JP2020131293A - 立方晶窒化ほう素基焼結体製切削工具 - Google Patents

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史朗 小口
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庸介 宮下
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Abstract

【課題】耐チッピング性と耐クレータ摩耗性にすぐれたcBN工具を提供する。【解決手段】硬質相としてcBN粒子を含有し、結合相としてTi化合物粒子を含有するcBN焼結体によって少なくとも刃先が形成されているcBN工具において、前記Ti化合物粒子の平均粒径は250nm以下であり、前記Ti化合物粒子の界面には、W成分とCo成分とFe成分が共存するW−Co−Fe相が存在し、前記W−Co−Fe相は、cBN粒子相互間に途切れることなく存在することで熱伝達路を構成しており、cBN焼結体の断面をSEMで元素マッピングした場合、W−Co−Fe相を介して相互に繋がっているcBN粒子の個数割合は、観察視野のcBN粒子の総個数の20%以上である。【選択図】 図3

Description

本発明は、立方晶窒化ほう素(以下、「cBN」で示す)基焼結体(以下、「cBN焼結体」で示す)からなるすぐれた耐チッピング性と耐クレータ摩耗性を兼ね備えたcBN焼結体製切削工具(以下、「cBN工具」で示す)に関する。
cBN焼結体は、ダイヤモンドに次ぐ高硬度、熱伝導性を有し、さらに、鉄系材料との親和性が低いという点から、鋼、鋳鉄等の鉄系被削材の切削加工用の工具として、従来から広く利用されている。
しかし、cBN焼結体からなるcBN工具に求められる性能は、被削材の種類、加工条件等に応じて異なるので、必要とされる性能に対応させるべく、従来からいくつかの提案がなされている。
例えば、特許文献1には、焼入れ鋼やFCD鋳鉄、及びADI鋳鉄などの鉄系難削材切削加工用のcBN焼結体として、「体積%で、87%以上99%以下のcBN成分を有し、かつ熱伝導率が100W/m・K以上のcBN焼結体であり、cBN焼結体を構成しているcBN成分中のNに対するBのモル比が1.10以上1.17以下であり、さらに結合材成分として、Co化合物、Al化合物、W化合物及び酸素化合物から選択される少なくとも1種及び炭素とを含有するcBN焼結体の最表面が、4a,5a,6a族元素及びAlの中から選択される少なくとも1種以上の元素と、C,N,Oの中から選択される少なくとも1種以上の元素の化合物からなる0.5μm〜12μmの厚みを有する耐熱膜で被覆された高品位表面性状加工用cBN焼結体」が提案されている。
また、特許文献2には、「体積%で、60%以上95%以下のcBN成分を有するcBN焼結体であって、該cBN焼結体の熱伝導率が70W/m・K以上であり、結合材成分として4a,5a,6a族元素の窒化物、炭化物、炭窒化物から選択される少なくとも1種と、前記結合材中の割合が重量%で20%以下のAl化合物を有し、前記cBN成分以外の成分においてCとNのモル数の和に対する4a,5a,6a族元素のモル数の和Mとの比が1.3以上1.6以下のcBN焼結体の最表面が、4a,5a,6a族元素、及びAlの中から選択される少なくとも1種以上の元素と、C,N,Oの中から選択される少なくとも1種以上の元素の化合物からなる0.5μm〜12μmの厚みを有する耐熱膜で被覆されている高品位表面性状加工用cBN焼結体」が提案されている。
また、特許文献3には、「cBNと結合材とを含む複合焼結体であって、前記cBNは、前記複合焼結体中に25体積%以上80体積%以下含まれ、前記結合材は、Ti系化合物群を含み、前記Ti系化合物群は、少なくともTiを含む化合物を1種以上含むものであって、かつ、少なくとも第1成分と第2成分とを含む2つ以上の成分により構成され、前記複合焼結体の少なくとも一断面における前記Ti系化合物群の粒度分布を、横軸を所定の粒径範囲で区分し、縦軸を前記各粒径範囲の粒子が占める割合とする粒度分布曲線で示す場合において、前記粒度分布曲線は、極大値を2つ以上有する形状を有し、その極大値のうち最大の極大値を示す場合の粒径をdとし、2番目に大きい極大値を示す場合の粒径をdとすると、前記第1成分は、平均粒径を前記dとし、前記dは、0.05μm以上0.15μm以下であり、前記第2成分は、平均粒径を前記dとし、前記dは、0.15μm以上0.5μm以下である複合焼結体」が提案されている。
そして、前記複合焼結体中において、結合材を構成する相対的に微粒の第1成分は、耐クレータ摩耗性と靭性を低下させるものの、耐衝撃チッピング性を向上すること、一方、結合材を構成する相対的に粗粒の第2成分は、耐衝撃チッピング性を低下させるものの、耐クレータ摩耗性および靭性を向上することから、結合材が前記第1成分と第2成分の組合せからなる複合焼結体は、耐衝撃チッピング性と耐クレータ摩耗性との両者が向上するとされている。
また、特許文献4には、「cBNと結合材とを含む複合焼結体であって、前記cBNは、前記複合焼結体中に25体積%以上80体積%以下含まれ、前記結合材は、Ti系化合物群を含み、前記Ti系化合物群は、少なくともTiを含む化合物を1種以上含むものであって、かつ粒径が0.1μm以下の粒子で構成される第1微粒成分を含み、また、前記第1微粒成分とともに第2微粒成分を含み、前記第2微粒成分は、粒径が0.1μmより大きく0.25μm以下の粒子で構成され、前記第1微粒成分および前記第2微粒成分は、これら両者を合わせて、前記複合焼結体の少なくとも一断面において、前記結合材が占める面積の90%以上を占める複合焼結体。」が提案されている。
そして、粒径が0.1μm以下の前記第1微粒成分は、耐欠損性を向上させ、一方、粒径が0.1μmより大きく0.25μm以下の第2微粒成分は耐摩耗性を向上させることから、前記複合焼結体の耐欠損性と耐摩耗性が向上するとされている。
特許第4528786号公報 特許第4704360号公報 特許第5504519号公報 特開2011−207689号公報
前記特許文献1、2で提案されるcBN焼結体から作製されたcBN工具によれば、cBN焼結体の熱伝導性が高いことから、切削加工時に発生する高熱が、刃先から他の部位へ効率的に放熱され、切削中の刃先温度の上昇を抑制することができるため、耐クレータ摩耗性は向上するが、その反面、例えば、高硬度鋼(例えば、HRC58−62)の断続切削加工においては、チッピングを発生しやすく、これを原因として工具寿命が短命となるという問題があった。
また、前記特許文献3、4で提案される複合焼結体では、複合焼結体の結合相を構成する粒子の粒径を調整することで、耐衝撃チッピング性と耐クレータ摩耗性、あるいは、耐欠損性と耐摩耗性の両立を図っているが、この複合焼結体から作製した切削工具を、高硬度鋼の断続切削に供した場合、複合焼結体の結合相を構成する粒径の小さな粒子(特許文献3の第1成分、また、特許文献4の第1微粒成分)の存在が、複合焼結体の熱伝導性を低下させ、耐クレータ摩耗性を低下させるために、耐チッピング性と耐クレータ摩耗性の両立は未だ十分であるとはいえない。
そこで、高硬度鋼の断続切削加工に供した場合であっても、すぐれた耐クレータ摩耗性と耐チッピング性を発揮するcBN工具の開発が望まれている。
本発明者等は、前記課題を解決するため、すぐれた耐クレータ摩耗性と耐チッピング性とを兼ね備えたcBN焼結体について鋭意研究を進めたところ、以下の知見を得た。
cBN焼結体は、主として、硬質相成分であるcBN粒子と、結合相成分(例えば、TiN粒子、TiC粒子、TiCN粒子等のTi化合物粒子)からなるが、結合相粒子を微細化した場合には、結合相粒子間の界面が増加するため、前述のとおり、熱伝導性は低下し、耐クレータ摩耗性が低下することになり、一方、仮に、熱伝導性の低下を補い、耐クレータ摩耗性を高めるためにcBN含有量を増加させた場合には、前記特許文献1、2について述べたと同様に、耐チッピング性が低下する。
そこで、本発明者らは、cBN工具の耐クレータ摩耗性と耐チッピング性の両者を高めるためのcBN焼結体の結合相組織に着目して研究を進め、次のような知見を得た。
即ち、cBN焼結体の結合相を構成するTi化合物粒子の粒径を微細化した場合には、前述のとおり、耐チッピング性と耐クレータ摩耗性の両立を図ることは困難であるが、cBN焼結体の結合相組織として、結合相中にW成分とCo成分とFe成分が共存する熱伝導性にすぐれたW−Co−Fe相を形成し、さらに、このW−Co−Fe相が、Ti化合物粒子の界面に存在し、cBN粒子間を前記W−Co−Fe相を介して熱的に繋ぐ結合相組織を形成した場合には、cBN焼結体の熱伝導性の低下を抑制することができ、その結果、cBN工具の耐クレータ摩耗性が向上することを見出したのである。
つまり、本発明者らは、cBN焼結体において、微細なTi化合物粒子の界面に、W成分とCo成分とFe成分が共存するW−Co−Fe相が形成され、かつ、このW−Co−Fe相が、cBN粒子間の熱伝導路を形成するようにcBN粒子相互を熱的に繋ぐ結合相組織を形成した場合には、このcBN焼結体からなるcBN工具は、高熱発生を伴い、刃先に高負荷が作用する高硬度鋼の断続切削条件に供した場合でも、すぐれた耐チッピング性を発揮すると同時にすぐれた耐クレータ摩耗性をも兼ね備えるため、長期の使用にわたって、すぐれた切削性能を発揮し、また、工具の長寿命化が図られることを見出したのである。
ここで、結合相を構成するTi化合物粒子の界面に、W成分とCo成分とFe成分が共存するW−Co−Fe相が存在し、かつ、このW−Co−Fe相がcBN粒子相互を熱的に繋ぐ熱伝導路の機能を備える結合相組織を有するcBN工具は、例えば、次のようにして作製することができる。
まず、Ti化合物からなる結合相形成用粉末を、粒径が30nm以上250nm以下になるように粉砕して微細化し、この微細粉砕粉に、ナノW粉末とナノCo粉末とナノFe粉末と、cBN焼結体の硬質成分であるcBN粒子粉末の混合粉末を投入したのち混合し、圧粉成形体を作製し、次いで、この圧粉成形体を超高圧焼結条件下で焼結することによって、Ti化合物粒子からなる結合相粒子の界面に、W−Co−Fe相が存在し、かつ、このW−Co−Fe相がcBN粒子相互を熱的に繋ぐ熱伝導路の作用を果たす結合相組織を有するcBN焼結体を作製することができる。
次いで、前記で作製したcBN焼結体を、WC基超硬合金製インサート本体のろう付け部(コーナー部)にろう付けし、必要に応じ、研磨加工、ホーニング加工等を施すことにより、少なくとも刃先が前記cBN焼結体で構成された所望のインサート形状をもったcBN工具を作製することができる。
そして、前記で作製したcBN工具は、所定の結合相組織を備えることから、高熱発生を伴い、刃先に高負荷が作用する高硬度鋼の断続切削条件等に供した場合、すぐれた耐チッピング性と耐クレータ摩耗性を兼ね備え、長期の使用にわたって、すぐれた切削性能を発揮し、工具の長寿命化が図られる。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「(1)硬質相として立方晶窒化ほう素粒子を含有し、結合相としてTi化合物粒子を含有する立方晶窒化ほう素基焼結体によって少なくとも刃先が形成されている立方晶窒化ほう素基焼結体製切削工具において、
前記Ti化合物粒子の平均粒径は250nm以下であり、
前記Ti化合物粒子の界面には、W成分とCo成分とFe成分が共存するW−Co−Fe相が存在し、
前記W−Co−Fe相は、立方晶窒化ほう素粒子相互間を繋いで途切れることなく存在することで熱伝達路を構成していることを特徴とする立方晶窒化ほう素基焼結体製切削工具。
(2)前記立方晶窒化ほう素基焼結体の断面を走査型電子顕微鏡による元素マッピングで観察した場合、前記W−Co−Fe相が途切れずに、W−Co−Fe相を介して相互に繋がっている立方晶窒化ほう素粒子の個数は、観察視野に存在する立方晶窒化ほう素粒子の総個数の20%以上であることを特徴とする前記(1)に記載の立方晶窒化ほう素基焼結体製切削工具。
(3)前記W−Co−Fe相を構成するWとCoとFeが、前記立方晶窒化ほう素基焼結体に占める合計含有量は、2質量%以上10質量%以下であり、かつ、Feの含有量は0.03質量%以上1.0質量%以下であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の立方晶窒化ほう素基焼結体製切削工具。
(4)前記Ti化合物粒子は、TiN粒子、TiCN粒子およびTiC粒子の内から選ばれる何れか一種または二種以上であることを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の立方晶窒化ほう素基焼結体製切削工具。」
を特徴とする。
本発明のcBN工具は、cBN焼結体の結合相を構成するTi化合物粒子の界面に、W成分とCo成分とFe成分とが共存するW−Co−Fe相が存在し、このW−Co−Fe相がcBN粒子相互間を繋いで途切れることなく存在することで、cBN粒子間の熱伝導路の作用を果たす結合相組織を有することから、cBN含有量を増加させなくてもcBN焼結体の熱伝導性を向上させることができ、その結果、cBN含有量を増加させずにcBN工具の耐クレータ摩耗性を向上させることができる。
また、本発明のcBN工具は、cBN焼結体の結合相を構成するTi化合物粒子の界面に形成された前記W−Co−Fe相が、Ti化合物粒子の粒成長抑制作用を有し、結合相粒子の粗大化を抑制することから、cBN焼結体における結合相粒子の粒径を、例えば、平均粒径250nm以下に微細化することができ、これによって、cBN工具の耐チッピング性を向上させることができ、しかも、結合相粒子が微細であっても、前記W−Co−Fe相がcBN粒子間の熱伝導路を形成していることで、cBN焼結体の熱伝導性が低下することはなく、その結果、cBN工具の耐クレータ摩耗性を低下させることもない。
よって、本発明のcBN工具は、高熱発生を伴い、刃先に高負荷が作用する断続切削条件に供した場合でも、耐チッピング性、耐摩耗性ともにすぐれ、工具寿命の延命化が図られる。
本発明のcBN焼結体断面を、走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」で表す。倍率:50,000倍)−エネルギー分散X線分光法(以下、「EDS」で表す)によって取得した画像を2値化処理した元素マッピング図の一例を示し、(a)〜(c)は、それぞれ、W,Co,Feの元素マッピング図であり、(d)、(e)は、それぞれ、B,Nの元素マッピング図である。前記各画像において、元素が存在する領域が白い領域である。 (a)は、B及びNの元素マッピング図を重ね合わせて得られるcBN粒子の組織状態を示す概略模式図であり、(b)は、W,Co及びFeの元素マッピング図を重ね合わせて得られるW−Co−Fe相の組織状態を示す概略模式図である。 図2(a)と図2(b)を重ね合わせることによって作成したcBN焼結体の組織状態を示す概略模式図である。 図3に示される組織状態のcBN焼結体において、W−Co−Fe相を介して、cBN粒子が繋がっているか否かを判断するための概略説明図であって、(a)は、W−Co−Fe相を介して、cBN粒子が繋がっている状態を示し、(b)は、W−Co−Fe相を介して、図中、右上のcBN粒子が繋がっていない状態を示す概略説明図である。なお、前記の図2〜4は、本発明の理解をわかりやすくするための模式図であって、図1の元素マッピング図とは直接には対応していないことに留意されたい。
本発明のcBN工具について、以下に説明する。
本発明のcBN工具の少なくとも刃先を構成するcBN焼結体は、硬質相成分としてcBN粒子を含有し、また、主たる結合相成分としてTiC粒子、TiN粒子あるいはTiCN粒子等のTi化合物粒子を含有する。
主たる結合相成分はTi化合物粒子であるが、これに加えて、製造工程で不可避的に混入する不純物成分、あるいは、焼結時の反応生成物であるAl、AlN、TiAlN等のAl化合物等が結合相中に含有されることは許容される。
cBN焼結体に占めるcBN粒子の含有割合:
本発明のcBN焼結体において、cBN焼結体に占めるcBN粒子の含有割合が40体積%未満となった場合には、cBN粒子同士が接触し結合相と十分に反応できない未焼結部分の形成は少なくなるが、その反面、cBN焼結体の硬さが低下し、工具としての寿命も低下してしまうため、cBN焼結体に占めるcBN粒子の含有割合は、40体積%以上とすることが好ましい。
一方、cBN粒子の含有割合が85体積%を超えるようになると、cBN粒子同士が直接接する部分が多くなることで高熱伝導性を有するものの、切削加工用工具として使用した場合に、焼結体中にクラックの起点となる空隙が生成しやすくなり、耐欠損性が低下するので、cBN焼結体に占めるcBN粒子の含有割合は、85体積%以下とすることが好ましい。
したがって、cBN粒子の含有割合は、40〜85体積%とすることが好ましく、より好ましくは、45〜80体積%である。
また、cBN粒子の含有割合を少なくして、しかも、cBN工具としての最高の特性を発揮するのに適したcBN粒子の含有割合は、好ましくは50〜75体積%、より好ましくは、60体積%以上70体積%以下の範囲である。
cBN粒子の含有割合の測定・算出:
cBN焼結体に占めるcBN粒子の含有割合は、cBN焼結体の断面をSEMによって観察して得た二次電子像内のcBN粒子に相当する部分を画像処理によって抜き出し、画像解析によってcBN粒子が占める面積を算出し、その値を画像総面積で除することでcBN粒子の面積比率を算出する。そして、この面積比率を体積%とみなすことで、cBN粒子の含有割合(体積%)を測定することができる。
また、本発明では、SEMで得られた倍率5、000の二次電子像の少なくとも3画像を処理し求めた値の平均値をcBN粒子の含有割合(体積%)としている。
なお、画像処理に用いる観察領域は、cBN粒子の平均粒径の5倍の長さの一辺をもつ正方形の領域とすることが望ましく、例えば、cBN粒子の平均粒径が3μmの場合、15μm×15μm程度、また、cBN粒子の平均粒径が6μmの場合、30μm×30μm程度の観察領域が望ましい。
cBN粒子の平均粒径:
本発明のcBN焼結体におけるcBN粒子の平均粒径は、特に限定するものではないが、0.2〜8μmの範囲とすることが好ましい。
これは次の理由による。
cBN焼結体を切削加工工具の刃先として使用する場合、平均粒径が0.2〜8μmのcBN粒子が焼結体内に分散することにより、工具使用中に工具表面のcBN粒子が脱落して生じる刃先の凹凸形状を起点とするチッピングの発生を抑制することができる。それに加え、工具使用中に刃先に加わる応力により生じるcBN粒子と結合相との界面から進展するクラック、あるいはcBN粒子を貫通して進展するクラックの伝播を、焼結体中に分散したcBN粒子により抑制することができる。そのため、このような切削加工工具は優れた耐欠損性を有する。
したがって、本発明のcBN焼結体におけるcBN粒子の平均粒径は、0.2〜8μmの範囲とすることが好ましく、より好ましい範囲は、0.5〜6μmである。
cBN粒子の平均粒径の測定・算出:
cBN粒子の平均粒径の測定・算出は、以下のようにして求めることができる。
cBN焼結体の断面の所定の領域(例えば、cBN粒子の平均粒径3μmの場合、15μm×15μm(cBN粒子の平均粒径の5倍角)の領域)をSEMで観察し二次電子像を得る。得られた画像を2値化処理してcBN粒子に相当する部分を画像処理にて抜き出し、画像解析により抜き出した各粒子に相当する部分の最大長を各粒子の直径として求める。この直径から、各粒子を球として各粒子の体積を計算する。求めた各粒子の体積を基に、粒子径の積算分布を求める。つまり、各粒子について、その体積とその粒子の直径以下の直径を有する粒子の体積の総和を積算値として求める。各粒子について、全粒子の体積の総和に対する各粒子の上記積算値との割合である体積百分率(%)を縦軸とし、横軸を各粒子の直径(μm)としてグラフを描画し、体積百分率が50%となる粒子の直径(メディアン径)の値を1画像におけるcBN粒子の平均粒径とする。そして、少なくとも3画像に対し上記の処理を行って求めた平均粒径の値の平均値を、cBN焼結体のcBN粒子の平均粒径(μm)とする。
結合相組織:
結合相としてTi化合物粒子を含有する本発明のcBN焼結体は、cBN焼結体の断面を、SEM−EDSにより元素分析すると、例えば、図1に示されるような元素マッピング図が得られる。
図1(a)〜(e)は、倍率50,000倍のSEM−EDSによって取得した本発明のcBN焼結体の断面についての元素マッピング図の一例を示すが、(a)はW、(b)はCo、(c)はFe、(d)はB、(e)はNについての元素マッピング図である。
図1(a)〜(e)に示されるような元素マッピング図を用い、B成分とN成分のマッピング図(図1(d)と(e)参照)を重ね合せることによって、図2(a)の模式図として示されるように、本発明のcBN焼結体におけるcBN粒子の組織状態を確認することができ、また、W成分とCo成分とFe成分のマッピング図(図1(a)と(b)と(c)参照)を重ね合せることによって、図2(b)の模式図として示されるように、本発明のcBN焼結体の結合相中のW−Co−Fe相の存在を確認することができる。
また、図2(a)と(b)に示される元素マッピング図をさらに重ね合せることによって、図3の模式図に示されるように、本発明のcBN焼結体の組織を確認することができる。
なお、前記の図2、図3は、結合相中のW−Co−Fe相の存在と、cBN焼結体の組織状態をわかりやすく理解するための模式図であって、図1の元素マッピング図とは直接には対応していないことに注意が必要である。
図2と図3から、本発明のcBN焼結体においては、は、W成分とCo成分とFe成分とが共存するW−Co−Fe相が、結合相を構成するTi化合物粒子の界面に、cBN粒子相互間を繋いで途切れなく存在しているが、前記W−Co−Fe相は、cBN粒子の周囲を覆う(取り囲む)ようには形成されていない(存在していない)ことが理解される。
そして、前記W−Co−Fe相は、Ti化合物粒子よりも熱伝導率が高く、cBN粒子相互間に途切れなく存在し、cBN粒子相互間を繋ぐ熱伝達路としての機能を備えるため、cBN焼結体の熱伝導性の向上が図られる。
さらに、前記W−Co−Fe相は、高温・高圧の焼結条件下での結合相粒子の粗大化を抑制することから、cBN焼結体の微細な結合相組織の維持に貢献する。
cBN焼結体の熱伝導性を向上させるためには、cBN焼結体の断面をSEMで観察し、元素マッピングを求めた場合、W−Co−Fe相を介して相互に繋がっているcBN粒子の個数は、観察視野に存在するcBN粒子の総個数の20%以上、より好ましくは55%以上である。20%未満である場合には、cBN焼結体の熱伝導性の大きな向上効果を期待できない。
また、cBN焼結体の断面について電子線マイクロアナライザー(以下、「EPMA」で表す)を用いた定性・定量分析を行い、定性分析で検出された元素についてZAF定量分析法によりWとCoとFeの含有量(質量%)を求めた場合、cBN焼結体全体におけるTi,Al,B,N,C,O,W,Co,Feの合計を100質量%としたときに占めるWとCoとFeの合計含有量は、2質量%以上10質量%以下であることが好ましく、さらに、Feの含有量は、0.03質量%以上1.0質量%以下であることが好ましい。
これは、WとCoとFeの合計含有量が2質量%未満であると、熱伝導性向上効果が得られず、一方、10質量%以上になると、W−Co−Fe相の粗大凝集粒が形成され、これがチッピングの発生起点となり、耐チッピング性が低下するという理由による。
特に、W−Co−Fe相におけるFeの含有量が0.03質量%以上で熱伝導性向上効果が大きくなるが、Feの含有量が1.0質量%を超えると粗大凝集粒の形成傾向が高まり、これがチッピングの発生起点となることから、W−Co−Fe相におけるFeの含有量は、0.03質量%以上1.0質量%とすることが好ましい。
Ti化合物粒子の平均粒径:
結合相を構成するTi化合物粒子の大きさは、cBN焼結体の強度、熱伝導性に影響を与え、平均粒径が250nmを超えると、熱伝導性が向上する反面、cBN焼結体の強度の低下を招き、また、cBN工具として使用した場合にチッピングを発生しやすくなることから、Ti化合物粒子の平均粒径は250nm以下であること、好ましくは、30nm以上200nm以下の範囲であることが望ましい。
なお、Ti化合物粒子の平均粒径が250nm以下、あるいは、30nm以上200nm以下の範囲に微細化され、Ti化合物粒子間の界面の長さが増加した場合であっても、本発明では、Ti化合物粒子の界面に熱伝達路としての機能を備えるW−Co−Fe相が存在するために、cBN焼結体の熱伝導性の低下は防止され、その結果、耐クレータ摩耗性の低下が防止される。
Ti化合物粒子の平均粒径の測定・算出は、例えば、以下のようにして求めることができる。
まず、cBN焼結体の断面の観察領域を、透過型電子顕微鏡(以下、「TEM」で表す)に付属する結晶方位解析装置を用いて観察する。より具体的に言えば、Ti化合物粒子を観察するために結晶粒径と同程度の厚さ以下に研磨された切片をTEMにセットし、200kVに加速された電子線を前記切片に照射することで、400nm×500nmの範囲で観察を行う。
前記の範囲で結晶方位のマップデータを得る解析方法は以下の通りである。
前記の切片に、0.5〜1.0度に傾けた電子線をPrecession照射しながら、電子線を任意のビーム径及び間隔でスキャンし、連続的に電子線回折パターンを取り込み、個々の測定点の結晶方位を解析する。なお、本測定に用いた回折パターンの取得条件は、カメラ長20cm、ビームサイズ2.2nmで、測定ステップは2.0nmである。
次に、得られた電子線回折パターンから個々の結晶粒を判別するための解析方法は、以下の通りである。
まず、測定点の隣接点同士の結晶方位が5度以上離れている場合に粒界とし、粒界以外の部分を結晶粒、つまりTi化合物粒子と定義した。
この画像を縦4枚×横4枚で連結させて縦1600nm×横2000nmの画像とし、cBN粒子の平均粒径を求めるための前述の手順と同様の手順でTi化合物粒子の平均粒径を求める。
このような測定・算出を複数(3箇所以上)の観察領域で実施し、その平均値を、Ti系化合物粒子の平均粒径(nm)とする。
cBN焼結体の熱伝導率κ:
本発明のcBN焼結体は、結合相中に前記W−Co−Fe相が存在することによりすぐれた熱伝導性を有するが、具体的なcBN焼結体の熱伝導率κの測定法は、例えば以下のとおりである。
まず、cBN焼結体から測定試料を切り出し、切り出した測定試料の寸法を測定し、次いでアルキメデス法によって密度ρを測定する。
ついで、Xeフラッシュアナライザーを用いたレーザーフラッシュ法によって熱拡散率αと比熱容量Cを測定し、次の式を用いて熱伝導率κを算出する。
熱伝導率κ(W/m・k)
=熱拡散率α(mm/sec)×密度ρ(g/cm)×比熱容量C(J/(K・g)
cBN焼結体の製造:
本発明のcBN焼結体は、好ましくは、0.2〜8μmの平均粒径のcBN粒子と、好ましくは、250nm以下の平均粒径のTi化合物粒子を、好ましくは、cBN粒子の体積割合が40〜85体積%(より好ましくは、60体積%以上70体積%以下)となるように配合した混合粉末を作製し、これを超高圧条件下で焼結することによって作製することができる。
まず、結合相を構成する原料粉末(TiN粉末、TiCN粉末、TiC粉末、TiAl粉末、Al粉末など)を準備する。これらの原料粉末を、例えば、超硬合金製容器内に超硬合金製ボールとアセトンと共に充填し、ボールミルにより粉砕及び混合を行う。
その後、cBN焼結体中でW−Co−Fe相を形成するナノW粉末(粒径:800nm以下)とナノCo粉末(粒径:30nm以下)とナノFe粉末(粒径:100nm以下)、さらに、cBN焼結体の硬質相となる平均粒径0.2〜8μmのcBN粒子を添加して、さらに、ボールミルによって混合し、混合粉末を得る。
次いで、この混合粉末を、例えば、5GPa以上の圧力、かつ、1200〜1600℃以上の温度の焼結条件で所定時間超高圧焼結することによって、結合相を構成するTi化合物粒子の粒子間界面に、W−Co−Fe相が存在する結合相組織が形成されたcBN焼結体を作製することができる。
図1は、前記工程で作製した本発明のcBN焼結体断面をSEM観察した際に得た元素マッピングの一例である。
また、cBN焼結体中のW−Co−Fe相の概略模式図を示す図2(b)、さらに、cBN焼結体組織の模式図を示す図3から、結合相を構成するTi化合物粒子の界面には、W−Co−Fe相がcBN粒子相互間を繋いで途切れることなく存在していることが観察される。
一方、W−Co−Fe相は、cBN粒子の周囲を覆う(取り囲む)ようには存在していない(形成されていない)ことは、後記する説明によって理解される。
そして、前記で作製したcBN焼結体を、WC基超硬合金製インサート本体のろう付け部(コーナー部)にろう付けし、必要に応じ、研磨加工、ホーニング加工等を施すことにより、少なくとも刃先が前記cBN焼結体で構成された所望のインサート形状をもった耐欠損性、耐摩耗性にすぐれるcBN工具を作製することができる。
以下に、本発明のcBN焼結体、cBN工具について、実施例に基づいて説明する。
まず、結合相を構成する原料粉末として、TiN粉末、TiCN粉末、TiC粉末を準備し、これらから選んだ原料粉末の一種を結合相形成用原料粉末とする。
次いで、上記で選択した結合相形成用原料粉末を、例えば、超硬合金製容器内に超硬合金製ボールとアセトンと共に充填し、ボールミルにより96時間〜120時間粉砕及び混合を行う。
次に、cBN粒子粉末とTi化合物粒子粉末の合量を100体積%としたときのcBN粒子粉末の含有割合が50〜75体積%の範囲内となるように平均粒径3μmのcBN粒子を配合し、さらにW−Co−Fe相となる平均粒径500nm〜900nmのナノW粉末と平均粒径20nm〜40nmのナノCo粉末と平均粒径60nm〜80nmのナノFe粉末を添加した後に、12時間〜24時間湿式混合し、乾燥した。
その後、油圧プレスにて成形圧1MPaで直径:50mm×厚さ:1.5mmの寸法にプレス成形して成形体を得た。
次いで、この成形体を、圧力:1Paの真空雰囲気中、1000〜1300℃の範囲内の所定温度に30〜60分間保持して熱処理し、次いで、通常の超高圧焼結装置に装入し、圧力:5GPa、温度:1400℃の条件で超高圧高温焼結することにより、本発明cBN焼結体1〜10を作製した。
次に、前記で作製した本発明cBN焼結体1〜11の上下面をダイヤモンド砥石を用いて研磨し、ワイヤー放電加工装置にて分割し、さらに、Co:5質量%、TaC:5質量%、WC:残りの組成およびISO規格CNGA120408の形状をもったWC基超硬合金製インサート本体のろう付け部(コーナー部)に、質量%で、Cu:26%、Ti:5%、Ag:残りからなる組成を有するAg合金のろう材を用いてろう付けし、さらに上下面および外周研磨、ホーニング加工を施すことによりISO規格CNGA120408のインサート形状をもった表1に示す本発明cBN工具1〜12を作製した。
比較のため、実施例とほぼ同様の手法を用い、比較例cBN焼結体1〜7を作製した。
ただし、表2に示されるように、比較例cBN焼結体1〜6については、前記実施例の製造工程における「ナノW粉末とナノCo粉末とナノFe粉末を添加する」という条件を満足していない。
また、比較例7は、cBN焼結体のTi化合物粒子の平均粒径が、本発明で規定する条件を満たしていない。
ついで、実施例と同様の手法で、ISO規格CNGA120408のインサート形状をもった表2に示す比較例cBN工具1〜7を作製した。
上記で作製した本発明cBN焼結体1〜12および比較例cBN焼結体1〜7について、cBN粒子の含有割合(体積%)を測定・算出した。
cBN粒子の含有割合は、cBN焼結体の断面をSEM−EDSによって観察して得た元素マッピングのcBN粒子に相当する部分を画像処理によって抜き出し、画像解析によってcBN粒子が占める面積を算出し、その値を画像総面積で除することでcBN粒子の面積比率を算出し、そして、この面積比率を体積%とみなすことで、cBN粒子の含有割合(体積%)を測定・算出した。
また、この測定では、SEMで得られた倍率5,000の二次電子像の少なくとも3画像を処理し求めた値の平均値をcBN粒子の含有割合(体積%)とした。
なお、画像処理に用いた観察領域は、cBN粒子の平均粒径の5倍の長さの一辺をもつ正方形の領域(cBN粒子の平均粒径が3μmの場合、15μm×15μm程度の観察領域)とした。
表1、表2に、cBN粒子の含有割合(体積%)を示す。
また、上記で作製した本発明cBN焼結体1〜12および比較例cBN焼結体1〜7について、15μm×15μmの観察領域において、SEM−EDSの50,000倍によってW−Co−Fe相の存在の有無を確認した。
例えば、図2(b)の模式図に示されるように、本発明cBN焼結体の断面を、SEM(倍率:50,000倍)−EDSで観察して得た元素マッピングにより、Ti化合物粒子相互の界面にW−Co−Fe相が存在し、かつ、cBN粒子相互間を繋いで途切れることなく存在することを確認した。また、図2(b)からも明らかなように、cBN粒子の周囲は、W−Co−Fe相によって覆われて(取り囲まれて)いないことを確認した。
次いで、W−Co−Fe相を介して途切れることなく相互に繋がっているcBN粒子の個数をカウントし、該領域に存在するcBN粒子の全個数に占める割合を求めた。
また、cBN焼結体の断面を、EPMAを用いた定性・定量分析を行い、定性分析で検出された元素についてZAF定量分析法により、cBN焼結体全体に含有されるW,Co,Fe,B,NさらにTi,Al,C,O,の合計含有量を100質量%としたときに、前記W,Co,Fe,B,N,Ti,Al,C,Oの合計含有量に占めるWとCoとFeの合計含有量の割合(質量%)及びFeの含有量の割合(質量%)を測定した。
表1、表2に、W−Co−Fe相を介して繋がっているcBN粒子の個数割合(%)とWとCoとFeが占める合計含有量(質量%)及びFeの含有量(質量%)を示す。
W−Co−Fe相を介して繋がっているcBN粒子の個数割合の具体的な測定・算出方法は、以下のとおりである。
cBN焼結体の断面をSEM(倍率:50,000倍)−EDSでW、Co、Fe、B、Nの元素マッピングを行い、各マッピング像は対象元素が存在しない部分を黒、存在する部分を白とし、黒を0、白を255の256段調のモノクロ像にて取得し、各々のモノクロ像において元素が存在する位置が白となるように、画像解析ソフトImageJのThresholdツールのAuto機能を用いて閾値を決めて2値化処理を行うことで図1に示すような各元素の元素マッピング像を得る。
得られた像のBとNを重ね、重なった領域を抽出することでBとNの元素マッピング像(図2(a)の模式図参照)を得る。同様の手法で、WとCoとFeを重ね、重なった領域を抽出することでWとCoとFeの元素マッピング像(図2(b)の模式図参照)を得る。
前記BとNの元素マッピング像とWとCoとFeの元素マッピング像を重ね合わせることで、cBN粒子とW-Co−Fe相が一体化した像(図3の模式図参照)を得る。
次に、図3を1ピクセルが2nm角になるように画像編集ソフト(Adobe Photoshop)でサイズ変更する。サイズ変更した図3をグラフ作成ソフト(HULINKS IGOR PRO)で数値のマトリックスに変換する。このとき白い領域のピクセルは数値255、黒い領域のピクセルは数値0となる。得られたマトリックスにおいて、数値255であるピクセルの周りを囲む8つのピクセルのうち1つでも数値255である場合、それら数値255であるピクセルは連続している、つまり元素は連続的に存在していて繋がっていると定義する。言い換えると数値255であるピクセルと数値255であるピクセルの間に数値0であるピクセルが1つでも存在する場合、不連続となり繋がっていないことを意味する。
次にW−Co−Fe相を介して繋がっているcBN粒子を数値のマトリックスから求める方法は以下のようになる。
図4(a)において、図3と同様に1ピクセルが2nm角になるようにサイズ変更し、数値のマトリックスに変換する。ここで得られたマトリックスの数値255であるピクセルはcBN粒子とW−Co−Fe相の領域であり、この数値255であるピクセルのうちでcBN領域内から任意に1ピクセルを選ぶ。
図3で選んだピクセルと同じ位置の図4(a)のピクセルの数値を例えば255から160に変更する。つまり、図4(a)における任意の1つのcBN領域内の1つのピクセルの数値を255から160に変更する。この変更したピクセルを囲む8つのピクセルのうち数値が255であるピクセルを全て160に置き換える。ここで160に置き換えられた各ピクセルを囲む8つのピクセルのうち数値が255であるピクセルを全て160に置き換える作業を繰り返す。最終的に得られた0と160と255の数値のマトリックスを画像として出力する。画像として出力すると数値160は灰色となるため、得られる画像は図4(a)、(b)に示すように、白と黒と灰色の3色の画像となる。得られた画像において、灰色であるBN粒子はW-Co−Fe相を介して繋がっているcBN粒子であるとし、その個数をカウントし、cBN粒子の総個数から割合を算出する。cBN粒子の総個数は図2(a)を画像解析して求めることができる。
例えば、W-Co−Fe相が途切れている場合、つまり数値が255であるピクセルと数値が255であるピクセルの間に1つ以上の数値が0であるピクセルが存在し不連続になっている場合、図4(b)で示すように繋がっていないcBN粒子(図4(b)の右上隅のcBN粒子)は灰色に変換されない。
つまり、図4(a)では、3個のcBN粒子のすべてがW−Co−Fe相を介して繋がっているとして扱い、一方、図4(b)によれば、3個のcBN粒子の内の2個はW−Co−Fe相を介して繋がっているが、残りの1個(図4(b)中右上隅のcBN粒子)はW−Co−Fe相を介して繋がってはいないとして扱った。
前記段落0051で行っている画像処理は、例えば、画像解析ソフトImageJのFlood Fill Toolを用いることで、任意の1つのcBN粒子に対してW-Co−Fe相を介して繋がっているcBN粒子を同様に判別することができる。
W−Co−Fe相によって繋がっているcBN粒子の個数割合(個数%)は倍率50,000倍で測定し、縦8μmx横12μmになるように画像を連結させて1視野としたのちに画像処理および画像解析を行い、少なくとも3視野の平均値とする。
表1、表2に、W−Co−Fe相によって繋がっているcBN粒子の個数割合(個数%)を示す。
Ti化合物粒子の平均粒径の測定・算出は、以下のようにして求めることができる。
まず、cBN焼結体の断面の観察領域を、TEMに付属する結晶方位解析装置を用いて観察する。より具体的に言えば、Ti化合物粒子を観察するために結晶粒径と同程度の厚さ以下に研磨された切片をTEMにセットし、200kVに加速された電子線を前記切片に照射することで、縦400nm×横500nmの範囲で観察を行う。
前記の範囲で結晶方位のマップデータを得る解析方法は以下の通りである。
前記の切片に、0.5〜1.0度に傾けた電子線をPrecession照射しながら、電子線を任意のビーム径及び間隔でスキャンし、連続的に電子線回折パターンを取り込み、個々の測定点の結晶方位を解析する。なお、本測定に用いた回折パターンの取得条件は、カメラ長20cm、ビームサイズ2.2nmで、測定ステップは2.0nmである。
次に、得られた電子線回折パターンから個々の結晶粒を判別するための解析方法は、以下の通りである。
まず、測定点の隣接点同士の結晶方位が5度以上離れている場合に粒界とし、粒界以外の部分を結晶粒、つまりTi化合物粒子と定義した。
この画像を縦4枚×横4枚で連結させて縦1600nmx横2000nmの画像とし、cBN粒子の平均粒径を求めるための前記手順と同様の手順でTi化合物粒子の平均粒径を求める。
このような測定・算出を複数の観察領域(3領域以上)で実施し、その平均値を、Ti系化合物粒子の平均粒径(nm)とする。
表1、表2に、その結果を示す。
また、上記で作製した本発明cBN焼結体1〜12および比較例cBN焼結体1〜7について、以下の方法で、熱伝導率λ(W/m・K)を測定した。
cBN焼結体から測定試料を切り出し、切り出した測定試料の寸法を測定し、次いでアルキメデス法によって密度ρを測定する。
ついで、Xeフラッシュアナライザーを用いたレーザーフラッシュ法によって熱拡散率αと比熱容量Cを測定し、次の式を用いて熱伝導率κを算出する。
熱伝導率κ(W/m・K)
=熱拡散率α(mm/sec)×密度ρ(g/cm)×比熱容量C(J/(K・g)
表1、表2に、測定値を示す。
また、本発明cBN焼結体1〜12および比較例cBN焼結体1〜7の断面研磨面について、荷重5kgでビッカース硬さ(HV)を測定し、10箇所の測定点における測定値を平均することによって、焼結体の硬さ(HV)を求めた。
表1、表2に、これらの値を示す。
Figure 2020131293
Figure 2020131293
ついで、前記本発明cBN工具1〜12および比較例cBN工具1〜7を、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、各工具について、以下に示す切削条件で乾式断続切削加工試験を実施し、切削工具としての耐チッピング性、耐クレータ摩耗性の良否を評価した。
《切削条件》
被削材:JIS・SCM420の(HRC58−62)の丸棒
(ただし、被削材の軸方向に等間隔で5本のスリットあり)
切削速度:150m/min、
送り:0.15mm/rev、
切込み:0.15mm、
の条件での、外周加工の乾式断続切削加工試験を行った。
上記の断続切削加工試験において、耐チッピング性の指標として、刃先チッピング発生までの衝撃回数を測定した。(衝撃回数が大であれば、耐チッピング性は優れると判定される。)
また、耐クレータ摩耗性の指標として、切削開始から150秒経過後のすくい面をレーザー顕微鏡で観察し、予め観察しておいた切削開始前のすくい面との比較からクレータ摩耗の最大深さを測定した。(最大深さが小さいほど、耐クレータ摩耗性は優れると判定される。)
表3、表4に、切削試験結果を示す。
なお、クレータ摩耗良否判定の欄中の記号は、以下を意味する。
◎:耐クレータ摩耗性は優れる(クレータ摩耗の最大深さが20μm未満)
○:耐クレータ摩耗性は良い(クレータ摩耗の最大深さが20μm以上30μm未満)
△:耐クレータ摩耗性は劣る(クレータ摩耗の最大深さが30μm以上40μm未満)
×:耐クレータ摩耗性は非常に劣る(クレータ摩耗の最大深さが40μm以上)
Figure 2020131293
Figure 2020131293
表3、表4に示される結果によれば、本発明cBN工具1〜12は、結合相のTi化合物粒子が微粒であって、耐チッピング性にすぐれ、しかも、cBN粒子相互が熱伝導路の機能を備えるW−Co−Fe相を介して繋がっているためcBN焼結体は良熱伝導性を備えることから耐クレータ摩耗性にもすぐれる。
よって、高熱発生を伴い、刃先に高負荷が作用する切削条件下であっても、すぐれた耐チッピング性、耐クレータ摩耗性が長期の使用にわたって発揮される。
これに対して、比較例cBN工具1〜7は、結合相を構成するTi化合物粒子の平均粒径が本発明範囲外であるため、あるいは、W−Co−Fe相が形成されていない等のため、耐チッピング性、耐クレータ摩耗性に劣り、工具寿命が短命である。
なお、本発明cBN工具11は、W−Co−Fe相におけるFe含有量が本発明で規定する好ましい範囲を外れており、また、本発明cBN工具12は、W−Co−Fe相におけるW+Co+Feの合計含有量が本発明で規定する好ましい範囲を外れているため、本発明cBN工具1〜10に比べれば、刃先チッピング発生までの衝撃回数が少なく耐チッピング性の若干の低下がみられるものの、耐クレータ摩耗性には優れている。
ただし、本発明cBN工具11、12と比較例cBN工具1〜7と比べた場合には、耐チッピング性と耐クレータ摩耗性のいずれについても、本発明cBN工具11、12が優れていることは明らかである。
本発明のcBN工具は、耐チッピング性、耐クレータ摩耗性にすぐれることから、切削工具の長寿命化が図られる。

Claims (4)

  1. 硬質相として立方晶窒化ほう素粒子を含有し、結合相としてTi化合物粒子を含有する立方晶窒化ほう素基焼結体によって少なくとも刃先が形成されている立方晶窒化ほう素基焼結体製切削工具において、
    前記Ti化合物粒子の平均粒径は250nm以下であり、
    前記Ti化合物粒子の界面には、W成分とCo成分とFe成分が共存するW−Co−Fe相が存在し、
    前記W−Co−Fe相は、立方晶窒化ほう素粒子相互間を繋いで途切れることなく存在することで熱伝達路を構成していることを特徴とする立方晶窒化ほう素基焼結体製切削工具。
  2. 前記立方晶窒化ほう素基焼結体の断面を走査型電子顕微鏡による元素マッピングで観察した場合、前記W−Co−Fe相が途切れずに、W−Co−Fe相を介して相互に繋がっている立方晶窒化ほう素粒子の個数は、観察視野に存在する立方晶窒化ほう素粒子の総個数の20%以上であることを特徴とする請求項1に記載の立方晶窒化ほう素基焼結体製切削工具。
  3. 前記W−Co−Fe相を構成するWとCoとFeが、前記立方晶窒化ほう素基焼結体に占める合計含有量は、2質量%以上10質量%以下であり、かつ、Feの含有量は0.03質量%以上1.0質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の立方晶窒化ほう素基焼結体製切削工具。
  4. 前記Ti化合物粒子は、TiN粒子、TiCN粒子およびTiC粒子の内から選ばれる何れか一種または二種以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の立方晶窒化ほう素基焼結体製切削工具。
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