JP2021054860A - ニューロピリン機能調節剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】セマフォリン3A受容体であるニューロピリンとの結合作用を有し、セマフォリン3Aのアゴニスト及び/又はアンタゴニストとして機能し得るニューロピリン機能調節剤を提供する。【解決手段】植物由来セラミドを含むニューロピリン機能調節剤。【選択図】なし

Description

本発明は、ニューロピリンの機能調節に優れた薬剤に関する。具体的には、ニューロピリンに結合し、セマフォリン3Aの機能の亢進又は抑制する目的で使用される薬剤に関する。
セマフォリンは、セマドメインという共通のアミノ酸配列をもち、構造の違いにより、7つのサブファミリーに分類されるタンパク質である。なかでも、セマフォリン3A(Semaphorin3A,Sema3A)は、これまで最もよく研究されており、生体内において、神経軸索ガイダンス、血管新生、免疫応答、骨代謝などの様々な生体機能に幅広く関与していることが知られている。
例えば、セマフォリン3Aが存在すると神経細胞の軸索伸長が抑制されることが知られている。セマフォリン3Aのそのような作用を利用して、例えば、皮膚組織でのそう痒を抑制する方法が提案されている(特許文献1)。また、セマフォリン3Aが、骨吸収の阻害と骨形成の促進とを同時に行うことによって、強い骨保護作用を発揮することが知られている(特許文献2)。また、セマフォリン3Aの活性を阻害することによって、軸索の伸長を促進し、損傷した骨髄の再生等を促進し得ることが知られている(特許文献3)。
このようにセマフォリン3Aは生体内において、種々の重要な役割を果たしており、生体内でのセマフォリン3Aの機能の亢進又は抑制を調整することは重要である。例えば、特許文献4には、転写因子を利用したセマフォリン3Aの発現を増強又は抑制する剤、及び特定の転写因子の阻害又は促進を指標として、セマフォリン3Aの発現を増強又は抑制する化合物のスクリーニング方法が開示されている。
セマフォリン3Aは、ニューロピリンを直接の受容体とする。ニューロピリンは、T細胞、樹状細胞、神経細胞、上皮細胞等、様々な細胞の表面に存在する膜貫通糖タンパク質であり、ニューロピリン1とニューロピリン2が知られている。ニューロピリンはプレキシンAと複合体と形成し、セマフォリン3Aの機能的な受容体を形成する。セマフォリン3Aが前記複合体に結合することにより、細胞内情報伝達機構が活性化される。例えば、図1に、軸索の伸長の作用機序に関する、セマフォリン3Aと神経成長因子(Nerve growth factor,NGF)によるシグナル伝達経路を示した模式図を示す。
図1に示されるように、セマフォリン3Aが、ニューロピリン1(Nrp 1)と結合した後、その複合体にプレキシンA(Plex A)が結合することにより、FynによるRac1の活性化を介して、タンパク質ホスファターゼPP2AによるGSK−3βの脱リン酸化が促される。そうすると、GSK−3βが活性化され、CRMP2のリン酸化が促進される。その結果、CRMP2は不活性となり、軸索の伸長が抑制される。一方、神経成長因子(NGF)が受容体Tropomyosin receptor kinase A(trk A)と結合することにより、AktによるGSK−3βのリン酸化が促進される。それにより、GSK−3βによるCRMP2のリン酸化が抑制され、CRMP2の活性が高まり、軸索を伸長させる。このようにセマフォリン3Aの受容体への結合と、神経成長因子の受容体trk Aへの結合との作用のバランスにより、軸索の伸長が制御される。
ニューロピリンは、セマフォリン3Aの受容体であるので、セマフォリン3Aの機能の
亢進又は抑制に深く関わる。そのため、ニューロピリンに結合してニューロピリンの機能を調節することにより、セマフォリン3Aの機能の亢進又は抑制できる薬剤の開発は、セマフォリン3Aが関与する疾患の治療又は予防に非常に有効である。しかしながら、ニューロピリンに結合し、セマフォリン3Aのアゴニスト、アンタゴニストとして機能し得る薬剤は未だ十分に知られていない。
特開2008−297243号公報 国際公開第2013/129620号パンフレット 特開2011−46734号公報 国際公開第2014/178427号パンフレット
本発明は、上記現状に鑑みて、セマフォリン3A受容体であるニューロピリンとの結合作用を有し、セマフォリン3Aのアゴニスト及び/又はアンタゴニストとして機能し得るニューロピリン機能調節剤を提供することを課題とする。
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を行ったところ、植物由来セラミドがニューロピリンと結合し得ることを見出した。また、植物由来セラミドがニューロピリンと結合して、軸索の伸長を抑制し得ることを見出した。更に、植物由来セラミドがニューロピリンに結合することにより、セマフォリン3Aの機能を亢進したり、抑制したりし得ることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 植物由来セラミドを含むニューロピリン機能調節剤。
項2. 植物由来セラミドがコンニャク由来である、項1に記載のニューロピリン機能調節剤。
項3. セマフォリン3Aのアンタゴニストとして使用される、項1又は2に記載のニューロピリン機能調節剤。
項4. セマフォリン3Aのアゴニストとして使用される、項1又は2に記載のニューロピリン機能調節剤。
本発明によれば、セマフォリン3A受容体であるニューロピリンと結合し、セマフォリン3Aの機能を亢進又は抑制し得るニューロピリン機能調節剤を提供することができる。
軸索の伸長と退縮の作用機序に関する、セマフォリン3A(Sema3A)と神経成長因子(NGF)によるシグナル伝達経路を示す模式図である。 実験例1の実験の流れを示す図である。 実験例2の実験の流れを示す図である。 実験例3の実験の流れを示す図である。 (A)は、実験例1における、濃度の異なるK252aと、NGF、又はNGFとkCerを添加した場合の、神経突起伸長活性を示すグラフである。(B)は、実験例1において、濃度の異なるK252aと、NGFとαNrp1、又はNGFとαNRP1とkCerを添加した場合の、神経突起伸長活性を示すグラフである。(C)は、培地へのkCerの添加の有無と、1μg/mL又は5μg/mLのαNrp1の添加の有無による、神経突起伸長活性を示すグラフである。 (A)は、実験例2における、CRMP2のリン酸化活性を示すグラフである。(B)は、実験例3におけるウエスタンブロット法による各標的蛋白質のバンドの様子を示す画像である。 実験例4における濃度の異なるSema3AとkCerの同時添加による神経突起伸長活性を示すグラフである。 実験例4における濃度の異なるSema3AとkCerの同時添加によるCRMP2のリン酸化活性を示すグラフである。 (A)は、実験例5における蛍光画像である。(B)は、実験例5におけるSema3A又は各セラミドの濃度に対するPC12細胞に結合した蛍光量を示すグラフである。 実験例6におけるバイオレイヤー干渉法により測定した分子間相互作用の値を示すグラフである。 実験例7におけるkCer、BSA、kGlcCerの昇温比熱変化を示すグラフである。
本発明のニューロピリン機能調節剤は、植物由来セラミドを含むことを特徴とする。以下、本発明のニューロピリン機能調節剤について詳述する。
セラミド
本発明のニューロピリン機能調節剤は、植物由来セラミドを有効成分として含む。
セラミドは、スフィンゴイドに脂肪酸がアミド結合した構造を有する。
本発明において使用されるセラミドは、植物由来である。そのため、本発明のニューロピリン機能調節剤は安全性が高く、簡便に適用できる。本発明で使用されるセラミドの由来植物としては、具体的には、アーモンド、アオサ、アオノリ、アカザ、アカシア、アカネ、アカブドウ、アカマツ(松ヤニ、琥珀、コーパルを含む。以下マツ類については同じ)、アガリクス、アキノノゲシ、アケビ、アサガオ、アザレア、アジサイ、アシタバ、アズキ、アスパラガス、アセロラ、アセンヤク、アニス、アボガド、アマクサ、アマチャ、アマチャヅル、アマナツ、アマリリス、アルテア、アルニカ、アロエ、アンジェリカ、アンズ、アンコール、アンソッコウ、イグサ、イザヨイバラ、イチイ、イチジク、イチョウ、イヨカン、イランイラン、ウイキョウ、ウーロン茶、ウコン、ウスベニアオイ、ウツボグサ、ウド、ウメ、ウラジロガシ、温州ミカン、エイジツ、エシャロット、エゾウコギ、エニシダ、エノキタケ、エルダーフラワー、エンドウ、オーキッド、オウゴンカン、オオバコ、オオヒレアザミ、オオムギ、オケラ、オスマンサス、オトギリソウ、オドリコソウ、オニドコロ、オリーブ、オレガノ、オレンジ(オレンジピールを含む)、カーネーション、カカオ、カキ、カキドオシ、カクテルフルーツ、カッコン、カシワ、カタクリ、カボチャ、カミツレ、カムカム、カモミール、カラスウリ、カラマツ、カラマンダリン、カリン、ガルシニア、カルダモン、カワチバンカン、カンペイ、キイチゴ、キウイ、キキョウ、キャベツ(ケールを含む)、キャラウェイ、キュウリ、キヨミ、キンカン、ギンナン、グァバ、クコ、クズ、クチナシ、クミン、クランベリー、クルミ、グレープフルーツ、クレメンタイン、クローブ、クロマツ、クロマメ、クロレラ、ケツメイシ、ゲンノショウコ、コケモモ、コショウ、コスモス、ゴボウ、コムギ(小麦胚芽を含む)、ゴマ、コマツナ、コメ(米糠を含む)、コリアンダー、コンニャク(コンニャク芋)(こんにゃくトビ粉を含む)、コンブ、サーモンベリー、サイプレス、ザクロ、サツマ芋、サト芋、サトウキビ、サトウダイコン、サフラン、ザボン、サンザシ、サンショウ、シイタケ、シクラメン、シソ、シメジ、ジャガ芋、シャクヤク、ジャスミン、ジュズダマ、シュンギク、ショウガ、ショウブ、シラカシ、ジンチョウゲ、シンナモン、スイカ、スイトピー、スイートスプリング、スギナ、スターアニス、スターアップル、スダチ、ステビア、スモモ、セージ(サルビア)、セトカ、ゼニアオイ、セミノール、セロリ、センキュウ、センブリ、ソバ、ソラマメ、ダイコン、ダイズ(おからを含む)、ダイダイ、タイム、タケノコ、タマネギ、タラゴン、タロイモ、タンカン、タンゴール、タンジン、タンゼロ、タンポポ、チコリ、ツキミソウ、ツクシ、ツバキ、ツボクサ、ツメクサ、ツルクサ、ツルナ、ツワブキ、ディル、デコポン、テンジクアオイ(ゼラニウム)、トウガ、トウガラシ、トウキ、トウチュウカソウ、トウモロコシ、ドクダミ、トコン、トチュウ、トネリコ、ナガイモ、ナズナ、ナツミ、ナツミカン、ナツメグ、ナンテン、ニガウリ、ニガヨモギ、ニラ、ニンジン、ニンニク、ネギ、ノコギリソウ、ノコギリヤシ、ノビル、バーベナ、パーム、パイナップル、ハイビスカス、ハコベ、バジル、パセリ、ハダカムギ、ハッサク、ハッカ、ハトムギ、バナナ、バナバ、バニラ、パプリカ、ハマメリス、ハルカ、ハルミ、ハレヒメ、バンペイユ、ビート、ピーマン、ヒガンバナ、ヒシ、ヒジキ、ピスタチオ、ヒソップ(ヤナギハッカ)、ヒナギク、ヒナゲシ、ヒノキ、ヒバ、ヒマシ、ヒマワリ、ヒメノツキ、ヒュウガナツ、ビワ、ファレノプシス、フェネグリーク、フキノトウ、ブラックベリー、プラム、ブルーベリー(ビルベリーを含む)、プルーン、ブンタン、ヘチマ、ベニバナ、ベニマドンナ、ベラドンナ、ベルガモット、ホウセンカ、ホウレンソウ、ホオズキ、ボダイジュ、ボタン、ホップ、ホホバ、ポンカン、マイタケ、マオウ、マカ、マカデミアンナッツ、マーコット、マタタビ、マリーゴールド、マリヒメ、マンゴー、ミツバ、ミネオラ、ミモザ、ミョウガ、ミルラ、ムラサキ、メース、メリッサ、メリロート、メロン、メン(綿実油粕を含む)、モヤシ、ヤグルマソウ、ヤマ芋、ヤマユリ、ヤマヨモギ、ユーカリ、ユキノシタ、ユズ、ユリ、ヨクイニン、ヨメナ(アスター)、ヨモギ、ライム、ライムギ、ライラック、ラズベリー、ラッカセイ、ラッキョウ、リンゴ(アップルファイバーを含む)、リンドウ、レイコウ、レイシ、レタス、レモン、レンゲソウ、レンコン、ローズヒップ、ローズマリー、ローリエ、ワケギ、ワサビ(セイヨウワサビを含む)等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはコンニャク、サツマ芋、ジャガ芋、サト芋、ヤマ芋、ナガ芋等の芋類由来、更に好ましくはコンニャクが挙げられる。
本発明で使用されるセラミドにおいて、スフィンゴイド部分の構造については、特に限定されないが、具体的には、4−スフィンゲニン(スフィンゴシン)、4−ヒドロキシスフィンガニン(フィトスフィンゴシン)、4−ヒドロキシ−トランス−8−スフィンゲニン、4−ヒドロキシ−シス−8−スフィンゲニン、スフィンガニン、トランス−8−スフィンゲニン、シス−8−スフィンゲニン、トランス−4−スフィンゲニン、トランス−4,トランス−8−スフィンガジエニン、トランス−4,シス−8−スフィンガジエニン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、コンニャク由来のセラミドを構成しているスフィンゴイド、具体的にはトランス−4,シス−8−スフィンガジエニン、シス4−シス8−スフィンガジエニン、トランス4−トランス8−スフィンガジエニン、シス4−トランス8−スフィンガジエニン、4−ヒドロキシ−シス−8−スフィンゲニン、4−ヒドロシキ−トランス8−スフィンゲニンが挙げられる。
本発明で使用されるセラミドにおいて、スフィンゴイド部分に結合している脂肪酸の炭素数については、特に制限されないが、2〜30、好ましくは14〜26、更に好ましくは18〜24が挙げられる。また、当該脂肪酸は、飽和脂肪酸、炭素−炭素二重結合及び/又は炭素−炭素三重結合を含む不飽和脂肪酸、並びにα−ヒドロキシ脂肪酸のいずれであってもよい。
本発明で使用されるセラミドにおいて、スフィンゴイド部分に結合している脂肪酸として、具体的には、ヘキサデカン酸(C16:0)、オクタデカン酸(C18:0)、イコサン酸(C20:0)、ヘネイコサン酸(C21:0)、ドコサン酸(C22:0)、トリコサン酸(C23:0)、テトラドコサン酸(C24:0)、ペンタコサン酸(C25:0)、ヘキサドコサン酸(C26:0)、ヘプタコサン酸(C27:0)、オクタドコサン酸(28:0)、シス−9−オクタデセン酸(C18:1)等が挙げられる。なお、前記脂肪酸の括弧内に示す表記「CX:Y」において、CXは1分子当たりの炭素数を示し、Yは1分子当たりの不飽和結合の数を示し、例えば「C16:0」とは炭素数16且つ不飽和結合数が0の脂肪酸を表す。これらの脂肪酸の中でも、好ましくは、コンニャク由来のセラミドを構成している脂肪酸、具体的にはオクタデカン酸、ドコサン酸、イコサン酸が挙げられる。
セラミドは、前述する由来植物から公知の抽出方法によって得ることができる。また、セラミドは、スフィンゴ糖脂質の酵素処理物として得られたものであってもよい。また、セラミドは商業的に入手可能であり、市販品を使用してもよい。
前記スフィンゴ糖脂質の酵素処理物としては、前述の由来植物の抽出液、その濃縮液、又は前記濃縮液を精製処理した精製物の酵素処理物などが挙げられる。
前記スフィンゴ糖脂質は、グルコシルセラミド又はラクトシルセラミド等の、セラミドの第1級アルコール性ヒドロキシ基に糖が結合した糖脂質である。スフィンゴ糖脂質としては、前述したセラミドが得られるのであれば、特に限定されず、セラミドに、グルコース、ガラクトース、又は糖鎖等、いずれの糖が結合したものであってもよい。スフィンゴ糖脂質は、前述する由来植物から公知の抽出方法によって得ることができる。また、スフィンゴ糖脂質は、商業的に入手可能であり、市販品を使用してもよい。
スフィンゴ糖脂質の酵素処理に使用する酵素としては、スフィンゴ糖脂質の糖鎖−セラミド間の結合を加水分解する酵素であれば特に限定されず、例えば、エンドグリコセラミダーゼ(EGCase)が挙げられる。
EGCaseは、等電点及び分子量が異なる3つの分子種(EGCase I、EGCase II、及びEGCase III)が知られており、分子種に応じて基質特異性が異なることが知られている。使用するEGCaseの分子種は、基質となるスフィンゴ糖脂質の構造に応じて適宜設定すればよい。例えば、スフィンゴ糖脂質として、セレブロシド、特にコンニャク由来のスフィンゴ糖脂質の場合であれば、EGCase Iが好適に使用される。酵素処理の条件は、所望の酵素反応が行われるよう適宜選択するとよい。
前記抽出液の濃縮方法としては、エバポレーターのような減圧濃縮装置を用いた公知の濃縮方法が挙げられる。また精製方法としては、アルカリ処理、溶媒分画、シリカゲルクトマトグラフィーなどの公知の精製方法が挙げられる。
酵素処理後、酵素処理物そのままを用いてもよいし、酵素処理物を固液分離した残渣、固液分離した残渣を乾燥させたもの、反応物そのままを乾燥させたもの等を用いてもよい。また、酵素処理物を固液分離し、更に水を添加した後、再度固液分離することにより酵素処理物を洗浄して不純物を除去したものでもよい。
本発明のニューロピリン機能調節剤において、セラミドは、1種の構造又は由来のものを単独して使用してもよく、2種以上の構造又は由来のものを組み合わせて使用してもよい。
本発明のニューロピリン機能調節剤におけるセラミドの含有量としては、本発明の効果を奏するのであれば、特に限定されず、用途、剤型、投与形態等に応じて適宜調整することができる。
添加成分
本発明のニューロピリン機能調節剤は、前述した植物由来セラミド以外に、本発明の効
果を損なわない範囲で、剤型に応じて、他の添加成分を含有していてもよい。本発明のニューロピリン機能調節剤に含有され得る添加成分としては、例えば、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、植物抽出エキス類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、アルコール、多価アルコール、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤などが挙げられる。これらの添加成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの添加成分の含有量については、使用する添加成分の種類や本発明のニューロピリン機能調節剤の剤型等に応じて適宜設定される。
剤型・製剤形態・用途
本発明のニューロピリン機能調節剤の剤型については、特に限定されず、固体状、半固体状、又は液体状のいずれであってもよく、ニューロピリン機能調節剤の種類や用途に応じて適宜設定すればよい。
本発明のニューロピリン機能調節剤の投与方法としては、特に限定されず、適用する疾患の種類に応じて適宜選択すればよく、全身投与であっても、局所投与であってもよい。具体的には、経口、経血管内(動脈内又は静脈内)、経皮、経腸、経肺、経鼻投与等が挙げられる。血管内投与には、血管内注射、持続点滴も含まれる。なかでも、投与が容易な点で、経皮投与、経口投与、経鼻投与、又は経直腸投与が好ましい。
本発明のニューロピリン機能調節剤の製剤形態については、特に限定されず、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、注射剤、点滴剤、坐剤等の任意の製剤形態を挙げることができ、投与形態に応じて適宜選択すればよい。例えば、本発明のニューロピリン機能調節剤の投与形態が経皮投与である場合は、経皮投与が可能であることを限度として特に制限されないが、具体的には、化粧料、外用医薬品などの皮膚外用剤が挙げられる。
例えば、本発明のニューロピリン機能調節剤を化粧料に使用する場合、本発明のニューロピリン機能調節剤を香粧学的に許容される基材や添加成分と組み合わせて所望の形態に調製すればよい。このような化粧料の形態としては、特に限定されないが、具体的には、クリーム剤、乳液、化粧水(ローション)、パック、洗浄剤、メーキャップ化粧料、頭皮・毛髪用品、オイル、リップ、口紅、ファンデーション、アイライナー、頬紅、マスカラ、アイシャドー、マニキュア・ペディキュア(及び除去剤)、シャンプー、リンス、ヘアトリートメント、パーマネント剤、染毛料、ひげ剃り剤、石けん(ハンドソープ、ボディソープ、洗顔料)などが挙げられる。
また、本発明のニューロピリン機能調節剤を外用医薬品に使用する場合、本発明のニューロピリン機能調節剤を単独で、又は他の薬理活性成分、薬学的に許容される基剤や添加成分等と組み合わせて所望の形態に調製すればよい。このような外用医薬品の形態としては、特に制限されないが、具体的には、液剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、噴霧剤、貼付剤、パップ剤、リニメント剤などの経皮投与製剤などが挙げられる。
また、本発明のニューロピリン機能調節剤の製剤形態について、例えば、本発明のニューロピリン機能調節剤の投与形態が経口投与である場合は、経口投与が可能であることを限度として特に制限されないが、具体的には、飲食品及び内服用医薬品が挙げられる。
本発明のニューロピリン機能調節剤を飲食品の製剤形態にする場合、本発明のニューロピリン機能調節剤を、そのまま又は他の食品素材や添加成分と組み合わせて所望の形態に調製すればよい。このような飲食品としては、一般の飲食品の他、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品、病者用食品等が挙げられる。これらの飲食品の形態として、特に制限されないが、具体的にはカプセル剤(ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤)、錠剤
、顆粒剤、粉剤、ゼリー剤、リポソーム製剤等のサプリメント;栄養ドリンク、果汁飲料、炭酸飲料、乳酸飲料等の飲料;団子、アイス、シャーベット、グミ、キャンディー等の嗜好品;等が例示される。これらの飲食品の中でも、好ましくはサプリメント、より好ましくはカプセル剤、リポソーム製剤が挙げられる。
本発明のニューロピリン機能調節剤を内服用医薬品の製剤形態にする場合、本発明のニューロピリン機能調節剤を、そのまま又は他の添加成分と組み合わせて所望の形態に調製すればよい。このような内服用医薬品としては、具体的には、カプセル剤(ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤)、錠剤、顆粒剤、粉剤、ゼリー剤、シロップ剤、リポソーム製剤等が挙げられる。これらの内服用の医薬品の中でも、好ましくはリポソーム製剤が挙げられる。
本発明のニューロピリン機能調節剤は、ニューロピリンと結合し得る。本発明のニューロピリン機能調節剤は、ニューロピリンに結合して、セマフォリン3Aの機能を制御することができる。セマフォリン3Aがニューロピリンに結合して複合体を形成し、前記複合体がプレキシンAと結合するか否かで、セマフォリン3Aの機能が発現されるか否かを制御すると考えられる。本発明のニューロピリン機能調節剤は、ニューロピリンに結合して、ある閾値まではセマフォリン3Aの機能を亢進し、セマフォリン3Aがある閾値を超えるとニューロピリンの機能を抑制することができる。すなわち、本発明のニューロピリン機能調節剤は、疾患部位において、セマフォリン3Aが過剰に機能している場合は、その機能を抑制するように働き、一方、セマフォリン3Aの機能が不十分な場合は、その機能を促進するように働いて、正常な機能を維持しようとする作用を有すると考えられる。本発明のニューロピリン機能調節剤は、セマフォリン3Aの機能を亢進又は抑制することによって症状が改善される疾患の治療又は予防目的で使用することができる。このように、本発明のニューロピリン機能調節剤は、セマフォリン3Aのアゴニスト又はアンタゴニストとして使用することができる。
また、本発明のニューロピリン機能調節剤は、ニューロピリンが介在する複合体の形成を阻害する機能を有すると考えられるので、前述のセマフォリン3Aの機能以外にも、ニューロピリンが関与する機能の制御に有用であると考えられる。例えば、血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor,VEGF)は、ニューロピリンに結合して血管新生を亢進し得る。そのため、本発明のニューロピリン機能調節剤は、VEGFによる血管新生機能の制御等にも有用であると考えられる。
本発明のニューロピリン機能調節剤は、セマフォリン3A受容体であるニューロピリンに結合し、セマフォリン3Aの機能を亢進することができる。すなわち、本発明のニューロピリン機能調節剤は、セマフォリン3Aのアゴニストとして機能し得る。本発明のニューロピリン機能調節剤は、セマフォリン3Aの機能を亢進することによって症状が改善される疾患の治療又は予防用途に使用することができる。そのような疾患としては、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、汗疱などのそう痒性皮膚疾患;骨粗鬆症、原発性副甲状腺機能亢進症、骨軟化症、くる病、骨形成不全症、軟骨無形成症、大理石骨病などの骨代謝低下による骨関連疾患;等が挙げられる。
また、本発明のニューロピリン機能調節剤は、セマフォリン3A受容体であるニューロピリンに結合し、セマフォリン3Aの機能を抑制することができる。すなわち、本発明のニューロピリン機能調節剤は、セマフォリン3Aのアンタゴニストとしても機能し得る。本発明のニューロピリン機能調節剤は、セマフォリン3Aの機能を抑制することによって症状が改善される疾患の治療用途に使用することができる。そのような用途としては、骨髄損傷等、損傷した神経組織の再生、癌転移の抑制、癌血管の新生の抑制などの抗腫瘍等
が挙げられる。
本発明のニューロピリン機能調節剤の使用量としては、特に限定されず、製剤形態、用途、投与対象等に応じて適宜設定するとよい。
以上のように、植物由来セラミドを含む本発明のニューロピリン機能調節剤は、植物由来セラミドがニューロピリンと結合して、セマフォリン3Aの機能を亢進したり、又はセマフォリン3Aの機能を抑制することができる。本発明のニューロピリン機能調節剤は、特にニューロピリン1に結合することが好ましく、ニューロピリン1の機能調節剤であることが好ましい。そのため、本発明のニューロピリン機能調節剤は、セマフォリン3Aの機能を亢進又は抑制することにより、症状が改善される疾患の治療又は予防用途に使用することができる。具体的には、本発明のニューロピリン機能調節剤は、そう痒抑制、骨代謝改善、神経組織再生、抗腫瘍等に好適に適用することができる。本発明のニューロピリン機能調節剤は、特にセマフォリン3Aのアンタゴニストとして機能することにより有効な疾患の治療用途に適用することができる。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
<コンニャク由来セラミド(kCer)の調製>
コンニャク由来グルコシルセラミド(kGlcCer,NS170302 Glucosylceramide,from Konjac,純度≧99%(TLC),株式会社長良サイエンス)に、Rhodococcus equi M−750株由来のエンドグリコセラミダーゼIを用いて加水分解を行って、グルコースを遊離させ、精製して、コンニャク由来セラミド(kCer)を得た。
<PC12細胞の調製>
ラットの副腎髄質由来の褐色細胞腫(PC12細胞、PC12HS)はヒューマンサイエンス研究資源バンクより分譲された。細胞は炭酸ガスインキュベータ(5%CO2、37℃)で培養した。培養には10mLの10%牛胎児血清、10%馬血清、及びx100希釈ペニシリン・ストレプトマイシン(10,000units・10mg/mL,Sigma)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いて、10−cm プラスチック培養デッシュに接着させて培養した。プレコンフルエント細胞密度(5×105cells/mL)で幡種して3〜4日後にコンフルエントになった時に、0.05%トリプシンEDTA溶液(Gibco)で接着した細胞を剥離させて分散した細胞をプレコンフルエントに新培地で希釈して新しい10−cmデッシュに幡種することにより継代培養しながら細胞を得た。得られた細胞を以下の各実験に用いた。
<Nrp1遺伝子発現が抑制されたPC12細胞の調製>
セマフォリン3A(Sema3A)の細胞膜レセプターであるニューロピリン1(Nrp1)の遺伝子発現を、そのsiRNAを用いたRNA干渉によりノックダウンさせたPC12細胞を調製した。具体的には、siNRP1(RSS332427:5’−GCACCUACAUCAUCUUUGCACCAAA−3’(配列番号1)、5’−UUUGGUGCAAAGAUGAUGUAGGUGC−3’(配列番号2),Invitrogen)、ネガテイブコントロールsiNGCTRL(medium GC Duplex,Invitrogen)、遺伝子導入試薬 LipofectamineTM 2000(Invitrogen)を用いて、トランスフェクションプロトコールに従って細胞を調製した。このような方法で調製した細胞(siNRP1処理した細胞)は、Nrp1遺伝子発現およびタンパク発現が抑制されることを確認してから実験に用いた。
実験例1
シグナル伝達阻害剤を用いたkCerの突起伸長阻害の作用点について、図2に示すように検討した。具体的には、以下の通りに行った。
<神経突起伸張阻害活性の測定>
あらかじめ0.01%ポリL−リジンで表面処理した12−ウェル培養プレートに、PC12細胞を7.5×104cells/mLで1mLの血清を含むDMEM培地とともに播種して一晩培養した。培養後に無血清のDMEMで接着細胞を洗浄した後、細胞をtrkA経路の特異的阻害剤K252a(Alomone Labs)、Sema3A経路の特異的阻害剤anti−NRP1 rpAb 抗Nrp1ラビット抗体(αNrp1)(Sigma)、上記で調製したkCer、及びSema3A(Semaphorine 3A)を用いて処理した。この処理は、K252a(0〜10.0nM)、αNrp1(5μg/mL)、kCer(50μM)、Sema3A(5μg/mL)をそれぞれ所定量で含む無血清のDMEMで細胞を洗浄することにより行った。各群4ウェルとした。 前記処理の30分後に、100ng/mL 神経成長因子(NGF,2.5S マウス由来,Alomone Labs)と0.025%BSAを含むDMEM培地1mLに置換して、3日間培養した。
培養後に、1mLの2% グルタルアルデヒド/PBS溶液を各ウェルに重層して20分間固定処理を行った。その後、1mLのCBB染色液(1%クマシーブリリアントブルー/50%メタノールのPBS溶液)で2時間染色した。染色後、2mLの10%メタノール/PBS溶液、PBS溶液、脱イオン水で脱染して風乾した。
得られた細胞について、オールインオン蛍光顕微鏡(BZ−X700、キーエンス)を用いて各ウェルから×20倍率で明視野カラー撮影し、得られた細胞画像を、色相抽出プログラムによって染色性の高い細胞体と神経突起を含む細胞周囲部分に分離し、その相対比より比率(%)を算出して神経突起伸張活性を求めた。
<統計処理>
得られたデータについて、統計解析ソフトGaphPad Prism (GraphPad Software Inc.m CA,USA)を用いてBonferroni法による有意差検定(***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05)を行った。
結果を図5(A)〜図5(C)に示す。図5(A)によれば、K252a処理によりNGF誘導神経突起伸張活性は用量依存的に阻害されることが示された(図5(A) 黒の棒グラフ)。同条件でさらに50μM kCerを添加することによって、kCerはK252aの神経突起伸張阻害作用に対して相乗的阻害作用を示した(図5(A) 白の棒グラフ)。一方、5μg/mL αNrp1の添加により、K252aの神経突起伸張阻害作用は影響を受けなかったが(図5(B) 黒の棒グラフ)、kCerの相乗的阻害作用はαNrp1を添加することによって減弱して消失した(図5(B) 白の棒グラフ)。次に、αNrp1添加のみでは神経突起伸張作用に影響しなかったが(図5(C) 黒の棒グラフ)、kCerによる神経突起伸長阻害はαNrp1によって用量依存的に減弱して消失した(図5(C) 白の棒グラフ)。図5に示した結果より、kCerはtrkAシグナル経路ではなくSema3A経路で作用していることが示唆された。
実験例2
シグナル伝達阻害剤を用いたkCerのCRMP2リン酸化の作用点について、図3に示すように検討した。具体的には、以下の方法で行った。
<CRMP2のリン酸化活性の測定>
6−ウェルプレートに4×105cells/mL、1.5mLの血清含有DMEM培地に播種して24時間培養したPC12細胞を、次いで100ng/mL NGFを含む培地に交換して48時間分化させた。その後、所定の50μM kCer、500ng/mL Sema3A、5μg/mL αNrp1をそれぞれ含む無血清DMEM培地に置換して24時間培養した。培養後、細胞をPBSで洗浄し、cComplete(ロッシェ)とPhosSTOPフォスファターゼインヒビターカクテル(ロッシェ)を含むRIPA溶解緩衝液(和光純薬工業)で細胞タンパク質を溶解して回収した。
タンパク液はビシコニン酸−タンパク定量キット(ナカライテスク)により定量した。細胞タンパクを電気泳動用Sample Buffer Solution(2ME+x4,和光純薬工業)と水で希釈して1μg/μLに調製して、100℃で5分間の変性処理を行った後に、ポリアクリルアミドゲル(SDS−PAGE,和光純薬工業、SuperSepTMAce,5−20%)で10μgのタンパクを泳動分離した。泳動したゲルはPVDFメンブレン(Immobilon−P transfer membrane 0.45μm、ミリポア)にトランスブロットSDセミドライ転写セル(バイオラッド)で転写した。その後、メンブレンはBlocking One(ナカライテスク)で1時間処理した後に一次抗体液(10%Blocking One/0.05%Tween・Tris・Saline(TBST))中で振とうした。翌日に、メンブレンをTBSTで洗浄して、二次抗体液(ワサビペルオキシダーゼ標識二次抗体を10%Blocking One/TBSTで1:2000〜4000に希釈)中で室温で1時間振とうした。その後、TBSTで洗浄後にケミルミワンSuper(ナカライテスク)を用いて蛍光・化学ルミネッセンスイメージングシステム(ケンブリッジ)により標的タンパク質を検出した。タンパク量はGlyceraldehyde 3−phosphate dehydrogenase(GADPH)に対する相対量比で定量化した。得られた値について、実験例1と同じ方法で統計処理を行った。一次抗体としてはanti−CRMP2 rpAb、anti−pCRMP2 rpAb(pthr509)、anti−NRP1 rpAb(Sigma)、anti−β−actin mAb(和光純薬工業)、anti−GAPDH mAb(コスモバイオ)を用いた。
結果を図6(A)に示す。図6(A)から、Sema3又はkCerの添加によりCRMP2のリン酸化が誘導されることが示され、また、Sema3A又はkCerの添加と同時にαNrp1を添加すると、リン酸化が減弱消失されることが示された。これらの結果より、kCerはSema3Aシグナル経路のNrp1に作用している可能性が示唆された。
実験例3
Nrp1遺伝子発現をsiRNAで抑制することによるkCerのCRMPリン酸化の作用点の検討について、図4に示すように、具体的には以下の方法で行った。すなわち、6−ウェルプレートに4×105cells/mL、1.5mLの血清含有DMEM培地に播種して24時間培養したPC12細胞を、100ng/mL NGFを含む培地に交換して24時間分化させた。そして、前述のようにsiNRP1、siNGCTRLで細胞を処理して、その細胞を無血清DMEM培地で24時間培養した。その後、50μM kCer、500ng/mL Sema3Aをそれぞれ含む無血清DMEM培地に置換して24時間培養した。培養後、実験例2の方法と同様にして、細胞タンパク質を溶解して回収し、ウエスタンブロットを行った。
結果を図6(B)に示す。siNRP1で細胞を処理することによりNrp1タンパクの発現がウエスタンブロットメンブレン上から減弱消失した(図6(B)、レーン3)。また、siNRP1処理細胞ではSema3A又はkCerで誘導されるCRMP2のリン酸化も減弱消失した(図6(B)、レーン5、7)。図6(B)に示した結果より、kCerの作用はNrp1と直接に作用することで活性を有することが示唆された。
実験例4
あらかじめ0.01%ポリL−リジンで表面処理した12−ウェル培養プレートにPC12細胞を7.5x104cells/mLで、血清を含む1mLのDMEM培地とともに播種して一晩培養した。培養後に無血清のDMEMで接着細胞を洗浄した後に、100ng/mL 神経成長因子(NGF,2.5S マウス由来,Alomone Labs)と、0.025%BSAと、Sema3A(0、0.01、0.1、1又は10μM)と、kCer(0、0.01、5又は25μM)をそれぞれ所定量含むDMEM培地1mLに置換して3日間培養した。各群4ウェルとした。培養後、実験例1と同様の方法で、細胞を染色し、蛍光顕微鏡で画像を得て、神経突起伸長活性を算出し、統計処理した。結果を図7に示す。
また、培養後の細胞について、実験例2と同様の方法で、PBSで洗浄した後、細胞タンパク質を溶解して回収し、CRMP2のリン酸化活性を測定した。統計処理は、実験例1と同様の方法で行った。結果を図8に示す。
図7によれば、低濃度0.01μM Sema3Aに対してはkCerは突起伸張阻害の相乗作用を示したが、高濃度10μM Sema3Aに対してはkCerはSema3Aの突起伸張阻害を減弱する相反的作用を示した。図8によれば、Sema3Aの用量依存的な作用に対して、kCerはSema3Aシグナル伝達経路の下流にあるCRMP2のリン酸化作用においても高濃度10μM Sema3Aでは逆にCRMP2のリン酸化作用を減弱する相反作用を示した。図7、図8に示した結果より、kCerはSema3Aのパーシャルアゴニストとして、高濃度Sema3Aに対してはアンタゴニスト作用を示すことが認められた。
実験例5
kCerのSema3AレセプターNrp1との結合作用について、以下の方法で測定した。
<細胞膜レセプターNrp1との結合の測定>
Sema3Aの細胞膜レセプターであるNrp1への結合を調べるために、ヒト組み換え体Sema3A(rhSEMA3A、和光純薬工業)を、フルオレセイン標識キットNH2(同仁化学)を用いて、標識したFITC−Sema3Aを調製した。FITC−Sema3Aのタンパク量に対する相対蛍光単位は32,100 RFU/pmolであった。ポリL−リジンで表面処理した96−ウェル蛍光測定用培養マイクロプレートに1×105個のPC12細胞を播種して一晩37℃で培養後、1%BSA/10mM HEPES緩衝液で洗浄し、その後、終濃度0.375μMから10μMのFITC−Sema3Aを含む1%BSA/10mM HEPES緩衝液で置換して、22℃で90分間インキュベートした。その後に、細胞を1%BSA/10mM HEPES緩衝液で洗浄して、各ウェルの蛍光量を、蛍光ウェルリーダー(AppliskanTM,ThermoFisher)を用いて、励起波長490nm、蛍光波長525nmで測定した。
kCer及びその他のセラミドのリガンド置換効果の測定には10μM FITC−Sema3Aと、kCer、C16セラミド(C16Cer、N−Palmitoyl−D−erythro−sphingosine)、C18セラミド(C18Cer、N−stearoyl−D−erythro−sphingosine)、C24セラミド(C24Cer、N−Lingoceroyl−D−erythro−sphingosine)、又はC2セラミド(C2Cer、N−Acetoyl−D−erythro−sphingosine)を、0.05、0.1875、0.375、0.75、1.0、1.25、2.5、5.0、10、20、50、又は100μMを含む1%BSA/10mM HEPES緩衝液で,ウェルプレートの細胞を上記と同様に処理した後に、蛍光量を測定した。
また、10μM FITC−Sema3Aと、10μM Sema3A又は100μM kCerで細胞を処理した場合について、共焦点レーザ走査型蛍光顕微鏡(Fluoview FV10i,EX490,EM525,オリンパス)で観察した。コントロールとして、10μM FITC−Sema3Aのみで細胞を処理した場合を観察した。
結果を図9(A)〜図9(B)、表1及び表2に示す。図9(A)は、蛍光画像であり、図9(B)は、各セラミドの量に対する細胞に結合した蛍光量を示すグラフである。10μM FITC(フルオレセイン標識)−Sema3Aを用いたPC12細胞との結合を調べた結果、図9(A)のコントロールのような結合が蛍光画像で観察された。10μM FITC−Sema3Aに加えて、10μM Sema3A又は100μM kCerで細胞を処理すると、コントロールに比べてFITC−Sema3Aの蛍光量の顕著な減弱が起きた。蛍光の減弱はFITC−Sema3Aが細胞膜レセプターであるNrp1に結合する際の置換効果と考えられた。さらに、FITC−Sema3A(0.375、0.75、1.25、2.5、5.0、10μM)で細胞を処理することで、FITC−Sema3Aの細胞への用量依存的な結合が観察されたが、2.5μM以上では結合量に飽和が見られた。FITC−Sema3A用量曲線からスキャッチャードプロットすることにより下記の表1の結合定数が算出された。
Figure 2021054860
次に、10μM Sema3Aの細胞への結合に対してSema3A、kCer、C16Cer、C18Cer、C24Cer、又はC2Cerの置換効果を調べた結果、Sema3AとkCerは用量依存的置換効果を示したが、C16Cer、C18Cer、C24Cer、又はC2Cerにはそのような効果は認められなかった(図9(B))。Sema3AとkCerの置換効果によるIC50を表2に示した。Cheng−Prusoffの変換式に従って算出した置換効果のKiは3μMであった。
Figure 2021054860
図9に示した結果より、kCerはSema3AのNrp1結合に対して置換効果を示すことが明らかになった。
実験例6
<バイオレイヤー干渉法によるNrp1との分子間結合の測定>
0.3% fatty acid−free BSA/DPBS緩衝液により可溶化したkCer、C16Cer、C18Cer、C24Cer、又はC2Cerをアナライトとして、recombinant mouse neuropilin−1(Nrp, C−terminal 6−His tag,R&D System)をリガンドとして、Bliz(プライムテック)を用いてバイオレイヤー干渉法による分子間結合測定を行った。0.6、0.3、又は0.15μM Sema3A(rhSEMA3A、和光純薬工業)をアナライトとして結合相と解離相からcurve−fittingで求めた反応速度定数(結合速度Ka,解離速度Kd)及び解離定数KDを、kCer、C16Cer、C18Cer、C24Cer、又はC2Cerと比較検討した。リガンドの固相化にはNi−NTAセンサー(14820214、プライムテック)を用いた。結果を表3及び図10に示す。
Figure 2021054860
図10から、Rmaxでは弱いながらkCerが直接にNrp1に結合できることが示された。その結合定数は表3に示したようにkCerのKD値が5.057μMであり、Sema3Aの3.6倍であった。他方の反応速度定数で比較を行うと、Kaは6712.0と5826.3であり大きな差異はなかったが、Kdが4.3倍であり、kCerのKD値は解離速度の寄与が大きいと考えられた。他方、C16CerとC18CerではRmaxがSema3Aの1/50以下であり、KDの算出は不可能(N/A)であった。しかしながら、結合相と解離相から各々算出された反応速度定数で比較検討したところ、Kaが105以上であり、Kaも0.1と比較的大きかったので、その結合は非特異的な吸着によって起きており解離も容易であるということが考察された。図10の結果より、kCerはNrp1分子に対して結合する活性を持っていることが確認された。
実験例7
<示差走査熱量測定による熱安定性の測定>
kCer、kGlcCer、C24Cer、C18Cer、C16Cer、C8Cer(C8セラミド、N−Octanoyl−D−erythro−sphingosine)、C2Cerを、0.3%BSAを含むDPBS緩衝液で100μMに調製した。測定はMicroCal VP−Capillary DSC (Malvern)で行い、20℃から90℃まで走査速度0.2℃/分で昇温した。測定結果はDPBS緩衝液の測定値を差し引くことで補正を行った。測定チャートを用いてMicro cal : Capillary DSC Automated Analysisにより解析し、融解温度(Tm)とエントロピー変化量(ΔH)を求めた。
Figure 2021054860
kCer、BSA、kGlcCerの昇温比熱変化の結果を図11に示し、各サンプルの解析結果を表4に示した。kCerはBSA単独に比べTmの温度が上昇していた。すなわちBSAにkCerが結合したことで、BSAの安定性が増したことを示している。また、ΔHがBSAやkGlcCerがkCerより減少していることから、BSAと複合体を形成する際にグルコースが外れることで熱力学的パラメータに違いが出来ると考えられる。脂肪酸側鎖長の異なるセラミドと比較するとTmとΔHともに、炭化水素の短いC8セラミドやC2セラミドにより近い傾向を示した(表4)。この結果から、KCerはC16CerやC18Cerとは一部異なる形でBSAと複合体を形成し、Nrp1への特異的な結合活性を示すと考えられる。

Claims (4)

  1. 植物由来セラミドを含むニューロピリン機能調節剤。
  2. 植物由来セラミドがコンニャク由来である、請求項1に記載のニューロピリン機能調節剤。
  3. セマフォリン3Aのアンタゴニストとして使用される、請求項1又は2に記載のニューロピリン機能調節剤。
  4. セマフォリン3Aのアゴニストとして使用される、請求項1又は2に記載のニューロピリン機能調節剤。
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