JP2020092651A - 脱細胞化用界面活性剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来の界面活性剤とは異なる界面活性剤である脂肪酸又はその塩を用いて、損傷が少なく臓器又は組織を脱細胞化する方法、該方法により、脱細胞化臓器又は組織を製造する方法の提供。脱細胞化臓器又は組織を再細胞化することで、生体適合性が高い、再細胞化臓器又は組織を製造する方法の提供。【解決手段】臓器又は組織に、炭素数8〜22の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪酸又はその塩を接触させる工程を含む、該臓器又は組織を脱細胞化する方法、及び該方法により臓器又は組織を脱細胞化する工程を含む、脱細胞化された臓器又は組織の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、臓器又は組織を脱細胞化する方法、及び該脱細胞化方法を用いて、脱細胞化臓器又は組織を製造する方法、並びに該脱細胞化臓器又は組織を用いて、再細胞化された臓器又は組織を製造する方法に関する。
移植医療分野において、脱細胞臓器骨格を、自己の細胞により再細胞化した再細胞化臓器に大きな期待が寄せられている。脱細胞組織骨格は、動物やヒトの組織や臓器から比較的容易に得られるため、医療用素材として実臨床で広く使用されている。医療用素材として、心臓血管外科の領域では、豚や牛由来の生体弁(HANCOK II(登録商標)、PERIMOUNT Magna(登録商標)、ヒト生体弁(Synegraft)(登録商標)などが用いられ、整形形成外科の領域では、ヒト由来皮膚(AlloDerm(登録商標)、豚小腸(OASIS(登録商標)、人工骨(AlloCraft C-Ring(登録商標)などが用いられている。臨床で使用されるこれらの医療用素材に「自己の細胞」を生着させると、理論上は、他種の臓器から自己の臓器が作製可能になる。この技術の最も重要な特徴は、微細な3次元構造を保ったまま臓器骨格を得ることが可能な点である。もう一つの特徴は免疫原性に関する点であり、自己の細胞による再細胞化によって、免疫原性を最小限にした再細胞化臓器を創出できる。免疫原性のない臓器の創出は、免疫抑制剤を必要としない移植医療へつながる。
臓器を脱細胞化する方法として、凍結融解、超高圧力、超音波などの物理的手法、アルカリや界面活性剤などの化学的手法、トリプシンなどの酵素による手法などさまざまな方法があるが、中でも、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、CHAPS、TritonX-100などの界面活性剤を用いる手法が着目されている(例えば、特許文献1、2)。しかしながら、これらの界面活性剤は高価であり、また生体組織に対して高い傷害性を有する。例えば、上記界面活性剤を使用した肺脱細胞化組織骨格では、細胞外マトリックス(ECM)のコラーゲンの減少は30%程度と比較的保たれるものの、エラスチンは60%程度、グリコサミノグリカンは90%も減少することが知られている(非特許文献1)。
国際公開第2010/120539号公報 国際公開第2012/031162号公報
Tsuchiya T. et al., Organogenesis, 10(2): 196-207 (2014)
上記の通り、SDSなどの界面活性剤は生体組織に対して高い傷害性を有するため、該界面活性剤を用いて再細胞化された臓器は、生体適合性が低く、再細胞化効率も低いとの問題がある。従って、本発明の課題は、上記界面活性剤とは異なる界面活性剤である脂肪酸又はその塩を用いて、損傷が少なく臓器又は組織を脱細胞化する方法、該方法により、脱細胞化臓器又は組織を製造する方法を提供することである。また、脱細胞化臓器又は組織を再細胞化することで、生体適合性が高い、再細胞化臓器又は組織を製造する方法を提供することである。
本発明者らは、鋭意研究を重ねてきた結果、細胞毒性が低く、界面活性作用のある脂肪酸塩を用いることで、上記課題を解決できるのではないかとの着想を得た。この脂肪酸塩の1つとして、SDSと同じ長さの親油基を持つ直鎖の脂肪酸をもつ脂肪酸塩、特にラウリン酸塩に着目した。ラウリン酸塩は、自然界にあるココナッツオイルやヤシ油に含まれる主な酸であるラウリン酸をアルカリ剤で中和した界面活性剤であり、安価で保存性に優れ、抗菌活性を持ち、毒性は非常に低いため、石鹸、ボディソープ、ハンドソープなどの身体用の洗浄剤に多く用いられている。また、溶解性が高いため取り扱いしやすく、起泡性が高く、高い脱細胞化効果を期待できる。このラウリン酸塩を用いて肺を脱細胞化したところ、コラーゲンやプロテオグリカンなどの細胞外マトリックスが高度に維持され、播種した細胞の接着性に優れ、細胞増殖にも有利に働くことを見出した。さらに、この脱細胞化肺を腹腔内に移植すると、免疫反応はSDSで脱細胞化されたものより有意に低いことを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1] 臓器又は組織に、炭素数8〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪酸又はその塩を接触させる工程を含む、該臓器又は組織を脱細胞化する方法。
[2] 前記脂肪酸又はその塩が直鎖状の飽和脂肪酸若しくは不飽和脂肪酸、又はそれらの塩を含む、[1]に記載の方法。
[3] 前記脂肪酸又はその塩がラウリン酸又はその塩を含む、[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 前記臓器又は組織が、心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓、腸、筋肉、皮膚、***、食道、気管、並びにそれらの組織からなる群より選択される臓器又は組織である、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5] 前記臓器又は組織が肺又は肺組織である、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の方法により、臓器又は組織を脱細胞化する工程を含む、脱細胞化された臓器又は組織の製造方法。
[7] [6]に記載の方法で製造された脱細胞化臓器又は組織。
[8] [7]に記載の脱細胞化臓器又は組織を再細胞化する工程を含む、再細胞化された臓器又は組織の製造方法。
[9] 前記再細胞化がヒト細胞による再細胞化である、[8]に記載の方法。
[10] 炭素数8〜22の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪酸又はその塩を含有してなる、臓器又は組織の脱細胞化剤。
本発明の脱細胞化方法を用いると、細胞外マトリックスが高度に維持され、播種した細胞の接着性に優れ、細胞増殖にも有利に働く脱細胞化臓器又は組織を製造することができる。このようにして製造された脱細胞化臓器又は組織は、移植時に炎症反応等を引き起こさず、生体適合性も高い(例えば、出血量が低く抑えられる)。また、前記脱細胞化方法に用いる脂肪酸又はその塩は、SDS等と比べて通常安価で入手することができる。
(A〜C)ラット肺の肉眼像。(A)ラット摘出肺(Native)。(B)界面活性剤であるSDSで脱細胞化されたラット肺、(C)界面活性剤であるラウリン酸カリウム(PL)で脱細胞化されたラット肺。(D〜F)前述のものの肺胞隔壁の電子顕微鏡像。(D)ラット摘出肺(Native)。(E)界面活性剤であるSDSで脱細胞化されたラット肺、(F)界面活性剤であるラウリン酸カリウムで脱細胞化されたラット肺。SDSで脱細胞化された肺胞隔壁(E)は菲薄化しているが、ラウリン酸カリウムで脱細胞化された肺胞隔壁(F)は正常肺と同程度の厚さで微細構造が残存していた。 脱細胞骨格内に残存する血管内皮成長因子(VEGF)蛋白量(右下葉の脱細胞骨格含有量)を、SDSで脱細胞化された群とラウリン酸カリウムで脱細胞化された群とで比較したグラフ。エラーバーは、標準偏差を示す。有意差(t検定分析;*:p < 0.05)をもって、ラウリン酸カリウム群でVEGF含有量が多かった。 (A,B)ラット正常肺と脱細胞骨格内に残存する硫酸化グリコサミノグルカン量(A)、DNA量(B)を比較したグラフ。エラーバーは、標準偏差を示す。硫酸化グリコサミノグルカン量はラウリン酸カリウムで処理した群で有意差(t検定分析;**:p < 0.01)をもって残存しており、DNA量はどちらの群も同程度まで減量されていた。 (A)ラット正常肺と脱細胞肺の細胞外マトリックスタンパク免疫染色(ラミニン、フィブロネクチン、コラーゲンI、コラーゲンIVと、(B)画像解析ソフトによる解析。縦軸は平均光学密度(Mean optical density)を示す。エラーバーは、標準偏差を示す。細胞外マトリックスタンパク残存量は、いずれもラウリン酸カリウムによる脱細胞化群が、SDSによる脱細胞化群に比べ有意(t検定分析;*:p < 0.05、**:p < 0.01)に多かった。 (A,B)脱細胞化肺の組織骨格粉末を混ぜた培地内で、血管内皮細胞(A;RLMVEC)と脂肪幹細胞(B; ADSC)をそれぞれ培養し、増殖状況を72時間経過観察したグラフ(Medium:培地のみ、SDS:培地とSDSによる脱細胞化肺の組織骨格粉末、PL:培地とラウリン酸カリウムによる脱細胞化肺の組織骨格粉末)。エラーバーは、標準偏差を示す。(C,D)上記条件による培養72時間の時点での血管内皮(C)と脂肪幹細胞(D)の増殖率を比較したグラフ。両細胞ともにラウリン酸カリウム群、SDS群、培地群の順に細胞の増殖率は高く、特に血管内皮細胞(A,C; RLMVEC)では、より細胞増殖への効果が高い(t検定分析;*:p < 0.05、**:p < 0.01)。 脱細胞化肺(SDS又はラウリン酸カリウムで脱細胞化)そのものをラット腹腔内へ移植し、2週間後に観察した。(A, B)肉眼像。(C, D)ヘマトキシリン・エオジン染色。(E, F)抗ヒトマクロファージモノクローナル抗体(抗CD68抗体)を用いた免疫染色。ラウリン酸カリウムで脱細胞化された肺では、中心部に肺胞構造が残存しているが、SDSで脱細胞化された肺では、線維化組織に置き換わっていた。 (A)ラット摘出肺、再細胞化肺のヘマトキシリン・エオジン染色像と、(B)画像解析ソフトによる解析。エラーバーは、標準偏差を示す。ラウリン酸カリウム(PL)を用いた脱細胞化組織骨格を使用した再細胞化肺の方が、SDSを用いた脱細胞化組織骨格よりも、有意差(t検定分析;*:p < 0.05)をもって、多くの細胞が均一に生着していた。 (A)再細胞化肺(SDS;SDSによる脱細胞化肺を使用、PL;ラウリン酸カリウムを用いた脱細胞肺を使用)の、抗CD31抗体、抗コラーゲンIV抗体による、蛍光免疫染色像と、(B)画像解析ソフトによる解析。エラーバーは、標準偏差を示す。ラウリン酸カリウムを使用した群の方が、肺の末梢の胸膜下まで、細胞が均等に生着していることが観察できた。ラウリン酸カリウム(PL)を用いた脱細胞化組織骨格を使用した再細胞化肺の方が、SDSを用いた脱細胞化組織骨格より、有意差(t検定分析;*:p < 0.05)をもって、コラーゲンIVの染色面積当たりのCD31の染色面積が広かった。 再細胞肺を同種ラット(Fischer 344)に移植し、30分間観察した。ラウリン酸カリウム(PL)を用いた脱細胞化組織骨格を使用した再生肺は、肺胞出血が緩やかで、肺循環も保たれていたが、SDSを用いた脱細胞化組織骨格を使用した再生肺では、肺胞出血が強く、血栓形成も著しかった。
1.脂肪酸又はその塩を用いた臓器又は組織の脱細胞化方法
本発明は、(1)臓器又は組織に、脂肪酸又はその塩を接触させる工程を含む、該臓器又は組織を脱細胞化する方法(以下「本発明の脱細胞化方法」と称することがある。)を提供する。また、本発明の脱細胞化方法を用いて、脱細胞化された臓器又は組織(以下「脱細胞化臓器等」と称することがある。)を製造する方法(以下「本発明の脱細胞化臓器等の製法」と称することがある。)を提供する。
本明細書において、「脱細胞化」とは、生体臓器又は組織から細胞成分を除去することを意味し、「脱細胞化された臓器又は組織」とは、生体臓器又は組織から細胞成分が除去された三次元構造を有する、細胞外マトリクスを主成分とする骨格を意味する。脱細胞化において、細胞成分は完全に除去されていてもよいが、必ずしも細胞成分が完全に除去されている必要はなく、脱細胞化前の生体臓器又は組織と比較して細胞成分が減少している場合も脱細胞化という。
SDS、CHAPS及びTritonX-100などは強力な界面活性剤であるので、動物由来の組織や臓器に存在する細胞を損傷させやすい。一方で、下述の実施例で示す通り、上記界面活性剤と比較して細胞に対する毒性が低いラウリン酸カリウムを用いたところ、細胞外マトリックスが高度に維持され(即ち、脱細胞化に伴う細胞外マトリックスの減少が抑えられる)、播種した細胞の接着性に優れ、細胞増殖にも有利に働く脱細胞化臓器を作製することが可能であった。よって、ラウリン酸と同様の性質、即ち親油性基である炭化水素基、及び親水性基であるカルボキシル基を有し、細胞への毒性がラウリン酸と同程度である脂肪酸又はその塩も、同様に用いることができる。
本発明の脱細胞化方法に用いる脂肪酸(以下「本発明の脂肪酸」と称することがある。)としては、具体的には、炭素数8〜22(即ち、炭素数が8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21又は22)の脂肪酸が挙げられる。前記脂肪酸は、飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であってもよく、また、直鎖状脂肪酸であっても分岐鎖状脂肪酸であってもよい。常温あるいは摂氏40度以下で液状となる脂肪酸が好ましく、直鎖状の飽和脂肪酸の場合、炭素数は14以下であることが好ましい。分岐鎖状の脂肪酸の場合、分岐鎖の数は、1〜2個であることが好ましい。直鎖状の飽和脂肪酸としては、例えば、炭素数8のカプリル酸、炭素数9のペラルゴン酸、炭素数10のカプリン酸、炭素数11のウンデシル酸、炭素数12のラウリン酸、炭素数13のトリデシル酸、炭素数14のミリスチン酸などが挙げられるが、中でも、ラウリン酸が好ましい。また、直鎖状の不飽和脂肪酸の不飽和結合数は特に限定されず、モノ不飽和脂肪酸、ジ不飽和脂肪酸及びトリ不飽和脂肪酸のいずれであってもよく、4個以上の不飽和結合を有する脂肪酸であってもよい。モノ不飽和脂肪酸としては、例えば、炭素数が8の脂肪酸(例:2−オクテン酸、3−オクテン酸、4−オクテン酸、5−オクテン酸、6−オクテン酸、7−オクテン酸)、炭素数が9の脂肪酸(例:2−ノネン酸、3−ノネン酸、4−ノネン酸、5−ノネン酸、6−ノネン酸、7−ノネン酸、8−ノネン酸、)、炭素数が10の脂肪酸(例:2−デセン酸、3−デセン酸、4−デセン酸、5−デセン酸、6−デセン酸、7−デセン酸、8−デセン酸、9−デセン酸)、炭素数が11の脂肪酸(例:2−ウンデセン酸、3−ウンデセン酸、4−ウンデセン酸、5−ウンデセン酸、6−ウンデセン酸、7−ウンデセン酸、8−ウンデセン酸、9−ウンデセン酸、10−ウンデセン酸)、炭素数が12の脂肪酸(例:2−ドデセン酸、3−ドデセン酸、4−ドデセン酸、5−ドデセン酸、6−ドデセン酸、7−ドデセン酸、8−ドデセン酸、9−ドデセン酸、10−ドデセン酸、11−ドデセン酸)、炭素数13の脂肪酸(例:2−トリデセン酸、3−トリデセン酸、4−トリデセン酸、5−トリデセン酸、6−トリデセン酸、7−トリデセン酸、8−トリデセン酸、9−トリデセン酸、10−トリデセン酸、11−トリデセン酸、12−トリデセン酸)、炭素数が14の脂肪酸(2−テトラデセン酸、3−テトラデセン酸、4−テトラデセン酸、5−テトラデセン酸、6−テトラデセン酸、7−テトラデセン酸、8−テトラデセン酸、9−テトラデセン酸、10−テトラデセン酸、11−テトラデセン酸、12−テトラデセン酸、13−テトラデセン酸)、炭素数が15の脂肪酸(2−ペンタデセン酸、3−ペンタデセン酸、4−ペンタデセン酸、5−ペンタデセン酸、6−ペンタデセン酸、7−ペンタデセン酸、8−ペンタデセン酸、9−ペンタデセン酸、10−ペンタデセン酸、11−ペンタデセン酸、12−ペンタデセン酸、13−ペンタデセン酸、14−ペンタデセン酸、)、炭素数が16の脂肪酸(2−ヘキサデセン酸、3−ヘキサデセン酸、4−ヘキサデセン酸、5−ヘキサデセン酸、6−ヘキサデセン酸、7−ヘキサデセン酸、8−ヘキサデセン酸、9−ヘキサデセン酸、10−ヘキサデセン酸、11−ヘキサデセン酸、12−ヘキサデセン酸、13−ヘキサデセン酸、14−ヘキサデセン酸、15−ヘキサデセン酸)、炭素数が17の脂肪酸(2−ヘプタデセン酸、3−ヘプタデセン酸、4−ヘプタデセン酸、5−ヘプタデセン酸、6−ヘプタデセン酸、7−ヘプタデセン酸、8−ヘプタデセン酸、9−ヘプタデセン酸、10−ヘプタデセン酸、11−ヘプタデセン酸、12−ヘプタデセン酸、13−ヘプタデセン酸、14−ヘプタデセン酸、15−ヘプタデセン酸、16−ヘプタデセン酸)、炭素数が18の脂肪酸(2−オクタデセン酸、3−オクタデセン酸、4−オクタデセン酸、5−オクタデセン酸、6−オクタデセン酸、7−オクタデセン酸、8−オクタデセン酸、9−オクタデセン酸、10−オクタデセン酸、11−オクタデセン酸、12−オクタデセン酸、13−オクタデセン酸、14−オクタデセン酸、15−オクタデセン酸、16−オクタデセン酸、17−オクタデセン酸)、炭素数が19の脂肪酸(2−ノナデセン酸、3−ノナデセン酸、4−ノナデセン酸、5−ノナデセン酸、6−ノナデセン酸、7−ノナデセン酸、8−ノナデセン酸、9−ノナデセン酸、10−ノナデセン酸、11−ノナデセン酸、12−ノナデセン酸、13−ノナデセン酸、14−ノナデセン酸、15−ノナデセン酸、16−ノナデセン酸、17−ノナデセン酸、18−ノナデサン酸)、炭素数が20の脂肪酸(2−イコサエン酸、3−イコサエン酸、4−イコサエン酸、5−イコサエン酸、6−イコサエン酸、7−イコサエン酸、8−イコサエン酸、9−イコサエン酸、10−イコサエン酸、11−イコサエン酸、12−イコサエン酸、13−イコサエン酸、14−イコサエン酸、15−イコサエン酸、16−イコサエン酸、17−イコサエン酸、18−イコサエン酸、19−イコサエン酸)、炭素数が21の脂肪酸(2−ヘンイコサエン酸、3−ヘンイコサエン酸、4−ヘンイコサエン酸、5−ヘンイコサエン酸、6−ヘンイコサエン酸、7−ヘンイコサエン酸、8−ヘンイコサエン酸、9−ヘンイコサエン酸、10−ヘンイコサエン酸、11−ヘンイコサエン酸、12−ヘンイコサエン酸、13−ヘンイコサエン酸、14−ヘンイコサエン酸、15−ヘンイコサエン酸、16−ヘンイコサエン酸、17−ヘンイコサエン酸、18−ヘンイコサエン酸、19−ヘンイコサエン酸、20−ヘンイコサエン酸)、炭素数が22の脂肪酸(2−ドコエン酸、3−ドコエン酸、4−ドコエン酸、5−ドコエン酸、6−ドコエン酸、7−ドコエン酸、8−ドコエン酸、9−ドコエン酸、10−ドコエン酸、11−ドコエン酸、12−ドコエン酸、13−ドコエン酸、14−ドコエン酸、15−ドコエン酸、16−ドコエン酸、17−ドコエン酸、18−ドコエン酸、19−ドコエン酸、20−ドコエン酸、21−ドコエン酸)、が挙げられる。上記脂肪酸は、トランス体の脂肪酸を上げたが、対応するシス体の脂肪酸(即ち、各化合物名の頭に「(Z)−」を付加したもの)も同様に用いることができる。ジ不飽和脂肪酸としては、上記モノ不飽和脂肪酸の単結合の1つが二重結合(トランス体でもシス体でもよい)となったもの、トリ不飽和脂肪酸としては、上記モノ不飽和脂肪酸の単結合の2つが二重結合(各々トランス体でもシス体でもよい)となったものが挙げられる。具体的には、ジ不飽和脂肪酸として、炭素数18のリノール酸、炭素数20のエイコサジエン酸、炭素数22のドコサジエン酸などが挙げられ、トリ不飽和脂肪酸としては、炭素数18のα−リノレン酸、β−リノレン酸、ピノレン酸、α−エレオステアリン酸、β−エレオステアリン酸、炭素数20のミード酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサトリエン酸などが挙げられる。分岐鎖状の飽和脂肪酸としては、例えば、炭素数5〜20の分岐鎖脂肪酸が挙げられる。前記分岐鎖脂肪酸としては、例えば、炭素鎖数5のイソペンタン酸、炭素数6のイソヘキサン酸(イソカプロン酸)、炭素数7のイソヘプタン酸、炭素数8のイソオクタン酸、炭素数9のイソノナン酸、炭素数10のイソデカン酸、炭素数11のイソウンデカン酸、炭素数12のイソドデカン酸、炭素数13のイソトリデカン酸、炭素数14のイソテトラデカン酸、炭素数15のイソペンタデカン酸、炭素数16のイソヘキサデカン酸、炭素数17イソヘプタデカン酸、炭素数18のイソオクタデカン酸、炭素数19のイソノナデカン酸、炭素数20のイソイコサン酸、炭素数21のイソヘンイコサン酸、炭素数22のドコサン酸が挙げられる。分岐鎖状の不飽和脂肪酸としては、例えば、上記分岐鎖脂肪酸の単結合の少なくとも1つが二重結合(各々トランス体でもシス体でもよい)となったものが挙げられる。上記本発明の脂肪酸には、フリー体も包含されるものとする。これらの脂肪酸は、それぞれ単独で用いてもよく、あるいは2種以上を適宜組合せて用いてもよい。
本発明の脱細胞化方法に用いる脂肪酸の塩としては、脂肪酸の種類によって異なるが、例えば、アルカリ金属塩(脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム等)、アルカリ土類金属塩(例えば、脂肪酸マグネシウム、脂肪酸カルシウム、脂肪酸バリウム等)、及びアンモニア塩(脂肪酸アンモニウム)の他、上記脂肪酸とアミン類、ヒドロキシルアミン類、イミン類、グアニジン類、アミンオキシド類、アルカノールアミン類、アルコキシル化アミン類、および、アルキルアミン類(ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、アミノブタノール、アミノエチルプロパンジオール、アミノメチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオール、イソプロピルアミン、メチルエタノールアミン、ジイソプロピルアミン、ジプロピレントリアミン、グルカミン、N−メチルグルカミン、モルフォリン、トロメタミン)、コカミン類、ソイアミン類、オレアミン類、ステアラミン類、クオテルニウム類などの有機アミンとの反応物を例示することができる。好ましくは上記本発明の脂肪酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩であり、より好ましくは該脂肪酸のアルカリ金属塩である脂肪酸ナトリウム塩、又は脂肪酸カリウムである。具体的には、ラウリン酸ナトリウム又はラウリン酸カリウムが好まく、特にラウリン酸カリウムが好ましい。
上記脂肪酸又はその塩は、市販品を用いてもよく、自体公知の方法により製造してもよい。例えば、脂肪酸は、天然油脂を分解することで製造することもできる。また、飽和脂肪酸を不飽和化することで、不飽和脂肪酸を製造することができる。これらの脂肪酸を、例えば、アルカリ剤で中和することで、脂肪酸塩を製造することができる。
本発明の脱細胞化方法に用いる臓器又は組織(以下「臓器等」と称することがある。)としては、特に限定されないが、心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓、腸、筋肉、皮膚、***、食道、気管、及びそれらの組織などが挙げられる。本明細書において、臓器には、臓器全体だけでなく、臓器の一部(例:心臓の弁等)も包含されるものとする。また、臓器等の由来としては、特に限定されないが、哺乳動物(例:マウス、ラット、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ウサギ、カンガルー、サル及びヒト)が挙げられる。
臓器等と、本発明の脂肪酸及び/又はその塩との接触は、該臓器等の少なくとも一部が脱細胞化できる限り特に限定されないが、例えば、本発明の脂肪酸及び/又はその塩を含む脱細胞化溶液(以下「本発明の脱細胞化溶液」と称することがある。)を用いて、灌流法により接触させることができる。灌流法は、国際公開第2007/025233号公報、Ott et al., Nat.Med., 14(2):213-221 (2008))などを適宜参照することができる。あるいは、上記臓器等を、本発明の脱細胞化溶液への浸漬することで接触させてもよい。この方法は、例えば、国際公開第2001/049210号公報などを参照することができる。従って、本発明の一実施態様において、上記本発明の脱細胞化溶液を、臓器又は組織の脱細胞化剤として用いることができる。
より詳細に説明すれば、例えば、工程(1)は、臓器等に存在する血管とチューブをつなぎ、本発明の脱細胞化溶液を該臓器等に灌流させることにより行うことができる。この際、脱細胞化溶液の灌流は、公知のチュービングポンプを用いることが好ましい。本工程を経ることで、臓器等から細胞を取り除くことができる。工程(1)の臓器又は組織と、脂肪酸及び/又はその塩との接触時間は、6〜48時間であることが好ましく、9〜12時間であることがより好ましい。また、臓器等と本発明の脱細胞化溶液との接触時の灌流液の温度は、特に限定されないが、例えば、4〜40℃が好ましく、20〜38℃がより好ましい。
本発明の脱細胞化溶液に含まれる、本発明の脂肪酸及び/又はその塩の含有量(2種以上用いる場合は合計量)は、0.005重量%〜0.1重量%が好ましく、0.01重量%〜0.05%重量がさらに好ましい。
本発明の脱細胞化溶液には、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに通常の脱細胞化溶液に使用されるその他の成分を配合することができる。その他の成分としては、例えば、水(例:イオン交換水、蒸留水、水道水等)、緩衝剤、キレート剤、防腐剤、抗菌剤又は殺菌剤、及び酸化防止剤(以下、これらを「他の添加剤」と称することがある。)などが挙げられるが、これらに限定されない。
緩衝剤としては、溶液内のpHを一定に保つ緩衝作用のあるものであれば特に限定されないが、例えば、ホウ酸、リン酸、酢酸、Tris、HEPES、硫酸、塩酸、クエン酸、乳酸、ピルビン酸、蟻酸、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、1−ヒドロキシエタン−1、1−ジホスホン酸ナトリウム等が挙げられる。防腐剤としては、例えば、塩化ポリドロニウム、アルキルポリアミノエチルグリシン類(例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシンなど)、安息香酸ナトリウム、エタノール、第四級アンモニウム塩(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなど)、グルコン酸クロルヘキシジンなどが挙げられる。抗菌剤又は殺菌剤としては、例えば、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾールジエタノールアミン、スルフイソキサゾールモノエタノールアミン、スルフイソメゾールナトリウム、スルフイソミジンナトリウムのようなサルファ剤、アルキルポリアミノエチルグリシン、クロラムフェニコール、オフロキサシン、ノルフロキサシン、レボフロキサシン、塩酸ロメフロキサシンなどが挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール、ソルビン酸、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、エリソルビン酸、L−システイン塩酸塩などが挙げられる。
本発明の脱細胞化溶液が、緩衝剤及びキレート剤を含む場合、その含有量は、用いる臓器等の由来や種類、並びに、必要により用いる他の添加剤の種類及び含有量に応じて調整することができるが、本発明の脱細胞化溶液に含まれる、緩衝剤及びキレート剤の含有量(2種以上用いる場合は合計量)は、それぞれ1.0重量%以下であることが好ましい。
本発明の脱細胞化溶液は、本発明の脂肪酸及び/又はその塩に、水及び必要により用いるその他の成分を均一に混合することで得ることができる。また、脂肪酸及び/又はその塩、水及び必要により用いるその他の成分の混合順序に制限はない。また、これらの物質を均一に混合する方法としては、公知の混合装置(転倒型撹拌混合機及び回転式撹拌羽根付きの混合容器等)等を用いる方法等が挙げられ、均一に混合する温度は通常30〜50℃であることが好ましく、より好ましくは35〜40℃である。
本発明の脱細胞化方法は、工程(1)の前に、臓器等を、緩衝溶液を用いて洗浄する洗浄工程、及び/又は臓器等を凍結し、融解する凍結融解工程を含んでいてもよい。
洗浄工程を行う場合、臓器等の洗浄は、例えば、臓器等が有する血管とチューブをつなぎ、緩衝溶液を該臓器等に灌流させることにより行うことができる。この際、緩衝溶液の灌流は、公知のチュービングポンプを用いることが好ましい。洗浄工程で用いる緩衝溶液としては、溶液内のpHを一定に保つ(例えば、pHを4.0〜9.0に保つ)緩衝作用のあるものであれば特に限定されないが、好ましくはリン酸緩衝溶液であり、緩衝溶液はヘパリン等の抗凝固薬を含んでいることがさらに好ましい。
凍結融解工程を行う場合、凍結させる条件は、−10〜−80℃、2〜24時間であることが好ましく、該凍結は、公知の低温フリーザーを用いて行うことができる。また、融解させる条件は、18〜27℃、4〜12時間であることが好ましく、該融解は、公知の恒温槽を用いることで行うことができる。凍結融解工程は、1回のみ行ってもよく、複数回(例:2回、3回、4回)行ってもよい。
従来の界面活性剤を用いた方法では、臓器等に残留する核酸物質を分解するため、ヌクレアーゼ酵素を含む溶液を用いて、脱細胞化した臓器等を洗浄する工程(以下「第二洗浄工程」ともいう)が必要であった。本発明によれば、上記の脂肪酸及び/又はその塩を用いることで、該第二洗浄工程を省略することもできるが、該工程を行ってもよい。
第二洗浄工程を行う場合、洗浄は、例えば、臓器等の有する血管とチューブをつなぎ、ヌクレアーゼ酵素を含む溶液を臓器等に、公知のチュービングポンプ等を用いて灌流させることで行うことができる。本工程に用いるヌクレアーゼ酵素としては、リボヌクレアーゼ等が挙げられ、デオキシリボヌクレアーゼであることが好ましい。デオキシリボヌクレアーゼを用いる場合、上記溶液中の該酵素の濃度は、特に限定されないが、500U/ml程度であることが好ましい。ヌクレアーゼ酵素を含む溶液を用いて洗浄する温度は、30〜50℃であることが好ましく、30〜40℃であることがより好ましく、洗浄する時間は、12〜48時間であることが好ましく、16〜24時間であることがより好ましい。
2.脱細胞化された臓器又は組織
本発明はまた、本発明の脱細胞化臓器等の製法により製造された脱細胞化臓器又は組織(以下「本発明の脱細胞化臓器等」と称することがある。)を提供する。本発明の脱細胞化臓器等は、界面活性剤としてSDSを用いた方法により製造された脱細胞化臓器等と比較して、(A)硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)の残存量が高い、(B)少なくとも1種のその他の細胞外マトリックス(ラミニン、フィブロネクチン、コラーゲンI、コラーゲンIV)の残存量が高い、及び(C)ゲノムDNAの残存量が同程度かそれ以下である、との性質を有し得る。また、SDSを用いた方法により製造された脱細胞化臓器等と比較して、(D)VEGFの残存量が高い、及び(E)細胞を接着させた場合、該細胞の増殖能が高い、との性質を有し得る。このような性質のため、生体に移植した場合に、生体適合性が高くなり得る。
(A)のGAGの残存量の測定は、パパインで消化した試料を、Blyscan GAG assay kitを用いて、1,9-ジメチル-メチレンブルー色素で標識し、吸光度を650nmで測定することにより、行うことができる。一実施態様において、脱細胞化していない臓器等に対して、GAGの残存量は50%以上、好ましくは60%以上である。
(B)の細胞外マトリックスの残存量の測定は、抗ラミニン抗体、抗フィブロネクチン抗体、抗コラーゲンI抗体又は抗コラーゲンIVを使用して免疫染色を行い、その後、画像解析ソフト(BZ-X Analyzer ver. BZ-H3A (Keyence))を使用し、基準信号強度以上の領域を残存部位とし、一肺胞当たりの染色領域に換算することにより、行うことができる。一実施態様において、脱細胞化していない臓器等に対して、ラミニンの残存量は70%以上であり、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上であり、フィブロネクチンの残存量は70%以上であり、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上であり、コラーゲンIの残存量は70%以上であり、好ましくは80%以上であり、コラーゲンIVの残存量は70%以上であり、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上である。
(C)のゲノムDNAの残存量の測定は、脱細胞化臓器等を、凍結乾燥処理後の臓器等から、Qiaamp DNA Mini Kit(Qiagen GmbH社)を使用してDNAを抽出し、Quant-iT PicoGreen DNA assay kit(Invitrogen)を用いて、ゲノムDNA量の測定を行い、脱細胞化臓器等の乾燥重量1mgに含まれるゲノムDNA量を算出することにより、行うことができる。一実施態様において、ゲノムDNAの残存量は、50 ng/mg以下である。
(D)のVEGFの残存量の測定は、メーカーの説明書に従い、MAGPIX(登録商標)system(Merck)を用いて行うことができる。一実施態様において、SDSを用いた方法により製造された脱細胞化臓器等と比べて、VEGFの残存量は1.5倍以上、好ましくは2.0倍以上である。
(E)の細胞の増殖能の測定は、作製した脱細胞骨格をそれぞれ粉砕し培地と混和し、該培地で血管内皮細胞、脂肪幹細胞それぞれを培養し、IncuCyteTM ZOOM Live-Cell イメージングシステム (Essen Bioscience, Ann Arbor, Mich.)を用いて増殖状況を確認し、72時間経過時点での血管内皮と脂肪幹細胞の増殖率を測定することにより、行うことができる。一実施態様において、培養開始から72時間経過後の細胞数は、SDSを用いた方法により製造された脱細胞化臓器等と比べて、1.5倍以上、好ましくは1.7倍以上、より好ましくは2倍以上となる。
3.再細胞化された臓器又は組織の製造方法
本発明はまた、本発明の脱細胞化方法により製造された臓器又は組織を再細胞化する工程を含む、臓器又は組織を再細胞化する方法、並びに該方法を用いた、再細胞化された臓器又は組織(以下「再細胞化臓器等」と称することがある。)の製造方法(以下「本発明の再細胞化臓器等の製法」と称することがある。)を提供する。
本明細書において、「再細胞化」とは、脱細胞化された臓器等に細胞を導入し、脱細胞化臓器等の一部または全体に、導入された細胞(以下「再細胞化用細胞」と称することがある。)を生着させることをいう。本発明に用いる再細胞化用細胞は、未分化細胞であってもよいし、最終分化細胞であってもよい。本明細書において、「未分化細胞」とは、細胞系譜において、最終分化に至っていない細胞を意味し、未分化細胞としては、例えば、幹細胞、前駆細胞などが挙げられる。幹細胞としては、例えば、胚性幹細胞、MUSE細胞(multilineage-differentiating stress enduring cell)、iPS細胞(induced pluripotent stem cell)、間葉系幹細胞、神経幹細胞、上皮幹細胞、肝幹細胞、生殖幹細胞、造血幹細胞、骨格筋幹細胞などが挙げられる。前駆細胞としては、例えば、血管内皮前駆細胞、血小板前駆細胞、肝臓前駆細胞、心臓前駆細胞、神経前駆細胞などが挙げられる。血小板前駆細胞としては、例えば、巨核球前駆細胞、巨核芽球、前巨核球、成熟巨核球などが挙げられる。肝臓前駆細胞としては、肝芽細胞、肝前駆細胞、肝星細胞前駆細胞、肝幹前駆細胞などが挙げられる。心臓前駆細胞としては、例えば、心筋前駆細胞などが挙げられる。神経前駆細胞としては、例えば、ニューロン前駆細胞、グリア前駆細胞などが挙げられる。細胞として未分化細胞を用いた場合、臓器内で未分化細胞を培養することで最終分化細胞への分化を行なうことができる。
本明細書において、「最終分化細胞」とは、細胞系譜において、最終分化に至った細胞を意味し、最終分化細胞としては、特に限定されないが、例えば、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、肝細胞、肝中皮細胞、胆管上皮細胞、肝星細胞、肝類洞内皮細胞、クッパー細胞、ピット細胞、血管内皮細胞、膵管上皮細胞、膵導管細胞、腺房中心細胞、腺房細胞、ランゲルハンス島、心筋細胞、線維芽細胞、平滑筋細胞、I型肺胞上皮細胞、II型肺胞上皮細胞、クララ細胞、線毛上皮細胞、基底細胞、杯細胞、神経内分泌細胞、クルチッキー細胞、尿細管上皮細胞、尿路上皮細胞、円柱上皮細胞、糸球体上皮細胞、糸球体内皮細胞、蛸足細胞、メサンギウム細胞、神経細胞、アストロサイト、ミクログリア、オリゴデンドロサイトなどが挙げられる。
再細胞化用細胞は、脱細胞化臓器等に対して同種であってもよく(例えば、ヒト細胞をヒト脱細胞化臓器等に播種する)、あるいは再細胞化用細胞は脱細胞化臓器等に対して異種であってもよい(例えば、ヒト細胞をブタ脱細胞化臓器等に播種する)。本発明の再細胞化臓器等の製法より製造された臓器等を患者に移植する場合には、再細胞化用細胞は、ヒト細胞であることが好ましく、該患者にとって「自家」の細胞であるか、HLA遺伝子型が同一若しくは実質的に同一である細胞であることがより好ましい。
再細胞化用細胞は、脱細胞化臓器等に、注射により1つ以上の位置で導入(「播種」)してもよい。さらに、2種類以上の細胞(すなわち、細胞のカクテルで、あるいは2回以上に分けて)を脱細胞化臓器等に導入することができる。2種類以上の細胞を導入する場合、例えば、脱細胞化臓器等の複数の位置で注射してもよいし、異なる細胞型の細胞を脱細胞化臓器等の異なる部分に注射してもよい。注射の代わりに、又は注射に加えて、再細胞化用細胞は、カニューレ挿入した脱細胞化臓器等に灌流により導入してもよい。
脱細胞化された臓器等の再細胞化を灌流により行う場合、例えば、下記の工程(2−1)、(2−2)又は(2−3)により行うことができる。
(2−1)再細胞化用細胞を含む灌流液を臓器等に灌流させる工程。
(2−2)再細胞化用細胞を含まない灌流液の灌流後、再細胞化用細胞を含む灌流液を臓器等に灌流させる工程。
(2−3)再細胞化用細胞を含まない灌流液の灌流後、灌流を停止させて再細胞化用細胞を灌流系内に導入し、培地を含む灌流液とともに臓器等に灌流させる工程。
上記再細胞化の工程は、複数回行ってもよく、この際細胞の種類を変えてもよい。
灌流液としては、例えば、培地、臓器保存液、生理食塩水、リンゲル液、クレブス−リンガー液などが挙げられるが、特に限定されない。培地としては、RPMI(Roswell Park Memorial Institute Medium)、MEM(Minimum Essential Media)、DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)、Ham’s F-12培地などが挙げられるが、特に限定されない。臓器保存液としては、セルシオ(Celsior)液、LPD(Low potassium dextran)液、ET-Kyoto液などの細胞外液型、ユーロ−コリンズ(Euro-Collins)液、UW(University of Wisconsin)液などの細胞内液型保存液などが挙げられるが、特に限定されない。臓器保存液は、細胞外液型保存液であってもよく、細胞内液型保存液であってもよい。灌流液には、必要に応じ、細胞の維持などに適した添加物、例えば、血漿、血清、アミノ酸などが含まれていてもよい。
灌流液と臓器等との接触時間は、灌流液を臓器等の全体に行き渡らせて十分に拡散させる観点から、5分間以上であることが好ましく、20分間以上であることがより好ましい。灌流液と臓器等との接触時間の上限は、例えば、臓器等の種類、再細胞化の度合いなどに応じて適宜決定できる。
灌流液の流速は、臓器等の灌流において一般的に用いられる流速であればよいが、0.01mL/min以上が好ましく、0.1mL/min以上がより好ましい。また、灌流液の流速は、100mL/min以下が好ましく、20mL/min以下がより好ましい。臓器等と灌流液との接触時の灌流液の温度は、特に限定されないが、例えば、4〜40℃が好ましく、20〜38℃がより好ましい。
本発明に用いる再細胞化用細胞の数は、臓器等の種類、臓器等の大きさおよび重量、並びに再細胞化用細胞の種類等の両方に依存して適宜設定することができるが、例えば、脱細胞化臓器等には、少なくとも約1,000個(例:10,000個以上、100,000個以上、1,000,000個以上、10,000,000個以上又は100,000,000個以上)の再細胞化用細胞を播種することが好ましく、あるいは臓器等(湿重量、すなわち、脱細胞化前の重量) 1mg当たり約1,000個〜約10,000,000個を播種することが好ましい。
再細胞化臓器等の具体的な製造方法については、適宜公知文献を参酌することができる。このような公知文献として、例えば、肺の場合には、Thomas H. et al., Science, 329(5991): 538-41 (2010)、Fecher D. et al., PLoS One, 11(8): e0160282 (2016)などを、肝臓の場合には、Bao J. et al., Cell Transplant, 20(5): 753-766 (2011)、Barakat O. et al., J. Surg Res, 173(1): e11-e25 (2012)、Soto-Gutierrez A. et al., Tissue Eng Part C Methods, 17(6): 677-686 (2011)、Uygun B.E. et al., Nat Med, 16(7): 814-820 (2010)などを、心臓の場合には、特許文献1、特許文献2などを、腎臓の場合には、Mireia Caralt et al., Am J Transplant, 15(1):64-75 (2015)などを、膀胱の場合には、Hwang J. et al., Acta Biomater, 53: 268-278 (2017)、White L.J. et al., Acta Biomater, 50: 207-219 (2017)などを参酌することができる。
肺の場合をより詳細に説明すれば、例えば、上皮細胞を含む細胞懸濁液を、灌流又は注射により気道区画に導入する工程、及び内皮細胞を、灌流又は注射により肺に播種する工程を含む方法により、再細胞化された肺を製造することができる。この際、播種した内皮細胞の拡散を可能にするために、内皮細胞集団の導入の間、脱細胞化肺に空気を送ることが好ましい。また、再生された血管の成熟の観点からは、内皮細胞の導入時、又はその前後において、間葉系幹細胞を導入することが好ましい。肺の再細胞化に用いる上皮細胞としては、例えば、肺胞上皮細胞(例:I型肺胞上皮細胞、II型肺胞上皮細胞)、クララ細胞、杯細胞などが挙げられるが、好ましくは肺胞上皮細胞である。内皮細胞としては、例えば、血液内皮細胞、骨髄内皮細胞、循環内皮細胞、大動脈内皮細胞、脳微小血管内皮細胞、皮膚微小血管内皮細胞、腸微小血管内皮細胞、肺微小血管内皮細胞、微小血管内皮細胞、肝類洞内皮細胞、伏在静脈内皮細胞、臍静脈内皮細胞、リンパ管内皮細胞、微小脈管内皮細胞、微小血管内皮細胞、肺動脈内皮細胞、網膜毛細血管内皮細胞、網膜微小血管内皮細胞、血管内皮細胞、臍帯血内皮細胞、肝臓類洞内皮細胞、内皮細胞コロニー形成単位(CFU-EC)、循環血管新生細胞(CAC)、循環内皮前駆細胞(CEP)、内皮コロニー形成細胞(ECFC)、低増殖能ECFC(LPP-ECFC)、高増殖ECFC(HPP-ECFC)などが挙げられるが、好ましくは肺微小血管内皮細胞(LMVEC)である。間葉系幹細胞としては、例えば、骨髄液、脂肪組織、胎盤組織、臍帯組織、歯髄などに由来する幹細胞が挙げられるが、採取する際の侵襲性が低いという点から、脂肪組織由来間葉系幹細胞(ADSC)が好ましい。
以下に、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1 ラウリン酸カリウムを用いた脱細胞化肺の作製>
方法
1.ラット肺の採取
肺は、若い成体(3ヶ月齢)の雄のフィッシャー344ラット(Charles River、Wilmington、MA)から採取した。全ての動物実験は、長崎大学動物実験委員会の承認を得て行い、長崎大学における動物実験指針に従って行った。塩酸ケタミン(90mg/kg)、イソフルラン(3〜5%)を使用して麻酔導入を行い、気管切開して16Gカニューレを挿管後、人工呼吸管理とした。麻酔はイソフルラン(2〜3%)で維持した。ヘパリン(250U/kg)を下大静脈に穿刺注入し、胸郭を切断して肺を露出させた。肺動脈より18Gカニューレを挿入し、50 U/ml ヘパリン(Sigma)及び1 μg/mlニトロプルシドナトリウム(SNP、Fluka)を含有するPBSを肺に灌流した。灌流完了後、心臓、肺及び気管を解剖し、ひとまとめにして取り出した。
2.ラット肺の脱細胞化
2−1.ラウリン酸カリウムを用いたラット肺の脱細胞化
新しく採取した肺組織をバイオリアクターに移し、37℃に保った。肺動脈圧を、脱細胞化プロセスを通してモニターし、20mmHg未満に保った。0.1%ラウリン酸カリウムを含むPBS又は0.15%ラウリン酸カリウムを含むPBSを脱細胞化溶液として用いた。イオン不含有PBSで30分間灌流した後、0.01%ラウリン酸カリウムを含む425 mlの脱細胞化溶液で、脈管構造を通じてさらに1〜2時間灌流した。その後0.05%ラウリン酸カリウムを含む脱細胞化溶液を同量用いて、同様に1〜2時間灌流し、ラット肺を脱細胞化した。脱細胞化肺を、425mlのイオン不含有PBSですすぎ、EDTAを含む、0.5%Triton 100mlで30分間灌流し、500mlのイオン不含有PBSで、計4回すすぎ、最後に5% ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)を含む、500 mlのイオン不含有PBSですすいで滅菌することで、脱細胞化された肺(脱細胞化肺)を作製した(図1C)。この脱細胞化肺は、5% ペニシリン/ストレプトマイシンを含む、200 mlのイオン不含有PBS中に保存した。
2−2.SDSを用いたラット肺の脱細胞化(比較例)
脱細胞化溶液に含まれるラウリン酸カリウムを、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)に換えた脱細胞化溶液を用いて、脱細胞化工程以外は上記と同様にして脱細胞化された肺を作製した(図1B)。脱細胞化工程は、イオン不含有PBSで30分間灌流した後、0.01%SDSを含む425 mlの脱細胞化溶液で、脈管構造を通じてさらに1〜2時間灌流した。その後、0.05%SDSを含む脱細胞化溶液を同量用いて、同様に1〜2時間灌流し、最後に0.1%SDSを含む脱細胞化液を同量用いて、同様に1〜2時間灌流し、ラット肺を脱細胞化した。
結果
SDSで脱細胞化された肺胞隔壁(図1E)は菲薄化しているが、ラウリン酸カリウムで脱細胞化された肺胞隔壁(図1F)は正常肺と同程度の厚さで微細構造が残存していた。
<実施例2 脱細胞化肺の組織学的分析>
方法
1.走査型電子顕微鏡(SEM)解析
2%グルタルアルデヒド及び2.5%パラホルムアルデヒドを含む0.1Mカコジル酸緩衝液(EMD Biosciences、Gibbstown、NJ)を用いて、試料を室温で2時間固定し、次いでカコジル酸緩衝液ですすぎ、スライスし、エタノール勾配により脱水した。試料を、さらにヘキサメチルジシラザン中で10分間脱水し、一晩乾燥させた後、金でスパッタコーティングし、JOEL JXA-8600を用いて分析した(図1D〜Fの下図)。
2.透過型電子顕微鏡(TEM)解析
4%パラホルムアルデヒドを含むPBSを用いて、試料を固定し、2%グルタルアルデヒド及び2.5%パラホルムアルデヒドを含む0.1Mカコジル酸ナトリウムで緩衝化した固定液中に室温で2時間置いた。試料を0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液ですすぎ、1% 四酸化オスミウムで1時間、後固定し、次いで2%酢酸ウラニルを含むマレイン酸緩衝液(pH 5.2)でさらに1時間染色した。次に、試料をすすぎ、エタノール勾配により脱水し、エポン樹脂を浸透させ、60℃で一晩乾燥させた。硬化したブロックをLeica UltraCut UCTを用いて切断し、60nmの切片をニッケルグリッド上に収集し、2%酢酸ウラニル及びクエン酸鉛を用いて染色した。試料を、FEI Tencai Biotwin TEM上で、80kVで観察した。iTEM(オリンパス)ソフトウェア及びMorada CCDデジタルカメラを用いて、画像を撮影した(図1D〜Fの上図)。
3.細胞外マトリックスの染色
固定、包埋された試料の脱パラフィン処置を行った後、タンパク質分解酵素処理、続いてTEバッファー(pH8.0)を使用して加熱し、賦活化処理を行った 5%BSAと 0.75%グリシンを含んだPBSを使用してブロッキング処理を行い、1時間常温で静置した。その後、抗ラミニン(abcam)、抗フィブロネクチン(abcam)、抗コラーゲンI(Novus Biologicals)、 抗コラーゲン IV(abcam)の一次抗体と4℃で一晩反応させた。標識二次抗体と5分間反応させた後、DABで発色させ、脱水、透徹、封入を行った後に画像撮影した(図4A)。
結果
図4Aのように、免疫染色により、各種細胞外タンパク質残存が確認された。全てのタンパク質において、SDSよりラウリン酸カリウムを使用した脱細胞化法の群で強く、広範囲での染色を認めた。
<実施例3 脱細胞化肺のサイトカイン、DNA及び細胞外マトリックスの残存量の測定>
方法
1.サイトカインの残存量の測定
脱細胞化肺の右下葉よりタンパク質を抽出し、Milliplex kit(Merck)を用いて、VEGFの濃度を測定した。測定はMAGPIX(登録商標)system(Merck)を使用して行い、1群あたり3個の肺について、それぞれについて3回ずつ行った。結果を図2に示す。
2.ゲノムDNAの残存量の測定
メーカーの説明書に従い、Quant-iT PicoGreen dsDNA assay kit(Invitrogen、Eugene、OR)を用いて、肺のDNA含有量を定量した(各群3個)。簡潔に述べると、組織試料を秤量し、凍結乾燥し、TE緩衝液で希釈し、Quant-iT PicoGreen試薬と混合した。485nmで励起して、蛍光を535nmで測定し、DNA含有量を、標準曲線を用いて定量した。結果を図3Bに示す。
3.細胞外マトリックスの残存量の測定
3−1.硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)の残存量の測定
コンドロイチン、デルマタン、ヘパラン及びケラタン硫酸を含む硫酸化グリコサミノグリカン(硫酸化GAG)を、Blyscan GAG assay kitを用いて定量した(各群3個)。パパインで消化した試料を、メーカーの説明書に従って測定した。簡潔に述べると、硫酸化GAGを、1,9-ジメチル-メチレンブルー色素で標識し、吸光度を650nmで測定した。結果を図3Aに示す。
3−2.ラミニンの残存量の測定
抗ラミニン抗体(abcam)を使用し、免疫染色を行った(各群3個)。その後、画像解析ソフト(BZ-X Analyzer ver. BZ-H3A (Keyence))を使用し、基準信号強度以上の領域を残存部位とし、一肺胞当たりの染色領域に換算することにより、残存タンパク質の定量とした。
3−3.フィブロネクチンの残存量の測定
抗フィブロネクチン抗体(abcam)を使用し、免疫染色を行った(各群3個)。その後、画像解析ソフト(BZ-X Analyzer ver. BZ-H3A (Keyence))を使用し、基準信号強度以上の領域を残存部位とし、一肺胞当たりの染色領域に換算することにより、残存タンパク質の定量とした。
3−4.コラーゲンの残存量の測定
抗コラーゲンI抗体(Novus Biologicals)、抗コラーゲンIV(abcam)を使用し、免疫染色を行った(各群3個)。その後、画像解析ソフト(BZ-X Analyzer ver. BZ-H3A (Keyence))を使用し、基準信号強度以上の領域を残存部位とし、一肺胞当たりの染色領域に換算することにより、残存タンパク質の定量とした。
結果
全てのタンパク質(ラミニン、フィブロネクチン、コラーゲンI、コラーゲンIV)において、有意差をもってSDS脱細胞化群よりラウリン酸カリウム脱細胞化群で残存タンパク質量が多かった(図4B)。
<実施例4 再細胞化肺の作製>
方法
1−1.脱細胞化肺の再細胞化
実施例1で作製した脱細胞化肺を培地ですすぎ、組織培養インキュベーターに移し、37℃、5%CO2の条件で培養した。新生児の上皮細胞を、約1000万個/ mlの濃縮細胞懸濁液として、気道区画に導入した。プレプレーティング工程なしで、単離直後に上皮細胞を播種した。各肺には、典型的には1億個の肺胞上皮細胞を播種し、細胞懸濁液で完全に膨張させた。細胞接着を可能にするために一晩静置培養した後、肺を、脈管構造を介して1〜4mL/minで灌流するか、又は気道を介して、10ml/minで陰圧液体呼吸を行った。肺の微小血管内皮細胞を、60cmH2Oで肺動脈、肺静脈を介して、約60万個の脂肪幹細胞と約3000万個の内皮細胞を脱細胞化肺へ播種した。播種した細胞は陰圧液体呼吸管理のもと、10%FBS及び抗生物質を含むDMEM中で、肺循環を維持しながら培養した。培養期間は、通常4〜8日間であった。
2.細胞ライブイメージング
培養器内での細胞増殖に対する脱細胞化骨格の影響を観察する目的で、IncuCyteTM ZOOM Live-Cell イメージングシステム (Essen Bioscience, Ann Arbor, Mich.)を使用し、血管内皮と脂肪幹細胞の増殖状況を観察した。SDS又はラウリン酸カリウムにより作製した脱細胞骨格をそれぞれ粉砕し培地と混和した。1)培地のみ、2)培地とSDS処理した脱細胞骨格粉末、3)培地とラウリン酸カリウム処理した脱細胞骨格粉末、の三種類の培地で血管内皮細胞、脂肪幹細胞それぞれを培養し、増殖状況を72時間の経過で観察し、血管内皮と脂肪幹細胞の増殖率を比較した(各群3個)。
結果
結果を図5に示す。血管内皮細胞、脂肪幹細胞ともにラウリン酸カリウム群、SDS群、培地群の順番に細胞の増殖が良かった。血管内皮細胞で培地環境による増殖速度の差が顕著であった。
<実施例5 再細胞化肺の組織学的分析>
方法
1.ヘマトキシリン・エオシン染色及び免疫染色
サンプルを10%ホルマリン中で4時間固定し、脱水し、パラフィンに包埋し、5μmの切片とした後、ヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色を施行した。免疫染色のために、試料を脱パラフィン化し、再水和し、0.2%Triton X-100を含むPBS中で15分間すすいだ。抗原回復を、0.01Mクエン酸(pH6.0)を用いて70℃、20分間で行った。次いで、5%BSA及び0.75%グリシンを含むPBSで、切片を室温で1時間ブロッキングした。一次抗体を、ブロッキング緩衝液中で表1に示す濃度で、4℃で一晩アプライし、続いて室温で1時間、1:200希釈で二次抗体をアプライした。二次抗体として、AlexaFluor 594ロバ抗マウス抗体(life thchnologies)、及びAlexaFluor 488ロバ抗ウサギ抗体(life thchnologies)を用いた。スライドに、DAPIを含む封入剤(Vector Labs)を用いて封入し、画像をZeiss Axiovert 200M倒立蛍光顕微鏡を用いて取得した。
結果
ラウリン酸カリウムを使用した群の方が、SDS群より肺の末梢胸膜下まで細胞が均等に生着しており、細胞の凝集も少ない。1肺胞当たりの細胞数で比較しても(各群3個)、血管内皮細胞が有意差をもって、多く生着していることがわかる。(図7,8)
<実施例6 再細胞化肺の移植>
方法
同一遺伝子の3ヶ月齢のオスFischer 344ラットを、肺移植のレシピエント動物として使用した。実験は、長崎大学における動物実験指針に従って実施した。レシピエント動物を麻酔し、挿管し、100%酸素の空気を送った。イソフルランの吸入により麻酔を維持し、動物をヘパリン(100 U/kg)で抗凝固剤処置した。左肺移植を、以下の標準的なげっ歯類の外科的技術により行った。簡潔に述べると、左側の開胸術を行い、左肺門を切開して左肺の動脈、静脈及び気管支を露出させた。レシピエントの生来の(native)左肺を結紮して除去した。左側の再細胞化肺を切開し、左肺の動脈、静脈を、カフ法を用いてレシピエントに吻合した。肺静脈、肺動脈の順番にデクランプし、30分間経過を観察し、肺循環が維持できているか、また肺胞出血の有無で再細胞肺血管の脆弱性の評価をおこなった。
結果
PL群(ラウリン酸カリウム投与群)において、肺循環を確認することができたが、SDS群でははっきりとしなかった(図9)。肺血管構造の脆弱性から、肺胞出血を両群ともに認めたが、SDS群でその傾向はより顕著であった(図9)。この原因として、PL群の方が、血管内皮細胞が血管内腔を広範囲で均一に被覆しており、それもあって血栓形成性が低かったためと推察される。
本発明により、細胞外マトリックスが高度に維持され、播種した細胞の接着性に優れ、細胞増殖にも有利に働く脱細胞化臓器又は組織を製造することができる。このようにして製造された脱細胞化臓器又は組織は、生体適合性が高いため、移植材として有用である。

Claims (10)

  1. 臓器又は組織に、炭素数8〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪酸又はその塩を接触させる工程を含む、該臓器又は組織を脱細胞化する方法。
  2. 前記脂肪酸又はその塩が直鎖状の飽和脂肪酸若しくは不飽和脂肪酸、又はそれらの塩を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記脂肪酸又はその塩がラウリン酸又はその塩を含む、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記臓器又は組織が、心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓、腸、筋肉、皮膚、***、食道、気管、並びにそれらの組織からなる群より選択される臓器又は組織である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記臓器又は組織が肺又は肺組織である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法により、臓器又は組織を脱細胞化する工程を含む、脱細胞化された臓器又は組織の製造方法。
  7. 請求項6に記載の方法で製造された脱細胞化臓器又は組織。
  8. 請求項7に記載の脱細胞化臓器又は組織を再細胞化する工程を含む、再細胞化された臓器又は組織の製造方法。
  9. 前記再細胞化がヒト細胞による再細胞化である、請求項8に記載の方法。
  10. 炭素数8〜22の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪酸又はその塩を含有してなる、臓器又は組織の脱細胞化剤。
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