JP2020098199A - プローブ、ミトコンドリアの状態判定用キット、ミトコンドリアの状態判定方法及びミトコンドリア機能改善剤のスクリーニング方法 - Google Patents

プローブ、ミトコンドリアの状態判定用キット、ミトコンドリアの状態判定方法及びミトコンドリア機能改善剤のスクリーニング方法 Download PDF

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【課題】ミトコンドリアの活性化をモニターし、ミトコンドリアの状態を判定することができるプローブ、ミトコンドリアの状態判定用キット及びミトコンドリアの状態判定方法、並びにミトコンドリアの活性化に基づいて被験物質を評価できるミトコンドリア機能改善剤のスクリーニング方法を提供する。【解決手段】プローブは、PKR−like endoplasmic reticulum kinaseのキナーゼインサートのN末端側からC末端側に向かってRSRSFSVで示されるアミノ酸配列における少なくとも1個のリン酸化されたセリン残基を認識して、PKR−like endoplasmic reticulum kinaseに結合する。【選択図】図9

Description

本発明は、プローブ、ミトコンドリアの状態判定用キット、ミトコンドリアの状態判定方法及びミトコンドリア機能改善剤のスクリーニング方法に関する。
人類の肥満化は解決されるべき喫緊の課題である。肥満化を抑制するために、蓄積したエネルギー、すなわち脂肪を熱へと放散させる褐色脂肪細胞及びベージュ細胞の機能を高めることが考えられる。褐色脂肪細胞による熱産生に重要な細胞小器官がミトコンドリアである。ミトコンドリアを活性化する薬剤があれば肥満化の抑制の他、ミトコンドリア病の治療が可能となる。
特許文献1には、カルノシン又はアンセリンを有効成分とする、ミトコンドリア活性化剤が開示されている。当該ミトコンドリア活性化剤によって、ミトコンドリアの生合成が促進される。
特開2015−097507号公報
上記特許文献1に開示されたミトコンドリア活性化剤のようにミトコンドリアの量を増加させるのではなく、個々のミトコンドリアを活性化させる薬剤を探索するには、ミトコンドリアの活性化、特にミトコンドリアにおける熱産生及びエネルギー代謝の活性化を反映する指標が必要である。しかし、ミトコンドリアの制御機構はあまりよく理解されておらず、ミトコンドリアの活性化に関連する有望なマーカーは特定されていないのが現状である。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、ミトコンドリアの活性化をモニターし、ミトコンドリアの状態を判定することができるプローブ、ミトコンドリアの状態判定用キット及びミトコンドリアの状態判定方法、並びにミトコンドリアの活性化に基づいて被験物質を評価できるミトコンドリア機能改善剤のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意研究を重ね、小胞体(ER)に存在するセンサー分子であるPKR−like endoplasmic reticulum kinase(以下、「PERK」ともいう)の所定のアミノ酸残基がミトコンドリアストレス依存的にリン酸化されること、さらにはこのリン酸化が褐色脂肪細胞の熱産生及びエネルギー代謝の活性化に必須であることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の第1の観点に係るプローブは、
PKR−like endoplasmic reticulum kinaseのキナーゼインサートのN末端側からC末端側に向かってRSRSFSVで示されるアミノ酸配列における少なくとも1個のリン酸化されたセリン残基を認識して、前記PKR−like endoplasmic reticulum kinaseに結合する。
上記本発明の第1の観点に係るプローブは、
抗体である、
こととしてもよい。
本発明の第2の観点に係るミトコンドリアの状態判定用キットは、
上記本発明の第1の観点に係るプローブを備える。
本発明の第3の観点に係るミトコンドリアの状態判定方法は、
細胞において、PKR−like endoplasmic reticulum kinaseのキナーゼインサートのN末端側からC末端側に向かってRSRSFSVで示されるアミノ酸配列における少なくとも1個のリン酸化されたセリン残基を検出する検出ステップを含む。
この場合、前記細胞は、
褐色脂肪細胞である、
こととしてもよい。
本発明の第4の観点に係るミトコンドリア機能改善剤のスクリーニング方法は、
細胞を被験物質に暴露する暴露ステップと、
前記細胞において、PKR−like endoplasmic reticulum kinaseのキナーゼインサートのN末端側からC末端側に向かってRSRSFSVで示されるアミノ酸配列における少なくとも1個のリン酸化されたセリン残基を検出する検出ステップと、
前記検出ステップの結果に基づいて前記被験物質を選択する選択ステップと、
を含む。
この場合、前記細胞は、
褐色脂肪細胞である、
こととしてもよい。
本発明に係るプローブ、ミトコンドリアの状態判定用キット及びミトコンドリアの状態判定方法によれば、ミトコンドリアの活性化をモニターし、ミトコンドリアの状態を判定することができる。また、本発明に係るミトコンドリア機能改善剤のスクリーニング方法によれば、ミトコンドリアの活性化に基づいて被験物質を評価できる。
マウスPERKの構造を示す図である。 試験例1に係る未分化細胞及び成熟褐色脂肪細胞の電子顕微鏡解析の結果を示す図である。(A)及び(B)は、それぞれ未分化細胞及び成熟褐色脂肪細胞の電子顕微鏡画像を示す図である。(C)はミトコンドリア−ER近接領域の長さの平均値を示す図である。 試験例2に係るマウスのPERK及びER内腔領域を欠失させたPERK変異体の構造を示す図である。 試験例2に係る褐色脂肪細胞の分化過程におけるPERK等の発現を示す図である。 試験例2に係るPERK変異体を発現させた褐色脂肪細胞の分化過程におけるPERKの発現を示す図である。 試験例3に係るPERKの発現抑制によるミトコンドリア形態異常を示す図である。(A)及び(B)は、それぞれコントロールとしての標的のないsiRNA(sictrl)及びPERKを標的とするsiRNA(siPERK)を導入した細胞の電子顕微鏡画像を示す。(C)及び(D)は、それぞれ(A)及び(B)の白枠で囲った部分の拡大像を示す。(E)は細胞あたりの発達したミトコンドリアの割合を示す。 試験例4に係るPERKを介したミトコンドリア関連タンパク質の発現を示す図である。 試験例5に係る酸化的リン酸化によるATP産生の割合の経時変化を示す図である。 実施例1に係る抗体で検出された、リン酸化されたPERKを示す図である。 実施例2に係る褐色脂肪細胞の分化過程におけるPERK等の発現を示す図である。 実施例3におけるβ3アドレナリン受容体刺激により誘導されるPERKのリン酸化の解析結果を示す図である。 実施例4における細胞染色によるミトコンドリアストレス依存的なPERKのリン酸化を示す図である。(A)及び(B)は、それぞれミトコンドリアストレスを加えていない細胞及びミトコンドリアストレスを加えた細胞の顕微鏡画像を示す図である。 実施例5におけるドットブロット法の結果を示す図である。 試験例6におけるβ3アドレナリン受容体刺激による熱産生の解析結果を示す図である。
本発明に係る実施の形態について説明する。なお、本発明は下記の実施の形態によって限定されるものではない。
(実施の形態1)
本実施の形態に係るプローブは、PERKのキナーゼインサートに含まれるリン酸化されたセリン残基を認識して、PERKに結合する。図1は全長1114残基からなるマウスPERKの構造を示す。PERKは、ER内腔に配置されるER内腔領域、膜貫通領域及びキナーゼ領域を含む。キナーゼ領域にはキナーゼインサートが含まれる。上記セリン残基はキナーゼインサートにおける3個のセリン残基である。マウスPERKのアミノ酸配列を配列番号1に示す。マウスPERKの場合、上記の3個のセリン残基は、PERKのN末端側から715、717及び719番目のセリン残基である。
哺乳類のPERKでは、上記セリン残基を含む部分のアミノ酸配列が高度に保存されている。例えば、マウスPERKのN末端側から714番目から720番目までのアミノ酸配列、ヒトPERKのN末端側から718番目から724番目までのアミノ酸配列、及びラットPERKのN末端側から714番目から720番目までのアミノ酸配列は、いずれも“RSRSFSV”(配列番号2)である。
プローブは、“RSRSFSV”で示されるアミノ酸配列における少なくとも1個のリン酸化されたセリン残基を認識して、PERKに結合するものであれば限定されない。プローブとしては、上記のリン酸化されたセリン残基を認識してPERKに結合する、抗体、アプタマー及び化合物等が挙げられる。アプタマーは、少なくともリン酸化された上記セリン残基を含むPERKの部分配列(ペプチド)を標的としたin vitro selection法及びSELEX法等の公知の方法で取得できる。化合物は、結合アッセイ、例えば、アフィニティクロマトグラフィ、分光学的方法、ゲルろ過法及び表面プラズモン共鳴測定法等で選択することができる。
好ましくは、プローブは抗体である。抗体は上記ペプチドを抗原ペプチドとして公知の方法で作製できる。免疫の対象とする動物は、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ及びニワトリ等である。好適には、上記ペプチドは上記のリン酸化された3個のセリン残基を含む。
抗体はポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。ポリクローナル抗体の作製では、動物に抗原ペプチドを繰り返し注射し、所定期間経過後に回収した血液から抗体を精製すればよい。好ましくは、ポリクローナル抗体は、抗原ペプチドをアジュバントともに感作させたウサギ等の動物から採血し、抗原ペプチドによりaffinity精製した後、上記抗原ペプチドと同じアミノ酸配列で、かつセリン残基がリン酸化されていないペプチドを用いた吸収作業により得られる。
モノクローナル抗体の作製では、抗原ペプチドで免疫した動物の脾臓又はリンパ節からB細胞を採取し、細胞融合によってハイブリドーマを得る。抗原ペプチドに反応するハイブリドーマを選択し、クローン化すればよい。当該ハイブリドーマによってモノクローナル抗体を産生することができる。
抗原ペプチドのアミノ酸残基数は特に限定されないが、例えばリン酸化された上記3個のセリンを含む10〜20、11〜15又は12〜14個である。抗原ペプチドのアミノ酸配列は、例えば配列番号2に示されるアミノ酸配列を包含するPSPERSRSFSVGI(配列番号3)である。
下記試験例2及び下記実施例1に示すように、当該プローブは、褐色脂肪細胞の分化過程においてERストレス非依存的にリン酸化された上記セリン残基を認識してPERKに結合する。下記試験例2及び下記試験例4によれば、PERKの上記セリン残基のリン酸化は、褐色脂肪細胞のミトコンドリアにおける熱産生因子UCP1の発現に必須である。また、PERKの上記セリン残基のリン酸化は、分化誘導した褐色脂肪細胞におけるミトコンドリアの発達に重要であり(下記試験例3参照)、かつ分化過程におけるミトコンドリアでの酸化的リン酸化によるATP産生に関与する(下記試験例5参照)。さらに下記試験例6によれば、上記セリン残基のリン酸化によって制御されるミトコンドリア発生が熱産生に必須である。よって、PERKの上記セリン残基のリン酸化は、ミトコンドリアにおける熱産生及びエネルギー代謝の活性化に関与する。
本実施の形態に係るプローブは、細胞における熱産生及びエネルギー代謝の活性化に関与するPERKのリン酸化された上記セリン残基を認識してPERKに結合するため、当該プローブを検出することで、ミトコンドリアの活性化をモニターすることができる。
当該プローブは、公知の方法で検出できる。例えば、プローブを検出するには、プローブを直接標識すればよい。プローブとしての抗体を直接標識する場合、抗体は、放射性同位体、蛍光色素又は発色反応で用いる酵素等で標識される。標識された抗体は、免疫反応によってPERKのリン酸化された上記セリン残基に結合する。放射性同位体で標識した抗体を用いる場合、免疫反応後に放射性同位体の放射線を検出すればよい。蛍光色素で標識した抗体を用いる場合、免疫反応の後に蛍光色素に対する励起波長の光を当て、その蛍光を検出すればよい。発色反応で用いる酵素で標識した抗体を用いる場合、免疫反応後に当該酵素に対する発色基質を反応させ、生じた色によってPERKを検出すればよい。
放射性同位体としては、例えば、重水素(H)、三重水素(H)、10B、11B、13C、15N及び18O等が挙げられる。発色反応で用いる酵素は、公知の酵素、例えば、アルカリホスファターゼ及びペルオキシダーゼ等である。蛍光色素は、公知の任意のものが使用でき、例えば、FITC、Cy2、Cy3、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル及びカルボシアニン誘導体等である。蛍光色素は、蛍光タンパク質でもよく、例えば緑色蛍光タンパク質及びその変異体等である。
プローブとして抗体を採用する場合、上記プローブとしての一次抗体と、当該一次抗体に特異的に結合する二次抗体とを用いる間接蛍光抗体法でプローブを検出してもよい。二次抗体は、例えば蛍光色素で標識される。一次抗体として、ヒト以外の動物、例えばヤギで作製した上記セリン残基がリン酸化されたPERKに対するヤギ抗体を使用し、二次抗体として、蛍光色素で標識されたロバ抗ヤギ抗体を使用すればよい。なお、抗体の標識には、アビジン−ビオチンシステムを用いてもよい。
本実施の形態に係るプローブは、ミトコンドリアにおける熱産生及びエネルギー代謝の活性化に必要なリン酸化された上記セリン残基を介してPERKに結合する。このため、当該プローブを用いて、ミトコンドリアの状態を判定することができる。そこで、他の実施の形態では、上記プローブを備える、ミトコンドリアの状態判定用キットが提供される。
ミトコンドリアの状態判定方法として、ミトコンドリアの状態判定用キットの使用方法について説明する。当該方法は、検出ステップを含む。検出ステップでは、細胞において、PERKの少なくとも1個のリン酸化された上記セリン残基を検出する。細胞は特に限定されず、例えば、ヒト、サル、ウシ、ウマ、ウサギ、マウス、ラット、モルモット及びハムスター等の哺乳動物の各種細胞である。細胞としては、心筋細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、線維芽細胞、骨細胞、軟骨細胞、破骨細胞、実質細胞、表皮角化細胞、上皮細胞、内皮細胞、神経細胞、グリア細胞、脾細胞、膵臓β細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、肝細胞、及びこれらの前駆細胞が例示される。細胞は、間葉系幹細胞、胚性幹細胞、胚性生殖細胞、成体幹細胞及び人工多能性幹細胞(iPS細胞)等であってもよい。また、細胞は、正常細胞の他、癌細胞等の細胞、又はHeLa細胞、CHO細胞、Vero細胞、HEK293細胞、HepG2細胞、Cos−7細胞、NIH3T3細胞及びSf9細胞等の株化された細胞等であってもよい。
好ましくは、当該細胞は、分化誘導又は刺激によってPERKの上記少なくとも1個のセリン残基がリン酸化された細胞である。例えば、当該細胞は、褐色脂肪組織から単離された未分化細胞を分化誘導した褐色脂肪細胞である。検出ステップの前に、分化誘導した褐色脂肪細胞を、ミトコンドリアストレスを付与するCCCP(carbonylcyanide m−chlorophenylhydrazone)に暴露して当該細胞に刺激を加えてもよい。また、検出ステップの前に、分化誘導した褐色脂肪細胞を、β3アドレナリン受容体アゴニスト、例えばCL316,243で刺激してもよい。これにより、上記セリン残基のリン酸化が亢進される。
リン酸化された上記セリン残基は、上記プローブを用いて公知の方法で検出できる。例えば、ウエスタンブロット法等を用いて上記プローブとしての一次抗体を二次抗体で検出すればよい。この場合、当該ミトコンドリアの状態判定用キットは、二次抗体をさらに備えてもよい。蛍光標識を利用して細胞を顕微鏡下で観察してシグナルを検出してもよい。シグナルの検出には、近接ライゲーションアッセイ(Proximity Ligation Assay:PLA)を用いてもよい。
続いて、例えば、上記プローブを用いて検出されたシグナル又はバンドを公知の方法で定量する。PERKの上記セリン残基のリン酸化はミトコンドリアの活性化と相関するため、シグナル等の大きさに基づいて、ミトコンドリアの状態としてミトコンドリアの活性化の程度を判定できる。例えば、シグナルが大きい細胞は、小さい細胞と比較して、ミトコンドリアの活性化の程度が大きいと判定できる。また、本実施の形態に係るミトコンドリアの状態判定用キットによれば、刺激後のミトコンドリアの活性化の程度を評価することで、ミトコンドリアの状態として、刺激前の細胞についてミトコンドリアの活性化のポテンシャルを判定できる。
なお、ミトコンドリアの状態判定用キットは、未分化細胞を分化誘導するための試薬に加え、緩衝液、希釈液及びその他試薬を備えてもよい。なお、CCCPで刺激を加える細胞は、分化誘導した褐色脂肪細胞に限らず、CCCPの刺激によってPERKの上記少なくとも1個のセリン残基がリン酸化される細胞であれば任意の細胞を用いることができる。
また、ミトコンドリアの状態を判定することは、細胞の状態を判定することになるため、ミトコンドリアの状態判定用キットは、細胞の状態判定用キットとしても利用することができる。また、上述のミトコンドリアの状態判定方法を、例えば、iPS細胞又は心筋細胞シートを構成する心筋細胞等に適用することで、iPS細胞又は心筋細胞シートの細胞の品質を評価することもできる。当該用途はiPS細胞又は心筋細胞シートの品質管理に有用である。
なお、上記ミトコンドリアの状態判定方法を、ヒトから採取した褐色細胞に適用することで、褐色脂肪細胞による熱産生の程度を評価することもできる。また、上記ミトコンドリアの状態判定方法を、ヒトから採取した任意の細胞に適用することで、ミトコンドリア病の易罹患性の予測又は診断も可能である。
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2について説明する。本実施の形態に係るミトコンドリア機能改善剤のスクリーニング方法は、暴露ステップと、検出ステップと、選択ステップとを含む。暴露ステップでは、細胞を被験物質に暴露する。例えば、暴露ステップでは、細胞の培地に被験物質を添加すればよい。暴露ステップで用いる細胞は、上記ミトコンドリアの状態判定用キットの使用方法における細胞と同様である。被験物質に暴露する前に、細胞にCCCP又はβ3アドレナリン受容体アゴニスト等で刺激を与えてもよい。被験物質は、特に限定されず、化合物、ペプチド及び核酸等、任意の物質である。検出ステップは、上記ミトコンドリアの状態判定用キットの使用方法における検出ステップと同様である。
選択ステップでは、検出ステップの結果に基づいて被験物質を選択する。上記プローブを用いて検出されたシグナルの大きさに基づいて、ミトコンドリアの機能を改善、特には熱産生及びエネルギー代謝を活性化させる被験物質を選択できる。例えば、被験物質に暴露しなかった細胞と被験物質に暴露した細胞との間でシグナルの大きさを比較してもよい。この場合、被験物質に暴露しなかった細胞のシグナルを超えるシグナルが検出された被験物質をミトコンドリアの機能改善剤として選択すればよい。
また、選択ステップでは、PERKの上記セリン残基のリン酸化を亢進させることが既知であるβ3アドレナリン受容体アゴニスト等を陽性対照に用い、陽性対照と被験物質との間でシグナルの大きさを比較してもよい。この場合、陽性対照のシグナルと同等以上のシグナルが検出された被験物質をミトコンドリア機能改善剤として選択すればよい。
本実施の形態に係るミトコンドリア機能改善剤のスクリーニング方法によれば、PERKの上記セリン残基のリン酸化の程度に基づいて被験物質を選択する。上記セリン残基のリン酸化の程度は、熱産生及びエネルギー代謝の活性化の指標となるため、ミトコンドリアの活性化に基づいて被験物質を評価できる。
なお、選択ステップでは、あらかじめ基準として設定された基準値とシグナルの大きさを比較してもよい。また、シグナルの大きさは、β−アクチン等のシグナルで補正して比較してもよい。
なお、本実施の形態に係るミトコンドリア機能改善剤は、ミトコンドリア活性化剤、抗肥満薬、ミトコンドリア病肥満薬としても用いることができる。
以下の試験例及び実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は試験例及び実施例によって限定されるものではない。
(試験例1:褐色脂肪細胞の分化誘導に伴うミトコンドリアとERの近接)
ICRマウスの新生仔の褐色脂肪組織から未分化細胞を単離し、8日間培養後(day 0)に分化誘導培地に培地交換し、分化誘導した。分化誘導培地の組成は、20%FBS、20nMインシュリン、1nMトリヨードサイロニン(T3)、5μMデキサメタゾン、0.125mMインドメタシン、0.5mM IBMX及び1μMロシグリタゾンを含むDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)とした。分化誘導から2日後及び4日後に分化増強培地に培地交換し、細胞を維持した。分化増強培地の組成は、20% FBS(ウシ胎児血清)、20nMインシュリン、1nM T3を含むDMEMとした。分化誘導6日目の細胞を成熟褐色脂肪細胞(day 6)とした。
day 0の細胞及びday 6の細胞をPBSで洗浄し、Karnovsky固定液(パラフォルムアルデヒド及びグルタールアルデヒドの混合液)で固定した。細胞をエタノールで脱水処理後に酢酸ウラニル染色し、電子顕微鏡観察を行った。画像解析ソフトウェア(Image J)を用いて、電子顕微鏡観察像においてミトコンドリアとERとの間が30nm以内で近接している領域(ミトコンドリア−ER近接領域)の長さを算出した。
(結果)
図2(A)及び図2(B)は、それぞれday 0の細胞及びday 6の細胞の電子顕微鏡画像を示す。観察像中の点線はミトコンドリア−ER近接領域である。図2(C)は、26枚の観察像におけるミトコンドリア−ER近接領域の長さの平均値を示す。分化誘導に伴ってミトコンドリア−ER近接領域の長さが有意に長くなる、すなわちミトコンドリアとERとが近接することが示された(t検定、n=3)。
(試験例2:分化過程におけるERストレス非依存的なPERKリン酸化)
未分化細胞(day −2)を24ウェルプレートに0.5×10細胞/ウェルで播種し、2日後(day 0)に分化誘導培地に培地交換することで分化誘導し、4日後(day 2)及び6日後(day 4)に分化増強培地に培地交換した。分化誘導2日目(day 2)の分化増強培地への培地交換前及び培地交換してから6時間後及び12時間後に細胞を回収した。
一方、細胞へPERKを標的とするsiRNA(siPERK)をday −2に導入した。詳細には、siPERKとしてInvitrogen社製のMSS203819(配列番号4)を、Lipofectamine(商標) RNAiMAX Transfection Reagent(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて細胞へ導入した。
細胞に導入する下記遺伝子をpMXs−IPプラスミドに組み込んだ。PEI−Maxを用いて、エコトロピックエンベロープでパッケージングしたレトロウイルス(Platinum−GP)に当該プラスミドを導入した。siPERKを細胞に導入した24時間後(day −1)に、レトロウイルスを含む培養液と7.5μg/mL(終濃度)のポリブレンとを細胞の培地に添加して、24時間後に培地を交換した。
レトロウイルスの感染によって細胞に導入した遺伝子は、C末端にFLAGタグが付加されたキナーゼ不活性型のPERK(PERK−ΔLD−KA)をコードする遺伝子である。図3は、哺乳類のPERK及びPERK−ΔLD−KAの構造を示す。PERKはキナーゼ領域のATP結合領域にATPが結合することで自己リン酸化される。このため、PERK−ΔLD−KAでは、N末端から618番目である、ATP結合領域のリジン(K618)をアラニンに置換して自己リン酸化が生じないようにした。PERK−ΔLD−KAは、ER内腔領域における、PERKのN末端から数えて29番目から502番目までのアミノ酸配列で構成される部分を欠失している。当該部分を欠くことで、PERKはERストレスへの反応が抑制される。
PERK−ΔLD−KAを発現させた細胞を、day 0及び分化誘導2日目(day 2)に回収した。1ウェル当たり200μLの溶解バッファーを添加後、4℃にて30分間細胞を溶解し、4℃、15000rpm、10分間遠心して上清150μLを回収した。溶解バッファーの組成は、20mM Tris−HCl pH7.5、150mM NaCl、10mM EDTA pH8.0、1%デオキシコール酸ナトリウム及び1%TritonX−100とした。
細胞溶解液に150μLの2×SDSサンプルバッファー(20mMのジチオスレイトールを含む)を加えて98℃で5分間ボイルし、ウエスタンブロッティング解析へと供した。SDS−PAGE電気泳動後、ゲルから2フッ化ポリビニリデンメンブレン(0.45μm、Pall社製)にタンパク質を転写し、1%スキムミルクを含むTBS−T(150mM NaCl、50mM Tris−HCl pH8.0及び0.05%Tween 20)で室温にて1時間ブロッキングした後、5%ウシ血清アルブミンと0.1%NaNを含むTBS−Tで希釈した各一次抗体で4℃にて一晩反応させた。TBS−Tで3回洗浄後、1%スキムミルクを含むTBS−Tで希釈した二次抗体で室温にて1時間反応させ、TBS−Tで30分間洗浄した。高感度ケミルミネッセンス法にてバンドを検出した。
(結果)
図4は、day 2の分化増強培地への培地交換前(0hr)及び培地交換してから6時間後(6hr)及び12時間後(12hr)の細胞におけるPERK、IRE1α及びGRP78のバンドを示す。PERKでは高分子量側にシフトしたバンドが見られた。これにより、分化過程においてPERKがリン酸化されていることが示された。ERには3つのセンサータンパク質(PERK、IRE1α及びATF6)があり、いずれもER膜貫通型である。IRE1α及びATF6の下流で発現誘導されるGRP78に関してはバンドに変化が見られなかった。このことから、分化過程におけるリン酸化は、PERKに特異的であることが示唆された。
図5は、siPERKでPERKをノックダウンした細胞にPERK−ΔLD−KAを発現させた細胞のday 0及びday 2におけるPERKのバンドを示す。分化過程においてPERKのリン酸化を示すバンドのシフトが確認された。既知のPERK経路は、PERKがER内腔領域でERストレスを感知してリン酸化され、eIF2αのリン酸化を介して翻訳を抑制する。PERK−ΔLD−KAはPERKのER内腔領域を欠失しており、キナーゼ不活性型である。このため、図5の結果は、図4に示された分化過程におけるPERKのリン酸化がERストレス非依存的であることを示している。PERKは、分化過程において未知の機能を担うことが示唆された。
(試験例3:PERKの発現抑制によるミトコンドリア形態異常)
試験例2と同様にday −2において未分化細胞にコントロールとしての標的のないsiRNA(Stealth RNAi(商標) Negative Control Medium GC Duplex、Invitrogen社製、以下「sictrl」ともいう)又はsiPERK(MSS203821、Invitrogen社製(配列番号5))を導入後、分化誘導し、day 6まで培養した。試験例1と同様に、細胞を固定、染色し、電子顕微鏡で観察した。平行で密度の大きいクリステの構造を有するミトコンドリアを発達したミトコンドリアとして、計数した。
(結果)
図6(A)及び(B)は、それぞれsictrl及びsiPERKを導入した細胞の電子顕微鏡画像を示す。スケールバーは2μmを示す。図6(C)及び(D)は、それぞれ図5(A)及び(B)の白枠で囲った部分の拡大像を示す。図6(E)は、細胞あたりの発達したミトコンドリアの割合を示す。当該割合は、50細胞の平均値である。PERKの発現を抑制すると、正常なミトコンドリアで見られる平行で密度の大きいクリステの割合が減少し、異常な形態のクリステの割合が増加した。分化誘導した細胞におけるミトコンドリアの発達にはPERKが重要であることが示された。
(試験例4:PERKを介したミトコンドリア関連タンパク質の発現)
試験例2と同様にday −2において未分化細胞にsictrl又はsiPERK(MSS203821)を導入後、分化誘導し、0、2、4、6日目に細胞を回収した。試験例2と同様の方法で、ミトコンドリア、熱産生関連タンパク質及びERストレス関連タンパク質についてウエスタンブロッティング解析を行った。
(結果)
図7に示すように、分化過程におけるPERKの発現抑制によって、主にミトコンドリア内膜を構成するタンパク質及び熱産生に関連するUCP1の発現が低下した。
(試験例5:PERKを介した酸化的リン酸化によるATP産生)
試験例2と同様にday −2において未分化細胞にsictrl又はsiPERK(MSS203821)を導入後、分化誘導し、0、2、4、6日目に細胞を回収した。回収した細胞を、1μg/mLオリゴマイシン Aで45分間処理又は無処理後、PBSで洗浄し、500μLのATP assay buffer(100mM Tris−HCl pH7.5、4mM EDTA pH7.5)を加え、回収した。細胞懸濁液を98℃で3分間ボイルし、4℃、15000rpmで1分間遠心後に上清を回収した。上清中のATPは、ATP Bioluminescence Assay Kit HS II(Roche社製)を用いて測定した。オリゴマイシン Aで処理しなかった無処理群の細胞内のATP量を細胞内の総ATP量とし、処理群を解糖系依存的なATP産生量とした。ミトコンドリアでの酸化的リン酸化依存的なATP産生量は、細胞内の総ATP量と解糖系依存的なATP産生量の測定値とから算出した。
(結果)
図8に示すように、sictrlを導入した細胞では、分化誘導に伴って酸化的リン酸化依存的なATP産生量の割合が増加した。一方、PERKの発現を抑制することで、酸化的リン酸化依存的なATP産生量の割合が増加しなかった。このことから、PERKが分化過程におけるミトコンドリアでの酸化的リン酸化によるATP産生に関与することが示された。
(実施例1:ミトコンドリアストレス特異的に反応するPERKリン酸化抗体の作製)
試験例2で示されたERストレス非依存的にリン酸化されるセリン残基の予想部位は、図1に示すキナーゼインサート内の3個のセリン残基である(N末端側から715、717及び719番目)。そこで、リン酸化された715、717及び719番目のセリン残基を含む13個のアミノ酸からなるペプチド(配列番号3)を抗原として抗体(pPERK(3S)抗体)を作製した。pPERK(3S)抗体の作製では、ウサギに上記ペプチドをアジュバントとともに4回皮内注射することで感作させ、9週後に全採血し、上記ペプチドによりaffinity精製した後、上記ペプチドと同じアミノ酸配列で、かつ3個のセリン残基がリン酸化されていないペプチドにより吸収作業を行った。
day −2の未分化細胞にsictrl又はsiPERK(MSS203819)を導入し、day −1においてレトロウイルスを用いて、Venus−FLAG又はPERK−ΔLD−KAを発現させ、分化誘導を行った。分化誘導3日目の細胞を、10μM CCCPで刺激前と刺激後に回収し、試験例2と同様の方法で、ウエスタンブロッティング解析へと供した。
(結果)
図9はウエスタンブロッティング解析の結果を示す。PERKは、CCCPによるミトコンドリアストレスによってリン酸化され、当該リン酸化を示すバンドをpPERK(3S)抗体で検出できた。siPERKでPERKをノックダウンした細胞にPERK−ΔLD−KAを発現させた細胞でもpPERK(3S)抗体でバンドを検出できた。これにより、ミトコンドリアストレスによるERストレス非依存的なPERKのリン酸化をpPERK(3S)抗体で検出できることが示された。
(実施例2:分化過程において誘導されるPERKのリン酸化の解析)
day −2の未分化細胞にsictrl又はsiPERK(MSS203819)を導入し、24時間後(day −1)にレトロウイルスを用いて、Venus−FLAG、PERK−ΔLD又はPERK−ΔLD−3SAを発現させ、分化誘導を行った。分化誘導2日目に分化増強培地に培地交換し、12時間後に細胞を回収した。回収した細胞を試験例2と同様の方法で、ウエスタンブロッティング解析へと供した。
PERK−ΔLDは、ER内腔領域における、PERKのN末端から数えて29番目から502番目までのアミノ酸配列で構成される部分を欠失している。なお、PERK−ΔLDのC末端にもFLAGタグが付加されている。
PERK−ΔLD−3SAは、PERK−ΔLDと同様に、ER内腔領域における、PERKのN末端から数えて29番目から502番目までのアミノ酸配列で構成される部分を欠失している。さらに、PERK−ΔLD−3SAでは、上記3個のセリン残基がアラニン残基に置換されている。なお、PERK−ΔLD−3SAのC末端にもFLAGタグが付加されている。
(結果)
図10はウエスタンブロッティング解析の結果を示す。ER内腔領域の欠失によって、PERKのリン酸化は影響を受けなかった(“PERK”参照)。pPERK(3S)抗体によって、褐色脂肪細胞の分化における3個のセリン残基の少なくとも1つのリン酸化がPERK及びPERK−ΔLDで検出できたが、PERK−ΔLD−3SAでは、検出されなかった。pPERK(3S)抗体によって、褐色脂肪細胞の分化においてPERKのキナーゼインサート内が生理的にリン酸化されることが示された。
(実施例3:β3アドレナリン受容体刺激により誘導されるPERKのリン酸化の解析)
day −2の未分化細胞にsiPERK(MSS203819)を導入し、day −1においてPERK−ΔLD−KA又はPERK−ΔLD−3SAを発現させ、分化誘導を行った。
分化誘導6日目の細胞を、50nM CL316,243での刺激前又は刺激後60分で回収した。1ウェル当たり550μLの溶解バッファーを添加後、4℃にて30分間細胞を溶解し、4℃、15000rpmで10分間遠心して上清500μLを回収した。細胞溶解液に20μLの抗FLAG M2 アフィニティーゲルを添加し、4℃にて30分間反応させた。上清を除去後、洗浄バッファー(20mM Tris−HCl pH7.5、5mM EGTA pH8.0、5M NaCl、1%TritonX−100)で2回洗浄し、50μLの2×SDS サンプルバッファー(20mMのジチオスレイトールを含む)を加えて98℃で5分間ボイルし、ウエスタンブロッティング解析へと供した。
(結果)
図11はウエスタンブロッティング解析の結果を示す。PERK−ΔLD−KAを発現させた細胞では、CL316,243による刺激によって3個のセリン残基のリン酸化が誘導された。一方、PERK−ΔLD−3SAを発現させた細胞では、pPERK(3S)抗体でバンドが検出されないことを確認した。これにより、β3アドレナリン受容体の刺激によって、ERストレス非依存的にPERKがリン酸化されることが示された。
(実施例4:PLAによるミトコンドリアストレス依存的PERKリン酸化の検出)
6ウェルプレートに10%FBSを含んだDMEMで維持したHeLa細胞を2.0×10細胞/ウェルで播種し12〜16時間後に、PERK−ΔLD−KAをコードする遺伝子を0.5μg/ウェルで導入した。遺伝子導入から24時間後に、コラーゲンコートしたカバーガラスを1枚入れた24ウェルプレートに細胞を0.5×10細胞/ウェルで播種し、24時間後にグルコースフリー培地(10%FBS、1mM ピルビン酸ナトリウム、10mMガラクトースを含んだグルコース不含DMEM)に培地交換した。培地交換から24時間後、細胞を10μM CCCPで1時間刺激し、PBSで2回洗浄し、4%パラフォルムアルデヒドにて固定した。
固定後、細胞をPBSで3回洗浄し、100μg/mLジギトニンで5分間の細胞膜透過処理を行った。PBSで5回洗浄後、1%BSA溶液でブロッキングし、pPERK(3S)抗体と抗FLAG抗体で1次抗体反応を行った。2次抗体反応は、Duolink(商標) In situ PLA(商標) probe Anti−Mouse PLUSとDuolink(商標) In situ PLA(商標) probe Anti−Rabbit Minusとを用いた(いずれもシグマアルドリッチ社製)。2次反応後、Duolink(商標) in Situ Detection Green(シグマアルドリッチ社製)で細胞を処理し、共焦点レーザー顕微鏡解析を行った。核はDAPI染色で可視化した。
(結果)
図12(A)はCCCPで刺激しなかった細胞の顕微鏡画像を示す。CCCPによる刺激がない場合、PLAシグナルは検出されなかった。図12(B)はCCCPで刺激した細胞の顕微鏡画像を示す。pPERK(3S)抗体によって、CCCP刺激によるERストレス非依存的なPERKのリン酸化を検出することができた。
(実施例5:ミトコンドリア機能改善剤アッセイ系の構築)
ドットブロット法でPERK3Sのリン酸化誘導因子、すなわちミトコンドリア機能改善剤を同定するためのアッセイ系を構築した。35mmディッシュに10%FBSを含むDMEMで維持したPERK−FLAG−ノックインHEK293細胞を1×10細胞播種した。PERK−FLAG−ノックインHEK293細胞における細胞内因性PERKのC末端には、3×FLAGタグが付加されている。3×FLAGタグのアミノ酸配列及び3×FLAGタグをコードする塩基配列をそれぞれ配列番号6及び配列番号7に示す。
播種してから12〜16時間後に、グルコースフリー培地(10%FBS、1mMピルビン酸ナトリウム及び10mMガラクトースを含むDMEM)に培地交換した。培地交換から16時間後、細胞を10μM CCCPで30分間刺激した。上記試験例2と同様に細胞を溶解バッファーで溶解し、抗Flag抗体(DDDDK−タグ抗体、MBLライフサイエンス社製)にて免疫沈降し、上記試験例2と同様に2×SDSサンプルバッファーにて溶出した。溶出液の1/10量をニトロセルロースメンブレンにスポットし、上記試験例2と同様に、pPERK(3S)抗体とDDDDK−tag抗体を用いた免疫反応によってスポットを検出した。
(結果)
図13に示すように、無刺激の細胞(レーン1)又はグルコース不含培地に順化させた細胞(レーン2)ではpPERK(3S)抗体によるシグナルが検出されなかった。一方、CCCPで刺激した細胞(レーン3)では、pPERK(3S)抗体による明確なシグナルが検出された。CCCPの代わりに被験物質を作用させてpPERK(3S)抗体のシグナルを検出することで、当該被験物質をPERK3Sのリン酸化誘導因子又はミトコンドリア機能改善剤として同定できる。
(試験例6:PERKを介した熱産生の制御)
β3アドレナリン受容体刺激時の熱産生におけるPERKの機能を解析した。day −2において、sictrl又はsiPERK(MSS203819)を未分化細胞に導入した。24時間後のsiPERK細胞にレトロウイルスを用いて、PERK−ΔLD又はPERK−ΔLD−3SAを発現させ、分化誘導を行った。day 5まで培養し、ガラスボトムディッシュに細胞を播種した。24時間後(day 6)、細胞をPBSで1回、0.5%グルコース溶液で1回洗浄し、温度センサープローブ溶液(0.04%Cellular Thermoprobe for Fluorescence(フナコシ社製)、5%グルコース)を10分間遮光しながら室温に静置することでプローブを細胞に取り込ませた。
細胞を0.5μM CL316,243で刺激後、10分毎に共焦点レーザー顕微鏡(TSC−SP8、Leica社製)で撮影し、蛍光像を取得した。画像解析ソフト(Image J)を用いて蛍光像から蛍光強度を測定し、細胞内の温度変化を算出した(sictrlが20細胞、siPERKが19細胞、siPERK+PERK−ΔLDが21細胞、siPERK+PERK−ΔLD−3SAが18細胞)。検定処理では反復測定分析を行った。
(結果)
図14は、各細胞の蛍光強度を示す。sictrlで確認されたCL316,243刺激による細胞内温度の上昇がPERKの発現を抑制することで抑制された(siPERK)。PERKの発現抑制によって上昇が抑制された細胞内温度は、外因性のPERK−ΔLDの発現で上昇したが(siPERK+PERK−ΔLD)、PERK−ΔLD−3SAではほとんど上昇しなかった(siPERK+PERK−ΔLD−3SA)。本試験例の結果及び試験例4の結果によって、PERKのキナーゼインサート内の3個のセリン残基のリン酸化によって制御されるミトコンドリア発生が熱産生に必須であることが示された。
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等な発明の意義の範囲内で施される様々な変形が本発明の範囲内とみなされる。
本発明は、細胞の状態判定、品質管理、及び薬剤のスクリーニング方法に好適である。

Claims (7)

  1. PKR−like endoplasmic reticulum kinaseのキナーゼインサートのN末端側からC末端側に向かってRSRSFSVで示されるアミノ酸配列における少なくとも1個のリン酸化されたセリン残基を認識して、前記PKR−like endoplasmic reticulum kinaseに結合する、
    プローブ。
  2. 抗体である、
    請求項1に記載のプローブ。
  3. 請求項1又は2に記載のプローブを備える、
    ミトコンドリアの状態判定用キット。
  4. 細胞において、PKR−like endoplasmic reticulum kinaseのキナーゼインサートのN末端側からC末端側に向かってRSRSFSVで示されるアミノ酸配列における少なくとも1個のリン酸化されたセリン残基を検出する検出ステップを含む、
    ミトコンドリアの状態判定方法。
  5. 前記細胞は、
    褐色脂肪細胞である、
    請求項4に記載のミトコンドリアの状態判定方法。
  6. 細胞を被験物質に暴露する暴露ステップと、
    前記細胞において、PKR−like endoplasmic reticulum kinaseのキナーゼインサートのN末端側からC末端側に向かってRSRSFSVで示されるアミノ酸配列における少なくとも1個のリン酸化されたセリン残基を検出する検出ステップと、
    前記検出ステップの結果に基づいて前記被験物質を選択する選択ステップと、
    を含む、ミトコンドリア機能改善剤のスクリーニング方法。
  7. 前記細胞は、
    褐色脂肪細胞である、
    請求項6に記載のミトコンドリア機能改善剤のスクリーニング方法。
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