ここで、本開示の実施形態を詳細に参照するものとし、それらの1つ以上の例が図面に例示されている。一実施形態の一部として例示又は説明される特徴を、他の実施形態と共に使用することにより、更に第3の実施形態を得ることができる。本開示は、これらの修正及び変形、並びに他の修正及び変形を含むことが意図される。
図1は、本開示の方法によって製造された物品の実施形態を図示する。物品1は、対向する側縁部16、18を有する延伸した熱可塑性層10と、第1の表面14と、第2の表面(図1には図示せず)と、を含む。熱可塑性層10の第1の表面14は、図1で見ることができる表面である。示された物品1は、熱可塑性層10の第1の表面14から突出する雄固定要素12を有する熱可塑性層10を有する。第1の表面(すなわち、雄固定要素を有する表面)はまた、本明細書において開示される実施形態のいずれかにおいて、第1の主表面と呼ばれることもある。示された実施形態では、熱可塑性層10は基材4に取り付けられている。物品は、例えば、(例えば、吸収性物品を本体に取り付けるための)固定タブとして有用であり得る。
図2は、本開示の方法の実施形態の図を示す。図2を参照すると、熱可塑性層2は、基材4に積層される直前に、速度の異なる第1のローラ105及び第2のローラ115によって機械方向(熱可塑性層10に沿った矢印で示す)に延伸される。熱可塑性層2及び基材4は、ロール120及び140によってそれぞれ供給される。延伸した熱可塑性層10及び基材4は、ニップ6で積層されて、積層体100を提供する。図2に示す実施形態では、本方法は、熱可塑性層を取り回し、延伸し、積層するために、ニップローラ105、115を使用する。一部の実施形態では、本開示の方法は、熱可塑性層を取り回し、延伸するために、ニップローラの代わりにSラップを採用する。
図3は、延伸されるときの熱可塑性層の概略上面図である。熱可塑性層2は、塑性変形し幅が減少するように機械方向に延伸される。一部の実施形態では、熱可塑性層2を機械方向MDに延伸することにより、その幅を少なくとも10パーセント減少させる。熱可塑性層2を機械方向MDに延伸することにより、その幅を少なくとも15、20、25、又は30パーセント減少させることができる。熱可塑性層2を機械方向MDに延伸することにより、その幅を最大55、50、45、又は40パーセント減少させることができるが、場合によっては、幅のより大きな減少も可能である。
本開示による方法では、速度の異なるローラ間の距離が、幅の減少(換言すれば、ネッキングの量)に影響を与え得る。一部の実施形態では、ネッキングを大きくするために、ローラ間の長い空隙(換言すれば、短い延伸に代わる長い延伸)が望まれる場合がある。熱可塑性層を次第に速度の速くなる複数のローラ間で漸増的に延伸することは、例えば、積層体を製造する方法において、ネッキングを制御する、より速いライン速度を可能にする、より均一な延伸を提供する、及びより高い延伸比を可能にするために、有用であり得る。
再び図1から図3を参照すると、一部の実施形態では、延伸した熱可塑性層10の側縁部16、18間の距離は、最大60ミリメートルである。側縁部16、18間の距離はまた、熱可塑性層の幅と呼ばれることもある。一部の実施形態では、延伸後、熱可塑性層は、5ミリメートル(mm)〜50mm(一部の実施形態では、5mm〜40mm、5mm〜30mm、又は5mm〜30mm未満)の幅を有する。本開示の方法では、これらの幅は延伸すると達成され、積層前にこれらの幅を達成するために後続のスリッティングする(slit)ステップは必要ないことを理解されたい。
一部の実施形態では、延伸前、熱可塑性層2は、10ミリメートル(mm)〜50mm(一部の実施形態では、10mm〜40mm又は10mm〜30mm)の幅を有する。幅の狭い(例えば、10mm〜50mm、10mm〜40mm、又は10mm〜30mmの幅を有する)熱可塑性層を延伸することは、より幅広の(例えば、少なくとも100mm、200mm、250mm、500mm、又は750mmの幅を有する)ウェブを延伸するよりも有利であり得る。例えば、ウェブが延伸されるとき、ウェブ横断方向のキャリパの変動が観察でき、縁部においてよりもウェブの中心においてより大きな延伸が生じている。このため、縁部は、ウェブがジャンボとして巻かれるときに、ハードバンドを引き起こさないようにトリミングされる。かかるキャリパの差は、幅の狭いウェブを延伸するときに最小になる。また、熱可塑性層は、延伸されるとより薄くなる。より薄いウェブを取り回す際の困難さは、より幅の狭いウェブにおいてよりもより幅広のウェブにおいてより顕著であり得る。
幅の狭い熱可塑性層を延伸し例えばインラインで積層することは、在庫の複数のロールを維持する必要なく、所望の幅を有する雄固定要素を有する熱可塑性層を得るために、有用であり得る。例えば、幅の狭い熱可塑性層の単一のロールを、同じ製造ライン上で製造される様々な製品のために、様々な程度に延伸することができる。この単一のロールは、安定なロールを維持するには十分に広いが最終製品において様々な望ましい幅を達成するには十分に狭い幅を有することができる。
本明細書に記載する方法の実施形態のいずれにおいても、熱可塑性層を延伸及び積層するために使用されるローラは、様々な材料から作成され得る。これらのローラの少なくともいくつかは、平滑な金属(例えば、アルミニウム又は鋼)のローラであり得る。また、これらのローラの少なくともいくつかは、コーティングを備え得る。ローラ上のコーティングの種類は、熱可塑性層がローラによってどのように捕捉されるかに影響を与える場合があり、したがってまた、熱可塑性層がどのように延伸するかにも影響し得る。例えば、高摩擦コーティングが有用であり得る。この高摩擦コーティングは、例えば、高摩擦表面を提供することが知られているプラズマコーティングとすることができる。好適なプラズマコーティングとしては、例えば、Plasma Coating,Middlebury,Conn.より製品群名称「10000」及び「10015」として入手可能なものが挙げられる。高摩擦コーティングはまた、ゴム状材料のコーティング又は層であってもよい。
熱可塑性層の延伸は、これが塑性変形する程度まで実行される。熱可塑性層の原料となる熱可塑性物質に応じて、熱可塑性層を塑性変形させるのに十分な延伸比は、少なくとも1.20、1.25、1.30、1.5、又はそれ以上であり得る。一部の実施形態では、熱可塑性層を延伸するために使用される延伸比は、約2.0、2.25、2.5、2.75、又は3である。最大延伸比は、選択された材料の引っ張り強度によって制限される。一部の実施形態では、熱可塑性層は、機械方向において1.25〜5の延伸比で延伸される。一部の実施形態では、熱可塑性層は、機械方向において1.5〜4の延伸比で延伸される。材料選択及び延伸される際の熱可塑性裏材の温度に応じて、最大5、7.5、又は10の延伸比が有用であり得る。これらの延伸比により、熱可塑性層に例えば、20%、25%、30%、50%、100%、125%、150%、175%、200%、又はそれ以上の延びをもたらすことができる。
上記したように、機械方向への熱可塑性層の延伸は、ウェブ下流のローラ速度がウェブ上流のローラ速度よりも速い、速度が上がっていく複数のローラ上でウェブを進ませることによって、実行可能である。一部の実施形態では、最大毎分350メートル、毎分300メートル、毎分250メートル、毎分200メートル、毎分100メートル、毎分75メートル、毎分50メートル、毎分25メートル、毎分10メートル、又は毎分5メートルの速度で、機械方向に延伸することが有用である。
第2のローラは第1のローラよりも速度が速い。第2のローラの速度と第1のローラの速度との比は延伸比であり、上記したもののいずれであってもよい。一部の実施形態では、熱可塑性層は、積層前には第2のローラよりも遅い速度を有する第3のローラ上へと導かれない。
一部の実施形態では、本開示による方法は、熱可塑性層を加熱することを更に含む。加熱は、例えば、延伸前若しくは延伸中に、又はこれらの組合せの時に有用であり得る。これにより、熱可塑性層が延伸のためのより高い可撓性を有することが可能になり得、延伸の一様性を改善し得る。また、延伸工程中に適用される熱により、熱可塑性層及び基材中に存在し得る応力差によって生じる積層のカールを低減することができる。熱可塑性層がポリプロピレン裏材である一部の実施形態では、延伸は、35℃〜110℃、50℃〜100℃、又は60℃〜75℃の温度範囲で実行される。一部の実施形態では、熱可塑性層は、延伸後及び積層前に加熱され得る。かかる時点で加熱することは、熱可塑性層のアニーリングにとって有用であり得る。
これらの目的のいずれかのために、例えば、赤外線照射、熱気処理によって、又は加熱チャンバ内で延伸を行うことによって、加熱を行うことができる。熱可塑性裏材を機械方向に延伸するために使用され得るローラを、加熱してもよい。加熱されたローラはまた、例えば、延伸した熱可塑性層をアニールするためにも有用であり得る。アニーリングのために、加熱された熱可塑性層を、急冷用の冷却されたローラ上に導くこともできる。一部の実施形態では、加熱は、加熱から生じ得る雄固定要素への何らかの損傷を最小にするために、熱可塑性層の第2の表面(すなわち、これら個別になった要素が突出している第1の表面の反対側の表面)に適用されるだけである。例えば、これらの実施形態では、熱可塑性裏材の第2の表面と接触しているローラのみが加熱される。加熱は通常、熱可塑性層の溶融温度未満でのみ行われる。
本明細書において開示される方法を実施するために有用な熱可塑性層は、様々な好適な材料から製造可能である。好適な熱可塑性材料の例としては、ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィンホモポリマー、エチレン、プロピレン、及び/又はブチレンのコポリマー、エチレンビニルアセテート及びアクリル酸エチレンなどのエチレンを含有するコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリエチレンブチラート及びポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)などのポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ(ビニルアルコール)、ポリエーテルエーテルケトンなどのケトン、ポリフェニレン硫化物、並びにこれらの混合物が挙げられる。一部の実施形態では、熱可塑性層は、ポリオレフィン、ポリアミド、又はポリエステルのうち少なくとも1つを含む。一部の実施形態では、熱可塑性物質は、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、エチレンコポリマー、プロピレンコポリマー、ブチレンコポリマー、並びにこれらの材料のコポリマー及びブレンド)である。
熱可塑性層がポリプロピレンを含む任意の実施形態では、ポリプロピレンは耐衝撃性改良ポリプロピレンであってもよい。一部の実施形態では、ポリプロピレンは耐衝撃性改良剤を含むことができる。耐衝撃性改良剤としては、エチレンプロピレンエラストマー、エチレンオクテンエラストマー、エチレンプロピレンジエンエラストマー、エチレンプロピレンオクテンエラストマー、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマー、ポリブテン又はこれらの組合せが挙げられる。他の好適な耐衝撃性改良剤としては、スチレン/ブタジエンゴム(SBR)、並びに、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンのトリブロックポリマー、又は、スチレン−イソプレン、スチレン−ブタジエン、スチレン−エチレン−ブチレンの星型ブロックポリマーなどの、ブロックコポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態において、耐衝撃性改良剤は、エチレンオクテンエラストマーである。いくつかの好適な耐衝撃性改良剤が、例えば、Dow Chemical Company,Midland,Mich.から商品名「ENGAGE」で入手できる。
熱可塑性層がポリプロピレンを含む任意の実施形態では、ポリプロピレンは、α及び/又はβ相ポリプロピレンを含むことができる。場合によっては、延伸前のβ相ポリプロピレンを含む上記したような熱可塑性層2は、延伸後にα相ポリプロピレンを含んで、延伸した熱可塑性層10を形成し得る。半結晶性ポリオレフィンは、2種以上の結晶構造を有し得る。例えば、アイソタクチックポリプロピレンは、α(単斜晶)、β(擬似六角晶)、及びγ(三斜晶)形態の、少なくとも3つの異なる形態に結晶化することが知られている。溶融結晶化材料において、優勢な形態はα型、すなわち単斜晶型である。β型は一般に、特定の不均質核が存在するか又は結晶化が温度勾配中若しくはせん断力の存在下に生じるのでなければ、ほんの数パーセントのレベルで生じる。不均質核は、β造核剤として一般に知られており、結晶性ポリマー溶融物中で異物として働く。ポリマーがその結晶化温度(例えば、60℃〜120℃又は90℃〜120℃の範囲内にある温度)を下回って冷えるとき、ゆるく巻かれたポリマー鎖は、β造核剤の周りで向きを合わせて、β相領域を形成する。β型のポリプロピレンはメタ安定形であるが、熱処理及び/又は応力を加えることによって、更に安定なα型へ転換される可能性がある。一部の実施形態では、熱可塑性層はβ造核剤を含む。β型のポリプロピレンが特定の条件下で延伸されるとき、微小孔が様々な量で形成され得る。例えば、Chuら著、「Microvoid formation process during the plastic deformation of β−form polypropylene」,Polymer,Vol.35,No.16,pp.3442−3448,1994、及びChuら著、「Crystal transformation and micropore formation during uniaxial drawing of β−form polypropylene film」,Polymer,Vol.36,No.13,pp.2523−2530,1995を参照のこと。この方法により得られる孔径は、約0.05マイクロメートル〜約1マイクロメートル、一部の実施形態では約0.1マイクロメートル〜約0.5マイクロメートルの範囲にわたり得る。一部の実施形態では、熱可塑性層の少なくとも一部は、延伸後は微小孔性である。
一般に、熱可塑性層がポリプロピレンを含むとき、熱可塑性層は、ポリプロピレンホモポリマー又はプロピレンの繰り返し単位を含有するコポリマーを含み得ることを理解されたい。コポリマーは、プロピレンと少なくとも1種の他のオレフィン(例えば、エチレン又は炭素原子数が4〜12又は4〜8のα−オレフィン)とのコポリマーであってよい。エチレン、プロピレン、及び/又はブチレンのコポリマーが有用であり得る。一部の実施形態では、コポリマーは、ポリプロピレンを最大90、80、70、60、又は50重量%含有する。一部の実施形態では、コポリマーは、ポリエチレン又はα−オレフィンのうちの少なくとも一方を最大50、40、30、20、又は10重量%含有する。熱可塑性層はまた、ポリプロピレンを含む熱可塑性ポリマーのブレンドも含み得る。好適な熱可塑性ポリマーとしては、通常は従来の処理条件において溶融加工可能な、結晶性ポリマーが挙げられる。すなわち、加熱すると、ポリマーは通常は軟化及び/又は溶融して、押出成形機などの従来の機器で加工してシートを形成することが可能になる。結晶性ポリマーは、その溶融物を制御された条件下で冷却すると、幾何学的に規則正しく秩序立った化学構造を自然に形成する。好適な結晶性熱可塑性ポリマーの例としては、ポリオレフィンなどの付加重合体が挙げられる。有用なポリオレフィンとしては、エチレン(例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、若しくは直鎖低密度ポリエチレン)、α−オレフィン(例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、若しくは1−オクテン)のポリマー、スチレンポリマー、並びにかかるオレフィン2種以上のコポリマーが挙げられる。熱可塑性ポリマーのブレンドは、かかるポリマーの立体異性体混合物、例えば、アイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンとの混合物、又はアイソタクチックポリスチレンとアタクチックポリスチレンとの混合物を含んでいてよい。一部の実施形態では、ポリプロピレンを含むブレンドは、ポリプロピレンを最大90、80、70、60、又は50重量%含有する。一部の実施形態では、ブレンドは、ポリエチレン又はα−オレフィンのうちの少なくとも一方を最大50、40、30、20、又は10重量%含有する。
熱可塑性層がβ造核剤を含む本開示による方法の実施形態では、β造核剤は、ポリオレフィンを含む溶融成形シート中にβ型球晶を生成し得る無機又は有機造核剤であってよい。有用なβ造核剤としては、ガンマキナクリドン、キニザリンスルホン酸のアルミニウム塩、ジヒドロキナクリジンージオン及びキナクリジン−テトロン、トリフェネオールジトリアジン(triphenenol ditriazine)、ケイ酸カルシウム、ジカルボン酸(例えば、スベリン酸、ピメリン酸、オルト−フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸)、ジカルボン酸のナトリウム塩、ジカルボン酸の周期表第IIA族金属(例えば、カルシウム、マグネシウム、又はバリウム)との塩、デルタ−キナクリドン、アジピン酸又はスベリン酸のジアミド、種々のインジゴゾル及びシバンチン有機顔料、キナクリドンキノン、N’,N’−ジシクロヘキシル(dicyclohexil)−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(例えばNew Japan Chemical Co.Ltd.から「NJ−Star NU−100」という商品名で入手可能)、アントラキノンレッド、並びにビスアゾイエロー顔料が挙げられる。押出成形フィルムの特性は、β造核剤の選択及びβ造核剤の濃度によって決まる。一部の実施形態では、β造核剤は、γキナクリドン、スベリン酸カルシウム塩、ピメリン酸カルシウム塩、並びにポリカルボン酸のカルシウム塩及びバリウム塩からなる群から選択される。一部の実施形態では、β造核剤はキナクリドン系着色剤Permanent Red E3Bであって、これはQ染料とも呼ばれる。一部の実施形態では、β造核剤は、有機ジカルボン酸(例えば、ピメリン酸、アゼライン酸、O−フタル酸、テレフタル酸、及びイソフタル酸)とII族金属(例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウム)の酸化物、水酸化物、又は酸性塩とを混合することによって形成される。いわゆる2成分開始剤としては、炭酸カルシウムと前に挙げた任意の有機ジカルボン酸との組合せ、及びステアリン酸カルシウムとピメリン酸との組合せが挙げられる。一部の実施形態では、β造核剤は、米国特許第7,423,088号(Maderら)に記載されているような芳香族トリカルボキシアミドである。
本明細書において開示される方法のための熱可塑性層の製造に有用な半結晶性ポリオレフィンにβ造核剤を組み込む便利な手法は、濃縮物を使うものである。濃縮物は、典型的には、最終的な熱可塑性層中で望ましい濃度よりも高濃度の造核剤を含有する高充填ペレット状ポリプロピレン樹脂である。造核剤は濃縮物中に、0.01重量%〜2.0重量%(100〜20,000ppm)の範囲で、一部の実施形態では0.02重量%〜1重量%(200〜10,000ppm)の範囲内で存在する。典型的な濃縮物は、核のないポリオレフィンに、熱可塑性層の全ポリオレフィン含量の0.5重量%〜50重量%の範囲で(一部の実施形態では1重量%〜10重量%の範囲で)配合される。最終的な熱可塑性層中のβ造核剤の濃度範囲は、0.0001重量%〜1重量%(1ppm〜10,000ppm)、一部の実施形態では、0.0002重量%〜0.1重量%(2ppm〜1000ppm)であってもよい。濃縮物はまた、安定化剤、顔料、及び加工剤などの他の添加物も含有し得る。
熱可塑性層中のβ型球晶のレベルは、例えばX線結晶学及び示差走査熱量測定法(DSC)を用いて判定できる。DSCによって、本開示を実施するために有用な熱可塑性層におけるα相及びβ相の両方の融点及び融解熱を判定できる。半結晶性ポリプロピレンでは、β相の融点はα相の融点よりも低い(例えば、約10〜15℃の差)。全融解熱に対するβ相の融解熱の比によって、試料中のβ型球晶の百分率が与えられる。β型球晶のレベルは、フィルム中のα相結晶及びβ相結晶の総量に対して、少なくとも10、20、25、30、40、又は50%とすることができる。これらのβ型球晶のレベルは、延伸される前の熱可塑性層において見られることがある。
本開示に従って延伸された熱可塑性層は塑性変形するので、熱可塑性裏材は全体に非弾性であることを理解されたい。用語「非弾性」は、延伸又は変形からの大幅な復元を示さない任意の材料(例えば厚さ0.002mm〜0.5mmのフィルムなど)を指す。例えば、初期長さよりも少なくとも約50パーセント大きい長さまで延伸された非弾性材料は、その延伸力を解放したとき、復元がその延びの約40、25、20、10又は5パーセント未満である。一部の実施形態では、非弾性材料は、元に戻せる延伸領域を過ぎて延伸される場合に永続的な塑性変形を受けることが可能な、可撓性プラスチックであると見なすことができる。
一部の実施形態では、雄固定要素を有する熱可塑性層は、熱可塑性材料の多層又は多成分溶融ストリームから製造され得る。この結果、主に裏材を形成するものとは異なる熱可塑性材料から少なくとも部分的に形成される雄固定要素を得ることができる。多層溶融ストリームから製造された直立柱体の様々な構成が、例えば、米国特許第6,106,922号(Cejkaら)に示されている。多層又は多成分溶融ストリームは、任意の従来の方法によって形成することができる。多層溶融ストリームは、米国特許第4,839,131号(Cloeren)に示されているような多層フィードブロックによって形成することができる。異なる成分を持つドメイン又は領域を有する多成分溶融ストリームを使用することもできる。有用な多成分溶融ストリームを、包含共押出ダイ又は他の既知の方法(例えば、米国特許第6,767,492号(Norquistら)に示されているもの)の使用によって形成することができる。
一部の実施形態では、熱可塑性層は、機械方向に延伸されてその幅が減少する前に、二軸延伸又は横方向に延伸され得る。機械横方向への延伸は、例えば、分岐レール又は分岐ディスクを使用する連続ウェブ上で実行可能である。熱可塑性層の一軸及び連続二軸延伸を可能にする、汎用的な延伸方法は、フラットフィルムテンタ装置を用いる。かかる装置は、複数のクリップ、グリッパ、又は他のフィルム縁部把持手段を、熱可塑性ウェブの両側の両縁部に沿って使用して、分岐レールに沿って異なる速度で把持手段を推進させることによって、所望の方向に一軸及び二軸延伸が得られるように、熱可塑性層を把持する。一般に、機械方向のクリップ速度を速くすると、機械方向の延伸がもたらされる。機械方向及び横方向に対してある角度で延伸することも、フラットフィルムテンタ装置によって可能である。一軸延伸及び二軸延伸はまた、例えば、米国特許第7,897,078号(Petersenら)及び本明細書で引用された文献において開示されている方法及び装置によっても達成され得る。フラットフィルムテンタ延伸装置は、例えば、Bruckner Maschinenbau GmbH,Siegsdorf、独国、から市販されている。
本開示による方法では、熱可塑性層と雄固定要素とは一体である(すなわち、全体にユニットとして同時に形成され、単体となっている)。熱可塑性層上の直立柱体などの雄固定要素を、例えば、雄固定要素の逆形状を有する空洞部を有する連続的に移動する型表面上に熱可塑性材料を供給することによって、製造することができる。この熱可塑性材料を、2つのローラによって形成されたニップ、又はダイ面とローラ表面との間のニップの間に通過させることができ、これらのローラのうちの少なくとも一方が空洞部を有する。ニップによって提供される圧力が、それらの空洞部内に樹脂を押し込む。一部の実施形態では、より容易に空洞部に充填するために、真空を使用して空洞部を空にすることができる。ニップは、凝集性の熱可塑性層が空洞部を覆って形成されるように、十分に大きな間隙を有する。型表面及び空洞部を、一体成形された熱可塑性層及び直立柱体をストリッパローラなどにより型表面から剥離する前に、任意選択的に空冷又は水冷することができる。一部の実施形態では、雄固定要素を上記した型表面の変形により製造することができ、この場合に空洞部は、主空洞部内に複数のより小さな空洞部を有する主空洞部を含む。
直立柱体を形成するための好適な型表面としては、複数の空洞部を周辺に画定する一連のプレートから形成されるもののようなツールロールが挙げられ、例えば米国特許第4,775,310号(Fischer)に記載されているものが挙げられる。空洞部は、例えば、ドリル加工又はフォトレジスト技術によって、それらのプレートに形成することができる。他の好適なツールロールとしては、ワイヤーラップロールを挙げることができ、これは、それらの製造方法と共に、例えば、米国特許第6,190,594号(Gormanら)に開示されている。直立柱体を有する熱可塑性層を形成するための方法の別の例としては、米国特許第7,214,334号(Jensら)に記載されているような、直立柱体形状の空洞のアレイを画定する可撓性の型ベルトを用いるものが挙げられる。直立柱体を有する熱可塑性層を形成するための、更なる他の有用な方法は、米国特許第6,287,665号(Hammer)、同第7,198,743号(Tuma)、及び同第6,627,133号(Tuma)に見出すことができる。
前述の型表面のいずれにおいても、空洞部及び得られた雄固定要素は、様々な断面形状を有し得る。例えば、空洞部及び雄固定要素又は柱体の断面形状は、正多角形であってもなくてもよい多角形(例えば、正方形、長方形、菱形、六角形、五角形若しくは十二角形)であってもよいか、又は、柱体の断面形状は湾曲していてもよい(例えば、円形若しくは楕円形)。例えば空洞部からより簡単に取り出すために、雄固定要素はその基部からその遠位端まで先細になり得るが、これは必須ではない。空洞部は、ループ係合ヘッドを有する柱体の逆形状を有することができるか、又は、ループ係合ヘッドを有さないが所望に応じてループ係合ヘッドへと形成可能な直立柱体の逆形状を有することができる。
空洞部から出る際に形成される直立柱体はループ係合ヘッドを有さないが、米国特許第5,077,870号(Melbyeら)に記載されているようなキャッピング方法によって、ループ係合ヘッドを後から形成することができる。典型的には、キャッピング方法は、熱及び/又は圧力を使用して直立柱体の先端部分を変形させることを含む。この熱及び圧力は、双方が使用される場合には、順次に、又は同時に加えることが可能である。雄固定要素の形成はまた、例えば米国特許第6,132,660号(Kampfer)に記載されているように、キャップの形状を変えるステップも含むことができる。かかるキャッピングのステップ及びキャップ修正のステップは、本明細書において開示される積層体製造方法においては、延伸前に又は延伸後に実行することができる。
熱可塑性層上に雄固定要素を形成する別の有用な方法は、例えば、米国特許第4,894,060号(Nestegard)に記載されている異形押出であり、この特許は参照によりその全体が本明細書に援用される。通常、この方法では、熱可塑性樹脂フローストリームが、(例えば、電子放電線機械加工により切削された)パターン化されたダイリップに通されて、ウェブ方向の***部を有するウェブが形成され、これら***部がスライスされ、ウェブが延伸されて、分離された突起が形成される。***部は、フック先行体を形成し、形成されるべき(例えば、ループ係合ヘッドを有する)雄固定要素の断面形状を呈し得る。***部が、***部の伸張に沿って離散した複数の位置で横方向にスライスされて、形成されるべき雄固定要素の長さに本質的に対応する***部方向の長さを有する、***部の個別になった各部分が形成される。複数の雄固定要素が付いている第1の表面を有する熱可塑性層を準備することは、かかる***部を横方向にスライスすることによって実行可能であり、熱可塑性層を塑性変形するように延伸すると、雄固定要素の分離がもたらされる。
雄固定要素がループ係合張り出し部を有する直立柱体である、上記した実施形態のいずれに関しても、用語「ループ係合」は、雄固定要素がループ材料に機械的に取り付け可能であることに関連している。一般に、ループ係合ヘッドを有する雄固定要素は、ヘッド形状が柱体の形状とは異なっている。例えば、雄固定要素は、キノコ(例えば、茎部に対して肥大した、円形又は卵形の頭部を有するもの)、フック、ヤシの木、釘、T字、又はJ字の形状とすることができる。一部の実施形態では、各雄固定要素は、直立柱体と、複数の(すなわち少なくとも2つの)方向に、一部の実施形態では少なくとも2つの直交する方向に延びるループ係合張り出し部を有する、キャップと、を含む。例えば、雄固定要素は、キノコ、釘、ヤシの木、又はT字の形状とすることができる。一部の実施形態では、雄固定要素にはキノコ頭部が(例えば、熱可塑性層から遠位にある卵形又は丸形のキャップが)設けられている。雄固定要素のループ係合可能性の判定及び規定を、標準的な織布、不織布、又はニット材料を用いて行ってもよい。ループ係合ヘッドを備える雄固定要素の領域は、一般に、ループ状材料との組合せで、ループ係合ヘッドを備えない柱体の領域よりも、高い剥離強度、高い動的せん断強度、又は高い動摩擦のうちの少なくとも1つをもたらすことになる。「ループ係合張り出し部」又は「ループ係合ヘッド」を有する雄固定要素は、固定要素の先行体である上記した***部(例えば、異形押出されその後切断されて、***部方向に延伸されて雄固定要素を形成する、細長い***部)を含まない。かかる***部は、それらが切断及び延伸されるまではループに係合することができない。かかる***部もまた、雄固定要素とは見なされない。通常、ループ係合ヘッドを有する雄固定要素は、最高約1(一部の実施形態では、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、又は0.45)ミリメートル(mm)の最大幅寸法(高さに対して垂直ないずれかの寸法)を有する。一部の実施形態では、雄固定要素は、最大3mm、1.5mm、1mm、又は0.5mmの(裏材から上の)最大高さを有し、一部の実施形態では、少なくとも0.03mm、0.05mm、0.1mm、又は0.2mmの最小高さを有する。一部の実施形態では、雄固定要素は、少なくとも約0.25:1、1:1、2:1、3:1、又は4:1のアスペクト比(すなわち、熱可塑性層の基部における高さ対幅の比)を有する。
本開示による方法は、様々な厚さを有する熱可塑性層に有用であり得る。一部の実施形態では、本明細書において開示される方法に好適な熱可塑性層の厚さは、延伸前で、最大約400マイクロメートル(μm)、300マイクロメートル、又は250マイクロメートル、かつ少なくとも約30マイクロメートル又は50マイクロメートルであり得る。この厚さは、熱可塑性層の第1の主表面から突出する雄固定要素の高さを含まない。一部の実施形態では、熱可塑性層の厚さは、延伸前で、30〜約225マイクロメートル、約50〜約200マイクロメートル、又は約50〜約150マイクロメートルの範囲内である。一部の実施形態では、熱可塑性層は、個別になった要素を除けば厚さが実質的に均一である。厚さが実質的に均一である熱可塑性層では、熱可塑性層における任意の2つの地点の間の厚さの差は、最大5、2.5、又は1パーセントであり得る。一部の実施形態では、延伸後、熱可塑性層は、最大80μm、75μm、70μm、65μm、60μm、55μm、又は50μmの平均厚さを有する。一部の実施形態では、延伸後の熱可塑性層の平均厚さは、20μm〜80μm、30μm〜75μm、40μm〜75μm、20μm〜70μm、30μm〜70μm、又は20μm〜50μmの範囲内である。一般に、熱可塑性層は、延伸前にも延伸後にも、貫通穴を有さない。一部の実施形態では、熱可塑性層は、個別になった要素を除けば実質的に平らである。実質的に「平ら」な熱可塑性層とは、平坦な表面上に置かれるとき実質的に同じ平面を占める、熱可塑性層の部分を指す。この点において用語「実質的に」は、熱可塑性層の一部が、最高15、10、又は5度まで面外にあってもよいことを意味し得る。実質的に平らである熱可塑性層は、波形化されておらず、複数の山及び谷を有するように異形押出成形されていない。
熱可塑性層の第1の表面上の雄固定要素は、少なくとも1平方センチメートル(cm2)当たり10個(1平方インチin2当たり63個)の初期(すなわち、延伸前の)密度を有し得る。例えば、雄固定要素の初期密度は、少なくとも100個/cm2(635個/in2)、248個/cm2(1600個/in2)、394個/cm2(2500個/in2)、又は550個/cm2(3500個/in2)であってもよい。一部の実施形態では、雄固定要素の初期密度は、最大1575個/cm2(10000個/in2)、最大約1182個/cm2(7500個/in2)、又は最大約787個/cm2(5000個/in2)であってもよい。例えば、10個/cm2(63個/in2)〜1575個/cm2(10000個/in2)、又は100個/cm2(635個/in2)〜1182個/cm2(7500個/in2)の範囲の初期密度が有用であり得る。雄固定要素の間隔は、均一である必要はない。一部の実施形態では、雄固定要素の延伸後の密度は、最大約1182個/cm2(7500個/in2)、又は最大約787個/cm2(5000個/in2)であり得る。例えば、2個/cm2(13個/in2)〜1182個/cm2(7500個/in2)、124個/cm2(800個/in2)〜787個/cm2(5000個/in2)、248個/cm2(1600個/in2)〜550個/cm2(3500個/in2)、又は248個/cm2(1600個/in2)〜394個/cm2(2500個/in2)の範囲の延伸後の密度が有用であり得る。ここでも、雄固定要素の間隔は、均一である必要はない。
一部の実施形態では、熱可塑性層を延伸することは、所定の密度を達成するように雄固定要素の密度を調節することを含む。所定の密度は、熱可塑性フィルム上の雄固定要素の所望の性能に応じて選択することができる。所望の性能は、繊維質基材に対する所望のせん断強度又は剥離強度であり得る。繊維質基材は、標準的な織布、不織布、若しくはニット材料とすることができるか、又は、例えば吸収性物品において有用な、任意の繊維質基材とすることができる。
上記したように、熱可塑性層がβ造核剤を含むとき、フィルムの延伸により、フィルムの少なくとも一部に微小孔がもたらされる。理論に束縛されたくはないが、フィルムを少なくとも一方向に延伸すると、例えば、フィルムにおいて半結晶性ポリプロピレンはβ型結晶構造からα型結晶構造へと転換され、フィルムに微小孔が形成されると考えられる。雄固定要素は、フィルムの残りの部分から様々な影響を受ける。例えば、裏材上の雄固定要素(例えば、柱体及びキャップ)は通常、延伸によって影響を受けないか又は裏材よりもはるかに小さい程度にしか影響を受けず、したがって、β型結晶構造が維持され、一般に裏材よりもより低いレベルの微小孔構造を有する。結果として得られる延伸した熱可塑性層は、いくつかの特異な性質を有し得る。例えば、熱可塑性層に形成された微小孔は応力白化と共に不透明な白色フィルムをもたらす可能性があるが、雄固定要素は透明である。本明細書において開示される熱可塑性層に微小孔が形成されると、フィルムの密度が低下する。結果として得られる低密度の熱可塑性層は、触ったとき、厚さが同等であるが密度がより高いフィルムよりも柔らかく感じられる。フィルムの密度は、従来の方法を用いて、例えばピクノメータ中のヘリウムを用いて、測定することができる。フィルムの柔軟性は、例えば、ガーレー剛性を用いて測定することができる。一部の実施形態では、β造核剤を含む雄固定要素が付いている第1の表面を有する熱可塑性層の延伸は、50℃〜110℃、50℃〜90℃、又は50℃〜80℃の温度範囲で実行される。一部の実施形態では、より低温での延伸は、例えば、25℃〜50℃の範囲内で可能であり得る。β造核剤を含む雄固定要素の付いた第1の表面を有する熱可塑性層は、典型的には、最大70℃の(例えば、50℃〜70℃又は60℃〜70℃の範囲内の)温度で延伸され、依然として微小孔構造を問題なく達成することができる。
本明細書において開示される方法における塑性変形の点まで延伸した後、熱可塑性層は、延伸が誘起した分子配向を有することになる。熱可塑性層における延伸が誘起した分子配向は、熱可塑性層の複屈折特性の標準的な分光分析によって検出することができる。
様々な方法、例えば、熱融着、(例えば感圧接着剤を用いる)接着結合、超音波溶接、レーザ溶接、圧縮結合、表面結合、又はこれらの組合せを使用して、熱可塑性層を基材に積層することができる。熱可塑性層をニップにおいて基材に接合することができるか、又は、積層体をウェブ下流でニップして、そこから熱可塑性層を基材に接合することができる。
典型的には、熱可塑性層の第2の表面(すなわち、雄固定要素を有する第1の表面の反対側の表面)は、基材に接合している。基材は、連続的(すなわち、どのような貫通穴も有さない)又は断続的(例えば、貫通穿孔又は貫通孔を備える)であり得る。基材は、織りウェブ、不織ウェブ、織物、プラスチックフィルム(例えば、単層若しくは多層フィルム、共押出フィルム、横方向積層フィルム、又は発泡層を含むフィルム)、及びこれらの組合せを含む、様々な好適な材料を含むことができる。用語「不織」は、個々の繊維又はスレッドが差し挟まれているが(例えば編地の場合のように)識別可能であるようにはなっていない構造を有する材料を指す。不織ウェブの例としては、スパンボンドウェブ、スパンレースウェブ、エアレイドウェブ、メルトブローンウェブ、及び結合カードウェブが挙げられる。一部の実施形態では、基材は、繊維質材料(例えば、織布、不織布、又はニット材料)である。有用な繊維質材料は、天然繊維(例えば、木質若しくは綿繊維)、合成繊維(例えば、熱可塑性繊維)、又は天然繊維と合成繊維の組合せから製造されてもよい。熱可塑性繊維を形成するために好適な材料の例としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、エチレンコポリマー、プロピレンコポリマー、ブチレンコポリマー、並びに、これらのポリマーのコポリマー及びブレンド)、ポリエステル、及びポリアミドが挙げられる。繊維はまた、例えば、ある熱可塑性材料のコア及び別の熱可塑性材料のシースを有する、多成分繊維であってもよい。一部の実施形態では、基材は、例えば、少なくとも1つのメルトブローン不織布の層及び少なくとも1つのスパンボンド不織布の層、又は不織布材料の任意の他の好適な組合せを有する、多層の不織布材料を含む。例えば、基材は、スパンボンド−メルトボンド−スパンボンド、スパンボンド−スパンボンド、又はスパンボンド−スパンボンド−スパンボンドの多層材料であってもよい。又は、基材は、不織布層及び高密度フィルム層を含む、複合ウェブであり得る。フィルム及び不織布層の様々な組合せが、有用であり得る。有用な基材は、特定の用途にとって望まれる任意の好適な基本重量又は厚さを有し得る。繊維質基材について、基本重量は、例えば、1平方メートル当たり少なくとも約5、8、10、20、30、又は40グラムから、1平方メートル当たり約400、200、又は100グラムまでの範囲であってもよい。基材は、最大約5mm、約2mm、若しくは約1mmの厚さ、及び/又は、少なくとも約0.1、約0.2、若しくは約0.5mmの厚さであってよい。
本開示の方法によって製造された積層体においては、熱可塑性層及び基材は、実質的に連続的に結合されるか又は断続的に結合される。「実質的に連続的に結合した」とは、スペース状又はパターン状の中断なしに結合されることを指す。熱可塑性層及び基材のうちの少なくとも一方が熱融着可能である場合、加熱した平滑な表面のロールニップの間に熱可塑性層及び基材を通過させることによって、又は、熱可塑性層若しくは基材の一方に実質的に連続的な接着剤コーティング若しくはスプレーを適用し、その後これを熱可塑性層若しくは基材の他方と接触させることによって、実質的に連続的に結合した積層体を形成できる。「断続的に結合した」とは、連続的に結合していないという意味であり得、熱可塑性層と基材とが、離散して間隔の空いた複数の地点で互いに結合されていること、又は、離散して間隔の空いた複数の領域内で互いに実質的に結合されていないことを指す。例えば、超音波点結合によって、熱可塑性層及び基材のうちの少なくとも一方が熱融着可能である場合はこれらを加熱した型押エンボスロールニップに通すことによって、又は、離散して間隔の空いた接着剤の複数の領域を熱可塑性層若しくは基材の一方に適用し、その後これを熱可塑性層若しくは基材の他方と接触させることによって、断続的に結合した積層体を形成できる。熱可塑性層と基材の間に接着性コーティングされた有孔層又はスクリムを供給することによって、断続的な結合積層体を製造することもできる。
熱可塑性層が熱可塑性層を不透明にする微小孔構造を含むとき、熱可塑性層と基材を熱又は圧力のうちの少なくとも一方を用いて結合すると、結合部位において微小孔性構造が破壊される可能性がある。結合部位は、周囲の不透明な微小孔性領域と対照的な、より多孔性の低いシースルー領域であってよい。用語「シースルー」は、透明である(すなわち、光の通過を許し、向こう側にある物体を明瞭に見ることが可能である)こと、又は、半透明である(すなわち、光の通過を許すが向こう側にある物体を明瞭に見ることはできない)ことの、いずれかを指す。シースルー領域は、着色されていても無色でもよい。「シースルー」領域は肉眼で見える程度に十分に広いことを理解されたい。基材は熱可塑性層とは対照的な色を有してもよく、この色は、微小孔性構造が破壊されると結合部位において目に見える場合がある。熱可塑性層又は基材のうちの少なくとも一方に染料又は顔料を含めることによって、熱可塑性層と基材を対照的な色にすることができる。熱又は圧力のうちの少なくとも一方によって作られる結合部位は、多種多様な幾何学形状、数字、図像、シンボル、アルファベット文字、バーコード、又はこれらの組合せを有することができる。結合部位はまた、顧客によって容易に識別され得る社名、ブランド名、又はロゴを含むこともできる。熱可塑性層における微小孔性構造を、積層前に熱又は圧力のうちの少なくとも一方によって破壊可能とすることもできる。このように、多種多様な幾何学形状、数字、図像、シンボル、アルファベット文字、バーコード、又はこれらの組合せによって、熱可塑性層を、これが基材にどのように積層されているかに関わらずカスタマイズすることができる。
本開示による方法の一部の実施形態では、表面結合又はロフト維持結合技法を使用して、熱可塑性層を繊維質基材に接合することができる。用語「表面結合」は、繊維質材料の結合を指すとき、繊維の少なくとも一部分の繊維表面の部分が、表面結合された領域において、熱可塑性層の第2の表面の元の(結合前の)形状を実質的に保存し、かつ熱可塑性層の第2の表面の少なくともいくつかの部分を露出された状態で実質的に保存するように、熱可塑性層の第2の表面に溶融結合されることを意味する。定量的に、表面結合された繊維は、表面結合された繊維の表面積の少なくとも約65%が、繊維の結合部分における熱可塑性層の第2の表面の上に見えるという点で、埋め込まれた繊維と区別され得る。繊維の表面積の全体を可視化するために、2つ以上の角度からの検査が必要である場合がある。用語「ロフト維持結合」は、繊維質材料の結合を指すとき、結合された繊維質材料が、結合工程の前に又は結合工程がない場合に材料が呈するロフトの、少なくとも80%のロフトを含むことを意味する。本明細書で使用する場合、繊維質材料のロフトは、ウェブによって占有される全体積(繊維、並びに、繊維によって占有されない材料の間隙を含む)と、繊維の材料のみによって占有される体積との比である。繊維質基材の一部分だけに熱可塑性層の第2の表面が結合されている場合、結合された領域における繊維質基材のロフトを結合されていない領域におけるウェブのロフトと比較することによって、維持されたロフトを容易に確認することができる。一部の状況においては、例えば、繊維質基材の全体に熱可塑性層の第2の表面が結合されている場合、結合された基材のロフトを、結合される前の同じ基材の試料のロフトと比較するのが便利な場合がある。これらの実施形態のいくつかでは、接合は、繊維質基材ウェブが移動する間、加熱した気体状流体(例えば、周囲空気、除湿された空気、窒素、不活性気体、又は他の気体混合物)を繊維質基材ウェブの第1の表面上に衝突させることと、連続ウェブが移動している間、加熱した流体を熱可塑性層の第2の表面上に衝突させることであって、第2の表面は熱可塑性層上の雄固定要素の反対側にある、ことと、繊維質基材ウェブの第1の表面を熱可塑性層の第2の表面と接触させて、繊維質基材ウェブの第1の表面が熱可塑性層の第2の表面に溶融結合(例えば、表面結合、又はロフト維持結合により結合)されるようにすることと、を含む。加熱したガス状流体を繊維質基材ウェブの第1の表面上に衝突させること、及び、加熱したガス状流体を熱可塑性層の第2の表面上に衝突させることは、順次に、又は同時に実行できる。加熱したガス状流体を用いて連続熱可塑性ウェブを繊維質基材ウェブに接合するための更なる方法及び装置を、米国特許出願公開第2011/0151171号(Bieglerら)及び米国特許第9,096,960号(Bieglerら)に見出すことができる。
一部の実施形態では、基材の、少なくとも熱可塑性層に接合された部分は、全体に伸張性がない。これらの実施形態のうちのいくつかでは、基材の熱可塑性層に接合された部分は、最高10(一部の実施形態では、最高9、8、7、6、又は5)パーセントのMD又はCDにおける延びを有する。一部の実施形態では、基材はひだ付きでない。本開示の方法によって製造された積層体の他の実施形態では、基材の1つ以上の区域は、力を加えたとき少なくとも1方向に伸張し力が除去されるとほぼそれらの元の寸法に戻る、1つ以上の弾性的な伸張性がある材料を備え得る。
一部の実施形態では、基材は伸張性があるが非弾性でもよい。換言すれば、基材は、少なくとも5、10、15、20、25、30、40又は50パーセントの延びを有し得るが、延びからの復元が実質的にない可能性がある(例えば、最高40、25、20、10、又は5パーセントの復元)。用語「伸張性がある」は、材料又は材料繊維の構造を破壊することなく、かけられた延伸力の方向に伸張又は延長できる材料を指す。一部の実施形態では、伸張可能な基材は、その弛緩した長さよりも少なくとも約5、10、15、20、25、又は50パーセント長い長さまで、材料又は材料繊維の構造を破断することなく延伸され得る。好適な伸張性がある支持材料としては、不織布(例えば、スパンボンド、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド、又はカード不織布)を挙げることができる。一部の実施形態では、不織布は、高伸度カード不織布(例えば、HEC)であってもよい。他の延伸性がある非弾性の支持材料としては、熱可塑性フィルムが挙げられ、これには熱可塑性層に関して上記した材料のいずれかから製造されるものが含まれる。延伸性がある非弾性のフィルムは、一部の実施形態における熱可塑性層よりも薄くてもよい。
本開示による方法の一部の実施形態では、基材は弾性材料を含む。用語「弾性」とは、延伸又は変形からの回復を呈する任意の材料(厚さ0.002mm〜0.5mmのフィルムなど)を指す。弾性材料とは、復元特性を有する延伸性がある材料である。一部の実施形態では、材料は、延伸力が適用されると、その初期長さよりも少なくとも約25(一部の実施形態では、50)パーセント長い長さまで延伸することができ、かつ、その延伸力が解除されると、その延びの少なくとも40、50、60、70、80、又は90パーセントを復元できる場合には、弾性であると見なすことができる。弾性基材は、フィルム又は繊維質のものでもよい。弾性フィルム又は繊維質支持材料を製造するためのポリマーの例としては、ABAブロックコポリマー、ポリウレタンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー(例えば、メタロセンポリオレフィンエラストマー)、オレフィンブロックコポリマー、ポリアミドエラストマー、エチレン酢酸ビニルエラストマー、及びポリエステルエラストマーなどの、熱可塑性エラストマーが挙げられる。ABAブロックコポリマーエラストマーは、一般に、Aブロックがポリスチレン系であり、Bブロックが共役ジエン(例えば、低級アルキレンジエン)から調製される、エラストマーである。Aブロックは、主に置換(例えば、アルキル化)若しくは非置換スチレン系部分(例えば、ポリスチレン、ポリ(アルファメチルスチレン)、又はポリ(t−ブチルスチレン))から概して形成され、1モル当たり約4,000〜50,000グラムの平均分子量を有する。Bブロックは概して、置換又は非置換であり得る共役ジエン(例えば、イソプレン、1,3−ブタジエン、又はエチレン−ブチレンモノマー)から主に形成され、1モル当たり約5,000〜500,000グラムの平均分子量を有する。Aブロック及びBブロックは、例えば、線状、放射状、又は星形構成で構成されてもよい。ABAブロックコポリマーは、複数のAブロック及び/又はBブロックを含有してもよく、これらのブロックは同一の又は異なるモノマーから製造されてもよい。典型的なブロックコポリマーは、Aブロックが同一であっても異なっていてもよい線状ABAブロックコポリマーであるか、又は、Aブロックで主に停止する4つ以上のブロックを有するブロックコポリマーである。マルチブロックコポリマーは、例えば、より粘着性のあるエラストマーフィルムセグメントを形成する傾向がある、ある特定の割合のABジブロックコポリマーを含有してもよい。他の弾性的ポリマーを、ブロックコポリマーエラストマーとブレンドすることができ、様々な弾性的ポリマーを、様々な程度の弾性特性を有するようにブレンドしてもよい。
数多くのタイプの熱可塑性エラストマーが市販されており、これらには、BASF(米国ニュージャージー州Florham Park)から、「STYROFLEX」の商品名で市販されているもの、Kraton Polymers(米国テキサス州Houston)から「KRATON」の商品名で市販されているもの、Dow Chemical(米国ミシガン州Midland)から「PELLETHANE」、「INFUSE」、「VERSIFY」、又は「NORDEL」の商品名で市販されているもの、DSM(オランダ、Heerlen)から「ARNITEL」の商品名で市販されているもの、E.I.duPont de Nemours and Company(米国デラウエア州Wilmington)から「HYTREL」の商品名で市販されているもの、ExxonMobil(米国テキサス州Irving)から「VISTAMAXX」の商品名で市販されているもの、その他が含まれる。
弾性フィルム基材はエラストマーの単層を有し得るか、又は、この基材は、エラストマーで製造されるコアと、比較的非弾性なポリマー、例えば熱可塑性裏材に関して上記したもののいずれかによる、少なくとも1つの表面薄層と、を有し得る。多層弾性基材の材料及び厚さは、基材がある程度伸ばされるとき表面薄層が塑性変形を受けるように選択することができる。弾性層が復元するとき、比較的非弾性な表面薄層は、弾性コア上にテクスチャ表面を形成する。かかる弾性フィルムは、例えば、米国特許第5,691,034号(Kruegerら)に記載されている。
本開示による方法は通常、熱可塑性層の連続ウェブ及び基材の連続ウェブによって実行される。熱可塑性層及び基材は任意の有用な幅を有してもよいが、熱可塑性層及び基材の幅は、所与の用途のために望まれるサイズを有するように選択することができる。例えば、一部の実施形態では、延伸前、熱可塑性層は、10ミリメートル(mm)〜60mm(一部の実施形態では、10mm〜50mm、10mm〜40mm、又は10mm〜30mm)の幅を有する。
複数の雄固定要素が付いている第1の表面を有する熱可塑性層を、上記した方法のいずれかを使用して、10mm〜60mm、10mm〜40mm、又は10mm〜30mmの幅で記載したように製造することができるが、一部の実施形態では、この幅の狭い熱可塑性層は、より広い幅を有する熱可塑性層から切断される。(例えば、少なくとも100mm、200mm、250mm、500mm、又は750mmの幅を有する)。例えば、フィルムの両側の2つの側縁部の間の所望の距離の少なくとも2倍の幅を有する幅広のウェブに関して、本方法は、この幅広のウェブをスリッティングして熱可塑性層のうちの少なくとも2つを形成することを、更に含み得る。これらの実施形態では、熱可塑性層のうちの少なくとも2つを同時に延伸することができる。一部の実施形態では、熱可塑性層のうちの少なくとも2つは、延伸の少なくとも一部の間、幅広のウェブに接続されたままである。これは、幅広のウェブをスリッティングすること、熱可塑性層のうちの少なくとも2つを延伸すること、及び熱可塑性層を基材に積層することが、全てインラインで実行され得る、1つの手法である。
本開示の方法では、延伸すると(その実施形態のいずれかにおいて上記したように)最大60mmの幅が達成され、積層前にこの幅を達成するために後続のスリッティングするステップは必要ないことが理解されるが、一部の実施形態では、延伸後及び積層前に、熱可塑性層がスリッティングされてもよい。例えば、最大60mm、50mm、40mm、又は30mmの幅を有する熱可塑性層を半分にスリッティングし、各半部をインラインで積層して吸収性物品の左側部分及び右側部分で使用することが有用であり得る。別の例では、最大60mm、50mm、40mm、又は30mmの幅を有する熱可塑性層を4分の1にスリッティングし、各4分の1の部分をインラインで積層して、同時に進行する2つの製造ラインにおいて吸収性物品の左側部分及び右側部分で使用することが有用であり得る。熱可塑性層を半分又は4分の1に切断することが望ましい場合があるが、熱可塑性層を5つ以上のレーンに切断することは通常、インラインの積層に関しては行われない。
上述したように、延伸後の熱可塑性層における延伸が誘起した分子配向は、複屈折特性の標準的な分光分析によって判定可能である。(例えば、10mm〜50mm、10mm〜40mm、又は10mm〜30mmの幅を有する)幅の狭いウェブが延伸されるとき、熱可塑性層は、より幅広の(例えば、少なくとも100mm、200mm、250mm、500mm、又は750mmの幅を有する)ウェブが延伸され、その後より幅の狭いウェブへとスリッティングされるときとは異なる複屈折特性を有する可能性がある。ウェブの中心は通常、縁部よりも大きく延伸されるので、狭い寸法にスリッティングされその後延伸された熱可塑性層の縁部は、より幅広のウェブを延伸しその後狭い寸法にスリッティングして形成された熱可塑性層の縁部とは、異なるリターダンス特性を有し得る。リターダンスは、複屈折材料によって屈折される光の2つの偏光成分のリターダンスがどの程度ずれているかを指す。複屈折率は膜厚を用いてリターダンスから計算できる。より幅広のウェブを延伸しその後より狭い寸法へとスリッティングすることによって用意されたウェブは、その縁部の近くで、幅の狭いウェブを延伸することによって用意された熱可塑性層よりもリターダンスが急激に減少し得ることが観察される。縁部からのリターダンスの減少は、試料縁部から開始して試料縁部から500マイクロメートルで終了する、延伸方向に対して横断する方向の線に沿って、フィルム試料におけるリターダンスを連続的に測定することによって判定可能である。次いで、この距離にわたる平均リターダンスが計算される。次に、リターダンスが平均リターダンスの75%に達する縁部からの距離が測定される。これを75%平均リターダンス距離と呼ぶことができる。縁部から500マイクロメートル以内でのリターダンスの変化が小さくなるほど、この距離は小さくなることになる。他方で、熱可塑性層の縁部から500マイクロメートル以内でのリターダンスの大きな変化は、結果的により大きな75%平均リターダンス距離をもたらし、「縁部効果」を示している可能性がある。
縁部効果はまた、第1の縁部から第1の縁部から500マイクロメートルの場所までの垂線に沿った平均リターダンスが存在し、平均リターダンスの75%が観察される第1の縁部からの距離が少なくとも10マイクロメートルである、リターダンスプロファイルとしても記述できる。一般に、第2の縁部から第2の縁部から500マイクロメートルの場所までの垂線に沿った平均リターダンスもまた存在し、平均リターダンスの75%が観察される第2の縁部からの距離は少なくとも10マイクロメートルである。
一部の実施形態では、熱可塑性層は、10マイクロメートル、15マイクロメートル、又は20マイクロメートルよりも大きい75%平均リターダンスを有する。一部の実施形態では、狭い寸法へとスリッティングされその後延伸される熱可塑性層は、より幅広のウェブを延伸しその後これをより狭い寸法へとスリッティングすることにより形成される熱可塑性層の75%平均リターダンス距離の、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、又は少なくとも2.5倍の75%平均リターダンス距離を有する。これらの測定は、現在はPerkinElmer Inc.,Waltham,Mass.、の一部であるCRi Inc.のLC−Polscopeシステムを備えた、Microsystems GmbH,Wetzlar、独国、から入手される偏光顕微鏡「LEICA DMRXE」、タイプTCSを使用し、Q Imaging Retiga Exi FAST1394カメラを使用して行うことができる。更なる詳細を以下の実施例に示す。延伸した熱可塑性層におけるリターダンスプロファイルに関する更なる情報が、参照により本明細書に組み込まれる、国際出願公開第WO2017/112601(Gilbertら)及び同第WO2017/112604号(Gilbertら)に記載されている。
本開示の方法により製造された積層体を、例えば、機械横方向に切断して、所与の用途にとって望ましい任意のサイズのパッチを提供することができる。かかるパッチは固定パッチと見なすことができる。
本開示の方法に従って製造された積層体は、例えば吸収性物品において有用である。一部の実施形態では、基材は吸収性物品(例えば、おむつ又は大人用の失禁用物品)の構成要素である。吸収性物品の構成要素は例えば、固定タブ又はおむつの耳部であり得る。本開示に従って製造された積層体を含み得る吸収性物品620の一実施形態の概略斜視図を、図4に示す。吸収性物品620は、トップシート側661及びバックシート側662を有する、シャーシを含む。このシャーシはまた、後側腰領域665から対向する前側腰領域666へと延びる、互いに反対側にある第1の長手方向縁部664a及び第2の長手方向縁部664bも有する。吸収性物品660の長手方向とは、後側腰領域665と前側腰領域666との間に延びる、方向「L」を指す。したがって、用語「長手方向」とは、例えば開放構成にあるときの、吸収性物品660の長さを指す。吸収性物品620は、トップシートとバックシートとの間の吸収性コア663と、長手方向縁部664a及び664bの少なくとも一部に沿った、レッグカフを提供するための弾性材料669と、を有する。
前側腰領域666又は後側腰領域665のうちの少なくとも一方、より典型的には後側腰領域665は、少なくとも1つの固定タブ640を備える。図4に示す実施形態における固定タブは、本開示による方法によって製造された積層体600を備える。積層体600は、不織布基材604と、メカニカルファスナーとして有用な延伸された熱可塑性層605と、を含む。積層体600の縁部640aは、後側腰領域665内のシャーシの第1の長手方向縁部664aに、接着剤(図示せず)を使用して結合されている。示された実施形態では、固定タブの使用者側端部にある不織布基材604は熱可塑性層605の長さを上回り、これによりフィンガーリフトが提供される。固定タブ640は更に、任意選択的に、固定タブ上に存在し得る接着剤の任意の露出された部分に接触させるための、剥離テープ(図示せず)を備える。剥離テープは、接着剤を使用しておむつ後側腰領域665に接合されてもよい。固定タブ640をおむつ620に取り付ける構成に応じて、剥離テープの多くの構成が可能である。
一部の実施形態では、吸収性物品620を着用者の身体に取り付けるとき、固定タブの使用側端部を、前側腰領域666のバックシート662上に配置されてよい繊維質材料672を含む標的領域668に取り付けることができる。露出した繊維質材料672を提供するために標的領域668に適用され得るループテープの例は、例えば、米国特許第5,389,416号(Modyら)、欧州特許第0,341,993号(Gormanら)、及び欧州特許第0,539,504号(Beckerら)に開示されている。他の実施形態では、バックシート662は、第1の表面上に雄固定要素を有する本明細書において開示される熱可塑性層605と相互作用することのできる、織布又は不織布の繊維質層を備える。かかるバックシート662の例が、例えば、米国特許第6,190,758号(Stopper)及び同第6,075,179号(McCormackら)に開示されている。他の実施形態では、標的領域668のサイズはより小さくてもよく、第1の長手方向縁部664a及び第2の長手方向縁部664bの近くの2つの別個の部分の形態であってもよい。
例示した実施形態では、積層体は固定タブ内に含まれているが、他の実施形態では、積層体は吸収性物品の一体の耳部分であってもよい。本開示による方法で製造される積層体はまた、例えば、生理用ナプキンなどの使い捨て物品にとっても有用であり得る。本開示の方法によって製造される積層体はまた、多くの他の固定用途、例えば、自動車部品のアセンブリ、又は取り外し可能な取り付けが望ましい場合がある任意の他の用途にとっても有用であり得る。
本開示のいくつかの実施形態
第1の実施形態において、本開示は、積層体の製造方法であって、
第1の表面及び第1の表面の反対側の第2の表面を有する熱可塑性層を提供することであって、熱可塑性層の第1の表面には複数の雄固定要素が付いている、ことと、
熱可塑性層が塑性変形し幅が少なくとも25パーセント減少するように熱可塑性層を機械方向に延伸することであって、延伸後、熱可塑性層は最大60ミリメートルの幅を有する、ことと、続いて、
熱可塑性層の第2の表面を基材に積層して積層体を形成することと、を含み、
延伸すること及び積層することはインラインで遂行される、製造方法、を提供する。
第2の実施形態では、本開示は、熱可塑性層が、速度の異なる複数のローラによって機械方向に延伸される、第1の実施形態に記載の製造方法を提供する。
第3の実施形態では、本開示は、熱可塑性層を延伸するのに十分な速度を有する第2のローラを使用して延伸を行うことに続いて、熱可塑性層は、積層前に第2のローラよりも低い速度を有する第3のローラ上へと導かれない、第2の実施形態に記載の製造方法を提供する。
第4の実施形態において、本開示は、積層体の製造方法であって、
第1の表面及び第1の表面の反対側の第2の表面を有する熱可塑性層を提供することであって、熱可塑性層の第1の表面には複数の雄固定要素が付いている、ことと、
速度の異なる第1及び第2のローラによって熱可塑性層が塑性変形し幅が減少するように熱可塑性層を機械方向に延伸することであって、延伸後、熱可塑性層は60ミリメートル未満の幅を有する、ことと、続いて、
熱可塑性層の第2の表面を基材に積層して積層体を形成することと、を含み、
延伸すること及び積層することはインラインで遂行され、
第2のローラは第1のローラよりも速い速度を有し、熱可塑性層は、積層前には第2のローラよりも遅い速度を有する第3のローラ上へと導かれない、製造方法、を提供する。
第5の実施形態では、本開示は、熱可塑性層を機械方向に延伸することにより、その幅を少なくとも10パーセント、少なくとも20パーセント、又は少なくとも25パーセント減少させる、第4の実施形態に記載の製造方法を提供する。
第6の実施形態では、本開示は、熱可塑性層を塑性変形するように延伸することが、少なくとも20%の延びまで延伸を行うことを含む、第1〜第5の実施形態のいずれか1つに記載の製造方法を提供する。
第7の実施形態では、本開示は、熱可塑性層を塑性変形するように延伸することが、少なくとも25%の延びまで延伸を行うことを含む、第1〜第6の実施形態のいずれか1つに記載の製造方法を提供する。
第8の実施形態では、本開示は、熱可塑性層を塑性変形するように延伸することが、少なくとも30%の延びまで延伸を行うことを含む、第1〜第7の実施形態のいずれか1つに記載の製造方法を提供する。
第9の実施形態では、本開示は、熱可塑性層を塑性変形するように延伸することが、少なくとも50%の延びまで延伸を行うことを含む、第1〜第8の実施形態のいずれか1つに記載の製造方法を提供する。
第10の実施形態では、本開示は、熱可塑性層が機械方向に1.25倍〜5倍延伸される、第1〜第9の実施形態のいずれか1つに記載の製造方法を提供する。
第11の実施形態では、本開示は、熱可塑性層が機械方向に1.5倍〜4倍延伸される、第1〜第10の実施形態のいずれか1つに記載の製造方法を提供する。
第12の実施形態では、本開示は、熱可塑性層を機械方向に延伸することにより、その幅を少なくとも30%減少させることを含む、第1〜第11の実施形態のいずれか1つに記載の製造方法を提供する。
第13の実施形態では、本開示は、熱可塑性層を機械方向に延伸することにより、その幅を少なくとも35%減少させることを含む、第1〜第12の実施形態のいずれか1つに記載の製造方法を提供する。
第14の実施形態では、本開示は、熱可塑性層を機械方向に延伸することにより、その幅を最大50%減少させることを含む、第1〜第13の実施形態のいずれか1つに記載の製造方法を提供する。
第15の実施形態では、本開示は、延伸が、熱可塑性層の第2の表面を基材に積層する前に複数回実行される、第1〜第14の実施形態のいずれか1つに記載の製造方法を提供する。
第16の実施形態では、本開示は、延伸前に、延伸中に、延伸後に、又はこれらの組合せの時に熱可塑性層を加熱することを更に含む、第1〜第15の実施形態のいずれか1つに記載の製造方法を提供する。
第17の実施形態では、本開示は、熱可塑性層が、接着結合、熱融着、点結合、超音波溶接、レーザ溶接、又はこれらの組合せによって基材に積層される、第1〜第16の実施形態のいずれか1つに記載の製造方法を提供する。
第18の実施形態では、本開示は、熱可塑性層が機械方向に延伸される前に少なくとも横方向に延伸される、第1〜第17の実施形態のいずれか1つに記載の製造方法を提供する。
第19の実施形態では、本開示は、熱可塑性層がポリオレフィン、ポリアミド、又はポリエステルのうちの少なくとも1つを含む、第1〜第18の実施形態のいずれか1つに記載の製造方法を提供する。
第20の実施形態では、本開示は、熱可塑性層がポリプロピレン又はポリエチレンのうちの少なくとも一方を含む、第19の実施形態に記載の製造方法を提供する。
第21の実施形態では、本開示は、熱可塑性層がポリプロピレンを含み、耐衝撃性改良剤を更に含む、第20の実施形態に記載の製造方法を提供する。
第22の実施形態では、本開示は、熱可塑性層がβ相ポリプロピレンを含む、第20の実施形態に記載の製造方法を提供する。
第23の実施形態では、本開示は、基材が不織布材料、ニット材料、又はフィルムのうちの少なくとも1つを含む、第1〜第22の実施形態のいずれか1つに記載の製造方法を提供する。
第24の実施形態では、本開示は、基材が弾性材料を含む、第1〜第23の実施形態のいずれか1つに記載の製造方法を提供する。
第25の実施形態では、本開示は、基材が個人ケア製品の構成要素である、第1〜第24の実施形態のいずれか1つに記載の製造方法を提供する。一部の実施形態では、構成要素は固定タブ又はおむつの耳部である。
第26の実施形態では、本開示は、延伸後に、熱可塑性層が5〜50ミリメートルの幅を有する、第1〜第25の実施形態のいずれか1つに記載の製造方法を提供する。
第27の実施形態では、本開示は、延伸後に、熱可塑性層が最大75マイクロメートルの平均厚さを有する、第1〜第26の実施形態のいずれか1つに記載の製造方法を提供する。
第28の実施形態では、本開示は、延伸後に、熱可塑性層の平均厚さが最大50マイクロメートルである、第27の実施形態に記載の製造方法を提供する。
第29の実施形態では、本開示は、熱可塑性層が、対向する側縁部と、これら側縁部間に展開される、各縁部の近くで減少して縁部効果を生み出すリターダンスプロファイルと、を有する、第1〜第28の実施形態のいずれか1つに記載の製造方法を提供する。
第30の実施形態では、本開示は、熱可塑性層が10マイクロメートルよりも大きい75%平均リターダンスを有する、第1〜第29の実施形態のいずれか1つに記載の製造方法を提供する。
第31の実施形態では、本開示は、延伸前の雄固定要素の密度が、394個/cm2(2500個/in2)〜1575個/cm2(10000個/in2)の範囲内にある、第1〜第30の実施形態のいずれか1つに記載の製造方法を提供する。
第32の実施形態では、本開示は、延伸後の雄固定要素の密度が、248個/cm2(1600個/in2)〜550個/cm2(3500個/in2)の範囲内にある、第1〜第31の実施形態のいずれか1つに記載の製造方法を提供する。
第33の実施形態では、本開示は、熱可塑性フィルムを延伸することが、所定の密度を達成するように雄固定要素の密度を調節することを含む、第1〜第32の実施形態のいずれか1つに記載の製造方法を提供する。
第34の実施形態では、本開示は、所定の密度が繊維質基材に対する所望のせん断強度又は剥離強度に基づいて選択される、第33の実施形態に記載の製造方法を提供する。
第35の実施形態では、本開示は、熱可塑性層が貫通穴を有さない、第1〜第34の実施形態のいずれか一つに記載の製造方法を提供する。
第36の実施形態では、本開示は、熱可塑性層が実質的に平らである、第1〜第35の実施形態のいずれか1つに記載の製造方法を提供する。
第36の実施形態では、本開示は、積層前に熱可塑性層を半分又は4分の1にスリッティングすることを更に含む、第1〜第36の実施形態のいずれか1つに記載の製造方法を提供する。
本開示がより十分に理解され得るように、以下の実施例を記載する。これらの実施例は単に例示を目的とするものであり、いかなる方法でも本開示を限定すると解釈してはならないことを理解すべきである。
材料
フィルムグレードのポリプロピレン(PP)コポリマーである、ポリプロピレン耐衝撃性コポリマーは、Dow Chemical Company,Midland,MIから商品名「DOW C700−35N POLYPROPYLENE RESIN」として入手した。ポリマーの密度は、ASTM D972に従って測定したところ0.902g/ccであると報告され、メルトフローインデックス(MFI)は、ASTM D1238に従って測定したところ35(230℃及び2.16kgの負荷の下)であると報告された。
試料調製
熱可塑性層と一体の直立柱体のアレイを有する実質的に連続的な熱可塑性層を調製した。直立柱体はキャップされていた。キャップ形状は卵形であり、その製造後、米国特許第6,132,660号(Kampfer)に記載の手順を用いて変形させて、「下向きに突出している繊維係合部分を有するフックヘッド」を得た。
対照例1及び5並びに実施例2〜4及び6〜8
C700−35N Polypropylene Resinのストリームを2インチ単軸スクリュー押出機に送り込んで、雄固定要素を有する熱可塑性層を調製した。バレルゾーン1〜7はそれぞれ、176℃、170℃、180℃、190℃、200℃、218℃、及び218℃に設定した。次いで溶融樹脂をシートダイを通して回転式円筒形金型へと送り込んだ。ダイの温度は218℃に設定し、円筒状金型の温度は90℃に設定した。スクリュー速度は80rpmに設定した。金型の空洞部へ樹脂を急速に流し込むことで、流れ方向と平行に分子配向を生じさせた。金型を水冷して急冷することで、ポリマーにおける配向を維持した。柱体の密度は、1平方インチ当たり3500本の柱体(1平方センチメートル当たり542本の柱体)であって、これらは互い違いに配列されており、柱体の形状は円錐形であった。ウェブはキャップ形成装置に直接送り込んだ。柱体は、米国特許第5,845,375号(Millerら)に記載の手順を用いて、卵形状のキャップでキャップした。キャップは、その後、米国特許第6,132,660号(Kampfer)に記載の手順を用いて変形させた。ウェブは幅140mmであり、これを巻いてロールにした。
次いでこの140mm幅のウェブの巻きを解き、複数の14mm幅のストランドにスリッティングし、そのそれぞれを巻いてロールにした。
次いでこれら14mm幅のロールのうちの1つの巻きを解き、以下の表1に示す一連の延伸比を使用して、その試料を一方のローラが他方のローラの上に配置された一対のローラを通過させることによって、機械方向に延伸した。上部ローラはゴムでコーティングした室温のローラであった。下部ローラは70℃で加熱した金属ローラであった。ウェブを2つのローラの周囲でSラップし、雄固定要素はゴムでコーティングしたローラに向けて金属ローラからは離れるように配置した。ゴムローラと金属ローラとの間の間隙は6インチ(15.2cm)であった。延伸後、インラインを維持しながら、次いで雄固定要素を有する熱可塑性層を、ウェブの更に下流のニップ点において、3M Company,St.Paul,Minn.から商品名「CFT−3003」として入手した不織布接着剤テープの、接着剤でコーティングされた面に積層した。最終的な積層ライン速度は、毎分5メートルであった。
対照例1及び実施例2〜4のそれぞれについて、上部ローラ(ローラ1)に対する下部ローラ(ローラ2)の速度及び得られた延伸比を、下の表1に示す。ウェブの最終幅も以下の表1に示す。
対照例5及び実施例6〜8
対照例5及び実施例6〜8は、対照例1及び実施例2〜4について記載した手順を用いて実施したが、変更点として、140mm幅のウェブを30mm幅のウェブにスリッティングした。次いで30mm幅のロールのうちの1つの巻きを解き、以下の表2に示す延伸比を使用して、機械方向に延伸した。対照例5及び実施例6〜8のそれぞれについて、上部ローラ(ローラ1)に対する下部ローラ(ローラ2)の速度及び得られた延伸比を、下の表2に示す。ウェブの最終幅も以下の表2に示す。
本開示は、上記実施形態には限定されず、以下の特許請求の範囲及びその均等物のいずれかに示される限定によって制限されるべきものである。本開示は、本明細書に具体的に開示されていないいずれの要素を欠いても、好適に実施され得る。