以下、本発明の一側面に係る実施の形態を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
計測装置1は、主として図1(及び図12)に示すような負荷300を含む負荷回路C0に適用される。負荷300は、被覆電線400を介して交流電源500に接続される。被覆電線400は、導電性の導体401と、導体401を覆う絶縁性の被覆402とを備える。計測装置1は、被覆電線400に外付け装着可能に構成される。つまり、計測装置1は導体接触することなく負荷回路C0に関する被計測値を計測することができる。被計測値としては、負荷300の両端の電位差(電圧)、負荷300を流れる電流及び負荷300の電力等が挙げられる。計測装置1は、電力、電流、又は電圧の被計測値のうち、少なくとも1つを計測し、出力する装置として構成されることができる。
第1実施形態(電力計測装置)
以下では、第1実施形態として、電力計測装置としての計測装置1について説明する。第1実施形態に係る計測装置1は、第1部分10と、第2部分20とを備える。第1部分10及び第2部分20は、それぞれクリップ型の外観を有し、被覆電線400に容易に装着することができる。図1に示す例では、第1部分10が負荷300の一端側に、第2部分20が負荷300の他端側の被覆電線400にそれぞれ装着されている。第1部分10又は第2部分20が被覆電線400に装着された状態を装着状態と称する。
後述するように、第1部分10及び第2部分20は、負荷300の両端の電圧vcを容量結合により検出するための第1電極部153及び第2電極部253をそれぞれ有する。第2電極部253は、導電線30により第1部分10に電気的に接続されており、後述する電圧検出や電力出力のための信号処理は、第1部分10の第1基板170(後述する)に実装される回路によって行われる。
図2は、装着状態の第1部分10(第2部分20)の側面図である。第1部分10と第2部分20とは、外観上共通の構成を有するため、以下では第1部分10を主として説明する。
第1部分10は、第1ホルダ部100と、第1基板170とを有する。第1ホルダ部100は、被覆電線400の被覆402表面に対して第1基板170を固定する部分である。後述するように、第1基板170は複数の層を有する多層基板である。なおかつ第1基板170はリジッドフレキシブル基板であり、第1基板170には屈曲可能なフレキシブル部141a及び141bと、屈曲しないリジッド部142a,142b,及び142cとが形成されている(図3参照)。第1基板170は、第1ホルダ部100の内側面に部分的に固定されており、第1ホルダ部100(第1ピンチ部110)の開閉運動に連動して変形することができる。また、第1基板170は、装着状態において、フレキシブル部が屈曲して一端部と他端部とが合わさるように変形し、リジッド部が辺に、フレキシブル部が頂点にそれぞれ対応する、多角形の筒状体を形成するように構成される。本実施形態に係る第1基板170は、装着状態において図2に示すような略三角形の筒状体を形成する。筒状体の内側面が被覆電線400に当接することにより、第1基板170が被覆402表面に対して固定される。つまり、装着状態において、筒状体の軸と被覆電線400の導体401の中心軸とは概ね一致する。第1基板170のリジッド部142a,142b,及び142cにおいて、筒状体の軸を基準として外側に位置する面には、それぞれ非磁性体材料からなる板状のシールド部材40が設けられてもよい。シールド部材40は、計測装置1の外部からのノイズを低減する電界シールドの役割を果たす。シールド部材40を構成する材料の例としては、例えば銅が挙げられる。
第1ホルダ部100は、開閉可能な第1ピンチ部110を有する。第1ピンチ部110の内側面101には、第1基板170が配置される。第1ピンチ部110は、一対の第1ピンチ部110a及び110bとを備える。第1ピンチ部110a,bは、第1回動軸112を介して互いに連結されている。第1ピンチ部110a,bが回動し、第1ピンチ部110aの先端部111aと第1ピンチ部110bの先端部111bとが離間している状態を第1ピンチ部110の開状態と称する。また、先端部111aと先端部111bとが当接している状態を第1ピンチ部110の閉状態と称する。第1ピンチ部110は、第1部分10の装着状態において閉状態となり、被覆電線400の周面を環状に囲む。
第1ホルダ部100は、第1ピンチ部110を閉じる方向に付勢する第1付勢部材113をさらに備える。本実施形態では、第1付勢部材113は第1ピンチ部110aの後端部114aと第1ピンチ部110bの後端部114bとの間に設置されたバネである。第1付勢部材113(バネ)は、第1ピンチ部110aの後端部114aと第1ピンチ部110bの後端部114bとが互いに離間する方向へと第1ピンチ部110a,bを付勢する。従って、外部から何も力が加えられていない状態では、第1ピンチ部110は閉状態を保つ。なお、第1付勢部材113は、図2ではコイル状のバネで表されているが、これはあくまでも一例であり、第1付勢部材113の形状や素材は特に限定されない。第1付勢部材113は例えば板バネ、ゴム又はエラストマー等であってもよい。また、第1付勢部材113が設置される第1ピンチ部110の部位も、図2の例に限定されない。
第2部分20は、第2ホルダ部200と、第2基板270とを有する。後述するように、第2基板270は、第2電極部250を含む。第2ホルダ部200は、被覆電線400の被覆402表面に対して第2基板270(第2電極部250)を固定する部分である。第2ホルダ部200は、内側面に第2基板270(第2電極部250)が配置されるとともに、開閉可能に構成される第2ピンチ部210を有する。第2ピンチ部210は、第2回動軸212と、対向する一対の第2ピンチ部210a及び210bとから構成される。第2ピンチ部210aは先端部211a及び後端部214aを有し、第2ピンチ部210bは先端部211b及び後端部214bを有する。また、第2ホルダ部200は、第2ピンチ部210を閉じる方向に付勢する第2付勢部材213をさらに備える。第2ホルダ部200の構成及び動作は、第1ホルダ部100と共通するので、ここでは説明を省略する。
第1ピンチ部110及び第2ピンチ部210は、磁性体材料で形成されてもよい。このようにすることで、第1部分10及び第2部分20の装着状態において、第1基板170及び第2基板270の形成する筒状体が磁性体材料で囲まれるため、外部からの磁界の影響を低減し、後述する電力計測の精度を向上させることができる。ただし、第1ピンチ部110及び第2ピンチ部210を形成する材料は磁性体材料に限定されず、計測装置1の使用される外部環境や用途に応じて適宜選択されてよい。
以下では、第1基板170及び第2基板270の構成について説明する。本実施形態では、第1基板170及び第2基板270は、第1基板170のみに後述する磁気抵抗効果素子MRや各種の回路が実装される点を除き、共通の構成を有する。このため、以下では第1基板170を主として説明する。
図3に示すように、第1基板170は、平面視において矩形であり、屈曲可能な2つのフレキシブル部141a及び141bと、屈曲可能でない3つのリジッド部142a,142b,及び142cとを有する。フレキシブル部141a,bは、例えばポリイミド等のフレキシブル素材をベース材として形成され、繰り返して屈曲させることが可能である。リジッド部は、例えばガラスエポキシ等のリジッド素材をベース材として形成され、力を加えてもほとんど屈曲しない。フレキシブル部141a,bは、例えばフレキシブル素材をベース材とする屈曲可能なフレキシブル部材140の面上に、リジッド素材をベース材とする板状のリジッド部材が貼り付けられることにより形成される。
本実施形態では、前述の矩形を3等分する2本の線(図3に破線で示す)に沿って、第1基板170に2つのフレキシブル部141a及び141bが形成される。つまり、矩形のフレキシブル部材140の面上に、隙間を空けて3つの長方形のリジッド部材が貼り付けられることにより、2つのフレキシブル部141a,bと、3つのリジッド部142a〜cとが形成される。第1基板170の幅方向の端部171aは、第1ピンチ部110aの先端部111aの内側面101に固定される。同様に、第1基板170の幅方向の端部171bは、第1ピンチ部110bの先端部111bの内側面101に固定される。これにより、第1ピンチ部110の閉状態において第1基板170の端部171a,bが互いに当接して、フレキシブル部141a,bのそれぞれが屈曲する部分と端部171a,bの当接部を頂点とし、リジッド部142a〜cをそれぞれ一辺とする略三角形の筒状体が形成される。
一方、第1ピンチ部110の開状態においては、第1ピンチ部110a,bの先端部111a,bが離間するのに連動して端部171a,bが互いに離間し、端部171a,bの間に被覆電線400を通過させるための空間が形成される。端部171a,bの間を被覆電線400が通過した後、第1ピンチ部110が閉状態にされると、第1基板170は被覆電線400の周面を囲む略三角形の筒状体を形成する。
第2基板270は、平面視において第1基板170と共通の形状を有する。第2基板270は、矩形のフレキシブル部材240の表面に形成される屈曲可能な2つのフレキシブル部241a,b及び屈曲可能でない3つのリジッド部242a,242b,及び242cを有する。第2基板270の幅方向の端部271aは、第2ピンチ部210aの先端部211aの内側面201に固定される。同様に、第2基板270の幅方向の端部271bは、第2ピンチ部210bの先端部211bの内側面201に固定される。各部の構成及び動作は第1基板170と共通するため、ここでは説明を省略する。
図4は、本実施形態に係る第1基板170及び第2基板270の断面模式図である。以下では、説明の便宜のため、図4の上下方向を「上下」と称し、これを基準に説明を行う。第1基板170は、上方向から下方向に向かって順に第1層150、第2層151、第3層152及び第4層153を有する。第1層150及び第2層151は、リジッド素材をベース材として形成される層であり、ともにリジッド部142a〜cを構成する。第3層152及び第4層153は、フレキシブル素材をベース材として形成される層であり、ともにフレキシブル部材140を構成する。第3層152及び第4層153のうち、第1層150及び第2層151が積層していない部分がフレキシブル部141a,bを形成する。
第4層153(電極層)は、ポリイミド層1530の片面に形成される銅箔層1531と、銅箔の表面を保護するカバーレイフィルム1532とを含む層であり、本発明の第1電極部に相当する。以下、第1電極部にも第4層153と同様の符号を付し、第1電極部153と称する。第1電極部153は、第1部分10の装着状態において、導体401と容量結合する。
図5は、第1電極部153の平面図である。図5に示すように、銅箔層1531は、面積が異なる2つの部分に分かれて形成される。面積が大きい方を大面積部1531a、面積が小さい方を小面積部1531bとそれぞれ称する。小面積部1531bは、第1層150に含まれる磁気抵抗効果素子MRを含むMRパッケージMRP(後述する)の下に位置する部分である。磁気抵抗効果素子MRは、導体401を流れる電流により発生する磁界の強度に応じて抵抗値が変化する素子である。従って、より多くの磁束を磁気抵抗効果素子MRに集めて集磁効果を高めるため、小面積部1531bにおいて、全体的または部分的に銅箔が除かれてもよい。部分的に銅箔が除かれる場合は、例えば図5において破線で示すように、MRパッケージMRPが存在する部分の真下の部分だけを除くことができる。
第1基板170は、第1電極部153を最下の層として有するとともに、第1ピンチ部110の閉状態において、第1電極部153が第1ピンチ部110の内側面101に対して最も遠くなるように第1ピンチ部110に配置されるのが望ましい。第1基板170をこのように配置することで、第1部分10の装着状態において、第1基板170が有する層のうち、導体401に第1電極部153が最も近接する。これにより、第1電極部153と導体401との容量結合効果が高まり、電圧vc検出の精度がより向上する。
第3層152(シールド層152)は、第4層153と第2層151との間に形成される。より具体的には、第3層152はポリイミド層1530の第4層153とは反対の面に形成される銅箔層1520を含む層である。なお、図4に示すように、銅箔層1520の表面のうち、リジッド部142a〜cが積層していない部分は、カバーレイフィルム1525で保護されている。
図6は、第3層152の平面図である。図6に示すように、第1層150に含まれる後述するMRパッケージMRPの真下に位置する部分だけは銅箔が除かれ、MRパッケージMRPの配線が形成される配線部1521となっている。第3層152は、導体で形成されることにより、第1部分10の装着状態において導体401と第1電極部153とを囲むファラデーシールドを形成する(ただし、配線部1521を除く)。これによって、第1電極部153から第1層150及び第2層151が電界的に遮蔽され、第1層150及び第2層151に実装される回路の信号に与える影響が抑制される。また、銅箔は非磁性体としての性質を有するため、第1層150及び第2層151に実装される回路(MRパッケージMRPを除く)のハム成分に対する誘導シールドの機能をも兼ねている。
第2層151は、第3層152の銅箔層1520に積層される絶縁性フィルム層1510と、絶縁性フィルム層1510の片面に形成される銅箔層1511とを含む層である。図7は第2層151の平面図である。図7に示すように、絶縁性フィルム層1510には部分的に銅箔層1511が形成されない。銅箔層1511が形成されない部分は、MRパッケージMRPが存在する部分の真下の部分であり、これによって集磁効果を高めることができる。
第2層151は、主として短冊状部分151a,短冊状部分151b,短冊状部分151cの3つの部分に分かれており、それぞれがリジッド部142a,142b,142cを構成する。銅箔層1511は、第1層150に実装される各回路のグランドGとして機能する。また、第1層150に実装される電源回路316の配線が形成される。
第1層150は、第2層151に積層される絶縁性フィルム層1500と、絶縁性フィルム層1500の片面に形成される銅箔層1501とを含む層である。図8は第1層150の平面図である。図8に示すように、第2層151は、主として短冊状部分150a,短冊状部分150b,短冊状部分150cの3つの部分に分かれており、それぞれがリジッド部142a,142b,142cを構成する。
第1層150は、電圧検出回路C1、磁気抵抗効果素子MRを含む電力出力回路C2及びこれらを駆動するための電源回路316が実装される層である。電圧検出回路C1は、負荷300に加わる電圧vcに応じた検出電圧vkを出力する。電力出力回路C2は、磁気抵抗効果素子MRを含むとともに、検出電圧vkが印加されると負荷300の電力に応じた信号を出力する。
第1電極部153に発生する電流は、第1層150の端子J1を介して電圧検出回路C1に入力される。また、第1層150は、端子J2を有する。端子J2は、導電線30を介して第2基板270の第2電極部253(後述する)と接続されており、第2電極部253に発生する電流は、端子J2を介して第2電極253電圧検出回路C1に入力される。
電力出力回路C2は、磁気抵抗効果素子MRを含む。本実施形態では、磁気抵抗効果素子MRを4つ含んで構成されるMRパッケージMRPが電力出力回路C2に含まれ、第1層150に実装される。図8にMRパッケージMRPの実装される位置を破線で示す。図8に示すように、MRパッケージMRPは、3つの短冊状部分150a〜cにそれぞれ1個ずつ実装される。各回路及びMRパッケージMRPの詳細については、後述する。
図4に示すように、第2基板270は、上方向から下方向に向かって順に第1層250、第2層251、第3層252及び第4層253を有する。第2基板270は、層2500、2501、2510、2511、2525、2520、2530〜2532を含み、これらの層は、第1基板170に含まれる各層とそれぞれ対応する。また、第1層250は3つの短冊状部分250a,250b,250cに分かれており、第2層251は3つの短冊状部分251a,251b,251cに分かれている。以下では、第2基板270の第1基板170と共通する構成については説明を省略し、第2基板270が第1基板170と相違する点について説明する。
第2基板270の第4層253は、本発明の第2電極部に相当する。以下、第2電極部についても同様の符号を付し、第2電極部253と称する。第2電極部253は、第2部分20の装着状態において、被覆電線400の導体401と容量結合する。第2電極部253は、後述する第2基板270の第1層250の端子に接続される導電線30を介して、第1基板170の電圧検出回路C1(端子J2)に電気的に接続されている。
第2基板270は、第2電極部253を最下の層として有するとともに、第2ピンチ部210の閉状態において、第2電極部253が第2ピンチ部210の内側面201に対して最も遠くなるように第2ピンチ部210に配置されるのが望ましい。第2基板270をこのように配置することで、第2部分20の装着状態において、第2基板270が有する層のうち、導体401に第2電極部253が最も近接する。これにより、第2電極部253と導体401との容量結合効果が高まり、電圧検出の精度がより向上する。
第1基板170の第3層152では、MRパッケージMRPの配線が配置される配線部1521が形成され、配線部1521において銅箔が除かれていた。しかしながら、第2基板270にはMRパッケージMRPが実装されないため、配線部1521が形成されていなくてもよい。つまり、全面的に銅箔層2520が形成されてもよい。
第1基板170の第2層151では、集磁効果を高めるため、部分的に銅箔層1511が除かれて絶縁性フィルム層1510が表面に露出していた。しかしながら、第2基板270にはMRパッケージMRPが実装されないため、第2層251の全面に銅箔層2511が形成されてもよい。また、第1基板170の第2層151には、電源回路316の配線が形成されたが、第2基板270の第1層250には電圧検出回路C1、磁気抵抗効果素子MR、電力出力回路C2及び電源回路316が実装されないため、第2層251にはこれらの配線は形成されない。ただし、第2部分20の装着状態において第2基板270が図2に示すような略三角形の筒状体を形成するために、第2基板270の第2層251はリジッド素材をベース材として形成されることが望ましい。
第2基板270は、第1層250を最上の層として有する。第1層250は、第1基板170と共通の構成を有するが、第1層250にはMRパッケージMRPや各回路を構成する素子等は実装されない。
以下では、計測装置1の電気的構成及び第1部分10の第1基板170に実装される各回路の詳細について説明する。なお、計測装置1の構成では、出力する信号により、負荷300に加わる電圧、C0を流れる交流電流i0、及び負荷300の電力(有効電力、無効電力、皮相電力、瞬時電力)等を計測することができる。以下では、負荷300の有効電力を計測する場合を例として説明を行う。
図9は、本実施形態の計測装置1の電力計測に係る部分の電気的な構成を示すブロック図である。また、図10は、計測装置1の実装用回路図であり、図9に示される各回路の実装例を示す。図10では、図9に示される回路と対応する部分に同一の符号を付してある。
図9に示すように、電圧検出回路C1は、第1電極部153に接続されるIV(電流電圧)変換回路310と、第2電極部253に接続されるIV変換回路311とを含む。IV変換回路310には、第1電極部153と導体401との容量結合により第1電極部153に生じる電流I1が信号として入力される。電流I1は、第1部分10が装着される部分の交流電圧v1の時間微分値と、第1電極部153と導体401との結合性容量とに比例し、その位相は交流電圧v1の位相よりもπ/2進んでいる。IV変換回路310は、入力された電流I1を、所定の電圧Vbを基準とする電圧V1を表す信号に変換する。
IV変換回路311には、第2電極部253と導体401との容量結合により第2電極部253に生じる電流I2が信号として入力される。電流I2は、第2部分20が装着される部分の交流電圧v2の時間微分値と、第2電極部253と導体401との結合性容量とに比例し、その位相は交流電圧v2の位相よりもπ/2進んでいる。IV変換回路311は、入力された電流I2を、所定の電圧Vbを基準とする電圧V2を表す信号に変換する。
IV変換回路310及び311の出力信号は、ともに差動増幅器312に入力され、(V1−V2)が所定のゲインで増幅されて出力される。差動増幅器312から出力された信号は、後段の位相変調回路313に入力される。位相変調回路313は、例えばオールパスフィルタであり、入力信号の振幅に影響を与えることなく位相をシフトする。位相変調回路313からは、入力された信号の位相がπ/2だけ遅れ、負荷300に印加される電圧vcに応じた検出電圧vkが出力される。
図9に示すように、電圧検出回路C1の位相変調回路313から出力された検出電圧vkは、電力出力回路C2に含まれる電力センサ回路314に印加される。電力センサ回路314は、導体非接触で負荷回路C0に流れる交流電流i0を検出するように構成される電流センサ素子を含む。本実施形態では、電流センサ素子は磁気抵抗効果素子MRである。第1層150の短冊状部分150a〜cのそれぞれに実装される3つのMRパッケージMRPには、同じ特性を有する磁気抵抗効果素子MRが4つ含まれる。3つのMRパッケージMRPは、ブリッジ回路を形成するように互いに接続される(図10参照)。3つのMRパッケージMRPが互いに接続されることで、それぞれのMRパッケージMRPに含まれる磁気抵抗効果素子MRの磁気抵抗効果が平均化される。この構成によれば、導体401の中心からそれぞれのMRパッケージMRPの距離にバラツキが生じたとしても、その影響をキャンセルすることができる。ブリッジ回路には、検出電圧vkが印加される。ブリッジ回路の非平衡電圧の信号処理には、例えばゼロドリフトアンプ等を用いることができる。
磁気抵抗効果素子MRとしては、例えば特許文献1に開示されている磁気抵抗効果素子を用いることができる。磁気抵抗効果素子MRは、図11Aに示すように、短冊状の磁性体3140の両端に電極3141,3141が設けられた素子である。短冊状の長手方向には磁化容易軸が誘導されている。磁気抵抗効果素子MRは、導体401を流れる交流電流i0により発生する交番磁界Hが印加されると、磁気抵抗効果により電気抵抗が変化する。磁気抵抗効果素子MRは、特許文献1に開示されているように、交番磁界Hの強度に比例して電気抵抗が変化するように構成することができる。交番磁界Hの強度は、交流電流i0の大きさに比例するため、磁気抵抗効果素子MRの電気抵抗も交流電流i0の大きさに比例して変化する。
また、磁気抵抗効果素子MRは、図11Bに示すように短冊状の磁性膜3142の表面に導電性材料で形成された導体部3143が設けられ、所謂バーバーポールパターンが形成されたものであってもよい。
図11Cは第1層150上に実装されたMRパッケージMRPの断面模式図である。図11Cに示すように、MRパッケージMRPは、磁気抵抗効果素子MRの表面上に設置されるバイアス磁石3144をさらに含んでいてもよい。このようにすることで、磁気抵抗効果素子MRにバイアス磁界を印加し、さらに磁気抵抗効果素子MRの感度を高めることができる。
電力センサ回路314から出力された出力信号を後段のローパスフィルタLPF315に入力すると、負荷300の有効電力に応じた出力が抽出される。有効電力に応じた出力信号は、端子J3Aを介して計測装置1の外部装置に入力することができる。外部装置は、例えば有効電力をリアルタイムで表示する表示器とすることができる。また、出力信号を外部装置によりデジタル信号に変換してもよい。さらに、外部装置は有効電力のデータを記憶する記憶装置や、有効電力のデータをネットワーク接続によって送信可能にする通信装置等に接続されていてもよい。
第2実施形態(電流計測装置)
以下では、第2実施形態として、電流計測装置としての計測装置1について説明する。計測装置1は、外観としては第1実施形態で説明した第1部分10と共通の外観を有する。すなわち、計測装置1はクリップ型の外観を有し、被覆電線400に容易に装着することができる。図12に示す例では、計測装置1が負荷300の一端側に装着されている。負荷回路C0において、計測装置1の装着される位置は適宜選択することができる。
計測装置1は、奇数個の磁気センサを備え、これらの磁気センサにより被覆電線400の導体401を流れる交流電流i0を導体非接触で計測する。奇数個の磁気センサは、前記電流により発生する磁界の強度に応じて抵抗値が変化する磁気抵抗効果素子を含む。第2実施形態では、計測装置1は3個の磁気センサを備える。ここで、磁気抵抗効果素子は第1実施形態で説明した磁気抵抗効果素子MRと共通の構成を有する。また、磁気センサは第1実施形態で説明したMRパッケージMRPと共通の構成を有する。このため、磁気抵抗効果素子及び磁気センサについては、第1実施形態と同様の符号を付し、説明を省略する。
計測装置1は、被覆電線400の周面に対して磁気センサMRPを固定するように構成されるホルダ部を備える。ホルダ部は、第1実施形態で説明した第1部分10の第1ホルダ部100と共通の構成を有する。このため、ホルダ部については第1ホルダ部100と同様の符号を付し、説明を省略する。
計測装置1は、磁気センサMRP及び磁気センサMRPからの検出信号を出力する電流検出回路314Aが実装される基板170Aをさらに備える。基板170Aは、第1実施形態で説明した第1基板170と同様、多層基板であり、リジッドフレキシブル基板である。基板170Aには、第1基板170と同様に、図3に示すようなフレキシブル部141a及び141bと、屈曲可能でない3つのリジッド部142a,142b,及び142cとが形成される。基板170Aは、図2に示すような態様でホルダ部100に固定される。すなわち、基板170Aは、装着状態において図2に示すような略三角形の筒状体を形成する。
基板170Aは、第1基板170と同様、フレキシブル素材をベース材とする屈曲可能なフレキシブル部材140と、フレキシブル部材140の面上に貼り付けられるリジッド部142a〜cとを有する。基板170Aは、第1基板170と共通の構成を有していてもよいが、第1基板170から第4層153を省いた構成とすることができる。また、図13に示すように、第1基板170に含まれる電圧検出回路C1を省き、導体401を流れる電流に応じた被計測値が出力される構成とすることができる。
基板170Aの第1層150には、磁気センサMRP、電流検出回路314A及び第1基板170と共通の構成を有する電源回路316が実装される。磁気センサMRP及び電流検出回路314Aは、それぞれMRパッケージMRP及び電力センサ回路314に対応し、図8でこれらが実装される位置と同様の位置に実装される。これにより、3つの磁気センサMRPは、ホルダ部100によって被覆電線400の周面に対して固定されたとき、被覆電線400の周面を囲むように配置される。
特徴
上記第1実施形態に係る計測装置1は、アナログ回路を用いて交流電圧と交流電流とを乗算し、力率の負荷300の電力を計測する。このため、電流センサと電力センサとを用い、両者の出力をA/D変換し、さらにプロセッサで乗算する構成の従来の電力計測装置よりも大幅な小型化を図ることができる。さらに、第1部分10と第2部分20とをクリップ型としたことで、空間的な余裕がなく、従来型の電力計測装置が設置することが不可能であったような配線にも容易に設置することができる。
上記第1実施形態に係る計測装置1は、交流電圧の検出に容量結合を用いるとともに、交流電流に対応する値を検出するセンサとして磁気抵抗効果素子を用いる。この構成により、導体非接触で電力を計測することが可能になり、既存の回路を何ら加工することなく電力の計測が可能となる。
上記第1実施形態に係る計測装置1は、電圧検出のための電極部、MRパッケージMRP及び電力出力処理のための回路をリジッドフレキシブル基板に実装し、被覆電線400の周面を囲む多角形の筒状体を形成する。多角形は、リジッドフレキシブル基板の大きさに対する被覆電線400の径の大きさに応じて、被覆電線400にリジッドフレキシブル基板がよりフィットするように適宜選択することができる。また、複数のMRパッケージMRPは、磁気抵抗効果素子MRが筒状体の軸に対称に配置されるように配置され、その出力が平均化される。このようにすることで、導体401の中心軸に対するMRパッケージMRPの位置ずれによる影響を抑制して、磁気抵抗効果による電流検出の精度を高めることができる。
変形例
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
第1ホルダ部100(ホルダ部100)及び第2ホルダ部200は、クリップ型に限定されない。例えば、第1ホルダ部100は、図14Aに示されるように、内側面に第1基板170が配置される帯状のベルト状部材1000であってもよい。この場合、図14Bに示すように、第1部分10はベルト状部材1000で被覆電線400の周面を囲み、ベルト状部材1000の両端部1000a及び1000bを固定部材1001で固定することで被覆電線400に装着することができる。固定部材1001は、両端部に設けられたスナップボタンや面ファスナー、閂等、公知のものを適宜利用することができる。第2ホルダ部200についても同様である。
第1基板170の構成は、上記第1実施形態のものに限定されない。例えば、層数は4層以外にすることもできるし、第3層152(シールド層)を省略することもできる。また、各回路やMRPの配置される層も限定されない。例えば、電圧検出回路C1と電力出力回路C2とは異なる層に配置されてもよい。さらに、第1部分10の装着状態において、グランドGが形成される層が電極部153の形成される層よりも導体401の軸を基準として径方向外側に配置される限り、各層の積層順序は上記実施形態に限定されない。例えば、第1層150と第2層151との間に各回路やMRPを配置してもよい。各層を構成する材料も上記実施形態に限定されず、基板を構成する材料として公知の材料を適宜選択することができる。なお、第2基板270についても同様である。
上記第1実施形態の計測装置1が備えるMRパッケージMRPの数は、3個に限定されず、1個又は2個であってもよいし、4個以上であってもよい。また、MRパッケージMRPに含まれる磁気抵抗効果素子MRの数は、4個に限定されず、適宜選択することができる。
上記第1実施形態の計測装置1において、第1基板170及び第2基板270に形成されるフレキシブル部の数は、2つに限定されない。第1部分10及び第2部分20の装着状態において多角形の筒状体が形成される限り、被覆電線400の径や実施形態に応じてフレキシブル部が3つ以上形成されてもよい。例えばフレキシブル部を3つ以上形成して、第1基板170及び第2基板270が正方形、菱形、正六角形、正八角形等の筒状体を形成するように構成することができる。MRパッケージMRPは、必ずしも全ての辺に対応する位置に実装されていなくてもよい。計測装置1が複数のMRパッケージMRPを備える場合、MRパッケージMRPは、磁気抵抗効果素子MRが筒状体の軸に対称に配置されるように実装されていればよい。なお、第1基板170及び第2基板270が形成する多角形は、全ての辺の長さが等しく、被覆電線400の周面に外接するような形状が望ましいが、厳密に全ての辺の長さが等しくなくてもよい。
上記第1実施形態では、計測装置1は負荷300の有効電力を出力するように構成された。しかしながら、図10に示す回路に各種のフィルタや出力端子を適宜追加することで、別の被計測値を出力することも可能である。例えば、図10に示すように差動増幅器312の後段に電圧出力用端子J3Cを設け、直接電圧vcに対応する信号を取り出すように構成してもよい。この場合、計測装置1は図9の電力出力回路C2を省いた構成とし、負荷300の両端の電圧vcを計測する電圧計測装置として構成されてもよい。また、電力センサ回路314から負荷300を流れる交流電流の信号を取り出すように構成することもできる。さらに、ローパスフィルタ315の構成を適宜変更することで、皮相電力、無効電力及び瞬時電力の信号を出力するように構成することも可能である。図10に皮相電力出力用の端子J3Bを設けた例を示す。また、例えばこれらの被計測値のうち、少なくとも2つが交互に出力されるような構成とすることも可能である。
上記第2実施形態の計測装置1が備える磁気センサMRPの数は、3個に限定されず、1個であってもよいし、5個以上であってもよい。また、磁気センサMRPに含まれる磁気抵抗効果素子MRの数は、4個に限定されず、適宜選択することができる。
上記第2実施形態の基板170Aに形成されるフレキシブル部の数は、2つに限定されず、被覆電線400の径や実施形態に応じてフレキシブル部が3つ以上形成されてもよい。すなわち、基板170Aは、例えば正方形、菱形、正六角形、正八角形等の筒状体を形成するように構成することができる。計測装置1が磁気センサMRPを複数個備える場合、磁気センサMRPは必ずしも多角形の全ての辺に対応する位置に実装されていなくてもよく、互いに対向しないような位置関係となっていればよい。なお、磁気センサMRPは、被覆電線400の周方向に概ね等間隔に配置されるのが望ましい。また、基板170Aが形成する多角形は、全ての辺の長さが等しく、被覆電線400の周面に外接するような形状が望ましいが、厳密に全ての辺の長さが等しくなくてもよい。