JP2020105470A - 繊維状セルロース含有物、繊維状セルロース含有液状組成物及び成形体 - Google Patents
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Abstract
Description
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
繊維状セルロースにおける第1解離酸量をA1とし、繊維状セルロースにおける総解離酸量をA2とした場合、A1/A2の値が0.65以上である、繊維状セルロース含有物。
[2] 繊維幅が1000nm以下であり、亜リン酸基又は亜リン酸基に由来する置換基を有する繊維状セルロースと、亜リン酸基又は亜リン酸基に由来する置換基の対イオンとして有機オニウムイオンとを含有する繊維状セルロース含有物。
[3] 有機オニウムイオンは、下記(a)及び(b)から選択される少なくとも一方の条件を満たす、[1]又は[2]に記載の繊維状セルロース含有物;
(a)炭素数が5以上の炭化水素基を含む;
(b)総炭素数が17以上である。
[4] 有機オニウムイオンが有機アンモニウムである[1]〜[3]のいずれかに記載の繊維状セルロース含有物。
[5] 繊維状セルロース含有物の全質量に対する繊維状セルロースの含有量が80質量%以上である[1]〜[4]のいずれかに記載の繊維状セルロース含有物。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の繊維状セルロース含有物と、有機溶媒とを混合してなる繊維状セルロース含有液状組成物。
[7] さらに樹脂成分を含む[6]に記載の繊維状セルロース含有液状組成物。
[8] [1]〜[5]のいずれかに記載の繊維状セルロース含有物、もしくは[6]又は[7]に記載の繊維状セルロース含有液状組成物から形成される成形体。
本発明の第1の態様は、繊維幅が1000nm以下であり、リンオキソ酸基又はリンオキソ酸基に由来する置換基を有する繊維状セルロースと、リンオキソ酸基又はリンオキソ酸基に由来する置換基の対イオンとして有機オニウムイオンとを含有する繊維状セルロース含有物に関する。ここで、繊維状セルロースにおける第1解離酸量をA1とし、繊維状セルロースにおける総解離酸量をA2とした場合、A1/A2の値は0.65以上である。
本発明の繊維状セルロース含有物は、リンオキソ酸基又はリンオキソ酸基に由来する置換基を有する繊維状セルロースを含有する。ここで、繊維状セルロースの繊維幅は1000nm以下である。繊維状セルロースの繊維幅は100nm以下であることが好ましく、8nm以下であることがより好ましい。これにより、有機溶媒に対する分散性をより効果的に高めることができる。なお、本明細書において、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを微細繊維状セルロースと呼ぶこともある。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交差する繊維の幅を目視で読み取る。このようにして、少なくとも互いに重なっていない表面部分の観察画像を3組以上得る。次いで、各画像に対して、直線X、直線Yと交差する繊維の幅を読み取る。これにより、少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。そして、読み取った繊維幅の平均値を、繊維状セルロースの平均繊維幅とする。
まず、繊維状セルロースを含有するスラリーを強酸性イオン交換樹脂で処理する。なお、必要に応じて、強酸性イオン交換樹脂による処理の前に、後述の解繊処理工程と同様の解繊処理を測定対象に対して実施してもよい。
次いで、水酸化ナトリウム水溶液を加えながらpHの変化を観察し、図1の上側部に示すような滴定曲線を得る。図1の上側部に示した滴定曲線では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットしており、図1の下側部に示した滴定曲線では、アルカリを加えた量に対するpHの増分(微分値)(1/mmol)をプロットしている。この中和滴定では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットした曲線において、増分(pHのアルカリ滴下量に対する微分値)が極大となる点が二つ確認される。これらのうち、アルカリを加えはじめて先に得られる増分の極大点を第1終点と呼び、次に得られる増分の極大点を第2終点と呼ぶ。滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中に含まれる繊維状セルロースの第1解離酸量と等しくなり、第1終点から第2終点までに必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中に含まれる繊維状セルロースの第2解離酸量と等しくなり、滴定開始から第2終点までに必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中の総解離酸量と等しくなる。そして、滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量を滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して得られる値が、リンオキソ酸基導入量(mmol/g)となる。なお、単にリンオキソ酸基導入量(またはリンオキソ酸基量)と言った場合は、第1解離酸量のことを表す。
なお、図1において、滴定開始から第1終点までの領域を第1領域と呼び、第1終点から第2終点までの領域を第2領域と呼ぶ。例えば、リンオキソ酸基がリン酸基の場合であって、このリン酸基が縮合を起こす場合、見かけ上、リンオキソ酸基における弱酸性基量(本明細書では第2解離酸量ともいう)が低下し、第1領域に必要としたアルカリ量と比較して第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなる。一方、リンオキソ酸基における強酸性基量(本明細書では第1解離酸量ともいう)は、縮合の有無に関わらずリン原子の量と一致する。また、リンオキソ酸基が亜リン酸基の場合は、リンオキソ酸基に弱酸性基が存在しなくなるため、第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなるか、第2領域に必要としたアルカリ量はゼロとなる場合もある。この場合、滴定曲線において、pHの増分が極大となる点は一つとなる。
<繊維原料>
微細繊維状セルロースは、セルロースを含む繊維原料から製造される。セルロースを含む繊維原料としては、特に限定されないが、入手しやすく安価である点からパルプを用いることが好ましい。パルプとしては、たとえば木材パルプ、非木材パルプ、および脱墨パルプが挙げられる。木材パルプとしては、特に限定されないが、たとえば広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)および酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)およびケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)およびサーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、特に限定されないが、たとえばコットンリンターおよびコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わらおよびバガス等の非木材系パルプが挙げられる。脱墨パルプとしては、特に限定されないが、たとえば古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。本実施態様のパルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。上記パルプの中でも、入手のしやすさという観点からは、たとえば木材パルプおよび脱墨パルプが好ましい。また、木材パルプの中でも、セルロース比率が大きく解繊処理時の微細繊維状セルロースの収率が高い観点や、パルプ中のセルロースの分解が小さく軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースが得られる観点から、たとえば化学パルプがより好ましく、クラフトパルプ、サルファイトパルプがさらに好ましい。なお、軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースを用いると粘度が高くなる傾向がある。
微細繊維状セルロースの製造工程は、リンオキソ酸基導入工程を含む。リンオキソ酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料が有する水酸基と反応することで、リンオキソ酸基を導入できる化合物から選択される少なくとも1種の化合物(以下、「化合物A」ともいう)を、セルロースを含む繊維原料に作用させる工程である。この工程により、リンオキソ酸基導入繊維が得られることとなる。
反応の均一性を向上させる観点から、化合物Bは水溶液として用いることが好ましい。また、反応の均一性をさらに向上させる観点からは、化合物Aと化合物Bの両方が溶解した水溶液を用いることが好ましい。
本実施形態における微細繊維状セルロースの製造方法においては、必要に応じてリンオキソ酸基導入繊維に対して洗浄工程を行うことができる。洗浄工程は、たとえば水や有機溶媒によりリンオキソ酸基導入繊維を洗浄することにより行われる。また、洗浄工程は後述する各工程の後に行われてもよく、各洗浄工程において実施される洗浄回数は、特に限定されない。
微細繊維状セルロースを製造する場合、リンオキソ酸基導入工程と、後述する解繊処理工程との間に、リンオキソ酸基導入繊維に対してアルカリ処理を行ってもよい。アルカリ処理の方法としては、特に限定されないが、例えばアルカリ溶液中に、リンオキソ酸基導入繊維を浸漬する方法が挙げられる。
微細繊維状セルロースを製造する場合、リンオキソ酸基を導入する工程と、後述する解繊処理工程の間に、リンオキソ酸基導入繊維に対して酸処理を行ってもよい。例えば、リンオキソ酸基導入工程、酸処理、アルカリ処理及び解繊処理をこの順で行ってもよい。
リンオキソ酸基導入繊維を解繊処理工程で解繊処理することにより、微細繊維状セルロースが得られる。解繊処理工程においては、たとえば解繊処理装置を用いることができる。解繊処理装置は、特に限定されないが、たとえば高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、またはビーターなどを使用することができる。上記解繊処理装置の中でも、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミネーションのおそれが少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーを用いるのがより好ましい。
本発明の繊維状セルロース含有物は、繊維状セルロースが有するリンオキソ酸又はリンオキソ酸に由来する置換基の対イオンとして、有機オニウムイオンを含有する。本発明においては、少なくとも一部の有機オニウムイオンは、繊維状セルロースの対イオンとして存在しているが、繊維状セルロース含有物中には、遊離した有機オニウムイオンが存在していてもよい。なお、有機オニウムイオンは、繊維状セルロースと共有結合を形成するものではない。
(a)炭素数が5以上の炭化水素基を含む。
(b)総炭素数が17以上である。
すなわち、繊維状セルロースは、炭素数が5以上の炭化水素基を含む有機オニウムイオン、及び総炭素数が17以上の有機オニウムイオンから選択される少なくとも一方を、リンオキソ酸基の対イオンとして含むことが好ましい。有機オニウムイオンを、上記(a)及び(b)から選択される少なくとも一方の条件を満たすものとすることにより、有機溶媒に対する繊維状セルロースの分散性をより効果的に高めることができる。
中でも、Mは、窒素原子であることが好ましい。すなわち、有機オニウムイオンは有機アンモニウムイオンであることが好ましい。また、R1〜R4の少なくとも1つは、炭素数が5以上のアルキル基であり、かつR1〜R4の炭素数の合計が17以上であることが好ましい。
有機オニウム含有率とは、繊維状セルロース含有物中に含まれる有機オニウムイオン質量を繊維状セルロース含有物の絶乾質量で割ったものである。すなわち、下記計算式を用いて有機オニウム含有率を算出する。
有機オニウム含有率(質量%)=100×A×M/(B×M+A×(M−m))
A:製造時に供試した有機オニウムから生じる有機オニウムイオンの質量(g)
B:製造時に供試した繊維状セルロース分散液中に含まれる繊維状セルロースの絶乾質量(g)
M:有機オニウムイオンの分子量
m:製造時に供試した繊維状セルロースが有するリンオキソ酸基の対イオンの分子量(式量)の平均
本発明の繊維状セルロース含有物は、さらに任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、例えば、消泡剤、潤滑剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、安定剤、界面活性剤、防腐剤等を挙げることができる。また、繊維状セルロース含有物は、任意成分として、親水性高分子、親水性低分子、有機イオン等を含有していてもよい。
繊維状セルロース含有物の製造工程は、微細繊維状セルロース含有スラリーに、有機オニウムイオンまたは、中和により有機オニウムイオンを形成する化合物を添加する工程を含む。具体的には、上述した解繊処理工程で得られた微細繊維状セルロース含有スラリーに、上述したような有機オニウムイオンまたは、中和により有機オニウムイオンを形成する化合物を添加する。この際、有機オニウムイオンは、有機オニウムイオンを含有した溶液として添加することが好ましく、有機オニウムイオンを含有した水溶液として添加することがより好ましい。
また、添加する有機オニウムイオンのモル数は、微細繊維状セルロースが含むリンオキソ酸基の量(モル数)に価数を乗じた値の0.2倍以上であることが好ましく、0.5倍以上であることがより好ましく、1.0倍以上であることがさらに好ましい。なお、添加する有機オニウムイオンのモル数は、微細繊維状セルロースが含むリンオキソ酸基の量(モル数)に価数を乗じた値の10倍以下であることが好ましい。
本発明は、上述した繊維状セルロース含有物と、有機溶媒と、を混合してなる繊維状セルロース含有液状組成物(以下、単に液状組成物ともいう)に関するものでもある。液状組成物は、上述した微細繊維状セルロース含有物が、有機溶媒を含む分散媒中に分散した繊維状セルロース含有分散液(再分散液)である。
本発明は、上述した繊維状セルロース含有物、もしくは上述した液状組成物から形成される成形体に関するものでもある。本明細書において成形体とは、所望の形状となるように成形された固形状体や、シート状に抄紙された固形状体をいう。成形体としては、例えば、シート、ビーズ、フィラメント等を挙げることができる。中でも、成形体は、シート、ビーズ又はフィラメントであることが好ましい。成形体がビーズ状である場合、ビーズの粒子径は、0.1mm以上10mm以下であることが好ましい。また、成形体がフィラメント状である場合、フィラメントの幅は0.1mm以上10mm以下であることが好ましく、フィラメントの長さは1mm以上10000mm以下であることが好ましい。
成形体がシートである場合、成形体の製造方法は、後述するように、繊維状セルロース含有物もしくは液状組成物を基材上に塗工する塗工工程、または当該スラリーを抄紙する抄紙工程を含むことが好ましく、中でも、成形体の製造方法は、繊維状セルロース含有物もしくは液状組成物を基材上に塗工する塗工工程を含むことが好ましい。
塗工工程では、たとえば繊維状セルロースを含む繊維状セルロース含有物もしくは液状組成物(以下、単にスラリーともいう)を基材上に塗工し、これを乾燥して形成されたシートを基材から剥離することによりシートを得ることができる。また、塗工装置と長尺の基材を用いることで、シートを連続的に生産することができる。
抄紙工程は、抄紙機によりスラリーを抄紙することにより行われる。抄紙工程で用いられる抄紙機としては、特に限定されないが、たとえば長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機、またはこれらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機等が挙げられる。抄紙工程では、手抄き等の公知の抄紙方法を採用してもよい。
本発明の繊維状セルロース含有物は、有機溶媒混合用として好ましく用いられる。すなわち、有機溶媒を含む系の増粘剤や粒子分散安定剤として使用することができる。本発明の微細繊維状セルロースと有機溶媒を混合することで、微細繊維状セルロースが均一に分散したシートを形成することができる。また、本発明の繊維状セルロース含有物は、樹脂成分を含む有機溶媒との混合に好ましく用いることができる。本発明の微細繊維状セルロースと、樹脂成分を含む有機溶媒を混合することで、微細繊維状セルロースが均一に分散した樹脂複合体を形成することができる。同様に微細繊維状セルロース再分散スラリーを用いて製膜し、各種フィルムとして使用することができる。
〔微細繊維状セルロース分散液Aの製造〕
原料パルプとして、王子製紙製の針葉樹クラフトパルプ(固形分93質量%、坪量245g/m2シート状、離解してJIS P 8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)が700ml)を使用した。
〔微細繊維状セルロース分散液Bの製造〕
リンオキソ酸化処理における加熱時間を400秒とした以外は製造例1と同様にして、リンオキソ酸化パルプ2及び微細繊維状セルロース分散液Bを得た。リンオキソ酸化パルプ2に対しFT−IRを用いて赤外線吸収スペクトルの測定を行った。その結果、1210cm-1付近に亜リン酸基の互変異性体であるホスホン酸基のP=Oに基づく吸収が観察され、パルプに亜リン酸基(ホスホン酸基)が付加されていることが確認された。なお、得られた微細繊維状セルロースについて、後述する〔第1解離酸量と総解離酸量の測定(リンオキソ酸基)〕に記載の測定方法で第1解離酸量を測定したところ、第1解離酸量は1.86mmol/gだった。また、総解離酸量は、1.91mmol/gであった。
〔微細繊維状セルロース分散液Cの製造〕
亜リン酸(ホスホン酸)33質量部の代わりにリン酸28質量部、亜リン酸(ホスホン酸)8質量部を用いた以外は製造例1と同様にして、リンオキソ酸化パルプ3及び微細繊維状セルロース分散液Cを得た。リンオキソ酸化パルプ3に対しFT−IRを用いて赤外線吸収スペクトルの測定を行った。その結果、1210cm-1付近に亜リン酸基の互変異性体であるホスホン酸基のP=Oに基づく吸収、1230cm-1付近にリン酸基のP=Oに基づく吸収が観察され、パルプに亜リン酸基(ホスホン酸基)およびリン酸基が付加されていることが確認された。なお、得られた微細繊維状セルロースについて、後述する〔第1解離酸量と総解離酸量の測定(リンオキソ酸基)〕に記載の測定方法で第1解離酸量を測定したところ、第1解離酸量は1.60mmol/gだった。また、総解離酸量は、2.25mmol/gであった。
〔微細繊維状セルロース分散液Dの製造〕
亜リン酸(ホスホン酸)33質量部の代わりにリン酸二水素アンモニウム44質量部を用い、リンオキソ酸化処理における加熱時間を200秒とし、リンオキソ酸化処理及び洗浄処理をこの順にさらに1回ずつ追加で行った以外は、製造例1と同様に操作を行い、リンオキソ酸化パルプ4及び微細繊維状セルロース分散液Dを得た。リンオキソ酸化パルプ4に対しFT−IRを用いて赤外線吸収スペクトルの測定を行った。その結果、1230cm-1付近にリン酸基のP=Oに基づく吸収が観察され、パルプにリン酸基が付加されていることが確認された。なお、得られた微細繊維状セルロースについて、後述する〔第1解離酸量と総解離酸量の測定(リンオキソ酸基)〕に記載の測定方法で第1解離酸量を測定したところ、第1解離酸量は2.00mmol/gだった。また、総解離酸量は、3.30mmol/gであった。
〔微細繊維状セルロース分散液Eの製造〕
リンオキソ酸化処理及び洗浄処理を、さらに1回ずつ追加で行わなかった以外は製造例4と同様にして、リンオキソ酸化パルプ5及び微細繊維状セルロース分散液Eを得た。リンオキソ酸化パルプ5に対しFT−IRを用いて赤外線吸収スペクトルの測定を行った。その結果、1230cm-1付近にリン酸基のP=Oに基づく吸収が観察され、パルプにリン酸基が付加されていることが確認された。なお、得られた微細繊維状セルロースについて、後述する〔第1解離酸量と総解離酸量の測定(リンオキソ酸基)〕に記載の測定方法で第1解離酸量を測定したところ、第1解離酸量は1.45mmol/gだった。なお、総解離酸量は、2.45mmol/gであった。
〔微細繊維状セルロース分散液Fの製造〕
リンオキソ酸化処理における加熱時間を150秒とした以外は製造例5と同様にして、リンオキソ酸化パルプ6及び微細繊維状セルロース分散液Fを得た。リンオキソ酸化パルプ6に対しFT−IRを用いて赤外線吸収スペクトルの測定を行った。その結果、1230cm-1付近にリン酸基のP=Oに基づく吸収が観察され、パルプにリン酸基が付加されていることが確認された。なお、得られた微細繊維状セルロースについて、後述する〔第1解離酸量と総解離酸量の測定(リンオキソ酸基)〕に記載の測定方法で第1解離酸量を測定したところ、第1解離酸量は1.10mmol/gだった。なお、総解離酸量は、1.85mmol/gであった。
〔微細繊維状セルロース分散液Gの製造〕
原料パルプとして、王子製紙製の針葉樹クラフトパルプ(固形分93質量%、坪量208g/m2シート状、離解してJIS P 8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)が700ml)を使用した。この原料パルプに対してTEMPO酸化処理を次のようにして行った。
〔微細繊維状セルロース濃縮物の製造〕
1.12質量%のN,N−ジドデシルメチルアミン水溶液100gに0.28gの乳酸を添加して事前に中和した後、製造例1で得られた微細繊維状セルロース分散液A 100gに添加し、5分間撹拌処理を行ったところ、微細繊維状セルロース分散液中に凝集物が生じた。凝集物が生じた微細繊維状セルロース分散液を減圧濾過することにより、微細繊維状セルロース凝集物を得た。得られた微細繊維状セルロース凝集物をイオン交換水で繰り返し洗うことで、微細繊維状セルロース凝集物に含まれる余剰なN,N−ジドデシルメチルアミン、乳酸及び溶出したイオン等を除去した。得られた微細繊維状セルロース凝集物を30℃、相対湿度40%の条件下で乾燥し、微細繊維状セルロース濃縮物(繊維状セルロース含有物)を得た。微細繊維状セルロース濃縮物に含まれるリンオキソ酸基の対イオンは、N,N−ジドデシルメチルアンモニウム(DDMA+)となっていた。得られた微細繊維状セルロース濃縮物の固形分濃度は91質量%であった。
微細繊維状セルロース濃縮物に、微細繊維状セルロースの含有量が2.0質量%となるようN−メチルー2ーピロリドン(NMP)を添加した。その後、超音波処理装置(ヒールシャー製、UP400S)を用いて超音波処理を10分間行い、微細繊維状セルロース再分散スラリーを得た。得られた微細繊維状セルロース再分散スラリーについて、後述の方法により粘度を測定した。
得られた微細繊維状セルロース再分散スラリーを坪量80g/m2となるようガラスシャーレに流涎し、ホットプレート上で120℃、6時間キャスト乾燥し、微細繊維状セルロース含有シートを得た。得られた微細繊維状セルロース含有シートの弾性率を後述の方法により測定した。
1.78質量%のジ−n−アルキルジメチルアンモニウムクロリド水溶液(アルキル鎖の炭素原子数は16個又は18個)100gを、乳酸で中和したN,N−ジドデシルメチルアミン水溶液の代わりに用い、また、濃縮物の再分散の際に、微細繊維状セルロースの含有量が4.0質量%となるようトルエンに添加することとし、さらに、キャスト乾燥の温度を40℃とした以外は、実施例1と同様にして、微細繊維状セルロース濃縮物、微細繊維状セルロース再分散スラリー、および微細繊維状セルロース含有シートを得た。微細繊維状セルロース濃縮物に含まれるリンオキソ酸基の対イオンは、ジ−n−アルキルジメチルアンモニウム(DADMA+)となっていた。得られた微細繊維状セルロース濃縮物の固形分濃度は90質量%であった。得られた微細繊維状セルロース再分散スラリーの粘度、および微細繊維状セルロース含有シートの弾性率を後述の方法により測定した。
0.84質量%のポリオキシエチレンドデシルアミン(オキシエチレン残基の個数は2)水溶液100gをN,N−ジドデシルメチルアミン水溶液の代わりに用い、N−メチルー2ーピロリドン(NMP)の代わりにジメチルスルホキシド(DMSO)を用いた以外は、実施例1と同様にして、微細繊維状セルロース濃縮物、微細繊維状セルロース再分散スラリー、および微細繊維状セルロース含有シートを得た。微細繊維状セルロース濃縮物に含まれるリンオキソ酸基の対イオンは、ポリオキシエチレンドデシルアンモニウムイオン(POEDA+)となっていた。得られた微細繊維状セルロース濃縮物の固形分濃度は92質量%であった。得られた微細繊維状セルロース再分散スラリーの粘度、および微細繊維状セルロース含有シートの弾性率を後述の方法により測定した。
1.08質量%のアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド水溶液(アルキル鎖の炭素原子数は8〜18個)100gを、乳酸で中和したN,N−ジドデシルメチルアミン水溶液の代わりに用い、N−メチルー2ーピロリドン(NMP)の代わりにメタノールを用い、キャスト乾燥の温度を50℃とした以外は、実施例1と同様にして、微細繊維状セルロース濃縮物、微細繊維状セルロース再分散スラリー、および微細繊維状セルロース含有シートを得た。微細繊維状セルロース濃縮物に含まれるリンオキソ酸基の対イオンは、アルキルジメチルベンジルアンモニウム(ADMBA+)となっていた。得られた微細繊維状セルロース濃縮物の固形分濃度は82質量%であった。得られた微細繊維状セルロース再分散スラリーの粘度、および微細繊維状セルロース含有シートの弾性率を後述の方法により測定した。
製造例2で得られた微細繊維状セルロース分散液Bを微細繊維状セルロース分散液Aの代わりに用いた。1.38質量%のN,N−ジドデシルメチルアミン水溶液100gに0.34gの乳酸を添加して中和した後に微細繊維状セルロース分散液Bに添加した以外は、実施例1と同様にして、微細繊維状セルロース濃縮物、微細繊維状セルロース再分散スラリー、および微細繊維状セルロース含有シートを得た。微細繊維状セルロース濃縮物に含まれるリンオキソ酸基の対イオンは、N,N−ジドデシルメチルアンモニウム(DDMA+)となっていた。得られた微細繊維状セルロース濃縮物の固形分濃度は92質量%であった。得られた微細繊維状セルロース再分散スラリーの粘度、および微細繊維状セルロース含有シートの弾性率を後述の方法により測定した。
製造例3で得られた微細繊維状セルロース分散液Cを微細繊維状セルロース分散液Aの代わりに用いた。1.59質量%のN,N−ジドデシルメチルアミン水溶液100gに0.39gの乳酸を添加して中和した後に微細繊維状セルロース分散液Cに添加した以外は、実施例1と同様にして、微細繊維状セルロース濃縮物、微細繊維状セルロース再分散スラリー、および微細繊維状セルロース含有シートを得た。微細繊維状セルロース濃縮物に含まれるリンオキソ酸基の対イオンは、N,N−ジドデシルメチルアンモニウム(DDMA+)となっていた。得られた微細繊維状セルロース濃縮物の固形分濃度は93質量%であった。得られた微細繊維状セルロース再分散スラリーの粘度、および微細繊維状セルロース含有シートの弾性率を後述の方法により測定した。
製造例4で得られた微細繊維状セルロース分散液Dを、微細繊維状セルロース分散液Aの代わりに用いた。2.26質量%のN,N−ジドデシルメチルアミン水溶液100gに0.55gの乳酸を添加して中和した後に微細繊維状セルロース分散液Dに添加した以外は、実施例1と同様にして、微細繊維状セルロース濃縮物、微細繊維状セルロース再分散スラリー、および微細繊維状セルロース含有シートを得た。微細繊維状セルロース濃縮物に含まれるリンオキソ酸基の対イオンは、N,N−ジドデシルメチルアンモニウム(DDMA+)となっていた。得られた微細繊維状セルロース濃縮物の固形分濃度は95質量%であった。得られた微細繊維状セルロース再分散スラリーの粘度、および微細繊維状セルロース含有シートの弾性率を後述の方法により測定した。
製造例4で得られた微細繊維状セルロース分散液Dを、微細繊維状セルロース分散液Aの代わりに用いた。3.60質量%のジ−n−アルキルジメチルアンモニウムクロリド水溶液(アルキル鎖の炭素原子数は16個又は18個)100gを微細繊維状セルロース分散液Dに添加した以外は、実施例2と同様にして、微細繊維状セルロース濃縮物、微細繊維状セルロース再分散スラリー、および微細繊維状セルロース含有シートを得た。微細繊維状セルロース濃縮物に含まれるリンオキソ酸基の対イオンは、ジ−n−アルキルジメチルアンモニウム(DADMA+)となっていた。得られた微細繊維状セルロース濃縮物の固形分濃度は91質量%であった。得られた微細繊維状セルロース再分散スラリーの粘度、および微細繊維状セルロース含有シートの弾性率を後述の方法により測定した。
製造例4で得られた微細繊維状セルロース分散液Dを、微細繊維状セルロース分散液Aの代わりに用いた。1.71質量%のポリオキシエチレンドデシルアミン(オキシエチレン残基の個数は2)水溶液100gに0.55gの乳酸を添加して中和した後に微細繊維状セルロース分散液Dに添加した以外は、実施例3と同様にして、微細繊維状セルロース濃縮物、微細繊維状セルロース再分散スラリー、および微細繊維状セルロース含有シートを得た。微細繊維状セルロース濃縮物に含まれるリンオキソ酸基の対イオンは、ポリオキシエチレンドデシルアンモニウムイオン(POEDA+)となっていた。得られた微細繊維状セルロース濃縮物の固形分濃度は91質量%であった。得られた微細繊維状セルロース再分散スラリーの粘度、および微細繊維状セルロース含有シートの弾性率を後述の方法により測定した。
製造例4で得られた微細繊維状セルロース分散液Dを、微細繊維状セルロース分散液Aの代わりに用いた。2.18質量%のアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド水溶液(アルキル鎖の炭素原子数は8〜18個)100gを微細繊維状セルロース分散液Dに添加した以外は、実施例4と同様にして、微細繊維状セルロース濃縮物、微細繊維状セルロース再分散スラリー、および微細繊維状セルロース含有シートを得た。微細繊維状セルロース濃縮物に含まれるリンオキソ酸基の対イオンは、アルキルジメチルベンジルアンモニウム(ADMBA+)となっていた。得られた微細繊維状セルロース濃縮物の固形分濃度は84質量%であった。得られた微細繊維状セルロース再分散スラリーの粘度、および微細繊維状セルロース含有シートの弾性率を後述の方法により測定した。
製造例5で得られた微細繊維状セルロース分散液Eを、微細繊維状セルロース分散液Aの代わりに用いた。1.71質量%のN,N−ジドデシルメチルアミン水溶液100gに0.42gの乳酸を添加して中和した後に微細繊維状セルロース分散液Eに添加した以外は、実施例1と同様にして、微細繊維状セルロース濃縮物、微細繊維状セルロース再分散スラリー、および微細繊維状セルロース含有シートを得た。微細繊維状セルロース濃縮物に含まれるリンオキソ酸基の対イオンは、N,N−ジドデシルメチルアンモニウム(DDMA+)となっていた。得られた微細繊維状セルロース濃縮物の固形分濃度は94質量%であった。得られた微細繊維状セルロース再分散スラリーの粘度、および微細繊維状セルロース含有シートの弾性率を後述の方法により測定した。
1.37質量%のN,N−ジドデシルメチルアミン水溶液100gに0.33gの乳酸を添加して中和した後に微細繊維状セルロース分散液Dに添加した以外は、比較例1と同様にして、微細繊維状セルロース濃縮物、微細繊維状セルロース再分散スラリー、および微細繊維状セルロース含有シートを得た。微細繊維状セルロース濃縮物に含まれるリンオキソ酸基の対イオンは、N,N−ジドデシルメチルアンモニウム(DDMA+)となっていた。得られた微細繊維状セルロース濃縮物の固形分濃度は93質量%であった。得られた微細繊維状セルロース再分散スラリーの粘度、および微細繊維状セルロース含有シートの弾性率を後述の方法により測定した。
製造例6で得られた微細繊維状セルロース分散液Fを、微細繊維状セルロース分散液Aの代わりに用いた。1.24質量%のN,N−ジドデシルメチルアミン水溶液100gに0.34gの乳酸を添加して中和した後に微細繊維状セルロース分散液Fに添加した以外は、実施例1と同様にして、微細繊維状セルロース濃縮物、微細繊維状セルロース再分散スラリー、および微細繊維状セルロース含有シートを得た。微細繊維状セルロース濃縮物に含まれるリンオキソ酸基の対イオンは、N,N−ジドデシルメチルアンモニウム(DDMA+)となっていた。得られた微細繊維状セルロース濃縮物の固形分濃度は93質量%であった。得られた微細繊維状セルロース再分散スラリーの粘度、および微細繊維状セルロース含有シートの弾性率を後述の方法により測定した。
製造例7で得られた微細繊維状セルロース分散液Gを、微細繊維状セルロース分散液Aの代わりに用いた。1.32質量%のN,N−ジドデシルメチルアミン水溶液100gに0.32gの乳酸を添加して中和した後に微細繊維状セルロース分散液Gに添加した以外は、実施例1と同様にして、微細繊維状セルロース濃縮物、微細繊維状セルロース再分散スラリー、および微細繊維状セルロース含有シートを得た。微細繊維状セルロース濃縮物に含まれるカルボキシ基の対イオンは、N,N−ジドデシルメチルアンモニウム(DDMA+)となっていた。得られた微細繊維状セルロース濃縮物の固形分濃度は91質量%であった。得られた微細繊維状セルロース再分散スラリーの粘度、および微細繊維状セルロース含有シートの弾性率を後述の方法により測定した。
〔第1解離酸量と総解離酸量の測定(リンオキソ酸基)〕
微細繊維状セルロースのリンオキソ酸基量は、対象となる微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース分散液をイオン交換水で含有量が0.2質量%となるように希釈して作製した繊維状セルロース含有スラリーに対し、イオン交換樹脂による処理を行った後、アルカリを用いた滴定を行うことにより測定した。
イオン交換樹脂による処理は、上記繊維状セルロース含有スラリーに体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(アンバージェット1024;オルガノ株式会社、コンディショング済)を加え、1時間振とう処理を行った後、目開き90μmのメッシュ上に注いで樹脂とスラリーを分離することにより行った。
また、アルカリを用いた滴定は、イオン交換樹脂による処理後の繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を5秒に10μLずつ加えながら、スラリーが示すpHの値の変化を計測することにより行った。なお、滴定開始の15分前から窒素ガスをスラリーに吹き込みながら滴定を行った。この中和滴定では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットした曲線において、増分(pHのアルカリ滴下量に対する微分値)が極大となる点が二つ観測される。これらのうち、アルカリを加えはじめて先に得られる増分の極大点を第1終点と呼び、次に得られる増分の極大点を第2終点と呼ぶ(図1)。滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中の第1解離酸量と等しくなる。また、滴定開始から第2終点までに必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中の総解離酸量と等しくなる。なお、滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除した値を第1解離酸量(mmol/g)とした。また、滴定開始から第2終点までに必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除した値を総解離酸量(mmol/g)とした。
微細繊維状セルロースのカルボキシ基量は、対象となる微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース分散液をイオン交換水で含有量が0.2質量%となるように希釈して作製した繊維状セルロース含有スラリーに対し、イオン交換樹脂による処理を行った後、アルカリを用いた滴定を行うことにより測定した。
イオン交換樹脂による処理は、上記繊維状セルロース含有スラリーに体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(アンバージェット1024;オルガノ株式会社、コンディショング済)を加え、1時間振とう処理を行った後、目開き90μmのメッシュ上に注いで樹脂とスラリーを分離することにより行った。
また、アルカリを用いた滴定は、イオン交換樹脂による処理後の繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えながら、スラリーが示すpHの値の変化を計測することにより行った。水酸化ナトリウム水溶液を加えながらpHの変化を観察すると、図2に示されるような滴定曲線が得られる。図2に示されるように、この中和滴定では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットした曲線において、増分(pHのアルカリ滴下量に対する微分値)が極大となる点が一つ観測される。この増分の極大点を第1終点と呼ぶ。ここで、図2における滴定開始から第1終点までの領域を第1領域と呼ぶ。第1領域で必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中のカルボキシ基量と等しくなる。そして、滴定曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象の微細繊維状セルロース含有スラリー中の固形分(g)で除すことで、カルボキシ基の導入量(mmol/g)を算出した。
なお、上述のカルボキシ基導入量(mmol/g)は、カルボキシ基の対イオンが水素イオン(H+)であるときの繊維状セルロースの質量1gあたりの置換基量(以降、カルボキシ基量(酸型)と呼ぶ)を示している。
微細繊維状セルロースを含有する液状組成物の粘度は、再分散工程後に得られる2.0質量%(実施例2及び比較例2以外)または4.0質量%(実施例2及び比較例2)の微細繊維状セルロース再分散スラリーを23℃で、24時間静置した後、微細繊維状セルロース再分散スラリーの粘度をB型粘度計(BLOOKFIELD社製、アナログ粘度計T−LVT)を用いて測定した値である。測定条件は、23℃の条件とし、3rpmで3分間回転させた際の粘度を測定した。測定時の分散液の液温は23℃であった。
試験片の長さを40mm、チャック間距離を20mmとした以外はJIS P 8113に準拠し、引張試験機テンシロン(エー・アンド・デイ社製)を用いて、微細繊維状セルロース含有シートの引張弾性率を測定した。なお、引張弾性率は、SSカーブにおける正の最大の傾き値から計算した値である。引張弾性率を測定する際には、23℃、相対湿度50%で24時間調湿した、同一の坪量を有する微細繊維状セルロース含有シートを試験片として用いた。
有機オニウム含有率とは、微細繊維状セルロース濃縮物中に含まれる有機オニウムイオン質量を微細繊維状セルロース濃縮物の絶乾質量で割ったものである。すなわち、下記計算式を用いて有機オニウム含有率を算出した。
有機オニウム含有率(質量%)=100×A×M/(B×M+A×(M−23))
A:製造時に供試した有機オニウムから生じる有機オニウムイオンの質量(g)、
B:製造時に供試した微細繊維状セルロース分散液中に含まれる微細繊維状セルロースの絶乾質量(g)、
M:有機オニウムイオンの分子量
なお、計算式中の23はナトリウムイオンの式量である。
Claims (8)
- 繊維幅が1000nm以下であり、リンオキソ酸基又はリンオキソ酸基に由来する置換基を有する繊維状セルロースと、前記リンオキソ酸基又はリンオキソ酸基に由来する置換基の対イオンとして有機オニウムイオンとを含有する繊維状セルロース含有物であって、
前記繊維状セルロースにおける第1解離酸量をA1とし、前記繊維状セルロースにおける総解離酸量をA2とした場合、A1/A2の値が0.65以上である、繊維状セルロース含有物。 - 繊維幅が1000nm以下であり、亜リン酸基又は亜リン酸基に由来する置換基を有する繊維状セルロースと、前記亜リン酸基又は亜リン酸基に由来する置換基の対イオンとして有機オニウムイオンとを含有する繊維状セルロース含有物。
- 前記有機オニウムイオンは、下記(a)及び(b)から選択される少なくとも一方の条件を満たす、請求項1又は2に記載の繊維状セルロース含有物;
(a)炭素数が5以上の炭化水素基を含む;
(b)総炭素数が17以上である。 - 前記有機オニウムイオンが有機アンモニウムである請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維状セルロース含有物。
- 前記繊維状セルロース含有物の全質量に対する前記繊維状セルロースの含有量が80質量%以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維状セルロース含有物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維状セルロース含有物と、有機溶媒とを混合してなる繊維状セルロース含有液状組成物。
- さらに樹脂成分を含む請求項6に記載の繊維状セルロース含有液状組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維状セルロース含有物、もしくは、請求項6又は7に記載の繊維状セルロース含有液状組成物から形成される成形体。
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