JP2020146034A - Tertプロモーター変異を検出するプローブセット - Google Patents

Tertプロモーター変異を検出するプローブセット Download PDF

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範吏 光武
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Abstract

【課題】二箇所の変異を一度のアッセイで区別することが可能であり、かつ非常に微量な検体、又は低アレル頻度の変異でも検出することができるプローブの提供。【解決手段】(1)特定の配列で示されるヌクレオチド配列又は該配列に相補的なヌクレオチド配列からなるプローブ、及び(2)他の異なる配列で示されるヌクレオチド配列又は該配列に相補的なヌクレオチド配列からなるプローブ以下の2種類のプローブを含む、TERTプロモーター変異の検出用プローブセット。【選択図】なし

Description

本発明は、TERTプロモーター変異を検出するプローブセット、及びそれを用いたTERTプロモーター変異の検出方法に関する。
甲状腺乳頭がん(PTC)の発生率は世界的に増加している。PTCは一般的に予後良好であるが、約10〜15%の患者において、局所病変や遠隔臓器で再発し、その一部は治療に対して難治性を示す(例えば、非特許文献1)。そのため、再発のリスクを評価するため、PTCの侵襲性と予後を予測するためのバイオマーカーに関する研究が活発に進められている。
近年、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)遺伝子のプロモーター領域での変異が、甲状腺がんを含む多くの種類のがんにおいて見出されている。互いに排他的な、C250T(chr5:1,295,250C>T)とC228T(chr5:1,295,228C>T)と呼ばれる2つのホットスポットが知られている。PTCにおいて、多くの研究は、BRAFV600E変異とTERTプロモーター変異との共存が侵襲性の特徴及び予後不良と強く関連していることが報告されている(例えば、非特許文献2)。さらに、TERTプロモーターの変異は腫瘍性転化とも関連する可能性がある(非特許文献3)。従って、TERTプロモーター変異は、PTCにおける最も重要な分子マーカーの1つであるといえる。かかるTERTプロモーター変異を検出するため、サンガー法や、プローブを用いたPCR法が用いられている。
Ito Y. et al., World J Surg., 42(3):615-622 (2018) Matsuse M. et al., Sci Rep., 7:41752, (2017) Oishi N., et al., Mod Pathol., 30(11):1527-1537 (2017)
しかしながら、TERTプロモーターの変異を検出する際、サンガーシークエンス法では、微量な検体、または低アレル頻度の変異を検出することができず、また、プローブを用いたPCR法では、二箇所の変異を見分けるには、通常異なったプローブを用いる必要があった。また、プローブを用いた方法でも、微量な検体や低アレル頻度では検出が難しいとの課題や、感度などが十分ではなく、臨床的ながんの診断には実質的に用いることができないとの課題があった。従って、本発明は、二箇所の変異を一度のアッセイで区別することが可能であり、かつ非常に微量な検体、又は低アレル頻度の変異でも検出することができるプローブを提供することを課題とする。
本発明者らは、TERTプロモーターの二箇所の変異を一度で検出できるプローブの開発を進めており、鋭意研究を重ねてきた結果、特定の配列を有するプローブを用いることで、前記二箇所の変異を感度良く検出できることを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1] 以下の2種類のプローブを含む、TERTプロモーター変異の検出用プローブセット。
(1)配列番号1で示されるヌクレオチド配列又は該配列に相補的なヌクレオチド配列からなるプローブ、及び
(2)配列番号2で示されるヌクレオチド配列又は該配列に相補的なヌクレオチド配列からなるプローブ
[2] 上記各プローブに標識物質が結合されていることを特徴とする、[1]に記載のプローブセット。
[3] 前記標識物質が蛍光色素であり、かつ前記各プローブにクエンチャーが結合されていることを特徴とする、[2]に記載のプローブセット。
[4] 各プローブが糖−リン酸骨格の1種以上の修飾を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載のプローブセット。
[5] 各プローブの40%以上のヌクレオチド残基が修飾されたものである、[4]に記載のプローブセット。
[6] 前記修飾が、糖の2’位の酸素原子と4’位の炭素原子とのメチレンを介した架橋である、[4]又は[5]に記載のプローブセット。
[7] 以下の工程(1)〜(4)を含む、TERTプロモーターの変異を検出する方法。
(1)[3]〜[6]のいずれかに記載のプローブセットと、TERTプロモーターの標的領域を含む核酸とを接触させる工程、
(2)該標的領域を含む領域をPCRにより増幅する工程、
(3)前記工程(2)で増幅したPCR産物を含む溶液の蛍光強度を測定する工程、及び
(4)前記(3)の測定結果に基づき、TERTプロモーターの変異を検出する工程
[8] 前記PCRがデジタルPCRである、[7]に記載の方法。
[9] [1]〜[6]のいずれかに記載のプローブセット、並びにTERTプロモーターの標的領域を増幅可能な2種類のPCRプライマーセットを含む、TERTプロモーター変異の検出用キット。
[10] 前記プライマーの一方が、
(1)配列番号5で示されるヌクレオチド配列、又は
(2)上記(1)の配列において、1若しくは複数のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加された配列
からなり、かつ前記プライマーのもう一方が、
(3)配列番号6で示されるヌクレオチド配列、又は
(4)前記(3)の配列において、1若しくは複数のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加された配列
からなる、[9]に記載のキット。
本発明のプローブによれば、TERTプロモーターの二箇所の変異(C250T及びC228T)を一度のアッセイで区別することが可能であり、かつ非常に微量な検体、又は低アレル頻度の変異でも検出・特定することが可能となる。
図1は、本発明のプライマーの原理の模式図を示す。250位に変異のある場合は250位及びその近傍にFAMプローブが、228位及びその近傍にHexプローブが結合し、228位に変異がある場合には228位及びその近傍にFAMプローブが結合し、Wtの場合には228位及びその近傍にHEXプローブが結合することで、2種類のプローブで二箇所の変異を検出することができる。 図2は、本発明のプローブを用いて2次元にプロットした結果を示す。C228T変異が存在する場合には、mut、wtのそれぞれがsingle positiveのドロプレットとして表れる。C250T変異が存在する場合には、double positiveのドロプレットとして表れる。 図3は、ddPCRの検出限界の結果を示す。ddPCRの検出限界を、野生型PCR産物中のTERTプロモーター変異(C228T又はC250T)のPCR産物の系列希釈を用いて決定した。TERTプロモーター領域(163bp)を、野生型、C228T、及びC250Tのみを有する細胞株から抽出したDNAを用いて増幅し、精製した。変異体産物と野生型産物との混合物の計3,000コピーを調製し(0%、0.125%、0.25%、及び0.5%)、ddPCRを用いて変異体コピー数を測定した。結果を、100%野生型産物を用いた結果と比較し、GraphPad Prismソフトウェアを用いてマン・ホイットニーのU検定によりその差異を分析した。有意差は、0.25%以上の変異対立遺伝子サンプル(C228T及びC250Tの両方)と野生型試料との間でのみ認められた。 図4は、3つのサンプル(PTC A、PTC B、及びPTC C)におけるTERTプロモーター変異の低い対立遺伝子頻度を示す。(A)ドロプレットデジタルPCRの結果。各ドットは、変異型対立遺伝子又は野生型対立遺伝子の陽性ドロップレットを表す。NTC:鋳型無しの対照、Wt:野生型対照、hetMut:変異型及び野生型対照の両方(ヘテロ接合)。(B)サンガーシーケンシングのクロマトグラム。TERTプロモーター変異のホットスポットを矢印で示した。PTC A、PTC B、及びPTC Cの全てにおいて、C228T変異が認められた。 図5は、本症例におけるTERT変異及び発現状態の概要を示す。(A)TERTの変異/発現のスクリーニングのフローチャート。(B)結果の円グラフ。(C)上記の状態を用いて分類した各群における相対的なTERTの発現レベル。(D)TERT発現レベルと患者の年齢の間の相関。変異陰性/発現陽性の症例がプロットされている。実線は、点線で示された95%信頼区間の線形回帰モデルを表す。 図6は、TERTの変異/発現の状態に基づく異なる分類のカプランマイヤー曲線を示す。縦軸の目盛りは打ち切りデータに対応する。ログランク検定のp値を表示する。本症例は、変異の状態に基づいて分離された。 図7は、無再発生存率のカプランマイヤー曲線を示す。縦軸の目盛りは打ち切りデータに対応する。ログランク傾向検定のp値を表示する。 図8は、本発明のプローブによる、穿刺吸引細胞診針洗浄液検体を用いた場合の変異検出の感度、特異度、陽性的中度、及び陰性的中度の結果を示す。
1.TERTプロモーター変異の検出用プローブセット
本発明は、変異配列を検出するプローブ(「変異型プローブ」又は「mut probe」ともいう)と、野生型配列を検出するプローブ(「野生型プローブ」又は「wt probe」ともいう)を含む、TERTプロモーターの変異の検出用プローブセット(以下「本発明のプローブセット」と称することがある)を提供する。以下では、変異型プローブと野生型プローブを纏めて、「本発明のプローブ」と称することがある。
前記変異型プローブは、配列番号1で示されるヌクレオチド配列又は該配列に相補的なヌクレオチド配列からなる。このプローブは、C250T(chr5:1,295,250C>T)(この部位を単に「250位」ともいう)とC228T(chr5:1,295,228C>T)(この部位を単に「228位」ともいう)と呼ばれる2つのホットスポットのいずれも検出することができる。上記プローブは、chr5:1,295,246〜chr5:1,295,255の領域、及びchr5:1,295,223〜chr5:1,295,232の領域とハイブリダイズする。一方で、前記野生型プローブは、配列番号2で示されるヌクレオチド配列又は該配列に相補的なヌクレオチド配列からなる。このプローブは、chr5:1,295,246〜chr5:1,295,255の領域の配列が野生型の場合にのみ、該領域とハイブリダイズする。また、本明細書では、特に断らない限り、ヒトのTERTプロモーター領域の配列に基づいて、ヌクレオチドの配列や位置等を記載するが、非ヒト哺乳動物(例:ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、ウシ、サル)のオルソログにおける対応するヌクレオチドの配列や位置等も、当該記載内容に包含されるものである。
本明細書において、TERTプロモーター変異の検出とは、被験対象の核酸中のTERTプロモーター領域に、特定の変異を有するか否か、即ち、特定の変異に関して野生型であるか変異型であるかを検出すること、並びに、変異型である場合に、その変異型の種類(即ち、C250Tであるか、又はC228Tであるか)を検出又は特定することを意味する。
本発明のプローブには、標識物質が結合していてもよい。前記標識物質は、特に制限されず、例えば、蛍光色素、同位体等が挙げられるが、蛍光色素が好ましい。かかる蛍光色素は、種々のものが市販されており、該蛍光色素としては、例えば、6-FAM(フルオレセイン)、HEX、TE、Quasar 670、Quasar 570、Quasar 705、Pulsar 650、TET、HEX、VIC、JOE、CAL Fluor Orenge、CAL Fluor Gold、CAL Fluor Red、Texas Red、Cy、Cy5などが挙げられる。前記同位体としては、例えば、安定同位体及び放射性同位体が挙げられ、好ましくは安定同位体である。前記安定同位体としては、例えば、2H、13C、15N、17O、18O、33S、34S及び36Sが挙げられる。
本発明のプローブに蛍光色素が結合されている場合には、該プローブはさらに該蛍光物質からの蛍光を消光できるクエンチャーが結合されていることが好ましい。また、変異型プローブに結合された蛍光色素と、野生型プローブに結合された蛍光色素は、異なるものであることが好ましい。この構成をとることにより、TERTプロモーターの250位に変異が存在する核酸分子を用いた場合には、250位及びその近傍に変異型プローブが、228位及びその近傍に野生型プローブがハイブリダイズすることで、各プローブの蛍光色素に由来する2種類の蛍光が検出される。一方で、228位に変異が存在する核酸分子を用いた場合には、228位及びその近傍に変異型プローブがハイブリダイズし、野生型プローブがハイブリダイズできないため、変異型プローブの蛍光色素に由来する蛍光のみが検出される。また、TERTプロモーターが野生型の核酸分子を用いた場合には、228位及びその近傍に野生型プローブがハイブリダイズし、変異型プローブがハイブリダイズできないため、野生型プローブの蛍光色素に由来する蛍光のみが検出される。この概略図を、図1に示す。
本発明に用いるクエンチャーは、種々のものが市販されており、蛍光色素からの蛍光をクエンチできるものであれば特に制限されない。クエンチャーとしては、蛍光色素と非蛍光色素のどちらを用いてもよいが、検出の精度の観点から、非蛍光色素が好ましい。具体的なクエンチャーとしては、例えば、6-カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、Eclipse Dark Quencher、minor groove binder(MGB)、非蛍光クエンチャー(NFQ)などが挙げられる。
本発明のプローブの構成単位としては、例えば、リボヌクレオチド及びデオキシリボヌクレオチドが挙げられる。前記ヌクレオチド残基は、構成要素として、糖、塩基及びリン酸を含む。リボヌクレオチドは、糖としてリボース残基を有し、塩基として、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)及びウラシル(U)(チミン(T)に置き換えることもできる)を有し、デオキシリボヌクレオチド残基は、糖としてデオキシリボース残基を有し、塩基として、アデニン(dA)、グアニン(dG)、シトシン(dC)及びチミン(dT)(ウラシル(dU)に置き換えることもできる)を有する。
これらのヌクレオチドは、修飾されていても(修飾されたヌクレオチド残基を「修飾ヌクレオチド残基」と称することがある)、非修飾であってもよい(非修飾のヌクレオチド残基を「非修飾ヌクレオチド残基」と称することがある)。修飾ヌクレオチド残基を含むことによって、ヌクレアーゼ耐性が向上し、その結果安定性が向上し得る。また、修飾ヌクレオチド残基を含むことによって、標的DNAとの結合親和性が向上し得る。修飾ヌクレオチド残基を有する場合、本発明のプローブ中の修飾ヌクレオチド残基の割合は特に限定されないが、全ヌクレオチド残基の3分の1以上(例:40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%)が修飾ヌクレオチド残基であることが好ましい。また、本発明のプローブには、非修飾ヌクレオチド残基や修飾ヌクレオチド残基とは異なる分子で構成されるリンカー領域を含んでいてもよい。また、修飾されるヌクレオチドのプローブにおける位置も特に限定されない。好ましい実施態様において、本発明の各プローブは、少なくとも2位、4〜6位、及び8位のヌクレオチド残基が修飾を施されるが、修飾はこれらの位置に限定されない。
前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、前記非修飾ヌクレオチド残基の構成要素のいずれが修飾されてもよい。本発明において、「修飾」には、例えば、前記構成要素の置換、付加及び/又は欠失、前記構成要素における原子及び/又は官能基の置換、付加及び/又は欠失が挙げられる。前記修飾ヌクレオチド残基としては、例えば、天然に存在するヌクレオチド残基、人工的に修飾したヌクレオチド残基等が挙げられる。前記天然由来の修飾ヌクレオチド残基としては、例えば、リンバックら(Limbach et al.、1994、Summary:the modified nucleosides of RNA、Nucleic Acids Res.22:2183〜2196)を参照できる。また、前記修飾ヌクレオチド残基としては、例えば、ヌクレオチドの代替物の残基が挙げられる。
前記ヌクレオチド残基の修飾は、例えば、糖−リン酸骨格(該骨格には、塩基も含まれる)(以下、糖リン酸骨格)の修飾が挙げられる。前記糖リン酸骨格において、糖がリボースの場合、例えば、リボース残基を修飾できる。前記リボース残基は、例えば、2’位炭素を修飾でき、具体的には、例えば、2’位炭素に結合する水酸基をメチル基で修飾、あるいは該水酸基を水素又はフルオロ等のハロゲンに置換できる。また、前記2’位炭素の水酸基を水素に置換することで、リボース残基をデオキシリボースに置換できる。前記リボース残基は、例えば、立体異性体に置換でき、例えば、アラビノース残基に置換してもよい。以下では、前記のように糖の2’位炭素に結合する水酸基をメチル基で修飾した核酸を2'−O−メチル修飾核酸と称することがある。また、本発明において、「核酸」にはヌクレオチドなどの核酸モノマーが包含される。
前記糖リン酸骨格は、例えば、非リボース残基(非デオキシリボース残基も包含されるものとする)及び/又は非リン酸を有する非リボースリン酸骨格に置換してもよく、このような置換も糖リン酸骨格の修飾に包含される。前記非リボースリン酸骨格は、例えば、前記糖リン酸骨格の非荷電体が挙げられる。前記非リボースリン酸骨格に置換された、前記ヌクレオチドの代替物は、例えば、モルホリノ、シクロブチル、ピロリジン等が挙げられる。前記代替物は、この他に、例えば、人工核酸が挙げられる。具体例として、例えば、PNA(ペプチド核酸)、架橋構造型人工核酸(BNA:Bridged Nucleic Acid)などが挙げられる。BNAとしては、例えば、ロックト人工核酸(LNA:Locked Nucleic Acid)(2’−O,4’−C−メチレン架橋核酸ともいう)、2’−O,4’−C−エチレン架橋核酸(ENA:2’−O,4’−C−Ethylenebridged Nucleic Acid)などが挙げられるが、好ましくはLNAである。好ましい実施態様において、本発明の各プローブは、少なくとも2位、4〜6位、及び8位のヌクレオチド残基がLNAである。
2.本発明のプローブを用いたTERTプロモーター変異の検出方法
別の態様において、本発明は、上記1.で記載の本発明のプローブセットを用いたTERTプロモーター変異の検出方法(以下「本発明の検出方法」と称することがある)を提供する。変異の検出又は測定法は、特に限定されるものではないが、例えば、PCR法を用いた方法が挙げられる。また、本明細書において、TERTプロモーター変異の検出方法には、TERTプロモーター変異の検出を補助する方法も包含されるものである。
かかるPCR法を用いた方法としては、対象の核酸をPCR法により増幅し、増幅産物の変異を蛍光又は発光によって検出する方法、PCR-RFLP(restriction fragment length polymorphism:制限酵素断片長多型)法、PCR-SSCP(single strand conformation polymorphism:単鎖高次構造多型)法(Orita,M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 86, 2766-2770(1989)等)、PCR-SSO(specific sequence oligonucleotide:特異的配列オリゴヌクレオチド)法、PCR-SSO法とドットハイブリダイゼーション法を組み合わせたASO(allele specific oligonucleotide:アレル特異的オリゴヌクレオチド)ハイブリダイゼーション法(Saiki, Nature, 324, 163-166(1986)等)、TaqMan(登録商標、Roche Molecular Systems社)-PCR法(Livak, KJ, Genet Anal,14,143(1999), Morris, T. et al., J. Clin. Microbiol.,34,2933(1996))に代表されるリアルタイムPCR法、デジタルPCR法(例:ドロプレットデジタルPCR法等)などが挙げられる。
その他の方法として、サイクリングプローブ法、Invader(登録商標、Third Wave Technologies社)法(Lyamichev V et al., Nat Biotechnol, 17, 292(1999))、FRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer)を利用した方法(Heller, Academic Press Inc, pp. 245-256(1985)、Cardullo et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 8790-8794(1988)、国際公開第99/28500号公報、特開2004-121232号公報など)、DNAチップ又はマイクロアレイを用いた方法(Wang DG et al., Science 280,1077(1998)等)、サザンブロットハイブリダイゼーション法、ドットハイブリダイゼーション法(Southern,E., J. Mol. Biol. 98, 503-517 (1975))など、公知の方法を採用できる。
感度の点からは、PCR法を用いた方法が好ましい。従って、一実施態様において、本発明は、以下の工程(1)〜(4)を含む、TERTプロモーターの変異を検出する方法を提供する。
(1)本発明のプローブセットと、TERTプロモーターの標的領域を含む核酸とを接触させる工程、
(2)該標的領域を含む領域をPCRにより増幅する工程、
(3)工程(2)で増幅したPCR産物を含む溶液の蛍光強度を測定する工程、及び
(4)前記(3)の測定結果に基づき、TERTプロモーターの変異を検出する工程
前記工程(1)において、本発明のプローブセットと、TERTプロモーターの標的領域(以下では、単に「標的領域」ということがある)を含む核酸(以下、「被験核酸」ともいう)とを接触させる方法は特に制限されないが、例えば、同一溶液中に上記プローブセットと、該被験核酸とを加えることで行うことができる。また、「TERTプロモーターの標的領域」は、変異型プローブ及び/又は野生型プローブが結合できる領域、即ちchr5:1,295,223〜chr5:1,295,255(配列番号9で示す)の領域を意味し、該領域を含んでいる限り、被験核酸は特に限定されない。
また、上記溶液中には、通常PCRプライマー及びDNAポリメラーゼが含まれる。上記PCRプライマーとしては、標的領域を含む染色体領域に相補的な配列を有し、当該標的領域を含む領域を特異的に増幅できるように設計された2種類のプライマーセット(即ち、フォワードプライマー及びリバースプライマー)が挙げられる。具体的なプライマーとしては、例えば、上記プライマーの一方は、(A)配列番号5で示されるヌクレオチド配列、又は(B)前記(A)の配列において、1若しくは複数(例:2個、3個、4個、5個)のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加された配列からなり、また、前記プライマーのもう一方は、(C)配列番号6で示されるヌクレオチド配列、又は(D)前記(C)の配列において、1若しくは複数(例:2個、3個、4個、5個)のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加された配列からなるプライマーなどが挙げられるが、これらのプライマーに限定されず、公知のプライマーも適宜用いることもできる。例えば、フォワードプライマーとして、(E)配列番号10〜13のいずれかで示されるヌクレオチド配列、又は(F)前記(E)の配列において、1若しくは複数(例:2個、3個、4個、5個)のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加された配列からなるプライマーなどが挙げられる。また、リバースプライマーとして、(G)配列番号14〜17のいずれかで示されるヌクレオチド配列、又は(H)前記(G)の配列において、1若しくは複数(例:2個、3個、4個、5個)のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加された配列からなるプライマーなどが挙げられる。上記フォワードプライマーと、リバースプライマーとは任意の組み合わせて用いることができる。上記DNAポリメラーゼについても、PCR法に用いられるDNAポリメラーゼであれば特に限定されない。
前記被験核酸は、被験哺乳動物の血液、唾液、リンパ液、尿、汗、皮膚細胞、粘膜細胞、毛髪、病変部位等から公知の抽出方法、精製方法を用いて調製することができる。例えば、病変部位(例:甲状腺がん部位等)由来のサンプルから核酸を抽出する場合には、細胞診の針洗浄液中に含まれる細胞から核酸を抽出することもでき、この場合には、細胞診用のサンプルと遺伝子検査用のサンプルを同時に取得できるため、有用である。また、被験動物は、TERTプロモーターに変異を有することが知られている動物であってもよく、TERTプロモーターに変異を有することが疑われる動物であってもよく、さらにはTERTプロモーターに変異を有するか否か不明な動物であってもよい。
前記工程(2)において、標的領域をPCRにより増幅する方法は特に限定されないが、デジタルPCR法により増幅することが好ましい。デジタルPCRは、例えば、次の手順により行われる。デジタルPCR装置に、本発明のプローブセット、被験核酸、PCRプライマーセット及びDNAポリメラーゼを含む反応溶液をセットし、該装置により、反応溶液はチップに設けられた数千から数万という多数の反応ウェルに分配される。反応ウェルは、例えば、開口の大きさが数十μmである微小なウェルやナノリットルサイズのドロップレットである。反応ミックスをチップに添加すると、チップ上の一部の反応ウェルには抽出された核酸に由来する標的領域が好ましくは1コピー程度含まれ、その他の反応ウェルには抽出された核酸に由来する標的領域が含まれない状態となるよう、反応ミックスが反応ウェルに分配される。複数の反応ウェルに分配された反応ミックス内で、抽出された核酸を鋳型としてPCRを実施すると、標的領域を含む核酸が存在する反応ウェルでは、該核酸の少なくとも一部の領域が増幅され、その際に、DNAポリメラーゼのヌクレアーゼ活性により、標的領域に結合したプローブが切断され蛍光色素が乖離し、蛍光を発する。
前記工程(3)における蛍光強度を測定は、例えば、自体公知の蛍光リーダーを用いて行うことができる。前記PCRをデジタルPCRで行った場合には、例えば、デジタルPCR装置のリーダーにより、蛍光が検出された反応ウェルの数を計測することで、蛍光強度が測定できる。蛍光色素が異なる複数のプローブを用いた場合には、各蛍光に由来する蛍光を検出することで、複数の蛍光強度を一度に測定することができる。
前記工程(4)において、前記工程(3)の測定結果に基づき、TERTプロモーターの変異を検出することができる。本発明のプローブセットを用いてTERTプロモーターの変異を検出する原理は、上記1.に記載の通りである。前記測定結果を、横軸と横軸をそれぞれ異なる蛍光の強度として、グラフに2次元プロットした一例を図2に示す。図2から明らかなように、本発明のプローブセットを用いることで、二箇所の変異を一度のアッセイで区別することが可能となる。
3.TERTプロモーター変異の検出用キット
別の態様において、本発明は、本発明のプローブセット、及びTERTプロモーターの標的領域を増幅可能な2種類のPCRプライマーセットを含む、TERTプロモーターの変異検出用キット(以下「本発明のキット」と称することがある)を提供する。かかるPCRプライマーの具体例については、上記2.に記載の通りである。本発明のキットには、PCRに必要な他の試薬を含んでいてもよい。前記試薬が、本発明のプローブセット及び/又はプライマーセットと共存状態で保存することにより反応に悪影響を及ぼさない試薬である場合には、プローブセット及び/又はプライマーセットと混合してキットに含めることができる。あるいは、前記試薬と本発明のプローブ及び/又はプライマーセットとは混合せずに別個で提供されてもよい。前記試薬としては、DNA抽出用試薬、DNAポリメラーゼ、dNTP、反応緩衝液、PCRの陽性コントロールとなる標的領域を含む核酸、容器、器具、説明書などが挙げられる。
4.甲状腺がんの治療又は予防方法
上記2.で記載した本発明の検出方法の結果、被験哺乳動物において、TERTプロモーターに変異が検出された場合、該被験哺乳動物に投与すべき甲状腺がんの治療薬又は予防薬(以下では纏めて「治療薬」と称する)を選択(又は決定)し、該被験哺乳動物に治療上又は予防上有効量の該治療薬を投与することにより、甲状腺がんを治療又は予防することができる。あるいは、外科手術により、甲状腺を全摘出するか、一部分を摘出すること、又は放射線療法により、甲状腺がんを治療することができる。本明細書において、「治療薬」には、甲状腺がんの根治治療を目的とする医薬だけでなく、例えば、これらの疾患の進行抑制を目的とする医薬又は症状の軽減を目的する医薬も含まれるものとする。治療又は予防の対象となる甲状腺がんとしては、例えば、乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がん、悪性リンパ腫などが挙げられる。
かかる治療薬としては、例えば、甲状腺ホルモン薬、分子標的治療薬(例:レンバチニブ、ソラフェニブ、バンデタニブ等)、細胞障害性抗がん剤(例:ドキソルビシン、パクリタキセル等)などが挙げられるが、これらに限定されない。上記治療薬は、患者や被験哺乳動物の症状に合わせて、適宜組み合わせて使用してもよい。
上記治療薬は、有効成分をそのまま単独で、又は薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤等と混合し、適当な剤型の医薬組成物として経口的又は非経口的に投与してもよい。経口投与のための組成物としては、固体又は液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。一方、非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含してもよい。また、治療薬の投与量は、化合物の種類、投与対象の症状、齢、体重、薬物受容性等の種々の条件により、適宜設定することができる。
以下に、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
後述の実施例では、以下のようにして実験を行った。
<手順>
1.PTCサンプル及び患者情報
2001年11月から2017年12月の間に長崎大学病院(長崎県)と隈病院(神戸市)で行われた159個のPTCサンプルを収集した。臨床病理学的データを患者の医療記録から収集した。手術時の患者の年齢は14〜81歳であった(年齢の中央値:54歳、男性17.0%)。病期分類には、AJCC/TNM病期分類システム(第8版)を用いた。それらの組織学的なサブタイプは以下の通りである:146個は古典的Nippon GenePTC(25個は微小がんであった)、10個は濾胞型(follicular variant)PTC(4個は微小がんであった)、2個はびまん性硬化型(diffuse sclerosing variant)PTC、及び1個は高細胞型(tall cell variant)PTCであった。研究プロトコルは、長崎大学及び隈病院の施設内倫理委員会により承認された。各患者から書面によるインフォームドコンセントを得た。外科手術中に新鮮な腫瘍組織サンプルを採取し、液体窒素中で急速冷凍し、-80℃で保存した。ISOGEN試薬(ニッポンジーン)を用いて、メーカーの説明書に従いDNA及び全RNAを同時に抽出した。
2.直接DNAシーケンシング
BRAFの変異の状態(c.1799A>T付近)及びTERTのプロモーター領域を、以前に記載したように(Matsuse M. et al., Sci Rep, 7:41752 (2017))、直接DNAシーケンシング(サンガー法)により分析した。
3.定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)
High Capacity RNA-to-cDNAキット(アプライドバイオシステムズ)を用いて全RNAを逆転写した。以下のPCR反応は、Thermal Cycler Dice real-time system(タカラバイオ)により、SYBR Premix Ex Taq II(タカラバイオ)を用いて行った。二次微分法を用いて決定したサイクル閾値(CT)値を用いて相対的な発現を計算した。TERT mRNAレベルを、TATA結合タンパク質(TBP)のmRNA発現を参照として用いて正規化した。プライマー配列は次の通りである:TERT ex 6-7 F;5'-AGCCACGTCTCTACCTTGAC-3'(配列番号5)及びTERT ex7-8 R;5'-CTCATTCAGGGAGGAGCTCT-3'(配列番号6)、TBP ex2 F;5’-CCTGCCACCTTACGCTCAG-3’(配列番号7)及びTBP ex3 R;5'-TGGTGTTCTGAATAGGCTGTGG-3'(配列番号8)。
4.ドロプレットデジタルPCR(ddPCR)
ddPCRを、QX100 Droplet Generator(バイオ・ラッド)、C1000 Touch thermal cycler(バイオ・ラッド)、及びQX100 droplet reader(バイオ・ラッド)により、ddPCR Supermix for Probes(バイオ・ラッド)を用いてddPCRを行った。ddPCRに用いたプローブは、次の通りである:TERT mut; 5’-/56-FAM/C+CC+C+T+TC+CGG(配列番号3)/3IABkFQ/-3’及びTERT wt 228;5’-/5HEX/C+CC+C+C+TC+CGG(配列番号4)/3IABkFQ/-3’(+の後ろの塩基は、ロックト人工核酸(Locked Nucleic Acid)である)。プライマーは直接DNAシーケンシングで用いたものと同じである。TERT mutプローブは、C228T及びC250Tの両方に結合することができるが、wtプローブはC228のみに結合することができるため、上記の2つのプローブを同時に用いた二次元(2D)表示において、C228TとC250Tとを区別することが可能となる(図2)。C250T変異の場合、FAM及びHEXシグナルの両方が検出され、一方で変異がC228Tの場合、FAMシグナルのみが検出される。配列番号3で示されるヌクレオチド配列において、各糖−リン酸骨格が修飾されていないものを配列番号1として示す。同様に、配列番号4で示されるヌクレオチド配列において、各糖−リン酸骨格が修飾されていないものを配列番号2として示す。
5.評価項目としての再発
疾患の再発は、最初の治療から6ヶ月以内に、外科的に切除され、超音波、シンチグラフィー又は他のイメージングにより病理学的に確認された、局所病変又は局所転移/遠隔転移として定義した。再発までの時間を、再手術日又は医用画像による再発検出日に基づいて計算した。
6.統計分析
カテゴリーデータ分析には、単変量フィッシャー又はフィッシャー・フリーマン・ハルトンの正確確率検定を用いた。SASのCOMPPROPマクロ(http://www2.sas.com/proceedings/sugi31/204-31.pdf)を使用して、3つ以上のグループの比率のペアワイズ統計比較(Pairwise statistical comparison)を行った。ノンパラメトリックマン・ホイットニー(Nonparametric Mann-Whitney)検定又はクラスカルワリス(Kruskal-Wallis)検定、及びそれに次ぐ連続データのためのDwass, Steel, Critchlow-Fligner多重比較法を用いて、異なるPTCサブグループの特性を比較した。無再発生存期間(RFS)を分析するために、カプラン−マイヤー法及び対数順位検定を用いた。RFSに影響を与える要因を、コックス比例ハザードモデルで評価した。TERTの発現レベルの閾値を決定するために、ハザード比(HR)を5パーセンタイル刻みに増加させて計算した。多変量ロジスティック回帰モデルを、甲状腺被膜外浸潤(ETE:extrathyroidal extension)又はpTカテゴリに関連付けられている要因を同定するために用いた。ごく少数の結果(1セルあたり5未満)の分析、又は準完全分離が観察された場合の分析は、偏りを減らすペナルティー付きの最大尤度(penalized maximum likelihood)を適合させるためのFirthアプローチ(Firth's approach)を用いて行った。赤池の情報量基準を用いて、非自動のモデル最適化を日常的に行った。自動最適化に修正可能なモデルに、段階的な変数選択を適用した。最も適切なモデルが決定されると、それぞれのパラメータの最大尤度推定値及びそれらのWald型の95%信頼区間が計算された。統計的評価は、9.4M5バージョンのSAS用のSAS Studio(3.71リリース)(SAS Institute)又はIBM SPSS Statisticsバージョン24ソフトウェア(IBM)を用いて行った。GraphPad Prism 6(GraphPad)を用いてグラフを作成した。全てのp値は両側であり、p<0.05の場合に有意とみなした。
実施例1:TERTプロモーター領域の変異の状態とTERT発現の解析
まず、直接DNAシーケンシングにより、TERTプロモーター領域(C228T及びC250T)の変異について、159個のPTCサンプルをスクリーニングした。TERTプロモーターの変異は、20(12.6%)のサンプルで認められ、それらの全てはC228Tであり、進行中のシリーズでは、C250Tは認められなかった。次に、リアルタイムqRT-PCRによりTERT mRNAの発現を調べた。TERTの発現は、全てのTERTプロモーターの変異が陽性のサンプルで確認された。興味深いことに、139個の変異が陰性のサンプルにさえ、56個(40.3%)がTERTの発現を示した。次に、通常のシーケンシングでは検出できないTERTプロモーターの変異の対立遺伝子頻度が低い腫瘍が存在する可能性を探求した。変異の存在を高感度で調べるために、ddPCRを用いた。まず、野生型プロモーターのPCR産物中のC228T又はC250Tを含むTERTプロモーター領域のPCR産物の系列希釈を用いて、TERTプロモーター変異に対するddPCRの検出限界を決定した。変異の対立遺伝子頻度の検出限界は約0.25%であった(図3)。次に、ddPCRを用いて56個のTERTを発現するサンプルを分析した。3つのサンプル(5.4%)において、対立遺伝子頻度が低い変異を同定し、以後PTC A、B及びCとした(図4A)。2D表示によると、全てC228T変異を有していた。PTC A、B及びCの変異の対立遺伝子頻度は、それぞれ17%、10%、及び5%であった(表1)。腫瘍組織は、腫瘍細胞だけでなく、間質細胞、内皮細胞、及び血液細胞も含むため、腫瘍細胞における突然変異対立遺伝子頻度は、TERTプロモーター変異とBRAFT1799A変異との比率に基づく腫瘍密度について補正された。なぜなら、議論はあるものの、BRAFT1799A変異は腫瘍細胞におけるクローンのヘテロ接合変異であると考えられるためである。補正後、腫瘍細胞におけるTERTプロモーター変異の対立遺伝子頻度は次の通りであった:PTC A;14%、PTC B;4%、PTC C;3%であるが、これらの数値は、それぞれ28%、8%及び6%の腫瘍細胞がPTC A、B及びCにおいてTERTプロモーター変異を有することを意味する(表1)。次に、これらのサンプルの直接DNAシーケンシングのクロマトグラムを遡及的に確認した。C228Tの極小ピークが見られたが(図4B)、これらのシグナルと、バックグラウンドシグナルとを確信をもって区別することは不可能であった。直接DNAシーケンシング、発現解析、及びddPCRの結果を図5A〜Cにまとめた。
実施例2:TERTの変異/発現の状態と臨床病理学的特徴との関連性
TERTプロモーターの変異/発現の状態と臨床病理学的特徴との関連性を分析した。159症例を3つのグループに分類した:TERTプロモーター変異が陰性/mRNA発現が陰性のグループ(mut-/exp-)、TERTプロモーター変異が陰性/mRNA発現が陽性のグループ(mut-/ exp+)、及びTERTプロモーター変異が陽性のグループ(mut +/exp+)。表2に示すように、変異(mut+/exp+)を有する腫瘍は、他の2つのグループ(mut-/exp-及びmut-/exp +)と比較して、年齢、甲状腺被膜外浸潤、ステージII/III/IVにおいて、統計的に有意な差を示した)(1対3及び2対3)。これらの知見から、TERTプロモーター変異がPTCに侵襲性の性質を付与することが示唆される。
カプラン−マイヤー法及びコックス比例ハザードモデルを用いてRFSを評価した。この分析では、手術時に遠隔転移が認められた4症例と、6ヶ月以内で追跡した追加の20症例を除外した。3つのグループの生存曲線が分離され、傾向において統計的に有意であった(図7;ログランク傾向、p<0.001)。年齢、性別、腫瘍の大きさ、甲状腺被膜外浸潤、及びリンパ節転移について調整した後のmut-/exp-グループ及びmut-/exp+グループと比較して、mut+/exp+グループの再発についてのHRは、それぞれ20.47(95% CI:4.54-114.1、p<0.001)及び5.38(95% CI:1.14-30.32、p=0.046)であった(表3、1回目と2回目との比較)。最適モデルにおいて、mut-/exp-グループ及びmut-/exp+グループと比較して、mut+/exp+グループのHRは、それぞれ23.39(95% CI:4.49-121.85、p<0.001)及び6.24(95% CI:1.44-27.13、p=0.015)であった(表3、1回目と2回目との比較)。
2群分析では、変異の状態(mut-/exp-及びmut-/exp+ 対 mut+/exp+)並びに発現の状態(mut-/exp- 対 mut-/exp+及びmut+/exp+)に基づいた2群分析における、カプラン−マイヤー曲線及びHRを、それぞれ図6及び表4に示す。
実施例3:本発明のプローブによるTERTの変異検出の感度及び特異度の解析
次に、本発明のプローブと穿刺吸引細胞診針洗浄液を用いた場合のTERTの変異検出結果と、摘出標本(surgical specimen)での評価結果とを比較することで、該プローブの変異検出の感度(Sensitivity)、特異度(Specificity)、陽性的中度(Positive predictive value)、陰性的中度(Negative predictive value)を解析した。まず、細胞診の針をRNAlater(登録商標)(Thermo Fisher Scientific)で洗浄し、患者の甲状腺から採取した細胞抽出物をスピンダウンして細胞を沈殿させた。次に、ISOGEN試薬(ニッポンジーン)を用いてDNAを抽出し、ddPCRを行った。なお、本実施例で用いたプローブ及びddPCRのプライマー、並びにddPCRの方法は実施例1と同じである。
感度は、ddPCRでの評価(Fine needle aspiration cytology)及び摘出標本での評価のいずれにおいても陽性であると判定されたサンプル数を、摘出標本での評価により陽性であると判定された総サンプル数で割ることにより算出した。特異度は、ddPCRでの評価及び摘出標本での評価のいずれにおいても陰性であると判定されたサンプル数を、摘出標本の評価により陰性であると判定された総サンプル数で割ることにより算出した。陽性的中度は、ddPCRでの評価及び摘出標本での評価のいずれにおいても陽性であると判定されたサンプル数を、ddPCRでの評価により陽性であると判定された総サンプル数で割ることにより算出した。陰性的中度は、ddPCRでの評価及び摘出標本での評価のいずれにおいても陰性であると判定されたサンプル数を、ddPCRでの評価により陰性であると判定された総サンプル数で割ることにより算出した。結果を図8として示す。図8より、プローブの変異検出の感度、特異度、陽性的中度、及び陰性的中度のいずれもが高い数値であることが示された。
本発明のプローブセットを用いることにより、TERTプロモーターの二箇所の変異(C250T及びC228T)を一度のアッセイで区別することが可能であり、かつ非常に微量な検体、又は低アレル頻度の変異でも検出・特定することが可能となる。本発明のプローブセットを用いることで、高い検出感で変異を検出できるため、甲状腺結節に対する細胞診検体、またはその針洗浄液を用いた変異検出などに用いることができる。

Claims (10)

  1. 以下の2種類のプローブを含む、TERTプロモーター変異の検出用プローブセット。
    (1)配列番号1で示されるヌクレオチド配列又は該配列に相補的なヌクレオチド配列からなるプローブ、及び
    (2)配列番号2で示されるヌクレオチド配列又は該配列に相補的なヌクレオチド配列からなるプローブ
  2. 上記各プローブに標識物質が結合されていることを特徴とする、請求項1に記載のプローブセット。
  3. 前記標識物質が蛍光色素であり、かつ前記各プローブにクエンチャーが結合されていることを特徴とする、請求項2に記載のプローブセット。
  4. 各プローブが糖−リン酸骨格の1種以上の修飾を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプローブセット。
  5. 各プローブの40%以上のヌクレオチド残基が修飾されたものである、請求項4に記載のプローブセット。
  6. 前記修飾が、糖の2’位の酸素原子と4’位の炭素原子とのメチレンを介した架橋である、請求項4又は請求項5に記載のプローブセット。
  7. 以下の工程(1)〜(4)を含む、TERTプロモーターの変異を検出する方法。
    (1)請求項3〜6のいずれか1項に記載のプローブセットと、TERTプロモーターの標的領域を含む核酸とを接触させる工程、
    (2)該標的領域を含む領域をPCRにより増幅する工程、
    (3)前記工程(2)で増幅したPCR産物を含む溶液の蛍光強度を測定する工程、及び
    (4)前記(3)の測定結果に基づき、TERTプロモーターの変異を検出する工程
  8. 前記PCRがデジタルPCRである、請求項7に記載の方法。
  9. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のプローブセット、並びにTERTプロモーターの標的領域を増幅可能な2種類のPCRプライマーセットを含む、TERTプロモーター変異の検出用キット。
  10. 前記プライマーの一方が、
    (1)配列番号5で示されるヌクレオチド配列、又は
    (2)上記(1)の配列において、1若しくは複数のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加された配列
    からなり、かつ前記プライマーのもう一方が、
    (3)配列番号6で示されるヌクレオチド配列、又は
    (4)前記(3)の配列において、1若しくは複数のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加された配列
    からなる、請求項9に記載のキット。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112831550A (zh) * 2021-04-09 2021-05-25 中山市博爱医院 Tert基因启动子突变实时荧光定量pcr检测试剂及方法

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