(発明の詳細な説明)
(定義)
別途説明されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び化学的用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。分子生物学における一般的な用語の定義は、Benjamin Lewinの文献、遺伝子V(Genes V)、Oxford University Press刊、1994(ISBN 0-19-854287-9); Kendrewら(編)、分子生物学の百科事典(The Encyclopedia of Molecular Biology)、Blackwell Science Ltd.刊、1994(ISBN 0-632-02182-9);及びRobert A. Meyers(編)、分子生物学及びバイオテクノロジー:包括的卓上参考書(Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference)、VCH Publishers社刊、1995(ISBN 1-56081-569-8)に見出すことができる。本明細書に記載されるものと同様又は同等の任意の方法及び材料を本発明の試験の実施において使用することができるが、典型的な材料及び方法が本明細書に記載されている。本発明の説明及び特許請求において、以下の専門用語を使用することにする。
本明細書で使用される専門用語は、特定の態様を説明することだけを目的とし、限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。
本出願の範囲を理解する上で、冠詞の「a」、「an」、「the」、及び「said」は、要素の1つ又は複数が存在することを意味することが意図される。
さらに、本明細書で使用される「含む(comprising)」という用語及びその派生語は、記述された特徴、要素、成分、群、整数、及び/又は工程の存在を指定するが、他の記述されていない特徴、要素、成分、群、整数、及び/又は工程の存在を除外しないオープンエンドの用語であることが意図される。上述のことは、同様の意味を有する語、例えば、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、及びこれらの派生語にも当てはまる。
ある成分を「含む」と記載される態様はいずれも、「からなる」又は「から本質的になる」ことができ、ここで、「からなる」は、クローズエンドの又は制限的な意味を有し、「から本質的になる」は、指定された成分を含むが、不純物として存在する材料、該成分を提供するために使用されるプロセスの結果として存在する回避できない材料、及び本発明の技術的効果を達成すること以外の目的のために添加される成分を除く他の成分を除外することを意味する。例えば、「から本質的になる」という語句を用いて定義される組成物は、任意の既知の医薬として許容し得る添加剤、賦形剤、希釈剤、担体などを包含する。典型的には、1セットの成分から本質的になる組成物は、5重量%未満、典型的には3重量%未満、より典型的には1重量%未満の指定されていない成分を含む。
含まれていると本明細書で定義される成分はいずれも、但し書き又は消極的限定として請求される発明から明示的に除外され得ることが理解される。さらに、本明細書で与えられる全ての範囲は、明示的に記述されているかどうかに関係なく、該範囲の終端、そしてまた、任意の中間範囲点を含む。
本明細書で使用される「実質的に」、「約(about)」、及び「約(approximately)」などの程度に関する用語は、最終結果が有意には変化しないような修飾された用語の妥当な偏差量を意味する。これらの用語は、例えば、量、期間などの測定可能な値を指すことができ、指定された値からの±20%又は±10%、より典型的には±5%、一層より典型的には±1%、さらにより典型的には±0.1%のばらつきが、開示された方法を実施するのに適しているので、そのようなばらつきを包含することが意図される。
本明細書で使用される「活性化」は、検出可能な細胞性増殖を誘導するために十分に刺激されている免疫細胞、例えば、CIK細胞又はT細胞の状態を指す。活性化は、サイトカイン産生の誘導、及び検出可能なエフェクター機能とも関連し得る。「活性化T細胞」という用語は、とりわけ、細胞***を経ているT細胞を指す。
核酸又はポリペプチドに対して与えられる、全ての塩基サイズ又はアミノ酸サイズ、及び全ての分子量又は分子質量値は近似値であり、かつ説明のために提供されることがさらに理解される。本明細書に記載されるものと同様又は同等の方法及び材料を本開示の実施又は試験において使用することができるが、好適な方法及び材料が以下で記載されている。「例えば(e.g.)」という略語は、ラテン語の例えば(exempli gratia)に由来し、非限定的な例を示すために本明細書で使用される。したがって、「例えば(e.g.)」という略語は、「例えば(for example)」という用語と同義である。文脈上、別途明確に示されない限り、「又は」という語は、「及び」を含むことが意図される。
本明細書で使用される、当技術分野で「免疫グロブリン」(Ig)とも呼ばれる、「抗体」という用語は、対になった重ポリペプチド鎖と軽ポリペプチド鎖から構築されるタンパク質を指し; IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMを含む、様々なIgアイソタイプが存在する。抗体が正確にフォールディングされると、各々の鎖は、より線状のポリペプチド配列によって接続されたいくつかの異なる球状ドメインへとフォールディングする。例えば、免疫グロブリン軽鎖は、可変(VL)及び定常(CL)ドメインへとフォールディングし、一方、重鎖は、可変(VH)及び3つの定常(CH、CH2、CH3)ドメインへとフォールディングする。重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメイン(VHとVL)の相互作用は、抗原結合領域(Fv)の形成をもたらす。各々のドメインは、当業者によく知られている十分に確立された構造を有する。
軽鎖及び重鎖可変領域は標的抗原との結合に関与し、それゆえ、抗体間で顕著な配列多様性を示すことができる。定常領域は、より少ない配列多様性を示し、重要な免疫学的事象を誘発するいくつかの天然タンパク質との結合に関与する。抗体の可変領域は分子の抗原結合決定基を含有し、したがって、その標的抗原に対する抗体の特異性を決定する。配列可変性の大部分は可変重鎖及び軽鎖1つ当たり3つずつの6つの超可変領域で生じ;該超可変領域が組み合わさって、抗原結合部位を形成し、抗原性決定基の結合及び認識に寄与する。その抗原に対する抗体の特異性及び親和性は、超可変領域の構造、並びにそのサイズ、形状、及びそれが抗原に提示する表面の化学的性質によって決定される。超可変領域の同定のための様々なスキームが存在し、2つの最も一般的なものは、KabatのスキームとChothia及びLeskのスキームである。Kabatらの文献(1991a;1991b)は、VH及びVLドメインの抗原結合領域における配列可変性に基づいて「相補性決定領域」(CDR)を定義している。Chothia及びLeskの文献(1987)は、VH及びVLドメイン中の構造ループ領域の位置に基づいて「超可変ループ」(H又はL)を定義している。これらの個々のスキームは、隣接しているか又は重なり合っているCDR及び超可変ループ領域を定義しているので、抗体分野の専門家は、「CDR」及び「超可変ループ」という用語を互換的に使用することが多く、かつこれらの用語は、本明細書でそのように使用することができる。この理由から、抗原結合部位を形成する領域は、VH及びVLドメインを含む抗体の場合、CDR L1、CDR L2、CDR L3、CDR H1、CDR H2、CDR H3と呼ばれ;又は重鎖もしくは軽鎖のいずれかの抗原結合領域の場合、CDR1、CDR2、CDR3と呼ばれる。CDR/ループは、可変ドメインの比較を容易にするために開発されたIMGT付番体系に準拠して、本明細書で言及されている(Lefrancらの文献、2003)。この体系では、保存されたアミノ酸(例えば、Cys23、Trp41、Cys 104、Phe/Trp 118、及び位置89の疎水性残基)は、常に同じ位置を有する。さらに、フレームワーク領域(FR1:位置1〜26; FR2: 39〜55; FR3: 66〜104;及びFR4: 118〜128)並びにCDR(CDR1: 27〜38、CDR2: 56〜65;及びCDR3: 105〜117)の標準化された境界が提供されている。
本明細書で言及される「抗体断片」は、当技術分野で公知の任意の好適な抗原結合抗体断片を含み得る。抗体断片は、天然に存在する抗体断片であってもよいし、又は天然に存在する抗体の操作によってもしくは組換え法の使用によって得られてもよい。例えば、抗体断片は、Fv、単鎖Fv(scFv;ペプチドリンカーで接続されたVLとVHからなる分子)、Fab、F(ab')2、単一ドメイン抗体(sdAb;単一のVL又はVHから構成される断片)、及びこれらのいずれかの多価提示を挙げることができるが、これらに限定されない。配列番号2〜30のいずれか1つの抗体断片は、VEGFR-2に結合する生物学的活性を保持することが当業者によって理解されるものである。
本明細書で使用される「合成抗体」という用語は、例えば、本明細書に記載されるバクテリオファージによって発現される抗体などの、組換えDNA技術を用いて作製される抗体を意味する。この用語はまた、抗体をコードするDNA分子の合成によって作製され、かつこのDNA分子が、抗体タンパク質、又は抗体を指定するアミノ酸配列を発現させ、ここで、このDNA配列又はアミノ酸配列が、当技術分野で利用可能でありかつ周知である合成DNA又はアミノ酸配列技術を用いて得られたものである、抗体を意味するものと解釈されるべきである。
非限定的な例において、抗体断片は、天然に存在する源に由来するsdAbであってもよい。ラクダ科動物起源の重鎖抗体(Hamers-Castermanらの文献、1993)は軽鎖を欠いており、したがって、その抗原結合部位は、VHHと呼ばれる1つのドメインからなる。sdAbは、サメでも認められており、VNARと呼ばれる(Nuttallらの文献、2003)。他のsdAbは、ヒトIg重鎖及び軽鎖配列に基づいて人工的に作製することができる(Jespersらの文献、2004; Toらの文献、2005)。本明細書で使用される場合、「sdAb」という用語は、任意の起源のVH、VHH、VL、又はVNARリザーバーからファージディスプレイ又は他の技術によって直接単離されたsdAb、前述のsdAbから誘導されたsdAb、組換え産生されたsdAb、及びヒト化、親和性成熟、安定化、可溶化、例えば、ラクダ化、又は他の抗体エンジニアリングの方法によるそのようなsdAbのさらなる修飾によって作製されたsdAbを含む。また本発明によって包含されるのは、sdAbの抗原結合機能及び特異性を保持するホモログ、誘導体、又は断片である。
sdAbは、高い熱安定性、高い洗剤耐性、比較的高いプロテアーゼ耐性(Dumoulinらの文献、2002)、及び高い生産収率(Arbabi-Ghahroudiらの文献、1997)を有し;これは、免疫ライブラリーからの単離によって(Liらの文献、2009)又はインビトロ親和性成熟(Davies及びRiechmannの文献、1996)によって、非常に高い親和性を有するように改変することもできる。
当業者であれば、単一ドメイン抗体の構造に精通しているであろう(例えば、Protein Data Bankの3DWT、2P42を参照)。sdAbは、免疫グロブリンフォールドを保持する単一の免疫グロブリンドメインを含み;中でも特に、わずか3つのCDRで抗原結合部位を形成する。しかしながら、当業者によって理解されるように、全てのCDRが抗原との結合に必要とされ得るわけではない。例えば、限定することを望むものではないが、CDRのうちの1つ、2つ、又は3つが、本発明のsdAbによる抗原の結合及び認識に寄与し得る。sdAb又は可変ドメインのCDRは、本明細書では、CDR1、CDR2、及びCDR3と呼ばれ、Kabatらの文献(1991b)によって定義されている通りに付番されている。
エピトープ:抗原決定基。エピトープは、抗原性である、すなわち、特異的な免疫応答を誘発する分子上の特定の化学基又はペプチド配列である。抗体は、例えば、ポリペプチド上の特定の抗原性エピトープに特異的に結合する。エピトープは、隣接するアミノ酸又はタンパク質の三次フォールディングによって並置される隣接していないアミノ酸の両方から形成されることができる。隣接するアミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒に曝露したときに保持されるが、三次フォールディングによって形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒で処理したときに消失する。エピトープは、固有の空間的配座において、典型的には、少なくとも3つ、より普通には、少なくとも5つ、約9つ、又は8〜10のアミノ酸を含む。エピトープの空間的配座を決定する方法としては、例えば、x線結晶構造解析及び2次元核磁気共鳴が挙げられる。例えば、分子生物学の方法(Methods in Molecular Biology)、第66巻、Glenn E. Morris編(1996)所収の「エピトープマッピングプロトコル(Epitope Mapping Protocols)」を参照されたい。一実施態様において、エピトープは、HLA分子又はDR分子などのMHC分子に結合する。これらの分子は、正確なアンカーアミノ酸が約8〜約10アミノ酸、例えば、9アミノ酸だけ隔てられたペプチドに結合する。
本明細書で使用される「抗原」又は「Ag」という用語は、免疫応答を誘発する分子と定義される。この免疫応答は、抗体産生、もしくは特異的な免疫適格細胞の活性化のいずれか、又はその両方を伴い得る。当業者は、ほとんど全てのタンパク質又はペプチドを含む、任意の高分子が抗原としての役割を果たし得ることを理解するであろう。さらに、抗原は、組換え又はゲノムDNAから得ることができる。当業者は、この用語が本明細書で使用される場合、免疫応答を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列又は部分的なヌクレオチド配列を含む任意のDNAが、それゆえ、「抗原」をコードすることを理解するであろう。さらに、当業者は、抗原が遺伝子の全長ヌクレオチド配列によってのみコードされる必要がないことを理解するであろう。本発明が、限定されないが、複数の遺伝子の部分的なヌクレオチド配列の使用を含むこと、及びこれらのヌクレオチド配列が様々な組合せで配置されて、所望の免疫応答を誘発することはすぐに明らかである。さらに、当業者は、抗原が「遺伝子」によってコードされる必要が全くないことを理解するであろう。抗原は、合成することができるか、又は生物学的試料から得ることができることはすぐに明らかである。そのような生物学的試料としては、組織試料、腫瘍試料、細胞、又は生体液を挙げることができるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される「抗腫瘍効果」又は「癌の治療」という用語は、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞数の減少、腫瘍成長速度の減少、転移数の減少、疾患の安定化、平均余命の増加、又は癌性状態と関連する様々な生理的症状の改善によって表すことができる生物学的効果を指す。「抗腫瘍効果」は、第一に腫瘍の発生の予防における本明細書に記載されるペプチド、ポリヌクレオチド、細胞、及び抗体の能力によって表すこともできる。
「自己抗原」という用語は、本発明によれば、免疫系によって外来のものであると誤って認識される任意の自己抗原を意味する。自己抗原は、細胞タンパク質、リン酸化タンパク質、細胞表面タンパク質、細胞脂質、核酸、細胞表面受容体を含む糖タンパク質を含むが、これらに限定されない。
本明細書で使用される場合、「自己」という用語は、後に個体に再導入されることになる同じ個体由来の任意の材料を指すことが意図される。
「同種異系」は、同じ種の異なる動物に由来する移植片を指す。
「異種」は、異なる種に由来する移植片を指す。
「同系」は、同一の個体に由来する移植片を指す。
「共刺激リガンド」は、この用語が本明細書で使用される場合、T細胞上の同族の共刺激分子に特異的に結合し、それにより、例えば、TCR/CD3複合体とペプチドがローディングされたMHC分子との結合によって提供される一次シグナルに加えて、限定されないが、増殖、活性化、分化などを含む、T細胞応答を媒介するシグナルを提供する、抗原提示細胞(例えば、APC、樹状細胞、B細胞など)上の分子を含む。共刺激リガンドとしては、CD7、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、PD-L1、PD-L2、4-1BBL、OX40L、誘導性共刺激リガンド(ICOS-L)、細胞内接着分子(ICAM)、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA-G、MICA、MICB、HVEM、リンホトキシンβ受容体、3/TR6、ILT3、ILT4、HVEM、Tollリガンド受容体に結合するアゴニスト又は抗体、及びB7-H3と特異的に結合するリガンドを挙げることができるが、これらに限定されない。共刺激リガンドは、とりわけ、T細胞上に存在する共刺激分子、例えば、限定されないが、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3と特異的に結合する抗体、及びCD83と特異的に結合するリガンドも包含する。
「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合し、それにより、限定されないが、増殖などの、T細胞による共刺激応答を媒介するT細胞上の同族の結合パートナーを指す。共刺激分子としては、MHCクラスI分子、BTLA、及びTollリガンド受容体が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される「共刺激シグナル」は、TCR/CD3ライゲーションなどの一次シグナルとの組合せで、T細胞増殖及び/又は鍵分子の上方調節もしくは下方調節をもたらすシグナルを指す。
本明細書で使用される「有効量」は、治療的又は予防的利益をもたらす量を意味する。
「コードする」は、規定のヌクレオチド(例えば、rRNA、tRNA、及びmRNA)配列又は規定のアミノ酸配列のいずれかを有する、生物学的プロセスにおいて他のポリマー及び高分子の合成のための鋳型として機能する、遺伝子、cDNA、又はmRNAなどのポリヌクレオチド中の特定のヌクレオチド配列の固有の特性、並びにそれから生じる生物学的特性を指す。したがって、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳が細胞又は他の生物学的システムにおいてタンパク質を産生する場合、タンパク質をコードする。そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、かつ通常、配列表に提供されるコード鎖と、遺伝子又はcDNAの転写のための鋳型として使用される非コード鎖の両方を、タンパク質又はその遺伝子又はcDNAの他の産物をコードしていると言うことができる。
本明細書で使用される場合、「内在性」は、生物、細胞、組織、もしくはシステムの内部に由来するか、又はこれらの内部で産生される任意の材料を指す。
本明細書で使用される場合、「外因性」という用語は、生物、細胞、組織、もしくはシステムの外部から導入されるか、又はこれらの外部で産生される任意の材料を指す。
本明細書で使用される「発現」という用語は、そのプロモーターによって駆動される特定のヌクレオチド配列の転写及び/又は翻訳と定義される。
「発現ベクター」は、発現されることになるヌクレオチド配列と機能的に連結された発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現ための十分なシス作用エレメントを含み;発現のための他のエレメントは、宿主細胞によって又はインビトロ発現系で供給されることができる。発現ベクターとしては、組換えポリヌクレオチドを組み込む、当技術分野で公知の全てのもの、例えば、コスミド、プラスミド(例えば、裸のもの又はリポソームに含まれるもの)、並びにウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)が挙げられる。
「相同」は、2つのポリペプチド間又は2つの核酸分子間の配列類似性又は配列同一性を指す。2つの比較される配列の両方における位置が同じ塩基又はアミノ酸モノマーサブユニットによって占められている場合、例えば、2つのDNA分子の各々の位置がアデニンによって占められている場合、これらの分子はその位置において相同である。2つの配列間の相同性のパーセントは、この2つの配列によって共有される一致する又は相同な位置の数を比較される位置の数で除したものに100を乗じる関数である。例えば、2つの配列中の10個の位置のうちの6個の位置が一致するか又は相同である場合、この2つの配列は60%相同である。例として、DNA配列
は50%の相同性を共有する。通常、比較は、2つの配列が最大の相同性を生じるように整列されたときに行われる。
「単離された」は、天然の状態から改変されたか又は取り出されたことを意味する。例えば、生きている動物中に天然に存在する核酸又はペプチドは、「単離された」ものではないが、その天然の状態の共存する材料から部分的に又は完全に分離された同じ核酸又はペプチドは、「単離された」ものである。単離された核酸又はタンパク質は、実質的に精製された形態で存在することができるか、又は例えば、宿主細胞などの非天然の環境中に存在することができる。
本発明との関連において、普通に存在する核酸塩基に対する以下の略語が使用される。「A」はアデノシンを指し、「C」はシトシンを指し、「G」はグアノシンを指し、「T」はチミジンを指し、「U」はウリジンを指す。
別途規定されない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いの縮重バージョンである全てのヌクレオチド配列及び同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列を含む。タンパク質又はRNAをコードするヌクレオチド配列という語句は、該タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、あるバージョンにおいて、イントロンを含有し得る限り、イントロンも含み得る。
本明細書で使用される「レンチウイルス」は、レトロウイルス科(Retroviridae)ファミリーの属を指す。レンチウイルスは、非***細胞に感染することができるという点において、レトロウイルスの間でも独特であり;それは、宿主細胞のDNAにかなりの量の遺伝情報を送達することができるので、遺伝子送達ベクターの最も効率的な方法のうちの1つである。HIV、SIV、及びFIVが、レンチウイルスの全ての例である。レンチウイルスに由来するベクターは、インビボで顕著な遺伝子移入レベルを達成する手段を提供する。
「トランスポゾン」又は「転移因子」は、ゲノム内でのその位置を変化させ、時に、突然変異を作出し又は復帰させ、かつ細胞のゲノムサイズを変化させることができるDNA配列である。転移は、多くの場合、トランスポゾンの重複をもたらす。2つの異なるタイプのトランスポゾンがあり:クラスIIトランスポゾンは、直接あちこち移動するDNAからなり;クラスIトランスポゾンは、まずDNAをRNAに転写し、その後、逆転写酵素を用いて、該RNAのDNAコピーを作製して、新しい場所に挿入するレトロトランスポゾンである。トランスポゾンは、典型的には、トランスポゾンの移動を媒介するトランスポザーゼと相互作用する。トランスポゾン/トランスポザーゼシステムの非限定的な例としては、スリーピングビューティー(Sleeping Beauty)、ピギーバック(Piggybac)、フロッグプリンス(Frog Prince)、及びプリンスチャーミング(Prince Charming)が挙げられる。
本明細書で使用される「調節する」という用語は、治療もしくは化合物の非存在下での対象における応答のレベルと比較した、及び/又はその他の点は同一であるが、治療を受けていない対象における応答のレベルと比較した、対象における応答のレベルの検出可能な増加又は減少を媒介することを意味する。この用語は、天然のシグナルもしくは応答を混乱させ、かつ/又は天然のシグナルもしくは応答に影響を及ぼし、それにより、対象、典型的には、ヒトにおける有益な治療的応答を媒介することを包含する。
「機能的に連結された」という用語は、異種核酸配列の発現をもたらす調節配列と異種核酸配列の間の機能的な連結を指す。例えば、第一の核酸配列が第二の核酸配列と機能的な関係に置かれているとき、該第一の核酸配列は、該第二の核酸配列と機能的に連結されている。例えば、プロモーターがコード配列の転写又は発現に影響を及ぼす場合、該プロモーターは、該コード配列と機能的に連結されている。通常、機能的に連結されたDNA配列は隣接しており、2つのタンパク質コード領域を繋ぐ必要がある場合、同じリーディングフレーム中にある。
「過剰発現された」腫瘍抗原又は腫瘍抗原の「過剰発現」という用語は、患者の特定の組織又は器官由来の正常な細胞における発現のレベルと比べた、その組織又は器官内の固形腫瘍のような疾患領域由来の細胞における腫瘍抗原の異常な発現のレベルを示すことが意図される。腫瘍抗原の過剰発現を特徴とする固形腫瘍又は血液悪性腫瘍を有する患者は、当技術分野で公知の標準的なアッセイによって決定することができる。
免疫原性組成物の「非経口」投与には、例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、もしくは胸骨内注射、又は点滴法が含まれる。
本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドの鎖と定義される。さらに、核酸は、ヌクレオチドのポリマーである。したがって、本明細書で使用される核酸及びポリヌクレオチドは互換的なものである。当業者は、核酸がポリヌクレオチドであり、このポリヌクレオチドを加水分解して、モノマーの「ヌクレオチド」にすることができるという一般的な知識を有している。モノマーのヌクレオチドを加水分解して、ヌクレオシドにすることができる。本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドには、限定されないが、組換え手段、すなわち、通常のクローニング技術及びPCRなどを用いる組換えライブラリー又は細胞ゲノムからの核酸配列のクローニング、並びに合成手段によるものを含む、当技術分野で利用可能な任意の手段によって得られる全ての核酸配列が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、互換的に使用されており、ペプチド結合によって共有結合したアミノ酸残基から構成される化合物を指す。タンパク質又はペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含有しなければならず、かつタンパク質又はペプチドの配列を含むことができるアミノ酸の最大数に制限は置かれない。ポリペプチドには、ペプチド結合によって互いに接続された2以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又はタンパク質が含まれる。本明細書で使用される場合、この用語は、一般に、当技術分野において、例えば、ペプチド、オリゴペプチド、及びオリゴマーとも呼ばれている短い鎖と、一般に、当技術分野において、多くの種類がある、タンパク質と呼ばれている長い鎖の両方を指す。「ポリペプチド」には、とりわけ、例えば、生物学的に活性のある断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドの変異体、修飾ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドには、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、又はこれらの組合せが含まれる。
本明細書で使用される「プロモーター」という用語は、ポリヌクレオチド配列の特異的な転写を開始するために必要とされる、細胞の合成装置、又は導入された合成装置によって認識されるDNA配列と定義される。
本明細書で使用される場合、「プロモーター/調節配列」という用語は、プロモーター/調節配列に機能的に連結された遺伝子産物の発現に必要とされる核酸配列を意味する。ある場合には、この配列は、コアプロモーター配列であることができ、他の場合には、この配列は、エンハンサー配列及び遺伝子産物の発現に必要とされる他の調節エレメントを含むこともできる。プロモーター/調節配列は、例えば、遺伝子産物を組織特異的な様式で発現させるものであることができる。
「構成的」プロモーターは、遺伝子産物をコード又は指定するポリヌクレオチドと機能的に連結された場合、細胞のほとんど又は全ての生理的条件下で、該遺伝子産物を細胞内で産生させるヌクレオチド配列である。
「誘導性」プロモーターは、遺伝子産物をコード又は指定するポリヌクレオチドと機能的に連結された場合、実質的には、プロモーターに対応する誘導因子が細胞内に存在する場合にのみ、該遺伝子産物を細胞内で産生させるヌクレオチド配列である。
「組織特異的」プロモーターは、遺伝子によってコード又は指定されるポリヌクレオチドと機能的に連結された場合、実質的には、細胞がプロモーターに対応する組織型の細胞である場合にのみ、該遺伝子産物を細胞内で産生させるヌクレオチド配列である。
抗体に関して本明細書で使用される「特異的に結合する」という用語は、特異的抗原を認識するが、試料中の他の分子を実質的に認識することも、それに結合することもない抗体を意味する。例えば、1つの種に由来する抗原に特異的に結合する抗体は、1以上の種に由来するその抗原にも結合し得る。しかし、そのような異種間反応性は、特異的とする抗体の分類をそれ自体で変更するものではない。別の例において、抗原に特異的に結合する抗体は、該抗原の異なるアレル形態にも結合し得る。しかしながら、そのような交差反応性は、特異的とする抗体の分類をそれ自体で変更するものではない。場合により、「特異的結合」又は「特異的に結合する」という用語を、抗体、タンパク質、又はペプチドと第二の化学種との相互作用に関して用いて、該相互作用が、化学種上の特定の構造(例えば、抗原性決定基又はエピトープ)の存在に依存し;例えば、抗体が、タンパク質全体ではなく、特異的なタンパク質構造を認識し、それに結合することを意味することができる。抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、標識された「A」と抗体とを含有する反応におけるエピトープA(又は遊離の標識されていないA)を含有する分子の存在は、該抗体に結合した標識されたAの量を低下させることになる。
「エピトープ」という用語は、抗体に特異的に結合することができるタンパク質決定基を意味する。エピトープは、通常、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性のある表面基(surface grouping)からなり、かつ通常、特異的な三次元構造特徴、及び特異的な電荷特徴を有する。立体構造エピトープと非立体構造エピトープは、後者に対する結合ではなく、前者に対する結合が変性溶媒の存在下で失われるという点において区別される。
「刺激」という用語は、刺激分子(例えば、TCR/CD3複合体)とその同族リガンドとの結合によって誘導され、それにより、限定されないが、TCR/CD3複合体を介するシグナル伝達などのシグナル伝達事象を媒介する、一次応答を意味する。刺激は、特定の分子の発現の変化、例えば、TGF-βの下方調節、及び/又は細胞骨格構造の再組織化などを媒介することができる。
「刺激分子」は、この用語が本明細書で使用される場合、抗原提示細胞上に存在する同族の刺激リガンドと特異的に結合するT細胞上の分子を意味する。
本明細書で使用される「刺激リガンド」は、抗原提示細胞(例えば、aAPC、樹状細胞、B細胞など)上に存在するとき、T細胞上の同族の結合パートナー(本明細書では「刺激分子」と呼ばれる)と特異的に結合し、それにより、限定されないが、活性化、免疫応答の開始、増殖などを含む、T細胞による一次応答を媒介することができる、リガンドを意味する。刺激リガンドは当技術分野で周知であり、とりわけ、ペプチドをローディングしたMHCクラスI分子、抗CD3抗体、超アゴニスト抗CD28抗体、及び超アゴニスト抗CD2抗体を包含する。
本明細書で使用される場合、「実質的に純化された」細胞は、他の細胞型を本質的に含まない細胞である。実質的に純化された細胞は、それがその天然に存在する状態で通常関連している他の細胞型から分離されている細胞も指す。いくつかの場合において、実質的に純化された細胞の集団は、均質な細胞集団を指す。他の場合において、この用語は、単に、それがその天然の状態で天然に関連している細胞から分離されている細胞を指す。いくつかの態様において、該細胞は、インビトロで培養される。他の態様において、該細胞は、インビトロで培養されない。
本明細書で使用される場合、「治療」又は「療法」は、有益な又は所望の臨床結果を得るための手法である。本明細書に記載される目的のために、有益な又は所望の臨床結果には、検出可能か、検出不可能かを問わず、症状の軽減、疾患の度合いの縮小、疾患の安定化した(すなわち、悪化していない)状態、疾患進行の遅延又は減速、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解(部分的であるか、全体的であるかを問わない)が含まれるが、これらに限定されない。「治療」及び「療法」は、治療又は療法を受けていない場合の予想される生存と比較したときの生存の延長を意味することもできる。したがって、「治療」又は「療法」は、障害の病状を変化させる意図を持って行われる介入である。具体的には、治療又は療法は、癌などの疾患もしくは障害の病状を直接予防し、緩徐化し、又はそれ以外の形で減少させることができるか、或いは細胞を他の治療剤による治療又は療法の影響を受けやすい状態にすることができる。
「治療有効量」、「有効量」、又は「十分量」という用語は、哺乳動物を含む、対象、例えば、ヒトに投与されたとき、所望の結果を達成するのに十分な分量、例えば、癌を治療するのに有効な量を意味する。本明細書に記載される化合物の有効量は、対象の疾患状態、年齢、性別、及び体重などの要因によって異なり得る。当業者によって理解されるように、投薬量又は治療レジメンは、最適な治療応答を提供するように調整することができる。例えば、抗VEGFR-2 sdAbの治療有効量の投与は、ある態様において、腫瘍の進行又は転移と関連する血管の形成を低下させ、阻害し、又は妨害するのに十分である。
さらに、治療有効量を用いる対象の治療レジメンは、1回の投与からなるか、又はその代わりに、一連の適用を含むことができる。治療期間の長さは、疾患の重症度、対象の年齢、薬剤の濃度、薬剤に対する患者の応答性、又はこれらの組合せなどの、種々の要因によって決まる。治療に使用される薬剤の有効投薬量が特定の治療体制の過程で増減し得ることも理解されるであろう。投薬量の変化が起こり、当技術分野で公知の標準的な診断アッセイによって明らかになり得る。本明細書に記載される抗体は、ある態様において、問題になっている疾患又は障害、例えば、癌に対する従来の療法の前、その間、又はその後に投与することができる。
本明細書で使用される「トランスフェクトされた」又は「形質転換された」又は「形質導入された」という用語は、外因性核酸が宿主細胞に移入又は導入されるプロセスを指す。「トランスフェクトされた」又は「形質転換された」又は「形質導入された」細胞は、外因性核酸をトランスフェクトされたか、形質転換されたか、又は形質導入された細胞である。該細胞には、初代対象細胞及びその子孫が含まれる。
本明細書で使用される「転写制御下」又は「機能的に連結された」という語句は、プロモーターが、RNAポリメラーゼによる転写の開始及びポリヌクレオチドの発現を制御するために、ポリヌクレオチドとの関連において正確な場所及び配向にあることを意味する。
「ベクター」は、単離された核酸を含む物質及び単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用することができる物質の組成物である。数々のベクターが当技術分野で公知であり、これには、線状ポリヌクレオチド、イオン性又は両親媒性化合物と関連したポリヌクレオチド、プラスミド、及びウイルスが含まれるが、これらに限定されない。したがって、「ベクター」という用語には、自律複製するプラスミド又はウイルスが含まれる。この用語は、例えば、ポリリジン化合物、リポソームなどの、細胞内への核酸の移入を容易にする非プラスミド及び非ウイルス化合物を含むように解釈されるべきでもある。ウイルスベクターの例としては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが挙げられるが、これらに限定されない。
「患者」、「対象」、「個体」などの用語は、本明細書で互換的に使用されており、インビトロのものであるか、又はインサイチュのものであるかを問わず、本明細書に記載される方法に適した、任意の動物、又はその細胞を指す。
さらに、「患者」、「対象」、及び「個体」という用語は、免疫応答を誘発させることができる生きた生物(例えば、哺乳動物)を含む。ある非限定的な態様において、患者、対象、又は個体は、哺乳動物であり、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、及びこれらのトランスジェニック種を含む。本明細書で使用される「対象」という用語は、動物界の任意のメンバー、典型的には、哺乳動物を指す。「哺乳動物」という用語は、哺乳動物に分類される任意の動物を指し、これには、ヒト、他の高等霊長類、家畜及び農用動物、並びに動物園の動物、スポーツ用動物、又はペット動物、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどが含まれる。典型的には、哺乳動物は、ヒトである。
1以上のさらなる治療剤「と組み合わせた」投与には、同時(並行)投与及び任意の順序での連続した投与が含まれる。
「医薬として許容し得る」という用語は、化合物又は化合物の組合せが医薬として使用するための製剤の残りの成分と適合すること、及び米国食品医薬品局(United States Food and Drug Administration)によって公布されたものを含む、確立された政府標準に準拠してヒトに投与するのに一般に安全であることを意味する。
「医薬として許容し得る担体」という用語は、溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、及び/又は吸収遅延剤などを含むが、これらに限定されない。医薬として許容し得る担体の使用は周知である。
単離された:「単離された」生物学的成分(例えば、タンパク質)は、該成分が天然に生じる生物の細胞内の他の生物学的成分、すなわち、染色体及び染色体外のDNA及びRNA、他のタンパク質、並びにオルガネラから実質的に分離されているか又は精製されている。「単離された」タンパク質及びペプチドには、標準的な精製法によって精製されたタンパク質及びペプチドが含まれる。この用語は、宿主細胞内での組換え発現によって調製されたタンパク質及びペプチド、並びに化学合成されたタンパク質及びペプチドも含む。
本明細書で使用される「腫瘍」は、悪性か良性かを問わず、全ての新生物性細胞の成長及び増殖、並びに全ての前癌性及び癌性の細胞及び組織を指す。
「癌」及び「癌性」という用語は、典型的には、無調節な細胞成長を特徴とする哺乳動物の生理的状態を指し、又は該生理的状態を説明するものである。本明細書で使用される場合、癌又は癌性は、異常な細胞の急速かつ無制御な成長を特徴とする疾患と定義される。癌細胞は、局所的に又は血流及びリンパ系を通って身体の他の部分に広がることができる。様々な癌の例としては、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌、膵癌、結腸直腸癌、腎臓癌、肝臓癌、脳腫瘍、リンパ腫、白血病、肺癌などが挙げられるが、これらに限定されない。
治療されることになる癌は、任意のタイプの悪性腫瘍であってもよく、ある態様において、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌(例えば、腺癌)を含む肺癌、膵癌、結腸癌(例えば、結腸直腸癌、例えば、結腸腺癌及び結腸腺腫など)、食道癌、口腔扁平上皮癌、舌癌、胃癌、肝臓癌、鼻咽頭癌、リンパ系の血液腫瘍(例えば、急性リンパ球性白血病、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫)、非ホジキンリンパ腫(例えば、マントル細胞リンパ腫)、ホジキン病、骨髄性白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML)もしくは慢性骨髄性白血病(CML))、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病(CLL)、濾胞性甲状腺癌、骨髄異形成症候群(MDS)、間葉起源の腫瘍、軟部組織肉腫、脂肪肉腫、消化管間質肉腫、悪性末梢神経鞘腫(MPNST)、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、間葉性軟骨肉腫、リンパ肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、黒色腫、奇形腫、神経芽腫、脳腫瘍、髄芽腫、神経膠腫、皮膚の良性腫瘍(例えば、角化棘細胞腫)、乳癌(例えば、進行性乳癌)、腎臓癌、腎芽腫、卵巣癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、膀胱癌、進行性疾患及びホルモン抵抗性前立腺癌を含む前立腺癌、精巣癌、骨肉腫、頭頸部癌、表皮癌、多発性骨髄腫(例えば、難治性多発性骨髄腫)、又は中皮腫である。一態様において、癌細胞は、固形腫瘍に由来する。典型的には、癌細胞は、乳癌、結腸直腸癌、黒色腫、卵巣癌、膵癌、胃癌、肺癌、又は前立腺癌に由来する。より典型的には、癌細胞は、前立腺癌、肺癌、乳癌、又は黒色腫に由来する。
「化学療法剤」は、癌の治療において有用な化学的化合物である。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えば、チオテパ、CYTOXAN(商標)シクロホスファミド;アルキルスルホネート、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパ;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド(trietylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスホラミド(triethiylenethiophosphoramide)、及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン及びメチラメラミン(methylamelamine);アセトゲニン、例えば、ブラタシン及びブラタシノン;カンプトテシン、例えば、トポテカン;ブリオスタチン;カリスタチン; CC-1065並びにそのアドゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシン合成類似体;クリプトフィシン、例えば、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8;ドラスタチン;デュオカルマイシン、例えば、合成類似体KW-2189及びCB1-TM1;エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;窒素マスタード、例えば、クロラムブシル、クロロナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソ尿素、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン;抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質、例えば、カリケアマイシン、とりわけ、カリケアマイシンγII及びカリケアマイシンωII、ダインマイシンAを含むダインマイシン、ビスホスホネート、例えば、クロドロネート、エスペラマイシン、ネオカルジノスタチン発色団、及び関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団;アクラシノマイシン;アクチノマイシン;オースラマイシン;アザセリン;ブレオマイシン;カクチノマイシン;カラビシン;カルミノマイシン;カルジノフィリン;クロモマイシン;ダクチノマイシン;ダウノルビシン;デトルビシン; 6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン;モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンを含む、ADRIAMYCIN(商標)ドキソルビシン;エピルビシン;エソルビシン;イダルビシン;マルセロマイシン;マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、及びゾルビシン;代謝拮抗薬、例えば、メトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えば、デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、及びチオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、及びフロクスウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、及びテストラクトン;抗副腎薬、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、及びトリロスタン;葉酸補給剤、例えば、フロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デホファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシノイド、例えば、メイタンシン及びアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸; 2-エチルヒドラジド;プロカルバジン; PSK(商標)多糖複合体;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン; 2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン、例えば、T-2トキシン、ベラクリンA、ロリジンA、及びアングイジン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);タキソイド、例えば、TAXOL(商標)パクリタキセル、ABRAXANE(商標)パクリタキセルのクレモホール非含有アルブミン操作型ナノ粒子製剤、TAXOTERE(商標)、及びドキセタキセル;クロランブシル(chloranbucil); GEMZAR(商標)ゲムシタビン; 6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;白金配位錯体、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ビンクリスチン; NAVELBINE(商標)ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン、例えば、CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤、例えば、RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えば、レチノイン酸;カペシタビン;並びに上記のいずれかの医薬として許容し得る塩、酸、又は誘導体が挙げられる。
またこの定義に含まれるのは、腫瘍に対するホルモン作用を調節もしくは阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、抗エストロゲン薬及び選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)(例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びFARESTONトレミフェンを含む);副腎におけるエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(商標)エキセメスタン、ホルメスタン、ファドロゾール、RIVISOR(商標)ボロゾール、FEMARA(商標)レトロゾール、及びARIMIDEX(商標)アナストロゾールなど;並びに抗アンドロゲン薬、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;並びにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常細胞増殖に関係があるシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えば、PKC-α、Ralf、及びH-Rasなど;リボザイム、例えば、VEGF発現阻害剤(例えば、ANGIOZYME(商標)リボザイム)及びHER2発現阻害剤;抗体、例えば、抗VEGF抗体(例えば、AVASTIN(商標)抗体);ワクチン、例えば、遺伝子療法ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(商標)ワクチン、LEUVECTIN(商標)ワクチン、及びVAXID(商標)ワクチン; PROLEUKIN(商標) rIL-2; LURTOTECAN(商標)トポイソメラーゼ1阻害剤; ABARELIX(商標) rmRH;並びに上記のいずれかの医薬として許容し得る塩、酸、又は誘導体である。
ある態様において、本明細書に記載される抗体は、他の従来の抗癌治療と相加的に又は相乗的に作用する。
「変異体」は、比較配列内の1以上のアミノ酸残基の挿入、欠失、修飾、及び/又は置換によって、抗VEGFR-2 sdAbの配列、例えば、配列番号2〜53に記載されているものとは異なるアミノ酸配列を有する生物学的に活性のある抗体又はその断片である。変異体は、通常、比較配列との100%未満の配列同一性を有する。通常、しかしながら、生物学的に活性のある変異体は、比較配列との少なくとも約70%のアミノ酸配列同一性、例えば、少なくとも約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。変異体には、VEGFR-2結合能を保持する少なくとも10アミノ酸のペプチド断片が含まれる。変異体には、1以上のアミノ酸残基が比較配列のN-もしくはC-末端に又は比較配列の内部に付加されているポリペプチドも含まれる。例えば、N-末端の「MQV」は、「MKKQV」と置換することができ、VEGFR-2に対する結合活性を依然として保持する。変異体には、いくつかのアミノ酸残基が欠失し、1以上のアミノ酸残基によって任意に置換されているポリペプチドも含まれる。変異体は、例えば、天然に存在するアミノ酸以外の部分と置換することによるか、又は天然に存在しないアミノ酸を生じるようにアミノ酸残基を修飾することにより、共有結合的に修飾することもできる。
「パーセントアミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、必要であれば、最大のパーセント配列同一性を達成するためにギャップを導入した後、保存的置換を配列同一性の一部として考慮しないで、対象となる配列、例えば、本発明のポリペプチド中の残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージと本明細書で定義される。候補配列へのN-末端、C-末端、又は内部の伸長、欠失、又は挿入はいずれも、配列同一性又は類似性に影響を及ぼすものとみなされないものとする。アラインメントのための方法及びコンピュータプログラムは、当技術分野で周知であり、例えば、「BLAST」がある。
本明細書における目的のための「活性のある」又は「活性」は、本明細書に記載されるsdAbの生物学的及び/又は免疫学的活性を指し、ここで、「生物学的」活性は、sdAbに起因する生物学的機能(阻害性又は刺激性のいずれか)を指す。
したがって、「抗VEGFR-2 sdAb」と併用されるときの「生物学的に活性のある」又は「生物学的活性」は、抗VEGFR-2抗体のエフェクター機能を示すか又は共有する抗VEGFR-2 sdAb又はその断片を意味する。そのような抗体の1つの生物学的活性は、血管形成を少なくとも部分的に阻害するその能力である。
「阻害する」又は「阻害性」という用語は、VEGFR-2の機能又は活性を減少させる、制限する、遮断する、又は中和することを意味する。これらの用語は、VEGFR-2機能又は活性の完全な又は部分的な阻害を包含する。
本明細書で使用される場合、「抗VEGFR-2単一ドメイン抗体」は、VEGFR-2に対する特異性を保持する本発明の抗VEGFR-2抗体の修飾を含む。そのような修飾には、限定されないが、エフェクター分子、例えば、化学療法剤(例えば、シスプラチン、タキソール、ドキソルビシン)、又は細胞毒素(例えば、タンパク質もしくは非タンパク質有機化学療法剤)とのコンジュゲーションが含まれる。修飾には、限定されないが、検出可能なレポーター部分とのコンジュゲーションがさらに含まれる。抗体の半減期を延長する修飾(例えば、ペグ化)も含まれる。タンパク質及び非タンパク質剤は、当技術分野で公知である方法によって抗体にコンジュゲートすることができる。コンジュゲーション法は、直接的な連結、共有結合したリンカーによる連結、及び特異的結合対メンバー(例えば、アビジン-ビオチン)を含む。そのような方法には、例えば、ドキソルビシンのコンジュゲーションについての、引用により本明細書中に組み込まれる、Greenfieldらの文献、Cancer Research 50, 6600-6607(1990)に記載されている方法、並びにどちらも引用により本明細書中に組み込まれる、Amonらの文献、Adv. Exp. Med. Biol. 303, 79-90(1991)に記載されている方法及びKiselevaらの文献、MoI. Biol.(USSR)25, 508-514(1991)に記載されている方法が含まれる。
ウレアーゼにコンジュゲートされた抗体又はその断片は、その発現が、限定されないが、乳癌、膵癌、卵巣癌、肺癌、及び結腸癌などの多くの固形腫瘍で上昇しているVEGFR-2に特異的である。
VEGFR-2(別名、KDR D1〜7、sKDR D1〜7、キナーゼ挿入ドメイン受容体、タンパク質-チロシンキナーゼ受容体Flk-1、CD309、III型受容体チロシンキナーゼ、FLK1)の配列は公知であり、かつヒト及びマウス配列を示した米国特許第2009/0247467号(その開示は、その全体が本明細書中に組み込まれる)に示されている通りであり得る。ある態様において、VEGFR-2のタンパク質配列は、限定されないが、配列番号1の配列であってもよい:
範囲:本開示の全体を通じて、本明細書に記載される様々な態様は、範囲形式で提示することができる。範囲形式での記載は、単に便宜上及び簡潔性のためのものであり、本明細書に記載される範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の記載は、全ての可能な部分範囲及びその範囲内の個々の数値を具体的に開示したものとみなされるべきである。例えば、1〜6などの範囲の記載は、例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6などの部分範囲、及びその範囲内の個々の数字、例えば1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び6などを具体的に開示したものとみなされるべきである。これは、範囲の幅とは無関係に適用される。
多くの特許出願、特許、及び刊行物は、記載された態様の理解を助けるために本明細書で参照されている。これらの参考文献の各々は、その全体が引用により本明細書中に組み込まれている。
本発明はさらに、相補性決定領域(CDR) 1; CDR2;及びCDR3を含む単離又は精製された単一ドメイン抗体又はその断片を提供し、ここで、該抗体又はその断片はVEGFR-2に特異的である。CDRのうちの1つ又は複数がVEGFR-2に結合することができる。先ほど記載された抗体は、上記のVEGFR-2のアミノ酸配列のエピトープを認識し、それに結合することができ、ここで、該エピトープは、VEGFR-2内の線状又は非線状配列でできていてもよい。
先に述べたように、抗体又はその断片はsdAbであってもよい。sdAbは、任意の起源、例えば、ヒトもしくはラクダ科動物起源のものであってもよいし、又はラクダ科動物VHHに由来するものであってもよく、したがって、ラクダ科動物のフレームワーク領域に基づいていてもよく;或いは、上記のCDRは、VNAR、VHH、又はVLフレームワーク領域に移植されてもよい。
本実施態様はさらに、当技術分野で公知の任意の好適な方法、例えば、限定されないが、CDR移植及びベニアリングを用いて「ヒト化」されている抗体断片を包含する。抗体又は抗体断片のヒト化は、配列中のアミノ酸を、抗原結合能又は特異性を失うことなく、ヒトコンセンサス配列中に見られるそのヒト対応物と置き換えることを含み;この手法は、ヒト対象に導入されたときに、該抗体又はその断片の免疫原性を低下させる。CDR移植のプロセスにおいて、本明細書で定義される重鎖CDRの1つ又は複数をヒト可変領域(VHもしくはVL)又は他のヒト抗体断片フレームワーク領域(Fv、scFv、Fab)に融合又は移植することができる。そのような場合、該1つ又は複数の超可変ループの立体構造は保存され、その標的に対するsdAbの親和性及び特異性も保存される。
CDR移植は当技術分野で公知であり、少なくとも以下のもの:米国特許第6,180,370号、米国特許第5,693,761号、米国特許第6,054,297号、米国特許第5,859,205号及び欧州特許第626390号に記載されている。当技術分野で「可変領域リサーフェシング」とも呼ばれるベニアリングは、溶媒に曝露される抗体又は断片の位置をヒト化することを含み;したがって、CDR立体構造にとって重要であり得る埋め込まれる非ヒト化残基が保存されると同時に、溶媒に曝露される領域に対する免疫反応の可能性は最小限に抑えられる。ベニアリングは当技術分野で公知であり、少なくとも以下のもの:米国特許第5,869,619号、米国特許第5,766,886号、米国特許第5,821,123号、及び欧州特許第519596号に記載されている。当業者であれば、そのようなヒト化抗体断片を調製する方法に十分精通しているであろう。
具体的で非限定的な例において、VEGFR-2特異的ウレアーゼコンジュゲートを作製するために使用される抗体又はその断片は、以下の配列のいずれか1つ又はそれと少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、もしくは少なくとも95%同一の配列、又はそれと実質的に同一の配列を含むことができる(配列は、その配列番号に加えて、その内部記号表示、例えば、AB1、V21などによっても定義されることに留意されたい。これらの記号表示は、本明細書で互換的に使用されているが、どの配列が同定されているかということに関して何らかの疑問がある場合は、配列番号が最優先の定義とみなされるべきである)
。
これらの配列は、当然のことながら、遺伝コードの縮重のために、列挙されたアミノ酸配列を結果として生じる任意の核酸配列によってコードされ得る。上記のアミノ酸配列をコードし得る核酸配列の例としては、以下のもの又はそれらと少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、もしくは少なくとも95%同一の配列、又はそれと実質的に同一の配列が挙げられるが、これらに限定されない:
。
本発明の単一ドメイン抗体に好適なリンカー配列は、
からなる群から選択され得る。ある態様において、リンカー配列は、C-末端システイン、例えば、
をさらに含み得る。これらのリンカー配列と同様の配列を本明細書で使用することができる。例えば、KKは、好適なリンカー配列であり、かつ配列番号54〜69の配列のいずれか1つを含むものである。
実質的に同一の配列は、1以上の保存的アミノ酸突然変異を含み得る。参照配列に対する1以上の保存的アミノ酸突然変異は、参照配列と比較して、生理的、化学的、又は機能的特性の実質的変化を伴わない突然変異体ペプチドを生じさせることができ;そのような場合、参照配列と突然変異体配列は、「実質的に同一の」ポリペプチドとみなされることが当技術分野で公知である。保存的アミノ酸突然変異には、アミノ酸の付加、欠失、又は置換が含まれてもよく;保存的アミノ酸置換は、本明細書において、類似の化学的性質(例えば、サイズ、電荷、又は極性)を有する別のアミノ酸残基へのアミノ酸残基の置換と定義される。
非限定的な例において、保存的突然変異は、アミノ酸置換であってもよい。そのような保存的アミノ酸置換は、塩基性、中性、疎水性、又は酸性アミノ酸を同じグループの別のものに置換することができる。「塩基性アミノ酸」という用語は、7よりも大きい側鎖pK値を有する親水性アミノ酸を意味し、これは、典型的には、生理的pHで正電荷を有する。塩基性アミノ酸としては、ヒスチジン(His又はH)、アルギニン(Arg又はR)、及びリジン(Lys又はK)が挙げられる。「中性アミノ酸(「極性アミノ酸」ともいう)という用語は、生理的pHで電荷を有さないが、2つの原子によって共通に共有される電子対が該原子のうちの1つによってより密に保持される少なくとも1つの結合を有する側鎖を有する親水性アミノ酸を意味する。極性アミノ酸としては、セリン(Ser又はS)、トレオニン(Thr又はT)、システイン(Cys又はC)、チロシン(Tyr又はY)、アスパラギン(Asn又はN)、及びグルタミン(Gln又はQ)が挙げられる。「疎水性アミノ酸」(「非極性アミノ酸」ともいう)という用語は、Eisenberg(1984)の標準化されたコンセンサス疎水性度スケールに従って、0よりも大きい疎水性度を示すアミノ酸を含むことが意図される。疎水性アミノ酸としては、プロリン(Pro又はP)、イソロイシン(Ile又はI)、フェニルアラニン(Phe又はF)、バリン(Val又はV)、ロイシン(Leu又はL)、トリプトファン(Trp又はW)、メチオニン(Met又はM)、アラニン(Ala又はA)、及びグリシン(Gly又はG)が挙げられる。
「酸性アミノ酸」は、典型的には生理的pHで負電荷を有する7未満の側鎖pK値を有する親水性アミノ酸を指す。酸性アミノ酸としては、グルタミン酸(Glu又はE)及びアスパラギン酸(Asp又はD)が挙げられる。
配列同一性は、2つの配列の類似性を評価するために使用され;それは、残基位置間の最大一致を求めて2つの配列を整列させたときに同じである残基のパーセントを計算することにより決定される。任意の既知の方法を用いて、配列同一性を決定することができ;例えば、配列同一性を計算するために、コンピュータソフトウェアが利用可能である。限定することを望むものではないが、配列同一性は、スイスバイオインフォマティクス研究所(Swiss Institute of Bioinformatics)によって維持されているNCBI BLAST2サービス(及びca.expasy.org/tools/blast/で見られるもの)、BLAST-P、Blast-N、もしくはFASTA-Nなどのソフトウェア、又は当技術分野で公知である任意の他の適当なソフトウェアによって計算することができる。
本発明の実質的に同一の配列は、少なくとも85%同一であることができ;別の例において、該実質的に同一の配列は、本明細書に記載される配列とアミノ酸レベルで少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、もしくは100%(又はこれらの間の任意のパーセンテージ)同一であることができる。具体的な態様において、該実質的に同一の配列は、参照配列の活性及び特異性を保持する。非限定的な例において、配列同一性の違いは、保存的アミノ酸突然変異によるものであることができる。
本発明の単一ドメイン抗体又はその断片は、組換え抗体又はその断片の発現、検出、又は精製を助けるための追加の配列を含むこともできる。当業者に公知の任意のそのような配列又はタグを使用することができる。例えば、限定することを望むものではないが、該抗体又はその断片は、ターゲッティング又はシグナル配列(例えば、限定されないが、ompA)、検出タグを含むことができ、例示的なタグカセットとしては、Strepタグもしくはその任意のバリアント;例えば、米国特許第7,981,632号を参照、Hisタグ、配列モチーフ
を有するFlagタグ、Xpressタグ、Aviタグ、カルモジュリンタグ、ポリグルタミン酸タグ、HAタグ、Mycタグ、Nusタグ、Sタグ、SBPタグ、Softag 1、Softag 3、V5タグ、CREB結合タンパク質(CBP)、グルタチオン S-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、チオレドキシンタグ、もしくはこれらの任意の組合せ;精製タグ(例えば、限定されないが、His
5もしくはHis
6)、又はこれらの組合せが挙げられる。
別の例において、追加の配列は、ビオチン認識部位、例えば、CronanらによってWO 95/04069号に又はVogesらによってWO/2004/076670号に記載されているものであることができる。また当業者に知られているように、リンカー配列は、追加の配列又はタグと併用することができる。
より具体的には、タグカセットは、高い親和性又は結合力で抗体に特異的に結合することができる細胞外成分を含むことができる。単鎖融合タンパク質構造内で、タグカセットは、(a)コネクター領域のすぐアミノ-末端に、(b)リンカーモジュールの間に置いて、それらを接続して、(c)結合ドメインのすぐカルボキシ-末端に、(d)結合ドメイン(例えば、scFv)とエフェクタードメインの間に置いて、それらを接続して、(e)結合ドメインのサブユニットの間に置いて、それらを接続して、又は(f)単鎖融合タンパク質のアミノ-末端に配置することができる。ある実施態様において、1以上の接合アミノ酸をタグカセット間に配置して、それを疎水性部分と接続するか、又はタグカセットとコネクター領域の間において、それらを接続するか、又はタグカセットとリンカーモジュールの間において、それらを接続するか、又はタグカセットと結合ドメインの間において、それらを接続することができる。
さらに、ある態様において、単一ドメイン抗体、例えば、配列番号2〜30の単一ドメイン抗体、又はこれらの断片は、安定性を保有することが知られており;これらは、抗体エンジニアリングにおいて容易さを示し;かつその小さいサイズのために、優れた組織浸透能力を有する。リンカー配列を含むFc融合バージョン、例えば、配列番号54〜69又はその断片は、循環中での半減期を増大させるのにも有利である。
本発明の単一ドメイン抗VEGFR-2抗体は、VEGFR-2に特異的に結合する。VEGFR-2に対する抗体の抗体特異性(これは、抗原の特定のエピトープに対する抗体の選択的認識を指す)は、親和性及び/又は結合力に基づいて決定することができる。抗原と抗体との解離についての平衡定数(Kd)によって表される親和性は、抗原性決定基(エピトープ)と抗体結合部位の間の結合強度の尺度である。結合力は、抗体とその抗原との間の結合の強度の尺度である。抗体は、典型的には、10-5〜10-11リットル/モルのKdで結合する。10-4リットル/モルよりも大きいKdはいずれも、通常、非特異的結合を示すとみなされる。Kdの値が小さいほど、抗原性決定基と抗体結合部位の間の結合強度は強い。ある態様において、本明細書に記載される抗体は、10-4L/mol、10-5L/mol、10-6L/mol、10-7L/mol、10-8L/mol、又は10-9L/mol未満のKdを有する。
本発明の抗VEGFR-2抗体は、VEGFR-2の細胞外領域に特異的に結合し、VEGFR-2のリガンドと受容体との結合を妨害することにより、VEGFR-2の活性化を中和することができる。そのような実施態様において、抗体は、VEGFR-2の天然リガンド(例えば、VEGF(A)、(E)、(C)、及び(D))と少なくとも同じくらい強く、VEGFR-2に結合する。
VEGFR-2の中和活性は、シグナル伝達と関連する活性のうちの1つ又は複数を減少させ、阻害し、不活化し、及び/又は破壊することを含む。そのような活性には、受容体の二量体化、VEGFR-2の自己リン酸化、VEGFR-2の内部細胞質チロシンキナーゼドメインの活性化、並びにDNA合成(遺伝子活性化)及び細胞周期進行又は***の調節に関与する多数のシグナル伝達及びトランス活性化経路の開始が含まれる。VEGFR-2中和の1つの尺度は、VEGFR-2のチロシンキナーゼ活性の阻害である。チロシンキナーゼ阻害は、組換えキナーゼ受容体の自己リン酸化レベル、及び/又は天然もしくは合成基質のリン酸化を測定するリン酸化アッセイなどの周知の方法を用いて決定することができる。リン酸化は、例えば、ELISAアッセイで又はウェスタンブロット上でリン酸化チロシンに特異的な抗体を用いて検出することができる。チロシンキナーゼ活性に関するいくつかのアッセイは、そのどちらも引用により組み込まれる、Panekらの文献、J. Pharmacol. Exp. Them., 283: 1433-44(1997)及びBatleyらの文献、Life ScL, 62: 143-50(1998)に記載されている。
さらに、タンパク質発現の検出のための方法を用いて、抗体がVEGFR-2の活性化を中和するかどうかを決定することができ、ここで、測定されているタンパク質は、VEGFR-2チロシンキナーゼ活性によって調節される。これらの方法としては、タンパク質発現の検出のための免疫組織化学(IHC)、遺伝子増幅の検出のための蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、競合的放射性標識結合アッセイ、固体マトリクスブロッティング法、例えば、ノーザンブロット及びサザンブロット、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、及びELISAが挙げられる。例えば、その全てが引用により組み込まれる、Grandisらの文献、Cancer, 78:1284-92.(1996); Shimizuらの文献、Japan J. Cancer Res., 85:567-71(1994); Sauterらの文献、Am. J. Path., 148:1047-53(1996); Collinsの文献、Glia, 15:289-96(1995); Radinskyらの文献、Clin. Cancer Res., 1:19-31(1995); Petridesらの文献、Cancer Res., 50:3934-39(1990); Hoffmannらの文献、Anticancer Res., 17:4419-26(1997); Wikstrandらの文献、Cancer Res., 55:3140-48(1995)を参照されたい。
インビボアッセイを用いて、VEGFR-2中和を検出することもできる。例えば、受容体チロシンキナーゼ阻害は、阻害剤の存在下及び非存在下において受容体リガンドで刺激された細胞株を用いる有糸***促進因子アッセイによって観察することができる。例えば、VEGF(A)又はVEGF-Bで刺激されたHUVEC細胞(ATCC)を用いて、VEGFR-2阻害をアッセイすることができる。別の方法は、例えば、マウスに注射されたヒト腫瘍細胞を用いて、VEGF発現腫瘍細胞の成長の阻害について試験することを含む。例えば、引用により本明細書中に組み込まれる、米国特許第6,365,157号(Rockwellら)を参照されたい。
本発明は、VEGFR-2中和の任意の特定の機序によって限定されない。本発明の単一ドメイン抗VEGFR-2抗体は、例えば、VEGFR-2に外部から結合し、リガンドとVEGFR-2との結合遮断及び/又は競合し、かつ受容体関連チロシンキナーゼによって媒介される後続のシグナル伝達を阻害し、かつシグナル伝達カスケードにおけるVEGFR-2及び他の下流タンパク質のリン酸化を妨害する。受容体-抗体複合体は内在化され、分解され、受容体細胞表面の下方調節をもたらすこともできる。
本発明の抗VEGFR-2抗体をコードするポリヌクレオチドには、本発明のポリヌクレオチドの核酸配列と実質的に同じである核酸配列を有するポリヌクレオチドが含まれる。「実質的に同じ」核酸配列は、2つの配列を(適当なヌクレオチド挿入又は欠失を伴って)最適に整列させ、2つの配列間のヌクレオチドの正確な一致を決定するために比較したとき、別の核酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%の同一性を有する配列と本明細書において定義される。
抗体の断片をコードするDNAの好適な源としては、全長抗体を発現する任意の細胞、例えば、ハイブリドーマ及び脾臓細胞が挙げられる。該断片は、抗体等価物としてそれ自体使用することができ、又は上記のように等価物へと組み換えることができる。この節に記載されるDNA欠失及び組換えは、既知の方法、例えば、「抗体の機能的等価物(Functional Equivalents of Antibodies)」と題する節において上に掲載されている公開特許出願に記載されているもの、及び/又は他の標準的な組換えDNA技法、例えば、以下に記載されているものによって実行することができる。DNAの別の源は、当技術分野で公知のファージディスプレイライブラリーから産生される単鎖抗体である。
さらに、本発明は、発現配列、プロモーター、及びエンハンサー配列に機能的に連結された先に記載されたポリヌクレオチド配列を含有する発現ベクターを提供する。細菌などの原核生物系、並びに限定されないが、酵母及び哺乳動物細胞培養系を含む真核生物系における抗体ポリペプチドの効率的な合成のための種々の発現ベクターが開発されている。本発明のベクターは、染色体、非染色体、及び合成DNA配列のセグメントを含むことができる。
任意の好適な発現ベクターを使用することができる。例えば、原核生物クローニングベクターとしては、大腸菌(E.coli)由来のプラスミド、例えば、colEl、pCRl、pBR322、pMB9、pUC、pKSM、及びRP4が挙げられる。原核生物ベクターとしては、ファージDNAの派生物、例えば、Ml3及び他の繊維状一本鎖DNAファージも挙げられる。酵母において有用なベクターの例は、2μプラスミドである。哺乳動物細胞における発現のための好適なベクターとしては、SV-40、アデノウイルス、レトロウイルス由来DNA配列の周知の派生物、及び機能的な哺乳動物ベクター、例えば、上記のものと、機能的なプラスミド及びファージDNAとの組合せに由来するシャトルベクターが挙げられる。
さらなる真核生物発現ベクターは、当技術分野で公知である(例えば、その全てが引用により本明細書中に組み込まれる、P J. Southern及びP. Bergの文献、J. Mol. Appl. Genet, 1:327-341(1982); Subramaniらの文献、Mol. Cell. Biol, 1: 854-864(1981); Kaufinann及びSharpの文献、「モジュラージヒドロ葉酸レダクターゼ相補的DNA遺伝子でコトランスフェクトした配列の増幅及び発現(Amplification And Expression of Sequences Cotransfected with a Modular Dihydrofolate Reductase Complementary DNA Gene)」、J. Mol. Biol, 159:601-621(1982); Kaufhiann及びSharpの文献、Mol. Cell. Biol, 159:601-664(1982); Scahillらの文献、「チャイニーズハムスター卵巣におけるヒト免疫インターフェロンDNA遺伝子の産物の発現及び特徴解析(Expression And Characterization Of The Product Of A Human Immune Interferon DNA Gene In Chinese Hamster Ovary Cells)」、Proc. Nat'l Acad. Sci USA, 80:4654-4659(1983); Urlaub及びChasinの文献、Proc. Nat'l Acad. Sci USA, 77:4216-4220,(1980))。
本発明において有用な発現ベクターは、発現されることになるDNA配列又は断片と機能的に連結されている少なくとも1つの発現制御配列を含有する。該制御配列は、クローニングされたDNA配列の発現を制御及び調節するためにベクターに挿入される。有用な発現制御配列の例は、lacシステム、trpシステム、tacシステム、trcシステム、λファージの主要オペレーター及びプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、酵母の解糖プロモーター、例えば、3-ホスホグリセレートキナーゼのプロモーター、酵母酸性ホスファターゼのプロモーター、例えば、Pho5、酵母α-接合因子のプロモーター、並びにポリオーマ、アデノウイルス、レトロウイルス、及びサルウイルスに由来するプロモーター、例えば、初期及び後期プロモーター又はSV40、並びに原核細胞又は真核細胞及びそれらのウイルス又はそれらの組合せの遺伝子の発現を制御することが知られている他の配列である。
本発明は、先に記載された発現ベクターを含有する組換え宿主細胞も提供する。本発明の単一ドメイン抗VEGFR-2抗体は、ハイブリドーマ以外の細胞株で発現させることができる。本発明によるポリペプチドをコードする配列を含む核酸は、好適な哺乳動物宿主細胞の形質転換に使用することができる。
特に好ましい細胞株は、高い発現レベル、対象となるタンパク質の構成的発現、及び宿主タンパク質の最小限の混入に基づいて選択される。発現用の宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は当技術分野で周知であり、多くの不死化細胞株、例えば、限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ベイビーハムスター腎臓(BHK)細胞、及びその他多数を含む。好適なさらなる真核細胞としては、酵母及び他の真菌が挙げられる。有用な原核生物宿主としては、例えば、大腸菌、例えば、大腸菌SG-936、大腸菌HB 101、大腸菌W3110、大腸菌X1776、大腸菌X2282、大腸菌DHI、及び大腸菌MRC1、シュードモナス属、バシルス属、例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)、並びにストレプトミセス属が挙げられる。
これらの現在の組換え宿主細胞を用いて、抗体の発現を可能にする条件下で該細胞を培養し、宿主細胞又は宿主細胞の周囲の培地から抗体を精製することにより、sdAbを産生することができる。発現された抗体を組換え宿主細胞内での分泌に向けるのは、シグナル又は分泌リーダーペプチドをコードする配列を、対象となる抗体をコードする遺伝子の5'末端に挿入することにより促進することができる(Shokriらの文献(2003) Appl Microbiol Biotechnol. 60(6): 654-664、Nielsenらの文献、Prot. Eng., 10:1-6(1997); von Heinjeらの文献、Nucl. Acids Res., 14:4683-4690(1986)を参照されたく、これらは全て、引用により本明細書中に組み込まれる)。これらの分泌リーダーペプチドエレメントは、原核生物配列又は真核生物配列のいずれかに由来することができる。したがって、好適には、分泌リーダーペプチドを用いて、アミノ酸をポリペプチドのN-末端に接続して、該ポリペプチドの宿主細胞細胞質ゾルから外への移動及び培地中への分泌を導く。
本発明の抗VEGFR-2単一ドメイン抗体は、さらなるアミノ酸残基に融合させることができる。そのようなアミノ酸残基は、例えば、単離を容易にするペプチドタグであることができる。特定の器官又は組織への抗体のホーミングのための他のアミノ酸残基も想定される。
別の実施態様において、本発明は、本発明による単一ドメイン抗VEGFR-2単一ドメイン抗体の治療有効量をそれを必要としている哺乳動物に投与することにより、癌を治療する方法を提供する。治療的に有効とは、血管新生の低下及び/又は腫瘍成長の減少もしくは緩徐化などの所望の治療効果をもたらすのに有効な量を意味する。
一態様において、本発明は、本発明の単一ドメイン抗VEGFR-2抗体の治療有効量をそれを必要としている哺乳動物に投与することにより、腫瘍成長を低下させるか又は血管新生を阻害する方法を提供する。
腫瘍成長の低下に関して、そのような腫瘍には、原発性腫瘍及び転移性腫瘍、並びに難治性腫瘍が含まれる。難治性腫瘍には、他の形態の治療、例えば、化学療法剤のみ、抗体のみ、放射線のみ、又はこれらの組合せによる治療に応答しないか又は抵抗性である腫瘍が含まれる。難治性腫瘍は、そのような薬剤による治療によって阻害されるように見えるが、治療を中断してから、最大5年後、時には、最大10年後、又はそれより後に再発する腫瘍も包含する。
本発明のコンジュゲートは、VEGFR-2を発現する腫瘍を治療するのに有用である。そのような腫瘍は、特徴として、その環境中に存在するVEGFに感受性であり、自己分泌刺激ループの中でVEGFをさらに産生し、かつVEGFによって刺激され得る。それゆえ、本方法は、血管形成していないか又は未だ実質的に血管形成していない固形又は非固形腫瘍を治療するのに有効である。
相応に治療し得る固形腫瘍の例としては、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、膵癌、神経膠腫、及びリンパ腫が挙げられる。そのような腫瘍のいくつかの例としては、類上皮腫瘍、扁平上皮腫瘍、例えば、頭頸部腫瘍、結腸直腸腫瘍、前立腺腫瘍、***腫瘍、小細胞肺腫瘍及び非小細胞肺腫瘍を含む肺腫瘍、膵臓腫瘍、甲状腺腫瘍、卵巣腫瘍、並びに肝臓腫瘍が挙げられる。
血管新生の阻害に関して、本発明のコンジュゲートは、血管形成した腫瘍もしくは新生物、又は過剰な血管新生を特徴とする血管新生性疾患を有する対象を治療するのに有効である。本明細書に記載される抗体は、ある態様において、原発性又は転移性腫瘍の血管形成を予防するのにも有効である。そのような腫瘍及び新生物としては、例えば、悪性腫瘍及び新生物、例えば、芽腫、癌腫、又は肉腫、並びに高血管性腫瘍及び新生物が挙げられる。本発明の方法によって治療し得る癌としては、例えば、脳、尿生殖器官、リンパ系、胃、腎臓、結腸、喉頭及び肺、並びに骨の癌が挙げられる。非限定的な例としてはさらに、類上皮腫瘍、扁平上皮腫瘍、例えば、頭頸部腫瘍、結腸直腸腫瘍、前立腺腫瘍、***腫瘍、肺腺癌及び小細胞細胞肺腫瘍非小細胞肺腫瘍を含む肺腫瘍、膵臓腫瘍、甲状腺腫瘍、卵巣腫瘍、並びに肝臓腫瘍が挙げられる。
例えば、炎症及び/又は血管形成を伴う過剰な血管新生を特徴とする病的血管新生状態の非限定的な例としては、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ(RA)、新生血管緑内障、増殖性糖尿病性網膜症を含む増殖性網膜症、黄斑変性症、血管腫、血管線維腫、及び乾癬が挙げられる。非新生物性血管新生性疾患の他の非限定的な例は、早産児網膜症(後水晶体線維形成)、角膜移植拒絶反応、インスリン依存性糖尿病、多発性硬化症、重症筋無力症、クローン病、自己免疫性腎炎、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、急性膵炎、同種移植片拒絶、アレルギー性炎症、接触性皮膚炎、及び遅延過敏反応、炎症性腸疾患、敗血症性ショック、骨粗鬆症、変形性関節症、神経炎症による認知欠陥、オスラー・ウェーバー症候群、再狭窄、並びに真菌、寄生虫、及びサイトメガロウイルス感染を含むウイルス感染である。
本明細書に記載されるコンジュゲートによって治療可能な医学的状態の特定は、当業者の能力及び知識が十分に及ぶ範囲内である。例えば、臨床的に重要な新生物性もしくは血管新生性疾患に罹患しているか又は臨床的に重要な症状を発症するリスクのあるヒト個体は、本コンジュゲートの投与に適している。当技術分野の臨床医は、例えば、臨床検査、身体検査、及び病歴/家族歴を用いて、個体がそのような治療の候補であるかどうかを容易に決定することができる。
本明細書に記載されるコンジュゲートを、治療的治療のために、腫瘍又は血管新生関連の病理学的状態に罹患している患者に、該腫瘍又は病理学的状態の進行を予防し、阻害し、又は低下させるのに十分な量で投与することができる。進行には、例えば、該腫瘍又は病理学的状態の成長、侵襲性、転移、及び/又は再発が含まれる。この用途に有効な量は、疾患の重症度及び患者自身の免疫系の一般的状態によって決まる。投与スケジュールも患者の疾患の状態及び状況によって異なり、典型的には、単回ボーラス投与又は連続点滴から1日複数回の投与(例えば、4〜6時間毎)の範囲に及ぶか、又は治療医師及び患者の状態によって示される通りである。しかしながら、本発明は任意の特定の用量に限定されないことに留意すべきである。
別の実施態様において、本発明は、本明細書に記載されるコンジュゲートを1以上の他の薬剤と組み合わせて投与することにより、血管新生の減少が望ましい状態を治療する方法を提供する。例えば、本発明の実施態様は、本発明のコンジュゲートを抗新生物剤又は抗血管新生剤とともに投与することにより、そのような状態を治療する方法を提供する。該コンジュゲートは、抗新生物剤又は抗血管新生剤のうちの1つ又は複数に化学的に又は生合成的に連結させることができる。
化学療法剤又は放射線などの、任意の好適な抗新生物剤を使用することができる。化学療法剤の例としては、シスプラチン、カルボプラチン、ペメトレキセド、ドキソルビシン、シクロホスファミド、パクリタキセル、イリノテカン(CPT-II)、トポテカン、又はこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。抗新生物剤が放射線である場合、放射線の源は、治療を受けている患者にとって外部(外部ビーム放射線療法--EBRT)又は内部(近接照射療法--BT)のいずれかであることができる。
さらに、本発明は、本発明のコンジュゲートを1以上の好適なアジュバント、例えば、サイトカイン(例えば、IL-10及びIL-13)又は他の免疫刺激物質などと組み合わせて投与することにより、医学的状態を治療する方法を提供する。
組合せ療法において、該コンジュゲートは、別の薬剤を用いる療法を開始する前、該療法を開始している間、又は該療法を開始した後、及びこれらの任意の組合せで、すなわち、抗新生物剤療法を開始する前と開始している間、該療法を開始する前と開始した後、該療法を開始している間と開始した後、又は該療法を開始する前と開始している間と開始した後に投与することができる。例えば、本発明のコンジュゲートは、放射線療法を開始する1〜30日前、ある態様において、3〜20日前、他の態様において、5〜12日前に投与することができる。しかしながら、本発明は、任意の特定の投与スケジュールに限定されるものではない。投与される他の薬剤の用量は、例えば、薬剤の種類、治療を受けている医学的状態の種類及び重症度、並びに薬剤の投与の経路を含む、多数の要因によって決まる。しかしながら、本発明は、任意の特定の用量に限定されるものではない。
任意の好適な方法又は経路を用いて、本発明のコンジュゲートを投与し、任意に、抗新生物剤及び/又は他の受容体のアンタゴニストを共投与することができる。投与の経路には、例えば、経口、静脈内、腹腔内、皮下、又は筋肉内投与が含まれる。しかしながら、本発明は、任意の特定の投与方法又は経路に限定されないことが強調されるべきである。
本発明のコンジュゲートは、哺乳動物において予防又は治療目的で使用される場合、医薬として許容し得る担体をさらに含む組成物の形態で投与されることが理解される。好適な医薬として許容し得る担体としては、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどのうちの1つ又は複数、及びこれらの組合せが挙げられる。医薬として許容し得る担体は、結合タンパク質の保存期間又は有効性を向上させる微量の補助物質、例えば、湿潤剤もしくは乳化剤、防腐剤、又は緩衝剤をさらに含むことができる。注射の組成物は、当技術分野でよく知られているように、哺乳動物への投与後に、活性成分の急速放出、持続的放出、又は遅延放出をもたらすように製剤化することができる。
ヒト抗体はヒトへの投与に特に有用であるが、これは、他の哺乳動物にも同様に投与することができる。本明細書で使用される「哺乳動物」という用語は、限定されないが、ヒト、実験動物、家庭内のペット、及び農用動物を含むことが意図される。
本発明は、本発明のコンジュゲートの治療有効量を含む腫瘍成長及び/又は血管新生を阻害するためのキットも含む。該キットは、例えば、腫瘍発生又は血管新生に関与する別の成長因子受容体の任意の好適なアンタゴニストをさらに含有することができる。その代わりに又はそれに加えて、本発明のキットは、抗新生物剤をさらに含むことができる。本発明との関連における好適な抗新生物剤の例は、本明細書に記載されている。本発明のキットは、アジュバントをさらに含むことができ、その例は、上にも記載されている。キットは、説明書を含むことができる。
(抗体-ウレアーゼコンジュゲーション)
本発明は、抗体-ウレアーゼコンジュゲートを対象とし、ある態様における抗体-ウレアーゼコンジュゲートは、VEGFR-2に特異的に結合する単一ドメイン抗VEGFR-2ウレアーゼコンジュゲートである。開発された単一ドメイン抗VEGFR-2ウレアーゼコンジュゲートは、VEGFR-2発現腫瘍を有する対象の治療において使用される。理論によって束縛されるものではないが、ウレアーゼは、腫瘍微小環境を調節して、天然に存在する尿素を、腫瘍を縮小させるのに役立つアンモニアへと酵素的に変換する。単一ドメイン抗VEGFR-2は、ウレアーゼを腫瘍微小環境にターゲッティングするのに役立ち、かつ通常、血管新生をもたらすVEGFR-2活性化を停止させるのに役立つ。
本発明は、静脈内注射に好適な医薬として許容し得る水性溶液と、コンジュゲートされていない抗体を含まないかもしくは実質的に含まず、かつ非水性HPLC溶媒を含まない単一ドメイン抗VEGFR-2ウレアーゼコンジュゲートとを含む医薬組成物を提供する。非水性HPLC溶媒としては、分取HPLC又はHPLC精製において一般に使用される有機溶媒、例えば、メタノール、アセトニトリル、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。いくつかの態様において、該抗体-ウレアーゼコンジュゲートは、リン酸緩衝剤由来のリン酸塩を実質的に含まない。いくつかの態様において、l0mMリン酸塩、50mM NaCl pH 7.0を含むリン酸緩衝剤は、SEC精製に使用される。いくつかの態様において、HPLC精製は、抗体-ウレアーゼコンジュゲートの工業生産において実施されない。
いくつかの態様において、該コンジュゲートは、ウレアーゼ部分1つ当たり抗体部分が約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20のコンジュゲーション比を有する。いくつかの態様において、該コンジュゲートは、ウレアーゼ部分1つ当たり抗体部分が約2〜10のコンジュゲーション比を有する。いくつかの態様において、該コンジュゲートは、ウレアーゼ部分1つ当たり抗体部分が約2〜約9、ある態様においては、9.2のコンジュゲーション比を有する。いくつかの態様において、該コンジュゲートは、ウレアーゼ部分1つ当たり抗体部分が約6以上の平均コンジュゲーション比を有する。いくつかの態様において、該コンジュゲートは、ウレアーゼ部分1つ当たり抗体部分が約8、9、10、又は11の平均コンジュゲーション比を有する。
いくつかの態様において、連結は、共有結合又は直接的な連結であり、ここで、例えば、リジンのアミノ(N4/3)官能基が、例えば、アスパラギン酸もしくはグルタミン酸のカルボキシル(COOH)、又はシステインのスルフヒドリル(SH)に結合するなど、ウレアーゼ上の反応性官能基が抗体上の相補的な反応性官能基に結合する。そのような反応は、カルボキシル基をより反応性にするために、カルボキシル基の従来の修飾を必要とし得ることが理解される。
反応性官能基は、例えば、シュウ酸、コハク酸など、同じものであることができるか、又はオルトゴナルな官能基、例えば、アミノ基(これは、コンジュゲーション後、NHになる)及びカルボキシル基(これは、コンジュゲーション後、COもしくはCOOになる)であることができる。
或いは、抗体及び/又はウレアーゼを誘導体化して、さらなる反応性官能基に曝露又は結合させることができる。誘導体化は、Pierce Chemical Company, Rockford 111から入手可能なものなどの、いくつかのリンカー分子のうちのいずれかの結合を含むことができる。
本明細書で使用される「リンカー」は、ターゲッティング部分を活性剤に、例えば、抗体をウレアーゼに接続するために使用される分子である。リンカーは、ターゲッティング部分と活性剤の両方との共有結合を形成することができる。好適なリンカーは当業者に周知であり、直鎖もしくは分岐鎖炭素リンカー、ヘテロ環式炭素リンカー、又はペプチドリンカーを含むが、これらに限定されない。ターゲッティング部分及び活性剤分子がポリペプチドである場合、リンカーは、その側基を介して構成アミノ酸に(例えば、ジスルフィド連結を介してシステインに)接続されていてもよい。1つの好ましい態様において、リンカーは、末端アミノ酸のアルファ炭素アミノ基及びカルボキシル基に接続される。いくつかの態様において、連結は、それがウレアーゼと抗体の両方と反応することを可能にする、カルボキシ又はアミノなどの、2以上の官能基を有するリンカーを介するものである。リンカーは、当技術分野で周知であり、典型的には、炭素、窒素、水素、酸素、硫黄などを含む1〜20個の原子を含む。
ウレアーゼ上の基と反応する1つの官能基及び抗体と反応する別の基を有する二官能性リンカーを用いて、所望の免疫コンジュゲートを形成させてもよい。或いは、誘導体化は、ターゲッティング部分の化学的処理、例えば、遊離のアルデヒド基を生じさせる過ヨウ素酸塩を用いる糖タンパク質抗体の糖部分のグリコール開裂を伴っていてもよい。抗体上の遊離のアルデヒド基を薬剤上の遊離のアミン又はヒドラジン基と反応させて、該薬剤をそれに結合させてもよい(米国特許第4,671,958号を参照)。抗体又は抗体断片などのポリペプチド上に遊離のスルフヒドリル基を生成させる手順も公知である(米国特許第4,659,839号を参照)。
他のリンカー分子及びその使用としては、例えば、欧州特許出願第188,256号;米国特許第4,671,958号、第4,659,839号、第4,414,148号、第4,699,784号;第4,680,338号;第4,569,789号;及び第4,589,071号;並びにBorlinghausらの文献(1987) Cancer Res. 47: 4071-4075)に記載されているものが挙げられる。
いくつかの態様において、連結は、標的部位又はその近傍で切断可能であり、コンジュゲート分子がその標的部位に到達したときに、ウレアーゼが、ターゲッティング部分から解放される。ウレアーゼをターゲッティング部分から放出するための連結の切断は、標的細胞の内部又は標的部位の近傍のいずれかでコンジュゲートが曝される酵素活性又は条件によって促すことができる。いくつかの態様において、腫瘍部位に存在する条件下で(例えば、腫瘍関連酵素又は酸性pHに曝された場合に)切断可能なリンカーを使用することができる。
切断可能なリンカーとしては、例えば、米国特許第4,618,492号;第4,542,225号、及び第4,625,014号に記載されているものが挙げられる。これらのリンカー基からの活性剤の放出の機構としては、例えば、光解離性結合の照射及び酸触媒加水分解が挙げられる。米国特許第4,671,958号は、例えば、患者の補体系のタンパク質分解酵素によって、インビボで標的部位において切断されるリンカーを含む免疫コンジュゲートの記述を含む。いくつかの態様において、好適なリンカーは、アミノ酸の残基又は2以上のアミノ酸からなるペプチドスペーサーである。
いくつかの態様において、好適なリンカーは、R
1-L-R
2であり、ここで、R
1及びR
2は、同じ又は異なる官能基であり、そのうちの一方は抗体に接続されており、他方はウレアーゼに接続されている。R
1及びR
2は、限定されないが、-NH-、-CO-、-COO-、-O-、-S-、-NHNH-、-N=N-、=N-NH-などから独立に選択することができる。Lは、アルキル鎖などの直鎖又は分岐状炭化水素鎖であることができ、ここで、該炭素のうちの1つ又は複数は、任意に、酸素、窒素、アミド、硫黄、スルホキシド、スルホン、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールなどと置き換えられている。いくつかの態様において、リンカーは、アミノ酸残基又はペプチドであることができる。いくつかの状況において、リンカーは、標的部位又はその近くで、酵素又はpHの変化によって切断可能である。コンジュゲートを調製するのに好適な特定のリンカー及び手順は、米国特許第4,414,148号、第4,545,985号、第4,569,789号、第4,671,958号、第4,659,839号、第4,680,338号、第4,699,784号、第4,894,443号、及び第6,521,431号に記載されている。いくつかの態様において、リンカーは、以下のものである
(ここで、
は、抗体又はウレアーゼとの接続点を表す)。いくつかの態様において、
は、抗体のアミノ基との接続点を表し、
は、ウレアーゼのチオ基のS原子との接続点を示す。このリンカーは、連結剤SIAB(N-スクシニミジル(4-ヨードアセチル)アミノ-ベンゾエート)を用いて、抗体とウレアーゼをコンジュゲートさせる残基である。いくつかの態様において、超精製(ultrapurification)は、SIABを架橋剤として用いるコンジュゲーション法に好適な分離法である。
いくつかの態様において、リンカーは、次式の連結剤を用いる残基である:
(ここで、Xは、ブロモ又はヨードであり、かつLは、本明細書に記載されるリンカーである)。
いくつかの態様において、連結剤は、SBAP(スクシニミジル 3-[ブロモアセトアミノ]プロピオネート)又はSIA(N-スクシニミジルヨードアセテート)であり、これらは、SIABの条件と同様の条件(例えば、HPLCクロマトグラフィー精製が必要ではなく、かつ限外濾過のみが必要とされ得る)下でのコンジュゲーションに使用することができる。いくつかの態様において、SIABの連結アーム長(10.6アンストロング(Anstrong))は、SBAPの連結アーム長(6.2A)及びSIAの連結アーム長(1.5A)よりも好適であり/柔軟である。いくつかの態様において、連結剤は、SPDP(スクシニミジル 3-(ピリジルジチオ)プロピオネート)、SMPT(スクシニミジルオキシカルボニル-メチル-(2-ピリジルジチオ(pyridldithio))トルエン)、又はSMCC(スクシニミジル 4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-カルボキシレート)であり、これらをコンジュゲーションのために使用することができるが、未反応のウレアーゼをコンジュゲーション反応溶液からより低い収率で分離するために、IEC及びエタノール分画などの複数の分離法が必要となる場合がある。
さらに、追加の成分、例えば、限定されないが、抗癌剤などの治療剤を抗体に結合させて、治療効果をさらに増強することもできる。
(ウレアーゼ)
いくつかの研究により、種々の進化的に多様な細菌、植物、真菌、及びウイルス由来のウレアーゼの遺伝学に関する詳細な情報が提供されている(その各々が引用により本明細書中に組み込まれる、Mobley, H. L. T.らの文献(1995) Microbiol. Rev. 59: 451-480; Eur J. Biochem., 175, 151-165(1988); Labigne, A.の文献(1990)、国際公開WO 90/04030号; Clayton, C. L.らの文献(1990) Nucleic Acid Res. 18, 362;並びに米国特許第6,248,330号及び第5,298,399号)。特に興味深いのは、植物に見られるウレアーゼである(Sirko, A.及びBrodzik, R.の文献(2000) Acta Biochim Pol 47(4): 1189-95)。1つの例示的な植物ウレアーゼは、タチナタマメウレアーゼである。他の有用なウレアーゼ配列は、公的データベース、例えば、Entrez(ncbi.nlm.nih.gov/Entrez)で確認することもできる。
いくつかの態様において、ウレアーゼは、タチナタマメウレアーゼである。タチナタマメウレアーゼは、以下に示されるような、配列番号78のアミノ酸配列を有する:
有用なウレアーゼ配列は、公的データベース、例えば、Entrez(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Entrez/)で確認することもできる。さらに、多種多様な生物由来のウレアーゼを増幅させるのに有用なプライマーを、Baker, K. M.及びCollier, J. L.の文献(http://www.science.smith.edu/departments/Biology/lkatz/NEMEB_webpage/abstracts .html)によって記載されているように、又はRoseらの文献(1998) Nucl. Acids Res. 26: 1628に記載されているようにCODEHOP(コンセンサス縮重ハイブリッドオリゴヌクレオチドプライマー(COnsensus-DEgenerate Hybrid Oligonucleotide Primer))を用いて、利用することもできる。
ウレアーゼは、基質である尿素をアンモニア及びカルバメートに変換することができる。この酵素活性は、pHを上昇させ、環境をより塩基性にすることができる。癌細胞周囲の環境は、典型的には酸性である(Webb、S.D.らの文献(2001) Novartis Found Symp 240: 169-81)。したがって、細胞外環境のpHをこのように上昇させることにより、癌細胞の成長が阻害される。したがって、本技術のある態様における抗体-ウレアーゼコンジュゲートの添加は、間質液のpHを、約0.1 pH単位、例えば、0.1〜0.5 pH単位又はそれより大きく上昇させる
本技術のウレアーゼには、ウレアーゼの天然に存在する形態、及び機能的に活性のあるその変異体が含まれる。2つの一般的なタイプのアミノ酸配列変異体が想定される。アミノ酸配列変異体は、特定のアミノ酸において、ウレアーゼ活性を破壊しない1以上の置換を有するものである。これらの変異体としては、天然タンパク質と実質的に相同であり、かつ機能的に等価であるサイレント変異体及び保存的に修飾された変異体が含まれる。天然タンパク質の変異体は、そのアミノ酸配列の少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、さらにより好ましくは少なくとも約95%、さらにより好ましくは98%、最も好ましくは少なくとも約99%が天然タンパク質のアミノ酸配列と同一である場合に、天然タンパク質と「実質的に相同」である。変異体は、わずか1個もしくは最大10個、又はそれより多くのアミノ酸が異なり得る。
第二のタイプの変異体としては、ウレアーゼの単離された活性のある断片である、ウレアーゼのサイズ変異体が挙げられる。サイズ変異体は、例えば、化学的修飾によるか、タンパク質分解酵素による消化によるか、又はこれらの組合せによって、ウレアーゼを断片化することにより形成させることができる。さらに、遺伝子工学的技法、及びアミノ酸残基からポリペプチドを直接合成する方法を利用して、サイズ変異体を産生することができる。
「機能的に等価な」とは、変異体の配列が、天然のウレアーゼと実質的に同じ生物学的活性を有するタンパク質を生じる鎖を規定することを意図している。相当な配列バリエーションを含むそのような機能的に等価な変異体も、本技術に包含される。したがって、天然のウレアーゼタンパク質の機能的に等価な変異体は、治療的に有用となるのに十分な生物学的活性を有することになる。機能的等価性を決定するための方法は、当技術分野で利用可能である。生物学的活性は、天然のウレアーゼタンパク質の活性を測定するために特別に設計されたアッセイを用いて測定することができる。さらに、生物学的に活性のある天然タンパク質に対して産生された抗体を機能的に等価な変異体に結合するその能力について試験することができ、その場合、効果的な結合は、天然タンパク質の立体構造と同様の立体構造を有するタンパク質を示す。
本技術のウレアーゼタンパク質配列は、保存的に置換された配列を含め、該タンパク質の精製のための1以上のドメイン(例えば、ポリHisセグメント、FLAGタグセグメントなど)を付加したときに生じるものなどのより大きなポリペプチド配列の一部として存在することができ、その場合、追加の機能的ドメインは、タンパク質のウレアーゼタンパク質部分の活性に対する影響がほとんどもしくは全くないか、又は追加のドメインは、合成後のプロセシング工程によって、例えば、プロテアーゼによる処理によって除去することができる。
非機能性配列の付加などの、本技術の核酸分子のコードされた活性を変化させない1以上の核酸又は配列の付加は、基礎となる核酸分子の保存的なバリエーションであり、本技術のポリペプチドの活性を変化させない1以上のアミノ酸残基の付加は、基礎となるポリペプチドの保存的なバリエーションである。そのようなタイプの付加は両方とも、本技術の特徴である。当業者であれば、開示されている核酸構築物の多くの保存的なバリエーションが機能的に同一の構築物を生じることを認めるであろう。
マニュアルアラインメント、並びにコンピュータ支援配列アラインメント及び分析を含む、配列の関係性を決定する種々の方法を使用することができる。後者の手法は、コンピュータ支援法によってもたらされる処理量の増加のために、本技術において好ましい手法である。配列アラインメントを実施するための種々のコンピュータプログラムが利用可能であるか、又は当業者によって作成可能である。
上述のように、本技術において利用される核酸及びポリペプチド(並びにこれらの断片)の配列は、本技術のウレアーゼポリペプチドもしくは核酸分子(又はこれらの断片)或いは関連分子の対応する配列と同一である必要はないが、実質的に同一(又は実質的に同様)であることができる。例えば、該ポリペプチドは、保存的又は非保存的のいずれかの、1以上のアミノ酸又は核酸の挿入、欠失、及び置換などの様々な変化を受けることができ、これには、例えば、そのような変化が、その使用において、例えば、その治療的用途又は投与用途において、特定の利点を提供し得る場合が含まれる。
(ターゲッティング部分)
ターゲッティング部分は、本技術の化学的実体として想定され、癌細胞などの、規定され、選択された細胞型又は標的細胞集団に結合する。
本開示のターゲッティング部分は、標的細胞の表面のVEGFR-2と反応性である抗体、ペプチド、オリゴヌクレオチドなどである。ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の両方を利用することができる。該抗体は、全抗体又はその断片であってもよい。モノクローナル抗体及び断片は、ハイブリドーマ合成、組換えDNA技法、及びタンパク質合成などの従来の技法に従って作製することができる。有用なモノクローナル抗体及び断片は、任意の種(ヒトを含む)に由来することができ、又は複数の種由来の配列を利用するキメラタンパク質として形成されることができる。
いくつかの態様において、ターゲッティング部分は、ヒト化抗体又は非ヒト抗体である。いくつかの態様において、ターゲッティング部分は、単一ドメイン抗体である。いくつかの態様において、単一ドメイン抗体(sdAb)又は「VHH」は、生まれつき軽鎖を欠くラクダ科の哺乳動物に見出すことができるタイプの抗体の単一の重鎖可変ドメインを指す。いくつかの態様において、単一ドメイン抗体は、VH領域、VHH領域、又はVL領域に由来することができる。いくつかの態様において、前記単一ドメイン抗体は、ヒト起源のものである。
ある態様において、ターゲッティング部分(例えば、抗体)は、癌腫、白血病、リンパ腫、及び肉腫によって発現されるVEGFR-2に対する特異性を有する。癌腫は、肛門、胆道、膀胱、***、結腸、直腸、肺、中咽頭、下咽頭、食道、胃、膵臓、肝臓、腎臓、胆嚢及び胆管、小腸、尿路、卵巣、結腸、非小細胞性肺癌、生殖器、内分泌腺、甲状腺、並びに皮膚のものであってもよい。いくつかの態様において、VEGFR-2は、カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、頭頸部腫瘍、原発性腫瘍、血管腫、メラノーマ、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、並びに脳、神経、眼、及び髄膜によって発現される。いくつかの態様において、ターゲッティング部分(例えば、抗体)は、癌腫、乳癌、膵癌、卵巣癌、肺癌、及び結腸癌によって発現されるVEGFR-2に対する特異性を有する。いくつかの態様において、ターゲッティング部分(例えば、抗体)は、非小細胞性肺癌によって発現されるVEGFR-2に対する特異性を有する。
いくつかの態様において、単一ドメイン抗体は、腫瘍細胞上で発現が増大しているVEGFR-2に対する特異性を有する。いくつかの態様において、該抗体は、約1×10-6Mを超える値のVEGFR-2に対する結合親和性を有する。いくつかの態様において、該コンジュゲートは、約1×10-8M、1×10-9M、1×10-10M、又は1×10-20M以下のKd値のVEGFR-2に対する結合親和性を有する。
ある態様において、該抗体は、癌細胞上のVEGFR-2を認識する(本明細書に記載される配列番号2〜30のいずれか1つを含む)単一ドメインのラクダ科動物抗体である。いくつかの態様において、該抗体は、配列番号2〜30のいずれか1つのアミノ酸配列に対する少なくとも1つの改変を含むポリペプチドを含む。
ある態様において、該コンジュゲートは、約10nM以下のIC50値のVEGFR-2に対する結合親和性を有する。いくつかの態様において、該コンジュゲートは、約5nM以下のIC50値のVEGFR-2に対する結合親和性を有する。いくつかの態様において、該コンジュゲートは、約4nM以下のIC50値のVEGFR-2に対する結合親和性を有する。いくつかの態様において、IC50値は、約3.22nMである。いくつかの態様において、該コンジュゲートは、約10〜30μg/mLのIC50値でVEGFR-2に結合する。いくつかの態様において、該コンジュゲートは、約20μg/mLのIC50値でVEGFR-2に結合する。標的抗原に対する抗体又はコンジュゲートの結合親和性は、本明細書に記載される又は当技術分野で公知の方法によって決定することができる。いくつかの態様において、本技術は、この抗VEGFR-2-ウレアーゼコンジュゲート(VDOS47)を説明している。
ヒト化ターゲッティング部分は、宿主レシピエントにおける抗体又はポリペプチドの免疫反応性を減少させることができ、半減期の増加及び有害な免疫反応の低下を可能にする。マウスモノクローナル抗体は、例えば、マウスのFv領域又はその相補性決定領域をコードするヌクレオチド配列を、ヒト定常ドメイン領域及びFc領域をコードするヌクレオチド配列と遺伝的に組み換えることによりヒト化することができる。マウスの残基をヒト可変領域フレームワークドメイン内に保持して、適切な標的部位結合特性を確保することができる。様々な活性剤を癌細胞へと送達するための遺伝子改変された抗体は、Bodey, Bの文献(2001) Expert Opin Biol. Ther. 1(4):603-17で概説されている。
本明細書に示される抗体又はウレアーゼをコードするDNAは、例えば、適切な配列のクローニング及び制限、又はNarangらの文献(1979) Meth. Enzymol. 68: 90-99のホスホトリエステル法; Brownらの文献(1979) Meth. Enzymol. 68: 109-151のホスホジエステル法; Beaucageらの文献(1981) Tetra. Lett., 22: 1859-1862のジエチルホスホロアミダイト法;及び米国特許第4,458,066号の固相支持法などの方法による直接的な化学合成を含む任意の好適な方法によって調製することができる。
化学合成によって、一本鎖オリゴヌクレオチドが産生される。これを、相補的配列とのハイブリダイゼーションによるか、又は一本鎖を鋳型として用いるDNAポリメラーゼによるポリメリゼーションによって、二本鎖DNAに変換することができる。当業者であれば、DNAの化学合成は、約100塩基の配列に限定されるが、より長い配列は、より短い配列のライゲーションによって得ることができることを認識しているであろう。
或いは、部分配列をクローニングして、適切な部分配列を適切な制限酵素を用いて切断することができる。その後、断片をライゲーションして、所望のDNA配列を産生することができる。
(抗体-ウレアーゼコンジュゲートを調製する方法)
本技術は、抗体-ウレアーゼコンジュゲートを含み、かつ該抗体-ウレアーゼコンジュゲートの重量に基づいて約5%、4%、3%、2%、又は1%以下のウレアーゼなどの、コンジュゲートされていないウレアーゼを実質的に含まない組成物を調製する方法であって、(1)活性化された抗体とウレアーゼを、1時間当たり10%、5%、又は1%以下の反応などの、活性化された抗体とウレアーゼが実質的に反応しない溶媒中で組み合わせて、該溶媒中の活性化された抗体とウレアーゼの分布が一様である反応混合物を形成させること、及び(2)活性化された抗体が、ウレアーゼとすぐに反応して、抗体-ウレアーゼコンジュゲートを形成するように、(1)の混合物の性質を変化させることを含む、方法を提供する。いくつかの態様において、(1)の混合物の性質はpH値である。いくつかの態様において、(1)の混合物の性質を変化させることは、活性化された抗体がウレアーゼとすぐに反応して、抗体-ウレアーゼコンジュゲートを形成する値までpHを上昇させることを含む。いくつかの態様において、活性化された抗体は、すぐに、例えば、活性化された抗体の少なくとも90%又は少なくとも95%は、混合物が該混合物の性質を変化させてから約6時間、約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、又は約1時間後にコンジュゲートされていないウレアーゼを実質的に含まない速度で、(2)においてウレアーゼと反応する。
いくつかの態様において、本方法は、活性化された抗体とウレアーゼを、約6.0〜7.0、例えば、約6.5のpHを有する酸性の水性緩衝剤中で組み合わせること、該pHを約8.0〜9.0、例えば、約8.3の塩基性pHに調整して、抗体-ウレアーゼコンジュゲートを形成させること、及び該抗体-ウレアーゼコンジュゲートを限外透析濾過によって精製することを含み、ここで、該方法は、クロマトグラフィー精製工程を含まない。いくつかの態様において、約5〜8のpHを有する水性緩衝剤。いくつかの態様において、活性化された抗体とウレアーゼは、酸性の水性緩衝剤中で組み合わされる。いくつかの態様において、活性化された抗体とウレアーゼの比は、約3〜約12である。いくつかの態様において、抗体-ウレアーゼコンジュゲートは、ウレアーゼ部分1つ当たり抗体部分が6〜15のコンジュゲーション比を有する。いくつかの態様において、抗体-ウレアーゼコンジュゲートは、ウレアーゼ部分1つ当たり抗体部分が8〜11のコンジュゲーション比を有する。いくつかの態様において、pH調整物質は、緩衝剤又は緩衝剤溶液である。いくつかの態様において、pH調整物質は、塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、炭酸、重炭酸、グルコン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、クエン酸、モノエタノールアミン、乳酸、酢酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、メタンスルホン酸、リンゴ酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、これらの塩、又はこれらの組合せのうちの1つ又は複数を含む。いくつかの態様において、緩衝剤は、グリシン、酢酸、クエン酸、ホウ酸、フタル酸、リン酸、コハク酸、乳酸、酒石酸、炭酸、塩酸、水酸化ナトリウム、これらの塩、又はこれらの組合せのうちの1つ又は複数を含む。いくつかの態様において、緩衝剤溶液は、塩酸グリシン緩衝剤、酢酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、乳酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、クエン酸-リン酸緩衝剤、リン酸-酢酸-ホウ酸緩衝剤、フタル酸緩衝剤、又はこれらの組合せのうちの1つ又は複数を含む。いくつかの態様において、緩衝剤は、リン酸緩衝剤ではない。いくつかの態様において、酸性緩衝剤は、酢酸ナトリウム緩衝剤である。いくつかの態様において、pHは、ホウ酸ナトリウム溶液(例えば、0.1〜5M、又は1M)などの水性塩基溶液の添加を含む方法によって、塩基性のpHに調整される。理論によって束縛されることを望むものではないが、酢酸ナトリウム緩衝剤は、低い緩衝能を有しており、かつpH 8.5の1Mホウ酸緩衝剤によって、pHを8.3に調整するのに適している。いくつかの態様において、Tris-HCl緩衝剤(例えば、1M Tris-HCl)は、混合物を、pH 8〜9、例えば、8.3に調整するのに使用される。
いくつかの態様において、反応時間及び抗体/ウレアーゼ比は、一定に保たれる。いくつかの態様において、反応混合物中の抗体/ウレアーゼのモル比は、約25又は約21又は約1.8〜12抗体/ウレアーゼである。いくつかの態様において、抗体/ウレアーゼモル比は、4〜25に調整される。いくつかの態様において、抗体/ウレアーゼモル比は、少なくとも2である。
いくつかの態様において、未反応の抗体の1%又は2%以下が、限外透析濾過などの精製後に混合物中に存在する。いくつかの態様において、他の非HPLC精製法を使用することができる。例えば、エタノール結晶化/分画を、より低い収率での精製に使用することができる。いくつかの態様において、抗体の分子量は、50kDa以下、例えば、約10〜20kDa、又は約13kDaであり、精製は、限外透析濾過である。いくつかの態様において、本方法は、総タンパク質の少なくとも約60重量%、総タンパク質の約70重量%、総タンパク質の約80重量%、又は少なくとも総タンパク質の90重量%の収率で、抗体-ウレアーゼコンジュゲートを提供する。総タンパク質は、ウレアーゼ及びsd抗VEGFR-2抗体の(重量での)組み合わせた量を意味する。いくつかの態様において、(総タンパク質重量で)10〜20%以下のコンジュゲートされていない抗体が精製前の反応混合物に残存している。
本技術は、酸性水性溶媒(上記のもの)中に活性化された抗体及びウレアーゼを含み、かつ抗体-ウレアーゼコンジュゲートを実質的に含まない、例えば、ウレアーゼの重量に基づいて約5%、4%、3%、2%、又は1%以下の抗体-ウレアーゼコンジュゲートの安定な組成物を提供する。本技術はさらに、水性溶媒中に、抗体-ウレアーゼコンジュゲートを含み、かつコンジュゲートされていないウレアーゼを実質的に含まない、例えば、抗体-ウレアーゼコンジュゲートの重量に基づいて約5%、4%、3%、2%、又は1%以下のウレアーゼの組成物であって、該水性溶媒が、約8〜9、例えば、8.3(上記の通り)のpHを有する、組成物を提供する。いくつかの態様において、抗体-ウレアーゼコンジュゲートを含む組成物は、抗体全体(活性化された抗体及び未反応の抗体)で約40〜60%以下のコンジュゲートされていない抗体をさらに含む。いくつかの態様において、抗体-ウレアーゼコンジュゲートを含む組成物は、総タンパク質で約10〜20%以下のコンジュゲートされていない抗体をさらに含む。
ウレアーゼは、一般毒性を有するアンモニアのインビボでの放出を引き起こし、かつそれ自体は腫瘍を標的としないので、コンジュゲートされていないウレアーゼの存在は、ウレアーゼが正常組織中に存在し、それに対する毒性を生じさせるリスクを増大させる。しかしながら、ウレアーゼのサイズ及び他の性質のために、抗体とウレアーゼとのコンジュゲーションは、とりわけ大きい規模での、クロマトグラフィー精製法によるコンジュゲートされていないウレアーゼからの抗体-ウレアーゼコンジュゲートの迅速な分離を可能にするのに十分なサイズの差もその他の差も生じない。
本技術は、驚くべきことに、得られる生成物が、クロマトグラフィー精製なしで、コンジュゲートされていないウレアーゼを実質的に含まないような、ウレアーゼと抗体との実質的に完全なコンジュゲーションを提供する。ウレアーゼを実質的に含まないことにより、本明細書に記載される組成物は、全身投与を通じて、該組成物中の実質的に全てのウレアーゼ部分を標的部位に送達する。ウレアーゼの標的部位への標的送達は、ウレアーゼによって生成されるアンモニアの一般毒性を低下又は消失させ、かつ治療効果を生じさせるために投与される必要があるウレアーゼの量を低下させる。本技術は、臨床的使用のための、特に、ウレアーゼの局所投与によって治療することが困難又は非現実的である転移性腫瘍を治療するための、ウレアーゼを実質的に含まない抗体-ウレアーゼコンジュゲートを、大きい規模で、例えば、少なくとも約1g、10g、100g、又は1kg調製するのに特に好適である。
本技術は、ウレアーゼを腫瘍抗原のVEGFR-2にターゲッティングする新規の方法であって、配列番号2〜30又はその断片もしくは変異体のいずれか1つ又は複数を含む複数の単一ドメイン抗体分子をウレアーゼ分子とコンジュゲートさせて、抗体-ウレアーゼコンジュゲートを形成させることを含み、ここで、該コンジュゲートが該腫瘍抗原に対する結合親和性を有する、方法も提供する。いくつかの態様において、競合的結合アッセイを用いて、抗体-ウレアーゼコンジュゲートの結合親和性が単一ドメイン抗体の結合親和性と同程度であるか、又は結合力の増加が原因で、天然の単一ドメイン抗体の結合親和性よりも約100倍、約200倍、約300倍、約400倍、及び約500倍強いことを示すことができる。いくつかの態様において、該コンジュゲートは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12抗体部分/ウレアーゼ部分のコンジュゲーション比を有する。いくつかの態様において、該コンジュゲートは、ウレアーゼ部分1つ当たり抗体部分が約6以上のコンジュゲーション比を有する。いくつかの態様において、該コンジュゲートは、6、7、8、9、10、11、又は12抗体部分/ウレアーゼ部分のコンジュゲーション比を有する。いくつかの態様において、該コンジュゲートは、8、9、10、又は11抗体部分/ウレアーゼ部分のコンジュゲーション比を有する。いくつかの態様において、該コンジュゲートは、約8、9、10、又は11抗体部分/ウレアーゼ部分のコンジュゲーション比を有する。いくつかの態様において、該ウレアーゼは、タチナタマメウレアーゼである。いくつかの態様において、該抗体は、ヒト化抗体又は非ヒト抗体である。いくつかの態様において、該抗体は、VEGFR-2に対する特異性を有する単一ドメイン抗体である。いくつかの態様において、該抗体は、約1×10-6Mよりも高いKd値のVEGFR-2に対する結合親和性を有する。いくつかの態様において、該コンジュゲートは、約1×10-8M以下のKd値でVEGFR-2に結合する。いくつかの態様において、該コンジュゲートは、約1×10-10M以下のKd値でVEGFR-2に結合する。いくつかの態様において、該コンジュゲートは、約5nM以下のIC50値でVEGFR-2に結合する。いくつかの態様において、IC50値は、約3.22nMである。いくつかの態様において、該コンジュゲートは、約20μg/mLのIC50値でVEGFR-2に結合する。
(組成物の製剤化)
本技術の組成物は、任意に非水性HPLC溶媒を含まない抗VEGFR-2ウレアーゼコンジュゲートを含む。いくつかの態様において、該組成物は、医薬として許容し得る組成物である。該組成物は、生体適合性医薬担体、アジュバント、又はビヒクルをさらに含むことができる。いくつかの態様において、該組成物は、固体形態である。いくつかの態様において、該組成物は、約0.1〜10mg/mL、約0.5〜5mg/mL、約1〜5mg/mL、又は約1.5〜2.0mg/mLのコンジュゲートを含む水性溶液中のものである。いくつかの態様において、該水性溶液は、賦形剤、例えば、ヒスチジン、スクロース、及びEDTAのうちの1つ又は複数をさらに含む。いくつかの態様において、該水性溶液は、約1〜20mM、例えば、10mMのヒスチジン、約0.1〜5w/v%、例えば、1w/v%のスクロース、約0.1〜0.5mM、例えば、0.2mMのEDTAを含む。いくつかの態様において、該水性溶液は、約6.5〜7、例えば、約6.8のpHを有する。いくつかの態様において、該水性溶液は、リン酸塩を含有しない。いくつかの態様において、該組成物は、該水性溶液の凍結乾燥によって得られる固体形態である。いくつかの態様において、該固体形態は、リン酸塩を含有しない。
該組成物は、賦形剤又は他の医薬として許容し得る担体と混合された他のヌクレオチド配列、ポリペプチド、薬物、又はホルモンを含むこともできる。
医薬組成物以外の組成物は、任意に、液体、すなわち、水又は水ベースの液体を含む。
医薬組成物に添加されることになる医薬として許容し得る賦形剤も当業者に周知であり、容易に利用可能である。賦形剤の選択は、一つには、生成物を投与するために使用される特定の方法によって決定される。したがって、本技術との関連において使用するための多種多様な好適な製剤が存在する。
医薬組成物の製剤化及び投与のための技法は、レミントンの医薬化学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、第19版、Williams & Wilkins, 1995に見出すことができ、かつ当業者に周知である。賦形剤の選択は、一つには、本技術による生成物を投与するために使用される特定の方法によって決定される。したがって、本技術との関連において使用するための多種多様な好適な製剤が存在する。以下の方法及び賦形剤は、単に例示的なものであり、決して限定するものではない。
本技術の医薬組成物は、任意の従来法、例えば、混合、溶解、造粒、湿式粉砕、乳化、カプセル化、封入、融解紡糸、噴霧乾燥、又は凍結乾燥プロセスを用いて製造することができる。しかしながら、最適な医薬製剤は、投与の経路及び所望の投薬量に応じて、当業者によって決定される。そのような製剤は、投与された薬剤の物理的状態、安定性、インビボでの放出速度、及びインビボでのクリアランス速度に影響を及ぼし得る。
医薬組成物は、好適な医薬として許容し得る担体を含有するよう製剤化され、かつ任意に活性化合物の医薬として使用し得る調製物へのプロセシングを容易にする賦形剤及び補助剤を含むことができる。投与モダリティは、通常、担体の性質を決定する。例えば、非経口投与のための製剤は、水溶性形態の活性化合物の水性溶液を含むことができる。非経口投与に好適な担体は、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、及び他の生理学的に適合性のある溶液から選択することができる。非経口投与のための好ましい担体は、生理学的に適合性のある緩衝剤、例えば、ハンクス溶液、リンガー溶液、又は生理緩衝食塩水である。組織又は細胞投与のために、透過されるべき特定の障壁に適した浸透剤が製剤中に使用される。そのような浸透剤は、通常、当技術分野で公知である。タンパク質を含む調製物については、該製剤は、安定化材料、例えば、ポリオール(例えば、スクロース)及び/又は界面活性剤(例えば、非イオン性界面活性剤)などを含むことができる。
或いは、非経口使用のための製剤は、適当な油性の注射懸濁液として調製された活性化合物の懸濁液を含むことができる。好適な親油性の溶媒又はビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油及びオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、又はリポソームが挙げられる。水性注射懸濁液は、該懸濁液の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、又はデキストランを含有することができる。任意に、懸濁液は、好適な安定化剤又は化合物の溶解度を増大させて高度に濃縮された溶液の調製を可能にする薬剤を含有することもできる。乳化剤又は分散剤(界面活性材料;界面活性剤)によって任意に安定化された、エマルジョン、例えば、水中油型及び油中水型分散剤を使用することもできる。活性剤を含有する上記のようなリポソームを非経口投与に利用することもできる。
コンジュゲートそれ自体及び該コンジュゲートの製剤の特性は、投与されたコンジュゲートの物理的状態、安定性、インビボでの放出速度、及びインビボでのクリアランス速度に影響を与えることができる。そのような薬物動態学的及び薬力学的な情報は、後に臨床試験の過程においてヒトで確認される前臨床的なインビトロ及びインビボ研究を通じて収集することができる。インビボでの動物データに基づいてヒト臨床試験を実施するための指針は、例えば、http://www.clinicaltrials.govを含む、いくつかのソースから得ることができる。したがって、本技術の方法において使用される任意の化合物について、哺乳動物、特にヒトにおける治療有効用量は、最初は、生化学的及び/又は細胞ベースのアッセイから推定することができる。その後、投薬量を動物モデルで定式化して、コンジュゲート活性を調節する所望の循環濃度範囲を取得することができる。ヒトでの研究が行われるにつれて、様々な疾患及び疾病についての適切な投薬量レベル及び治療期間に関するさらなる情報が明らかになるであろう。
コンジュゲートの毒性及び治療有効性を、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)及びED50(集団の50%において治療に有効な用量)を決定するための、細胞培養物又は実験動物における標準的な製薬手順によって決定することができる。
さらなる活性剤を本技術の組成物に含めることもできる。さらなる活性剤、例えば、抗腫瘍剤(増殖性細胞に対して活性のある薬剤)は、細胞を第一活性剤と接触させる前に、それと同時に、又はその後に、該組成物において利用することができる。例えば、ウレアーゼが、腫瘍細胞にターゲッティングされた後に、それは、例えば、pH変化を介して、腫瘍外部環境を調節する(modulate)又は調節する(regulate)能力を有する可能性がある。塩基性の環境を好む抗腫瘍剤などの活性剤は、その場合、より効果的となるであろう。
ある態様において、ウレアーゼによって酵素的に処理されることができる基質は、活性剤としての使用が想定される。いくつかの態様において、活性剤は、ウレアーゼがアンモニウムイオンを形成させるために利用し得る基質、例えば、尿素である。
例示的な抗腫瘍剤としては、サイトカイン及び他の部分、例えば、インターロイキン(例えば、IL-2、IL-4、IL-6、IL-12など)、形質転換成長因子-β、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、インターフェロン(例えば、γ-インターフェロン)、コロニー刺激因子(例えば、GM-CSF、M-CSFなど)、血管透過性因子、レクチン炎症反応促進因子(セレクチン)、例えば、L-セレクチン、E-セレクチン、P-セレクチン、及びタンパク質性部分、例えば、C1q及びNK受容体タンパク質が挙げられる。さらなる好適な抗腫瘍剤としては、血管新生を阻害し、したがって、転移を阻害する化合物が挙げられる。
そのような薬剤の例としては、プロタミンメドロキシプロゲステロン、ペントサンポリサルフェート、スラミン、タキソール、サリドマイド、アンギオスタチン、インターフェロン-α、メタロプロテイナーゼ阻害剤、血小板第4因子、ソマトスタチン、トロモボスポンジン(thromobospondin)が挙げられる。本技術によって有用な活性剤の他の代表的かつ非限定的な例としては、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ブスルファン、クロラムブシル、スピロプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、メトトレキセート、アドリアマイシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、シトシンアラビノシド、アラビノシルアデニン、メルカプトプリン、ミトタン、プロカルバジン、ダクチノマイシン(アンチノマイシンD)、ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、タキソール、プリカマイシン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、フルタミド、ロイプロリド、酢酸メゲストロール、タモキシフェン、テストラクトン、トリロスタン、アムサクリン(m-AMSA)、アスパラギナーゼ(L-アスパラギナーゼ)、エトポシド、ヘマトポルフィリンなどの血液製剤、又は前述のものの誘導体が挙げられる。活性剤の他の例としては、遺伝物質、例えば、組換えRNA及びDNAを含む、天然又は合成起源の核酸、RNA、及びDNAが挙げられる。あるタンパク質をコードするDNAを、多くの異なるタイプの疾患の治療において使用することができる。例えば、腫瘍壊死因子又はインターロイキン-2遺伝子を、進行癌を治療するために提供してもよく;チミジンキナーゼ遺伝子を、卵巣癌又は脳腫瘍を治療するために提供してもよく;かつインターロイキン-2遺伝子を、神経芽腫、悪性黒色腫、又は腎臓癌を治療するために提供してもよい。本技術における使用が想定されるさらなる活性剤は、その全体が引用により本明細書中に組み込まれる米国特許第6,261,537号に記載されている。抗腫瘍剤及びそのような薬剤を検出するためのスクリーニングは、Monga, M.及びSausville, E.A.らの文献(2002) Leukemia 16(4):520-6で概説されている。
いくつかの態様において、活性剤は、弱塩基性の抗腫瘍化合物であり、その有効性は、固形腫瘍における細胞内でより高い/細胞外でより低いpH勾配によって低下する。例示的な弱塩基性の抗腫瘍化合物としては、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ミトキサントロン、エピルビシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、ビンカアルカロイド、例えばビンブラスチン及びビンクリスチン、アルキル化剤、例えば、シクロホスファミド及び塩酸メクロレタミン、並びに抗新生物性のプリン及びピリミジン誘導体が挙げられる。
(送達及び投与の方法)
抗VEGFR-2-ウレアーゼコンジュゲート組成物を、当技術分野で公知のいくつかの方法によって癌細胞に送達することができる。治療的適用において、該組成物は、癌細胞の成長を阻害するのに十分な量で、癌細胞を有する患者に投与される。医薬組成物を、非経口的、経腸的、経上皮的、経粘膜的、経皮的、及び/又は外科的なものを含むが、これらに限定されない、いくつかの経路による投与によって癌細胞に曝露することができる。
非経口投与モダリティとしては、組成物が、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、髄内、筋肉内、関節内、髄腔内、及び脳室内注射、皮下、性腺内、もしくは腫瘍内ニードルボーラス注射、又は長期連続的、拍動性、もしくは計画的灌流、又は適切なポンプ技術を用いるマイクロ注入によって投与されるものが挙げられる。経腸投与モダリティとしては、例えば、経口(頬側及び舌下を含む)並びに直腸内投与が挙げられる。経上皮投与モダリティとしては、例えば、経粘膜投与及び経皮投与が挙げられる。経粘膜投与としては、例えば、経腸投与、並びに経鼻、吸入、及び深肺投与、膣内投与、及び直腸内投与が挙げられる。経皮投与としては、例えば、パッチ及びイオン泳動装置、並びにペースト、膏薬、又は軟膏の外用を含む、受動的又は能動的な経皮(transdermal)又は経皮(transcutaneous)モダリティが挙げられる。外科的技法としては、デポ(リザーバー)組成物、浸透圧ポンプなどの埋め込みが挙げられる。
対象によって必要とされかつ忍容される投薬量及び頻度に応じて、活性剤の単回又は複数回投与を実施することができる。いかなる場合でも、組成物は、対象を有効に治療するのに十分な量の活性剤を提供すべきである。
使用される医薬組成物は、有効量で対象に投与される。一般に、有効量は、(1)治療することが求められる疾患の症状を軽減するか;又は(2)治療することが求められる疾患を治療することと関連性のある薬理学的変化を誘導するかのいずれかに有効な量である。癌については、有効量は:腫瘍のサイズを低下させるか;腫瘍の成長を減速させるか;転移を予防もしくは阻害するか;又は罹患対象の平均余命を増加させるのに有効な量を含むことができる。接触させることは、細胞に、ターゲッティング部分、及び選択された電荷と、第二の反対の電荷を有するコイル形成性ペプチドと相互作用して、安定なα-ヘリックス状コイルドコイルヘテロ二量体を形成する能力とを特徴とする第一のコイル形成性ペプチドとを含むコンジュゲートを添加することを含む。
(投薬量)
本技術の方法については、投与のタイミング及び順序を調節する任意の有効な投与レジメンを使用することができる。ヒト対象についての例示的な投薬量レベルは、投与様式、腫瘍の程度(サイズ及び分布)、患者のサイズ、並びに癌のウレアーゼ治療に対する応答性によって決まる。
抗VEGFR-2-ウレアーゼコンジュゲート組成物が腫瘍に投与される、例えば、腫瘍内に直接注射される場合、例示的な用量は、約0.1〜1,00010μg/kg体重、例えば、約0.2〜5μg/kg、約0.5〜2μg/kg、約5.0〜約14.0μ/kgである。注射針の配置は、医師が標的組織に対する針の位置を見ることができるように、従来の画像誘導技法、例えば、蛍光透視法によって誘導することができる。そのような誘導ツールとしては、超音波、蛍光透視法、CT、又はMRIを挙げることができる
いくつかの態様において、投与された用量の抗VEGFR-2-ウレアーゼコンジュゲートの有効性又は分布を、抗VEGFR-2-ウレアーゼコンジュゲートの腫瘍への投与の間又は後に、腫瘍組織を、対象の癌性組織領域内のpHの変化を検出することができるツールでモニタリングすることによりモニタリングすることができる。そのようなツールとしては、腫瘍内に直接挿入することができるpHプローブ、又は磁気共鳴イメージング(MRI)、コンピュータ断層撮影法(CT)、もしくは蛍光透視法などの可視化ツールを挙げることができる。追加の造影剤の非存在下で、単にpHの関数としての組織の磁気的性質の違いに基づいて、MRI調査を実施することができる。CT又は蛍光透視イメージングは、その不透明度が組織媒体のpHによって影響を受ける追加のpH感受性造影剤を必要とする場合がある。そのような薬剤は、当業者に周知である。
抗VEGFR-2-ウレアーゼコンジュゲート投与の前に、腫瘍組織を周囲の正常組織と比べたそのより低いpHによって可視化することができる。このように、正常組織は、約7.2の正常なpHを有する可能性があるのに対し、腫瘍組織は、0.1〜0.4 pH単位又はそれを上回って低い可能性がある。すなわち、抗体-ウレアーゼコンジュゲートを注射する前に、腫瘍組織の程度を、そのより低いpHによって規定することができる。ウレアーゼ投与後、ウレアーゼを有する腫瘍領域のpHは上昇し始め、得られる画像を以前の投与前画像と比較することにより特定することができる。
このように組織を調査することにより、pHの変化の度合い及び罹患組織の程度をモニタリングすることができる。この調査に基づいて、医師は、さらなる組成物をその部位に投与することができ、かつ/又は組成物を腫瘍部位内のさらなる領域で投与することができる。この手順を、所望のpH変化の度合い、例えば、0.2〜0.4 pH単位が固形腫瘍の全領域にわたって達成されるまで繰り返すことができる。
直接的な注射によるものなどの投与を、所望のエンドポイントが、好ましくは、腫瘍塊の実質的な又は完全な退縮が観察されるまで、好適な間隔で、例えば、毎週又は週2回繰り返すことができる。治療有効性を、治療経過中の治療された組織のpHの変化を可視化することにより、上記のようにモニタリングすることができる。したがって、各々の追加の注射の前に、組織のpHを可視化して、現存している腫瘍の程度を決定することができ、その後、組織のpHの変化を用いて、新たな用量の抗VEGFR-2-ウレアーゼ組成物の該組織への投与をモニタリングすることができる。
組織pHの変化に対して感受性のあるイメージング技法を用いて、投与された用量の有効性をモニタリングすることができる。そのようなターゲッティングには、数時間以上かかる場合があるので、本方法は、抗VEGFR-2-ウレアーゼコンジュゲート組成物の注射の前、及び投与の数時間、例えば、12〜24時間後に、上記のように、腫瘍pHをモニタリングして、腫瘍領域のpHの上昇から明らかなように、腫瘍部位に適切に投与されていることを確認することを含むことができる。この調査の結果次第で、本方法は、所望のpHの上昇、例えば、0.2〜0.4 pH単位の上昇が観察されるまで、さらなる投与を指示することができる。ひとたびこの用量が確立されれば、腫瘍のサイズ又は状態の変化が達成されるまで、患者を、同様の用量のウレアーゼ組成物で、定期的に、例えば、週1回又は2回、治療することができる。
最終的な投薬レジメンは、担当医師によって、優良医療規範に鑑みて、薬物の作用を修飾する様々な因子、例えば、薬剤の比活性、疾患状態の重症度、患者の応答性、患者の年齢、状態、体重、性別、及び食事、何らかの感染症の重症度などを考慮して決定される。考慮され得るさらなる因子としては、投与の時間及び頻度、薬物組合せ、反応感度、及び療法に対する忍容性/応答が挙げられる。本明細書で言及された製剤のいずれかを伴う治療に適した投薬量のさらなる改良は、当業者によって、特に、開示された投薬量情報及びアッセイ、並びに臨床試験において観察された薬物動態学的データを考慮して、ルーチンに行われる。適切な投薬量は、体液又は他の試料中の薬剤の濃度を決定するための確立されたアッセイを用量応答データとともに使用することにより確認することができる。
投与の頻度は、薬剤の薬物動態学的パラメータ及び投与経路によって決まる。投薬量及び投与は、十分なレベルの活性剤を提供するように、又は所望の効果を維持するように調整される。したがって、医薬組成物を、必要に応じて、単一用量、複数の個別用量、連続注入、持続放出デポ、又はこれらの組合せで投与して、所望の最小限のレベルの薬剤を維持することができる。
短時間作用型医薬組成物(すなわち、短い半減期)は、1日に1回又は1日に複数回(例えば、1日に2回、3回、又は4回)投与することができる。長時間作用型医薬組成物は、3〜4日毎に、毎週、2週間毎に1回投与することができる。連続注入のための、皮下、腹腔内、又は硬膜下ポンプなどのポンプ。
抗VEGFR-2-ウレアーゼコンジュゲートを医薬として許容し得る担体中に含む組成物を調製し、適切な容器に入れ、表示された状態の治療についてラベルすることができる。ラベルに表示される状態としては、様々な癌タイプの治療を挙げることができるが、これらに限定されない。下記のようなキットも想定され、ここで、該キットは、医薬組成物の剤形及び医学的状態の治療における該組成物の使用説明書を含む添付文書を含む。
通常、抗VEGFR-2-ウレアーゼコンジュゲート組成物は、有効量で対象に投与される。通常、有効量は、(1)治療することが求められる疾患の症状を軽減するか;又は(2)治療することが求められる疾患を治療することと関連性のある薬理学的変化を誘導するかのいずれかに有効な量である。癌については、有効量は:腫瘍のサイズを低下させるか;腫瘍の成長を減速させるか;転移を予防もしくは阻害するか;又は罹患対象の平均余命を増加させるのに有効な量を含むことができる。
(治療の方法)
本抗VEGFR-2-ウレアーゼコンジュゲートは、対象における癌を治療する方法であって、該対象に、本明細書に提供される抗VEGFR-2-ウレアーゼコンジュゲート組成物の治療有効量を投与することを含み、それにより、該対象における癌を治療する、方法を提供する。本明細書における方法による治療に好適な癌としては、通常、VEGFR-2を発現する任意の癌が挙げられる。
いくつかの態様において、治療されることになる癌は、固形腫瘍、例えば、癌腫、肉腫、黒色腫、及びリンパ腫を形成する。いくつかの態様において、該癌は、非小細胞性肺癌、乳癌、膵癌、卵巣癌、肺癌、結腸癌、又はこれらの組合せのうちの1つ又は複数である。いくつかの態様において、該癌は、非小細胞性肺癌である。いくつかの態様において、該対象は、ヒトである。
治療有効用量は、当技術分野で周知の方法によって推定することができる。マウス腫瘍を有する免疫適格マウス又はヒト腫瘍異種移植片を有する免疫不全マウス(例えば、ヌードマウス)などの癌動物モデルは、当技術分野で周知であり、かつ参照のために本明細書中に組み込まれている多くの参考文献に広く記載されている。そのような情報は、ヒトにおける安全かつ潜在的に有用な初期用量を決定するために、ラット、イヌ、及び/又は非ヒト霊長類における安全性研究と組み合わせて使用される。生物の用量を推定するための追加の情報は、実際のヒトの癌における研究、報告された臨床試験から得られる可能性がある。
いくつかの態様において、癌の治療の方法は、癌の少なくとも1つの症状を治癒させること、及び改善させることを包含することが意図される。患者の癌が治癒した場合、癌が寛解に達した場合、生存時間が統計的に有意に延長された場合、腫瘍増悪までの時間が統計的に有意に増加した場合、固形腫瘍負荷が固形腫瘍における応答評価基準(RECIST 1.0又はRECIST 1.1、Therasseらの文献、J Natl. Cancer Inst. 92(3):205-216, 2000、及びEisenhauerらの文献、Eur. J. Cancer 45:228-247, 2009)によって定義されるように減少した場合、癌患者は治療されたこととなる。本明細書で使用される場合、「寛解」は、癌の証拠を以前に有していた患者において、成長する癌細胞が存在しないことを指す。したがって、寛解期の癌患者は、その癌が治癒したか、又は癌が存在するがすぐには検出できないかのいずれかである。したがって、癌は、腫瘍が拡大も転移もしない場合に、寛解している可能性がある。本明細書で使用される完全寛解は、イメージング、例えば、x線、MRI、CT、及びPET、又は生検などの診断法によって示される疾患が存在しないことである。癌患者が寛解となった場合、これに再発が続く可能性があり、その場合、癌が再出現する。
(キット)
いくつかの態様において、本技術は、本明細書に記載される方法を用いて腫瘍細胞の成長を阻害するためのキットを提供する。該キットは、抗VEGFR-2-ウレアーゼコンジュゲートを含有する容器を含む。該キットは、本技術の方法の実施のための本明細書に記載される他の成分のうちのいずれかをさらに含むことができる。該キットは、任意に、腫瘍細胞成長を阻害するための活性剤の使用を開示する指示書(すなわち、プロトコル)を含む説明資料を含むことができる。したがって、一態様において、該キットは、対象における癌の治療のための、抗VEGFR-2-ウレアーゼコンジュゲート組成物を含有する医薬組成物、及び該対象への該組成物の投与を教示する説明資料を含む。一態様において、該説明資料は、該組成物が直接的な注射によって腫瘍内に投与される場合には、腫瘍のサイズに依存し、かつ腫瘍1mm3当たり0.1〜100国際単位ウレアーゼ活性である量で、及び該組成物が腫瘍内への直接的な注射以外で対象に非経口投与される場合には、対象の体重1kg当たり100〜100,000国際単位/kg国際単位ウレアーゼ活性の量で、ウレアーゼ組成物を対象に投与することを教示する。
別の態様において、説明資料は、ウレアーゼ組成物を、その有効性が固形腫瘍における細胞内でより高く/細胞外でより低いpH勾配によって低下する弱塩基性の抗腫瘍化合物も投与されている対象に、固形腫瘍における細胞内でより高く/細胞外でより低いpH勾配を低下又は逆転させるのに有効なウレアーゼの量で投与することを教示する。
或いは、説明資料は、ウレアーゼ組成物を、固形腫瘍を含有するか又は含有することが疑われる対象に、ウレアーゼを対象における固形腫瘍に局在化させるのに有効な条件下で投与すること、該対象を、対象の組織における細胞外pHの変化を検出することができる診断ツールを用いて調査すること、及び該投与することの後に、細胞外pHの上昇を示す該対象内の組織領域を特定することを教示する。
説明資料は、典型的には、書かれた又は印刷された資料を含むが、これらは、そのようなものに限定されない。そのような説明書を保存し、かつそれを末端利用者に伝達することができる任意の媒体が本技術によって想定される。そのような媒体としては、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CD ROM)などが挙げられるが、これらに限定されない。そのような媒体は、そのような説明資料を提供するインターネットサイトのアドレスを含むことができる。
(実験的実施例)
本発明を、以下の実験的実施例を参照して、さらに詳細に説明する。これらの実施例は、別途特定されない限り、例示する目的のためだけに提供されており、限定することを意図するものではない。したがって、本発明は、決して、以下の実施例に限定されるものとみなされるべきではなく、むしろ、本明細書に提供される教示の結果として明白になるありとあらゆるバリエーションを包含するものとみなされるべきである。
以下の実施例は、従来の方法、例えば、ベクター及びプラスミドの構築、そのようなベクター及びプラスミドへのポリペプチドをコードする遺伝子の挿入、又は宿主細胞へのプラスミドの導入において利用されている方法の詳細な説明を含まない。そのような方法は、当業者に周知であり、引用により本明細書中に組み込まれる、Sambrook, J.、Fritsch, E. F.、及びManiatis, T.の文献(1989)、分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Pressを含む、多くの刊行物に記載されている。
これ以上の説明はなくても、当業者は、これまでの説明及び以下の例示的実施例を用いて、本発明の化合物を作製し、利用し、かつ請求された方法を実施することができると考えられる。それゆえ、以下の作業実施例は、本発明の典型的な態様を具体的に指摘するものであり、いかなる方法によっても、本開示の残りの部分を限定するものとみなされるべきではない。
(実施例1:抗VEGFR-2抗体の作製)
VEGFR-2の細胞外ドメインを標的とするラクダ科動物の単一ドメイン抗体を作製するために、リャマに、組換えVEGFR-2/Fcで免疫した。ファージディスプレイライブラリーを作製し、スクリーニングして、VEGFR-2に対する高い結合親和性を有する単一ドメイン抗体を同定した。
VEGFR-2の細胞外ドメインを標的とするヒト単一ドメイン抗体を作製するために、ヒトVHライブラリーをスクリーニングして、VEGFR-2に対する高い結合親和性を有する単一ドメイン抗体を同定した。
融合パートナー配列
を配列番号2及び配列番号11(AB1及びAB2)の配列のN-末端に付加して、発現タンパク質を封入体に蓄積させ、かつタンパク質精製及びリフォールディングプロセスを効果的に簡略化することにより、抗体の収率を増大させた。
4つの抗体を作製し、さらに検討した。選択された抗体を大腸菌BL21(DE3) pT7システムで発現させた。これらの抗体のうちの2つ(AB2(配列番号13)及びAB3(配列番号21))は、ヒト抗体スキャフォールドに基づくものであり、2つの配列番号7及び27(AB1及びAB4)は、リャマ起源のものである。これらの抗体は、特異的なVEGFR-2結合の潜在的候補とみなされるのに十分な品質のものである結合動力学を示した(表1)。
(表1.抗体の特徴解析)
(実施例2:ヒトVEGFR-2/Fcバインダー)
ヒト配列番号13(AB2)及び配列番号21(AB3)並びにリャマ配列番号7(AB1)及び配列番号27(AB4)と固定化されたヒト及びマウスVEGFR-2/Fcとの相互作用についての結合動力学をBiacore 3000システムを用いるSPRによって決定した。12,000RUのヒトVEGFR2/Fc(R&D Systems)、14,000RUのマウスVEGFR-2/Fc(R& D Systems)、又は参照タンパク質としての7500RUのBSA(Sigma)を、それぞれ、研究等級のCM5-センサーチップ(Biacore)上に固定化した。固定化を、製造元によって供給されたアミンカップリングキットを用いて、10mM酢酸塩pH 4.5中、50μg/mlタンパク質濃度で実施した。全ての抗体試料をSuperdex 75カラム(GE Healthcare)に通して、Biacore解析に供される単量体形態を分離した。
どの場合においても、解析は、150mM NaCl、3mM EDTA、及び0.005%界面活性剤P20を含む10mM HEPES、pH 7.4中、25℃で、40μl/分の流速で実施した。3〜8秒の接触時間の10mM HClを用いて、表面を再生した。データをBIAevaluation 4.1ソフトウェアで解析した。4つの抗体は全て、主に単量体のピークを示した。(図1、サイズ排除カラムクロマトグラム)。サイズ排除カラムクロマトグラフィーの条件:機器: AKTA FPLC(GE healthcare); Superdex 75 HR 10/30カラム(Amersham, Cat. No. 17-1047-01, Id No. 9937116);泳動緩衝液: HBS-EP(10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、pH7.4、0.005%P20);及び4×HBS-Eを4倍希釈し、10%のP20界面活性剤を添加して、最終0.005%にした。試料容量: 200μl。ポンプスピード: 0.5ml/分。
該抗体はいずれも、150〜200nMの濃度で、固定化されたマウスVEGFR-2/Fcとの結合を示さなかったが、全て、固定化されたヒトVEGFR-2/Fcとの結合を示した(表1及び図2)。これらのデータは、該抗体が種特異的であるということを示している。配列番号7(AB1)は、SPR表面上では解離しにくく、センサーグラムデータ(図2)の標準的な動力学モデルへの直接的な当てはめを複雑にした。それゆえ、配列番号7(AB1)の動力学定数は、図3に示される変換データから推定した。
(実施例3:ヒト及びリャマ抗体のヒトVEGFR-2/Fcとの結合)
(a)配列番号13(AB2)、(b)配列番号21(AB3)、(c)配列番号7(AB1)、(d)配列番号27(AB4)と、それぞれ、(a)0.1、0.2、0.3、0.5、1、及び2μM、(b)0.2、0.3、0.5、0.75、1、1.5、2、及び3μM、(c)0.15、0.25、0.5、1、2、及び4μM、(d)75、150、225、300、375、525、及び750nMの濃度の固定化されたヒトVEGFR-2/Fcとの結合を示すセンサーグラムオーバーレイが図2に示されている。
(実施例4:)
(ヒトVEGFR-2/Fcに対するAB1の結合の動力学定数解析)
0.1、0.15、0.25、0.5、0.75、1、2、及び4μMの濃度でのAB1の導出データが図3に示されている。濃度対-ks(1μM未満の濃度を示す切片)のプロット。
(実施例5:エピトープマッピング)
2つの異なる抗体を>4×KDの濃度で次々と同時注入した。結果は、図4A及び図4Bに示されている。はっきりとした重複が、配列番号13(AB2)、配列番号21(AB3)、及び配列番号27(AB4)で見られた。いくらかの重複が配列番号7(AB1)で見られた。
エピトープ情報は、競合的ELISA実験でも提供された(図7)。AB3(配列番号23)-ウレアーゼコンジュゲートは、カップリングされていないAB2(配列番号13)抗体によって阻害され、2つのヒト抗体が少なくとも一部重なり合うエピトープを共有していることが示唆された。カップリングされていないAB3(配列番号21)抗体も、極めて高いモル比のときのみであったが、AB1(配列番号9)-DOS47の結合を一部阻害した。
(実施例6: VEGFR-2との結合及びVEGFR-1及びVEGFR-3に対する交差反応性)
4つ全ての単一ドメイン抗体を用いて、ウレアーゼ(「DOS47」)コンジュゲートを作製した。これらのコンジュゲートを、抗原VEGFR-2に結合するその能力、そして同じく、VEGFR-1及びVEGFR-3と交差反応するその能力について試験した(図5)。4つ全てのコンジュゲートは、VEGFR-2を標的とすることができ、VEGFR-1に対するある程度の交差反応性を有していたが、VEGFR-3に対する検出可能な結合は観察されなかった。結果が、配列番号9、配列番号13、配列番号23、及び配列番号27(それぞれ、リンカーを含む、AB1、AB2、AB3、及びAB4)について示されている。
(実施例7: VEGF競合アッセイ)
ウレアーゼコンジュゲートを、VEGFと競合的に結合するその能力についても試験した。これは、該抗体がVEGF結合ポケット付近の領域を認識するかどうかを評価するために行われた。この解析の例は、図6に提供されている。これにより、2つのヒト抗体-ウレアーゼコンジュゲート(AB2-(配列番号13)及びAB3-(配列番号23) DOS47)とVEGFR-2との結合がVEGFによって競合的に阻害されたということを理解することができる。しかしながら、最大阻害は、AB2-(配列番号13) DOS47については〜40%、及びAB3-(配列番号23) DOS47については〜60%でプラトーに達することが分かった。これにより、AB2及びAB3がVEGF結合ポケット付近にしか結合しないことが示唆された。VEGFは、VEGFR2に対するAB1-(配列番号9) DOS47複合体の結合に対して最小限の効果を有した。したがって、AB1は、VEGF結合ポケットから遠い部位に結合すると思われる。AB4-(配列番号27) DOS47とVEGFR2との結合はVEGFの存在によって強化され、AB4抗体がVEGFR2のみよりもVEGF/VEGFR2複合体と良好に結合することが示唆された。
(実施例8: 293/KDR細胞上に発現されたVEGFR2に対する抗体結合)
フローサイトメトリー実験を実施して、抗体及び/又は抗体-ウレアーゼコンジュゲートと293/KDR細胞との結合を試験した。293/KDR細胞は、ヒトVEGFR2(別名、KDR)を発現するように安定にトランスフェクトされた293細胞である。図8Aは、ビオチン化AB1抗体(配列番号6)と293/KDR細胞との結合を示している。この結合は、モル濃度過剰の遊離AB1抗体によって阻害されるが、無関係な抗体では阻害されない。図8Bは、AB1-(配列番号6)ウレアーゼコンジュゲート及びAB2-(配列番号18)ウレアーゼコンジュゲートと293/KDR細胞との結合を示している。図8に示された結果により、本明細書に記載されるAB1抗体及びAB2抗体が293/KDR細胞上に発現されるVEGFR2に結合することが確認される。
(実施例9)
V21-DOS47は、ラクダ科動物単一ドメイン抗VEGFR2抗体(V21)と酵素ウレアーゼ(DOS47)から構成される。該コンジュゲートはVEGFR2に特異的に結合し、ウレアーゼは内在性尿素を腫瘍細胞にとって毒性のあるアンモニアに変換する。以前、本発明者らは、同様の抗体-ウレアーゼコンジュゲートL-DOS47を開発した。これは、現在、非小細胞肺癌に対して臨床試験中である。V21-DOS47はL-DOS47の作製から習得したパラメータから設計されたが、V21-DOS47を産生するために、さらなる作業が必要であった。本研究において、本発明者らは、V21抗体の2つのバージョン: V21H1(配列番号3)及びV21H4(配列番号6)の発現及び精製を記載している。各々を、異なる化学的クロスリンカーを用いて、ウレアーゼにコンジュゲートした。該コンジュゲートを、SDS-PAGE、SEC、ウェスタンブロッティング、及びLC-MSEペプチドマッピングを含む分析手法のパネルによって特徴解析した。結合特徴は、ELISA及びフローサイトメトリーアッセイによって決定した。
該コンジュゲートの生理的pHでの安定性を改善するために、いくつかのアミノ酸残基をC-末端に付加することにより、V21抗体のpIを調整した。V21H4については、コンジュゲーション化学での使用のために末端システインも付加した。修飾されたV21抗体を大腸菌BL21(DE3) pT7システムで発現させた。抗体のリジン残基を標的とするヘテロ二官能性クロスリンカーのスクシニミジル-[(N-マレイミドプロピオンアミド)-ジエチレングリコール]エステル(SM(PEG)2)を用いて、V21H1をウレアーゼにコンジュゲートした。抗体C-末端に付加されたシステインを標的とするホモ二官能性クロスリンカーの1,8-ビス(マレイミド)ジエチレングリコール(BM(PEG)2)を用いて、V21H4をウレアーゼにコンジュゲートした。V21H4-DOS47は、優れたコンジュゲートであると決定されたが、それは、該抗体が高レベルで容易に産生及び精製され、かつ該コンジュゲートがcGMP生産に容易に移行可能な方法を用いて効率的に作製及び精製することができるからである。さらに、V21H4-DOS47は、天然のリジン残基が未修飾であるので、V21H1-DOS47よりも高い結合活性を保持している。
本発明者らは、血管新生を抑制するための抗体-薬物コンジュゲート(ADC)アプローチを開発した。VEGFR2の二量体化を遮断することによるか又はキナーゼ活性を阻害することによりキナーゼシグナル伝達カスケードを中断するほとんどの抗血管新生剤とは異なり、本発明者らの抗体-薬物コンジュゲートV21-DOS47は、標的細胞で細胞傷害活性を誘導することにより、VEGFR2発現細胞を死滅させる。本発明者らの以前の抗腫瘍免疫コンジュゲートであるL-DOS47(Tianらの文献、2015)と同様、V21-DOS47は、ラクダ科動物抗体と酵素ウレアーゼ(タチナタマメ、カナウァリア・エンシフォルミス(Canavalia ensiformis)に由来する)から構成されており: V21抗体がVEGFR2に結合し、それにより、複合体をVEGFR2発現細胞にターゲッティングするのに対し、ウレアーゼ酵素は内在性尿素をその場所でアンモニアに変換して、細胞傷害性を誘導する。VEGFR2は、腫瘍血管系で発現されているだけでなく、種々の腫瘍の表面でも確認されているので(Itakuraらの文献、2000; Tannoらの文献、2004; Guoらの文献、2010)、V21-DOS47は、VEGFR2+血管内皮細胞とVEGFR2+腫瘍細胞の両方を標的とする。アンモニアの局所濃度の上昇はまた、本来なら癌細胞成長にとって有利である腫瘍微小血管系の周囲の酸性環境を中和する(Wongらの文献、2005)。ウレアーゼは植物性産物であり、哺乳動物ホモログは知られていないので、それは、免疫原性である可能性が高いが、自己免疫反応は考えられない。L-DOS47は、現在、臨床試験で検討中であり、結果は、抗ウレアーゼ抗体が形成されるが、既知の重度の免疫毒性は観察されないことを示している。ウレアーゼの免疫原性の完全な影響は、依然として、調査中である。
ラクダ科動物抗体の1つの利点は、従来の免疫グロブリン(約150kDa)と比較してそのサイズが比較的小さい(約15kDa)ことである。これは、抗体をウレアーゼにカップリングするときに特に重要であるが、それは、ウレアーゼが分子量544kDaの巨大タンパク質であるからである。リャマ抗体を使用することにより、多数の抗体を、分子量全体の増加を比較的小さくして、各々のウレアーゼ分子にカップリングすることができる。これにより、許容し得る生態分布プロファイルを保持する高結合力の治療用試薬の作製が可能になる。ラクダ科動物抗体(De Genstらの文献、2006; Maassらの文献、2007; Harmsen及びDe Haardの文献、2007)の他の利益は、それがクローニングし易く、かつ組換え発現し易く(Arbabi Ghahroudiらの文献、1997; Frenkenらの文献、2000)、一般に、従来のIgGよりも熱的に及び化学的に安定であり(van der Lindenらの文献、1999; Dumoulinらの文献、2002)、かつそれが従来の抗体によって認識されないエピトープに結合することである(Lauwereysらの文献、1998)。さらに、ラクダ科動物抗体は、特に免疫原性であるというわけではないが、それは、ヒトVHドメインとラクダ科動物VHHドメインが約80%の配列同一性を共有し(Muyldermansらの文献、2001)、腎クリアランスが大きい(Cortez-Retamozoらの文献、2002)からである。
抗体-ウレアーゼコンジュゲートは複合体の巨大タンパク質であり:ウレアーゼ1つ当たりに多数の抗体を含み、該コンジュゲートの分子量は680kDaに達することがある。これは、大規模生産への課題をもたらす。本発明者らの以前の報告において、本発明者らは、これらの課題に対処するために設計されたコンジュゲーション化学及び分離手順を記載した(Tianらの文献、2015)。本研究において、本発明者らは、新規の抗体-ウレアーゼコンジュゲートV21-DOS47を作製するために、さらなる抗体生産及びコンジュゲーション化学法を評価した。
VEGFR2に対する高親和性抗体を作製するために、リャマに、組換えVEGFR2で免疫し、VHHファージディスプレイライブラリーを作製した。このライブラリーを組換えVEGFR2でパニングすることにより、V21抗体を単離した。複数の目的を果たすために:抗体pIを最適化するために、抗体発現を細菌封入体に向けるために、及び架橋化学反応の固有の標的を提供するために、さらなるアミノ酸残基をV21抗体のC-末端に付加した。この報告において、本発明者らは、V21H1及びV21H4と表記される2つのバージョンのV21抗体、並びに各々の抗体をウレアーゼにコンジュゲートするために使用された様々な方法を記載している。両方の抗体-ウレアーゼコンジュゲートを、サイズ排除クロマトグラフィー(タンパク質純度を評価するため)、SDS-PAGE(ウレアーゼ1つ当たりにコンジュゲートされた抗体の平均数を決定するため)、及びESI質量分析(抗体とウレアーゼの両方におけるコンジュゲーション部位を同定するため)を含む、種々の分析手法で特徴解析した。コンジュゲーション比の効果を検討し、同じコンジュゲーション比を有する2つのコンジュゲートの結合を比較した。細胞表面で発現されるVEGFR2との結合は、フローサイトメトリーによって確認した。
(材料及び方法)
(高純度ウレアーゼ(HPU)の精製)
粗ウレアーゼ(Cat#U-80、236U/mg)をBioVectra社(Charlottetown, PE Canada)から購入した。コンジュゲーションにおいて使用する前に、粗ウレアーゼを精製して、カナバリン及びコンカナバリンAなどの、タチナタマメのマトリックスタンパク質混入物を除去した。100万単位の粗ウレアーゼを430mlの高純度(HP)水に室温で溶解させた。該溶液を10%(v/v)酢酸でpH 5.15にし、その後、9000rcf及び4℃で40分間遠心分離した。ウレアーゼ含有上清を4℃に冷却し、温度を0〜8℃で維持しながら、冷エタノールを25%(v/v)の最終濃度まで添加することにより分画した。混合物を一晩撹拌し、その後、9000rcf及び4℃で40分間遠心分離した。ペレットを150mlの酢酸塩-EDTA緩衝液(10mM酢酸ナトリウム、1mM EDTA、1mM TCEP、pH 6.5)に再懸濁させ、その後、4℃及び9000rcfで40分間遠心分離した。上清を、Minimate TFFシステム(MWCO 100kDaのMinimate TFFカプセルを備えたMasterflex Model 7518-00)を用いて75mlまで濃縮し、200mlの酢酸塩-EDTA緩衝液で3回透析濾過し、その後、100mlにまで濃縮した。透析濾過したウレアーゼ溶液を回収し、カプセル及びチューブ接続部中の濾過された溶液を50ml酢酸塩-EDTA緩衝液で該システムから放出し、回収された溶液に添加した(総容量〜150ml)。エタノール分画されたウレアーゼ溶液を、Bio-Rad Biologic LPシステムを用いる陰イオン交換クロマトグラフィーによってさらに精製した。該ウレアーゼ溶液を、150mlのIEC緩衝液A(20mMイミダゾール、1mM TCEP、pH 6.5)で予め平衡化した35ml DEAEカラム(DEAE Sepharose Fast Flow, GE Healthcare, Cat#17-0709-01)に、3.5ml/分の流速で充填した。該カラムを100mlのIEC緩衝液Aで洗浄し、その後、80mlの40%緩衝液B(0.180M NaClを含む緩衝液A)で洗浄した。ウレアーゼを3.5ml/分の流速の100%緩衝液Bで溶出させ、A280>0.1の画分をプールした。プール画分を、Minimateカプセルを100kDa MWCO膜とともに用いて、6〜8mg/mlの目標タンパク質濃度まで濃縮し、その後、酢酸塩-EDTA緩衝液(20mM酢酸ナトリウム、1mM EDTA、pH 6.5)に対して透析濾過した。高純度のウレアーゼ(HPU)を-80℃で保存した。この精製プロトコルからの収率は、通常、出発活性の>55%である。
(V21H1及びV21H4の発現)
両方の抗体を、カナマイシンを選択抗生物質として用いて、大腸菌BL21(DE3) pT7システムで発現させた。BL21(DE3)コンピテント大腸菌細胞(Sigma, B2935-10×50μl)の形質転換は、製造元の指示に準拠した。形質転換プレート由来の1つのコロニーを、50mg/Lカナマイシンが補充された200mlのLBブロス(LB培地EZミックス、Sigma Cat# L76581、20 g/L)に無菌的に植菌した。培養物を200rpm及び37℃でインキュベートした。ひとたび該培養物が0.6を超えるOD600に達したら、50mlの培養物を、50mg/Lカナマイシンを含む1LのLBブロスを各々含有する4つの2Lフラスコに移した。フラスコを、振盪式インキュベーター中、200rpm及び37℃でインキュベートした。ひとたび培養物が0.9〜1.0のOD600に達したら、1mM IPTGの添加と200rpm及び37℃で一晩のインキュベーションとによって、抗体発現を誘導した。細胞を遠心分離によって回収し、2L培養物当たり1つでアリコートにした。
(V21H1の精製)
V21H1タンパク質の大部分は、封入体中にではなく、大腸菌サイトゾル溶液中に発現された。細胞ペレットのアリコートを、氷水浴中で10分間の超音波処理(Misonix 3000超音波破砕機、先端部品# 4406;各々の超音波処理サイクル: 30秒間超音波処理、4分間冷却、出力8)によって、100mlの溶解緩衝液(50mM Tris、25mM NaCl、pH 6.5)に溶解させた。溶解物を9000rcf及び4℃で30分間遠心分離した。最も存在量の多い細菌マトリックスタンパク質を除去するために、上清を氷冷エタノールと10%(v/v)の最終濃度まで混合し、氷水浴中で、30分間インキュベートし、その後、9000rcf及び4℃で30分間遠心分離した。上清を氷冷エタノールと45%(v/v)の最終濃度まで混合し、氷水浴中で60分間撹拌し、その後、9000rcf及び4℃で30分間遠心分離した。ペレットを200mlの洗浄緩衝液(50mM酢酸塩、0.1%Triton X-100、1mM DTT、25mM NaCl、pH 5.0)に再懸濁させた。9000rcf及び4℃で30分間遠心分離した後、ペレットを、2mM DTTが補充された100mlのSP緩衝液A(50mM酢酸塩、8M尿素、pH 4.0)に再懸濁させ、0.45μmフィルターに通して濾過した。濾過された溶液を、蠕動ポンプを2ml/分で用いて、1ml SP FFカラム(GE Healthcare、カタログ#17-5054-01)に充填し、その後、該カラムをACTA FPLCシステム(Amersham Bioscience, UPC-920)に接続した。該カラムを、10mlのSP緩衝液Aで、1ml/分で洗浄した後、V21H1抗体を、0〜50%のSP緩衝液B(0.7M NaClを含むSP緩衝液A)の勾配によって、30分間かけて、1ml/分の流速で溶出させた。ピーク画分のOD280を決定し、1.967/mg/mlの減衰係数で濃度を計算した。DTTをSPカラムのピーク画分に1mMの最終濃度まで添加し、溶液のpHを2M Tris-塩基で8〜8.5に調整した。pH調整済みのSPピーク画分を1滴ずつリフォールディング緩衝液(100mM Tris、10μM CuSO4、pH 8.8)に添加し、リフォールディングが完了するまで4℃で連続撹拌することにより、抗体のリフォールディングを実施した。リフォールディングプロセスは、インタクトタンパク質LC-MSによってモニタリングした。リフォールディング後、溶液を9000rcf及び4℃で30分間遠心分離した後、1ml QHPカラムに充填した。該カラムをFPLCシステムに接続し、1ml/分の流速の10mlのQ緩衝液A(50mM HEPES、pH 7.0)で洗浄した。抗体を、0〜40%のQ緩衝液B(0.7M NaClを含むQ緩衝液A)の勾配によって、40分で、1ml/分の流速で溶出させた。8Lの細胞培養物からのピーク画分をプールし、2〜4mg/mlまで濃縮し、20mM HEPES、pH 7.1に対して、4℃で一晩(MWCO 5〜8kDa、体積比1:50)、透析した。最終的なV21H1抗体溶液を0.22μmシリンジフィルターに通して濾過し、4℃で保存した。
(V21H4の精製)
V21H1とは対照的に、V21H4タンパク質の大部分は、大腸菌の封入体中に発現された。各々の2L培養物由来の細胞ペレットを100mlの溶解緩衝液(50mM Tris、25mM NaCl、pH 6.5)に再懸濁させ、リゾチームと0.2mg/mlの最終濃度まで混合した。細胞懸濁液を室温で30分間インキュベートし、その後、氷水浴中、10分間の超音波処理(Misonix 3000超音波破砕機、先端部品# 4406;各々の超音波処理サイクル: 30秒間超音波処理、4分間冷却、出力8)によって溶解した。溶解物を9000rcf及び4℃で30分間遠心分離した。ペレットを、400mlのペレット洗浄緩衝液(50mM Tris、25mM NaCl、pH 6.5、1% Triton X-100、2mM DTT)で2回及び2mM DTTを含有する50mMの酢酸で1回洗浄した。ペレットを、2mM DTTが補充された100mlのSP緩衝液A(50mM酢酸塩、8M尿素、pH 4.0)に再懸濁させ、9000rcf及び4℃で30分間遠心分離した。得られた上清を0.45μmフィルターに通して濾過し、5ml SP-XLカラム(GE Healthcare、カタログ#17-1152-01)に5ml/分の流速で充填した。該カラムを50mlのSP緩衝液Aで洗浄した後、タンパク質を0〜50%のSP緩衝液B(0.7M NaClを含むSP緩衝液A)の勾配によって、30分間かけて、5ml/分の流速で溶出させた。ピーク画分をA280>700mUのときに回収した。DTTをプールされたSPピーク画分に1.0mMの最終濃度まで添加し、pHを飽和Tris塩基でpH 8.6〜8.7に調整した。SPピーク画分をリフォールディング緩衝液(50mM Tris、2M尿素、1.0mM DTT pH 8.6〜8.7)と混合することにより、リフォールディングを開始した。室温で2時間撹拌した後、1.2mMシスタミンをリフォールディング混合物に添加した。リフォールディングを室温で継続し、RP-HPLC(Agilent 1100システム; ZORBAX-C3カラム、PN883750-909;溶媒A:水中0.025%(v/v) TFA;溶媒B:アセトニトリル中0.025%TFA;勾配: 0.25ml/分の流速での30分間にわたる20〜60%B)によってモニタリングした。100μlの試料を様々な時点で回収し、1.0μlの未希釈のギ酸をすぐに添加することにより、酸性化した。30μlの各々の試料をカラムに注入して、クロマトグラムを記録した)。得られたリフォールディング混合物を9000rcf及び4℃で30分間遠心分離した後、5ml QHPカラム(GE Healthcare, 17-1154-01)に5ml/分の流速で充填した。該カラムを50mlのQ緩衝液A(50mM HEPES、pH 8.7)で洗浄した後、タンパク質を0〜70%Q緩衝液B(0.7M NaClを含むQ緩衝液A)の勾配によって溶出させた。A280>700mUのピーク画分をプールした。Qピーク画分をプールし、6〜10mg/mlまで濃縮し、緩衝液を10mM HEPES、pH 7.1と交換した。最終的なV21H4抗体溶液を0.22μmフィルターに通して濾過し、4℃で保存した。
(V21H1とウレアーゼとのコンジュゲーション)
70.4μlのSM(PEG)2(DMF中、10.0mg/ml)ストック溶液をボルテックス処理しながらV21H1抗体に添加することにより、10mgのV21H1抗体を1:2.4の抗体対クロスリンカーのモル比でクロスリンカーで活性化した。反応溶液を室温で90分間インキュベートした。300mMのTris緩衝液(pH 7.6)を10mMの最終濃度まで添加し、室温で10分間インキュベートすることにより、反応をクエンチした。コンジュゲートされていない、加水分解され、かつクエンチされたクロスリンカーを、50mM NaCl及び1mM EDTA、pH 7.1を含有する50mM Tris緩衝液で予め平衡化した20mlのG25脱塩カラムで除去した。余分なクロスリンカーを除去した後、脱塩カラム画分をプールし、100μl試料をV21H1抗体上の活性化部位を評価するためのインタクトタンパク質マススペクトロメトリー分析及びペプチドマッピング分析用に回収した。プールされた残りの画分を氷水浴中で5分間冷却した。20mgの高純度ウレアーゼ(HPU)を解凍し、別の氷水浴中で5分間インキュベートした。冷却したHPU溶液を撹拌しながら活性化V21H1抗体溶液に注ぎ入れた。氷水浴中で5分間撹拌し続け、その後、反応溶液を室温でベンチに移した。コンジュゲーション反応溶液を室温で90分間インキュベートした後、システイン溶液(300mM Tris、pH 7〜7.5中、200mM)を5mMの最終濃度まで添加して、反応をクエンチした。反応溶液を、15mlの遠心分離フィルター(MWCO 100kDa)中、4℃及び2000 rcfで遠心分離することにより、約4mlにまで濃縮した。得られた濃縮反応溶液を3つのアリコートに分けた後、SEC分離した。分離は、反応溶液の各々のアリコートを、AKATA FPLCシステムに接続されたSuperose 6 100/300 GLカラム(GE)に充填することにより実施した。タンパク質を、0.5ml/分のアイソクラティック流により、SEC緩衝液(50mM NaCl、0.2mM EDTA、pH 7.2)で溶出させ、A280>200mUの主要なピーク画分をプールした。全3回のSEC分離からのピーク画分をプールし、1Lの製剤化緩衝液(10mMヒスチジン、1%(w/v)スクロース、0.2mM EDTA、pH7.0)に対して透析した。得られたコンジュゲート溶液を0.22μmフィルターに通して濾過し、0.8mlアリコートに分けた。アリコートを-80℃で保存した。
(V21H4とウレアーゼとのコンジュゲーション)
20mgのV21H4をTCEP(300mM Tris緩衝液、pH 7〜7.5中、100mM)と1.5mMの最終濃度まで混合し、室温で60分間インキュベートした。余分なTCEP及び結果として生じたシステアミンを、Tris-EDTA緩衝液(50mM Tris、1mM EDTA、pH 7.1)を用いて、25mlのG25脱塩カラムにより除去した。得られた脱塩画分を40mlビーカーにプールし、Tris-EDTA緩衝液で30mlの総容量まで希釈した。0.420mlのBM(PEG)2ストック溶液(DMF中、10mg/ml)を撹拌しながらビーカー中のV21H4抗体溶液に素早く分散させることにより、活性化反応を実施した。室温で10分間インキュベートした後、反応溶液を、フィルター膜(MWCO 5kD)を備えた200ml Amicon透析濾過濃縮器に移し、Tris-EDTA緩衝液と100mlまで混合した。透析濾過濃縮器を70psi(483kPa)の窒素源に接続することにより、余分なクロスリンカーを除去し、撹拌しながら20mlまで濃縮した。5サイクルの希釈及び濃縮の後、透析濾過濃縮器を窒素源から取り外し、抗体活性化部位を(インタクトタンパク質マススペクトロメトリー分析及びペプチドマッピング分析を用いて)決定するために、100μlの試料を回収した。Tris-EDTA緩衝液を該濃縮器に添加して、溶液を50mlのマーカーまで希釈した。活性化V21H4抗体を含む濃縮器を撹拌しながら氷水浴中で10分間冷却した。4℃で完全に解凍した後、80mgのHPUを別の氷水浴中で5分間インキュベートし、その後、その氷水浴中で撹拌しながら、該濃縮器中の活性化V21H4抗体溶液中に注ぎ入れた。氷水浴中で5分間撹拌した後、反応溶液を含む濃縮器を実験室のベンチに移し、室温で90分間インキュベートした。システイン(300mM Tris、pH 7〜7.5中、100mM)を5mMの最終濃度まで添加することにより、コンジュゲーション反応をクエンチした。反応を室温で5分間クエンチした後、反応溶液を別の容器に移し、濃縮器を掃除して、新しい濾過膜(MWCO 100kDa)を再び取り付けた。反応溶液を濃縮器に移し戻し、製剤化緩衝液(10mMヒスチジン、1%(w/v)スクロース、及び0.2mM EDTA、pH 7.0)を160mlのマーカーまで添加した。該濃縮器を10psi(69kPa)の窒素源に接続し、撹拌しながら20mlにまで濃縮した。希釈-濃縮サイクルを4回繰り返した後、透析濾過濃縮器を窒素源から取り外し、V21H4-DOS47コンジュゲート溶液を新しい容器に移し、40mlまで希釈した。該コンジュゲート溶液を0.22μmフィルターに通して濾過し、0.8mlのアリコートに分けた。アリコートを-80℃で保存した。
(サイズ排除クロマトグラフィー(SEC))
996 PADを備えたWaters 2695 HPLCシステムをEmpower 2ソフトウェアとともにデータ取得及び処理のために利用した。クロマトグラムを処理用に抽出された280nmでのシグナルに関して210〜400±4nmにわたって記録した。分離は、Superose 6 100/300 GLカラム(GE)で実施した。タンパク質を10mMリン酸塩、50mM NaCl、0.2mM EDTA、pH 7.2中に溶出させた。分離は、一定容量の未希釈の試料を注入した後、0.5ml/分のアイソクラティック流で実施した。カラム温度を室温で保持し、一方、試料温度を5±2℃で制御した。
(SDS-PAGE)
Bio-Rad Mini Gel Protein Electrophoresisキット及びBio-RAD Molecular Imager Gel Doc XR+をImageLabソフトウェアとともに利用して、V21-DOS47コンジュゲーション比を解析した。10μgのタンパク質試料を60μlのタンパク質ゲルローディング緩衝液と混合し、混合物を70℃まで10分間加熱した。変性した試料を4〜20%Tris-グリシンゲル(Invitrogen、REF# XP04200)に充填し(10uL/ウェル)、電気泳動を、150Vの定電圧で、<40mAの電流で、電気泳動の先端がゲル底に到達するまで実施した。洗浄、染色、及び脱染色の後、ゲル画像を解析のためにGel Doc XR+イメージャーでスキャンした。SDS-PAGEを用いて、ウレアーゼ1分子当たりにコンジュゲートした抗体の平均数も計算した。これは、主要クラスター中の5本のバンドの強度を調査することにより決定した(さらなる詳細については、Tianらの文献、2015を参照)。報告されたコンジュゲーション比は全て、平均値である。
(ELISAアッセイ)
96-ウェルプレートを、100μL/ウェルのヤギ抗ヒトIgG-Fc(Sigma、PBS中、5μg/mL)で、室温で6時間コーティングし、その後、200μL/ウェルの3%BSA/PBSで、2〜8℃で一晩ブロッキングした。T-TBS(0.05%Tween-20を含有する、50mM Tris、0.15M NaCl、pH 7.6)で2回洗浄した後、100μL/ウェルのVEGFR1/Fc、VEGFR2/Fc、又はVEGFR3/Fc(R&D Systems、TB-TBS(0.1%BSA/T-TBS)中、0.25μg/mL)を添加し、プレートを、穏やかに振盪させながら、室温で1時間インキュベートした。T-TBSで3回洗浄した後、100μL/ウェルの抗体-ウレアーゼコンジュゲート又はビオチン化抗体希釈物(TB-TBS中)を添加し、プレートを、穏やかに振盪させながら、室温で2時間インキュベートした。抗体-ウレアーゼコンジュゲートについて、プレートをT-TBSで3回洗浄し、100μL/ウェルのウサギ抗ウレアーゼ(TB-TBS中の1/6,000又は1/10,000倍希釈液、Rockland)を添加し、プレートを、穏やかに振盪させながら、室温で1時間インキュベートした。全ての試料について、プレートをT-TBSで3回洗浄し、100μL/ウェルのヤギ抗ウサギAP(TB-TBS中の1/8,000倍希釈液、Sigma)を添加して、抗体-ウレアーゼコンジュゲートを検出するか、又はストレプトアビジン-アルカリホスファターゼ(TB-TBS中、0.5μg/mL、Sigma)を添加して、ビオチン化抗体を検出し、プレートを、穏やかに振盪させながら、室温で1時間インキュベートした。T-TBSで3回洗浄した後、100μL/ウェルの基質(ジエタノールアミン基質緩衝液(Pierce)中、1mg/mLの4-ニトロフェニルホスフェート二ナトリウム塩六水和物(Fluka))を各々のウェルに添加し、穏やかに振盪させながら、室温で5〜15分間インキュベートした。プレートをUV-Vis分光光度計でスキャンすることにより、各々のウェルの405nmでの吸光度(A405)を取得した。
(ウレアーゼ活性アッセイ)
ウレアーゼは、尿素からアンモニアへの加水分解を触媒する。1単位のウレアーゼ活性は、25℃、pH 7.3で1分間に1マイクロモルのアンモニアを遊離させる酵素の量と定義される。V21H4-DOS47試料を試料希釈緩衝液(1mM EDTA及び0.1%(w/v) BSAを含有する0.02Mリン酸カリウム、pH 7.3)に希釈した。100μlの希釈試料を2.00mlの0.25M尿素(0.3Mリン酸ナトリウム及び0.5mM EDTAを含有するリン酸緩衝液、pH 7.3中)と混合し、25±0.1℃で5分間インキュベートし、その後、1.00mlの1.0N HClを添加することにより、反応をクエンチした。酵素反応溶液中に生成されるアンモニウムイオンの濃度を決定するために、100μlのクエンチされた反応溶液を2.00mlのフェノール溶液(0.25mMニトロフェリシアン化ナトリウムを含有する0.133Mフェノール)と15ml試験チューブ中で混合した。30秒後、2.50mlのNaOH-NaOCL溶液(0.04%次亜塩素酸ナトリウムを含有する0.14N NaOH)を該試験チューブに添加し、混合し、37℃で15分間インキュベートした。該溶液の吸光度を試薬反応溶液(試料なし)をブランクとして638nmで決定した。ウレアーゼ酵素活性を、以下の方程式: U/ml=D×(A×Tc×Te)/(5×E×Sc×Se)(式中、A=638nmでの吸光度、Tc=呈色反応液の総容量(4.60ml)、Te=酵素反応液の総容量(3.10ml)、E=アッセイ条件当たりのインドフェノールブルーのモル減衰係数(20.10mM-1.cm-1)、Sc=呈色反応の試料容量(0.10ml)、Se=酵素反応の試料容量(0.10ml)、及びD=希釈時間)に従って計算した。各々の試料のタンパク質濃度を、製造元の指示に従って、Sigma総タンパク質キット(TP0200)で決定した。ウレアーゼ活性(U/ml)を試験したタンパク質の量(mg/ml)で除することにより、コンジュゲート1mg当たりのウレアーゼ活性を計算した。コンジュゲート1mg当たりの活性をウレアーゼから構成されるコンジュゲートの質量の割合で除することにより、比ウレアーゼ活性を計算した。
(ウェスタンブロット)
V21H4-DOS47試験試料及び対照をSDS-PAGEゲル電気泳動によって分離し、その後、Bio-Radブロットキットを用いて、ニトロセルロース膜に転写した。対照としての1.2μgのHPU及び4.0μgのV21H4、並びに2.0μgのV21H4-DOS47試料を60.0μlのタンパク質ゲルローディング緩衝液と混合した。得られた試料混合物を、60℃まで10分間加熱することにより変性させ、レーン当たり10μlの各々の試料を充填した。2連のブロットを、ウレアーゼとV21H4抗体のプロービング用に並行して泳動させたゲルから作製した。ウレアーゼ検出のために、ウサギ抗ウレアーゼIgG(Rockland)を使用した。V21H4抗体を検出するために、ウサギ抗リャマIgG(ImmunoReagents社)を使用した。AP(Sigma)にコンジュゲートされたヤギ抗ウサギIgGを二次可視化抗体として使用した。ウェスタンブロットの最終的な顕色は、NBT/BCIPを含有するAP緩衝液を用いて実施した。
(マススペクトロメトリー)
Waters Xevo G2 QTOFマススペクトロメーター及びAcquity UPLCシステムHクラスを全てのマススペクトロメトリー分析に利用した。785.8426Daのロック質量をリアルタイム2点間質量較正(real time point to point mass calibration)に適用した。LC-MSデータ取得は、Masslynx V4.1ソフトウェアによって制御した。
(インタクトタンパク質マススペクトロメトリー分析)
クロスリンカーで活性化された抗体試料を5mMシステインと室温で30分間反応させ、0.5〜1mg/mlまで水に希釈し、未希釈のギ酸を1%(v/v)の最終濃度まで添加することにより酸性化した。BEH300 C4(1.7μm、2.1×50mm)カラムを使用した。カラム温度を60℃に設定し、溶媒A(水中0.025%v/vのTFA)及び溶媒B(アセトニトリル中0.025%のTFA)をUPLC分離に使用した。UPLCを、0.15ml/分の流速で、20〜60%溶媒Bの勾配で30分かけて実施した。LC-MS TIC(総イオンカウント)データ取得は、0.3/秒のスキャン速度、キャピラリー電圧3.0kV、試料コーン電圧40V、抽出コーン電圧4.0kVの分解能モードで、500〜3500DaのM/Z範囲で実施した。イオン源温度は、100℃に設定し、脱溶媒和温度は、350℃に設定した。脱溶媒和ガス流速は、600L/時間とした。リアルタイムロック質量TIC生データセット(スキャン/20秒)を、100fモル/μlのGlu-Fib Bを用いて、6.0μl/分の流速で取得した。マススペクトロメトリーの生データを、BioPharmalynxソフトウェア(v1.2)を用いて、分解能10000のインタクトタンパク質モードで処理した。質量一致許容度を30ppmに設定し、1つのジスルフィド結合を含有する各々の抗体のタンパク質配列をタンパク質一致検索のための一致タンパク質として入力した。
(V21H1-SM(PEG)2-Cys及びV21H4-BM(PEG)2-Cysのトリプシン消化)
クロスリンカーで活性化された抗体試料を10mMシステインと室温で30分間反応させ、その後、100mM炭酸水素アンモニウムで0.5mg/mlに希釈した。未希釈のアセトニトリルを希釈試料溶液に20%(v/v)の最終濃度まで添加した。トリプシン/Lys-Cミックス(Promega, Ref#V507A)を20:1のタンパク質:プロテアーゼ比で添加し、37℃で16〜20時間消化した。DTTを消化した試料に10mMの最終濃度まで添加し、試料を37℃で30分間インキュベートして、コアジスルフィド結合を還元した。未希釈のギ酸を1%(v/v)まで添加することにより消化を停止させた後、マススペクトロメトリー分析した。
(V21H4-DOS47のトリプシン消化)
100μgのV21H4-DOS47をDTTと10mMの最終濃度まで混合し、未希釈のアセトニトリルを20%(v/v)の最終濃度まで添加した。ジスルフィド結合を還元し、コンジュゲートされたタンパク質を変性させるために、試料混合物を60℃で30分間加熱した。変性タンパク質沈殿物を室温で5分間の16000rcfでの遠心分離によってペレット化した。5.0μlの0.20Mヨードアセトアミド及び100μlの水をペレットに添加し、その後、ボルテックス処理によって混合した。懸濁液を16000rcfで室温で5分間遠心分離し、上清を廃棄した。得られたペレットを100μlのTris-グアニジン緩衝液(4M塩酸グアニジン、50mM Tris、10mM CaCl2、及び10mMヨードアセトアミド、pH 8.0)に溶解させた。このアルキル化反応を、室温、暗所で、30分間実施した後、反応を5mM DTTでクエンチした。得られた溶液をTris緩衝液(50mM Tris、10mM CaCl2、pH 8.0)で4倍希釈した。トリプシン/LysCミックスを25:1のタンパク質:プロテアーゼ比で希釈試料溶液に添加した。消化を37℃で16〜20時間実施した後、未希釈のギ酸を1%(v/v)の最終濃度まで添加することにより反応を停止させた。
(V21H1-SM(PEG)
2-Cys、V21H4-BM(PEG)
2-Cys、及びV21H4-DOS47トリプシン消化物のLC-MS
Eペプチドマッピング)
BEH300 C18(1.7μm、2.1×150mm)カラムをUPLC分離に使用した。カラム温度を60℃に設定した。溶媒A(水中0.075%v/vのギ酸)及び溶媒B(アセトニトリル中の0.075%ギ酸)をペプチド溶出に使用した。UPLCを0.15mL/分の流速で実施した。50分で0〜30%溶媒Bの勾配をV21H1-SM(PEG)
2-Cys及びV21H4-BM(PEG)
2-Cys試料のトリプシン消化物の分離に使用した。V21H4-DOS47のトリプシン消化物については、150分で0〜45%溶媒Bの勾配を使用した。LC-MS
E TIC(総イオンカウント)データ取得は、0.3/秒のスキャン速度、キャピラリー電圧3.0kV、試料コーン電圧25V、抽出コーン電圧4.0kVの分解能モードで、50〜2000DaのM/Z範囲で実施した。イオン源温度は、100℃に設定し、脱溶媒和温度は、350℃に設定した。脱溶媒和ガス流速は、600L/時間とした。リアルタイムロック質量TIC生データセット(スキャン/20秒)を、100fモル/μLのGlu-Fib Bを用いて、3.0μL/分の流速で取得した。機器設定に関して、2つのインターリーブドスキャン関数がデータ取得に適用される。第一のスキャン関数は、衝突セルにエネルギーを付与しないうちに、試料中のインタクトペプチドイオンのMSスペクトルを取得する。第二のスキャン関数は、同じ質量範囲にわたるデータを取得するが;衝突エネルギーは20から60eVに上昇する。このスキャンは、非選択的タンデムマススペクトロメトリー(MS/MS)スキャンと同等であり、先行するスキャン中のイオンからのMS
Eフラグメントスペクトルの収集を可能にする。高エネルギー衝突誘導性フラグメンテーションは、ペプチド骨格結合をランダムに切断する。切断された各々のC-Nペプチド骨格結合について、生成したアミノ-末端イオンは「b」イオンと呼ばれ、C-末端イオンは「y」イオンと呼ばれる。表1〜3において、「MS/MS b/y可能性」と題された列は、タンパク質中の全てのペプチド結合が同等に破壊される可能性が高い場合に、各々のペプチドについて生成されることになるb及びyイオンの理論上の最大数を示している。「MS/MS b/y実測値」と題された列は、各々のペプチドについて同定されたb及びyイオンの実際の数を示している。b/yイオンの同定は、ペプチド同一性の明白な確認を提供する。マススペクトルの生データを、BiopharmaLynxソフトウェア(v 1.2)を用いて、分解能20000のペプチドマップモードで処理した。785.8426Daのロック質量をリアルタイム2点間質量較正に適用した。低エネルギーMSイオン強度閾値は、3000カウントに設定し、MS
E高エネルギーイオン強度閾値は、300カウントに設定した。質量一致許容度は、MSについては10ppmに及びMS
Eデータセットについては20ppmに設定した。1つの欠損した切断部位を有するペプチドを質量一致検索に含めた。V21H1、V21H4、及びウレアーゼ(Uniprot P07374)タンパク質配列を、それぞれ、ペプチドマッチング/同定のための配列ライブラリーに入力した。脱アミド化N、脱アミド化スクシンイミドN、酸化M、+K、+Na、及びカルバミドメチルC(アルキル化システインに対するもの)を含む可変修飾因子をペプチドマップ分析に適用した。SM(PEG)
2-Cys(429.1206Da)をV21H1コンジュゲーションの活性化部位を同定するための可変修飾因子として設定したのに対し、BM(PEG)
2-Cys(431.1362Da)をV21H4コンジュゲーションの活性化部位を同定するための可変修飾因子として入力した。V21H4-DOS47トリプシン消化物については、
をウレアーゼ上のコンジュゲーションを同定するための可変修飾因子として設定した。
(フローサイトメトリー)
293又は293/KDR細胞を、非酵素的細胞解離緩衝液(Sigma)を用いて、フラスコから剥離した。細胞を300×gで5分間遠心分離し、その後、染色緩衝液に106細胞/mL(Ca2+及びMg2+、0.02%NaN3、2%FBSを含むPBS)で再懸濁させた。100μLの細胞を96-ウェルプレートのウェルに添加した。該プレートを350×gで4分間遠心分離し、緩衝液を除去し、その後、細胞を50μLの抗体-ウレアーゼコンジュゲート又はビオチン化抗体(染色緩衝液に希釈したもの)に再懸濁させ、その後、2〜8℃で1時間インキュベートした。抗体-ウレアーゼコンジュゲートで染色した細胞について、細胞を染色緩衝液で3回洗浄し、その後、(染色緩衝液に希釈した)5.8μg/mLのマウス抗ウレアーゼ(Sigma、cat #U-4879)に再懸濁させ、2〜8℃で30分間インキュベートした。全ての試料について、細胞を染色緩衝液で3回洗浄し、その後、抗体-ウレアーゼ試料については、(染色緩衝液に希釈した)3μg/mLのAF488-抗マウスIgG(Jackson、cat #115-545-164)に再懸濁させ、又はビオチン化抗体については、(染色緩衝液に希釈した)133ng/mLのPE-SA(Biolegend、cat #405204)で染色した。全ての細胞を2〜8℃で暗所で30分間インキュベートし、染色緩衝液で3回洗浄し、その後、(PBSに希釈した)1%パラホルムアルデヒドに再懸濁させた。プレートを室温で15分間インキュベートし、スズ箔で覆った。その後、該プレートを上記のように遠心分離し、パラホルムアルデヒドを除去し、細胞を染色緩衝液に再懸濁させた。該プレートをスズ箔で覆い、Guavaフローサイトメーター及びguavaSoftソフトウェア(Millipore)を用いる解析まで、2〜8℃で保存した。S/N値は、293/KDR細胞に結合しているV21H4-DOS47と293細胞に結合しているV21H4-DOS47の比又は293/KDR細胞に結合しているビオチン-V21H4とビオチン-アイソタイプ対照抗体(抗CEACAM6)の比である。
(結果)
(V21H1の産生及び精製)
免疫コンジュゲート薬用の単一ドメイン抗体を作製する場合、高純度抗体を、高い収率で、かつ発現、タンパク質リフォールディング、及び精製を含む、制御可能なプロセスで産生しなければならない。他の検討事項としては、以下のものが挙げられる:抗体のpIは、抗体-コンジュゲートが生理的pHで安定かつ可溶性であるようなものであるべきであり、抗体の特性は、コンジュゲーション化学に好適であるべきであり、かつコンジュゲーション反応中の抗体残基の修飾は、その抗原に対する抗体結合の親和性を損なうべきでない。
V21ラクダ科動物抗体は122個のアミノ酸を有する(配列番号2)。V21H1(配列番号3)を作製するために、11個のアミノ酸をV21抗体のC-末端に付加した。これらのアミノ酸を付加することにより、コンジュゲートの安定性及び可溶性のために必要に応じて、抗体のpIを8.75から5.44へと変化させた。ヘテロ二官能性化学クロスリンカーSM(PEG)
2は、アミン及びスルフヒドリル基と反応する。これを、V21H1をウレアーゼにコンジュゲートするのに使用するために選択した:
工程1は、SM(PEG)
2を用いる抗体の活性化である。工程2は、活性化された抗体をウレアーゼにコンジュゲートする。
コアV21配列中に5つのリジン残基があり、そのうちの2つ(Lys66及びLys101)は、それぞれ、CDR2及びCDR3配列中に位置する。これらのアミノ酸は、SM(PEG)2により利用されるアミンコンジュゲーション化学によって修飾されることができ、抗体活性を変化させる可能性があるので、この可能性を最小限に抑えるために、2つのさらなるリジン残基を抗体C-末端に付加した。
V21H1は、主にBL21(DE3)細菌の細胞質ゾル溶液中に発現され、封入体中での発現はほとんどなかった。それゆえ、細胞溶解後、該抗体をエタノール結晶化及び陽イオン交換クロマトグラフィーによって細菌タンパク質から分離した。抗体リフォールディングの後、天然の抗体を陰イオン交換クロマトグラフィーによってさらに精製した。精製された抗体の分子質量が設計されたタンパク質配列と一致することを確認するために、LC-MSインタクトタンパク質分析を実施した。不純物タンパク質はLC-MS TICクロマトグラムから検出されず、V21H1の検出された分子質量は、そのタンパク質配列から計算される理論値と一致し、質量一致誤差は30ppm以内であった(データは示さない)。しかしながら、精製されたV21H1の収率は、非常に低く(培養物1L当たり4〜6mg)、使用された精製プロセスは、大規模cGMP生産に適していない。
(V21H1のクロスリンカー活性化)
抗体-ウレアーゼコンジュゲートL-DOS47の産生においてSIABによるAFAIKL2抗体の活性化に最適であることが以前に分かった条件を用いて、V21H1をSM(PEG)2によりpH 7.0で活性化した。NHS-エステル反応はSIABとSM(PEG)2について同じであり、LC-MSスペクトルはAFAIKL2反応産物とV21H1反応産物について同様であるので(データは示さない)、これらの条件は、SM(PEG)2によるV21H1の活性化にも最適であるはずであった。
SM(PEG)2のNHS-エステル基だけがV21H1と反応することができる。V21H1抗体中の2つのシステイン残基はジスルフィド結合を形成し、そのため、クロスリンカーのマレイミド末端との反応に利用することができない。抗体N-末端由来の一級アミン及びタンパク質配列由来のリジン残基は全て潜在的にクロスリンカーのNHS-エステルと反応することができる。その場合、抗体-担持クロスリンカーのマレイミド末端は、ウレアーゼ分子の表面上のシステインと反応する。各々のアミンが活性化される可能性は、その周囲の天然構造に起因するその接近可能性によって決まる。ウレアーゼの二量体及び重合体が第二の反応工程で形成するのを避けるために、抗体1つ当たり1つのアミンのみがNHS-エステルによって活性化されることが理想的である。しかしながら、多数の一級アミンが各々の抗体中に存在するので、一部のV21H1抗体が複数のクロスリンカー分子によって活性化されることは統計学的に避けられない。複数のクロスリンカーによって活性化される抗体の割合を最小化すると同時に、活性化された抗体の総量を最大化する、最適な活性化条件を選択した。活性化分布を評価するために、SM(PEG)2活性化V21H1を過剰のシステインと反応させ、インタクトマススペクトロメトリー分析によって評価した。マススペクトルは、図9に示されている。V21H1の約50%がSM(PEG)2によって活性化され、活性化された抗体のうち、約30%が2つのクロスリンカーによって活性化された。したがって、V21H1抗体のわずか35%が、ウレアーゼとの架橋のために最適に活性化される。
V21H1のどのリジンがSM(PEG)
2によって標的とされるのかを決定するために、V21H1-SM(PEG)
2-Cysをトリプシン消化に供し、その後、LC-MS
E分析した。トリプシンは、アルギニン及びリジン残基のC-末端側でペプチド骨格結合を切断する(プロリンがK又はRのすぐC-末端にある場合を除く)。リジンがSM(PEG)
2によって活性化される場合、該リジンの極性及び側鎖構造は変化し、空間的に遮断される。したがって、このトリプシン消化部位は、プロテアーゼにとって、もはや接近可能ではない。例えば、V21H1のK
66がSM(PEG)
2によって活性化される場合、それは-SM(PEG)
2-Cysに連結され、もはやトリプシン消化に利用することができず;それゆえ、2862.3018(2431.1656+431.1362)Daの分子質量を有するピークが観察されるはずであり、このピークは、-SM(PEG)
2-Cysが中間のリジンと連結したペプチド、
に相当する。LC-MS
Eペプチドマッピング分析において、-SM(PEG)
2-Cys(431.1362Da)を可変修飾因子として、全てのリジン担持ペプチド及びN-末端ペプチドを検索することにより、可能性のある全ての活性化部位を同定することができる。検出されたトリプシン消化ペプチドは、コンジュゲーション部位と一緒に、表2に掲載されている。
表2:同定されたペプチド及びV21H1-(PEG)
2-Cysの活性化部位のリスト。トリプシン消化ペプチドのセットの周囲の太い囲み(青の網掛けもされている)は、各々の活性化部位についての活性化の%を計算するために使用された関連ペプチド群を示している。nd=未検出。
トリプシン消化ペプチドは全て、5ppm未満の質量一致誤差で検出され、アミノ酸配列回収は100%であった。ESI感度が修飾因子の連結によって影響を受けないと仮定して、クロスリンカー修飾ペプチドの強度を全ての関連ペプチドの合計強度と比較することにより、活性化パーセンテージを評価した。使用した活性化条件下で、CDR2中のリジン残基K66は、クロスリンカーによって相当に(活性化されたV21H1抗体全体の〜25%)活性化されたが; CDR3中のK101は、クロスリンカー活性化の間に修飾されなかった。驚くべきことに、コンジュゲーション化学の目的で意図的に付加された2つのC-末端リジン残基は、クロスリンカーによって修飾されなかった。
(V21H4の産生及び精製)
抗体V21H4を、V21H1の産生、精製、及びクロスリンカー活性化において確認された問題について改善するように設計した。V21H4抗体のアミノ酸配列は、配列番号6に示されている。V21H1に関しては、いくつかのアミノ酸残基をV21抗体C-末端に付加し(G
123〜C
136)、該抗体のpIを8.75から5.43に調整した。V21H1の場合、抗体CDR2領域中のSM(PEG)
2クロスリンカー活性化K
66の存在が抗体の結合親和性を損ない得るので、これは懸案事項であった。したがって、異なるクロスリンカーBM(PEG)
2を用いるスルフヒドリルとスルフヒドリルの架橋のために、システイン残基(C
136)をV21H4に付加した:
工程1は、BM(PEG)
2を用いる抗体の活性化である。工程2は、活性化された抗体をウレアーゼにコンジュゲートする。
C-末端システインの包含は、抗体が細菌封入体中に発現されることも可能にした。V21抗体の2つのコアシステイン残基はジスルフィド結合を形成し、化学的コンジュゲーションに利用することができないので、追加のC-末端システイン残基が、標的とされるコンジュゲーションのための固有の活性化部位を提供する。
V21H4は、高レベルで封入体に発現された。細胞溶解後、抗体を遠心分離によって細菌マトリックスタンパク質から分離した。変性した抗体を陽イオン交換クロマトグラフィーによって精製して、核酸及び他のタンパク質を除去した。V21H4抗体のリフォールディングを容易に制御可能な方法で実施し、HPLCによってモニタリングした(図10)。
陽イオン交換カラムのピーク画分をリフォールディング緩衝液と混合することにより、リフォールディングプロセスを開始した。フォールディングプロセスは、シスタミンなしでは非常に遅いが、シスタミンを1.2mMの最終濃度まで添加した後、フォールディングは、室温で2時間のうちに完了した。陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて、適切にフォールディングしたタンパク質を単離し、80%を超える収率が概ね観察された。精製されたV21H4の典型的な収率は、培養物1L当たり20〜40mgであり、これは、V21H1の収率よりもかなり高い。さらに、V21H4を産生及び精製するために使用された方法は、スケールアップ及びcGMP生産に適している。
(V21H4のクロスリンカー活性化)
V21H4のC-末端システインは、ウレアーゼとのコンジュゲーションに必要である。しかしながら、シスタミンがV21H4リフォールディング緩衝液中に含まれていたので、半シスタミン(システアミン-H)とのジスルフィド結合を形成することにより、C-末端システインが修飾された。これは、LC-MSインタクトタンパク質分析によって確認された(図11A)。したがって、この半シスタミンを除去しなければならず、かつその後、システインはクロスリンカーによる活性化に利用可能とならなければならない。さらに、この除去は、コンジュゲーション目的のために使用される天然条件下での制御可能な穏やかな還元を用いて行われなければならず、かつそれは、抗体の内部ジスルフィド結合を還元してはいけない。図11Bに示されているように、V21H4を、2mM TCEPを用いてpH 7.1で、室温で1時間還元した後、検出された抗体分子質量は14667.94Daであり、保護的半シスタミンが除去されたことが示唆された。脱保護されたシステイン残基が架橋試薬に対して活性があることを確認するために、10mMヨードアセトアミドを脱保護されたV21H4抗体に添加した。pH 7.5〜8.0で、室温で30分後、得られた検出された分子質量は14724.83Daに増加しており(図11C)、カルボキシメチル基(57.05Da)がシステイン残基に対してアルキル化されたことが示唆された。まとめると、C-末端の半シスタミンを除去することができ、得られる脱保護されたシステインは、化学的コンジュゲーションに利用可能である。また、アルキル化された抗体をトリプシンで消化して、LC-MSEペプチドマッピングによって評価した。LC-MSEペプチドマップ(データは示さない)はアミノ酸配列の100%を網羅し、かつC-末端システインは特異的かつ効果的にアルキル化され、標的としたスルフヒドリル架橋化学における脱保護還元反応の特異性及びC-末端システインの好適性が確認された。
V21H4抗体をクロスリンカーBM(PEG)2によって活性化した。BM(PEG)2はホモ二官能性クロスリンカーであるので、BM(PEG)2の両方のマレイミド基が反応し、2つのV21H4分子を連結し、ウレアーゼにコンジュゲートすることができない抗体二量体の生成をもたらし得ることが可能である。生成する抗体二量体の頻度は、反応物のモル比、システイン残基の天然の疎水性度環境、及び反応溶液中の分子の相対移動度によって決まる。この反応を10:1のクロスリンカー対抗体のモル比で実施した。さらに、クロスリンカーの分子量は308.29Daであり、これは、抗体の分子量よりも約50倍小さい。活性化されたV21H4抗体を評価するために、100μlの活性化された抗体溶液を過剰のシステインと反応させ、インタクトマススペクトロメトリー分析によって評価した(図11D)。使用された実験条件の下で、99%超のV21H4が単一のクロスリンカーにカップリングし、クロスリンカーの他のマレイミド基がその後のウレアーゼとの反応に利用可能な状態になった。
C-末端システインがBM(PEG)
2の唯一の標的であることを確認するために、V21H4-BM(PEG)
2-Cysをトリプシン消化に供し、その後、LC-MS
E分析した。C-末端システインがクロスリンカーによって活性化された場合、クロスリンカー活性化ペプチド
に相当する1266.3652Daの質量を有するピークが検出されるはずである。コアジスルフィド結合がクロスリンカー活性化の前にTCEPによって還元された場合、2つのピーク−ペプチド
に相当する一方と
に相当するもう一方が同定されるはずである。検出されたトリプシン消化ペプチドは、クロスリンカー活性化部位一緒に、表3に掲載されている。
表3:同定されたペプチド及びV21H4-(PEG)
2-Cysの活性化部位のリスト。トリプシン消化ペプチドのセットの周囲の太い囲み(青の網掛けもされている)は、各々の活性化部位についての活性化の%を計算するために使用された関連ペプチド群を示している。nd=未検出。
トリプシン消化ペプチドは全て、5ppm未満の質量一致誤差で検出され、アミノ酸配列回収は100%であった。予想された通り、C-末端システインの90%超がクロスリンカーによって活性化され、ごく微量のクロスリンカー活性化コアシステイン残基(Cys23及びCys97)が検出された。これは、CDR2中のものを含む、多数のリジンが標的とされるV21H1及びSM(PEG)2で観察される状況よりもはるかに望ましい状況である。
(V21H1及びV21H4とウレアーゼとのコンジュゲーション及び初期特徴解析)
タチナタマメウレアーゼは、各々のサブユニットが約91kDaであるホモ六量体酵素である。サブユニット当たり15個の未結合のシステイン残基のうち、5個は天然構造の表面にあり、マレイミドクロスリンカーを介する単一ドメイン抗体との連結に利用可能である(Takishimaらの文献、1998)。様々なコンジュゲーション化学がタンパク質コンジュゲーションに広く使用されている。銅を含まないクリック化学は、タンパク質標識及びタンパク質-薬物コンジュゲーションにおいて優先的に使用されており(Thirumuruganらの文献、2013)、本発明者らの抗体とウレアーゼとのコンジュゲーションにおける潜在的な選択肢であった。しかしながら、クリック化学を実施する前に、NHS-エステル活性化工程又はマレイミド活性化工程のいずれかが必要となる。したがって、従来の架橋化学がより簡便であり、この特定の事例に適している。
V21H1及びV21H4を架橋した後、それらをウレアーゼにコンジュゲートして、それぞれ、V21H1-DOS47及びV21H4-DOS47を作製した。どちらの場合も、スルフヒドリル化学を用いて、抗体-リンカーをウレアーゼにコンジュゲートした。SDS-PAGEを実施して、両方のコンジュゲートを評価した(図12A)。
コンジュゲーションの間に、6つの単量体ウレアーゼサブユニットの各々を潜在的に最大5つの抗体分子と架橋することができ;それゆえ、変性SDS-PAGE条件下で、V21H1-DOS47とV21H4-DOS47はどちらも、〜90から180kDaの範囲の6つの別々のバンドのパターンを生じると予想された。しかしながら、5つの別々のバンドしか観察されないので、ウレアーゼ1つ当たり最大で4つの抗体がコンジュゲートされるようである(図12A、クラスター1)。これにより、ウレアーゼの表面にある5つのシステイン残基のうちの1つは、マレイミドと反応する能力がほとんど又は全くないことが示唆される。
予想された5つの別々のバンドに加えて、さらなるバンドのクラスターがV21H1-DOS47とV21H4-DOS47の両方について観察される。V21H1-DOS47については、2つのさらなるクラスターが見える。クラスター2(有効MWは〜200から250Da)及びクラスター3(有効MWは>300Da)は、多数のSM(PEG)2クロスリンカーを担持するV21H1種によって生成されたウレアーゼ二量体及び重合体である可能性が高い。これらの高分子量種は多数の天然ウレアーゼ分子から構成され得るが、サイズ排除クロマトグラフィーによって観察される低レベル(5%未満)の二量体及び重合体ピーク(図12B)は、これらの種の大部分が、分子間連結ではなく、単一の天然ウレアーゼ分子のサブユニット間連結から構成されることを示唆している。
V21H4-DOS47については、C-末端システインだけがBM(PEG)2によって活性化されるので、理論上、1つのバンドクラスターしか存在しないはずである。しかしながら、レーン5及び6に示されているように、さらなるクラスターがV21H4-DOS47レーンに観察される(MW≧150kDa)。第二のクラスターは、コンジュゲートされたサブユニットがゲル中を移動するときに形成する非共有結合的二量体から構成され得る。これは、SDS-PAGEキャピラリー電気泳動によって確認され(図示せず)、このSDS-PAGEキャピラリー電気泳動では、二量体クラスターが観察されなかった。それゆえ、V21H4-DOS47は、架橋されたウレアーゼ二量体も重合体も含有しない。
SDS-PAGEを用いて、各々の天然ウレアーゼ六量体-抗体コンジュゲートについての抗体:ウレアーゼコンジュゲーション比も決定した。クラスター1のバンド強度(図12A)は、様々な数の抗体分子に連結されたウレアーゼ単量体の相対存在量によって決まる。ImageLabソフトウェアを用いて、バンド強度に対応するヒストグラムを作成し、各々のヒストグラムのピーク面積を積分した。天然のウレアーゼ六量体のコンジュゲーション比(CR)を、次のように計算した:
CR=6*(PK1 *0+PK2 *1+PK3 *2+PK4 *3+PK5 *4)/(PK1+PK2+PK3+PK4+PK5)
(ここで、PKi(i=1〜5)は、i-1抗体分子と連結したウレアーゼ単量体のピーク面積である)。
各々のウレアーゼ単量体にコンジュゲートされる抗体の数は変動するものの、該単量体がランダムにクラスター化して、六量体を形成するので、ウレアーゼ六量体1つ当たりの抗体の数の変動は小さいと予測されるであろう。これは、天然V21H4-DOS47のSECによって確認され、該SECでは、コンジュゲートが明瞭なピークとして移動することが観察される(図12B)。V21H4-DOS47コンジュゲーション法は、コンジュゲートを再現性良く産生し、ウレアーゼ1つ当たり抗体は8.7〜9.2であった(3回のバッチに基づく)。
該抗体、HPウレアーゼ、及びコンジュゲートの純度及び有効分子量を、天然条件下でのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって評価した(図12B)。
V21H1抗体とV21H4抗体は、同程度の時間(35.9分)で溶出する。遊離のHPウレアーゼは、26分で溶出する。V21H1-DOS47とV21H4-DOS47の両方について、抗体分子がウレアーゼ分子に連結されており、コンジュゲートが遊離のウレアーゼよりも大きくなるので、該コンジュゲートは遊離のウレアーゼよりも早く溶出する。しかしながら、V21H1-DOS47がV21H4-DOS47よりも1分早く溶出する(22.80分と23.80分)ことは興味深い。両方のコンジュゲートは、ほぼ同一のコンジュゲーション比を有する(V21H1-DOS47については、8.8抗体/ウレアーゼ及びV21H4-DOS47については、8.7抗体/ウレアーゼ)。V21H4抗体は、V21H1よりも3つ多くのアミノ酸を有する(159.20Da);しかしながら、理論上、より大きいV21H4-DOS47コンジュゲートは、その対応物のV21H1-DOS47よりもSECでの有効分子サイズが小さいように見える。これは、V21H4-DOS47が天然条件下でV21H1-DOS47よりもコンパクトであることを示唆している。
各々の種の大部分は単量体形態のものであり、わずかな二量体ピークが各々の単量体ピークの前に現れる。特筆すべきは、V21H1-DOS47コンジュゲーション手順は、高純度(96%)を達成するために、SEC工程を必要とすることである。SEC工程は、2つのクロスリンカーによって活性化されたV21H1抗体によって生成されるウレアーゼ重合体を除去する。しかしながら、V21H4抗体は1つのクロスリンカーのみによって活性化されるので、SEC工程はV21H4-DOS47を産生するのには必要ではない。V21H4-DOS47について、97%を超える純度は、通常、未結合のV21H4抗体を除去するための透析濾過のみを用いて達成される。SEC法は大規模GMPプロセスへと容易には移行されないので、臨床的使用のためのV21H1-DOS47を生産することは技術的により難しくかつ費用がかかるであろう。
(V21H1-DOS47及びV21H4-DOS47の活性)
ELISAアッセイを実施して、V21H1-DOS47(9.2抗体/ウレアーゼ)、V21H4-DOS47(8.8抗体/ウレアーゼ)、及びビオチン-V21H4と組換えVEGFR2/Fcとの結合を評価した(図13A)。V21H4-DOS47(EC50=44pM)は、V21H1-DOS47(EC50=226pM)が結合するよりも約5倍大きい親和性でVEGFR2/Fcに結合する。相当な量のV21H1がCDR2中に存在するリジンを介してウレアーゼにコンジュゲートされたので、これは驚くべきことではない。V21H4-DOS47はまた、V21H4抗体のみ(EC50=1.8nM)が結合するよりも約40倍大きい親和性でVEGFR2/Fcに結合する。これは、該コンジュゲートの多価性によるものである可能性が最も高い。V21H4-DOS47が優れたコンジュゲートであったので、後続の特徴解析をV21H4-DOS47についてのみ実施した。
V21H4抗体及びV21H4-DOS47コンジュゲートがVEGFR2(293/KDR)を発現する細胞に結合する能力をフローサイトメトリーによって評価した(図13B)。ビオチン-V21H4(EC50=1.6nM)は、組換えVEGFR/Fcに対するのと同様の親和性で293/KDR細胞に結合する(EC50=1.8nM、図13A)。これは、VEGFR2抗体エピトープがELISAアッセイにおける及び293/KDR細胞の細胞表面における組換えVEGFR2/Fc中で同等に接近可能であることを示唆している。興味深いことに、V21H4-DOS47と293/KDR細胞との結合(EC50=1.2nM)は、ビオチン-V21H4抗体とこれらの細胞との結合(EC50=1.6nM)と非常によく似ている。VEGFR2/Fcを用いるELISAアッセイにおいて、V21H4抗体と比較したV21H4-DOS47について、親和性の改善が観察されたが、これは、細胞結合については観察されなかった。これは、293/KDR細胞の表面に発現されるVEGFR2の密度がELISAプレートのウェル中よりも低いことを示唆している。
いくつかの要因が理想的な抗体/ウレアーゼコンジュゲーション比の決定に寄与する。コンジュゲーション反応の間に、ウレアーゼ分子はV21抗体との連結によって変化する;それゆえ、コンジュゲーション比に応じて、ウレアーゼ酵素活性は影響を受ける可能性がある。他方、抗体-ウレアーゼ複合体の結合力は、より多くの抗体がウレアーゼとカップリングされるにつれて増大する。ウレアーゼ酵素活性と結合活性の両方に対するコンジュゲーション比の効果を評価するために、様々なコンジュゲーション比(1.4〜9.4 V21H4/ウレアーゼ)を有するV21H4-DOS47コンジュゲートを、V21H4/HPUモル比を調整することにより産生した。
未修飾のウレアーゼの活性は約4500U/mgである。抗体をウレアーゼにコンジュゲートすると、活性の約40%が失われる(図13C)。しかしながら、ウレアーゼ酵素活性は、活性が試験した全てのコンジュゲーション比で一定のままであるので、コンジュゲートされる抗体の数とは無関係である。組換えVEGFR2/Fcを用いるELISAアッセイを実施して、ウレアーゼ1つ当たりの抗体の数が異なるコンジュゲートの結合を評価した(図13D)。1.4抗体/ウレアーゼから2.3抗体/ウレアーゼに増加させると、226pMから93pMへのEC50値の減少によって示されるように、コンジュゲートとVEGFR2/Fcとの結合は改善する。さらにもう1つの抗体の追加(3.3抗体/ウレアーゼ)によって、EC50がさらに58pMまで低下する。しかしながら、その後の抗体/ウレアーゼの追加には、限られた効果しかなく: 9.4抗体/ウレアーゼの場合、EC50は31pMである。したがって、3.3超の抗体/ウレアーゼが存在するとき、親和性の改善はごくわずかである。したがって、最適なウレアーゼ活性及びコンジュゲート結合には、3.3抗体/ウレアーゼのコンジュゲーション比で十分である。
(V21H4-DOS47のさらなる特徴解析)
V21H4-DOS47のデュアルパネルウェスタンブロッティング(図14)を実施して、SDS-PAGEによって見られるバンドパターンを確認した。ウェスタンブロッティングにおいて、ゲル中で形成される二量体及び重合体クラスターは、SDS-PAGEで現れたものよりも顕著である(図12A)。抗ウレアーゼ抗体でプロービングすると、ウレアーゼバンドは、分子量〜85kDaで可視化され、1〜4個の抗体に結合したウレアーゼサブユニットのバンドは、SDS-PAGEによって見られるパターンと一致する。抗リャマ抗体でプロービングすると、遊離のウレアーゼサブユニットバンドは観察されず、抗体-ウレアーゼコンジュゲートバンドは、抗ウレアーゼ抗体でプロービングしたときと同じパターンで見られる。V21H4-DOS47が抗リャマ抗体と抗ウレアーゼ抗体の両方によって可視化されることができることは、該コンジュゲート中に両方の種が存在することを示している。
V21H4及びウレアーゼの同一性を確認するために、並びにV21H4-DOS47のコンジュゲーション部位を同定するために、ESI-LC-MSEペプチドマッピング分析を利用した。V21H4-DOS47及びHPUのLC-MS(TIC)クロマトグラムは、図15Aに示されている。
同定されたペプチドは、V21H4及びウレアーゼタンパク質配列の100%を網羅しており、質量一致誤差は4ppm未満であった。3残基を超える同定されたペプチドは全て、高エネルギーMS/MSによって確認され、b/yイオンの少なくとも半分が同定された。V21H4のC-末端
だけがウレアーゼの様々なシステイン担持ペプチドに連結されるので、コンジュゲーション部位(UC
x-VC
136と表記され、ここで、xは、ウレアーゼタンパク質配列中のアミノ酸である)は、
によって修飾されたウレアーゼペプチドである。その共有結合的コンジュゲーション部位を同定するために、V21H4-DOS47試料由来のトリプシン消化物のESI LC-MS
E生データをBiopharmaLynxによって処理し、1145.3453Daの可変修飾因子を全15個のウレアーゼシステイン残基に適用して、ウレアーゼタンパク質配列に対して検索した。各々のコンジュゲーション部位の相対頻度を評価するために、コンジュゲートされたペプチドUC
x-VC
136のペプチド強度をUC
xに関連する全てのペプチドの合計強度と比較して、コンジュゲーションの%を得た(表4)。
表4: ESI LC-MS
Eペプチドマッピング分析。V21H4-(PEG)
2-Cysによって修飾されたウレアーゼシステイン残基の同定。na=該当なし。
各々のウレアーゼサブユニットの15個のシステイン残基のうち、4個だけがコンジュゲートされた(SDS-PAGEによって観察されたバンドと一致する、図12A)。最も接近しやすいシステインはC824(26.7%)であり、以下、順に、C663(4.2%)、C59(2.6%)、及びC207(0.6%)である。ウレアーゼ酵素活性にとって不可欠であるシステイン残基C592とのコンジュゲーションは検出されなかった。これは、ウレアーゼ活性が全てのコンジュゲーション比で同程度であるという観察と一致している(図13B)。
コンジュゲーション部位も、-UCxによって修飾されたV21H4ペプチド(UCx+308.1008Da)として同定された。これは、V21H4抗体タンパク質配列を、V21H4のC-末端システインに対する可変修飾因子としての-UCxに対して検索することにより行われた(表3)。同定されたトリプシン消化ペプチドのうち、これらの0.4%が未修飾であった(T:012)。この微量のペプチドは、コア配列のC23及びC97を介してクロスリンカーによって活性化されたV21H4の部分であり得る。或いは、このペプチドは、TCEP還元工程で脱保護されなかったC-末端の半シスタミンに結合した微量のV21H4であり得る。これらの結果は、-VC136によって修飾されたウレアーゼペプチドで観察された結果と一致している。V21H4 C-末端システインのほとんどは、C824を介してウレアーゼにコンジュゲートされ(59%)、C663(27%)、C59(12%)、及びC207(1.2%)でのコンジュゲーションは少なかった。
コンジュゲーション部位の同一性を、ウレアーゼ及びV21H4ペプチドのb/yイオンマッピングを用いて確認した。16個のあり得るV21H4 b/yイオンのうち、ごく少数(4〜7個)が3つの主要なウレアーゼコンジュゲーション部位から同定された。これは、イオン化環境において陽電荷中心の欠如を引き起こす、
残基のESIイオン化特性の結果であり得る。しかしながら、MS/MS b/yフラグメントプロファイル(図15B)は、V21H4とウレアーゼタンパク質の両方を見ることにより評価することができる。一例として、その配列が
であり、かつ2633.1472のペプチド質量を有するコンジュゲートされたペプチドUC
663-VC
133は、それを
として、V21H4側からの
で修飾されたウレアーゼペプチドを修飾因子として検索することにより、2.1ppmの質量一致誤差で同定された。また、同じペプチドは、それを
として、ウレアーゼ側からの
で修飾されたV21H4 C-末端ペプチドを修飾因子として検索することにより、2.1ppmの質量一致誤差で同定された。このコンジュゲートされたペプチドのMS
E衝突誘導MS/MSスペクトルは、それをV21H4側からの修飾因子で修飾されたウレアーゼペプチドとして検索することにより、ウレアーゼ側からの13個のb/yフラグメントイオンを用いてマッピングされた。また、同じスペクトルは、それをウレアーゼ側からの修飾因子を有するV21H4ペプチドとして検索することにより、V21H4側からの7個のb/yイオンを用いてマッピングされた。
(考察)
抗体薬物コンジュゲートは、有望なクラスの抗癌薬として浮上している。薬物を標的部位に直接送達することにより、非特異的な副作用が軽減される。本発明者らは、酵素ウレアーゼと抗CEACAM6抗体から構成されるADCであるL-DOS47の産生及び特徴解析を以前に記載した(Tianらの文献、2015)。L-DOS47は、現在、非小細胞肺癌の治療のための第I/II相試験の段階である。ここでは、VEGFR2を標的とする、コンジュゲートV21H4-DOS47を含むコンジュゲートを作製し、特徴解析した。L-DOS47とV21H4-DOS47は両方とも、ウレアーゼをリャマ抗体にコンジュゲートすることにより作製されたが、良好なV21H4-DOS47コンジュゲートを産生するためには、相当な研究が必要であった。例えば、L-DOS47に見られるのと同じリンカーであるSIABを用いて作製された初期のV21-DOS47コンジュゲートは、比較的長くかつ柔軟性があるPEG2クラスのリンカーを使用するときほどの成功は収めなかったが(SIABは短くてかつ硬いリンカーである)、現在、該コンジュゲートの結合活性がかなり改善されたことが本明細書に示されている。
本研究において、本発明者らは、大規模なcGMP生産に好適であるV21-DOS47免疫コンジュゲートをコンジュゲートし、精製するための手順を開発した。単一ドメインラクダ科動物抗体は、抗体-酵素コンジュゲートの作製において使用するために理想的である。その小さい分子サイズのために、それを廉価で大量に生産することが可能になっている。重要なことに、それは、ここでは、短いアミノ酸タグをC-末端に付加することにより修飾された。タグは、抗体pIの修飾、標的とされる抗体発現の促進、及び特異的反応部位の付加を含む、いくつかの目的を果たしている。ウレアーゼのpIは4.8〜5.1の範囲内であるので、未修飾のコア抗体を用いて作製される抗体-ウレアーゼコンジュゲートは、約7のpIを有するコンジュゲートを生じさせることになる。このpIでは、該コンジュゲートは不安定であり、コンジュゲーション中及びその後に沈殿を形成する。短いC-末端ペプチドタグの付加は、抗体のpIを8.75から5.43へと調整し、コンジュゲーション及び精製中に安定であるpIが4.8〜5.5のコンジュゲートを生じさせる。C-末端タグは、発現を細菌封入体にターゲッティングすることにより、抗体産生の収率も改善する。これにより、イオン交換クロマトグラフィーのみを使用することによる抗体精製が可能になった。V21配列は、それぞれ、CDR2及びCDR3配列中に、2つのリジン残基を含有するので、リジンとスルフヒドリルの架橋化学がこれらのリジン残基を修飾し、該コンジュゲートとその標的抗原との結合親和性を損なう可能性がある。この理由から、C-末端システイン残基を、スルフヒドリルとスルフヒドリルの架橋反応において使用するために、V21H4のC-末端タグに含めた。LC-MSE特徴解析により、リジンとスルフヒドリルの架橋化学によるCDR2リジン残基の修飾が確認され、ELISA結合アッセイにより、スルフヒドリルとスルフヒドリルの架橋化学によって産生されたV21H4-DOS47の親和性が、リジンとスルフヒドリルの架橋化学によって産生されたV21H1-DOS47コンジュゲートの親和性よりも約6倍強いことが確認された。
C-末端システイン残基の付加は、V21H4-DOS47のコンジュゲーションにおいて極めて有用であることが分かったが、他のリャマ抗体を用いて作業する場合、この戦略を使用することができるかどうかを決定する前に、コアシステイン残基の状況を評価する必要があり得ることが理解されるであろう。これは、コアシステイン残基がジスルフィド結合中で接続され、したがって、修飾に利用することができないので、スルフヒドリルとスルフヒドリルの化学作用がC-末端システインを一意的に標的とするからである。
タンパク質リフォールディングは、緩徐でかつ再現不可能なプロセスであり得る。典型的には、リフォールディングは、希釈又は透析によって行われ、そのプロセスは、数日かかることがある。さらに、収率は、一般に低い(Yamaguchi及びMiyazakiの文献、2014)。DTT/シスタミンレドックス対の導入は、高収率の活性のあるV21H4抗体を生成する短くかつ再現可能なリフォールディングプロセスをもたらし、該リフォールディングプロセスは、大規模生産に有用である。
抗体をウレアーゼにコンジュゲートする1つの利点は、抗体のみと比較して、ウレアーゼを腫瘍に提示するためのコンジュゲートの親和性が明らかに増大することである。複合体の相対解離速度が遊離の抗体の場合よりも遅いので、ウレアーゼ1つ当たりに多数の抗体をクラスター化することにより、結合力が増大する。しかしながら、抗体結合力の改善は、ウレアーゼ活性の減損及びコンジュゲートの免疫原性の増加を含む、抗体をウレアーゼに付加することの潜在的な有害効果とのバランスを保たなければならない。さらに、高いコンジュゲーション比は、生産の費用及び複雑性を増大させる。標的抗原の利用可能性が異なり、かつウレアーゼ表面に提示される抗体の配向及び活性が異なるコンジュゲーション化学とともに変化するので、各々の抗体-ウレアーゼコンジュゲートは異なる理想的コンジュゲーション比を有し得る。本研究において、本発明者らは、3.3を超えるコンジュゲーション比では抗原結合の改善がほとんどないことを観察した。これは、ウレアーゼ1つ当たり8つの抗体がコンジュゲートされるまで結合が増大したL-DOS47と対照的である。抗体が標的抗原に接近しやすい可能性があるので、L-DOS47と比較して、V21H4-DOS47を作製するためのより柔軟性のあるリンカーの使用は、この違いを一部説明することができる。しかしながら、2つのコンジュゲート間の違いは、L-DOS47の抗体成分であるAFAIKL2が、VEGFR2の場合にV21が有するよりもはるかに低いその標的抗原に対する親和性を有するという事実によるものである可能性が最も高い(データは示さない)。したがって、抗体の多量体化は、V21の場合よりもAFAIKL2の場合により顕著な効果を有する。
(参考文献)
上述の説明及び実施例は、単に本発明を例示するために記載されており、限定するものであることが意図されない。本発明の開示された態様及び実施態様の各々を、個々に又は本発明の他の態様、実施態様、及びバリエーションと組み合わせて考慮することができる。さらに、別途規定されない限り、本発明の方法の工程はいずれも、任意の特定の実施順序に限定されない。
本発明の精神及び物質を組み込んでいる開示された実施態様の修飾が当業者の心に浮かんでもよく、そのような修飾は本発明の範囲内にある。さらに、本明細書に引用された参考文献は全て、引用により完全に組み込まれる。