以下、実施形態による電磁サスペンションを、鉄道車両に搭載した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ説明する。
図1ないし図4は、第1の実施形態を示している。図1において、鉄道車両1(以下、車両1という)は、例えば乗客、乗務員等の乗員が乗車する車体2と、車体2の下側に設けられた前側の台車3Aおよび後側の台車3Bとを備えている。なお、図1および図2では、図面が複雑になることを避けるため、1両の車両1、即ち、1両編成の列車を示している。しかし、一般的には、複数の車両1を連結した列車、即ち、複数の車両1により編成された列車で運行される。
台車3A,3Bには、車軸5,5の長さ方向の両端側(即ち、車体2の幅方向の両端側)にそれぞれ車輪4,4を設けてなる輪軸6,6が、前後方向に離間してそれぞれ2個ずつ取付けられている。これにより、各台車3A,3Bには、それぞれ4個の車輪4,4が設けられている。車両1は、各車輪4,4が左右のレールR(図1に一方のみ図示)上を回転することにより、レールRに沿って走行する。
車両1の車体2と各台車3A,3Bとの間には、それぞれの台車3A,3B上で車体2を弾性的に支持する複数の空気ばね7A−7Dと、各空気ばね7A−7Dと並列関係をなすように配置された複数のアクチュエータ11A−11Dとが設けられている。空気ばね7A−7Dは、「枕ばね」または「懸架ばね」とも呼ばれ、「ばね上質量」となる車体2等と「ばね間質量」となる台車3A,3B等との間に設けられる「二次ばね」に対応する。なお、「一次ばね」は、台車3A,3Bに設けられる軸ばね、即ち、「ばね下質量」となる車輪4,4(輪軸6,6)と「ばね間質量」となる台車3A,3Bの台車枠との間に設けられる軸ばねに対応する。空気ばね7A−7Dは、各台車3A,3Bの左右両側にそれぞれ1個ずつ設けられている。
アクチュエータ11A−11Dは、車両1の車体2と台車3A,3Bとの間に設けられた車体台車間アクチュエータであり、上下方向に加振をする。この場合、アクチュエータ11A−11Dは、リニアアクチュエータ、例えば、三相リニアモータ等の電動リニアモータ(電磁アクチュエータ)により構成されている。アクチュエータ11A−11Dは、車体2と台車3A,3Bとの間で上下方向の振動を緩衝(減衰)する電動サスペンション(電磁サスペンション)を構成している。アクチュエータ11A−11Dは、上下方向に調整可能な力を発生する。アクチュエータ11A−11Dは、1つの台車3A,3B毎に左右方向に離間して2つ設けられている。
アクチュエータ11A−11Dは、車両1に対して上下方向に取付けられている。アクチュエータ11A−11Dは、前側の台車3Aおよび後側の台車3Bに対する車体2の振動を、台車3A,3B毎に左右方向でそれぞれ個別に緩衝して低減させるように、制御装置14から個別に出力される指令信号に従って力を発生する。この場合、アクチュエータ11A−11Dは、インバータ12A−12Dを介して供給される電力によって力を発生する。インバータ12A−12Dは、アクチュエータ11A−11Dの電源回路である。
インバータ12A−12Dは、電力線側が図示しない車両電力源(例えば、架線、発電機等からの電力供給源)に接続されると共に、動力線側がアクチュエータ11A−11Dに接続されている。インバータ12A−12Dは、例えばトランジスタ、電界効果トランジスタ(FET)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等からなる複数のスイッチング素子を含んで構成され、各スイッチング素子は、制御装置14からの指令信号に基づいて制御される。
インバータ12A−12Dは、制御装置14からの指令信号と車両電力源からの電力とに基づいて、アクチュエータ11A−11Dを駆動する。即ち、アクチュエータ11A−11Dの力行時は、車両電力源からインバータ12A−12Dを経由して、アクチュエータ11A−11Dに電力が供給される。このとき、インバータ12A−12Dは、車両電力源から電力線を介して供給される電力から三相(u相、v相、w相)の交流電力を生成し、動力線を介して各アクチュエータ11A−11Dの各コイル25A,25B,25C(図3参照)に電力を供給する。
図2に示すように、車体2には、前後方向と左右方向に離間した4隅側の位置に、それぞれの位置で車体2の上下方向の加速度をばね上加速度として検出する加速度センサ13A−13Dが設けられている。加速度センサ13A−13Dは、車両1の異なる複数個所にそれぞれ搭載されて車両1の挙動(より具体的には、車体2の振動状態)を検出するセンサ(挙動センサ)である。加速度センサ13A−13Dは、例えば圧電式、サーボ式、ピエゾ抵抗式等のアナログ式加速度センサ等、各種の加速度センサを用いることができる。各加速度センサ13A−13Dは、制御装置14に接続されている。各加速度センサ13A−13Dは、それぞれの位置で検出した車体2の加速度の検出信号を制御装置14に互いに異なる信号(車両挙動である車体2の振動の検出信号)として出力する。
制御装置14は、各アクチュエータ11A−11Dが発生する力(減衰力)を可変に制御する。制御装置14は、例えばマイクロコンピュータ等により構成されている。制御装置14の入力側は、インバータ12A−12D、加速度センサ13A−13D等に接続されている。制御装置14の出力側は、各インバータ12A−12Dを介してアクチュエータ11A−11Dに接続されている。
制御装置14は、例えば通信回線15を介して車体2に連接(連結)された他の車体の制御装置(いずれも図示せず)に接続されている。制御装置14には、車両1の車両情報(例えば、車両の走行位置、走行速度等)が通信回線15を介して入力される。制御装置14は、例えば、加速度センサ13A−13Dから得られる信号(加速度)と通信回線15を介して得られる信号(車両情報)とに基づいて内部で演算(制御演算)を行い、各アクチュエータ11A−11D(具体的には、各インバータ12A−12D)に指令信号を出力する。
この場合、制御装置14は、車体2のロール(横揺れ)、ピッチ(前後方向の揺れ)等の振動を低減し乗り心地を向上すべく、サンプリング時間毎に加速度センサ13A−13Dからの検出信号等を読込みつつ、例えばスカイフック理論(スカイフック制御則)に従って指令信号(制御指令の電流値)を演算する。この上で、制御装置14は、指令信号をインバータ12A−12Dに個別に出力し、アクチュエータ11A−11D毎の発生力を可変に制御する。なお、アクチュエータ11A−11Dの制御則としては、スカイフック制御則に限るものではなく、例えばLQG制御則またはH∞制御則等を用いる構成でもよい。
次に、車体2の振動減衰を行う電磁サスペンションを構成するアクチュエータ11A−11D(以下、アクチュエータ11またはリニアアクチュエータ11ともいう)について、図3を参照しつつ説明する。
アクチュエータ11は、例えば車体2側に配置される固定子21と、被取付部材である台車3A,3B(車輪4)側に配置される可動子26とを有している。アクチュエータ11は、第2部材となる固定子21に設けられた電機子23のコイル部材25と、第1部材となる可動子26に設けられた永久磁石31とにより三相リニアモータ(三相リニア同期モータ)を構成している。換言すると、アクチュエータ11は、車体2(ばね上部材)と車輪4側の台車3A,3B(ばね下部材)との間に介装され、相対変位可能な同軸状の内筒(変位部材)と外筒(変位部材)とのうちの内筒に対応するロッド22にコア24を介して設けられた複数相のコイル群からなるコイル部材25(コイル25A,25B,25C)と、外筒に対応するチューブ(ヨーク)27に設けられコイル部材25と対向する磁性部材としての永久磁石31とからなる筒状リニア電磁式アクチュエータとして構成されている。
アクチュエータ11の固定子21と可動子26は、2部材間(例えば、一方の部材となる車体2と他方の部材となる台車3A,3Bとの間)にそれぞれ取り付けられる。固定子21と可動子26は、車体2と台車3A,3Bとの間に直線状に互いに相対変位(相対移動)可能に配置され、ストローク方向となる軸方向、即ち、相対変位の方向である図3の上,下方向に推力を発生させる。本実施形態では、第1部材と第2部材とのうち、第1部材を可動子26とし、第2部材を固定子21とした場合を例示している。しかし、これに限らず、第1部材を固定子とし、第2部材を可動子としてもよい。
ここで、固定子21は、可動子26の径方向内側に位置している。固定子21は、その一端側(図3の下端側)に可動子26の軸方向に延びる電機子23を有している。即ち、固定子21は、ロッド22と電機子23とを含んで構成されている。ロッド22は、例えば有底円筒状に形成され軸方向に延びるロッド筒部22Aと、ロッド筒部22Aの他端側(図3の上端側)を閉塞する底部22Bと、ロッド筒部22Aの径方向内側に位置してロッド筒部22Aと同心状に形成され他端側が底部22Bの位置まで軸方向に延びて底部22Bにより閉塞された内側筒部22Cとを含んで構成されている。
ロッド22の内側筒部22Cの一端側は、電機子23(コア24)の内周側を軸方向に延び、例えば嵌合、圧入等の手段を用いてコア24の内側に固定されている。ロッド22の底部22Bには、例えば車両1のばね上(例えば、車体2)に取付けられる取付アイ22Dが設けられている。取付アイ22Dは、ロッド22の底部22B(突出端)を車両のばね上部材(車体2側)に取付けるための取付部材である。一方、ロッド筒部22Aの開口端側(図3の下端側)には、電機子23が一体化(固定)するように設けられている。
電機子23は、例えば磁性体からなる略筒状のコア24と、該コア24に設けられコイル部材25を構成する複数のコイル25A,25B,25C(即ち、u相コイル25A,v相コイル25B,w相コイル25C)とにより構成されている。なお、コイル部材25(コイル25A,25B,25C)の個数は、3個に限らず、例えば6個、9個、12個等、設計仕様等に応じて適宜に変更することができる。
可動子26の一端側は、被取付部材となる台車3A,3Bに接続される。可動子26には、可動子26の軸方向に延びて環状に形成される複数の永久磁石31からなる界磁が設けられている。可動子26は、円筒状の部材となるチューブ27を有している。即ち、可動子26は、電機子23(コア24およびコイル25A,25B,25C)の外周側に配置されるヨーク(外筒)としてのチューブ27と、該チューブ27の内側に位置して軸方向に延びる案内ロッド28と、チューブ27に設けられコイル25A,25B,25Cに対し径方向に隙間をもって対向する磁性部材としての複数(例えば、8個)の永久磁石31とにより構成されている。
チューブ27は、例えば、磁場の中に置くと磁路を形成する磁性材料、より具体的には機械構造用炭素鋼鋼管(STKM12A)等を用いて有底円筒状に形成され、軸方向に延びている。即ち、チューブ27は、磁性材料を用いることにより、アクチュエータ11の磁気回路を形成すると共に、永久磁石31の磁束を外部に漏らさないためのカバーとしての機能も有している。
ここで、チューブ27は、軸方向に延びる筒部27Aと、該筒部27Aの一端側を閉塞する底部27Bと、筒部27Aの開口側(他端側)に位置し固定子21のロッド22側に向かって径方向の内側へと延びた環状の軸受取付部27Cとにより構成されている。筒部27Aの内側には、複数の永久磁石31が軸方向に並んで配置されている。
底部27Bには、筒部27Aの内側に位置して底部27Bから電機子23の内側(ロッド22の内側筒部22Cの内側)を軸方向に延びる案内ロッド28が設けられている。案内ロッド28は、ロッド22の内側筒部22C内を、第1軸受29Aを介して軸方向に相対変位可能に摺動する。第1軸受29Aは、例えばコア24の内周側に設けられている。なお、案内ロッド28は、チューブ27の底部27Bに該チューブ27と一体に形成する構成や、チューブ27とは別体の案内ロッド28を底部27Bにねじやボルト等を用いて固定する構成を採用することができる。
また、チューブ27の底部27Bには、案内ロッド28とは軸方向の反対側に位置して取付アイ27Dが設けられている。この取付アイ27Dは、チューブ27を車両1のばね下部材(台車3A,3B側)に取付けるための取付部材である。一方、軸受取付部27Cの内周面には、ロッド22の外周面と摺接する軸受、スリーブ等の摺動部材からなる第2軸受29Bが設けられている。軸受取付部27Cと第2軸受29Bは、ロッド22を軸方向に摺動可能に支持するロッドガイドを構成している。
界磁となる複数の永久磁石31は、可動子26に設けられている。即ち、チューブ27の筒部27Aの内周面側には、磁場を生じさせる部材である磁性部材としての複数の円環状の永久磁石31が軸方向に沿って並んで配置されている。この場合、軸方向に隣合う各永久磁石31は、例えば互いに逆極性になっている。例えば、チューブ27の一端側から数えて奇数個目の永久磁石31を、内周面側がN極で外周面側がS極のものとすれば、一端側から数えて偶数個目の永久磁石31は、内周面側がS極で外周面側がN極のものとなっている。
この場合、永久磁石31は、例えば、周方向に分割されたセグメント磁石(セグメントマグネット)により構成できる。永久磁石31は、少なくとも2分割以上に分割されているのが望ましい。なお、永久磁石31は、円筒状に一体に形成されたリング磁石としてもよい。即ち、リング磁石とセグメント磁石とのうちのどちらを採用するか、何分割のセグメント磁石を採用するか等は、永久磁石31のチューブ27への組付性やコスト等を考慮して選択することができる。また、第1の実施形態では、永久磁石31の着磁方向は、径方向である。しかし、永久磁石31の着磁方向は、径方向と軸方向との何れでもよく、製作性や用途等によって選択することができる。さらに、永久磁石31の個数は、図示の例に限るものではない。より具体的には、永久磁石31の個数は、複数(2個以上)であればよく、必要段数分用いることができる。永久磁石31の大きさも同様で、電機子23のコイル部材25との組み合わせや外部への磁気漏洩の程度等を考慮して寸法や厚さを決定する。
後述する図4に示すように、永久磁石31は、円筒状カバー32および環状スペーサ33と共に磁石組立体M1を構成している。磁石組立体M1は、アクチュエータ11に組み付けられる永久磁石31と円筒状カバー32と環状スペーサ33とを、アクチュエータ11に組み付ける前に予め一体的に組み立てた組立体である。磁石組立体M1は、可動子26のチューブ27内に組み付けられる。この場合、磁石組立体M1は、図3に二点鎖線で示す抑え部材34によってチューブ27内に固定される。抑え部材34は、例えば、チューブ27の内周面に形成された雌ねじに螺合することにより、磁石組立体M1をチューブ27に固定すると共に、磁石組立体M1に軸力を付与する。抑え部材34の螺合によって付与する軸力は、アクチュエータ11で発生する制御力(減衰力)とアクチュエータ11に作用する最大外力とに対し、十分な安全率を考慮して設定する。
ところで、図1および図2に示すように、鉄道車両用の制御サスペンションシステムの一例として、車両1の台車3A,3Bと車体2との間に2次ばねとなる空気ばね7A−7Dと並列にリニアアクチュエータ11を配置したアクティブサスペンションシステムがある。制御サスペンションの一つであるアクティブサスペンションは、車体2の振動状態に合わせてリアルタイムに制御力を変更することが可能であり、車両1の乗り心地を向上させることができる。リニアアクチュエータ11の制御力は、コイル25A,25B,25Cに電気を流したことによって発生する電磁力(起磁力)と、コイル25A,25B,25Cと対向するように配置した永久磁石31の磁力との吸引力および/または反発力によって発生する。
ここで、一般的に、高効率の回転モータ、リニアアクチュエータは、ネオジム系の永久磁石を用いることが多い。このような永久磁石を用いるリニアアクチュエータは、永久磁石の保護を目的に、磁石保護カバー(マグネットカバー)を用いることが多い。この理由は、永久磁石は焼結部材であるため、過度な外力、他部品との接触により、ひび割れ等の破損の可能性があるためである。そして、損傷による磁石片(破片)が飛散した場合は、コイルを傷つけることによる絶縁の低下、摺動部への噛みこみによる固渋、固着の可能性がある。
磁石保護カバーの役割としては、主に、以下の(1)−(3)が挙げられる。
(1)永久磁石とコイル(または、コア)との接触の防止。
(2)永久磁石が破損したときの破片の飛散の防止。
(3)隣り合う永久磁石間の隙間の確保。
磁石保護カバーは、例えば、磁石の形状に合わせて板を加工することにより、または、素材に切削加工を施すことにより、製造することが考えられる。磁石保護カバーを磁性体とした場合、永久磁石と磁石保護カバーとの間に吸引力が発生するため、永久磁石と磁石保護カバーとの間の固定が容易になる。しかし、磁石保護カバー内を磁束が通るため、本来であれば、永久磁石と対向するコアに行くべき永久磁石からの磁束の一部が、磁石保護カバーを経由して隣の逆極性の永久磁石に行ってしまう。このため、リニアアクチュエータの効率(推力性能)が低下する可能性がある。
これに対して、磁石保護カバーを非磁性体とした場合、永久磁石からの磁束は、永久磁石と対向するコアに向かう。しかし、リニアアクチュエータの小型化および高効率化を考えた場合、非磁性体の磁石保護カバーの厚さを極限まで薄くし、永久磁石とコアとの間のギャップ(エアギャップ)を詰める必要がある。磁石保護カバーを薄くするためには、磁石保護カバーの加工精度を上げる必要があり、必然的に磁石保護カバーが高価となる可能性がある。
そこで、第1の実施形態では、図4に示すように、各永久磁石31の電機子23(コア24)と対向する一面、即ち、各永久磁石31の内周面には、磁性体からなる複数の円筒状カバー32を配置している。これに加えて、軸方向に隣り合う複数の永久磁石31の間、および、軸方向に隣り合う複数の円筒状カバー32の間には、非磁性体からなる複数の環状スペーサ33を配置している。即ち、各永久磁石31の内周面に円筒状カバー32をそれぞれ配置すると共に、軸方向に隣り合う複数の永久磁石31の間および円筒状カバー32の間に環状スペーサ33をそれぞれ配置している。このため、安価な円筒状カバー32と環状スペーサ33とにより、各永久磁石31を保護(保持)することできる。
より具体的に説明すると、第1の実施形態では、アクチュエータ11は、鉄系合金等の磁性体からなる複数の円筒状カバー32を有している。複数の円筒状カバー32は、複数の永久磁石31の径方向内周側で電機子23と対向する位置の可動子26に配置され、永久磁石31を保持している。また、アクチュエータ11は、アルミニウム合金、ステンレス鋼、合成樹脂等の非磁性体からなる複数の環状スペーサ33を有している。環状スペーサ33は、円筒状カバー32の径方向に延びて設けられている。この場合、環状スペーサ33は、軸方向に隣り合う複数の永久磁石31の各々の一端面(例えば、下端面31A)と他端面(例えば、上端面31B)との間に当接して設けられており、かつ、軸方向に隣り合う複数の円筒状カバー32の各々の一端面(例えば、下端面32A)と他端面(例えば、上端面32B)との間に当接して設けられている。なお、以下の説明では、一端側を下端側とし、他端側を上端側として説明するが、例えば、一端側を上端側とし、他端側を下端側としてもよい。また、一端側を左端側とし、他端側を右端側としてもよいし、一端側を右端側とし、他端側を左端側としてもよい。
軸方向の最も一端側となる下端の環状スペーサ33は、下端の永久磁石31の下端面31Aおよび下端の円筒状カバー32の下端面32Aに当接して設けられている。軸方向の最も他端側となる上端の環状スペーサ33は、上端の永久磁石31の上端面31Bおよび上端の円筒状カバー32の上端面32Bに当接して設けられている。第1の実施形態では、永久磁石31に挟まれる環状スペーサ33、上端の環状スペーサ33、および、下端の環状スペーサ33は、いずれも同形状の共通の環状スペーサ33としている。また、円筒状カバー32も全て同形状の共通の円筒状カバー32としている。これにより、簡単な構造の円筒状カバー32および環状スペーサ33によって、各永久磁石31を保護している。永久磁石31、円筒状カバー32および環状スペーサ33は、磁石組立体M1を構成している。磁石組立体M1の組立作業については、後述する。
第1の実施形態による電磁サスペンションは、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
車両1は、レールRに沿って、例えば図1および図2中の左側に向かって走行する。車両1が走行しているときに、例えばロール(横揺れ)またはピッチ(前,後方向の揺れ)等の振動が発生すると、このときの上,下方向の振動を各加速度センサ13A−13Dによって検出する。制御装置14は、各加速度センサ13A−13Dで検出した信号をそれぞれ個別な車両挙動(加速度)の検出信号として判別しつつ、車両1の振動を抑えるために、例えば各アクチュエータ11(11A−11D)で発生すべき目標減衰力(目標制御力)を演算する。そして、各アクチュエータ11(11A−11D)は、制御装置14から個別に出力される指令信号に従って、それぞれの発生減衰力(発生制御力)が目標減衰力に沿った特性となるように可変に制御される。
次に、アクチュエータ11の可動子26に組込まれる磁石組立体M1の組立作業について、図4を参照しつつ説明する。磁石組立体M1は、可動子26のチューブ27に組み付ける前に予め組み立てられる。
まず、磁性体からなる複数の円筒状カバー32と非磁性体からなる複数の環状スペーサ33とを、必要段数分配置する。このとき、複数の円筒状カバー32および複数の環状スペーサ33の同軸度を確保するため、各円筒状カバー32の内周側および各環状スペーサ33の内周側に円柱状または円筒状の治具Jを挿入する。さらに、各円筒状カバー32および各環状スペーサ33の内周側に治具Jを挿入した状態で、治具Jの軸方向の両端側から各円筒状カバー32および各環状スペーサ33に対して軸力を付与することが好ましい。即ち、磁石組立体M1に必要な数の環状スペーサ33および円筒状カバー32を治具Jの外周側に配置し、かつ、両端側から軸力を付与した状態で、各環状スペーサ33および各円筒状カバー32を治具Jに固定することが好ましい。この理由は、後工程で、分割された永久磁石31を円筒状カバー32の外周面に貼付するときに、永久磁石31の予期せぬ移動、飛び出しを抑制すると共に、組立が完了した状態での軸方向寸法のばらつきを抑制するためである。
各円筒状カバー32と各環状スペーサ33とを治具Jに固定した後、それぞれの円筒状カバー32の外周面にセグメント磁石である永久磁石31を貼り付ける。永久磁石31は、径方向に着磁されており、少なくとも2分割されていることが好ましい。永久磁石31の貼り付けに先立って、円筒状カバー32の外周面、即ち、永久磁石31の内周面との当接面には、接着剤を塗布しておく。この状態で、永久磁石31を円筒状カバー32に貼付ける。円筒状カバー32と永久磁石31との貼付に用いる接着剤は、常温(平常温度)または永久磁石31の不可逆減磁温度以下で硬化する接着剤を用いる。さらに、この接着剤は、アクチュエータ11の作動温度範囲内で必要な接着力を確保できるものとする。
永久磁石31を円筒状カバー32の外周面に貼り付けたとき、接着剤の一部が、円筒状カバー32の外周側、即ち、永久磁石31の内周面と円筒状カバー32の外周面との間からはみ出す可能性がある。はみ出た接着剤は、円筒状カバー32と環状スペーサ33との間、および/または、永久磁石31と環状スペーサ33との間に入り込む。これにより、各永久磁石31、各円筒状カバー32および各環状スペーサ33を一体的に接着固定することができる。各永久磁石31を各円筒状カバー32の外周側かつ各環状スペーサ33の間に貼り付けたら、外部にはみ出た接着剤を取り除く。これにより、組み立て完了後の磁石組立体M1をチューブ27内へ挿入するときに、この挿入作業を容易に行うことができる。
治具Jは、例えば、接着剤が固化してから取外すことができる。各永久磁石31、各円筒状カバー32および各環状スペーサ33は、接着剤が固化することによって一体的に固定される。これにより、磁石組立体M1の組立が完了する。組立完了後の磁石組立体M1は、チューブ27内に挿入される。この挿入は、磁石組立体M1とチューブ27との間に吸引力および/または反発力が作用するため、適切な圧入機を用いて行う。また、挿入は、チューブ27内で磁石組立体M1の動きを抑制するため、チューブ27の内周面または各永久磁石31の外周面に接着剤を塗布した状態で行うことが好ましい。磁石組立体M1の挿入後、接着剤単独で十分な固定力を確保できる場合を除き、磁石組立体M1の両端に軸力を付与することが好ましい。即ち、チューブ27の内周側に雌ねじを形成しておき、この雌ねじに抑え部材34を締結することにより、磁石組立体M1の両端に軸力を付与することが好ましい。軸力は、前述したように、アクチュエータ11で発生する制御力とアクチュエータ11に作用する最大外力とに対して安全率を加味して設定する。
なお、円筒状カバー32の軸方向寸法L2は、永久磁石31の軸方向寸法L1よりも長い方が好ましい(L1<L2)。この理由は、これとは逆に寸法を設定すると、抑え部材34を用いて磁石組立体M1に軸力を付与したときに、永久磁石31が軸力を受けることになり、永久磁石31が損傷する可能性があるためである。また、環状スペーサ33の外径寸法D2は、永久磁石31の外径寸法D1以下であることが好ましい(D1≧D2)。この理由は、これとは逆に寸法を設定すると、永久磁石31とチューブ27との間に隙間が形成され、アクチュエータ11の推力効率(推力性能)が低下する可能性があるためである。
以上のように、第1の実施形態によれば、永久磁石31と電機子23との間に磁性体の円筒状カバー32が配置される。このため、非磁性体の円筒状カバーを配置する構成と比較して、永久磁石31とコア24との間のギャップを実質的に詰めることができる。また、電機子23の電磁力により磁性体の円筒状カバー32に吸引力が作用し、リラクタンストルクが発生する。また、永久磁石31自体のパーミアンスが上がり、永久磁石31の耐熱性を確保し易くできる。しかも、永久磁石31の間および円筒状カバー32の間には、非磁性体の環状スペーサ33が当接して設けられる。このため、磁束が円筒状カバー32を経由して隣り合う永久磁石31の間を通ることを抑制できる。これらにより、アクチュエータ11の効率、推力性能を向上できる。また、単純な部品の円筒状カバー32と環状スペーサ33とにより、永久磁石31を保護することができる。即ち、円筒状カバー32と環状スペーサ33の製造に、特別な型または設備を新たに用意する必要はなく、従来からの加工機を用いて製造できる。これにより、永久磁石31を保護するための部品の製造コストを大幅に低減できる。この結果、推力性能の向上と製造コストの低減とを両立できる。
次に、図5は、第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、環状スペーサの円筒状カバーと当接する側は、環状スペーサの永久磁石と当接する側よりも軸方向の厚さを薄くしたことにある。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
上述の第1の実施形態では、単純な部品である円筒状カバー32および環状スペーサ33を用いて永久磁石31を保護している。しかし、この場合は、磁石組立体M1を組み立てるときに、円筒状カバー32および環状スペーサ33の内周側に治具Jを挿入し、これら円筒状カバー32および環状スペーサ33を同軸に配置する必要がある。このため、永久磁石31を円筒状カバー32および環状スペーサ33に接着するときに、円筒状カバー32および環状スペーサ33と共に治具Jも接着される可能性がある。
そこで、第2の実施形態では、治具を不要としている。即ち、第2の実施形態では、磁石組立体M2は、複数の永久磁石31と、複数の円筒状カバー41と、これら永久磁石31および円筒状カバー41の間に配置される複数の環状スペーサ42と、軸方向の最も一端側となる下端に配置される環状スペーサ43と、軸方向の最も他端側となる上端に配置される環状スペーサ43とを有している。円筒状カバー41の軸方向寸法L3は、永久磁石31の軸方向寸法L1よりも長い(L1<L3)。一方、環状スペーサ42の円筒状カバー41と当接する側は、環状スペーサ42の永久磁石31と当接する側よりも、環状スペーサ42の軸方向の厚さが小さい。
即ち、環状スペーサ42の内径側で円筒状カバー41と当接する部分の厚さ寸法t2は、環状スペーサ42の外径側で永久磁石31と当接する部位の厚さ寸法t1よりも薄い(t1>t2)。これにより、環状スペーサ42は、径方向外側の厚肉部42Aと径方向内側の薄肉部42Bとを備えている。厚肉部42Aの側面は、永久磁石31の下端面31Aまたは上端面31Bと当接する。薄肉部42Bの側面は、円筒状カバー41の下端面41Aまたは上端面41Bと当接する。円筒状カバー41の軸方向の両端部で永久磁石31よりも突出する部位は、環状スペーサ42の厚肉部42Aと薄肉部42Bとの間を接続する段差面に嵌合する。
軸方向の両端の環状スペーサ43も、内径側の厚さ寸法が外径側の厚さ寸法よりも薄い。ただし、軸方向の両端の環状スペーサ43は、一方の側面のみ円筒状カバー41の軸方向の端部と嵌合する。なお、両端の環状スペーサ43は、永久磁石31および円筒状カバー41の間に配置される環状スペーサ42を用いてもよい。いずれにしても、第2の実施形態では、円筒状カバー41と環状スペーサ42,43とを嵌合させることにより、これらを治具なしで同軸上に組み立てることができる。即ち、円筒状カバー41および環状スペーサ42,43の内周側に、これらを同軸に配置するための治具を挿入することが不要となる。これにより、治具を挿入する時間、治具を取外す時間を削減することができ、例えば、第1の実施形態よりも早く組み立てることが可能となる。さらに、磁石組立体M2を構成する部品(永久磁石31、円筒状カバー41、環状スペーサ42,43)の精度によって、これらの同軸度を確保することができ、容易に組み立てできる。
具体的に説明すると、磁石組立体M2の組立作業では、まず、複数の円筒状カバー41と複数の環状スペーサ42,43とを必要段数分だけ積み上げ、両端から軸力を付与する。このとき、円筒状カバー41の軸方向の端部を環状スペーサ42の厚肉部42Aと薄肉部42Bとの間の段差面に嵌合することにより、これら円筒状カバー41と環状スペーサ42とを治具なしで連結することができる。その後の工程は、第1の実施形態と同様である。
なお、第2の実施形態では、円筒状カバー41の内径寸法d1と環状スペーサ42,43の内径寸法d2とは略同一とした。しかし、例えば、円筒状カバー41の内径寸法d1よりも環状スペーサ42の内径寸法d2を大きくしてもよい(d1<d2)。また、第2の実施形態では、第1の実施形態の円筒状カバー32よりも、円筒状カバー41は長くする必要がある。さらに、第2の実施形態の環状スペーサ42,43は、第1の実施形態の環状スペーサ33と比較して、追加の加工が必要となる。ただし、磁石組立体M2の軸方向の両端に配置される環状スペーサ43は、同一部品を裏返しにして用いることができる。さらに、隣り合う永久磁石31の間に配置される環状スペーサ42は、必要な個数分(段数分)だけ用意すればよい。また、隣り合う永久磁石31の間に配置される環状スペーサ42を、両端の環状スペーサ43として代用することもできる。即ち、環状スペーサ42,43を同一部品としてもよい。これにより、部品管理の工数を削減できると共に、同一部品を大量生産することによって製造コストを低減することができる。
第2の実施形態は、上述の如き円筒状カバー41および環状スペーサ42,43を用いるもので、その基本的作用については、第1の実施形態によるものと格別差異はない。特に、第2の実施形態では、環状スペーサ42,43の内径側で円筒状カバー41と当接する部位は、環状スペーサ42,43の外径側で永久磁石31と当接する部位よりも厚さが小さい。このため、環状スペーサ42,43の厚さが小さい部位に、円筒状カバー41の端部を嵌合できる。これにより、環状スペーサ42,43と円筒状カバー41との組立作業時に、これらを同軸に配置するための治具を省略できる。即ち、組立作業時の部品管理の工数を削減できる。これにより、組立作業の作業性を向上でき、製造コストを低減できる。
次に、図6は、第3の実施形態を示している。第3の実施形態の特徴は、円筒状カバーの環状スペーサと当接する側には、円筒状カバーの一端面と他端面とから軸方向に突出する突出部を設けたことにある。なお、第3の実施形態では、第1および第2の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
上述の第2の実施形態では、環状スペーサ42,43の形状を、第1の実施形態の環状スペーサ33の形状に対して変更している。これに対して、第3の実施形態では、第1の実施形態と同形状の環状スペーサ33を用いつつ、第2の実施形態と同様に組立時の治具の挿入を省略できるように構成している。
即ち、第3の実施形態では、磁石組立体M3は、複数の永久磁石31と、複数の円筒状カバー51と、複数の環状スペーサ33とを有している。そして、円筒状カバー51の環状スペーサ33と当接する側には、円筒状カバー51の一端面(例えば、下端面51A)と他端面(例えば、上端面51B)とから円筒状カバー51の軸方向に突出する突出部51Cが形成されている。即ち、突出部51Cは、円筒状カバー51の軸方向の両端に設けられており、永久磁石31の軸方向の両端よりも、軸方向に突出している。突出部51Cは、環状スペーサ33の内側に嵌合される。
第3の実施形態も、第2の実施形態と同様に、円筒状カバー51と環状スペーサ33とを嵌合させることにより、治具なしで同軸上に組み立てることができる。しかも、第3の実施形態では、第1の実施形態と同様に、全ての環状スペーサ33が同形状である。さらに、全ての円筒状カバー51も同形状である。このため、2種類の部品(円筒状カバー51および環状スペーサ33)によって永久磁石31を保護するための部品を構成することができる。なお、第3の実施形態では、環状スペーサ33の内径寸法d3は、円筒状カバー51の内径寸法d4よりも大きい(d3>d4)。しかし、円筒状カバー51の内径寸法d4と環状スペーサ33の内径寸法d3とを、例えば環状スペーサ33の内周面のうち突出部51Cの間を内径側に突出させることにより、略同一としてもよい。
第3の実施形態は、上述の如き円筒状カバー51および環状スペーサ33を用いるもので、その基本的作用については、第1および第2の実施形態によるものと格別差異はない。特に、第3の実施形態では、円筒状カバー51の軸方向の両端面にそれぞれ軸方向に突出する突出部51Cが形成されている。このため、円筒状カバー51の突出部51Cを環状スペーサ33の内側に嵌合できる。これにより、環状スペーサ33と円筒状カバー51との組立作業時に、これらを同軸に配置するための治具を省略できる。即ち、組立作業時の部品管理の工数を削減できる。これにより、組立作業の作業性を向上でき、製造コストを低減できる。
次に、図7は、第4の実施形態を示している。第4の実施形態の特徴は、円筒状カバーの環状スペーサと当接する側に傾斜嵌合面を設けると共に、環状スペーサの円筒状カバーと当接する側に傾斜嵌合面を設けたことにある。なお、第4の実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
上述の第2の実施形態および第3の実施形態は、組立時に治具の挿入を省略できる。しかし、設備によっては、環状スペーサ42,43または円筒状カバー51の加工費が高くなる可能性がある。これに対して、第4の実施形態では、簡単な追加工により、磁石組立体M4の組立作業時に治具の挿入を省略できるように構成している。
即ち、第4の実施形態では、磁石組立体M4は、複数の永久磁石31と、複数の円筒状カバー61と、これら永久磁石31および円筒状カバー61の間に配置される複数の環状スペーサ62と、軸方向の最も一端側となる下端に配置される環状スペーサ63と、軸方向の最も他端側となる上端に配置される環状スペーサ63とを有している。そして、円筒状カバー61の軸方向の一端面および他端面には、傾斜嵌合面61Aが設けられている。傾斜嵌合面61Aは、円筒状カバー61の外径側よりも内径側が軸方向に突出するように傾斜している。また、環状スペーサ62の側面で円筒状カバー61と当接する部位には、傾斜嵌合面62Aが設けられている。傾斜嵌合面62Aは、環状スペーサ62の軸方向の内側に進む程内径寸法が小さくなるように傾斜している。下端の環状スペーサ63は、円筒状カバー61と当接する側にのみ傾斜嵌合面63Aが設けられている。上端の環状スペーサ63も、円筒状カバー61と当接する側にのみ傾斜嵌合面63Aが設けられている。環状スペーサ62,63の傾斜嵌合面62A,63Aは、円筒状カバー61の傾斜嵌合面61Aと嵌合する。
第4の実施形態も、環状スペーサ62,63の傾斜嵌合面62A,63Aと円筒状カバー61の傾斜嵌合面61Aとを嵌合させることにより、治具なしで同軸上に組み立てることができる。
第4の実施形態は、上述の如き円筒状カバー61および環状スペーサ62,63を用いるもので、その基本的作用については、第1ないし第3の実施形態によるものと格別差異はない。特に、第4の実施形態も、第2および第3の実施形態と同様に、組立時に治具の挿入を省略できる。
なお、各実施形態では、互いに相対直線運動可能に支持された第1部材と第2部材とのうちの第1部材を可動子26とし、第2部材を固定子21とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、第1部材と第2部材とのうちの第1部材を固定子とし、第2部材を可動子としてもよい。
各実施形態では、車両1のばね上部材(例えば車体2)を固定側とし、車両1のばね下部材(例えば台車3A,3B、車輪4)を可動側とした場合を例に挙げて説明した。即ち、車両1のばね下部材となる台車3A,3Bに接続された第1部材を可動子26とし、車両1のばね上部材となる車体2に接続された第2部材を固定子21とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、車両のばね下部材を固定側とし、車両のばね上部材を可動側としてもよい。即ち、車両のばね下部材(台車)に接続される第1部材または第2部材を固定子とし、車両のばね上部材(車体)に接続される第1部材または第2部材を可動子としてもよい。換言すれば、第1部材を固定子とすると共に第2部材を可動子としてもよいし、第1部材を可動子とすると共に第2部材を固定子としてもよい。
各実施形態では、第1部材としての可動子26の径方向内側に第2部材としての固定子21が位置する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、可動子の径方向外側に固定子が位置する構成としてもよい。換言すれば、第1部材の径方向外側に第2部材が位置する構成としてもよい。
各実施形態では、第1部材としての可動子26が円筒状の部材であるチューブ27を有する構成とした場合を例に挙げて説明した。この場合、円筒状の部材であるチューブ27の径方向内周側が電機子23と対向する側となり、かつ、この径方向内周側に複数の永久磁石31を配置した場合を例に挙げて説明した。即ち、円筒状の部材を有する第1部材の径方向内側に、電機子を有する第2部材を位置させている。しかし、これに限らず、例えば、円筒状の部材の径方向外周側を電機子と対向する側とし、かつ、この径方向外周側に複数の永久磁石を配置してもよい。即ち、円筒状の部材を有する第1部材の径方向外側に、電機子を有する第2部材を位置させてもよい。この場合、円筒状カバーは、永久磁石の径方向外周側で電機子と対向する位置の第1部材に配置される。即ち、円筒状カバーは、永久磁石の径方向内周側と径方向外周側とのうちの電機子と対向する位置の第1部材に配置される。
各実施形態では、第1部材としての可動子26が円筒状の部材であるチューブ27を有する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、第1部材が円柱状の部材を有する構成としてもよい。この場合は、円柱状の部材の径方向外周側が電機子と対向する側となり、かつ、この径方向外周側に複数の永久磁石が配置される。
各実施形態では、車体2と台車3A,3Bとの間で上下方向の振動を抑制するアクチュエータ11により電磁サスペンションを構成した場合を例に挙げて説明した。即ち、アクチュエータ11は、車体2と台車3A,3Bとの間に上下方向に配置した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、車体2と台車3A,3Bとの間で左右方向の振動を抑制するアクチュエータにより電磁サスペンションを構成してもよい。即ち、アクチュエータは、車体と台車との間に左右方向に配置してもよい。
各実施形態では、電磁サスペンションを構成するアクチュエータ11を鉄道車両1に取付ける場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、自動車等の鉄道車両以外の車両の電磁サスペンションに適用してもよい。さらには、振動源となる種々の機械、建築物等に取付けられる電磁サスペンションとして広く適用することができる。
各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。
以上説明した実施形態に基づく電磁サスペンションとして、例えば下記に述べる態様のものが考えられる。
第1の態様としては、相対移動可能な第1部材と第2部材とが2部材間に取り付けられて推力を発生させる電磁サスペンションであって、該電磁サスペンションは、円柱状または円筒状の部材を有し、一端側が被取付部材と接続する前記第1部材と、前記第1部材の径方向内側または径方向外側に位置し、一端側に前記第1部材の軸方向に延びる電機子を有する前記第2部材と、前記第1部材に設けられ、前記第1部材の軸方向に延びて環状に形成される複数の永久磁石からなる界磁と、前記複数の永久磁石の径方向内周側と径方向外周側とのうちの前記電機子と対向する位置の前記第1部材に配置され、前記永久磁石を保持し、磁性体からなる複数の円筒状カバーと、隣り合う複数の前記永久磁石の各々の一端面と他端面との間、および、隣り合う複数の前記円筒状カバーの各々の一端面と他端面との間に当接して設けられ、前記円筒状カバーの径方向に延びる非磁性体からなる複数の環状スペーサと、を有する。
この第1の態様によれば、永久磁石と電機子との間に磁性体の円筒状カバーが配置される。このため、第1の態様では、非磁性体の円筒状カバーを配置する構成と比較して、永久磁石と電機子との間のギャップを実質的に詰めることができる。また、電機子の電磁力により磁性体の円筒状カバーに吸引力が作用し、リラクタンストルクが発生する。また、永久磁石自体のパーミアンスが上がり、永久磁石の耐熱性を確保し易くできる。しかも、永久磁石の間および円筒状カバーの間には、非磁性体の環状スペーサが当接して設けられる。このため、磁束が円筒状カバーを経由して隣り合う永久磁石の間を通ることを抑制できる。これらにより、電磁サスペンションの効率、推力性能を向上できる。また、簡単な構造の円筒状カバーと環状スペーサとにより、永久磁石を保護することができる。即ち、円筒状カバーと環状スペーサの製造に、特別な型または設備を新たに用意する必要はなく、従来からの加工機を用いて製造できる。これにより、製造コストを低減できる。この結果、推力性能の向上と製造コストの低減とを両立できる。
第2の態様としては、第1の態様において、前記環状スペーサの前記円筒状カバーと当接する側は、前記環状スペーサの前記永久磁石と当接する側よりも前記環状スペーサの軸方向の厚さが小さい。この第2の態様によれば、環状スペーサの厚さが小さい部位に、円筒状カバーの端部を嵌合できる。これにより、環状スペーサと円筒状カバーとの組立作業時に、これらを同軸に配置するための治具を省略できる。即ち、組立作業時の部品管理の工数を削減できる。これにより、組立作業の作業性を向上でき、製造コストを低減できる。
第3の態様としては、第1の態様において、前記円筒状カバーの前記環状スペーサと当接する側には、前記円筒状カバーの前記一端面と前記他端面とから前記円筒状カバーの軸方向に突出する突出部が形成されている。この第3の態様によれば、円筒状カバーの突出部を環状スペーサの内側に嵌合できる。これにより、環状スペーサと円筒状カバーとの組立作業時に、これらを同軸に配置するための治具を省略できる。即ち、組立作業時の部品管理の工数を削減できる。これにより、組立作業の作業性を向上でき、製造コストを低減できる。