最初に、図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係る掘削機としてのショベル100について説明する。図1はショベル100の側面図であり、図2はショベル100の上面図である。
本実施形態では、ショベル100の下部走行体1は被駆動体としてのクローラ1Cを含む。クローラ1Cは、下部走行体1に搭載されている走行用油圧モータ2Mによって駆動される。但し、走行用油圧モータ2Mは、電動アクチュエータとしての走行用電動発電機であってもよい。具体的には、クローラ1Cは左クローラ1CL及び右クローラ1CRを含む。左クローラ1CLは左走行用油圧モータ2MLによって駆動され、右クローラ1CRは右走行用油圧モータ2MRによって駆動される。下部走行体1は、クローラ1Cによって駆動されるため、被駆動体として機能する。
下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されている。被駆動体としての旋回機構2は、上部旋回体3に搭載されている旋回用油圧モータ2Aによって駆動される。但し、旋回用油圧モータ2Aは、電動アクチュエータとしての旋回用電動発電機であってもよい。上部旋回体3は、旋回機構2によって駆動されるため、被駆動体として機能する。
上部旋回体3には被駆動体としてのブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端には被駆動体としてのアーム5が取り付けられ、アーム5の先端に被駆動体及びエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5及びバケット6は、アタッチメントの一例である掘削アタッチメントを構成する。ブーム4はブームシリンダ7で駆動され、アーム5はアームシリンダ8で駆動され、バケット6はバケットシリンダ9で駆動される。
ブーム4にはブーム角度センサS1が取り付けられ、アーム5にはアーム角度センサS2が取り付けられ、バケット6にはバケット角度センサS3が取り付けられている。
ブーム角度センサS1はブーム4の回動角度を検出する。本実施形態では、ブーム角度センサS1は加速度センサであり、上部旋回体3に対するブーム4の回動角度であるブーム角度を検出できる。ブーム角度は、例えば、ブーム4を最も下げたときに最小角度となり、ブーム4を上げるにつれて大きくなる。
アーム角度センサS2はアーム5の回動角度を検出する。本実施形態では、アーム角度センサS2は加速度センサであり、ブーム4に対するアーム5の回動角度であるアーム角度を検出できる。アーム角度は、例えば、アーム5を最も閉じたときに最小角度となり、アーム5を開くにつれて大きくなる。
バケット角度センサS3はバケット6の回動角度を検出する。本実施形態では、バケット角度センサS3は加速度センサであり、アーム5に対するバケット6の回動角度であるバケット角度を検出できる。バケット角度は、例えば、バケット6を最も閉じたときに最小角度となり、バケット6を開くにつれて大きくなる。
ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2及びバケット角度センサS3はそれぞれ、可変抵抗器を利用したポテンショメータ、対応する油圧シリンダのストローク量を検出するストロークセンサ、連結ピン回りの回動角度を検出するロータリエンコーダ、ジャイロセンサ、加速度センサとジャイロセンサの組み合わせ等であってもよい。
上部旋回体3には、運転室としてのキャビン10が設けられ、且つ、エンジン11等の動力源が搭載されている。また、上部旋回体3には、コントローラ30、物体検知装置70、撮像装置80、向き検出装置85、機体傾斜センサS4、旋回角速度センサS5等が取り付けられている。キャビン10の内部には、操作装置26等が設けられている。なお、本書では、便宜上、上部旋回体3における、ブーム4が取り付けられている側を前方とし、カウンタウェイトが取り付けられている側を後方とする。
コントローラ30は、ショベル100を制御するための制御装置である。本実施形態では、コントローラ30は、CPU、RAM、NVRAM、ROM等を備えたコンピュータで構成されている。そして、コントローラ30は、各機能要素に対応するプログラムをROMから読み出してRAMにロードし、対応する処理をCPUに実行させる。
物体検知装置70は、ショベル100の周囲に存在する物体を検知するように構成されている。また、物体検知装置70は、物体検知装置70又はショベル100から認識された物体までの距離を算出するように構成されていてもよい。物体は、例えば、人、動物、車両、建設機械、建造物、又は穴等である。物体検知装置70は、例えば、超音波センサ、ミリ波レーダ、ステレオカメラ、LIDAR、距離画像センサ、又は赤外線センサ等である。本実施形態では、物体検知装置70は、キャビン10の上面前端に取り付けられたLIDARである前方センサ70F、上部旋回体3の上面後端に取り付けられたLIDARである後方センサ70B、上部旋回体3の上面左端に取り付けられたLIDARである左方センサ70L、及び、上部旋回体3の上面右端に取り付けられたLIDARである右方センサ70Rを含む。
物体検知装置70は、ショベル100の周囲に設定された所定領域内の所定物体を検知するように構成されていてもよい。例えば、人と人以外の物体とを区別できるように構成されていてもよい。
撮像装置80は、ショベル100の周囲を撮像するように構成されている。本実施形態では、撮像装置80は、上部旋回体3の上面後端に取り付けられた後方カメラ80B、上部旋回体3の上面左端に取り付けられた左方カメラ80L、及び、上部旋回体3の上面右端に取り付けられた右方カメラ80Rを含む。撮像装置80は、前方カメラを含んでいてもよい。
後方カメラ80Bは後方センサ70Bに隣接して配置され、左方カメラ80Lは左方センサ70Lに隣接して配置され、且つ、右方カメラ80Rは右方センサ70Rに隣接して配置されている。前方カメラは、前方センサ70Fに隣接して配置されていてもよい。
撮像装置80が撮像した画像は、キャビン10内に設置されている表示装置DSに表示される。撮像装置80は、俯瞰画像等の視点変換画像を表示装置DSに表示できるように構成されていてもよい。俯瞰画像は、例えば、後方カメラ80B、左方カメラ80L及び右方カメラ80Rのそれぞれが出力する画像を合成して生成される。
撮像装置80は、物体検知装置として機能してもよい。この場合、物体検知装置70は省略されてもよい。
この構成により、ショベル100は、物体検知装置70が検知した物体の画像を表示装置DSに表示できる。そのため、ショベル100の操作者は、被駆動体の動作が制限或いは禁止された場合、表示装置DSに表示されている画像を見ることで、その原因となった物体が何であるかをすぐに確認できる。
向き検出装置85は、上部旋回体3の向きと下部走行体1の向きとの相対的な関係に関する情報(以下、「向きに関する情報」とする。)を検出するように構成されている。例えば、向き検出装置85は、下部走行体1に取り付けられた地磁気センサと上部旋回体3に取り付けられた地磁気センサの組み合わせで構成されていてもよい。或いは、向き検出装置85は、下部走行体1に取り付けられたGNSS受信機と上部旋回体3に取り付けられたGNSS受信機の組み合わせで構成されていてもよい。旋回用電動発電機で上部旋回体3が旋回駆動される構成では、向き検出装置85は、レゾルバで構成されていてもよい。向き検出装置85は、例えば、下部走行体1と上部旋回体3との間の相対回転を実現する旋回機構2に関連して設けられるセンタージョイントに配置されていてもよい。
機体傾斜センサS4は、所定の平面に対するショベル100の傾斜を検出する。本実施形態では、機体傾斜センサS4は、水平面に関する上部旋回体3の前後軸の傾斜角及び左右軸の傾斜角を検出する加速度センサである。加速度センサとジャイロセンサの組み合わせで構成されていてもよい。上部旋回体3の前後軸及び左右軸は、例えば、互いに直交してショベル100の旋回軸上の一点であるショベル中心点を通る。
旋回角速度センサS5は、上部旋回体3の旋回角速度を検出する。本実施形態では、ジャイロセンサである。レゾルバ、ロータリエンコーダ等であってもよい。旋回角速度センサS5は、旋回速度を検出してもよい。旋回速度は、旋回角速度から算出されてもよい。
以下では、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4及び旋回角速度センサS5の任意の組み合わせは、集合的に姿勢センサとも称される。
次に、図3を参照し、ショベル100に搭載される基本システムについて説明する。図3は、ショベル100に搭載される基本システムの構成例を示す。図3において、機械的動力伝達ラインは二重線、作動油ラインは太実線、パイロットラインは破線、電力ラインは細実線、電気制御ラインは一点鎖線でそれぞれ示されている。
基本システムは、主に、エンジン11、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブユニット17、操作装置26、操作センサ29、コントローラ30、比例弁31、警報装置49、操作具駆動装置50、物体検知装置70、エンジンコントロールユニット(ECU74)、エンジン回転数調整ダイヤル75、及び撮像装置80等を含む。
エンジン11は、負荷の増減にかかわらずエンジン回転数を一定に維持するアイソクロナス制御を採用したディーゼルエンジンである。エンジン11における燃料噴射量、燃料噴射タイミング、ブースト圧等は、ECU74により制御される。エンジン11は油圧ポンプとしてのメインポンプ14及びパイロットポンプ15のそれぞれに接続されている。メインポンプ14は作動油ラインを介してコントロールバルブユニット17に接続されている。
コントロールバルブユニット17は、ショベル100の油圧系の制御を行う油圧制御装置である。コントロールバルブユニット17は、左走行用油圧モータ2ML、右走行用油圧モータ2MR、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、旋回用油圧モータ2A等の油圧アクチュエータに接続されている。具体的には、コントロールバルブユニット17は、各油圧アクチュエータに対応する複数のスプール弁を含む。各スプール弁は、PCポートの開口面積及びCTポートの開口面積を増減できるように、パイロット圧に応じて変位可能に構成されている。PCポートは、メインポンプ14と油圧アクチュエータとを連通させるポートである。CTポートは、油圧アクチュエータと作動油タンクとを連通させるポートである。
操作装置26は、操作者がアクチュエータの操作のために用いる装置である。アクチュエータは、油圧アクチュエータ及び電動アクチュエータの少なくとも一方を含む。本実施形態では、操作装置26は、電気式パイロット回路を備えた電気式操作装置である。電気式操作装置における電気式操作レバーのレバー操作量(レバー操作角度)は、電気信号としてコントローラ30へ入力される。油圧アクチュエータのそれぞれに対応する制御弁のパイロットポートとパイロットポンプ15との間には電磁弁が配置されている。電磁弁は、コントローラ30からの電気信号に応じて動作するように構成されている。この構成により、電気式操作レバーを用いた手動操作が行われると、コントローラ30は、レバー操作量に対応する電気信号によって電磁弁を制御してパイロット圧を増減させることで各制御弁を移動させることができる。操作装置26は、例えば、左操作レバー、右操作レバー及び走行操作装置を含む。走行操作装置は、例えば、走行レバー及び走行ペダルを含む。なお、各制御弁は電磁スプール弁で構成されていてもよい。この場合、電磁スプール弁は、電気式操作レバーのレバー操作量に対応するコントローラ30からの電気信号に応じて動作する。
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出する。本実施形態では、吐出圧センサ28は、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
操作センサ29は、操作者による操作装置26の操作の内容を検出するように構成されている。本実施形態では、操作センサ29は、回転角度センサであり、アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量を、操作具に取り付けられた回転軸の回転角度の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作具は、例えば、レバー又はペダル等である。操作装置26の操作内容は、回転角度センサ以外の他のセンサを用いて検出されてもよい。
比例弁31は、パイロットポンプ15とコントロールバルブユニット17に含まれる各制御弁とを接続するパイロットラインに配置され、各パイロットラインの流路面積を変更できるように構成されている。本実施形態では、比例弁31は、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作するように構成されている。そのため、コントローラ30は、操作者による操作装置26の操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31を介し、コントロールバルブユニット17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給し、各パイロットポートに所望のパイロット圧を作用させることができる。
警報装置49は、ショベル100の作業に携わる人の注意を喚起できるように構成されている。警報装置49は、例えば、室内警報装置及び室外警報装置の組み合わせで構成されていてもよい。室内警報装置は、キャビン10内にいるショベル100の操作者の注意を喚起できるように構成されている。室内警報装置は、例えば、キャビン10内に設けられた音出力装置AD、振動発生装置及び発光装置の少なくとも1つを含む。室内警報装置は、表示装置DSであってもよい。室外警報装置は、ショベル100の周囲で作業する作業者の注意を喚起できるように構成されている。室外警報装置は、例えば、キャビン10の外に設けられた音出力装置AD及び発光装置の少なくとも1つを含む。室外警報装置としての音出力装置ADは、例えば、上部旋回体3の底面に取り付けられている走行アラーム装置であってもよい。室外警報装置は、上部旋回体3上に設けられる発光装置であってもよい。但し、室外警報装置は省略されてもよい。警報装置49は、例えば、物体検知装置70が物体を検知した場合に、ショベル100の作業に携わる人にその旨を報知してもよい。
操作具駆動装置50は、操作装置26を構成している操作具を動かすことができるように構成されている。操作具は、例えば、レバー又はペダル等である。操作具駆動装置50は、コントローラ30からの制御指令に応じて操作具を動かすように構成されている。本実施形態では、操作具駆動装置50は、トルクモータであり、操作者の力によらずに操作具を動かすことができるように構成されている。例えば、操作具駆動装置50は、後述の自律制御によってブーム4が自動的に動いているときに、あたかも右操作レバーが操作者によって操作されているかのように、ブーム4の動きに対応させて右操作レバーを動かすことができる。この場合、コントローラ30は、ブームシリンダ7に関する制御弁のパイロットポートに作用するパイロット圧に基づき、操作具駆動装置50に向けて出力する制御指令を生成する。このパイロット圧は、ブーム4を自動的に動かすためにコントローラ30が比例弁31を動かすことによって生成されたものであり、図示しないパイロット圧センサによって検出される。これは、このパイロット圧が生成されるように操作者が右操作レバーを手動で操作することにより、この自律制御によって実現されるブーム4の動きと同じ動きを実現できることを意味する。なお、コントローラ30は、ブームシリンダ7に関する制御弁としてのスプール弁の変位量に基づき、操作具駆動装置50に向けて出力する制御指令を生成してもよい。この変位は、例えば、スプール変位センサによって検出されてもよい。
ECU74は、冷却水温等、エンジン11の状態に関するデータをコントローラ30に向けて出力する。メインポンプ14のレギュレータ13は、斜板傾転角に関するデータをコントローラ30に向けて出力する。吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧に関するデータをコントローラ30に向けて出力する。作動油タンクとメインポンプ14との間の管路に設けられた油温センサ14cは、その管路を流れる作動油の温度に関するデータをコントローラ30に向けて出力する。操作センサ29は、操作装置26が操作されたときに生成されるパイロット圧に関するデータをコントローラ30に向けて出力する。コントローラ30は一時記憶部(メモリ)にこれらのデータを蓄積しておき、必要なときに表示装置DSに向けて出力できる。
エンジン回転数調整ダイヤル75は、エンジン11の回転数を調整するためのダイヤルである。エンジン回転数調整ダイヤル75は、エンジン回転数の設定状態に関するデータをコントローラ30に向けて出力する。エンジン回転数調整ダイヤル75は、SPモード、Hモード、Aモード及びアイドリングモードの4段階でエンジン回転数を切り換えできるように構成されている。SPモードは、作業量を優先したい場合に選択される回転数モードであり、最も高いエンジン回転数を利用する。Hモードは、作業量と燃費を両立させたい場合に選択される回転数モードであり、二番目に高いエンジン回転数を利用する。Aモードは、燃費を優先させながら低騒音でショベル100を稼働させたい場合に選択される回転数モードであり、三番目に高いエンジン回転数を利用する。アイドリングモードは、エンジン11をアイドリング状態にしたい場合に選択される回転数モードであり、最も低いエンジン回転数を利用する。エンジン11は、エンジン回転数調整ダイヤル75で設定された回転数モードに対応するエンジン回転数で一定となるように制御される。
表示装置DSは、制御部DSa、画像表示部DS1、及び、入力部としてのスイッチパネルDS2を有する。制御部DSaは、画像表示部DS1に表示される画像を制御できるように構成されている。本実施形態では、制御部DSaは、CPU、RAM、NVRAM、ROM等を備えたコンピュータで構成されている。この場合、制御部DSaは、各機能要素に対応するプログラムをROMから読み出してRAMにロードし、対応する処理をCPUに実行させる。但し、各機能要素は、ハードウェアで構成されていてもよく、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせで構成されていてもよい。また、画像表示部DS1に表示される画像は、コントローラ30又は撮像装置80によって制御されてもよい。
スイッチパネルDS2は、ハードウェアスイッチを含むパネルである。スイッチパネルDS2は、タッチパネルであってもよい。表示装置DSは、蓄電池BTから電力の供給を受けて動作する。蓄電池BTは、例えば、オルタネータ11aで発電した電気で充電される。蓄電池BTの電力は、コントローラ30等に供給されてもよい。エンジン11のスタータ11bは、例えば、蓄電池BTからの電力で駆動され、エンジン11を始動する。
レバーボタンLBは、操作装置26に設けられたボタンである。本実施形態では、レバーボタンLBは、操作装置26としての操作レバーの先端に設けられたボタンである。ショベル100の操作者は、操作レバーを操作しながらレバーボタンLBを操作できる。操作者は、例えば、操作レバーを手で握った状態でレバーボタンLBを親指で押すことができる。
次に、図4を参照し、ショベル100に搭載される油圧システムの構成例について説明する。図4は、ショベル100に搭載される油圧システムの構成例を示す図である。図4は、機械的動力伝達系、作動油ライン、パイロットライン、及び電気制御系を、それぞれ二重線、実線、破線、及び一点鎖線で示している。
ショベル100の油圧システムは、主に、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブユニット17、操作装置26、吐出圧センサ28、操作センサ29、及びコントローラ30等を含む。
図4において、油圧システムは、エンジン11によって駆動されるメインポンプ14から、センターバイパス管路40又はパラレル管路42を経て作動油タンクまで作動油を循環させている。
エンジン11は、ショベル100の駆動源である。本実施形態では、エンジン11は、例えば、所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15のそれぞれの入力軸に連結されている。
メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブユニット17に供給する。本実施形態では、メインポンプ14は、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御する。本実施形態では、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによってメインポンプ14の吐出量を制御する。
パイロットポンプ15は、パイロットラインを介して操作装置26を含む油圧制御機器に作動油を供給するように構成されている。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。但し、パイロットポンプ15は、省略されてもよい。この場合、パイロットポンプ15が担っていた機能は、メインポンプ14によって実現されてもよい。すなわち、メインポンプ14は、コントロールバルブユニット17に作動油を供給する機能とは別に、絞り等により作動油の圧力を低下させた後で操作装置26等に作動油を供給する機能を備えていてもよい。
コントロールバルブユニット17は、ショベル100における油圧システムを制御する油圧制御装置である。本実施形態では、コントロールバルブユニット17は、制御弁171〜176を含む。制御弁175は制御弁175L及び制御弁175Rを含み、制御弁176は制御弁176L及び制御弁1756を含む。コントロールバルブユニット17は、制御弁171〜176を通じ、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給できる。制御弁171〜176は、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び、油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、左走行用油圧モータ2ML、右走行用油圧モータ2MR及び旋回用油圧モータ2Aを含む。
メインポンプ14は、左メインポンプ14L及び右メインポンプ14Rを含む。そして、左メインポンプ14Lは、左センターバイパス管路40L又は左パラレル管路42Lを経て作動油タンクまで作動油を循環させ、右メインポンプ14Rは、右センターバイパス管路40R又は右パラレル管路42Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。
左センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブユニット17内に配置された制御弁171、173、175L及び176Lを通る作動油ラインである。右センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブユニット17内に配置された制御弁172、174、175R及び176Rを通る作動油ラインである。
制御弁171は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を左走行用油圧モータ2MLへ供給し、且つ、左走行用油圧モータ2MLが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁172は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油を右走行用油圧モータ2MRへ供給し、且つ、右走行用油圧モータ2MRが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁173は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を旋回用油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回用油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁174は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁175Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。制御弁175Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁176Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁176Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
左パラレル管路42Lは、左センターバイパス管路40Lに並行する作動油ラインである。左パラレル管路42Lは、制御弁171、173、175Lの何れかによって左センターバイパス管路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。右パラレル管路42Rは、右センターバイパス管路40Rに並行する作動油ラインである。右パラレル管路42Rは、制御弁172、174、175Rの何れかによって右センターバイパス管路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
レギュレータ13は、左レギュレータ13L及び右レギュレータ13Rを含む。左レギュレータ13Lは、左メインポンプ14Lの吐出圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。具体的には、左レギュレータ13Lは、例えば、左メインポンプ14Lの吐出圧の増大に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節して吐出量を減少させる。右レギュレータ13Rについても同様である。吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収馬力がエンジン11の出力馬力を超えないようにするためである。
操作装置26は、左操作レバー26L、右操作レバー26R及び走行レバー26Dを含む。走行レバー26Dは、左走行レバー26DL及び右走行レバー26DRを含む。
左操作レバー26Lは、旋回操作とアーム5の操作に用いられる。左操作レバー26Lは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁176のパイロットポートに導入させる。また、左右方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁173のパイロットポートに導入させる。
具体的には、左操作レバー26Lは、アーム閉じ方向に操作された場合に、制御弁176Lの右パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Rの左パイロットポートに作動油を導入させる。また、左操作レバー26Lは、アーム開き方向に操作された場合には、制御弁176Lの左パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Rの右パイロットポートに作動油を導入させる。また、左操作レバー26Lは、左旋回方向に操作された場合に、制御弁173の左パイロットポートに作動油を導入させ、右旋回方向に操作された場合に、制御弁173の右パイロットポートに作動油を導入させる。
右操作レバー26Rは、ブーム4の操作とバケット6の操作に用いられる。右操作レバー26Rは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁175のパイロットポートに導入させる。また、左右方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁174のパイロットポートに導入させる。
具体的には、右操作レバー26Rは、ブーム下げ方向に操作された場合に、制御弁175Rの左パイロットポートに作動油を導入させる。また、右操作レバー26Rは、ブーム上げ方向に操作された場合には、制御弁175Lの右パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁175Rの左パイロットポートに作動油を導入させる。また、右操作レバー26Rは、バケット閉じ方向に操作された場合に、制御弁174の右パイロットポートに作動油を導入させ、バケット開き方向に操作された場合に、制御弁174の左パイロットポートに作動油を導入させる。
走行レバー26Dは、クローラ1Cの操作に用いられる。具体的には、左走行レバー26DLは、左クローラ1CLの操作に用いられる。左走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。左走行レバー26DLは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁171のパイロットポートに導入させる。右走行レバー26DRは、右クローラ1CRの操作に用いられる。右走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。右走行レバー26DRは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁172のパイロットポートに導入させる。
吐出圧センサ28は、吐出圧センサ28L及び吐出圧センサ28Rを含む。吐出圧センサ28Lは、左メインポンプ14Lの吐出圧を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。吐出圧センサ28Rについても同様である。
操作センサ29は、操作センサ29LA、29LB、29RA、29RB、29DL、及び29DRを含む。操作センサ29LAは、操作者による左操作レバー26Lに対する前後方向への操作の内容を、左操作レバー26Lの第1回転軸(Y軸に平行な回転軸)回りの回動角度の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作内容は、例えば、レバー操作方向及びレバー操作量(レバー操作角度)等である。
同様に、操作センサ29LBは、操作者による左操作レバー26Lに対する左右方向への操作の内容を、左操作レバー26Lの第2回転軸(X軸に平行な回転軸)回りの回動角度の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29RAは、操作者による右操作レバー26Rに対する前後方向への操作の内容を、右操作レバー26Rの第1回転軸(Y軸に平行な回転軸)回りの回動角度の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29RBは、操作者による右操作レバー26Rに対する左右方向への操作の内容を、右操作レバー26Rの第2回転軸(X軸に平行な回転軸)回りの回動角度の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29DLは、操作者による左走行レバー26DLに対する前後方向への操作の内容を、左走行レバー26DLの回転軸回りの回動角度の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29DRは、操作者による右走行レバー26DRに対する前後方向への操作の内容を、右走行レバー26DRの回転軸回りの回動角度の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
コントローラ30は、操作センサ29の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。
ここで、絞り18と制御圧センサ19を用いたネガティブコントロール制御について説明する。絞り18は左絞り18L及び右絞り18Rを含み、制御圧センサ19は左制御圧センサ19L及び右制御圧センサ19Rを含む。
左センターバイパス管路40Lには、最も下流にある制御弁176Lと作動油タンクとの間に左絞り18Lが配置されている。そのため、左メインポンプ14Lが吐出した作動油の流れは、左絞り18Lで制限される。そして、左絞り18Lは、左レギュレータ13Lを制御するための制御圧を発生させる。左制御圧センサ19Lは、この制御圧を検出するためのセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。コントローラ30は、この制御圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。コントローラ30は、この制御圧が大きいほど左メインポンプ14Lの吐出量を減少させ、この制御圧が小さいほど左メインポンプ14Lの吐出量を増大させる。右メインポンプ14Rの吐出量も同様に制御される。
具体的には、図4で示されるようにショベル100における油圧アクチュエータが何れも操作されていない待機状態の場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、左センターバイパス管路40Lを通って左絞り18Lに至る。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を増大させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油が左センターバイパス管路40Lを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。一方、何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lに至る量を減少或いは消失させ、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を低下させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータの駆動を確かなものとする。なお、コントローラ30は、右メインポンプ14Rの吐出量も同様に制御する。
上述のような構成により、図4の油圧システムは、待機状態においては、メインポンプ14における無駄なエネルギ消費を抑制できる。無駄なエネルギ消費は、メインポンプ14が吐出する作動油がセンターバイパス管路40で発生させるポンピングロスを含む。また、図4の油圧システムは、油圧アクチュエータを作動させる場合には、メインポンプ14から必要十分な作動油を作動対象の油圧アクチュエータに確実に供給できる。
次に、図5A〜図5Dを参照し、コントローラ30がマシンコントロール機能によってアクチュエータを動作させるための構成について説明する。マシンコントロール機能は、操作者による操作装置26の手動操作によらずにアクチュエータを動作させる機能である。図5A〜図5Dは、操作システムの図である。具体的には、図5Aは、アームシリンダ8の操作に関する操作システムの図であり、図5Bは、ブームシリンダ7の操作に関する操作システムの図である。図5Cは、バケットシリンダ9の操作に関する操作システムの図であり、図5Dは、旋回用油圧モータ2Aの操作に関する操作システムの図である。図示しない走行用油圧モータ2Mの操作に関する操作システムも、同様の構成を有する。
図5A〜図5Dに示すように、操作システムは、操作センサ29、比例弁31、及び操作具駆動装置50を含む。操作センサ29は、操作センサ29LA、29LB、29RA、及び29RBを含み、比例弁31は、比例弁31AL〜31DL及び31AR〜31DRを含み、操作具駆動装置50は、レバー駆動装置50LA、50LB、50RA、及び50RBを含む。
この構成により、コントローラ30は、特定の操作装置26に対する手動操作が行われていない場合であっても、その特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータを自動的に動作させることができる。また、コントローラ30は、特定の操作装置26に対する手動操作が行われている場合であっても、その特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータの動作を強制的に停止させることができる。
例えば、図5Aに示すように、左操作レバー26Lは、アーム5を操作するために用いられる。具体的には、左操作レバー26Lは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、前後方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁176のパイロットポートに作用させる。より具体的には、操作センサ29LAは、左操作レバー26Lがアーム閉じ方向(後方向)に操作された場合に、左操作レバー26Lの第1回転軸回りの回動角度を、左操作レバー26Lのアーム閉じ方向へのレバー操作角度として検出し、その検出値をコントローラ30に対して出力する。コントローラ30は、左操作レバー26Lのアーム閉じ方向へのレバー操作角度に対応する電流指令を比例弁31ALに対して出力する。比例弁31ALは、その電流指令に応じたパイロット圧を制御弁176Lの右側パイロットポートと制御弁176Rの左側パイロットポートに作用させる。また、操作センサ29LAは、左操作レバー26Lがアーム開き方向(前方向)に操作された場合には、左操作レバー26Lの第1回転軸回りの回動角度を、左操作レバーのアーム開き方向へのレバー操作角度として検出し、その検出値をコントローラ30に対して出力する。コントローラ30は、その左操作レバーのアーム開き方向へのレバー操作角度に対応する電流指令を比例弁31ARに対して出力する。比例弁31ARは、その電流指令に応じたパイロット圧を制御弁176Lの左側パイロットポートと制御弁176Rの右側パイロットポートに作用させる。
左操作レバー26LにはスイッチNSが設けられている。本実施形態では、スイッチNSは、左操作レバー26Lの先端に設けられた押しボタンスイッチである。操作者は、例えば、スイッチNSを左手の親指で押しながら左手で左操作レバー26Lを操作できる。スイッチNSは、右操作レバー26Rに設けられていてもよく、キャビン10内の他の位置に設けられていてもよい。
操作センサ29LAは、操作者による左操作レバー26Lに対する前後方向への操作の内容を、左操作レバー26Lの第1回転軸回りの回動角度の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
比例弁31ALは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31ALを介して制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31ARは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31ARを介して制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31AL、31ARは、制御弁176L、176Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
この構成により、コントローラ30は、操作者によるアーム閉じ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31ALを介し、制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに供給できる。すなわち、アーム5を閉じることができる。また、コントローラ30は、操作者によるアーム開き操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31ARを介し、制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに供給できる。すなわち、アーム5を開くことができる。
レバー駆動装置50LAは、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。例えば、レバー駆動装置50LAは、操作者によるアーム閉じ操作が行われていないときにアーム5が自動的に閉じられた場合に、コントローラ30からの制御指令に応じ、右操作レバー26Rをアーム閉じ方向に自動的に傾ける。或いは、レバー駆動装置50LAは、操作者によるアーム開き操作が行われていないときにアーム5が自動的に開かれた場合に、コントローラ30からの制御指令に応じ、右操作レバー26Rをアーム開き方向に自動的に傾ける。
この構成により、コントローラ30は、現在のアーム5の動きを手動操作によって実現するために必要な右操作レバー26Rのレバー操作角度を操作者に提示できる。そのため、操作者は、アーム5の動きを不安定にすることなく、アーム5の自動操作を手動操作へ移行させることができる。
コントローラ30は、操作者によるアーム閉じ操作が行われている場合であっても、必要に応じて、比例弁31ARを制御し、制御弁176の閉じ側のパイロットポートの反対側にある、制御弁176の開き側のパイロットポート(制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポート)に作用するパイロット圧を増大させ、制御弁176を強制的に中立弁位置に戻すことで、アーム5の閉じ動作を強制的に停止させてもよい。
この構成により、コントローラ30は、操作者によるアーム閉じ操作が行われている場合であっても、必要に応じて、制御弁176の閉じ側のパイロットポート(制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポート)に作用するパイロット圧を減圧し、アーム5の閉じ動作を強制的に停止させることができる。操作者によるアーム開き操作が行われているときにアーム5の開き動作を強制的に停止させる場合についても同様である。
また、以下の図5B〜図5Dを参照しながらの説明を省略するが、操作者によるブーム上げ操作又はブーム下げ操作が行われている場合にブーム4の動作を強制的に停止させる場合、操作者によるバケット閉じ操作又はバケット開き操作が行われている場合にバケット6の動作を強制的に停止させる場合、及び、操作者による旋回操作が行われている場合に上部旋回体3の旋回動作を強制的に停止させる場合等についても同様である。また、操作者による走行操作が行われている場合に下部走行体1の走行動作を強制的に停止させる場合等についても同様である。
また、図5Bに示すように、右操作レバー26Rは、ブーム4を操作するために用いられる。具体的には、右操作レバー26Rは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、前後方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁175のパイロットポートに作用させる。より具体的には、操作センサ29RAは、右操作レバー26Rがブーム上げ方向(後方向)に操作された場合に、右操作レバー26Rの第1回転軸回りの回動角度を、右操作レバー26Rのブーム上げ方向へのレバー操作角度として検出し、その検出値をコントローラ30に対して出力する。コントローラ30は、右操作レバー26Rのブーム上げ方向へのレバー操作角度に対応する電流指令を比例弁31BLに対して出力する。比例弁31BLは、その電流指令に応じたパイロット圧を制御弁175Lの右側パイロットポートと制御弁175Rの左側パイロットポートに作用させる。また、操作センサ29RAは、右操作レバー26Rがブーム下げ方向(前方向)に操作された場合には、右操作レバー26Rの第1回転軸回りの回動角度を、右操作レバー26Rのブーム下げ方向へのレバー操作角度として検出し、その検出値をコントローラ30に対して出力する。コントローラ30は、右操作レバー26Rのブーム下げ方向へのレバー操作角度に対応する電流指令を比例弁31BRに対して出力する。比例弁31BRは、その電流指令に応じたパイロット圧を制御弁175Rの右側パイロットポートに作用させる。
操作センサ29RAは、操作者による右操作レバー26Rに対する前後方向への操作の内容を、右操作レバー26Rの第1回転軸回りの回動角度の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
比例弁31BLは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31BLを介して制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31BRは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31BRを介して制御弁175Lの左側パイロットポート及び制御弁175Rの右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31BL、31BRは、制御弁175L、175Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
この構成により、コントローラ30は、操作者によるブーム上げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31BLを介し、制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに供給できる。すなわち、ブーム4を上げることができる。また、コントローラ30は、操作者によるブーム下げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31BRを介し、制御弁175Rの右側パイロットポートに供給できる。すなわち、ブーム4を下げることができる。
また、図5Cに示すように、右操作レバー26Rは、バケット6を操作するためにも用いられる。具体的には、右操作レバー26Rは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、左右方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁174のパイロットポートに作用させる。より具体的には、操作センサ29RBは、右操作レバー26Rがバケット閉じ方向(左方向)に操作された場合に、右操作レバー26Rの第2回転軸回りの回動角度を、右操作レバー26Rのバケット閉じ方向へのレバー操作角度として検出し、その検出値をコントローラ30に対して出力する。コントローラ30は、右操作レバー26Rのバケット閉じ方向へのレバー操作角度に対応する電流指令を比例弁31CLに対して出力する。比例弁31CLは、その電流指令に応じたパイロット圧を制御弁174の左側パイロットポートに作用させる。また、操作センサ29RBは、右操作レバー26Rがバケット開き方向(右方向)に操作された場合には、右操作レバー26Rの第2回転軸回りの回動角度を、右操作レバー26Rのバケット開き方向へのレバー操作角度として検出し、その検出値をコントローラ30に対して出力する。コントローラ30は、右操作レバー26Rのバケット開き方向へのレバー操作角度に対応する電流指令を比例弁31CRに対して出力する。比例弁31CRは、その電流指令に応じたパイロット圧を制御弁174の右側パイロットポートに作用させる。
操作センサ29RBは、操作者による右操作レバー26Rに対する左右方向への操作の内容を、右操作レバー26Rの第2回転軸回りの回動角度の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
比例弁31CLは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31CLを介して制御弁174の左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31CRは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31CRを介して制御弁174の右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31CL、31CRは、制御弁174を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
この構成により、コントローラ30は、操作者によるバケット閉じ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31CLを介し、制御弁174の左側パイロットポートに供給できる。すなわち、バケット6を閉じることができる。また、コントローラ30は、操作者によるバケット開き操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31CRを介し、制御弁174の右側パイロットポートに供給できる。すなわち、バケット6を開くことができる。
また、図5Dに示すように、左操作レバー26Lは、旋回機構2を操作するためにも用いられる。具体的には、左操作レバー26Lは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、左右方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁173のパイロットポートに作用させる。より具体的には、操作センサ29LBは、左操作レバー26Lが左旋回方向(左方向)に操作された場合に、左操作レバー26Lの第2回転軸回りの回動角度を、左操作レバー26Lの左旋回方向へのレバー操作角度として検出し、その検出値をコントローラ30に対して出力する。コントローラ30は、左操作レバー26Lの左旋回方向へのレバー操作角度に対応する電流指令を比例弁31DLに対して出力する。比例弁31DLは、その電流指令に応じたパイロット圧を制御弁173の左側パイロットポートに作用させる。また、操作センサ29LBは、左操作レバー26Lが右旋回方向(右方向)に操作された場合には、左操作レバー26Lの第2回転軸回りの回動角度を、左操作レバー26Lの右旋回方向へのレバー操作角度として検出し、その検出値をコントローラ30に対して出力する。コントローラ30は、左操作レバー26Lの右旋回方向へのレバー操作角度に対応する電流指令を比例弁31DRに対して出力する。比例弁31DRは、その電流指令に応じたパイロット圧を制御弁173の右側パイロットポートに作用させる。
操作センサ29LBは、操作者による左操作レバー26Lに対する左右方向への操作の内容を、左操作レバー26Lの第2回転軸回りの回動角度の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
比例弁31DLは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31DLを介して制御弁173の左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31DRは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31DRを介して制御弁173の右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31DL、31DRは、制御弁173を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
この構成により、コントローラ30は、操作者による左旋回操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31DLを介し、制御弁173の左側パイロットポートに供給できる。すなわち、旋回機構2を左旋回させることができる。また、コントローラ30は、操作者による右旋回操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31DRを介し、制御弁173の右側パイロットポートに供給できる。すなわち、旋回機構2を右旋回させることができる。
ショベル100は、下部走行体1を自動的に前進・後進させる構成を備えていてもよい。この場合、左走行用油圧モータ2MLの操作に関する操作システム、及び、右走行用油圧モータ2MRの操作に関する操作システムは、ブームシリンダ7の操作に関する操作システム等と同じように構成されてもよい。
次に、図6を参照し、コントローラ30の機能について説明する。図6は、コントローラ30の機能ブロック図である。図6の例では、コントローラ30は、姿勢検出装置、操作装置26、物体検知装置70、向き検出装置85、情報入力装置72、測位装置73、及びスイッチNS等の少なくとも1つが出力する信号を受け、様々な演算を実行し、比例弁31、表示装置DS及び音出力装置AD等の少なくとも1つに制御指令を出力できるように構成されている。姿勢検出装置は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、及び旋回角速度センサS5を含む。コントローラ30は、位置算出部30A、軌道取得部30B、自律制御部30C、制御モード切換部30D、及び操作具駆動部30Eを機能要素として有する。各機能要素は、ハードウェアで構成されていてもよく、ソフトウェアで構成されていてもよい。
情報入力装置72は、ショベルの操作者がコントローラ30に対して情報を入力できるように構成されている。本実施形態では、情報入力装置72は、表示装置DSの画像表示部DS1に近接して設置されるスイッチパネルDS2である。但し、情報入力装置72は、キャビン10内に配置されているマイクロフォン等の音入力装置であってもよい。
測位装置73は、上部旋回体3の位置を測定するように構成されている。本実施形態では、測位装置73は、GNSS受信機であり、上部旋回体3の位置を検出し、検出値をコントローラ30に対して出力する。測位装置73は、GNSSコンパスであってもよい。この場合、測位装置73は、上部旋回体3の位置及び向きを検出できる。
位置算出部30Aは、測位対象の位置を算出するように構成されている。本実施形態では、位置算出部30Aは、アタッチメントの所定部位の基準座標系における座標点を算出する。所定部位は、例えば、バケット6の爪先、又は、バケット6の背面等である。基準座標系の原点は、例えば、旋回軸とショベル100の接地面との交点である。位置算出部30Aは、例えば、ブーム4、アーム5、及びバケット6のそれぞれの回動角度からバケット6の爪先の座標点を算出する。位置算出部30Aは、バケット6の爪先の中央の座標点だけでなく、バケット6の爪先の左端の座標点、及び、バケット6の爪先の右端の座標点等を算出してもよい。この場合、位置算出部30Aは、機体傾斜センサS4の出力を利用してもよい。また、位置算出部30Aは、バケット6の背面の中央の座標点、及び、バケット6の背面の後端の座標点等を算出してもよい。
軌道取得部30Bは、ショベル100を自動的に動作させるときにアタッチメントの所定部位が辿る軌道である目標軌道を取得するように構成されている。本実施形態では、軌道取得部30Bは、自律制御部30Cがショベル100を自動的に動作させるときに利用する目標軌道を取得する。具体的には、軌道取得部30Bは、不揮発性記憶装置に記憶されている目標施工面に関するデータに基づいて目標軌道を導き出す。
軌道取得部30Bは、物体検知装置70が認識したショベル100の周囲の地形に関する情報に基づいて目標軌道を導き出してもよい。或いは、軌道取得部30Bは、揮発性記憶装置に記憶されている姿勢検出装置の過去の出力からバケット6の爪先の過去の軌跡に関する情報を導き出し、その情報に基づいて目標軌道を導き出してもよい。或いは、軌道取得部30Bは、アタッチメントの所定部位の現在位置と目標施工面に関するデータとに基づいて目標軌道を導き出してもよい。
自律制御部30Cは、ショベル100を自動的に動作させるように構成されている。本実施形態では、自律制御部30Cは、所定の開始条件が満たされた場合に、軌道取得部30Bが取得した目標軌道に沿ってアタッチメントの所定部位を移動させるように構成されている。具体的には、自律制御部30Cは、スイッチNSが押されている状態で操作装置26が操作されたときに、所定部位が目標軌道に沿って移動するように、ショベル100を自動的に動作させる。
本実施形態では、自律制御部30Cは、アクチュエータを自動的に動作させることで操作者によるショベルの手動操作を支援するように構成されている。例えば、自律制御部30Cは、操作者がスイッチNSを押しながら手動でアーム閉じ操作を行っている場合に、目標軌道とバケット6の爪先の位置とが一致するようにブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の少なくとも1つを自動的に伸縮させてもよい。この場合、操作者は、例えば、左操作レバー26Lをアーム閉じ方向に操作するだけで、バケット6の爪先を目標軌道に一致させながら、アーム5を閉じることができる。この例では、主な操作対象であるアームシリンダ8は「主要アクチュエータ」と称される。また、主要アクチュエータの動きに応じて動く従動的な操作対象であるブームシリンダ7及びバケットシリンダ9は「従属アクチュエータ」と称される。
本実施形態では、自律制御部30Cは、比例弁31に電流指令を与えて各アクチュエータに対応する制御弁に作用するパイロット圧を個別に調整することで各アクチュエータを自動的に動作させることができる。例えば、右操作レバー26Rが操作されたか否かにかかわらず、ブームシリンダ7及びバケットシリンダ9の少なくとも1つを動作させることができる。
制御モード切換部30Dは、制御モードを切り換えることができるように構成されている。制御モードは、自律制御部30Cがショベル100を自動的に動作させるときにコントローラ30が利用可能なアクチュエータの制御方法であり、例えば、通常制御モード及び低速制御モードを含む。通常制御モードは、例えば、操作装置26の操作量に対する所定部位の移動速度が比較的大きくなるように設定された制御モードであり、低速制御モードは、例えば、操作装置26の操作量に対する所定部位の移動速度が比較的小さくなるように設定された制御モードである。制御モードは、アーム優先モード及びブーム優先モードを含んでいてもよい。
制御モードは何れも、スイッチNSが押された状態で操作装置26が操作されたときに利用される。例えば、アーム優先モードは、主要アクチュエータとしてアームシリンダ8が選択され、従属アクチュエータとしてブームシリンダ7及びバケットシリンダ9が選択された制御モードである。アーム優先モードでは、例えば、左操作レバー26Lがアーム閉じ方向に操作されると、コントローラ30は、左操作レバー26Lの操作量に応じた速度でアームシリンダ8を能動的に伸長させる。その上で、コントローラ30は、バケット6の爪先が目標軌道に沿って移動するように、ブームシリンダ7及びバケットシリンダ9の少なくとも1つを受動的に伸縮させる。ブーム優先モードは、主要アクチュエータとしてブームシリンダ7が選択され、従属アクチュエータとしてアームシリンダ8及びバケットシリンダ9が選択された制御モードである。ブーム優先モードでは、例えば、左操作レバー26Lがアーム閉じ方向に操作されると、コントローラ30は、左操作レバー26Lの操作量に応じた速度でブームシリンダ7を能動的に伸縮させる。その上で、コントローラ30は、バケット6の爪先が目標軌道に沿って移動するように、アームシリンダ8を受動的に伸長させ、必要に応じてバケットシリンダ9を受動的に伸縮させる。なお、制御モードは、バケット優先モードを含んでいてもよい。バケット優先モードは、主要アクチュエータとしてバケットシリンダ9が選択され、従属アクチュエータとしてブームシリンダ7及びアームシリンダ8が選択された制御モードである。バケット優先モードでは、例えば、左操作レバー26Lがアーム閉じ方向に操作されると、コントローラ30は、左操作レバー26Lの操作量に応じた速度でバケットシリンダ9を能動的に伸縮させる。その上で、コントローラ30は、バケット6の爪先が目標軌道に沿って移動するように、アームシリンダ8を受動的に伸長させ、必要に応じてブームシリンダ7を受動的に伸縮させる。
制御モード切換部30Dは、所定条件が満たされた場合に、制御モードを自動的に切り換えるように構成されていてもよい。所定条件は、例えば、目標軌道の形状、埋設物の存否、ショベル100の周囲における物体の存否等に基づいて設定されていてもよい。
コントローラ30は、例えば、自律制御が開始されると、最初に第1制御モードを採用する。第1制御モードは、例えば、通常制御モードである。そして、第1制御モードを採用した自律制御の実行中に所定条件が満たされたと判定すると、制御モード切換部30Dは、制御モードを第1制御モードから第2制御モードに切り換える。第2制御モードは、例えば、低速制御モードである。この場合、コントローラ30は、第1制御モードを採用した自律制御を終了させ、第2制御モードを採用した自律制御を開始させる。この例では、コントローラ30は、2つの制御モードのうちの1つを選択して自律制御を実行しているが、3つ以上の制御モードのうちの1つを選択して自律制御を実行してもよい。
操作具駆動部30Eは、自律制御部30Cによって自動的に動かされるアクチュエータに関する操作装置26を駆動させるように構成されている。例えば、操作具駆動部30Eは、自律制御部30Cによって自動的に伸長されるブームシリンダ7に関する操作装置26である右操作レバー26Rを、あたかも操作者による手動操作が行われているかのように、ブーム4の上昇に見合ったレバー操作角度となるように右操作レバー26Rをブーム上げ方向に傾ける。本実施形態では、操作具駆動部30Eは、操作具駆動装置50に対して制御指令を出力し、操作具駆動装置50を動作させることで、自律制御部30Cによって自動的に動かされるアクチュエータに関する操作装置26を駆動させる。
上述の油圧システムを利用し、コントローラ30は、必要に応じてショベル100の駆動部の制動を自動的に実行できるように構成されていてもよい。駆動部の制動を自動的に実行することは、例えば、その駆動部に関する操作装置26が操作されている場合であっても、その駆動部の動きを強制的に減速させ或いは停止させることを含んでいてもよい。
コントローラ30は、例えば、物体検知装置70が物体を検知した場合に、駆動部の制動を自動的に実行できるように構成されていてもよい。この場合、駆動部は、例えば、旋回用油圧モータ2A及び走行用油圧モータ2Mの少なくとも1つを含んでいてもよい。駆動部の制動は、例えば、操作装置26が操作されている状態で、その操作装置26に対応する制御弁のパイロットポートに作用するパイロット圧を低減させることで実現される。操作されている状態の操作装置26に対応する制御弁が中立弁位置に戻るためである。なお、駆動部の制動は、駆動部の動作速度を低下させること、及び、駆動部の動きを停止させることの少なくとも1つを含んでいてもよい。
コントローラ30は、駆動部の制動を実行している場合に、所定の条件が満たされたときに、駆動部の制動を解除できるように構成されていてもよい。
「駆動部の制動を実行している場合」は、例えば、駆動部の動作速度を低下させている場合、駆動部の動きを停止させた場合、及び、駆動部の停止を維持している場合を含んでいてもよい。
「所定の条件が満たされたとき」は、例えば、操作者が操作継続の意思を有すると判定したときであってもよい。コントローラ30は、例えば、走行レバー26Dが後進方向に操作されているときに走行用油圧モータ2Mを制動させたケースでは、走行レバー26Dが後進方向に再操作されたときに、操作者が操作継続の意思を有すると判定してもよい。この場合、「再操作」は、走行レバー26Dを中立状態に戻した後で再び後進方向に操作することであってもよく、走行レバー26Dが中立状態になる位置を超えて走行レバー26Dを前進方向に操作した後で再び後進方向に操作することであってもよく、走行レバー26Dが中立状態になるように操作した後で再び後進方向に操作することであってもよい。
この場合、コントローラ30は、操作センサ29の出力に基づいて操作装置26の再操作が行われたか否かを判定してもよい。或いは、コントローラ30は、キャビン10内の操作者を撮像する室内撮像装置等の操作センサ29以外の他の装置の出力に基づいて操作装置26の再操作が行われたか否かを判定してもよい。
或いは、コントローラ30は、制動の対象となった駆動部に関する操作装置26が所定の操作方法で操作されたときに、操作者が操作継続の意思を有すると判定してもよい。コントローラ30は、例えば、左操作レバー26Lが右旋回方向に操作されているときに旋回用油圧モータ2Aを制動させたケースでは、左操作レバー26Lを左右に2往復操作されたときに、操作者が操作継続の意思を有すると判定してもよい。具体的には、左旋回方向、右旋回方向、左旋回方向及び右旋回方向の順で左操作レバー26Lが操作されたときに、左操作レバー26Lが所定の操作方法で操作されたとして、操作者が操作継続の意思を有すると判定してもよい。
或いは、コントローラ30は、制動の対象となった駆動部に関する操作装置26に設けられているレバーボタンLBが押された状態でその操作装置26が再操作されたときに、操作者が操作継続の意思を有すると判定してもよい。コントローラ30は、例えば、右操作レバー26Rがブーム下げ方向に操作されているときにブームシリンダ7を制動させたケースでは、右操作レバー26Rに設けられたレバーボタンLBが押された状態で右操作レバー26Rがブーム下げ方向に再操作されたときに、操作者が操作継続の意思を有すると判定してもよい。
なお、上述の実施形態では、電気式パイロット回路を備えた電気式操作装置が開示されているが、このような電気式パイロット回路を備えた電気式操作装置ではなく、油圧式パイロット回路を備えた油圧式操作装置が採用されてもよい。
次に、図7を参照し、操作具駆動装置50の詳細について説明する。図7は、右操作レバー26Rの構成例を示す。具体的には、図7(A)は、中立状態にある右操作レバー26Rの側面図である。図7(B)は、中立状態にある右操作レバー26Rの上面図である。図7(C)は、ブーム上げ方向に傾けられた状態にある右操作レバー26Rの側面図である。なお、図7(A)〜図7(C)は、操作センサ29及び操作具駆動装置50が露出した状態を示しているが、実際には、操作センサ29及び操作具駆動装置50は、レバーブーツで覆われている。
右操作レバー26Rは、図7(A)及び図7(B)に示すように、操作センサ29、操作具駆動装置50、支持部BL、基部BS、レバー部LV、ピン部PN、及びプッシュロッド部PRを含む。図7(A)及び図7(B)に示す例では、操作センサ29は、操作センサ29RA及び操作センサ29RBを含み、操作具駆動装置50は、レバー駆動装置50RA及びレバー駆動装置50RBを含む。また、支持部BLは、レバー部LVが動いたときであっても静止状態で維持される基部BSから+Z方向に突出する部材であり、第1支持部BL1〜第4支持部BL4を含む。プッシュロッド部PRは、レバー部LVの動きをガイドする部材であり、第1プッシュロッド部PR1及び第2プッシュロッド部PR2を含む。ピン部PNは、プッシュロッド部PRに固定されてプッシュロッド部PRと共に回転する部材であり、第1ピン部PN1〜第4ピン部PN4を含む。
第1プッシュロッド部PR1は、図7(A)に示すように、Y軸に平行な第1回転軸RS1回りに回動できるように、支持部BLに取り付けられている。具体的には、第1プッシュロッド部PR1の+X側の端部は、第1ピン部PN1に相対回転不能に固定されている。そして、第1プッシュロッド部PR1の+X側の端部は、第1ピン部PN1を介して、第1支持部BL1に回動可能に取り付けられている。同様に、第1プッシュロッド部PR1の−X側の端部は、第2ピン部PN2に相対回転不能に固定されている。そして、第1プッシュロッド部PR1の−X側の端部は、第2ピン部PN2を介して、第2支持部BL2に回動可能に取り付けられている。
レバー駆動装置50RAとしてのトルクモータは、第1回転軸RS1回りに第1ピン部PN1を回転させることができるように構成されている。
操作センサ29RAとしての回転角度センサは、第1回転軸RS1回りに回転する第2ピン部PN2の回転角度を検出できるように構成されている。第2ピン部PN2は、第1ピン部PN1の回転角度と同じ回転角度だけ回転するように構成されている。
図7の例では、第1プッシュロッド部PR1は、側面視で略半円形をなし、且つ、上面視で略矩形をなすように構成されている。そして、第1プッシュロッド部PR1は、中央部に形成されている上面視で略矩形の開口部AP1をレバー部LVが貫通するように構成されている。開口部AP1は、レバー部LVの直径とほぼ同じ幅を有するように構成されている。そのため、第1プッシュロッド部PR1は、レバー部LVの第2回転軸RS2回りの回動を許容しながら、レバー部LVの第1回転軸RS1回りの回動を制限することができる。
この構成により、第1プッシュロッド部PR1は、レバー駆動装置50RAによって第1回転軸RS1回りに回動させられると、第1プッシュロッド部PR1と共にレバー部LVを第1回転軸RS1回りに回動させることができる。具体的には、レバー部LVは、レバー部LVが傾けられるにつれて圧縮されるバネ(図示せず。)の力に抗して傾けられ、レバー駆動装置50RAの駆動力によるトルクとバネの復元力による逆トルクとがつり合ったところで停止する。また、レバー部LVは、レバー駆動装置50RAの駆動力によるトルクが消失したときには、バネの復元力によって中立状態(図7(A)に示す状態)に戻るように構成されている。
第2プッシュロッド部PR2は、図7(B)に示すように、X軸に平行な第2回転軸RS2回りに回動できるように、支持部BLに取り付けられている。具体的には、第2プッシュロッド部PR2の+Y側の端部は、第3ピン部PN3に相対回転不能に固定されている。そして、第2プッシュロッド部PR2の+Y側の端部は、第3ピン部PN3を介して、第3支持部BL3に回動可能に取り付けられている。同様に、第2プッシュロッド部PR2の−Y側の端部は、第4ピン部PN4に相対回転不能に固定されている。そして、第2プッシュロッド部PR2の−Y側の端部は、第4ピン部PN4を介して、第4支持部BL4に回動可能に取り付けられている。
レバー駆動装置50RBとしてのトルクモータは、第2回転軸RS2回りに第3ピン部PN3を回転させることができるように構成されている。
操作センサ29RBとしての回転角度センサは、第2回転軸RS2回りに回転する第4ピン部PN4の回転角度を検出できるように構成されている。第4ピン部PN4は、第3ピン部PN3の回転角度と同じ回転角度だけ回転するように構成されている。
図7の例では、第2プッシュロッド部PR2は、第1プッシュロッド部PR1と同様に、側面視で略半円形をなし、且つ、上面視で略矩形をなすように構成されている。そして、第2プッシュロッド部PR2は、中央部に形成されている上面視で略矩形の開口部AP2をレバー部LVが貫通するように構成されている。開口部AP2は、レバー部LVの直径とほぼ同じ幅を有するように構成されている。そのため、第2プッシュロッド部PR2は、レバー部LVの第1回転軸RS1回りの回動を許容しながら、レバー部LVの第2回転軸RS2回りの回動を制限することができる。
この構成により、第2プッシュロッド部PR2は、レバー駆動装置50RBによって第2回転軸RS2回りに回動させられると、第2プッシュロッド部PR2と共にレバー部LVを第2回転軸RS2回りに回動させることができる。具体的には、レバー部LVは、レバー部LVが傾けられるにつれて圧縮されるバネ(図示せず。)の力に抗して傾けられ、レバー駆動装置50RBが出力するトルクとバネの復元力による逆トルクとがつり合ったところで停止する。また、レバー部LVは、レバー駆動装置50RBの駆動力によるトルクが消失したときには、バネの復元力によって中立状態(図7(B)に示す状態)に戻るように構成されている。
例えば、自律制御部30Cによってブーム4が自動的に上昇するように制御されている場合、操作具駆動部30Eは、レバー駆動装置50RBに対して制御指令を出力し、図7(C)の矢印AR1で示すように、第3ピン部PN3を回転させる。その結果、操作具駆動部30Eは、第3ピン部PN3に固定された第2プッシュロッド部PR2を回動させることで、矢印AR2で示すように、レバー部LVをブーム上げ方向に傾けることができる。制御指令は、この自律制御が行われているときに制御弁175L(図5B参照。)の右パイロットポート及び制御弁175Rの左パイロットポートのそれぞれに作用しているパイロット圧の大きさに基づいて一意に決定される。本実施形態では、操作具駆動部30Eは、パイロット圧とレバー操作角度(第2回転軸RS2回りの第4ピン部PN4の回転角度)との対応関係を記憶しているルックアップテーブルを参照し、現在のパイロット圧に対応するレバー操作角度としての目標レバー操作角度を導き出す。なお、ルックアップテーブルは、比例弁31BL及び比例弁31BRのそれぞれに対する電流指令の値とレバー操作角度との対応関係を記憶していてもよい。この場合、操作具駆動部30Eは、電流指令の値とレバー操作角度との対応関係を記憶しているルックアップテーブルを参照し、現在の電流指令の値に対応するレバー操作角度としての目標レバー操作角度を導き出してもよい。そして、操作具駆動部30Eは、現在のレバー操作角度と目標レバー操作角度との差がゼロになるように右操作レバー26Rを傾けるための制御指令を生成し、生成した制御指令をレバー駆動装置50RBに対して出力する。その結果、操作具駆動部30Eは、図7(C)に示すように、右操作レバー26Rをブーム上げ方向に傾けることができる。なお、図7(C)における破線で表されるレバー部LVは、ブーム上げ方向に傾けられる前のレバー部LVを示している。
この構成により、コントローラ30は、自律制御部30Cによってアクチュエータが自動的に動かされている場合に、操作者による手動操作によってそのアクチュエータが動かされているときと同じように、操作装置26を動かすことができる。そのため、操作者は、仮に現在のアクチュエータの動きが手動操作に基づくものであったとしたら、操作装置26をどの程度動かす必要があったのかを容易に認識することができる。また、操作者は、アクチュエータの動きを不安定にすることなく、現に行われている自律制御によるアクチュエータの動きを、手動操作によるアクチュエータの動きで円滑に引き継がせることができる。操作者は、例えば、操作具駆動部30Eによって適切なレバー操作角度まで傾けられた状態にある右操作レバー26Rを手動操作するたけでよいためである。
次に、図8を参照し、自律制御から手動制御への切り換えの際の被駆動体の動きについて説明する。図8の例では、手動制御は、操作者による右操作レバー26Rの手動操作に応じた被駆動体としてのブーム4及びバケット6の制御を意味する。具体的には、手動操作は、ブーム上げ操作とバケット閉じ操作の複合操作である。図8は、均し作業が行われているときの掘削アタッチメントの左側面図である。図8(A)は、操作者が左操作レバー26Lと右操作レバー26Rとを手動で操作してバケット6の爪先を作業対象物である地面に接触させたときの掘削アタッチメントの左側面図であり、自律制御部30Cによる自律制御が開始される前の状態を示す。図8(B)は、操作者がスイッチNSを押しながら手動で左操作レバー26Lをアーム閉じ方向に傾けているときの掘削アタッチメントの左側面図であり、自律制御部30Cによる自律制御が実行されているときの状態を示す。図8(C)は、操作者がスイッチNSを押しながら手動で左操作レバー26Lをアーム閉じ方向に傾け、更に、手動で右操作レバー26Rをブーム上げ方向及びバケット閉じ方向に傾けているときの掘削アタッチメントの左側面図であり、自律制御部30Cによる自律制御よりも手動制御が優先されているときの状態を示す。図8(B)及び図8(C)のそれぞれにおける点線で表される掘削アタッチメントは、図8(A)に示す掘削アタッチメントの状態を示している。
図8に示す例では、自律制御部30Cは、主要アクチュエータとしてのアームシリンダ8に対する従属アクチュエータとしてのブームシリンダ7及びバケットシリンダ9を自動的に動作させることで、操作者による均し作業のための操作を支援するように構成されている。具体的には、自律制御部30Cは、操作者がスイッチNSを押しながら手動でアーム閉じ操作を行っている場合に、目標平坦面TSaとバケット6の爪先の位置とが一致するようにブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の少なくとも1つを自動的に伸縮させる。この場合、操作者は、例えば、左操作レバー26Lをアーム閉じ方向に傾けるだけで、バケット6の爪先を目標平坦面TSaに一致させながら、アーム5を閉じることができる。なお、目標平坦面TSaは、典型的には、設計データ等に基づいて予め設定される仮想平面である。
より具体的には、自律制御部30Cは、図8(B)の矢印AR11で示すようにアーム5が手動操作によって閉じられたときに、矢印AR12で示すようにバケット6を自動的に開き、且つ、矢印AR13で示すようにブーム4を自動的に上昇させることで、すなわち、バケットシリンダ9を自動的に収縮させ、且つ、ブームシリンダ7を自動的に伸長させることで、バケット6の爪先を目標平坦面TSaに沿って移動させることができる。
操作者は、自律制御部30Cによる自律制御が行われているときに、従属アクチュエータに関する操作装置26の手動操作を実行することで、その手動操作による従属アクチュエータの動きを、自律制御による従属アクチュエータの動きよりも優先させてもよい。例えば、操作者は、図8(B)に示すような自律制御が行われているときに、右操作レバー26Rをブーム上げ方向に倒すことで、自律制御によるブーム4の上昇よりも速くブーム4を上昇させることができる。
但し、操作者は、自律制御によってブーム4が自動的に上昇しているときに右操作レバー26Rが中立状態のままであったならば、右操作レバー26Rをどの程度ブーム上げ方向に操作すれば、現に行われている自律制御によるブーム4の上昇よりも速いブーム4の上昇を実現できるのかが分からない。すなわち、操作者は、ブーム4を所望の速度で上昇させるための右操作レバー26Rのレバー操作角度である望ましいレバー操作角度を特定できない。そのため、操作者は、憶測に基づいてレバー操作角度を決め、そのレバー操作角度まで右操作レバー26Rを傾ける。この場合、右操作レバー26Rの手動操作が開始された途端に手動制御が自律制御よりも優先されてしまうと、操作者は、右操作レバー26Rのレバー操作角度を望ましいレバー操作角度よりも小さくしてしまったときには、ブーム4の上昇速度を意に反して急減させてしまう。或いは、操作者は、右操作レバー26Rのレバー操作角度を望ましいレバー操作角度よりも大きくしてしまったときには、ブーム4の上昇速度を意に反して急増させてしまう。
本発明の実施形態に係る操作具駆動部30Eは、自律制御によってブーム4が自動的に上昇しているときに、ブーム4の現在の上昇速度に見合うレバー操作角度まで右操作レバー26Rを傾けることができる。そのため、操作具駆動部30Eは、自律制御から手動制御への切り換えの際にブーム4の上昇速度が急減或いは急増してしまうのを防止できる。操作者は、操作具駆動部30Eによって自動的に傾けられた状態にある右操作レバー26Rをブーム上げ方向に傾けることで、自律制御によって実現されているブーム4の上昇速度を滑らかに増加させることができるためである。
次に、図9を参照し、自律制御から手動制御への切り換えの際のアーム閉じパイロット圧とブーム上げパイロット圧の時間的推移について説明する。図9は、図8に示すような均し作業のための自律制御が実行されているときの、自律制御から手動制御への切り換えの際のアーム閉じパイロット圧とブーム上げパイロット圧の時間的推移を示す。図9(A)は、アーム閉じパイロット圧の時間的推移を示し、図9(B)は、ブーム上げパイロット圧の時間的推移を示す。なお、図9に示す例では、時刻t1から時刻t2までは図8(B)に示すような自律制御が実行され、時刻t2以降では図8(C)に示すような手動制御が実行されている。図9における一点鎖線は、自律制御から手動制御への切り換えの際にマシンコントロール機能を停止させたときの推移を示す。
時刻t1において、左操作レバー26Lがアーム閉じ方向に操作されると、制御弁176L(図5A参照。)の右パイロットポート及び制御弁176Rの左パイロットポートに作用するパイロット圧であるアーム閉じパイロット圧は、図9(A)に示すように増加する。
自律制御部30Cは、バケット6の爪先が目標平坦面TSaに沿って移動するように、アーム5が手動操作によって閉じられると、図8(B)に示すようにブーム4を自動的に上昇させる。
そのため、制御弁175L(図5B参照。)の右パイロットポート及び制御弁175Rの左パイロットポートに作用するパイロット圧であるブーム上げパイロット圧は、図9(B)に示すように増加する。すなわち、時刻t1から時刻t2までのブーム上げパイロット圧は、右操作レバー26Rの手動操作によるものではなく、自律制御によって自動的に生成されるものである。
その後、アーム閉じパイロット圧及びブーム上げパイロット圧は、時刻t2までほぼ一定の値で推移する。そのため、アーム5は、ほぼ一定の速度で閉じられ、ブーム4は、ほぼ一定の速度で自動的に上昇させられる。
その後、時刻t2において、自律制御から手動制御への切り換えの際に掘削アタッチメントの動きが不安定になるのを防止するためにマシンコントロール機能を停止させる場合には、操作者は、スイッチNSの押下を止め、左操作レバー26Lを中立状態に戻す。その結果、掘削アタッチメントの動きは完全に停止する。制御弁176は、左操作レバー26Lが中立状態に戻されたことで、中立弁位置に戻るためである。また、制御弁174及び制御弁176は、自律制御が停止したことで、中立弁位置に戻るためである。
この場合、アーム閉じパイロット圧及びブーム上げパイロット圧は、一点鎖線で示すように低下し、時刻t3において、所定の下限圧力に至る。所定の下限圧力は、制御弁が中立位置になるときの圧力であり、例えば、大気圧である。
その後、操作者は、時刻t4において、左操作レバー26Lを手動操作でアーム閉じ方向に傾け、且つ、右操作レバー26Rを手動操作でブーム上げ方向に傾けることで、掘削アタッチメントの所望の動きを開始させることができる。
その結果、時刻t5において、アーム閉じパイロット圧は、掘削アタッチメントを停止させる前のレベルまで増加し、ブーム上げパイロット圧は、掘削アタッチメントを停止させる前のレベルより高い所望のレベルまで増加する。
しかしながら、マシンコントロール機能を停止するために左操作レバー26Lを中立状態に戻した後で手動制御を開始させる場合、掘削アタッチメントの動きが、一時的ではあっても、完全に停止してしまうため、操作者は、煩わしさを感じてしまうおそれがある。また、マシンコントロール機能を停止した場合、ブーム4が急停止するため、操作者は、不快感を抱いてしまうおそれがある。
しかしながら、このような煩雑感又は不快感を抱くのを避けるために、望ましいレバー操作角度を操作者が特定できない状態であるにもかかわらず、操作者が闇雲に右操作レバー26Rを操作してしまうと、ブーム上げパイロット圧は、図9(B)における点線で表されるように、所望のレベルを超えて急増してしまうおそれがある。その結果、掘削アタッチメントの動きが不安定になってしまうおそれがある。なお、望ましいレバー操作角度を操作者が特定できない状態は、例えば、自律制御部30Cによってブーム4が自動的に上昇しているときに右操作レバー26Rが中立状態のままになっている状態を意味する。
本実施形態に係るコントローラ30は、自律制御によってブーム4が自動的に上昇しているときにはブーム4の現在の上昇速度に見合うレバー操作角度まで右操作レバー26Rを傾けるため、望ましいレバー操作量を操作者が特定するのを支援できる。そのため、操作者は、掘削アタッチメントの動きを停止させることなく、且つ、掘削アタッチメントの動きを不安定にしてしまうことなく、自律制御を手動制御に移行させることができる。
その結果、ブーム上げパイロット圧は、図9(B)における実線で表されるように、時刻t3において、自律制御のときのレベルより高い所望のレベルに達する。すなわち、操作者は、掘削アタッチメントの動きを完全に停止させた後で掘削アタッチメントの動きを再開させる場合よりも早いタイミングでブーム上げパイロット圧を所望のレベルに増加させることができる。また、操作者は、左操作レバー26Lのレバー操作角度を変更することなく、すなわち、アーム5の閉じ速度を変えることなく、ブーム4の上昇速度を増加させることができる。
上述の通り、本発明の実施形態に係るショベル100は、アクチュエータを手動で操作するための操作装置26と、操作装置26を動かす操作具駆動装置50と、を備えている。そして、操作具駆動装置50は、自律制御によって動いているアクチュエータに対応する操作装置26を動かすように構成されている。例えば、図8に示す例では、操作具駆動装置50としてのレバー駆動装置50RBは、自律制御によって動いているブームシリンダ7に対応する、操作者によっては操作されていない、右操作レバー26Rをブーム上げ方向に動かすように構成されている。
この構成により、ショベル100は、自律制御から手動制御への切り換えの際の被駆動体(図8に示す例ではブーム4)の動きを滑らかにすることができる。操作者は、手動操作を開始するときの、自律制御によって動いているアクチュエータの動作速度に見合う操作装置26の操作量を直感的に認識できるためである。すなわち、ショベル100は、自律制御から手動制御に切り換わった途端に、自律制御によって動いているアクチュエータの動作速度に見合う操作装置26の操作量とは顕著に異なる操作量でそのアクチュエータが動かされてしまうのを防止できるためである。その結果、ショベル100は、操作者の安全性及び作業性を高めることができる。また、ショベル100は、その操作性を高めることができる。
図8に示す例では、均し作業を行っている操作者は、自動的に動く右操作レバー26Rのレバー操作角度を見ることで、或いは、右操作レバー26Rに添えている手で右操作レバー26Rの動きを感じることで、自律制御によるブーム4の上昇速度を実現するためにはどの程度右操作レバー26Rを倒せばよいのかを直感的に把握できる。そのため、操作者は、ブームシリンダ7によるブーム4の動きを不安定にすることなく、現に行われている自律制御によるブーム4の動きを、手動操作によるブーム4の動きで円滑に引き継がせることができる。
アクチュエータは、対応する操作装置26に対する手動操作に応じて動作する主要アクチュエータと、主要アクチュエータの動きに応じて動く従属アクチュエータと、を含んでいてもよい。図8に示す例では、主要アクチュエータは、アームシリンダ8であり、従属アクチュエータは、ブームシリンダ7及びバケットシリンダ9である。
この場合、操作具駆動装置50は、自律制御によって動いている従属アクチュエータに対応する操作装置26を動かすように構成されていてもよい。図8に示す例では、操作具駆動装置50としてのレバー駆動装置50RBは、自律制御によって動いている従属アクチュエータとしてのアームシリンダ8に対応する右操作レバー26Rをブーム上げ方向又はブーム下げ方向に動かすように構成されていてもよい。
この構成により、操作者は、左操作レバー26Lによって主要アクチュエータとしてのアームシリンダ8を手動で操作しているときに、自律制御によって動いている従属アクチュエータとしてのブームシリンダ7の動作速度に見合う右操作レバー26Rのレバー操作角度を直感的に認識できる。そのため、操作者は、ブームシリンダ7の自律制御とアームシリンダ8の手動制御との組み合わせである複合制御を、ブームシリンダ7の手動制御とアームシリンダ8の手動制御との組み合わせに切り換える場合であっても、従属アクチュエータとしてのブームシリンダ7の動きを不安定にすることなく、複合制御による掘削アタッチメントの動きを、手動制御による掘削アタッチメントの動きで円滑に引き継がせることができる。
操作具駆動装置50による操作装置26の駆動は、自律制御が停止したときに、停止されるように構成されていてもよい。図8に示す例では、レバー駆動装置50RBによる右操作レバー26Rの駆動は、自律制御によってブームシリンダ7が動いているときに実行されるが、例えばスイッチNSの押下が中止されて自律制御が停止されたときに、停止されるように構成されている。レバー駆動装置50RBによる右操作レバー26Rの駆動が停止されると、右操作レバー26Rは、右操作レバー26Rが傾けられていたときに圧縮されていたバネ(図示せず。)の復元力によって中立状態に戻る。
この構成により、操作者は、自律制御が停止したときに操作装置26が中立状態に戻るのを見ることで、自律制御が停止したことを直感的に把握できる。
なお、操作具駆動装置50による操作装置26の駆動は、典型的には、自律制御が停止したときに瞬時に停止されるように構成されるが、自律制御が停止してから所定時間が経過したときに停止されるように構成されていてもよい。例えば、操作装置26の中立状態への復帰が緩やかに行われるようにするためである。この場合、操作具駆動装置50は、その駆動力が徐々に小さくなるように構成されていてもよい。
操作具駆動装置50は、複数配置されていてもよい。図4に示す例では、操作具駆動装置50は、左操作レバー26Lに取り付けられるレバー駆動装置50LA及び50LB、右操作レバー26Rに取り付けられるレバー駆動装置50RA及び50RB、左走行レバー26DLに取り付けられるレバー駆動装置50DL、並びに、右走行レバー26DRに取り付けられるレバー駆動装置50DRを含む。
但し、操作具駆動装置50は、例えば、右操作レバー26Rをブーム上げ方向及びブーム下げ方向に傾けることができるレバー駆動装置50RBのみで構成されていてもよく、左操作レバー26Lをアーム閉じ方向及びアーム開き方向に傾けることができるレバー駆動装置50LAのみで構成されていてもよい。すなわち、操作具駆動装置50は、レバー駆動装置50LA、50LB、50RA、50RB、50DL、及び50DRのうちの少なくとも1つで構成されていてもよい。
また、レバー駆動装置50RBは、右操作レバー26Rをブーム上げ方向のみに傾けることができるように構成されていてもよく、右操作レバー26Rをブーム下げ方向のみに傾けることができるように構成されていてもよい。レバー駆動装置50LA、50LB、50RA、50DL、及び50DRについても同様である。
ショベル100は、自律制御から手動制御への切り換えが行われたことを外部に報知するように構成されていてもよい。例えば、コントローラ30は、自律制御から手動制御への切り換えが行われたことを検知した場合に、音出力装置AD及び表示装置DSの少なくとも一方に対して制御指令を出力し、その旨を表す音情報及び画像情報の少なくとも一方を出力させてもよい。
この構成により、ショベル100の操作者は、自律制御から手動制御への切り換えが行われたことを確認することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に制限されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形又は置換等が適用され得る。また、別々に説明された特徴は、技術的な矛盾が生じない限り、組み合わせが可能である。
例えば、上述の実施形態では、コントローラ30は、操作具駆動装置50を制御することで、キャビン10の内部に設置された操作装置26を自動的に動かすように構成されているが、ショベル100の外部に設置された遠隔操作用の操作装置である遠隔操作装置としての支援装置を自動的に動かすように構成されていてもよい。この場合、位置算出部30A、軌道取得部30B、自律制御部30C、制御モード切換部30D、及び操作具駆動部30Eのうちの少なくとも1つは、ショベル100の外部にある装置によって実現されてもよい。
図10は、ショベルの遠隔操作システムSYSの構成例を示す概略図である。遠隔操作システムSYSは、ショベル100を遠隔操作できるようにするためのシステムである。本実施形態では、遠隔操作システムSYSは、主に、ショベル100及び支援装置200で構成される。
支援装置200は、典型的には固定端末装置であり、例えば、施工現場から離れた場所にあるオフィス等に設置されるコンピュータで構成される。支援装置200は、可搬性のコンピュータ(例えば、ノートPC、タブレットPC又はスマートフォン等の携帯端末装置)で構成されてもよい。
支援装置200は、モニタと操作具とを備えている。操作具は、例えば、レバー又はペダル等である。遠隔操作者は、操作具を手動で操作することで、離れた位置にあるショベル100を遠隔操作できる。支援装置200は、例えば、衛星通信網、携帯電話通信網、又は無線LAN等を通じ、コントローラ30に接続される。操作具には、図7に示すような操作具駆動装置が取り付けられている。操作具駆動装置は、図7に示す操作具駆動装置50と同様に、自律制御によって動いているアクチュエータに対応する操作具を動かすように構成されている。
ショベル100のコントローラ30は、撮像装置80が撮像した画像を支援装置200に送信する。更に、コントローラ30は、ショベル100の作業内容に関するデータ、ショベル100の姿勢に関するデータ、及び掘削アタッチメントの姿勢に関するデータ等の少なくとも1つに関する情報を支援装置200に送信してもよい。遠隔操作者は、コントローラ30から送られてきた画像を含む各種情報をモニタで見ながら、操作具を操作してショベル100を遠隔操作できる。