JP2020092616A - モノアシルグリセロールリパーゼの製造方法 - Google Patents

モノアシルグリセロールリパーゼの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】簡便な手順でモノアシルグリセロールリパーゼを製造する方法の提供。【解決手段】枯草菌AprE又はこれに相当するプロテアーゼの活性が低減したバチルス属菌を培養してモノアシルグリセロールリパーゼを発現させることを含む、モノアシルグリセロールリパーゼの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、モノアシルグリセロールリパーゼの製造方法に関する。
モノアシルグリセロール(MAG)は、乳化剤や抗菌剤等として食品、医薬品、化粧品等の分野に広く利用されている物質である。さらに近年、MAGが、食後の血中トリグリセリドの上昇抑制、食後血中インスリン上昇抑制、食後GIP分泌抑制等の優れた生理活性を有することが見出されている。MAGは、化学的には、高温条件下、アルカリ触媒の存在下で脂肪酸とグリセリンとをエステル化する方法や、高温高圧条件下で油脂をグリセロリシスする方法などにより製造される。しかし、これらの方法では、高温処理や排水のための設備が必要である。一方、脂肪酸とグリセリンとをリパーゼの存在下で反応させるMAGの生化学的な製造方法は、より穏和な条件下で利用可能な方法として注目されている(例えば特許文献1)。この方法で用いるリパーゼとしては、モノグリセリドリパーゼ(MGLP)などの脂肪酸モノグリセリド又は脂肪酸ジグリセリドを基質として認識するリパーゼが好ましい。
MGLPについては、特許文献2に、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)H−257由来MGLPであるH−257が開示されている。また、ゲオバチルス・サーモデニトリフィカンス(Geobacillus thermodenitrificans)由来MGLPであるEstGtA2(非特許文献1)などのH−257リパーゼと近縁のMGLPが公知である。
バチルス属等の微生物由来MGLPは、それを生産する微生物を培養し、次いで培養物からMGLPを抽出することによって製造することができる。さらに、特許文献3には、H−257リパーゼの遺伝子を導入した大腸菌株を培養し、培養物からMGLPを採取することにより、MGLPを効率よく量産することができることが開示されている。しかしながら、従来の方法は、生産されたMGLPを回収するために培養した細胞を破砕する工程が必要であるため、手順が煩雑であった。
一方、目的タンパク質を高生産するよう改変された変異バチルス属菌が知られている。特許文献4には、菌体外プロテアーゼAprEをコードするaprE遺伝子が削除又は不活性化されており、かつバチルス属細菌由来アルカリセルラーゼ産生遺伝子のプロモーター領域及び分泌シグナルペプチド領域と目的タンパク質をコードする遺伝子とを含むDNA断片を保持するベクターで形質転換された組換え枯草菌を培養するタンパク質の製造方法が開示されている。特許文献5には、枯草菌のaprX遺伝子と、枯草菌のaprE、nprB、nprE、bpr、vpr、mpr、epr及びwprAから選ばれる遺伝子とを欠失又は不活性化させた微生物を宿主とし、これに異種のタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子を導入した組換え微生物を用いたタンパク質の製造方法が開示されている。特許文献6には、枯草菌168株からaprX、aprE、nprB、nprE、bpr、vpr、mpr、epr及びwprAから選択される8つ以上のプロテアーゼ遺伝子を欠失させた枯草菌変異株を用い、枯草菌エンドグルカナーゼ遺伝子bglCを発現させ、完全長BglCを枯草菌細胞外に分泌させることを特徴とする、BglCの製造法が開示されている。特許文献7には、不活性化されたaprE、nprE、epr、ispA、bpr、vpr、wprA、mpr−ybjF及びnprB遺伝子を有し、かつシグナル配列とストレプトマイセス・スブチリシン阻害剤(SSI)タンパク質の融合タンパク質をコードする核酸を含む組換えバチルス属細胞を培養することを含むSSIタンパク質を生産する方法が開示されている。特許文献8には、グルカノトランスフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質、アスパラギナーゼ等の外来タンパク質を生産するための宿主細胞として、AprE、Bpr、Epr、Mpr、NprE、Vpr及びWprAからなる群から選択される1つまたは複数のプロテアーゼをコードする遺伝子を破壊したバチルス属宿主細胞を用いることが記載されている。
特開2008−220236号公報 特開2010−183873号公報 特開平5−168468号公報 特開2004−313169号公報 特開2006−174707号公報 特開2012−115219号公報 特表2011−508610号公報 特表2016−521579号公報
PLoS ONE, 2013, 8(10):e76675
本発明は、モノアシルグリセロールリパーゼを製造する方法を提供する。
本発明者らは、天然では非分泌型のモノアシルグリセロールリパーゼの生産において、分泌型プロテアーゼAprEの活性が低減されたバチルス属菌を培養して該モノアシルグリセロールリパーゼを生産させることで、細胞を破砕する工程を行うことなく、生産されたモノアシルグリセロールリパーゼを培養上清から回収できることを見出した。
したがって、本発明は、枯草菌AprE又はこれに相当するプロテアーゼの活性が低減したバチルス属菌を培養してモノアシルグリセロールリパーゼを発現させることを含む、モノアシルグリセロールリパーゼの製造方法を提供する。
また本発明は、枯草菌AprE又はこれに相当するプロテアーゼの活性が低減されており、かつモノアシルグリセロールリパーゼをコードするポリヌクレオチドが外来的に導入されている、組換えバチルス属菌を提供する。
また本発明は、枯草菌AprE又はこれに相当するプロテアーゼの活性が低減されたバチルス属菌に、モノアシルグリセロールリパーゼをコードするポリヌクレオチドを組み込むことを含む、組換えバチルス属菌の製造方法を提供する。
本発明によれば、天然では非分泌型のモノアシルグリセロールリパーゼを、微生物細胞外に分泌生産させて、培養後の細胞を破砕する工程を行うことなく培養上清から容易に回収できることができる。本発明によれば、簡便な手順でモノアシルグリセロールリパーゼを製造することができる。
各種遺伝子欠失組換え枯草菌株の96時間培養後に得られた培養上清における相対リパーゼ活性。 各種遺伝子欠失組換え枯草菌株の96時間培養後に得られた培養上清のSDS−PAGE結果。矢印はEstGtA2のバンドを示す。 各種MGLPを発現するaprE欠失組換え枯草菌株の培養物の上清のSDS−PAGE結果。矢印は、左から、H−257、stLP、CI220−6、CI220−10、及びCI220−12のバンドを示す。
本明細書に記載の枯草菌の遺伝子の名称は、JAFAN:Japan Functional Analysis Network for Bacillus subtilis(BSORF DB)でインターネット公開([bacillus.genome.ad.jp/]、2006年1月18日更新)された枯草菌ゲノムデータに基づいて記載されている。本明細書に記載される枯草菌の遺伝子番号は、BSORF DBに登録されている遺伝子番号を表す。
本明細書において、ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の同一性は、Lipman−Pearson法(Science,1985,227:1435−1441)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx−Winのホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
本明細書において、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列に関する「少なくとも90%の同一性」とは、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらにより好ましくは98%以上、なお好ましくは99%以上の同一性をいう。
また本明細書において、制御領域と遺伝子との「作動可能な連結」とは、遺伝子と制御領域とが、該遺伝子が該制御領域の制御の下で発現し得るように連結されていることをいう。遺伝子と制御領域との「作動可能な連結」の手順は当業者に周知である。
本明細書において、遺伝子に関する「上流」及び「下流」とは、該遺伝子の転写方向の上流及び下流をいう。例えば、「プロモーターの下流に配置された遺伝子」とは、DNAセンス鎖においてプロモーターの3’側に該遺伝子が存在することを意味し、遺伝子の上流とは、DNAセンス鎖における該遺伝子の5’側の領域を意味する。
本明細書において、細胞の機能や性状、形質に対して使用する用語「本来」とは、当該機能や性状、形質が当該細胞に元から存在していることを表すために使用される。対照的に、用語「外来」とは、当該細胞に元から存在するのではなく、外部から導入された機能や性状、形質を表すために使用される。例えば、「外来」遺伝子又はポリヌクレオチドとは、細胞に外部から導入された遺伝子又はポリヌクレオチドである。外来遺伝子又はポリヌクレオチドは、それが導入された細胞と同種の生物由来であっても、異種の生物由来(すなわち異種遺伝子又はポリヌクレオチド)であってもよい。
本発明のモノアシルグリセロールリパーゼ(以下、MGLPともいう)の製造方法は、特定の分泌型プロテアーゼ(細胞外プロテアーゼともいう)の活性が低減された微生物を培養して、モノアシルグリセロールリパーゼを発現させることを含む。
本発明でMGLPの製造に使用される微生物としては、枯草菌等のバチルス属(Bacillus)菌や、クロストリジウム属(Clostridium)菌、酵母などが挙げられ、このうちバチルス属菌が好ましい。さらに、全ゲノム情報が明らかにされている点、ゲノム工学技術が確立されている点、及びタンパク質を菌体外に分泌生産させる能力を有する点などから、枯草菌又はその変異株がより好ましい。
本発明で用いる微生物において活性が低減される分泌型プロテアーゼとしては、枯草菌AprE(以下、単にAprEという)、及びこれに相当するプロテアーゼが挙げられる。AprEは、枯草菌遺伝子aprE(以下、単にaprEという)にコードされる、セリンアルカリプロテアーゼ(ズブチリシンE)である。aprEは、BSORF DBでの遺伝子番号BG10190で示される遺伝子である。
AprEに相当するプロテアーゼとしては、AprEとアミノ酸配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつAprEと同等の機能を有するプロテアーゼが挙げられ、好ましくは、aprEに相当する遺伝子にコードされる、アルカリ側に至適pHを持つセリンプロテアーゼ活性を有するポリペプチド(すなわちセリンアルカリプロテアーゼ)が挙げられる。本明細書において、aprEに相当する遺伝子とは、aprEとヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつアルカリ側に至適pHを持つセリンプロテアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子をいう。AprEに相当するプロテアーゼの具体的な例としては、バチルス・モジャベンシス(Bacillus mojavensis)のpeptidase S8、バチルス・ハロトレランス(Bacillus halotolerans)のpeptidase S8、バチルス・テキレンシス(Bacillus tequilensis)のpeptidase S8などが挙げられる。
本発明で用いる微生物は、AprE又はこれに相当するプロテアーゼの活性の低減に加えて、1種又は2種以上の他の本来のプロテアーゼの活性が低減されていてもよい。当該他の本来のプロテアーゼとしては、例えば枯草菌遺伝子epr、wprA、mpr、nprB、bpr、nprE、vpr、aprX(以下、単にepr、wprA、mpr、nprB、bpr、nprE、vpr、aprXという)、及びこれらに相当する遺伝子にコードされるプロテアーゼが挙げられる。AprE又はこれに相当するプロテアーゼとあわせてこれらの他の本来のプロテアーゼの活性を低減させることにより、細胞外へのMGLPの放出が促進され、培養上清から回収されるMGLPの収量を向上させることができる。このような微生物の例としては、aprE又はこれに相当する遺伝子が欠失又は不活性化されており、さらにepr、wprA、mpr、nprB、bpr、nprE、vpr、aprX、及びこれらに相当する遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子が欠失又は不活性化されている微生物が挙げられる。epr、wprA、mpr、nprB、bpr、nprE、vpr及びaprX、又は及びこれらに相当する遺伝子は、いずれか1つを欠失させればよいが、いずれか2種以上を組み合わせて欠失又は不活性化させてもよい。
epr、wprA、mpr、nprB、bpr、nprE、vpr、及びaprXの遺伝子番号と、それらがコードするタンパク質の機能を表1に示す。epr、wprA、mpr、nprB、bpr、nprE、vpr、及びaprXに相当する遺伝子としては、それぞれ、epr、wprA、mpr、nprB、bpr、nprE、vpr、及びaprXと、ヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつ(表1に記載される)同じ機能のタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。
AprE又はこれに相当するプロテアーゼや他の本来のプロテアーゼなどの微生物の標的タンパク質の活性の低減は、該微生物における該標的タンパク質の発現量を低減させることによって実現することができる。例えば、該微生物中の該標的タンパク質をコードする遺伝子(すなわち標的遺伝子、例えばaprE又はこれに相当する遺伝子)を欠失又は不活性化させること、該標的遺伝子から転写されたmRNAを不活性化すること、又は該標的遺伝子のmRNAからタンパク質への翻訳を阻害することなどによって該標的タンパク質の発現を抑制することで、該標的タンパク質の活性を低減させることができる。あるいは、発現した該標的タンパク質の活性を低減させてもよい。
細胞中の標的遺伝子の欠失又は不活性化は、標的遺伝子のヌクレオチド配列の一部若しくは全部をゲノム中から除去するか又は他のヌクレオチド配列と置き換えること、標的遺伝子の配列中に他のポリヌクレオチド断片を挿入すること、標的遺伝子の転写又は翻訳開始領域に変異を与えること、などによって実現することができる。好適には、標的遺伝子のヌクレオチド配列の一部若しくは全部を欠失させるか又は不活性化させる。より具体的な例としては、細胞のゲノム上の標的遺伝子を特異的に欠失又は不活性化させる方法、及び、細胞中の遺伝子にランダムな欠失又は不活性化変異を与えた後、標的タンパク質の発現量や活性評価、又は遺伝子解析を行って所望の変異を有する細胞を選択する方法が挙げられる。
標的遺伝子の特異的な欠失又は不活性化には、例えば相同組換えによる方法を用いればよい。すなわち、塩基置換や塩基挿入等によって不活性化変異を導入した標的遺伝子のDNA断片、又は標的遺伝子の外側領域を含むが標的遺伝子を含まないDNA断片を構築し、これを親微生物細胞内に組み込んで親微生物ゲノムの標的遺伝子を含む領域に相同組換えを起こさせることにより、ゲノム上の標的遺伝子を欠失又は不活性化させることが可能である。あるいは、標的遺伝子の一部領域を含むDNA断片を有する組換えベクター(プラスミド等)を親微生物細胞内に組み込み、親微生物ゲノムの標的遺伝子の一部領域を相同組換えにより分断することによって、標的遺伝子を不活性化することも可能である。細胞中の遺伝子をランダムに欠失又は不活性化させる方法としては、不活性化変異を導入した遺伝子をランダムにクローニングしたDNA断片を細胞に導入し、該細胞のゲノム上の遺伝子との間に相同組換えを起こさせる方法、細胞に紫外線、γ線等を照射して突然変異を誘発する方法などが挙げられる。遺伝子の不活性化変異とは、サイレンス変異、ミスセンス変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異等により、標的とする遺伝子が本来有する機能が失われる変異を意味する。例えば、不活性化変異を導入した遺伝子はタンパク質を発現しないか、又は本来の活性が損なわれたタンパク質を発現する。
不活性化変異を導入した標的遺伝子を含むDNA断片を作製する方法としては、部位特異的変異導入が挙げられる。部位特異的変異導入は、導入すべきヌクレオチド変異を含む変異用プライマーを用いて行うことができる。例えば、導入すべきヌクレオチド変異を含む2組のプライマーを用いた標的遺伝子を鋳型とするPCRにより、標的遺伝子を含む領域の上流側及び下流側をそれぞれ増幅したDNA断片を作製し、次いでこれらをSOE−PCR(splicing by overlap extension PCR)(Gene,1989,77(1):p61−68)により1つに連結することにより、所望の変異を含むDNA断片を構築することができる。あるいは、部位特異的変異導入には、インバースPCR法やアニーリング法など(村松ら編、「改訂第4版 新遺伝子工学ハンドブック」、羊土社、p82−88)、又はStratagene社のQuickChange II Site−Directed Mutagenesis Kitや、QuickChange Multi Site−Directed Mutagenesis Kit等の市販の部位特異的変異導入用キットを使用することもできる。
変異用プライマーは、ホスホロアミダイト法(Nucleic Acids Research,1989,17:7059−7071)等の周知のオリゴヌクレオチド合成法により作製することができる。鋳型とする標的遺伝子は、上述したMGLPの製造に使用される微生物から、常法により調製してもよく、又は化学合成してもよい。
DNA断片やベクターを微生物細胞に導入するには、例えば、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、パーテイクルガン法、PEG法等の周知の技術を適用することができる。例えばバチルス属細菌に適用可能な方法としては、コンピテントセル形質転換法(J Bacteriol,1967,93:1925−1937)、エレクトロポレーション法(FEMS Microbiol Lett,1990,55:135−138)、プロトプラスト形質転換法(Mol Gen Genet,1979,168:111−115)、Tris−PEG法(J Bacteriol,1983,156:1130−1134)などが挙げられる。
標的遺伝子が欠失又は不活性化した細胞は、そのゲノム配列を確認することにより選択することができる。あるいは、標的タンパク質の発現量又は活性を指標に、標的遺伝子が欠失又は不活性化された細胞を選択することができる。
細胞中の標的遺伝子のmRNAを不活性化させる方法としては、siRNAを用いた標的特異的なmRNA阻害が挙げられる。発現した標的タンパク質の活性を低減させる方法としては、標的タンパク質の阻害剤を用いる方法などが挙げられる。
本発明のMGLP製造に用いる微生物は、本来MGLPの生産能を有する微生物であってもよく、又はMGLP生産能を獲得もしくは向上させるように改変された微生物であってもよい。微生物のMGLP生産能を獲得もしくは向上させる方法としては、目的のMGLPをコードするポリヌクレオチドを微生物に組み込む方法が挙げられる。好ましい実施形態において、本発明のMGLP製造に用いる微生物は、製造すべき目的のMGLPをコードする外来ポリヌクレオチドが組み込まれた組換え微生物である。
本発明で製造されるMGLPの種類は、特に限定されないが、Bacterial Lypolytic Enzyme Family XV(非特許文献1)に属するMGLPが好ましい例として挙げられる。より好ましい例としては、当該Family XVに属するバチルス属菌又はゲオバチルス属菌由来の非分泌型MGLPが挙げられる。該非分泌型MGLPの好ましい例としては、ゲオバチルス・サーモデニトリフィカンス由来MGLPであるEstGtA2(GenBank:AEN92268.1、配列番号1)、バチルス・エスピーH−257由来MGLPであるH−257(PDB:4KE8、配列番号2)が挙げられる。該非分泌型MGLPの他の例としては、配列番号3のアミノ酸配列からなるゲオバチルス・ステアロサーモフィリス(Geobacillus stearothermophilus)由来MGLP(NCBI Reference Sequence:WP_053414863.1、以下stLPと呼ぶ)、配列番号4のアミノ酸配列からなるバチルス・エスピーFJAT−29814由来MGLP(NCBI Reference Sequence:WP_066306313.1、以下CI220−6と呼ぶ)、配列番号5のアミノ酸配列からなるバチルス・エスピーEB01由来MGLP(NCBI Reference Sequence:WP_04392037.1、以下CI220−10と呼ぶ)、及び配列番号6のアミノ酸配列からなるバークホルデリア・シングラリス(Burkholderia singularis)由来MGLP(GenBank:SMF98887.1、以下CI220−12と呼ぶ)が挙げられる。
本発明で製造されるMGLPのさらに好ましい例としては、配列番号1〜6のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチド、及び配列番号1〜6のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列からなり、かつモノアシルグリセロールリパーゼ活性を有するポリペプチドが挙げられる。本発明で製造されるMGLPのより好ましい例としては、配列番号1及び2のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチド、及び配列番号1及び2のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列からなり、かつモノアシルグリセロールリパーゼ活性を有するポリペプチドが挙げられる。
なお本明細書において、「モノグリセリドリパーゼ活性」とは、トリアシルグリセロールをジアシルグリセロールと脂肪酸に分解する活性及びジアシルグリセロールをモノアシルグリセロールと脂肪酸に分解する活性に比較して、より選択的にモノアシルグリセロールをグリセリンと脂肪酸に分解する活性をいうか、又はグリセリンと脂肪酸との合成反応において、トリアシルグリセロール及びジアシルグリセロールに比較して、より選択的にモノアシルグリセロールを合成する活性をいう。
上記Bacterial Lypolytic Enzyme Family XVに属するMGLPは、非特許文献1に記載の通り、Lipase Engineering Database([www.led.uni-stuttgart.de/])におけるFamily abH11.03と配列相同性の面で同等であることが提唱されている。したがって、本発明で製造されるMGLPの種類の別の好ましい例としては、当該Family abH11.03に属するMGLPが挙げられる。
本発明で用いる微生物に組み込まれる目的のMGLPをコードするポリヌクレオチドは、上述した本発明で製造されるMGLPをコードするものであればよい。必要に応じて、当該ポリヌクレオチドは、それを組み込んで発現させる細胞におけるコドン使用頻度にあわせてコドン至適化されている。各種生物が使用するコドンの情報は、Codon Usage Database([www.kazusa.or.jp/codon/])から入手可能である。例えば、枯草菌用にコドン至適化した配列番号1〜6のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、それぞれ、配列番号7〜12のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドである。
好ましくは、該MGLPをコードするポリヌクレオチドは、遺伝子の転写又は翻訳に関わる制御領域と作動可能に連結されている。該制御領域としては、転写開始制御領域及び翻訳開始制御領域が挙げられる。転写開始制御領域としては、プロモーター及び転写開始点が挙げられる。翻訳開始領域としては、リボソーム結合部位及び開始コドンが挙げられる。好ましくは、該MGLPをコードするポリヌクレオチドは、転写開始制御領域及び翻訳開始制御領域からなる群より選択される1以上の領域と作動可能に連結されている。より好ましくは、該MGLPをコードするポリヌクレオチドは、転写開始制御領域及び翻訳開始制御領域と作動可能に連結されている。一方、該MGLPをコードするポリヌクレオチドは、タンパク質の分泌に関わる領域(例えば分泌シグナルペプチド)と連結されている必要はなく、好ましくは、該タンパク質の分泌に関わる領域と連結されていない。
該制御領域の例としては、バチルス属細菌由来のα−アミラーゼ遺伝子の制御領域、プロテアーゼ遺伝子の制御領域、aprE遺伝子の制御領域、spoVG遺伝子の制御領域、バチルス・エスピーKSM−S237株のセルラーゼ遺伝子(特開2000−210081号公報)の制御領域、バチルス・エスピーKSM−64株のセルラーゼ遺伝子(特開2011−103875公報)の制御領域、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)由来のカナマイシン耐性遺伝子の制御領域、クロラムフェニコール耐性遺伝子の制御領域(いずれも、特開2009−089708号公報を参照)、などが挙げられるが、特に限定されない。該制御領域のより好ましい例として、該制御領域のより好ましい例として、バチルス・エスピーKSM−S237株のセルラーゼ遺伝子の制御領域(配列番号78)、バチルス・エスピーKSM−64株のセルラーゼ遺伝子の制御領域(配列番号79)が挙げられる。また、好ましい制御領域としては、配列番号78又は79と少なくとも90%の同一性を有し、かつ遺伝子の転写及び翻訳を制御する機能を有するヌクレオチド配列が挙げられる。該MGLPをコードするポリヌクレオチドと制御領域との連結は、制限酵素法や、上述したSOE−PCR等により行うことができる。
該MGLPをコードするポリヌクレオチドの微生物への組み込みには、該MGLPをコードするポリヌクレオチド、及び必要に応じてさらに制御領域を含むDNA断片又はベクターを構築し、これを微生物に組み込めばよい。DNA断片やベクターを微生物細胞に導入する方法については、上述したとおりである。
該ベクターは、該MGLPをコードするポリヌクレオチド、及び必要に応じて制御領域を、常法により任意のベクター中に挿入し連結することにより構築することができる。該ベクターの種類は特に限定されず、プラスミド、ファージ、ファージミド、コスミド、ウイルス、YACベクター、シャトルベクター等の任意のベクターであってよい。また該ベクターは、好ましくは、本発明で用いる微生物内で増幅可能なベクターであり、より好ましくは発現ベクターである。好ましいベクターの例としては、限定するものではないが、pHA3040SP64、pHSP64R又はpASP64(特許第3492935号)、pHY300PLK(大腸菌と枯草菌の両方を形質転換可能な発現ベクター;Jpn J Genet,1985,60:235−243)、pAC3(Nucleic Acids Res,1988,16:8732)等のシャトルベクター;pUB110(J Bacteriol,1978,134:318−329)、pTA10607(Plasmid,1987,18:8−15)等のバチルス属細菌の形質転換に利用可能なプラスミドベクター、等が挙げられる。また大腸菌由来のプラスミドベクター(例えばpET22b(+)、pBR322、pBR325、pUC57、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19、pBluescript等)を用いることもできる。
本発明でMGLPの製造に使用される微生物を製造する場合、AprE又はこれに相当するプロテアーゼの活性が低減された微生物に、目的のMGLPをコードするポリヌクレオチドを組み込んでもよく、又は、目的のMGLPをコードするポリヌクレオチドが組み込まれた微生物を、AprE又はこれに相当するプロテアーゼの活性を低減するよう改変してもよい。いずれの場合でも、AprE又はこれに相当するプロテアーゼの活性が低減されており、かつモノアシルグリセロールリパーゼをコードする外来ポリヌクレオチドが組み込まれている、本発明の組換え微生物を得ることができる。
以上の手順で得られたAprE又はこれに相当するプロテアーゼの活性が低減された微生物を培養して、MGLPを発現させることにより、MGLPを製造することができる。MGLP製造のための該微生物の培養は、該微生物の種や形質に応じて、当該分野の一般的な方法に従って行うことができる。例えば、該微生物がバチルス属菌である場合、その培養のための培地は、バチルス属菌の生育に必要な炭素源、及び無機窒素源もしくは有機窒素源を含む。炭素源としては、例えばグルコース、デキストラン、可溶性デンプン、ショ糖、メタノールなどが挙げられる。無機窒素源もしくは有機窒素源としては、例えばアンモニウム塩類、硝酸塩類、アミノ酸、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などが挙げられる。必要に応じて、該培地は、他の栄養素、例えば無機塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウム)、ビタミン類、抗生物質(例えばテトラサイクリン、ネオマイシン、カナマイシン、スペクチノマイシン、エリスロマイシン等)などを含んでいてもよい。培養条件、例えば温度、通気撹拌条件、培地のpH及び培養時間等は、微生物の種や形質、培養スケール等に応じて適宜選択され得る。
本発明のMGLPの製造方法においては、微生物が発現したMGLPは、細胞外に放出される。したがって、培養物の上清から目的のMGLPを回収することができる。例えば、遠心分離やろ過などにより培養上清を集め、次いでタンパク質精製に用いられる一般的な方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、培養上清から目的のMGLPを回収することができる。あるいは、回収又は濃縮した培養上清を、粗酵素液としてそのまま使用することができる。本発明の方法においては、培養した細胞破砕する工程を行うことなく、MGLPを回収することができる。
本発明はまた、例示的実施形態として以下の物質、製造方法、用途、方法等を包含する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
〔1〕枯草菌AprE又はこれに相当するプロテアーゼの活性が低減したバチルス属菌を培養してモノアシルグリセロールリパーゼを発現させることを含む、モノアシルグリセロールリパーゼの製造方法。
〔2〕好ましくは、培養物の上清から前記モノアシルグリセロールリパーゼを回収することをさらに含む、〔1〕記載の製造方法。
〔3〕好ましくは、前記バチルス属菌に、前記モノアシルグリセロールリパーゼをコードするポリヌクレオチドが外来的に導入されている、〔1〕又は〔2〕記載の製造方法。
〔4〕前記モノアシルグリセロールリパーゼをコードするポリヌクレオチドが、
好ましくは、制御領域と作動可能に連結されており、
好ましくは、タンパク質の分泌に関わる領域と連結されておらず、
より好ましくは、転写開始制御領域及び翻訳開始制御領域と作動可能に連結されており、
さらに好ましくは、転写開始制御領域及び翻訳開始制御領域と作動可能に連結されており、かつタンパク質の分泌に関わる領域と連結されていない、
〔3〕記載の製造方法。
〔5〕前記モノアシルグリセロールリパーゼが、
好ましくは、前記モノアシルグリセロールリパーゼが、Bacterial Lipolytic Enzyme Family XVに属するモノアシルグリセロールリパーゼであり、
より好ましくは、該Family XVに属する、バチルス属菌又はゲオバチルス属菌由来の非分泌型モノアシルグリセロールリパーゼであり、
さらに好ましくは、配列番号1〜6のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、又は配列番号1〜6のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列からなり、かつモノグリセリドリパーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリペプチドであり、
さらに好ましくは、配列番号1及び2のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、配列番号1及び2のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列からなり、かつモノグリセリドリパーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリペプチドであるか、配列番号3〜6のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、又は配列番号3〜6のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列からなり、かつモノグリセリドリパーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリペプチドであり、
さらに好ましくは、配列番号1及び2のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、又は配列番号1及び2のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列からなり、かつモノグリセリドリパーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリペプチドである、
〔1〕〜〔4〕のいずれか1項記載の製造方法。
〔6〕好ましくは、前記枯草菌AprE又はこれに相当するプロテアーゼの活性が低減したバチルス属菌が、枯草菌aprE又はこれに相当する遺伝子が欠失又は不活性化されたバチルス属菌である、〔1〕〜〔5〕のいずれか1項記載の製造方法。
〔7〕好ましくは、前記aprEに相当する遺伝子が、aprE(BG10190)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつアルカリ側に至適pHを持つセリンプロテアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子である、〔6〕記載の製造方法。
〔8〕前記バチルス属菌が、好ましくは、枯草菌epr、wprA、mpr、nprB、bpr、nprE、vpr、aprX、及びこれらに相当する遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子がさらに欠失又は不活性化されたものである、
〔6〕又は〔7〕記載の製造方法。
〔9〕好ましくは、前記枯草菌epr、wprA、mpr、nprB、bpr、nprE、vpr、及びaprXに相当する遺伝子が以下である、
eprに相当する遺伝子:epr(BG10561)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつマイナー細胞外セリンプロテアーゼをコードする遺伝子;
wprAに相当する遺伝子:wprA(BG11846)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつ細胞壁結合型プロテアーゼ前駆体をコードする遺伝子;
mprに相当する遺伝子:mpr(BG10690)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつ細胞外金属プロテアーゼをコードする遺伝子;
nprBに相当する遺伝子:nprB(BG10691)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつ細胞外中性プロテアーゼBをコードする遺伝子;
bprに相当する遺伝子:bpr(BG10233)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつバシロペプチダーゼFをコードする遺伝子;
nprEに相当する遺伝子:nprE(BG10448)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつ細胞外中性金属プロテアーゼをコードする遺伝子;
vprに相当する遺伝子:vpr(BG10591)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつマイナー細胞外セリンプロテアーゼをコードする遺伝子;
aprXに相当する遺伝子:aprX(BG12567)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつ菌体内セリンプロテアーゼをコードする遺伝子、
〔8〕記載の製造方法。
〔10〕好ましくは、前記バチルス属菌が枯草菌又はその変異株である、〔1〕〜〔9〕のいずれか1項記載の製造方法。
〔11〕枯草菌AprE又はこれに相当するプロテアーゼの活性が低減されており、かつモノアシルグリセロールリパーゼをコードするポリヌクレオチドが外来的に導入されている、組換えバチルス属菌。
〔12〕前記モノアシルグリセロールリパーゼをコードするポリヌクレオチドが、
好ましくは、制御領域と作動可能に連結されており、
好ましくは、タンパク質の分泌に関わる領域と連結されておらず、
より好ましくは、転写開始制御領域及び翻訳開始制御領域と作動可能に連結されており、
さらに好ましくは、転写開始制御領域及び翻訳開始制御領域と作動可能に連結されており、かつタンパク質の分泌に関わる領域と連結されていない、
〔11〕記載の組換えバチルス属菌。
〔13〕前記モノアシルグリセロールリパーゼが、
好ましくは、前記モノアシルグリセロールリパーゼが、Bacterial Lipolytic Enzyme Family XVに属するモノアシルグリセロールリパーゼであり、
より好ましくは、該Family XVに属する、バチルス属菌又はゲオバチルス属菌由来の非分泌型モノアシルグリセロールリパーゼであり、
さらに好ましくは、配列番号1〜6のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、又は配列番号1〜6のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列からなり、かつモノグリセリドリパーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリペプチドであり、
さらに好ましくは、配列番号1及び2のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、配列番号1及び2のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列からなり、かつモノグリセリドリパーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリペプチドであるか、配列番号3〜6のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、又は配列番号3〜6のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列からなり、かつモノグリセリドリパーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリペプチドであり、
さらに好ましくは、配列番号1及び2のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、又は配列番号1及び2のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列からなり、かつモノグリセリドリパーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリペプチドである、
〔11〕又は〔12〕記載の組換えバチルス属菌。
〔14〕好ましくは、枯草菌aprE又はこれに相当する遺伝子が欠失又は不活性化されている、〔11〕〜〔13〕のいずれか1項記載の組換えバチルス属菌。
〔15〕好ましくは、前記aprEに相当する遺伝子が、aprE(BG10190)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつアルカリ側に至適pHを持つセリンプロテアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子である、〔14〕記載の組換えバチルス属菌。
〔16〕好ましくは、枯草菌epr、wprA、mpr、nprB、bpr、nprE、vpr、aprX、及びこれらに相当する遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子がさらに欠失又は不活性化されている、
〔14〕又は〔15〕記載の組換えバチルス属菌。
〔17〕好ましくは、前記枯草菌epr、wprA、mpr、nprB、bpr、nprE、vpr、及びaprXに相当する遺伝子が以下である、
eprに相当する遺伝子:epr(BG10561)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつマイナー細胞外セリンプロテアーゼをコードする遺伝子;
wprAに相当する遺伝子:wprA(BG11846)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつ細胞壁結合型プロテアーゼ前駆体をコードする遺伝子;
mprに相当する遺伝子:mpr(BG10690)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつ細胞外金属プロテアーゼをコードする遺伝子;
nprBに相当する遺伝子:nprB(BG10691)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつ細胞外中性プロテアーゼBをコードする遺伝子;
bprに相当する遺伝子:bpr(BG10233)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつバシロペプチダーゼFをコードする遺伝子;
nprEに相当する遺伝子:nprE(BG10448)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつ細胞外中性金属プロテアーゼをコードする遺伝子;
vprに相当する遺伝子:vpr(BG10591)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつマイナー細胞外セリンプロテアーゼをコードする遺伝子;
aprXに相当する遺伝子:aprX(BG12567)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつ菌体内セリンプロテアーゼをコードする遺伝子、
〔16〕記載の組換えバチルス属菌。
〔18〕好ましくは、前記バチルス属菌が枯草菌又はその変異株である、〔11〕〜〔17〕のいずれか1項記載の組換えバチルス属菌。
〔19〕枯草菌AprE又はこれに相当するプロテアーゼの活性が低減されたバチルス属菌に、モノアシルグリセロールリパーゼをコードするポリヌクレオチドを組み込むことを含むか、又は、モノアシルグリセロールリパーゼをコードするポリヌクレオチドが組み込まれたバチルス属菌において枯草菌AprE又はこれに相当するプロテアーゼの活性を低減させることを含む、組換えバチルス属菌の製造方法。
〔20〕前記モノアシルグリセロールリパーゼをコードするポリヌクレオチドが、
好ましくは、制御領域と作動可能に連結されており、
好ましくは、タンパク質の分泌に関わる領域と連結されておらず、
より好ましくは、転写開始制御領域及び翻訳開始制御領域と作動可能に連結されており、
さらに好ましくは、転写開始制御領域及び翻訳開始制御領域と作動可能に連結されており、かつタンパク質の分泌に関わる領域と連結されていない、
〔19〕記載の組換えバチルス属菌の製造方法。
〔21〕前記モノアシルグリセロールリパーゼが、
好ましくは、前記モノアシルグリセロールリパーゼが、Bacterial Lipolytic Enzyme Family XVに属するモノアシルグリセロールリパーゼであり、
より好ましくは、該Family XVに属する、バチルス属菌又はゲオバチルス属菌由来の非分泌型モノアシルグリセロールリパーゼであり、
さらに好ましくは、配列番号1〜6のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、又は配列番号1〜6のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列からなり、かつモノグリセリドリパーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリペプチドであり、
さらに好ましくは、配列番号1及び2のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、配列番号1及び2のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列からなり、かつモノグリセリドリパーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリペプチドであるか、配列番号3〜6のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、又は配列番号3〜6のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列からなり、かつモノグリセリドリパーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリペプチドであり、
さらに好ましくは、配列番号1及び2のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、又は配列番号1及び2のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列からなり、かつモノグリセリドリパーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリペプチドである、
〔19〕又は〔20〕記載の組換えバチルス属菌の製造方法。
〔22〕好ましくは、枯草菌aprE又はこれに相当する遺伝子が欠失又は不活性化されている、〔19〕〜〔21〕のいずれか1項記載の組換えバチルス属菌の製造方法。
〔23〕好ましくは、前記aprEに相当する遺伝子が、aprE(BG10190)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつアルカリ側に至適pHを持つセリンプロテアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子である、〔22〕記載の組換えバチルス属菌の製造方法。
〔24〕好ましくは、枯草菌epr、wprA、mpr、nprB、bpr、nprE、vpr、aprX、及びこれらに相当する遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子がさらに欠失又は不活性化されている、
〔22〕又は〔23〕記載の組換えバチルス属菌の製造方法。
〔25〕好ましくは、前記枯草菌epr、wprA、mpr、nprB、bpr、nprE、vpr、及びaprXに相当する遺伝子が以下である、
eprに相当する遺伝子:epr(BG10561)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつマイナー細胞外セリンプロテアーゼをコードする遺伝子;
wprAに相当する遺伝子:wprA(BG11846)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつ細胞壁結合型プロテアーゼ前駆体をコードする遺伝子;
mprに相当する遺伝子:mpr(BG10690)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつ細胞外金属プロテアーゼをコードする遺伝子;
nprBに相当する遺伝子:nprB(BG10691)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつ細胞外中性プロテアーゼBをコードする遺伝子;
bprに相当する遺伝子:bpr(BG10233)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつバシロペプチダーゼFをコードする遺伝子;
nprEに相当する遺伝子:nprE(BG10448)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつ細胞外中性金属プロテアーゼをコードする遺伝子;
vprに相当する遺伝子:vpr(BG10591)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつマイナー細胞外セリンプロテアーゼをコードする遺伝子;
aprXに相当する遺伝子:aprX(BG12567)とヌクレオチド配列において少なくとも90%の同一性を有し、かつ菌体内セリンプロテアーゼをコードする遺伝子、
〔24〕記載の組換えバチルス属菌の製造方法。
〔26〕好ましくは、前記バチルス属菌が枯草菌又はその変異株である、〔19〕〜〔25〕のいずれか1項記載の組換えバチルス属菌の製造方法。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
以下の実施例において、PCRはPrimeSTAR Max Premix(タカラバイオ)を使用して行った。In−fusion法はIn−Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ)を使用して行った。宿主微生物へのプラスミドの導入は、プロトプラスト法(Mol.Gen.Genet,1979,168:111−115)にて行った。タンパク質生産のための組換え微生物の培養には、LB培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1%NaCl)、又は2×L−マルトース培地(2%トリプトン、1%酵母エキス、1%NaCl、7.5%マルトース、7.5ppm硫酸マンガン4−5水和物)を用いた。培養上清におけるリパーゼ活性の測定は、以下の手順で行った。
(リパーゼ活性測定方法)
適宜希釈した培養上清5μLを96穴アッセイプレート(IWAKI)の各ウェルに分注した。各ウェルに、さらに脱イオン水183μL、1M Tris−HCl(pH8.0)10μL、及び基質溶液2μLを分注し、反応を開始した。基質溶液には、4−Nitrophenyl octanoate(SIGMA−ALDRICH)を100mM含むジメチルスルホキシド(DMSO)溶液を用いた。40℃にて15分間反応させ、反応液の405nmの吸光度をマイクロプレートリーダー(TECAN)を用いて測定した。1Uは40℃で1分間に1μmolのpNAを遊離する酵素量と定義した。
表2〜7に、以下の実施例で使用したプライマーの名称とヌクレオチド配列を示す。
実施例1 遺伝子欠失枯草菌株の構築
(1)aprE欠失株の構築
(遺伝子欠失用プラスミドの構築)
枯草菌168株から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、表3に示すaprEfw1とaprEUpr(配列番号27及び28)、及びaprEDNfとaprErv−repU(配列番号29及び30)の各プライマーセットを用いて、ゲノム上のaprE遺伝子の上流に隣接する0.6kb断片(A)、及び下流に隣接する0.5kb断片(B)をそれぞれ調製した。別途、プラスミドpC194(J.Bacteriol,150(2),815,1982)由来のクロラムフェニコール耐性遺伝子の上流にプラスミドpUB110(Plasmid,1986,15:93−103)由来のrepU遺伝子のプロモーター領域(Nucleic Acids Res,1989,17:4410)を連結した1.2kb断片(C)を調製した。断片(C)の調製では、まず、repUfwとrepUr−Cm(配列番号32及び33、表3)のプライマーセット及び鋳型としてプラスミドpUB110を用いて、repU遺伝子プロモーター領域を含む0.4kb断片(D)を調製した。さらにCmUf−repとCmrv1(配列番号34及び35、表3)のプライマーセット及び鋳型としてプラスミドpC194を用いて、クロラムフェニコール耐性遺伝子を含む0.8kb断片(E)調製した。次いで、断片(D)と(E)の混合物を鋳型とし、プライマーrepUfwとCmrv1を用いたSOE−PCRにより断片(C)を調製した。次に、得られた(A)、(B)及び(C)断片の混合物を鋳型とし、プライマーaprEfw2とCmrv2(配列番号31及び36、表3)を用いたSOE−PCRによって、(A)(B)(C)の順に断片を結合させ、2.2kbのDNA断片を得た。このDNA断片の末端を平滑化及び5’−リン酸化し、プラスミドpUC118(Methods Enzymol,1987,153:3−11)のSmaI制限酵素部位に挿入してaprE遺伝子欠失用プラスミドpUC118−CmrΔaprEを構築した。
(遺伝子欠失株の構築)
構築したプラスミドpUC118−CmrΔaprEをコンピテントセル形質転換法(J Bacteriol,1967,93,1925−1937)によって枯草菌変異株trpC2(trpC2株)に導入した。aprE遺伝子上流領域又は下流領域の相当する領域間での1重交差の相同組換えによりプラスミドとゲノムDNAとが融合した形質転換株を、クロラムフェニコール耐性を指標に取得した。得られた形質転換株をLB培地に接種し、37℃にて2時間培養後、再度コンピテンス誘導操作を行い、導入したプラスミドとゲノム上に重複して存在するaprE遺伝子上流領域又は下流領域の間におけるゲノム内相同組換えを誘導した。プラスミド導入の際と異なる領域で相同組換えが起こった場合、aprE遺伝子、及びプラスミドに由来するクロラムフェニコール耐性遺伝子が欠失する。
次に、クロラムフェニコール感受性株の存在比率を高める為、以下の要領でアンピシリン濃縮操作を行なった。コンピテントセル誘導後の培養液を、終濃度5ppmのクロラムフェニコール及び終濃度100ppmのアンピシリンナトリウムを含むLB培地1mLに600nmにおける濁度(OD600)が0.003になるように接種した。37℃にて5時間培養後、10,000ppmのアンピシリンナトリウム水溶液を10μL添加してさらに3時間培養した。培養終了後、2%塩化ナトリウム水溶液にて菌体を遠心洗浄した後、1mLの2%塩化ナトリウム水溶液に懸濁し、懸濁液100μLをLB寒天培地に塗沫した。37℃にて約15時間インキュベーションし、生育した菌株のうち、プラスミド領域の脱落に伴ってクロラムフェニコール感受性となったものを選抜した。選抜した菌株のゲノムDNAを鋳型とし、プライマーaprEfw2とaprErv−repU(配列番号31及び30、表3)を用いたPCRを行なうことによりaprE遺伝子欠失を確認して、aprE遺伝子欠失株trpC2/ΔaprEを取得した。
(2)epr、wprA、mpr、nprB、bpr、nprE又はvpr欠失株の構築
(1)と同様の操作を繰り返すことにより、trpC2株からepr、wprA、mpr、nprB、bpr、nprE、及びvprの各遺伝子を欠失させた遺伝子欠失株trpC2/Δepr、trpC2/ΔwprA、trpC2/Δmpr、trpC2/ΔnprB、trpC2/Δbpr、trpC2/ΔnprE、及びtrpC2/Δvprを取得した。各欠失株の作製に用いたプライマーの配列を表4〜5に、また各プライマーと(1)で用いたaprE遺伝子欠失用プライマーとの対応を表6に示す。
(3)aprX欠失株の構築
二重交差法によりaprX遺伝子がスペクチノマイシン耐性遺伝子に置換されたaprX遺伝子欠失株を構築した。枯草菌168株から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、表7に示すaprX+5FとaprX+563R(配列番号72及び73)、及びaprX+775FとaprX+1320R(配列番号74及び75)の各プライマーセットを用いて、ゲノム上のaprX遺伝子の上流を含む5’末端側の558bp断片(F)、及び3’末端側の545bp断片(G)をそれぞれ調製した。別途、プラスミドpDG1727(Gene,167,335,1995)のBamHI及びXhoI制限酵素切断点よりスペクチノマイシン耐性遺伝子領域を切り出し、pBluescript II SK(+)(Stratagene)のBamHI及びXhoI制限酵素切断点に挿入し、プラスミドpBlueSPRを構築した。pBlueSPRのDNAを鋳型とし、PB−M13−20とPB−M13Rev(配列番号76及び77、表7)のプライマーセットを用いてスペクチノマイシン耐性遺伝子領域(H)を増幅した。(F)、(G)及び(H)断片の混合物を鋳型とし、aprX+5FとaprX+1320R(配列番号72及び75、表7)のプライマーセットを用いたSOE−PCR法により、(E)(H)(G)の順に結合したDNA断片を調製した。調製したDNA断片を用い、コンピテントセル形質転換法によるtrpC2株の形質転換を行い、次いでスペクチノマイシン(100μg/mL)を含むLB寒天培地上に生育したコロニーを形質転換体として分離した。得られた形質転換体のゲノムを抽出し、PCRによってaprX遺伝子が欠失してスペクチノマイシン耐性遺伝子に置換していることを確認して、aprX遺伝子欠失株trpC2/ΔaprXを取得した。
実施例2 各種遺伝子欠失株のMGLP生産性比較
(1)EstGtA2発現組換え枯草菌株の構築
実施例1で作製した遺伝子欠失株にモノアシルグリセロールリパーゼEstGtA2(配列番号1)をコードする遺伝子を導入した組換え枯草菌株を構築した。枯草菌用にコドン至適化したEstGtA2をコードする遺伝子(配列番号7)をプラスミドpUC57に挿入したプラスミド(EstGtA2−pUC57)を、GenScript社の人工遺伝子合成サービスを利用して作製した。これを鋳型とし、プライマーEstGtA2−F及びプライマーEstGtA2−R(配列番号13及び14、表2)のプライマーセットを用いてPCRを行った。同様に、WO2006/068148A1の実施例7に記載のプラスミドpHY−S237を鋳型とし、プライマーpHY−S237−F及びpHY−S237−R(配列番号15及び16、表2)を使用してPCR反応を行った。それぞれのPCR産物をDpnI(New England Biolabs)にてDpnI処理を行った。得られた両断片を適量混合し、In−fusion法を用いてプラスミドを合成した(pHY−EstGtA2)。この際、セルラーゼS237の制御領域(転写開始制御領域及び翻訳開始制御領域を含む領域、配列番号78)とEstGtA2の遺伝子が作動可能に連結するように設計した。得られたプラスミドをプロトプラスト形質転換法にてtrpC2株(対照)、及び実施例1で作製した遺伝子欠失株trpC2/ΔaprE、trpC2/Δepr、trpC2/ΔwprA、trpC2/Δmpr、trpC2/ΔnprB、trpC2/Δbpr、trpC2/ΔnprE、trpC2/Δvpr、及びtrpC2/ΔaprXに導入した。
(2)MGLP生産性比較
(1)で得られた組換え枯草菌株を3mL/大試験管(φ18×180mm)のLB培地で30℃、15時間、250rpmで振盪培養した。得られた培養液0.02mLを20mL/500mL容ヒダ付三角フラスコ(バイオット)の2×L−マルトース培地に接種し、30℃で96時間、210rpmで振盪培養した。培養後、培養液を遠心分離(8000rpm×30分)し、得られた上清からフィルター(0.45μm、PVDF、メルクミリポア製)によって菌体を除き、残った培養上清のリパーゼ活性を測定した。またSDS−PAGEにより、培養上清におけるEstGtA2の蓄積を確認した。SDS−PAGEでは、タンパク質のバンドはBio−Safe CBB G−250ステイン(Bio−Rad)を用いて確認した。
図1は、各組換え枯草菌株の96時間培養後に得られた培養上清におけるリパーゼ活性を示す。図中、横軸は組換え枯草菌株の宿主(trpC2、trpC2/Δepr、trpC2/ΔwprA、trpC2/Δmpr、trpC2/ΔnprB、trpC2/Δbpr、trpC2/ΔnprE、trpC2/Δvpr、trpC2/ΔaprE、trpC2/ΔaprX)を示し、縦軸は各株についての培養上清中のリパーゼ活性を示す。リパーゼ活性値はtprC2株についての活性を100%とした相対活性で示している。aprE欠失株で培養上清中のリパーゼ活性が顕著に向上した。図2は、各組換え枯草菌株についての96時間培養後の培養上清でのSDS−PAGEの結果を示す。各レーンは組換え枯草菌株の欠失遺伝子で表示されている。aprE欠失株では培養上清中にEstGtA2が蓄積されていた一方、他の欠失株では、培養上清中におけるEstGtA2の蓄積が確認できなかった。以上の結果から、aprE遺伝子又はそれに相当する遺伝子を欠失又は不活化した株を用いることで、本来菌体内酵素であるモノアシルグリセロールリパーゼEstGtA2を細胞外に分泌させて、培養上清中から回収することができることが分かった。
実施例3 aprE欠失株による各種MGLP生産性
(1)MGLP発現組換え枯草菌株の構築
Bacterial Lipolytic Enzyme Family XVに属するMGLPであるH−257、stLP、CI220−6、CI220−10、及びCI220−12(配列番号2〜6)を発現する組換え枯草菌株を構築した。枯草菌用にコドン至適化した各MGLPをコードする遺伝子(配列番号8〜12)をプラスミドpUC57に挿入したプラスミド(H−257−pUC57、stLP−pUC57、CI220−6−pUC57、CI220−10−pUC57、及びCI220−12−pUC57)をGenScript社の人工遺伝子合成サービスを利用して作製した。作製したプラスミドを鋳型として、表2に示すプライマーペアH257−F/R(配列番号17及び18)、stLP−F/R(配列番号19及び20)、CI220−6−F/R(配列番号21及び22)、CI220−10−F/R(配列番号23及び24)、及びCI220−12−F/R(配列番号25及び26)をそれぞれ用いてPCRを行った。同様に、プラスミドpHY−S237を鋳型とし、プライマーpHY−S237−F及びpHY−S237−R(配列番号15及び16)を使用してPCR反応を行った。実施例2(1)と同様に、PCR産物のDpnI処理し、In−fusion法を用いてプラスミドを合成し(pHY−H−257、pHY−stLP、pHY−CI220−6、pHY−CI220−10、及びpHY−CI220−12)、得られたプラスミドをプロトプラスト形質転換法にてtrpC2株及びtrpC2/ΔaprE株に導入した。
(2)aprE欠失組換え枯草菌株のMGLP生産性
(1)で得られた組換え枯草菌株を1mLのLB培地で一夜、30℃で振盪培養した。得られた培養液0.003mLを3mLの2×L−マルトース培地に接種し、30℃で72時間振盪培養した。培養後、実施例2(2)と同様の手順で、培養上清を分離し、SDS−PAGEにより菌体外に生産されたMGLPの量を確認した。タンパク質のバンドはミニプロティアンTGX Stain−Freeゲル(Bio−Rad)により確認した。
図3は、各組換え枯草菌株についての72時間培養後の培養上清におけるSDS−PAGEの結果を示す。各レーンは組換え枯草菌株の欠失遺伝子及び発現させたMGLPの種類で表示されている。発現させたいずれのMGLP(H−257、stLP、CI220−6、CI220−10、及びCI220−12)も、aprE欠失株の培養上清中に蓄積されていた一方、trpC2株の培養上清中ではいずれのMGLPの蓄積も確認できなかった。以上の結果から、aprE遺伝子又はそれに相当する遺伝子を欠失又は不活化した株を用いることで、菌体内酵素である各種MGLPを細胞外に分泌させて、培養上清中から回収することができること分かった。
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらが、本発明を、説明した特定の実施形態に限定することを意図するものではないことを理解すべきである。本発明の範囲内にある様々な他の変更及び修正は当業者には明白である。
本明細書に引用されている文献及び特許出願は、あたかもそれが本明細書に完全に記載されているかのように参考として援用される。

Claims (21)

  1. 枯草菌AprE又はこれに相当するプロテアーゼの活性が低減したバチルス属菌を培養してモノアシルグリセロールリパーゼを発現させることを含む、モノアシルグリセロールリパーゼの製造方法。
  2. 培養物の上清から前記モノアシルグリセロールリパーゼを回収することをさらに含む、請求項1記載の製造方法。
  3. 前記バチルス属菌に、前記モノアシルグリセロールリパーゼをコードするポリヌクレオチドが外来的に導入されている、請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 前記モノアシルグリセロールリパーゼをコードするポリヌクレオチドが制御領域と作動可能に連結されている、請求項3記載の製造方法。
  5. 前記モノアシルグリセロールリパーゼが、Bacterial Lipolytic Enzyme Family XVに属するモノアシルグリセロールリパーゼである、請求項1〜4のいずれか1項記載の製造方法。
  6. 前記モノアシルグリセロールリパーゼが、バチルス属菌又はゲオバチルス属菌由来の非分泌型モノアシルグリセロールリパーゼである、請求項5記載の製造方法。
  7. 前記モノアシルグリセロールリパーゼが、配列番号1及び2のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号1及び2のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列からなるポリペプチドである、請求項1〜6のいずれか1項記載の製造方法。
  8. 前記モノアシルグリセロールリパーゼが、配列番号3〜6のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号3〜6のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列からなるポリペプチドである、請求項1〜6のいずれか1項記載の製造方法。
  9. 前記枯草菌AprE又はこれに相当するプロテアーゼの活性が低減したバチルス属菌が、枯草菌aprE又はこれに相当する遺伝子が欠失又は不活性化されたバチルス属菌である、請求項1〜8のいずれか1項記載の製造方法。
  10. 前記バチルス属菌が、枯草菌epr、wprA、mpr、nprB、bpr、nprE、vpr、aprX、及びこれらに相当する遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子がさらに欠失又は不活性化されたものである、請求項9記載の製造方法。
  11. 前記バチルス属菌が枯草菌又はその変異株である、請求項1〜10のいずれか1項記載の製造方法。
  12. 枯草菌AprE又はこれに相当するプロテアーゼの活性が低減されており、かつモノアシルグリセロールリパーゼをコードするポリヌクレオチドが外来的に導入されている、組換えバチルス属菌。
  13. 前記モノアシルグリセロールリパーゼをコードするポリヌクレオチドが制御領域と作動可能に連結されている、請求項12記載の組換えバチルス属菌。
  14. 前記モノアシルグリセロールリパーゼが、Bacterial Lipolytic Enzyme Family XVに属するモノアシルグリセロールリパーゼである、請求項12又は13記載の組換えバチルス属菌。
  15. 前記モノアシルグリセロールリパーゼが、バチルス属菌又はゲオバチルス属由来の非分泌型モノアシルグリセロールリパーゼである、請求項14記載の組換えバチルス属菌。
  16. 前記モノアシルグリセロールリパーゼが、配列番号1及び2のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号1及び2のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列からなるポリペプチドである、請求項12〜15のいずれか1項記載の組換えバチルス属菌。
  17. 前記モノアシルグリセロールリパーゼが、配列番号3〜6のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号3〜6のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列からなるポリペプチドである、請求項12〜15のいずれか1項記載の組換えバチルス属菌。
  18. 枯草菌aprE又はこれに相当する遺伝子が欠失又は不活性化されている、請求項12〜17のいずれか1項記載の組換えバチルス属菌。
  19. 枯草菌epr、wprA、mpr、nprB、bpr、nprE、vpr、aprX、及びこれらに相当する遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子がさらに欠失又は不活性化されている、請求項18記載の組換えバチルス属菌。
  20. 前記バチルス属菌が枯草菌又はその変異株である、請求項12〜19のいずれか1項記載の組換えバチルス属菌。
  21. 枯草菌AprE又はこれに相当するプロテアーゼの活性が低減されたバチルス属菌に、モノアシルグリセロールリパーゼをコードするポリヌクレオチドを組み込むことを含むか、又は、モノアシルグリセロールリパーゼをコードするポリヌクレオチドを組み込んだバチルス属菌において枯草菌AprE又はこれに相当するプロテアーゼの活性を低減させることを含む、組換えバチルス属菌の製造方法。
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