《第1の実施形態》
本発明が提供するデンタルフロスホルダ1(以下、ホルダ1と略記する。)は、ABS・CA・EP・FRP・PC・PCL・PE・PET・PLA・PMMA・PP・PS・PVC等の樹脂、各種ゴム、金属、木材、ガラス、セラミック、カーボン素材、繊維、セルロース、タンパク質、紙、炭酸カルシウム等の材料10からなる。ホルダ1は歯ブラシ型の棒状を基本とする形状でもよく、その場合、歯ブラシ程度の大きさが手で持ちやすく、具体的には、棒状の部分は直径が5mm程度から20mm程度まででもよい。あるいは、ホルダ1は板状を基本とする形状でもよく、その厚さは0.2mm程度から5mm程度まででもよい。一般的用途でのホルダ1の長さの上限は100mmか200mm程度がよい。ホルダ1は携帯できる小さなサイズでもよく、一般的用途での長さの下限は30mm・40mm・50mm程度がよい。特殊な用途等には上記以外の長さでもよく、本明細書等における他のサイズ等の数値の記載でも同様である。ホルダ1は、糸状のデンタルフロス2(以下、フロス2と略記する。)と、その両端等をブリッジ状等に張架して緊張状態にする張架部3と、略棒状の細長い形状等であって、使用者が手で握る又は掴むことができる把持部4と、突起状等の支持部5を有する。フロス2は上記かそれ以外の材料からなってもよい。
フロス2は既知の多様なデンタルフロスから選択されてもよい。フロス2の長さは10mm程度から30mm程度までが好適である。フロス2は張架部3に接着等により固定されてもよく、交換可能でもよい。張架部3と把持部4とは一体成形等により連続してもよい。張架部3は多くの場合、把持部4の先端が2つに分岐している部分であり、2つの部分のそれぞれでフロス2の両端に係合される。なお、本明細書等において係合とは、複数の部分が接着等の接合・嵌合・溝に引っかけたり巻き付けたりして固定されるような結合等によって組み合わされていることと、互いに異なる名称の部位等がもともと一体としてつながった状態で製造され分けることができないことの両方の意味を含む。フロス2と張架部3の中間のブリッジ部分との間隔は8mmから20mm程度がよいが、後述する垂直型では40・50mmまででもよい。フロス2及び張架部3を合わせて頭部23と記載する。フロス2は、頭部23ごと交換可能でもよく、さらに支持部5や保護カバー等と共に交換可能でもよく、交換用替え部品が把持部4内に収納可能でもよい。ホルダ1の可搬性のため、各部が折りたたみ式でもよい。
図1が示す各種形状のホルダ1では、フロス2の長さ方向と把持部4の長さ方向との関係等がそれぞれ異なる。フロス2は、図1aのように把持部4の長さ方向に略平行であれば、前歯の歯間清掃に好適であり(このような形状の頭部23を平行型頭部231と記載する。)、図1bのように把持部4の長さ方向に略垂直であれば、奥歯の歯間清掃に好適である(このような形状の頭部23を垂直型頭部232と記載する。)。把持部4の両端にこれらがそれぞれ取り付けられてもよい。また、垂直型頭部232で前歯の歯間清掃を行うことも可能である。その場合に後述のように複数の支持部5が複数の張架部3にそれぞれ係合していれば、片側の支持部5が口腔の外の前歯の前に出るので、指での操作が容易である。なお、フロス2はたわむことがあるが、本明細書等におけるフロス2の長さ方向は、フロス2が張架部3との複数の係合部分の間を直線状に結ぶ状態に基づく。図面におけるフロス2の図示も同様である。
図1aではフロス2の歯間への進入方向12が示されているが、図1bでは歯間への進入方向12は図示されておらず、歯間への進入方向は図の手前側又は奥側に相当する。使用者は、奥歯の歯間清掃時に、例えば左側から右側へと清掃位置を移す際、図1bのホルダ1を裏返し、進入方向を奥側から手前側に変更することで、支持部5が常に口の内側に向かうようにすることができる。支持部5が片側の張架部3のみに付属する垂直型頭部232では、歯間への進入方向における支持部5及びフロス2の高さの関係が、可動機構等により変更可能でもよい。つまり、使用者は、左の下の奥歯の清掃時には図1bの奥側を歯間への進入方向とし、支持部5を図の手前に移動させ、右の下の奥歯の清掃時には図1bの手前側を歯間への進入方向とし、支持部5を図の奥に移動させ、というように、支持部5の位置を、使用状況に応じて切り替えられる。これにより、使用者は舌等を支持部5に添えやすくなる。
垂直型頭部232では、図1cのように支持部5がフロス2の両側に係合してもよく、その片側又は両側の支持部5が取り外し可能でもよい。複数の支持部5がフロス2の両端の複数の張架部3にそれぞれ係合する場合、奥歯の歯間清掃時に一方の支持部5を使用する時にはもう一方の支持部5が口腔内に当たる。その際に支持部5の先端で口腔に傷がつかないよう、支持部5の先端が半球状等に丸められた形状であることが望ましい。
図1dのように、フロス2が把持部4の長さ方向と45°等の角度をなして斜めになっていれば、前歯と奥歯の両方に使用可能である(このような形状の頭部23を傾斜型頭部233と記載する。)。傾斜型頭部233では、図1eのように、前歯用支持部51と奥歯用支持部52の両方が取り付けられてもよい。図1eに図示される進入方向12は前歯の歯間清掃時の方向であり、奥歯の歯間清掃時の進入方向は図の手前側又は奥側となる。また、傾斜型頭部233での奥歯の歯間清掃時には、ホルダ1を口腔内に挿入する際の挿入方向11も図とは異なることがある。
図1fのように、頭部23又は頭部23及び支持部5が、可動部6により、フロス2の長さ方向及び進入方向12に垂直な方向又はz方向を軸として回転可能であれば、平行型頭部231・垂直型頭部232・傾斜型頭部233が1本のホルダ1で兼用可能になる。この可動部6は、自由回転し、摩擦又はネジ等の固定具により任意の角度で固定可能でもよく、例えば15°ごとにクリックストップを有し、定められた角度のうちいずれかで固定可能でもよい。
なお、本発明の各図面では、それぞれのフロス2の長さ方向に平行な方向をx方向とし、x方向に垂直で進入方向12に略平行な方向をy方向とし、x方向及びy方向に垂直な方向をz方向とする。進入方向12に略反対の方向がyの正方向であるが、図示の都合もあって、y方向は進入方向12に対してやや傾いていることがある。また、把持部4の長さ方向とは、頭部23との関係及びホルダ1の機能から導かれる方向であって、ホルダ1の形状を制約するものではない。つまり、ホルダ1及び把持部4は、長さ方向よりそれと異なる方向の方が長い形状であってもよい。把持部4の長さ方向は、図1a・b・cのように口腔への挿入方向11に平行であることもあり、図1d・e・fのように挿入方向11に平行でないこともある。また、挿入方向11及び進入方向12は各図面に示される方向等に限定されず、使用者それぞれの使い方に応じて自由であるが、通常は各図面等から±30°程度の範囲内であることが多い。
支持部5が張架部3に係合する場合、支持部5にかかる力を張架部3が受ける。よって張架部3は曲がりにくい方がよく、太いか剛性の高い材料10によってなることが望ましい。また支持部5も、特に後述の細い棒状等の場合、舌等からの力を受けて曲がらないよう硬質の材質の方がよい。これらは、ACM・ANM・AG‐2・BR・CO・CR・CSM・ECO・EP・EPDM・EPM・EVA・FKM・FPM・IIR・IR・JSR‐BR・JSR‐NBR・JSR‐SBR・N・NBR・NR・PT・Q・PUR・SBR・Si・SR・T・U・VMQといった各種ゴムや、TPEやTPS、あるいはSBC・SEBSのようなゴム状の弾性を有する重合体(本明細書等ではこれらを併せてゴム類と記載する。)によってなる場合、曲がってしまって力を適切に受けられないことがある。それが好ましくない場合には、張架部3等はゴム類以外等の材料10によってなる方がよい。ただし、後述の第3の実施形態の一部のように、張架部3等に柔軟性が求められる場合等には、張架部3等がゴム類によってなってもよい。張架部3・把持部4・支持部5等の力を伝える構造部分の通常の引張り弾性率は、0.3以上5以下が好ましく、0.5以上4以下がより好ましく、1以上3以下がさらに好ましい(いずれも単位は104kg/cm2、ASTM D638に準拠する。)。また、構造部分の曲げ強さは50以上1500以下が好ましく、300以上1000以下がより好ましく(kg/cm、ASTM D638に準拠する。)、又は20以上200以下が好ましく、50以上100以下がより好ましい(MPa、JIS K7171 2016に準拠する。)。構造部分の曲げ弾性率は50以上5000以下が好ましく、1000以上4000以下がより好ましい(MPa、JIS K7171 2016に準拠する。)。舌等との接触部分等や後述の摩擦低減部等は、柔軟な当たりのため、構造部分等とは弾性の異なるゴム類等や緩衝材によってなってもよい。
支持部5は、図1等の各図のように、まっすぐな棒状・曲がった棒状・略平面の板状・曲面の板状の少なくともいずれかでもよい。図1bのように、支持部5の長さ方向(支持部5が図1cのように板状の場合には支持部5の表面を含む平面)とフロス2の長さ方向とが略平行であれば、使用者が支持部5に対して進入方向12の正反対の方向に自然に力を加えやすく、支持部5と張架部3又は把持部4との付け根部分に無理な力がかからないので、支持部5が折れにくい。なお、張架部3・把持部4・支持部5が一体成形されている場合、それらはそれぞれの形状や機能によって区分される。例えば図1各図では、分岐している部分が張架部3、分岐していない部分が把持部4と区分される。一方、図2aのように、張架部3と把持部4とが連続している場合、把持部4に係合する側の張架部3と把持部4との境界部分は連続的であるが、それ以外の部分の張架部3と同等の太さの幅までの部分が張架部3とみなされる。
曲面の板状の支持部5では、少なくとも一部の断面の輪郭が2次曲線等の曲線である。つまり、曲面の板状の支持部5は、図3m・nの2面図及び断面図oに示される形状のxの負方向側の支持部5のように、略すべての方向の断面が曲線となる場合だけでなく、図3a・b・c・dに示される形状のxの負方向側の支持部5のように、xy平面に平行な支持部5の断面のうちyの負方向側の部分が曲線であり、yz平面に平行な支持部5の断面の同じyの負方向側の部分が直線であるような場合も含む。また、曲面の支持部5の表面の少なくとも一部は凹面でもよい。凹面とは、中央部が周辺部の少なくとも一部よりくぼんでいるような形状である。図3a・b・c・dのxの負方向側の支持部5のように、支持部5の凹面がyの正方向側にくぼんでいてもよく、その場合、舌や指先の凸面が凹面に接した時にフィットしやすい。支持部5の凹状の部分の少なくとも一部の断面が、好ましくは直径6〜25mm、より好ましくは8〜20mm、さらに好ましくは10〜15mmの直径の円の一部と近似していれば、舌等の形状にフィットすることがある。平面の支持部5はそれに近いフィット感をもたらす。凸面状の支持部5では、舌や指に形状がぴったり合うという効果が得られないことがある。支持部5は、複数の凸面の複合によって全体として凹状にくぼんでいてもよい。
支持部5の少なくとも一部の方向の太さは、張架部3又は把持部4のうち支持部5が係合する部分及びその近隣の部分の少なくとも一部の方向の太さ以上でもよい。例えば支持部5は、図1b等のように、張架部3と太さが略同じ棒状でもよい。なお、支持部5の太さとは、突起の形状から一般的に判断される太さであるが、支持部5の長さ方向に垂直な方向の複数の長さのいずれかでもよい。支持部5の長さ方向とは、突起の形状から一般的に判断される長さの方向であるが、支持部5が棒状に類さない形状等の場合、図3a・b・c等に示される、突起状の支持部5と張架部3又は把持部4との境界である付け根部分50の幾何中心501(張架部3が丸みを帯びた棒状で、付け根部分50が曲面であれば、その曲面に沿った長径と短径の交差する付け根部分50の面上の点を中心501とする。)から支持部5の先端部分(先端部分が面であればその面の中心)への方向でもよい。また、張架部3及び把持部4の太さとは、張架部3又は把持部4の長手方向に垂直な断面における任意の方向の複数の長さのうち支持部5を含まない長さである。さらに、近隣の部分とは、張架部3又は把持部4において付け根部分50から当該部分の張架部3又は把持部4の太さの分離れた位置までの範囲を指す。これは、付け根部分50では補強のため、また成形の都合等で近隣の部分より太さが大きいことが多いので、その分を差し引くという趣旨である。張架部3・把持部4・支持部5の太さは方向によって異なることがある。例えば、板状の支持部5の太さはその断面の差し渡しの方向によって異なる。図1cの支持部5では、y方向の太さよりz方向の太さが大きい。この場合、y方向の太さ(支持部5の厚さ)が張架部3の太さより小さくても、z方向の太さが張架部3の太さより大きければ、本段落冒頭に記載の条件に適合する。つまり、支持部5は、それが係合する張架部3より一部の方向のみの太さが大きくてもよい。特記の場合、支持部5の太さの一部は、張架部3及び把持部4において太さの一部が略一定である部分のうち太さがもっとも小さい部分の太さの一部以上でもよく、付け根部分50と平行な支持部5の断面の差渡しの長さの少なくとも一部が、張架部3及び把持部4の付け根部分50及びその近隣の部分の少なくとも一部の太さ以上でもよい。太さの一部が略一定とは、張架部3又は把持部4の長さ方向において、太さの一部が張架部3又は把持部4の太さ以上の範囲において略一定であることである。よって、張架部3又は把持部4の先端部分で太さが急に小さくなる部分は該当しない。以上により支持部5の強度が確保され、支持部5に舌等からの力がかかっても曲がったり折れたりせずに、その力を張架部3の先等に伝えることができる。また、図1a・b・d等のように、支持部5において、少なくとも一部の方向の最大の太さよりも長さが大きくてもよく、付け根部分50での最小の太さよりも長さが大きくてもよい。なお、本明細書等においては原則として、「端部」は板状の部分等の周囲の部分を指し、「先端部分」は端部の一部であって、支持部5では、付け根部分50から最も遠い部分、例えば棒状の支持部5における先端の尖った部分を指す。張架部3又は把持部4の先端部分は、細長い部分の先の部分等を指す。
支持部5は、フロス2から進入方向12とその反対方向とに延長された範囲、及びその範囲から外側に数mm、より具体的には1mm・2mm・3mm・4mm・5mmのいずれかまでの範囲とは重ならない位置に係合されてもよい。それにより以下の利点が得られる。ホルダ1を口腔内で動かしやすい。使用者が鏡でホルダ1及び歯間の位置関係を見ながらホルダ1を使用する際に当該位置が支持部5に隠れずに見えやすい。歯間へのフロス2の挿入時に支持部5が歯に干渉又は衝突しにくい。
平行型頭部231の場合、支持部5は、図2のように、フロス2の長さ方向の略延長線上であり、ホルダ1の先端である位置に取り付けられてもよい。つまり、支持部5の一部がフロス2の長さ方向の略先にあってもよい。垂直型頭部232であれば、図1b等のように支持部5とフロス2の延長線との距離が略0でもよい。このように支持部5がフロス2の延長線に近い方が、支持部5にかけられた力がフロス2に伝わりやすく、またホルダ1が破損しにくい。一方、図1aのように、支持部5がフロス2の長さ方向の延長線の近傍、すなわちフロス2の長さ方向の延長線上及びそこから進入方向12又はその反対方向(y方向)に0mm以上30mm(特記の場合50mm)までの範囲の位置、さらに進入方向12及びフロス2の長さ方向に垂直な方向すなわちホルダ1の左右方向(z方向)やフロス2の長さ方向(x方向)にそれぞれ0mm以上30mm(特記の場合50mm)までの範囲の位置に取り付けられてもよい。支持部5がフロス2の長さ方向の延長線から離れていると、フロス2が張架部3を貫通するという係合方法が可能となる。これによりフロス2の固定強度の向上及び製造コストの低減が図れる。垂直型頭部232でも、支持部5は、フロス2の長さ方向の延長線から同様の範囲内に取り付けられてもよい。また、使用者が好みに応じて支持部5の位置等を自由に変更できてもよい。例えば、可塑性の高い材質、又は温湯に浸すことで変形可能となる形状記憶ポリマーが支持部5に採用されれば、フロス2と支持部5との高さや距離が、使用者の身体的特徴や好みに応じて調整可能になる。
図2aはホルダ1の使用例を示す。使用者が、下の前歯91の歯間清掃のためにホルダ1を挿入方向11の方向で口腔内に運ぶと、自ずと、支持部5が使用者の舌92に乗った状態になる。使用者は、舌92の先でフロス2の位置を動かしながら、清掃すべき歯間の上に置くことができる。なお、使用者の手は図示しない。次に使用者は、例えばホルダ1全体を細かく前後させ、フロス2を前歯91の歯間に進入させる。使用者が、例えば支持部5を受ける舌92を前後させつつ、舌92を支点として、把持部4側をゆっくり下方向に動かすと、フロス2が歯間を貫通する。使用者は、舌92を上下方向にも動かしてもよく、あるいは舌92を動かさずにその上で支持部5を滑らせてもよい。この時、舌92でホルダ1の片側が支えられているため、貫通時の勢いでフロス2が歯間奥の歯肉に強く当たることはない。また、ホルダ1の硬さ等によっては、舌92が支持部5に係合する張架部3にy正方向の力を加えることで、前後の張架部3の間隔が開き、フロス2の緊張が高まるという効果が得られることもある。そのためには、ホルダ1のショア硬さ(JIS K 6253−1997/ISO 7619に定める方法又は株式会社仲井精機製作所等の試験機により計測される。)はA7以上が好ましく、A10以上がより好ましく、A20以上がさらに好ましく、A70以下が好ましく、A50以下がより好ましく、A35以下がさらに好ましい。使用者は、前歯91の側面及び歯間奥の歯肉の歯垢をこそげ落としたのち、舌92の補助を借りて進入時とは逆方向にフロス2を排出後、場合によりフロス2の洗浄を挟んで次の歯間に移る。使用者には、舌92で支えている安心感があるので、フロス2で歯間奥が傷つく不安感が払拭される。上記の一連の操作は直感的に可能であり、高齢者や児童等でも容易に行うことができる。また、使用者が使用中の最初から最後まで舌92を支持部5に接している必要はなく、離してもよい。つまり、歯間への進入時にフロス2が勢い余って歯間奥に直撃しないよう、舌92をストッパーとして待機させておくという使い方も可能である。
上の前歯93の歯間清掃では、使用者は舌92を上にあげて、図2aとは上下逆に口腔内に入れたホルダ1の支持部5を舌92の下側に添えることで、上記と略同様の操作ができる。犬歯程度まではこの方法で対応可能である。犬歯より奥では、垂直型頭部232の方が楽に使用できる。使用者は、舌92のうち清掃しようとする歯間の付近の部分に支持部5を乗せ、把持部4をフロス2の長さ方向すなわち左右方向に振ってフロス2を歯間に進入させる。以降は平行型頭部231と同様である。上の奥歯等の歯間清掃の際、使用者が、狙った歯間にフロス2を入れようとしているか、指を当てて確かめることがある。その場合にも、本発明に係るホルダ1では、支持部5がガイドとなって適切な位置に導く。使用者がそのままフロス2を歯間に進入させる際も、支持部5にかけた指をストッパーとして用いて、ホルダ1の意図しない動きすぎを防いでもよく、舌の代わりに指で支持部5を支えてもよい。特許文献1に記載のような糸状のデンタルフロスでは、使用者は両手の指を口腔内に入れ、さらにデンタルフロスをさまざまな方向に動かすために、口を大きく開ける必要がある。しかし、本発明のホルダ1では、使用者は片手の1本の指を口腔内に追加するだけでよく(舌で支える場合には追加しなくてもよく)、フロス2の向きはホルダ1の操作で調整できるので、口を大きく開けずに使用可能であり、使用者の負担が少ない。しかも使用者は、フロス2の両端と追加の指の3点でホルダ1を制御できるので、2点での制御しかできない糸状のデンタルフロスより使用者の意図に沿った操作が可能となる。このような使い方には、図3c等に示される形状のように、支持部5がフロス2の延長線より進入方向12の反対側(C側)に取り付けられた懸架型の形状が好適である。使用者は、さらに舌を加えた4点でホルダ1の動きを制御することもできる。使用者にとって、支持部5を舌や指で支える方が、張架部3や把持部4を支えるよりも力を加えやすく、位置の調整等が容易である。
図3c等では、支持部5がフロス2に対してy方向に高い位置にある。このように進入方向12においてフロス2と支持部5の高さが異なってもよい。つまり、支持部5の少なくとも一部が、フロス2の延長線より進入方向12又はその反対側にずれていてもよい。これにより、舌・指等による支持が容易となり、フロス2が歯間の奥まで届き、指で支える場合に隙間に指が入りやすくなる。また、支持部5の少なくとも一部が、フロス2の延長線より挿入方向11又はその反対側にずれてもよい。特に垂直型頭部232の場合、反対側にずれていれば、親知らず等の奥歯の歯間清掃時に、指を奥まで入れずにすむので、使用者の負担が軽減される。支持部5が図3bより挿入方向11にずれ、中心501がフロス2の延長線の略真上にあれば力が伝わりやすく、さらに支持部5が前でもよい。いずれの場合も、フロス2から離れすぎると力が伝わりにくいことがあるので、支持部5とフロス2のz方向の最短距離は20mm以下が好ましく、12mm以下がより好ましく、6mm以下がさらに好ましい。なお、上記の場合も含め、図1から図4のような配置では、支持部5の多くの部分とフロス2とは、張架部3を含む平面が画する2つの範囲のそれぞれ別の側に位置するので、支持部5は張架部3に対しフロス2の略反対側にある。
図3は支持部5の各種形状を示す。図3各図では図示の都合上両側の支持部5の形状がそれぞれ異なるが、これらが同じでもよい。図3a・b・c・dに示される形状や図3i・j・k・lに示される形状等のように、略平面状又は凹面状である支持部5の少なくとも一部に接する平面がフロス2の長さ方向となす小さい側の角度は、支持部5が進入方向12の反対の方向(yの正方向)に向かう力を受けるためには、90°未満が好ましく、0°以上60°以下がより好ましく、0°以上45°以下がさらに好ましく、0°以上30°以下が一層好ましく、0°以上15°以下であればフロス2の長さ方向と平行に近いので特に好ましい。前記角度が0°以上45°以下でさらに好ましい理由は、図3dに示すように、その面が正面の方向から受けた力Fのうちy方向の成分Fyの絶対値がx方向の成分Fxの絶対値以上となるため、使用者がホルダ1を舌・指等で確実に支持して、y方向に適切な力を加えられるという点である。支持部5の面が略平面状であり、かつフロス2の長さ方向となす角度が60°より大きいと、Fyの絶対値がFの絶対値の1/2未満となり、支持部5に適切な力がかからず、x方向にばかり力がかかるか、あるいは舌等が滑ってしまう。同様の理由により、z軸と平行で、中心501及び支持部5の先端部分を通る平面と、フロス2の長さ方向とがなす小さい側の角度が0°以上45°以下等前述の範囲でもよい。
支持部5が、途中の一部、特に張架部3又は把持部4と係合する根元である付け根部分50でそれ以外の部分より細くなっていると、使用時の応力の集中により折れやすい場合がある。図3dは、図3a・bに示される付け根部分50の中心501を通るホルダ1の断面である。図3dでは、2つの支持部5の両方において、図3cの付け根部分50の両端に相当する箇所が、図4の支持部5のように凹状ではなく、x方向の正負両側でなめらかにつながっている。このように、フロス2の長さ方向に平行で中心501を通る断面の少なくとも一部における付け根部分50の対向する外形部分の少なくとも片側が凹状でないことが好ましく、両側が凹状でなければより好ましい。その付け根部分50におけるフロス2の長さ方向に平行なすべての断面において付け根部分50の少なくとも片側が凹状でなければさらに好ましく、両側が凹状でなければ一層好ましい。なお、断面における凹状とは、断面のある部分が、その部分と輪郭が連続する両隣の部分に対して谷状に内側へくぼんでいることである。ただし、触知限界未満の深さ、具体的には0.2mm未満、好ましくは0.1mm未満の深さで連続しない(点状の)凹部は無視される。付け根部分50において、張架部3又は把持部4の形状の一部が付け根部分50前後の部分に沿った形状であり、その形状が凹状の部分の一部に含まれる場合、付け根部分50が凹部の一部をなしている。支持部5等のうち付け根部分50とは異なる部分でも、凹状の部分が少ない又はない方が、強度上・衛生上望ましい。同じ理由で、支持部5のうち付け根部分50に接する部分の少なくとも一部の方向の太さが、支持部5のうち付け根部分50に接する部分以外の部分・張架部又は前記把持部のうち付け根部分50に接する部分及びその近隣の部分の少なくとも一方の少なくとも一部の方向の太さ以上でもよい。また、張架部3又は把持部4から支持部5にかけての太さが、略一定であるか、小さくなることはあっても大きくなる部分がなくてもよい。さらに、付け根部分50以外の支持部5においても、途中の一部のみ細い部分がなくてもよい。支持部5の付け根に近い部分の少なくとも一部の太さが付け根からより遠い部分の少なくとも一部の太さより小さくなる場合、テーパー状になだらかに細くなるのが望ましく、急に細くなる、つまり段差状であると舌等の接触時の快適感を低下させるので、後述のように、このテーパー部分がフロス2の長さ方向となす角度は45°以下が好ましい。また、後述のように、段差部分の角がr0.5mm以上の丸みを帯びることが好ましい。
使用者は、指ではなく棒状のもので口腔の外から支持部5を支えることもできる。その代わりとして、図3e・f・gのように、支持部5が棒状部53をあらかじめ有してもよい。つまり、支持部5が把持部4に近い長さで、口腔外から指で支えられるような形状でもよい。このような支持部5が可動部6により途中で関節状に曲がってもよい。棒状部53の一部が曲がった状態のまま動かず固定されてもよい。
支持部5が図2・3c等のように板状であれば、支持部5が舌等に広い面積で接触可能である。また、支持部5が棒状であれば、支持部5に強い力がかかっても支持部5がしなってその力を吸収し、張付け根部分50に過度の負荷がかからずにすむので、張架部3の変形や折れが起こりにくい。それら2者の折衷として、図3fのように、棒状等の支持部5が張架部3に複数係合してもよい。複数の支持部5が柔軟であれば、力がかかった際にそれぞれが異なる量で弾性変形することで舌・指等の形状に適合しやすい。複数の支持部5は、2本の場合が、舌等に対する負荷をそれぞれが分散して受ける効率が高く、3本では1本が負荷を受けられないことがあって効率が下がる。複数の支持部5は1列に並んでいた方がよい。1列に並ぶとは、1つの張架部3又は把持部4に付属する複数の支持部5を通る直線が存在するか、張架部3又は把持部4が曲線状の場合、その1つの張架部3又は把持部4の曲線状の形状に沿ったなめらかな曲面上に複数の支持部5が配列されていることである。そうではなく、複数の支持部5が2列以上で、あるいはy方向に重なるように並んでいると、進入方向12の進入元側(zの正方向側)の支持部5が舌等に接触しないことがある。また、支持部5の先が複数に分岐している場合、支持部5のうち分岐した部分よりも支持部5の根元の部分の長さの割合の方が大きければ、同じ1つの支持部5とみなされる。
図3fのように1つの張架部3に複数の支持部5が付属する場合、上の前歯の歯間清掃時等に、複数の支持部5の間の部分が舌の下の舌小帯95を挟むことがある。舌小帯95が抜けないままホルダ1がひねられると舌小帯95が切れる恐れがある。そのような事故の防止の観点からは、1つの張架部3が支持部5を1つのみ有するのが最も安全である。さらに把持部4が支持部5を1つ有してもよい。張架部3等が1つにつき複数の支持部5を有する場合、支持部5の隙間の部分が支持部5の長手方向に長いと舌小帯95が挟まりやすく、隙間の部分の間隔が狭いと挟まった舌小帯95が抜けにくいので、複数の支持部3が短く、それらの間隔が開いているほうがよい。出願人の試験によれば、複数の支持部3の長手方向の長さは10mm以下が好ましい。また、複数の支持部3の間隔は、太さ3mmの棒状の支持部5の場合、5mm以上で舌小帯95が挟まってもまず切れないので好ましく、8mm以上で舌小帯95が挟まってもすぐに抜けるのでより好ましく、12mm以上で舌小帯95がほとんど挟まらないのでさらに好ましい。太さが2mmでもほぼ同様である。複数の支持部3がテーパー状である場合や互いに平行ではない場合等も含めれば、その先端部分の間隔が上記であればよい。間隔の上限は、張架部3又は把持部4のうち支持部5が係合可能な部分の長手方向の最大の長さから支持部5の太さを減じた値である。支持部5と張架部3又は把持部4との間に隙間が開いている場合にも、隙間の間隔は上記の範囲が好ましい。また、複数の支持部3の間隔がそれぞれの支持部3の最大の太さの2倍より大きいか、複数の支持部3の長手方向の長さより大きければ、隙間に舌小帯95が挟まっても切れることは少ない。支持部5の先等が分岐している場合も上記に準じ、分岐している部分は短く、分岐している部分どうしの間隔は広い方がよい。
複数の支持部5が1つの張架部3と一体成形されている場合、図3f・gのように、支持部5がその本数に応じて張架部3より細いことで適切な弾性を得てもよい。ただし、支持部5が細すぎると、強度が不足し、また支持部5の先が尖るため、特に垂直型頭部232で両側の張架部3の両方にそれぞれ複数の支持部5が付属する場合、頬の内側の粘膜に当たって傷つける恐れがある。さらに、材料10がPPやPE等の一般的な樹脂である場合の弾性も考慮すると、棒状の支持部5の太さは1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましい。上限は張架部の太さの2倍又は5mm程度である。また、支持部5の設置部分の長さの制限と支持部5の太さとの兼ね合いから、複数の支持部5の数にも上限がある。つまり、張架部3の限られた部分に複数の支持部5が付属するので、各支持部5の強度が保たれるよう、1つの張架部3につき4本までが好ましく、3本までがより好ましく、2本までがさらに好ましい。なお、支持部3が1つの張架部3につき1つであれば金型等の製造コストが低減される。また、支持部5と張架部3又は把持部4とが別部品ではなく、一体成形されても製造コストが低減される。いずれも、形状が単純なため使用時の汚れがたまりにくく、使用後の清浄が容易であり、衛生面や安全面や意匠性等様々な面で有利である。
図3hでは左右がTないしY字状につながった支持部5が張架部3の分岐前の把持部4に係合しており、強い力に耐え、柔軟性にも優れる。このような支持部5が張架部3と把持部4の両方に係合してもよく、そのようなホルダ1は強い力がかかる使用法に耐えられる。このように左右がつながった支持部5がxの正負方向にスライドし、清掃する歯間の口腔内での位置に合わせてその都度左側か右側のみがせり出してもよい。それにより、反対の頬部に支持部5がぶつかることがなく、快適性が向上する。左右がつながった部分は、フロス2が歯間の奥まで達した時にも歯に接触しないようなy方向の距離をフロス2との間に有してもよい。一方、この距離が歯に接触する範囲であることで、フロス2が歯間奥に衝突しないためのストッパーとなってもよい。支持部5はこのように張架部3に対してフロス2の進入方向12の反対側に離れて位置してもよい。そのような支持部5と張架部3又はフロス2との距離が、使用条件に合わせて調整可能でもよい。
図3i・j・k・lのように、凹凸部54が支持部5に設けられると、滑り止めの効果をもたらす。凹凸部54は、2本の指でつまむ際のために、支持部5の両面にあってもよい。凹凸部54はドット状・直線状・曲線状・絵柄等のいずれでもよく、支持部5の略平面又は凹面状である面の全面にあってもよく、周辺部だけでもよく、ゴム類からなってもよい。凹凸部54は、凹凸の高さ又は深さが2mm以下であるか、凹凸の高さ方向と同じ方向の支持部5の最大の太さの1/2以下であるかの少なくとも一方であれば、全体の形状に付加された補足的形状であるから、支持部5の形状の判別に際しては無視されてもよい。凹凸部54の凹部が支持部5を貫通した穴状でもよい。
ホルダ1のうち通常使用時に口腔内に挿入される部分の先端が鋭利だと、舌等に当たって痛さを感じさせ、時には舌小帯等の皮膚が薄い部分に刺さることがあるので、ホルダ1各部の端部や角は丸みを帯びていることが望ましい。特に支持部5は舌等が直接接触して力を加える部位であるから、角や突起の先は丸められた方がよい。また、支持部5が複数の場合、張架部3又は把持部4と係合する部分の大きさの制限から細い棒状になることが多いが、棒状の支持部5の先端部分の安全性には特に配慮が必要である。つまり、図3lのように、支持部5等が含む凸部では、凸部の高さvが凸部の底部の幅bの1/2以上の場合には、凸部の先端部分の半径rが0.5mm以上であることが望ましい。支持部5が棒状であれば、その先端部分は太さが1mm以上の半球状であることが望ましい。誤飲時等の安全のためにはrは1mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましい。rの上限は、通常は支持部5の先端部分の最大の太さの1/2である。凸部の先端形状は球の一部に限られず、回転放物面やなめらかな多面体等でもよく、先端形状が半径rの球面の一部に近似していれば、その支持部5の先端部分は略半径rの丸みを帯びた形状である。なお、凸部の先端面と半径rの球面の一部との誤差がrの1/5以下(特記の場合1/10以下)であれば近似である。突起の先端部分がさらに細部に複数の凹凸を有する場合には、それぞれの凸部について上記が適用される。板状等の支持部5であって、端部が扁平な場合も、90°以下で面が接する部分の半径rが前記の範囲でもよい。ただし、図3bのようなゆるやかな弧状の外形の板状支持部5の端部では、力が1点に集中しにくいため棒状体の先端部分より為害性が低い。このように、板状支持部5の形状によってはrが0.5又は1mm未満でもよく、90°以下の角度で3以上の面が接する頂点を有するか、2面であっても60°以下の小さい角度で面が接する部分では、rが0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましい。これらにより、支持部5等の安全性と快適性が向上する。また、複数の支持部5の間に舌小帯が挟まった時にも、上記により端部等がすべりやすく傷つけにくければ、舌小帯が切れる事故が抑制される。ただし、触知限界未満のごくわずかな凹凸は無視されてもよい。すなわち、支持部5等の端部等における凹凸の高さが好ましくは200μm未満、より好ましくは100μm未満、さらに好ましくは50μm未満、一層好ましくは25μm未満でもよく(下限は測定限界である。)、この範囲内であればほぼ平坦とされてもよい。
図3各図等のように支持部5が両側に付属しているホルダ1では、支持部5の太さ及び長さの上限は、フロス2の長さ又は使用者の指の太さ、具体的には15から30mm程度である。口腔のサイズには年齢・性別による差や個人差があるが、フロス2の長さは個人の歯の幅に応じて最適な幅が選択されてもよい。支持部5の太さ及び長さもそれと同等であれば舌・指等と適合することが多い。図1b等のように支持部5が片側のみに付属しているホルダ1では、支持部5のフロス2方向の長さはフロス2の長さより大きくてもよい。その長さが使用者の舌の幅、具体的には40から60mmを超えるとそのままでは使用に支障をきたすが、使用者が好みに応じて短く切れるよう、出荷時にはその程度かそれより長くてもよい。使用者による切断や面取り加工等のための用具が提供されてもよい。また、使用者はホルダ1をフロス2の長さ方向に往復させながら進入方向12に動かすので、支持部5のフロス2方向の長さはその往復時に舌等から外れない長さであることが望ましい。よってその長さは、フロス2の長さと使用者の奥歯の最大の幅との差の1/2を最小とし、張架部3又は把持部4の太さ以上が好ましく、具体的には2mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましく、5mm以上がさらに好ましい。
支持部5は、図3m・n・oのように半球状やリング状等でもよい。その場合、使用者が指をその中に入れ、挿入方向11又はz軸に垂直な平面上の360°あらゆる方向に力を加えて支持部5を動かすことができるので、よりきめ細かな歯間清掃が可能となる。さらに、半球状の支持部5では指で押すことで挿入方向11又はzの負方向の力を、リング状の支持部5では指の関節に引っ掛けることでzの正負両方向の力を、それぞれ使用者は加えることができる。半球状やリング状の支持部5は一部に切り欠きを有してもよく、切り欠きの幅によっては、使用者はその部分から指や舌を出し入れできる。
支持部5の先端は球状・半球状・円盤状・回転楕円状・T字状・Y字状等さまざまな形状でよい。ただし支持部5の先が太すぎると、過大な応力が支持部5の根元にかかることで支持部5が塑性変形したり折れたりする可能性が高まる。特に、図4a・bが示す拡張支持部55やL字状支持部56のように、進入方向12(略yの負方向)に先端部分が張り出した形状では、舌等からの進入方向12の反対方向(略yの正方向)の力が付け根部分50にかかるだけでなく、張り出した部分に舌等が引っかかることで、x方向の力もかかることがあり、支持部5が折れやすくなる。支持部5の張り出しの深さdが小さいか、張り出しの角度がなだらかであれば、舌等が引っかかりにくく、付け根部分50等にかかる力が抑えられる。また、支持部5の段差は舌・指等の接触時の快適感を損なうので、その点からも支持部5の先端の出っ張り、特に進入方向12側への出っ張りは制限された方がよい。具体的には、図4のような拡張支持部55及びL字状支持部56の先端部分57を含むひとまとまりの部分の片側の最大の張り出しの深さdは支持部5のうち先端部分57を含むひとまとまりの部分以外の部分(先端部分57から遠い部分、付け根部分50に近い部分)の最小の太さt以下がよく、好ましくはtの1/2以下がよく、張り出しがなくてもよいので、0以上でもよい。なお、複数の支持部5等の各々が「ひとまとまりの部分」を1つずつ有してもよい。また、拡張支持部55又はL字状支持部56の先端部分57を含むひとまとまりの部分の張り出し部分のうち付け根部分50に向き合う部分がフロス2の長さ方向となす角度の絶対値θ5は、45°以下が好ましく、30°以下がより好ましく、22°以下がさらに好ましく、15°以下が一層好ましく、張り出しがない場合の0°が下限であるが、それを超えて先端に近い部分が薄くてもよい。また、図4における張架部3とL字状支持部56との隙間の凹部の幅が狭いと、前歯や舌小帯を挟む不具合につながるので、このような凹部では幅wの深さdに対する比率が一定以上のほうがよい。すなわち、フロス2・張架部3・把持部4のいずれかと対向する支持部5等の一部における最も外側に張り出した部分のうち対向するフロス2・張架部3・把持部4のいずれかに最も近い部分とフロス2・張架部3・把持部4の対向する部分との最短距離wは前記最も近い部分の張り出しの深さd以上が好ましく、深さdの1.5倍以上がより好ましく、深さdの2倍以上がさらに好ましい。図2のような平行型頭部231でも同様である。通常は、最短距離wをなす両端の点を結ぶ線分は前記対向する部分に垂直であり、張り出しの深さdに長さ及び方向が対応する線分は最短距離wをなす両端の点を結ぶ線分に垂直である。深さdは張り出しの高さでもよい。凹部の片側の深さ方向に相当する部分がフロス2・張架部3・把持部4のいずれかでもよい。凹部の片側の深さ方向に相当する部分は深さ方向に対して傾斜していてもよく、湾曲していてもよい。図3fの棒状部53のように、可動部6によりd及びwの数値が一定しない場合は、歯等が凹部に挟まっても動いて抜けることが多いので、凹部を有さないとみなされてもよい。あるいは、深さdが好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下であれば、舌にはほとんど触知されないので、快適感の問題はなく、余計な力もかかりにくい。上記いずれの条件も、支持部5等の進入方向12側で適合してもよく、他の側で適合してもよい。上記いずれかの条件により、舌小帯が張り出した部分に引っかかったり、凹部に挟まったりして損傷する危険が避けられる。また、支持部5がL字状の場合には、先端部分57は図4aのL字状支持部56のようにy方向に長くてもよいが、z方向に長ければより安全である。支持部5がT字状等の場合も同様である。
以下の段落にホルダ1の各種変形例を記載する。1つの頭部23が3以上の張架部3を有してもよい。その場合、例えばフロス2が中間に第3以降の張架部3を有してもよく、それぞれの張架部3間の区間ごとにフロス2の方向が変わってもよく、複数のフロス2の部分においてフロス2の張力・太さ・本数・平滑度・平行か縒ってあるかといった形状等が互いに異なってもよい。それぞれの張架部3が1又はそれ以上の支持部5を有してもよい。1つの頭部23等が有する張架部3が1つのみで、使用者はフロス2の片側を指で張架してもよい。
支持部5は、頭部23の左右と先の両方に係合してもよく、フロス2を略xz平面に沿って囲むO字状、又は把持部4の周辺を除くU字状でもよい。垂直型頭部232における支持部5の位置は、平行型頭部231と同様に頭部23の先でもよい。この場合には、使用者は、進入させる歯間より奥の歯に支持部5を乗せて使用する。このような場合等では、ホルダ1の左右への往復等の移動が容易になるよう、支持部5が、口腔内の一部との接触部分等に、図5aのような摩擦低減用の潤滑部58を有してもよい。潤滑部58は、シリコン・シリコンゴム等の摩擦の少ない部材で摩擦を減らしてもよく、潤滑剤等を溶出等により供給してもよい。あるいは、支持部5が回転部59を有し、ホルダ1の往復が円滑化されてもよい。回転部59は車輪状で、中央に車軸を有し、車軸によって支持部5と係合されてもよい。また、回転部59が図5aのように球状で、360°すべての方向に回転可能でもよい。潤滑部58及び回転部59を併せて摩擦低減部とする。回転部59は可動部6に含まれることがある。上の奥歯の歯間清掃では、舌の裏側に支持部5を添えるのが難しいことがある。この場合、図2aにおける口蓋94に支持部5を添えるようにしてもよいが、支持部5の往復による摩擦が痛く感じられることがある。摩擦低減部はこの痛みを緩和する。
上の親知らず等の特に奥の歯間用として、使用者が、口蓋に支持部5をあて、支持部5を略ずらさずに支持部5を軸として、頭部23及び把持部4を弓状に回転させたり、上下左右に動かしたりできる機能を有する部分を、ホルダ1が具えてもよい。この部分は、例えば、支持部5と、支持部5が係合される頭部23又は把持部4との間の振動減衰部7である。この振動減衰部7は、把持部4等とは弾性・可塑性等が異なるゴム・シリコンゴム・シリコン等からなってもよく、たわみやすい又は凹みやすいように弾性を調整されてもよく、ばね等により伸縮可能でもよく、可動部6を有してもよく、オイルショックアブソーバー等を有してもよく、フロス2が急に歯間を通過した時の衝撃を吸収するダンパーを兼ねてもよい。支持部5に縦横の溝加工が施されたり、吸盤や滑りにくい材料10が使用されることで、支持部5が滑り止め機能を有してもよい。また、図5bのように、支持部5が大きなボール型の振動減衰部7と一体化してもよい。この場合、振動減衰部7は、例えば粘性が高く変形しやすいジェル状の内容物を包み込んでいる。使用者は、上の奥歯の歯間への進入時に、支持部5を口蓋等に密着させたまま、フロス2の長さ方向に往復させることができる。振動減衰部7は、ジェル状内容物等の粘性により、ホルダ1を支持しつつ進入時の振動を吸収できる。下の奥歯の歯間への進入時には、支持部5及び振動減衰部7の形状が、ジェル状内容物等の流動により、舌と歯茎との間の空間に追従してもよい。支持部5又は振動減衰部7は変形・伸縮又は成形によって口腔各部の形状に適合してもよい。また、図5aのように、振動減衰部7が把持部4の一部又は把持部4と頭部23との間に組み込まれてもよい。振動減衰部7は、ゴム等の使用や、把持部4等と同じ材料10でより細い等により、把持部4等と弾性が異なってもよい。振動減衰部7は振動・衝撃を吸収又は低減し、支持部5や舌等に伝わりにくくする。
張架部3に張架されたフロス2は、歯間への進入時には張力が高いほうがよいが、進入後はやや弛緩した状態の方が、途中で曲線状に方向を切り替えて清掃できるので好都合である。そのため、図2のように、フロス2を弛緩させたり緊張させたりする張架調整部31が頭部23又は把持部4に内蔵され、これが把持部4等に設けられたスライド式のスイッチ32等で操作可能でもよい。張架調整部31は、例えば図2aのように、張架部3の一方及びスイッチ32に係合され、スイッチ32を押して張架調整部31を図の左方向にスライドさせた時のみ、張架部3の間隔が狭まり、フロス2が弛緩するが、通常はばね等によりフロス2の緊張を保つようになっている。また、同じホルダ1が繰り返し使用されると、次第にフロス2が伸びて弛緩していくので、フロス2の張力を一定に保つような機構を張架調整部31が兼ねてもよい。さらに、張架調整部31の機能を支持部5等が有してもよい。つまり、使用者が、フロス2の歯間進入時には支持部5に力を加えることでフロス2が緊張し、歯間通過後は支持部5から舌等を離すことでフロス2が弛緩してもよい。これを実現するために、例えば張架部3の一部と支持部5とが1つの部品になった張架支持部35により、てこの原理で加圧されてもよい。例えば図5bのように、フロス2が張架支持部35に固定され、張架支持部35におけるその固定位置と舌等が接する位置の間に張架部3又は把持部4との係合部分があり、舌等に加えられたy正方向の力がフロス2に伝わって張力を増大させる。張架支持部35は、張架部3又は把持部4と、可動部6で係合されてもよく、一体成形で係合され係合部分が細いことで曲がりやすくてもよく、ばね等により張力・弾力が与えられてもよく、弛緩又は緊張が過度とならないようなストッパー等を有してもよい。
張架支持部35は張架支持部固定部351によりフロス2の弛緩位置や緊張位置で一時的に固定されてもよい。張架支持部35がフロス2の両側に設置されている場合には、片側の張架支持部35が固定されていることで、もう片側の張架支持部35での操作性が向上する。張架支持部固定部351は張架支持部35とは独立したスイッチ状の部品でもよく、張架支持部35と一体であって、例えば張架支持部35をフロス2の長さ方向に動かして固定及び解除を行うような機構でもよく、自動ロック機構を有してもよい。舌等により力をかけない時にはフロス2が完全に弛緩してもよいが、多少の張力がかかっていた方が清掃しやすい。そのために、ホルダ1が特許文献2のようなフロス2を巻きだす方式であって、フロス2の巻き出し又は巻取り側に張力をかけてもよい。使用により張力が下がれば巻き直しで調整可能である。一般に、従来のデンタルフロスホルダよりも、従来の糸状のデンタルフロスの方が、適切に用いられれば、歯間に付着した歯垢の除去効率が高いとされる。それは、使用者が糸状のデンタルフロスをたわめることで歯の側面の曲面形状に沿わせたり歯と歯茎の隙間(いわゆる歯周ポケット)に届けたりできるからであるが、本変形例でも同様の使用法が可能である。さらに、本変形例では糸状のデンタルフロスと異なり、奥歯の歯間の底の歯茎に対してもそのような使用法が容易であるので、歯垢除去効率がより高い。なお本発明では、張架支持部35のように、ホルダ1を構成する異なる複数の要素が一体で独立した要素をなしてもよく、張架部3と張架支持部35のように、1つの要素が2つの部品に分かれてもよい。また、これらの機構なしでも、ホルダ1ではフロス2の張力の調整がある程度は可能である。例えば、図2のようなホルダ1では、歯間進入後に、舌92が支持部5に上から(進入方向12)に力をかければ、フロス2の張りがややゆるくなって歯間清掃の効率が向上する。この操作時の快適性のためにも、図2bの深さdが小さい等により支持部5が深い凹部を有さないことが望ましい。図6bでは、把持部4が片側の張架部3寄りに係合されている。舌等が反対側の張架部3に付属する支持部5に横方向の力を加えれば、張架部3がたわんで同様の効果が得られる。
フロス2が複数の細い糸を縒らずに扁平に束ねた又は並べた形状であって、その扁平な形状の方向がスイッチ32等で切り替え可能でもよい。つまり、歯間への進入時にはフロス2の幅が広い方向が進入方向12に平行であり、歯間への進入後の歯間清掃時にはそれと垂直方向に変更可能となるような機構をホルダ1が有してもよい。それにより歯間清掃の効率が向上する。
上の奥歯を使用者本人が1枚の鏡のみで見ることは難しく、鏡で見ながらデンタルフロス操作を行うには合わせ鏡やカメラ及びモニター等を用いる必要がある。しかし、使用者が2枚目の鏡を手で持つと唇をめくり上げることができなくなり、また合わせ鏡やモニターを介しての空間把握、つまり左右及び奥・手前の方向の把握が難しく、上の奥歯の歯間清掃はよほど慣れないと困難であった。本発明のホルダ1により、使用者は鏡等を使わずに舌先等の感触でフロス2及び歯間の位置を直感的に確認できるので、容易に歯間清掃できる。ただし、他の部位の清掃や操作の習熟前等には鏡の使用は有効であるから、頭部23がLED・蓄光塗料等により口腔内で発光すれば、鏡で見ながらの使用が容易になる。
ホルダ1は、例えば特許文献2等のような巻き出し式でもよく、その場合、支持部5がフロス2の固定や巻き付けといった機能を兼ねてもよい。ただし、幅の狭い凹部や溝等や巻かれたフロス2が、使用時の快適感の低下につながる場合には、支持部5がフロス2の固定等の機能を有さなくてもよい。
一般に、年齢・性別等により口腔の大きさが異なり、口腔や舌の形状にも個人差がある。したがって、頭部23及び支持部5の位置関係・大きさ・厚さ等については、数多くの要求が想定されるため、例えばL・M・Sの3種等、複数のサイズが用意されてもよい。また、使用者の口腔内等の各部の寸法を計測したデータやX線画像等に基づき、ホルダ1がオーダーメイドで製作されてもよい。同様に、使用者の舌の形状に近いゴム製等の舌サックが提供されてもよい。舌サックは、ホルダ1と併用されることで、支持部5が舌に当たるときの衝撃等から舌を保護する。舌サックはレディメイドの汎用品でもよい。また、ホルダ1は、清掃される歯の本人だけでなく、別人に操作されてもよく、ペット等の動物にも対応可能である。
《第2の実施形態》
ホルダ1は、手動でもよく、電動でもよく、既知の人工知能等を有し、使用者の個々の歯間ごとの位置・幅・深さ・形状・方向等のデータを記憶して、そのデータに基づいて自動制御で動作してもよい。自動制御であっても、上記に記載の、口腔内での事故を防止するための支持部5が有用である。このようなホルダ1では、支持部5は、例えばフロス2の長さ方向に垂直な方向上の2カ所に、フロス2を挟むように取り付けられ、フロス2が進入する歯間の両側の歯に当たるようになっている。この支持部5は張架部3や把持部4に係合されなくてもよい。このホルダ1では、把持部4が使用者の手で保持されなくてもよく、例えば口蓋で保持されてもよく、把持部4がなくてもよい。この支持部5は、前歯等の形状に適合しやすいよう、V字溝を有してもよい。また、それとは別に平坦に近い又は凹状等の奥歯用の支持部5も用意され、それらが歯の部位に応じて切り替えられてもよい。支持部5がフロス2の歯間への進入時・歯間清掃時・排出時に歯を歯列の内側と外側の両側等から掴んで支持してもよい。
上記自動制御のホルダ1は、フロス2の歯間への進入時にフロス2が歯間奥に衝突することがないよう、例えば上記データから読み出した歯間ごとの深さに応じて、フロス2と支持部5との進入方向12上の距離を調整することができる。あるいは、歯間が狭い部分の多くは歯間の入り口付近であるため、歯間の入り口から何mmで止まるように使用者が設定し、支持部5の位置がそれに応じて移動すれば、歯間ごとに調整される必要がなく、コストダウン及び動作の高速化に寄与する。また、その距離は人によらず一律でもよい。フロス2の排出時にも、支持部5とフロス2との間に進入時とは逆方向の力を加えればよく、無理な力がかからずにすむ。これらの場合はフロス2の進入運動のストッパーが歯であるが、このストッパーは舌でもよく、指でもよく、あるいは、ホルダ1の内部にあって、ホルダが歯や口腔で固定される力によってフロス2の進みすぎを止める構造でもよい。また、このホルダ1は、歯間が特に狭い部分ではフロス2を進入方向12に動かし、歯間が広がるかフロス2の運動に対する抵抗が少なくなるとセンサが検知してフロス2の進入方向12の動きを減速することで、支持部5の機能を有してもよく、センサでなく、カメラを搭載し、その撮影画像を解析して判断してもよい。そのようなフロス2の動きの電子的な制御に、支持部5と歯等との接触によるブレーキという物理的な停止方法が併用されれば、自動制御のホルダ1による歯間清掃時の安全性がより向上する。この支持部5は、歯間清掃中には進入方向12の反対側等に一旦退避し、歯間からの排出時にまた元の位置に戻ってもよい。図5cのホルダ1が有する駆動部61は、既知の演算回路及び記憶回路等からなる自動制御機構を有し、電気・空気圧・水圧・熱機関等の動力源又は人力によって駆動され、上記の動作を行う。
自動制御のホルダ1は、歯列の外周及び内周をU字状に取り巻くような形状で、例えば口腔内で支持部5等を噛みこむことで固定されて用いられてもよい。その場合、図5cのようなホルダ1の1組が、U字状のレール上をモータ等により移動して、歯間を順次清掃してもよく、複数の歯間ごとに1つずつ設置されてもよい。後者の場合、それぞれのフロス2等の位置が歯間等に合わせて調整可能でもよく、複数のフロス2に対応する支持部5が連続してもよい。
《第3の実施形態》
支持部5の代わりに、延長張架部36がホルダ1に付属し、これが口蓋や歯茎等に当たることでストッパーの役割を果たしてもよい。延長張架部36は、図6aのように通常の張架部3より先が長く、フロス2の歯間通過後の勢いでホルダ1が進入方向12に進入した際、口蓋・歯茎・舌等に接してホルダ1を制止し、フロス2が歯間奥の歯肉に衝突するのを防ぐ。図6bのように、使用者はフロス2をやや傾けて歯間のコンタクトポイントを通過させ、歯間清掃時にはフロス2の長さ方向を水平に近づけ、延長張架部36の先が口蓋等から離れるようにして用いてもよく、延長張架部36を歯の奥の口蓋94等に当て、そこを支点としてホルダ1を回転させながら、フロス2を奥歯96の歯間に進入させてもよい。そのために、図6bのように、延長張架部36の長さ方向がフロス2の長さ方向に垂直でなくてもよく、それらのなす角度の絶対値が80°以下でもよく、70°以下でもよく、60°以下でもよく、45°以下でもよく、30°以上でもよい。あるいは、フロス2との係合部分でのフロス2の長さ方向との取付角度が、延長張架部36と張架部3とで異なってもよく、それらの差の絶対値が5°以上でもよく、10°以上でもよく、20°以上でもよく、30°以上でもよく、90°未満でもよい。また、図6bでは、ホルダ1にx負方向の力が加わることで、延長張架部36と反対側の張架部3との間が開き、フロス2の張力が上がって、コンタクトポイントの通過が容易になる。図6bのように把持部4との係合部分が延長張架部36から遠く張架部3に近いと、この効果がより顕著となる。このような左右非対称の形状のホルダ1は、傾斜型頭部233と同様の効果を有することがある。歯間からの排出時には、使用者は、口蓋94等に当てた延長張架部36をてこの支点とし、そこに力をかけてホルダ1を進入時とは逆方向に回転させることで、容易にフロス2を排出できる。
延長張架部36が曲がりやすければ、これらの動作が円滑となる。例えば、図6cのように延長張架部36の一部が湾曲していればしなりやすく、使用者がホルダ1をフロス2の方向に細かく往復させるのが容易になる。延長張架部36のうち延長張架部の先端付近部分361に近い部分がテーパー状に細くても同様の効果が得られる。また、延長張架部36又は延長張架部36及びそれと係合する張架部3の弾性がそれ以外の部分と異なってもよく、それ以外の部分より弾性限界が大きく弾性率が小さくてもよい。なお、図6bの場合には歯間への進入方向12がフロス2の長さ方向に垂直でない時があるが、歯間の通過後はフロス2に略垂直で清掃されることが多いので、歯間への進入方向12はフロス2の長さ方向に略垂直とみなしてよい。
本実施形態の用途に適した延長張架部36の長さは、使用者によって、また同じ使用者でも使用する部位によって、異なることがある。よって複数の長さの延長張架部36をそれぞれ有したホルダ1が用意されてもよい。また、自動制御のホルダ1等は、歯間通過時の加速度・振動・衝撃等を感知するセンサを具え、そのセンサで歯間通過を感知し、延長張架部36の先を収納し短くしてもよい。使用者が手動で延長張架部36を短くしてもよい。これらにより、歯間清掃時に延長張架部36の先が口蓋等に当たらずにすむ。図6aにおいて、フロス2と垂直な方向におけるフロス2から延長張架部36の先端までの距離eは、使用者の歯の先端から口蓋等までの距離を最大、歯間の奥の歯肉から口蓋等までの距離を最小、としてもよい。具体的には、距離eは4mm以上が好ましく、6mm以上がより好ましく、8mm以上がさらに好ましく、10mm以上が一層好ましく、32mm以下が好ましく、28mm以下がより好ましく、24mm以下がさらに好ましく、20mm以下が一層好ましい。距離eは、図6bのような使用法が想定される場合には図6aの場合より長くてもよく、前記の1.25倍から1.5倍又は2倍でもよい。延長張架部36と張架部3とのフロス2の長さ方向に垂直な方向の長さの差Δeは、前記距離eより、張架部3の先端からフロス2までの長さを減じた値であるが、一般的な数値としては、5mm以上が好ましく、7mm以上がより好ましく、9mm以上がさらに好ましく、11mm以上が一層好ましい。
先端付近部分361が、張架部3より太いか、湾曲していれば、接触する口蓋等への不快感が減少する。先端付近部分361の最大の太さt36は、張架部3の太さt3の1.5倍以上が好ましく、2倍以上がより好ましく、3倍以上がさらに好ましく、4倍以上が一層好ましく、また3mm以上が好ましく、4mm以上がより好ましく、6mm以上がさらに好ましく、8mm以上が一層好ましい。この場合の張架部3は、延長張架部36の反対側の張架部3又は延長張架部36の根元の張架部3のどちらでもよい。ただし、延長張架部36がフロス2との係合部分から反対側のフロス3の方に張り出しすぎると、歯間への進入時や歯間清掃時に歯に衝突するので、その部分の張り出しの深さdは張架部3の太さの1倍以下が好ましく、1/2倍以下がより好ましく、あるいは2mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましく、0.5mm以下がさらに好ましい。先端付近部分361は平坦又は半球や半回転楕円に近似した形状が適しており、その半径rが大きいか曲率が小さいほどよい。具体的には、先端付近部分361の最小の半径rは1mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましく、2mm以上がさらに好ましく、上限は実用的な延長張架部36の太さの1/2である。先端付近部分361の少なくとも一部において少なくとも一部の方向の半径rは1.5mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましく、3mm以上がさらに好ましく、4mm以上が一層好ましく、最大では図6cのように無限大でもよい。また、先端付近部分361が潤滑部58等を有してもよい。なお、延長張架部36の太さの定義は支持部5に準じる。先端付近部分361及び先端部分57等は深い溝や凹部を有さない方がよく、凹部を有してもその深さは幅以下が好ましく、幅の1/2以下がより好ましく、3mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましく、1mm以下がさらに好ましく、0.5mm以下が一層好ましい。射出成形による製造では、先端付近部分361等にバリ等が発生しないよう、金型製作等に配慮が求められる。先端付近部分361等の凸部は0.5mm以下が好ましく、0.2mm以下がより好ましく、0.1mm以下がさらに好ましい。先端付近部分361等がゴム類のカバーで覆われてもよく、そのカバーが着脱可能でもよい。また、ホルダ1とは独立したマウスピースが口腔内で先端付近部分361等からの力を受けて分散させてもよい。さらに、口蓋等に覆いが被せられれば、先端付近部分361が当たることによる使用者の不快感が低減される。この覆いは、ホルダ1に同梱された硬化性の樹脂やゴム等を用いて使用者により簡易的に作成されてもよく、歯科医等の専門家により製作されてもよい。使用者が先端付近部分361を口蓋等に当てたままフロス2を動かせるよう、延長張架部3が途中等に回転部59を有してもよい。
延長張架部36と、フロス2を挟んだ張架部3との、フロス2に平行な方向における最短の間隔sは、12mm以上が好ましく、14mm以上がより好ましく、16mm以上がさらに好ましく、18mm以上が一層好ましく、その上限は、延長張架部36及び張架部3を合わせて口に入る幅であるから、個人差はあるが40mmから50mm程度である。上記の範囲の上限もこれに準じる。延長張架部36からそれに係合する張架部3に至る部分の太さの変化がなだらかな方が、強度・安全性・使用時の快適感等の点で望ましい。具体的には、図6aに示す、張架部3から延長張架部36にかけて太くなる部分の張架部3に対する傾斜角θ36は、45°以下が好ましく、30°以下がより好ましく、22°以下がさらに好ましく、15°以下が一層好ましい。また、延長張架部36と他の部分とがなす凹部の深さdは幅w以下がよい。つまり、段落0044と同様に、フロス2・張架部3・把持部4のいずれかと対向する延長張架部36の一部における最も外側に張り出した部分のうち前記対向するいずれかに最も近い部分とフロス2・張架部3・把持部4の対向する部分との最短距離wは前記最も近い部分の張り出しの深さd以上が好ましく、深さdの1.5倍以上がより好ましく、深さdの2倍以上がさらに好ましい。これらにより、舌小帯が延長張架部36と他の部分との隙間に挟まって損傷する危険が低減される。
図6bのように、進入方向12とフロス2の長さ方向とが垂直以外になるように用いられることがあるため、延長張架部36を有するホルダ1のフロス2の長さは通常のデンタルフロスホルダより長い方がよく、15mm以上が好ましく、17mm以上がより好ましく、20mm以上がさらに好ましい。フロス2の両側の張架部3がいずれも延長張架部36でもよいが、歯間清掃に差し支えるので、片側のみが延長張架部36であるほうがよい。そのため、垂直型頭部232を有するホルダ1では、延長張架部36と張架部3との配置が図6aの通りの頭部と、それと左右が反対の頭部の2種が提供されてもよく、把持部4の両端にそれぞれが係合されてもよい。あるいは例えば図6cのように、延長張架部36と張架部3とが上部で連結された垂直型頭部232が、可動部6を軸としてy正方向に反転可能であれば、1つの頭部で左右両用となる。さらにこの垂直型頭部232が頭部固定部37で固定可能でもよい。平行型頭部231を有するホルダ1では、延長張架部36が挿入方向11の先端側にある方が操作しやすいことが多いが、その反対でもよい。延長張架部36のその他の特徴は支持部5の特徴と一部で共通する。ホルダ1は延長張架部36と支持部5の両方を具えてもよい。延長張架部36は使いやすさ・左右の出っ張りが少なく頬の内側等にぶつかりにくい点で支持部5より優れ、垂直型頭部232では左右を兼用しづらい点・指が使いづらい点・歯の部位によっては使用しづらい点で支持部5に劣ることがある。なお、本明細書等では延長張架部36ないし張架支持部35等を支持部5と併せて支持部と記載することがある。延長張架部36はもう一方の張架部3と比較して突き出ているので突起状である。
《第4の実施形態》
従来のデンタルフロスホルダでは、使用者は、フロスに付着した歯垢を頻繁に洗い落とす必要があった。使用者がこれを怠ると、前の歯間清掃でフロスに回収した歯垢を次の歯間に運ぶことになり、せっかくの歯垢除去が無駄になってしまう。しかし、1カ所の歯間清掃ごとにデンタルフロスホルダをいちいち水洗するのは煩わしいことであった。水洗のために洗面台での歯間清掃が強いられるので、居室等で座ってくつろぎながら、時間をかけてじっくり歯間清掃を行いたい使用者にとって不便であった。一方、特許文献2等のような巻回式のデンタルフロスホルダでは、使用するデンタルフロスをその都度新しい部分に変更可能である。とはいえ、その操作にも手間がかかるため、使用者の労力という点では、こまめに洗浄するのと大差なかった。本形態は、上記のような実情に鑑み、手軽に手元でデンタルフロスの洗浄が行えることを課題とする。この課題を解決するための手段は、フロス2に係合しフロス2上を移動可能な清掃部8である。それは例えば、図6aの清掃部8のように、リング状の部品であり、中央の穴にフロス2が通されており、両側の支持部3の間を自由に動かせるようになっている。使用者は、1カ所の歯間清掃を終え、次の歯間に移る前に、清掃部8を片側からもう片側に動かすことで、フロス2に付着した歯垢を片側に寄せることができる。その次は逆方向に動かせばよい。この際に、一度フロス2の片側に寄せた歯垢の一部を、清掃部8がまたフロス2の中央部に連れ戻してしまうという問題がある。この連れ戻し量の低減のためには以下の対処法がある。第1に、清掃部8の穴をフロス2の太さに近づけ、穴に入る歯垢を減らすことである。第2に、フロス2を通常より長くすれば、連れ戻し分は途中で略途絶し、中央部分までは及ばない。第3に、清掃部8の穴にらせん状等の斜め方向の溝が切ってあり、この溝が外に開かれた穴に通じていて、溝によって内部の歯垢を外に排出できるようになっている。清掃部8はフロス2に付着した歯垢を完全に除去できるわけではないが、簡単かつ瞬時に操作できるので、限られた範囲内では有用である。清掃部8が不用意に動かないよう、支持部3に留め具が用意されてもよい。清掃部8が張架部3の側でフロス2を軸として回転されることで歯垢がこそげ落とされるようなスクレーパーが張架部3に付属してもよい。
《第5の実施形態》
張架支持部35・延長張架部36・支持部5・潤滑部58・回転部59・振動減衰部7・リング状又はU字状の清掃部8等が独立した製品として提供され、使用者が、これを既製品のデンタルフロスホルダに取り付けて使用してもよい。本発明に係るホルダ1がフロス2を有さず、使用者が既製品のデンタルフロスホルダを嵌合して使用できるようになっていてもよい。
《製造方法》
本発明が提供するデンタルフロスホルダ製造装置100は、例えば図7aのように、材料取得部101及び加工部102を具える。本発明が提供するデンタルフロスホルダ製造方法は、例えば図7bのように、材料取得工程S101及び加工工程S102を具える。材料取得部101はフロス2や樹脂ペレット等の材料10を取得し、加工部102に渡す(S101)。例えば加工部102は、(1)フロス2を金型上の所定位置に張り渡す準備機構1021、(2)金型に樹脂等の材料10を充填する射出成形機構1022、(3)硬化後の材料10を取り出し、フロス2のうち硬化した材料10からはみ出した不要な部分・成形部分のバリ・離型剤等を除去する仕上げ機構1023によりホルダ1を製造する(S102)。材料取得部101は、既製品のデンタルフロスホルダ及び成形済部品の支持部5(又はペレット)等を材料10として取得してもよい。加工部102は、既製品のデンタルフロスホルダ及び支持部5等を接着・圧着・加熱圧着等により接合・嵌合してホルダ1を製造してもよい。使用者が材料取得・材料10の設置・取り出し等を行い、加工部102は圧着のみを行ってもよい。加工部102は使用者身体の計測データ等に基づくオーダーメイドにも対応できる。加工部102は材料取得部101を兼ねてもよく、その逆でもよい。
上記各実施形態は互いに、特記されない部分の多くで共通しており、また組み合わせて実施されてもよい。また、本発明の技術的範囲は上記各実施形態に記載の範囲には限定されない。上記各実施形態に多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。