以下に、本発明の実施形態に係る発電プラントの運転管理支援装置を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明は、本発明を限定するものではなく、適宜変更して実施可能である。
[実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る発電プラントの運転管理支援装置10及び発電プラントの運転管理支援装置10が使用される発電プラント22の概略構成図である。発電プラントの運転管理支援装置10は、図1に示すように、発電プラント22の運転管理を支援するとともに、発電プラント22の運転管理のための複数拠点の対策所に設けられた対策室端末40と情報通信可能に電気的に接続されている。
まず、発電プラントの運転管理支援装置10の運転管理支援機能を使用する対象であるプラント保安システム20について、以下に説明する。プラント保安システム20は、図1に示すように、発電プラント22と、制御装置24と、保守ツール26と、を含む。制御装置24及び保守ツール26は、中央制御室に設置されている。
発電プラント22は、原子力プラントであり、図1に示すように、原子炉32と、蒸気発生器34と、加圧器36と、蓄圧タンク38と、を含む。発電プラント22は、原子炉32の内部の温度を計測する温度計32aと、蒸気発生器34の内部の水位を計測する水位計測器34aと、加圧器36の内部の圧力を計測する圧力計36aと、蓄圧タンク38の内部のほう素濃度、ほう酸水量及び圧力を計測する計測系38aと、を含む。発電プラント22は、その他にも様々な機器及び計測器を含む。原子炉32、温度計32a、蒸気発生器34、水位計測器34a、加圧器36、圧力計36a、蓄圧タンク38、計測系38a及びその他の様々な機器及び計測器は、一般的な原子力プラントに用いられるものが好適に用いられる。なお、第1の実施形態では、発電プラント22が原子力プラントであるとしているが、本発明はこれに限定されることなく、火力プラントであってもよい。
発電プラント22は、制御装置24を構成する後述する4つの制御ユニット39と、それぞれ並列に、情報通信可能に電気的に接続されている。すなわち、原子炉32、蒸気発生器34、加圧器36、蓄圧タンク38及びその他の様々な機器は、それぞれ、制御装置24を構成する4つの制御ユニット39と、情報通信可能に電気的に接続されている。発電プラント22に含まれる原子炉32、蒸気発生器34、加圧器36、蓄圧タンク38及びその他の様々な機器は、制御装置24を構成する4つの制御ユニット39に、各機器に関する様々なパラメータ等の情報を送信する。発電プラント22に含まれる原子炉32、蒸気発生器34、加圧器36、蓄圧タンク38及びその他の様々な機器は、制御装置24を構成する4つの制御ユニット39によって制御する。
また、温度計32a、水位計測器34a、圧力計36a、計測系38a及びその他の様々な計測器は、制御装置24を構成する4つの制御ユニット39と、情報通信可能に電気的に接続されている。発電プラント22に含まれる温度計32a、水位計測器34a、圧力計36a、計測系38a及びその他の様々な計測器は、制御装置24を構成する4つの制御ユニット39に、各計測器による計測情報を送信する。
制御装置24は、複数の制御ユニットを備え、具体的には、図1に示すように、4つの制御ユニット39を備える。制御装置24は、これに限定されることなく、いくつの制御ユニットを備えていても良い。制御装置24は、出来るだけ多くの制御ユニットを備えていることが好ましい。4つの制御ユニット39は、いずれも同じ仕様の装置ユニットである。4つの制御ユニット39は、それぞれ並列に、発電プラント22と情報通信可能に電気的に接続されている。4つの制御ユニット39は、それぞれ、各機器の情報を受信し、受信した各機器の情報に基づいて、発電プラント22の運転を制御する。制御装置24は、4つの制御ユニット39で、発電プラント22の運転に関する同一の制御を、並列に処理する。
プラント保安システム20では、発電プラント22が原子力プラントであるため、LCO(Limiting Condition of Operation)に従って、制御装置24が4重化されている必要がある。すなわち、プラント保安システム20では、制御装置24が4つの制御ユニット39で、発電プラント22の運転に関する同一の制御を並列に処理する状態が、維持されている必要がある。つまり、プラント保安システム20では、制御装置24が3つ以下の制御ユニット39で発電プラント22の運転に関する同一の制御を並列に処理する状態は、LCOから逸脱した状態となってしまう。このため、発電プラント22が原子力プラントである場合、制御装置24が4つの制御ユニット39を備える必要がある。また、発電プラント22が原子力プラントである場合、制御装置24が5つ以上の制御ユニット39を備えることが好ましい。
LCOは、プラントの種類ごとに定められた諸規則をまとめた保安規定ごとに基づいて設けられている。プラント保安システム20では、発電プラント22が原子力プラントであるため、原子力プラントにおける諸規則をまとめた保安規定に基づいて設けられているが、プラントの種類に応じて異なるLCOが設けられる。LCOは、いずれのプラントの種類であっても、条文形式で運転条件の制限が管理される。
4つの制御ユニット39は、それぞれ並列に、保守ツール26と情報通信可能に電気的に接続されている。4つの制御ユニット39は、それぞれ、制御ユニット39の装置の状態の情報を保守ツール26に送信する。制御ユニット39の装置の状態の情報は、制御ユニット39の各部が、正常に作動している状態であるか、故障している状態であるか、という情報である。
4つの制御ユニット39は、発電プラント22に含まれる原子炉32、蒸気発生器34、加圧器36、蓄圧タンク38及びその他の様々な機器に関する様々なパラメータ等の情報を、保守ツール26に送信する。4つの制御ユニット39は、発電プラント22に含まれる温度計32a、水位計測器34a、圧力計36a、計測系38a及びその他の様々な計測器による計測情報を、保守ツール26に送信する。
制御ユニット39は、それぞれ、コンピュータに含まれるCPU(Central Processing Unit)等が例示される制御装置24の制御判断を行う回路を有する。すなわち、制御ユニット39は、それぞれ、発電プラント22の運転を制御するためのロジック演算などの演算処理をする。制御ユニット39は、発電プラント22が通常に運転されている際には、所定の発電プラント22の運転条件内で、通常の運転を制御するための演算処理をする。所定の発電プラント22の運転条件は、LCOを含むものであり、制御ユニット39に接続された記憶装置等に記憶されている。
制御ユニット39は、発電プラント22に異常または事故が発生した際には、制御装置24に入力される異常または事故の情報に基づいて、異常または事故に対応した発電プラント22の制御をするための演算処理をする。例えば、制御ユニット39は、発電プラント22に運転の維持及び復旧が可能な異常または事故が発生した場合には、制御装置24に所定の方法で発電プラント22の運転を維持及び復旧させる旨の入力がされることに応じて、発電プラント22の運転を維持及び復旧させるための演算処理をする。また、制御ユニット39は、発電プラント22が加圧水型原子炉であり、発電プラント22に原子炉トリップを要するような運転の維持及び復旧が不可能な異常または事故が発生した場合には、制御装置24に原子炉トリップをする旨の入力がされることに応じて、発電プラント22を原子炉トリップするための演算処理をする。
制御ユニット39は、複数のロジック演算回路を組み合わせた構造とすることが好ましい。制御ユニット39は、各ロジック演算回路で設定された演算を行うことで、発電プラント22の各部を制御する指示を生成する。
保守ツール26は、原子炉32を含む発電プラント22の安全保護に必要な情報を収集し表示する計装盤であり、原子炉安全保護計装盤と称されることもある。保守ツール26は、制御装置24を構成する4つの制御ユニット39と、それぞれ並列に、情報通信可能に電気的に接続されている。保守ツール26は、4つの制御ユニット39から、それぞれの制御ユニット39の装置の状態の情報を受信する。保守ツール26は、ディスプレイを有し、それぞれの制御ユニット39の装置の状態の情報を、ディスプレイに表示させる。
保守ツール26は、制御装置24を構成する4つの制御ユニット39を介して、発電プラント22に含まれる原子炉32、蒸気発生器34、加圧器36、蓄圧タンク38及びその他の様々な機器に関する様々なパラメータ等の情報を受信する。保守ツール26は、制御装置24を構成する4つの制御ユニット39を介して、発電プラント22に含まれる原子炉32、蒸気発生器34、加圧器36、蓄圧タンク38及びその他の様々な機器の状態の情報を受信する。保守ツール26は、発電プラント22に含まれる様々な機器の状態を、ディスプレイに表示させる。具体的には、保守ツール26は、発電プラント22に含まれる機器が故障している可能性が高い場合、その故障している可能性が高い機器を、故障に関するエラーメッセージまたはエラーコードに加えて、ディスプレイに表示させる。
保守ツール26は、制御装置24を構成する4つの制御ユニット39を介して、発電プラント22に含まれる温度計32a、水位計測器34a、圧力計36a、計測系38a及びその他の様々な計測器による計測情報を受信する。保守ツール26は、制御装置24を構成する4つの制御ユニット39を介して、発電プラント22に含まれる温度計32a、水位計測器34a、圧力計36a、計測系38a及びその他の様々な計測器の状態の情報を受信する。保守ツール26は、発電プラント22に含まれる様々な計測器の状態を、ディスプレイに表示させる。具体的には、保守ツール26は、発電プラント22に含まれる計測器が故障している可能性が高い場合、その故障している可能性が高い機器を、ディスプレイに表示させる。
保守ツール26は、入出力警報、軽故障警報及び重故障警報の3種類に分けて、ディスプレイに表示させる。ここで、入出力警報は、制御ユニット39への情報の入出力に関する故障に対する警報が含まれる。また、軽故障警報は、制御ユニット39におけるCPU片系の故障に対する警報が含まれる。また、重故障警報は、制御ユニット39におけるCPU両系の故障に対する警報が含まれる。
4つの制御ユニット39及び保守ツール26は、いずれも、発電プラントの運転管理支援装置10における制御部11の情報通信インターフェイス11cを介して、制御部11の演算処理部11aと情報通信可能に電気的に接続されており、発電プラント22に含まれる原子炉32、蒸気発生器34、加圧器36、蓄圧タンク38及びその他の様々な機器に関する様々なパラメータ等の情報、並びに、発電プラント22に含まれる温度計32a、水位計測器34a、圧力計36a、計測系38a及びその他の様々な計測器による計測情報を、情報通信インターフェイス11cを介して制御部11の演算処理部11aへ入力する。
発電プラントの運転管理支援装置10は、図1に示すように、発電プラント22を保安するプラント保安システム20で使用され、プラント保安システム20を含む他の機器と情報通信可能に接続されている。発電プラントの運転管理支援装置10は、本実施形態では、プラント保安システム20を含む他の機器と有線で接続されたコンピュータ端末であるが、本発明ではこれに限定されず、プラント保安システム20を含む他の機器と無線で接続された携帯可能なタブレット状の端末等であってもよい。
発電プラントの運転管理支援装置10は、本実施形態では、情報通信を行う有線で、プラント保安システム20の各部と情報通信が可能な形態である。この場合、発電プラントの運転管理支援装置10は、プラント保安システム20に含まれる機器、特に無線の電波に対して感度が高い計測器等に悪影響を及ぼすことはない。また、発電プラントの運転管理支援装置10及びプラント保安システム20は、無線での情報通信をしないため、無線から情報を漏洩することがなく、情報セキュリティへの懸念がない。また、発電プラントの運転管理支援装置10は、後述する制御部11の処理に必要な様々な情報を、後述する表示部13を通して後述する入力部12への入力を求めることなく、有線でプラント保安システム20から自動的に取得することができる。
なお、発電プラントの運転管理支援装置10は、有線でプラント保安システム20の各部と情報通信が可能な形態に限定されず、例えば、パスワードなどで鍵がかけられており、かつ、プラント保安システム20に含まれる機器に影響を及ぼさない波長域の無線で、プラント保安システム20の各部と情報通信が可能な形態であってもよい。この場合、発電プラントの運転管理支援装置10は、プラント保安システム20に含まれる機器に影響を及ぼさない波長域の無線が用いられるため、これらの機器に悪影響を及ぼすことが低減される。また、発電プラントの運転管理支援装置10及びプラント保安システム20は、無線に鍵がかけられているため、無線から情報を漏洩する可能性が低減され、情報セキュリティへの懸念が低減される。また、発電プラントの運転管理支援装置10は、制御部11の処理に必要な様々な情報を、表示部13を通して入力部12への入力を求めることなく、無線でプラント保安システム20から自動的に取得することができる。
また、発電プラントの運転管理支援装置10は、例えば、プラント保安システム20の各部と情報通信が不可能な形態、すなわちスタンドアローン処理をする形態であってもよい。この場合、発電プラントの運転管理支援装置10は、プラント保安システム20に含まれる機器、特に無線の電波に対して感度が高い計測器等に悪影響を及ぼすことはない。また、発電プラントの運転管理支援装置10及びプラント保安システム20は、無線での情報通信をしないため、無線から情報を漏洩することがなく、情報セキュリティへの懸念がない。なお、この場合、発電プラントの運転管理支援装置10は、制御部11の処理に必要な様々な情報を、表示部13を通して入力部12への入力を求め、この求めに応じて、オペレータが後述する保守ツール26のディスプレイに表示された情報等の様々な情報を入力部12へ入力することで、取得することができる。
発電プラントの運転管理支援装置10は、図1に示すように、発電プラント22の運転管理のための拠点の対策室に設けられた対策室端末40と情報通信可能に電気的に接続されている。なお、発電プラントの運転管理支援装置10は、対策室端末40と、有線又は無線で直接的に情報通信可能に接続されても良いし、所望の通信ネットワークを介して間接的に情報通信可能に接続されてもよい。
対策室端末40は、少なくとも発電プラントの運転管理支援装置10から送信される情報を受信して、文字、画像、動画等により表示する表示ユニットを備えていればよく、本実施形態では、対策室に駐在して発電プラント22の運転管理に従事する多くの関係者が同時に視認することが可能な大型のディスプレイが好適なものとして例示される。なお、対策室端末40は、他には、対策室に駐在している各関係者に与えられた複数の個人用の情報処理端末でもよく、この場合、個人用の情報処理端末としては、高機能携帯電話(いわゆる、スマートフォン)を含む携帯電話機、タブレット端末、ノート型またはデスクトップ型のPC(Personal Computer)、携帯情報端末であるPDA(Personal Digital Assistant)、及び、眼鏡型や時計型のウェアラブルデバイス(Wearable Device)等が例示される。
図2は、図1の発電プラントの運転管理支援装置10を示す機能ブロック図である。発電プラントの運転管理支援装置10は、図2に示すように、制御部11と、入力部12と、表示部13と、を備える。制御部11は、入力部12及び表示部13と情報通信可能に電気的に接続されている。
入力部12は、外部接続される機器からの種々のデータの入力を受け付けるインターフェイス、及びユーザからの入力を受け付けるインターフェイスであり、本実施形態では、発電プラントの運転管理支援装置10の外郭ケースに備え付けられたボタンや、マウス及びキーボード等が例示される。なお、入力部12は、これに限定されることなく、他には、表示装置等と一体化されたタッチパネルであってもよい。入力部12は、入力を受け付けた情報等を制御部11に伝達する。
表示部13は、制御部11から伝達される種々のデータを文字、画像、動画等により表示して出力するインターフェイスであり、本実施形態では、液晶表示装置が例示される。なお、表示部13はこれに限定されることなく、他には、入力装置等と一体化されたタッチパネルであってもよい。
制御部11は、図2に示すように、演算処理部11aと、記憶部11bと、情報通信インターフェイス11cと、を有する。制御部11は、本実施形態では、大容量のコンピュータが好適なものとして例示されるが、本発明ではこれに限定されず、後述する演算処理部11aの演算処理及び記憶部11bの記憶処理に耐え得る大容量を有するものであれば、他にも、高機能携帯電話(いわゆる、スマートフォン)を含む携帯電話機、タブレット端末、ノート型またはデスクトップ型のPC、携帯情報端末であるPDA、及び、眼鏡型や時計型のウェアラブルデバイス等を使用しても良い。
演算処理部11aは、コントローラ(controller)であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、発電プラントの運転管理支援装置10内部の記憶装置である記憶部11bに記憶されている各種プログラム(発電プラントの運転管理支援プログラムの一例に相当)がRAM(Random Access Memory)を作業領域として実行されることにより実現される。また、演算処理部11aは、例えば、コントローラであり、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現される。演算処理部11aは、入力部12からの種々のデータの入力を受け付けたり、表示部13に種々のデータの出力を行ったりする情報通信インターフェイス11cが接続されている。
演算処理部11aは、図2に示すように、記憶部11b及び情報通信インターフェイス11cと、互いに情報通信可能に電気的に接続されており、これらの各構成要素をそれぞれ制御する制御機能を果たす。すなわち、演算処理部11aは、記憶部11bとともに、制御機能を果たして、実施形態に係る発電プラントの運転管理支援装置10にその機能を実行させるものである。
演算処理部11aは、図2に示すように、運転パラメータ抽出部14と、情報送信指令部15と、計算間隔設定部16と、を有する。演算処理部11aに含まれる各部、すなわち、運転パラメータ抽出部14、情報送信指令部15及び計算間隔設定部16は、いずれも、演算処理部11aが発電プラントの運転管理支援プログラムを実行することにより、実現される機能部である。なお、運転パラメータ抽出部14、情報送信指令部15及び計算間隔設定部16の具体的な機能については、後述する。
演算処理部11aは、その他に、発電プラントの運転管理支援装置10が主として実行する発電プラントの運転管理支援処理に関する種々の電算処理を実行する。演算処理部11aは、プラント保安システム20及び発電プラント22から取得可能な計測データ及び処理データ等を、情報通信インターフェイス11cを介して取得し、記憶部11bに記憶されている画像作成処理情報を参照して、これらの計測データ及び処理データ等に関する表示画像を作成して、情報通信インターフェイス11cを介してこれらの作成した表示画像を表示部13等へ送信して出力させる。
演算処理部11aは、また、プラント保安システム20及び発電プラント22から取得可能な計測データ及び処理データ等に基づいて、記憶部11bに記憶されている算出処理情報を参照して、発電プラント22のLCOの内容に関連する各運転パラメータの各数値を算出し、記憶部11bに記憶されている画像作成処理情報を参照して、これらの算出した各数値に関する表示画像を作成して、情報通信インターフェイス11cを介してこれらの作成した表示画像を表示部13等へ送信して出力させる。
演算処理部11aは、また、算出した発電プラント22のLCOの内容に関連する各運転パラメータの各数値に基づいて、記憶部11bに記憶されている判断処理情報を参照して、発電プラント22の運転状態を判別し、記憶部11bに記憶されている画像作成処理情報を参照して、判別した運転状態に関する表示画像を作成して、情報通信インターフェイス11cを介してこれらの作成した表示画像を表示部13等へ送信して出力させる。
ここで、発電プラント22の運転状態は、大きく分けて2種類あり、LCOから逸脱していない状態である通常運転時と、LCOから逸脱した状態である事故時と、がある。また、発電プラント22の運転状態は、LCOから逸脱した状態である事故時が、大きく分けて2種類あり、LCOの逸脱についての許容待機除外時間(Allowed Outage Time、AOT)内であり、LCO逸脱に対する初動対応が要求される事故時の初動対応時と、LCOの逸脱についての許容待機除外時間外であり、LCO逸脱に対する事故対応をしながら発電プラント22の停止が要求される事故時と、がある。すなわち、発電プラント22の運転状態は、大きく分けて3種類あり、通常運転時と、事故時の初動対応時と、事故時と、がある。なお、許容待機除外時間は、緊急炉心冷却装置(Emergency Core Cooling System、ECCS)を動作可能な状態に発電プラント22を復旧するまでに許された制限時間のことを指す。
演算処理部11aは、また、判別した運転状態に基づいて、記憶部11bに記憶されている対応処理情報を参照して、発電プラント22に対して施す対応を導出し、記憶部11bに記憶されている画像作成処理情報を参照して、導出した対応に関する表示画像を作成して、情報通信インターフェイス11cを介してこれらの作成した表示画像を表示部13等へ送信して出力させる。
記憶部11bは、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。記憶部11bは、図2に示すように、運転パラメータ情報データベース17を記憶して保存する。
記憶部11bは、その他に、発電プラントの運転管理支援装置10が主として実行する発電プラントの運転管理支援処理に関する電算処理に必要な種々の情報を記録して保存する。記憶部11bは、発電プラントの運転管理支援処理に関する電算処理に必要な種々の情報として、例えば、発電プラント22の保安規定に関連する保安規定情報を記録して保存する。記憶部11bに記録されて保存されているこの保安規定情報は、保安規定のうち、原子力プラントにおける諸規則をまとめた保安規定に基づく運転条件の制限、すなわちLCOに関連する全ての条文番号と、これら全ての各条文番号に対応付けられた各条文、発電プラント22のLCOの内容、及び、発電プラント22のLCOの内容に関連する各運転パラメータとを含む。
記憶部11bは、発電プラントの運転管理支援処理に関する電算処理に必要な種々の情報として、他には、例えば、発電プラント22の保安規定に基づいて発電プラント22の運転状態を判断する運転状態判断情報を記録して保存する。記憶部11bに記録されて保存されているこの運転状態判断情報は、プラント保安システム20及び発電プラント22から取得可能な計測データ及び処理データ等に基づいて、発電プラント22のLCOの内容に関連する各運転パラメータの各数値を算出するために必要な算出処理情報と、取得可能な計測データ及び処理データ等の各数値、並びに、算出された発電プラント22のLCOの内容に関連する各運転パラメータの各数値に基づいて運転状態を判断するために必要な許容上限値、許容下限値並びに不等式等のロジックに基づく電算処理等に使用される判断処理情報と、判断した運転状態に基づいて発電プラント22に対して施す対応を導出するために必要な判断内容及び対応内容の対照情報等を含む対応処理情報と、を含む。
ここで、プラント保安システム20及び発電プラント22から取得可能な計測データ及び処理データ等には、発電プラント22の各運転パラメータの情報として、制御装置24が発電プラント22から入力を受け付ける情報と、制御装置24が演算処理して発電プラント22に伝達することで発電プラント22において制御する対象となっている制御対象の情報と、これらの情報の関係を結びつける制御装置24における演算処理に関する情報等と、が含まれている。
また、記憶部11bは、自動的に発電プラント22の状態を記録する時間間隔に関する定期確認時間の情報を格納している。また、記憶部11bは、演算処理部11aが作成して表示部13に表示させる画像に用いられる画像の要素(種々のフォントの文字情報、アイコン等の基礎画像情報、グラフ作成処理情報、レイアウト情報、等)の情報を記憶している。
記憶部11bは、演算処理部11aによる処理によって取得または生成された種々の情報を、自動的に記憶して保存する。記憶部11bは、演算処理部11aに含まれる各部、すなわち、運転パラメータ抽出部14、情報送信指令部15及び計算間隔設定部16による処理によって取得または生成された種々の情報についても、自動的に記憶して保存する。
情報通信インターフェイス11cは、演算処理部11aと、入力部12、表示部13、プラント保安システム20、発電プラント22及び対策室端末40とを有線または無線で互いに情報通信可能に接続している。なお、情報通信インターフェイス11cは、演算処理部11aと、対策室端末40とを所望の通信ネットワークを介して情報通信可能に接続してもよい。
実施形態に係る発電プラントの運転管理支援装置10は、上記したように、演算処理部11aが、記憶部11bに記憶された種々の情報を参酌して作成して表示させた様々な表示画像の表示を通じて、発電プラント22の運転員及び保守官等の多数の関係者に対して、発電プラント22の運転管理を支援するものである。
情報通信インターフェイス11cは、プラント保安システム20及び発電プラント22から取得可能な計測データ及び処理データ等を、それぞれプラント保安システム20及び発電プラント22から受信して、演算処理部11aに送信する。
情報通信インターフェイス11cは、入力部12で入力を受け付けた種々のデータを、入力部12から受信して、演算処理部11aに送信する。情報通信インターフェイス11cは、演算処理部11aで生成される種々のデータを、演算処理部11aから受信して、表示部13及び対策室端末40に送信する。
図3は、図2の運転パラメータ情報データベース17を示す図である。運転パラメータ情報データベース17は、図3に示すように、運転パラメータ17aと、発電プラント22の3種類の運転状態である通常運転時、事故時の初動対応時及び事故時における各必要度17b,17c,17dとを1対1で対応付けて登録されたデータ集である。ここで、必要度は、発電プラント22の運転管理の判断の必要度のことであり、発電プラント22の運転管理支援においての参照される回数、及び、LCOとの関連度等に基づいて定められるパラメータである。必要度は、参照回数及びLCO関連度等に基づいて演算処理部11aによって算出されて登録されても良いし、オペレータによって人為的に入力部12から入力されて登録されても良い。必要度は、本実施形態では、1から10までの10段階の整数で表現され、数値が高ければ高いほど必要性が高まるものと判断されるパラメータであるが、数値表現方法はこれに限定されず、適宜変更可能である。
図3に示す運転パラメータ情報データベース17に例示されている運転パラメータ17aの1つである原子炉熱出力(Reactor Thermal Power、RTP)は、原子炉32で発生する熱量のことであり、通常運転時には、電気に変換されるエネルギー、及び、温排水に付与される熱量と関連性のあるパラメータである。このため、原子炉熱出力は、通常運転時には参照される回数が多いため必要度17bが10と高く、事故時の初動対応時及び事故時にはほとんど参照されなくなるため必要度17c,17dがいずれも1と低く登録されている。
図3に示す運転パラメータ情報データベース17に例示されている運転パラメータ17aの1つである反応度停止余裕(Shutdown Margin、SDM)は、原子炉32で全制御棒を挿入したときに添加される負の反応度のことであり、原子炉32の停止能力の大きさを示す重要な尺度として使用されるパラメータである。反応度停止余裕は、高ければ高いほど安全性が高いことを示すパラメータである。このため、反応度停止余裕は、通常運転時には安全度の指標として参照される回数が多いため必要度17bが9と高く、事故時の初動対応時及び事故時にはほとんど参照されなくなるため必要度17c,17dがいずれも1と低く登録されている。
図3に示す運転パラメータ情報データベース17に例示されている運転パラメータ17aの1つである制御棒位置情報(Control Rod Position Information)は、原子炉32における制御棒の位置を表すパラメータであり、反応度停止余裕の算出に使用されるパラメータである。このため、制御棒位置情報は、通常運転時には安全度の指標として参照される回数が多いため必要度17bが8と高く、事故時の初動対応時及び事故時にはほとんど参照されなくなるため必要度17c,17dがいずれも1と低く登録されている。
図3に示す運転パラメータ情報データベース17に例示されている運転パラメータ17aの1つであるFQは、核的熱流束熱水路係数(Nuclear Heat Flux Hot Channel Factor)のことであり、原子炉32の炉心出力の空間分布、及び、炉心内の原子炉冷却材の流れの不均一等を考慮して、最も温度の高い燃料冷却材流路(ホットチャンネル)の分を補正する安全係数を表すパラメータである。このため、FQは、通常運転時には安全度の指標として参照される回数が多いため必要度17bが6と比較的高く、事故時の初動対応時及び事故時にはほとんど参照されなくなるため必要度17c,17dがいずれも1と低く登録されている。
図3に示す運転パラメータ情報データベース17に例示されている運転パラメータ17aの1つであるFΔHNは、核的エンタルピー上昇熱水路係数(Nuclear Enthalpy Rise Hot Channel Factor)のことであり、核的熱流束熱水路係数と同様に、原子炉32の炉心出力の空間分布、及び、炉心内の原子炉冷却材の流れの不均一等を考慮して、最も温度の高い燃料冷却材流路(ホットチャンネル)の分を補正する安全係数を表すパラメータである。このため、FΔHNは、通常運転時には安全度の指標として参照される回数が多いため必要度17bが6と比較的高く、事故時の初動対応時及び事故時にはほとんど参照されなくなるため必要度17c,17dがいずれも1と低く登録されている。
図3に示す運転パラメータ情報データベース17に例示されている運転パラメータ17aの1つであるDNBRは、限界熱流束比(Departure from Nucleate Boiling Ratio)のことであり、伝熱効率のよい核沸騰から、加熱面が蒸気膜で覆われた膜沸騰への突然の遷移が起こる際の熱流束、すなわち限界熱流束(Departure from Nucleate Boiling)に関する比の値で表されるパラメータである。このため、DNBRは、通常運転時には安全度の指標として参照される回数が多いため必要度17bが6と比較的高く、事故時の初動対応時及び事故時にはほとんど参照されなくなるため必要度17c,17dがいずれも1と低く登録されている。
図3に示す運転パラメータ情報データベース17に例示されている運転パラメータ17aの1つである最小停止ほう素濃度(Minimum Boron Concentration for Shutdown)は、原子炉32を停止するために必要な最小のほう素濃度のことであり、発電プラント22の事故時の初動対応時に原子炉32内の核反応を停止させるために10Bを含む五ほう酸ナトリウム溶液を注入する際に参照されるパラメータである。このため、最小停止ほう素濃度は、事故時の初動対応時には参照されることのある重要なパラメータであるため必要度17cが10と高く、通常運転時及び事故時にはほとんど参照されなくなるため必要度17b,17dがそれぞれ2,4と低く登録されている。
図3に示す運転パラメータ情報データベース17に例示されている運転パラメータ17aの1つである冷却可能温度(Cooling Limit)は、原子炉32を冷却する際に再臨界現象を発生させずに冷却できる限界温度のことであり、発電プラント22の事故時の初動対応時に特に参照され、発電プラント22の事故時にも参照される可能性のあるパラメータである。このため、冷却可能温度は、事故時の初動対応時には参照されることのある重要なパラメータであるため必要度17cが10と高く、事故時には参照される可能性があるため必要度17dが6と比較的高く、通常運転時にはほとんど参照されなくなるため必要度17bが2と低く登録されている。
図3に示す運転パラメータ情報データベース17に例示されている運転パラメータ17aの1つである炉心モニタリング情報(Core Monitoring Information)は、炉心圧、炉心の平均温度、ロッドクラスタ制御(Rod Cluster Control、RCC)、ほう素濃度(Concentration of Boron、CB)、炉心に蓄積された放射性物質の密度ρを示している。このため、炉心モニタリング情報は、原子炉32をモニタリングする可能性が高くなる事故時には参照されることのある重要なパラメータであるため必要度17dが10と高く、事故時の初動対応時には参照される可能性があるため必要度17cが6と比較的高く、通常運転時にはほとんど参照されなくなるため必要度17bが1と低く登録されている。
図3に示す運転パラメータ情報データベース17に例示されている運転パラメータ17aの1つである炉心崩壊熱(Core Decay Heat)は、原子炉32の炉心に蓄積される崩壊熱のことであり、原子炉32の炉心において燃料等の放射性物質の崩壊によって生ずる熱の量を表すパラメータである。原子炉32の停止直後では、核***によって生成された生成物のうちの放射性の核種が出す崩壊熱が、原子炉32の原子炉熱出力の5〜6%程度に至ることがあるため、蓄圧タンク38等の冷却機能が停止するような事故が原子炉32に発生した場合には、崩壊熱除去系を作動させる等してこの崩壊熱を除去しないと原子炉32の炉心の温度が上昇し、燃料が溶ける事態が生じるおそれがある。このため、炉心崩壊熱は、崩壊熱の除去が求められる可能性が高い事故時の初動対応時及び事故時には参照されることのある重要なパラメータであるため必要度17c,17dがともに9と高く、通常運転時にはほとんど参照されなくなるため必要度17bが1と低く登録されている。
図3に示す運転パラメータ情報データベース17に例示されている運転パラメータ17aの1つであるSFP崩壊熱(Decay Heat from Spent Fuel Pools)は、原子炉32のSFP(Spent Fuel Pools、使用済燃料プール)に蓄積される崩壊熱のことであり、使用済燃料プールにおける燃料等の放射性物質の崩壊によって生ずる熱の量を表すパラメータである。このため、SFP崩壊熱は、崩壊熱の除去が求められる可能性がより高い事故時には参照されることのあるパラメータであるため必要度17dが7と高く、崩壊熱の除去が求められる可能性が比較的高い事故時の初動対応時には参照される可能性があるため必要度17cが6と比較的高く、通常運転時にはほとんど参照されなくなるため必要度17bが1と低く登録されている。
図3に示す運転パラメータ情報データベース17に例示されている運転パラメータ17aの1つである炉心の反応度(Core Reactivity)は、原子炉32が臨界状態からずれている程度を示す無次元の量であり、例えば、中性子の過剰増倍率を中性子の実効増倍率で割った値で表され、原子炉32の臨界状態が0で表され、原子炉32の臨界超過状態が正の値で表され、原子炉32の臨界未満状態が負の値で表されるパラメータである。ここで、臨界状態とは、原子炉32内において、核***で発生した中性子が、次の核***に寄与する分と体系から逃げて行く分との釣合いが継続的にとれている状態のことである。このため、炉心の反応度は、原子炉32が臨界状態または臨界超過状態である可能性が高くなる事故時には参照されることのある重要なパラメータであるため必要度17dが6と比較的高く、事故時の初動対応時には参照される可能性があるため必要度17cが5と高くもなく低くもない程度に、通常運転時にはほとんど参照されなくなるため必要度17bが1と低く登録されている。
なお、図3に示す運転パラメータ情報データベース17では、上記した運転パラメータ17aが例示されているが、例示されていないその他の運転パラメータ17aをさらに含んでいることが好ましい。その他の運転パラメータ17aをさらに含む場合、これらの運転パラメータ17aは、上記した運転パラメータ17aと同様に、各必要度17b,17c,17dと1対1で対応付けて登録される。また、各必要度17b,17c,17dは任意に定められ、本明細書及び図3に示されている値は一例である。
演算処理部11aが有する運転パラメータ抽出部14は、発電プラント22の運転管理の判断の必要度に基づいて、発電プラント22の運転パラメータを抽出する。運転パラメータ抽出部14は、具体的には、発電プラント22の運転管理の判断の必要度が高い順に、所定の数の発電プラント22の運転パラメータを抽出することが好ましい。また、運転パラメータ抽出部14は、発電プラント22の運転状況に応じて、異なる発電プラント22の運転パラメータを抽出することが好ましい。
運転パラメータ抽出部14は、より詳細には、記憶部11bに記憶及び保存された運転パラメータ情報データベース17を参照して、発電プラント22の3種類の運転状態である通常運転時、事故時の初動対応時及び事故時のそれぞれについて、各必要度17b,17c,17dが高い順に、3個以上6個以下程度の発電プラント22の運転パラメータ17aを抽出する。
運転パラメータ抽出部14は、例えば、図3に示す運転パラメータ情報データベース17を参照する場合、発電プラント22の通常運転時について、発電プラント22の運転パラメータ17aとして、原子炉熱出力、反応度停止余裕及び制御棒位置情報を抽出する。また、運転パラメータ抽出部14は、例えば、発電プラント22の事故時の初動対応時について、発電プラント22の運転パラメータ17aとして、最小停止ほう素濃度、冷却可能温度及び崩壊熱(=炉心崩壊熱)を抽出する。また、運転パラメータ抽出部14は、例えば、発電プラント22の事故時について、発電プラント22の運転パラメータ17aとして、炉心の反応度、炉心に蓄積される放射性物質及び崩壊熱(=炉心崩壊熱及びSFP崩壊熱)を抽出する。なお、運転パラメータ抽出部14は、発電プラント22の通常運転時には、事故時の初動対応時及び事故時と比較して、発電プラントの運転管理支援装置10にかかる容量等の負荷が比較的抑えられているため、抽出する運転パラメータ17aの数を増やしてもよく、この場合には、原子炉熱出力、反応度停止余裕及び制御棒位置情報に加えて、FQ、FΔHN及びDNBRを追加で抽出してもよい。
演算処理部11aが有する情報送信指令部15は、運転パラメータ抽出部14が抽出した発電プラント22の運転パラメータ17aの情報を送信する。情報送信指令部15は、具体的には、まず、運転パラメータ抽出部14が抽出した発電プラント22の運転パラメータ17aの情報に基づいて、記憶部11bに記憶されている画像作成処理情報を参照して、これらの発電プラント22の運転パラメータ17aに関する表示画像を作成する。情報送信指令部15は、次に、情報通信インターフェイス11cを介してこれらの作成した表示画像(例えば、図4、図5及び図6に示す第1表示画面53、第2表示画面54及び第3表示画面55)を対策室端末40へ送信して、対策室端末40の表示ユニットに表示させる。なお、図4、図5及び図6に示す第1表示画面53、第2表示画面54及び第3表示画面55の詳細は、後述する。
ここで、発電プラントの運転管理支援装置10から対策室端末40への情報通信経路を含む発電プラントの運転管理支援装置10の周囲で使用される情報通信系は、情報通信に際し、プロセス制御システム(Process Control Computer System、PCCS)の信号(以下、PCCS信号と称する)と、安全パラメータ表示システム(Safety Parameter Display System、SPDS)の信号(以下、SPDS信号と称する)と、を併用することが好ましい。
プロセス制御システムは、制御用計算機システムであり、発電プラント22の運転パラメータ17aを制御及び監視するために使用される計算機及び周辺機器から構成されるシステムである。PCCS信号は、このようなプロセス制御システムにおいて情報通信に使用される信号である。安全パラメータ表示システムは、発電プラント22の常設重大事故緩和設備の1種であり、バックアップ伝送ラインシステムである。安全パラメータ表示システムは、例えば、所定のデータ伝送装置及び無線通信用アンテナ等で構成される。SPDS信号は、このような安全パラメータ表示システムにおいて情報通信に使用される信号である。SPDS信号は、発電プラント22の事故時等にPCCS信号が途絶えた場合に、好適に使用することができる。
発電プラントの運転管理支援装置10の周囲でこのような情報通信系が使用されている場合、情報送信指令部15は、発電プラント22の通常運転時及び発電プラント22の事故時の初動対応時には、運転パラメータ抽出部14が抽出した発電プラント22の運転パラメータ17aの情報をPCCS信号を使用して送信し、発電プラント22の事故時には、運転パラメータ抽出部14が抽出した発電プラント22の運転パラメータ17aの情報をSPDS信号を使用して送信することが好ましい。
演算処理部11aが有する計算間隔設定部16は、運転パラメータ抽出部14が抽出した発電プラント22の運転パラメータ17aの情報の計算間隔を設定する。計算間隔設定部16は、例えば、演算処理部11aにより一定時間ごとに計測及び計算等がされて時間変化のグラフとして表示されることになる運転パラメータ17aについては、運転パラメータ17aを計算する時間間隔を設定する。また、計算間隔設定部16は、演算処理部11aにより一定空間ごとに計測及び計算等がされて空間分布のグラフとして表示されることになる運転パラメータ17aについては、運転パラメータ17aを計算する空間間隔を設定する。
演算処理部11aは、運転パラメータ17aを計算する際に、運転パラメータ17aの計算方法等に応じて、CPUやMPU等が作業領域であるRAMの容量を使用する。このため、計算間隔設定部16は、運転パラメータ17aの情報の計算間隔を制御することで、すなわち、時間間隔または空間間隔等を制御することで、演算処理部11aによる運転パラメータ17aの計算に使用される容量を制御することができる。また、計算間隔設定部16は、運転パラメータ17aの情報の計算間隔を広げることで、すなわち、時間間隔または空間間隔等を広げることで、演算処理部11aによる運転パラメータ17aの計算に使用される容量を低減することができる。なお、演算処理部11aによる運転パラメータ17aの計算に使用する容量は、運転パラメータ17aの情報の送信に使用される容量の一部である。
発電プラントの運転管理支援装置10から対策室端末40への情報通信経路は、運転パラメータ17aの情報の送信に際し、送信する情報の容量に基づく容量を使用する。このため、計算間隔設定部16は、運転パラメータ17aの情報の計算間隔を制御することで、すなわち、時間間隔または空間間隔等を制御することで、送信に供される運転パラメータ17aの情報の容量を制御して、発電プラントの運転管理支援装置10から対策室端末40への情報通信経路において使用される容量を制御することができる。また、計算間隔設定部16は、運転パラメータ17aの情報の計算間隔を広げることで、すなわち、時間間隔または空間間隔等を広げることで、送信に供される運転パラメータ17aの情報の容量を低減して、発電プラントの運転管理支援装置10から対策室端末40への情報通信経路において使用される容量を低減することができる。なお、発電プラントの運転管理支援装置10から対策室端末40への情報通信経路において使用される容量は、運転パラメータ17aの情報の送信に使用される容量の一部である。
計算間隔設定部16は、例えば、運転パラメータ17aの情報の計算の時間間隔を12時間に設定変更することで、運転パラメータ17aの計算に使用される容量及び運転パラメータ17aの情報の送信に際して情報通信経路において使用される容量を好適に低減することができる。
図4は、図1の発電プラントの運転管理支援装置10が対策室端末40の表示ユニットに表示させる画面の一例である第1表示画面53を示す図である。図5は、図1の発電プラントの運転管理支援装置10が対策室端末40の表示ユニットに表示させる画面の一例である第2表示画面54を示す図である。図6は、図1の発電プラントの運転管理支援装置10が対策室端末40の表示ユニットに表示させる画面の一例である第3表示画面55を示す図である。以下において、図4、図5及び図6を用いて、発電プラントの運転管理支援装置10が対策室端末40の表示ユニットに表示させる画面の例について説明する。
第1表示画面53、第2表示画面54及び第3表示画面55は、いずれも、図4、図5及び図6に示すように、フレーム構造を有する表示画面50の中に埋め込まれて、後述するように互いに切り替え可能に表示される。なお、画面の表示形態については、本発明はこれに限定されず、適宜変更することができる。また、図4、図5及び図6に示されている縮尺及び値は典型例である。
フレーム構造を有する表示画面50は、図4、図5及び図6に示すように、上部に設けられたヘッダ画面部51と、ヘッダ画面部51の下部にヘッダ画面部51を除く部分に渡って設けられた主要画面部52と、を有する。
ヘッダ画面部51は、第1表示画面53、第2表示画面54及び第3表示画面55のいずれが表示される場合にも共通であり、図4、図5及び図6に示すように、ヘッダ画面部51の左側から順に、発電プラント名称表示51aと、モニタリング状態表示51bと、時刻表示51cと、を有する。発電プラント名称表示51aは、発電プラント22の名称を表示する。モニタリング状態表示51bは、発電プラント名称表示51aに表示されている名称の発電プラント22をモニタリングしている状態であるか否かを表示しており、モニタリングしている状態である場合には、モニタリング中と表示する。モニタリング状態表示51bは、モニタリングしていない状態である場合には、例えば、非モニタリング中等と表示する。時刻表示51cは、現在の時刻を表示する。
主要画面部52は、第1表示画面53、第2表示画面54及び第3表示画面55がそれぞれ埋め込まれる部分であり、図4、図5及び図6に示すように、上部の左側から順に、選択を受け付けることで第1表示画面53を表示させる第1タブ52aと、選択を受け付けることで第2表示画面54を表示させる第2タブ52bと、選択を受け付けることで第3表示画面55を表示させる第3タブ52cと、を有する。このため、主要画面部52において第1表示画面53、第2表示画面54及び第3表示画面55のいずれが埋め込まれて表示されている場合でも、第1タブ52aを選択することで主要画面部52に埋め込まれる画面を第1表示画面53に切り替えることができ、第2タブ52bを選択することで主要画面部52に埋め込まれる画面を第2表示画面54に切り替えることができ、第3タブ52cを選択することで主要画面部52に埋め込まれる画面を第3表示画面55に切り替えることができる。
第1タブ52aは、発電プラント22の通常運転時に確認したい事項である主要LCOの文字列を表示しており、これが選択されることで、発電プラント22の通常運転時について運転パラメータ抽出部14が抽出した発電プラント22の運転パラメータ17aを表示する第1表示画面53に切り替わる。
第1表示画面53は、図4に示すように、発電プラント22の通常運転時について運転パラメータ抽出部14が抽出した発電プラント22の運転パラメータ17aである原子炉熱出力、反応度停止余裕、制御棒位置情報、FQ、FΔHN及びDNBRを、各表示部位53a,53b,53c,53d,53e,53fに配列して表示している。第1表示画面53は、これらの発電プラント22の運転パラメータ17aのうち、発電プラント22の運転管理の判断の必要度が高い原子炉熱出力、反応度停止余裕及び制御棒位置情報を、画面の上段の各表示部位53a,53b,53cに配列して表示している。
第1表示画面53は、発電プラント22の通常運転時について運転パラメータ抽出部14が抽出した発電プラント22の運転パラメータ17aのうち、原子炉熱出力、反応度停止余裕、FQ、FΔHN及びDNBRを、演算処理部11aにより一定時間ごとに計測及び計算等をして得た時間変化のグラフとして表示する。第1表示画面53は、これらの発電プラント22の運転パラメータ17aのうち、制御棒位置情報を、制御棒ごとに計測及び計算等をして得た空間分布のグラフとして表示する。第1表示画面53は、これらの発電プラント22の運転パラメータ17aのうち、反応度停止余裕、FQ、FΔHN及びDNBRについて、時間変化のグラフに重ねて、これらの運転パラメータ17aのLCO規定値を表示し、加えて、いずれの運転パラメータ17aについてもLCO判定が合格状態にあることを表示している。
第1表示画面53では、発電プラント22の通常運転時について運転パラメータ抽出部14が抽出した発電プラント22の運転パラメータ17aのうち、原子炉熱出力の時間変化のグラフが、途中で途切れている。また、第1表示画面53では、これらの運転パラメータ17aのうち、反応度停止余裕、FQ、FΔHN及びDNBRの時間変化のグラフが、途中で途切れている。途中で途切れているグラフは、過去から現在までのモニタリング値を示している。また、離散的にプロットされている点は現在からの予測値であり、この時間間隔は、計算間隔設定部16によるこれらの運転パラメータ17aの情報の計算間隔の設定の変更に基づいて、変更される。
第2タブ52bは、発電プラント22の事故時の初動対応時に確認したい事項であるプラント停止用パラメータの文字列を表示しており、これが選択されることで、発電プラント22の事故時の初動対応時について運転パラメータ抽出部14が抽出した発電プラント22の運転パラメータ17aを表示する第2表示画面54に切り替わる。
第2表示画面54は、図5に示すように、発電プラント22の事故時の初動対応時について運転パラメータ抽出部14が抽出した発電プラント22の運転パラメータ17aである最小停止ほう素濃度、冷却可能温度、炉心崩壊熱及び炉心の反応度を、各表示部位54a,54b,54c,54dに配列して表示している。また、第2表示画面54は、炉心崩壊熱を、表示部位54cにおいて数値で表示することに加えて、表示部位54eにおいてグラフでも表示している。第2表示画面54は、対策室に駐在して発電プラント22の運転管理に従事する多くの関係者が初動対応について明確に判断しやすいように、最小停止ほう素濃度、冷却可能温度及び炉心崩壊熱について、状況ごとに場合分けして数値で表示する。第2表示画面54は、対策室に駐在して発電プラント22の運転管理に従事する多くの関係者が発電プラント22の原子炉32の状況の時間変化を一瞥して明確に理解しやすいように、炉心の反応度についてグラフで表示するとともに、臨界についての情報をこのグラフに重ねて表示する。
第3タブ52cは、発電プラント22の事故時に確認したい事項である事故時モニタリングの文字列を表示しており、これが選択されることで、発電プラント22の事故時について運転パラメータ抽出部14が抽出した発電プラント22の運転パラメータ17aを表示する第3表示画面55に切り替わる。
第3表示画面55は、図5に示すように、発電プラント22の事故時について運転パラメータ抽出部14が抽出した発電プラント22の運転パラメータ17aである炉心情報、炉心崩壊熱及びSFP崩壊熱を、各表示部位55a,55b,55cに配列して表示している。なお、第3表示画面55は、事故時の対応後の画面であるため、表示部位55aに炉心モニタリング情報を表示しているが、事故時の対応前であれば、必要度の高い情報である、第2表示画面54の表示部位54dに表示された炉心の反応度と同様の情報が表示されることが好ましい。表示部位55aに表示された炉心モニタリング情報は、炉心圧[単位;MPa]、炉心の平均温度[単位;℃]、ロッドクラスタ制御(RCC)[単位;Step]、ほう素濃度(CB)[単位;ppm]、炉心に蓄積された放射性物質の密度ρ[単位;ppm]を示している。表示部位55b,55cにそれぞれ示された炉心崩壊熱及びSFP崩壊熱の各情報のグラフには、対策室に駐在して発電プラント22の運転管理に従事する多くの関係者が炉心の安全性を明確に判断しやすいように、安全解析条件を重ねて示している。
発電プラントの運転管理支援装置10は、以上のように、発電プラント22の運転管理の判断の必要度に基づいて抽出した発電プラント22の運転パラメータ17aの情報を選別して送信するので、発電プラント22の運転管理に関する情報を必要な分だけ適切に共有することができる。これにより、発電プラントの運転管理支援装置10は、適切な分量の発電プラント22の運転管理に関する情報に基づいて、対策等に関する正確な意思決定を速やかに実行することを可能にする。
また、発電プラントの運転管理支援装置10は、運転パラメータ抽出部14が、発電プラント22の運転管理の判断の必要度17b,17c,17dが高い順に所定の数の発電プラント22の運転パラメータ17aを抽出する。このため、発電プラントの運転管理支援装置10は、共有し、意思決定に参酌する発電プラント22の運転管理に関する情報を、適切に制限することができる。
また、発電プラントの運転管理支援装置10は、運転パラメータ抽出部14が、発電プラント22の運転状況に応じて、異なる発電プラント22の運転パラメータ17aを抽出する。このため、発電プラントの運転管理支援装置10は、発電プラント22の運転状況に応じて必要な情報を選別して共有することができ、発電プラント22の運転状況に応じて選別した情報に基づいて速やかに正確な意思決定を実行することを可能にする。
また、発電プラントの運転管理支援装置10は、運転パラメータ抽出部14が、発電プラント22の通常運転時について、発電プラント22の運転パラメータ17aとして、原子炉熱出力、反応度停止余裕及び制御棒位置情報を抽出し、発電プラント22の事故時の初動対応時について、発電プラント22の運転パラメータ17aとして、最小停止ほう素濃度、冷却可能温度及び崩壊熱を抽出し、発電プラント22の事故時について、発電プラント22の運転パラメータ17aとして、炉心モニタリング情報、炉心崩壊熱及びSFP崩壊熱を抽出する。このため、発電プラントの運転管理支援装置10は、発電プラント22の通常運転時には安全を維持するために示すことが好ましい情報を共有して意思決定に参酌することができ、発電プラント22の事故時の初動対応時には、初動対応時に発電プラント22を止めるために必要な情報を共有して意思決定に参酌することができ、発電プラント22の事故時には、事故時に安全を維持するために示すことが必要な情報を共有して意思決定に参酌することができる。
また、発電プラントの運転管理支援装置10は、情報送信指令部15が、発電プラント22の通常運転時及び発電プラント22の事故時の初動対応時には、運転パラメータ抽出部14が抽出した発電プラント22の運転パラメータ17aの情報をプロセス制御システムの信号を使用して送信し、発電プラント22の事故時には、運転パラメータ抽出部14が抽出した発電プラント22の運転パラメータ17aの情報を安全パラメータ表示システムの信号を使用して送信する。このため、発電プラントの運転管理支援装置10は、発電プラント22の通常運転時及び事故時の初動対応時に全開で使用可能なプロセス制御システムの信号を好適に使用しつつ、発電プラント22の事故時にプロセス制御システムの信号の一部が使用できなくなることに対応して、発電プラント22の事故時でも全開で使用可能な安全パラメータ表示システムの信号を好適に使用することで、発電プラント22の運転管理に関する情報を継続して安定的に送信することができる。
また、発電プラントの運転管理支援装置10は、運転パラメータ抽出部14が抽出した発電プラント22の運転パラメータ17aの情報の計算間隔を設定することで、送信に使用される容量を制御する計算間隔設定部16をさらに有する。このため、発電プラントの運転管理支援装置10は、特に送信用の運転パラメータ17aの情報を算出するために大きな容量を使用する場合、送信用の運転パラメータ17aの情報の算出に使用する容量を制限することで、本来の発電プラントの運転管理支援装置10の機能である運転管理支援機能に及ぼす影響を制限しつつ、正確な意思決定に影響が出ない程度に、発電プラント22の運転管理に関する情報を必要な分だけ適切に共有することを可能にする。
また、発電プラントの運転管理支援装置10は、計算間隔設定部16が、運転パラメータ抽出部14が抽出した発電プラント22の運転パラメータ17aの情報の計算間隔を広げることで、送信に使用される容量を低減する。このため、発電プラントの運転管理支援装置10は、発電プラント22の運転パラメータ17aの情報のデータ点の時間間隔を広げることで、本来の発電プラントの運転管理支援装置10の機能である運転管理支援機能に及ぼす影響を低減しつつ、正確な意思決定に影響が出ない程度に、発電プラント22の運転管理に関する情報を必要な分だけ適切に共有することを可能にする。