JP2020117415A - Sn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法、Sn−Zn−O系酸化物焼結体及びSn−Zn−O系酸化物ターゲット - Google Patents
Sn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法、Sn−Zn−O系酸化物焼結体及びSn−Zn−O系酸化物ターゲット Download PDFInfo
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Abstract
【課題】ZnおよびSnを主成分としたSn−Zn−O系酸化物焼結体において、スパッタリング法における成膜時にアーキングの発生を抑制することができるSn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】亜鉛(Zn)とスズ(Sn)を主成分とするSn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法において、亜鉛酸化物の粉末、スズ酸化物の粉末、第1添加元素Mを含有する酸化物の粉末及びタンタル酸化物の粉末を混合して造粒粉末を作製する造粒工程S1と、前記造粒粉末を加圧成形して成形体を得る成形工程S2と、前記成形体を焼成して酸化物焼結体を得る焼成工程S3とを有し、前記第1添加元素Mは、Si、Ti、Ge、In、Bi、Ce、AlおよびGaから選ばれた少なくとも1種であり、前記酸化タンタル粉末は、D90が5μm以下であることを特徴とする。【選択図】図1
Description
本発明は、太陽電池、液晶表示素子、タッチパネル等に適用される透明導電膜を直流スパッタリング、高周波スパッタリングといったスパッタリング法で製造する際にスパッタリングターゲットとして使用されるSn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法、Sn−Zn−O系酸化物焼結体及びSn−Zn−O系酸化物ターゲットに関する。
高い導電性と可視光領域での高い透過率とを有する透明導電膜は、太陽電池、液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンスおよび無機エレクトロルミネッセンス等の表面素子や、タッチパネル用電極等に利用される他、自動車窓や建築用の熱線反射膜、帯電防止膜、冷凍ショーケース等の各種の防曇用透明発熱体としても利用されている。
透明導電膜としては、アンチモンやフッ素をドーパントとして含む酸化錫(SnO2)、アルミニウムやガリウムをドーパントとして含む酸化亜鉛(ZnO)、および、錫をドーパントとして含む酸化インジウム(In2O3)等が知られている。特に、錫をドーパントとして含む酸化インジウム(In2O3)膜、すなわち、In−Sn−O系の膜はITO(Indium tin oxide)膜と称され、低抵抗の膜が容易に得られることから広く用いられている。
上記透明導電膜の製造方法としては、直流スパッタリング、高周波スパッタリングといったスパッタリング法が良く用いられている。スパッタリング法は、蒸気圧の低い材料の成膜や精密な膜厚制御を必要とする際に有効な手法であり、操作が非常に簡便であるため、工業的に広範に利用されている。
上記透明導電膜を製造するため、従来、ITO等の酸化インジウム系の材料が広範囲に用いられている。しかし、インジウム金属は希少金属であること、また、毒性を有するインジウム金属は環境や人体に対し悪影響が懸念されていることから、非インジウム系の材料が求められている。
上記非インジウム系の材料としては、上述したようにアルミニウムやガリウムをドーパントとして含む酸化亜鉛(ZnO)系材料、および、アンチモンやフッ素をドーパントとして含む酸化錫(SnO2)系材料が知られている。そして、上記酸化亜鉛(ZnO)系材料の透明導電膜はスパッタリング法で工業的に製造されているが、耐薬品性(耐アルカリ性、耐酸性)に乏しい等の欠点を有する。他方、酸化錫(SnO2)系材料の透明導電膜は耐薬品性に優れているものの、高密度で耐久性のある酸化錫系焼結体ターゲットを製造し難いため、上記透明導電膜をスパッタリング法で製造することに困難が伴う欠点を有していた。
そこで、これ等の欠点を改善する材料として、酸化亜鉛と酸化錫を主成分とする焼結体が提案されている。例えば、特許文献1には、酸化亜鉛と酸化錫を主成分とし、2種類の添加元素を所定の割合で含有するSn−Zn−O系酸化物焼結体とその製造方法が提示されている。
しかしながら、Sn−Zn−O系酸化物焼結体の製造条件によっては、当該焼結体からなるターゲットでスパッタリング法を行った際、成膜時に異常放電(アーキング)が発生し、透明導電膜の安定した成膜が困難となる場合があった。
本発明はこのような経緯に着目してなされたもので、ZnおよびSnを主成分としたSn−Zn−O系酸化物焼結体において、スパッタリング法よる成膜時にアーキングの発生を抑制することができるSn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、亜鉛(Zn)とスズ(Sn)を主成分とするSn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法において、亜鉛酸化物の粉末、スズ酸化物の粉末、第1添加元素Mを含有する酸化物の粉末及びタンタル酸化物の粉末を混合して造粒粉末を作製する造粒工程と、前記造粒粉末を加圧成形して成形体を得る成形工程と、前記成形体を焼成して酸化物焼結体を得る焼成工程とを有し、前記第1添加元素Mは、Si、Ti、Ge、In、Bi、Ce、AlおよびGaから選ばれた少なくとも1種であり、前記タンタル酸化物の粉末は、D90が5μm以下であることを特徴とする。
このようにすれば、得られたSn−Zn−O系酸化物焼結体からなるターゲットにおいて、スパッタリング法における成膜時にアーキングの発生を抑制することができる。
このとき、本発明の一態様では、前記焼成工程を、酸素濃度が70体積%以上の雰囲気において、1200℃以上1450℃以下の温度で10時間以上30時間以下行ってもよい。
このようにすれば、Sn−Zn−O系酸化物焼結体焼結体がより緻密になる。
このとき、本発明の一態様では、前記タンタル酸化物の粉末は、湿式粉砕を行った粉末としてもよい。
このようにすれば、より確実に、スパッタリング法における成膜時にアーキングの発生を抑制することができる。
本発明の一態様は、亜鉛(Zn)とスズ(Sn)を主成分とするSn−Zn−O系酸化物焼結体において、さらに、第1添加元素M及びタンタル(Ta)を含有し、前記スズを、原子数比Sn/(Sn+Zn)として0.1以上0.9以下の割合で含有し、前記第1添加元素Mは、Si、Ti、Ge、In、Bi、Ce、AlおよびGaから選ばれた少なくとも1種であり、前記第1添加元素Mを、全金属元素の総量に対する原子数比M/(Sn+Zn+M+Ta)として0.0001以上0.04以下の割合で含有し、前記Taを、全金属元素の総量に対する原子数比Ta/(Sn+Zn+M+Ta)として0.005以上0.1以下の割合で含有し、前記酸化物焼結体表面において、直径2mm以上の黒点が3個/m2以下であることを特徴とする。
このようにすれば、Sn−Zn−O系酸化物焼結体からなるターゲットにおいて、スパッタリング法における成膜時にアーキングの発生を抑制することができる。
このとき、本発明の一態様では、Sn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度が90%以上かつ比抵抗が1Ω・cm以下としてもよい。
高密度で耐久性のある酸化物焼結体は、スパッタリングターゲットとして有用である。
このとき、本発明の一態様では、上記Sn−Zn−O系酸化物焼結体にバッキングプレートを接合してなるSn−Zn−O系酸化物ターゲットとしてもよい。
このようにすれば、スパッタリング法における成膜時にアーキングの発生を抑制することができる。
本発明に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法では、スパッタリング法における成膜時にアーキングの少ない、Sn−Zn−O系酸化物焼結体を得ることができる。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。また、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。そして、アーキングを示したターゲットの表面に黒点が現れることを発見した。この黒点部分にはZnTa2O6と思われる小粒子が点在し、黒点部分は抵抗が高くなっていた。また、粗大な黒点、例えば直径2mm以上の大きさの黒点が現れることがあり、詳細な理由は不明であるが、粗大な黒点の数と、アーキングの程度に相関が見られた。このことから、粗大な黒点がアーキングの原因と推測された。
そして本発明者らは、ターゲットの原料となる亜鉛酸化物の粉末、スズ酸化物の粉末、第1添加元素Mを含有する酸化物の粉末及びタンタル酸化物の粉末の中で、タンタル酸化物の原料ロットの粒度分布が、ターゲットにおける粗大な黒点の数と関連があることを見出した。具体的には、Taの添加に用いられるTa2O5粉末の平均粒径が大きい程、粗大な黒点の発生が多くなり、アーキングを示すことが多くなることを見出した。そして、本発明者らはかかる知見から本発明を完成するに至った。以下詳細に説明する。
1.Sn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法
1−1.造粒工程
1−2.成形工程
1−3.焼成工程
2.Sn−Zn−O系酸化物焼結体
3.Sn−Zn−O系酸化物ターゲット
1.Sn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法
1−1.造粒工程
1−2.成形工程
1−3.焼成工程
2.Sn−Zn−O系酸化物焼結体
3.Sn−Zn−O系酸化物ターゲット
<1.Sn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法>
本発明のSn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法におけるプロセスの概略を示す工程図である。本発明の一実施形態は、亜鉛(Zn)とスズ(Sn)を主成分とするSn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法において、亜鉛酸化物の粉末、スズ酸化物の粉末、第1添加元素Mを含有する酸化物の粉末及びタンタル酸化物の粉末を混合して造粒粉末を作製する造粒工程S1と、造粒粉末を加圧成形して成形体を得る成形工程S2と、成形体を焼成して酸化物焼結体を得る焼成工程S3とを有する。
本発明のSn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法におけるプロセスの概略を示す工程図である。本発明の一実施形態は、亜鉛(Zn)とスズ(Sn)を主成分とするSn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法において、亜鉛酸化物の粉末、スズ酸化物の粉末、第1添加元素Mを含有する酸化物の粉末及びタンタル酸化物の粉末を混合して造粒粉末を作製する造粒工程S1と、造粒粉末を加圧成形して成形体を得る成形工程S2と、成形体を焼成して酸化物焼結体を得る焼成工程S3とを有する。
そして、造粒工程S1において第1添加元素M及び第2添加元素であるタンタルが所定の割合となるように混合することで、高密度で低抵抗なSn−Zn−O系酸化物焼結体を製造することができる。
また、混合前にタンタル酸化物の粉末を所定の粒径に制御することで、粗大な黒点の発生及びアーキングの発生をより確実に防ぐことができる。
また、焼成工程を後述する所定の条件とすることで、直径2mm以上の粗大な黒点がターゲット表面に3個/m2以下である、本発明に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を製造することができる。以下、各工程について個別に説明する。
(1−1.造粒工程S1)
まず、造粒工程S1では、主原料を用意する。主原料となる酸化スズ及び酸化亜鉛は、スズ酸化亜鉛化合物のみ、あるいは酸化スズと酸化亜鉛との混合粉末である。また、Snを原子数比Sn/(Sn+Zn)として0.1以上0.9以下の割合で含有させることが好ましい。主原料は、酸化スズと酸化亜鉛との混合粉末を用いた方が、配合比を容易に調整でき好ましい。例えば、この原料粉末は、SnO2粉末とZnO粉末とする。また、後述する第1添加元素Mを含有する酸化物の粉末及び、第2添加元素であるタンタルを含有する酸化物の粉末を用意し、この主原料に添加し調合する。例えば、第1添加元素MとしてGeO2粉末、および、第2添加元素としてTa2O5粉末を用意し、主原料に添加し調合する。
まず、造粒工程S1では、主原料を用意する。主原料となる酸化スズ及び酸化亜鉛は、スズ酸化亜鉛化合物のみ、あるいは酸化スズと酸化亜鉛との混合粉末である。また、Snを原子数比Sn/(Sn+Zn)として0.1以上0.9以下の割合で含有させることが好ましい。主原料は、酸化スズと酸化亜鉛との混合粉末を用いた方が、配合比を容易に調整でき好ましい。例えば、この原料粉末は、SnO2粉末とZnO粉末とする。また、後述する第1添加元素Mを含有する酸化物の粉末及び、第2添加元素であるタンタルを含有する酸化物の粉末を用意し、この主原料に添加し調合する。例えば、第1添加元素MとしてGeO2粉末、および、第2添加元素としてTa2O5粉末を用意し、主原料に添加し調合する。
造粒工程S1では、金属原子数比が、Sn/(Sn+Zn)が0.1以上0.9以下、M/(Sn+Zn+M+Ta)が0.0001以上0.04以下、Ta/(Sn+Zn+M+Ta)が0.005以上0.1以下となるように亜鉛酸化物の粉末、スズ酸化物の粉末、及び添加元素を含有する酸化物の粉末を混合することが好ましい。このように、Sn/(Sn+Zn)が0.1以上0.9以下となるような割合で、かつ、上述したように第1添加元素M及びタンタル(Ta)を所定の割合で混合することにより、高密度で低抵抗なSn−Zn−O系酸化物焼結体を製造することができる。なお、従来の方法で実験した結果、Ta/(Sn+Zn+M+Ta)が0.005以上でアーキングの発生が顕著となり、0.005未満では、黒点の発生が無くアーキングの発生もなかった。
造粒工程S1において、亜鉛酸化物の粉末、スズ酸化物の粉末は、平均粒径(D50相当)10μm以下が好ましい。また、第1添加元素Mを含有する酸化物の粉末及び、第2添加元素タンタルを含有するTa2O5粉末は、平均粒径20μm以下が好ましい。上記範囲の平均粒径の粉末を用意することで、高密度かつ低抵抗のSn−Zn−O系酸化物焼結体を得ることができる。
(Ta2O5粉末の粉砕)
ここで、第2添加元素タンタルを含有するTa2O5粉末は、D90が5μm以下である。上述したように、黒点部分にはZnTa2O6と思われる小粒子が点在する。Ta2O5粉末の粒径を小さくし、かつ、粒度分布の内大きい粒径のTa2O5粉末が少なくなるようにTa2O5粉末の粒度分布を制御することで、Sn−Zn−O系酸化物焼結体における元素分布を均一にし、ZnTa2O6のような小粒子の析出を防ぐことができる。そして、粗大な黒点の発生及びアーキングの発生を防ぐことができる。D90が5μmを超える場合、粗大な黒点及びアーキングの発生を防ぐことが困難となる。D90の下限は特に定めないが、生産性や使用するビーズからのコンタミネーションの観点から1μm以上が望ましい。Ta2O5粉末の粒度分布はTa2O5粉末を粉砕することにより制御する。Ta2O5粉末の粉砕方法は、粒度分布を制御できれば特に制限されないが、ビーズミル装置により湿式粉砕を行うことが好ましい。例えばTa2O5粉末を純水や分散剤などと合わせてスラリーとし、ビーズミル装置で湿式粉砕を行い、Ta2O5粉末のD90の範囲を達成できるように、Ta2O5粉末の粉砕時の回転数、パス回数、粉砕に使用するビーズの径や材質、Ta2O5スラリー濃度を適宜調整する。
ここで、第2添加元素タンタルを含有するTa2O5粉末は、D90が5μm以下である。上述したように、黒点部分にはZnTa2O6と思われる小粒子が点在する。Ta2O5粉末の粒径を小さくし、かつ、粒度分布の内大きい粒径のTa2O5粉末が少なくなるようにTa2O5粉末の粒度分布を制御することで、Sn−Zn−O系酸化物焼結体における元素分布を均一にし、ZnTa2O6のような小粒子の析出を防ぐことができる。そして、粗大な黒点の発生及びアーキングの発生を防ぐことができる。D90が5μmを超える場合、粗大な黒点及びアーキングの発生を防ぐことが困難となる。D90の下限は特に定めないが、生産性や使用するビーズからのコンタミネーションの観点から1μm以上が望ましい。Ta2O5粉末の粒度分布はTa2O5粉末を粉砕することにより制御する。Ta2O5粉末の粉砕方法は、粒度分布を制御できれば特に制限されないが、ビーズミル装置により湿式粉砕を行うことが好ましい。例えばTa2O5粉末を純水や分散剤などと合わせてスラリーとし、ビーズミル装置で湿式粉砕を行い、Ta2O5粉末のD90の範囲を達成できるように、Ta2O5粉末の粉砕時の回転数、パス回数、粉砕に使用するビーズの径や材質、Ta2O5スラリー濃度を適宜調整する。
また、Ta2O5粉末の粉砕は、スズ酸化物や亜鉛酸化物のような、主原料に添加する前に行うことが好ましい。後述するように、主原料に添加した後においても湿式粉砕を行い、造粒粉末の平均粒径(D50)を1μm以下としている。しかし、Taは微量の添加でもその効果を奏するものの、添加量が少ない場合にはTa2O5粉末が十分に粉砕されない場合も生じうる。Ta2O5粉末を予め粉砕して所定の粒度分布に制御することで、より確実に黒点の発生及びアーキングの発生を防ぐことができる。なおD90は、それぞれの粒子の体積を粒径の小さい側から累積し、その累積体積が全粒子の合計体積の90%となる粒径を意味する。
(原料粉末の造粒)
上記の方法で調合されたタンタル以外の原料粉末を、純水やバインダー、分散剤などと合わせてスラリーとする。このスラリーに湿式粉砕されたタンタルのスラリーを混合する。そして、硬質ZrO2ボールが投入されたビーズミル装置等を用いて、原料粉末の平均粒径(D50)が1μm以下となるまで湿式粉砕を行った後、10時間以上混合撹拌してスラリーを得る。得られたスラリーをスプレードライヤー装置等にて噴霧および乾燥することで造粒粉末を得ることができる。
上記の方法で調合されたタンタル以外の原料粉末を、純水やバインダー、分散剤などと合わせてスラリーとする。このスラリーに湿式粉砕されたタンタルのスラリーを混合する。そして、硬質ZrO2ボールが投入されたビーズミル装置等を用いて、原料粉末の平均粒径(D50)が1μm以下となるまで湿式粉砕を行った後、10時間以上混合撹拌してスラリーを得る。得られたスラリーをスプレードライヤー装置等にて噴霧および乾燥することで造粒粉末を得ることができる。
(1−2.成形工程S2)
成形工程S2は、造粒工程S1で得られた造粒粉末を加圧成形して成形体を得る工程である。成形工程S2では、造粒粉末の粒子間の空孔を除去するために、例えば294MPa(3.0ton/cm2)程度の圧力で加圧成形を行う。加圧成形の方法については特に限定されないが、例えば、造粒工程S1で得られた造粒粉末をゴム型へ充填し、高圧力を加えることが可能な冷間静水圧プレス(CIP:Cold Isostatic Press)を用いることが好ましい。
成形工程S2は、造粒工程S1で得られた造粒粉末を加圧成形して成形体を得る工程である。成形工程S2では、造粒粉末の粒子間の空孔を除去するために、例えば294MPa(3.0ton/cm2)程度の圧力で加圧成形を行う。加圧成形の方法については特に限定されないが、例えば、造粒工程S1で得られた造粒粉末をゴム型へ充填し、高圧力を加えることが可能な冷間静水圧プレス(CIP:Cold Isostatic Press)を用いることが好ましい。
(1−3.焼成工程S3)
焼成工程S3は、上記成形工程S2で得られた成形体を、焼結炉内で、所定の昇温速度、所定の温度かつ所定の時間焼成して焼結体を得る工程である。
焼成工程S3は、上記成形工程S2で得られた成形体を、焼結炉内で、所定の昇温速度、所定の温度かつ所定の時間焼成して焼結体を得る工程である。
(炉内雰囲気)
焼結炉内における酸素濃度が70体積%以上の雰囲気中において、成形体を焼成することが好ましい。これは、ZnO、SnO2やZn2SnO4化合物の拡散を促進させ、焼結性を向上させると共に導電性を向上させる効果があるためである。高温域では、ZnOやZn2SnO4の揮発を抑制する効果もある。
焼結炉内における酸素濃度が70体積%以上の雰囲気中において、成形体を焼成することが好ましい。これは、ZnO、SnO2やZn2SnO4化合物の拡散を促進させ、焼結性を向上させると共に導電性を向上させる効果があるためである。高温域では、ZnOやZn2SnO4の揮発を抑制する効果もある。
一方、焼結炉内における酸素濃度が70体積%未満の場合、ZnO、SnO2やZn2SnO4化合物の拡散が衰退するため好ましくない。更に、高温域では、Zn成分の揮発が促進し緻密な焼結体を作製することが困難となり好ましくない。
(焼結温度)
焼結温度は、1200℃以上1450℃以下とすることが好ましい。焼結温度が1200℃未満の場合、温度が低過ぎて、ZnO、SnO2、Zn2SnO4化合物における焼結の粒界拡散が進まない。一方、1450℃を超えた場合、粒界拡散が促進されて焼結は進むが、たとえ、酸素濃度が70体積%以上の炉内で焼成しても、Zn成分の揮発を抑制することができず、焼結体内部に空孔を大きく残してしまうことになる。
焼結温度は、1200℃以上1450℃以下とすることが好ましい。焼結温度が1200℃未満の場合、温度が低過ぎて、ZnO、SnO2、Zn2SnO4化合物における焼結の粒界拡散が進まない。一方、1450℃を超えた場合、粒界拡散が促進されて焼結は進むが、たとえ、酸素濃度が70体積%以上の炉内で焼成しても、Zn成分の揮発を抑制することができず、焼結体内部に空孔を大きく残してしまうことになる。
(保持時間)
保持時間は、10時間以上30時間以下とすることが好ましい。10時間を下回ると、焼結が不完全なため、歪や反りの大きい焼結体になると共に、粒界拡散が進まず、焼結が進まない。この結果、緻密な焼結体を作製することができない。一方、30時間を上回る場合、特に時間の効果が得られないため、作業効率の悪化やコスト高の結果を招く。
保持時間は、10時間以上30時間以下とすることが好ましい。10時間を下回ると、焼結が不完全なため、歪や反りの大きい焼結体になると共に、粒界拡散が進まず、焼結が進まない。この結果、緻密な焼結体を作製することができない。一方、30時間を上回る場合、特に時間の効果が得られないため、作業効率の悪化やコスト高の結果を招く。
<2.Sn−Zn−O系酸化物焼結体>
本発明のSn−Zn−O系酸化物焼結体について説明する。本発明の一実施形態に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は、亜鉛(Zn)とスズ(Sn)を主成分とするSn−Zn−O系酸化物焼結体において、さらに、第1添加元素M及びタンタル(Ta)を含有し、スズを、原子数比Sn/(Sn+Zn)として0.1以上0.9以下の割合で含有し、第1添加元素Mは、Si、Ti、Ge、In、Bi、Ce、AlおよびGaから選ばれた少なくとも1種であり、第1添加元素Mを、全金属元素の総量に対する原子数比M/(Sn+Zn+M+Ta)として0.0001以上0.04以下の割合で含有し、Taを、全金属元素の総量に対する原子数比Ta/(Sn+Zn+M+Ta)として0.005以上0.1以下の割合で含有する。そして、酸化物焼結体表面にける直径2mm以上の黒点は3個/m2個以下である。
本発明のSn−Zn−O系酸化物焼結体について説明する。本発明の一実施形態に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は、亜鉛(Zn)とスズ(Sn)を主成分とするSn−Zn−O系酸化物焼結体において、さらに、第1添加元素M及びタンタル(Ta)を含有し、スズを、原子数比Sn/(Sn+Zn)として0.1以上0.9以下の割合で含有し、第1添加元素Mは、Si、Ti、Ge、In、Bi、Ce、AlおよびGaから選ばれた少なくとも1種であり、第1添加元素Mを、全金属元素の総量に対する原子数比M/(Sn+Zn+M+Ta)として0.0001以上0.04以下の割合で含有し、Taを、全金属元素の総量に対する原子数比Ta/(Sn+Zn+M+Ta)として0.005以上0.1以下の割合で含有する。そして、酸化物焼結体表面にける直径2mm以上の黒点は3個/m2個以下である。
(添加元素)
本発明の一実施形態に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は、Snを原子数比Sn/(Sn+Zn)として0.1以上0.9以下の割合で含有する条件の下、第1添加元素Mおよび第2添加元素Taの含有を要件としている。一方、第1添加元素Mのみを含有する場合、密度は向上するものの低抵抗の焼結体を得られない。他方、第2添加元素Taのみを含有する場合は、低抵抗になるものの高密度の焼結体を得られない。
本発明の一実施形態に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は、Snを原子数比Sn/(Sn+Zn)として0.1以上0.9以下の割合で含有する条件の下、第1添加元素Mおよび第2添加元素Taの含有を要件としている。一方、第1添加元素Mのみを含有する場合、密度は向上するものの低抵抗の焼結体を得られない。他方、第2添加元素Taのみを含有する場合は、低抵抗になるものの高密度の焼結体を得られない。
すなわち、第1添加元素Mおよび第2添加元素Taを上記原子数比の範囲で含有することで、高密度かつ低抵抗のSn−Zn−O系酸化物焼結体となることが可能となる。
(第1添加元素M)
酸化物焼結体の緻密化には、Si、Ti、Ge、In、Bi、Ce、AlおよびGaから選ばれた少なくとも1種の第1添加元素Mを添加することで、高密度化の効果を得ることが可能となる。上記第1添加元素Mが、粒界拡散を促進し、粒同士のネック成長を手助けして、粒同士の結合を強固とし、緻密化に寄与していると思われる。ここで、第1添加元素Mの全金属元素の総量に対する原子数比M/(Sn+Zn+M+Ta)を0.0001以上0.04以下としているのは、上記原子数比M/(Sn+Zn+M+Ta)が0.0001未満の場合、高密度化の効果が表れないからである。一方、上記原子数比M/(Sn+Zn+M+Ta)が0.04を超えた場合、後述する第2添加元素Taを添加しても酸化物焼結体の導電性は高まらない。更に、別の化合物、例えば、SiO2、TiO2、Al2O3、ZnAl2O4、ZnSiO4、Zn2Ge3O8、ZnTa2O6、Ti0.5Sn0.5O2等の化合物を生成する等、成膜した際に所望とする膜特性が得られなくなる。
酸化物焼結体の緻密化には、Si、Ti、Ge、In、Bi、Ce、AlおよびGaから選ばれた少なくとも1種の第1添加元素Mを添加することで、高密度化の効果を得ることが可能となる。上記第1添加元素Mが、粒界拡散を促進し、粒同士のネック成長を手助けして、粒同士の結合を強固とし、緻密化に寄与していると思われる。ここで、第1添加元素Mの全金属元素の総量に対する原子数比M/(Sn+Zn+M+Ta)を0.0001以上0.04以下としているのは、上記原子数比M/(Sn+Zn+M+Ta)が0.0001未満の場合、高密度化の効果が表れないからである。一方、上記原子数比M/(Sn+Zn+M+Ta)が0.04を超えた場合、後述する第2添加元素Taを添加しても酸化物焼結体の導電性は高まらない。更に、別の化合物、例えば、SiO2、TiO2、Al2O3、ZnAl2O4、ZnSiO4、Zn2Ge3O8、ZnTa2O6、Ti0.5Sn0.5O2等の化合物を生成する等、成膜した際に所望とする膜特性が得られなくなる。
このように第1添加元素Mを加えただけでは、酸化物焼結体の密度は向上するものの、導電性は改善されない。
(第2添加元素Ta)
Snを原子数比Sn/(Sn+Zn)として0.1以上0.9以下の割合で含有する条件の下、上記第1添加元素Mを加えたSn−Zn−O系酸化物焼結体は上述したように密度は向上するものの導電性に課題が残る。
Snを原子数比Sn/(Sn+Zn)として0.1以上0.9以下の割合で含有する条件の下、上記第1添加元素Mを加えたSn−Zn−O系酸化物焼結体は上述したように密度は向上するものの導電性に課題が残る。
そこで、第2添加元素Taを添加する。第2添加元素Taの添加により酸化物焼結体の高密度を維持したまま、導電性が改善される。
添加する量は、第2添加元素Taの全金属元素の総量に対する原子数比Ta/(Sn+Zn+M+Ta)を0.005以上0.1以下にすることを要する。上記原子数比Ta/(Sn+Zn+M+Ta)を上記範囲にすることで黒点の発生を抑制し、導電性を高めることができる。
(比抵抗)
本発明の一実施形態に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の比抵抗は、1Ω・cm以下である。Sn−Zn−Oの酸化物焼結体の比抵抗は従来1×106Ω・cm以上と非常に高い値である。本発明の一実施形態に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は、第2添加元素Taを所定量含有することで比抵抗値が低くなっている。
本発明の一実施形態に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の比抵抗は、1Ω・cm以下である。Sn−Zn−Oの酸化物焼結体の比抵抗は従来1×106Ω・cm以上と非常に高い値である。本発明の一実施形態に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は、第2添加元素Taを所定量含有することで比抵抗値が低くなっている。
(相対密度)
本発明の一実施形態に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度は、90%以上である。本発明の一実施形態に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は、第1添加元素Mを所定量含有することで相対密度が高くなっている。
本発明の一実施形態に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度は、90%以上である。本発明の一実施形態に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は、第1添加元素Mを所定量含有することで相対密度が高くなっている。
(黒点の評価方法)
ここで、酸化物焼結体表面の評価方法を説明する。黒点の評価には、前記焼成工程後、外形加工、円周加工並びに表面研削加工を施して所望とする形状に加工した酸化物焼結体を評価した。図2は、本発明の一実施形態に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の表面の様子を示す写真図である。図2において、酸化物焼結体表面の下に、目盛1mm幅の定規が示されている。そして、図面中の矢印で示した箇所に、直径約2mmの粗大な黒点が確認できる。また、粗大な黒点の右下に、小さな黒点が確認できる。なお図面において、かかる黒点の上下にも黒点が示されているが、これらは黒点の位置確認用に写真図に記載したマーキングである。
ここで、酸化物焼結体表面の評価方法を説明する。黒点の評価には、前記焼成工程後、外形加工、円周加工並びに表面研削加工を施して所望とする形状に加工した酸化物焼結体を評価した。図2は、本発明の一実施形態に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の表面の様子を示す写真図である。図2において、酸化物焼結体表面の下に、目盛1mm幅の定規が示されている。そして、図面中の矢印で示した箇所に、直径約2mmの粗大な黒点が確認できる。また、粗大な黒点の右下に、小さな黒点が確認できる。なお図面において、かかる黒点の上下にも黒点が示されているが、これらは黒点の位置確認用に写真図に記載したマーキングである。
本発明では、直径約2mm以上の粗大な黒点の個数を数えた。そして、酸化物焼結体の全表面積から1m2あたりの粗大な黒点の個数を算出し、粗大な黒点の評価を行った。酸化物焼結体の全表面積は、例えば円筒形のターゲット用の酸化物焼結体では、外周面、内周面、両端面の面積の総和となる。
<3.Sn−Zn−O系酸化物ターゲット>
本発明の一実施形態に係るSn−Zn−O系酸化物ターゲット(以下「ターゲット」とも言う)は、上述したSn−Zn−O系酸化物焼結体にバッキングプレートを接合して得られたSn−Zn−O系酸化物ターゲットである。
本発明の一実施形態に係るSn−Zn−O系酸化物ターゲット(以下「ターゲット」とも言う)は、上述したSn−Zn−O系酸化物焼結体にバッキングプレートを接合して得られたSn−Zn−O系酸化物ターゲットである。
上記ターゲットは上述したSn−Zn−O系酸化物焼結体により構成されるため、当該酸化物焼結体の特性を引き継ぐ。つまり、上記ターゲットは高密度かつ低抵抗の特性を有する。
上記ターゲットは、上述したSn−Zn−O系酸化物焼結体にバッキングプレートを接合して得られる。具体的には、得られた酸化物焼結体に対して、外形加工、円周加工並びに表面研削加工を施して所望とする形状とした加工後の酸化物焼結体を、Cu、Ti、ステンレスなどで形成されるバッキングプレートにボンディング材により接着して、スパッタリングターゲットとすることができる。好ましいターゲット形状は、角型や円形の平板形状や円筒形状であるが、これらに限定されるものではない。
このような条件で得られたZnおよびSnを主成分とする本発明の一実施形態に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は高密度であり、導電性も改善されていることから、DCスパッタリングでの成膜が可能となる。また、特別な製造方法を用いていないため、円筒形ターゲットにも応用が可能である。
以下、本発明について、実施例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1では、平均粒径10μmのSnO2粉末と、平均粒径10μmのZnO粉末と、第1添加元素Mとして平均粒径20μmのGeO2粉末、および、第2添加元素として平均粒径20μmのTa2O5粉末を用意した。
実施例1では、平均粒径10μmのSnO2粉末と、平均粒径10μmのZnO粉末と、第1添加元素Mとして平均粒径20μmのGeO2粉末、および、第2添加元素として平均粒径20μmのTa2O5粉末を用意した。
次に、SnとZnの原子数比Sn/(Sn+Zn)が0.5となるようにSnO2粉末とZnO粉末を調合し、第1添加元素MであるGeの原子数比Ge/(Sn+Zn+Ge+Ta)が0.001、第2添加元素Taの原子数比Ta/(Sn+Zn+Ge+Ta)が0.006となるように、GeO2粉末とTa2O5粉末を調合した。
そして、Ta2O5粉末は、硬質ZrO2ボールが投入されたビーズミル装置(アシザワ・ファインテック株式会社製、LMZ型)を用いてTa2O5粉末に純水と分散剤を合わせスラリーとし、これを湿式粉砕した。湿式粉砕後のTa2O5粉末の粒度分布をレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、SALD−2200)で測定した。そして、Ta2O5粉末のD90が5.0μmとなるまで湿式粉砕を行った。
そして、調合されたTa2O5粉末以外の原料粉末と純水、有機バインダー、分散剤を原料粉末濃度が60質量%となるように混合タンクにて混合した。このスラリーに、湿式粉砕したタンタルスラリーを合わせ混合した。
次に、硬質ZrO2ボールが投入されたビーズミル装置(アシザワ・ファインテック株式会社製、LMZ型)を用いて、原料粉末の平均粒径が1μm以下となるまで湿式粉砕を行った後、10時間以上混合撹拌してスラリーを得た。尚、原料粉末の平均粒径の測定にはレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、SALD−2200)を用いた。
次に、得られたスラリーをスプレードライヤー装置(大川原化工機株式会社製、ODL−20型)にて噴霧および乾燥し造粒粉末を得た。
次に、得られた造粒粉末を円筒形のゴム型へ充填し、冷間静水圧プレスで294MPa(3ton/cm2)の圧力をかけて成形し、得られた外径約200mm、内径約160mm、高さ約310mmの成形体を常圧焼結炉に投入し、700℃まで焼結炉内に空気(酸素濃度21体積%)を導入した。焼結炉内の温度が700℃になったことを確認した後、酸素濃度が80体積%となるように酸素を導入し、1400℃まで昇温させ、かつ、1400℃で15時間保持した。
保持時間が終了した後は酸素導入を止め、冷却を行い、Sn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
次に、Sn−Zn−O系酸化物焼結体を平面研削盤とグライディングセンター、円筒研削盤を用いて、外径153mm、内径135mm、高さ238mmへ加工を施し、所望とする形状に加工したSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
得られた酸化物焼結体表面の黒点について、直径2mm以上の個数を目視にて数えた。酸化物焼結体4個について黒点の個数を数えたところ、酸化物焼結体4個全体における、直径2mm以上の黒点の個数は2個であった。酸化物焼結体の表面積を、外周面、内周面、上下の端面から算出したところ、酸化物焼結体4個の総表面積は約0.89m2であった。そして、酸化物焼結体1m2あたりの、直径2mm以上の黒点の個数を計算したところ、2.2個/m2であった。
所望とする形状に加工したSn−Zn−O系酸化物焼結体にステンレス製の円筒状のバッキングプレートをインジウム系低融点半田により接着して、円筒形スパッタリングターゲットを得た。上述のようにして得られた円筒形ターゲットをマグネトロン型回転カソードスパッタリング装置に取り付け、0.7Paのアルゴン雰囲気中、パワー密度15kW/mの条件でスパッタリングを実施し、3時間連続放電したがこの間アーキングが発生することはなかった。なお、スパッタリング中のアーキングについては、高速アークおよび低速アークの検知時間を0とし、スパッタリングを開始してから1時間経過した後の10分間当たりのアーキング発生回数を目視カウントすることにより行ったものである。
(実施例2)
実施例2では、Ta2O5粉末を、D90が1.0μmになるまで粉砕を行ったこと以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る酸化物焼結体を得た。実施例1と同様、酸化物焼結体4個について、直径2mm以上の黒点の個数を数えたところ、酸化物焼結体4個全体における直径2mm以上の黒点の個数は1個であった。そして、酸化物焼結体1m2あたりの、直径2mm以上の黒点の個数は1.1個/m2であった。また、アーキングが発生することはなかった。
実施例2では、Ta2O5粉末を、D90が1.0μmになるまで粉砕を行ったこと以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る酸化物焼結体を得た。実施例1と同様、酸化物焼結体4個について、直径2mm以上の黒点の個数を数えたところ、酸化物焼結体4個全体における直径2mm以上の黒点の個数は1個であった。そして、酸化物焼結体1m2あたりの、直径2mm以上の黒点の個数は1.1個/m2であった。また、アーキングが発生することはなかった。
(比較例1)
比較例1では、第2添加元素としてD90が10μmのTa2O5粉末を用意し、調合前の粉砕を行わなかった。それ以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る酸化物焼結体を得た。実施例1と同様、酸化物焼結体4個について、直径2mm以上の黒点の個数を数えたところ、酸化物焼結体4個全体における直径2mm以上の黒点の個数は5個であった。そして、酸化物焼結体1m2あたりの、直径2mm以上の黒点の個数は5.6個/m2であった。また、アーキングの発生が確認された。
比較例1では、第2添加元素としてD90が10μmのTa2O5粉末を用意し、調合前の粉砕を行わなかった。それ以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る酸化物焼結体を得た。実施例1と同様、酸化物焼結体4個について、直径2mm以上の黒点の個数を数えたところ、酸化物焼結体4個全体における直径2mm以上の黒点の個数は5個であった。そして、酸化物焼結体1m2あたりの、直径2mm以上の黒点の個数は5.6個/m2であった。また、アーキングの発生が確認された。
(比較例2)
比較例2では、第2添加元素としてD90が25μmのTa2O5粉末を用意し、調合前の粉砕を行わなかった。それ以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る酸化物焼結体を得た。実施例1と同様、酸化物焼結体4個について、直径2mm以上の黒点の個数を数えたところ、酸化物焼結体4個全体における直径2mm以上の黒点の個数は38個であった。そして、酸化物焼結体1m2あたりの、直径2mm以上の黒点の個数は43.0個/m2であった。また、アーキングの発生が確認された。
比較例2では、第2添加元素としてD90が25μmのTa2O5粉末を用意し、調合前の粉砕を行わなかった。それ以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る酸化物焼結体を得た。実施例1と同様、酸化物焼結体4個について、直径2mm以上の黒点の個数を数えたところ、酸化物焼結体4個全体における直径2mm以上の黒点の個数は38個であった。そして、酸化物焼結体1m2あたりの、直径2mm以上の黒点の個数は43.0個/m2であった。また、アーキングの発生が確認された。
(比較例3)
比較例3では、原料粉末の調合の前に、Ta2O5粉末の代わりにGeO2粉末のD90が5.0μmになるまで粉砕を行ったこと以外は実施例1と同様にして、比較例3に係るターゲットを得た。実施例1と同様、酸化物焼結体4個について、直径2mm以上の黒点の個数を数えたところ、酸化物焼結体4個全体における直径2mm以上の黒点の個数は36個であった。そして、酸化物焼結体1m2あたりの、直径2mm以上の黒点の個数は40.4個/m2であった。また、アーキングの発生が確認された。
比較例3では、原料粉末の調合の前に、Ta2O5粉末の代わりにGeO2粉末のD90が5.0μmになるまで粉砕を行ったこと以外は実施例1と同様にして、比較例3に係るターゲットを得た。実施例1と同様、酸化物焼結体4個について、直径2mm以上の黒点の個数を数えたところ、酸化物焼結体4個全体における直径2mm以上の黒点の個数は36個であった。そして、酸化物焼結体1m2あたりの、直径2mm以上の黒点の個数は40.4個/m2であった。また、アーキングの発生が確認された。
表1に、実施例1、2、比較例1から3における、Ta2O5粉末及びGeO2粉末のD90、ターゲット1m2あたりの黒点の個数及びアーキングの発生の有無を示す。
表1において、〇はアーキングの発生が確認されなかったこと、×はアーキングの発生が確認されたことを示す。上述したように、第2添加元素Taを所定の値以上に添加するとアーキングの発生が顕著となるが、表1から、Ta2O5粉末のD90を5.0μm以下にすることで、黒点の数を3個/m2以下にすることができ、アーキングの発生を抑制できることが分かった。また、添加元素である第1添加元素M、第2添加元素Taのうち、第2添加元素TaのD90を制御することで、黒点の数を3個/m2以下にすることができ、アーキングの発生を抑制できることが分かった。
本発明に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は、機械的強度に加えて高密度かつ低抵抗といった特性を備えているため、太陽電池やタッチパネル等の透明電極を形成するためのスパッタリングターゲットとして利用される産業上の利用可能性を有している。
なお、上記のように本発明の一実施形態及び各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、Sn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法、Sn−Zn−O系酸化物焼結体及びSn−Zn−O系酸化物ターゲットの構成も本発明の一実施形態及び各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
S1 造粒工程、S2 成形工程、S3 焼成工程
Claims (6)
- 亜鉛(Zn)とスズ(Sn)を主成分とするSn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法において、
亜鉛酸化物の粉末、スズ酸化物の粉末、第1添加元素Mを含有する酸化物の粉末及びタンタル酸化物の粉末を混合して造粒粉末を作製する造粒工程と、
前記造粒粉末を加圧成形して成形体を得る成形工程と、
前記成形体を焼成して酸化物焼結体を得る焼成工程とを有し、
前記第1添加元素Mは、Si、Ti、Ge、In、Bi、Ce、AlおよびGaから選ばれた少なくとも1種であり、
前記タンタル酸化物の粉末は、D90が5μm以下であることを特徴とするSn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法。 - 前記焼成工程を、酸素濃度が70体積%以上の雰囲気において、1200℃以上1450℃以下の温度で10時間以上30時間以下行うことを特徴とする請求項1記載のSn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法。
- 前記タンタル酸化物の粉末は、湿式粉砕を行った粉末であることを特徴とする請求項1又は2記載のSn−Zn−O系酸化物焼結体の製造方法。
- 亜鉛(Zn)とスズ(Sn)を主成分とするSn−Zn−O系酸化物焼結体において、
さらに、第1添加元素M及びタンタル(Ta)を含有し、
前記スズを、原子数比Sn/(Sn+Zn)として0.1以上0.9以下の割合で含有し、
前記第1添加元素Mは、Si、Ti、Ge、In、Bi、Ce、AlおよびGaから選ばれた少なくとも1種であり、
前記第1添加元素Mを、全金属元素の総量に対する原子数比M/(Sn+Zn+M+Ta)として0.0001以上0.04以下の割合で含有し、
前記Taを、全金属元素の総量に対する原子数比Ta/(Sn+Zn+M+Ta)として0.005以上0.1以下の割合で含有し、
前記酸化物焼結体表面において、直径2mm以上の黒点が3個/m2以下であることを特徴とするSn−Zn−O系酸化物焼結体。 - 相対密度が90%以上かつ比抵抗が1Ω・cm以下であることを特徴とする請求項4記載のSn−Zn−O系酸化物焼結体。
- 請求項4又は5に記載のSn−Zn−O系酸化物焼結体にバッキングプレートを接合してなるSn−Zn−O系酸化物ターゲット。
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WO2024125118A1 (zh) * | 2022-12-16 | 2024-06-20 | 华南理工大学 | 一种氧化物靶材及其制备方法 |
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