JP2020138439A - 加飾物の製造方法およびインクセット - Google Patents

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Abstract

【課題】少ない工程、低コストで、カラーバリエーションに富むメタリック調の加飾物を得ることが出来る加飾物の製造方法、及び、インクセット提供する。【解決手段】水、扁平状粒子、およびカチオン性水分散性樹脂を含み、電荷密度が50μeq/g以上である前処理液を、基材の表面に付着させる前処理工程、及び、前記前処理工程の後に、水、アニオン性の粒子を含む水性インクジェットインクを用いて基材の表面にインクジェット印刷する工程、を含むことを特徴とする、加飾物の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明の実施形態は、加飾物の製造方法およびインクセットに関する。
従来、カラーバリエーションに富むメタリック調の加飾物を得るには、金や銀等の複数の色味の異なる箔押しを組み合わせる、メタリック顔料を含んだ複数の色の塗料で塗装する、または、メタリック顔料を含んだ複数の色のインクをスクリーン等の版を用いた印刷で行う等の方法が用いられる。
しかし、それらの方法では、メタリック調の色数が増えた場合、作業工程が多く高コストになり、量産性が劣っていた。また、基材表面に塗布された銀の塗料や箔、あるいは、基材の中にメタリック顔料を練り込んだ樹脂などの上から、カラーインクをインクジェットで描くと、メタリック調のカラーバリエーションに富む画像を得ることはできるが、インクジェットインクがにじんで画像性が劣るという問題点がある。
そこで、特許文献1として、平均アスペクト比が3以上100以下の平板状金属粒子と、特定の基を有する樹脂を含んだ第1インクを基材に付与し、さらに前記特定の基と反応する反応性基を有する化合物を含む第2インクを付与する方法が提案されている。
特開2018‐13084号公報
しかしながら、特許文献1では、平板状粒子はその形状から基材表面に貼りつくように配列する傾向があり、樹脂成分が水溶性の場合、浸透基材に対しては樹脂成分が基材内部に浸透してその上から平板状粒子が蓋をしてしまい第2インクとの反応が十分に働かず、画像がにじみやすいという課題がある。
そこで、本発明の一目的は、少ない工程でカラーバリエーションに富み、にじみが抑制されたメタリック調の加飾物の製造方法を提供することである。
本発明の一実施形態は、水、扁平状粒子、およびカチオン性水分散性樹脂を含み、電荷密度が50μeq/g以上である前処理液を、基材の表面に付着させる前処理工程、及び、前記前処理工程の後に、水、アニオン性の粒子を含む水性インクジェットインクを用いて基材の表面にインクジェット印刷する工程、を含むことを特徴とする、加飾物の製造方法に関する。
本発明の他の実施形態は、水、扁平状粒子、およびカチオン性水分散性樹脂を含み、電荷密度が50μeq/g以上である前処理液と、水、アニオン性の粒子を含む水性インクジェットインクと、を含む、インクセットに関する。
本発明の実施形態により、にじみが抑制されたメタリック調の加飾物の製造方法を提供することが出来る。
以下、本発明の実施形態を詳しく説明するが、本発明がこれらの実施形態に限定されることはなく、様々な修正や変更を加えてもよいことは言うまでもない。また、以下の記載において、水性インクジェットインクを単に「インク」と記す場合もある。また、粒子は液体粒子、固体粒子の両方を含むものとする。
本発明の実施形態の加飾物の製造方法は、水、扁平状粒子、およびカチオン性水分散性樹脂を含み、電荷密度が50μeq/g以上である前処理液を、基材の表面に付着させる前処理工程、及び、前記前処理工程の後に、水、アニオン性の粒子を含む水性インクジェットインクを用いて基材の表面にインクジェット印刷する工程、を含むことを特徴とする、加飾物の製造方法である。
この加飾物の製造方法により、にじみが抑制されたメタリック調の加飾物を製造することが出来る。
前処理液に扁平状粒子を含むことで、メタリック感を出すことが可能となる。さらにカチオン性水分散性樹脂を含むことで、アニオン性の粒子を含むインクと反応してインク成分を凝集させ、にじみの少ない画像を得ることが出来る。前処理液に含まれるカチオン性の樹脂が粒子形状であることで、基材の表面に扁平状粒子が配列した場合でも、扁平状粒子上にカチオン性樹脂成分が露出しやすく、画像のにじみ抑制とメタリック感の両立が可能となる。かつ、カチオン性の水分散性樹脂は水溶性樹脂と異なり、一度溶媒が揮発した後は水へ溶解しないため、印刷物の耐水性も向上する。また、前処理液の電荷密度が50μeq/g以上であることで、十分ににじみが抑制され、加飾物の画像性を高めることが出来る。
<前処理液>
本明細書において、「前処理」とは、塗布等の任意の手段により、前処理液を基材に付着させる意味である。また、その付着箇所は、基材の表面のみではなく、内部(内面)を含んでいてもよい。
本実施形態の前処理液は、特には、水性インクジェットインクによる印刷画像を形成する前の前処理液として用いることが好ましい。
前処理液は扁平状粒子を含むことが好ましい。
扁平状粒子を用いることで、前処理後の印刷で得られる画像の光沢を増し、発色性を向上させやすい。
また、扁平状粒子は、基材表面の凹凸の凹部に入り込んで基材表面にとどまりやすい。基材表面にとどまった扁平状粒子は、その後の印刷で用いられるインクに対して目止め効果を発揮しながら、扁平状粒子がある確率で基材表面に平行状に配列することで画像のメタリック感を増し、発色性も向上させることができると考えられる。
扁平状粒子は、粒子の立体形状に直交3次元座標系を当てはめたとき、少なくともいずれか一方向において短い。
扁平状粒子としては、例えば、フレーク状、鱗片状、板状、薄片状等の薄く平たい形状を有するものが挙げられる。扁平状粒子の1つの方向からみたときの形状はとくに限定されず、例えば、円形、楕円形、四角状あるいは六角状等の多角形であっても、また、ランダムな(不定形)形状であってもよい。また、扁平状粒子は、表面に凹凸を有していてもよい。
扁平状粒子の種類は特に限定されず、例えば、無機粒子、有機粒子、有機/無機複合粒子のいずれでもよく、例えば、これらの粒子表面に、金属若しくは金属酸化物等の無機物、又は、樹脂等の有機物等でコーティングしたものを用いてもよい。
無機粒子の具体例としては、例えば、ガラス(例えばシリカ(SiO2)ガラス)、アルミ、マイカ(雲母)、酸化チタン等の、金属または金属酸化物をはじめとする無機扁平状粒子が挙げられる。有機粒子の具体例としては、例えば、粉砕等の製法によって作られる樹脂やセルロース等の有機扁平状粒子が挙げられる。これらの中でも、量産性、コスト、及び入手しやすさの観点から、無機粒子が好ましい。
扁平状粒子としては、例えば、無機粒子等の粒子表面に、金属若しくは金属酸化物等の無機物、又は、樹脂等の有機物でコーティングしたものを用いてもよい。このような粒子は、例えば、粒子の表面に金属酸化物等でコーティングして干渉色を利用して光輝性をさらに向上させたり、特定の波長の反射率だけを高めて色味を付けたものであってもよい。
光沢や反射率を上げるには、例えば、屈折率の高い酸化チタン製の扁平状粒子、もしくは、酸化チタンで表面コーティングした粒子を好ましく用いることができる。酸化チタンで表面コーティングした粒子としては、例えば、無機粒子の表面を酸化チタンでコーティングした粒子が挙げられる。このような具体例として、雲母粒子の表面を酸化チタンでコーティングした粒子(例えば、メルクパフォーマンスマテリアルズ株式会社製イリオジン100シリーズ)、シリカ粒子の表面を酸化チタンでコーティングした粒子(例えば、日本板硝子株式会社製メタシャイン)等が挙げられる。これらのなかで、着色を求めるならば、例えば、シリカ扁平状粒子に、酸化チタンなどの薄膜を、反射率を上げたい特定の波長の2分の1等、一定の厚みで設けて、干渉による構造色を利用した粒子(例えば、日本板硝子株式会社製メタシャイン)などを好適に用いることができる。
扁平状粒子の平均長径は、走査型電子顕微鏡(SEM)写真で任意に選択した20個の粒子のそれぞれについて長径を求め、その中央値である。粒子の長径は、SEMで観察される粒子の最大長さである。
扁平状粒子の平均長径は、発色及び光沢の観点から、1μm以上であればメタリック感を出すことが可能となるが、紙などの凹凸がある基材上ではメタリック感が得られにくくなる。3μm以上であれば、紙などの凹凸がある基材上でも平行に配列し、メタリック感を得やすく好ましい。さらに6μm以上が好ましく、12μm以上がより好ましい。平均長径が1μm以上であるとき、扁平状粒子は基材表面の凹凸の凹部に入り込んで、基材表面に残りやすいことから、その後の印刷に用いられるインクに対する目止め効果を発揮しやすい。また、粒子が、ある程度の確率で基材表面に平行に配列しやすいため、画像の光沢を向上させやすく、発色も向上させやすい。
扁平状粒子の平均長径は、前処理液の塗工の観点から、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
扁平状粒子の平均厚さは、平均長径より短いことが好ましい。扁平状粒子の平均厚さは、画像の光沢及び発色性並びに前処理液の保存安定性の観点から、10nm以上が好ましく、100nm以上であってよい。扁平状粒子の厚さは、画像の光沢及び発色性並びに前処理液の保存安定性の観点から、2μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.5μm以下がさらに好ましい。扁平状粒子の厚さは、例えば、10nm以上0.5μm以下であってよい。
扁平状粒子の平均厚さは、SEM写真で観察される粒子のうち、粒子の半数以上において、粒子の厚さが長径の4分の1以下であることが好ましく、10分の1以下がより好ましく、20分の1以下であることがさらに好ましい。
扁平状粒子の平均厚さは、任意に選択した20個の粒子について、個々の粒子の厚さをもとめ、その中央値である。なお、扁平状粒子の厚さは、粒子の長径となる直線の方向をX軸方向としたとき、X軸方向に直交する軸のうち最小長さとなる軸方向の長さである。
扁平状粒子は、SEM写真で観察される粒子のうち、粒子の半数以上において、粒子の幅が長径の5分の1以上であることが好ましく、3分の1以上がより好ましく、2分の1以上であることがさらに好ましい。粒子の幅と長径とが同じ長さであってもよい。
粒子の幅は、粒子の長径となる直線の方向をX軸方向、粒子の厚さとなる直線の方向をY軸方向としたとき、Z軸方向の長さである。
扁平状粒子は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
前処理液中の扁平状粒子の含有量は、発色性の観点から、前処理液全量に対して、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。前処理液中の扁平状粒子の含有量は、前処理液の安定性や塗工性等の観点から、前処理液全量に対して、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
前処理液は、インクの不要な広がりやにじみを防止するために、凝集成分を含むことが好ましい。インクは一般に、表面電荷がアニオン性の成分を含み、顔料等の色材も一般的にアニオン性である。したがって、カチオン性の成分を含む前処理液を用いて、予め基材表面にカチオン性の成分を付着させておくことにより、インクとの間にアニオン−カチオン反応が生じ、色材などのインク成分の基材への浸透を十分に抑制し、色材を基材表面に留め、にじみのない鮮明な画像を得ることができる。カチオン性の成分は、好ましくは、水分散性樹脂であり、水分散性樹脂粒子である。
前処理液に含まれるカチオン性の樹脂が水溶性でなく分散体であることで、基材の表面に扁平状粒子が配列した場合でも、扁平状粒子上にカチオン性樹脂成分が露出しやすく、画像のにじみ抑制とメタリック感の両立が可能となる。かつ、カチオン性の水分散性樹脂は水溶性樹脂と異なり、一度溶媒が揮発した後は水へ溶解しないため、印刷物の耐水性も向上させることができる。
カチオン性の水分散性樹脂は、分散性樹脂の表面がプラスに帯電した、正電荷を帯びた分散性樹脂であり、水に溶解することなく粒子状に分散して、水中油(O/W)型のエマルションを形成できるものである。自己乳化型樹脂のように、樹脂が有するカチオン性の官能基が粒子表面に存在するものでもよいし、分散性樹脂表面にカチオン性の分散剤を付着させる等の表面処理されたものでもよい。カチオン性の官能基は、代表的には第1級、第2級又は第3級アミノ基、ピリジン基、イミダゾール基、ベンズイミダゾール基、トリアゾール基、ベンゾトリアゾール基、ピラゾール基、又はベンゾピラゾール基等であり、カチオン性の分散剤は、1級、2級、3級又は4級アミノ基含有アクリル樹脂、ポリエチレンイミン、カチオン性ポリビニルアルコール樹脂、カチオン性水溶性多分岐ポリエステルアミド樹脂等である。
水分散性樹脂は、前処理液の製造に際しては、水中油型の樹脂エマルションとして配合することができる。代表的には、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル−(メタ)アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル−エチレン共重合体樹脂、及びそれらの樹脂エマルション等が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル樹脂」は、アクリル樹脂とメタクリル樹脂の双方を示す。
これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いても良い。後述するが、これらの樹脂が複合された樹脂エマルションでも良い。上記のとおり、これらの樹脂にカチオン性の官能基を導入するか、又は、カチオン性分散剤等で表面処理して、プラスの表面電荷を与えることができる。
水分散性樹脂の平均粒径は、動的光散乱法により測定した粒度分布における体積基準の粒径値(メジアン径)である。動的光散乱式粒子径分布測定装置としては、ナノ粒子解析装置nano Partica SZ−100(株式会社堀場製作所製)等を用い、水分散性樹脂の濃度が0.5質量%となるように水で希釈し、25℃で測定することができる。
前処理液中又は後述するインク中において、水分散性樹脂は、独立した微粒子の状態で存在する場合と、独立した微粒子が集合した凝集体の状態で存在する場合とが考えられるが、動的光散乱法で測定されるメジアン径を「平均粒径」と位置づけることとする。なお、上記水分散性樹脂の平均粒径は、前処理液又はインクを調製する前の原料エマルション状態で測定することが、インクの場合であれば色材(顔料粒子)の影響を排除できることから好ましく、その測定値を本実施形態の平均粒径とすることができる。
水分散性樹脂として、例えば、カルボキシ基、スルホ基等に代表されるアニオン性の官能基を有する樹脂と、アミノ基又はアミド基等に代表されるカチオン性の官能基を有する樹脂とが複合して得られる複合樹脂であって、コア部がアニオン性樹脂、シェル部がカチオン性樹脂である、コアシェル構造の複合有機粒子を用いることも好ましい。
複合有機粒子のアニオン性樹脂としては、例えば繰り返し単位として(メタ)アクリル酸を含む樹脂、より具体的にはスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体が挙げられる。スチレン、(メタ)アクリル酸以外の、これらと共重合可能なビニル化合物を含んでいてもよい。
複合有機粒子のカチオン性樹脂(塩基性樹脂)としては、例えば、含窒素モノマーを含む樹脂であり、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルイミダゾール等の窒素複素環化合物を繰り返し単位として含むホモポリマー又はコポリマーが挙げられる。コポリマーを形成するコモノマーとしては、例えば、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリルアミド等の一般的なビニル化合物を、1種または2種以上選択して使用できる。
この場合のアニオン性樹脂とカチオン性樹脂の使用割合は、粒子表面の電荷をカチオン性とするために、質量比で、アニオン性樹脂1に対し、カチオン性樹脂が3〜10であることが好ましい。この比率を高めることで、樹脂粒子のカチオン性基の量を増やし、液の電荷密度を高めることができる。
このような複合有機粒子の市販品として、「PP−15」、「PP−17」(共に明成化学工業株式会社製)を好ましく用いることができる。
カチオン性水分散性樹脂の市販品の例としては、例えば、カチオン性アクリル樹脂エマルションであるポリゾールAE−803(昭和電工株式会社製)、カチオン性水系ウレタン樹脂エマルションであるサンプレックスPUE−C200B(株式会社村山化学研究所製)が挙げられる。
前処理液中における水分散性樹脂の量は、処理した際の基材表面におけるインク定着性の観点から1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが一層好ましい。一方、処理液の粘度が高すぎる場合、均一な処理が困難になるため、樹脂量は50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
にじみがない鮮明な画像を得るには、前処理液のカチオン性が十分強いことが必要である。カチオン性の強さは電荷密度を測定することによって知ることが出来る。電荷密度は50μeq/g以上が好ましく、100μeq/g以上がより好ましく、180μeq/g以上であることがさらに好ましい。
ここで、電荷密度は、流動電位法にしたがって測定される電荷密度である。また、前処理液の電荷密度は、前処理液中の有効成分当たりの電荷量である(単位:μeq/g)。有効成分量は、前処理液中に含まれる不揮発分または固形分の総量であり、主に前処理液から溶媒を除去した量である。水分散性樹脂に溶媒が含まれる場合は、これらの溶媒量も除去して、有効成分量を求める。
具体的には、前処理液を水で100倍に希釈し、この希釈前処理液をN/400 PVSK溶液で滴定しながら、前処理液の流動電位が0Vになる反応終点を測定し、この反応終点までに使用したN/400 PVSK溶液量から希釈前処理液の総電荷量を求めることができる。この希釈前処理液の総電荷量を希釈前処理液に含まれる有効成分量で割った値が前処理液の電荷密度(μeq/g)である。
電荷密度の測定装置には、例えば、コロイド粒子電荷量計(AFG ANALYTIC GmbH製「Model CAS」)等を用いることができる。
前処理液の電荷密度の調整方法は特に限定されないが、例えば前処理液中の、カチオン性粒子のカチオン性基の量を増やす、カチオン性粒子のカウンターイオン量を増やす、カチオン性基を持つ粒子の添加量を増やす等の方法で電荷密度を上げることができる。これらの方法はいくつかの方法を組み合わせてもよい。
カチオン性粒子のカチオン性基の量を増やす方法として、水分散性樹脂としてカチオン性官能基が多い樹脂を使用することや、前述したような複合樹脂粒子においてカチオン性樹脂の比率を増やすことが挙げられる。カチオン性粒子のカウンターイオンの量を増やす方法としては、例えばカチオン性分散剤等の分散助剤を添加することが挙げられる。カチオン性基を持つ粒子の添加量を増やすことでも前処理液の電荷密度を上げることは可能であるが、一般的な水分散性樹脂等の粒子では、電荷密度を50μeq/g以上にするためには相当量の粒子を前処理液に添加することが必要となるため、粒子のカチオン性基の量を増やすことで電荷密度の調整を行なうことが好ましい。
前処理液の電荷密度は、添加される樹脂の酸価や、前処理液全体のpHに依存する物性ではないため、前処理液に添加される樹脂の酸価やpHが異なるからといって、前処理液の電荷密度に大きな差が生じるものではない。
また、電荷密度はアニオンに比べて、液中に過剰に存在するカチオン量をアニオン規定液で滴定することによって測定した値であり、アニオンとカチオンの総和量におよそ比例する電気伝導度とは異なる。例えば塩化ナトリウム水溶液は、純水に比べ電気導電度は高いが、電荷密度は純水同様ゼロである。また、滴定中は、電荷密度は小さくなり続け、ゼロになった点(等電点)で測定を終えるが、その間も導電度は上昇し続ける。
前処理液の溶媒は、ほとんどが水で構成されることが好ましいが、必要に応じて、水以外に、水溶性有機溶剤を含んでもよい。水溶性有機溶剤としては、室温で液体であり、水に溶解可能な有機化合物を使用することができ、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合する水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、2−メチル−2−プロパノール等の低級アルコール類;
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類;
グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;モノアセチン、ジアセチン等のアセチン類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;
トリエタノールアミン、1−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、β−チオジグリコール、スルホラン等を用いることができる。水溶性有機溶剤の沸点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
これらの水溶性有機溶剤は、単独で使用してもよく、水と単一の相を形成する限り2種以上を組み合わせて使用することもできる。
水溶性有機溶剤の含有量は、粘度調整と保湿効果の観点から、処理液中に30質量%以下(あるいは、溶媒中に50質量%以下)であることが好ましい。
前処理液は、その表面張力を低下させて基材表面に均一に塗布できるようにするために、界面活性剤をさらに含むことが好ましい。
界面活性剤は、親水性部分がイオン性(カチオン性・アニオン性・双性)のものと非イオン性(ノニオン性)のものに大別されるが、本実施形態では、非イオン性またはカチオン性の界面活性剤を用いることが好ましい。前処理液の泡立ちの観点から、起泡しにくい非イオン系の界面活性剤を用いることがより好ましい。また、低分子系・高分子系(一般には分子量が約2000以上のものを指す。)のどちらでも良いが、高分子系界面活性剤を用いることが好ましい。HLB値については、5〜20程度の界面活性剤であることが好ましい。
非イオン系の界面活性剤としては、たとえば、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ソルビタンエステル等のエステル型のもの、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のエーテル型のもの、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のエーテルエステル型のもの等が挙げられる。カチオン性活性剤としては、第四級アンモニウム塩、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、アルキルアミン塩等を用いることができる。
本実施形態では、アセチレングリコール系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤を好ましく用いることができる。アセチレングリコール系界面活性剤の市販品として、アセチレングリコールであるサーフィノール104E、104H、アセチレングリコールにエチレンオキサイドを付加した構造のサーフィノール420、440、465、485、アセチレングリコールのオルフィンE−1004、E−1010、E−1020、EXP.4001、EXP.4200、EXP.4123、EXP.4300等(日信化学工業株式会社)、アセチレングリコールのアセチレノールE00、E00P、アセチレングリコールのエチレンオキサイドを付加した構造のアセチレノールE40、E100等(川研ファインケミカル株式会社)が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤は、非常に高い表面張力低下能と接触角低下能を持つため、基材表面が親水性でなくても基材表面に処理液を速やかに拡散させることができる。その結果、基材の表面に処理液の機能発現成分が均一に定着することができるため、印刷した際にインクが処理部分に均一に定着し、高発色で高品位の印刷画像を得ることができる。シリコーン系界面活性剤のなかでも、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、アルキル・アラルキル共変性シリコーン系界面活性剤、アクリルシリコーン系界面活性剤が好ましい。市販品では「シルフェイスSAGシリーズ」(日信化学工業株式会社)を好ましく使用できる。カチオン性では、第一工業製薬製のカチオーゲンシリーズ、花王製コータミンシリーズ、アセタミンシリーズなどを好適に用いることができる。
界面活性剤は、上記のシリコーン系界面活性剤等を、いずれか単独で用いてもよいし、互いに相溶性が良好な複数の界面活性剤を併用してもよい。
界面活性剤を使用する場合の前処理液中の含有量は、0.1質量%以上程度であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが一層好ましい、一方、界面活性剤量は、5質量%以下程度であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であってよい。
前処理液は水を含むことが好ましい。水は、前処理液の溶媒、すなわちビヒクルとして機能するものである。水は、無害で安全性が高く、VOCのような問題が無いので、前処理された基材を環境にやさしいものとすることができる。
水としては、特に制限されないが、例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水、脱イオン水等が挙げられる。
前処理液中の水の含有量は、処理液全量の15質量%以上であることが好ましく、40重量%以上であることがより好ましく、例えば、50質量%以上、または60質量以上であってよい。
水の配合量の上限値は、特に限定はされないが、例えば、水の含有量は95質量%以下であってよい。
前処理液には、前処理液の機能を阻害しない限り、上記の成分以外に、他の成分を添加することができる。他の成分としては、例えば、定着向上剤(ノニオンやカチオンの樹脂等)、消泡剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤等が挙げられる。
前処理液の製造方法は、特に限定されず、通常の方法により適宜製造することができる。例えば、スリーワンモーター等の攪拌機に水、扁平状粒子、及び、その他成分を、一括または分割して投入し混合することによって製造できる。また、必要に応じビーズミル等の公知の分散機を用いても良い。
<インクセット>
本発明の一実施形態であるインクセットは、上記の前処理液と、水及びアニオン性粒子を含む水性インクジェットインクを含む。
本実施形態のインクセットを用いるとき、上述の前処理液で予め表面処理することで、基材に付着した扁平状粒子が、インクの基材内部への浸透を抑制または低減することができ、さらに扁平状粒子上のカチオン性水分散性樹脂とインク中のアニオン性粒子の相互作用でインクが凝集し、にじみが抑制された高発色の画像を形成することができる。前処理液については、前述のとおりである。
以下、水性インクジェットインクについて説明する。
インクにはアニオン性粒子が含まれることが好ましい。インク中のアニオン性粒子としては、粒子表面がマイナスに帯電し、負電荷を帯びたアニオン性の色材、樹脂等が挙げられる。
色材としては、顔料及び染料の何れも使用することができ、単独で使用しても両者を併用してもよい。加飾画像の耐候性及び印刷濃度の点から、色材として顔料を使用することが好ましい。
色材の含有量は、インク全量に対して0.01〜20質量%の範囲であることが好ましい。さらには、色材の含有量は0.1質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましく、1質量%以上であることが一層好ましく、また、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、8質量%以下であることが一層好ましい。
染料としては、印刷の技術分野で一般に用いられているものを使用でき、特に限定されない。具体的には、塩基性染料、酸性染料、直接染料、可溶性バット染料、酸性媒染染料、媒染染料、反応染料、バット染料、硫化染料等が挙げられ、これらのうち、水溶性のもの及び還元等により水溶性となるものが使用できる。より具体的には、アゾ染料、ローダミン染料、メチン染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料、トリフェニルメタン染料、ジフェニルメタン染料、メチレンブルー等が挙げられる。これらの染料は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料及び染付レーキ顔料等の有機顔料並びに無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、金属フタロシアニン顔料及び無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。無機顔料としては、代表的にはカーボンブラック及び酸化チタン等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
顔料としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、フェニルスルホン酸基、フェニルカルボキシル基等のアニオン基を有するアニオン性顔料がより好ましい。
インクには、インク中における顔料の分散を良好にするために、インクに必要に応じて顔料分散剤を添加することができる。使用できる顔料分散剤としては、顔料を溶媒中に安定して分散させるものであれば特に限定されないが、例えば、高分子分散剤や顔料分散能をもった界面活性剤に代表される公知の顔料分散剤を使用することが好ましい。高分子分散剤の具体例としては、日本ルーブリゾール株式会社製のソルスパース(商品名)シリーズ、BASFジャパン株式会社製のジョンクリル(商品名)シリーズ、ビックケミー・ジャパン株式会社製のDISPERBYKシリーズ、BYKシリーズ、エボニックジャパン株式会社製のTEGO Dispers 750W、TEGO Dispers 760Wなどが挙げられる。界面活性剤の具体例としては、花王株式会社製デモール(商品名)シリーズのような、アニオン性の脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等、非イオン性のポリオキシアルキレンアルキルエーテル等が挙げられる。
顔料分散剤の含有量は、上記顔料を十分に上記溶媒中に分散可能な量であれば足り、例えば顔料1に対し質量比で0.01〜2の範囲内で、適宜設定できる。
顔料表面を親水性官能基で修飾した自己分散顔料を使用してもよい。自己分散顔料の市販品の例としては、たとえば、キャボットジャパン株式会社製CAB−O−JETシリーズ(CAB−O−JET200、300、250C、260M、270Y、465M)、オリヱント化学工業株式会社製BONJETシリーズ(BONJET BLACK CW−1、CW−2、CW−4)等が挙げられる。顔料を樹脂で被覆したマイクロカプセル化顔料を使用してもよい。
インクには、水分散性樹脂が含まれることが好ましい。これにより、インクの定着性を向上させることが出来る。
水分散性樹脂として、粒子表面がマイナスに帯電し、負電荷を帯びたアニオン性の水分散性樹脂を用いることが好ましい。これは、水に溶解することなく粒子状に分散して水中油(O/W)型エマルションを形成できるものである。自己乳化型樹脂のように、樹脂が有するアニオン性の官能基が粒子表面に存在するものでもよいし、分散性樹脂表面にアニオン性の分散剤を付着させる等の表面処理がされたものでもよい。アニオン性の官能基は、代表的にはカルボキシ基、スルホ基等であり、アニオン性の分散剤は、陰イオン界面活性剤等である。表面がアニオン性であると、上記前処理液中のカチオン性水分散性樹脂との化学的な相互作用が得られ、その結果、色材の定着を一層強固なものとして画像の耐久性をより高めることができる。
ここで、アニオン性の強さは、前記同様、流動電位法で測定される電荷密度で表すことができ、コロイド粒子電荷量計(AFGANALYTIC GmbH製、Model CAS)で、測定するインクをイオン交換水で100倍に希釈した液を用いて、滴定液として0.0025Nポリ塩化ジアリルジメチル-アンモニウム溶液(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いて測定した値で−20μeq/g以下であることが好ましく、さらに、−40μeq/g以下であることが好ましい。
樹脂の種類としては、透明の塗膜を形成する樹脂を用いることが好ましい。また、インクの製造に際し、樹脂エマルションとして配合することができる。代表的には、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル−(メタ)アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル−エチレン共重合体樹脂、及びそれらの樹脂エマルション等が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて使用できる。ここで、「(メタ)アクリル樹脂」は、アクリル樹脂とメタクリル樹脂の双方を示す。上記のとおり、これらの樹脂にアニオン性の官能基を導入するか、又は、アニオン性分散剤等で表面処理して、マイナスの表面電荷を与えることができる。
これらの水分散性樹脂(又はそのエマルション)のうち、インクジェットヘッドからの安定吐出性能の観点、及び基材に対する密着性の観点から、ウレタン樹脂(エマルション)を用いることが好ましい。かかる樹脂エマルションの具体例としては、第一工業製薬株式会社製のスーパーフレックス300、460、420、470、460S、150HS、740、DSM株式会社製のNeoRez R−9660、R−2170、R−966、R−967、R−650、R−986、R−9603、株式会社ADEKA製アデカボンタイターHUX−370、380などが挙げられる。
また、インク中での安定性の観点から、(メタ)アクリル樹脂又は(メタ)アクリル樹脂共重合体を用いることも好ましい。具体的には、ジャパンコーティングレジン株式会社製のモビニール702、1711、6520、8020、BASFジャパン株式会社のジョンクリル7100、PDX−7370、PDX−7341、DIC株式会社製のボンコートEC−905EF、5400EF、CG−8400、DSM株式会社製Neocryl BT−62などが挙げられる。
水分散性樹脂は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等の1種単独の樹脂エマルションから構成されてもよいし、又は、複数種の樹脂エマルションを組み合わせて構成されてもよい。
エマルションを形成する水分散性樹脂は、インクジェット印刷に適した粒子径であれば良く、一般的には平均粒径(動的光散乱法により体積基準で測定したメジアン径)で300nm以下であることが好ましい。平均粒径のより好ましい値は250nm以下であり、さらに好ましい値は200nm以下であり、一層好ましい値は150nm以下である。平均粒径の下限値は、特に限定はされないが、インクの保存安定性の観点からは、5nm以上程度であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。
インク中における水分散性樹脂の量(固形分量)は、色材と樹脂の比率(色材:樹脂)で1:0.5〜1:7(質量比)が好ましい。樹脂の含有量をこの
範囲にすることで、基材の表面に印刷された画像の耐水擦過性と高画質性を十分に確保することができる。色材1に対する樹脂の比率が0.5より小さいと、顔料の定着性が悪くなる可能性があり、7より大きいと、粘度が高くなり、インクを吐出するヘッドからインクを吐出できなくなる可能性がある。
また、インク中にはインクの表面張力を低下させ、インクジェットヘッドに導入した際の吐出安定性を確保し、また印刷対象基材にインクを速やかに浸透させるために、表面張力低下剤を添加することができる。表面張力低下剤としては、さらに水分散性樹脂の凝集を抑制する効果も有している界面活性剤、例えば、前処理液に配合されると同様のノニオン性界面活性剤またはアニオン性の界面活性剤を用いることもできる。顔料分散機能と表面張力低下機能の双方を備える界面活性剤を使用してもよい。
アニオン性界面活性剤としては、花王株式会社製エマールシリーズ(エマール0、エマール10、エマール2F、エマール40、エマール20C)、ネオペレックスシリーズ(ネオペレックスGS、ネオペレックスG−15、ネオペレックスG−25、ネオペレックスG−65)、ペレックスシリーズ(ペレックスOT−P、ペレックスTR、ペレックスCS、ペレックスTA、ペレックスSS−L、ペレックスSS−H)、デモールシリーズ(デモールN、デモールNL、デモールRN、デモールMS)が挙げられる。
インク中の表面張力低下剤の量は、0.1質量%以上程度であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが一層好ましい。一方、表面張力低下剤量は、5質量%以下程度であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であってもよい。
インクには、インクの機能を阻害しない限り、上記の成分以外に、例えば、消泡剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、分散助剤等の他の成分を添加できる。ここでいう分散助剤とは、すでに分散されている顔料分散体に追加で添加する分散剤のことで、分散助剤としては、一般的な分散剤を使用することができる。
インクの製造方法は、特に限定されず、公知の方法により適宜製造することができる。例えば、ビーズミル等の公知の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等の公知のろ過機を通すことにより調製できる。例えば、予め水と色材の全量を均一に混合させた混合液を調製して分散機にて分散させた後、この分散液に残りの成分を添加してろ過機を通すことにより調製することができる。
インクセットは、必要に応じて、上述の前処理液及び/又は水性インクジェットインクを複数含んでもよい。インクセットは、例えば、必要に応じて、その他のインク及び/又は処理液等を含んでもよい。
<加飾物の製造方法>
本発明の一実施形態の加飾物の製造方法は、上述の前処理液を基材の表面に付着させる前処理工程、及び、前処理工程の後に、上述の水性インクジェットインクを用いて基材の表面にインクジェット印刷する工程を含む。
本実施形態の加飾物の製造方法では、上述の前処理液で予め表面処理することで、基材に付着した扁平状粒子が、インクの基材内部への浸透を抑制または低減することができるので、基材表面に高発色の画像を形成することができる。
前処理液及びインクについては、前述のとおりである。上述の通り、「加飾」は装飾と同義であって、印刷画像を形成することを意味しており、「加飾された」とは印刷画像を有することを意味する。この加飾された部分は、対象物、すなわち基材の全面であっても一部であってもよい。
本発明が使用できる基材としては特に制限はなく、紙、布、機能性多孔質材(調湿、吸音、断熱等)、木材、コンクリートなどの浸透基材や、樹脂シート、金属板、ニス塗工された木材、セラミックなどの低浸透または非浸透基材が好適に使用できる。本発明は、特に浸透基材で効果を大きく発揮できる。
前処理液の基材表面への付着は、刷毛、ローラー、バーコーター、エアナイフコーター、スプレーを使用して基材表面に一様に塗布することによって行ってもよいし、又は、インクジェット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷などの印刷手段によって画像を印刷することで行ってもよい。すなわち、前処理液は、基材表面の全面に塗布されてもよいし、必要な箇所にのみ、例えば上記インクを用いたインクジェット印刷が行われる箇所にのみ塗布されてもよい。また、前処理液の付着箇所は、基材の表面のみではなく、孔の内部(内面)を含んでいてもよい。
前処理液の塗工量(付着量)は、基材の種類・材質等によっても異なるため一律に規定することはできないが、加飾画像の一定の発色及び光沢を達するためには、塗布面積あたりの不揮発分量として、例えば1g/m 〜50g/m 程度であることが好ましく、5g/m 〜30g/m 程度であることがより好ましい。
前処理液の塗工量(付着量)は、扁平状粒子の塗工量として、0.1g/m 以上が好ましく、0.2g/m 以上がより好ましい。前処理液の塗工量(付着量)が、扁平状粒子の塗工量として0.1g/m 以上の場合、発色性を向上させやすい。また、前処理液の塗工量(付着量)は、扁平状粒子の塗工量として5.0g/m 以下が好ましく、3.0g/m 以下がより好ましく、1.0g/m 以下がさらに好ましい。前処理液の塗工量(付着量)は、扁平状粒子の塗工量として、例えば、0.1g/m 〜1.0g/m であってよい。
前処理液塗布後に基材を加熱してもよく、前処理液中の水やその他の揮発性成分を完全に揮発させ、前処理液中の扁平状粒子を水分散性樹脂によって基材に定着させることができる。基材を温める方法は任意であり、加熱温度は、特に限定されず、例えば50〜200℃の範囲で加熱できる。
インクジェット印刷工程では、上述の水性インクジェットインクを用い、基材の表面にインクジェット印刷する。
基材への水性インクを用いたインクジェット印刷は、一般的な記録ヘッドを用いて行うことができ、印刷方式や使用する装置等に特に制限はない。印刷(加飾)後は、乾燥させることにより、基材の表面に、インクジェット印刷されたインクから水及びその他の揮発性成分が揮発して、色材等を含む画像を備えてなる、加飾物が得られる。
画像の記録面積は、特に限定されず、任意の絵柄又は文字、あるいは絵柄と文字との組合せ等を、自由に選択することができる。
なお、高品位の加飾画像を得るために、(i)インク滴を小さくする、(ii)印刷速度を遅くする、(iii)片方向印刷をする、(iv)基材を温めながら印刷する、(v)これらの方法を組み合わせて印刷するなどの印刷条件を用いることが有効である。
印刷終了後に基材を加熱してもよく、インク中の水やその他の揮発性成分を完全に揮発させ、インク中の色材を水分散性樹脂によって基材に定着させることができる。基材を温める方法は任意であり、例えば50〜200℃の範囲で加熱できる。
加飾物の製造方法は、必要に応じて、その他の工程を含んでよい。
例えば、上記前処理液による前処理の前に、別の任意の処理が行われてよい。また、印刷前の基材は、上記前処理液による前処理工程後に、任意の別の処理が行われてもよい。
加飾を行うための装置は、特に限定されないが、例えば、基材を載置するための載置部と、基材の表面に前処理液を塗布するための前処理液塗布部と、続いてインクを吐出してインクジェット印刷するように配置されたインクジェット記録ヘッドとを少なくとも備え、さらに好ましくは、基材を加熱するための加熱部を任意に備えた加飾装置を用いることができる。
以下、本発明を実施例に基づきより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断らない限り、「%」は「質量%」である。表中の各成分の配合量も「質量%」で示す。
<前処理液の製造>
表1、2に記載の各材料を表1、2に示す割合でプレミックスし、その後、10cmの回転羽で400rpmで10分撹拌し、実施例1〜10及び比較例1〜4の前処理液を得た。
表1、2記載の各材料の詳細は下記の通りである。
「メタシャイン1030RY:日本板硝子株式会社製、酸化チタン被覆ガラスフレーク、平均長径 30μm
「MagnaPearl 3000」:BASFジャパン株式会社製、酸化チタン被覆マイカ、平均長径 4μm
「アルペーストEMR−D5660」:東洋アルミニウム株式会社製、酸化チタン被覆アルミフレーク水系分散物、平均長径 10μm
「PP−17」:明成化学工業株式会社製、カチオン性水分散性複合樹脂水系分散物、平均粒径2.5μm
「アクアテックスAC−3100」:ジャパンコーティングレジン株式会社製、カチオン性水系エチレン/メタクリル酸水系分散物、平均粒径0.7μm
「ハイマックスSC−700L」:株式会社ハイマックス製、ポリビニルアミジン系水溶性カチオン樹脂
「塩化マグネシウム六水和物」:富士フイルム和光純薬株式会社製、純度97%(実施例では無水塩化マグネシウム量に換算)
「シルフェイスSAG002」:日信化学工業株式会社製、シリコーン系界面活性剤
「サーフィノール485」:日信化学工業株式会社製、アセチレングリコール系界面活性剤
「シーホスターKE−P250」:株式会社日本触媒製、水分散用シリカ粒子、粒径2.5μm
「ジエチレングリコール」:富士フイルム和光純薬株式会社製
上記の材料において、樹脂の「平均粒径」は、動的光散乱式粒子径分布測定装置「ナノ粒子解析装置nano Prtica SZ−100」(株式会社堀場製作所製)を用いて、各樹脂分散液を粒子濃度0.5質量%となるように精製水で希釈して、温度25℃で測定した体積基準のメジアン径である。
上記の材料において、扁平状粒子の平均長径は、SEM写真で任意に選択した20個の粒子のそれぞれについて長径を求め、これの中央値である。
<インクの製造>
以下の各材料を以下に示す割合でプレミックスし、その後、10cmの回転羽で400rpmで10分撹拌し、マゼンタ(M)インクを得た。
「CAB−O−JET 465M」:キャボットジャパン株式会社製、水系自己分散マゼンタ顔料分散体、有効成分15.2%、30.0質量%
「アデカボンタイターHUX−370」:株式会社ADEKA製、アニオン性水系ウレタン樹脂エマルション、有効成分33.0%、8.0質量%
「ジエチレングリコール」:富士フイルム和光純薬株式会社製、20.0質量%
「シルフェイスSAG002」:日信化学工業株式会社製、シリコーン系界面活性剤、有効成分100%、1.0質量%
「イオン交換水」41.0質量%
<加飾物の製造>
表1、2に示す各実施例及び比較例の前処理液を、理想用紙薄口(理想科学工業株式会社製)に対して、10g/mの量でそれぞれ塗布した。前処理液塗布は、スプレーで行い、処理後120℃のオーブンで30分間乾燥させて前処理物品を得た。その後、前述のインクを市販の水性顔料インクジェットプリンタのインクヘッドに導入し、フォント6のKの細字、5cm×5cmのベタ画像を印刷した。印刷終了後、120℃のオーブンで30分間加熱燥したものを、加飾物とした。
上記のようにして得られた各実施例及び比較例の加飾された基材について、下記の評価を行った。
<にじみ>
にじみは、印刷物のKの細字のエッジのにじみを顕微鏡で観察し、下記の評価基準により判定した。結果は、表1、2の「にじみ」に示す。
AA:にじみが全くない
A:にじみがほぼない
B:にじみがあるが実用上問題ない
C:にじみがひどく実用上問題がある
<メタリック感>
メタリック感は、印刷物を目視で観察し、下記の評価基準により判定した。結果は、表1、2の「メタリック感」に示す。
AA:メタリック感が非常に強い
A:メタリック感が強い
B:メタリック感が弱い
C:メタリック感がない
<印刷物の耐水性>
印刷物の耐水性は、水を付けた綿棒に100gの荷重をかけ、印刷物のベタ部上で2cmの長さの往復をくり返し、ベタ部が剥離し始めた回数を測定し、以下の基準で評価した。結果は、表1、2の「耐水性」に示す。
A:50回以上
B:20〜49回
C:20回未満
Figure 2020138439
Figure 2020138439
水、扁平状粒子、およびカチオン性水分散性樹脂を含み、電荷密度が50μeq/g以上である前処理液による前処理が行われた実施例1〜10では、にじみ、メタリック感、及び、耐水性のいずれの項目においても優れた結果を示した。
これに対し、電荷密度が50μeq/g未満である比較例1、カチオン性水分散性樹脂を含まない比較例2〜4では、いずれも画像にじみが発生し、比較例2〜4に関しては印刷物の耐水性においても低い評価結果であった。

Claims (3)

  1. 水、扁平状粒子、およびカチオン性水分散性樹脂を含み、電荷密度が50μeq/g以上である前処理液を、基材の表面に付着させる前処理工程、及び、前記前処理工程の後に、水、アニオン性の粒子を含む水性インクジェットインクを用いて基材の表面にインクジェット印刷する工程、を含むことを特徴とする、加飾物の製造方法。
  2. 前記前処理液の電荷密度が100μeq/g以上であることを特徴とする、請求項1に記載の加飾物の製造方法。
  3. 水、扁平状粒子、およびカチオン性水分散性樹脂を含み、電荷密度が50μeq/g以上である前処理液と、水、アニオン性の粒子を含む水性インクジェットインクと、を含む、インクセット。
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