)に変換して受信信号SRXとして出力する。
この信号読取システム1Bも、上記した信号読取システム1Aと同様にして、上記のCANレシーバ5、比較部7、処理部9および出力部10を備えたことにより、信号読取システム1Bと解析装置との間において(具体的には、解析装置が接続されるCANドライバ3の一対の出力端子(伝送ラインLg,Lh))において信号の衝突が発生していること、すなわち、信号読取システム1B(具体的には、信号読取システム1Bの伝送ラインLg,Lh)への信号の出力を停止させる措置を解析装置に対して施していないことを使用者に報知することができる。したがって、信号読取システム1Bの使用者は、上記の措置を解析装置に対して施して信号の衝突を解消させることができ、信号読取システム1Bから解析装置に送信信号STXを正常に送信させることができる。また、これにより、解析装置に対して、この正常な送信信号STXからシリアルバスSBに伝送されているCANフレーム(符号列)を正常に読み取って解析する解析動作を実行させることができる。
また、この信号読取システム1Bでも、遅延部6を備えたことにより、遅延部6を備えた信号読取システム1Aと同じ上記の効果を奏することができる。また、信号読取システム1Bにおいても、CANドライバ3およびCANレシーバ5での信号伝搬遅延が極めて少なく、符号特定用信号Sfに対する受信信号SRXの遅延を無視し得る場合には、上記した信号読取システム1Aと同様にして遅延部6を省く構成を採用することができる。
また、この信号読取システム1Bでも、ローパスフィルタ8を備えたことにより、ローパスフィルタ8を備えた信号読取システム1Aと同じ上記の効果を奏することができる。また、この信号読取システム1Bでも、出力部10を備えたことにより、出力部10を備えた信号読取システム1Aと同じ上記の効果を奏することができる。
また、上記の例では、信号読取システム1A,1Bの出力コネクタ4にCAN通信対応機器の一例として解析装置(アナライザ)を接続しているが、出力コネクタ4に接続する装置は解析装置に限定されず、データ記録装置などの他のCAN通信対応機器を接続してもよいのは勿論である。