JP2020520928A - 細菌株を含む組成物 - Google Patents

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Abstract

本発明は、中枢神経系障害及び状態を処置または予防するための細菌株を含む組成物を提供する。【選択図】図1A

Description

この発明は、哺乳動物の消化管から単離された細菌株を含む組成物、及び疾患の処置におけるかかる組成物の使用の分野にある。
ヒトの腸は、子宮内では無菌と考えられているが、出生直後に様々な母体及び環境微生物に曝される。その後、微生物の定着及び遷移の動的期間が生じ、これは、分娩様式、環境、食事及び宿主遺伝子型などの因子によって影響され、これらの因子の全てが、特に若年期において、腸内微生物叢の組成に影響を及ぼす。その後、微生物叢は安定して成人様になる[1]。ヒト腸内微生物叢は、2つの主要な細菌分類:Bacteroidetes及びFirmicutes;に本質的に属する500〜1000を超える種々のファイロタイプを含有する[2]。ヒト腸の細菌定着から生じる成功裏の共生関係は、広範な代謝的、構造的、保護的及び他の有益な機能を生じさせてきた。定着した腸の代謝活性の向上は、さもなければ難消化性の食事成分が副生成物の放出と共に分解されて宿主に重要な栄養源をもたらすということを確実にする。同様に、腸内微生物叢の免疫学的重要性は、よく認識されており、共生細菌の導入後に機能的に再構成される損なわれた免疫系を有する無菌動物において実証されている[3〜5]。
ヒト微生物叢の大きさ及び複雑さの発見は、現在進行中の多くの健康及び疾患の概念の評価を結果として生じている。確実には、微生物叢組成の劇的な変化は、胃腸障害、例えば、炎症性腸疾患(IBD)において記録されてきた[6〜9]。より最近では、ヒト脳疾患において病態生理的役割を果し得る腸内微生物叢における変化に関しての当該分野での関心が高まっている[10]。前臨床的及び臨床的証拠により、脳の発達と微生物叢との間の関連が強く示唆されている[11]。
複数の神経分泌及び内分泌シグナル伝達系を含めた、脳と腸内微生物叢との間の双方向のシグナル伝達を実証している前臨床的文献が増えている。実際、微生物叢におけるClostridium種のレベルの増加は、脳障害と関連しており[12]、Bacteroidetes及びFirmicutes phylaの不均衡もまた、脳の発達障害に関与している[13]。Bifidobacterium、Lactobacillus、Sutterella、Prevotella及びRuminococcus属のもの、ならびにAlcaligenaceae科のものを含めた、腸内の共生生物のレベルの変化が、免疫介在性の中枢神経系(CNS)障害に関与しているという示唆は、患者と健常者との間の微生物叢の変化の欠失を示唆している研究によって疑問視されている[14]。このことは、現在のところ、微生物叢とヒト脳疾患との間の関連性の実際の効果があまり特徴付けられていないということを示している。したがって、より直接的な分析的研究は、CNS障害に対する微生物叢の変化の治療的影響を同定することが必要とされている。
ある特定の細菌株が動物の腸において有し得る潜在的なプラス効果の認識において、種々の株が、種々の疾患の処置における使用のために提案されてきた(例えば、[14〜17]を参照されたい)。また、Lactobacillus及びBifidobacterium株を含めたある特定の株が、腸に直接関連しない種々の炎症性疾患及び自己免疫疾患を処置する際の使用のために提案されてきた(レビューには[18]及び[19]を参照されたい)。また、広範なプロバイオティクスが、感情的挙動を調節する際の腸内微生物叢の役割を決定するために動物モデルにおいて調査されており、Bifidobacterium及びLactobacillusは、有益な効果を示す主な属であり、不安及び反復行動を低減し、社会的相互作用を増加させる[20]〜[22]。しかし、種々の疾患と種々の細菌株との間の関係、ならびに、特定の細菌株の、全身レベルでの腸に対しての、及びいずれか特定のタイプの疾患に対しての正確な効果は、特に中枢神経系疾患について、あまり特徴付けられていない。
微生物叢−腸−脳軸が自閉症スペクトラム障害(ASD)ならびに他の神経発達障害及び精神神経障害において影響されることを示唆する証拠が増えている。動物モデルにより、微生物叢がASDにどのように関与し得るかについてのかなりの見識が付与されている。さらに、前臨床的研究は、有益な生存生物学的製剤の投与を通して腸内微生物叢を標的とすることが、母体免疫活性化(MIA)マウスモデルならびに黒及び褐色のBRachyuric(BTBR)マウスを含めた動物モデルにおいて自閉症関連行動を改善する際に効能を示すことを実証している。BTBRマウスは、社交性の欠失、反復行動及び不安の増加などの多数のASD関連行動を示す、遺伝子組み換えされた同系交配マウス株である。さらに、これらのマウスはまた、腸内微生物叢の組成の変化に併せて胃腸機能障害も示す。結果として、ASDにおける微生物叢−腸−脳軸の役割を調査する適切な動物モデルを表している。
参照文献[23]は、Bacteroides及び/またはEnterococcusから選択される細菌種を含む組成物を投与することによって神経発達障害を処置する可能な方法を考察しているが、Bacteroidesのみに関するデータを提供している。参照文献[24]は、Bacteroides fragilis、Bacteroides vulgatus及びEnterococcus faecalisに限定したデータを用いてBacteroides及びEnterococcusの同様の使用を考察している。
Enterococcus faecalis及びEnterococcus faeciumは、Enterococcus属内の表現型的及び遺伝子的に異なる細菌種である。Enterococcus faecalis及びEnterococcus faeciumはまた、系統発生的にも遠い。Enterococcus faecalis株が、顕性病原性に関連する形質を示す一方で、Enterococcus faeciumは、公知の顕性病原性形質を実質的に欠いている種である[25]。
したがって、中枢神経系障害を処置する新規の方法が当該分野において必要とされている。腸細菌を使用した新規の治療を開発することができるように特徴付けられる腸細菌の潜在的効果も必要とされている。
本発明者らは、中枢神経系障害を処置及び予防するための新規の治療を開発した。特に、本発明者らは、微生物叢−腸−脳軸によって介在される中枢神経系障害及び状態を処置及び予防するための新規の治療を開発した。特に、本発明者らは、Enterococcus faecium種の細菌株が、微生物叢−腸−脳軸によって介在される疾患及び状態を処置及び予防するのに有効であり得るということを確認した。実施例において記載されているように、Enterococcus faeciumを含む組成物の経口投与は、自閉症スペクトラム障害のマウスモデルにおいて微生物叢−腸−脳軸の機能障害に関連する症状を低減し得る。
そのため、第1実施形態において、本発明は、中枢神経系障害または状態を処置または予防する方法における使用のための、Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物を提供する。特定の実施形態において、中枢神経系障害または状態は、微生物叢−腸−脳軸によって介在される。さらなる実施形態において、本発明は、神経発達障害または精神神経状態を処置または予防する方法における使用のための、Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物を提供する。本発明者らは、この種からの細菌株による処置が、中枢神経系障害、特に微生物叢−腸−脳軸によって介在される障害のマウスモデルにおいて、臨床的利益を提供することができるということを確認した。本発明者らは、この種からの細菌株による処置は、中枢、自律及び腸神経系におけるシグナル伝達を調節し得;視床下部−下垂体−副腎系(HPA)軸経路の活性を調節し得;神経内分泌及び/または神経免疫経路を調節し得;かつ/あるいは対象の共生代謝産物、炎症マーカー及び/または胃腸透過性のレベルを調節し得るということを確認した。
特定の実施形態において、本発明は:自閉症スペクトラム障害(ASD);小児発達障害;強迫神経症(OCD);大うつ病性障害;うつ病;季節性情動障害;不安障害;慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎);ストレス障害;心的外傷後ストレス障害;統合失調症スペクトラム障害;統合失調症;双極性障害;精神病;気分障害;認知症;アルツハイマー病;パーキンソン病;及び/または慢性疼痛;からなる群から選択される疾患または状態を処置または予防する方法における使用のための、Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物を提供する。さらなる実施形態において、本発明の組成物は、運動ニューロン疾患;ハンチントン病;ギラン−バレー症候群及び/または髄膜炎を処置または予防するのに有用であり得る。微生物叢−腸−脳軸に対する及び微生物叢−腸−脳軸によって介在される疾患に対する、Enterococcus faecium種由来の細菌株について示される効果は、微生物叢−腸−脳軸によって介在される他の疾患及び状態、例えば、上記において列挙されているものに関する治療的利益を提供し得る。他の実施形態において、本発明は、微生物叢−腸−脳軸によって介在される疾患及び状態に関連する共存疾患、例えば、上記において列挙されているものを処置する方法における使用のための、Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物を提供する。特定の好ましい実施形態において、本発明は、微生物叢−腸−脳軸によって介在される疾患及び状態に関連する胃腸共存疾患、例えば、上記において列挙されているものを処置する方法における使用のための、Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物を提供する。自閉症スペクトラム障害の症状のアセスメントのためにこの用途で使用されるマウスモデル実験は、上記において列挙されているものを含めた他の中枢神経系障害の症状のアセスメントに適用可能であることが当該分野において公知である[26〜27]。
特定の好ましい実施形態において、本発明は、自閉症スペクトラム障害、例えば、自閉症を処置または予防する方法における使用のための、Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物を提供する。本発明者らは、Enterococcus faecium株による処置が、自閉症スペクトラム障害のマウスモデルにおいて症状の重篤度を低減し得、常同、反復、強迫及び不安行動を予防または低減し得るということを確認した。好ましい実施形態において、本発明は、自閉症スペクトラム障害の処置における使用のための、Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物を提供する。Enterococcus faeciumを使用する組成物は、自閉症スペクトラム障害を処置するのに特に有効であり得る。好ましい実施形態において、本発明は、特に、自閉症スペクトラム障害の処置において、常同、反復、強迫または不安行動を低減する際の使用のための組成物を提供する。好ましい実施形態において、本発明は、自閉症スペクトラム障害の行動上の症状の処置における使用のための、Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物を提供する。好ましい実施形態において、本発明は、自閉症スペクトラム障害の胃腸症状の処置における使用のための、Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物を提供する。好ましい実施形態において、本発明は、自閉症スペクトラム障害の行動上の症状及び胃腸症状の処置における使用のための、Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物を提供する。Enterococcus faecium株による処置は、中枢、自律及び腸神経系におけるシグナル伝達を調節し得;HPA軸経路の活性を調節し得;神経内分泌及び/または神経免疫経路を調節し得;かつ/あるいは、対象の共生代謝産物、炎症マーカー及び/または胃腸透過性のレベルを調節し得、これらの全てが、自閉症スペクトラム障害の神経病理学に関係している。ある特定の実施形態において、Enterococcus faecium株による処置は、オキシトシン及び/またはバソプレシンホルモンのレベルを調節し得る。
さらに好ましい実施形態において、本発明は、強迫神経症(OCD)を処置または予防する方法における使用のための、Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物を提供する。好ましい実施形態において、本発明は、OCDの処置において、常同、反復、強迫または不安行動を低減する際の使用のための組成物を提供する。Enterococcus faecium株による処置は、中枢、自律及び腸神経系におけるシグナル伝達を調節し得;HPA軸経路の活性を調節し得;神経内分泌及び/または神経免疫経路を調節し得;かつ/あるいは、対象の共生代謝産物及び/または胃腸透過性のレベルを調節し得、これらの全てが、OCDの神経病理学に関係している。
さらに好ましい実施形態において、本発明は、大うつ病性障害(MDD)を処置または予防する方法における使用のための、Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物を提供する。Enterococcus faecium株による処置は、うつ病のマウスモデルにおいて臨床的利益を提供し得る。好ましい実施形態において、本発明は、うつ病の処置における使用のための、Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物を提供する。Enterococcus faeciumを使用する組成物は、うつ病を処置するのに特に有効であり得る。好ましい実施形態において、本発明は、うつ病の処置において、常同、反復、強迫または不安行動を低減する際の使用のための組成物を提供する。Enterococcus faecium株による処置は、中枢、自律及び腸神経系におけるシグナル伝達を調節し得;HPA軸経路の活性を調節し得;神経内分泌及び/または神経免疫経路を調節し得;かつ、対象の共生代謝産物、炎症マーカー及び/または胃腸透過性のレベルを調節し得、これらの全てが、MDDの神経病理学に関係している。ある特定の実施形態において、Enterococcus faecium株による処置は、オキシトシン及び/またはバソプレシンホルモンのレベルを調節し得る。
さらに好ましい実施形態において、本発明は、不安障害を処置または予防する方法における使用のための、Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物を提供する。Enterococcus faecium株による処置は、この用途の例において、不安のマウスモデルにおいて疾患の発生及び疾患の重篤度を低減する。好ましい実施形態において、本発明は、不安障害の処置における使用のための、Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物を提供する。Enterococcus faeciumを使用する組成物は、不安障害を処置するのに特に有効であり得る。好ましい実施形態において、本発明は、不安の処置において、常同、反復、強迫または不安行動を低減する際の使用のための組成物を提供する。
さらに好ましい実施形態において、本発明は、ストレス障害、例えば、心的外傷後ストレス障害を処置または予防する方法における使用のための、Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物を提供する。Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物は、ストレス障害のマウスモデルにおいてストレスを低減し得る。Enterococcus faecium株による処置は、中枢、自律及び腸神経系におけるシグナル伝達を調節し得;HPA軸経路の活性を調節し得;神経内分泌及び/または神経免疫経路を調節し得;かつ、対象の共生代謝産物、炎症マーカー及び/または胃腸透過性のレベルを調節し得、これらの全てが、ストレス障害の神経病理学に関係している。ある特定の実施形態において、Enterococcus faecium株による処置は、オキシトシン及び/またはバソプレシンホルモンのレベルを調節し得る。
さらに好ましい実施形態において、本発明は、統合失調症スペクトラム及び精神病性障害、例えば、統合失調症を処置または予防する方法における使用のための、Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物を提供する。Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物は、統合失調症スペクトラム及び精神病性障害のマウスモデルにおいて陽性及び陰性症状を改善し得る。Enterococcus faecium株による処置は、中枢、自律及び腸神経系におけるシグナル伝達を調節し得;HPA軸経路の活性を調節し得;神経内分泌及び/または神経免疫経路を調節し得;かつ、対象の共生代謝産物及び/または胃腸透過性のレベルを調節し得、これらの全てが、統合失調症スペクトラム及び精神病性障害の神経病理学に関係している。
さらに好ましい実施形態において、本発明は、双極性障害を処置または予防する方法における使用のための、Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物を提供する。Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物は、双極性障害のマウスモデルにおいて躁病及び/またはうつ病の事象を低減し得る。Enterococcus faecium株による処置は、中枢、自律及び腸神経系におけるシグナル伝達を調節し得;HPA軸経路の活性を調節し得;神経内分泌及び/または神経免疫経路を調節し得;かつ、対象の共生代謝産物、炎症マーカー及び/または胃腸透過性のレベルを調節し得、これらの全てが、双極性障害の神経病理学に関係している。ある特定の実施形態において、Enterococcus faecium株による処置は、オキシトシン及び/またはバソプレシンホルモンのレベルを調節し得る。
さらに好ましい実施形態において、本発明は、神経認知障害、例えば、アルツハイマー病を処置または予防する方法における使用のための、Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物を提供する。Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物は、神経認知障害のマウスモデルにおいて認知及び行動の機能を改善し得る。Enterococcus faecium株による処置は、中枢、自律及び腸神経系におけるシグナル伝達を調節し得;HPA軸経路の活性を調節し得;神経内分泌及び/または神経免疫経路を調節し得;かつ、対象の共生代謝産物及び/または胃腸透過性のレベルを調節し得、これらの全てが、神経認知障害の神経病理学に関係している。
さらに好ましい実施形態において、本発明は、パーキンソン病を処置または予防する方法における使用のための、Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物を提供する。Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物は、パーキンソン病のマウスモデルにおいて運動及び認知機能を改善し得る。Enterococcus faecium株による処置は、中枢、自律及び腸神経系におけるシグナル伝達を調節し得;HPA軸経路の活性を調節し得;神経内分泌及び/または神経免疫経路を調節し得;かつ、対象の共生代謝産物、炎症マーカー及び/または胃腸透過性のレベルを調節し得、これらの全てが、パーキンソン病の神経病理学に関係している。ある特定の実施形態において、Enterococcus faecium株による処置は、オキシトシン及び/またはバソプレシンホルモンのレベルを調節し得る。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、微生物叢−腸−脳軸によって介在される疾患または状態の処置または予防において微生物叢−腸−脳軸を調節する方法における使用のためのものである。特に、本発明の組成物は、自閉症スペクトラム障害;強迫神経症;大うつ病性障害;不安障害;ストレス障害;統合失調症スペクトラム障害;双極性障害;神経認知障害及びパーキンソン病の処置または予防において微生物叢−腸−脳軸を調節する際に使用され得る。
本発明の好ましい実施形態において、組成物における細菌株は、Enterococcus faeciumのものである。近縁の株、例えば、Enterococcus faeciumの細菌株の16s rRNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列を有する細菌株が使用されてもよい。好ましくは、細菌株は、配列番号1または2と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列を有する。好ましくは、配列同一性は、配列番号2に対するものである。好ましくは、本発明において使用される細菌株は、配列番号2によって表される16s rRNA配列を有する。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、経口投与用である。本発明の株の経口投与は、中枢神経系障害及び状態、特に、微生物叢−腸−脳軸によって介在されるものを処置するのに有効であり得る。また、経口投与は、患者及び施術者にとって便利であり、腸への送達及び/または腸への部分もしくは全体定着を可能にする。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、1または2以上の薬学的に許容される賦形剤または担体を含む。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、凍結乾燥されている細菌株を含む。凍結乾燥は、細菌の送達を可能にする安定な組成物を調製するのに有効かつ便利な技術である。
ある特定の実施形態において、本発明は、上記に記載されている組成物を含む食品を提供する。
ある特定の実施形態において、本発明は、上記に記載されている組成物を含むワクチン組成物を提供する。
さらに、本発明は、微生物叢−腸−脳軸の機能障害によって介在される疾患または状態を処置または予防する方法であって、Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物を投与することを含む上記方法を提供する。
上記発明の開発において、本発明者らは、治療に特に有用である細菌株を確認及び特徴付けした。本発明のEnterococcus faecium株は、本明細書に記載されている疾患、例えば、自閉症スペクトラム障害を処置するのに有効であることが示される。そのため、別の態様において、本発明は、受託番号NCIMB42487として寄託されているEnterococcus faecium株、またはその派生物(derivative)の細胞を提供する。本発明はまた、かかる細胞、またはかかる細胞の生物学的に純粋な培養物を含む組成物も提供する。本発明はまた、特に本明細書に記載されている疾患の治療における使用のための、受託番号NCIMB42487として寄託されているEnterococcus faecium株、またはその派生物の細胞も提供する。
特に好ましい実施形態において、本発明は、中枢神経系障害または状態を処置または予防する方法における使用のための、受託番号NCIMB42487として寄託されている株を含む組成物を提供する。特に好ましい実施形態において、本発明は、神経発達障害または精神神経状態を処置または予防する方法における使用のための、受託番号NCIMB42487として寄託されている株を含む組成物を提供する。特に好ましい実施形態において、本発明は、自閉症スペクトラム障害、または好ましくは自閉症を処置または予防する方法における使用のための、受託番号NCIMB42487として寄託されている株を含む組成物を提供する。特に好ましい実施形態において、本発明は、特に、自閉症の処置において、常同、反復、強迫または不安行動を低減する方法における使用のための、受託番号NCIMB42487として寄託されている株を含む組成物を提供する。
MRX010による処置は、MIAマウスモデルにおいて埋め込まれる大理石の数を減少させた。対照群に対して#p<0.01。ビヒクル群に対して**p<0.01。推測的な比較によって明らかにされているように、ビヒクル群に対して***p<0.001。 社会的伝達の食べ物の嗜好に対するビヒクルまたはMRX010のいずれかによる処置の効果。 強制水泳試験でのマウスの不動時間に対するビヒクルまたはMRX010のいずれかによる処置の効果。 MIAマウスにおける腸透過性に対するMRX010による処置の効果。 腸運動に対するMRX010による慢性処置の効果。対照群に対して##p<0.01。 BTBRマウスにおける食べ物の嗜好の社会的伝達に対するMRX010による処置の効果。 社会的相互作用試験におけるBTBRマウスの社会的行動に対するMRX010による処置の効果。 大理石埋め込み試験におけるBTBRマウスの常同行動に対するMRX010による処置の効果。 BTBRマウスにおける高架式十字迷路での不安様行動に対するMRX010による処置の効果。 BTBRマウスにおけるオープンフィールドアリーナでの自発運動及び不安様行動に対するMRX010による処置の効果。 強制水泳試験でのBTBRマウスの不動時間に対するMRX010による処置の効果。 BTBRマウスにおいて尿への嗅覚行為に費やした時間に対するMRX010による処置の効果。水ビヒクル群に対して##p<0.01。 BTBRマウスにおける腸運動に対するMRX010による処置の効果。 BTBRマウスにおける選択的解剖学的マーカーに対するMRX010による処置の効果。ビヒクル群に対して*p<0.05。 セルフグルーミング試験でのMIAマウスにおける常同/不安様行動に対するMRX010による処置の効果。対照に対して#p=0.017。ビヒクルは、リン酸緩衝生理食塩水である。 高架式十字迷路でのMIAマウスにおける不安様行動に対するMRX010による処置の効果。A−開放アーム;B−閉鎖アーム。ビヒクルは、リン酸緩衝生理食塩水である。 オープンフィールドアリーナでのMIAマウスにおける不安様行動に対するMRX010による処置の効果。ビヒクルは、リン酸緩衝生理食塩水である。 雌の尿への嗅覚行為試験でのMIAマウスにおける社会的行動に対するMRX010による処置の効果。ビヒクルは、リン酸緩衝生理食塩水である。 3チャンバー試験でのMIAマウスにおける社会的行動に対するMRX010による処置の効果。A−対象対マウス。*p<0.001対マウス。B−ファミリアーマウス対新規マウス。*p=0.005対対照;#p=0.001対ファミリアーマウス。MRX010は、新規マウスとの交流の増加をもたらし、そのため、社会的行動が改善された。ビヒクルは、リン酸緩衝生理食塩水である。 新規対象認識試験でのMIAマウスにおける認知能力に対するMRX010による処置の効果。ビヒクルは、リン酸緩衝生理食塩水である。 回腸における透過性及び遺伝子発現に対するMRX010による処置の効果。PBS:リン酸緩衝生理食塩水;IDO−1:インドールアミン−ピロール2,3−ジオキシゲナーゼ−1;TJP1:タイトジャンクションタンパク質1;TPH1:トリプトファン水酸化酵素1。 結腸における透過性及び遺伝子発現に対するMRX010による処置の効果。PBS:リン酸緩衝生理食塩水;IDO−1:インドールアミン−ピロール2,3−ジオキシゲナーゼ−1;TJP1:タイトジャンクションタンパク質1;TPH1:トリプトファン水酸化酵素1。 盲腸内容物におけるSCFA発現に対するMRX010による処置の効果。ビヒクルは、リン酸緩衝生理食塩水である。 抗原チャレンジに応答する脾細胞サイトカイン産生に対するMRX010による処置の効果。PBS:リン酸緩衝生理食塩水;LPS:リポ多糖体;ConA:コンカナバリンA;IL:インターロイキン;TNFα:腫瘍壊死因子α;CXCL1:ケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド1;IFNγ:インターフェロン−γ。*t(8)=2.54、p=0.035対PBS対照。 必須アミノ酸の血漿中濃度(すなわち、生合成及び異化)に対するMRX010による処置の効果。*t(9)=2.733、p=0.023対PBS。 脳におけるモノアミン変化に対するMRX010による処置の効果。5−HIAA:5−ヒドロキシ−インドール−酢酸;5−HT:5−ヒドロキシ−トリプタミン(セロトニン)。 神経伝達物質受容体の海馬遺伝子発現に対するMRX010による処置の効果。 神経伝達物質受容体の扁桃体遺伝子発現に対するMRX010による処置の効果。*t(11)=2.737、p=0.019対PBS。 神経伝達物質受容体の前頭葉前部皮質(PFC)遺伝子発現に対するMRX010による処置の効果。 炎症マーカーの海馬遺伝子発現に対するMRX010による処置の効果。 炎症マーカーの扁桃体遺伝子発現に対するMRX010による処置の効果。 炎症マーカーのPFC遺伝子発現に対するMRX010による処置の効果。 内分泌マーカーの海馬遺伝子発現に対するMRX010による処置の効果。 内分泌マーカーの扁桃体遺伝子発現に対するMRX010による処置の効果。*t(11)=02.943、p=0.013。 内分泌マーカーのPFC遺伝子発現に対するMRX010による処置の効果。
細菌株
本発明の組成物は、Enterococcus faecium種の細菌株を含む。実施例は、この種の細菌が、微生物叢-腸−脳軸によって介在される自閉症スペクトラム障害及び中枢神経系障害を処置または予防するのに有用であることを実証している。自閉症スペクトラム障害の症状のアセスメントのためにこの用途で使用されるマウスモデル実験は、上記において列挙されているものを含めた他の中枢神経系障害の症状のアセスメントに適用可能であることが当該分野において公知である。
本発明は、治療における使用のための、例えば、中枢神経系障害または状態、特に、微生物叢-腸−脳軸によって介在される中枢神経系障害または状態を処置または予防する際の使用のための、Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物を提供する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、Enterococcus faeciumを含み、いずれの他の細菌種も含有しない。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、Enterococcus faeciumの単一株を含み、いずれの他の細菌株または種も含有しない。
Enterococcus faeciumは、対(diplococci)または短鎖において生じる場合が多いEnterococcus属におけるグラム陽性のα−溶血性または非溶血性細菌である。Enterococcus faeciumのタイプの株は、ATCC19434=CCUG542=CIP103014=CFBP4248=DSM20477=HAMBI1710=JCM5804=JCM8727=LMG11423=NBRC100486=NBRC100485=NCIMB11508(以前はNCDO942)=NCTC7171である[28]。Enterococcus faecium株LMG11423の16S rRNA遺伝子配列のGenBank受託番号は、AJ301830である(配列番号1として本明細書に開示されている)。この例示的なEnterococcus faecium株は、[28]に記載されている。
本発明における使用のための他のEnterococcus faecium株には:R13[29]、CFR3003[30]、AL41[31]、DSM10663NCIMB10415[32]、NCIMB10415E1707[33]、NM113及びNM213[34]が含まれる。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、これらの株のうちの1つ、またはその派生物もしくはバイオタイプを含む。本発明における使用のためのEnterococcus faeciumのさらなる例は、DO株である。この細菌のゲノム配列は、染色体及び3つのプラスミドからなる。染色体の配列は、配列番号3として本明細書に開示されており、3つのプラスミドの配列は、配列番号:4、5及び6として本明細書に開示されている。ゲノム配列は、ショットガン配列全体を使用して得られ、GenBank受託番号NC_017960.1を使用して利用可能である。
受託番号NCIMB42487として寄託されているEnterococcus faecium細菌を実施例において試験した。当該細菌は、本明細書において株MRX010と称される。用語「MRX010」、「MRx0010」、「Mrx010」及び「Mrx0010」は、本明細書において互換可能に使用される。試験したMRX010株の16S rRNA配列は、配列番号2において付与されている。株MRX010を、「Enterococcus faecium」として2015年11月16日に4D Pharma Research Ltd.(Life Sciences Innovation Building,Aberdeen,AB25 2ZS,Scotland)によって国際寄託当局NCIMB,Ltd.(Ferguson Building,Aberdeen,AB21 9YA,Scotland)に寄託し、受託番号NCIMB42487が割り当てられた。
実施例において試験されている株と近縁の細菌株もまた、自閉症スペクトラム障害及び中枢神経系障害及び状態、特に、微生物叢−腸−脳軸によって介在される中枢神経系障害及び状態を処置または予防するのに有効であると期待される。ある特定の実施形態において、本発明において使用される細菌株は、Enterococcus faeciumの細菌株の16s rRNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列を有する。好ましくは、本発明において使用される細菌株は、配列番号1または2と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列を有する。好ましくは、配列同一性は、配列番号2に対するものである。好ましくは、本発明において使用される細菌株は、配列番号2によって表される16s rRNA配列を有する。
受託番号42487として寄託されている細菌のバイオタイプである細菌株もまた、自閉症スペクトラム障害及び中枢神経系障害及び状態、特に 微生物叢-腸−脳軸によって介在される中枢神経系障害及び状態を処置または予防するのに効果的であることが期待されている。バイオタイプは、同じまたは非常に類似する生理的及び生化学的特徴を有する近縁の株である。
受託番号NCIMB42487として寄託されている細菌のバイオタイプであり、本発明での使用に好適である株は、受託番号NCIMB42487として寄託されている細菌の他のヌクレオチド配列をシークエンスすることによって同定されてよい。例えば、実質的に全ゲノムがシークエンスされてよく、本発明で使用するバイオタイプ株は、その全ゲノムの少なくとも80%にわたって(例えば、少なくとも85%、90%、95%もしくは99%にわたって、またはその全ゲノムにわたって)少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%の配列同一性を有していてよい。例えば、いくつかの実施形態において、バイオタイプ株は、そのゲノムの少なくとも98%にわたって少なくとも98%の配列同一性、またはそのゲノムの99%にわたって少なくとも99%の配列同一性を有する。バイオタイプ株を同定するのに使用される他の好適な配列は、hsp60または反復配列、例えば、BOX、ERIC、(GTG)、もしくはREPまたは[35]を含んでいてよい。バイオタイプ株は、受託番号NCIMB42487として寄託されている細菌の対応する配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%の配列同一性を有する配列を有していてよい。いくつかの実施形態において、バイオタイプ株は、NCIMB42487として寄託されている株MRX010の対応する配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%の配列同一性を有する配列を有しており、配列番号2少なくとも99%同一である(例えば、少なくとも99.5%または少なくとも99.9%同一である)16S rRNA配列を含む。いくつかの実施形態において、バイオタイプ株は、NCIMB42487として寄託されている株MRX010の対応する配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%の配列同一性を有する配列を有し、配列番号2の16S rRNA配列を有する。
代替的には、受託番号NCIMB42487として寄託されている細菌のバイオタイプでありかつ本発明での使用に好適である株は、受託番号NCIMB42487の寄託物、ならびに制限断片分析及び/またはPCR分析を使用することによって、例えば、蛍光増幅断片長多型分析(FAFLP)及び反復DNA要素(rep)−PCR指紋検査、またはタンパク質プロファイリング、または部分16Sもしくは23s rDNAシークエンシングを使用することによって同定されてよい。好ましい実施形態において、かかる技術は、他のEnterococcus faecium株を同定するのに使用されてよい。
ある特定の実施形態において、受託番号NCIMB42487として寄託されている細菌のバイオタイプでありかつ本発明での使用に好適である株は、増幅リボソームDNA制限分析(ARDRA)によって分析されるとき、例えば、Sau3AI制限酵素(例示的な方法及びガイダンスについては、例えば[36]を参照されたい)を使用するとき、受託番号NCIMB42487として寄託されている細菌と同じパターンを付与する株である。代替的には、バイオタイプ株は、受託番号NCIMB42487として寄託されている細菌と同じ炭水化物発酵パターンを有する株として同定される。
いくつかの実施形態において、本発明において使用される細菌株は:
(i)アルギニンジヒドロラーゼ、β−グルコシダーゼ、マンノース発酵、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、アルギニンアリールアミダーゼ、フェニルアラニンアリールアミダーゼ、ロイシンアリールアミダーゼ、ピログルタミン酸アリールアミダーゼ、チロシンアリールアミダーゼ、グリシンアリールアミダーゼ、ヒスチジンアリールアミダーゼ及びセリンアリールアミダーゼのうちの少なくとも1つ(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくはこれらの全て)に陽性であり;ならびに/または
(ii)N−アセチル−β−グルコサミニダーゼの中間体であり、
好ましくは、炭水化物、アミノ酸及び硝酸塩代謝のアッセイ、ならびに任意選択的にはアルカリホスファターゼ活性のアッセイによって決定され、より好ましくは、(好ましくはbioMerieuxからのRapid ID 32A系を使用した)Rapid ID 32A分析によって決定される。
本発明の組成物及び方法において有用である他のEnterococcus faecium株、例えば、受託番号NCIMB42487として寄託されている細菌のバイオタイプは、実施例において記載されているアッセイを含め、いずれの適切な方法またはストラテジーを使用して同定されてもよい。例えば、本発明で使用される株は、嫌気性YCFAにおいて培養し、及び/または当該細菌を自閉症スペクトラム障害マウスモデルに投与し、次いでサイトカインレベルを評価することによって同定されてよい。特に、受託番号NCIMB42487として寄託されている細菌と同様の成長パターン、代謝型及び/または表面抗原を有する細菌株は、本発明において有用であり得る。有用な株は、NCIMB42487株に匹敵する免疫調節活性を有する。特に、バイオタイプ株は、実施例において示されている効果に匹敵する、自閉症スペクトラム障害モデルに対する効果を引き出し、これは、実施例において記載されている培養及び投与プロトコルを使用することによって同定されてよい。
本発明の特に好ましい株は、受託番号NCIMB42487として寄託されているEnterococcus faecium株である。これは、実施例において試験されて、疾患を処置するのに効果的であることが示される例示的なMRX010株である。そのため、本発明は、受託番号NCIMB42487として寄託されているEnterococcus faecium株またはその派生物の細胞、例えば単離細胞を提供する。本発明はまた、受託番号NCIMB42487として寄託されているEnterococcus faecium株、またはその派生物の細胞を含む組成物も提供する。本発明はまた、受託番号NCIMB42487として寄託されているEnterococcus faecium株の生物学的に純粋な培養物も提供する。本発明はまた、本明細書に記載されている疾患の治療における使用のための、受託番号NCIMB42487として寄託されているEnterococcus faecium株、またはその派生物の細胞も提供する。受託番号NCIMB42487として寄託されている株の派生物は、娘株(後代)、またはオリジナルから培養された(サブクローニングされた)株であってよい。
本発明の株の派生物は、生物活性を取り除くことなく、例えば、遺伝子レベルで修飾されてよい。特に、本発明の派生株は、治療的に活性である。派生株は、オリジナルのNCIMB42487株と匹敵する免疫調節活性を有する。特に、派生株は、実施例において示されている効果と匹敵する、自閉症スペクトラム障害モデルに対しての効果を引き出し、これは、実施例において記載されている培養及び投与プロトコルを使用することによって同定されてよい。NCIMB42487株の派生物は、概して、NCIMB42487株のバイオタイプである。
受託番号NCIMB42487として寄託されているEnterococcus faecium株の細胞への言及は、受託番号NCIMB42487として寄託されている株と同じ安全及び治療効能特性を有するいずれの細胞も包含し、かかる細胞は本発明によって包含される。そのため、いくつかの実施形態において、受託番号NCIMB42487として寄託されているEnterococcus faecium株の細胞への言及は、NCIMB42487として寄託されているMRX010株のみを称し、NCIMB42487として寄託されていない細菌株を称さない。いくつかの実施形態において、受託番号NCIMB42487として寄託されているEnterococcus faecium株の細胞への言及は、受託番号NCIMB42487として寄託されている株と同じ安全及び治療効能特性を有するが、NCIMB42487で寄託されている株ではない細胞を称する。
ある特定の実施形態において、本発明における使用のための細菌株は、配列番号3と配列同一性を有する染色体を有する。いくつかの実施形態において、本発明における使用のための細菌株は、配列番号3の少なくとも60%にわたって(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、95%、96%、97%、98%、99%または100%にわたって)配列番号3と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性)を有する染色体を有する。例えば、本発明における使用のための細菌株は、配列番号3の70%にわたって配列番号3と少なくとも90%の配列同一性、または配列番号3の80%にわたって配列番号3と少なくとも90%の配列同一性、または配列番号3の90%にわたって配列番号3と少なくとも90%の配列同一性、または配列番号3の100%にわたって配列番号3と少なくとも90%の配列同一性、または配列番号3の70%にわたって配列番号3と少なくとも95%の配列同一性、または配列番号3の80%にわたって配列番号3と少なくとも95%の配列同一性、または配列番号3の90%にわたって配列番号3と少なくとも95%の配列同一性、または配列番号3の100%にわたって配列番号3と少なくとも95%の配列同一性、または配列番号3の70%にわたって配列番号3と少なくとも98%の配列同一性、または配列番号3の80%にわたって配列番号3と少なくとも98%の配列同一性、または配列番号3の90%にわたって配列番号3と少なくとも98%の配列同一性、または配列番号3の95%にわたって少なくとも98%の同一性、または配列番号3の100%にわたって配列番号3と少なくとも98%の配列同一性、または配列番号3の90%にわたって配列番号3と少なくとも99.5%の配列同一性、または配列番号3の95%にわたって少なくとも99.5%の同一性、または配列番号3の98%にわたって少なくとも99.5%の同一性、または配列番号3の100%にわたって配列番号3と少なくとも99.5%の配列同一性を有する染色体を有していてよい。
ある特定の実施形態において、本発明における使用のための細菌株は、例えば上記に記載されているように、配列番号3と配列同一性を有する染色体、及び、例えば上記に記載されているように、配列番号1または2と配列同一性を有する16S rRNA配列、好ましくは、配列番号2と少なくとも99%同一である16s rRNA配列、より好ましくは配列番号2の16S rRNA配列を含むものを有する。
ある特定の実施形態において、本発明における使用のための細菌株は、例えば上記に記載されているように、配列番号3と配列同一性を有する染色体を有し、中枢神経系障害及び状態、特に、微生物叢−腸−脳軸によって介在される中枢神経系障害及び状態を処置または予防するのに有効である。
ある特定の実施形態において、本発明における使用のための細菌株は、例えば上記に記載されているように、配列番号3と配列同一性を有する染色体、及び、例えば上記に記載されているように、配列番号1または2と配列同一性を有する16S rRNA配列を有し、中枢神経系障害及び状態、特に、微生物叢−腸−脳軸によって介在される中枢神経系障害及び状態を処置または予防するのに有効である。
ある特定の実施形態において、本発明における使用のための細菌株は、配列番号2によって表される16s rRNA配列と少なくとも99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列(例えば、配列番号2の16s rRNA配列を含む)、及び配列番号3の少なくとも90%にわたって配列番号3と少なくとも95%の配列同一性を有する染色体を有し、中枢神経系障害及び状態、特に、微生物叢−腸−脳軸によって介在される中枢神経系障害及び状態を処置または予防するのに有効である。
ある特定の実施形態において、本発明における使用のための細菌株は、Enterococcus faeciumであり、配列番号2によって表される16s rRNA配列と少なくとも99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列(例えば、配列番号2の16s rRNA配列を含む)、及び配列番号3の少なくとも98%にわたって(例えば、少なくとも99%または少なくとも99.5%にわたって)配列番号3と少なくとも98%の配列同一性(例えば、少なくとも99%または少なくとも99.5%の配列同一性)を有する染色体を有し、中枢神経系障害及び状態、特に、微生物叢−腸−脳軸によって介在される中枢神経系障害及び状態を処置または予防するのに有効である。
好ましい実施形態において、本発明の組成物における細菌株は生存しており、腸に部分的または全体的に定着することが可能である。
Enterococcus faecalis及びEnterococcus faeciumは、種々の抗生物質に感受性を示す[25]。例えば、Enterococcus faecalisは、アモキシリン、アンピシリン、アルベカシン及びジベカシン、アズロシリン、バカンピシリン、カルベニシリン、セフトビプロール、クラリスロマイシン、ドリペネム、エリスロマイシン、フシジン酸、ゲンタマイシン、グレパフロキサシン、イミペネム、ジョサマイシン、メロペネム、メズロシリン、ピペラシリン、リファンピシン、リファキシミン、ロキタマイシン、ロザラミシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン、ストレプトマイシン、スルファメトキサゾール/トリメトプリム、テリスロマイシン、チカルシリン、チカルシリン/クラブラン酸塩、トスフロキサシン、トリメトプリムならびにバージニアマイシンに感受性であるが、Enterococcus faeciumは、これらの抗生物質の全てへの耐性が実証されている[37]。対照的に、Enterococcus faeciumは、キヌプリスチン−ダルホプリスチンに感受性であるが、Enterococcus faecalisは、均一に耐性である[25][37]。特に、Enterococcus faeciumは、Enterococcus faecalisよりもβ−ラクタム抗生物質に感受性でなく、また、Enterococcus faecalisと比較して、アンピシリン及びバンコマイシンに対して増加した耐性も示す[25]。
Enterococcus faeciumは、概して、胃腸管の共生生物とされる。対照的に、Enterococcus faecalisは、恐らくは生き残り戦略における重要な差に起因して、最も一般的に遭遇する病原性Enterococcus種である[25]。実際、Enterococcus faecalisは、より程度が大きい内因性の病原性、例えば、増加した細胞溶解素産生、フェロモン応答性のプラスミド移行(及び凝集物質の付随する産生)、細胞外スーパーオキシド産生、ならびに特有の表面タンパク質を与える形質を示す。そのため、Enterococcus faecalisは、Enterococcus faeciumと比較して多数の異なるタンパク質を発現し、これらのタンパク質は、Enterococcus faecalisの増加した病原性に関連する。Enterococcus faecalis細胞溶解素は、特有の、大規模に修飾された細菌毒素であり、これは、Enterococcus faeciumによっては発現されない。さらに、Enterococcus faecalisは、多数の宿主寄生体相互作用遺伝子(例えば、Esp)を発現し、これは、Enterococcus faeciumによっては発現されない。また、全てのEnterococcus faecalis株が、Enterococcus faeciumにおいては観察されない形質である、実質的な細胞外スーパーオキシドを生じる。
厳密な発酵槽とされているEnterococcus faeciumとは異なり、Enterococcus faecalisは、外因性ヘミンを使用してシトクロムを合成するため、適切でない部位でのコロニー形成に関連する、好気性条件下での成長の利点を有する[25]。さらに、Enterococcus faeciumは、L−アラビノースから酸を発生させ得るが、Enterococcus faecalisは発生させることができない。対照的に、Enterococcus faecalisは、L−グリセロールから酸を発生させ得るが、Enterococcus faeciumは発生させることができない。さらに、これらの2つの細菌種は、異なるレベルのβ−ガラクトシダーゼ及びアルギニンジヒドロラーゼを有し、デンプンを加水分解して、メリビオース、L−ラムノース、D−ソルビトール及びスクロースから酸を生成する異なる能力を実証している[37]。そのため、Enterococcus faecium及びEnterococcus faecalisは、著しく表現型的に異なるEnterococcus種である。
ある特定の実施形態において、本発明における使用のための細菌株は、アモキシリン、アンピシリン、アルベカシン及びジベカシン、アズロシリン、バカンピシリン、カルベニシリン、セフトビプロール、クラリスロマイシン、ドリペネム、エリスロマイシン、フシジン酸、ゲンタマイシン、グレパフロキサシン、イミペネム、ジョサマイシン、メロペネム、メズロシリン、ピペラシリン、リファンピシン、リファキシミン、ロキタマイシン、ロザラミシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン、ストレプトマイシン、スルファメトキサゾール/トリメトプリム、テリスロマイシン、チカルシリン、チカルシリン/クラブラン酸塩、トスフロキサシン、トリメトプリムならびにバージニアマイシンの1または2以上に耐性である。ある特定の実施形態において、本発明における使用のための細菌株は、キヌプリスチン−ダルホプリスチンに感受性である。
ある特定の実施形態において、本発明における使用のための細菌株は、β−ラクタム抗生物質に耐性である。ある特定の実施形態において、本発明における使用のための細菌株は、バンコマイシンに耐性である。ある特定の実施形態において、本発明における使用のための細菌株は、アンピシリンに耐性である。
ある特定の実施形態において、本発明における使用のための細菌株は、厳密な発酵槽である。ある特定の実施形態において、本発明における使用のための細菌株は、L−アラビノースから酸を発生させ得る。ある特定の実施形態において、本発明における使用のための細菌株は、グリセロールから酸を発生させることができない。
治療的使用
微生物叢−腸−脳軸の調節
腸と脳との間の連通(微生物叢−腸−脳軸)は、双方向の神経液性連通系を介して起こる。最近の証拠により、腸に住む微生物叢が、脳の発達を調節し得、また、微生物叢−腸−脳軸を介して行動的表現型を生じさせ得ることが示されている。実際、多数のレビューが、中枢神経系の機能を維持する際の微生物叢−腸−脳軸の役割を示唆し、また、中枢神経系障害及び状態の発生の際の微生物叢−腸−脳軸の機能障害を暗示している[10],[13],[14],[38]。
腸と脳との間の双方向の連通(すなわち、腸−脳軸)には、視床下部−下垂体−副腎系(HPA)軸を含めた中枢神経系、神経内分泌及び神経免疫系、腸神経系(ENS)及び迷走神経を含めた、自律神経系(ANS)の交感神経及び副交感神経部門、ならびに腸内微生物叢が含まれる。
実施例において実証されているように、本発明の組成物は、微生物叢−腸−脳軸を調節し、CNS障害に関連する行動上の症状を低減することができる。したがって、本発明の組成物は、中枢神経系(CNS)の障害、特に、微生物叢−腸−脳軸の機能障害に関連する障害及び状態を処置または予防するのに有用であり得る。
本発明の組成物はまた、神経発達障害及び/または精神神経状態を処置または予防するのにも有用であり得る。神経発達疾患及び精神神経状態は、多くの場合、微生物叢−腸−脳軸に関連する。本発明の組成物は、微生物叢−腸−脳軸の機能障害によって介在される神経発達疾患及び/または精神神経状態を処置または予防するのに有用であり得る。さらに好ましい実施形態において、本発明の組成物は、神経発達障害または精神神経状態を処置または予防する際の使用のためのものである。
特定の実施形態において、本発明の組成物は:自閉症スペクトラム障害(ASD);小児発達障害;強迫神経症(OCD);大うつ病性障害;うつ病;季節性情動障害;不安障害;統合失調症スペクトラム障害;統合失調症;双極性障害;精神病;気分障害;慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎);ストレス障害;心的外傷後ストレス障害;認知症;アルツハイマー病;パーキンソン病;及び/または慢性疼痛;からなる群から選択される疾患または状態を処置または予防するのに有用であり得る。さらなる実施形態において、本発明の組成物は、運動ニューロン疾患;ハンチントン病;ギラン−バレー症候群及び/または髄膜炎を処置または予防するのに有用であり得る。
本発明の組成物は、慢性疾患を処置または予防する、他の治療(例えば、抗精神病薬及び/もしくは抗うつ薬による処置)に応答しなかった患者において疾患を処置または予防する、ならびに/あるいは微生物叢−腸−脳軸の機能障害に関連する組織損傷及び症状を処置または予防するのに特に有用であり得る。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、CNSを調節する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、自律神経系(ANS)を調節する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、腸神経系(ENS)を調節する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、視床下部−下垂体−副腎(HPA)軸を調節する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、神経内分泌経路を調節する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、神経免疫経路を調節する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、CNS、ANS、ENS、HPA軸ならびに/または神経内分泌及び神経免疫経路を調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、対象の共生代謝産物のレベル及び/または胃腸透過性を調節する。
微生物叢−腸−脳軸のシグナル伝達は、神経系によって調節される。したがって、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、神経系におけるシグナル伝達を調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、中枢神経系のシグナル伝達を調節する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、感覚神経におけるシグナル伝達を調節する。他の実施形態において、本発明の組成物は、運動神経におけるシグナル伝達を調節する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、ANSにおけるシグナル伝達を調節する。いくつかの実施形態において、ANSは、副交感神経系である。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、迷走神経のシグナル伝達を調節する。他の実施形態において、ANSは、交感神経系である。他の実施形態において、本発明の組成物は、腸神経系におけるシグナル伝達を調節する。ある特定の実施形態において、ANS及びENS神経のシグナル伝達は、胃腸管の管腔内容物に直接応答する。他の実施形態において、ANS及びENS神経のシグナル伝達は、管腔細菌によって産生される神経化学物質に間接的に応答する。他の実施形態において、ANS及びENS神経のシグナル伝達は、管腔細菌または腸内分泌細胞によって産生される神経化学物質に応答する。ある特定の好ましい実施形態において、ENSの神経は、CNSの機能に影響する迷走神経求心性を活性化する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、クロム親和性細胞の活性を調節する。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、動物モデルにおける恐怖条件付けを調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、恐怖及び/もしくは不安の発生を調節し、ならびに/または、恐怖及び/もしくは不安が対象において消滅するようになる程度まで調節するのに使用され得る。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、動物モデルにおいてストレス−誘発の異常高熱の程度を調節するのに使用され得る。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、対象におけるストレス及び/または不安を調節する。
自閉症スペクトラム障害(ASD)
自閉症スペクトラム障害は、社会的相互作用、コミュニケーション、ならびに異常に制限された反復行動及び関心における早発性の困難を特徴とする一連の不均一な神経発達状態である。症状は、幼少期から認められ得るが、ASDは、多くの場合、普通クラスの教育を開始するより有能な子供において診断され得る。自閉症は、原発型のASDを表す。
歴史的に、自閉症は、3つの中核領域:社会的相互作用の低下、異常なコミュニケーション、ならびに制限されかつ反復する行動及び関心;に基づいて診断されてきた。International Classification of Diseases(ICD−10R、WHO 1993)及びDiagnostic and Statistical Manual(DSM−IV、American Psychiatric Association、2000)において、自閉症は、他に特定のない限り、4つの可能性のある診断的サブタイプ:アスペルガー症候群、小児自閉症/自閉症、非定型自閉症、及びPDDを有する広汎性発達障害(PDD)の総称下に入る。DMS−5において、これらの診断的サブタイプは、合わされて、単一の自閉症スペクトラム障害(ASD)カテゴリーとなり、機能障害の3つの中核領域の以前の使用は、2つの主な領域、すなわち、感覚の統合失調を含めた、社会的コミュニケーション及び相互作用、ならびに反復行動に低減された。
ASDは、各人に様々な異なる様式で影響して、非常に穏やかなものから重度のものまで及び得るため、「スペクトラム障害」である。影響された個人の機能は、言語能力、知能程度、共存疾患、症状の構成、及びサービスへのアクセスに応じて実質的に変動する。認知機能、学習、注意及び感覚処理が通常低下する。
DSM−IVには、自閉症の診断には、社会的相互作用における質的な機能障害の、最低2つの尺度、コミュニケーションにおける質的な機能障害のうちの1つの症状、ならびに、制限されかつ反復する行動のうちの1つの症状を含めた少なくとも6つの症状の存在を必要とすることが記述されている。DMS−5は、ASDの診断を2つの症状領域:(i)社会的相互作用及び社会的コミュニケーションの欠損;ならびに(ii)行動、関心または活動の制限された反復パターン;に再定義している。
併発する医学的状態は、ASDにおいて高度に蔓延している。併発には、不安及びうつ病、発作、注意欠陥、攻撃的行動、睡眠障害、胃腸障害、てんかん、精神遅滞、知的障害ならびに摂取困難が含まれる。
実施例において、本発明の組成物が、自閉症スペクトラム障害の動物モデルにおいて疾患の発生及び疾患の重篤度の低減を達成すること、ならびに、そのため、自閉症スペクトラム障害の処置または予防において有用であり得ることが実証されている。
ASDは、環境因子によって部分的に誘発される中枢神経系障害である。そのため、微生物叢−腸−脳軸の機能障害は、ASDの発症及び持続の原因となり得る。したがって、好ましい実施形態において、本発明の組成物は、自閉症スペクトラム障害を処置または予防する際の使用のためのものである。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、自閉症を処置または予防する際の使用のためのものである。いくつかの実施形態において、自閉症は、広汎性発達障害(PDD)である。別の実施形態において、PDDは、他に特定のない限り、アスペルガー症候群、小児自閉症/自閉症、非定型自閉症及び/またはPDDである。したがって、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、他に特定のない限り、自閉症スペクトラム障害、自閉症、広汎性発達障害;アスペルガー症候群;小児自閉症/自閉症、非定型自閉症及び/またはPDDを処置または予防する際の使用のためのものである。
本発明の組成物は、対象の微生物叢−腸−脳軸を調節するのに有用であり得る。したがって、好ましい実施形態において、本発明の組成物は、小児において及び/または成人において、ASDの危険性があると確認された、または出生前もしくは早期の発症段階でASDと診断された患者におけるASDを予防する際の使用のためのものである。本発明の組成物は、ASDの発症を予防するのに有用であり得る。
本発明の組成物は、ASDを管理または軽減するのに有用であり得る。ASDの処置または予防とは、例えば、症状の重篤度の軽減、または患者にとって問題である憎悪の頻度もしくは誘因の範囲の低減を称してよい。
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、ASDの少なくとも1つの中核症状を予防、低減または軽減する。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、DMS−5において分類されたASDの2つの症状領域のうち少なくとも1つを予防、低減または軽減する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、社会的相互作用及び/または社会的コミュニケーションの欠損を予防、低減または軽減する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、行動、関心または活動の制限的反復パターンを予防、低減または軽減する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、社会的相互作用、社会的コミュニケーションの欠損、及び/または行動、関心もしくは活動の制限的反復パターンを予防、低減または軽減する。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、反復行動、常同行動、強迫行動、習慣的行動、同一行動及び制限された行動を予防、低減または軽減する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、ASDを有する対象における、社会意識、社会情報処理、社会的コミュニケーションの能力、社会不安/回避、ならびに自閉症の先入観及び形質を改善する。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、ASDの中核症状に関連するさらなる症状を予防、低減または軽減する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、ASDを有する対象における興奮性(攻撃、意図的な自傷及びかんしゃくを含む)、興奮、号泣、無気力、社会的離脱、常同行為、過活動、不服従、適切でない会話、不安、うつ病、ならびに/または制限を超えたもしくは制限下での行動を予防、低減または軽減する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、ASDを有する対象における認知機能、学習、注意及び/または感覚処理を改善する。
他の実施形態において、本発明の組成物は、ASDを有する対象における二次的な効果指標を改善する。いくつかの実施形態において、二次的な効果指標には、対象のさらなる症状及び/または機能評価尺度、行動尺度、ならびに様々な指標が含まれる。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、ASDを有する対象の中核症状のアセスメントのための診断及び/または症状尺度の陽性変化を引き起こす。いくつかの実施形態において、診断及び/または症状尺度は、自閉症診断面接−改訂版(ASI−R)である。いくつかの実施形態において、診断または症状尺度は、自閉症診断観察スケジュール汎用版(ADOS−G)、現在はADOS−2である。他の実施形態において、診断または症状尺度は、自閉症診断面接−改訂版(ADI−R)である。他の実施形態において、診断または症状尺度は、ソーシャルコミュニケーション障害診断面接(DISCO)である。さらに他の実施形態において、診断または症状尺度は、小児自閉症評定尺度(CARS及びCARS2)である。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、ASDの有効性エンドポイントの包括的指標の陽性変化を引き起こす。ある特定の実施形態において、包括的指標には、限定されないが、異常行動チェックリスト(ABC)、児童行動チェックリスト(CBCL)、Vineland−II適応行動尺度(VABS)、対人応答性尺度(SRS)、及び/または反復行動尺度−改訂版(RBS−R)が含まれる。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、精神及び神経学的障害を評価するための臨床全般印象−全般改善(CGI−I)尺度を改善する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、ASDを有する対象の全般的機能において陽性結果を示す。
さらなる尺度は、当業者に公知である。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、当業者に公知である診断及び/または症状尺度の結果を改善する。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、ASDの共存疾患の発生を予防、低減または軽減する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、不安及びうつ病、発作、注意欠陥、攻撃的行動、睡眠障害、胃腸障害(過敏性腸症候群(IBS)を含む)、てんかん、精神遅滞、知的障害ならびに/または摂取困難の発生を予防、低減または軽減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、胃腸共存疾患、例えば、腹痛、下痢及び鼓腸を予防、低減または軽減する。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、自閉症との類似点を有して臨床的に提示され得るある特定の精神及び行動障害の症状を予防、低減または軽減する。したがって、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、注意欠陥障害(ADHD);感情/不安障害;愛着障害;反抗的行為障害(ODD);強迫神経症(OCD)、及び/または統合失調症(認知機能障害)を含めた精神病を予防、低減または軽減する。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、ASDを処置するための別の治療と併用されるときにASDを予防、低減または軽減するのに特に有効である。かかる治療には、抗精神病、抗不安及び抗うつ薬が含まれる。かかる薬物には、リスペリドン(Risperdal(登録商標));オランザピン(Zyprexa(登録商標));フルオキセチン(Prozac(登録商標));セルトラリン(Zoloft(登録商標));フルボキサミン(Luvox(登録商標));クロミプラミン(Anafranil(登録商標));ハロペリドール(Haldol(登録商標));チオリダジン;フルフェナジン;クロルプロマジン;ジプラシドン(Geogon(登録商標));カルバマゼピン(Tegretol(登録商標));ラモトリギン(Lamictal(登録商標));トピラマート(Topomax(登録商標));バルプロ酸(Depakote(登録商標));メチルフェニデート(Ritalin(登録商標));ジアゼパム(Valium(登録商標))及びロラゼパム(Ativan(登録商標))が含まれる。
強迫神経症(OCD)
OCDは、不安障害に属する不均一な慢性及び無力化障害である。DSM−IV定義によると、OCDの本質的な特徴は、重度かつ時間がかかる(1日1時間超)反復性の強迫観念及び/または衝動強迫であり(基準A)、あるいは、著しい苦悩を引き起こす、または、対象の通常の日常、職業的機能、通常の社会的活動もしくは関係をかなり妨げる(基準C)。障害の過程におけるあるポイントとして、当人は、強迫観念または衝動強迫が過剰であるまたは気まぐれであることを認識している(基準B)。
強迫観念は、煩わしいかつ適切でないものとして経験され、また、著しい不安または苦悩を引き起こす、反復性かつ持続性の思考、衝動または想像として定義される。かかる思考、衝動または想像は、現実の問題についての単なる過度の心労ではなく、患者によって自身の心の産物(例えば、汚染の恐怖、対称強迫観念)として認識されている。当人は、ある他の思考または行為によって強迫観念を無視、抑制または中和しようとする。
衝動強迫は、当人が、強迫観念に反応して、または堅く適用されなければならない規則に従って、せざるを得ないと感じている反復行動(例えば、手洗い、秩序化、溜め込み、チェック)または精神的行為(例えば、祈り、数を数えること、無言での単語の反復)として定義される。
OCDは、多くの場合、大うつ病性障害、他の不安障害(全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害)、薬物乱用ならびに摂食障害(拒食症及び過食症)を含めた他の精神疾患の共存症の比率と関連する。
OCDは、微生物叢−腸−脳軸の機能障害に起因して発症または持続し得る精神疾患である。したがって、好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象におけるOCDを処置または予防する際の使用のためのものである。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、OCDの本質的な症状特徴を予防、低減または軽減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、対象における反復性の強迫観念及び/または衝動強迫を予防、低減または軽減する。ある特定の実施形態において、強迫観念は、煩わしいかつ適切でないものとして経験され、また、著しい不安または苦悩を引き起こす、反復性または持続性の思考、衝動または想像である。ある特定の実施形態において、衝動強迫は、対象が、強迫観念に反応して、または堅く適用されなければならない規則に従って、せざるを得ないと感じている反復行動である。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、Y−BOCS及び/またはNIMH−OC診断及び/または症状尺度に従って対象におけるOCDの症状を改善する。いくつかの実施形態において、Y−BOCS尺度は、一次エンドポイントの改善をモニタリングするのに使用される。いくつかの実施形態において、NIMH−OC尺度は、二次的パラメータの改善をモニタリングするのに使用される。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、精神及び神経学的障害を評価するための臨床全般印象−全般改善(CGI−I)尺度を改善する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、ASDを有する対象の全般的な社会的機能(関係、仕事など)において陽性結果を示す。いくつかの実施形態において、全般的尺度は、シーハン障害尺度である。
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、OCDの少なくとも1つの共存疾患を予防、低減または軽減する。OCDの共存疾患には、大うつ病性障害、他の不安障害(全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害)、薬物乱用ならびに摂食障害(拒食症及び過食症)ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、ADHD(注意−欠陥/多活性障害)及び発達障害が含まれる。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、OCDを処置するための別の治療と併用されるときにOCDを予防、低減または軽減するのに特に有効である。かかる治療には、セロトニン及びドーパミン再取り込み阻害薬;クロミプラミン及び抗精神病薬が含まれる。
大うつ病性障害(MDD)
MDDは、実質的な心理社会的機能障害及び高度の個々の精神的緊張、ならびに過剰な罹患率及び死亡率(自殺の危険性が考慮されるべきである)と関連する。大うつ病性障害という用語は、臨床的うつ病、大うつ病、単極性うつ病、単極性障害、反復性うつ病及び単にうつ病を包含する。大うつ病性障害という用語は、気分障害;気分変調;慢性うつ病;季節性情動障害及び境界性パーソナリティ障害をカバーする。
DMS−5基準によると、MDD症状には、2週間を超えての日常生活活動での、憂うつな気分、または関心もしくは喜びの損失;ならびに社会的、職業的及び教育的機能の低下が含まれる。具体的な症状、以下の9つのうち少なくとも5つが、ほぼ毎日見られる:ほぼ終日、憂うつまたは怒りっぽい気分;毎日の大部分で、大部分の活動における関心または喜びの減少;有意な体重変化または食欲の変化;睡眠の変化(不眠症または過眠症);活動の変化(精神運動性激越または遅延);疲労またはエネルギー損失;罪悪感または無価値(無価値の感覚または過度もしくは適切でない罪悪感);集中の低下(思考もしくは集中する能力の低下、またはさらなる優柔不断;及び自殺傾向(死もしくは自殺の思考、または対象が自殺計画を有している)。また、MDDは、非合理的な心配;不愉快な心配による先入観;トラブル緩和及び/または緊張感を含めた不安症状に関連する。MDDエピソードは、穏やか、中程度、または重度であり得る。
MDDエピソードは、多くの場合、他の精神疾患、またはパーキンソン病、アルツハイマー病、脳血管障害、がん及び慢性疼痛症候群のような身体疾患との共存疾患に関連する。MDDは、全般性不安障害;不安障害;物質使用障害;心的外傷後ストレス障害(PTSD);パーソナリティ障害;疼痛;ストレス;過敏性腸症候群;不眠症;頭痛及び対人関係の問題を含めた共存疾患としての広範囲の他の精神障害と頻繁に関連する。
大うつ病性障害は、微生物叢−腸−脳軸の機能障害に起因して発症または持続し得る精神疾患である。したがって、好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象におけるMDDを処置または予防する際の使用のためのものである。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、急性大うつ病エピソードの処置もしくは予防及び/または新しいエピソードの予防(再発予防)の際の使用のためのものである。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、穏やかな、中程度のまたは重度のMDDエピソードの発生を予防、低減または軽減する。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、本明細書に列挙されているDMS−5基準によって分類されているMDDの症状の1または2以上を予防、低減または軽減する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象における憂うつな気分を予防、低減または軽減する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象における大部分の活動における関心または喜びの減少を予防、低減または軽減する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、2週間の期間以内のMDDの症状の発生を低減する。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、症状または診断尺度に従ってMDDの症状を改善する。症状改善を評価するためのかかる尺度には、ハミルトンうつ病評価尺度(HAMD)及びMontgomery Asbergうつ病評価尺度が含まれる。また、Zung自己評価うつ病尺度(SDS)及びZung自己評価不安尺度(SAS)もまた、好適な症状改善尺度である。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、精神及び神経学的障害を評価するための臨床全般印象−全般改善(CGI−I)尺度を改善する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、MDDを有する対象の全般的な社会的及び職業的機能において陽性結果を示す。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、処置耐性MDDを処置または予防する際の使用のためのものである。
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、MDDの少なくとも1つの共存疾患を予防、低減または軽減する。MDDの共存疾患には、全般性不安障害;不安障害;物質使用障害;心的外傷後ストレス障害(PTSD);パーソナリティ障害;疼痛;ストレス;IBS;不眠症;頭痛及び対人関係の問題が含まれる。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、MDDを処置するための別の治療と併用されるときにMDDを予防、低減または軽減するのに特に有効である。かかる治療には、抗うつ薬、増強ストラテジー(例えば、組み合わせ療法、リチウム及び他の気分安定剤、甲状腺ホルモンならびに非定型抗精神病薬)またはさらには第二世代抗精神病薬が含まれる。
不安障害
不安障害は、不安及び恐怖の感覚によって特徴付けられる精神障害の一群である。全般性不安障害(GAD);特定恐怖症;社会不安障害;分離不安障害;広場恐怖症;パニック障害及び選択的無言症を含めた多くの不安障害がある。
GADは、6基準においてDMS−5に従って診断される。第1基準は、6ヶ月を超えての過度の不安または心配であり、当該不安または心配が多くの活動に関して大抵の場合に存在する。第2基準は、対象が第1基準の症状を管理できないことである。第3基準は、以下:情動不安;疲れやすい;集中の問題;興奮性;筋肉の緊張及び睡眠による問題;のうちの少なくとも3つ(子供においては1つ)が起こることである。最後の3基準は、症状が、かなりの社会的、職業的及び機能的障害を結果として生じる;症状が投薬、薬物、または他の身体的健康問題に起因しない;ならびに、症状が、別の精神的問題、例えばパニック障害に、より一致していない;ということである。全ての他の不安障害は、GADの鑑別診断としてみなされ得る。
GADは、うつ病;物質使用障害;ストレス;IBS;不眠症;頭痛;疼痛;心臓事象;対人関係の問題及びADHDを含む共存疾患としての広範囲の他の精神障害に頻繁に関連する。
不安障害は、微生物叢−腸−脳軸の機能障害に起因して発症または持続し得る精神疾患である。したがって、好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象における不安障害を処置または予防する際の使用のためのものである。ある特定の実施形態において、不安障害は、全般性不安障害(GAD);特定恐怖症;社会不安障害;分離不安障害;広場恐怖症;パニック障害及び選択的無言症である。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、本明細書に列挙されているDMS−5基準によって分類されている、対象におけるGADの症状の1または2以上を予防、低減または軽減する。DMS−5によると、同じ症状が、他の不安障害に関連している。そのため、ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、対象における不安障害の症状の1または2以上を予防、低減または軽減する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象の不安または心配を予防、低減または軽減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、6ヶ月の期間内で症状の発生を低減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、情動不安;疲労;集中の損失;興奮性;筋肉の緊張;及び/または睡眠による問題を予防、低減または軽減する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、不安障害に関連する社会的、職業的及び機能的障害を予防、低減または軽減する。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、症状または診断尺度に従って不安障害の症状を改善する。ある特定の実施形態において、症状改善を評価するための尺度には、ハミルトン不安評価尺度(HAM−A)が含まれる。いくつかの実施形態において、HAM−A合計尺度は、一次エンドポイントを評価するのに使用される。他の実施形態において、HAM−A心的不安因子は、二次エンドポイントとして有用であり得る。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、精神及び神経学的障害を評価するための臨床全般印象−全般改善(CGI−I)尺度を改善する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、不安障害を有する対象の全般的な社会的、職業的及び機能的障害において陽性結果を示す。いくつかの実施形態において、全般的尺度は、シーハン障害尺度である。
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、GAD及び不安障害の少なくとも1つの共存疾患を予防、低減または軽減する。GADの共存疾患には、うつ病;物質使用障害;ストレス;IBS;不眠症;頭痛;疼痛;心臓事象;対人関係の問題及びADHDが含まれる。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、不安障害を処置するための別の治療と併用されるときに不安障害を予防、低減または軽減するのに特に有効である。かかる治療には、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(ベンラファキシン、デュロキセチン、エスシタロプラム及びパロキセチン);ベンゾジアゼピン類(アルプラゾラム、ロラゼパム及びクロナゼパム);プレガバリン(Lyrica(登録商標))及びガバペンチン(Neurontin(登録商標));セロトニン受容体部分アゴニスト(ブスピロン及びタンドスピロン);非定型セロトニン作動性抗うつ薬(例えば、イミプラミン及びクロミプラミン);モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)(例えば、モクロベミド及びフェネルジン);ヒドロキシジン;プロプラノロール;クロニジン;グアンファシン及びプラゾシンが含まれる。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
PTSDは、重度の無力化障害であり、その本質的な特徴は、この障害の憎悪因子としての衝撃的な出来事の包含である。
PTSDの症状は、DMS−V基準に従って4つの主な集団にグループ化される:(i)侵入:例として、悪夢、衝撃的な出来事の望ましくない思考、フラッシュバック、及び感情的苦悩または生理的反応による衝撃的な思い出させるものへの反応が挙げられる;(ii)回避:例として、場所、会話、または他の思い出させるものを含めた衝撃的な思い出の誘因の回避が挙げられる;(iii)認知及び気分の陰性変化:例として、衝撃的な出来事についての自身または他人の歪められた非難、自身または世界についての否定的信念、持続性の否定的感情(例えば、恐怖、罪悪感、恥)、疎外された感情、及び抑制された情動(例えば、肯定的感情を経験できない)が挙げられる;(iv)覚醒及び反応の変化:例として、立腹、無謀または自己破壊的行動、睡眠障害、集中力欠如、驚愕反応の増加、及び過覚醒が挙げられる。
衝撃的な出来事の4週以内に解消する症状は、急性ストレス障害の基準を満たす。DSMは、急性(3ヶ月未満の症状持続期間)及び慢性PTSD(3ヶ月を超える症状持続期間)間で区別される。症状がストレス要因の後6ヶ月を超えて開始すると、障害は遅発性PTSDとして定義される。
PTSDは、大うつ病性障害及び物質使用障害との高度の共存疾患を持つ。
PTSDは、微生物叢−腸−脳軸の機能障害に起因して発症または持続し得る精神疾患である。したがって、好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象におけるPTSDを処置または予防する際の使用のためのものである。同様の病因によると、ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、ストレス障害を処置または予防する際の使用のためのものである。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、急性ストレス障害を処置する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、急性及び/または慢性PTSDを処置する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、遅発性PTSDを処置する。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、本明細書に列挙されているDMS−5基準によって分類されている、対象におけるPTSD(またはストレス障害)の症状の1または2以上を予防、低減または軽減する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、PTSDを有する対象における煩わしい思考を予防、低減または軽減する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、PTSDを有する対象における回避行動を予防、低減または軽減する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、PTSDを有する対象における認知及び気分の陰性変化を予防、低減または軽減する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、PTSDを有する対象における覚醒及び反応の変化を予防する。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、症状または診断尺度に従ってPTSDの症状及びストレス障害を改善する。ある特定の実施形態において、症状改善を評価するための尺度は、臨床診断面接PTSD(CAPS)尺度である。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、精神及び神経学的障害を評価するための臨床全般印象−全般改善(CGI−I)尺度を改善する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、PTSDを有する対象の全般的な社会的、職業的及び機能的障害、ならびにストレス障害において陽性結果を示す。いくつかの実施形態において、全般的尺度は、シーハン障害尺度である。
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、PTSD及びストレス障害の少なくとも1つの共存疾患を予防、低減または軽減する。PTSD及びストレス障害の共存疾患には、MDD、物質使用障害;ストレス及び不安が含まれる。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、PTSD及びストレス障害を処置するための別の治療と併用されるときにPTSD及びストレス障害を予防、低減または軽減するのに特に有効である。かかる治療には、セロトニン作動薬、三環系抗うつ薬、気分安定剤、アドレナリン阻害薬、抗精神病薬、ベンゾジアゼピン類、セルトラリン(Zoloft(登録商標))、フルオキセチン(Prozac(登録商標))及び/またはパロキセチン(Paxil(登録商標))が含まれる。
統合失調症スペクトラム及び精神病性障害
これらの疾患は、対象が、明確に考える、良好な判断をする、感情的に対応する、効果的にコミュニケーションを図る、現実を理解する、及び相応に振る舞う能力に影響する。精神病性疾患には、統合失調症(以下に列挙されている症状);統合失調性感情障害(対象が、統合失調症、及び、うつ病または双極性障害などの気分障害の両方の症状を有している);統合失調症様障害(統合失調症の症状を示すが、症状が、1〜6ヶ月の間のより短期間で継続する);短い精神病性障害(対象が、多くの場合、非常にストレスフルな事象、例えば、家族の死亡への応答において、突然の短期間の精神病的行動を示す(回復が通常1ヶ月未満である));妄想性障害(妄想が少なくとも1ヶ月にわたって続く);共有精神病性障害;物質誘導性精神病性障害;別の医学的状態に起因する精神病性障害;パラフレニー(人々が高齢になったとき、統合失調症に類似する症状を示し、熟年において開始される)が含まれる。最も周知されている精神病性障害は統合失調症であり、精神病性障害の大部分が統合失調症と類似する症状を示す。
統合失調症は、不均一な過程及び症状プロファイルによる重度の精神疾患である。統合失調症は、いわゆる陽性及び陰性症状により臨床的に見つかる。陽性症状には、妄想、幻覚、解体した会話、及び解体したまたは緊張病性行動が含まれる。陰性症状には、感情の平坦化、思考及び会話の堪能さ及び生産性ならびに目標指向行動の開始の制限が含まれる。陽性症状は、正常な機能の過剰または歪みを反映するようである一方で、陰性症状は、正常な機能の減少または損失を反映するようである。また、認知障害(作業記憶、情報処理、注意/警戒、学習、論理的思考及び社会的認知の欠陥)が一般的である。認知障害は、概して、現状の抗精神病処置によって不十分な改善を示す。統合失調症患者はまた、気分症状にも悩まされる。これらの主症状の他にも、統合失調症は、他の精神科的症状、例えば、躁及びうつ症状、不安または強迫症状、薬物乱用及び依存、ならびにパーソナリティ障害による共存疾患と関連する。
DMS−5によると、統合失調症の診断について、対象は、以下の症状:妄想;幻覚;解体した会話;解体したまたは緊張病性行動及び陰性症状;のうち少なくとも2つを有さなければならない。症状のうちの少なくとも1つは、妄想、幻覚または解体した会話の存在でなければならない。連続的な撹乱兆候が、少なくとも6ヶ月間持続されなければならず、この間、対象は、社会的または職業的低下の問題が有意な時間量にわたって起こりつつも、少なくとも1ヶ月の活発な症状を経験しなければならない。
統合失調症スペクトラム及び精神病性障害は、微生物叢−腸−脳軸の機能障害に起因して発症または持続し得る精神疾患である。そのため、好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象における統合失調症スペクトラム及び/または精神病性障害を処置または予防する際の使用のためのものである。ある特定の実施形態において、統合失調症スペクトラム及び精神病性障害は、統合失調症;統合失調性感情障害;統合失調症様障害;短い精神病性障害;妄想性障害;共有精神病性障害;物質誘発性精神病性障害;別の医学的状態に起因する精神病性障害及びパラフレニーから選択される。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、統合失調症を処置または予防する際の使用のためのものである。ある特定の実施形態において、統合失調症は、妄想型、解体型、緊張型、未分化型及び残遺統合失調症から選択される。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、本明細書に列挙されているDMS−5基準によって分類されている、対象における統合失調症の症状の1または2以上を予防、低減または軽減する。これらの実施形態は、他の統合失調症スペクトラム及び精神病性障害の症状の予防、低減または軽減に適用される。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、統合失調症の陰性症状を予防、低減または軽減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、統合失調症の陽性症状を予防、低減または軽減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、統合失調症の陰性及び陽性症状を予防、低減または軽減する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、統合失調症を有する対象における妄想、幻覚、解体した会話、及び解体したまたは緊張病性行動を予防、低減または軽減する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、統合失調症を有する対象における感情の平坦化、思考及び会話の堪能さ及び生産性ならびに目標指向行動の開始の制限を予防、低減または軽減する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、統合失調症を有する対象における認知欠陥及び/または気分障害を予防、低減または軽減する。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、6ヶ月の期間内での対象における統合失調症の陽性及び/または陰性症状の発生を低減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、統合失調症スペクトラムまたは精神病性障害を有する対象における社会的及び/または職業的機能を改善する。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、症状または診断尺度に従って統合失調症スペクトラムまたは精神病性障害の症状を改善する。ある特定の実施形態において、症状改善を評価するための尺度は、陽性及び陰性症状尺度(PANSS)ならびに簡易精神病症状評価尺度(BPRS)である。ある特定の実施形態において、陰性症状のアセスメントのための尺度(SANS)が使用される。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、精神及び神経学的障害を評価するための臨床全般印象−全般改善(CGI−I)尺度を改善する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、統合失調症スペクトラムまたは精神病性障害を有する対象の全般的な社会的及び職業的機能障害において陽性結果を示す。
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、統合失調症スペクトラムまたは精神病性障害の少なくとも1つの共存疾患を予防、低減または軽減する。ある特定の実施形態において、共存疾患は、躁及びうつ症状、不安または強迫症状、薬物乱用及び依存、ならびにパーソナリティ障害としてのものである。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、難治性統合失調症の処置耐性を処置または予防する際の使用のためのものである。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、PTSD及びストレス障害を処置するための別の治療と併用されるときに統合失調症スペクトラムまたは精神病性障害を予防、低減または軽減するのに特に有効である。ある特定の実施形態において、かかる治療には、クロルプロマジン、フルフェナジン、ハロペリドール及び/またはパーフェナジンを含めた第一世代抗精神病薬が含まれる。ある特定の実施形態において、かかる治療には、アリピプラゾール(Abilify(登録商標));アセナピン(Saphris(登録商標));ブレクスピプラゾール(Rexulti(登録商標));カリプラジン(Vraylar(登録商標));クロザピン(Clozaril(登録商標));イロペリドン(Fanapt(登録商標));ルラシドン(Latuda(登録商標));オランザピン(Zyprexa(登録商標));パリペリドン(Invega);クエチアピン(Seroquel(登録商標));リスペリドン(Risperdal(登録商標));ジプラシドン(Geodon(登録商標))を含めた第二世代治療が含まれる。
双極性障害
双極性障害は、概して、慢性疾患である。躁病は、双極性障害の主症状である。具体的な持続期間ならびに躁及びうつエピソードのパターンに基づいていくつかのタイプの双極性障害がある。DMS−5において、区別は、I型双極性障害、II型双極性障害、気分循環性障害、急速交代型双極性障害及び双極性障害NOSの間でなされる。
DSMによると、躁病は、異常に持続的に上昇する、誇大なまたは怒りっぽい気分の区別できる期間である。エピソードは、1週間継続しなければならず、気分は、以下の症状:高い自尊心;低減した睡眠欲求;会話速度の増加;発想の迅速な跳躍;気が散りやすい;目標または活動への関心の増加;精神運動性激越;高い危険性を伴う活動の追求の増加;のうちの少なくとも3つを有さなければならない。
I型双極性障害は、1または2以上の躁病または混合(躁病及びうつ病)エピソードならびに少なくとも1つの大うつ病性エピソード(MDDエピソードの症状についての上記を参照されたい)を含む。II型双極性障害は、少なくとも1つの軽躁病エピソードが伴う1または2以上の大うつ病エピソードを有する。躁病または混合エピソードは存在しない。軽躁病は、より軽い躁病である。上記の症状は、かなりの社会的、職業的及び機能的障害の原因となる。気分循環症は、軽躁病の期間に併せて低いレベルのうつ病を変化させることを特徴とする。上記の症状は、診断がなされ得る前に成人において少なくとも2年、または小児において1年間存在しなければならない。成人及び小児における症状のない期間は、それぞれ、もはや2ヶ月または1ヶ月を超えては継続しない。急速交代型双極性障害は、双極性障害の重度の形態である。これは、人が1年以内に大うつ病、躁病、軽躁病、または混合状態のうちの少なくとも4つのエピソードを有するときに起こる。他に指定がない(NOS)双極性障害は、他のタイプに明確に適合しない双極性症状に分類される。NOSは複数の双極性症状が存在するが他のサブタイプのいずれについてもレベルを満たすのに十分でないときに診断される。
双極性障害は、以下の共存疾患:ADHD;不安障害;物質障害;肥満及びメタボリックシンドロームに関連する。
双極性障害は、微生物叢−腸−脳軸の機能障害に起因して発症または持続し得る精神疾患である。そのため、好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象における双極性障害を処置または予防する際の使用のためのものである。ある特定の実施形態において、双極性障害は、I型双極性障害である。ある特定の実施形態において、双極性障害は、II型双極性障害である。ある特定の実施形態において、双極性障害は、気分循環性障害である。ある特定の実施形態において、双極性障害は、急速交代型双極性障害である。ある特定の実施形態において、双極性障害は、双極性障害NOSである。
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象における双極性障害の症状の1または2以上を予防、低減または軽減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、対象における躁病エピソードの発生を予防、低減または軽減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、異常に持続的に上昇する、誇大なまたは怒りっぽい気分の発生を予防、低減または軽減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、以下の症状:高い自尊心;低減した睡眠欲求;会話速度の増加;発想の迅速な跳躍;気が散りやすい;目標または活動への関心の増加;精神運動性激越;高い危険性を伴う活動の追求の増加;のうちの1または2以上を予防、低減または軽減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、対象における1または2以上の躁病または混合エピソードの発生を予防、低減または軽減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、対象における少なくとも1つの大うつ病性エピソードの発生を低減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、少なくとも1つの軽躁病エピソードを伴う少なくとも1つの大うつ病性エピソードの発生を予防、低減または軽減する。
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、双極性障害の急性期を処置する及び/またはさらなるエピソードの発生を予防する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、双極性障害を有する対象における躁病/うつ病エピソードの急性期を処置し、また、さらなる躁病/うつ病エピソードの発生を予防する。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、症状または診断尺度に従って双極性障害の症状を改善する。ある特定の実施形態において、躁病エピソードの症状改善を評価するための尺度は、躁状態評価尺度及びヤング躁病評価尺度である。ある特定の実施形態において、尺度は、ベック・ラファエルソン躁病尺度(BRMAS)である。ある特定の実施形態において、躁病からうつ病へのエピソードの切り替えの症状改善を評価するための尺度には、ハミルトンうつ病評価尺度、モンゴメリ・アスベルグ評価尺度、及びベック・ラファエルソンうつ病尺度が含まれる。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、精神及び神経学的障害を評価するための臨床全般印象−全般改善(CGI−I)尺度を改善する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、双極性障害を有する対象の全般的な社会的、職業的及び機能的障害において陽性結果を示す。
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、双極性障害の少なくとも1つの共存疾患を予防、低減または軽減する。ある特定の実施形態において、共存疾患は、ADHD、不安障害、物質障害、肥満及びメタボリックシンドロームから選択される。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、リチウム及びジバルプロエクスに非応答性の躁うつ病の疾患及び双極性障害を処置または予防する際の使用のためのものである。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、双極性障害を処置するための別の治療と併用されるときに双極性障害を予防、低減または軽減する際に特に有効である。ある特定の実施形態において、かかる治療には、炭酸リチウム、抗けいれん薬(バルプロエート、ジバルプロエクス、カルバマゼピン及びラモトリギンを含む)ならびに抗精神病薬(アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン及びリスペリドンを含む)が含まれる。
神経認知障害及びアルツハイマー病
DSM−5において、認知症という用語は、大神経認知障害及び軽度神経認知障害という用語によって置き換えられた。神経認知障害は、不均一な精神疾患分類である。最も一般的な神経認知障害は、アルツハイマー病であり、続いて、血管性認知症またはこれら2つの混合形態である。他の神経変性障害形態(例えば、レビー小体病、前頭側頭認知症、パーキンソン認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、及びウェルニッケ・コルサコフ症候群)は、認知症に付随して起こる。
DSM−5下での認知症についての症状の基準は、学習及び記憶;言語;実行機能;複合注意;知覚−運動ならびに社会的認知から選択される1または2以上の認知領域における以前の性能レベルからの有意な認知低下の証拠である。認知障害は、毎日の活動における自立を妨げなければならない。また、認知障害は、せん妄に関連して排他的に起こるのではなく、また、別の精神障害(例えばMDDまたは統合失調症)によってより説明されるものでもない。
一次症状に加えて、神経認知障害を有する対象は、興奮、攻撃、うつ病、不安、無気力、精神病及び睡眠覚醒サイクルの乱れを含めた行動及び精神科的症状を示す。
神経認知障害は、微生物叢−腸−脳軸の機能障害に起因して発症または持続し得る精神疾患である。そのため、好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象における神経認知障害を処置または予防する際の使用のためのものである。好ましい実施形態において、神経認知障害は、アルツハイマー病である。他の実施形態において、神経認知障害は、血管性認知症;アルツハイマー病及び血管性認知症の混合形態;レビー小体病;前頭側頭認知症;パーキンソン認知症;クロイツフェルト・ヤコブ病;ハンチントン病;及びウェルニッケ・コルサコフ症候群から選択される。
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象における神経認知障害の症状の1または2以上を予防、低減または軽減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、対象における認知低下の発生を予防、低減または軽減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、学習及び記憶;言語;実行機能;複合注意;知覚−運動ならびに社会的認知から選択される1または2以上の認知領域において神経認知障害を有する対象の性能レベルを改善する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、興奮、攻撃、うつ病、不安、無気力、精神病及び睡眠覚醒サイクルの乱れから選択される神経認知障害に関連する1または2以上の行動及び精神科的症状の発生を予防、低減または軽減する。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、前臨床段階での疑わしい病原性機序における介在によって症候性疾患を予防、低減または軽減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、症状の進行の遅延または阻止によって疾患の修飾を改善する。いくつかの実施形態において、症状の進行の遅延または阻止は、原因となっている神経病理学的プロセスの遅延における証拠と相関する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、認知の向上及び機能改善を含めて、神経認知障害の症状を改善する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、認知症(BPSD)の行動及び精神科的症状を改善する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、神経認知障害を有する対象が毎日の活動に取り組む能力を改善する。
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、アルツハイマー病を有する対象における認知及び機能の両方を改善する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、アルツハイマー病を有する対象における認知エンドポイントを改善する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、アルツハイマー病を有する対象における機能的エンドポイントを改善する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、アルツハイマー病を有する対象における認知及び機能的エンドポイントを改善する。なおさらに好ましい実施形態において、本発明の組成物は、アルツハイマー病を有する対象における臨床応答全体(全般的エンドポイント)を改善する。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、症状または診断検査に従って神経認知障害の症状を改善する。ある特定の実施形態において、アルツハイマー病(及び他の神経認知障害)の症状改善を評価するための試験は、客観的認知、日常生活動作、変化の包括的評価、健康関連QOL試験、ならびに神経認知障害の行動及び精神科的症状を評価する試験から選択される。
ある特定の実施形態において、症状改善のアセスメントに関する客観的認知試験は、アルツハイマー病評価尺度−認知サブスケール(ADAS−cog)及び伝統的なADAS尺度を使用する。ある特定の実施形態において、認知の症状改善は、アルツハイマー病において使用される神経心理学検査バッテリー(NTB)を使用して評価される。
いくつかの実施形態において、変化の包括的評価試験は、精神及び神経学的障害を評価するための臨床全般印象−全般改善(CGI−I)尺度を使用する。いくつかの実施形態において、全般的尺度は、臨床医の面接に基づく変化の印象プラス(CIBIC−plus)である。いくつかの実施形態において、全般的尺度は、アルツハイマー病共同研究ユニット−変化に対する臨床医の包括的印象(ADCS−CGIC)である。
ある特定の実施形態において、健康関連QOLの評価基準は、アルツハイマー病関連QOL(ADRQL)及びQOL−アルツハイマー病(QOL−AD)である。
ある特定の実施形態において、神経認知障害の行動及び精神科的症状を評価する試験は、アルツハイマー病評価尺度における行動病理学(BEHAVE−AD);認知症に関する行動評価尺度(BRSD);Neuropsychiatric Inventory(NPI);及びコーエン・マンスフィールドagitation評価票(CMAI)から選択される。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、神経認知障害を処置するための別の治療と併用されるときに神経認知障害を予防、低減または軽減するのに特に有効である。ある特定の実施形態において、かかる治療には、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬、例えば、ドネペジル(Aricept(登録商標))、ガランタミン(Razadyne(登録商標))及びリバスチグミン(Exelon(登録商標))、ならびにメマンチンが含まれる。
パーキンソン病
パーキンソン病は、不均一な神経細胞集団(ドーパミン−産生細胞)の変性によって神経病理学的に特徴付けられる一般的な神経変性疾患である。パーキンソン病の臨床的診断は、動作緩慢、ならびに以下の中核症状:静止振戦;筋肉の硬直及び姿勢反射障害の少なくとも1つを必要とする。病気の進行の際に存在し得または発生し得る他の兆候及び症状は、自律神経障害(唾液分泌過多症、脂漏症、便秘、尿意の混乱、性機能、起立性低血圧、起立性低血圧)、睡眠障害及び嗅覚または温度覚の混乱である。うつ病症状及び認知機能障害共存疾患は、多くのパーキンソン病患者、ならびにレビー小体関連の神経認知障害において発症する。
パーキンソン病は、微生物叢−腸−脳軸の機能障害に起因して発症または持続し得る精神疾患である。そのため、好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象におけるパーキンソン病を処置または予防する際の使用のためのものである。
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象におけるパーキンソン病の症状の1または2以上を予防、低減または軽減する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象におけるパーキンソン病の1または2以上の中核症状を予防、低減または軽減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、対象における動作緩慢を予防、低減または軽減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、対象における静止振戦;筋肉の硬直及び/または姿勢反射障害を予防、低減または軽減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、自律神経障害(唾液分泌過多症、脂漏症、便秘、尿意の混乱、性機能、起立性低血圧、起立性低血圧)、睡眠障害及び嗅覚または温度覚の混乱から選択されるパーキンソン病の進行に関連する1または2以上の症状を予防、低減または軽減する。
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、パーキンソン病と合併しているうつ病症状を予防、低減または軽減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、言語記憶及び/または実行機能を改善する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、注意、作業記憶、言語の堪能さ及び/または不安を改善する。
他の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、パーキンソン病と合併している認知機能障害を予防、低減または軽減する。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、パーキンソン病の進行を予防、低減または軽減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、後の運動合併症を予防、低減または軽減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、後の運動症状の変動を予防、低減または軽減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、ニューロン脱落を予防、低減または軽減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、パーキンソン病認知症(PDD)の症状を改善する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、実行機能、注意及び/または作業記憶の損失を予防、低減または軽減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、ドーパミン作動性神経伝達を改善する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、ドーパミン作動性神経伝達の損失を予防、低減または軽減する。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、症状または診断尺度に従ってパーキンソン病の症状を改善する。ある特定の実施形態において、パーキンソン病における運動機能の症状改善を評価するための試験は、パーキンソン病統一スケールである。特に、UPDRS IIは、日常生活動作を考慮しており、UPDRS IIIは、運動検査を考慮している。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、症状または診断検査及び/または尺度に従ってPDDに関連する症状を改善する。ある特定の実施形態において、試験または尺度は、ホプキンス言語学習試験−改訂版(HVLT−R);デリスカプラン実行機能システム(D−KEFS)色単語緩衝試験;ハミルトンうつ病評価尺度(HAM−D17;うつ病);ハミルトン不安評価尺度(HAM−A;不安)及びパーキンソン病統一スケール(UPDRS;PD症状の重篤度)から選択される。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、精神及び神経学的障害を評価するための臨床全般印象−全般改善(CGI−I)尺度を改善する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、パーキンソン病を有する対象の全般的な社会的及び職業的機能障害において陽性結果を示す。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、神経認知障害を処置するための別の治療と併用されるときに神経認知障害を予防、低減または軽減する際に特に有効である。ある特定の実施形態において、かかる治療には、ドーパミンアゴニスト(L−Dopa+を含む);モノアミン酸化酵素阻害薬、カテコールアミン−O−メチルトランスフェラーゼ阻害薬;抗コリン薬及びグルタミン酸調節剤が含まれる。
他の中枢神経系障害
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、微生物叢−腸−脳軸の機能障害に関連する中枢神経系障害を処置または予防する際の使用のためのものである。上記実施形態に加えて、本発明の組成物は、精神病;慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎)及び/または慢性疼痛を処置または予防する際の使用のためのものである。さらなる実施形態において、本発明の組成物は、運動ニューロン疾患;ハンチントン病;ギラン−バレー症候群及び/または髄膜炎を処置または予防するのに有用であり得る。
神経化学因子、神経ペプチド及び神経伝達物質ならびに微生物叢−腸−脳軸
上記で概説しているように、微生物叢−腸−脳軸は、多数の異なる生理系によって調節される。微生物叢−腸−脳軸は、多数のシグナル伝達分子によって調節される。これらのシグナル伝達分子のレベルの変化は、結果として、中枢神経系の発達及び/または機能性の欠陥を生じさせる。実際、このセクションにおいて開示されている多くの分子は、微生物叢−腸−脳軸の機能性及び中枢神経系障害または状態の病因に関与している([10]、[14]、[38]、[39])。本発明者らによって実施された実験は、行動変化が、Enterococcus faeciumの投与によって誘発され得ることを示している。この効果は、シグナル伝達分子、特にこのセクションにおいて列挙されているもののレベルに対する効果によって介在され得る。これらの変化は、Enterococcus faeciumに関連する治療的利益の原因となり得る。したがって、本明細書に開示されている中枢神経系障害及び状態が同様の根本的な生化学的及び生理的病因(すなわち、微生物叢−腸−脳軸を介して)を示すという事実に起因して、Enterococcus faeciumの同様の治療的利益もまたこれらの障害及び状態に関して達成され得る。
微生物叢−腸−脳軸のシグナル伝達は、神経化学因子、神経ペプチド及び神経伝達物質のレベルによって調節される。したがって、ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、神経化学因子、神経ペプチド及び神経伝達物質のレベルを調節する。したがって、ある特定の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、CNS生化学を直接変化させる。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、脳由来神経栄養因子(BDNF)のレベルを調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、モノアミンのレベルを調節する。ある特定の実施形態において、モノアミンは、セロトニン(5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT))、ドーパミン、ノルエピネフリン及び/またはエピネフリンである。ある特定の実施形態において、モノアミンは、カテコールアミンである。ある特定の実施形態において、カテコールアミンは、ドーパミン、ノルエピネフリン及びエピネフリンである。ある特定の実施形態において、モノアミンは、トリプタミンである。ある特定の実施形態において、トリプタミンは、セロトニン及びメラトニンである。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、アセチルコリンのレベルを調節する。
ある特定の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、オキシトシンのレベルを調節する。オキシトシンは、感情的、社会的、認知及び神経内分泌生理学ならびに自己調節能に関連する。特に、オキシトシン放出は、抗不安;前向きな気分;母体行動、つがいの絆;性的行動;社会的記憶;嗅覚記憶;食欲抑制効果;ストレスへのHPA軸応答の減衰;誕生及び乳児の間の自己励起、ならびに他の生理的及び心理的プロセスが関与している。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、オキシトシンのレベルを増加させる。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、オキシトシンのレベルを減少させる。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、オキシトシンシグナル伝達を増加または減少させる。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、オキシトシン受容体のレベルを調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、神経、筋肉及び胃腸細胞に入るまたは該細胞から出るカルシウムイオン束を調節する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、オキシトシンのレベルを調節することによって、微生物叢−腸−脳軸に関連する神経発達及び精神神経障害及び疾患を処置及び予防する。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、脳モノアミン及びその代謝産物のレベルを調節する。好ましい実施形態において、モノアミンは、セロトニンである。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、セロトニン作動性及び/またはトリプトファン代謝のキヌレニン経路を調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、セロトニン代謝産物、例えば、5−ヒドロキシインドール酢酸(5−HIAA)のレベルを調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、ドーパミン代謝産物、例えば、ホモバニリン酸(HVA)のレベルを調節する。これらの神経伝達物質及び神経化学因子の調節は、ストレス、うつ病及び不安関連障害を処置するのに有用である。
微生物叢−腸−脳軸のシグナル伝達は、γ−アミノ酪酸(GABA)のレベルによって調節される。したがって、好ましい実施形態において、本発明の組成物は、GABAのレベルを調節する。GABAは、神経興奮性を低減する抑制性神経伝達物質である。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、GABAのレベルを増加させる。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、GABAのレベルを減少させる。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、GABA性神経伝達を変化させる。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、中枢神経系の異なる領域におけるGABA転写のレベルを調節する。ある特定の実施形態において、共生生物由来のGABAは、血液脳関門を渡り、神経伝達に直接影響する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、海馬、扁桃体及び/または青斑核におけるGABAの低減を引き起こす。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、皮質領域におけるGABAの増加を引き起こす。
神経活性分子、例えば、セロトニン、メラトニン、GABA、ヒスタミン及びアセチルコリンのレベルは、中枢神経系疾患、例えば、認知症、アルツハイマー病及びハンチントン病の病態生理と連結している。
微生物叢−腸−脳軸のシグナル伝達は、ヒスタミンのレベルによって調節される。したがって、ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、ヒスタミンのレベルを調節する。ある特定の実施形態において、ヒスタミンは、免疫調節効果を有する。ある特定の実施形態において、ヒスタミンレベルは、内腔から体循環への細菌の転移を可能にする。そのため、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、胃腸管透過性及び/または関門機能を変化させる。ある特定の他の実施形態において、ヒスタミンは、中心のプロセスと関係している神経伝達物質として作用する。
微生物叢−腸−脳軸のシグナル伝達は、HPA軸によって調節される。したがって、ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、HPA活性を調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、HPAストレス反応を減衰する。ある特定の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、HPA活性に関連する炎症反応を調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、糖質コルチコイドのレベルを調節する。ある特定の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、コルチコステロン及びアドレナリンのレベルを調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、副腎皮質刺激ホルモン放出因子及び/またはバソプレシンのレベルを調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、バソプレシン及び/または他の脳下垂体もしくは抗利尿ホルモンのレベルを調節する。HPA軸活性の変化は、不安及びストレス障害に関連する。
微生物叢−腸−脳軸のシグナル伝達は、免疫反応ならびに炎症性因子及びマーカーの変化によって調節される。したがって、ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、免疫反応を調節し得る。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、循環する神経免疫シグナル伝達分子の全身レベルを調節する。ある特定の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、前炎症性サイトカイン産生及び炎症を調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、炎症状態を調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、脾細胞増殖反応を調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、C−反応性タンパク質;IL−1ファミリーサイトカイン;IL−1β;IL−2;IL−4;IL−6;IL−8;IL−10;IL−12p40;IL−17;IL−17A;IL−21;IL−23;TNF−α及びIFN−γ;の全身及び/または血漿中濃度を調節する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、抗炎症性サイトカイン、例えば、IL−10のレベルを調節する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、IL−10のレベルを増加させる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、TNF−αのレベルを調節する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、IFN−γのレベルを調節する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、IFN−γ:IL−10比を調節する。ある特定の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、IFN−γ:IL−10比を減少させる。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、前炎症性サイトカインTNF−α及びIFN−γのレベルを減少させる。サイトカインの循環レベルの増加は、うつ病、不安、統合失調症及びASDを含めた種々の精神神経障害に密接に関連する。炎症状態の変化の証拠は、障害、例えば、統合失調症、大うつ病性障害及び双極性障害において強調されている。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、耐性媒介樹状細胞のレベルを調節し、また、前及び抗炎症性サイトカイン反応を相互に調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、ミエロペルオキシダーゼ(炎症及び酸化のマーカー)の全身レベルを減少させる。免疫系及び炎症反応の治療調節剤は、自閉症スペクトラム障害及び気分障害を処置するのに有用である。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、感染またはワクチン接種への免疫反応を調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、感染またはワクチン接種に反応する炎症のレベルを調節する。ある特定の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、妊娠中の感染またはワクチン接種に反応する母体免疫活性化を調節する。したがって、本発明の組成物は、子孫における中枢神経系障害を処置または予防するために妊娠中に投与され得る。
微生物叢−腸−脳軸のシグナル伝達は、共生代謝産物のレベルによって調節される。したがって、ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、微生物叢代謝産物の全身レベルを調節する。ある特定の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、短鎖脂肪酸(SCFA)のレベルを調節する。ある特定の実施形態において、SCFAのレベルが増加または減少する。いくつかの実施形態において、SCFAは、酪酸(BA)(またはブチレート)である。いくつかの実施形態において、SCFAは、プロピオン酸(PPA)である。いくつかの実施形態において、SCFAは、酢酸である。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、SCFAが血液脳関門を渡る能力を調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、多糖A(PSA)のレベルを調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、強力な前炎症性エンドトキシンリポ多糖体(LPS)のレベルを調節する。LPSは、生理的脳活動を変化させかつ神経ペプチド合成を調節する炎症性サイトカインの産生を引き起こす。LPSは、CNSの調節に重要な影響を及ぼし、感情の制御に当てられる領域(例えば、扁桃体)の活動を増加させる。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、トリプトファン及び/またはその代謝産物のレベルを調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、4−エチルフェニルサルフェート(4EPS;ASD関連行動異常に関連する尿毒性毒素)のレベルを調節する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象における4−エチルフェニルサルフェートのレベルを減少させる。管腔内の腸刺激によって引き起こされる神経シグナル伝達経路の刺激によって発生するシグナルは、疼痛知覚、免疫反応調節、感情コントロール及び他の恒常性維持機能を含めた脳活動を強く調節する。したがって、これらの因子のレベルを調節することができる組成物は、CNS障害を処置または予防するための広範な治療的適用を有する。
微生物叢−腸−脳軸のシグナル伝達は、胃腸透過性レベルによって調節される。したがって、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、胃腸管上皮の完全性を変化させる。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、胃腸管の透過性を調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、関門機能、及び胃腸管の完全性を調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、胃腸管の運動性を調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、共生代謝産物及び炎症性シグナル伝達分子の、胃腸管内腔から血流への転移を調節する。
微生物叢−腸−脳軸のシグナル伝達は、胃腸管における微生物叢組成によって調節される。したがって、ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、胃腸管の微生物叢組成を調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、微生物叢腸内毒素症及び関連する毒性代謝産物増加(例えば、LPS)を予防する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、胃腸管におけるClostridiumのレベルを調節する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、胃腸管におけるClostridiumのレベルを低減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、Campylobacter jejuniのレベルを低減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、有害な嫌気性細菌の増殖及びこれらの細菌によって産生される神経毒の産生を調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、Lactobacillus及び/またはBifidobacteriumの微生物叢レベルを調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、Sutterella、Prevotella、Ruminoccucs属及び/またはAlcaligenaceae科の微生物叢レベルを調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、Lactobacillus plantarum及び/またはSaccharomyces boulardiiのレベルを増加する。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、抗生物質の大量使用による微生物叢の組成の異常調節を予防する。ある特定の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、妊娠中の抗生物質の投与の際に機能的な母体微生物叢組成を維持する。したがって、本発明の組成物は、子孫における中枢神経系障害を処置または予防するために妊娠中に投与され得る。
微生物叢の調節は、不安、うつ病、自閉症スペクトラム障害、強迫神経症及び記憶力(空間及び非空間記憶を含む)を含めた精神疾患関連行動、ならびに、パーキンソン病を含めた他のCNS関連障害を改善する際に有効であることが示されている。ある特定の研究は、プロバイオティクスは、心理的ストレス、身体化、うつ病及び怒り−敵対心を低減し得ることを示唆している。Lactobacillusのレベルは、うつ病に関連しており、胃腸不快感に関連する疼痛シグナル伝達に関与している。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、本明細書に記載されている中枢神経系障害に関連する行動上の症状の少なくとも1つを予防、低減または軽減する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象における臨床応答全体を改善する。
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象における常同、反復行動を予防、低減または軽減する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、異常に制限的な行動及び/または関心の発生を予防、低減または軽減する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、対象における反復性の強迫観念及び/または衝動強迫を予防、低減または軽減する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象における社会的行動の欠損を予防、低減または軽減する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象における回避行動を予防、低減または軽減する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象におけるコミュニケーション行動の欠損を予防、低減または軽減する。
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象における認知及び気分の陰性変化を予防、低減または軽減する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象における不安関連行動を予防、低減または軽減する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象におけるストレス関連行動を予防、低減または軽減する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象におけるうつ病関連行動を予防、低減または軽減する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象における攻撃的行動を予防、低減または軽減する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、異常に持続的に上昇する、誇大なまたは怒りっぽい気分の発生を予防、低減または軽減する。
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象における煩わしい思考を予防、低減または軽減する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象における覚醒及び反応の変化を予防する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象における妄想、幻覚、解体した会話、及び解体したまたは緊張病性行動を予防、低減または軽減する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象における感情の平坦化、思考及び会話の堪能さ及び生産性ならびに目標指向行動の開始の制限を予防、低減または軽減する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、以下の症状:高い自尊心;低減した睡眠欲求;会話速度の増加;発想の迅速な跳躍;気が散りやすい;目標または活動への関心の増加;精神運動性激越;高い危険性を伴う活動の追求の増加;のうちの1または2以上を予防、低減または軽減する。
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象における空間及び/または非空間記憶欠損を改善する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象における認知及び機能の両方を改善する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象における自発運動を改善する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象における動作緩慢を予防、低減または軽減する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象における静止振戦;筋肉の硬直及び/または姿勢反射障害を予防、低減または軽減する。
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、本明細書に開示されているCNS障害に関連する少なくとも1つの共存疾患を予防、低減または軽減する。
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、本明細書に記載されているCNS障害に関する症状及び/または診断尺度のうちの少なくとも1つにおける対象のスコアを改善する。ある特定の他の実施形態において、症状及び/または診断尺度は、全体的な健康に関するアンケート(GHQ);うつ病不安及びストレス尺度(DASS);改訂版Leiden抑うつ感受性尺度(LEIDS−r);陽性及び陰性症状尺度(PANSS);状態−特性不安尺度(STAI);発達行動チェックリスト(DBC);ベックうつ病調査票(BDI);ベック不安調査票(BAI);ホプキンス症状チェックリスト(HSCL−90);病院不安及びうつ尺度(HADS);知覚されたストレス尺度(PSS);コーピングチェックリスト(CCL)(日常生活のストレスに対抗するのにも使用される);ならびに気分状態のアンケートに基づくプロファイル(POMS)から選択される。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、当業者に公知であるCNS障害の他の動物モデルにおける治療効能を評価するとき、症状及び/または診断尺度を改善し得る。例に開示されている行動アッセイに加えて、本発明の組成物は、相互の社会的相互作用;嗅覚によるコミュニケーション;超音波発声;運動性常同行動(例えば、周回及び垂直跳躍)、反復行動、例えば、セルフグルーミング及びディフィング(diffing);ならびに空間作業における忍耐力を改善し得る。
また、本発明の組成物は、CNS障害の他の動物モデルにおけるCNS障害を処置及び/または予防する際に有用である。他のマウスモデルには、同系交配マウス株(BALB/cJ及びC58/Jを含む)ならびに遺伝子組み換えされたマウス株(NEUREXIN1、NEUROLIGIN3、NEUROLIGIN4、SHANK2、SHANK3、CNTNAP2、Tsc1/2及びFmr1遺伝子変異マウス株を含む)も含まれる。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、対象の社会的行動を改善する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、対象における社会的新規性の認識を改善する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、ファミリアー及び新規対象物間、ならびにファミリアー及び新規対象間で区別する能力を改善する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、他の対象を認識する能力を改善する。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、アミノ酸の血漿中濃度を調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、アミノ酸の生合成または異化を調節する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、プロリンの血漿中濃度を調節する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、プロリンの血漿中濃度を低減する。プロリンの上昇は、前頭葉前部皮質におけるドーパミンの増加によって脳機能に負に影響することが知られている[40]。また、プロリンは、海馬におけるグルタミン酸神経伝達、及び脳におけるいずれかでの神経伝達を調節する神経伝達物質であるとされている。したがって、プロリンは、CNS障害及び精神疾患、特に精神病に関与している。好ましい実施形態において、プロリンの血漿中濃度の低減は、CNS障害、特に、ADHD、OCD、気分障害、自閉症スペクトラム障害、精神病及び統合失調症を処置または予防する。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、22q11.2欠失症候群(22q11DS)に関連する精神疾患、例えば、統合失調症及び双極性障害の症状を予防、低減または軽減する[40]。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、22q11DSを有する対象における社会的行動及び社会的認知の問題を改善する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、22q11DS対象における関連する認知及び行動の成果を調節する。好ましい実施形態において、これらの成果の調節は、プロリンの血漿中濃度の低減の結果である。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、プロリンヒドロゲナーゼの活性を調節する。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、NMDA受容体及び/またはそのサブユニットのレベルを調節する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、NMDA受容体2Bのレベルを調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、NMDA受容体2Bのレベルを増加させる。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、NMDA受容体2Bのレベルを減少させる。NMDA受容体の異常調節は、CNS障害、特にASD及び統合失調症に関連している。NMDA受容体アンタゴニストは、ASDを処置する際に有効であり得ることが示唆されている[41]。また、NMDA受容体機能の抑制は、ASDのバルプロ酸誘導モデルにおける社会的欠損を改善しかつ反復行動を低減することが実証されている[42]。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、NMDA受容体2Bの機能低下を引き起こす。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、NMDA受容体2Bの機能亢進を引き起こす。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、NMDA受容体2B活性の調節の結果としての、CNS障害、例えば、ASDまたは統合失調症の症状を予防、低減または軽減する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、CNS障害を有する対象におけるNMDA受容体活性を抑制しかつ社会的欠損及び常同行動を低減する。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、BDNFのレベルを調節する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、BDNFのレベルを低減する。ある特定の実施形態において、BDNFの低減は、扁桃体に局在化されている。ASD集団のメタ分析は、対照と比較してASD対象においてより高いレベルのBDNFが検出されることを示している[43]。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、BDNFのレベルの低減の結果としての、CNS障害、特にASDの症状を予防、低減または軽減する。BDNFの変化したレベルは、多数の神経発達障害、ならびに精神病及び統合失調症に関連している。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、神経発達障害及び精神障害の症状を予防、低減または軽減するためにBDNFのレベルを調節する。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、抗原チャレンジに応答して産生される炎症マーカーのレベルを調節する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、ウイルス抗原チャレンジに応答するIL−1βのレベルを増加させる。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、先天性免疫反応を調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、適応免疫反応を調節する。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、炎症反応を調節する。
投与の形態
好ましくは、本発明の組成物は、本発明の細菌株による腸への送達及び/または腸への部分もしくは全体定着を可能にするために胃腸管に投与されるべきである。概して、本発明の組成物は、経口で投与されるが、これらは、経直腸的に、鼻腔内に、または頬側もしくは舌下経路を介して投与されてよい。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、フォームとして、スプレーまたはゲルとして投与されてよい。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、坐薬、例えば肛門坐薬として、例えば、カカオ脂(ココアバター)、合成硬質脂肪(例えば、坐剤用基材、ウィテップゾール)、グリセロ−ゼラチン、ポリエチレングリコール、または石鹸グリセリン組成物の形態で投与されてよい。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、チューブ、例えば、鼻腔栄養チューブ、経口胃チューブ、胃チューブ、経空腸チューブ(Jチューブ)、経皮的内視鏡下胃瘻造設術(PEG)、またはポート、例えば胃、空腸及び他の好適なアクセスポートへのアクセスを付与する胸壁ポートを介して胃腸管に投与される。
本発明の組成物は、一度で投与されてよく、または処置レジメンの部分として逐次的に投与されてよい。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、連日投与されるべきである。
本発明のある特定の実施形態において、本発明による処置は、患者の腸内微生物叢のアセスメントによって達成される。処置は、本発明の株の送達及び/またはそれによる部分的もしくは全体的定着が達成されず、その結果、効能が観察されないことになるとき、繰り返されてよく、あるいは、処置は、送達及び/または部分的もしくは全体的定着が成功裏でありかつ効能が観察されるときに中止されてよい。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、妊娠した動物、例えば、哺乳動物、例えば、ヒトに、その子宮内の胎児及び/または生まれた後の小児において発症する炎症性または自己免疫疾患を予防するために投与されてよい。
本発明の組成物は、中枢神経系障害もしくは状態、特に、微生物叢−腸−脳軸によって介在される中枢神経系障害もしくは状態を有すると診断されている、または中枢神経系障害もしくは状態、特に、微生物叢−腸−脳軸によって介在される中枢神経系障害もしくは状態の危険性があると確認されている患者に投与され得る。上記組成物はまた、健康な患者における、中枢神経系障害または状態、特に微生物叢−腸−脳軸によって介在される中枢神経系障害または状態の発症を予防するための予防対策として投与されてもよい。
本発明の組成物は、異常な腸内微生物叢を有すると同定されている患者に投与されてよい。例えば、患者は、Enterococcus faeciumによる定着が低減されているか、または該定着がないかであり得る。
本発明の組成物は、食品、例えば栄養補助食品として投与されてよい。
概して、本発明の組成物は、ヒトの処置のためのものであるが、単胃哺乳動物、例えば、家禽、ブタ、ネコ、イヌ、ウマまたはウサギを含めた動物を処置するのに使用されてよい。本発明の組成物は、動物の成長及びパフォーマンスを向上させるのに有用である場合がある。動物に投与されるとき、経口胃管栄養法が使用されてよい。
組成物
概して、本発明の組成物は、細菌を含む。本発明の好ましい実施形態において、組成物は、凍結乾燥形態で調合される。例えば、本発明の組成物は、本発明の細菌株を含む顆粒またはゼラチンカプセル、例えば、硬質ゼラチンカプセルを含んでいてよい。
好ましくは、本発明の組成物は、凍結乾燥されている細菌を含む。細菌の凍結乾燥は、確立された手順であり、関連のガイダンスは、例えば、参照文献[44]、[]及び[46]において入手可能である。
代替的には、本発明の組成物は、生きている、活性な細菌培養物を含んでいてよい。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物における細菌株は、不活性化されていない、例えば、熱不活性化されていない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物における細菌株は、殺傷されていない、例えば、熱殺傷されていない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物における細菌株は、弱毒化されていない、例えば、熱弱毒化されていない。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物における細菌株は、殺傷されていない、不活性化されていない及び/または弱毒化されていない。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物における細菌株は、生きている。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物における細菌株は、生存している。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物における細菌株は、腸に部分的または全体的に定着することが可能である。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物における細菌株は生存しており、腸に部分的または全体的に定着することが可能である。
いくつかの実施形態において、組成物は、生きている細菌株と殺傷されている細菌株との混合物を含む。
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、腸への細菌株の送達を可能にするようにカプセル化されている。カプセル化は、目標箇所に送達するまで、例えばpHの変化によって引き起こされる場合がある化学的または物理的刺激、例えば圧力、酵素活性または物理的崩壊による破断を通しての劣化から組成物を保護する。いずれの適切なカプセル化方法が使用されてもよい。例示的なカプセル化技術として、多孔質マトリクス内への取り込み、固体担体表面への付着または吸着、凝集によるまたは架橋剤を用いた自己会合、及び微多孔膜またはマイクロカプセルの後の機械的拘束が挙げられる。本発明の組成物を調製するのに有用であり得るカプセル化についてのガイダンスは、例えば、参照文献[47]及び[48]において入手可能である。
組成物は、経口で投与されてよく、錠剤、カプセルまたは粉末の形態であってよい。カプセル化された製品が好ましい、なぜなら、Enterococcus faeciumが嫌気性生物であるからである。他の成分(例えばビタミンCなど)が、生体内での送達及び/または部分的もしくは全体的定着ならびに生存を改善するように脱酸素剤及びプレバイオティック基質として含まれていてよい。代替的には、本発明のプロバイオティック組成物は、食品もしくは栄養製品、例えばミルクもしくはホエイベースの発酵乳製品として、または医薬製品として経口で投与されてよい。
組成物は、プロバイオティックとして調合されてよい。
本発明の組成物は、治療有効量の本発明の細菌株を含む。治療有効量の細菌株は、患者への有益な効果を発揮するのに十分である。治療有効量の細菌株は、患者の腸への送達及び/または部分的もしくは全体的定着を結果として生じさせるのに十分であり得る。
例えばヒト成人への細菌の好適な1日量は、約1×10〜約1×1011個のコロニー形成単位(CFU);例えば、約1×10〜約1×1010CFU;別の例において、約1×10〜約1×1010CFUであってよい。
ある特定の実施形態において、組成物は、組成物の重量に対して約1×10〜約1×1011CFU/g;例えば約1×10〜約1×1010CFU/gの量で細菌株を含有する。用量は、例えば、1g、3g、5g及び10gであってよい。
典型的には、プロバイオティック、例えば本発明の組成物は、少なくとも1の好適なプレバイオティック化合物と任意選択的に組み合わされる。プレバイオティック化合物は、通常、上部消化管において分解または吸収されない、非消化性炭水化物、例えば、オリゴ−もしくは多糖、または糖アルコールである。公知のプレバイオティクスとして、市販品、例えば、インスリン及びトランスガラクト−オリゴ糖が挙げられる。
ある特定の実施形態において、本発明のプロバイオティック組成物は、組成物の合計重量に対して約1〜約30重量%(例えば、5〜20重量%)の量でプレバイオティック化合物を含む。炭水化物は:フラクト−オリゴ糖(またはFOS)、短鎖フラクト−オリゴ糖、インスリン、イソマルト−オリゴ糖、ペクチン、キシロ−オリゴ糖(またはXOS)、キトサン−オリゴ糖(またはCOS)、β−グルカン、アラビアガム変性及び耐性デンプン、ポリデキストロース、D−タガトース、アカシアファイバ、イナゴマメ、オート麦、ならびにシトラスファイバ;からなる群から選択されてよい。一態様において、プレバイオティクスは短鎖フラクト−オリゴ糖(簡潔のために、以下本明細書においてFOSs−c.cと示す)であり;該FOSs−c.c.は、テンサイ糖の転換によって一般に得られ、3のグルコース分子が結合しているサッカロース分子を含んでいる消化性炭水化物ではない。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、中枢神経系障害を処置または予防する別の治療化合物と併用される。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、中枢神経伝達物質及び神経ペプチドを調節する栄養補助食品と共に投与される。好ましい実施形態において、栄養補助食品は、栄養ビタミンを含むまたはこれからなる。ある特定の実施形態において、ビタミンは、ビタミンB6、マグネシウム、ジメチルグリシン(ビタミンB16)及びビタミンCである。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、別のプロバイオティクスと組み合わせて投与される。ある特定の好ましい実施形態において、プロバイオティクスは、Trichuris suis ovaを含むまたはこれからなる。
本発明の組成物は、薬学的に許容される賦形剤または担体を含んでいてよい。かかる好適な賦形剤の例は、参照文献[49]において見出され得る。治療的使用のための許容される担体または希釈剤は、薬剤分野において周知されており、例えば参照文献[50]において記載されている。好適な担体の例として、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトールなどが挙げられる。好適な希釈剤の例として、エタノール、グリセロール及び水が挙げられる。医薬担体、賦形剤または希釈剤の選択は、意図する投与経路及び標準の薬務に関して選択され得る。医薬組成物は、上記担体、賦形剤または希釈剤として、またはこれに加えて、いずれの好適な結合剤(複数可)、潤滑剤(複数可)、懸濁剤(複数可)、コーティング剤(複数可)、可溶化剤(複数可)を含んでいてもよい。好適な結合剤の例として、デンプン、ゼラチン、天然糖、例えばグルコース、無水ラクトース、自由流動ラクトース、β−ラクトース、コーンシロップ、天然及び合成ガム、例えばアカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースならびにポリエチレングリコールが挙げられる。好適な潤滑剤の例として、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。防腐剤、安定剤、染料、及びさらなる香味剤が医薬組成物において付与されていてよい。防腐剤の例として、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及びp−ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられる。酸化予防剤及び懸濁剤が使用されてもよい。
本発明の組成物は、食品として調合されてよい。例えば、食品は、例えば栄養補助食品において、本発明の治療効果に加えて、栄養的利益を付与してよい。同様に、食品は、本発明の組成物の風味を向上するように、または組成物を、医薬組成物よりもむしろ、一般食料とより類似することによって、消費するのにより魅力的であるようにするように調合されてよい。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、ミルクベースの製品として調合される。用語「ミルクベースの製品」は、変動する脂肪分を有する、いずれの液体または半固体のミルク−またはホエイベースの製品も意味する。ミルクベースの製品は、例えば、ウシのミルク、ヤギのミルク、ヒツジのミルク、スキムミルク、ホールミルク、いずれの処理もしていない粉ミルク及びホエイからの還元ミルク、または加工品、例えばヨーグルト、凝固したミルク、カード、酸乳、酸全乳、バターミルク及び他の酸乳製品であり得る。別の重要な群として、ミルク飲料、例えばホエイ飲料、発酵乳、コンデンスミルク、乳幼児ミルク;フレーバーミルク、アイスクリーム;ミルク含有食品、例えば、スイーツが挙げられる。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、Enterococcus faecium種の1以上の細菌株を含み、いずれの他の種からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なまたは生物学的に関連のない量の、別の種からの細菌を含む。そのため、いくつかの実施形態において、本発明は、Enterococcus faecium種の1以上の細菌株を含む組成物であって、いずれの他の種からの細菌も含有せず、または、治療における使用のための、ほんの僅少なまたは生物学的に関連のない量の、別の種からの細菌を含む、上記組成物を提供する。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、Enterococcus faecium種の1以上の細菌株を含み、いずれの他のEnterococcus種からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なまたは生物学的に関連のない量の、別のEnterococcus種からの細菌を含む。そのため、いくつかの実施形態において、本発明は、Enterococcus faecium種の1以上の細菌株を含む組成物であって、いずれの他のEnterococcus種からの細菌も含有せず、または、治療における使用のための、ほんの僅少なまたは生物学的に関連のない量の、別のEnterococcus種からの細菌を含む、上記組成物を提供する。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、単一の細菌株または種を含有し、いずれの他の細菌株または種も含有しない。かかる組成物は、ほんの僅少なまたは生物学的に関連のない量の他の細菌株または種を含んでいてよい。かかる組成物は、他の種の生物を実質的に含まない培養物であってよい。
いくつかの実施形態において、本発明は、単一のEnterococcus faecium種の細菌株を含む組成物であって、いずれの他の種からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なまたは生物学的に関連のない量の、治療における使用のための別の株からの細菌を含む、上記組成物を提供する。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、1を超える細菌株を含む。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、同種内からの1を超える株(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40または45を超える株)を含み、任意選択的に、いずれの他の種からの細菌も含有しない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、同種内からの50未満の株(例えば、45、40、35、30、25、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4または3未満の株)を含み、任意選択的に、いずれの他の種からの細菌も含有しない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、同種内からの1〜40、1〜30、1〜20、1〜19、1〜18、1〜15、1〜10、1〜9、1〜8、1〜7、1〜6、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2、2〜50、2〜40、2〜30、2〜20、2〜15、2〜10、2〜5、6〜30、6〜15、16〜25、または31〜50株を含み、任意選択的に、いずれの他の種からの細菌も含有しない。本発明は、上記のいずれの組み合わせも含む。
いくつかの実施形態において、組成物は、微生物コンソーシアム(consortium)を含む。例えば、いくつかの実施形態において、組成物は、微生物コンソーシアムの部分としてEnterococcus faecium細菌株を含む。例えば、いくつかの実施形態において、Enterococcus faecium細菌株は、腸において生体内で共生的に生きることができる、他の属からの1または2以上(例えば、少なくとも2、3、4、5、10、15または20)の他の細菌株において存在する。例えば、いくつかの実施形態において、組成物は、異なる属からの細菌株と組み合わせたEnterococcus faeciumの細菌株を含む。いくつかの実施形態において、微生物コンソーシアムは、単一の生物、例えば、ヒトの糞便サンプルから得られた2または3以上の細菌株を含む。いくつかの実施形態において、微生物コンソーシアムは、本来は一緒には見られない。例えば、いくつかの実施形態において、微生物コンソーシアムは、少なくとも2の異なる生物の糞便サンプルから得られた細菌株を含む。いくつかの実施形態において、該2の異なる生物は、同種、例えば、2の異なるヒトからのものである。いくつかの実施形態において、該2の異なる生物は、ヒト乳児及びヒト成人である。いくつかの実施形態において、該2の異なる生物は、ヒト及び非ヒト哺乳動物である。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、株MRX010と同じ安全及び治療効能特性を有するが、NCIMB42487として寄託されているMRX010ではない、またはEnterococcus faeciumでもない細菌株をさらに含む。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、Bacillus属の細菌株を含まない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、Bacillus subtilisを含まず、及び/またはBacillus coagulansを含まない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物によって処置されるCNS障害は、双極性障害ではない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物によって処置される患者は、真菌感染症を有さない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物によって処置される患者は、カンジダ症に罹患していない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物によって処置される患者は、真菌感染症を有すると診断されていない、及び/またはカンジダ症に罹患していると診断されていない。好ましいかかる実施形態において、本発明の組成物によって処置される患者は、真菌感染症を有すると診断されていない、及び/またはカンジダ症に罹患していると診断されていない。
本発明の組成物が1を超える細菌株、種または属を含むいくつかの実施形態において、個々の細菌株、種または属は、別々、同時または逐次投与用であってよい。例えば、組成物は、1を超える細菌株、種もしくは属の全てを含んでいてよく、または細菌株、種もしくは属は、別々に貯蔵されてよく、また、別々に、同時にもしくは逐次的に投与されてよい。いくつかの実施形態において、1を超える細菌株、種または属は、別々に貯蔵されているが、使用前に一緒に混合される。
いくつかの実施形態において、本発明において使用される細菌株は、ヒト成人の糞便から得られる。本発明の組成物が1を超える細菌株を含むいくつかの実施形態において、細菌株の全てがヒト成人の糞便から得られ、または、他の細菌株が存在するとき、ほんの僅少な量で存在する。細菌は、ヒト成人の糞便から得られ本発明の組成物において使用された後に培養されてよい。
上記のように、いくつかの実施形態において、1または2以上のEnterococcus faecium細菌株は、本発明の組成物において唯一の治療的活性剤(複数可)である。いくつかの実施形態において、組成物における細菌株(複数可)は、本発明の組成物において唯一の治療的活性剤(複数可)である。
本発明による使用のための組成物は、販売承認を必要としてもしなくてもよい。
ある特定の実施形態において、本発明は、上記細菌株が凍結乾燥されている、上記医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態において、本発明は、上記細菌株が噴霧乾燥されている、上記医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態において、本発明は、細菌株が、凍結乾燥または噴霧乾燥されており、また、生きている、上記医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態において、本発明は、細菌株が、凍結乾燥または噴霧乾燥されており、また、生存している、上記医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態において、本発明は、細菌株が、凍結乾燥または噴霧乾燥されており、また、腸に部分的または全体的に定着することが可能である、上記医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態において、本発明は、細菌株が、凍結乾燥または噴霧乾燥されており、また、生存しており、かつ腸に部分的または全体的に定着することが可能である、上記医薬組成物を提供する。
いくつかの場合において、凍結乾燥または噴霧乾燥されている細菌株は、投与前に再構成される。いくつかの場合において、再構成は、本明細書に記載されている希釈剤の使用による。
本発明の組成物は、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体を含んでいてよい。
ある特定の実施形態において、本発明は、本発明において使用される細菌株と;薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤とを含む医薬組成物であって;細菌株が、それを必要とする対象に投与されるとき、障害を処置するのに十分な量であり、当該障害が:自閉症スペクトラム障害(ASD);小児発達障害;強迫神経症(OCD);大うつ病性障害;うつ病;季節性情動障害;不安障害;統合失調症スペクトラム障害;統合失調症;双極性障害;精神病;気分障害;慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎);ストレス障害;心的外傷後ストレス障害;認知症;アルツハイマー病;パーキンソン病;及び/または慢性疼痛;運動ニューロン疾患;ハンチントン病;ギラン−バレー症候群及び/または髄膜炎;からなる群から選択される、上記医薬組成物を提供する。
ある特定の実施形態において、本発明は:本発明において使用されている細菌株;及び薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤;を含む医薬組成物であって、細菌株が、中枢神経系障害または状態、特に、微生物叢−腸−脳軸によって介在される中枢神経系障害または状態を処置または予防するのに十分な量である、上記医薬組成物を提供する。好ましい実施形態において、上記疾患または状態は:自閉症スペクトラム障害(ASD);小児発達障害;強迫神経症(OCD);大うつ病性障害;うつ病;季節性情動障害;不安障害;統合失調症スペクトラム障害;統合失調症;双極性障害;精神病;気分障害;慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎);ストレス障害;心的外傷後ストレス障害;認知症;アルツハイマー病;パーキンソン病;及び/または慢性疼痛;からなる群から選択される。さらなる実施形態において、本発明の組成物は、運動ニューロン疾患;ハンチントン病;ギラン−バレー症候群及び/または髄膜炎を処置または予防するのに有用であり得る。
ある特定の実施形態において、本発明は、上記医薬組成物であって、細菌株の量が、組成物の重量に対してグラム当たり約1×10〜約1×1011個のコロニー形成単位である、上記医薬組成物を提供する。
ある特定の実施形態において、本発明は、1g、3g、5gまたは10gの用量で投与される、上記医薬組成物を提供する。
ある特定の実施形態において、本発明は、経口、直腸、皮下、鼻、頬側、及び舌下からなる群から選択される方法によって投与される、上記医薬組成物を提供する。
ある特定の実施形態において、本発明は、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール及びソルビトールからなる群から選択される担体を含む上記医薬組成物を提供する。
ある特定の実施形態において、本発明は、エタノール、グリセロール及び水からなる群から選択される希釈剤を含む上記医薬組成物を提供する。
ある特定の実施形態において、本発明は、デンプン、ゼラチン、グルコース、無水ラクトース、自由流動ラクトース、β−ラクトース、コーンシロップ、アカシア、トラガカント、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及び塩化ナトリウムからなる群から選択される賦形剤を含む、上記医薬組成物を提供する。
ある特定の実施形態において、本発明は、防腐剤、酸化防止剤及び安定剤の少なくとも1つをさらに含む、上記医薬組成物を提供する。
ある特定の実施形態において、本発明は、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及びp−ヒドロキシ安息香酸のエステルからなる群から選択される防腐剤を含む、上記医薬組成物を提供する。
ある特定の実施形態において、本発明は、組成物が約4℃または約25℃で密閉容器に貯蔵されて容器が50%の相対湿度を有する雰囲気に置かれているとき、コロニー形成単位で測定される細菌株の少なくとも80%が、少なくとも約1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、1.5年、2年、2.5年または3年の期間の後に残存している、上記医薬組成物を提供する。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、本明細書に記載されている組成物を含む密閉容器において付与される。いくつかの実施形態において、密閉容器は、サチェまたはボトルである。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、本明細書に記載されている組成物を含むシリンジにおいて付与される。
本発明の組成物は、いくつかの実施形態において、医薬製剤として付与されてよい。例えば、組成物は、錠剤またはカプセルとして提供されてよい。いくつかの実施形態において、カプセルは、ゼラチンカプセル(「gel−cap」)である。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、経口投与される。経口投与は、嚥下を含んでいてよく、その結果、化合物が、胃腸管に入ることになり、かつ/または頬側、舌側、もしくは舌下投与によって化合物が口から直接血流に入ることになる。
経口投与に好適な医薬製剤として、固体プラグ、固体微粒子状物、半固体及び液体(多相及び分散系を含む)、例えば錠剤;多−またはナノ−粒子状物を含有する軟質または硬質カプセル、液体(例えば、水溶液)、エマルジョンまたは粉末;ロゼンジ(液体が充填されたものを含む);咀嚼剤;ゲル;急速分散剤形;フィルム;膣坐剤;スプレー;ならびに頬側/粘膜接着パッチが挙げられる。
いくつかの実施形態において、医薬製剤は、腸溶性製剤、すなわち、経口投与による腸への本発明の組成物の送達に好適である胃耐性製剤(例えば、胃のpHに耐性)である。腸溶性製剤は、組成物の細菌または別の成分が酸感受性である、例えば、胃条件下で分解しやすいとき、特に有用であり得る。
いくつかの実施形態において、腸溶性製剤は、腸溶性コーティングを含む。いくつかの実施形態において、該製剤は、腸溶性コーティングされた剤形である。例えば、該製剤は、腸溶性コーティングされた錠剤または腸溶性コーティングされたカプセルなどであってよい。腸溶性コーティングは、経口送達のための従来の腸溶性コーティング、例えば、錠剤、カプセルなどのための従来のコーティングであってよい。該製剤は、フィルムコーティング、例えば、腸溶性ポリマー、例えば酸不溶性ポリマーの薄膜層を含んでいてよい。
いくつかの実施形態において、腸溶性製剤は、本質的に腸溶性であり、例えば、腸溶性コーティングを必要とすることない胃耐性である。そのため、いくつかの実施形態において、該製剤は、腸溶性コーティングを含まない腸溶性製剤である。いくつかの実施形態において、該製剤は、熱ゲル化材料から作製されたカプセルである。いくつかの実施形態において、熱ゲル化材料は、セルロース系材料、例えばメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。いくつかの実施形態において、カプセルは、いずれのフィルム形成ポリマーも含有しないシェルを含む。いくつかの実施形態において、カプセルは、シェルを含み、該シェルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含み、いずれのフィルム形成ポリマーも含まない(例えば、[51]を参照されたい)。いくつかの実施形態において、該製剤は、本質的に腸溶性のカプセル(例えば、Capsugel製Vcaps(登録商標))である。
いくつかの実施形態において、該製剤は、軟質カプセルである。軟質カプセルは、カプセルシェルに存在する軟化剤、例えば、グリセロール、ソルビトール、マルチトール及びポリエチレングリコールなどの添加のおかげで、ある特定の弾性及び柔軟性を有し得るカプセルである。軟質カプセルは、例えば、ゼラチンまたはデンプンベースで製造され得る。ゼラチンベースの軟質カプセルは、種々の供給者から市販されている。例えば経口または経直腸などの投与方法に応じて、軟質カプセルは、種々の形状を有することができ、例えば、円形、楕円形、長方形または魚雷型であり得る。軟質カプセルは、従来のプロセス、例えば、Schererプロセス、Accogelプロセスまたは液滴もしくは発泡プロセスなどによって製造され得る。
培養方法
本発明における使用のための細菌株は、例えば、参照文献[52]〜[54]に詳述されている標準の微生物学的技術を使用して培養され得る。
培養に使用される固体または液体培地は、YCFA寒天またはYCFA培地であってよい。YCFA培地として(100ml当たりの近似値):Casitone(1.0g)、酵母エキス(0.25g)、NaHCO(0.4g)、システイン(0.1g)、KHPO(0.045g)、KHPO(0.045g)、NaCl(0.09g)、(NHSO(0.09g)、MgSO・7HO(0.009g)、CaCl(0.009g)、レザズリン(0.1mg)、ヘミン(1mg)、ビオチン(1μg)、コバラミン(1μg)、p−アミノ安息香酸(3μg)、葉酸(5μg)、及びピリドキサミン(15μg)を挙げることができる。
ワクチン組成物における使用のための細菌株
本発明者らは、本発明の細菌株が、中枢神経系障害または状態、特に微生物叢−腸−脳軸によって介在される中枢神経系障害または状態を処置または予防するのに有用であることを確認した。このことは、本発明の細菌株が、宿主の中枢自律神経及び/または腸神経系;HPA経路の活性;神経免疫及び神経内分泌経路;ならびに宿主の胃腸管における共生代謝産物のレベル及び/または宿主の胃腸透過性に及ぼす効果の結果である可能性がある。そのため、本発明の組成物は、ワクチン組成物として投与されるとき、中枢神経系障害または状態、特に、微生物叢−腸−脳軸によって介在される中枢神経系障害または状態を予防するのにも有用であり得る。ある特定のかかる実施形態において、本発明の細菌株は、生存している。ある特定のかかる実施形態において、本発明の細菌株は、腸に部分的または全体的に定着することが可能である。ある特定のかかる実施形態において、本発明の細菌株は、生存しており、腸に部分的または全体的に定着することが可能である。他のある特定のかかる実施形態において、本発明の細菌株は、殺傷されていても、不活性化されていても、弱毒化されていてもよい。ある特定のかかる実施形態において、組成物は、ワクチンアジュバントを含んでいてよい。ある特定の実施形態において、組成物は、注射を介して、例えば皮下注射を介しての投与用である。
総則
本発明の実施は、別途示さない限り、当業者の範囲内の、化学、生化学、分子生物、免疫学及び薬理学の従来の方法を用いる。かかる技術は、文献において完全に説明されている。例えば、参照文献[55]及び[56]〜[62]などを参照されたい。
用語「comprising(含む)」は、「including(含む)」及び「consisting(からなる)」を包含し、例えば、組成物がXを「comprising(含む)」は、Xから排他的になってもよく、またはさらなる何か、例えば、X+Yを含んでいてもよい。
数値xに関係する用語「約」は、任意選択的であり、例えば、x±10%を意味する。
ある特定の実施形態において、用語「調節する」は、増加または活性化することを意味する。代替の実施形態において、用語「調節する」は、減少または抑制することを意味する。
語「実質的に」は、「完全に」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくてよい。必要に応じて、語「実質的に」は、本発明の定義から省略されてよい。
2つのヌクレオチド配列間の百分率の配列同一性への言及は、整列しているとき、ヌクレオチドの百分率が、2つの配列を比較したときに同じであることを意味する。このアラインメント及びパーセント相同性または配列同一性は、当該分野において公知のソフトウエアプログラム、例えば、参照文献[63]のセクション7.7.18に記載されているものを使用して決定され得る。好ましいアラインメントは、12のギャップオープンペナルティ及び2のギャップエクステンションペナルティ、62のBLOSUMマトリクスによるアフィンギャップ検索を使用してSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムによって決定される。Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムは、参照文献[64]に開示されている。
特に記述されていない限り、多数のステップを含むプロセスまたは方法は、方法の開始及び終了時にさらなるステップを含んでいてよく、またはさらなる介在するステップを含んでいてよい。また、ステップは、適切な場合、代替の順序で、組み合わされ、省略され、または実施されてよい。
本発明の種々の実施形態は本明細書に記載されている。各実施形態において特定されている特徴は、他の特定されている特徴と組み合わされて、さらなる実施形態を付与してよいことが認識される。特に、好適な、典型的なまたは好ましいとして本明細書において強調されている実施形態は、互いに組み合わされてよい(これらが互いに排他的であるときを除く)。
本発明を実施するための形態
本研究は、神経発達及び精神疾患に関連する行動特性を示す2の異なるマウスモデルにおいて中枢神経系障害または状態の処置に対する生存生物学的製剤の効果を評価することを試みた。特に、本研究は、(i)母体免疫活性化(MIA)マウスモデルならびに(ii)黒及び褐色のbrachyuric(BTBR)遺伝子組み換え同系交配マウスモデルにおける自閉症関連行動に焦点を当てる。2のマウスモデルにおける不安、うつ病、ならびに行動の認知及び社会的領域にわたっての慢性MRX010対ビヒクル処置の効果を調査した。
実施例1−母体免疫活性化(MIA)マウスモデル
MIAマウスモデルは、子孫において自閉症スペクトラム障害の中核症状を誘発するために、妊娠したマウスにおいて、環境的な免疫チャレンジを使用する。MIAマウスは、常同行動(グルーミング試験及び大理石埋め込み試験によって示される)ならびに社会的コミュニケーションの欠損(社会的遊び、3−チャンバー社会的相互作用、及び食べ物の嗜好の社会的伝達試験によって示される)を典型的には示す。子孫は、自閉症の3つの中核症状(コミュニケーションの低減;社交性の低下;及び反復または常同行動の増加)を示し、そのため、治療の投与が自閉症スペクトラム障害及び実際には多くの他の神経学的障害に関連する行動的表現型を軽減し得るか否かを決定するために好適なモデルを付与する。動物モデルにおける行動的表現型の変化が、原因となっている生物学的または生理学的機序の理解に関係なく、潜在的に臨床的に関係のある介入を示すことが確立されている([65])。
実施例1a−MIAマウスモデルに関する材料及び方法
マウス
母体免疫活性化(環境ASDマウスモデル)プロトコルを、[66]において先に記載されているように行った。簡潔には、妊娠したC57BL/6Nマウス(ENVIGO、UK)に、[66]に記載されている方法に従って生理食塩水または20mg/kgのポリ(I:C)をE12.5において腹腔内注射した。これらのマウスを以下の実験においてMIAマウスとして列挙する。雄性マウスは、8週齢で行動を開始した。該動物を、12時間暗サイクル(7:00〜19:00時に点灯)で温度及び湿度が制御された部屋に入れた。全ての実験を、Animal Experimentation Ethics Committee of University College Corkによって承認された、欧州指針2010/63/EEC、2012年のS.I.No543の要件に従って行った。

受託番号NCIMB42487として寄託されているMRX010:Enterococcus faecium細菌。
生存生物学的製剤を嫌気性条件で設備において成長させた。
生存生物学的製剤投与
マウスが8週齢であったときに開始したMRX010またはビヒクルによる投薬。これらのマウスを、行動バッテリーの開始の前に、MRX010またはリン酸緩衝液(PBS)によって3週間、毎日1回処置した。マウスを、行動バッテリーの間、7週間、毎日1回さらに処置した。MRX010(1×107〜1×109CFU経口投与)を投与の前にPBSに溶解した。
投与スケジュール
研究のための処置群を以下に示す。経口投与用ビヒクルはPBSである。毎日の経口投与を経口胃管栄養法によって行う。
糞便収集
新たな糞便サンプルを研究の終了まで毎週個々のマウスから収集した。少なくとも20mgの新たな糞便を微量遠心分離管に置き、直後に氷上に置き、次いで−80℃で保存した。
実験設計及び方法
上記で概説している、マウスが8週齢であったときに開始したMRX010またはビヒクルによる投薬。行動バッテリーを以下の順序で行った:5週目に大理石埋め込み試験;6週目に食べ物の嗜好の社会的伝達及び8週目に強制水泳試験。カーマインレッドの胃腸運動性アッセイ及び胃腸透過性アッセイにより、それぞれ、7週目及び8週目の間に尾部出血が起こった。最後に、9週目で、マウスを殺処分して脾細胞刺激ならびに回腸及び結腸におけるFITCのex vivo測定をした。
MIAモデルにおける生存生物学的製剤処置の、常同、社会的及びうつ病様行動への影響を、胃腸パラメータ(透過性及び運動性)と併せて、以下の実施例において概説する。
上記の表において列挙されている群2は、母体免疫活性化マウスを表し、母親を妊娠の間にポリ(I:C)によって処置した。これらのマウスは、対照マウス(群1)(この対照では、確実に、ポリ(I:C)投与により、母親マウス子孫において予期される行動上の症状が引き起こされた)と比較して自閉症スペクトラム障害に関連する表現型を示すことが予期され得た。自閉症スペクトラム障害の行動上の症状への処置の任意の効果が、群2及び群3の間の差によって確認され得た。
グラフ設計及び統計的分析
全てのグラフをgraphpadプリズムソフトウェア(バージョン5)において生じさせた。データをIBM SPSS Statistic22.0(EEUU)を使用して分析した。データ分布を、コルモゴロフ・スミルノフ正規性検定を使用して分析した。ビヒクル群対MRX010群を比較するデータを、一元ANOVA及びFisherの最小有意差(LSD)post hoc試験を使用して分析した。ANOVAが処置の有意な効果を明らかにしなかったとき、対照群に対しての推測的な一対比較試験を行った。非正規に分布したデータを、クラスカル・ウォリス及び無パラメータ・マンホイットニーU試験によって分析した。P<0.05が統計的有意差の基準であった。
実施例1b−常同行動のアセスメント−大理石埋め込み試験
論拠
この試験は、反復、強迫及び不安行動について評価する。埋め込まれた大理石の数が多いほど、不安または常同行動が大きいことを示す。実際、薬理学的剤、例えば、抗不安薬によって処置したマウスは、対照マウスと比較して、減少した大理石埋め行動を示す。
方法
マウスを、標準の齧歯動物用(硬材)寝具(5cm)及びその頂部に20個の大理石(壁から2cm離れかつ2cm離れて規則的間隔にある5列の大理石)を含む新規のポリプロピレンケージ(35×28×18.5cm、L×W×H)内に個々に置いた。実験を1000luxの光強度下で行った。30分後、マウスをこれらのケージから除去し、表面の2/3を超えて埋め込まれた大理石の数をスコアリングした。
結果
対照群とビヒクルMIA群との間のスチューデントt検定分析により、ビヒクルMIAマウスには、対照群と比較して、より多くの大理石が埋め込まれたことを明らかにした(t(19)=3.00、P=0.007;図1A)。埋め込まれた大理石の数のANOVAは、処置の効果を明らかにした[F(3,42)=6.37、P=0.001]。Post−hoc試験は、Mrx0010による慢性処置が、埋め込まれる大理石の数を減少させることを明らかにした(p<0.01;図1A)。推測的な一対比較は、Mrx010で処置したMIAマウスには、MIAビヒクルマウスよりも少ない大理石が埋め込まれたことを明らかにした(p<0.001;図1B)。
結論
ビヒクルMIA群は、対照群よりも有意に多くの大理石が埋め込まれたことを示し、これは、MIAモデルが、マウスにおいて自閉症スペクトラム障害様症状を成功裏に誘発したことを示している。MRX010による慢性処置は、MIAマウスにおける反復、強迫及び不安行動を低減する。
実施例1c−社会的行動のアセスメント−食べ物の嗜好の社会的伝達
論拠
社会的伝達の食べ物の嗜好は、社会的行動を評価するためにマウスにおいて使用される嗅覚記憶の関連試験である。この試験において、オブザーバーマウスは、新規の食餌を最近採ったデモンストレーターマウスと相互作用する。オブザーバーマウスが、デモンストレーターによって採られた食餌と何らかの他の新規の食餌との間での選択肢を提示されるとき、オブザーバーマウスは、デモンストレーターによって採られた食餌をより好むはずである。食餌の嗜好の低減は、社交性の低下を示す。
方法
この試験を先に記載されているように実施した([67])。簡潔には、試験前の18時間、マウスは食餌を奪われていたが、水は自由に得られた。食餌の選択肢は、接地されたマウス食によって作製された1%の粉砕シナモンまたは2%粉末ココアのいずれかからなった。デモンストレーターマウスは、各ケージからランダムに選択され、尾部には、後の社会的相互作用の際の同定を可能にするために青色マーカーでマーキングした。デモンストレーターの食餌容器を1時間のサンプリングセッションの前後に秤量した。上記試験に含めるには最低限0.2gの食餌の消費が必要であった。デモンストレーターマウスを、ケージメイトとの30分の相互作用期間の間、それぞれのホームケージに戻した。その後、手掛かりの食餌または新規の食餌の嗜好に関してケージメイトを個々に試験した。容器を各選択肢セッションの直前直後に秤量した。観察したマウスを次いでそれぞれのホームケージに戻し、選択肢セッションを24時間後に繰り返した。試験マウスは、社会的手掛かりとしてのデモンストレーターマウスのシナモンまたはココアの匂いをかぐはずであり、2つの間の選択肢が与えられたとき同じ食餌を優先的に選択する。
結果
デモンストレーターの手掛かりの食餌の嗜好のANOVAにより、オブザーバーが、ビヒクルまたはMRX010投与に関係なく、デモンストレーターの相互作用の直後(T0)(F(3,34)=0.38、P=0.77;図2A)または24時間後(F(3,34)=0.85、P=0.48;図2B)、食餌の選択肢に曝されたときに有意差がないことを明らかにした。
結論
ビヒクルMIA群は、社会的伝達の食べ物の嗜好の低減を示さず(MIAビヒクルは、対照と比較して食餌の嗜好の変化を示さなかった)、MIAモデルが社交性の低下の表現型を誘発しないことを示唆した。したがって、MIAマウスモデルを使用して社交性に対するMRX010による慢性処置の効果を決定することはできない。
実施例1d−うつ病様行動のアセスメント−強制水泳試験
論拠
強制水泳試験(FST)は、抗うつ活動を評価するために最も広く使用されている実験的パラダイムである([68])。この試験において、マウスに6分間強制して水泳させ、スコアリングした行動パラメータは、6分間試験の最後の4分の間は不動である。ナイーブ動物は、不動の浮遊姿勢に適応する前に、水泳、上昇及び飛び込みの形態で逃避行動を示すであろう。不動の持続時間は、行動の断念を示している。抗うつ薬は、この試験において、不動で費やした時間を減少させる。
方法
マウスに、17cmの深さまで23〜25℃の水道水で満たしたガラスシリンダ(24×21cm)において6分間強制して水泳させた。FSTを天井カメラからテープに録画した。スコアリングした行動パラメータは、6分間試験の最後の4分の間は不動である。
結果
スチューデントt検定分析は、対照群及びビヒクルMIA群間の不動時間の有意差を明らかにしなかった(t=0.8968、df=20;0.3805)。不動時間のANOVAは、MRX010による処置の効果を明らかにしなかった[F(3,42)=1.803;P=0.1625;図3]。
結論
ビヒクルMIA群は、強制水泳試験における不動時間の増加を示さず(MIAビヒクルは、対照と比較して不動時間の変化を示さなかった)、MIAモデルはうつ病様症状を増加させなかったことを示唆した。したがって、MIAマウスモデルを使用してうつ病様行動に対するMRX010による慢性処置の効果を決定することはできない。
実施例1e−in vivo腸透過性アッセイ
論拠
MIAモデルは、腸バリア機能の変化をもたらすことが報告されている。そのため、生物学的製剤による慢性処置が腸透過性に影響するか否かを確定することが重要であった。
方法
試験マウスを単一のケージに入れ、食餌を一晩除去した。翌日(9am頃)マウスに、FITCデキストラン(フルオレセイン−イソチオシアネート;MW:4kDa、Sigma;濃度:PBS(pH7.4)中、600mg/動物(kg)の80mg/ml FITC)を経口胃管栄養法によって投与した。FITC投与の2時間後、尾部血液からの100μlの血液サンプルをヘパリンコーティングした毛細管において収集し、琥珀色のエッペンドルフに移し、氷上に置いた。サンプルを3500×gで15分間遠心分離し、血漿を吸引し、サンプルを−80℃において長期保存で保存した。
希釈されていない血漿を使用してFITC濃度を定量化した。25μlのFITCを384ウェルプレートにおいて2部ピペッティングした(Greiner bio one)。FITCを490nm〜520nmの範囲の間でVictor分光計によって測定した。標準曲線では、段階希釈のFITCをPBS(pH7.4)中で調製した。
また、9週でマウスを選択した後、回腸及び結腸におけるFITCのex vivo測定を実施する。
結果
スチューデントt検定分析は、対照群及びMIAビヒクル群間の差を明らかにしなかった(t(20)=0.56、P=0.58;図4)。FITC濃度のANOVAは、処置の有意な効果を明らかにしなかった[F(3,39)=2.23、P=0.08]。
結論
この実験において、ビヒクルMIA群は、変化した腸透過性を示さなかった(MIAビヒクルは、対照と比較して透過性の変化を示さなかった)。さらに、MRX010による慢性処置は、MIAマウスにおける腸透過性に影響しなかった。
実施例1f−in vivo腸運動アッセイ
論拠
MIAモデルは、腸バリア機能の変化をもたらすことが報告されている。そのため、生物学的製剤による慢性処置が腸運動を変化させるか否かを確定することが重要であった。
方法
マウスを試験の開始の前に単独で部屋に入れた。マウスに非吸収性着色染料(カーマインレッド)で経口強制飼養した。最初に着色された糞便ボーラスの***時間を記録し、腸全体の蠕動運動の指標として使用した。
結果
スチューデントt検定分析により、ビヒクルMIA群が、対照群(t(19)=3.00、P=0.007)と比較したとき増加した腸運動(より少ない時間で検出された赤色ペレット)を示したことを明らかにした。運動時間のANOVAは、処置の効果を明らかにしなかった[F(3,38)=0.74、P=0.54;図5]。
結論
この実験において、ビヒクルMIA群は、対照と比較して増加した腸運動を示した。MRX010による慢性処置は、対照と比較して腸運動に影響しなかった。
MIAマウスモデルからの結果の考察
MRX010による慢性処置は、MIAマウスにおける大理石埋め込み試験において観察された表現型を反転することができた。MRX0010による慢性処置は、埋め込まれた大理石の数を低減することができ、常同様行動の低減を示唆した。全ての群で社会的伝達の食餌試験において有意差が観察されず、このモデルにおける社会的行動での直接観察可能な効果が示唆されなかった。同様に、強制水泳試験においてMIAプロトコルまたは生存生物学的製剤処置の有意な効果が観察されず、このモデルにおけるうつ病様行動での観察可能な効果が示唆されなかった。試験した生存生物学的製剤は、腸運動または透過性に影響しなかった。そのため、MIAモデルは、常同様、反復及び不安行動を評価するのに有用であることを証明したが、自閉症スペクトラム障害に関連する多数の他の症状を作り出さなかった。にもかかわらず、結果は、MRX010による慢性処置が、自閉症スペクトラム障害の症状に良い影響を及ぼし得ることを示す。
実施例2−BTBRマウスモデル
BTBRマウスモデルは、いずれの遺伝子組み換えもなく、頑強な自閉症様表現型を示す遺伝子組み換え同系交配マウスを使用する。BTBRマウスは、(グルーミング試験及び大理石埋め込み試験によって示される)常同行動;社会的コミュニケーションの欠損(3チャンバー社会的相互作用試験、居住者侵入者試験及び食べ物の嗜好の社会的伝達試験によって示される);認知障害(新規対象認識試験によって示される);胃腸異常(FITCの増加した腸透過性によって示される);ならびに血漿における循環オキシトシンレベルの低減を典型的には示す。社会的行動の欠如、反復行動の増加、及び不安に関係する行動の増加がこの株において報告されている[27]。この頑強な行動的表現型に起因して、BTBRマウスは、自閉症関係行動の処置のための新規の治療剤の効能を評価するのに理想的な動物モデルである。生存生物学的製剤によるかかる症状の軽減もまた、他の精神疾患または神経疾患の処置における生物学的製剤の効能を示し得る。
実施例2a−BTBRマウスモデルに関する材料及び方法
マウス
雄性BTBRマウスを室内で飼育した。該動物を、12時間暗サイクル(7:00〜19:00時に点灯)で、温度及び湿度が制御された部屋に入れた。全ての実験を、Animal Experimentation Ethics Committee of University College Corkによって承認された、欧州指針2010/63/EEC、2012年のS.I.No543の要件に従って行った。

受託番号NCIMB42487として寄託されているMRX010:Enterococcus faecium細菌。
生物学的製剤をグリセロールストックに付与した。微生物成長培地(YCFA)を当該製剤の培養に使用した。生存生物学的製剤を嫌気性条件で設備において成長させた。
生存生物学的製剤投与
マウスが8週齢であったときに開始したMRX010またはビヒクルによる投薬。これらのマウスを、行動バッテリーの開始の前に、MRX010またはリン酸緩衝液(PBS)によって3週間、毎日1回処置した。マウスを、行動バッテリーの間、毎日1回さらに処置した。MRX010(1×107〜1×109CFU経口投与)を投与の前にPBSに溶解した。
投与スケジュール
研究のための処置群を以下に示す。経口投与用ビヒクルはPBSである。毎日の経口投与を経口胃管栄養法によって行う。
糞便収集
新たな糞便サンプルを研究の終了まで毎週個々のマウスから収集した。少なくとも20mgの新たな糞便を微量遠心分離管に置き、直後に氷上に置き、次いで−80℃で保存した。
実験設計及び方法
上記で概説している、マウスが8週齢であったときに開始したMRX010による投薬。最初の投薬は、社交性、不安、常同思考及び認知の試験を包含する行動実験の前に3週間行った。行動バッテリーを以下の順序で行った:4週目に大理石埋め込み試験;5週目に高架式十字迷路;6週目にオープンフィールド試験及び新規対象認識試験、ならびに食べ物の嗜好の社会的伝達試験;7週目で雌の尿への嗅覚行為及び社会的相互作用試験、ならびに9週目で強制水泳試験。カーマインレッドの胃腸運動アッセイ及び胃腸透過性アッセイにより、それぞれ、8週目及び9週目の間に尾部出血が起こった。最後に、10〜11週目で、マウスを殺処分して脾細胞刺激ならびに回腸及び結腸におけるFITCのex vivo測定をした。
BTBRモデルにおける生存生物学的製剤処置の、常同、社会的及びうつ病様行動への影響を、胃腸パラメータ(透過性及び運動性)と併せて、以下の実施例において概説する。
上記の表において列挙されている群1は、自閉症スペクトラム障害に関連する表現型を示すことが予期される対照BTBRマウスを表している。自閉症スペクトラム障害の行動上の症状への処置の任意の効果が、群1及び群2の間の差によって確認され得た。
グラフ設計及び統計的分析
全てのグラフをgraphpadプリズムソフトウェア(バージョン5)において生じさせた。データをIBM SPSS Statistic22.0(EEUU)を使用して分析した。データ分布を、コルモゴロフ・スミルノフ正規性検定を使用して分析した。ビヒクル群対MRX010群を比較するデータを、一元ANOVA及びFisherの最小有意差(LSD)post hoc試験を使用して分析した。ANOVAが処置の有意な効果を明らかにしなかったとき、対照群に対しての推測的な一対比較試験を行った。非正規に分布したデータを、クラスカル・ウォリス及び無パラメータ・マンホイットニーU試験によって分析した。P<0.05が統計的有意差の基準であった。
実施例2b−社会的行動のアセスメント−食べ物の嗜好の社会的伝達
論拠
社会的伝達の食べ物の嗜好は、社会的行動を評価するためにマウスにおいて使用される嗅覚記憶の関連試験である。この試験において、オブザーバーマウスは、新規の食餌を最近採ったデモンストレーターマウスと相互作用する。オブザーバーマウスが、デモンストレーターによって採られた食餌と何らかの他の新規の食餌との間での選択肢を提示されるとき、オブザーバーマウスは、デモンストレーターによって採られた食餌をより好むはずである。食餌の嗜好の低減は、社交性の低下を示す。
方法
この試験を先に記載されているように実施した([67])。簡潔には、試験前の18時間、マウスは食餌を奪われていたが、水は自由に得られた。食餌の選択肢は、接地されたマウス食によって作製された1%の粉砕シナモンまたは2%粉末ココアのいずれかからなった。デモンストレーターマウスは、各ケージからランダムに選択され、尾部には、後の社会的相互作用の際の同定を可能にするために青色マーカーでマーキングした。デモンストレーターの食餌容器を1時間のサンプリングセッションの前後に秤量した。上記試験に含めるには最低限0.2gの食餌の消費が必要であった。デモンストレーターマウスを、ケージメイトとの30分の相互作用期間の間、それぞれのホームケージに戻した。その後、手掛かりの食餌または新規の食餌の嗜好に関してケージメイトを個々に試験した。容器を各選択肢セッションの直前直後に秤量した。観察したマウスを次いでそれぞれのホームケージに戻し、選択肢セッションを24時間後に繰り返した。試験マウスは、社会的手掛かりとしてのデモンストレーターマウスのシナモンまたはココアの匂いをかぐはずであり、2つの間の選択肢が与えられたとき同じ食餌を優先的に選択する。
結果
デモンストレーターの手掛かりの食餌の嗜好のANOVAにより、オブザーバーが、デモンストレーターの相互作用の直後(T0)(F(3,36)=1.123;P=0.354;図6A)または24時間後(F(3,38)=0.138;P=0.936;図6B)、食餌の選択肢に曝されたときに有意差がないことを明らかにした。
結論
MRX010による処置は、社会的伝達の食べ物の嗜好の試験においてBTBRマウスの社交性に影響しなかった。
実施例2c−社会的行動のアセスメント−強制的な侵入者試験
論拠
この手順は、齧歯動物間の社会的相互作用行動を評価する。侵入者マウスを居住者マウスのホームケージ内に置くことにより、社会的相互作用及び攻撃的行動を評価することができる。
方法
各セッションは、侵入者マウスを居住者マウスのホームケージ内に10分間の期間にわたって置くことからなった。いくつかの行動パラメータの測定が可能になるように、実験を、天井カメラを使用してテープに録画した。動物が相互作用に費やした時間量を記録した。
結果
相互作用時間のANOVAは、処置の効果を明らかにしなかった[F(3,36)=1.905;P=0.1462;図7]。
結論
Mrx010による処置は、社会的相互作用試験におけるBTBRマウスの社会的行動に影響しなかった。
実施例2d−常同行動のアセスメント−大理石埋め込み試験
論拠
この試験は、反復、強迫及び不安行動について評価する。埋め込まれた大理石の数が多いほど、不安または常同行動が大きいことを示す。実際、薬理学的剤、例えば、抗不安薬によって処置したマウスは、対照マウスと比較して、減少した大理石埋め行動を示す。
方法
マウスを、標準の齧歯動物用(硬材)寝具(5cm)及びその頂部に20個の大理石(壁から2cm離れかつ2cm離れて規則的間隔にある5列の大理石)を含む新規のポリプロピレンケージ(35×28×18.5cm、L×W×H)内に個々に置いた。実験を1000luxの光強度下で行った。30分後、マウスをこれらのケージから除去し、表面の2/3を超えて埋め込まれた大理石の数をスコアリングした。
結果
埋め込まれた大理石の数のANOVAは、処置の効果を明らかにせず[F(3,39)=0.835;P=0.483;図8]、Mrx010による処置が、BTBRマウスにおける常同行動に影響しなかったことを示唆した。
結論
MRX010による慢性処置は、BTBRマウスにおける反復、強迫及び不安行動に影響しなかった。
実施例2e−不安様行動のアセスメント−高架式十字迷路
論拠
高架式十字迷路(EPM)は、齧歯動物における不安様行動を評価するための広く使用されている試験である。EPMは、一般の不安行動を評価しており、迷路の開放アームにおいてより多くの時間を費やしている不安マウスは少ない。開放アーム活動(持続期間)の増加は、抗不安行動を反映している。
方法
セットアップは、2つの開放(嫌悪)アーム及び2つの閉鎖(安全)アームを含み、床から1メートル高い灰色のプラスチック十字迷路からなった(50×5×15cm壁)。実験は赤色光下で行った(7lux)。マウスを、開放アームを向いた迷路の中心に置き(閉鎖アーム内への直接侵入を回避するため)、5分の持続時間にわたって活動領域を探索させた。いくつかの行動パラメータの測定が可能になるように、実験を、天井カメラを使用してテープに録画した。費やした時間の百分率及び各アームでの侵入回数を不安様行動及び自発運動について丁重に測定した。アームへの侵入をアーム内での全四足動物として定義した。
結果
閉鎖アームにおいて費やした百分率の時間のANOVAは、処置の効果を明らかにしなかった[F(3,39)=0.556;P=0.647;図9A]。開放アームにおいて費やした百分率の時間のクラスカルワリス非パラメータ分析[カイ二乗:10.831;df=3;P=0.013;図9B]、続いての非パラメータのマンホイットニーのU検定によると、MRX010によって処置したマウスは、ビヒクル群と比較して開放アームにおいてより多くの時間を費やさなかったことが明らかになった。閉鎖アームへの侵入回数のANOVAは、処置の効果を明らかにしなかった[F(3,39)=0.556;P=0.647;図9C]。開放アームへの侵入回数のクラスカルワリス非パラメータ分析[カイ二乗=10.315;df=3;P=0.016;図9D]、続いての非パラメータのマンホイットニーのU検定は、開放アームにおける侵入回数への処置の効果を明らかにしなかった。
結論
MRX010による慢性処置は、BTBRマウスにおける高架式十字迷路での不安様行動に影響しなかった。
実施例2f−不安様行動のアセスメント−オープンフィールドアリーナ
論拠
オープンフィールドアリーナを使用して、新規のストレスフルな環境への暴露の応答及び自発運動を評価する。ナイーブマウスは、活動領域の中心よりも少なく暴露されているため、活動領域の壁沿いで大部分の時間を必然的に過ごす。中心で費やした時間の持続期間の増加は、不安様行動の減少を表す。
方法
マウスを、個々に、オープンフィールドアリーナに置き(43×35×25、L×w×h)、10分間探索させた。実験は、60luxの光強度下で行った。Ethovisionソフトウェアを使用して、いくつかの行動パラメータの測定が可能になるように、実験を、天井カメラを使用してテープに録画した。移動した距離を自発運動についてスコアリングした。
結果
移動した距離のANOVAは、オープンフィールドアリーナにおける自発運動への処置の効果を明らかにしなかった[F(3,37)=1.325;P=0.282、図10A]。外側ゾーンにおいて費やした時間のANOVAは、処置の効果を明らかにしなかった[F(3,37)=1.598;P=0.208;図10B]。内側ゾーンにおいて費やした時間のANOVAは、処置の効果を明らかにした[F(3,36)=3.636;P=0.023;図10C]。
結論
Mrx010による処置は、BTBRマウスにおけるオープンフィールドアリーナでの自発運動及び不安様行動に影響しなかった。
実施例2g−うつ病様行動のアセスメント−強制水泳試験
論拠
強制水泳試験(FST)は、抗うつ活動を評価するために最も広く使用されている実験的パラダイムである。ナイーブ動物は、不動の浮遊姿勢に適応する前に水泳、上昇及び飛び込みの形態で逃避行動を示すであろう。不動の持続時間は、行動の断念を示している。抗うつ薬は、この試験において、不動で費やした時間を減少させる。
方法
マウスに、17cmの深さまで23〜25℃の水道水で満たしたガラスシリンダ(24×21cm)において6分間強制して水泳させた。FSTを天井カメラからテープに録画した。スコアリングした行動パラメータは、6分間試験の最後の4分の間は不動である。
結果
不動時間のANOVAは、FSTにおけるBTBRマウスの不動時間への処置の効果を明らかにしなかった[F(3,38)=1.879;P=0.151;図11]。
結論
MRX010による処置は、強制水泳試験でのBTBRマウスの不動時間に影響しなかった。
実施例2h−うつ病様行動のアセスメント−雌の尿への嗅覚行為試験
論拠
雌の尿への嗅覚行為試験(FUST)を使用して齧歯動物における無快感症様行動を評価する。嗅覚行為時間の低減が社会的回避/無快感症を示唆する一方で、増加は、社会的行動/快楽的行動の増加を表す。
方法
実験マウスを試験の前に1週間、単独で部屋に入れる。試験の際、無菌水に浸漬した綿先端アプリケータをホームケージに置き、マウスを3分間嗅覚行為/調査させる。この3分試験の後、綿先端アプリケータを除去する。45分後、新しい綿先端アプリケータを(このサイクルの発情期にあるものと同じ株の雌性マウスから収集した)雌の尿に浸漬し、ケージに置く。マウスをさらに3分間これを嗅覚行為/調査させる。水及び尿の嗅覚行為に費やした時間を記録する。
結果
ビヒクル群では、マンホイットニーのU検定は、水の嗅覚行為で費やした時間と比較して尿への嗅覚行為に費やした時間の有意な増加を明らかにした[t=2.976、df=18;P=0.0081]。水への暴露では、嗅覚行為に費やした時間のクラスカルワリス非パラメータ分析は、水の群における処置の効果を明らかにしなかった[カイ二乗:6.352;df=3;P=0.096]。尿への暴露では、嗅覚行為に費やした時間のクラスカルワリス非パラメータ分析は、処置の効果を明らかにしなかった[カイ二乗:3.639;df=3;P=0.303、図12]。
結論
MRX010による処置は、BTBRマウスにおいて尿への嗅覚行為に費やした時間に対する効果はなかった。
実施例2i−in vivo胃腸運動アッセイ
論拠
この手順を使用してin vivo腸運動を評価する。
方法
マウスを試験の開始の前に単独で部屋に入れた。マウスに非吸収性着色染料(カーマインレッド)で経口強制飼養した。最初に着色された糞便ボーラスの***時間を記録し、腸全体の蠕動運動の指標として使用した。
結果
運動時間のANOVAは、処置の効果を明らかにしなかった[F(3,39)=2.072;P=0.121;図13]。
結論
MRX010による処置は、腸運動に影響しなかった。
実施例2j−器官重量及び結腸長
体重の百分率としての器官重量のANOVAは、副腎[F(3,37)=0.208;P=0.890;図14A}、脾臓F(3,35)=0.629;P=0.601;図14B]または盲腸[F(3,37)=0.883;P=0.460;図14C]について処置の効果を明らかにしなかった。結腸長のANOVAは、処置の効果を明らかにした[F(3,37)=5.635;P=0.003;図14D]。Post−hoc分析により、MRX010による慢性処置(ビヒクル群に対してp<0.05)が、BTBRマウスにおける結腸長を増加させることを明らかにした。
BTBRマウスモデルからの結果の考察
全体に、MRX010による処置は、BTBRマウスにおける常同行動、社会的行動、不安行動及びうつ病関連行動に関する試験において有意な効果を及ぼさなかった。結腸長を除いて、現研究において評価された生存生物学的製剤は、測定したいくつかの生理的パラメータ(副腎重量、脾臓重量、盲腸重量及びカーマインレッド)に影響しなかった。MRX010による処置は、ビヒクル処置マウスと比較したときに結腸長を増加させたが、カーマインレッドの試験では腸運動の変化が検出されなかった。
自閉症スペクトラム障害の処置におけるMRX010についての全体的な結論
MRX010は、MIAマウスモデルにおける常同、反復及び不安行動の処置において有効であることが示された。自閉症のマウスモデルにおける行動的及び生物学的表現型を反転する治療が、ヒト疾患に対して有効であることが予期される。行動的表現型の解明は、自閉症の全ての動物モデルにおいて予期されるということではない。BTBRによって示される症状は、測定可能であるいずれかの有益なMRX010効果に十分に重度ではなかった可能性がある。
自閉症スペクトラム障害の処置の医薬品の臨床開発におけるEMAガイドラインは、疾患の異質性に起因して、単一の化合物によって全ての中核症状に有意な効果を達成することができない場合があること、そのため、少なくとも1つの中核症状において短期間の効能が実証されなければならないことを記述している。MRX010生存生物学的製剤は、少なくとも1つの中核症状または自閉症スペクトラム障害の有効な処置を示しており、そのため、当該製剤及び関連するE.faceium株は、ヒト疾患に対して有効であることが予期される。
実施例3−安定性試験
本明細書に記載されている少なくとも1つの細菌株を含有する本明細書に記載されている組成物を25℃または4℃で密閉容器に保存し、当該容器を30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%または95%の相対湿度を有する雰囲気に置く。1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、1.5年、2年、2.5年または3年後、細菌株の少なくとも50%、60%、70%、80%または90%が、標準プロトコルによって決定されるコロニー形成単位で測定されるように残存する。
実施例4−C57BL/6マウスにおける中心及び周辺オキシトシンレベルへのMRX010による亜慢性処置の効果を評価する
細菌株を上記実施例1及び2に概説されているように調製及び投与した。C57BL/6マウスを、それぞれ10〜12マウスを有する7つの実験処置群において6日間生存生物学的製剤で処置した。その後、視床下部をマウスから切断し、視床下部におけるオキシトシンのレベルを放射免疫測定(RIA)によって検出し、また、血漿におけるオキシトシンのレベルをRIAによって検出した。さらに、オキシトシン受容体、インターロイキン及び他の炎症マーカー、ならびにバソプレシンホルモンのレベルをRIA及び他の分析方法によって検出した。
実施例5−母体免疫活性化(MIA)マウスモデル
実施例5a−MIAマウスモデルに関する材料及び方法
マウス
雌性C57/Bl6マウス(8週齢)及び週齢が一致する雄性マウスをHarlan UKから購入した。1週間の馴化後、これらの動物を交尾させた。胎児の12.5日目に、雌性マウスに、母体免疫系を活性化させるウイルス模倣物ポリ−ICの注射、または生理食塩水ビヒクルの注射のいずれかを投与した。これらの動物からの雄性子孫を3週齢で母親から離した。
全ての実験を、Animal Experimentation Ethics Committee of University College Corkによって承認された、欧州指針2010/63/EEC、2012年のS.I.No543の要件に従って行った。

受託番号NCIMB42487として寄託されているMRX010:Enterococcus faecium細菌。生存生物学的製剤を嫌気性条件で設備において成長させた。
生存生物学的製剤投与
投薬では、雄性子孫に、連日経口胃管栄養法でPBS、またはPBS中10cfu/mLに調製した生存生物学的製剤MRX010を投与した。生存生物学的製剤または対照の連日投与を8週齢(行動バッテリーの開始3週間前)で開始した。投薬は行動パラダイムを通して連日継続した。
投与スケジュール
経口投与用ビヒクルはPBSである。毎日の経口投与を経口胃管栄養法によって行う。
実施例5b−常同行動のアセスメント−セルフグルーミング試験
論拠
この試験は、反復、強迫及び不安行動について評価する。グルーミングに費やされた持続期間が長いほど、常同行動が増加すること;または新しい環境への応答における不安のレベルが高いことを示唆している。
方法
セルフグルーミングを、フィルタートップで覆われた直径6.5cm×高さ10cmの透明なガラスビーカーにおいて評価する。実験動物を試験室に持って行き、試験前1時間まで馴化させる。試験の持続期間はおよそ20分間である。調査者は、試験動物のグルーミングによって費やされた蓄積時間を記録する。試験間でビーカーを完全にきれいにして次に使用する。
結果
対照群とビヒクルMIA群との間のスチューデントt検定分析は、ビヒクルMIAマウスが、対照群と比較してグルーミングの持続期間の増加を示したことを明らかにした(t(18)=2.628、P=0.017;図15)。MRX010による処置は、グルーミング行動の増加を減衰させた(t(18)=0.767、p=0.453)。
結論
MRX010は、セルフグルーミング試験においてMIAマウスの常同/新しいもの嫌い(neophobic)行動を低減させたようであった。
実施例5c−不安様行動のアセスメント−高架式十字迷路
論拠
高架式十字迷路(EPM)は、齧歯動物における不安様行動を評価するための広く使用されている試験である。EPMは、一般の不安行動を評価しており、迷路の開放アームにおいてより多くの時間を費やしている不安マウスは少ない。開放アームへの侵入時間または回数の増加は、低減された不安の指標である。
方法
セットアップは、2つの開放(恐怖)アーム及び2つの閉鎖(安全)アームを含み、床から1メートル高い灰色のプラスチック十字迷路からなった(50×5×15cm壁または1cmの壁なし)。実験は赤色光下で行った(約5lux)。マウスを、開放アームを向いた迷路の中心に個々に置き(閉鎖アーム内への直接侵入を回避するため)、5分間自由探索させた。実験を、天井カメラを使用してテープに録画して、Ethovisionソフトウェア(3.1バージョン、Noldus,TrackSys,Nottingham,UK)を使用してさらにパラメータ分析した。費やした時間の百分率、移動した距離及び各アームでの侵入回数を不安行動及び自発運動についてそれぞれ測定した(アームへの侵入をアーム内での全四足動物として定義した)。
結果
高架式十字迷路においてはMIAマウスにおける不安様行動の有意な増加は観察されなかった。特に、ビヒクルMIAマウスは、閉鎖アームにおいてより多くの時間を示さず(t18=2.628、p=0.017)、開放アームにおいてより少ない時間を示さなかった(t18=2.628、p=0.017)(不安様行動の増加を示す)。MRX010による慢性処置は、閉鎖アーム(t18=2.628、p=0.017)と比較して開放アーム(t18=2.628、p=0.017)において持続期間の変化がないため、不安様行動にも観察可能に影響しなかった(図16A及びBを参照されたい)。
結論
MRX010は、高架式十字迷路においてMIAマウスの不安に影響しないようであった。ビヒクルMIA群が不安様行動の増加を示さなかったため、MIAモデルは、不安の増加の表現型を誘発しなかったようである。したがって、MIAマウスモデルを使用した、高架式十字迷路における不安に対するMRX010による慢性処置の効果を決定することはできない。
実施例5d−不安様行動のアセスメント−オープンフィールドアリーナ
論拠
オープンフィールドアリーナを使用して、新規のストレスフルな環境への暴露の応答及び自発運動を評価する。ナイーブマウスは、活動領域の中心よりも少なく暴露されているため、活動領域の壁沿いで大部分の時間を必然的に過ごす。マウスは、必然的に、活動領域の側に張り付くことを好むため、中心において過ごす長い時間は、不安様行動の低減の指標である。
方法
新規のストレスフルな環境への応答及び自発運動を評価するために、マウスを約60luxの光が当てられた開放された活動領域に置き(40×32×23cm、L×w×h)、10分間探索させた。実験を、天井カメラを使用してテープに録画して、Ethovisionソフトウェア(3.1バージョン、Noldus,TrackSys,Nottingham,UK)を使用してさらにパラメータ分析した。移動した距離及び実質上の中心ゾーンでの待機時間(エッジから離れた50%で定義される)をスコアリングした。
結果
オープンフィールドアリーナにおけるMIAマウスにおいて不安様行動は変化しなかった。特に、内側ゾーンにおいて費やした時間(不安の増加の指標)は対照と比較して低減しなかった(t(19)=3.061、p=0.763)。また、MRX010は、内側ゾーンにおいて費やした時間の持続期間に観察可能に影響しなかった(t(17)=0.253、p=0.803)(図17)。
結論
MRX010は、オープンフィールドアリーナにおいてMIAマウスの不安に影響しないようであった。ビヒクルMIA群が不安様行動の増加を示さなかったため、MIAモデルは、不安の増加の表現型を誘発しなかったようである。したがって、MIAマウスモデルを使用した、オープンフィールドアリーナにおける不安に対するMRX010による慢性処置の効果を決定することはできない。
実施例5e−社会的行動のアセスメント−雌の尿への嗅覚行為試験
論拠
雌の尿への嗅覚行為試験(FUST)を使用して齧歯動物における無快感症様行動を評価する。尿の匂いへの嗅覚行為に費やした時間の増加は、社会的行動の関心の増加を示唆している。
方法
試験の朝に、20匹のC57BL/6J雌性マウスからの膣スミアを採取し、動物の周期について分析した。発情期のマウスからの尿のみを試験用に収集した。雄性マウスを試験前に静かな薄暗い部屋に移し、ホームケージ内に挿入された空の綿先端アプリケータに馴化させた。1時間後、無菌水に浸漬した綿先端を動物に3分間提示し、嗅覚行為時間を測定した。マウスをそのまま放置した45分の試行間間隔の後に、発情期の雌性マウスからの60μlの新しい尿が注がれた綿先端の提示を3分間実施し、嗅覚行為の持続期間を測定した。
結果
全ての群のマウスが、水(中立の手掛かりとして)と比較して尿(社会的手掛かりとして)に対してより多くの時間を嗅覚行為に費やした(F(1,57)=9.971、p=0.003)。MIAマウスにおけるこの社会的応答の損失はなく(F(1,39)=0.002、p=0.959)、この動物モデルにおけるMrx010のいずれの観察可能な効果もなかった(F(1,36)=0.364、p=0.550)(図18)。
結論
ビヒクルMIA群が、尿への嗅覚行為の有意な低減を示さず、そのため、MIAモデルは、社会的行動のレベルの低減を誘発しなかった。したがって、MIAマウスモデルを使用した、雌の尿への嗅覚行為試験における社会的行動に対するMRX010による慢性処置の効果を決定することはできない。
実施例5f−社会的行動のアセスメント−3チャンバー社会的アプローチタスク(3チャンバー試験)
論拠
3チャンバー社会的相互作用試験(3−CSIT)は、性別一致の同種間での社会的相互作用を評価し、マウスにおける社会的新規性及び社会的嗜好の読み出しを可能にするかなり有効な動物行動学的に関連するモデルである。試験は、マウスに、無生物対象または性別一致の同種マウス間で自由に探索させる。ここで使用されているいくらかの動物モデルは、この社会的パラダイムにおいて欠損を有し;生存生物学的製剤を、これらの欠損を軽減し得るか否かについて調査した。
方法
社会的試験装置は、矩形の3チャンバーボックスであった。各チャンバーは20cmL×40cmW×22cmHであった。各チャンバーへのアクセスを可能にする小さい円形開口(直径5cm)を有する分割壁を作製した。バー間の鼻接触を可能にするが、闘争反応が防止された、10cmの底面直径、13cmの高さ及び1.2cmのバー間隔を有する2つの同一のワイヤカップ様ケージを、相互に対称な位置でそれぞれの側のチャンバー内に置いた。試験は、それぞれ10分の3期:1)居住、2)マウス対対象3)新規マウス対ファミリアーマウスを有する。実験を、天井カメラを使用してテープに録画して、Ethovisionソフトウェア(3.1バージョン、Noldus,TrackSys,Nottingham,UK)を使用してさらにパラメータ分析した。第1期では、試験マウスを真ん中のチャンバー内に置き、10分の馴化セッションで内側に空の小さいワイヤケージを有するボックス全体を探索させた。馴化期間後、試験マウスを短い間隔で試験ボックスから除去する一方で、対象を片側のチャンバーに置き、アンファミリアー(unfamiliar)の同種雄性マウス(試験対象との前接触なし)を他の側のチャンバーに置き、両方をワイヤカップ様ケージで包囲した。第2期の間、試験マウスを真ん中のチャンバーに置き、10分間ボックス全体を探索させた。各チャンバーにおいて対象またはマウスを探索するのに費やす時間量及び各チャンバー内への侵入回数を評価した。左対右側チャンバーでのアンファミリアーマウスの配置を試行間で対称に変更した。侵入を1つのチャンバー内での全四足動物として定義した。第3期の間、対象を新規マウスとして働くアンファミリアーマウスに置き換え、他のチャンバーにおいて、第2期で使用したマウスをここではファミリアーマウスとして働く同マウスのままとした。それぞれの試行後に、全チャンバー及びカップ様ワイヤケージを10%エタノールできれいにし、乾燥し、数分間換気をして嗅覚合図のバイアスを防止し、確実に適切な消毒をした。先天性のものの側の嗜好の欠失を全活動領域への馴化の最初の10分間に確認した。対照動物は、必然的に、無生物対象よりも同種マウスに関心を持つ(社交性)。同様に、対照動物は、既に相互作用したものよりも新規のアンファミリアーマウスとの相互作用により多くの時間を費やす。
結果
無生物対象よりも同種マウスと相互作用により多くの時間を費やす試験動物の明確な嗜好があった(F(1,46)=261.1、p<0.001)(図19A)。MIAマウスはナイーブ対象と同程度まで対象よりも上記マウスと相互作用することを好んだため、MIAマウスにおいて社交性に対する効果はなかった(F(1,32)=1.984、p=0.169)。社交性に対する効果の欠失と合致して、社交性に対するMRX010の観察可能な効果はなかった(F(1,32)=0.1905、p=0.665)。社会的新規性(すなわち、ファミリアーまたは新規マウスとの相互作用)についての試験において、新規及びファミリアーマウスを探索するのに費やした時間の間で全体的な差はなかった(F(1,48)=0.206、p=0.652)。しかし、ビヒクルMIAマウスは、新規マウスよりもむしろファミリアーマウスとの相互作用を好む傾向があった(F(2,48)=8.825、p=0.005)(図19B)。MRX010は、ビヒクルMIA群において観察された社会的行動(社会的新規性または認識)のこの欠損を反転させ(F(1,34)=13.44、p=0.001)、ファミリアーマウスと比較して新規マウスと相互作用する時間の増加を示した。
結論
MIAモデルは、社交性に対する効果(マウスと比較した対象の相互作用)を実証しなかったため、この試験においてMRX010処置の影響についてコメントすることができない。しかし、MIAモデルは、社会的新規性の相互作用に影響した。重要なことに、MRX010は、社会的新規性の相互作用の欠損を反転させ、そのため、MRX010による慢性処置は、3チャンバー試験におけるMIAマウスの社交性を増加させる。
実施例5g−認知能力のアセスメント−新規対象認識試験
論拠
この試験を使用して、認識記憶を試験し、認知能力を評価する。対照動物は、探索するための時間を有した対象及び新しい対象間を区別する。いくらかの動物モデルは、これらの新規の対象を認識する能力の欠損を有している。生存生物学的製剤を、認知能力におけるこれらの欠損を軽減する能力について調査した。
方法
マウスを、活動領域のレベルで薄暗い光の60lux下、灰色のプラスチック矩形ボックス(40×32×23cm、L×W×H)の真ん中に10分間置いた。24時間後、マウスを2つの同じ対象と共にボックスに合計10分間置いた(習得期)。24時間後、2つの同じ対象のうち一方を新規の対象と置き換え、マウスを、サンプル対象と対向する壁の中間点でボックスの真ん中に合計10分間置いた(保持期)。動物を各実験前に30分間、試験室に慣れさせた。ボックス及び対象をアルコール10%できれいにし、各試行間でのいずれの手掛かりの匂いも回避した。実験を、天井カメラを使用してテープに録画して、さらにパラメータ分析した。対象との有向接触には、口、鼻もしくは足との任意の接触が含まれ、最小の定義された距離を相互作用としてカウントした。
結果
試験したいずれの群においてもファミリアー及び新規対象物間で識別されなかった(F(2,60)=0.273、p=0.762)。MIAマウスにおいて認知能力の欠損はなく(F(1,40)=0.028、p=0.867)、ファミリアー及び新規の対象間で識別するとき、認知能力に対するMRX010のいずれの観察可能な効果もなかった(F(1,38)=0.291、p=0.593)(図20)。
結論
MIAマウスは、認知能力行動における欠陥を示さず、そのため、このモデルは、認知において予期された欠損を誘発しなかった。そのため、新規対象認識試験においてMIAマウスの認知能力に対する慢性MRX010処置の効果を決定することはできない。
MIAマウスモデルからの結果の考察
MRX010は、MIAマウスにおけるグルーミング/常同行動の増加を軽減した。社会的新規性/識別に関する3チャンバー試験において、MIAマウスは、新規マウス及びファミリアーマウス間の区別をせず、社交性及び認識の低下を実証した。しかし、MRX010による慢性処置は、社会的行動におけるこの欠損を反転させた。
上記に開示されているデータと一緒にすると(実施例1)、これらのデータは、自閉症の環境動物モデルにおける常同、不安様及び社会的行動の欠損の軽減におけるMRX010の効果を示唆している。
実施例6−ex vivo前臨床的研究
この前臨床的研究において、腸透過性及び機能、代謝プロファイル(SCFA)、全身の免疫活性化(脾細胞アッセイ)、アミノ酸の血漿中濃度、中枢神経伝達物質の放出、ならびに海馬、扁桃体及び前頭葉前部皮質における炎症、内分泌及び神経伝達物質マーカーに関する遺伝子発現を含めた多数の読み出しに対する生存生物学的製剤MRX010の6日投与の効果を評価した。
実施例6a−前臨床的研究に関する材料及び方法
マウス
BALBc(Envigo,UK)成体雄性マウスを12時間の明暗サイクル下で群居飼育した;標準の齧歯動物用食餌及び水を自由に得られた。全ての実験を、University College Cork Animal Ethics Experimentation Committeeによる認証に従った欧州ガイドラインに従って実施した。動物は実験の開始時に8週齢であった。

受託番号NCIMB42487として寄託されているMRX010:Enterococcus faecium細菌。生存生物学的製剤を嫌気性条件で設備において成長させた。
研究設計及び生存生物学的製剤投与
マウスを動物ユニット内で到着後1週間、保持室に馴化させた。マウスに、6日連続で15:00から17:00の間1×10CFUの用量で経口胃管栄養法(200μL用量)で生存生物学的製剤を投与した。7日目に、動物の頭部を切除し、組織を実験用に採取する。
この投薬レジメでのこの濃度におけるMRX010投与は、全身及び中枢の生理的事象に負の影響を及ぼさなかった。翻訳的視点から、これらのデータは、この生存生物学的製剤が、最小の望ましくない副作用で高い寛容性プロファイルを有し得ることを示唆している。
組織収集
動物を処置及び試験条件に関してランダムに犠牲にした;サンプリングを午前9時と午後2時30分との間に行った。体幹血液をカリウムEDTA(エチレンジアミン四酢酸)チューブにおいて収集し、4000gで15分間スピンした。血漿を単離し、−80℃で保存してさらに分析した。脳を迅速に切除し、切断し、各脳領域を乾燥氷上で急速凍結し、−80℃で保存してさらに分析した。脾臓を除去し、5mL RPMI培地(L−グルタミン及び重炭酸ナトリウムを含む、R8758 Sigma+10% FBS(F7524、Sigma)+1% Pen/Strep(P4333、Sigma))において収集し、ex−vivo免疫刺激について選択した直後に処理した。腸組織(盲腸に最も近い回腸及び結腸の2cmセグメントを切除し、盲腸から最も遠い1cmの組織を使用した)を腸透過性アッセイ用のUssingチャンバーに設置した。さらなる1cmの回腸及び結腸の組織をタイトジャンクション遺伝子発現分析用に採取した。盲腸を除去し、秤量し、−80℃で保存してSCFA分析した。
腸透過性
マウスを頸椎脱臼によって安楽死させ、遠位回腸及び結腸を除去し、冷蔵Krebs溶液中に置き、腸間膜線に沿って開き、注意深く濯いだ。調製物を、次いで、先に記載されているように(Hyland and Cox、2005)37℃で維持した含酸素(95%O、5%CO)Krebs緩衝液を含むUssingチャンバー(Harvard Apparatus,Kent,UK、露出面積0.12cm)に置いた。4kDa FITC−デキストランを2.5mg/mLの最終濃度で粘膜のチャンバーに添加し;200μLのサンプルを次の3時間で30分毎に漿膜のチャンバーから収集した。
盲腸内容物中の短鎖脂肪酸の分析
盲腸内容物を混合し、MilliQ水でボルテックスし、室温で10分間インキュベートした。上清を遠心分離(10000g、5分、4℃)によって得、細菌及び他の固体をペレット化し、0.2μmで濾過した。これをきれいなGCバイアルに移し、2−エチル酪酸(Sigma)を内部標準として使用した。SCFAの濃度を、ZB−FFAPカラム(30m×0.32mm×0.25mm;Phenomenex)を装備したVarian3500GC水素炎イオン化システムを使用して分析した。標準曲線を、アセテート、プロピオネート、イソブチレート、n−ブチレート、イソバレレート及びバレレート(Sigma)を含有する異なる濃度の標準混合物によって構築した。ピークをVarian Star Chromatography Workstationバージョン6.0ソフトウェアの使用によって積分した。全てのSCFAデータをμmol/gとして表す。
アミノ酸の血漿中濃度
動物を処置及び試験条件に関してランダムに犠牲にした;サンプリングを午前9時と午後2時30分との間に行った。体幹血液をカリウムEDTA(エチレンジアミン四酢酸)チューブにおいて収集し、4000gで15分間スピンした。血漿を単離し、−80℃で保存してさらに分析した。血漿を0.2mol/Lクエン酸ナトリウム緩衝液、pH2.2で希釈して250nmolの各アミノ酸残基を得た。サンプルを内部標準ノルロイシンで希釈して、125nm/mLの最終濃度を得た。アミノ酸を、Jeol Na+高速カチオン交換カラムを装着したJeol JLC−500/Vアミノ酸分析器(Jeol Ltd,Garden City,Herts,UK)を使用して定量化した。
脾臓サイトカインアッセイ
脾臓を、犠牲の後に5mL RPMI培地中で直ちに収集し、直ちに培養した。脾臓細胞をRPMI培地においてまずホモジナイズした。ホモジネートステップに、細胞を1mlのRBC溶解緩衝液(11814389001 ROCHE、Sigma)中で5分間インキュベートするRBC溶解ステップが続いた。10mlの培地を添加して溶解を停止し、続いて、5分間200gで遠心分離した。これに、細胞に40um濾過器を通過させる最終ステップが続いた。ホモジネートを次いで40um濾過器上で濾過し、200gで5分間遠心分離し、培地において再懸濁した。細胞をカウントし、播種した(4,000,000/mL培地)。2.5時間の順応後、細胞をリポ多糖体(LPS−2μg/ml)またはコンカナバリンA(ConA−2.5μg/ml)で24時間刺激した。刺激後、上清を採取して、Proinflammatory Panel 1(マウス)V−PLEX Kit(Meso Scale Discovery、Maryland、USA)を使用してTNFα、IL−10、IL−1β、インターフェロンγ、CXCL2及びIL6についてサイトカイン放出を評価した。分析をMESO QuickPlex SQ 120、SECTOR Imager 2400、SECTOR Imager 6000、SECTOR S 600を使用して実施した。
モノアミン分析
神経伝達物質濃度を脳幹からのサンプルにおいてHPLCによって分析した。簡潔には、脳幹組織を、内部標準として4ng/40μlのN−メチル5−HT(Sigma Chemical Co.,UK)を混ぜた500μlの冷蔵移動相において超音波処理した。移動相は、0.1Mクエン酸、5.6mMオクタン−1−スルホン酸(Sigma)、0.1Mリン酸二水素ナトリウム、0.01mM EDTA(Alkem/Reagecon、Cork)及び9%(v/v)メタノール(Alkem/Reagecon)を含有し、4N水酸化ナトリウム(Alkem/Reagecon)を使用してpH2.8に調整した。ホモジネートを次いで22,000×gで4℃において15分間遠心分離し、40μlの上清を、SCL10−Avpシステムコントローラ、LECD7電気化学検出器(Shimadzu)、LC−10ASポンプ、CTO−10Aオーブン、SIL−10A自己注入器(40℃で維持されたサンプル冷却器を有する)及びオンラインのGastorr Degasser(ISS,UK)からなるHPLCシステム上に注入した。30℃で維持した逆相カラム(Kinetex 2.6u C18 100×4.6mm、Phenomenex)を分離において用いた(流速0.9ml/分)。Ag/AgCl参照電極(Shimdazu)と組み合わせたガラス状炭素作用電極を+0.8Vで作動させ、生じたクロマトグラフクロマトグラムを、Class−VP 5ソフトウェア(Shimadzu)を使用して分析した。神経伝達物質は、サンプル分析の間に規則的間隔でランニングする、標準注入物によって求められる特徴的な保持時間によって同定した。分析物対内部標準のピーク高さの比を測定し、標準注入物と比較した。結果を神経伝達物質(ng)/新たな組織重量(g)として表した。
中心及び胃腸の遺伝子発現分析
全RNAを、製造者の推奨に従ってmirVana(商標)miRNA Isolationキット(Ambion/Llife technologies,Paisley,UK)及び処理DNase(Turbo DNA不含,Ambion/life technologies)を使用して抽出した。RNAを、製造者の指示に従ってNanoDrop(商標)分光光度計(Thermo Fisher Scientific Inc.,Wilmington,Delaware,USA)を使用して定量化した。RNAの質を製造者の手順に従ってAgilent Bioanalyzer(Agilent,Stockport,UK)を使用して評価し、RNA完全性数(RIN)を算出した。RIN値>7を有するRNAを後の実験に使用した。RNAを、製造者の指示に従ってApplied Biosystems High Capacity cDNAキット(Applied Biosystems,Warrington,UK)を使用してcDNAに逆転写した。簡潔には、Multiscribe逆転写酵素(50U/μL)(1)(2)(1)(10)をRTマスター混合物の部分として添加し、25℃で10分間、37℃で2時間、85℃で5分間インキュベートし、4℃で保存した。定量的PCRを、β−アクチンを内在性対照として使用しつつ、Applied Biosystemsによってマウス特異的標的化遺伝子に設計されたプローブ(6カルボキシフルオレセイン−FAM)を使用して実施した。増幅反応には、1μl cDNA、5μlの2X PCR Master mix(Roche)、900nMの各プライマーが含まれ、RNase不含水の添加によって合計10μlとした。全ての反応をLightCycler(登録商標)480Systemにおいて96ウェルプレートを使用して3重に実施した。熱サイクル条件は、製造者(Roche)によって推奨されるように55サイクルのものであった。アンプリコン汚染についてチェックするために、各ランは、使用した各プローブについて3重のテンプレート対照を含まなかった。サイクル閾(Ct)値を記録した。データを、β−アクチンを使用して正規化し、2−ΔΔCT法を使用して変換し、倍数変化対対照群として提示した。
統計的分析
正規分布データを平均±SEMとして提示し;非パラメータデータセットを四分位範囲でメジアンとして提示する。非対両側t−検定を適用してパラメータデータを分析し、マンホイットニー試験を非パラメータに使用した。スピアマンの順位相関係数を、プールしたデータセットにおいて相関関係分析に用いた。p値<0.05を全ての場合において有意であるとみなした。
実施例6b−前臨床的研究の結果
腸透過性、及び胃腸の遺伝子発現
腸透過性の指標としての、Ussingチャンバーの、管腔から漿膜側へのFITCの通路を使用して、MRX010が、回腸(図21A(F(3,24)=0.107、p=0.96))または結腸(図22A(F(3,27)=1.141、p=0.351))組織透過性に対する観察可能な効果を有さなかったことが決定された。さらに、MRX010は、回腸または結腸組織における、タイトジャンクションタンパク質(腸バリアの完全性の維持に関与した)TJP1(図21C(t(12)=0.16、p=0.876)及び図22D(t(8)=0.114、p=0.912))またはオクルーディン(図21B(t(11)=0.72、p=0.487)及び図22B(t(8)=0.272、p=0.972));酵素IDO−1(トリプトファン/キヌニレン経路における第1及び律速の酵素)(図21D(t(12)=0.398、p=0.698)及び図22C(t(8)=0.51、p=0.623));あるいはTPH1(セロトニンの合成の原因となる、酵素トリプトファン水酸化酵素のイソ型)(図21E((t(12)=0.157、p=0.878)または図22E((t(9)=0.533、p=0.611))のmRNA発現に対して有意な効果を有さなかった。
盲腸内容物におけるSCFA発現
短鎖脂肪酸(SCFA)は、食事からの消化されない繊維を腸内の細菌によって発酵させるときに生成される。MRX010の慢性投与は、ビヒクルPBS投与と比較したとき、短鎖脂肪酸、アセテート(t(12)=1.787、p=0.099)、プロピオネート(t(12)=1.29、p=0.222)、イソブチレート(t(11)=1.152、p=0.174)、ブチレート(t(12)=0.577、p=0.575)、イソバレレート(t(11)=1.584、p=0.142)またはバレレート(t(12)=0.27、p=0.292)の盲腸の産生物に観察可能な効果を及ぼさなかった(図23)。
脾臓サイトカインアッセイ
ex vivo脾細胞アッセイは、細菌模倣物(リポ多糖体)またはウイルス模倣物(コンカナバリンA)の攻撃により、脾細胞(脾臓(免疫防御に関与する主な器官)から単離された細胞)を攻撃することを含む。MRX010は、PBS対照と比較してコンカナバリンAへの応答においてIL−1β発現を増加させ、これは、ウイルス攻撃に応答した炎症の促進的役割を示唆している。しかし、MRX010は、PBS対照の投与と比較したとき、LPSもしくはコンカナバリンA刺激に応答して、前炎症(IFNγ、TNFα)もしくは抗炎症(IL−10、IL−6)またはCXCL1(免疫反応活性化のマーカー)の脾細胞放出に影響しないようであった(図24及び以下の表は有意差を概説している)
アミノ酸の血漿中濃度
体幹血液を血漿中のアミノ酸分析のために収集し、微生物叢の変化による必須アミノ酸の生合成及び異化の指標を得た。MRX010は、血漿(t(9)=2.733、p=0.023)におけるプロリンレベルを減少させたが、チロシン(t(12)=0.078、p=0.39)、バリン(t(12)=1.152、p=0.272)、トレオニン(t(11)=0.072、p=0.944)、タウリン(t(12)=1.03、p=0.323)、セリン(t(12)=1.334、p=0.207)、フェニルアラニン(t(12)=0.086、p=0.343)、メチオニン(t(11)=0.564、p=0.584)、リジン(t(12)=0.496、p=0.629)、ロイシン(t(12)=0.289、p=0.778)、イソロイシン(t(12)=0.169、p=0.107)、HN3(t(12)=0.021、p=0.984)、ヒスチジン(t(12)=0.516、p=0.615)、グリシン(t(12)=0.608、p=0.555)、グルタメート(t(12)=0.674、p=0.513)、システイン酸(t(11)=0.375、p=0.715)、システイン(t(12)=0.718、p=0.487)、アスパルテート(t(12)=1.009、p=0.313)、アルギニン(t(12)=0.883、p=0.395)またはアラニン(t(12)=4.525、p=0.153)のレベルを変化させないようであった(図25を参照されたい)。
脳幹におけるモノアミン変化
MRX010の慢性投与は、非対両側t−検定によって求められる、ノルアドレナリン(t(12)=1.551、p=0.147)、ドーパミン(t(12)=0.731、p=0.479)、セロトニン(t(12)=0.154、p=0.149)、5−HIAA(5−ヒドロキシ−インドール−酢酸;5−HTの代謝産物)(t(12)=1.858、p=0.088)、またはセロトニンターンオーバー(5−HIAA:5−HTの比)(t(12)=0.202、p=0.844)のレベルを変化させないようであった(図26)。
中心遺伝子発現
神経伝達物質受容体(セロトニン受容体1a(5−HT1a)、ドーパミンD1受容体、GABAB受容体サブユニットB1、GABAA受容体、NMDA2A及びNMDA2B受容体)、炎症マーカー(IL−1β、IL6、CD11b、TNFα及びTLR4)、ならびに内分泌マーカー(コルチコステロン放出因子(CRF)、コルチコステロン放出因子受容体1及び2(CRFR1、CRFR2)、脳由来のニューロトロフィン因子(BDNF)、バソプレシン受容体、オキシトシン受容体、糖質コルチコイド受容体及び鉱質コルチコイド受容体)についての遺伝子発現を、扁桃体、前頭葉前部皮質及び海馬からの脳組織において分析した。
MRX010の慢性投与は、海馬または前頭葉前部皮質における神経伝達物質受容体、炎症マーカーまたは内分泌マーカーのmRNA発現への適切な効果を示さなかった(図27、29、30、32、33及び35)。扁桃体、不安、恐怖及び記憶の固定に関連する脳の辺縁領域において、神経伝達物質受容体、NMDA受容体2B、及び内分泌マーカー、BDNFのmRNA発現を減少させたが(図28及び34)、他の炎症、神経伝達物質または内分泌標的に対する観察可能な効果はなかった(図28、31及び34)。
MRX010は、神経伝達物質受容体セロトニン1a(5−HT1a)(t(11)=0.382、p=0.710)、ドーパミンD1受容体(t(10)=1.906、p=0.086)、GABAB受容体B1サブユニット(t(12)=0.029、p=0.978)、GABAA受容体(t(12)=0.926、p=0.373)、NMDA受容体サブユニット2A(t(11)=1.757、p=0.107)、NMDA受容体サブユニット2B(t(10)=1.52、p=0.159)の海馬遺伝子発現への適切な効果を示さなかった(図27)。
MRX010は、神経伝達物質受容体ドーパミンD1受容体(t(12)=0.808、p=0.435)、GABAB受容体B1サブユニット(t(11)=1.793、p=0.100)、GABAA受容体(t(11)=1.352、p=0.204)、NMDA受容体サブユニット2A(t(12)=0.455、p=0.658)の扁桃体遺伝子発現への適切な効果を示さなかったが、NMDA受容体サブユニット2B(t(11)=2.737、p=0.019)の発現を減少させた(図28)。
MRX010は、神経伝達物質受容体ドーパミンD1受容体(t(11)=0.295、p=0.773)、GABAB受容体B1サブユニット(t(11)=1.08、p=0.303)、GABAA受容体(t(10)=0.787、p=0.450)、NMDA受容体サブユニット2A(t(12)=0.108、p=3.012)、NMDA受容体サブユニット2B(t(11)=1.213、p=0.906)のPFC遺伝子発現への適切な効果を示さなかった(図29)。
MRX010は、炎症マーカーIL−1β(t(10)=0.863、p=0.408)、IL−6(t(11)=0.957、p=0.359)、CD11b(t(12)=1.083、p=0.300)、TNFα(t(9)=0.507、p=0.624)、TLR4(t(12)=0.025、p=0.980)の海馬遺伝子発現への適切な効果を示さなかった(図30)。
MRX010は、炎症マーカーIL−6(t(11)=0.980、p=0.924)、CD11b(t(12)=1.438、p=0.176)、TLR4(t(11)=1.081、p=0.303)の扁桃体遺伝子発現への適切な効果を示さなかった(図31)。
MRX010は、PFCにおける、TLR4(t(11)=0.135、p=0.895)、IL−6(t(11)=0.492、p=0.633)またはCD11b(t(11)=0.608、p=0.555)のmRNA発現への適切な効果を示さなかった(図32)。
MRX010は、海馬における、バソプレシン受容体(t(12)=0.843、p=0.416)、CRF(t(12)=0.239、p=0.815)、CRFR1(t(12)=0.159、p=0.138)、CRFR2(t(11)=1.014、p=0.332)、BDNF(t(12)=1.133、p=0.280)、オキシトシン受容体(t(12)=0.081、p=0.370)、糖質コルチコイド受容体(t(12)=0.749、p=0.468)、鉱質コルチコイド受容体(t(12)=1.473、p=0.166)の内分泌マーカーmRNA発現についてmRNA発現への適切な効果を示さなかった(図33)。
MRX010は、扁桃体内分泌マーカーCRFR1(t(12)=0.164、p=0.827)、CRFR2(t(11)=0.288、p=0.4779)、バソプレシン受容体(t(12)=0.013、p=0.990)、オキシトシン受容体(t(11)=0.787、p=0.488)、糖質コルチコイド受容体(t(11)=0.444、p=0.665)、鉱質コルチコイド受容体(t(10)=1.023、p=0.331)のmRNA発現への適切な効果を示さなかったが、BDNF(t(11)=2.943、p=0.013)についてmRNA発現の減少を実証した(図34)。
MRX010は、PFC内分泌マーカーCRFR1(t(12)=0.531、p=0.605)、CRFR2(t(12)=0.71、p=0.492)、BDNF(t(11)=1.391、p=0.192)、オキシトシン受容体(t(11)=1.545、p=0.151)、糖質コルチコイド受容体(t(12)=0.044、p=0.965)、鉱質コルチコイド受容体(t(11)=0.381、p=0.710)のmRNA発現への適切な効果を示さなかった(図35)。
実施例6c−前臨床的研究の考察
腸透過性及び機能、代謝プロファイル(SCFA)、全身の免疫活性化(脾細胞アッセイ)、アミノ酸の血漿中濃度、中枢神経伝達物質の放出、ならびに海馬、扁桃体及び前頭葉前部皮質における炎症、内分泌及び神経伝達物質マーカーに関する遺伝子発現を含めた多数の読み出しに対する生存生物学的製剤MRX010の慢性投与の効果を、この前臨床的研究において評価した。
MRX010は、回腸または結腸透過性に対して観察可能な効果を示さず、バリアの完全性の維持と関連するタイトジャンクションタンパク質の発現も示さなかった。MRX010による慢性処置が透過性を変化させないという所見は、これが、腸透過性及び完全性に負に影響しないことを示唆している。MRX010はまた、IDO−1もTPH1も変化させず、セロトニン産生も、腸におけるトリプトファン/キヌニレン経路も変化させないことを示唆している。
MRX010投与は、盲腸のSCFA産生においていずれの観察可能な効果も生じなかった。このことは、MRX010の慢性レジメが、発酵、または食事からの消化されない繊維の発酵の原因となる細菌を変化させなかったことを示唆している。
MRX010は、ウイルス模倣物(コンカナバリンA)チャレンジに応答して、脾細胞における前炎症性サイトカインIL−1βの発現を増加させた。MRX010は、LPSまたはコンカナバリンAに応答した、研究されたサイトカインの範囲に対してのさらなる観察可能な効果を有さなかった。このことは、MRX010投与が、先天性周辺免疫反応への重大な影響を示すと思われないことを実証している。
アミノ酸の血漿中濃度は、MRX010の慢性投与後に大きくは変化しなかった。新たに合成され得ず、食事において直接または食事の分解によって供給されなければならない9つの必須アミノ酸がある。これらには、バリン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、リジン、及びヒスチジンが含まれる。6つの他のアミノ酸は、ヒトの食事において条件付きで必須とみなされ、これらの合成が、特別な病態生理的条件下、例えば、幼児における低体重児、または重度の異化作用の苦悩にある個体において限定され得ることを意味している。これらの6のアミノ酸には、アルギニン、システイン、グリシン、グルタミン、プロリン、及びチロシンが含まれる。5つのアミノ酸は、ヒトにおいては不可欠ではなく、これらのアミノ酸が、体内において十分量で合成され得ることを意味している。これらの5つは、アラニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸及びセリンである。
しかし、プロリンのレベルは、MRX010投与後に減少しており、この細菌が、食事からの重要なアミノ酸の代謝において役割を果たし得ることを示唆している。
脳幹における神経伝達物質レベルは、慢性MRX010投与後に同じく変化せず、この生存生物学的製剤が、脳幹のレベルでモノアミンレベルによって支配される行動に負に影響しないことを示唆した。
最後に、炎症、内分泌及び神経伝達物質受容体についての中心遺伝子発現は、大部分が、慢性MRX010投与後に変化しなかった。扁桃体におけるNMDA受容体2B及びBDNF mRNA発現のみが増加したが、海馬または前頭葉前部皮質の変化はなかった。多くの他の結果と一緒にしたこれらのデータにより、この投薬レジメでのこの濃度におけるMRX010投与は、全身及び中枢の生理的事象に負の影響を及ぼさないことが確認される。翻訳の視点から、これらのデータは、この生存生物学的製剤が、最小の望ましくない副作用で高い寛容性プロファイルを有し得ることを示唆している。
配列
配列番号1(Enterococcus faecium 16S rRNA遺伝子、株LMG11423−AJ301830)
配列番号2(Enterococcus faecium株MRX010のコンセンサス16S rRNA配列)

配列番号3(Enterococcus faecium株DOの染色体配列)−電子配列表を参照されたい。
配列番号4(Enterococcus faecium株DOのプラスミド1配列)−電子配列表を参照されたい。
配列番号5(Enterococcus faecium株DOのプラスミド2配列)−電子配列表を参照されたい。
配列番号6(Enterococcus faecium株DOのプラスミド3配列)−電子配列表を参照されたい。
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特に好ましい実施形態において、本発明は、中枢神経系障害または状態を処置または予防する方法における使用のための、受託番号NCIMB42487として寄託されている株を含む組成物を提供する。特に好ましい実施形態において、本発明は、神経発達障害または精神神経状態を処置または予防する方法における使用のための、受託番号NCIMB42487として寄託されている株を含む組成物を提供する。特に好ましい実施形態において、本発明は、自閉症スペクトラム障害、または好ましくは自閉症を処置または予防する方法における使用のための、受託番号NCIMB42487として寄託されている株を含む組成物を提供する。特に好ましい実施形態において、本発明は、特に、自閉症の処置において、常同、反復、強迫または不安行動を低減する方法における使用のための、受託番号NCIMB42487として寄託されている株を含む組成物を提供する。
すなわち本発明は以下に関する。
〔1〕中枢神経系障害または状態を処置もしくは予防する方法における使用のための、Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物。
〔2〕中枢神経系障害または状態が、微生物叢−腸−脳軸によって介在される、上記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕神経発達障害または精神神経状態を処置もしくは予防する方法における使用のための、上記〔1〕または〔2〕に記載の組成物。
〔4〕自閉症スペクトラム障害(ASD);小児発達障害;強迫神経症(OCD);大うつ病性障害;うつ病;季節性情動障害;不安障害;慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎);ストレス障害;心的外傷後ストレス障害;統合失調症スペクトラム障害;統合失調症;双極性障害;精神病;気分障害;認知症;アルツハイマー病;パーキンソン病;慢性疼痛;運動ニューロン疾患;ハンチントン病;ギラン−バレー症候群;及び髄膜炎;からなる群から選択される障害または状態を処置もしくは予防する方法における使用のための、上記〔1〕または〔2〕に記載の組成物。
〔5〕自閉症スペクトラム障害を処置または予防する方法における使用のための、上記〔1〕に記載の組成物。
〔6〕自閉症を低減または予防する方法における使用のための、上記〔5〕に記載の組成物。
〔7〕常同、反復、強迫、または不安行動を予防、低減、もしくは軽減する、上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の組成物。
〔8〕強迫神経症を処置または予防する方法における使用のための、上記〔1〕に記載の組成物。
〔9〕反復、強迫及び/または不安行動を予防、低減、もしくは軽減する、上記〔8〕に記載の組成物。
〔10〕大うつ病性障害を処置または予防する方法における使用のための、上記〔1〕に記載の組成物。
〔11〕急性大うつ病エピソード及び/または新しいエピソードの予防(再発予防)を処置または予防する、上記〔10〕に記載の組成物。
〔12〕穏やかな、中程度のまたは重度のMDDエピソードの発生を予防、低減、もしくは軽減する、上記〔10〕または〔11〕に記載の組成物。
〔13〕不安障害を処置または予防する方法における使用のための、上記〔1〕に記載の組成物。
〔14〕不安障害が、全般性不安障害(GAD);特定恐怖症;社会不安障害;分離不安障害;広場恐怖症;パニック障害及び/または選択的無言症である、上記〔13〕に記載の組成物。
〔15〕神経認知障害を処置または予防する方法における使用のための、上記〔1〕に記載の組成物。
〔16〕神経認知障害が、血管性認知症;アルツハイマー病及び血管性認知症の混合形態;レビー小体病;前頭側頭認知症;パーキンソン認知症;クロイツフェルト・ヤコブ病;ハンチントン病;及びウェルニッケ・コルサコフ症候群;である、上記〔15〕に記載の組成物。
〔17〕微生物叢−腸−脳軸を調節する方法における使用のための、上記〔1〕〜〔16〕のいずれかに記載の組成物。
〔18〕細菌株が、Enterococcus faeciumの細菌株の16s rRNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列を有する、上記〔1〕〜〔17〕のいずれかに記載の組成物。
〔19〕細菌株が、配列番号1または2と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列を有する、上記〔1〕〜〔18〕のいずれかに記載の組成物。
〔20〕細菌株が、配列番号2と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%もしくは99.9%同一である16s rRNA配列を有するか、または
配列番号2によって表される16s rRNA配列を有する、上記〔19〕に記載の組成物。
〔21〕経口投与用である、上記〔1〕〜〔20〕のいずれかに記載の組成物。
〔22〕1または2以上の薬学的に許容される賦形剤または担体を含む、上記〔1〕〜〔21〕のいずれかに記載の組成物。
〔23〕細菌株が、凍結乾燥されている、上記〔1〕〜〔22〕のいずれかに記載の組成物。
〔24〕細菌株が、生存しており、腸に部分的または全体的に定着することが可能である、上記〔1〕〜〔23〕のいずれかに記載の組成物。
〔25〕Enterococcus faeciumの単一株を含む、上記〔1〕〜〔24〕のいずれかに記載の組成物。
〔26〕微生物コンソーシアムの一部としてEnterococcus faecium細菌株を含む、上記〔1〕〜〔25〕のいずれかに記載の組成物。
〔27〕上記〔1〕〜〔10〕及び〔13〕〜〔17〕のいずれかに記載の使用のための、上記〔1〕〜〔26〕のいずれかに記載の組成物を含む食品。
〔28〕上記〔1〕〜〔10〕及び〔13〕〜〔17〕のいずれかに記載の使用のための、上記〔1〕〜〔26〕のいずれかに記載の組成物を含むワクチン組成物。
〔29〕中枢神経系障害または状態を処置もしくは予防する方法であって、Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物を、前記組成物を必要とする患者に投与することを含む、前記方法。
〔30〕上記〔1〕〜〔26〕のいずれかに記載の使用のための、受託番号NCIMB42487として寄託されているEnterococcus faecium株、またはその派生物の細胞。
〔31〕上記〔30〕に記載の使用のための、上記〔30〕に記載の細胞を含む組成物。
〔32〕薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、上記〔31〕に記載の組成物。

Claims (32)

  1. 中枢神経系障害または状態を処置もしくは予防する方法における使用のための、Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物。
  2. 中枢神経系障害または状態が、微生物叢−腸−脳軸によって介在される、請求項1に記載の組成物。
  3. 神経発達障害または精神神経状態を処置もしくは予防する方法における使用のための、請求項1または2に記載の組成物。
  4. 自閉症スペクトラム障害(ASD);小児発達障害;強迫神経症(OCD);大うつ病性障害;うつ病;季節性情動障害;不安障害;慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎);ストレス障害;心的外傷後ストレス障害;統合失調症スペクトラム障害;統合失調症;双極性障害;精神病;気分障害;認知症;アルツハイマー病;パーキンソン病;慢性疼痛;運動ニューロン疾患;ハンチントン病;ギラン−バレー症候群;及び髄膜炎;からなる群から選択される障害または状態を処置もしくは予防する方法における使用のための、請求項1または2に記載の組成物。
  5. 自閉症スペクトラム障害を処置または予防する方法における使用のための、請求項1に記載の組成物。
  6. 自閉症を低減または予防する方法における使用のための、請求項5に記載の組成物。
  7. 常同、反復、強迫、または不安行動を予防、低減、もしくは軽減する、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
  8. 強迫神経症を処置または予防する方法における使用のための、請求項1に記載の組成物。
  9. 反復、強迫及び/または不安行動を予防、低減、もしくは軽減する、請求項8に記載の組成物。
  10. 大うつ病性障害を処置または予防する方法における使用のための、請求項1に記載の組成物。
  11. 急性大うつ病エピソード及び/または新しいエピソードの予防(再発予防)を処置または予防する、請求項10に記載の組成物。
  12. 穏やかな、中程度のまたは重度のMDDエピソードの発生を予防、低減、もしくは軽減する、請求項10または11に記載の組成物。
  13. 不安障害を処置または予防する方法における使用のための、請求項1に記載の組成物。
  14. 不安障害が、全般性不安障害(GAD);特定恐怖症;社会不安障害;分離不安障害;広場恐怖症;パニック障害及び/または選択的無言症である、請求項13に記載の組成物。
  15. 神経認知障害を処置または予防する方法における使用のための、請求項1に記載の組成物。
  16. 神経認知障害が、血管性認知症;アルツハイマー病及び血管性認知症の混合形態;レビー小体病;前頭側頭認知症;パーキンソン認知症;クロイツフェルト・ヤコブ病;ハンチントン病;及びウェルニッケ・コルサコフ症候群;である、請求項15に記載の組成物。
  17. 微生物叢−腸−脳軸を調節する方法における使用のための、請求項1〜16のいずれかに記載の組成物。
  18. 細菌株が、Enterococcus faeciumの細菌株の16s rRNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列を有する、請求項1〜17のいずれかに記載の組成物。
  19. 細菌株が、配列番号1または2と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列を有する、請求項1〜18のいずれかに記載の組成物。
  20. 細菌株が、配列番号2と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%もしくは99.9%同一である16s rRNA配列を有するか、または
    配列番号2によって表される16s rRNA配列を有する、請求項19に記載の組成物。
  21. 経口投与用である、請求項1〜20のいずれかに記載の組成物。
  22. 1または2以上の薬学的に許容される賦形剤または担体を含む、請求項1〜21のいずれかに記載の組成物。
  23. 細菌株が、凍結乾燥されている、請求項1〜22のいずれかに記載の組成物。
  24. 細菌株が、生存しており、腸に部分的または全体的に定着することが可能である、請求項1〜23のいずれかに記載の組成物。
  25. Enterococcus faeciumの単一株を含む、請求項1〜24のいずれかに記載の組成物。
  26. 微生物コンソーシアムの一部としてEnterococcus faecium細菌株を含む、請求項1〜25のいずれかに記載の組成物。
  27. 請求項1〜10及び13〜17のいずれかに記載の使用のための、請求項1〜26のいずれかに記載の組成物を含む食品。
  28. 請求項1〜10及び13〜17のいずれかに記載の使用のための、請求項1〜26のいずれかに記載の組成物を含むワクチン組成物。
  29. 中枢神経系障害または状態を処置もしくは予防する方法であって、Enterococcus faecium種の細菌株を含む組成物を、前記組成物を必要とする患者に投与することを含む、前記方法。
  30. 請求項1〜26のいずれかに記載の使用のための、受託番号NCIMB42487として寄託されているEnterococcus faecium株、またはその派生物の細胞。
  31. 請求項30に記載の使用のための、請求項30に記載の細胞を含む組成物。
  32. 薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、請求項31に記載の組成物。
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