本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、直接的な手法によって障害物の検出精度を高めた監視装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る監視装置は、軌道及びその周辺における物体の像を距離情報とともに取得する計測部と、計測部による測定結果から軌道像を抽出するとともに、軌道像の消失点を含む手前に軌道像を遮蔽する遮蔽体が存在するか否かを判断する配置判定部とを備える。
上記監視装置では、配置判定部が軌道像の消失点を含む手前に軌道像を遮蔽する遮蔽体が存在するか否かを判断するので、軌道像を正確に取得できていることを確認しつつ軌道像を局所的に遮蔽する遮蔽体の存否を距離情報とともに得ることができる。これにより、予め背景画像データを取得するまでもなく障害物となる遮蔽体を検出することができ、障害物の検出精度を高めることができる。
本発明の具体的な側面では、配置判定部は、遮蔽体と遮蔽体に対応する軌道位置との距離差が所定以下である場合に、遮蔽体を障害物であると判断する。この場合、遮蔽体と軌道との距離が近い場合に限って障害物と判断することで、例えば走行を妨げない前景物体を判定対象から除くことができ、障害物判定精度を高めることができる。
本発明の別の側面では、配置判定部は、所定の配置判定枠内に遮蔽体が存在する場合に、遮蔽体を障害物であると判断する。この場合、配置判定枠によって列車が通過する領域に検出範囲を絞ることができ、障害物の判定範囲が過度に広がることを防止できる。
本発明のさらに別の側面では、消失点は、軌道像上で軌道間隔が所定以下になった点である。この場合、消失点は所定以上遠方にあるものとなる。消失点が所定以上遠方にない場合、軌道が近い場所で現実に又は画像上で途切れていることになり、軌道が終端していたり軌道の計測に異常が発生したりしている可能性がある。
本発明のさらに別の側面では、配置判定部は、所定の配置判定枠内に近づく接近物体が存在するか否かを判断する。この場合、障害物判定を支援する付加情報として、接近物体による障害物発生の予測が可能となる。
本発明のさらに別の側面では、配置判定部は、所定の配置判定枠外の物体の移動速度及び移動方向を判定する。この場合、接近物体の移動状態を詳細に把握した判断が可能になる。
本発明のさらに別の側面では、配置判定部は、軌道像の消失点を抽出できなかった場合、視界不良状態と判定する。消失点を抽出できない原因として、雨、雪、霧による視界不良があり、視界不良を副次的な運転関連情報として利用することができる。
本発明のさらに別の側面では、配置判定部は、軌道上の位置情報とリンクさせて消失点となり得ない特異点に関する情報を保管し、消失点の候補から特異点に対応するものを除外する。この場合、例えば軌道の終端のような特異点を消失点と判断するような、消失点の誤検出を防止することができる。
本発明のさらに別の側面では、配置判定部は、特異点に関する情報を更新しつつ保管する。監視装置の運用によって特異点に関する情報を蓄積しつ現状に適合させることができる。
本発明のさらに別の側面では、計測部は、物体について3次元的な配置を計測可能にするカメラ又はレーザーレーダー装置を有する。この場合、軌道像の抽出、遮蔽体の判定等に必要な情報の正確な計測が可能になる。
本発明のさらに別の側面では、物体の方位及び距離を計測するためのレーダー装置又はレーザーレーダー装置の出力に基づいて、軌道に沿った走行位置に応じて設定される所定の存在判定枠内に存在する物体を検出する存在判定部をさらに備える。この場合、存在判定枠内の物体を検出する存在判定部(第2判定部)を配置判定部(第1判定部)とは別に追加することで、配置判定部を補間しつつ判定の信頼性を高めることができる。
図1に示すように、本発明の一実施形態としての監視装置100は、列車TRに組み込まれた車上装置200の一部となっている。
監視装置100は、各部の動作を統括に制御する車両制御装置31と、列車TRの現在速度を検出する車速検出部34と、線路RL側に設けた地上子との間で通信を行って線路RL上の列車TRの位置を検出する車上子35と、不図示の列車運行管理システム又は指令所との間で通信を可能にする通信部37と、列車TRの前方の物体を検出する計測を行う第1計測部41と、軌道としての線路RL及びその周辺における物体の像を距離情報とともに取得する第2計測部42とを備える。後者の第2計測部42は、列車TRの前方及びその周辺の物体を検出するための計測を行うものである。車上装置200は、監視装置100を構成する上記要素31,34,35,37,41,42のほかに、列車TRを加速するためのモーター等からなる駆動装置32と、列車TRを減速するためのブレーキ装置33と、乗客等に向けて各種情報を伝達するための報知手段であるスピーカーや表示部といった車内出力部36とを備える。
車両制御装置31は、運転手等の指示に基づいて列車TRの各部を動作させ、列車TRの適切な速度での走行や適切なタイミングでの停止を可能にするとともに、緊急時の自動列車停止機能を有する。車両制御装置31は、車速検出部34を利用した積算距離と車上子35を利用した較正とによって、列車TRの現在の走行位置を把握している。車両制御装置31は、第1計測部41と連携して動作し第2判定部(存在判定部)を構成する。つまり、車両制御装置31は、第1計測部41を利用して軌道又は線路RLに沿った走行位置に応じて設定される所定の存在判定枠内に存在する物体を検出する。さらに、車両制御装置31は、第2計測部42と連携して動作し第1判定部(配置判定部)を構成する。つまり、車両制御装置31は、第2計測部42を利用して軌道又は線路RLの周辺における物体の像及び距離情報を含む測定結果から軌道像を抽出するとともに、軌道像の消失点を含む手前に軌道像を遮蔽する遮蔽体が存在するか否かを判断する。
列車TRの現在の走行位置については、上記のように車速検出部34を利用するものに限らず、レーダーその他の測距装置を用いた計測に際してドップラー効果を監視することによる速度値、GPS信号のドップラー効果を利用した速度値等に基づくものとしてもよい。その他、RFIDを利用した位置検出、みちびきその他の衛星測位による位置検出も可能である。
図2に示すように、車両制御装置31は、演算処理部101と、記憶部102と、入出力部103と、インターフェース部104とを備える。車両制御装置31は、具体的には、走行制御用のプログラムを搭載したコンピューターを含み、走行制御用のプログラムには、一般的制御プログラムのほかに障害物等監視用のプログラムが付加されている。車両制御装置31又は車上装置200は、列車TRの走行状態の制御を基本的な役割又は動作とするものであるが、以下では、車両制御装置31等を主に障害物等の監視機能の側面から説明する。
演算処理部101は、記憶部102に保管されたプログラムやデータに基づいて動作し、入出力部103やインターフェース部104から得た情報に基づいて処理を行い、処理の経過や結果を記憶部102に保管するとともに入出力部103に提示する。また、演算処理部101は、存在判定部として、プログラム等に基づいてインターフェース部104を介して第1計測部41を動作させ、図3(A)に示すように線路RLに沿って軌間幅等に対応するサイズを有する所定の存在判定枠AR1内に存在する障害物を監視する。また、演算処理部101は、配置判定部として、プログラム等に基づいてインターフェース部104を介して第2計測部42を動作させ、図3(A)に示すように線路RLに沿って存在判定枠AR1よりも広い範囲をカバーする所定の広域判定枠AR2内に存在する線路RLの遮蔽体、線路RLに近づく近接物体その他の障害物を監視する。障害物は、列車TRの進行又は走行を妨げるおそれがある物体であり、上記のように線路RLに近づく近接物体を含んでおり、線路RLに沿った車両限界内に存在するものには限られない。障害物としては、典型的には、人、車、落石、動物等を挙げることができ、ある程度以上の大きさを有する物体が対象となる。演算処理部101は、第1計測部41により取得した計測データに基づく存在判定枠AR1内における物体の有無の検知結果や、第2計測部42により取得した計測データに基づく広域判定枠AR2内における遮蔽体その他の障害物の検知結果から、列車TRの進行方向前方に障害物があると判断すると、ブレーキ装置33を動作させて車両を減速させたり停止させたりするとともに、車内出力部36により、乗客に対して急ブレーキによる停止を行う旨の報知等を行う。つまり、演算処理部101を存在判定部や配置判定部として並列的に動作させることで、相互に補間しつつ判定の信頼性を高めることができる。
図1に戻って、第1計測部41は、例えばミリ波(つまり電磁波)によって物体検出を行うレーダー装置を有し、前方の計測領域内に存在する物体を計測する。第1計測部41は、列車TRの前方に対して電磁波ビームをアンテナアレイ等を利用して2次元的に走査しつつ照射し、物体で反射されて戻って来た反射波の方位及び検出タイミングから物体の奥行き方向を含めた位置を計測する。この際、反射波の角度範囲から物体のサイズに関する情報も得ることができる。第1計測部41による物体検出に際して列車TRの前方に存在判定枠AR1(図3(A)参照)を設定すれば、この存在判定枠AR1内に存在する物体又は障害物を抽出することもできる。第1計測部41は、列車TRの走行に伴って高速で計測及び距離算出を行うので、列車TRの前方の変化する前景についてリアルタイムで距離画像又はその元になる距離情報を出力することができる。第1計測部41については、レーダー装置に限らず、例えば電磁波として赤外光その他のレーザー光を用いポリゴンミラー、MEMSミラー等により走査を行うレーザーレーダー装置又は3次元画像センサーを用いることができる。
第2計測部42は、例えば赤外光又は可視光によって撮影を行うTOFカメラ(Time-of-Flight Camera)その他の3次元撮像装置を有し、前景について距離画像を計測する。第2計測部42がTOFカメラである場合、詳細な説明を省略するが、第2計測部42は、前景をパルス光で照明する発光デバイスと、画素ごとに距離情報を検出するイメージセンサーとを有する。発光デバイスからの光が前景の対象物で反射され、イメージセンサーに届くまでの光の飛行時間(時間差)を画素ごとに検出することで、前景の各対象物までの距離を測定することができる。演算処理部101は、第2計測部42によって得た距離画像に付随して得られる2次元画像に基いて所定サイズ以上のエッジ又はオブジェクトを抽出することができる。さらに、演算処理部101は、第2計測部42によって得た距離画像から、上記のように予め抽出したエッジ又はオブジェクトまでの距離を算出することができる。なお、第2計測部42によって取得される2次元画像は、距離画像から距離情報を捨象した例えばグレースケールの輝度画像である。第2計測部42は、列車TRの走行に伴って高速で距離画像の撮影を行うので、列車TRの前方の変化する前景についてリアルタイムで距離画像又は2次元画像を計測することができる。
第2計測部42は、TOFカメラのように直接的に距離画像を計測するものに限らず、例えば視差を利用して距離情報を得るステレオカメラであってもよいし、フォーカスを移動させて各焦点位置でピントが合うオブジェクトを抽出するようなものであってもよい。第2計測部42としては、レーザーレーダー装置を用いることができる。
図3(A)及び3(B)を参照して、第1計測部41に関する存在判定枠AR1と、第2計測部42関する広域判定枠AR2とについて説明する。第1計測部41を用いた監視における個々の存在判定枠AR1は、軌道としての線路RL又は軌道中心RCに沿って延びる四角錐状の領域であり、車両限界程度の範囲に設定されて、線路RLの軌間幅を既定幅として、この既定幅を有するとともに列車TRの高さ程度の高さを有する。存在判定枠AR1の奥行き距離D1は、制動距離との関係で設定されるが、例えば40mに設定することができる。存在判定枠AR1による判定は、中距離を対象とするものである。なお、存在判定枠AR1は、列車TRの移動に伴って移動し、連続した存在判定枠AR1の集合である全体の存在判定枠TA1は、四角柱状の領域となる。一方、第2計測部42を用いた監視における広域判定枠AR2は、3次元的側面で捉えた場合、軌道としての線路RL又は軌道中心RCに沿って延びる四角柱状の領域であり、建築限界以上の範囲に設定されて、存在判定枠AR1を含んで広い範囲をカバーするものとなっている。つまり、広域判定枠AR2は、存在判定枠AR1や全体の存在判定枠TA1を含んで方位的により広い領域に設定され、かつ、存在判定枠AR1を含んでより遠い領域に設定されている。広域判定枠AR2は、具体的には線路RLの軌間幅又は路床幅を超えて周辺を含むように設定されている。広域判定枠AR2の横幅は、線路RLの横に数m以上又は数10m以上に広がったものとすることができ、広域判定枠AR2の奥行き距離D2は、制動距離との関係で設定されるが、例えば100m以上に設定することができる。広域判定枠AR2による識別は、中距離及び長距離を対象とするものである。なお、広域判定枠AR2は、距離画像の処理においてだけでなく2次元画像の処理においても利用される。
存在判定枠AR1は、存在判定枠AR1の前方端FA1が軌道としての線路RL上方をカバーするように軌道中心RCを基準として設定されるものであり、列車TRが線路RL上のどの地点に存在するかによって時々刻々と変化する。存在判定枠AR1は、線路RL上の走行位置の関数として与えられ、列車TR又は計測車を事前に走行させることで具体的に決定され、距離又は走行位置毎の存在判定枠データベースとして記憶部102等に保管される。実際の計測において、演算処理部101は、列車TRの線路RL上の走行位置に基づいて記憶部102に保管された存在判定枠データベースから対応する存在判定枠AR1を読み出すことにより、走行位置に対応する存在判定枠AR1を設定し、第1計測部41を利用して計測を行い、存在判定枠AR1内に障害物その他の所定サイズ以上の物体が存在するか否かを判断する。存在判定枠AR1の範囲又は位置は、線路RLの軌道中心RC及び列車TRの先頭位置を基準として、例えば1mといった線路RLに沿った間隔又は刻みで設定することができる。線路RLがカーブで曲がっている場合、曲がった線路RLに沿って存在判定枠AR1が設定され、全体として弧を描くような存在判定枠TA1となる。なお、列車TRが大きく曲がる曲線区間では、本来存在判定枠AR1とすべき箇所が物陰に隠れる可能性があり、この場合、存在判定枠AR1の設定を行わず第1計測部41を用いた監視も一時的に中断させることができる。存在判定枠AR1が部分的に物陰に隠れる場合、存在判定枠AR1を部分的に有効にすることもできる。
広域判定枠AR2は、軌道としての線路RL及びその周辺を広くカバーするように軌道中心RCを基準として設定されるものであり、列車TRが線路RL上のどの地点に存在するかによって時々刻々と変化する。広域判定枠AR2は、列車TRの走行に伴って演算処理部101によってリアルタイムで設定される。つまり、演算処理部101は、第2計測部42を利用して計測を行うことで距離画像(つまり距離情報)を取得し、距離情報を得た空間から広域判定枠AR2を選択し、この広域判定枠AR2内において、線路RLの消失点を監視するとともに、線路RLを遮る遮蔽体や線路RLに近接する近接物体といった障害物であって、所定サイズ以上の物体が出現したか否かを判断する。広域判定枠AR2の範囲又は位置は、線路RLの軌道中心RCやその位置での軌間に相当する画素幅等を基準として設定され、前方の線路RLがカーブで曲がっている場合、曲がった状態に合わせて前方の線路RL全体を可能な限り包含するように設定される。広域判定枠AR2は、原則として線路RL及びその周囲を含むものとなっており、列車TRの近接した前方を除く準近距離領域、中距離領域、及び遠距離領域において、少なくとも建築限界の外側に十分なマージンを確保して広がったものとなっている。
図4(A)に示すように、存在判定枠AR1については、補助的な存在判定枠AR11,AR12を追加することもできる。補助的な存在判定枠AR11,AR12は、基本的な存在判定枠AR1に対して奥行き距離D1が異なるように設定されている。このように、距離ごとに設定した複数の存在判定枠AR1,AR11,AR12を用いることで、各位置での障害物の有無の判定が可能になり、列車TRの速度を考慮した衝突危険性判断の確度を高めることができる。
図4(B)及び4(C)に示すように、広域判定枠AR2は、線路RLを遮る遮蔽体を検出する領域として内側の配置判定枠AR21を有するとともに、線路RLに近接する近接物体を検出する領域として外側の近接判定枠AR22を有する。一方の配置判定枠AR21は、線路RL及びその周囲を含んでおり、車両限界の内側領域を少なくともカバーし、かつ、車両限界の外側の外殻領域まで広がったものとなっている。配置判定枠AR21は、具体例では建築限界又はこれに近い範囲に広がったものとなっている。他方の近接判定枠AR22は、配置判定枠AR21の外側を基本とし広域判定枠AR2の外縁まで延びる。結果的に、近接判定枠AR22は、配置判定枠AR21を挟んで左右に分かれた領域となっている。近接判定枠AR22は、具体例では左右に関して車両限界又は建築限界の外側領域をカバーしたものとなっている。図示の場合、配置判定枠AR21の外側と近接判定枠AR22の内側とを部分的に重複させているが、配置判定枠AR21と近接判定枠AR22とが重複しないように設定することもできる。
配置判定枠AR21と近接判定枠AR22とは、説明の便宜上外縁が明確に画定された状態で図示されているが、必ずしも外縁を明確に規定して処理を行う必要はなく、配置判定枠AR21において、線路RLを遮る遮蔽体を障害物として検出できればよく、近接判定枠AR22において、線路RLに近接する近接物体を障害物として検出できればよい。
配置判定枠AR21は、2次元画像の処理において利用される場合、線路RLの各点に対して規定される建築限界、車両限界又はこれらに準じたものである個々の近傍外縁要素を包括した2次元的な外縁に相当するものとなる。例えば図4(B)に示すように、前方の線路RLが直線的に延びる場合、最も近接する近傍外縁要素又は検出範囲に対応する矩形領域RFが2次元画像の処理における配置判定枠AR21となる。図示を省略するが、前方の線路RLが右又は左に大きく曲がっている場合、2次元画像の処理における配置判定枠AR21は、最も近接する近傍外縁要素又は検出範囲に対応する矩形領域RFから曲がった先の線路RLを包含するようにはみ出した領域を有するものとなる場合もある。
近接判定枠AR22は、配置判定枠AR21の左右の外側に設定される。つまり、近接判定枠AR22は、2次元画像の処理において利用される場合、線路RLの各点に対して規定される建築限界、車両限界又はこれらに準じたものである個々の近傍外縁要素の左右外側に広がる隣接外縁要素を包括した2次元的な外縁に相当するものとなる。
広域判定枠AR2の設定方法について説明する。まず、配置判定枠AR21については、演算処理部101が、第2計測部42により取得した計測データとして2次元画像を用い、例えば所定サイズ以上のエッジを2次元画像から抽出するとともに、マッチング等の技術を利用して線路RLを構成するレールRLa,RLbの画像を抽出する。レールRLa,RLbの画像を抽出できた場合、線路RLの消失点の位置を決定することができる。ここで、線路RLの消失点とは、原則として、レールRLa,RLbの間隔(軌道間隔)が2次元画像の上側で所定画素以下となる点を意味し、線路RLが水平方向に直線的に延びる場合、レールRLa,RLbが収束する無限遠点に相当し、線路RLが特定方向に曲がって延びる場合、2次元画像の画面外となるか、線路RLが前景物体に遮られた点となる。消失点が2次元画像の上側で軌道間隔が所定画素以下となる場合、消失点は、所定以上遠方にあるものとなる。消失点が所定以上遠方にない場合、レールRLa,RLbが近い場所で現実に又は画像上で途切れていることになり、線路RLが終端していたり線路RLの計測に異常が発生したりしている可能性がある。その後、演算処理部101は、2次元画像において、線路RLに沿って最も近接した位置から消失点にかけて、車両限界等に準じた枠領域である近傍外縁要素を適宜の距離間隔又は画素間隔で順次設定し、枠領域又は近傍外縁要素を連ねた全体として枠内を配置判定枠AR21とする。配置判定枠AR21を距離画像で捉えた場合、線路RLに沿って設定した上記枠領域又は近傍外縁要素を3次元的に連ねたものとなる。ただし、配置判定枠AR21を距離画像によって3次元的に画定する処理を行う必要はなく、2次元的な配置判定枠AR21において距離画像を利用した判定を行うことで、結果として3次元的な配置判定枠AR21内において線路RLの遮蔽体の検出が行われることになる。
近接判定枠AR22については、配置判定枠AR21の設定に用いた情報を利用する。つまり、演算処理部101は、2次元画像において、線路RLに沿って最も近接した位置から消失点にかけて、車両限界等に準じた枠領域である近傍外縁要素の左右外側に相当する一対の隣接外縁要素を適宜の距離間隔又は画素間隔で順次設定し、近傍外縁要素を連ねた全体として枠内を近接判定枠AR22とする。この際、近接判定枠AR22を構成する隣接外縁要素と、配置判定枠AR21を構成する近傍外縁要素との間に部分的な重複があってもよく、両者が接し或いは離間していてもよい。近接判定枠AR22を距離画像で捉えた場合、線路RLに沿って設定した上記枠領域又は隣接外縁要素を3次元的に連ねたものとなる。ただし、近接判定枠AR22を距離画像によって3次元的に画定する処理を行う必要はなく、2次元的な近接判定枠AR22において距離画像を利用した判定を行うことで、結果として近接判定枠AR22内において線路RLに近接する近接物体の検出が行われることになる。
図5(A)及び5(B)は、配置判定枠AR21の設定に際して行われる線路RLの消失点の検出方法を説明する概念図である。両図は、第2計測部42によって得た2次元画像を説明する概念図であり、消失点の検出前の元画像を説明の便宜上単純化したものに相当する図5(A)では、直線的に延びる線路RLを構成する一対の直線状のレールRLa,RLbの映像が軌道像として捉えられている。図5(B)では、一対のレール(軌道像)RLa,RLbの映像が抽出されて点線で示す一対の近似線ALのフィッティングが行われ、一対の近似線ALの先端に消失点VPが決定されている。図5(C)及び5(D)は、カーブに差し掛かった場合の消失点の検出方法を説明する概念図である。消失点の検出前の元画像を説明の便宜上単純化したものに相当する図5(C)では、直線的に延びる線路RLを構成する一対のレールRLa,RLbの映像が捉えられており、図5(D)では、一対の曲線状のレールRLa,RLbの映像が抽出されて一対の近似線(点線)ALのフィッティングが行われ、一対の近似線ALの先端に消失点VPが決定されている。なお、近似線ALを延長することによって映像上一旦途切れたレールRLa,RLbを連続的なものとして処理することもできる。
配置判定枠AR21の設定に際しては、第2計測部42によって得た2次元画像内に複数の線路が写り込んでいる場合がある。このような場合であっても自己の列車TRが走行する線路RLのレールRLa,RLbを適切に絞り込んで抽出できるように、演算処理部101は、近距離側に線路判定枠AR3を設けて線路判定枠AR3から始まる一対のレールRLa,RLbのみを選択する。これにより、自己の列車TRが走行する線路RLに対応する適正な1つの消失点VPを決定することができ、障害物判定精度を高めることができる。なお、複数の線路が写り込んでいる結果として複数の消失点が検出されても、制動関連情報が増えるだけであり、運転上の支障が生じないような運用が可能である。
図5(E)及び5(F)は、配置判定枠AR21の設定方法を説明する概念図である。両図は、第2計測部42によって得た2次元画像を示しており、図5(E)に示す直進の場合と、図5(F)に示すカーブの場合とにおいて、線路RLに沿って設定される多数の近傍外縁要素CEを示している。近傍外縁要素CEの集合の外縁の範囲内が配置判定枠AR21となる。なお、図5(E)及び5(F)において、最も手前の近傍外縁要素CEを挟んだ左右の外側には、近接判定枠AR22を構成する最も手前の隣接外縁要素PEが示されている。ただし、奧側の隣接外縁要素については図示を省略している。
図6(A)及び6(B)を参照して、線路RLを遮る遮蔽体について説明する。図6(A)に示す例では、広域判定枠AR2のうち特に2次元的な配置判定枠AR21において、線路RLの消失点VPよりも手前に電柱状の遮蔽体CO1が存在する。第2計測部42から遮蔽体CO1の線路RLを横切る部分CO1a迄の距離L11と、第2計測部42から部分CO1aによって途切れた線路RLの遮断端である軌道位置CP1迄の距離L12とは、第2計測部42によって得た距離画像から判定することができる。演算処理部101は、配置判定部として、部分CO1a迄の距離L11と部分CO1aが遮っている軌道位置CP1迄の距離L12との差である距離差Δが所定の上限値(例えば列車TRの横幅)を超えて大きくなっているときは、遮蔽体CO1が前景の物体であり3次元的な配置判定枠AR21の外側にある見かけ上のものと判断し、線路RL上を進行する列車TRにとっての障害物ではないと判断する。図6(B)に示す例では、線路RLの消失点VPよりも手前に別の遮蔽体CO2が存在する。第2計測部42から遮蔽体CO2迄の距離L21と、第2計測部42から遮蔽体CO2によって途切れた線路RLの遮断端である軌道位置CP2迄の距離L22とは、第2計測部42によって得た距離画像から判定することができる。演算処理部101は、配置判定部として、遮蔽体CO2迄の距離L21と遮蔽体CO2が遮っている軌道位置CP2迄の距離L22との差である距離差Δが所定の上限値以下であるときは、遮蔽体CO2が線路RL上に横たわり或いは線路RLを覆っていると判断し、線路RL上を進行する列車TRにとっての障害物であると判断する。この場合、遮蔽体CO2と線路RLとの距離が近い場合に限って障害物と判断することで、例えば走行を妨げない前景物体である遮蔽体CO1を判定対象から除くことができ、障害物判定精度を高めることができる。以上において、配置判定部である演算処理部101は、所定の広域判定枠AR2のうち配置判定枠AR21内に遮蔽体CO2が存在する場合に、遮蔽体CO2を障害物であると判断するので、配置判定枠AR21によって列車TRが通過する領域に検出範囲を絞ることができ、障害物の判定範囲が過度に広がることを防止できる。なお、前景とされる遮蔽体CO1や障害物の候補とされる遮蔽体CO2は、線路RLのレール(軌道像)RLa,RLbの双方を遮蔽するものに限らず片方を遮蔽するようなものであってもよい。演算処理部101による判定処理の対象となる遮蔽体CO1,CO2は、レールRLa,RLbのサイズを基準として所定以上のサイズを有するものであれば、障害物となる可能性があるとして候補に加えられる。
図6(C)は、線路RLを遮るものではないが遮蔽体に準じた障害物として扱うべきものを説明する図である。この場合、第2計測部42によって得た2次元画像において、線路RLの消失点VPよりも手前であって線路RLに隣接した箇所に所定以上に大きな周辺物体CO3が存在する。演算処理部101は、2次元画像中からこの種の周辺物体CO3を抽出し、第2計測部42から周辺物体CO3迄の距離L31に対して線路RL上の点を決定し、この距離L31に対応する単一の又は隣接する複数の近傍外縁要素CE又は配置判定枠AR21を特定し、かかる近傍外縁要素CEの範囲内又は配置判定枠AR21内に周辺物体CO3の画像が存在するか否かを判断する。演算処理部101は、上記のように特定された近傍外縁要素CE等の範囲内に周辺物体CO3の画像が存在すると判断した場合、この周辺物体CO3を線路RL上を進行する列車TRにとっての障害物又はそれに準じた物であると判断する。この場合も、配置判定部である演算処理部101は、近傍外縁要素CE又は配置判定枠AR21内に周辺物体CO3が存在する場合に、周辺物体CO3を障害物又はそれに準じた物であると判断するので、近傍外縁要素CE又は配置判定枠AR21によって列車TRが通過する領域又はその近隣に検出範囲を絞ることができる。
図7は、所定の広域判定枠AR2内において線路RLに近づく接近物体が存在するか否かを判断する手法を説明する図である。この場合、第2計測部42によって得た距離画像中において、線路RLの周辺に、踏切P3、道路P4、信号器P5等が撮影され、近接判定枠AR22において、移動物体である自動車P6,P7の像も取り込まれている。配置判定部である演算処理部101は、広域判定枠AR2内、特に配置判定枠AR21外において、距離画像又は2次元画像からオブジェクトを抽出し、その移動速度を見積もる。自動車P6,P7の移動速度は、距離画像中における対応するオブジェクトの配置を連続撮影されている距離画像を構成する複数の撮像フレームの距離画像データから判定する。具体的には、演算処理部101は、時間的に異なる一対の距離画像データから得た同一オブジェクトの空間配置の相違を与える差分ベクトルから列車TR自身の移動ベクトルを減算することで自動車P6,P7の空間移動ベクトルを計算することができ、この空間移動ベクトルを複数の撮像フレームの撮影間隔に相当する時間で除算することにより、自動車P6,P7の速度ベクトルVV1,VV2を得ることができる。距離画像中の自動車P6,P7等のオブジェクトを捉えるため、公知のパターンマッチングといった手法のほか、距離画像又はこれから得た2次元画像においてオプティカルフローを検出するといった手法を用いることができる。自動車P6,P7の速度ベクトルVV1,VV2は、自動車P6,P7の移動速度及び移動方向を与えるものであり、演算処理部101は、広域判定枠AR2内に存在する物体の移動速度及び移動方向を略リアルタイムで判定することができる。演算処理部101が物体の移動速度及び移動方向を移動速度及び移動方向を判定することで、接近物体の移動状態を詳細に把握した判断が可能になる。演算処理部101は、速度ベクトルVV1,VV2の軌道中心RCに垂直で軌道中心RCに向かう成分が所定の限界値を超えたか否かを判断する。図示の例では、一方の自動車P6が踏切P3を横切る方向に移動して配置判定枠AR21内に近づいており、自動車P6の速度ベクトルVV1は、軌道中心RCに垂直で軌道中心RCに向かう成分(つまり図面左向きの速度)が所定の限界値を超えるようなものとなる可能性がある。演算処理部101は、自動車P6の速度ベクトルVV1が所定の限界値を超える場合、自動車P6を衝突危険性のある近接物体と判定する。他方の自動車P7は線路RLに沿って移動しており、自動車P7の速度ベクトルVV2は、軌道中心RCに垂直で軌道中心RCに向かう成分が所定の限界値を超えることはない。つまり、演算処理部101は、自動車P7を衝突危険性のない非近接物体と判定する。速度ベクトルVV1,VV2の軌道中心RCに向かう成分についての限界値は、線路RLから自動車P6,P7までの距離や列車TRから自動車P6,P7までの距離に基づいて既定の式を用いて算出される。以上のように演算処理部101が広域判定枠AR2のうち特に近接判定枠AR22に近づく接近物体(自動車P6)が存在するか否かを判断するので、障害物判定を支援する付加情報として、接近物体による障害物発生の予測が可能となる。
以上では、線路RLに近づく接近物体が自動車P6,P7である場合について説明したが、線路RLに近づく接近物体が人、自転車、動物等である場合についても自動車の場合と同様の処理を行うことができる。この場合、接近物体が人、自転車、動物等のいずれであるかを判別して、軌道中心RCに向かう速度成分の限界値を接近物体の種類ごとに設定することもできる。
図8(A)〜8(C)は、消失点VPの信頼性を確認する手法を説明する図である。図8(A)及び8(B)は、晴天時に第2計測部42によって得た複数の2次元画像を示し、図8(A)が1回前の撮影フレームに対応する画像を示し、図8(B)が最後の撮影フレームに対応する画像を示す。図8(B)中には、最後の撮影フレームにおける消失点VPaだけでなく、1回前の撮影フレームにおける消失点VP0もプロットしている。図からも明らかなように、最後の撮影フレームにおける消失点VPaは、線路RL近傍にあって1回前の撮影フレームにおける消失点VP0と殆ど変わらない位置となって相互に隣接している。この場合、消失点VPの検出精度が高いことを意味し、線路RLを遮る遮蔽体の検出精度も高いことが期待される。図8(C)及び8(D)は、雨天時に第2計測部42によって得た複数の2次元画像を示し、図8(C)が1回前の撮影フレームに対応する画像を示し、図8(D)が最後の撮影フレームに対応する画像を示す。図8(C)では、間隔の狭い消失点VP0が得られているが、図8(D)では、先端で間隔が離れた特殊な消失点VPaとなっている。間隔の狭い通常の消失点VP0を抽出できない原因としては、窓に当たる水滴に限らず、雪、霧による視界不良がある。このように、間隔が広い消失点VPaを抽出した場合、消失点の検出精度が低いことを意味し、線路RLを遮る遮蔽体の検出精度も低い可能性が高い。演算処理部101は、図8(D)のように消失点VPの信頼性が低い状態では、列車TRの安全走行に支障があると判断して、所定以下の制限速度での走行のみを許可する動作モードに切り換える。つまり、列車TR前方の視界不良を副次的な運転関連情報として利用することができる。
図9(A)及び9(B)は、特異点について説明する図である。図9(A)及び9(B)は、複数の線路RL,RLeが布設されている地域で得た2次元画像を単純化又は抽象化したものである。この場合、列車TRの正面から延びる線路RLに隣接して別の線路RLeの画像が取り込まれている。別の線路RLeは、線路終端TAを有するが、線路終端TAは、消失点ではなく特異点SPとして処理する。別の線路RLeは、遠方にある場合、自己の線路RLと区別がつかない場合があり、その場合、安全のため2つの線路RL,RLeについて障害物の検出を行うが、上記のように線路RLeに線路終端TAがある場合、本来不要な急制動が必要と判断される可能性がある。このため、線路RLeに線路終端TAによって検出される消失点に類似する特異点SPを、運用走行を含む事前走行等によって記憶部102のデータベースの判定除外リストに予め登録し、或いは判定除外リストに徐々に蓄積すれば、特異点SPを消失点と誤って判断することを回避することができる。具体的には、配置判定部である演算処理部101は、線路RL上の位置情報とリンクさせて消失点となり得ない特異点SPに関する情報を記憶部102にデータベースとして保管し、消失点の候補から特異点SPに対応するものを除外する。これにより、線路終端TAの特異点SPを消失点と判断するような、消失点の誤検出を防止することができる。また、配置判定部である演算処理部101は、列車TRを線路RL上で運用走行又は試験走行させながら、特異点に関する情報を記憶部102にリストとして更新しつつ保管することができる。これにより、監視装置100の運用によって特異点SPに関する情報を蓄積しつ現状に適合させることができる。特異点に関する情報を運用走行で蓄積する場合、例えば3回といった設定回数を超えて同じ箇所で特異点SPが検出された場合にデータベースの判定除外のリストに登録するといった処理が可能である。なお、特異点SPに関する情報は、特異点SPの位置関連情報を含むものであり、列車TRの先頭から観察される特異点SPの方位を列車TRの走行位置ごとに記録したものとすることができる。具体的には、特異点SPに関する情報は、列車TRの位置情報と、その位置で第2計測部42によって撮影される2次元画像中におにおいて特異点SPに対応する画素領域の位置やサイズを与える配置情報とを含む。
図10を参照して、走行時における障害物検出の動作について説明する。演算処理部101は、車速検出部34等を利用して列車TRの走行位置を取得する(ステップS21)。次に、演算処理部101は、第1計測部41を利用して物体計測を行う(ステップS22)。これにより、列車TRの前方に物体が存在する場合、その物体の方位(角度)や距離が得られる。次に、演算処理部101は、ステップS21で得た走行位置に対応する存在判定枠AR1を設定するとともに、ステップS22で得た物体の方位及び距離が設定した存在判定枠AR1内であるか否かを判断する(ステップS23)。ここで、存在判定枠AR1は、記憶部102に保管した判定枠データベースを利用して設定され、判定枠データベースは、例えば事前走行によって走行位置ごとに存在判定枠AR1の方位等を紐付けて記録したものとなっている。演算処理部101は、存在判定枠AR1内に物体が存在すると判断した場合(ステップS23でYes)、入出力部103を介して運転手に線路上に障害物が存在することを警報出力する(ステップS24)。この際、演算処理部101は、ブレーキ装置33を適宜動作させて列車TRに緊急停止を行わせることができる。一方、演算処理部101は、存在判定枠AR1内に物体が存在しないと判断した場合(ステップS23でNo)、ステップS21に戻って列車TRの走行位置を取得する処理を再開する。存在判定枠AR1内における物体の計測(ステップS22,S23)と並行して、演算処理部101は、第2計測部42を利用して距離画像や2次元画像を計測し、広域判定枠AR2を設定する(ステップS25)。次に、演算処理部101は、配置判定部として、広域判定枠AR2のうち特に配置判定枠AR21内で、ステップS25で得た2次元画像や距離画像から消失点VPを検出し、消失点VPの手前に遮蔽体(例えば遮蔽体CO2)が存在し、かつ、遮蔽体迄の距離L21と遮蔽体CO2によって途切れた線路RLの遮断端である軌道位置CP2迄の距離L22との距離差Δが所定の上限値以下であるときは、この遮蔽体が線路RL上を進行する列車TRにとっての障害物であると判断する(ステップS26でYes)。この場合、演算処理部101は、入出力部103を介して運転手に線路RL上に障害物が存在することを警報出力する(ステップS24)。遮蔽体が存在しないと判断された場合(ステップS26でNo)、演算処理部101は、配置判定部として、広域判定枠AR2のうち特に近接判定枠AR22内で、ステップS25で得た距離画像や2次元画像から線路RLに近づく接近物体が存在するか否かを判断し、線路RLに近づく接近物体が存在すると判断した場合(ステップS27でYes)、演算処理部101は、入出力部103を介して運転手に線路RLの周辺に接近物体が存在することを警報出力する(ステップS24)。一方、演算処理部101は、存在判定枠AR1内に物体が存在しないと判断した場合(ステップS27でNo)、ステップS21に戻る。以上の処理は、列車TRの運用走行が完了するまで繰り返される(ステップS28でNo)。
以上で説明した実施形態の監視装置100では、配置判定部としての演算処理部101が線路RLに相当する軌道像の消失点VPを含む手前に軌道像を遮蔽する遮蔽体CO2が存在するか否かを判断するので、軌道像を正確に取得できていることを確認しつつ軌道像を局所的に遮蔽する遮蔽体CO2の存否を距離情報とともに得ることができ、障害物となる遮蔽体CO2の検出精度を高めることができる。
この発明は、上記の各実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
車上装置200は、不図示の列車運行管理システムの制御下で、列車TRの自動運転を可能としており、自動運転については、運転士を乗せた状態で行う場合のほか、運転士がいない完全無人の自動運転も含み得るものとしている。自動運転については、運行区間の全体を運転士がいない完全無人の自動運転とする場合のほか、運行区間の一部を、運転士を乗せた状態で自動運転とする場合や、運行区間の一部については、自動運転とせず、運転士による通常運転とすることも考えられる。
以上では、消失点VPの手前に遮蔽体CO2が存在する場合に、障害物となる可能性があるとしたが、遮蔽体CO2が消失点を兼ねている場合も、遮蔽体CO2が障害物となる可能性があると判断してもよい。この場合も、遮蔽体CO2迄の距離L21と、遮蔽体CO2によって途切れた線路RLの遮断端である軌道位置CP2迄の距離L22との距離差Δが所定の上限値以下であることが障害物であると判断する前提条件となる。
監視装置100は、車上装置200に組み込むのではなく、遠隔の列車運行管理システム側に部分的に組み込むこともできる。
監視装置100による監視対象は、鉄道の線路RLに限らず、路面電車用の軌道であってもよい。