JP2020186139A - 3次元積層造形用フィラメント及びこれを用いた3次元積層造形物 - Google Patents

3次元積層造形用フィラメント及びこれを用いた3次元積層造形物 Download PDF

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Takeshi Hirota
健 廣田
将樹 加藤
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将樹 加藤
智紀 谷口
Tomonori Taniguchi
智紀 谷口
英夫 木村
Hideo Kimura
英夫 木村
直輝 上杉
Naoki Uesugi
直輝 上杉
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Natsumi Amano
夏美 天野
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Abstract

【課題】 セラミックス造形のうち、ジルコニア材料を用いて、高強度、高靭性で、低収縮で緻密な焼結体を造形し得る3次元積層造形用フィラメント及びこれを用いた3次元積層造形物を提供する。【解決手段】 本発明にかかる3次元積層造形用フィラメントは、ZrO2系粉体と、熱可塑性バインダーとを含むフィラメント材料からなり、前記ZrO2系粉体が、第1の粉体と、前記第1の粉体よりも平均粒径の小さい第2の粉体とを含む。本発明にかかる3次元積層造形物は、本発明にかかる3次元積層造形用フィラメントを用いて造形されてなる。【選択図】 なし

Description

本発明は、3次元積層造形用フィラメント及びこれを用いた3次元積層造形物に関し、特に熱溶融堆積法(FDM法:Fused Deposition Modeling)によるセラミックス造形に利用可能な3次元積層造形用フィラメント及びこれを用いた3次元積層造形物に関する。
3次元積層造形技術は、CADデータから3次元造形する製造技術として近年とみに注目されている。その中でも、熱溶融堆積法(FDM法)は、低コストで操作も簡易であり、最近の3Dプリンタの中心となっている。
FDM法は、フィラメントを熱で溶融し、ノズルから吐出して層を形成し、これを繰り返して層を積み重ねることで、所望の3次元形状を造形する方法である。
従来のFDM法に関する研究・開発は、主として、プラスチック造形に向けられており、セラミックス造形の報告例は極めて少ない。
例えば、3D印刷デバイスで使用するのに適切なフィラメントであって、金属及び/又はセラミック粉末と、熱可塑性結合剤と、添加剤とを含むフィラメントに関する発明が提案されているが(特許文献1参照)、特許文献1において具体的に記載されているセラミック粉末は、酸化アルミニウムのみであり、その他のセラミックスについての検討はなされていない。
ここで、セラミックスは、耐熱性・耐摩耗性・耐腐食性などの長所を有するが、一般に靭性が低い。その中にあって、ジルコニア(ZrO2)は、比較的高靭性のセラミックスである。
ジルコニアには、単斜晶、正方晶、立方晶の3つの結晶構造があり、温度変化により可逆的な相転移を引き起こす。室温では単斜晶系であり、温度を上げていくと正方晶、立方晶へと結晶構造が変化していく。この相転移は体積変化を伴い、立方晶から正方晶への相転移では約7.9%の体積収縮を、正方晶から単斜晶への転移では約4%の体積膨張を、それぞれ伴う。
単斜晶は非常に脆いのに対し、正方晶は、高い靭性と強度を有する。そして、ジルコニアに安定化剤を添加することで、室温で正方晶や立方晶でも存在し、高い靭性と強度を有するセラミックス材料となることが知られている。
さらに部分安定化ジルコニアを酸化アルミウムと組み合わせ、高強度、高靭性の焼結体を得るための提案が種々なされている(例えば、特許文献2,3等参照)。
このように、ジルコニア系セラミックスについては、高強度、高靭性という観点から種々検討が行われてきたものの、これを用いたセラミックス造形技術については殆ど検討が行われてこなかった。
特表2017−528593号公報 特許第5930317号公報 特開2017−226555号公報
本発明は、セラミックス造形のうち、ジルコニア材料を用いて、高強度、高靭性で、低収縮で緻密な焼結体を造形し得る3次元積層造形用フィラメント及びこれを用いた3次元積層造形物を提供することを目的としている。
上記課題を解決するため、本発明は下記構成を備える。
すなわち、本発明にかかる3次元積層造形用フィラメントは、ZrO2系粉体と、熱可塑性バインダーとを含むフィラメント材料からなり、前記ZrO2系粉体が、第1の粉体と、前記第1の粉体よりも平均粒径の小さい第2の粉体とを含む。
本発明では、ZrO2系粉体を構成する粉体として、平均粒径の異なる2種類の粉体(第1の粉体及び第2の粉体)を用いるので、大粒子の存在のために焼結過程による形状変化が少なくなり(収縮率低減)、他方、小粒子が大粒子の隙間に密に配置されることで、緻密な3D造形物を得ることができる。ZrO2系粉体として、部分安定化されたZrO2を用いることで、応力誘起変態強化機構による高強度、高靭性の造形物を得ることができる。
実験1におけるサンプル1〜4のXRD結果を示すグラフである。 実験1におけるサンプル3の混練物の熱分析結果を示すグラフである。 実験1におけるサンプル1〜4の収縮率測定結果を示すグラフである。 実験1におけるサンプル1〜4の相対密度測定結果を示すグラフである。 実験1におけるサンプル1及び4のSEM写真である。 実験1におけるサンプル1及び4のSEM写真である。 実験2における各成形体の収縮率測定結果を示すグラフである。 実験2における各サンプルの相対密度をまとめたグラフである。 実験2におけるサンプルの一つである焼結体の外観を示す写真である。
以下、本発明にかかる3次元積層造形用フィラメント及びこれを用いた3次元積層造形物の好ましい実施形態について、詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔ZrO2系粉体〕
本発明で用いるZrO2系粉体は、第1の粉体と、前記第1の粉体よりも平均粒径の小さい第2の粉体とを含む。
ZrO2系粉体としては、部分安定化ZrO2を用いることが好ましい。
ここで、ジルコニアに酸化イットリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどの他の金属酸化物を固溶させると、構造中に酸素空孔が形成され、立方晶および正方晶が室温でも安定または準安定となり、昇降温による破壊が抑制される。このような酸化物(以下、「安定化剤」と呼ぶ場合がある)を添加したジルコニアのうち、室温において立方晶で安定化されたジルコニアを完全安定化ジルコニアという。また、酸化物量を完全安定化ジルコニアよりも少なくして、立方晶に、単斜晶あるいは正方晶が分散した状態のものを部分安定化ジルコニアという。
部分安定化ジルコニアは、外部応力により、亀裂周りの結晶粒子が正方晶から単斜晶へと相転移して、外部エネルギーを吸収し、かつ、体積膨張による亀裂進展を阻止する。これを応力誘起変態強化機構という。この機構により、部分安定化ジルコニアは、高強度、高靭性を示す。
本発明に関して、「部分安定化ZrO2」との用語を用いるときは、上記の一般的な意味を有する用語として理解されるべきである。
酸化物(安定化剤)としては、酸化イットリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどの希土類酸化物が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。好ましくは、酸化イットリウムである。
酸化物(安定化剤)の固溶量は、ジルコニアに対して、1〜4mol%であることが好ましい。この範囲であれば、特に、高靭性、高強度の焼結体を得ることができる。
ZrO2系粉体は、さらに、部分安定化ZrO2をAl23と組み合わせたものであってもよい。
Al23を含有する部分安定化ZrO2は、市販の部分安定化ZrO2と市販のAl23粉体を混合して使用しても良いし、ゾル−ゲル法(金属の有機及び無機化合物の溶液をゲルとして固化し、ゲルの加熱によって酸化物の固体を作製する方法)や中和共沈法で安定化剤(酸化イットリウムなど)とAl23をZrO2に固溶させた固溶体粉体を用いることもできる。
この場合、部分安定化ZrO2とAl23の比率は、モル比で、部分安定化ZrO2:Al23=85:15〜75:25であることが好ましい。この範囲であれば、特に、高靭性、高強度の焼結体を得ることができる。
ZrO2系粉体における第1の粉体と第2の粉体は、平均粒径が異なり、第2の粉体の平均粒径は第1の粉体の平均粒径よりも小さい。
具体的な平均粒径の値としては、例えば、第1の粉体の平均粒径が30〜50μmであることが好ましく、第2の粉体の平均粒径が0.05〜3μmであることが好ましい。このような範囲であれば、焼結による収縮が低減され、かつ、緻密な焼結体を得るのに適している。
本発明において、第1の粉体、第2の粉体の平均粒径は、次のように定義される値とする。
すなわち、第1の粉体の平均粒径は、走査型電子顕微鏡観察により、100個の粒子の直径を画像上にスケールを当て計測し、その平均値から求める。
また、第2の粉体の平均粒径Ps(μm)は、微粒子なので、その比表面積の値SA(m2/g)を測定し(例えば測定器はMicromeritics社のTristarIIを使用)、第2の粉体の理論密度Dx=5.313g/cm3を用いて、Ps=6/(SA×Dx)の式から計算する。
なお、Dx=5.313g/cm3は、安定化剤のY23を2.5mol%固溶させたZrO2(2.5mol%Y23)の理論密度Dx[ZrO2(2.5mol%Y23)]と、α−Al23の理論密度3.987g/cm3から求められる。さらにDx[ZrO2(2.5mol%Y23)]の値は、第2の粉体のX線回折から、正方晶t−ZrO2と単斜晶m−ZrO2の体積比率を、R. C. Garvie, P. S. Nicholson: "Phase analysis in Zirconia Systems", J. Am. Ceram. Soc., 55 (1972) 303-305.に記載の式から求め、Dx[t−ZrO2(2.5mol%Y23)]=6.024g/cm3,Dx[m−ZrO2(2.5mol%Y23)]=5.696g/cm3の値を用いて算出する。
ZrO2系粉体における第1の粉体と第2の粉体の配合比は、両粉体の粒径や熱可塑性バインダーの配合量によっても異なるが、体積基準で、第1の粉体:第2の粉体=75:25〜50:50であることが好ましい。このような範囲であれば、第1の粉体の粒子周囲に第2の粉体の粒子がバランスよく配置され、緻密な造形物を得ることができる。
第1の粉体の粒子表面がコーティング膜で被覆され、第2の粉体の粒子がコーティング膜を介して第1の粉体の粒子の周囲に配置されていることが好ましい。
このようなコーティング膜が存在しなければ、第1の粉体の粒子と第2の粉体の粒子との接触は点での接触となるのに対し、コーティング膜が存在すると、第2の粉体の粒子が第1の粉体の粒子表面に形成されたコーティング膜に一部埋もれたような状態となって、より効率的に第1の粉体の粒子の周囲に配置されることになるため、非常に緻密な焼結体を得ることができる。
特に、コーティング膜が、部分安定化ZrO2の膜であると、同様の組成からなる第2の粉体の粒子との親和性が高いため、非常に効率的に、第2の粉体の粒子を、コーティング膜を介して第1の粉体の粒子の周囲に配置することができ、緻密な焼結体を得る上で好ましい。
その具体的な方法としては、例えば、ゾル−ゲル法を利用した以下のような方法が好ましく挙げられる。
すなわち、まず、コーティング膜を形成するためのコーティング液として、最終組成に基づいて秤量した金属アルコキシド(例えば、Zr(OC374、Y(OC373、Al(OC373など)をイソプロパノールなどの極性有機溶媒に溶解し、さらに、キシレンなどの非極性溶媒に溶解させる。
この混合溶液に、第1の粉体、第2の粉体を添加して分散、撹拌する。
この粉体を含んだ混合溶液中に水分を含んだ窒素ガスを流してバブリングさせ、粉体表面でアルコキシドの加水分解を誘導し、粉体粒子表面に酸化皮膜を形成させる。これはキシレン溶液の撥水性を利用してバブリングして供給した水分を、粒子表面に集まる性質を活用し、粒子表面で加水分解させるものである。この生成直後の酸化皮膜は、ガラス状のアモルファスであるので、皮膜を形成した粒子粉体を大気中で850℃程度までゆっくり昇温し、1時間程度加熱すると、第1の粉体の粒子表面に、部分安定化ZrO2のコーティング膜が形成され、第2の粉体の粒子がコーティング膜を介して第1の粉体の粒子の周囲に配置された焼結前駆体が得られる。
この焼結前駆体をZrO2系粉体として用い、後述の熱可塑性バインダーと組み合わせることができる。
〔熱可塑性バインダー〕
熱可塑性バインダーは、FDM法に適した物性を備えるものであれば特に限定されない。基本的には、常温において固体であり、加熱により溶融して流動性を付与し得るバインダーが用いられる。
熱可塑性バインダーとしては、熱可塑性樹脂を主体とし、適宜、添加剤を添加して調製することができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル系樹脂などが好ましく挙げられ、複数種を組み合わせても良い。
添加剤としては、公知の分散剤、可塑剤などが挙げられる。
ZrO2系粉体と熱可塑性バインダーとの配合比は、体積基準で、ZrO2系粉体:熱可塑性バインダー=40:60〜70:30であることが好ましく、45:55〜65:35であることがより好ましい。
このような範囲であれば、FDM法で3次元積層造形用フィラメントとして用いるに当たり、相対密度を過度に低下させることなく、適度な流動性を持たせることができる。
〔3次元積層造形用フィラメント〕
本発明に係る3次元積層造形用フィラメントは、上述したZrO2系粉体と、熱可塑性バインダーとを含むフィラメント材料からなる。
具体的には、例えば、ZrO2系粉体と、熱可塑性バインダーを混練し、押出成形することにより得ることができる。
フィラメントの直径は、特に限定されるものではなく、用いる3Dプリンタの仕様等を考慮して適宜決定すれば良いが、例えば、1〜5mm程度とすることができる。
フィラメントは、250℃、せん断速度10〜40mm/sの範囲で加熱溶融したときの粘性が30〜200Pa/sであることが好ましい。このような物性を備えるものであれば、特殊な3Dプリンタでなくとも、一般に普及している3Dプリンタをそのまま用いて、FDM法による3次元積層造形を行うことが可能となる。
〔3次元積層造形物〕
本発明に係る3次元積層造形物は、フィラメントとして、本発明に係る3次元積層造形用フィラメントを用いる以外は、通常のFDM法により製造することができる。
3次元積層造形後、熱可塑性バインダーを脱脂により除去し、さらに加熱処理することで、焼結体として、セラミックスの3次元積層造形物を得ることができる。
脱脂法は、特に限定されず、常圧脱脂、加圧脱脂、超臨界脱脂等が使用できる。雰囲気も、大気中、不活性ガス中等、特に限定されない。脱脂温度・保持時間は、熱可塑性バインダーの分解温度等を考慮して適宜決定すれば良く、例えば、300〜700℃で数分〜数時間程度とすることができる。昇温速度は、例えば、2〜30℃/h程度が好ましい。
焼結体を得るための加熱処理としては、特に限定されず、例えば、昇温速度を5〜50℃/minとし、焼結温度を1250〜1550℃とすることができる。保持時間は、例えば、30分〜24時間程度とすることができる。雰囲気も、大気中、不活性ガス中等、特に限定されない。
加熱処理法は、特に限定するわけではないが、マイクロ波を利用することが特に好ましい。マイクロ波焼結では、電(磁)場によって誘電体自体が内部(中心)加熱されるので省エネルギーが達成でき、しかも、温度分布が試料自身の熱伝導に依存しないために温度分布が良く、急速昇温が可能であるので、緻密な焼結体を作製することができる。
〔実験1〕
本発明の効果を実証するため、様々な条件でサンプルを調製し、実験を行った。
<サンプルの作製>
第1の粉体として、Y23部分安定化ZrO2(第一稀元素化学工業株式会社製。以下、「YTZ」という。)を準備した。第1の粉体は、Y23部分安定化ZrO2中のY23の固溶量が3.0mol%であり、平均粒径50μm、理論密度(Dx)6.08g/cm3であった。
また、第2の粉体として、Al23を含有するY23部分安定化ZrO2(第一稀元素化学工業株式会社製。以下、「PSZ23A」という。)を準備した。第2の粉体は、Y23部分安定化ZrO2中のY23の固溶量が2.5mol%であり、このY23部分安定化ZrO2とAl23のモル比が77:23であった。そして、BET比表面積10.1m2/g、平均粒径0.1μm、理論密度(Dx)5.36g/cm3であった。
熱可塑性バインダーとして、オレフィン系樹脂及びアクリル系樹脂を主体とする熱可塑性バインダーを準備した。
上記の第1の粉体、第2の粉体及び熱可塑性バインダーを以下の配合比で混練し、複数のサンプルを作製した。
ZrO2粉体(第1の粉体+第2の粉体)と熱可塑性バインダーの配合比は、いずれも、体積基準で、ZrO2粉体:熱可塑性バインダー=45:55とした。
<X線回折分析>
上記各混練物(サンプル1〜4)を用いて、電気炉で加熱処理を行うことにより脱脂し、バインダーが除去された脱脂体(以下、「仮焼結体」ともいう)を得た。仮焼結体を得るための脱脂条件は、脱脂温度500℃、保持時間6時間、昇温速度10℃/hとした。
仮焼結体について、さらに、マイクロ波により加熱し、緻密な焼結体を得た。マイクロ波での加熱処理の条件は、窒素雰囲気下、焼結温度1250℃、保持時間30分、昇温速度30℃/minとした。
焼結体のXRD結果を図1に示す。脱脂前のXRD結果も参考のために示す(図中、「compact」のデータ)。
XRD結果から、いずれのサンプルについても、正方晶のZrO2(t−ZrO2)のピークが認められる。従って、本発明のフィラメントには熱可塑性バインダーが含まれるものの、焼結体の結晶構造への影響は殆どなく、正方晶のZrO2による高い強度と靭性を備えた3次元造形物を得ることができることが確認できた。
<熱分析>
上記サンプル3の混練物(第1の粉体:第2の粉体=50:50)について熱分析を行った結果を図2に示す。
図2に示す結果から、脱脂処理により、熱可塑性バインダーが加熱除去されることが確認できた。
<収縮特性分析>
上記各混練物(サンプル1〜4)を用いて収縮特性の分析を行った。10℃/minで昇温し、1250℃で30分保持したのち、2℃/minで降温した。結果を図3に示す。
図3に示す結果より、第1の粉体と、第1の粉体よりも平均粒径の小さい第2の粉体を組み合わせることで、収縮率が変化し、第1の粉体と第2の粉体の配合比が、体積基準で、第1の粉体:第2の粉体=75:25〜50:50程度であれば、特に、収縮率が抑えられることが分かった。
<相対密度・SEM写真>
上記各混練物(サンプル1〜4)を用いて、電気炉で加熱処理を行うことにより脱脂し、バインダーが除去された仮焼結体を得た。仮焼結体を得るための脱脂条件は、脱脂温度500℃、保持時間6時間、昇温速度10℃/hとした。
仮焼結体について、さらに、電気炉又はマイクロ波により加熱し、緻密な焼結体を得た。
上記焼結体を得るための電気炉での加熱処理の条件は、大気雰囲気下、焼結温度1250℃、保持時間24時間、昇温速度5℃/minとした。
上記焼結体を得るためのマイクロ波での加熱処理の条件は、窒素雰囲気下、焼結温度1250℃、保持時間30分、昇温速度30℃/minとした。
各サンプルについて、混練体、脱脂体、電気炉加熱による焼結体、マイクロ波加熱による焼結体の相対密度を測定した。結果を図4に示す。図中、compact、binder-out、Conventional electric furnace、Microwave sinteringは、それぞれ、混練体、脱脂体、電気炉加熱による焼結体、マイクロ波加熱による焼結体に対応する。
なお、相対密度(Dr=Dobs/Dx)は、実測の密度である「かさ密度」(Dobs)を、焼結体に含まれる各成分比に基づいて算出される「理論密度」(Dx)で除した値の百分率を意味し、「かさ密度」の測定は、アルキメデス法を用いた質量センサー(商品名:「AUW220D」、株式会社島津製作所製)を用いることにより行った。
図5は、上記サンプル1,4の混練物を用いてマイクロ波加熱により得た焼結体のSEM写真である。図5中、「樹脂との混練」が「なし」である場合の写真は、熱可塑性バインダーとの混練をせずにサンプル調製した混練物を同様にマイクロ波加熱して得た焼結体の写真であり、比較のための参考として示したものである。
図5の写真から、第1の粉体の粒子の表面に第2の粉体の粒子が被覆され、緻密な焼結体が得られていることが分かる。この緻密さについては、熱可塑性バインダーの脱脂による影響を取り除いた「樹脂との混練」が「なし」の場合の相対密度(Dr)が90%以上と高いことからも分かる。
図6は、上記サンプル1,4の混練物を用いて電気炉加熱により得た焼結体と、マイクロ波加熱により得た焼結体のSEM写真である。
図6に示す結果から、マイクロ波加熱によれば、より緻密な焼結体を得ることができ、第1の粉体と第2の粉体の配合比の影響もあまり受けないことが分かる。
〔実験2〕
ZrO2系粉体とバインダーの比率、ZrO2系粉体における第1の粉体と第2の粉体の比率、ZrO2系粉体における粒子の大きさの違いなどによる効果への影響をより明瞭にするため、様々なサンプルを調製して実験を行った。具体的なサンプルの調製方法や分析方法は、特に断りがない限り、実験1と同様である。
結果を、下表及び図7〜9に示す。
下表において、「成形体」は、混練物を型に入れて円盤型に成形したものであり、「脱脂体」は成形体を脱脂したもの、「焼結体」は、脱脂体(仮焼結体)を焼結したものである。
<実験2の結果について>
図7は、下から熱可塑性バインダー/ZrO2系粉体=45/55,55/45,35/65vol%で混練した成形体の熱収縮曲線である。なお、図7では、熱可塑性バインダーを「resin」、ZrO2系粉体を「ceramics」と表記している。以下の説明でも同様の表記を行う場合がある。
図7から、resin/ceramics=45/55,55/45vol%試料では150℃以上で急激な熱収縮を開始し、200℃以上でほぼ一定となっていることが分かる。これは有機物質のresinが燃焼し、その後1250℃まで収縮しないことを示唆している。
一方、resin/ceramics=35/65vol%試料では、一旦100℃あたりまで膨張し、その後少量のresinがゆっくり燃焼し、試料体が収縮している様子が分かる。また、このresin/ceramics=35/65vol%試料では、1100℃以上で収縮し、ceramics中のPSZ23Aの焼結が開始していることが分かる。
図8では、水平軸の下にceramicsの含有量を、上にResinの含有量を示し、縦軸に相対密度を示している。
白丸の曲線で示されているのは、YTZ30μmを使用した場合の3種類の組成(resin/ceramics=55/45vol%,45/55vol%,35/65vol%)の成形体の相対密度である。
その下の黒丸で示されているのは、YTZ50μmを使用した場合におけるresin/ceramics=45/55vol%組成の成形体の相対密度である。
YTZ30μm使用とYTZ50μm使用とでデータを比較すると、YTZ30μm使用の方が高い相対密度、具体的には95%以上の相対密度が得られていることが分かる。
次に、500℃でresinを焼却した脱脂体の相対密度は、YTZ30μmを使用したものが白三角の曲線で示され、YTZ50μmを使用したものが黒三角で示されている。これら脱脂体についても、成形体と同様、50μmのYTZを使用した試料の相対密度の方が、30μmのYTZを使用した試料の相対密度よりも低いことが分かる。
さらに脱脂体を通常の電気炉で1250℃/24h焼結した試料の相対密度について、30μmのYTZを用いた場合を白四角、50μmのYTZを用いた場合を黒四角で示している。
そして、脱脂体を2.45GHzのマイクロ波で1250℃/10min焼結した試料の相対密度について、30μmのYTZを用いた場合を白菱形、50μmのYTZを用いた場合を黒菱形で示している。
これらの焼結体のデータから、樹脂の添加量を35vol%まで減らし、30μmのYTZを用いると焼結体はクラック無しで相対密度89%とほぼ90%まで緻密になることが分かる。この焼結体の外観を図9に示す。
30μmのYTZを用いたresin/ceramcis=35/65vol%組成の成形体の直径は16.0mm、脱脂体の直径は1.57〜1.59mm(98.8%)、さらにマイクロ波焼結すると1.40〜1.42mm(88.1%)程度の収縮率に抑えて焼結体を作製できる。なお、YTZを使用しなければ、resin/ceramcis=45/55vol%組成で相対密度は65〜68%程度であり、YTZを用いると相対密度が20%以上改善されることが分かる。
以上より、特に、30〜50μmのYTZとPSZAを体積比率として50/50vol%、resinを35vol%とする混練体を用いると、焼結密度が格段に向上することが分かった。
〔フィラメント及び造形物の作製例〕
以上の実験結果から分かるように、本発明によれば、ジルコニア材料を用いて、高強度、高靭性で、低収縮で緻密な焼結体を造形し得る3次元積層造形用フィラメント及びこれを用いた3次元積層造形物を提供することができる。
なお、上記実験では、フィラメント及び造形物を実際に作製してはいないが、当業者であれば、上記実験内容も考慮に入れて、フィラメント及び造形物を作製することができる。参考までに一例を示す。
3次元積層造形用フィラメントは、例えば、上記サンプルにおける混練物を押出成形することで容易に作製することができる。直径は、例えば、1.8〜2.0mm程度とすることができる。
次に、作製した各フィラメントを用い、例えば、3Dプリンタ「X−One 2」(QIDIテクノロジー社製)により、FDM法による3次元造形を行う。
3次元造形の条件について、一例を示すと、以下のとおりである。
3次元造形後の成形体について、電気炉で加熱処理を行うことにより脱脂し、バインダーが除去された仮焼結体を得ることができる。仮焼結体を得るための脱脂条件は、例えば、脱脂温度500℃、保持時間6時間、昇温速度10℃/hとする。
仮焼結体について、さらに、電気炉又はマイクロ波により加熱することで、緻密な焼結体を得ることができる。
上記焼結体を得るための電気炉での加熱処理の条件は、例えば、大気雰囲気下、焼結温度1250℃、保持時間24時間、昇温速度5℃/minとする。
上記焼結体を得るためのマイクロ波での加熱処理の条件は、例えば、窒素雰囲気下、焼結温度1250℃、保持時間30分、昇温速度30℃/minとする。

Claims (6)

  1. ZrO2系粉体と、熱可塑性バインダーとを含むフィラメント材料からなり、
    前記ZrO2系粉体が、第1の粉体と、前記第1の粉体よりも平均粒径の小さい第2の粉体とを含む、
    3次元積層造形用フィラメント。
  2. 前記第1の粉体及び前記第2の粉体が部分安定化ZrO2からなり、その一方又は双方がAl23を含有する部分安定化ZrO2である、請求項1に記載の3次元積層造形用フィラメント。
  3. 前記ZrO2系粉体における第1の粉体と第2の粉体の配合比が、体積基準で、第1の粉体:第2の粉体=75:25〜50:50である、請求項1又は2に記載の3次元積層造形用フィラメント。
  4. 前記ZrO2系粉体と熱可塑性バインダーとの配合比が、体積基準で、ZrO2系粉体:熱可塑性バインダー=40:60〜70:30である、請求項1から3までのいずれかに記載の3次元積層造形用フィラメント。
  5. 前記第1の粉体の平均粒径が30〜50μmであり、前記第2の粉体の平均粒径が0.05〜3μmである、請求項1から4までのいずれかに記載の3次元積層造形用フィラメント。
  6. 請求項1から5までのいずれかに記載の3次元積層造形用フィラメントを用いて造形されてなる、3次元積層造形物。
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