本発明に係る燃料電池スタックについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の図において、同一又は同様の機能及び効果を奏する構成要素に対しては同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する場合がある。
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る燃料電池スタック10は、複数の発電セル12が水平方向(矢印A1、A2方向)又は重力方向(矢印C1、C2方向)に積層された積層体14を備える。この燃料電池スタック10は、例えば、図示しない燃料電池電気自動車等の燃料電池車両に搭載される。
図2に示すように、以下では、積層体14の積層方向一端側(矢印A1側)に配設される発電セル12を第1端部発電セル12aともいう。また、積層体14の積層方向他端側(矢印A2側)に配設される発電セル12を第2端部発電セル12bともいう。本実施形態では、第1端部発電セル12a及び第2端部発電セル12bのそれぞれは、積層体14の積層方向の最端部に配設されている。
積層体14の第1端部発電セル12aには、ダミー構造15aが積層されている。ダミー構造15aは、中間ダミーセル16及び第1端部ダミーセル18を有する。すなわち、第1端部発電セル12aには、中間ダミーセル16及び第1端部ダミーセル18が外方に向かってこの順に積層される。
また、積層体14の第2端部発電セル12bには、ダミー構造15bが積層されている。ダミー構造15bは、第2端部ダミーセル20を有する。すなわち、第2端部発電セル12bには、第2端部ダミーセル20が積層される。なお、中間ダミーセル16、第1端部ダミーセル18及び第2端部ダミーセル20を総称して、「ダミーセル」ともいう。
積層体14の第1端部ダミーセル18よりも外方側(矢印A1側)には、ターミナルプレート26a、インシュレータ28a及びエンドプレート30aがこの順に積層される。積層体14の第2端部ダミーセル20よりも外方側(矢印A2側)には、ターミナルプレート26b、インシュレータ28b及びエンドプレート30bがこの順に積層される。
図1に示すように、矩形状からなるエンドプレート30a、30bの各辺間には、連結バー(不図示)が配置される。各連結バーは、両端をエンドプレート30a、30bの内面にボルト(不図示)等を介して固定され、複数の積層された発電セル12に積層方向(矢印A1、A2方向)の締め付け荷重を付与する。なお、不図示ではあるが、燃料電池スタック10では、エンドプレート30a、30bを端板とする筐体を備え、前記筐体内に積層体14等を収容するように構成してもよい。
図3に示すように、発電セル12は、第1セパレータ32と、第1電解質膜・電極構造体34aと、第2セパレータ36と、第2電解質膜・電極構造体34bと、第3セパレータ38とがこの順に積層されて構成される。第1セパレータ32、第2セパレータ36及び第3セパレータ38(これらを総称して「セパレータ」ともいう)のそれぞれは、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板等により構成され、平面が矩形状であるとともに、プレス加工等により、断面凹凸形状に成形される。
図3に示すように、セパレータ32、36、38の長辺方向の一端側(矢印B1側)の縁部には、それぞれ矢印A1、A2方向(積層方向)に個別に連通して、酸化剤ガス入口連通孔40及び燃料ガス出口連通孔42が設けられる。酸化剤ガス入口連通孔40には、例えば、酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給される。燃料ガス出口連通孔42には、例えば、水素含有ガス等の燃料ガスが排出される。これらの酸化剤ガス及び燃料ガスを総称して反応ガスともいう。
セパレータ32、36、38の長辺方向の他端側(矢印B2側)の縁部には、それぞれ矢印A1、A2方向に個別に連通して、燃料ガスが供給される燃料ガス入口連通孔44及び酸化剤ガスが排出される酸化剤ガス出口連通孔46が設けられる。なお、これらの酸化剤ガス入口連通孔40、燃料ガス出口連通孔42、燃料ガス入口連通孔44、酸化剤ガス出口連通孔46を総称して「反応ガス連通孔」ともいう。
セパレータ32、36、38の短辺方向(矢印C1、C2方向)両端縁部の矢印B1側には、矢印A1、A2方向に個別に連通して、冷却媒体が供給される一対の冷却媒体入口連通孔48がそれぞれ設けられる。冷却媒体としては、純水やエチレングリコール、オイル等を用いることができる。セパレータ32、36、38の短辺方向の両端縁部の矢印B2側には、矢印A1、A2方向に個別に連通して、冷却媒体が排出される一対の冷却媒体出口連通孔50がそれぞれ設けられる。
図3に示すように、第1セパレータ32の矢印A1側の面32aには、冷却媒体入口連通孔48と冷却媒体出口連通孔50とを連通する冷却媒体流路52が形成される。冷却媒体入口連通孔48と冷却媒体流路52との間には、複数本の入口連結溝54aが形成される。冷却媒体流路52と冷却媒体出口連通孔50との間には、複数本の出口連結溝54bが形成される。また、第1セパレータ32の面32aには、冷却媒体入口連通孔48、冷却媒体出口連通孔50、冷却媒体流路52、入口連結溝54a、出口連結溝54bを一体に囲んで、その内部を面方向の外部とシールするシール部材55が設けられている。
図4に示すように、第1セパレータ32の矢印A2側の面32bには、酸化剤ガス入口連通孔40と酸化剤ガス出口連通孔46とに連通する酸化剤ガス流路56が形成される。酸化剤ガス流路56は、互いに並列する複数本の波状流路溝(又は直線状流路溝)からなる。
酸化剤ガス流路56の入口側端部には、発電領域外に位置して酸化剤ガス入口バッファ部58が連なる一方、該酸化剤ガス流路56の出口側端部には、発電領域外に位置して酸化剤ガス出口バッファ部60が連なる。
酸化剤ガス入口バッファ部58と酸化剤ガス入口連通孔40との間には、複数本の入口連結溝62aが形成される。酸化剤ガス出口バッファ部60と酸化剤ガス出口連通孔46との間には、複数本の出口連結溝62bが形成される。第1セパレータ32の面32bには、酸化剤ガス入口連通孔40、酸化剤ガス出口連通孔46、酸化剤ガス流路56、酸化剤ガス入口バッファ部58、酸化剤ガス出口バッファ部60、入口連結溝62a、出口連結溝62bを一体に囲んで、その内部を面方向の外部とシールするシール部材63が設けられている。第1セパレータ32では、酸化剤ガス流路56の裏面形状が、冷却媒体流路52の一部を構成する(図2及び図3参照)。
図3に示すように、第2セパレータ36の矢印A1側の面36aには、燃料ガス入口連通孔44と燃料ガス出口連通孔42とに連通する燃料ガス流路66が形成される。燃料ガス流路66は、互いに並列する複数本の波状流路溝(又は直線状流路溝)からなる。
燃料ガス流路66の入口側端部には、発電領域外に位置して燃料ガス入口バッファ部68が連なる一方、該燃料ガス流路66の出口側端部には、発電領域外に位置して燃料ガス出口バッファ部70が連なる。燃料ガス入口バッファ部68と燃料ガス入口連通孔44との間には、第2セパレータ36を厚さ方向に貫通する複数個の燃料ガス供給孔部72aが設けられる。燃料ガス出口バッファ部70と燃料ガス出口連通孔42との間には、第2セパレータ36を厚さ方向に貫通する複数個の燃料ガス排出孔部72bが設けられる。
第2セパレータ36の面36aには、燃料ガス流路66、燃料ガス入口バッファ部68、燃料ガス出口バッファ部70、燃料ガス供給孔部72a、燃料ガス排出孔部72bを一体に囲んで、その内部を面方向の外部とシールするシール部材73が設けられている。
図5に示すように、第2セパレータ36の矢印A2側の面36bは、シール部材71で囲われた燃料ガス供給孔部72a及び燃料ガス排出孔部72bが設けられていることを除いて、第1セパレータ32の矢印A2側の面32b(図4参照)と同様に構成することができる。すなわち、第2セパレータ36の面36bには、酸化剤ガス入口連通孔40と酸化剤ガス出口連通孔46とに連通する酸化剤ガス流路56が設けられる。また、第2セパレータ36の面36bには、酸化剤ガス入口バッファ部58と、酸化剤ガス出口バッファ部60と、入口連結溝62aと、出口連結溝62bと、シール部材63とが形成される。
第2セパレータ36の面36b側では、燃料ガス供給孔部72a及び燃料ガス排出孔部72bの各々と、酸化剤ガス入口バッファ部58及び酸化剤ガス出口バッファ部60とがシール部材63、71によって遮断されている。
図3に示すように、第3セパレータ38の矢印A1側の面38aは、第2セパレータ36の矢印A1側の面36aと同様に構成することができる。すなわち、第3セパレータ38の面38aには、燃料ガス入口連通孔44と燃料ガス出口連通孔42とに連通する燃料ガス流路66が設けられる。また、第3セパレータ38の面38aには、燃料ガス入口バッファ部68と、燃料ガス出口バッファ部70と、燃料ガス供給孔部72aと、燃料ガス排出孔部72bと、シール部材73とが形成される。
図6に示すように、第3セパレータ38の矢印A2側の面38bは、シール部材71で囲われた燃料ガス供給孔部72a及び燃料ガス排出孔部72bが設けられていることを除いて、第1セパレータ32の矢印A1側の面32a(図3参照)と同様に構成することができる。すなわち、第3セパレータ38の面38bには、冷却媒体流路52と、入口連結溝54aと、出口連結溝54bと、シール部材55とが設けられる。第3セパレータ38の面38b側では、燃料ガス供給孔部72a及び燃料ガス排出孔部72bの各々と、冷却媒体流路52、入口連結溝54a及び出口連結溝54b等とがシール部材55、71によって遮断されている。
図2に示すように、積層体14で互いに隣接する発電セル12において、第3セパレータ38の矢印A2側の面38bの冷却媒体流路52と、第1セパレータ32の矢印A1側の面32aの冷却媒体流路52とが対向して、その内部を冷却媒体が流通可能となっている。すなわち、積層体14では隣接する発電セル12同士の間に冷却媒体が流通する冷却媒体流路52が設けられる。
図3、図5及び図6に示すように、第2セパレータ36及び第3セパレータ38では、上記のようにシール部材71、73が設けられるため、燃料ガス入口連通孔44を矢印A1側から矢印A2側へと流通する燃料ガスは、燃料ガス供給孔部72aを、矢印A2側から矢印A1側へと流通して燃料ガス入口バッファ部68及び燃料ガス流路66へ流入する。また、燃料ガス流路66を流通して燃料ガス出口バッファ部70に流入した燃料ガスは、燃料ガス排出孔部72bを矢印A1側から矢印A2側へと流通した後、燃料ガス出口連通孔42を矢印A2側から矢印A1側へと流通する。各セパレータ32、36、38の両面には、該セパレータ32、36、38の外周端縁部を周回する不図示の弾性体からなるシール部材がそれぞれ一体成形される。
図3に示すように、第1電解質膜・電極構造体34a及び第2電解質膜・電極構造体34bは、互いに略同様に構成される。これらの第1電解質膜・電極構造体34a及び第2電解質膜・電極構造体34bを総称して「電解質膜・電極構造体」ともいう。電解質膜・電極構造体34a、34bは、その外周に樹脂枠部材82が接合されている。図2に示すように、電解質膜・電極構造体34a、34bは、例えば、水分を含んだパーフルオロスルホン酸の薄膜である固体高分子電解質膜(以下、単に電解質膜ともいう)84を備える。なお、電解質膜84は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質を使用してもよい。電解質膜84は、カソード電極86及びアノード電極88により挟持される。
カソード電極86は、電解質膜84の一端側(矢印A1側)の面に接合される不図示の第1電極触媒層と、該第1電極触媒層に積層される第1ガス拡散層92とを有する。アノード電極88は、電解質膜84の他端側(矢印A2側)の面に接合される不図示の第2電極触媒層と、該第2電極触媒層に積層される第2ガス拡散層96とを有する。
第1電極触媒層は、例えば、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が、イオン導電性高分子バインダとともに第1ガス拡散層92の表面に一様に塗布して形成される。第2電極触媒層は、例えば、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が、イオン導電性高分子バインダとともに第2ガス拡散層96の表面に一様に塗布して形成される。第1ガス拡散層92及び第2ガス拡散層96は、カーボンペーパ又はカーボンクロス等の導電性多孔質体から形成される。
樹脂枠部材82は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPA(ポリフタルアミド)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルフォン)、LCP(リキッドクリスタルポリマー)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、m−PPE(変性ポリフェニレンエーテル樹脂)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)又は変性ポリオレフィン等の樹脂材から構成される。この樹脂材は、例えば、フィルム等により構成してもよい。
図3に示すように、樹脂枠部材82は枠形状であり、酸化剤ガス入口連通孔40を含む連通孔40、42、44、46、48、50からなる連通孔群の内側に配置され、各連通孔40、42、44、46、48、50が形成されない。樹脂枠部材82のカソード電極86側(矢印A1側)の面には、酸化剤ガス入口バッファ部102a及び酸化剤ガス出口バッファ部102bが設けられる。不図示ではあるが、樹脂枠部材82のアノード電極88側(矢印A2側)の面には、燃料ガス入口バッファ部及び燃料ガス出口バッファ部が設けられる。
図2に示すように、積層体14の第1端部発電セル12aの積層方向外側(矢印A1側)に隣接する中間ダミーセル16は、矢印A1側から矢印A2側に向かって、第1ダミーセパレータ105と、第1ダミー導電体106aと、第2ダミーセパレータ108と、第2ダミー導電体106bと、第3ダミーセパレータ130とが、この順に積層されて形成される。第1ダミー導電体106a及び第2ダミー導電体106bは、互いに略同様に構成される。これらの第1ダミー導電体106a及び第2ダミー導電体106bを総称して「ダミー導電体」ともいう。
図2〜図4に示すように、第1ダミーセパレータ105(図2、図4)は、第1セパレータ32と同様に構成されている。すなわち、第1ダミーセパレータ105の一端側(矢印A1側)の面105aには冷却媒体流路52(図3参照)が設けられる。また、図2に示すように、第1ダミーセパレータ105の他端側(矢印A2側)の面105bと第1ダミー導電体106aとの間には、酸化剤ガス流路56に対応する第1空間109が設けられる。
図4に示すように、第1空間109は、入口連結溝62a及び出口連結溝62b内に形成された連通路125を介して、酸化剤ガス入口連通孔40と酸化剤ガス出口連通孔46とに連通する。このため、酸化剤ガス流路56と同様に酸化剤ガスが流通可能となっている。
図2に示すように、ダミー導電体106a、106bは、平面寸法(表面積/外形寸法)がそれぞれ異なる3枚の導電性多孔質体107を積層して構成される。3枚の導電性多孔質体107は、例えば、互いに同じ材料からなるとともに、第1ガス拡散層92又は第2ガス拡散層96を構成する導電性多孔質体と同一の材料を用いて構成することができる。なお、ダミー導電体106a、106bは、上記の構成に限定されるものではなく、導電性を示す部材であればよく、該部材の個数も特に限定されない。
ダミー導電体106a、106bの外周には、不図示のダミー樹脂枠部材が一体化されている。ダミー樹脂枠部材は、図3に示す発電セル12の樹脂枠部材82と略同様に構成することができる。
図7に示すように、第2ダミーセパレータ108は、燃料ガス供給孔部72a(図3参照)に代えて入口遮断部122aが設けられ、燃料ガス排出孔部72b(図3参照)に代えて出口遮断部122bが設けられていることを除いて第2セパレータ36(図3参照)と同様に構成されている。
つまり、第2ダミーセパレータ108の他端側(矢印A2側)の面108b(図2参照)は、図5のシール部材71で囲われた燃料ガス供給孔部72a及び燃料ガス排出孔部72bが設けられていないことを除いて、第2セパレータ36の矢印A2側の面36bと同様に構成される。このため、第2ダミーセパレータ108の面108bは、図4に示す第1セパレータ32の他端側(矢印A2側)の面32bと同様に構成される。
図2に示すように、第2ダミーセパレータ108の他端側(矢印A2側)の面108bと第2ダミー導電体106bとの間には、酸化剤ガス流路56に対応する第1空間109が設けられる。図2及び図7に示すように、第2ダミーセパレータ108の一端側(矢印A1側)の面108aと第1ダミー導電体106aとの間には、燃料ガス流路66に対応する第2空間126が設けられる。
第2空間126は、入口遮断部122aにより、燃料ガス入口連通孔44と遮断されるとともに、出口遮断部122bにより、燃料ガス出口連通孔42とが遮断される。つまり、入口遮断部122a及び出口遮断部122b(以下、これらを総称して遮断部ともいう)により、第2空間126に燃料ガスが流れることが規制されるため、該第2空間126の内部には断熱空間が形成される。なお、入口遮断部122a及び出口遮断部122bの何れか一方のみを設けることによって、第2空間126に燃料ガスが流れることを規制し、断熱空間を形成してもよい。
図7に示すように、第2ダミーセパレータ108の一端側(矢印A1側)の面108aには、第2空間126を囲んで、その内部を面方向の外部とシールするシール部材127が設けられている。
図2の第3ダミーセパレータ130の他端側(矢印A2側)の面130bは、図3に示す第1セパレータ32の一端側(矢印A1側)の面32aと略鏡像の関係に構成される。また、図7に示すように、第3ダミーセパレータ130の一端側(矢印A1側)の面130aは、第2ダミーセパレータ108の一端側(矢印A1側)の面108aと同様に構成される。
図2に示すように、第3ダミーセパレータ130の他端側(矢印A2側)の面130bと第1端部発電セル12aの第1セパレータ32との間に冷却媒体流路52が設けられる。また、第3ダミーセパレータ130の一端側(矢印A1側)の面130aと第2ダミー導電体106bとの間に、燃料ガス流路66に対応する第2空間126が設けられる。
第1端部ダミーセル18は、中間ダミーセル16の積層方向外側(矢印A1側)に隣接して設けられる。すなわち、第1端部発電セル12aと第1端部ダミーセル18との間に中間ダミーセル16が配設される。第1端部ダミーセル18は、矢印A1側から矢印A2側に向かって、第2ダミーセパレータ108と、第2ダミー導電体106bと、第3ダミーセパレータ130とがこの順に積層されて形成される。
このため、第1端部ダミーセル18では、積層方向外側(矢印A1側)に配設された第2ダミーセパレータ108の矢印A2側の面108bと第2ダミー導電体106bとの間に第1空間109が設けられる。第2ダミーセパレータ108の矢印A1側の面108aと後述する断熱体142との間に第2空間126が設けられる。
また、第1端部ダミーセル18では、積層方向内側(矢印A2側)に配設された第3ダミーセパレータ130の矢印A1側の面130aと第2ダミー導電体106bとの間に第2空間126が設けられる。第3ダミーセパレータ130の矢印A2側の面130bと、中間ダミーセル16の第1ダミーセパレータ105との間に冷却媒体流路52が設けられる。
積層体14の第2端部発電セル12bの積層方向外側(矢印A2側)に隣接する第2端部ダミーセル20は、矢印A1側から矢印A2側に向かって、第1ダミーセパレータ105と、第1ダミー導電体106aと、第2ダミーセパレータ108とが、この順に積層されて形成される。
このため、第2端部ダミーセル20では、積層方向内側(矢印A1側)に配設された第1ダミーセパレータ105の矢印A1側の面105aと、第2端部発電セル12bの第3セパレータ38との間に冷却媒体流路52が設けられる。第1ダミーセパレータ105の矢印A2側の面105bと第1ダミー導電体106aとの間に第1空間109が設けられる。
また、第2端部ダミーセル20では、積層方向外側(矢印A2側)に配設された第2ダミーセパレータ108の矢印A1側の面108aと第1ダミー導電体106aとの間に第2空間126が設けられる。この第2ダミーセパレータ108の矢印A2側の面108bと断熱体142との間に第1空間109が設けられる。
なお、第1端部ダミーセル18及び第2端部ダミーセル20を構成可能なセパレータは、上記に限定されるものではない。例えば、第1端部ダミーセル18は、矢印A1側から矢印A2側に向かって、第2ダミーセパレータ108、第1ダミー導電体106a、第1ダミーセパレータ105の順に積層して形成されてもよい。第2端部ダミーセル20は、矢印A1側から矢印A2側に向かって、第3ダミーセパレータ130、第2ダミー導電体106b、第2ダミーセパレータ108の順に積層して形成されてもよい。
ターミナルプレート26a、26bは、導電性を有する材料から構成され、例えば、銅、アルミニウム又はステンレススチール等の金属で構成される。図1に示すように、ターミナルプレート26a、26bの略中央には、積層方向外方に延在する端子部132a、132bがそれぞれ設けられる。
端子部132aは、絶縁性筒体134aに挿入されてインシュレータ28aの孔部136a及びエンドプレート30aの孔部138aを貫通し、該エンドプレート30aの外部に突出する。端子部132bは、絶縁性筒体134bに挿入されてインシュレータ28bの孔部136b及びエンドプレート30bの孔部138bを貫通し、該エンドプレート30bの外部に突出する。
インシュレータ28a、28bは、絶縁性材料、例えば、ポリカーボネート(PC)やフェノール樹脂等で形成される。インシュレータ28a、28bの中央部には、積層体14に向かって開口される凹部140a、140bが形成され、該凹部140a、140bは、孔部136a、136bに連通する。
インシュレータ28a及びエンドプレート30aには、反応ガス連通孔が設けられる。一方、インシュレータ28b及びエンドプレート30bには、冷却媒体入口連通孔48及び冷却媒体出口連通孔50が設けられる。
凹部140aには、ターミナルプレート26a及び断熱体142が収容され、凹部140bには、ターミナルプレート26b及び断熱体142が収容される。断熱体142は、一対の導電性を有する断熱プレート144間に導電性を有する断熱部材146が挟持されて構成される。断熱プレート144は、例えば、平坦な形状を有する多孔性カーボンプレートで構成されるとともに、断熱部材146は、断面波板状の金属製のプレートで構成される。
なお、断熱プレート144は、断熱部材146と同一の材料で構成してもよい。また、断熱体142は、1枚の断熱プレート144と1枚の断熱部材146とを備えてもよい。さらに、ターミナルプレート26a、26bと、インシュレータ28a、28bの凹部140a、140bの底部との間に、樹脂製スペーサ(不図示)を介装してもよい。
基本的には、上記のように構成される燃料電池スタック10の動作について説明する。先ず、図1に示すように、矢印A1側に配設されたエンドプレート30aの酸化剤ガス入口連通孔40に酸化剤ガスが供給され、燃料ガス入口連通孔44に燃料ガスが供給され、矢印A2側に配設されたエンドプレート30bの冷却媒体入口連通孔48に冷却媒体が供給される。
酸化剤ガス入口連通孔40に供給された酸化剤ガスは、図4及び図5に示すように、入口連結溝62aの内部に形成された連通路125を介して酸化剤ガス流路56及び第1空間109に流入する。これによって、酸化剤ガスが、矢印B1、B2方向に移動しながら、各電解質膜・電極構造体34a、34bのカソード電極86と、ダミー導電体106a、106bに供給される。
図3に示すように、燃料ガス入口連通孔44に供給された燃料ガスは、燃料ガス供給孔部72aを介して、第2セパレータ36及び第3セパレータ38の燃料ガス流路66にそれぞれ流入する。これによって、燃料ガスが、矢印B1、B2方向に移動しながら、各電解質膜・電極構造体34a、34bのアノード電極88に供給される。一方、図7に示すように、第2ダミーセパレータ108及び第3ダミーセパレータ130の第2空間126は、入口遮断部122aによって燃料ガスの流入が遮断される。
上記のようにして反応ガスが供給された電解質膜・電極構造体34a、34bでは、各カソード電極86に供給される酸化剤ガスと、各アノード電極88に供給される燃料ガスとが、第1電極触媒層及び第2電極触媒層内で電気化学反応により消費されて発電が行われる。
次いで、各カソード電極86に供給されて一部が消費された酸化剤ガスは、図4及び図5に示すように、酸化剤ガス流路56及び第1空間109のそれぞれから出口連結溝62bの内部に形成された連通路125を介して酸化剤ガス出口連通孔46に排出される。そして、図1のエンドプレート30aの酸化剤ガス出口連通孔46を介して燃料電池スタック10の外部に排出される。
同様に、各アノード電極88に供給されて一部が消費された燃料ガスは、図3に示すように、燃料ガス流路66から燃料ガス排出孔部72bの内部を介して燃料ガス出口連通孔42に排出される。そして、図1のエンドプレート30aの燃料ガス出口連通孔42を介して燃料電池スタック10の外部に排出される。
この際、図7に示すように、第2空間126は、出口遮断部122bによって燃料ガス出口連通孔42とも遮断されている。このため、第2空間126には、上記の通り、入口遮断部122aによって燃料ガスの流入が遮断されることに加えて、出口遮断部122bによって燃料ガス出口連通孔42から燃料ガスが進入することも回避されている。その結果、第2空間126は、遮断部122a、122bによって燃料ガスの流通が遮断され、断熱空間として機能する。
各冷却媒体入口連通孔48に供給された冷却媒体は、図2に示すように、互いに隣接する発電セル12の第1セパレータ32と第3セパレータ38との間の冷却媒体流路52に導入される。また、第1端部発電セル12aの第1セパレータ32と中間ダミーセル16の第3ダミーセパレータ130との間の冷却媒体流路52、第2端部発電セル12bの第3セパレータ38と第2端部ダミーセル20の第1ダミーセパレータ105との間の冷却媒体流路52、及び中間ダミーセル16の第1ダミーセパレータ105と第1端部ダミーセル18の第3ダミーセパレータ130との間の冷却媒体流路52のそれぞれに導入される。つまり、第1端部発電セル12a及び第2端部発電セル12b(これらを総称して端部発電セルともいう)と、該端部発電セル12a、12bに隣接するダミー構造15a、15bとの間には冷却媒体流路52が設けられ、該冷却媒体流路52に冷却媒体が流通する。
図3及び図6に示すように、矢印C1側の各冷却媒体入口連通孔48から導入された冷却媒体と、矢印C2側の冷却媒体入口連通孔48から導入された冷却媒体は、互いに接近するように矢印C1、C2方向に沿って流通してから、矢印B2側に向かって流通し、電解質膜・電極構造体34a、34bを冷却しながら、互いに離間するように矢印C1、C2方向に沿って流通し、各冷却媒体出口連通孔50から排出される。
上記の通り、本実施形態に係る燃料電池スタック10では、端部発電セル12a、12bと、該端部発電セル12a、12bに隣接するダミー構造15a、15bとの間に冷却媒体が流通する冷却媒体流路52が設けられる。例えば、氷点下等の低温環境下で燃料電池スタック10を起動(低温始動)する場合、発電に伴い冷却媒体の温度は端部発電セル12a、12bよりも高くなる。なお、燃料電池スタック10の外部で不図示のヒータ等により冷却媒体を加熱することで、該冷却媒体の温度を端部発電セル12a、12bの温度より高くしてもよい。このため、上記のように冷却媒体流路52を設けて、該冷却媒体流路52を流通する冷却媒体の熱を端部発電セル12a、12bに伝え易くすることで、低温環境下であっても端部発電セル12a、12bを速やかに昇温させることが可能になる。ひいては、燃料電池スタック10の低温始動性を向上させることができる。
また、燃料電池スタック10の各ダミーセル16、18、20は、発電セル12の電解質膜・電極構造体34a、34bに代えてダミー導電体106a、106bを備える。つまり、ダミーセル16、18、20は、電解質膜84や第1電極触媒層及び第2電極触媒層を備えていないため、発電を行うことがなく、発電による生成水も生じない。これによって、ダミーセル16、18、20自体が断熱層として機能するとともに、ダミーセル16、18、20で結露が生じることを抑制できる。
このようなダミーセル16、18、20を有するダミー構造15a、15bを、積層体14の積層方向の少なくとも一方の端部側に積層することで、積層体14の端部側の断熱性を高めることができる。このため、積層体14の端部側の温度が中央側に比して低温となることを抑制でき、低温環境下においても、積層体14の端部側で生成水等が凍結すること等による電圧低下の発生を抑制することができる。その結果、燃料電池スタック10の発電安定性を向上させることができる。
さらに、上記のようにダミー構造15a、15bにより積層体14の端部側の断熱性が高められることによっても、積層体14の端部を含めた全体を有効に昇温させることが可能となり、低温始動性を向上させることができる。以上から、本実施形態に係る燃料電池スタック10によれば、低温始動性を向上させることができるとともに、発電安定性を向上させることができる。
上記の実施形態に係る燃料電池スタック10のダミー構造15a、15bは、積層方向の外側端部に配設される端部ダミーセル18、20を有し、端部ダミーセル18、20は、ダミー導電体106a、106bが2枚のダミーセパレータ105、108、130で挟持されて形成されることとした。この場合、簡素な構成の端部ダミーセル18、20により、積層体14の端部側の断熱性を高めることができる。
上記の実施形態に係る燃料電池スタック10のダミー構造15a、15bは、端部発電セル12a、12bと端部ダミーセル18、20との間に配設される中間ダミーセル16を有し、中間ダミーセル16は、第1ダミー導電体106aと、第2ダミー導電体106bと、第1ダミーセパレータ105と、第2ダミーセパレータ108と、第3ダミーセパレータ130とを有し、第1ダミーセパレータ105、第1ダミー導電体106a、第2ダミーセパレータ108、第2ダミー導電体106b、第3ダミーセパレータ130が順に積層されて形成されることとした。
このような中間ダミーセル16は、発電セル12と同様の積層構造を有するため、簡単に製造することができ、しかも、複数のダミー導電体106a、106bやダミーセパレータ105、108、130を備える分、積層体14の端部側の断熱性を効果的に高めることができる。
上記の実施形態に係る燃料電池スタック10では、端部ダミーセル18、20の積層方向の外側端部に配設されるダミーセパレータ108は、第2ダミーセパレータ108と同様に構成されることとした。この場合、端部ダミーセル18、20の製造工程を簡素化しつつ、隣接する端部発電セル12a、12b又は中間ダミーセル16との間に容易に冷却媒体流路52を設けることが可能になる。
上記の実施形態に係る燃料電池スタック10では、端部ダミーセル18、20と中間ダミーセル16との間には、冷却媒体が流通する冷却媒体流路52が設けられることとした。この場合、冷却媒体流路52を流通する冷却媒体の熱によって、低温環境下であっても端部発電セル12a、12bを速やかに昇温させることができ、また、積層体14の端部側の断熱性を高めることができる。これによって、低温始動性及び発電安定性を一層良好に向上させることができる。
上記の実施形態に係る燃料電池スタック10では、積層体14の積層方向の両方の端部にダミー構造15a、15bがそれぞれ積層されることとした。この場合、積層体14の両端部側の断熱性を高めることができるため、低温始動性及び発電安定性を一層効果的に向上させることができる。
ところで、燃料電池スタック10では、酸化剤ガス入口連通孔40には、加湿された状態の酸化剤ガスが供給される。この酸化剤ガス中の水が結露して、液体の結露水が生じ、該結露水が発電セル12に飛び込むと、燃料ガス及び酸化剤ガスの拡散性が低下する場合がある。
上記の実施形態に係る燃料電池スタック10では、積層体14の積層方向端部にダミーセル16、18、20が備えられ、これらのダミーセル16、18、20には、酸化剤ガスが流通する第1空間109が設けられている。このため、酸化剤ガスに結露水が含まれていた場合であっても、該結露水を各ダミーセル16、18、20によって捕集することができるため、発電セル12に結露水が飛び込むことを抑制できる。特に、積層体14の酸化剤ガスが供給される一端側(矢印A1側)に、他端側(矢印A2側)よりも多数のダミーセル16、18を配設することで、発電セル12に結露水が進入することをより効果的に抑制することができる。その結果、燃料電池スタック10の発電安定性のさらなる向上を図ることが可能になる。
一方、上記の実施形態では、各ダミーセル16、18、20には、遮断部122a、122bにより、燃料ガスが流通しない第2空間126(断熱空間)が設けられることで、各ダミーセル16、18、20よる断熱性をさらに高めることができるとともに、発電のための電気化学反応に寄与せずに燃料電池スタック10から排出される燃料ガスを減らすことができる。
本発明は、上記した実施形態に特に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
上記の実施形態では、ダミー構造15aは、第1端部ダミーセル18及び中間ダミーセル16を有し、ダミー構造15bは、第2端部ダミーセル20を備えることとした。しかしながら、特にこれには限定されない。例えば、変形例に係る燃料電池スタック10では、ダミー構造15a、15bは、上記の中間ダミーセル16と同様に構成されたダミーセルを少なくとも1個備え、上記の第1端部ダミーセル18及び第2端部ダミーセル20を備えていなくてもよい。
また、燃料電池スタック10は、積層体14の積層方向の少なくとも一端側にダミー構造15a、15bを備えていればよく、各ダミー構造15a、15bが有するダミーセル16、18、20の個数も特に限定されるものではない。また、ダミーセル16、18、20を構成するダミー導電体106a、106bやダミーセパレータ105、108、130の個数や構成等も特に限定されるものではない。ダミーセル16、18、20は発電を行うことなく、隣接する発電セル12との間に冷却媒体流路52を形成可能に構成されればよい。