JP2020122219A - 銅合金板材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】銅系材料の汎用スクラップを利用して製造することが可能な銅合金成分系において、75.0%IACS以上の高い導電性を有し、かつ高い強度と良好な耐応力緩和特性をバランス良く兼備した銅合金板材を提供する。【解決手段】質量%で、Zr:0.01〜0.50%、Sn:0.01〜0.50%、Mg、Al、Si、P、Ti、Cr、Mn、Co、Ni、Zn、Fe、Ag、Ca、Bの合計含有量:0〜0.50%、残部がCuおよび不可避的不純物である化学組成を有し、粒子径5〜50nm程度の微細第二相粒子の個数密度NAが10.0個/0.12μm2以上であり、かつ粒子径が約0.2μmを超える粗大第二相粒子の個数密度NB(個/0.012mm2)と前記NAの比NB/NAが0.50以下である金属組織を有する銅合金板材。【選択図】なし

Description

本発明は、銅合金板材およびその製造方法に関する。
銅合金の中でも、75%IACS以上といった高い導電率を有する合金系としてCu−Zr系銅合金が知られている。Cu−Zr系銅合金では最終的な加工度等を調整することにより、上記の高い導電率を有しながら、コネクター等の通電部品として実用性の高い強度レベル(例えば引張強さ約450MPa以上)を実現することが可能である。また、種々の用途において実用的な耐応力緩和特性(例えば200℃×1000hでの応力緩和率25%以下)を付与することも可能である。しかし従来、この合金系で高強度化を図りながら高い導電率と耐応力緩和特性を安定して同時に付与するためには、Zr以外の第三元素の含有量を厳しく制限する必要があるなど、制約が多かった。そのため、例えば導電率75.0%IACS以上、引張強さ450MPa以上、200℃×1000hでの応力緩和率25%以下といった、導電性、強度、耐応力緩和特性を高いレベルで具備する銅合金を得るためには、Snを含有する安価な汎用スクラップが使用しにくいなどコスト増大を招く要因を有していた。また、製造工程上の制約も大きかった。
特許文献1には、Zrおよびその他の元素を複合添加して銅合金の耐クリープ性を改善する技術が開示されている。しかし、Snを含有する合金例(実施例No.9)では導電率が43%IACSと低く、Cu−Zr系銅合金に特有の高い導電率が損なわれている。
特許文献2には、ヤング率と耐応力緩和特性を改善した銅合金が記載されている。ZrとSnを含有する合金例(表2に記載の本発明例2−9)では導電率が48.1%IACSと低く、また強度レベルも高くない。
特許文献3には、高い導電率を備えたCu−Zr系合金に圧延加工を施して、強度、曲げ加工性を改善する技術が開示されている。ZrとSnを含有する合金例(実施例No.2)では、導電率86%IACS、引張強さ530N/mm2が得られている。しかし、耐応力緩和特性の改善については教示がない。発明者らの調査によれば、特許文献3に開示の手法では耐応力緩和特性の十分な改善は望めない(後述比較例13参照)。
特許文献4には、リードフレームのリード変形が生じにくく、プレス加工後の歪取り焼鈍に要する時間も短い銅合金を得る技術が記載されている。添加可能な種々の元素が挙げられているが、ZrとSnを複合添加した具体例は示されていない。また、この技術では75.0%IACSの高導電率を安定して得ることは難しい。
特許文献5には、Crと、ZrやSn等の第三元素とを添加して、高い導電性と強度を得る技術が開示されている。ただし、応力緩和率は150℃×1000hの条件で14〜19%であり、用途によっては更なる向上が望まれる。
特許文献6には、Cu−Zr−Ti系銅合金において曲げたわみ係数を改善する技術が開示されている。Snを複合添加した例も示されているが(表1の発明例21)、その引張強さは386MPaと低い。
特許文献7には、Cu−Zr−Ti系銅合金において曲げ性および絞り加工性を改善する技術が開示されている。Snを複合添加した例も示されているが(表1の発明例16)、耐応力緩和特性の改善に関する教示はない。
特許文献8には、Cu−Zr系銅合金において結晶粒内のKAM値が1.5〜1.8°である組織状態として高い曲げ加工性とばね限界値を得る技術が開示されている。ただし、Snを添加することは記載されておらず、また、耐応力緩和特性を向上させる手法についても教示はない。
特開2005−298931号公報 国際公開第2012/026610号 特開2010−242177号公報 特開2010−126783号公報 特開2012−12644号公報 特開2014−208862号公報 特開2015−63741号公報 特開2012−172168号公報
本発明は、銅系材料の汎用スクラップを利用して製造することが可能な銅合金成分系において、75.0%IACS以上の高い導電性を有し、かつ高い強度と良好な耐応力緩和特性をバランス良く兼備した銅合金板材を提供することを目的とする。
発明者らは、ZrとSnを複合添加したCu−Zr−Sn系銅合金において、熱間圧延工程と冷間圧延工程で結晶格子に十分な歪を導入し、その後、その歪が過度に緩和されない加熱保持条件にて時効処理を施すことにより、上記目的が達成できることを見いだした。
すなわち本発明では、質量%で、Zr:0.01〜0.50%、Sn:0.01〜0.50%、Mg、Al、Si、P、Ti、Cr、Mn、Co、Ni、Zn、Fe、Ag、Ca、Bの合計含有量:0〜0.50%、残部がCuおよび不可避的不純物である化学組成を有し、下記(A)により定まる微細第二相粒子の個数密度NAが10.0個/0.12μm2以上であり、かつ下記(B)により定まる粗大第二相粒子の個数密度NB(個/0.012mm2)と前記NAの比NB/NAが0.50以下である金属組織を有し、導電率が75.0%IACS以上、圧延平行方向(LD)の引張強さが450MPa以上である銅合金板材が提供される。
(A)EDS(エネルギー分散型X線分析装置)を備えるTEM(透過型電子顕微鏡)により、板厚方向に観察した視野内に0.4μm×0.3μm(面積0.12μm2)の矩形観察領域を無作為に設ける。その観察領域内のCu母相部分に無作為に選んだ3箇所の位置でEDS分析を行ってZrの検出強度を測定し、前記3箇所の平均Zr検出強度をI0とする。TEM像において母相とのコントラストの相違として観察される粒状物のうち当該観察領域内に全体または一部分が存在するすべての粒状物について前記I0測定と同条件でEDS分析を行い、前記I0の10倍以上のZr検出強度が測定される粒状物の個数をカウントする。この操作を重複しない3個以上の矩形観察領域について行い、上記のカウントされた粒状物の合計数を観察領域の合計面積で除した値を0.12μm2当たりの個数に換算し、これを微細第二相粒子の個数密度NA(個/0.12μm2)とする。
(B)FE−EPMA(電界放出型電子線マイクロアナライザ)により、板面(圧延面)に平行な観察面に無作為に設けた120μm×100μm(面積0.012mm2)の矩形測定領域について、加速電圧15kV、ステップサイズ0.2μmの面分析条件でZrの蛍光X線検出強度(以下「Zr検出強度」という。)をWDS(波長分散型分光器)にて測定し、当該測定領域内におけるZr検出強度の最大値を100%として各測定スポットのZr検出強度を百分率で表し、Zr検出強度が前記最大値の50%未満である測定スポットの位置を黒、50%以上である測定スポットの位置を白で表示した二値マッピング画像を得たときの、1個の単独の白表示スポットまたは2個以上の隣接する白表示スポットで構成される白塗り領域の数をカウントする。ただし、1つの白塗り領域の輪郭内に黒表示スポットが存在する場合、その黒表示スポットは白表示スポットとみなす。この操作を重複しない3個以上の矩形測定領域について行い、上記のカウントされた白塗り領域の合計数を測定領域の合計面積で除した値を0.012mm2当たりの個数に換算し、これを粗大第二相粒子の個数密度NB(個/0.012mm2)とする。
上記成分元素のうち、Mg、Al、Si、P、Ti、Cr、Mn、Co、Ni、Zn、Fe、Ag、Ca、Bは任意含有元素である。ZrとSnの合計含有量は例えば0.10質量%以上とすることができる。
上記銅合金板材の板面(圧延面)に平行な観察面について、EBSD(電子線後方散乱回折法)により、結晶方位差15°以上の境界を結晶粒界とみなした場合の結晶粒内における、ステップサイズ0.2μmで測定したKAM(Kernel Average Misorientation)値は1.5〜4.5°の範囲の値となる。このKAM値は、測定領域の平面内に0.2μm間隔で配置された電子線照射スポットについて、隣接するスポット間の結晶方位差(以下これを「隣接スポット方位差」という。)をすべて測定し、15°未満である隣接スポット方位差の測定値のみを抽出して、それらの平均値を求めたものに相当する。すなわち、KAM値は結晶粒内の格子歪の量を表す指標であり、この値が大きいほど結晶格子の歪が大きい材料であると評価することができる。
上記の銅合金板材の製造方法として、前記化学組成を有する銅合金の鋳片を850〜980℃に加熱したのち熱間圧延を開始し、最終圧延パス温度を450℃以下とし、550℃から250℃までの温度域での圧延率を50%以上とする条件で熱延材を得る工程(熱間圧延工程)、
前記熱延材に、中間焼鈍を挿入しないか、または再結晶が生じない温度での1回以上の中間焼鈍を挿入する方法で合計圧延率90%以上の冷間圧延を施して冷延材を得る工程(冷間圧延工程)、
前記冷延材を280〜650℃の温度域に加熱して第二相粒子を析出させ、導電率75.0%IACS以上かつ引張強さ450MPa以上の時効材を得る工程(時効処理工程)、
を有する銅合金板材の製造方法が提供される。
本発明によれば、Cu−Zr−Sn系銅合金において、導電率75.0%IACS以上で、引張強さ450MPa以上の高強度と、優れた耐応力緩和特性をバランス良く兼ね備えた銅合金板材を提供することが可能となった。導電率80.0%IACS以上に調整することもできる。この銅合金板材はSnを必須成分とする他、銅合金スクラップから混入しやすい種々の元素の含有が許容されるため、原料に汎用的な銅合金スクラップを多用することができる。また、溶解・鋳造、熱間圧延、冷間圧延、時効処理を順次行うシンプルな工程により製造することが可能である。更に、Cu−Zr−Sn系銅合金では、Snを添加していないCu−Zr系銅合金と比べ熱間圧延時に形成される酸化皮膜が緻密化し、熱延材の表層部におけるZrの内部酸化が抑制されるので、熱間圧延後の面削量を低減することができ、材料歩留りの向上にもつながる。従って本発明は、従来のCu−Zr系銅合金板材と同等以上の性能を兼ね備えた板材を、より低コストで提供しうるものである。
《化学組成》
以下、化学組成における「%」は特に断らない限り「質量%」を意味する。
本発明では、ZrとSnを複合添加したCu−Zr−Sn系銅合金を適用する。
Zrは本来、マトリックス(金属素地)であるCu相の結晶粒界に第二相として析出し、強度や耐応力緩和特性の向上に有利に作用すると考えられている。そのZr含有相はCu3Zrを主体とするものであると考えられる。本発明では、Snを添加し、かつ後述の製造条件を適用することにより、結晶粒内にもZr含有相の析出を促進させ、強度および耐応力緩和特性の一層の向上を図っている。
Snは、Cu相中に固溶し、結晶粒内歪を与えることで強度向上に寄与することに加え、熱間圧延時に生じる酸化皮膜が緻密になり、Zrの内部酸化を効果的に抑制する。更に、後述の製造条件により、固溶しているSn原子の周囲に多くの歪を蓄えることができ、本来は粒界析出型の元素であるZrを結晶粒内に析出させるためのサイトとして機能することがわかった。そのメカニズムについては、発明者らは現時点で以下のように考えている。すなわち、Snを添加することで結晶粒内の各所にSn原子によるコットレル雰囲気が形成されやすい状態となる。熱間圧延工程において動的再結晶が生じない低温域で所定の加工度を稼ぐことによりマトリックスに歪を導入すると、固溶Sn原子により形成されたコットレル雰囲気に加工歪(転位)が固着され、その転位固着箇所がZrの析出サイトとして機能するようになる。Zr含有第二相が、結晶粒界だけでなく、結晶粒内の上記サイトを起点とした箇所に微細分散した組織状態が得られ、導電性の確保、強度の向上、および耐応力緩和特性の向上を同時に実現させることができる。
上記の作用を得るためには、Zrを0.01%以上、かつSnを0.01%以上含有させる必要がある。ZrとSnの合計含有量を0.10%以上とすることがより好ましい。ただし、多量のZr添加は熱間加工性の低下を招くので、Zr含有量は0.50%以下の範囲とすることが好ましい。また、多量のSn添加は過剰の歪の蓄積を招き、導電性低下の要因となるので、Sn含有量は0.50%以下の範囲とすることが好ましい。
Mg、Alは、Cu相中に固溶して強度、耐応力緩和特性を向上させる作用を有するので、必要に応じて含有させることができる。その場合、Mg含有量は0.01〜0.10%の範囲とすることがより効果的である。また、Al含有量は0.01〜0.10%の範囲とすることがより効果的である。
Ni、Pは、析出物を形成して強度向上に寄与するので、必要に応じて含有させることができる。その場合、Ni含有量は0.03〜0.20%の範囲とすることが好ましい。また、P含有量は0.01〜0.10%の範囲とすることが好ましい。NiとPは複合添加することがより効果的である。
Ti、Siは、上記Ni、Pと同様、析出物を形成して強度向上に寄与するので、必要に応じて含有させることができる。その場合、Ti含有量は0.03〜0.20%の範囲とすることが好ましい。また、Si含有量は0.01〜0.10%の範囲とすることが好ましい。TiとSiは複合添加することがより効果的である。
Crは、結晶粒内析出型の元素であり、Zrとともに添加すると相互作用により互いの析出物が微細化する。析出物の微細化は強度、耐応力緩和特性の向上に有効である。そのため、必要に応じてCrを含有させることができる。Crを含有させる場合、その含有量は0.01〜0.10%の範囲とすることがより効果的である。
その他、Mn、Co、Zn、Fe、Ag、Ca、B等を含有させることができる。
Mg、Al、Si、P、Ti、Cr、Mn、Co、Ni、Zn、Fe、Ag、Ca、Bの合計含有量は0.50%以下の範囲とすることが望ましい。これらの元素の過剰含有は、熱間加工性の低下や、歪過多による導電性の低下を招く要因になる。
《金属組織》
本発明では、微細第二相粒子の析出と、結晶格子歪(転位等)の導入によって強度および耐応力緩和特性の同時改善を図る。
〔微細第二相粒子〕
上述の(A)により定まる微細第二相粒子の個数密度NAが10.0個/0.12μm2以上であることが必要であり、20.0個/0.12μm2以上であることがより好ましい。個数密度NAの上限については特に制限する必要はないが、通常、100個/0.12μm2以下の範囲となる。この微細第二相粒子はCu−Zr系化合物を主体とするものであり、粒子径(TEM観察像における粒子の最も長い部分の径)が概ね5〜50nmの範囲にある。この種の微細第二相粒子は、本来は粒界析出型の化合物であるが、本発明に従えば、結晶粒内のSn原子固溶サイトにも析出する。すなわち本発明に従う銅合金板材は、本来粒界析出型であるCu−Zr系微細第二相粒子が結晶粒内に分散している特異な組織状態を有しており、その微細第二相粒子の分散形態が強度および耐応力緩和特性の向上に寄与する。
〔粗大第二相粒子〕
上述の(B)により特定される粗大第二相粒子は、Cu−Zr系化合物を主体とするものであり、粒子径(SEM観察像における粒子の最も長い部分の径)が概ね0.2μm以上であり、そのほとんどは粒子径0.2〜5μmの範囲にある。この種の粗大第二相粒子は大部分が結晶粒界に存在し、結晶粒内に分散している前記の微細第二相粒子と比べ、強度や耐応力緩和特性の向上作用は小さい。特に粒子径0.2μmを超えるような粗大粒子はほとんど強度向上に寄与しない。従って、粗大第二相粒子の存在量はできるだけ少ないことが望ましい。具体的には粗大第二相粒子の個数密度NBは0〜50.0個/0.012mm2の範囲であることが望ましい。
〔NB/NA比〕
粗大第二相粒子の個数密度NB(個/0.012mm2)と微細第二相粒子の個数密度NA(個/0.12μm2)の比、すなわちNB/NAの値が大きくなると、微細第二相粒子の個数密度NAが上記所定の範囲に十分確保されていても、後述のKAM値によって評価される結晶格子歪の蓄積が不十分となりやすく、高強度および良好な耐応力緩和特性を安定して両立させることが難しくなる。種々検討の結果、NB/NA比は0.50以下であることが望ましく、0.20以下であることがより好ましい。
〔KAM値〕
本発明では、本来粒界析出型のCu−Zr系析出相を結晶粒内に微細分散させた特異な組織状態によって、強度と耐応力緩和特性の向上作用を得ている。そのような析出形態を実現するためには、コットレル雰囲気を作りやすいSnを含有させたうえで歪を導入することによって結晶粒内にZrの析出サイトを用意する必要がある。従って、歪の導入は微細第二相粒子の結晶粒内析出を引き起こす手段として利用される。しかし、単に微細第二相粒子を結晶粒内に多く分散させるだけでは、強度および耐応力緩和特性をバランス良く向上させることができない。微細第二相粒子の結晶粒内分散に加え、時効処理後においても適度な結晶格子歪を有していること、すなわちマトリックスの過度な軟化が生じていないこと重要となる。最終的に、微細第二相粒子の個数密度NAが10.0個/0.12μm2以上であり、かつ圧延方向の引張強さが450MPa以上に維持されていれば、適度な結晶格子歪を有している組織状態であると判断することができる。一方、結晶格子歪の分布状態を定量的に評価する指標として、KAM値を挙げることができる。発明者らの検討によれば、この合金において引張強さ450MPa以上および200℃×1000hの応力緩和率25%以下の特性を両立させるためには、結晶方位差15°以上の境界を結晶粒界とみなした場合の結晶粒内における、ステップサイズ0.2μmで測定したKAM値(上述)が1.5〜4.5°であることが望ましく、1.8〜4.0°であることがより好ましい。
《特性》
〔導電率〕
本発明では、導電率が75.0%IACSである銅合金板材を対象とする。80.0%IACSである銅合金板材がより好ましい対象となる。
〔引張特性〕
本発明では、圧延平行方向(LD)の引張強さが450MPa以上である銅合金板材を対象とする。この強度レベルを有する材料であればコネクター等の通電部品として実用性を有する。480MPa以上、あるいは500MPa以上に調整した材料を提供することもできる。他の特性とのバランスを考慮するとLDの引張強さは550MPa以下の範囲で調整することが好ましく、540MPa以下に管理してもよい。LDの0.2%耐力については400〜500MPaであることが好ましい。破断伸びは3.0%以上であることが好ましい。
〔曲げ加工性〕
JIS H3110:2012に記載の90°W曲げ試験において、曲げ軸が圧延平行方向(B.W.)となる場合の割れが発生しない最小曲げ半径MBRと板厚tとの比MBR/tの値が0.5以下であることが好ましい。この曲げ試験でMBR/tが0.5以下であればコネクター等の通電部品への実用的な加工性を有していると判断できる。
〔耐応力緩和特性〕
後述の耐応力緩和特性の評価方法において、長手方向が圧延方向(LD)である試験片を200℃で1000h保持した場合の応力緩和率が25.0%以下であることが好ましい。この試験による応力緩和率が25.0%以下であれば導電率75.0%IACS以上の銅合金が適用される種々の用途において実用的な耐応力緩和特性を有すると判断できる。
《製造方法》
上述の特性を具備するCu−Zr−Sn系銅合金板材は、溶解・鋳造、熱間圧延、冷間圧延、時効処理を上記の順に実施するシンプルな工程により製造することができる。
なお、熱間圧延後には必要に応じて面削が行われ、冷間圧延前や時効処理後には必要に応じて酸洗、研磨、あるいは更に脱脂が行われる。以下、各工程について説明する。
〔溶解・鋳造〕
連続鋳造、半連続鋳造等により鋳片を製造すればよい。Zrなどの酸化を防止するためには、不活性ガス雰囲気または真空溶解炉で行うのが好ましい。
〔熱間圧延〕
鋳片を加熱炉に装入して850〜980℃に加熱する。加熱温度が850℃未満であると鋳造組織中の粗大なCu−Zr系第二相の溶体化が不足して粗大第二相粒子が残存しやすく、その結果、最終的に強度と耐応力緩和特性をバランス良く向上させることが難しくなる。加熱温度が980℃を超えると鋳造組織中の融点が低い箇所で強度が著しく低下し、熱間加工割れが発生しやすくなる。上記温度範囲での保持時間(材料温度が上記温度範囲にある時間)は30min以上とすることが好ましい。
加熱後の鋳片を炉から出したのち、熱間圧延を開始する。通常、銅合金の熱間圧延は添加元素が固溶する温度域で行われる。Cu−Zr系銅合金であれば、高温域で熱間圧延を終了するヒートパターンを採用した場合であっても、後工程で冷間圧延と熱処理を繰り返す手法を適用することなどによって良好な耐応力緩和特性を実現することが可能である。しかしながら、ZrとSnを複合添加した銅合金組成にて、耐応力緩和特性だけでなく、高強度化も同時に狙う場合には、一般的な熱間圧延条件を採用して良い結果を得ることは難しい。
発明者らは種々検討の結果、熱間圧延工程において、動的再結晶が起こりにくく、かつZrが第二相として析出可能な温度域で十分な圧下を施し、加工歪を導入することが極めて有効であることを見いだした。すなわち、結晶粒内に固溶してコットレル雰囲気を形成しやすいSnがZrとともに添加されている銅合金組成では、動的再結晶が起こりにくい低温域で圧延により導入された歪(転位など)がSn原子近傍に集積する。この種の歪集積箇所は、結晶粒内に、結晶粒界と似たような結晶格子が非整合な領域を形成しており、本来粒界析出型の元素であるZrにとって析出しやすいサイトであると考えられる。このような歪の導入操作をZrの析出温度域で行うと、付与された歪エネルギーを利用して第二相の生成反応が進行しやすくなり、Zrは結晶粒界だけでなく結晶粒内の歪集積箇所をも析出サイトに選んで析出する。その結果、熱間圧延を終了した材料(熱延材)は、添加したZrの一部が結晶粒内に微細な第二相粒子として分散した組織状態を呈するものとなり、この組織状態が強度と耐応力緩和特性の同時改善に寄与する。
具体的には、本発明に従い上述の化学組成に調整されたCu−Zr−Sn系銅合金の場合、最終圧延パス温度を450℃以下とし、550℃から250℃までの温度域での圧延率を50%以上とする条件で熱延材を得ることが極めて効果的であることがわかった。最終圧延パス温度が低くなりすぎると変形抵抗が増大し、また、Zrの析出温度域からも外れるので、最終圧延パス温度は250℃以上とすることが好ましい。最終圧延パス温度が450℃以下250℃以上の範囲にある場合は、550℃以下での合計圧延率が50%以上となるようにすればよい。
ここで、ある板厚h0(mm)からある板厚h1(mm)までの圧延率は下記(1)式によって定まる(後工程での冷間圧延の場合も同様)。
圧延率R(%)=(h0−h1)/h0×100 …(1)
なお、各圧延パスでの圧延温度は、その圧延パスでの圧延機のワークロールに入る直前の材料表面温度を採用することができる。
材料温度が550℃より高い温度域では、550℃以下で50%以上の圧延率を稼ぐことができるように、鋳片のサイズや熱間圧延機の規模に応じて適切なパススケジュールを設定すればよい。通常は加熱後の鋳片を炉から出したのち熱間圧延を開始し、熱間圧延でのトータル圧延率は例えば75〜95%の範囲とすればよい。
なお、本明細書では、動的再結晶が生じにくい低温域での圧延も含め、加熱炉から取り出した後、熱間圧延設備を用いて行う一連の圧延パスを熱間圧延と称する。
〔冷間圧延〕
上記のようにして得られた熱延材に、中間焼鈍を挿入しないか、または再結晶が生じない温度での1回以上の中間焼鈍を挿入する方法で合計圧延率90%以上の冷間圧延を施して冷延材を得る。上記の熱間圧延で動的再結晶が生じにくい温度域で圧延を行っているので、熱延材には既に歪が導入されている。この冷間圧延で、さらに多くの歪を蓄積させる。このようにして蓄積された歪は、強度向上に寄与する。この冷間圧延工程での圧延率の上限は、圧延機の能力や目標板厚に応じて設定されるが、通常、98%以下の合計圧延率とすればよい。中間焼鈍を挿入しない場合は95%以下の圧延率となるように管理してもよい。冷間圧延後の板厚は例えば0.1〜1.0mmである。
冷間圧延工程の途中で中間焼鈍を挟む場合は、上記熱間圧延工程で形成した組織状態(結晶粒内の歪集積箇所にZrが第二相として微細析出した組織状態)が崩れないように、再結晶が生じない条件で行う。中間焼鈍の加熱温度は例えば200〜500℃とすることが望ましい。中間焼鈍を挿入する場合も、合計圧延率を90%以上とする。例えば中間焼鈍を1回挿入して、90%圧延→中間焼鈍→70%圧延の工程で板厚h0からh1まで冷間圧延する場合、h1=h0×0.1×0.3=0.03h0となるから、上記(1)式より合計圧延率は(h0−0.03h0)/h0×100=97%となる。
製造コストの面から、中間焼鈍を行わない冷間圧延工程を適用することが好ましい。
〔時効処理〕
上記のようにして得られた冷延材を280〜650℃の温度域に加熱して第二相粒子を析出させ、導電率75.0%IACS以上あるいは80.0%IACS以上、かつ引張強さ450MPa以上の時効材を得る。この時効処理では、未析出のままマトリックスに固溶しているZr、あるいはその他の析出元素を十分に析出させ、導電率の向上、耐応力緩和特性の向上や、可能な場合には更なる強度向上を図る。ただし、時効処理では、時効処理前に既に蓄積されている歪が開放される方向に原子拡散が生じやすい。歪の開放化(再結晶化の進行を含む)は強度低下につながる一方で、更なる時効析出は強度向上につながる。そのため、この時効処理では、加熱温度および加熱保持時間によって結果的に強度が向上する場合と若干低下する場合がある。適切な時効処理条件は化学組成によっても変動する。化学組成に応じて、時効後の材料(時効材)において導電率が75.0%IACS以上となり、かつ引張強さが450MPa以上となる時効条件を採用すればよい。導電率は80.0%IACS以上となるように管理してもよい。最高到達温度が280〜650℃となる範囲で最適条件を見いだすことができる。組成に応じた最適条件は、予め予備実験により定めておくことができる。
Zrが活発に析出する温度域は約280℃以上の範囲にあるので、280℃以上の加熱が必要である。290℃以上とすることがより好ましい。Zr以外の時効析出元素としては、上述の成分元素のうちMg、Si、Ti、Cr、Co、Ni、Feが挙げられる。これらZr以外の時効析出元素の合計含有量が0〜0.01%と少ない場合(無添加の場合を含む)は、例えば最高到達温度を280〜420℃とし、280℃以上での保持時間を1〜10hとする条件、あるいは最高到達温度を420℃超え650℃以下とし、その温度範囲での保持時間を1min〜1hとする条件を採用すればよい。Cr含有量が0.05%以上の場合は、例えば最高到達温度を280〜550℃とし、280℃以上での保持時間を1〜10hとする条件、あるいは最高到達温度を550℃超え650℃以下とし、その温度範囲での保持時間を1min〜1hとする条件を採用すればよい。Crは500℃近傍で析出が進行するので、高温保持によっても、歪の開放(再結晶化を含む)を相殺する析出を生じさせることが可能である。
以上の工程にて、導電率75.0%IACS以上、あるいは80.0%IACS以上の優れた導電性を有する銅合金板材において、高い強度と耐応力緩和特性をバランス良く兼ね備えたものが得られる。
時効処理後には必要に応じて更に冷間圧延を施して強化を図ることも可能である。
表1に示す組成の銅合金を溶製し、縦型半連続鋳造機を用いて鋳造した。得られた鋳片を加熱炉に装入して表2に示す温度で加熱保持した。加熱保持時間(材料温度が900℃以上の温度範囲にある時間。ただし加熱温度900℃未満の例ではほぼその加熱温度で保持される時間。)は1min〜1hとした。加熱後の鋳片を炉から出し、熱間圧延機にて熱間圧延を開始した。一部の比較例(No.21、31、32)を除き、550℃以下の温度域で50%以上の圧延率が確保できるように、550℃を超える高温域でのパス間待ち時間を調整した。表2に最終圧延パス温度、熱間圧延工程でのトータル圧延率、550℃から250℃までの圧延率(最終圧延パス温度が550〜250℃にあるものは550℃から最終圧延パス温度までの圧延パスにおける圧延率)、および250℃未満での圧延率を示してある。熱間圧延工程でのトータル圧延率は75〜95%、550℃以下での圧延パス数は3〜10パス、最終圧延パス後の板厚は2〜10mmである。熱間圧延中に材料に割れが生じた一部の比較例(No.34)では、その時点で製造工程を終了した。なお、各パスでの圧延温度は、熱間圧延機のワークロール入り側での材料表面温度を放射温度計で測定することによりモニターした。熱間圧延後には面削を行って酸化スケールを除去し、次工程に供するための熱延材とした。
なお、一部の例(本発明例No.1〜3、比較例No.30、31)では、上記面削前の材料からサンプルを採取し、以下の方法で熱延板の表層部に形成されている酸化皮膜の厚さを測定した。
〔酸化皮膜厚さの測定〕
熱間圧延後に表面の手入れを行っていない熱延板から切り出した試料について、板厚をマイクロメーターにて測定し、これをt0(mm)とする。次に、片側の圧延面について回転研磨機を用いて番手150(JIS R6010:2000に規定される粒度P150)の耐水研磨紙にて酸化皮膜が無くなるまで研磨し、研磨後の板厚をマイクロメーターにて測定し、これをt1(mm)とする。上記t0とt1の差(t0−t1)を計算し、これを当該試料の酸化皮膜厚さ(mm)とする。
結果を表5に示してある。
上記の各熱延材に表2に示す合計圧延率で冷間圧延を施し、板厚0.15〜1.0mmの冷延材を得た。一部の例(本発明例No.10、比較例No.32、33)では冷間圧延工程の途中で中間焼鈍を1回挿入した。それ以外は中間圧延を挿入せずに冷間圧延工程を終了した。中間焼鈍を挿入した例については表2の欄外に製造条件を示してある。中間焼鈍後の金属組織を光学顕微鏡にて観察して再結晶粒の有無を確認した。次いで、各冷延材に表2に示す条件で時効処理を施した。ここでは、表2中に示す温度まで昇温後、その温度で表2中に示す時間の保持を行ったのち冷却するというヒートパターンを採用した。加熱時の雰囲気は水素+窒素混合ガス雰囲気または不活性ガス雰囲気とした。時効処理後には酸洗を施し、得られた時効材を供試材とした。供試材の板厚を表2中に示す。
Figure 2020122219
Figure 2020122219
各供試材(板厚0.15〜1.0mm)について以下の調査を行った。
〔微細第二相粒子の個数密度NA
前述(A)の方法で微細第二相粒子の個数密度NAを求めた。TEMは日本電子社製JEM−2010を用い、加速電圧200kV、ビーム径5nmで電子線を照射したときの0.4μm×0.3μm(面積0.12μm2)の範囲を明視野像にて観察した。観察領域の合計面積は0.36μm2(3視野)とした。
〔微細第二相粒子の個数密度NB
前述(B)の方法で粗大第二相粒子の個数密度NBを求めた。FE−EPMAは日本電子社製JXA−8530Fを用いた。1つの矩形測定領域のサイズは120μm×100μm(0.012mm2)であり、測定領域の合計面積は0.036mm2(3視野)とした。
〔NB/NA比〕
上記のNB値をNA値で除することにより、NB/NA比を求めた。
〔KAM値〕
FE−SEM(電界放出形走査電子顕微鏡、TSLソリューション社製SC−200)を用いて、EBSD(電子線後方散乱回折法)により、結晶方位差15°以上の境界を結晶粒界とみなした場合の結晶粒内における、ステップサイズ0.2μmで測定したKAM値を求めた。このKAM値は、測定領域の平面内に0.2μm間隔で配置された電子線照射スポットについて、隣接するスポット間の結晶方位差(以下これを「隣接スポット方位差」という。)をすべて測定し、15°未満である隣接スポット方位差の測定値のみを抽出して、それらの平均値を求めたものである。測定領域は120μm×100μmとし、各供試材につき3個の測定領域で求めたKAM値を平均した値をその供試材のKAM値として採用した。
〔導電率〕
JIS H0505に従って各供試材の導電率を測定した。
〔引張強さ〕
各供試材からLDの引張試験片(JIS 5号)を採取し、試験数n=3でJIS Z2241の引張試験行い、n=3の平均値によって引張強さを定めた。また、この引張試験により求めた0.2%耐力の値を後述の応力緩和率の測定に用いた。
〔曲げ加工性〕
JIS H3110:2012に記載の方法で曲げ軸が圧延平行方向(B.W.)となる場合の90°W曲げ試験を行った。割れが発生しない最小曲げ半径MBRと板厚tとの比MBR/tを求めた。
〔応力緩和率〕
応力緩和率は、供試材からLDの長さが60mm、TDの幅が10mmの試験片を切り出し、これを日本電子材料工業会標準規格EMAS−1011に示される片持ち梁方式の応力緩和試験にかけることによって求めた。試験片は、たわみ変位が板厚方向となるように、0.2%耐力の80%に相当する負荷応力を付与した状態でセットし、200℃で1000h保持後の応力緩和率を測定した。
これらの結果を表3、表4に示す。
Figure 2020122219
Figure 2020122219
Figure 2020122219
本発明例では、導電率75.0%以上の銅合金板材において、引張強さ450MPa以上、200℃×1000hの応力緩和率25.0%以下の特性が付与できた。これらのKAM値は1.5〜4.5の範囲にあり、時効処理後に適度な結晶格子歪が残っていることがわかる。なお、No.10の冷間圧延工程における中間焼鈍では再結晶は生じていなかった。
これに対し、比較例であるNo.21は一般的な銅合金の熱間圧延条件に従って最終圧延パスを550℃以上の温度で終えたため、熱間圧延工程でZrの結晶粒内析出が生じなかった。その結果、時効処理でZrが結晶粒界に多量に析出して粗大化し、時効材の強度レベルが低かった。No.22は熱間圧延時の加熱温度が低すぎたので鋳造組織に起因する粗大な第二相が残存し、強度および耐応力緩和特性に劣った。No.23は冷間圧延での圧延率が低かったので歪の蓄積が不十分となり、KAM値が低く、強度向上が不十分であった。No.24は時効処理温度が低すぎたので微細第二相粒子の生成量が不足して耐応力緩和特性が悪かった。また、マトリックス中に未析出の元素が過飽和に存在し、導電性が悪かった。No.25は熱間圧延で550℃から250℃までの温度域での圧延を十分に行わなかったのでZrが熱間圧延時に結晶粒内に十分析出せず、耐応力緩和特性に劣った。No.26はSn含有量が過剰であり、No.27はZn含有量が過剰であるため、これらはいずれも導電性が悪かった。No.28はZr含有量が不足したのでCu−Zr系微細第二相粒子の量が少なくなり、耐応力緩和特性が悪かった。No.29はZr以外の時効析出元素を含有しない組成において比較的高温で時効処理を行ったので、時効処理中の再結晶化による歪開放によってKAM値が低くなり、強度および耐応力緩和特性が低下した。No.30、No.31はSnを含有しないCu−Zr系銅合金である。これらは、熱間圧延→冷間圧延→時効処理のシンプルな製造工程では十分な歪の蓄積(KAM値の増大)ができず、強度と耐応力緩和特性を同時に改善することができなかった例である。No.32は熱間圧延での最終パス温度が高く、また冷間圧延の間に再結晶化を伴う中間焼鈍を施したので、KAM値が低くなり、強度と耐応力緩和特性をバランス良く改善することができなかった。No.33は冷間圧延の間に再結晶化を伴う中間焼鈍を施したものであり、析出物が粗大化するとともにKAM値が低くなり、耐応力緩和特性を改善することができなかった。No.34はZr含有量が多すぎたので熱間圧延で割れが生じ、その後の工程に進めなかった。
熱延板表層部の酸化皮膜厚さについては、表5に見られるように、Snを含有する本発明例のものは、Snを含有しない比較例No.30、31と比べ、熱延板表層部の酸化皮膜厚さが薄くなっていることがわかる。

Claims (3)

  1. 質量%で、Zr:0.01〜0.50%、Sn:0.01〜0.50%、Mg、Al、Si、P、Ti、Cr、Mn、Co、Ni、Znの合計含有量:0〜0.50%、残部がCuおよび不可避的不純物である化学組成を有し、下記(A)により定まる微細第二相粒子の個数密度NAが10.0個/0.12μm2以上であり、かつ下記(B)により定まる粗大第二相粒子の個数密度NB(個/0.012mm2)と前記NAの比NB/NAが0.50以下である金属組織を有し、板面(圧延面)に平行な観察面について、EBSD(電子線後方散乱回折法)により、結晶方位差15°以上の境界を結晶粒界とみなした場合の結晶粒内における、ステップサイズ0.2μmで測定したKAM値が1.5〜4.5°であり、導電率が75.0%IACS以上、圧延平行方向(LD)の引張強さが450MPa以上である銅合金板材。
    (A)EDS(エネルギー分散型X線分析装置)を備えるTEM(透過型電子顕微鏡)により、板厚方向に観察した視野内に0.4μm×0.3μm(面積0.12μm2)の矩形観察領域を無作為に設ける。その観察領域内のCu母相部分に無作為に選んだ3箇所の位置でEDS分析を行ってZrの検出強度を測定し、前記3箇所の平均Zr検出強度をI0とする。TEM像において母相とのコントラストの相違として観察される粒状物のうち当該観察領域内に全体または一部分が存在するすべての粒状物について前記I0測定と同条件でEDS分析を行い、前記I0の10倍以上のZr検出強度が測定される粒状物の個数をカウントする。この操作を重複しない3個以上の矩形観察領域について行い、上記のカウントされた粒状物の合計数を観察領域の合計面積で除した値を0.12μm2当たりの個数に換算し、これを微細第二相粒子の個数密度NA(個/0.12μm2)とする。
    (B)FE−EPMA(電界放出型電子線マイクロアナライザ)により、板面(圧延面)に平行な観察面に無作為に設けた120μm×100μm(面積0.012mm2)の矩形測定領域について、加速電圧15kV、ステップサイズ0.2μmの面分析条件でZrの蛍光X線検出強度(以下「Zr検出強度」という。)をWDS(波長分散型分光器)にて測定し、当該測定領域内におけるZr検出強度の最大値を100%として各測定スポットのZr検出強度を百分率で表し、Zr検出強度が前記最大値の50%未満である測定スポットの位置を黒、50%以上である測定スポットの位置を白で表示した二値マッピング画像を得たときの、1個の単独の白表示スポットまたは2個以上の隣接する白表示スポットで構成される白塗り領域の数をカウントする。ただし、1つの白塗り領域の輪郭内に黒表示スポットが存在する場合、その黒表示スポットは白表示スポットとみなす。この操作を重複しない3個以上の矩形測定領域について行い、上記のカウントされた白塗り領域の合計数を測定領域の合計面積で除した値を0.012mm2当たりの個数に換算し、これを粗大第二相粒子の個数密度NB(個/0.012mm2)とする。
  2. 前記金属組織は、粒子径(TEM観察像における粒子の最も長い部分の径)が5〜50nmである第二相粒子が結晶粒内に分散しているものである、請求項1に記載の銅合金板材。
  3. 質量%で、Zr:0.01〜0.50%、Sn:0.01〜0.50%、Mg、Al、Si、P、Ti、Cr、Mn、Co、Ni、Znの合計含有量:0〜0.50%、残部がCuおよび不可避的不純物である銅合金の鋳片を850〜980℃に加熱したのち熱間圧延を開始し、最終圧延パス温度を450℃以下とし、550℃から250℃までの温度域での圧延率を50%以上とする条件で熱延材を得る工程(熱間圧延工程)、
    前記熱延材に、中間焼鈍を挿入しないか、または再結晶が生じない温度での1回以上の中間焼鈍を挿入する方法で合計圧延率90%以上の冷間圧延を施して冷延材を得る工程(冷間圧延工程)、
    前記冷延材を280〜650℃の温度域に加熱して第二相粒子を析出させ、導電率75.0%IACS以上かつ引張強さ450MPa以上の時効材を得る工程(時効処理工程)、
    を有する請求項1または2に記載の銅合金板材の製造方法。
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