JP2020186415A - 有機絶縁被膜付き電磁鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】密着性、打ち抜き性、および耐疵付き性に優れ、かつ積層鉄心中における電磁鋼板の占積率を損なわない絶縁被膜が形成された絶縁被膜付き電磁鋼板を提供すること。【解決手段】マルテンス硬さが300N/mm2以上600N/mm2未満であり、算術平均粗さRaが0.3μm以下である有機絶縁被膜を有する、有機絶縁被膜付き電磁鋼板。【選択図】なし

Description

本発明は、積層鉄心の材料として好適な絶縁被膜付き電磁鋼板であって、絶縁性、打ち抜き性、および耐疵付き性に優れ、かつ積層鉄心中における電磁鋼板の占積率を損なわない有機絶縁被膜が形成された有機絶縁被膜付き電磁鋼板に関する。
電磁鋼板は、電気エネルギーと磁気エネルギーとの変換効率が高いことから、発電機、変圧器、および家電製品用モーター等の、電気機器類の鉄心の材料として広く用いられている。これらの鉄心は通常、プレス成形により所望の形状に打ち抜き加工された電磁鋼板を多数枚積層して形成される。このように電磁鋼板を積層して形成された鉄心を、積層鉄心という。
エネルギー変換効率の向上を図る上では積層鉄心の鉄損を低減することが重要となる。積層鉄心において、積層された鋼板間が短絡すると、局部的な渦電流が発生して鉄損が増大する。そのため、積層鉄心の材料となる電磁鋼板には通常、表面に絶縁被膜が形成される。このような絶縁被膜付き電磁鋼板を用いることにより、鋼板を積層した際の層間抵抗が向上し、積層された鋼板間の短絡が抑制され、局部的な渦電流が低減され、延いては鉄心の鉄損が低減される。
絶縁被膜付き電磁鋼板を用いた積層鉄心は、現在までに多岐に亘る分野において利用されている。近年、特に大型発電機、および風力発電機への適用が積極的に進められている。しかし、絶縁被膜付き電磁鋼板を用いた積層鉄心を大型発電機および風力発電機に適用するためには、絶縁被膜が幾つかの特性を満足することが要求される。
まず、大型発電機および風力発電機では高電圧に対応する必要がある。そのため、これらの鉄心の材料として用いられる電磁鋼板には、家電製品の小型モーター等の鉄心の材料として用いられる電磁鋼板に要求される絶縁性(層間抵抗値)よりも、大きな絶縁性(層間抵抗値)が要求される。具体的には、大型発電機および風力発電機の鉄心を構成する電磁鋼板に要求される層間抵抗値は、JIS C 2550(2000)「9.層間抵抗試験」(A法)に準拠して測定された値で、約50Ω・cm/枚超である。
更に、大型発電機および風力発電機に用いる大型の鉄心を製造する際には、多くの場合、材料となる電磁鋼板を手作業で積層する。この手作業による積層の際、電磁鋼板端面と絶縁被膜とが接触することにより、絶縁被膜に疵が発生することがある。絶縁被膜に発生した疵は層間抵抗を低下させる要因になるため、絶縁被膜には手作業時の疵を抑制し得るよう、優れた耐疵付き性が要求される。
これらの要求に対応すべく、様々な技術が提案されている。たとえば特許文献1には、溶剤に、(A)水系カルボキシル基含有樹脂:固形分換算で100質量部、(B)Al含有酸化物:上記(A)の固形分換算100質量部に対し、固形分換算で40質量部超150質量部未満、(C)メラミン、イソシアネートおよびオキサゾリンから選ばれる1種または2種以上の架橋剤:上記(A)の固形分換算100質量部に対し、固形分換算で20質量部超100質量部未満、を含有する絶縁被膜形成用被覆剤を用いた、絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、溶剤に、(A)水系カルボキシル基含有樹脂:固形分換算で100質量部、(B)アルミニウム含有酸化物:上記(A)の固形分換算100質量部に対し、固形分換算で40質量部超300質量部未満、および(C)メラミン、イソシアネートおよびオキサゾリンからなる群から選択される少なくとも一つの架橋剤:前記(A)の固形分換算100質量部分に対し、固形分換算で100質量部以上、300質量部未満、を含有する絶縁被膜形成用被覆剤を用いた絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法が開示されている。
更に、プレス成形による打抜き時に金型を損傷しにくい絶縁被膜であれば、金型の交換または研磨の回数を減らすことができ、効率よく鉄心を作製することができるため、上述した特性に加えて、優れた打ち抜き性を有する絶縁被膜が形成された、絶縁被膜付き電磁鋼板が求められている。
特開2013−209739号公報 特開2018−21120号公報
上述したような従来技術によれば、絶縁性等の諸特性に優れた絶縁被膜を形成することができる。しかしながら本発明者らは新規に、上述したような従来技術においては、被膜の耐疵付き性、および積層鉄心中における電磁鋼板の占積率に、改善の余地があることを知見した。
すなわち、本発明は、従来技術が抱える問題を有利に解決し、絶縁性、打ち抜き性、および耐疵付き性に優れ、かつ積層鉄心中における電磁鋼板の占積率を損なわない絶縁被膜が形成された、絶縁被膜付き電磁鋼板を提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく、本発明者らは鋭意検討を重ね、絶縁性、打ち抜き性、および耐疵付き性に優れ、かつ積層鉄心中における電磁鋼板の占積率を損なわない絶縁被膜を形成するためには、被膜のマルテンス硬さおよび表面粗さを適切に規定し、被膜を有機被膜とすることが有効であるとの新規な知見を得た。
すなわち、本発明者らは、絶縁被膜のマルテンス硬さを適切に規定することで、打抜き性、および耐疵付き性に優れた絶縁被膜を得ることができることを知見した。
また、本発明者らは、特許文献1および2に記載のように、アルミニウム含有酸化物等の無機顔料を多量に含有する被覆剤においては、該被覆剤を用いて絶縁被膜付き電磁鋼板を製造した際に、無機顔料の存在に起因する被膜表面凹凸により積層コアの鋼板間に発生する空隙が占積率の低下につながることを知見した。よって、被膜を有機被膜とし、表面粗さを適切に規定することで、被膜表面凹凸により積層コアの鋼板間に発生する空隙により占積率が低下することを防ぐことができることを新規に知見した。
本発明は上記知見に基づいて完成されたものであり、その要旨構成は次の通りである。
[1]マルテンス硬さが300N/mm以上600N/mm未満であり、算術平均粗さRaが0.3μm以下である有機絶縁被膜を有する、有機絶縁被膜付き電磁鋼板。
[2]前記有機絶縁被膜の片面辺りの付着量が0.9g/m以上20g/m以下である、上記[1]に記載の有機絶縁被膜付き電磁鋼板。
本発明によれば、絶縁性、打ち抜き性、および耐疵付き性に優れ、かつ積層鉄心中における電磁鋼板の占積率を損なわない有機絶縁被膜が形成された、有機絶縁被膜付き電磁鋼板を提供することができる。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に係る「有機絶縁被膜」は、有機樹脂を主体とする絶縁被膜であるが、その他の成分を5質量%以下であれば含んでいてもよい。その他の成分としては、顔料、界面活性剤、防錆剤、潤滑剤、消泡剤、および酸化防止剤等が挙げられる。好ましくは、有機絶縁被膜に含まれるその他の成分の含有量は、4質量%以下であり、さらに好ましくは、2質量%以下である。
本発明の有機絶縁被膜付き電磁鋼板は、マルテンス硬さが300N/mm以上600N/mm未満であり、算術平均粗さRaが0.3μm以下である有機絶縁被膜を有する。
有機絶縁被膜のマルテンス硬さは、300N/mm以上600N/mm未満とする。上述したように、本発明者らは、被膜のマルテンス硬さを適切に規定することで、被膜の密着性、打抜き性、および耐疵付き性に優れた被膜を得ることができることを新規に知見し、本発明を完成させるに至った。有機絶縁被膜のマルテンス硬さが300未満であると、硬度が不足するため、耐疵付き性が劣位である。よって、マルテンス硬さを300以上とすることで、ハンドリング時の疵を抑制し得る硬度を確保することができる。一方、マルテンス硬さが600以上であると、有機絶縁被膜の硬化が著しく、打抜き性が劣化する。また、有機絶縁被膜と鋼板との密着性が劣化する。マルテンス硬さは、好ましくは、320N/mm以上、より好ましくは、340N/mm以上である。また、マルテンス硬さは、好ましくは、550N/mm以下、より好ましくは、510N/mm以下である。
また、有機絶縁被膜の算術平均粗さ(表面粗さ)Raは0.3μm以下とする。上述したように、本発明者らは、被膜表面凹凸により積層コアの鋼板間に発生する空隙が占積率を低下させることを新規に知見し、有機絶縁被膜の表面粗さを適切に規定して、本発明を完成するに至った。算術平均粗さRaが0.3μmを超えると、被膜表面凹凸により積層コアの鋼板間に発生する空隙が占積率を低下させることから、積層鉄心中における電磁鋼板の占積率が低下するためである。有機絶縁被膜の算術平均粗さRaは、好ましくは0.2μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。なお、有機絶縁被膜の算術平均粗さRaの下限は特に限定されず、0μmであってもよい。
なお、有機絶縁被膜は、電磁鋼板の少なくとも一方の面に形成されるが、両面に形成することが好ましい。目的によっては、電磁鋼板の一方の面にのみ本発明に係る有機絶縁被膜を形成し、他方の面には他の公知の絶縁被膜を形成することもできる。
本発明において、有機絶縁被膜の片面あたりの付着量は、0.9g/m以上20g/m以下であることが好ましい。有機絶縁被膜の付着量を0.9g/m以上とすることで、絶縁性および打ち抜き性に優れた有機絶縁被膜付き電磁鋼板を提供することができる。より好ましくは、有機絶縁被膜の付着量は、5.0g/m以上とする。また、有機絶縁被膜の付着量が20g/mを超える場合、密着性の劣化、鉄心における占積率の低下、およびコストの増大を招くため、有機絶縁被膜の付着量は20g/m以下とすることが好ましい。
次に、本発明に係る有機絶縁被膜付き電磁鋼板の好適な製造方法について説明する。本発明に係る有機絶縁被膜付き電磁鋼板は、絶縁被膜用被覆剤を電磁鋼板に塗布して焼き付けることにより、製造され得る。まずは、有機絶縁被膜付き電磁鋼板の製造に用いる絶縁被膜用被覆剤について説明する。
有機絶縁被膜付き電磁鋼板の製造に用いる絶縁被膜用被覆剤は、剛体振り子試験における周期の低下開始温度が120℃以上、200℃以下である。剛体振り子試験における周期は、ISO12013−1および2に規定される剛体振り子試験で測定する。剛体振り子試験における周期の低下開始温度は、硬化挙動を表す指標の一つである。前記低下開始温度が120℃以上であれば、焼き付け時に充分に硬化が進行する被覆剤であるため、ハンドリング時の疵を抑制し得る被膜硬度を有する、耐疵付き性に優れた有機絶縁被膜を形成することができる。一方、前記の周期が200℃を超えても低下しない場合は、充分に硬化し得ない被覆剤であるため、該被覆剤を用いて形成した有機絶縁被膜の耐疵付き性が劣位となる。剛体振り子試験における周期の低下開始温度は、好ましくは、125℃以上、より好ましくは、130℃以上である。また、剛体振り子試験における周期の低下開始温度は、好ましくは、195℃以下、より好ましくは、180℃以下である。
本発明の絶縁被膜用被覆剤は、前記特性を満足するものであればよく、他の要件については何ら限定されるものではない。前記特性を満足する被覆剤としては、例えば、(A)水系カルボキシル基含有樹脂と、(B)メラミン、イソシアネートおよびオキサゾリンから選ばれる1種または2種以上の架橋剤とを配合した被覆剤が例示される。また、前記(A)水系カルボキシル基含有樹脂の種類についても何ら限定されるものではなく、カルボキシル基を含有する水系樹脂であれば何れも適用可能であり、例えばエポキシ樹脂(a1)およびアミン類(a2)を反応させてなる変性エポキシ樹脂と、カルボキシル基含有ビニル単量体(a3)を含有するビニル単量体成分を重合して得られる反応生成物が例示される。
一例においては、絶縁被膜形成用被覆剤は、
溶剤に、下記成分(A)および(B)を含有する絶縁被膜形成用被覆剤であって、
該被覆剤に含まれる全固形分に対する下記成分(A)および(B)の固形分換算の合計量が、95質量%以上100質量%以下を占める、絶縁被膜形成用被覆剤であり得る。
(A)水系カルボキシル基含有樹脂:固形分換算で100質量部、
(B)メラミン、イソシアネートおよびオキサゾリンからなる群から選ばれる1種または2種以上の架橋剤:前記(A)の固形分換算100質量部に対し、固形分換算で30質量部以上300質量部以下
以下、絶縁被膜形成用被覆剤に含有される各成分の一例について説明する。
(A)水系カルボキシル基含有樹脂
一実施形態において、絶縁被膜形成用被覆剤は、水系カルボキシル基含有樹脂を含有する。なお、本明細書において水系の樹脂とは、水分散型樹脂と水溶性樹脂との総称である。本実施形態においては、水系の樹脂を用いることにより、絶縁被膜形成中の揮発性有機溶剤の発生量を極力低減することができる。
上記水系カルボキシル基含有樹脂(A)の種類は特に限定されず、カルボキシル基を含有する水系樹脂であれば何れも適用可能である。水系カルボキシル基含有樹脂(A)がカルボキシル基を有することによって、水系カルボキシル基含有樹脂(A)と架橋剤(B)との間で好適に架橋を形成させて、絶縁被膜の耐疵付き性を高めることができ、さらに絶縁被膜と電磁鋼板との密着性を高めることができる。上記水系カルボキシル基含有樹脂(A)としては、例えばエポキシ樹脂(a1)とアミン類(a2)とを反応させてなる水性変性エポキシ樹脂に対して、カルボキシル基含有ビニル単量体(a3)を含有するビニル単量体成分を重合することで得られる反応生成物が好適に適用される。
エポキシ樹脂(a1)をアミン類(a2)で変性した変性エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂(a1)のエポキシ基の一部が、アミン類(a2)のアミノ基と開環付加反応することにより、水系の樹脂となる。なお、エポキシ樹脂(a1)をアミン類(a2)で変性して水系変性エポキシ樹脂とするに際し、エポキシ樹脂(a1)とアミン類(a2)との配合比は、100質量部のエポキシ樹脂(a1)に対して、アミン類(a2)を3質量部以上30質量部以下とすることが好ましい。アミン類を3質量部以上とすることにより、極性基を充分確保することができるため、被膜の密着性が良好となる。また、アミン類を30質量部以下とすることにより、耐水性および耐有機溶剤性に優れる被膜を提供することができる。
エポキシ樹脂(a1)としては、特に限定されず、各種公知のものを使用することができる。エポキシ樹脂(a1)として、具体的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、および多価アルコールのグリシジルエーテル類等を用いることができる。
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール類と、ハロエポキシド類との反応生成物が挙げられる。
上記ビスフェノール類としては、フェノールまたは2,6−ジハロフェノールと、ホルムアルデヒド、およびアセトアルデヒド等のアルデヒド類との反応生成物;フェノールまたは2,6−ジハロフェノールと、アセトン、アセトフェノン、シクロヘキサノン、ベンゾフェノン等のケトン類との反応生成物;ジヒドロキシフェニルスルフィドの過酸化物;ならびにハイドロキノン同士のエーテル化反応物等が挙げられる。
上記ハロエポキシド類としては、エピクロロヒドリンおよびβ−メチルエピクロロヒドリン等が挙げられる。
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂として、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、およびビスフェノールF型エポキシ樹脂等を好適に用いることができる。
また、上記ノボラック型エポキシ樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂とエピクロロヒドリンとの反応生成物等が挙げられる。なお、ノボラック型フェノール樹脂については、フェノールおよびクレゾールなどから合成することができる。
また、上記多価アルコールのグリシジルエーテル類としては、多価アルコールとして、例えば1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノール(A型,F型)、およびポリアルキレングリコール類などを用いたものが挙げられる。ポリアルキレングリコール類としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリブチレングリコールなどが挙げられる。
また、エポキシ樹脂(a1)としては、上記の他、ポリブタジエンジグリシジルエーテルなどの公知のエポキシ樹脂も適用することができる。更に、被膜に柔軟性を付与するために、各種公知のエポキシ化油、およびダイマー酸グリシジルエステル等を使用することもできる。
エポキシ樹脂(a1)としては、上記の何れか1種を単独で使用することができるほか、2種以上を組み合わせて使用することもできる。エポキシ樹脂(a1)は、好ましくはビスフェノール型エポキシ樹脂である。エポキシ樹脂(a1)がビスフェノール型エポキシ樹脂であれば、電磁鋼板への密着性に特に優れた被膜を提供することができる。
また、エポキシ樹脂(a1)のエポキシ当量は、最終的に得られる水系カルボキシル基含有樹脂(A)の分子量にもよるが、100以上3000以下とすることが好ましい。エポキシ樹脂(a1)のエポキシ当量が100以上であると、架橋剤(B)との架橋反応が著しく速くなることがないため、被覆剤を塗布する際の作業性が良好である。一方、エポキシ樹脂(a1)のエポキシ当量が3000以下であれば、水系カルボキシル基含有樹脂(A)を製造する際の作業性が良好であり、また、水系カルボキシル基含有樹脂(A)がゲル化し易くなることがない。
アミン類(a2)としては、各種公知のアミン類を適用することができる。例えばアルカノールアミン類、脂肪族アミン類、芳香族アミン類、脂環族アミン類、および芳香核置換脂肪族アミン類等が挙げられる。これらのアミン類は、何れか1種を単独で使用することができるほか、2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記アルカノールアミン類としては、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジ−2−ヒドロキシブチルアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、およびN−ベンジルエタノールアミン等が挙げられる。
上記脂肪族アミン類としては、例えばエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、パルミチルアミン、オレイルアミン、およびエルシルアミン等が挙げられる。
上記芳香族アミン類としては、例えばトルイジン、キシリジン、クミジン(イソプロピルアニリン)、ヘキシルアニリン、ノニルアニリン、およびドデシルアニリン等が挙げられる。
上記脂環族アミン類としては、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、およびノルボルニルアミン等が挙げられる。
上記芳香核置換脂肪族アミン類としては、例えばベンジルアミン、およびフェネチルアミン等が挙げられる。
上述したアミン類の中でも、樹脂の親水性に寄与するという観点から、特にアルカノールアミン類が好ましい。
上述したように、エポキシ樹脂(a1)をアミン類(a2)で変性して得た水系変性エポキシ樹脂に、カルボキシル基含有ビニル単量体(a3)を含有するビニル単量体成分を重合させることにより、水系カルボキシル基含有樹脂(A)が得られる。すなわち、水系変性エポキシ樹脂のうち、アミノ基と反応していないエポキシ基の一部と、ビニル単量体成分のカルボキシル基の一部とが反応して、水系カルボキシル基含有樹脂となる。なお、重合に際しては、アゾ化合物等の公知の重合開始剤を用いることができる。
上記カルボキシル基含有ビニル単量体(a3)としては、官能基としてカルボキシル基を有し、且つ重合性を有するビニル基を有する単量体であれば特に限定されず、公知のものを適用することができる。具体的には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有ビニル単量体が挙げられる。
カルボキシル基含有ビニル単量体(a3)を含有するビニル単量体成分は、上記したカルボキシル基含有ビニル単量体(a3)以外に、各種ビニル単量体成分を含有しうる。例えば、カルボキシル基含有ビニル単量体(a3)以外のビニル単量体成分として、スチレン系単量体を含有しうる。スチレン系単量体を含有させることにより、カルボキシル基含有ビニル単量体(a3)を含有するビニル単量体成分の製造時および貯蔵時の安定性を向上させることができる。カルボキシル基含有ビニル単量体の含有量は、カルボキシル基含有ビニル単量体(a3)を含有するビニル単量体成分全体に対し、好ましくは0質量%以上10質量%以下とする。
上記の水系変性エポキシ樹脂に、カルボキシル基含有ビニル単量体(a3)を含有するビニル単量体成分を重合して水系カルボキシル基含有樹脂とするに際し、エポキシ樹脂(a1)とカルボキシル基含有ビニル単量体成分(a3)の配合比は、固形分換算で100質量部のエポキシ樹脂(a1)に対して、ビニル単量体を固形分換算で5質量部以上100質量部以下となるように配合することが好ましい。ビニル単量体の配合量が5質量部以上であれば被膜の耐湿潤性が良好であり、100質量部以下であれば被膜の耐水性、および耐有機溶剤性が好適であるためである。
水系カルボキシル基含有樹脂(A)の製造方法は、特に限定されないが、以下の手順とすることが好ましい。エポキシ樹脂(a1)を高温にて溶解したのち、アミン類(a2)を加えて反応させ、水性変性エポキシ樹脂とする。次いで、得られた水性変性エポキシ樹脂に、カルボキシル基含有ビニル単量体(a3)を添加して保温する。その後、冷却し、中和剤および水を順次添加して混合することにより、水系カルボキシル基含有樹脂(A)を得る。
水系カルボキシル基含有樹脂(A)の調製時に使用する溶剤としては、最終的に得られる水系カルボキシル基含有樹脂の水性化の観点から、好ましくは水を用いる。また、水に親水性溶剤を少量混合して使用することができる。親水性溶剤としては、具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n−ブチルセロソルブ、およびt−ブチルセロソルブなどのグリコールエーテル類;ならびにイソプロピルアルコール、およびブチルアルコールなどのアルコール類が挙げられる。これらの親水性溶剤は、いずれか1種を単独で使用できる他、2種以上を組み合わせて使用することができる。親水性溶剤は、被覆剤全体に対し、5質量%以上20質量%以下とすることが好ましい。親水性溶剤の量が上記の範囲内であれば、被覆剤の貯蔵安定性が良好である。
水系カルボキシル基含有樹脂(A)の製造時には、各種公知のアミン類を中和剤として適用することができる。中和剤としては、例えば、アルカノールアミン類、脂肪族アミン類、芳香族アミン類、脂環族アミン類、芳香核置換脂肪族アミン類等が挙げられる。これらの中和剤は、1種を単独で使用することができ、または2種以上を組み合わせて使用することもできる。上記の中和剤の中でも、水性化後の安定性が良好であることから、特に、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどのアルカノールアミンが好ましい。また、中和剤の添加によって、水系カルボキシル基含有樹脂(A)溶液のpHを6〜9に調整することが好ましい。
(B)メラミン、イソシアネートおよびオキサゾリンから選ばれる1種または2種以上の架橋剤
架橋剤は、水系カルボキシル基含有樹脂(A)を架橋させて絶縁被膜の耐疵つき性を高め、かつ絶縁被膜と電磁鋼板との密着性を高める目的で被覆剤に含有される。架橋剤としては、水系カルボキシル基含有樹脂(A)のカルボキシル基およびエポキシ基と反応して架橋反応を起こす、メラミン、イソシアネートおよびオキサゾリンから選ばれる1種または2種以上の架橋剤を用いる。メラミンとしては、たとえば、メチル化メラミン、およびブチル化メラミンなどを用いることができる。イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアネート型ポリイソシアネートなどを用いることができる。また、オキサゾリンとしては、オキサゾリン環を有する化合物であれば特に限定されない。
本実施形態に係る被覆剤は、水系カルボキシル基含有樹脂(A)の固形分100質量部に対して、メラミン、イソシアネートおよびオキサゾリンから選ばれる1種または2種以上の架橋剤(B)を、固形分換算で30質量部以上300質量部以下の範囲で含有する。水系カルボキシル基含有樹脂(A)の固形分100質量部に対して、上記架橋剤(B)が30質量より少ない場合、形成される絶縁被膜の耐疵つき性が低下する。一方、水系カルボキシル基含有樹脂(A)の固形分100質量部に対して、上記架橋剤(B)が300質量部より多い場合、架橋密度が増大することによる硬化が著しく、形成される絶縁被膜の打ち抜き性および密着性が低下する。したがって、水系カルボキシル基含有樹脂(A)の固形分100質量部に対して、上記架橋剤(B)を30質量部以上300質量部以下とする。水系カルボキシル基含有樹脂(A)の固形分100質量部に対する架橋剤(B)の量は、固形分換算で、好ましくは50質量部以上150質量部以下、より好ましくは80質量部以上100質量部以下である。
なお、イソシアネートは水中における安定性が低いため、イソシアネートを架橋剤として用いる場合には、絶縁被膜形成用被覆剤を使用する直前に、イソシアネートを混合することが好ましい。
溶剤
本実施形態においては、上記成分(A)および(B)を溶剤に含有させる。該溶剤として好適に用いられる溶剤は、水、親水性溶剤、および水と親水性溶剤との混合物である。親水性溶剤としては、具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n−ブチルセロソルブ、およびt−ブチルセロソルブなどのグリコールエーテル類;ならびにイソプロピルアルコール、およびブチルアルコールなどのアルコール類が挙げられる。なお、溶剤には、樹脂の調製のために用いられる溶剤が、微量混合しうる。絶縁被膜形成用被覆剤中の溶剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、40質量%以上90質量%以下とする。つまり、被覆剤中の固形分の量は、好ましくは、10質量%以上60質量%以下とする。被覆剤中の溶剤および固形分の量が上記の範囲内であれば、被覆剤の貯蔵安定性、および被覆剤を鋼板に塗布する際の作業性が良好である。
その他の成分
本実施形態に係る絶縁被膜形成用被覆剤は、上記成分(A)および(B)以外の成分を、被覆剤の全固形分に対し、固形分換算で5質量%以下含有していてもよい。つまり、被覆剤に含まれる全固形分に対する上記成分(A)および(B)の固形分換算の合計量は、95質量%以上100質量%以下を占める。上述したように、アルミニウム含有酸化物等の無機顔料を多量に含有する被覆剤においては、該被覆剤を用いて絶縁被膜付き電磁鋼板を製造した際に、無機顔料の存在に起因する被膜表面凹凸により積層コアの鋼板間に発生する空隙が占積率の低下につながることを知見した。これに対し本発明においては、被覆剤に含まれる全固形分に対する上記成分(A)および(B)の固形分換算の合計量が、95質量%以上100質量%以下を占める被覆剤、すなわち、固形分が実質的に上記成分(A)および(B)からなる被覆剤を用いることにより、無機顔料の存在に起因する被膜表面凹凸が発現しない。よって、本発明の被覆剤によれば、積層鉄心中における電磁鋼板の占積率を損なわずに絶縁被膜を形成することができる。被覆剤に含まれる全固形分に対する上記成分(A)および(B)の固形分換算の合計量は、好ましくは96質量%以上とし、より好ましくは98質量%以上とする。
絶縁被膜形成用被覆剤が含有し得るその他の成分としては、例えば、絶縁被膜の性能や均一性を一層向上させるために添加される、界面活性剤、防錆剤、潤滑剤、消泡剤、および酸化防止剤等があげられる。その他、公知の着色顔料、および体質顔料も、固形分換算で5質量%以下、かつ絶縁被膜の性能を低下させない範疇で含有させうる。
被覆剤の製造方法
本実施形態に係る被覆剤の製造方法は特に限定されないが、以下の手順とすることが好ましい。分散機に、水系カルボキシル基含有樹脂(A)の一部を仕込み、水、および必要に応じて親水性溶剤を添加して、均一に分散させる。ついで、水系カルボキシル基含有樹脂(A)の残部と架橋剤(B)とを追加して分散させる。必要に応じて、得られた分散体に、レベリング剤、中和剤、水、および消泡剤を添加して、被覆剤とする。
電磁鋼板
被覆剤を塗布する電磁鋼板の種類は特に限定されない。例えば、磁束密度の高いいわゆる軟鉄板(電気鉄板)やSPCC等の一般冷延鋼板、比抵抗を上げるためにSiやAlを含有させた無方向性電磁鋼板、および方向性電磁鋼板などを使用することができる。
電磁鋼板の厚さも特に限定されない。鋼板を薄くすると鉄損が減少するが、薄すぎると形状安定性が低下することに加え、鋼板の製造コストが増加する。そのため、鋼板の厚さは、50μm以上とすることが好ましい。板厚が増加すると、それに伴い鉄損が増大する。また、板厚を薄くすることにより、接着被膜を適用せずともカシメや溶接によって鋼板を一体化することが可能となる。したがって、板厚は1mm以下とすることが好ましく、0.5mm以下とすることがより好ましい。
被覆剤を塗布する前の電磁鋼板の前処理は特に限定されない。未処理の電磁鋼板に対し被覆剤を塗布することもできるが、好ましくは、電磁鋼板に対し、アルカリ脱脂などの脱脂処理や、塩酸、硫酸、リン酸などの酸を用いた酸洗処理を施してから被覆剤を塗布する。
被覆剤の塗布方法としては、ロールコート、フローコート、ナイフコート、バーコート、およびスプレー等、種々の方法を用いることができる。
電磁鋼板に対する被覆剤の塗布量は、焼付け後の絶縁被膜の付着量に換算して0.9g/m以上とすることが好ましく、5.0g/m以上とすることがより好ましい。絶縁被膜の塗布量の増大に伴い被膜原料コストが増大し、また被膜が厚膜となることにより積層鉄心中における電磁鋼板の占積率が低下する。以上の観点から、電磁鋼板に対する被覆剤の塗布量は、焼付け後の絶縁被膜の付着量に換算して、好ましくは100g/m以下、より好ましくは50g/m以下、さらに好ましくは20g/m以下とする。
なお、焼付け後の絶縁被膜の付着量は、絶縁被膜付き電磁鋼板から、熱アルカリ等で絶縁被膜のみを溶解し、絶縁被膜の溶解前後における電磁鋼板の重量変化から測定することができる(重量法)。
電磁鋼板に被覆剤を塗布した後の焼付け処理方法についても特に限定されず、通常実施されるような熱風式、赤外線加熱式、および誘導加熱式等による焼付け方法が適用可能である。
焼付け温度は、一般的に実施されている温度範囲とすることができ、例えば最高到達鋼板温度を150℃以上350℃以下とすることができる。被覆剤の熱分解を避けるためには、最高到達鋼板温度を150℃以上300℃以下とすることが好ましい。また、焼付け工程における焼付け時間、すなわち、加熱を開始してから上記最高到達鋼板温度に達するまでの時間は、特に限定されないが、10〜60秒程度とすることが好ましい。最高到達鋼板温度に到達した後は、特に限定されないが、室温まで冷却することが好ましい。
[水系カルボキシル基含有樹脂の製造]
水系カルボキシル基含有樹脂(A)を、以下の手順で調製した。ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂(a1))を、100℃で溶解したのち、ジエタノールアミン(アミン類(a2))を加えて5時間反応させ、水性変性エポキシ樹脂とした。次いで、得られた水性変性エポキシ樹脂に、アクリル酸(カルボキシル基含有ビニル単量体(a3))またはスチレン((a3)以外のビニル単量体)を添加したのち、130℃にて4時間保温した。その後80℃に冷却し、中和剤(ジエタノールアミン)および水を順次添加して混合することにより、水系カルボキシル基含有樹脂(A)を得た。なお、アミン類(a2)、カルボキシル基含有ビニル単量体(a3)、および(a3)以外のビニル単量体は、固形分換算で100質量部のエポキシ樹脂(a1)に対し、固形分換算でそれぞれ表1に示す質量部反応させた。
[絶縁被膜用被覆剤の製造]
上記で得られた各種水系カルボキシル基含有樹脂(A)、架橋剤(B)、発明例19および比較例8についてはさらにカオリナイト(竹原化学工業株式会社製 カオリン;Al含有酸化物)を、以下の手順にしたがい混合し、表1に示す組成(固形分換算)の被覆剤を調製した。
発明例1〜18ならびに比較例3〜7および9については、まず、水系カルボキシル基含有樹脂(A)、水、および被覆剤全体の10質量%となる親水性溶剤(ブチルセロソルブ)を仕込み、均一になるまで混合した。その後、メチル化メラミン(オルネクス(株)製 サイメル 303LF、架橋剤(B))を追加して分散させた。ついで中和剤としてジエタノールアミンを添加し、水を添加して被覆剤中の固形分濃度を調整した。
比較例1および2については、メチル化メラミンを追加して分散させた後、中和剤としてジエタノールアミンを添加する前に、アクリル樹脂としてウォーターゾールD−720(DIC株式会社製)を追加して分散させたこと以外は、上記発明例1〜18ならびに比較例3〜7および9と同様に被覆剤を調製した。
発明例19および比較例8については、まず、水系カルボキシル基含有樹脂(A)の一部を仕込み、カオリナイト(Al含有酸化物)、水、および被覆剤全体の10質量%となる親水性溶剤(ブチルセロソルブ)を分散機に入れ均一に分散させ、ツブゲージにて測定したカオリナイト(Al含有酸化物)の粒子径を20μm以下にした。ついで、水系カルボキシル基含有樹脂(A)の残部とメチル化メラミン(オルネクス株式会社製 サイメル 303LF、架橋剤(B))とを追加して分散させ、分散体を得た。ついで中和剤としてジエタノールアミンを添加し、水を添加して被覆剤中の固形分濃度を調整した。
いずれの被覆剤も固形分濃度は50質量%、pHは8.5に調整した。
表1に、被覆剤中の水系カルボキシル基含有樹脂(A)、架橋剤(B)、およびAl含有酸化物の配合比について示す。なお、表1においては、架橋剤(B)およびAl含有酸化物の質量部は、水系カルボキシ基含有樹脂(A)100質量部に対する質量部(固形分換算)として示している。また、表1においては、被覆剤に含まれる全固形分に対する、水系カルボキシル基含有樹脂(A)、架橋剤(B)、およびAl含有酸化物の固形分換算の含有量を、それぞれ質量%で示している。
比較例10については、レゾール型フェノール樹脂(PC−1、住友ベークライト株式会社製)に、酸化チタン(チタニアTTO−55(D)、石原産業株式会社製)および消泡剤(信越シリコーン製KM−7750)を添加して分散させた。ついで中和剤としてジエタノールアミンを添加し、pHは8.5に調整した。ついで水を添加して被覆剤中の固形分濃度を50質量%に調整して被覆剤を得た。表1に、レゾール型フェノール樹脂、酸化チタン、および消泡剤の配合比について示す。なお、表1においては、被覆剤に含まれる全固形分に対する、レゾール型フェノール樹脂、酸化チタン、および消泡剤の固形分換算の含有量を、それぞれ質量%で示している。
[有機絶縁被膜付き電磁鋼板の製造]
板厚0.5mmの無方向性電磁鋼板から、幅150mm、長さ300mmの大きさの鋼板を切り出し、供試材として用いた。該電磁鋼板を常温のオルトケイ酸ナトリウム水溶液(濃度0.8質量%)に30秒間浸漬した後、水洗および乾燥した。この前処理を施した供試材の表面(両面)に、上記の通りに製造した各種絶縁被膜用被覆剤をロールコーターで塗布し、熱風焼付炉で焼付けた後、室温で放冷して、有機絶縁被膜付き電磁鋼板を得た。表1に、焼き付けの際の最高到達鋼板温度、および焼き付け後の有機絶縁被膜の付着量について示す。
上記の通りに製造した有機絶縁被膜付き電磁鋼板の絶縁被膜、および積層電磁鋼板について、以下の通り特性評価を行った。評価結果を表1に示す。
<剛体振り子試験における周期の低下開始温度>
ISO12013‐1および2に準じ、株式会社エー・アンド・デイ製剛体振り子型物性試験器RPT−3000Wを用い、絶縁被膜用被覆剤をサンプルとして、周期の低下開始温度を測定した。測定中の昇温速度は12.5℃/minとした。振り子のエッジはシリンダーエッジを使用した。
<マルテンス硬さ>
絶縁被膜表面のマルテンス硬さを、フィッシャー・インストルメンツ社製超微小硬度計HM2000を用いて測定した。測定は、ダイヤモンド製の四角錐型、対面角136度のビッカース圧子を使用し、室温(25℃)で行った。荷重‐くぼみ深さ曲線の傾きから、マルテンス硬さを算出した。
<絶縁性(層間抵抗試験)>
JIS C 2550(2000)に規定された層間抵抗試験(A法)に準拠して、絶縁被膜付き鋼板の層間抵抗値を測定した。評価基準は以下のとおりである。なお、◎、○、△であれば合格とした。
(判定基準)
◎:層間抵抗値200[Ω・cm/枚]以上
○:層間抵抗値100[Ω・cm/枚]以上、200[Ω・cm/枚]未満
△:層間抵抗値50[Ω・cm/枚]以上、100[Ω・cm/枚]未満
×:層間抵抗値50[Ω・cm/枚]未満
<密着性>
絶縁被膜付き鋼板の被試験面にセロハン粘着テープを貼り、被試験面を圧縮側として、鋼板に対して直径5mmの丸棒を用いて180°曲げを行った後、セロハン粘着テープを剥がして、被膜剥離面積を算定して評価した。評価基準は以下のとおりである。なお、○、△であれば合格とした。
(判定基準)
〇:被膜剥離面積<5%
△:若干被膜剥離あり:5%≦被膜剥離面積<10%
×:被膜剥離面積≧10%
<打ち抜き性>
15mmφスチールダイスを用いて、絶縁被膜付き鋼板に対して打ち抜き加工を繰り返し行い、かえり高さが50μmに達するまでの打ち抜き回数を測定した。評価基準は以下のとおりである。なお、◎、○、△であれば合格とした。
(判定基準)
◎:打ち抜き回数200万回以上
○:打ち抜き回数100万回以上200万回未満
△:打ち抜き回数50万回以上100万回未満
×:打ち抜き回数50万回未満
<耐疵付き性>
幅:100mm、長さ:200mmの大きさに調整した絶縁被膜付き電磁鋼板を各種2枚ずつ用意した。2枚の絶縁被膜付き電磁鋼板それぞれについて片面を試験面とし、試験面同士を重ね合わせて、圧力2kg/cm、相対速度2cm/sにて10秒間摺動させ、試験面の表面疵を目視により観察した。評価基準は以下のとおりである。なお、◎、○、△であれば合格とした。
(評価基準)
◎:疵の発生が殆ど認められない
○:若干の擦り跡が認められる程度
△:擦り跡がはっきり認められる
×:地鉄が露出する程度の疵が認められる
<占積率>
占積率の測定は、JIS 2550−5(2011)に準じて実施した。
すなわち、せん断ばりを除去したエプスタイン試験片(幅30mm、長さ290mm)を積み重ねて厚さ6mm以上とした積層試験片を圧縮機のラムの間に置く。ラムの表面積は、試験片の積層体を完全に覆うことができる面積とする。試験片の積層体に(1.00±0.05)MPaの圧力をかけ、積層体の4辺の長さを計測した。
以下に示す式で占積率を算定した。
占積率(%)=100×試験片の合計質量(kg)/試験片の密度(kg/m)×試験片の平均幅(m)×試験片の平均長さ(m)×ラム間距離(m)
なお、占積率が96%以上であれば合格とした。
<表面粗さRa>
表面粗さ(算術平均粗さ)Raは、JIS B 0601に準拠し、触針式表面粗さ計を用いて鋼板幅方向で測定した。
なお、表面粗さRaが0.3μm以下であれば合格とした。
表1に示すように、本発明に係る有機絶縁被膜付き電磁鋼板、および該電磁鋼板を用いて作成した積層電磁鋼板においては、全ての評価項目において良好な結果が得られた。比較例の絶縁被膜および積層電磁鋼板においては、本発明例よりも、絶縁被膜の密着性、打ち抜き性、耐疵付き性、または占積率が劣っていた。なお、表1の剛体振り子試験における周期の低下開始温度について、「低下せず」とは、温度を変化させても剛体振り子試験における周期が低下することがなかったことを意味する。

Claims (2)

  1. マルテンス硬さが300N/mm以上600N/mm未満であり、算術平均粗さRaが0.3μm以下である有機絶縁被膜を有する、有機絶縁被膜付き電磁鋼板。
  2. 前記有機絶縁被膜の片面辺りの付着量が0.9g/m以上20g/m以下である、請求項1に記載の有機絶縁被膜付き電磁鋼板。
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